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No.392の一覧
[0] サモンナイト『IF』 -久遠の彼方-[神威](2008/10/13 23:37)
[1] サモンナイト『IF』 -久遠の彼方-<第一話>[神威](2008/10/18 22:50)
[2] サモンナイト『IF』 -久遠の彼方-<第二話>[神威](2008/10/16 00:39)
[3] サモンナイト『IF』 -久遠の彼方-<第三話> 前編[神威](2008/10/20 19:32)
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[392] サモンナイト『IF』 -久遠の彼方-
Name: 神威◆73420f02 次を表示する
Date: 2008/10/13 23:37
「おい、こいつどうする?」

 そう言った男の目の前には一人の少女が横たわっている。
 少女は艶やかな赤い髪をした少女だった。
 活発そうに笑うであろう顔は泥にまみれている。
 まぶたを閉じた其の姿は一枚の絵画のような美しさを醸し出していた。

「あぁ? そんなもんほっとけよ」

 其れに答えたのもまた男だった。
 男達に共通しているのは、血に濡れた武器を持っている事だった。

「でもよぉ、中々上玉じゃねぇか? こいつ」

 最初に声をかけた男――便宜上Aと呼ぼう――が少女を指差しながら言う。

「確かに将来有望な感じの女だな……」

 もう一人の男――此方はBとでも呼ぼうか――が少女を嘗め回すように見ながら言う。

「だろぉ?」

「でもな、俺達はお頭の命で此処に来たんだ。勝手に持ち帰るわけにはいかねぇぜ?」

 なぁ? おまえら、と後ろを見渡すB。
 彼らの後ろには二十近くの男達がたむろっていた。
 誰もがニヤついた笑みを浮かべている。

「事後承諾ってやつで良いんじゃねぇの~?」

 A・B以外の男達が次々にはやし立てる。
 この少女を持ち帰ることに賛同する声が上がる。
 多数決をとるまでも無い。満場一致で少女を頭の所に持ち帰る事にする。
 そうして少女を担ごうと彼女に近づいた時――


「何かすげー事になってんな……」


 男たちにとって聞きなれない声が響いた。
 この場には場違いとも言える能天気そうな声だ。
 新たに現れたのもまた、男だった。
 否、体格から言って少年と言った方が妥当だろう。
 其の声に一斉に振り向く男達。

「で、あんた達は其の子をどうするつもりだい?」

 あくまで穏やかに、しかし其の眼光は限りなく冷たく、少年は聞いた。

「あぁ? 坊主、餓鬼はねんねの時間だぞ?」

 Aはいきり立ちながら言う。
 邪魔された事に腹を立ててるらしい。眼光をきつくして睨みを利かせている。

「おっさん達さぁ。見た所盗賊のようだけど?」

 少年の顔が無表情になる。
 其の瞳は少女に、そしてこの村に向けられていた。
 血に濡れていない場所などどこにもない。
 生き残っているのはもしかしたら目の前の少女だけかもしれない。
 そう思うと少年はやるせない気分になった。
 この少女は天涯孤独になったかもしれないのだ。

「ま、運が悪かったって事で」

 ――刹那、少年の姿がぶれた。


 斬ッ!


「諦めてくれや」

「………へっ?」

 盗賊の首が三つ、宙に飛んだ。
 首が飛んだ者達は、何が起こったのかも解らぬまま逝っただろう。
 少年は首が飛んだ男達の後ろに、背丈に似合わぬ刀を携えながら立っていた。
 奇怪な事に少年の体の周りに風が吹いている。
 この場で風は吹いてないと言うのに。
 それはまるで、少年が風を纏っているかのように見えた。

「飛翔閃」

 と、少年は持っていた刀を大降りする。
 視線の先には盗賊たちの姿がある。
 しかし明らかに刀が届く範囲ではなかった。
 ―――が、振り切られた刀からは風が真空の刃となって飛び出し、次の瞬間には盗賊たちに襲い掛かかる。

「なぁ!?」

 今度は一度に五人の体が血の海に沈んだ。
 すぅっと剣先を残りの盗賊達に向ける少年。

「胸糞悪い光景を見せてくれた礼だ。遠慮なく受け取れ」


 斬ッ!


 一人、また一人と倒れていく盗賊達。
 それは一方的な惨殺だった。

「ひぃっ!」

 残りが六をきった所で、一人の盗賊が命乞いをして来た。

「た、頼む! 命だけは助けてくれっ! し、仕方が無かったんだ。お頭の命令には逆らえねぇから……。もうしねぇ、だから頼む!!」

 其れを機に、盗賊たちは恥も外聞もかなぐり捨てて命乞いをする。
 もはやこの少年に勝てると思うものは居なかった。
 自分たちは狩る側から狩られる側になった、と漸く理解したのだ。

 一瞬。ほんの一瞬だけ少年の目に激情が宿る。
 盗賊たちは遂にそれに気づくことは無かった。
 この時それに気づけば、あるいはあのような結末を迎えることは無かったかもしれない。

「…………」

 少年は何も言わないが、その沈黙が逆に盗賊たちの恐怖を煽る。
 少年の目にふと、ぼろぼろになった民家がうつった。
 そして家の前には恐怖にゆがんだ顔の子供の死体があった。
 痛ましそうな目をして、顔をゆがませる。

「お前達は、そう言って命乞いをして来た人達をどうした?」

「え?」

 盗賊達が顔を上げる。
 少年に、彼らからの答えを聞くつもりは無かった。
 聞くまでも無い。この惨状を見れば解る。

「彼等の恐怖を万分の一でも感じながら、逝け」

 次の瞬間。
 命乞いをしていた盗賊たちの首は、一つ残らず刎ね飛ばされた。
 残った首の無い体と吹き飛んだ首が燃え上がる。
 先程見せた風の刃と何らかの力をあわせた攻撃だったのだろう。
 そこに超常的な力が働いたのは目に見えている。

「………はぁ」

 ため息を一つ。
 少年にとってこの程度の敵を相手にするのに、これだけの力を使う必要は無かった。
 これは彼なりの弔い。死者の無念を晴らす方法だったのだ。

 少年は刀を一振りし付いた血を飛ばすと、それを鞘に収めた。
 もう一度子供の死体に目をやり、その見開いたままの目をそっととじさせてやった。
 そして軽く黙祷。

「敵をとっても無(亡)くなったものは甦らない、か」

 少年は一つ悲しそうな顔をすると、少女の方に寄って行った。
 今はこれぐらいしかしてやれる事がない。
 ならば少年にとって優先されるべきは、死んだ者より生きてる者だ。
 少年は少女を抱えると、その場を後にした。


 ――その時何処かで、壊れた笑い声が聞こえた気がした。





サモンナイト『IF』
  -久遠の彼方-

プロローグ




「この子は此れから一人、か」

 其の時、少女が軽く身じろぎをした。

「おにぃちゃん、だぁれ? 皆は何処?」

 目覚めた少女の最初の一言はそれだった。まだ少し混乱している所があるのだろう。
 それに加え、今の状態は寝起きのようなものだ。
 まだ頭がはっきりと働いていないのかもしれない。

「皆は、遠い所に行ったんだよ」

 少女が唐突に涙を流した。
 幼いなりに何か感じるところがあったのかもしれない。

「皆、遠い所に行っちゃったの?」

 無言で頷く少年と涙を流し続ける少女。

「お兄ちゃんは?」

「俺?」

 少年が聞き返すと少女は首を横に振る。
 上手く伝えられないのか、口をもごもごと動かす。
 パッ、と何かを思いついたのか、少女は自分の髪の毛を指した。

「わたしと一緒の髪の色」

 話を聞いているうちに、どうやら少女には兄が居るらしいと言う事がわかった。
 しかし少年は、彼女しか見つける事は出来ていなかった。
 あの後少女を運びながら、目ぼしい所は見て回ったのだ。

「君以外の子は見かけていない」

 少年がその事実を伝えると少女は更に泣き出してしまった。
 少年に見落としが無い限り、少女は天涯孤独になってしまったのだ。

「……俺と一緒に来るか?」

 ふと思いついた事を、手を差し伸べながら言って見る。
 気まぐれに等しいとはいえ、義務感のようなものもあった。
 この惨劇を目撃した一人としてこの少女を引き取るべきだと思ったのだ。

「おにぃちゃんと?」

 何時の間にか涙は止まり、少女は首をかしげた。

「そう、俺と一緒に」

 今までの顔が嘘のように、少女は華やかに笑った。

「うん!」

「君の名前は?」

「アティ! おにぃちゃんは?」

「晶。樋口 晶(ヒグチ アキラ)だ」

こうして少女ことアティは、少年こと晶の手を取った。



◆◇◆◇



「あははははははっ!」

 一人の少年が狂ったように笑っている。
 彼の全身は血に塗れていた。
 彼自身の血ではない。それは彼の父親の血だった。

「あははははははっ!」

 あの時、父が身を挺して護ってくれなければ。自分は間違いなく死んでいた。
 晶が探した時に彼が見つからなかったのは、その父の下敷きになっていたからだ。
 それはある意味、運命の悪戯。

「あはははははははははっ!」

 彼は一人、笑い続ける。
 口元には嘲笑を浮かべ、涙でぐちゃぐちゃになった顔で。

「あははははははははははははははははははっ!!」

 彼はたった一人、自分の大切な妹を想って、狂ったように哂い続けた。


 彼と彼女が再会するのは此れから十年近くの年月が経ってからになるのだが、両者共に、この時点では知る由も無かった―――







後書き

この掲示板では初めまして、神威と申します。

皆さんの小説を読むにつれ、居ても経っても居られなくなり・・・・・では無く、他サイトで連載中の小説の息抜きに書きました。

この作品は、3と1を中心として繰り広げられます。

お気づきの方もいらっしゃるでしょうが、オリ主の彼は『彼女』の兄という位置づけに居ます。

3→1と移りますから、最初は3が中心になります(皆さんお解りでしょうが)

結構な量になるでしょうが、見捨てずお付き合い頂けると幸いです。

それではまた次回、お会いしましょう。






■補足■

・久遠・・・・久しく遠い事、または遠い過去・未来の事。

本作では遠い未来の事を指します。

・彼方・・・・ある物の更に向こうの方。

直訳すれば、『更に遠い未来』と言った所でしょうか?


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