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No.8148の一覧
[0] 電気ネズミはリィンバウムの夢を見るか。[ブラックメタル](2009/04/16 22:06)
[1] 電気ネズミはリィンバウムの夢を見るか。[ブラックメタル](2009/04/16 22:12)
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[8148] 電気ネズミはリィンバウムの夢を見るか。
Name: ブラックメタル◆9a9c2165 ID:86451a55 次を表示する
Date: 2009/04/16 22:06



(え・・・・・・なんだこれ?)

俺の意識がはっきりしたとき、周りは草の中だった。

身動きがとれず、起き上がる力もない。

ゆっくりと体温を失おうとしている体と、

全身から流れ出る血液が、再び意識を刈り取ろうと睡魔を呼び込み始めた。

何でこんな状況になったのか、なぜこんなところにいるのか、

全然記憶がない。

わかっていることは、このままでいると、確実にあの世からのお迎えが
くるということだ。

「くそ・・・やってられるか・・・・・・」

理不尽な怒りがふつふつと沸いてきて悪態をつくが、こぽりと血が口から出た。

空しくて泣きたくなったけど、

その力すら湧いてこなくて、ゆっくりと目蓋が重くなる。

その視界の端でかすかに叢がゆれたような気がした。

大方血のにおいを嗅ぎ付けた肉食獣かなにかがやってきたんだろう。

「ここまでか・・・・・・」

もう意識を保っているのも面倒になって、俺の目の前が真っ暗になる直前、

視界の端で光り輝く天使の羽が見えた気がした。



――序章『それは、星の流れる夜の物語』――



なにかが流れる音が聞こえた。

さらさら、さらさらと、砂が流れて崩れるような音が。

その音と一緒に体を包む暖かいなにかに、体中の気だるさが消え、

目が覚めた。

「まだ寝ていろ、お前は血を流しすぎている」

褐色の肌をした女性に布で体を拭かれているのに気づいた。

本来白かったはずの幾枚もの布にはたっぷりと赤い俺の血がついている。

(ここ・・・・・・は・・・・・・)

「血を失っていると言った、無理に声を出そうとするな」

優しく頭をなでられ、思わず目を閉じる。

「あとでその状態でも食べられるモノを持ってきてやる、もうしばらくは
眠っていろ」

(わか・・・った・・・・・・)

優しくかけられるその声が、心地よい子守唄のように聞こえて、

言われるまでもなく、俺の意識は闇へと沈んでいった。



次に目が覚めたときは、褐色の女性は視界に居なくなっていて、
体を包み込むように沈むベッドと、枕もとの台座に置かれた果物籠があった。

どれくらい寝ていたのか、ずいぶんと体が軽くなり、そのまま飛び起きることも
できそうなほど体調は回復している。

寝ていた間、当然何も食べなかったためか果物が食欲を呼び起こす。

俺はゆっくりと手を伸ばし、そこで気が付いた。

「何だこれ・・・・・・」

手が随分と縮んでいる、手だけでなく、足も、体も。

それに肌色とは程遠いほど強い黄色の毛皮が全身を包み込みんでいた。

「夢・・・・・・・だよな?」

嫌にぽよぽよするほっぺたを引っ張ってみたが、痛い。

「夢・・・・・・じゃないのか?」

「夢ではない」

声に呼ばれて振り返ると、そこには俺の看病をしていてくれた褐色の女性・・・・ではなく、同じく褐色の肌をした青年がいた。

「すまない、お前の言葉は私にはわからないが、そんな仕草をしていたのでな」

外国の人だろうか。

そういえば着ている服もどこか伝統民族衣装的で、一般的な洋服とは程遠い。

『鏡・・・・、鏡は、鏡はないですか?』

俺は慌ててジェスチャーで伝えようとするが、青年は首を捻る。

すると部屋の片隅に、立てかけられた剣をもってきて鞘から抜き放った。

「察するに顔を見たいのだろうが、あいにく手持ちに鏡がない、これで我慢してくれ」

そういって剣の腹を顔に近づけられ、恐る恐るそれを覗き込み、

「ぴ、ぴかちゅー・・・・」

つい、口からそんな言葉が漏れたことに、割と自分余裕あるなあと思って

その場所で深く肩を落とした。

いったいなにがどうなってどうやったら人間がピカチューになれるんだろうか。

俺の記憶が曖昧なのとなにが理由があるんだろうか。

混乱した頭をぶんぶんと振ってその場所に沈みこんだ俺に、遠慮がちに青年が
声をかけてきた。

「すまないな、今は急いでいる、悪いが守護竜様の元へと一緒にきてもらおう」

青年は俺をベッドから救い上げて窓から身を乗り出し、

『って・・・・・・ちょっとまておい!?』

我に返って慌てた俺には構わず、大空へと羽ばたいた。

『は、はねぇええええ!?』

自分自身に起こった事態に対してもたいそう驚いたが、青年の背中から生える一対の翼にはさらに驚かされた。

人間に翼が生えている、まさか、これが天使かと思ったが、

そんな雰囲気には見えない。

がっちりとした体格と片手に持つ槍から、彼は屈強な戦士といったほうが近いよな……。

「着いたぞ」

『・・・・・・え?』

青年の言葉に、慌てて我に返った。

青年がゆっくりと城のような建物の中庭に降り立つと、俺は両手から飛び降りた。

少しふらついたが何とか芝生の上に立つことが出来た。

「ほう、そやつがアロエリが拾ってきたというものか」

声に顔を上げると、今度は角の生えた青年。

『なんでもありだな・・・・・・ここまでくると』

「拾ってきたのではなく、助けたのだ、
 巻き込まれたとはいえこの子がこれ以上ここに居る必要はない、
 守護竜殿に判断を仰ぎたい」

「・・・・・・今しかない、か。よかろう、会わせよう」

有翼の青年と有角の青年がすたすたと歩き始めたので慌てて後を

追って駆け出そうとして、いきなり背後から響き渡った爆音に振り返ると、

なにやら遠くで黒煙が上がっていた。

「悪いが時間がない、急いでくれ」

羽の生えた青年の声に慌てて後を追って俺は駆け出した。

二足歩行より四足のほうが走りやすいなんて何の冗談だ……。

悲しくなって走りながら泣きそうになった。

少し先の広間まで走って、急に二人が立ち止まった。

近寄って見上げると、碧色の鱗と虹色の羽根を持つ、大きな竜がそこにはいた。

有角の青年が俺の方に向き直る。

「このラウスブルグの守護竜殿だ、挨拶をしなさい」

『しゅご・・・・・・竜・・・』

おそらく人間の時の身長でもでかいと思っただろうけど、

ピカチュウの体で見上げるその姿は、でかい、とてつもなくでかい。

測ってみないと判らないが恐らく人間のときでもイワークとかハガネール以上の巨体と見上げるだろう。

「あなたが里の者が助けた来訪者ですね」

『こ、こんにちは・・・・・・』

しかも喋れると来る、本当に何でもありだ。

『あの、あなたは俺に起こった事について知っていますか?』

「なるほど、限られたものにしかその声は届かないのですね・・・・・・」

『あの・・・・・・?』

「ああ、すみません、私にはあなたの言葉はわかるが、
 あなたが何処の世界から来たかは見当がつかないのです」

「なんと、ではその者はメイトルパの者ではないのですか!?」

有角の青年の言葉に、守護竜が頷いた。

「名も無き世界から召喚され、そして知能も高く我らの言葉もわかっていますよセイロン」

優しげな瞳で俺を見下ろしながら守護竜が言うと、青年二人が酷く驚いている。

「それは・・・・・・すまない、アロエリが、俺の妹が看病していたときから、あい・・・・・・小動物に対する接し方をしていた」

気持ちはわかるが愛玩動物って言い出そうとしてやめたなこんちくしょう。

事実ピカチュウはバトルをさせるよりそういう方向で親しみのあるポケモンだから仕方ないとはいえさすがに当事者として言われると来るものがあるなあ。

「す、すまん、俺はクラウレという」

「私はセイロン、以後よろしくたのむ」

OK、羽根生えたほうがクラウレ、角生えたほうがセイロン、でもって俺を着きっきりで

看病してた女の子がアロエリか・・・・・・。

「そして私は守護竜、このラウスブルグの長をしています」

『あの、さっきから気になってたのですが、ラウスブルグってっ――』

守護竜が何かを言いかけたところで、再び大きな爆発音と地鳴りがする。

「・・・・・・失礼、守護竜様、再び戦列に戻って参ります」

槍を強く握り締めたクラウレが、踵を返し、走るのも面倒だといわんばかりに宙に舞った。

「申し訳ない、この場所の事、私たちの事を詳しく語っている時間はあまり無いようです」

『さっきからする爆発音と何か関係があるのですか?』

守護竜は少し哀しそうに眼を瞑り、頷いた。

「この城は今同朋と外敵によって滅びの危機に瀕しています、アロエリが貴方を拾った時、血塗れで倒れていたと聞いておりますから、恐らく戦いに巻き込まれたのと・・・・・・申し訳ない」

いやいやいや、訳も解らずメタモルフォーゼした挙句、大怪我して助けられたんだから
謝られるとちょっと困る。

『気にしなくてもいいです、あの・・・・・・それじゃ守護竜さんは戦わないのですか?』

「確かに戦えば確かに外敵を全て撃退することも可能でしょう、ですがそれによって多くの同朋達の血が流されるのが、私には耐えられない」

『でもそれじゃあ、いきなり現れて大怪我して訳の解ってない奴が言うことじゃないですが、何も出来ずに負けることになるのでは』

「客人」

セイロンが俺たちの会話に口をはさんできた。

俺の言葉がわからなくても、俺が守護竜に抗議の言葉を投げつけていることは気づいていたんだろう。

苦虫を噛み潰したような顔で、セイロンは俺を抱き上げた。

「お前が来る前に、守護竜殿は全て決められたのだ、お前が何を言っても、もはや覆ることはない」

きつく噛み締められた唇の端に、血が滲んでいる。

きっと、セイロンも俺と同じように説得したんだろう・・・・・・。

いきなり現れた俺じゃ考えつかないくらい多くの言葉で。



§§§



「守護竜様」

ボロボロの羽根を引きずるようにクラウレが戻ってきた。

その後ろには、同じく傷だらけの男が立っている。

「この者が守護竜様にお会いしたいと言っておりましたので連れて来ました」

「正気か貴様、この場に人間を通すなど!!」

激昂したセイロンの腕に力が篭る。あの、息が苦しいっす。

「だがこの者が敵陣を中央突破してきてくれたおかげで混乱して侵攻が止まったのだ」

なんだか解らないがクラウレにとっても苦渋の決断だったようだ。あの・・・息・・・。

「それに、彼は単身剣の軍団と鋼の軍団を蹴散らし、多大な損害を与えている・・・・・・判るな?」

「・・・・・・判りたくは無いが、な、いいだろう」

バタバタともがく俺を床に置いてセイロンは守護竜の傍らに移動した。

男が守護竜に襲い掛かった場合、即座に対処できるようにだろう。

男はクラウレに頭を下げると、ゆっくりと守護竜に近づく。

「なぁ、あんたの血を分けてもらっちゃくれねえか?」

一瞬、時が止まった気がした。

クラウレはぽかんと口を開いて絶句しているし、セイロンも大きく目を見開いて硬直している。

だが直にその場の時間は動き出し、物凄い表情になったクラウレが槍を構える。

男はクラウレに構わず、その場に跪き、深々と頭を下げた。

「授かった光の力が強すぎて、俺様の娘が死にそうになってるんだよ、頼むっ!!!」

広間の紅い絨毯が、滴る男の血によってより一層朱く染まっていく。

「そうですか・・・・・・あなたが始まりを告げる使者なのですね・・・・・・」

守護竜の言葉に、今にも槍を突き出そうとしていたクラウレの腕が止まり、

同じく蹴りを繰り出そうと構えていたセイロンの動きも止まった。

ラウスブルグに続いてまたよく判らない謎の言葉だ。

「わかりました・・・・・・子を思う親のココロは、竜であれ人間であれ、きっと同じはずですから」

俯く守護竜の視線の先に、今まで気づかなかったけど大事そうに抱かれた卵があった。

七色に輝くそれを見つめながら、守護竜が口を開く。

「貴方の望みをかなえましょう、その代わりに、私の願いも聞き届けてくれませんか?」



§§§



「心の準備は出来ましたか?」

卵の傍らに座らされた俺の周りを包み込むように光の泡が覆い始めた、覆っている。

『・・・・・・ごめんなさい』

「謝ることはありません、貴方は巻き込まれたのですから……それに謝るなら私の方です、この城は貴方の安息の地となり得たと言うのに、こんな事になってしまって」

そんなことを言われる資格が、僕なんかにあるのだろうか。

いきなり大怪我して転がっているところを助けられ、死に逝く存在を目の前にして
その人の手で再び助けられようとしている。

「アロエリと会わせてやることが出来なくて済まんな、御子様のことを、頼む」

そういってクラウレが優しく頭をなでてくれる。

その手は暖かいけど、微かに震えていた。

セイロンは組んだ腕を力強く握り締め、直立不動の耐性で竜と人間を見ていた。

「さあ人間よ、後はお願いします」

光り輝く剣を携えた男に、竜は微笑んでゆっくりと目を瞑った。

ほんの少しの沈黙の後、剣はゆっくりと水平に構えられ、

「やめろおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

広間に飛び込んできたアロエリが、男に飛びかかろうとするが、

それより早く光刃が深々と守護竜の心臓に突き刺さった。

体のそこから震わせるような咆哮が響き渡り、俺と卵がふわりと宙に浮いた。

(幸せな、未来を・・・・・・・我子に・・・・・・)

卵に送られた想いの言葉が、俺の耳にも微かに聞こえた。

謝罪の言葉ではなく、ありがとうと、守護竜に伝えようとした時には、光に包まれた俺と卵はもう、城のはるか上空へと飛ばされていた。

高く、高く空高く舞い上がる光の柱。

空に輝く星空と、信じられないほど大きな満月に、どこか違和感を感じたが、

命を助けられた恩人達に何も出来ず、一人逃げ出す自分への罪悪感から溢れ出した涙に、掻き消える。

傍らに浮かぶ卵をしっかりと抱いて、俺達は、流れ星となって何処かへと落ちていった。







これは、名も無き島に現れた青年と、一人の少女との出会いから、随分とたった後の物語。






================-

Infinity recallの外伝的作品でしたが、
思い切って本作品を分離し、ひとつの作品として投稿させていただきました。

本作品も受け入れていただければ幸いです。



なにやら投稿ミスをしたのか、うまく投稿されてなかったので削除し再投稿。


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