無限界廊の異端児
第0話 出会い・お仕置編
人は、現実を受け入れられない時がある。
「ポンポン、ポポン、ポンポポポン。ポンポン、ポポン、ポンポポポン……」
鬱蒼とした森の中で小一時間奇天烈な発声練習を行う少年は、呆けたようにひたすら声を出し続ける。
男には、自分の置かれている状況は理解できていた。
しかし、その状況にどう対処したものかさっぱりわからないのだった。
「ポンポン、ポポン……」
故に魂から漏れている囁きを口ずさむしかなかった。
そんなこんなで、さらに半日がたって疲れた少年は腰掛けていた切り株から降りて地面に寝そべっていた。
「ちょっとちょっと、そこの若人ぉ。こんなところで寝てたら風邪ひいちゃうわよぉ?」
うとうとし始めた少年に独特のテンポをもった口調の女が近づいてきた。
少年は、げんなりした表情を隠すでもなく呟いた。
「酒くっさっ」
女は、酒気そのものを纏ったような匂いだった。
酒に強くない少年は、酒気に敏感でこれほどの酒臭さは脳を蕩けさせるには十分だった。
「いきなり失礼な子ねぇ」
そう言いつつもまったく意に返した様子のない酒女。
「それで。君はどこの誰なのかにゃ~?」
酒女の吐く息を吸い込まないように少年は鼻を塞ぎつつ立ち上がった。
少年と酒女の身長差は頭一つ分ほど。
上目遣いで酒女を見上げた少年は軽い驚きと共に問い返した。
「俺のこと知らないの?」
「そりゃあ初対面なんだから知らないのは当たり前じゃない。あ、わたしの名前は、メイメイ。君はなんてぇの?」
陽気な酒女の言葉に心底「臭い」という顔の少年。
「スポポビッチャリーノ・天々だ」
物凄く真面目な表情で名乗りを上げた。
「…………………君のお名前はなんていうのかなあ?」
「ごめんなさい、ごめんなさい、生まれてきてごめんなさい」
酒臭い笑顔のままの酒女に頭を鷲掴みにされて持ち上げられた少年は、泣きながら謝った。
メイメイは、笑いながら怒るタイプであった。
店に連れてこられるまで、メイメイの引き攣った笑い顔を見ていた少年は怯えているしかなかった。
始めはアホなことを言い出したことで怒ったが、少年が空腹に悩まされているらしいことを知ると食事を用意してあげた。
「やっぱり、ご飯は白飯が一番だ」
「何? 君って、鬼妖界出身……なわけないのよねえ。君は名も無き世界から来ちゃったわけかぁ、困ったわねえ」
少年の素性について大体の見当をつけていたメイメイは、どう説明してよいものかと悩む。
自分の占いにまったく映ることのない存在が目の前に現れ、その少年は名も無き世界からやってきた。
既にメイメイの耳に届いている新たな誓約者は、まだまだ未来のはずだった。
この島で起こる戦いには、別の者が招かれるはずだった。それにしても時期が合わない。
名も無き世界の住人は、他の四界の住人たちと違ってリィンバウムのことも召喚術のことも知らない。
しかも、目の前で食事をする少年の年の頃は、12、3歳といったところ。
この島でやって幾分には、問題ないが元の世界に返すとなると難しくなる。
メイメイであれば、召喚された者を元の世界に還す『送還術』も可能である。
しかし、名も無き世界への送還は、ほかの四界とは事情が違う。
名も無き世界へのゲートは、非常に不安定であり、よほど強大な魔力を持った者ではないと道半ばで消滅してしまう可能性もある。
この島にある『喚起の門』によって招かれた名も無き世界の住人は、二人目だが、子供となると話は変わってくる。
数ヶ月前に召喚されたゲンジと言う名の名も無き世界から来た老人は、元の世界への未練もないと達観していた。
だが、この少年は
「あ、俺は、元の世界に帰るつもりはないので悪しからず」
「にゃ?」
ご飯をパクパク食べながら平然と言った少年にメイメイは驚く。
「ちょっとちょっとぉ。自分がどういう状況なのかわかってる?」
あり得ないと思いつつも、少年に確認を取る。
「この世界は、リィンバウム。俺の世界は、リィンバウムでは、名も無き世界って呼ばれてて、リィンバウムを取り巻く四界とは別のよく分からん世界、でしょ?」
すらすらと述べる少年にさしものメイメイも唖然とした。
「貴方、何者なの……?」
酒臭さは変わらないものの真剣さの増したメイメイに少年も箸をおく。
「見た目は、少年? 中身は、小作人? しかしてその実体は……トリッパ~?」
すべて疑問系で自称した少年は、満足したように食事を再開した。
パクパクにゃにゃにゃ、パクパクにゃにゃにゃ。
食事中の少年とぷるぷる震えが止まらないメイメイ。
「ぷふぁ~、ご馳走様でした。もうお腹一杯だ」
「にゃは、にゃははっ……にゃはははははっ♪」
満腹感に笑顔の少年と不可思議なオーラを滲ませて笑うメイメイ。
「もきゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
首を切られる鶏のような切ない悲鳴が秘境の島に響いたのだった。
注意+あとがき+α
本SSは、最強オリ物です。
ご都合主義です。
申し訳ありません!
と、いうわけで、本作は現実→サモンナイトです。
サモンナイトシリーズをやっていて思ったことは、いくらメインバトルで圧勝してもストーリー的には辛勝若しくは引き分けの展開。
シナリオ上仕方ないこととは言え、覚醒イスラやオルドレイクをラグナレク一発! ウィゼルをキュウマが雑魚と一緒に居合いで瞬殺!
そんな戦闘内容の後に、通常のストーリー展開が進む。
もし、圧勝したら違った展開になるとかいうifのストーリーもあったら面白そうではないか?
そんな考えのもとで発生したのがこのSSです。
原作の雰囲気をぶち壊すこと間違いなしな裏ルート!
無限回廊にて鍛えられ、最強クラスの武器を入手し、本編に殴りこみ!
ごめんなさい、ごめんなさい、調子にのってごめんなさい!
本日の主人公パラメータ
Lv.1
クラス-来訪者
攻撃-縦・短剣 横・杖
MOV3、↑2、↓3
防具-ローブ(表面ナイロン100%、裏地)
特殊能力
俊敏、偽眼力、へたれ、ダッシュ?、悲鳴、アイテムスロー、命乞い
召喚クラス
機C、鬼C、霊C、獣C
本日のメイメイパラメータ
Lv.不明
攻撃-縦・刀
特殊能力
笑顔・恐、折檻・絶、にゃはは120%
オリ特殊能力解説
<主人公>
俊敏-逃げ足。
偽眼力-レベルが近い敵が襲ってくる。レベルが離れている敵からは無視される。
ダッシュ?-敵から離れる場合のみ移動距離倍増。
悲鳴-弱者に恐怖、強者に愉悦を感じさせる警報。
命乞い-レベルが20以上離れていれば見逃してもらえる。
<メイメイ>
笑顔・恐-笑顔で怒ることができる。にゃははっ!
折檻・絶-悪い子はお仕置するわよ?
にゃはは120%-場を和ませる、若しくは戦慄させる。