何だか里中がソワソワしている様に感じます。母さんも、ワクワクしながら「オウミも、後もうすぐなのよねぇ」と、何処かしんみりした感じで言っていたのを覚えています。
「それはお主、中忍になるための試験が始まるからじゃろう?」
「え、?あれそうだっけ?」
「忘れておったのか?」
ハクジャの言葉によって、イルカ先生の言っていた事を思い出しました。確か、アカネちゃんが「楽しみ」って言いながら、苦無を磨いていました。そこだけ見るとやまんばっぽいよね。
「てことは、ナルト兄ちゃんたちも出るのかな?」
「さぁの……訊いてみればどうじゃ?」
◆
ナルト兄ちゃんたちを見付けました。何故か木の葉丸君まで居ます。いえいえ、そんな事はどうだっていいんです。あの……ですね。ナルト兄ちゃんたちの前にいる人たちって……。
「……………他国の忍じゃな」
「……………だよね」
何やってんのぉぉぉぉぉ?!ナルト兄ちゃんたち?!まさか喧嘩売ってるの?!他国から中忍になるためにせっかく来たのに、喧嘩売るだなんて!!アワアワしながら、ナルト兄ちゃんたちを見ていると物凄い隈がある赤髪の男の子とパチリと目が合って仕舞った。これもしかしてヤバい?!
「……其処にいるのは、誰だ」
あぁ?!皆一斉に此方見てきた!!どうしようハクジャ!!
「出、出ていくしかないじゃろう?!」
「じゃ、じゃあハクジャ先行って!!」
肩に乗っていたハクジャの胴体をガシリと掴み、ポイッと放り投げる。ハクジャがシューと威嚇してきたけど僕知らない。ペシッと地面に落ちたハクジャはシューシュー言いながら、僕の方をジトッと見詰めてきた。やめて、やめて。
「あ、お前!!オウミんとこの白蛇じゃねぇか!!」
「あ、あれ?本当だ……てことは……?」
さ、今のうちに逃げようか。
ガ ブ リ
へ、?恐る恐る足元を見ると、口を大きく開き僕の脚に噛み付くハクジャの姿が。や、ちょっ、それより、
「いったぁぁぁぁぁ?!」
ガシリとハクジャを掴み、目の前に持ってくるとハクジャは誇らしそうな顔をしながら「逃げる方が悪い」と言い放ってきた。
「ハクジャ、人の脚に噛み付くだなんて……」
「それよりもホレ。良いのか、狐の小僧に何か訊きたい事があったのではないか?」
今、それ言う所じゃないくらいハクジャにも分かってるでしょ?!
「……白蛇……」
あぁ、何か本能的に危機を感じてます!!それは多分、ハクジャも同じ事みたい……。何か物凄い隈がある赤髪の男の子が僕たちをジッと見てくる。何故かそれだけで危機を感じるのはなんで?!
「た、狸じゃ」
「え、?狸」とハクジャに聞き返そうと思ったら、赤髪の男の子とその後ろの人たちから物凄い殺気が放たれた。此処まで本格的な殺気を当てられたのは初めてで、殺気だけで脚がすくんでしまう。けどそんな僕と違ってナルト兄ちゃんたちは、しっかりと前を見ている。
「オウミよ、大丈夫か?……………まさか、狐と狸が鉢合わせるとは……これほど運が悪いとはな……」
ハクジャが何か言っているけど、僕は今この場に立ってるだけで精一杯なんだよ……。木の葉丸君はへたりと座り込んじゃったみたいだけど……。
「お前」
物凄い隈の赤髪の男の子が殺気を放つのをやめると、その後ろにいた女の子と男の子も殺気を放つのをやめてくれた。あのままだったら僕も木の葉丸君と同じになってたかもしれないしね。
「お前!!」
「え、?え、?僕、ですか……?」
「そうだ、名前は?」
へ、?な、名前、これは名前を訊いているんだよね?名前を名乗ればいいんだよね?
「み、みくまりオウミと言います!!」
ちょっと、噛んじゃったけど名前はちゃんと名乗った。物凄い隈の赤髪の男の子は、ジッと僕を見ると、
「お前、案内しろ」
何をですか?!何処までですか?!
「おい、待つってばよ!!まだ、話は終わってねぇってばよ!!」
「ナ、ナルト兄ちゃん、この人たちと何かあったの?」
ナルト兄ちゃんに訪ねると、「おう」と返事が返ってきたため話を聞いて見ることにしました。
◆
「……………それ、ナルト兄ちゃん悪いじゃん。ぶつかったのに謝らないだなんて……」
話を聞く限り、物凄い隈の赤髪の男の子とその仲間の人たちは悪くはないと僕は思います。ジトッとした目でナルト兄ちゃんを見詰めると、ナルト兄ちゃんの目があっちこっちへ泳ぎます。
「……後で、ちゃんと謝るんだよ!!ナルト兄ちゃん!!」
「う、分かってるってばよ……」
うんうん。ちゃんと反省したっぽいし、いいかな?
「ナルト兄ちゃんが悪いのに、ごめんなさい」
きちんと謝って、物凄い隈の赤髪の男の子以外からは許してもらって、この人たちが泊まる宿まで案内する事になったので、サスケ兄ちゃんとサクラ姉ちゃん、木の葉君に手を振って前を歩く。
◆
「……なんか、気まずい」
「……私に訊いてくるな」
宿まで案内している間、後ろを着いてくる3人の人たちはずっと無言。とくに大きな扇子と、黒子みたいな格好をした女の子と男の子はずっとピリピリしてる。
「あの……えっと3人は、兄弟か何かですか?」
僕が何気なく問い掛けたら、ハクジャが「地雷を踏んだな」と何処か遠い目をしながら言ってきた。何故地雷?と思ったけれど直ぐにそれは分かる事になるのです!!
「何で俺たちが、兄弟だって思ったんだじゃん」
“じゃん”?ナルト兄ちゃんもそうだけど、何か不思議な語尾をつける人多くない?
「あ、いえただなんとなぁく、勘で兄弟っぽいなぁって……」
あ、何か物凄い隈の赤髪の男の子(長いから赤髪にしよう)の雰囲気がまるで氷みたいに変わっていった。あ、これ地雷踏んだ。
「……………コイツらを兄弟だと思った事はない」
ギラギラ光る目は、暗闇に光る動物の目みたいでさっきハクジャがこの子を見て「狸だ」って言ったのが分からなくもない。ハクジャと長い事一緒にいるせいなのか、感覚は鋭くなっている感じはする。主に、危機感が。
「僕、兄弟居ないのでよく分からないんですけど……
少なくとも1回くらいは、兄弟だと思った事はあるんじゃないですか?」
その言葉に更に気を悪くしたみたいだけど、何もしてこないので宿に向かって歩く。後ろからチクチクと殺気を当てられてるけど無視します。
「さて、着きましたよ!」
案内を終えて、今来た道を戻ろうとすると後ろから「ちょっと、待て」と女の子の声が聞こえてきた。振り返ると、背中に大きな扇子を背負った女の子が背を屈めながら、「悪かったね」と謝ってきた。
「?何がですか?」
「我愛羅の殺気の事だよ……。私たちも当てて仕舞ったし、ごめんよ」
あぁ、それなら。
「平気ですよ。ハクジャが、ちょっと緩和してくれたので」
「え、?」
「それじゃあ、中忍選抜の試験頑張ってください!!」
今来た道を戻っていく途中、ハクジャが「あれは言ってはならんかったじゃろう」と言っていた。