「……おい、ウスラトンカチ」
「なんだってばよ」
「しばらく見ねえと思ったら…何してんだよ」
「…いやあ、アハハハハハ…」
無事にカカシから鈴を奪った後。
タイマーが鳴りスタート地点である丸太の所まで戻ると、丸太にナルトが縛り付けられていた。
奴の目の前には昼食である弁当。コイツ…腹が減ったから食おうとしたところを罠か何かで捕まったのか。
「…さっきまで一緒に戦ってたはずなのに、いつの間に戻ったんです?」
「実はさ、あの時一緒に戦ってたら影分身の一人が弁当発見してさ。オレってば腹が減って思うように動けねェからこっそり弁当食っちゃおうとしたところを…」
「ところを?」
「…カカシ先生の影分身に捕まった」
「どうりでお前の動きが鈍かったわけだ…このドベ」
「そもそも、なんでそんなにお腹減ってるんです?」
「ん?だって…カカシ先生、朝飯食ってくるなって言ってたってばよ」
「えっ?本当に朝食抜いてきたんですか?」
「…へ?」
「…忍は裏の裏をかくべし。ナルト…お前、ちっと正直者すぎるのォ」
はぁ…と深く溜息をつくオレとカカシ。サクヤは少し苦笑い。
…ま、コイツが最初に動いてくれたおかげで色々と見物出来た訳だからあんまり強くは言えねェか。
それにしても、影分身の術は確か…本体のチャクラを分割して分身に与える術。
二体に分身すればオリジナルのチャクラは二分の一。二十体になれば二十分の一だ。
…どうなってやがる?コイツのチャクラの上限は…。
「鈴も取られちゃったし…ま!お前らは忍者学校に戻る必要はないな」
「え!?鈴取ったのかってばよ!」
「ええ!」
「…フン」
縛り付けられているナルトに見えるように鈴を掲げるオレとサクヤ。
チャリン…と静かに鳴るそれを手に持ち少し誇らしく感じる。
「ハーーーー…じゃあさ!じゃあさ!ってことは三人とも…」
「…ま!ナルトはまだ鈴取れてないからね…。お前は午後からもう一回やるぞ」
「えー!!そりゃあないってばよ!!」
「サスケとサクヤの二人は弁当食べたら帰っていいぞ。ただし…ナルトには食わせるなよ。もし食わせたら即失格…忍者学校行きだ。わかったな」
それだけ言うと、じゃあねー…と手を振り去っていった。
「…そりゃあ、ないってばよォ……」
ぎゅるるるる…と腹の虫を鳴らせて空腹を訴えるナルト。
丸太に縛り付けられしょんぼりしているそいつに向かって、無言で手付かずの弁当を差し出す。
横を見ると同じようにサクヤも弁当を差し出していた。
「ほらよ…ウスラトンカチ」
「私のもどうぞ。ナルトくん」
「…へ?いいのかよ。見つかったら二人とも失格にされちまうってばよ」
「大丈夫だ。今はアイツの気配はない…午後からも三人で鈴を取りに行くぞ」
「でも、さっきカカシ先生はオレだけでやるって…」
「確かにナルトくんは午後から鈴取りって言われました。…でも、私たちが参加するなとは言われていないでしょう?」
「そういうことだ。……足手まといになられちゃ、こっちが困るからな」
「二人とも……!へへへ…ありがと」
そうしてナルトの奴へ弁当を渡そうとしたその時。
ボン!!!!という凄まじい音と衝撃と共に前方へ巨大な煙が上がる。
「何だァ!!」
煙の中から現れたのは、今まで見たこともない鬼気迫る恐ろしい表情でこちらへ突き進んでくるカカシ。
奴の体から感じる悍ましいほどのチャクラと殺気に威圧される。
コイツ…どっか行ったフリしやがって、どこかで監視してやがったのか!
「––––お前らああああああああああああ!!!」
「……ッ!」
「うわああああ!!」
「きゃっ……!!」
クッソ…!コイツ、どこにこんなチャクラを隠していやがった!
瞬時に二人を見るが、サクヤは尻餅をついて動けない様子。ナルトは丸太に縛られ身動きが取れない。
チィ…今、二人を護れるのはオレだけか…!
瞬時に写輪眼を発動させるが、あまりのスピードにあっという間に目の前へ到達されてしまう。
目の前には殺気を放ち続ける恐ろしい上忍。さっきまでこんな奴を相手にしていたのかと考え恐ろしく感じる。
そのままオレたち三人を睨み続けるカカシ。
何をする気だ…と警戒していると、そいつは両腕を腰に当て…。
「ごーかっく」
マスクの上からでもはっきりと判る満面の笑みで、オレ達三人へ向けて言った。
「…へ?合格?」
「お前らが初めてだ。今までの奴らは素直にオレの言うことをきくだけのボンクラどもばかりだったからな」
…なるほどな。
そういうことか。
「…忍者は裏の裏を読むべし。忍者の世界でルールや掟を破る奴はクズ呼ばわりされる。…けどな」
真剣な表情となりオレたち三人を見回すと、カカシははっきりとした口調で続ける。
「仲間を大切にしない奴は、それ以上のクズだ」
間抜け面でポカンとした表情を浮かべるナルト。
その横で少し笑い声をあげながら柔らかな笑みを浮かべるサクヤ。
…こんな奴に言われるまでもねェ。
オレはオレの大切な仲間を…サクヤと、ついでにナルトを守る。
この目、写輪眼は……そのための術だ。
全てを失くしたオレの、最後に残ったものを守るための力だ。
「これにて演習終わり。全員合格!!よォーしィ!第七班は明日より任務開始だァ!!」
シュビ!!と親指を立てて強くポーズをとるカカシ。
「やったってばよォ!!オレ、忍者!!忍者!!忍者!!!」
縛られた体を大きく揺らして全身で喜びを表現するナルト。
「無事、全員合格。ですね。まぁ…当然でしょう!」
口ではそんなことを言いながらも少し隠した右手で強くガッツポーズを作るサクヤ。
…オレは強くなる。
こいつらを守れるように。あの時感じた孤独、憎悪。虚無を二度と感じることのない様に。
いつか窮地に陥った時に、こいつらだけは守れる様に。
オレは、強くなる。
いつか、あの男を超える。
イタチを、あの男をこの手で殺すために。
見ていろ、イタチ。オレは…万華鏡写輪眼など無くとも、アンタなんか殺せる程に強くなってみせる。
これはその為のスタート。オレの道はここから始まる。
…第七班。結成だ。
あとがき
サスケくん聖人になりすぎた