お久しぶりです。みくまりオウミといいます。え?お久しぶりじゃないだって?僕にとってはお久しぶりなんです。
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あの大蛇が朝起きた時目の前にいたため、僕は吃驚し過ぎて叫び声をあげて仕舞いました。僕の叫び声を聞いた父さんと母さんが跳んできて、僕の放り投げた布団によって身動きが取れなくなった白蛇を見て、父さんと母さんはおお慌ててでした。
後からきちんと話を聞くと、あの大蛇(今は、小さな白蛇)は大昔ご先祖様が白蛇に命じられて祠に封印したもので決して悪いモノじゃなかったみたいです。ここでちょっと気になる事が、なんで“命じて”封印させたのか。
これを白蛇に訊いたら、「水神としての力が落ちてきていたため。封印され、眠る事によって力を回復していた」そうなんです。そして何故僕が白蛇に封印を解くために頼まれたのかと訊いたら、「探してたら、すぐ近くに居たから」という何ともアレ~な答えが返ってきた。
そう言えば僕が図書館でみくまり一族について調べている時に、“水神を従える者がいなくなった”てきな事を読んでいた事を思いだし白蛇に訊くと、その水神こそが自分らしく本当は“水神を従える者がいなくなった”のではなく“従えるはずの水神が眠りについたから”が正解らしいです。
まぁ、そんなことは置いておいて。父さんと母さんは僕が白蛇の封印を解いた事に対して大喜び。僕の頭を撫で回し今日の晩ご飯は豪華にしなきゃ!!と2人して盛り上がっていました。その時、母さんが僕に
「水神様に、名前をつけてあげたらどう?」
と言われ、白蛇も尻尾を揺らしながら僕からの命名を待っていたので、
「……それじゃ、ハクジャで」
その後、父さんと母さんそして白蛇もといハクジャから「そのまんま?!」とツッコミを貰いました。ハクジャに至ってはいきなり指先に噛み付き、「名を改めよ!!」と言われたけれど名前は覚えやすいくてシンプルなのが1番と言えば、ハクジャが何故か肩を落とした様に見えた。肩無いのにね。
それから後は何時も通り、朝ご飯を食べて勿論ハクジャにも母さんがご飯をあげてた。生卵を。朝ご飯を食べ終わってから忍者アカデミーに行って、体術の時間に散々な結果を出して帰ってきたら何故か玄関のドアを開けた瞬間に、ハクジャが飛び掛かってきて「私は嘆かわしいぞ!!」といきなり説教が始まり、そこから僕が思い出すのも嫌な修行が始まった。因みにこの修行にはハクジャが言っていた秘術も入っていました。この秘術が会得するのに1番時間が掛かりました。
あ、なんでハクジャが嘆かわしいと言ったかというと僕の体術を眺めていたそうだからです。……………眺めてるんじゃなくて、せめて助言くらい頂戴よ。こう言ったらハクジャが思いっきり右手の人差し指に噛み付いてきた。普通の蛇とあんま変わんないのに、なんであんなに痛かったんだろう。
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ハクジャとの修行を始めて、5年たった今。僕は5年前よりは強くなっていると思いますが、相変わらず体術がド下手。ハクジャが前に僕に「お主は、うんどーおんちと言うやつか?」と訊いてきたのでその場で焼いて食ってやろうと思った僕は悪くない。そんな僕は今、大ピンチです。
「ほれ、どうした?このまま締め殺して仕舞うぞ?」
「うっ……グッ……」
僕の身体を締めあげるのは、“変化の術を解いた”大蛇ハクジャ。普通の民家よりも太いその胴体に、締めあげられ僕は今やっとの事で意識を保っている。
「どうした?このままでは、本当に死んで仕舞うぞ?」
「酷い……奴……」
僕がそう零せば、更にキツく締めあげるハクジャに僕は呻き声を零しながら、睨む事だけは忘れない。ハクジャに締めあげられている今、辛うじて動かせれるのは首と右の手首だけ。右手には苦無を持っているけれどこの状況で刺すことは難しい。でもこのまま締め殺される訳にはいかない。なので、
「水遁・水断波!!」
「?!」
口から吐き出されるのは直線状の水でできた水圧カッター。水は高威力で1ヶ所に勢いよく出されると、鉄をも切る事が出来る。それを人間が受ければ骨まで綺麗に切られるはず。やったこと無いから分からない。て言うかやりたくない。
水断波のおかげでハクジャの拘束が緩んだので、するりと抜け出す。ハクジャに僕の力じゃ掠り傷1つ付けられない。多分ハクジャはワザと僕を抜け出させたんだろう。表情が愉しそうだもん。
「オウミよ、お主にしては上出来じゃ。じゃが、後ろには気を付けるもんじゃぞ」
「え、?」
ドォン!!!!!という大きな打撃音と共に僕の身体は、森に生えている巨大な木に激突した。背中が痛い……。喉の奥から血が登ってくる。ゲホゲホ咳き込むだけで背中は痛いし、喉は焼けたみたく熱くて痛い。ゴシと口元を拭って、苦無を木に突き刺し手すり代わりにして立ち上がる。
「フムフム。木に激突する前に頭を庇ったかよいぞ。じゃが、木に激突する前に体勢を整え激突を避けんかバカタレ」
「五月蝿い……」
ぎゅっと苦無を構え、ハクジャと睨みあう。ハクジャはかなり大きいくせに動きが素早い。しかも蛇だからなのか隠れてもすぐに場所を特定されて仕舞う。確か蛇は舌で熱を感知し獲物を見付けるって本に書いてあった気がする。せめて、水の中に隠れるなりしなきゃな。
「来ないのなら、私から行くぞ」
「勝手にして」
速い。スピードもそうだけど加速が早すぎる。口を開いたハクジャの獲物にはなりたくないので、直ぐに避ける。避けて、避けて、避けきれずに左腕をハクジャによってくわえられて仕舞った。そのまま、ブーンと放り投げられ地面に背中を打ち付けるまえに体勢を立て直し、足から着地する。
「うむ。よいぞさて今日はここまでにするかの」
その言葉を待ってました!!脚が震え、後ろにパタンと倒れる。疲れきった頭は上手く働かなくて、だんだんと目蓋が重くなってくるけれど気力でどうにかして上半身だけ起こすと、普通の蛇と変わらない姿に戻ったハクジャが地面を這う様にして僕の元へとやって来た。
「今日も秘術を使わなかったの」
「あれ使うと、かなり疲れるんだよ。それに、ハクジャに使ったってあんまり効かないでしょ?」
「それもそうだが、やはり使わなければいざとなった時使えなくなっているかも知れんぞ?」
ハクジャの言葉にハクジャの頭を撫でる事と「ははは……」と曖昧に笑う事によってスルーした。ハクジャはチロチロと舌を出しながら僕の腕を伝い肩に登ってくると、
「今日の晩ご飯は確か、かれーじゃったかの?」
「……ハクジャ、蛇でしょ。カレー食べないでしょ。ハクジャが食べるのって基本、鳥類の雛とか卵でしょ。後ネズミとか小型の哺乳類」
「旨いぞ?」
卵は分かる。けれどネズミとか小型の哺乳類ってなんなんだよ。いくら水神でも食べ物だけはまんま蛇なんだなぁ。
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森の中、仮面をつけた男が2人。男たちの視線の先には、肩に白蛇を乗せた少年がいた。少年は白蛇と話をしているのだろう口がパクパクと動いているのが分かる。
「もう、いいだろう。退くぞ」
「何をしておる、小僧共」
「「?!」」
バッと男たちが辺りを見回すと、一際大きな木に生えている枝に体を絡ませながらシューシューと舌を出している、大蛇がいた。大蛇といってもオウミが戦っていた程の大きさの大蛇ではなく、胴体が太い所で30センチ程の大蛇だった。だがその大蛇の色は白くあの水神ハクジャと同じ色だった。
「前々から、オウミと私を監視して……不愉快じゃ。食われたくなければ、今すぐここから立ち去れ」
ハクジャの言葉には並々ならぬ威圧感があり、男たちは仮面の下にある額に冷や汗を浮かべた。それでも男たちは立ち去ろうとはせず、
「根は、貴様等が危険物資と成りうる可能性があると見て貴様等を監視している」
「特にあのオウミという餓鬼は、貴様の封印を解いたそうだな」
「それが、どうした?」
「「?!」」
ハクジャから発せられるのは、“殺気”。それもこの男たちの目を見開き、呼吸が乱れる程の殺気。
「よいか、小僧共……。オウミにもし手を出そう言うものなら、
食らうぞ」
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「?」
「どうしたのじゃ、オウミ」
「今、なんか……叫び声が聞こえてきた気がする……」
「気のせいじゃろう」
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「全く、耳はよいのかオウミは。やれやれオウミの方にいるのが影分身だと勘づかれていなければよいがな」
さて、どうしたものかこの亡骸は……。苦悶の表情で生き絶えている男たちを一旦変化の術を解いて本来の大きさに戻ってから呑み込み、死の森にでも行って吐き出してくるかの。
ゴクンと男を2人呑み込み、変化の術を掛けて中の男たちごと小さくする。時間は掛かるがまぁ、仕方ないからの。さて、行くか。
その日、2人の根の忍が行方を眩ませたという。これでもう6人目になるという。