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No.42206の一覧
[0] うちはサスケです。目標は兄を道連れに死ぬ事です。[お前の前の棚のオレオ](2016/07/31 01:27)
[1] 第二話-まな板の鯉[お前の前の棚のオレオ](2016/07/31 01:26)
[2] 第三話-目は心の鏡[お前の前の棚のオレオ](2016/07/31 01:22)
[3] 閑話[お前の前の棚のオレオ](2016/07/31 01:20)
[4] 第四話-地獄の一丁目[お前の前の棚のオレオ](2016/07/31 01:16)
[5] 第五話-三年飛ばず鳴かず[お前の前の棚のオレオ](2016/07/31 01:14)
[6] 第六話-喉元過ぎれば熱さ忘れる[お前の前の棚のオレオ](2016/07/31 01:11)
[7] 第七話-累卵の危うき[お前の前の棚のオレオ](2016/07/31 01:08)
[8] 第八話-喪家の犬[お前の前の棚のオレオ](2016/07/31 01:06)
[9] 第九話-後は野となれ山となれ[お前の前の棚のオレオ](2016/07/31 00:58)
[10] 第十話-臍を噛む[お前の前の棚のオレオ](2016/07/31 00:54)
[11] 第十一話-刀折れ矢尽きる[お前の前の棚のオレオ](2016/07/31 00:51)
[12] 第十二話-開いた口が塞がらない[お前の前の棚のオレオ](2016/07/31 00:50)
[13] 第十三話-若気の至り[お前の前の棚のオレオ](2016/07/31 00:43)
[14] 第十四話-預言者郷里に容れられず[お前の前の棚のオレオ](2016/07/31 00:42)
[15] 第十五話-狡兎死して走狗に烹らる[お前の前の棚のオレオ](2016/07/31 00:37)
[16] 第十六話-連木で腹を切る[お前の前の棚のオレオ](2016/07/31 00:36)
[17] 第十七話-痩せ馬に鞭[お前の前の棚のオレオ](2016/07/31 00:30)
[18] 第十八話-冬来たりなば春遠からじ[お前の前の棚のオレオ](2016/07/31 01:32)
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[42206] 第八話-喪家の犬
Name: お前の前の棚のオレオ◆21c54889 ID:60a12910 前を表示する / 次を表示する
Date: 2016/07/31 01:06
いつの間にか俺が立っていたのはうちはの領地内だった。

おかしい。俺はさっきまで家に帰ろうと走ってた筈だ。
最近暗くなるのが早いからか、既に月が浮かんでいる空を見て焦りながら。

だから今頃俺は家に帰って父さんと母さんに遅くなった事を叱られた後兄さんに慰めてもらってなきゃおかしいんだ。

こんな場所に立ち尽くして雨に当たられてるなら尚更おかしい。

「…?」

おかしいおかしいと家に向かって歩いても周りは人っ子一人居なかった。
それどころか人の気配すらしない。

静まり返った領地内は俺の居場所は此処じゃないと言っている様な気がして堪らず駆け出す。

怖かった。
いつもサスケちゃんサスケちゃんとにこにこしているお爺さんお婆さんも、優しくしてくれるお姉さんお兄さんも、全員全員居なかった。

世界が崩れ始めている気がした。

いや、きっとそうだ。世界が崩れ始めているんだ。

きっと今にでも兄さんが現れて俺を皆が居る所に連れていってくれる筈。


結局家に着いても兄さんは迎えに来な
かった。


族長である父さんの家は四人で住むには少し大きすぎて、小さい頃はよく迷子になったりした。
そんな思い出たっぷりの家も、今は他と同様水を打った様に静かだった。

玄関を開けても誰も居ない。
誰の気配もしなかった。
思わず不安に顔を歪めてしまう。何で急に皆居なくなったんだ?

「父さん、母さん…兄さん?」

台所、居間、和室、何処を見ても誰も居ない。
異常だ。呼んでも探しても誰も現れないなんて異常だ。

長い廊下を渡る。次で最後の部屋だった。

此処に居なければ俺は恐怖で叫び出すだろう。
何かの間違い、ただのドッキリ、質の悪い夢であれば良いのに。

憂鬱な気分で扉を開ける。両開きのそれは、子供である俺が開けるには少し大変で両腕を使う程だった。

現に今も、扉に手をかけて押している。手は汗に濡れていた。

「…ッ!」

どくり。心臓が跳ねる音がする。

其処には誰も居なかった。部屋の中央には何かを型どったテープ。
べったりとした血の跡もあった。
何で俺の家にこんなのが…?

まさか父さんと母さんは”これ“を追求されて説明しに里へ行ったのだろうか。
けれどもそれは俺があそこに立っていた理由にならない。

恐る恐る近寄る。
血の臭いはしなかったけど、赤黒いそれは充分気持ち悪かった。

よく見てみると、テープは人の形を模している様だった。
しかも人が折り重なって倒れてるみたいに。

「っう…!」

瞬間に頭痛。
ずきずきと頭を痛めつけるそれはいつまで立っても治まってくれない。

何なんだこの頭痛。
その痛みはまるで大切な事を思い出せと言っているようだ。

『兄さん!一族の人達が…!』

『愚かなる弟よ…』

『嘘、だ…兄さんが、そんな事…』

『南賀ノ神社本堂…その右奥七枚目の畳の下に一族秘密の集会場がある…』

『うちはサスケはあの夜の事を全て忘れる。記憶は両親の殺害現場に行く事を解く条件として忘却する。加え、  の記憶は生命の危機に思い出すものとする。うちはイタチへの恨みは          会う事を条件として倍増させる』

流れ込んでくる映像。
血塗れで倒れている人達、折り重なって死んでいる両親、刀を手に持ち此方を見つめる兄。

「ああぁぁあぁああっ!!!!」

膝から崩れ落ちる。
あり得ない程目が熱い。
頭痛は無くなったが、その代わりに心痛が襲いかかってきた。

記憶の中の俺は俺に幻術をかけていた。

記憶の中の兄は一族を殺していた。

記憶の中の両親は二人重なって死んでいた。

昔兄が教えてくれた事がある。

うちは一族は三大瞳術の内の一つ、写輪眼を有していると。

眼を合わせる事を条件に相手を深い幻の世界へ堕とすその眼は、各国の忍、果てにはそういう筋のマニアにまで欲されたという。

戦争中のうちはの死体は、回収班が来る前よりも早くに目を抉られていたそうだ。

抉られた眼達がどこの国の誰の手の中にあるかは全く分からないが、兄は抉ったのは自国の者ではないかという憶測を呟いていた。

それ以来兄は眼についてあまり話してくれなくなったけど、今思えばもっと聞いておいた方が良かった。

そんな呪いの眼を俺は持っているのだろう。目が熱いのもそれの影響なのかもしれない。

二つ折りになった体は自分でもゾッとするくらい冷めていた。

血が通っていないみたいで、けれども今はそう感じれる事が何より嬉しかった。

あんな兄と分けた血がこの体に流れているのは堪えられなかった。

心に受けたダメージが体にも反映されたのか、立ち上がる為床につけた指先は震えていた。

ふらふらの状態でも視界は良好だった。眼と体が相反を起こしていて思わず薄く笑う。
笑うしかないだろう、こんなの。

あんなに愛した父も、母も、一族さえも、何より誰より好きだった兄に奪われた。

兄と共に食べた甘味も、兄と共に過ごした家も、兄と共に送った日々も、今では虚しく寂しく捨て去りたい記憶の一部となった。

けれど、実際に捨て去る気にはならなかった。なれなかった。

今はまだ、忘れたくないと思える余裕があった。
今はまだ、悲観に暮れていたかった。

覚束ない足取りで扉を開ける。
振り返ると、両親を型どったテープと血痕が俺の記憶が正しい事を証明していた。

ゆっくりと扉が閉まる。

響いた音は、あまりにも虚しかった。


* * *


病院を抜け出していた俺は、うちはの領地を出るなり直ぐ様捕まった。

シスイさんの家にお邪魔して鏡を借りると、写輪眼はやっぱり発動していた。

どうすれば解除できるのかと鏡相手に四苦八苦し眼に力を込めたら解除された。
原因は分からないが。

そうして元に戻った真っ黒な目は、真っ白な部屋を映した後、何の面白味もない手元を狂った様にじっと眺めていた。
かれこれ数時間は経っている気がする。

ああ、ずっとあそこに居れば良かった。
こんな部屋に閉じ込められるくらいならあそこに居た方がずっとマシだ。

その時、静寂に満ちていた病室が扉を開ける音で壊された。

怪訝に思い扉の方を見ると、一人の老人と二人の屈強な男がずかずかと遠慮なく入ってきた。

それに続く様に俺付きの看護婦と院長らしき男も入ってくる。

老人の方は知っている。
決して遠くはない距離で見るその目は、本来持ち合わせているであろう優しげな眼差しとは打って変わって申し訳無さそうに細められていた。

いくら病院だからってこうも自分のテリトリーを荒らされると苛々する。

火影は椅子に座り此方を見つめるが俺は顔を逸らし窓の外を眺めていた。
男二人は俺の態度に殺気立つ。看護婦と院長はひっ、と小さく息を飲んだ。

火影は手で二人を制すると、俺に向かって喋り始めた。

「うちはサスケ…お主の一族は先日お主とお主の兄を除いて滅ぼされた」

お主の兄、というワードにぴくりと指が震える。
爺のくだらない話に一族の名を出すなら容赦はしないと俺は火影に顔を向けた。

火影は何故か満足そうだった。

「お主の苦しみと怒りは最もじゃろうが、今はわしの話を聞いてほしい。
お主は今や天涯孤独同然の身となってしまった。家も家族も失ったお主じゃが、わしはお主に家を与えたいと思って」
「その必要はねぇよ」

火影の言葉を遮り一言。
困惑を含んだ眼差しは俺に理由を説明しろと訴えていた。

「俺はこれまでもこれからもうちはサスケだ。うちはの領地を出る気は無い。赤の他人が用意した家ごときに住む価値があるとも思えない。悪いがこの話は蹴らせてもらう」

里のトップ相手に言い放った俺は、世間一般的に【不躾】 【無礼“】【礼儀知らず】 【恩知らず】等と称されるのだろう。
別にそれでも構わなかった。

言った通り俺はあの家に以前と同じく住む気だった。

それは先程まで幻術にかかっていた俺への戒めにもあるし、無力な自分へ孤独を思い知らしめれるし、何よりイタチへの憎しみを嫌でも忘れられない。

そんな決意に塗れた俺の目は、酷く汚かったと思う。

そんな俺を見て火影は何か考えを数巡させていたが、口から出た言葉は俺の望み通りのものだった。

「良かろう、お主がそこまで言うならわしはこれ以上何も言えまい…。じゃが、困った時はいつでもわしを頼るんじゃぞ」

困った時も頼んねぇよ無能爺。

火影であるにも関わらず、イタチ一人なんかにうちはを呆気なく滅ぼさせた目の前の爺を俺は心底軽蔑した。

嫌いだお前なんか、お前らなんか。
俺は一人で生きてやる。誰の力も借りねぇ、全員利用してやる。
全てはイタチの復讐の為に。

病室を出ていった火影を見送り俺は脱力する。

【アカデミーは落ち着いてから通い始めても構わない】

【生活費は此方から出させてもらう】

【一人暮らしで困った時はいつでも頼ってくれて良い】

一人の孤児にやり過ぎじゃないかと思ったが、如何せん俺はうちは一族。

大事な大事な写輪眼を手放したくないだけだろう。
もう一人の生き残りは既に居ない様だし。

また静かになった病室で、俺は遅い来る睡魔に身を任せる。

退院は一週間後になるらしいが、俺は今夜にでも抜け出すつもりだった。
そんなに傷も負っていないし、何より早く家に帰りたかったから。

体を横にして目を閉じる。
腕に受けた傷が痛みを訴えるが、胸の内に巣食う憎しみに比べれば何の事も無かった。





今はとにかく眠りたいんだ、静かにしてくれ。





そう呟いて意識を落とした。


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