兄さんが帰ってくるまであと20分。
俺は時計を見て溜め息をついた。
最高に憂鬱だわ。
アカデミーもとい忍者育成学校のせいで兄さんは日中家に居ない。
あの満月の夜__九尾襲来事件から一族の人達は何だかぴりぴりしてる。
と言ってもほんの一部の人達だけだし、どうせただの勘違いだろうけど。
いっつもにこにこ笑ってる人達の方は何も変わった様子ねぇし。
父さんは忙しくて修行に付き合ってくれねぇし母さんも家事で忙しい。
必然的に俺は家で遊ぶか一人で修行するかしかできねぇ訳だ。
まだ幼いからって保護者同伴じゃねぇとうちはの領地内から出してもらえねぇし…。
「暇ー…はぁ。」
自室の中央でごろごろ寝転がって言ってみても気休めにすらならない。
泣けてくるぜ…。
うつ伏せになって組んだ腕に顎を埋める。
やる事がねぇとどうしても考えちまうのは転生の事についてだ。
ここ俺がは間接的に知っている世界だ、ってのに気付いたのが一昨日。
まだ俺がうちはサスケじゃなかった時、友達に教えられた漫画の中身に似ていたのに気付いたのがきっかけだった。
教えてもらったっつってもそれは所謂コラ画像とやらで、「サスケェ!お前の前のたなのオレオとってオレオ!」とか「日向は囮にて最適」とかそんな感じのもん。
知ってんのはサスケェとイタチと卑劣様とクレイジーサイコホモくらい。
正直俺が気付いたのは奇跡に近かった。
卑劣様なんか顔岩になっててビビった。あの人お偉いさんかよ。
んまぁこんな感じで「漫画の世界に転生したのかー」って納得…できるわけもなく、脳の許容量がオーバーしたのか昨日まで熱出してうんうん唸ってた。子供って大変。
転生云々の話は遠回しに避けてたんだけどやる事なくて結局考えちまってる、っていうね。
そんで次に、うちはサスケって脇役なのかね、って俺が考えるのもしょうがねぇわな。
こんな事になるんなら読んどきゃ良かったな、後悔先に立たずか…。
つーか主人公が誰かも分かってねぇのに。
いや、そもそも俺の年代に主人公居んのか?主人公の親世代の人間かもしんねぇし…。
こればっかりはお手上げだな、とりあえず兄さんとおんなじ忍になって可愛い彼女作るか。兄さんは素敵な義理のお姉さん作ってくれ。
幸い鏡を見たら俺は中々に整ってる顔だった。
けど子供の内は可愛くても大人になるにつれて不細工になるのはよくある事だし…おぉこわ。
でもまぁ俺が産まれた一族は全員顔面偏差値高い方だし大丈夫だろ。
そういえば顔付きがアジア系だったから俺が初めて顔を認識した時も違和感無かったな。
うちはって東洋人か?早いとこ領地から出て確認してぇわ。
もしかすると里の区域ごとに人種別の人間が住んでるかもしんねぇし。
そういえば産まれてこの方まともに里を見た事が無いかもしれない。いっつも母さんの腕の中で寝てるからな。
寝転んだ状態から起き上がった瞬間、玄関が開く音が聞こえてきた。
大方兄さんが帰ってきたんだろうな、早く行こ。
「ただいま」
「あら、おかえりイタチ」
「サスケは、っとと…」
「おかえり兄さん!」
どたどたと長い廊下を走れば間髪入れずすぐ兄さんに抱きつく。
俺が何処に居るか聞こうとしてたみたいだけど俺の方が早かった。
急に飛び付いたのにしっかり受け止めた兄さんはやっぱり凄い。尊敬する。
「こら、サスケ。廊下は走っちゃダメでしょ」
「はーい…」
母さんに怒られる事になったけど、俺としては結果オーライだ。
修行に付き合ってもらおうとしたけどいつになく多いアカデミーの宿題のせいで駄目だった。
木の葉アカデミーを許すな。