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No.28374の一覧
[0] サモンナイト・クラフトソード物語 ~延々の眠り病~[Hank](2011/06/15 21:50)
[1] サモンナイト・クラフトソード物語 ~延々の眠り病~ No.2[Hank](2011/06/15 21:51)
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[28374] サモンナイト・クラフトソード物語 ~延々の眠り病~
Name: Hank◆2cb962ac ID:fb7fc486 次を表示する
Date: 2011/06/15 21:50
――――私は・・・素顔を見られるのは好きじゃないけど、嫌いじゃない。


-----------------------------------[第一幕:夢ノ中デオ休ミ]-----------------------------------------


「どうした? 今朝から随分と気分が悪そうだぞ?」
 彼の名は【ラグズ】
元の姿は”ラグズナイフ”という武器の姿だったが、どういう訳か魂を持ち始めて擬人化の能力を身に付ける。
それ以降は、自分を作った主のサポートをしている。
「うん・・・どうしてだろうね・・・眠気も少しする・・・」
 彼女の名は【聖騎士】
名前はコードネームであり、とある異世界に存在する組織のメンバーの一人。
サモンナイトの世界に来たのは、ある人物を倒す為の任務でやってきた
普段は甲冑や鎧などで身を隠している、その理由は色々と複雑な理由を持つ。
主な理由は女として見られたくないのがあり、普段は男口調でいる
「大丈夫か? 大会で優勝して錬聖としての仕事が山積みにやってくるからな・・・」
「もう少し休んだらどうだ? その調子じゃあ良い武器も作れないだろう」
「そうですよ、セイさま!」
 二人の間から出てきた女の子・・・彼女の名は【シュガレット】
人型の護衛獣であり、幽霊と同じ分類に入る者である
主に戦闘でのサポートや武器の生成での力になる
少し嫉妬癖が強いのが玉に瑕。
「無理をなさらないでください・・・妻である私は心配で心配で・・・」
「あはは・・・気遣いありがとうね、シュガちゃん」

「アニキー? いるー?」
 そこへひょっこりと部屋の出入り口から顔だけ出してきた子が一人。
名は【ラジィ】
男の子のような格好をしているが、実は女の子。
銀の匠合の親方とは母親の兄・・・つまり伯父という関係である
夢は自分が住んでいる『剣の都ワイスタァン』を『花と剣の都ワイスタァン』にすることと・・・
自分が好きな人とずっと一緒になる事が夢である。
「ああ・・・ラジィ・・・何か用・・・?」
「アニキ? どうしたの、顔色が随分と悪いけど・・・」
「うん・・・ちょっと・・・しんど・・・い・・・」

”パタリ。”

 とうとう聖騎士は倒れてしまった
「おい! セイ!」
「セイさま!」
「アニキ!」


………なんで・・・なんで、わたしを・・・


………こんなにも・・・みにくくて、ヒトゴロシのわたしを・・・


………アイシテクレルノ?


「うっ・・・ここ・・・は・・・?」
 聖騎士は目を覚ました。
そこは真っ白な部屋だった・・・
「えっ・・・と・・・? 確か、ラジィが来て・・・それから・・・」
 聖騎士は「う~ん・・・」と悩んでいるそんな時だった。
背後から、殺気を感じた。
「誰ッ!?」
 聖騎士はサッと後ろを振り向く・・・
そこに居たのは、真っ黒な人の形をした”何か”だった。
その”何か”は声ともならない声で何かを喋っている・・・
(こういうのって、ゲームとかアニメだと敵フラグだよね・・・?)
 聖騎士は己に秘めた能力・・・『トレース』を使って、剣を出した。
剣の名は”エクスかリバー”・・・約束された剣である。
(それに・・・さっき私に向けて出したあの殺気・・・確実に私を敵視してる・・・)
(どうにもこうにも交渉なんて通用する相手じゃないし・・・仕方ない・・・)
「何者かは分からないけど、私に殺気を向けたってことは戦いを挑むって事で良いよね!?」
 真っ黒い”何か”は、グチャグチャと気持ち悪い音をたてながら聖騎士に向かって襲い掛かってきた!

「やっぱり、さすがに交渉とか無理だよね!」
 聖騎士は剣を振るった。
剣は黒い”何か”の肉体と思える物に刃を通すと、そのまま切り裂いた!
しかし・・・聖騎士自身は斬ったという実感が全然湧かなかった
(おかしい・・・斬ったのに・・・まるで”影でも斬った”かのような感覚だ・・・)
 黒い”何か”は腹部だと思える中央の部分を斬られ、上半身が後ろに倒れて海老反りのような感じになってしまっていた
こうなってしまっては、起き上がることもままならないと思った・・・その時だった!

”グチョグチョ・・・”

 何と・・・先ほど斬ったはずの部分から、”上半身が生えてきた”ではないか・・・!
これには、聖騎士も「えっ!?」と驚きを隠せずにいた
「うっそ・・・こいつ・・・スライムの一種? いや、亜種の分類?」
 しかし、少し冷静に考えてみるも・・・今まで地下迷宮で戦ったスライム達は、大抵は斬られたらそのまま朽ちるはずだった。
だがしかし、この黒い”何か”は、そのスライム達とはまったくの別格であり・・・斬られたらその部分から再生するという異常なる能力を持っていた!
「こいつは・・・少し、きっついかもね・・・」
 聖騎士は改めて剣を強く握り締め、黒い”何か”に向かってもう一度攻撃を仕掛けに行く!


-----------------------------------[①:舞台は移って現実世界では・・・]-----------------------------------------


「アニキ・・・まだ眠ってる・・・」
「今は安静にするのが一番だ。」
「セイさま・・・」
 三人は突然倒れた聖騎士をベットに寝かせ、安静にさせていた。
「セイ! 大丈夫!?」
「おい、セイが倒れたって本当か!?」
 そこへ、二人の少年と少女が入ってきた。
少年の名は【ヴァリラ】、聖騎士のライバルのような存在らしい・・・
少女の名は【サナレ】、同じく聖騎士のライバルのような存在・・・
「シッー! アニキは今、安静にしないといけない状態なんだから!」
「ラジィ、お前も十分五月蝿いと思うぞ?」
「そろそろ、ブロンさんがサクロさん達を呼んできてくれる頃でしょう・・・」
 そうシュガレットが言っていると、眼鏡をかけた男がやってきた。
男の名は【ネクロ】
どうやら、銀の匠合の頭領であるブロンの知らせを聞きつけやってきたようだ。
「セイくんの容体は?」
 シュガレットは首を横に振った
「分かりません・・・ただの疲労による睡眠不足だと良いのですが・・・」
「ふむ、私はそこまで医学に詳しくない・・・医者を呼んでこよう」
「お願いします・・・」
 シュガレットは元気がまったく無さそうに見えた
無理もない、あれほど大好きだった人が倒れてしまって心配でいられないのだから・・・
「心配するなシュガレット、俺を作った職人がそう易々とくたばるものか」
「そうだよ! アニキは世界一強いんだから!」
「……そう・・・ですね。」
「しかし・・・本当に疲労か睡眠不足による体調不良ならまだ良いが・・・」
「そうね・・・ここ最近、セイは頑張ってたから・・・」
「皆の為にセイなりに頑張っていたのさ・・・何時も自分に言い聞かせるように言ってたよ」

『大事な友達の為にも頑張らないと!』

「……まったく、お人よしにもほどがあるな・・・お前は・・・」
「でも、それがセイの良いところでしょ?」
「うん、アニキは本当に凄い鍛聖になれるよ!」
 皆は、聖騎士が起きるのを今か今かと心配そうな顔で見ていた


-----------------------------------[②:そんな聖騎士はというと・・・]-----------------------------------------


「まだ倒れないかぁ~! しつこーい!」
 あれから暫らく黒い”何か”を斬って斬って切り刻んだが、まるでマトリョシカ人形のように生えていく・・・
だんだん聖騎士のイライラも有頂天に達しそうになっていた
「こういった奴って大抵は何かの倒し方があるよね・・・」
 聖騎士は足をタップしながら「う~ん・・・」とじっくりと考える
当の本人である黒い”何か”は散々斬られまくってしまったのだろうか・・・身動きすらしなくなっていた
しかし、それでもまだウニョウニョと動いている・・・
「ダメだ・・・ぜんっぜん分からない・・・縦に斬っても横に斬っても無理だったし・・・」
 聖騎士は「ふぅ・・・」とため息をつく、そして・・・剣を構えた
「だったら・・・その全身を消し去るほどの一撃を決めれば良いだけのこと!」
 聖騎士はグッ・・・と握り締めると、エクスカリバーが光りだした!
セイバーが得意とするあの一撃を放つために・・・!
「この一撃・・・受けきれるか!!」

――――”約束された勝利の剣 (エクスカリバー)”!!!

 強大なる斬激が黒い”何か”を包み込んだ・・・
それと同時に『〰〰〰!!!』声にもならない悲痛なる叫びが一瞬だけ聞こえた

「我が聖剣の名―――しかとその身に刻むことだ。」

 その時、白い世界は一気に光に包まれていった・・・


-----------------------------------[③:目を覚まして]-----------------------------------------


「ん・・・」
 聖騎士は目を覚ました。
「セイ! やっと目を覚ましたか!」
「あれ・・・? 眠ってた・・・のか?」
 聖騎士は上半身をムクリと起き上がらせた
異様に体が嘘みたいに軽い・・・寝る前はあんなに体がズッシリと重かったのに・・・
「良かった~・・・ただの寝不足だったのか~・・・」
「まったく・・・余計な心配を掛けさせやがって・・・」
「あはは・・・ごめんごめん・・・」
(でも・・・あの夢は何だったんだろう・・・夢にしては実態感があったし・・・)
 聖騎士は自分の手をグッ、パ、グッ、パと握ったり放したりして手の調子を試していた
(うん、手足の力は正常。 体は・・・さっきとは違って軽くなった・・・)
「大丈夫? アニキ・・・」
 ラジィが顔を近づけてくる
「ん? うん、大丈夫大丈夫!」
「あんまり無茶しないでよ?」
「そうですよ、セイさま! シュガレットはどれだけ心配したと・・・」
「あー悪かった、悪かったって・・・」
「しかし・・・こんな非常時でもその甲冑は外さないんだな」
 ヴァリラは聖騎士の甲冑について話を始めだした
それを聞いた聖騎士はピクリッと反応した・・・
「い、いやぁ~・・・甲冑が無いとどうも調子が出ないっていうかなんというか・・・」
「そ、そうだよねー! 甲冑あってこそのアニキだもん!」
 ラジィも少し焦ったかのように話をもみ消そうとした
「ふーん・・・まぁ良いんじゃない? 本人がそうだっていうんだったら」
「ん・・・うーん・・・」
 サナレは納得したように見えたが、ヴァリラは未だに納得がいかないような顔をしていた
「さて・・・そろそろお偉い方が来る頃だろう。 俺達は一旦席を外そうぜ」
 ラグズは全員を一旦部屋に出るように指示をする
「そういえばそうだね。」
「そうね、それじゃあ私たちは下の階で待ってましょ」
「シュガレット、お前も席を外せ。」
「えっ? でも・・・」
「いいから。」
 ラグズはシュガレットを無理やり部屋から出した。
皆が部屋から出て行き、最後に出ようとしたラジィが振り向き、聖騎士を見つめた
「……ありがとう、ラジィ。」
 多分、兜の下の聖騎士の顔はすっごい綺麗な笑顔を出していると思われる・・・
そんな気がラジィはした
「うん・・・それじゃあ、また後で」
 ラジィはそのまま部屋を後にした。
「……約束・・・したもんね。」


-----------------------------------[④:あの日、約束した事。]-----------------------------------------


 それは・・・大会の決勝戦を終了してラジィと二人っきりになった時の事――――

「あのね……。……ボクね・・・いつかきっと、黒鉄の鍛聖さまのおヨメさんになりたいんだ・・・」
「……なーんて! 駄目・・・かな?」
 ラジィの告白を聞いた聖騎士は少し固まりながらも口を開いた
「ラジィ・・・お願いがあるんだけど」
「な、何?」
「少し、目を閉じてくれる?」
「えっ・・・い、良いけど・・・」
 ラジィは少しドキドキしながらも目を閉じた

”……カチャ、ガシャ、ドシャ……”

 なにやら重たい物を地面に落とすかのような音が聞こえる
(アニキ・・・もしかして、甲冑を脱いでる・・・?)
 そして音が止み、コツリと一つだけ足音が聞こえた
「もう目を開けて良いよ。」
 ラジィはゆっくりと目を開けた・・・

――――綺麗な黒の長い髪が風を受けながらキラキラと舞っていた。

 そこには、まるで童話に出てくるお姫さまみたいに美しい女性の姿が映った・・・
そこは先ほどまで男だと思っていた聖騎士が立っていた場所。
「アニキ・・・いや、アネキ・・・?」
「どう・・・かな? ラジィみたいに綺麗?」
「えっ、あっ・・・う、うん! びっくりするぐらい綺麗! お姫様みたいだよ!」
「ふふっ・・・ありがとう。」
 聖騎士は柔らかい笑みを見せた。
(本当にびっくりしたぁ~・・・アニキが・・・まさか、女の人だったなんて・・・)
 ラジィはチラッと聖騎士を見る
「?」と聖騎士は少し首を傾げた
(か、可愛いぃぃーーー・・・!! 僕なんかよりも数倍美人だよ!)
「……この姿はね、普段は誰にも見せないの。」
 聖騎士は少し暗い顔をしながら口を開けた
「女だという事を知られたくないっていう理由もあるけど・・・」
「こんな・・・こんな醜い顔を人前で見せれないから・・・」
「そんな・・・! アニキは綺麗だよ! 本当に! お姫様みたいに・・・!」
 ラジィは聖騎士の台詞に素早く反応するように大きな声で喋った
それでも・・・それでも、聖騎士は寂しく悲しい顔をしていた・・・
聖騎士は一回目を閉じ、何かを決心したかのように目を開けた。

「私・・・人殺しだから・・・」

「えっ・・・?」
 聖騎士の突然の言葉にラジィの思考が一瞬止まりかけた。
「私ね・・・こんな醜い顔だから、周りの人か虐められてたんだ・・・」
「それが何年も続いてね・・・とうとう親からも虐待を受けちゃって・・・」
 辛い過去を話している聖騎士の顔色が、だんだん悪くなっていく・・・
「それで・・・私・・・皆を・・・この手で・・・」
 聖騎士はポロポロと泣き始め、言葉も弱弱しくなってしまった
「アニキ・・・もう喋らなくてっていいよ・・・いいから・・・」
 そんな泣いている聖騎士をラジィはギュッと抱きしめた
聖騎士は泣きじゃくり、同じくラジィを強く・・・強く抱きしめた
暫らくして、聖騎士の泣きも収まった・・・
「……ごめん、ラジィ・・・」
「いいよ、でも・・・驚いたなぁ~! アニキが実は女の子だったなんて・・・」
「うん・・・それで・・・ラジィにお願いがあるの・・・」
「何?」
「私が女だっていうの・・・黙っててくれる?」
「えっ・・・うん、いいよ? でも・・・なんで? 皆、アニキが女だって知っても驚くだけなのに・・・」
「まさか、さっき言った醜いって理由?」
「それもあるにはあるけど・・・やっぱり、皆には私が男だって思わしておきたいの」
「それに・・・女だって知ったら、皆・・・がっかりするだろうし・・・」
「そんな! アニキが女だからって僕はちっともがっかりなんてしてないよ!」
「ヴァリラだって、サナレだって、みんなみんな!」
「それでも怖いんだ・・・私・・・弱虫だから・・・」
 それをいった瞬間、ラジィは聖騎士の近寄った

――――一瞬、唇に柔らかい感触が伝わる。

 ラジィは自分でやっときながら赤面になってしまう
聖騎士は自分の唇に指つけて先ほどの感触を把握しようとした
「ラジィ……」
「アニキは・・・アニキは女でも僕の大好きな人なんだから! そうやって自分を責めないで!」
 その言葉を聞き、赤面になっているラジィを見て・・・彼女は笑った。
「ありがとう、ラジィ。」


-----------------------------------[④:事件?]-----------------------------------------


 聖騎士が回想に浸っているとそこへ数名の人間が入ってきた
一人は老人、もう一人は美しい女性・・・他にも色々と集まってきた
「やぁ、セイくん。 倒れたと聞いてびっくりしたよ」
「リンドウさん・・・わざわざ来ていただくなんて・・・」
「構わんよ、君は鍛聖の一員だ。 それにわしとの仲もあるじゃろう?」
「そうでしたね、ありがとうございます」
「しかし、幾ら鍛聖になったけれども無茶をしてはいかん。」
「己の肉体は己が見ぬとな、武器もそうじゃ」
「……はい。」
 そこへ先ほど来ていたサクロが医者を連れてやってきた
「むっ・・・皆さんも来てましたか」
「おぉ、サクロか・・・医者の手配は済んだと見えるな」
「えぇ、随分と準備に手間が掛かりましてね」
「すみません・・・どうも出張とかには慣れていませんでして・・・」
 サクロが連れてきた医者はよく病院で見かける医服を着ており、30代ほどの背格好をしていた
顔つきは優しそうな青年男子の顔つきをしていた
「さて、早速患者を見たいのですが・・・」
「ベットに居る子です。」
「はい分かりました、それでは・・・診察を行います。」

――――診察は数分ほどで終了した

「ふむ・・・」
「どうですかな、お医者殿」
「う~ん・・・別に大した異常は見られませんね、至って健康なる健全な肉体です」
「それじゃあ、ただの疲労か寝不足で倒れただけかぁ・・・」
「うん、多少疲れの症状が出ていたからそうだったんだろうね」
「その甲冑を外していただければ、もう少し診察ができるのですが・・・」
「あっ、それはご勘弁ください。 私、あんまり人前に姿を見せたくないので・・・」
「それじゃあ、我々は外に・・・」
「いえ、誰にも見られたくないんですよ」
「うむ・・・何故かね?」
「……内緒です。」
 甲冑の下の聖騎士の顔は何処か悲しい顔になっていた
「まぁ、大した異常が無いのならばそれで良いでしょう・・・無理に診察すると医者道に反しますからね」
「うむ、ありがとうございますな、お医者殿」
「いえいえ・・・まさかリンドウ様をこんなマジかで見れるとは思いもよらなかったですよ」
 そう言いながら医者は一礼して部屋を出て行った。

「うむ、今は体調を直すことを専念せねばならぬな」
「そうですね」
「二日ぐらい休みを取れば何とか体も元の状態に戻るでしょうね」
 美しい女性の人が話しかけてきた
名は【コウレン】
「今日、ここに来たのは貴方に教えておかなければならない事があったのよ」
「貴方が倒れたっていうから、そのお見舞いついでって感じね」
「ついでですか・・・」
 聖騎士はコウレンの言葉を聞いて苦笑する
「実は・・・最近、奇妙な事件が起きているのよ」
「奇妙な事件?」
 コウレンが言うのは以下の内容だった

・眠った人間が突然、発狂したかのようにもがき苦しみだした

・苦しみながら「来るな」 「助けて」等、悲痛な叫びと助けを求める唸り声を延々と発し続ける。

・そして、暫らくしたら突然起き上がる。 その間にうなされた人間は全身汗だくになっていた

・健康状態を調べてみるが、まったく異常が見られなかった。

・それが、ここ最近になって数件ほど増えてきている

「私の考えでは、奇病か何かだと思っている」
「わしもそう思ったが・・・さすがにこんな奇病があるとは思いも……」
 その時だった
「『来るな』・・・と言っていると言う事は、うなされていた人は何かに追われていたんですね・・・?」
 聖騎士がコウレンの言う内容の中にあった「来るな」とうなされているという事に何処か引っかかるものを感じていた
「えぇ、確かに『来るな』と言ってたそうよ」
「何か心当たりでもあるのかい?」
 サクロが聖騎士に質問をする
「……実は――――」
 聖騎士は先ほど見た奇妙な実感がある夢の内容を話した。
それを聞いた鍛聖達は難しい顔をしていた
「リンドウ様・・・」
「うむ、セイ。 キミは暫らくじっくりと休むと良い」
「ですが、まだ頼まれた品が・・・」
「それは別の者に手配をさせよう。 突然の奇病に侵されているとなれば無理をしてはならぬ」
「……分かりました。」
 聖騎士はション・・・と頭をガックリと下げてしまった
「そう落ち込まないで、今回の件はさすがに予想外の事態よ」
「その通り、我々はいち早い対処を取らねばならぬ」
「セイくんは、その間は体を休めなければならない。 キミは少し無茶をしすぎだ」
「それでは、我々はこれから会議を行う。 キミはここでじっくりと体を休ませなさい」
「……はい。」
 鍛聖達は、そのまま城の方へと帰っていった


-----------------------------------[⑤:誰が世話をする?]-----------------------------------------


 鍛聖達が出て行った後、聖騎士はバスッと枕に顔を埋めこませた・・・
(療養生活かー・・・考えてみれば初めてだなー・・・沢山の人に体の事で心配されるのって・・・)
 そんな事を考えながら、聖騎士はゆっくりと目を閉じて眠りについた・・・

……一方、下の階では・・・

「う~ん・・・」
 ラグズは悩んでいた
「だーかーらー! 皆で交代しながらアニキの世話をするっていうのはどうかって言ってるの!」
「でも、それじゃあセイが申し訳ないと思うでしょうが!」
「いやいや・・・誰か一人だけが世話をするのってーのも申し訳ないと思われるんだが・・・」
「やはり、妻として私が!」
「だーめー!! アニキは僕が世話するの!」
 そんな感じで誰が聖騎士の世話をするのか・・・モメていた
「まったく、お前達はガキか・・・俺は降りる。」
「とか言っときながら、少ししたらお見舞いに行く気でしょ?」
 サナレはヴァリラが考えていた事を見通していた
それを聞いたヴァリラは少し赤面になった
「なっ・・・! そ、そんなわけないだろうが!」
「あー! ヴァリラ赤くなってる!」
「や、やかましい!」

「いや、本当におめーらやかましいぞ」

 ラジィ達が色々ともめている所にやっとブロンがツッコんできた
「セイの奴の世話をするのは悪い事じゃねぇが、周りの奴の事を考えろ。」
 そう・・・ラジィ達のもめ事が大きすぎて周りに居た弟子達が作業を中断してしまっていた
「あっ・・・ご、ごめんなさい・・・」
「ヴァリラが大声出すからよー」
「何だとぉ!?」
「あー・・・はいはい、お二人さん喧嘩するなら外でやれ、外で」
 もめそうになった二人をラグズは掴んで、そのまま外にポイッと捨てるように放り投げた
「お二人さんリタイアー」
 その後は、想像通りに表で二人が喧嘩を始めた・・・
ラグズはやれやれ顔になっていた、少し疲れが顔に出てきていた
「ラグズさんも少しはお休みになってはどうですか?」
「ここ最近、ラグズさんもセイさまと同じようにお疲れでしょうに・・・」
 シュガレットは”一応”ラグズの心配をしていた
「いや、俺は元々武器だからな・・・この程度で疲れたら武器としてどうかと思っている」
「でも、ラグズの今の姿って人間だよね?」
「ラジィー? そこは大人の事情っつーご都合なる理由があるから余計な事は考えちゃダメだぞー」


-----------------------------------[⑥:夢は所詮、夢でしかない]-----------------------------------------


……暗い・・・今度は真っ暗な場所に私は居た。

……ここは夢の中? 私はこんな体験をした者を見たことがある

……【窓つき】という女の子・・・あの子もまた夢の中で沈んでいき・・・そして・・・

……あの子には悪いけど、私はあんな結末にはなりたくない。

……私はちゃんとした死に方をしたい。

……私が心から認めた人の腕の中で・・・大事だと思える人の腕の中で安らかに幕を閉じたい。

……私が今思う大事な人・・・それは・・・ラジィ?

……女同士だけど、あの子は私にとって大事な存在。大事な者。


―――― 『〰〰〰〰。』


……そう、あの子は私の大事な・・・


―――― 『本当ニ〰〰〰大事ナ〰〰〰カ?』


……誰?


―――― 『オ前ノヨウナ〰〰〰ニ人ヲ愛スル権利ハアルノカ?』


……私が”人殺し”だって言いたいの?

……ダメなの? こんな人殺しの醜い私が誰かを好きになったり恋をするのは・・・


―――― 『オ前ハ、醜イ死ニ様ガ相応シイ。』


……そう・・・なのかな・・・


―――― 《アニキは・・・アニキは女でも僕の大好きな人なんだから! そうやって自分を責めないで!》


……そうだ・・・私は何を馬鹿な事に惑わされているんだ・・・


―――― 『戯言、所詮ハ戯言ニ過ギナイ。』


……五月蝿い、黙れ! 私は・・・私は・・・!


「私は!」

――――目が覚めた。

「……また、夢なの・・・?」
 苦しい、でも・・・それでも自分の中で何か決心がついたような気がする

《誰も貴方を許さなくても、私が・・・貴方を許すわ。》

「零式さん・・・私・・・許されるのかなぁ・・・」
 聖騎士は体操座りになって、じっとうずくまってしまった・・・
その間に色々と彼女は考えていた。

私・・・こんなファンタジー世界が好きで好きで堪らなかった・・・
何時か見た夢の世界へ行きたい気持ち・・・その思いでいっぱいだった。
でも・・・皆、私の事をバカにした。 嫌ったりしてた。
「お前みたいなブスが行ける訳がない」 「現実を見ろ」 「夢を見るな」・・・色々言われた。

それでも夢見た理想郷――――

私が追い求めた世界・・・何時か行ってみたいと思っていた世界・・・
私を虐める人達が居ない遠い場所、私を傷つけたりしない安らぎの場所。
そんな場所がこの広い世界の何処かにある・・・そう思っていた。
そして、見つけた・・・この場所を・・・

私が追い求めた理想郷――――

涙が・・・溢れ出てきた。


-----------------------------------[⑥:泣きたい時は泣けばいい]-----------------------------------------


 ラジィは聖騎士の事が心配になり、聖騎士が居る部屋へと戻っていった
「アニキー・・・大丈……」
 そこにはヒクヒクと小さな声を出しながら泣いている聖騎士の姿があった
「アニキ・・・泣いてるの?」
 ラジィの声を聞いた聖騎士はビクッとラジィの方を見た
少し慌てながらも必死に泣くのを止めていた
「ラ、ラジィ・・・大丈夫、少し悲しくなっただけだから・・・」
 聖騎士は兜だけを外した。
相変わらず、美しい顔がラジィの頬をを赤らめさせる
「アニキ・・・泣いてる・・・」
「大丈夫・・・大丈夫だから・・・」

――――ラジィの手が聖騎士の頬に当たる。

 頬に流れる涙を拭き取った
「一人で抱え込まないで、僕もアニキの事助けるから」
 ラジィの顔は少し寂しい顔をしていたが、それでも一生懸命に笑顔を見せていた

……私の大事な人・・・私の為に笑顔で居てくれる人。

 聖騎士はラジィを抱きしめた
「アニキ?」
「ありがとう・・・ありがとう・・・」


-----------------------------------[⑦:今か今かと動かんとする悪夢]-----------------------------------------


――――クダラナイ、コノ世全テガクダラナイ。


――――ナラバ、〰〰〰シテシマオウ。


――――ソウダ、”パリスタパリス”サエ果セナカッタ無念ヲ・・・


――――コノ土地ニ死ヲ!!!



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