水のように澄んだ青い空。白い雲。元気な太陽。うー!!いい天気!
目が覚めたばかりでぼーっとなっていた体も、一気に覚醒する。
今日はアカデミーがお休みなので、里をぶらぶらしています。
毎日毎日やれ組み手だやれ忍術だなんて疲れちゃうもの。子供はもっとお外で遊ばなきゃね。
天からの白い光が優しく体を包み込む。ぽかぽか暖かく気持ちいい。
今日は最高のお出かけ日和だ。歩くペースも自然とゆっくりになる。
小鳥たちのか細い鳴き声も、まるで私に挨拶をしてくれているような。風が葉っぱを撫でるサラサラという音も、今の私にはとても気持ちのいい音楽のように感じられる。
「うーーーん!いい朝だ!!!!」
……ただいまの時刻、午後1時。
誰か友達でもいないかなーと、ウロウロしていると、公園に着いた。
お。久しぶりにブランコでも乗ろうかしら、と公園へと足を踏み入れると、先客がいた。
目立つ金髪に大きなゴーグルを頭に被った少年。何か暗い顔をして俯いている。
「あら!ナルトじゃない!」
アカデミーの問題児がいた。
授業をサボればさあイタズラ、しょっちゅう歴代火影の顔岩に落書きしてはイルカ先生にこっぴどく叱られている。
友達は少ない(私が言えたことではないけど)みたいだが、同じクラスの奈良シカマルや犬塚キバとは仲がいいみたいで、しょっちゅう授業を抜け出してどこかに行っては先生に連れ戻されている。
ちなみにシカマルはめちゃくちゃ頭が良い。リーダーとかやったら良いんじゃないかな?
でもすごい面倒くさがりだから無理か。あ、キバは犬。
「こんなところで一人で何やってるのよ」
「別に…なんでもないってばよ」
「何かあったの?悩みがあるなら聞くわよ」
「何でもねーっての!」
いつもニコニコふざけているナルト。
どんな時でも笑顔を絶やさない、太陽みたいなこの少年に、私は少し憧れていたりする。
そんなこいつに、暗い顔は似合わない。
「…まあ、深くは聞かないでおくわ。それより、ほら。行くわよ」
「……は?」
「私は暇なの。わかるでしょ?」
「…いや。何を言いたいのかさっぱりわかんねーってばよ」
全く。これだから男子ってのは…。
「レディーがお誘いをしてるのにとぼけるなんて失礼な男ね。暇だから遊びましょって言ってるの」
「それならそうと言ってくれってばよ…」
じとーっ、と白い目で見られるが、それをさらりと受け流す。
慣れてるのよ、そんな目で見られるのは。悲しいけど。
「ま、いいや…しょうがねェから付き合ってやるってばよ!!」
ブランコから立ち上がって大きな声でそう言うと、太陽がこちらに顔を覗かせる。
眩しいほどのその笑顔を見て、改めて思った。
やっぱり、あんたはその顔が一番似合ってるわね。
「いい、ナルト。絶対見つかっちゃダメよ。わかってるでしょうね」
「ニシシ、あの怪しいマスクの下を暴いてやるってばよ」
ただいま絶賛尾行中。
公園を出て、何をしようかと二人でぶらぶらと歩いていた時、たまたま一人の忍者を発見した。
木の葉の上忍、はたけカカシ。
額あてをまるで眼帯のようにして左目を隠し、さらには鼻から口元にかけてをマスクで覆った、いかにも怪しげな男。
数回会話をしたことがあるが、マスクのせいで何を考えているのか、どんな人なのかさっぱり掴めなかった。
きっとあのマスクの下にはとんでもない秘密が隠されているに違いない。
例えば、タラコくちびるとか。出っ歯とか。
ちょっと頭の中でイメージしてみた。
頭に浮かんだのは、タラコくちびるで出っ歯のお化けが額当てを外してこちらを見る姿。
その左目には、写輪眼。
「ブーーーーーーーーーーーッ!!!!」
「ちょっ!サクヤちゃん!一人で何吹き出してんの!?バレるってばよ!!!!」
あまりのアンバランスなイメージについ吹き出してしまった。ダメだ、タラコくちびると写輪眼のコンボは凶悪すぎる。
そもそも何で写輪眼なのよ…あの人うちはじゃないから有りえないでしょうが、と自身にツッコミを入れる。
先日見たお母さんのそれがまだ頭に残っているからだろうか…
写輪眼、と思い浮かべて今度は頭にイタチ兄さんが浮かんできた。
…タラコくちびるのイタチ兄さんが。
「ブーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!」
「いい加減にするってばよぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!」
ああ、ごめんなさい。イタチ兄さん。
気をとりなおして、尾行を再開する。さっきの騒ぎで気づかないとは…あの男、上忍のくせに耳悪いのかしら。
まあ好都合だ、と考えると影に隠れながらこっそりと着いていく。
柱の影から路地の壁へ。
姿勢を低くしながら、人ごみをかき分けて。
そのまましばらく里を歩いて行くこと、5分。10分。
気がつくと来たこともない裏路地の奥まで来ていた。
「…こんなとこまで来て何をしたいんだってばよ?」
「さぁ……。」
人気のない路地を進むこと数分。マスクの男は急に立ち止まった。
目の前には……。
本屋?
こんな場所に本屋があったなんて。全く知らなかった。
後でお花の本でも探しに来てみよう、と心の中で地図登録を済ませていると、男は一冊の本を手に取った。
気づかれないように少し近づいて柱の後ろに隠れ、よく見てみる。同じ本が10冊ほどカウンターに並んでいる。
どうやら、新刊らしい。
男はパラパラ、と数ページめくると、店員さんの方へ向かう。…あ、買った。
そして店から出てきた男は、うっほほーーーい!と奇声を発しながらぴょんぴょんと跳び跳ねて去って行った。
……なんだ、アレ…………。
「えぇ……」
「………。何の本かしら。見てみるわよ」
店に入ると、先ほど男が買って行った本が目にとまった。
どれどれ…と手にとって表紙を見てみる。男の人と女の人が写っている。
タイトルは……。
「イチャイチャパラダイス?何かしら、これ」
ページをめくってみると、文字の山が。どうやら、小説らしい。
文字の列を見て、うへぇ、と小さく呻くナルト。あんた、文字読むの嫌いそうだもんね……。
興味を失ったナルトをよそにそのまま読み進める。
肉棒。合体。何だかよく意味のわからない単語に首を傾げるが、気にせず読み進める。
パラ…パラ。
どうやら、男の人と女の人がベッドの上で何かを行っているらしい。
意味がわからないままなのも悔しいので、次のページ、次のページとめくっていく。
しばらく読んでいくと、先ほどのわけのわからない単語の意味が何となく理解できた。
肉棒。これはつまり、男の人の………!!
顔がかぁっと火でもついたかのように熱くなる。体が燃えているかのように火照る。
この本って……!
「なななっ、ななななななな」
…………えっちな本じゃないの!!!!
「な、な、な、な!!!」
「ど、どうしたんだってばよ!!サクヤちゃん!」
壊れたおもちゃのように同じ言葉が繰り返される。思考が正常に働かない。
ナルトが何か言っている、それすら脳が処理することができない。わけのわからないまま、自分が今何をしているのかもわからなくなり、ただひたすらにまくし立てた。
「なななっ!何でもないってばよ!!あは!あははははは!!!!!サスケェ!お前はオレのスペアだぁぁ!!!」
「サクヤちゃんが壊れた…」
しばらく経って、ようやく落ち着いてきた。…なんだかナルトが私から距離を置いている気がするんですが。
火照った体も、ようやく冷めて元に戻ってきた。
…元に戻ってきたことで、あのマスクの男に対して怒りがふつふつと燃え上がってくる。
何十分も追いかけさせられた挙句、こんなもの読ませて!
勝手に私たちが追いかけていただけなのだが、もちろんそんな事はこの時だけは頭にない。
イライライライラ、もー頭にきた!!
ばん!と本を棚に叩きつけるように置くと、大きな歩幅で店を出る。
「お、おい!サクヤちゃん!どうしたんだってばよ!」
そして、男が去って行った方向へ向かって力の限り叫んだ。
「エロおやじいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!死ねえええええええええ!!!!」