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No.10793の一覧
[0] 天使を憐れむ歌 【ゼロ魔×エヴァ】【オリ設定の嵐】[エンキドゥ](2014/03/14 23:48)
[1] プロローグ 赤い海の畔で[エンキドゥ](2009/08/15 09:27)
[2] 第一話 召還[エンキドゥ](2013/03/09 22:48)
[3] 第二話 見知らぬ世界[エンキドゥ](2013/03/09 22:56)
[4] 第三話 2日目 その1 疑惑[エンキドゥ](2013/03/09 22:51)
[5] 第四話 2日目 その2 探知魔法[エンキドゥ](2013/03/09 22:54)
[6] 第五話 2日目 その3 授業[エンキドゥ](2013/03/09 22:57)
[7] 幕間話1  授業参観[エンキドゥ](2013/03/09 23:00)
[8] 第六話 2日目 その4 決闘?[エンキドゥ](2013/03/09 23:04)
[9] 第七話 2日目 その5 決意[エンキドゥ](2013/03/09 23:14)
[10] 第八話 3日目 その1 使い魔の1日[エンキドゥ](2013/03/09 23:09)
[11] 第九話 3日目 その2 爆発[エンキドゥ](2013/03/09 23:13)
[12] 第十話 虚無の休日 その1 王都トリスタニア[エンキドゥ](2013/03/09 23:18)
[13] 第十一話 虚無の休日 その2  魔剣デルフリンガー[エンキドゥ](2013/03/09 23:23)
[14] 第十二話 土くれのフーケ その1 事件[エンキドゥ](2013/03/09 23:40)
[15] 幕間話2 フーケを憐れむ歌[エンキドゥ](2013/03/10 05:17)
[16] 第十三話 土くれのフーケ その2 悪魔[エンキドゥ](2013/03/10 05:19)
[17] 第十四話 平和なる日々 その1[エンキドゥ](2013/03/10 05:21)
[18] 第十五話 平和なる日々 その2[エンキドゥ](2013/03/10 05:23)
[19] 第十六話 平和なる日々 その3[エンキドゥ](2013/03/10 05:24)
[20] 第十七話 王女の依頼[エンキドゥ](2013/03/10 05:37)
[21] 第十八話 アルビオンヘ その1[エンキドゥ](2013/03/10 05:39)
[22] 第十九話 アルビオンへ その2[エンキドゥ](2013/03/10 05:41)
[23] 第二十話 アルビオンへ その3[エンキドゥ](2013/03/10 05:43)
[24] 第二十一話 アルビオンへ その4[エンキドゥ](2013/03/10 05:44)
[25] 第二十二話 アルビオンへ その5[エンキドゥ](2013/03/10 05:45)
[26] 第二十三話 亡国の王子[エンキドゥ](2013/03/11 20:58)
[27] 第二十四話 阿呆船[エンキドゥ](2013/03/11 20:58)
[28] 第二十五話 神槍[エンキドゥ](2013/03/10 05:53)
[29] 第二十六話 決戦前夜[エンキドゥ](2013/03/10 05:56)
[30] 第二十七話 化身[エンキドゥ](2013/03/10 06:00)
[31] 第二十八話 対決[エンキドゥ](2013/03/10 05:26)
[32] 第二十九話 領域[エンキドゥ](2013/03/10 05:28)
[33] 第三十話 演劇の神 その1[エンキドゥ](2013/03/10 06:02)
[34] 第三十一話 演劇の神 その2[エンキドゥ](2014/02/01 21:22)
[35] 第三十二話 無実は苛む[エンキドゥ](2013/07/17 00:09)
[36] 第三十三話 純正 その1 ガンダールヴ[エンキドゥ](2013/07/16 23:58)
[37] 第三十四話 純正 その2 竜と鼠のゲーム[エンキドゥ](2013/10/16 23:16)
[38] 第三十五話 許されざる者 その1[エンキドゥ](2014/01/10 22:30)
[39] 幕間話3 されど使い魔は竜と踊る[エンキドゥ](2014/02/01 21:25)
[40] 第三十六話 許されざる者 その2[エンキドゥ](2014/03/14 23:45)
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[10793] 第九話 3日目 その2 爆発
Name: エンキドゥ◆37e0189d ID:2bbbedfc 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/03/09 23:13


第九話 三日目 その2 爆発

午後の授業も終わり、ルイズは夕食の前にシンジをつれて学院を出た。
学院内ではどうしても人の目、人の耳そして、使い魔たちの目があるためシンジとひそかに魔法の練習と言うわけには行かないためだ。

「さて、ここらでいいかしら」

ルイズが足を止めたのは、先日「春の使い魔召還の儀式」を行った草原の近くの林の中である。
学院まではざっと数百メイル、周りに何も無いし、大きな立ち木が何本も生えている。そんな中でぽっかりと数十メイルほどの空き地があった。
多少の爆発音ではそうそう学院まで届きはしないだろうし、聞こえてもそんなに迷惑にならない程度だろう。ルイズは念のため、周りを見渡し誰もいないことを確かめた上でシンジに言った。

「シンジ、あなたの力を、昨日の授業中あたしの爆発を封じ込めた力を見せて頂戴」

シンジはそれを聞き、溜息をついた。

(そりゃ、ばれるよね。あれだけ使ってたら)

「どうしたの、早くして頂戴」

シンジもしばらく迷っていたが、ルイズにそう言われて、もう一度溜息を吐き、あきらめたように向き直りつつ言った。

「ルイズさん、僕にゆっくり近づいてみてください」

ルイズは言われたとおり、しかし十分な用心をしつつ、ゆっくりとシンジに近づき、見えない壁、もしくは壁状の何かに触れた。熱くも無く、冷たくも無く、触った感じではガラスのように硬い。
どうやら、触っているだけなら危険は無いと判断したのか、恐る恐るつつく爪先から、指先へ、今は手のひらで目の前にあるらしい”それ“に触っていた。

「僕らはATフィールドって呼んでいました。他人と自分を分ける、心の壁です」

ルイズには彼の言っていることは良くわからなかった。
しばらくは、呆然とシンジの出した壁に触っていただけだ。

(どれほどの力、どれほどの精神力があれば、こんなことが可能なのかしら?)

改めて見るそれは、ルイズには途方も無い物に思えた。

「えーてぃー領域、これがそうなの?なんなのこの力?どうやったら出せるの?」

「わかりません、手足を動かす時にどう動かすか考えないように、このATフィールドも特に技術が必要ではないのです。魔法と違い本能に近いものですから」

必要なのは、拒絶の心だけ。
攻撃を防ごうと思えば、それだけで物理防御の壁となる。
もっともシンジは様々な使い方を心得てはいるが。

「あなたの国の人たちは皆、この力が使えたの?」
「……いいえ」

その答え方に、何か触れてはならない物を感じた。
ルイズは考える。
おそらく、彼の国でこの力が使える人間はそう多くは無く、あまり歓迎もされていなかったのだろう。メイジもまた平民に恐れられる存在だ。ルイズの失敗魔法ですら、人を殺傷するに十分であるのだから。そうでなければ、隠す必要も、力を出す時にあんな悲しそうな顔をする必要も無い。

「そう」

シンジはATフィールドを消した。
ルイズは、しばらく黙っていたが、ぽつりぽつりと話し始めた。

「シンジ、あのね、わたし魔法が使えないの。小さい頃からダメだって言われてた。お父様もお母様も私には何も期待してない。クラスメイトにも馬鹿にされて。
みんなからゼロゼロって言われて……。わたし、ほんとに才能無いんだわ。得意な系統なんて存在しないんだわ。呪文唱えても、なんだかぎこちないの。自分でわかってるの。先生や、お母様や、お姉さまが言ってた。得意な系統の呪文を唱えると、体の中に何かが生まれて、それが体の中を循環する感じがするんだって。それはリズムになって、そのリズムが最高潮に達した時、魔法は完成するんだって。
そんなこと……、一度も無いもの」

ルイズの声が小さくなった。

「でも私、みんなができることを普通にできるようになりたい。じゃないと、自分が好きになれないような、そんな気がするの」

こんなことまで言う心算は無かった。だが一旦口から出てきた言葉はそれのみに意思があるように止まってはくれず、心情をすべて吐き出すまでは終われなかった。
シンジは困ってしまった、ルイズは自分の言葉に引かれるように落ち込んでしまっている。
なんと言って慰めればいいのか。
しばらく時間がたって、やっとのことでシンジは口を開いた。

「ルイズさんは、立派です。自分から、自分の立場から決して逃げようとしない。それに、優しいし、とってもキレイじゃないですか。僕はいつかきっとルイズさんは偉大な魔法使いになると思います」
「……ありがとうシンジ……」
「それで、頼みたいことってなんですか?この力が見たかっただけじゃありませんよね」
「う、うんあのね……」

杖を構え、呪文を唱えれば発動する、というのが一般的な平民の考え方であり、それは決して間違ってはいないが、何も説明していないに等しい。
ルイズの説明によると、呪文はそのほとんどを魔法を構築するための結界場の成型に使われ、そこに自分の精神力とイメージを、杖を通じて注ぎこみ、発動させるのだという。
火には火の、水には水の独自の結界が有り、それを作りだすのが血統や才能による魔法系統なのである。

もちろん、魔法が発動している間もこの結界場は継続して成型されたままだ。
メイジはこの結界を、ある程度操作できる。そのことにより、たとえばゴーレムを操作し、炎を操り、風を巻き起こすのだ。

一般的な魔法の失敗とは、ルーンの唱えそこない、障害物、敵のあるいは他人の魔法干渉、自然環境等により、結界場を成型しそこなうことである。
この失敗により、穴の開いた風船に空気を送りこむように、精神力はむなしく消費され、何も起こらないのが普通である。
また、呪文を唱え、そのまま精神力とイメージを長い時間注がなくともまたこの結界は消えてしまう。結界も精神力により形作られた物だからだ。

「……それでね、シンジのその力は魔法の結界のみの力じゃないかって思ったの。今触らせてもらったけど、人の手に触れられるほどの結界なんて聞いたことも無いわ。あれだけ強いと、それだけで一つの系統を名乗れそうなぐらい。
……それで、シンジにお願いしたいのは、あたしの魔法のための結界を作ってもらいたいの」

ルイズは自分には、結界場を成型することが先天的に出来ないのではないかと考えたのだ。
ただ、残念ながら爆発の理由までは思いつかなかったが。

「えっと、それってルイズさんの前に球体のATフィールドを張って……」
「違うわ!それじゃまた、たぶん爆発が起こっちゃうと思う」

ルイズが提案したのは、ロマリア聖堂騎士団の聖堂騎士が得意とする合体魔法。秘術と言われる、賛美歌詠唱。しかしそれは、血を吐くような訓練と統率の果てに使用が可能になる奇跡の業。
もちろん、戦闘用に特化した呪文を戦場で使用するために訓練するわけだが、そこまではルイズも要求しない。
フライでもレビテーションでも、ファイヤボールでもいい。とにかく、魔法を使えるようになりたい。いや、使ってみたいのだ。

「一緒に杖をつかんで、あたしの詠唱に合わせて呪文を唱えて、そして合図をしたら燃え盛る炎をイメージして」

火系統を選択したのはもっともイメージが簡単で合わせ易いから。

「呪文はウル・カーノ(発火)よ。いいかしら。まずは練習よ」
「はい、ルイズさん」

二人でルイズの杖をつかむ。

「「ウル・カーノ」」

呪文詠唱の終わりと同時に、杖に添えた手をルイズが握る。

(合図だ)

シンジは燃え盛る炎をイメージ。
杖のすぐ先に光り輝く球体が現れる。2~3サントほどのそれはみるみる30サントほどになった。

(ヤバイ)

そう思った時には、もうシンジはその球体をATフィールドで包み、上空に放り上げていた。

(できるだけ、できるだけ上空に)

ルイズも何も言わず、急上昇する光る球体を見つめている。あたりはもう夕暮れに近いため、いくら離れても見えなくなることは無い。
だが、厚い雲に覆われた上空までその玉が持ち上がり見えなくなる。
さすがにもういいかとシンジはATフィールドを解除した。次の瞬間、空にもうひとつの太陽が一瞬だけ現れ、光の玉を覆い隠したはずの雲は数百メイルに渡り、消し飛んでいた。十文字の閃光とともに。
十数秒ほど後、特大の雷鳴が辺りに響き渡った。

“ドォ――――――――――――――ン!!!!”






シンジとルイズは、驚き騒ぐ学院内になるべく小さくなって帰ってきた。
皆、上空を見つめ、あるものは始祖ブリミルに祈り、あるものは戦争だ!天変地異だ!と騒いでいた。 いずれにせよ、目立たないよう帰ってきた二人に注意を払うものは無く、無事学院内の寮に入り込めた。
そして、もう少しでルイズの部屋の扉の前、と言うところでキュルケに会ってしまった。彼女はこちらを確かめると、足早にこちらに近づいてきた。

「ルイズ!ルイズさっきのを聞いた!あれを!あれを見た!」

キュルケが珍しく慌てている。

「エエ、トッテモスゴイ音ダッタワネ、シンジ」
「マッタクデス、ルイズサン、ボク、ビックリシチャイマシタ」

二人とも眼が泳いでいて、台詞が棒読みである。

「ジャア、キュルケサン、ゴキゲンヨウ」
「ソウネ、シンジ勉強ノジカンヨ」

そう言って、部屋に逃げ込もうとする二人の頭を、キュルケがわし掴みにする。

「ま・ち・な、さい!」
「「ひぃー!」」




ここは、キュルケの部屋である。

「さあ、キリキリ白状なさい。一体なにをどうしたら、あんな馬鹿みたいな炎が起こせるの。……リアルで紅茶吹いたわよ」
「あ、あのーですね。ルイズさんと魔法の練習をしていただけ……」
「そ、そうそう、シンジと二人で近くの林でね……」
「ルイズの爆発は知ってるわ。それでもあんな感じじゃなかったはずよ。……一瞬だけだったけど、攻城クラスの火の魔法なんて御伽噺ぐらいにしか出て来やしないわ」

キュルケは一旦喋るのを止め、少し考えた。
火系統魔法は情熱と破壊と、……不器用と大雑把の代名詞である。
だが、収束率を高め温度を上げ、なおかつ炎を維持するのは、実は非常に困難な作業である。
それを可能にするのは、才能もあるが、たゆまぬ努力と訓練の結果である事をキュルケは知っている。そうして、彼女はトライアングル・メイジの称号を得たのだから。
そのキュルケにして、後先考えずに全力で炎の玉を作り出しても、たぶん2メイルはいかないであろう。
どちらかと言うと、温度と操作性、そして維持力が課題になる。
だが、あの時見た炎の玉は、はっきりとはわからないがたぶん2百メイルほどは在ったはずである。

「ルイズ……彼ね」

そう言って、シンジを杖でさす。

「な、なーにを言ってるのかしらキュルケったら?彼は魔法のつかえない国から来たのよ」

横を向いて、視線を天井近くの壁に這わせるルイズ。

(だから、わかりやすいってば)

キュルケはふと立ち上がり、窓を開けて言った。

「あら、ルイズのいた林から煙が上がっているわ」
「えっええー」

ルイズは慌てて窓に駆け寄り、自分のいた林のほうに目を向ける。シンジが止める間もなかった。

「あ~ら、ルイズ、あそこにいたの。ふーん、ちょうど火の玉が現れた空の真下ね」
「くうぅー」

今の台詞で嵌められたことを知った。シンジは頭を抱えている。

「な、何の証拠にもならないわよ」
「証拠って、な~に?あたしはただ火の玉が現れた空の真下の林に、どうやらルイズとその使い魔君がいたらしいって事を、教室のみんなと噂話しようと“思ってるだけ”、なんだけどねぇ~」
「ぐむぅー」

(チェック・メイト)、シンジはそんな言葉を思い出しながら天井を仰いだ。



「へぇ、「賛美歌詠唱」ねぇ、よく知ってるわねルイズ」
「本式とは違うだろうし、呪文だって極簡単なものだけどね、シンジには、あたしの魔法の結界場を作ってもらいたかったのよ」
「……」
「それで、シンジと一緒に杖を掴んで発火の呪文を唱えたの」
「発火、あれがただの発火ですって!火の秘薬をどれだけ使ったの?」
「火の秘薬って、火薬とかですか?」
「硝酸、燐、炭塵、硫黄、あたしが知ってるのはこのくらいだけど、それらを理想的に混ぜ合わせたものを、そうね、薪桶(バケツ)に1杯ばかり、それをライン以上の風メイジに空気を攪拌させて空中に浮かす、それを2リーグほど持ち上げて雲の中に、そして発火、手順はこんなものかしら?
2リーグもレビテーションをかけられるメイジは、知り合いには居ないけど。フライも同様にね」

フライはともかくレビテーションは、たとえベテランでも限界は自分の体から100メイルほどである。そして、この二つを同時に行使できるメイジはいない。
ちなみに持ち上げる重さに関しても自分の体重の三~六倍ほどが限界である。

「仮に出来たとしても、発火の呪文を唱えた瞬間爆死するわね」
「特別なことは何もしていないわ、火の秘薬もなし、正直、発声練習ぐらいのつもりだったもの……まさか、あんなことになるなんて思わなかったわ」

ルイズは憮然とした表情で言った。

「彼の潜在力を、成竜クラスって言ったけど上方修正ね、火韻竜クラスだわ、……ねーえ、シンジ君あなた、ほんとに人間なの?」
「……先日、皆さんに見て頂いた通りです。僕は人間ですよ」

(……精霊様、少々おふざけが過ぎますよ)
「いや、ふざけてなんか・・・フレイムさん?」
(どうぞ、フレイムとお呼びください、精霊様)

「まった、まった!シンジ君、フレイムもちょっと待ちなさい。……二人ともご主人様を差し置いて、なにを喋っているのよ?」
「きゅるる……」(すいません、ご主人様)

一鳴きして、首をすくめるフレイム。

「いや、ちょっと世間話を……」

キュルケはそれを聞いて、ハッとした。
いくら、あけっぴろげなキュルケでも秘密の一つや二つ持っている。
それがもし、フレイムの口からシンジに漏れ、それがルイズに伝わったら……。

「シンジ君、フレイムに言って、あたしの事は、一言も言わないようにって!」

キュルケは自分の想像に気が動転していて、普通に命令すれば、フレイムは『服従』することを忘れていた。だが一応、シンジはキュルケの言に従い、言われたことをフレイムに伝えた。

「きゅう、ぐるるる……」(わかりました、ご主人様)
「わかりました、って言ってます」
「ふう」

安堵の溜息をもらすキュルケ。
そして、その溜息を、いい加減この尋問もどきから逃げ出したいルイズが、聞き逃すはずが無かった。

「あらキュルケ、なにを安心しているのかしら」
「へっ」
「シンジはあたしに、忠誠度MAX、つまりあたしが命令すれば、シンジはいつでもあたしの為にフレイムから情報を引き出すことが出来るのよ」

「い、いや、あの……」

シンジの発言を眼力で止めるルイズ。
(喋んな!空気嫁!)とその眼は言っていた。

「……」





「……と言うわけで、キュルケ、あんたは今日の事を内緒にする、あたしはシンジにキュルケの事は聞き出さないよう、『ギアス』(絶対服従の魔法)をかける、って事でいいわね」
「ちょっと、ルイズ。そんな上級魔法使えるの? いやいや、それ禁呪だから」
「なにを言ってるのよ、こいつはあたしに、忠誠度MAXだって言ったでしょ。あたしが命令すれば、それはすなわち絶対なのよ」

(うーん、そーかなー、ほんとかなー?)といささか疑いの眼で見るキュルケ。

ゴシップはあまり好きではない、いやどちらかと言うと嫌いなシンジは、ルイズとキュルケの掛け合いを黙って聞いている。手持ち無沙汰にフレイムをなでながら。




「はふぅ、参ったわね」

ルイズとシンジは、やっと、キュルケから開放され、自室に戻ってきた。

「だけど、やったわねシンジ。とうとう魔法が成功したのよ。それもあーんな大きな炎を出すなんて、スクエアクラスのメイジにだって不可能よ。なにが、どうなったのかは良くわからないけど、確かにあたしの中の何かが引きずり出された感覚があったわ。あの炎は確かに私の魔法だった。でも、精神力が全然減った気がしないの、あんなの百発だって打てそうよ」

ルイズは手放しに喜んでいた。どうやら今頃になって喜びが沸いてきたようだ。

「おめでとうございます」
「ありがとうシンジ、お前のおかげよ、あしたの買い物も楽しみね、期待してて頂戴」
「はい、……それとルイズさん、ちょっと散歩に行きたいんですがかまいませんか?」
「ええ、よくってよ。でも、もうすぐ夕飯だからなるべく早く帰ってきなさい。あまり遠くには行ってはダメよ。学院の外に出るときは門番の衛兵に……」

何か、『お母さん』といった感じの台詞をとうとうとシンジに言い始める。

「……そういえば、何しに行くの」
「え、いやーちょっと剣を振ってこようかと思いまして」

少し前に、ギーシュに錬金で作ってもらった、ふた振りのナイフを見せる。
なるほど、と納得するルイズ。

「そう、何事も練習は大事よね。近くの森にはそう危険な獣は居ないはずだけど、気をつけてね」
「はい、ルイズさん」





シンジは、先ほどの林とは学院をはさんで逆側の森に来ている。
最初に行った林には、原因究明のための先生方や、野次馬の生徒たちが入り込んでいたせいだ。
シンジは森に入ると、ナイフを片手に持ち、ガンダールヴの力を発動させる。
肉体的なコンプレックスのあったシンジには、この力はうれしいものだった。しばし、森の中でターザンごっこに興じながら、目的にあった場所を探す。しばらくすると、目的に合いそうな広い場所に出た。

近くに川があり、周りは最近切ったであろう切り株だらけである。近くに人が居ないか、慎重に辺りを見渡しながら、中央に出る。実はシンジは、使徒の破壊光線を打つことが出来なかった。
今まで、打てるとも、打ちたいとも思わなかったし、打たなければならない理由も無かった。

だが、先ほどの、ルイズとの魔法実験でやり方がわかった。
あの時現れた光球の輝きに、使徒が破壊光線を打つ際に、目の奥で光った光と同じ物を感じたからだ。シンジは自分の考えが正しいかどうかの実証に来たのだ。

(あの時は、確か……)

シンジはATフィールドで、バレーボールほどの小さな球体を作り出す。その中にごく小さな空間を作り、そこにわずかに『アンチATフィールド』を流し込む。

変化はすぐに現れた、ATフィールド内部でアンチATフィールドが反発し、内部壁に反射をするたびにスピードが上がり、エネルギーが増すのだ。代償は、ATフィールドの内部の壁だろう。
内部のエネルギーが増すたびに、ATフィールドの内側の壁が薄くなっていくのを感じる。
パチパチ音がし始め透明だったATフィールドの球体は白く発光し始めた。
輝きがどんどん強くなる。
シンジは意図的に、球体の壁の一部を薄くした。

バンッと乾いた音がした。

五メイルほど先の川の近くの地面に、直径30サントほどの穴があく。深さはわからない。そこだけ地面が消失したように消えている。
穴の周りだけオレンジ色に輝き、ものすごい熱量だったことがわかった。

しばらく威力の検証をした後、シンジは穴の周りに川の水をかけ、発熱が下がったのを確認すると学院にもどった。




シンジがその場所を後にして、しばらくたった後、森のさらに奥の方から声がした。

「えらいものを見ちゃったのねー、さっそくお姉さまに報告するのねー」

その森を根城にしている青い風竜だった。




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