(この体じゃ、ピンク共を根絶やしにすることなんてできねぇ!!オレ本来の超絶なパウワなバディに戻らねぇとヤベェぜ・・・。)
ラリカのバディにデュマの精神、そんな彼は今全力疾走で学園の食堂を目指していた。
しばらく走り、ようやく扉の前に着くと、膝を押さえて肩で息をする。
(ハァハァ・・・、なんて燃費の悪い体よ・・・。つくづくイラつく野郎だぜメイルスティア!!)
怒りに任せ、扉を勢い良く開けた。
食事の時間も間もなく終了なのか、先ほどは生徒で賑わっていた食堂も、今はガランとしており、残っている生徒もまばらである。
そんな中、彼はゆっくりと自分の体があるであろう場所へ向かって前進する。
(フヘヘ・・・、手間ぁかかせやがって。どうすりゃ元に戻るかは知らんが、強く念じればどうにかな・・・!?)
ある地点に到達したところで、デュマの思考が止まった。
「げぇぇぇええ!!?オレの体がなくなっとるぅぅぅ!!」
思わず大声を上げるデュマに、食後の団欒を楽しんでいた生徒達の注目が集まる。
「だ・・・誰だ!?誰が隠したぁぁぁぁぁ!!」
更に叫び、一番近くにいた女生徒に掴みかかる。
目を充血させ、歯を剥き出して威嚇するデュマ。
「テメェかコラ?」
「へ?」
あまりに急な展開に、間の抜けた声を出してしまう女生徒。
その態度にムカついたデュマが拳を握り締める。
「ちょっとメイルスティア!!なんなのアナタ?」
後方から急に注意されたデュマがゆっくりと振り向くと、そこには金色の見事な巻き髪とそばかすを持った女生徒が立っていた。
「あぁん?」
「ああんじゃないわよ。さっきも食事の途中に変な使い魔が暴れるし・・・、今度は急に喚き散らして。恥を知りなさい。」
巻き髪の女生徒、モンモランシーが畳み掛けるように言う。
それを聞いてデュマはもう1人の女生徒から手を離し、ニヤリと笑みを浮かべた。
「ヘヘヘ・・・、テメェ・・・、誰に向かって言ってんのか分かってんのか?」
「誰?そこの恥知らずな極貧貴族さんにだけど?」
「ククク・・・、アヒャヒャヒャ!!!ヒャ~ッハッハッハッハッハッハァ!!」
急に大声で笑い出すデュマにたじろぐモンモランシー。
「ぶっ殺す!!」
カッと目を見開き、目の前のモンモランシーに襲いかかろうとしたが、突然現れた青銅のゴーレムに阻まれて足を止めざるを得なかった。
無言で佇む青銅のゴーレム『ワルキューレ』。
「待ちたまえミス・メイルスティア。」
一瞬間を置いて、モンモランシーと同じ金色の巻き髪の男子生徒が現れた。
服にはフリルまでついており、その話し方と同じく優雅な貴族を感じさせる。
「例えレディでも、僕のモンモランシーに手出しは許さないよ?」
目が合うと、軽くウインクをしてそう言う男子生徒、ギーシュ。
ゆっくりとモンモランシーへ近づき、その肩に手を置く。
「僕のモンモランシー、怒っている君も素敵だけど、いつもの優しい君の方が僕は好きだな。」
「だって、この子が・・・。」
「誰かと思ったらテメェ、アレじゃねえか?サイトのカスにいたぶられてたザコ。」
しばらくボケっと話を聞いていたデュマがようやく口を開くと、ギーシュの顔が思わず引き攣る。
「テメェらカスに用はねェんだよ!!ここにいた超イカしたヤツはどこに行ったのかって聞いてんだよ!!」
そう叫んでバンバンと地面を叩くデュマ。
「ミ・・・ミス・メイルスティア・・・。この僕をザコ呼ばわりするのは頂けないが・・・、もしかして君はそこにいた彼を探しているのかい?」
デュマが叩く地面の辺りを指差すギーシュに、デュマの目が光る。
ゴーレムを避けて2人に近寄ると、先ほどとはうってかわって上機嫌で話し出す。
「え?知ってんのお前?超役に立つじゃん?」
「ちょっ・・・ちょっと近いわよ!!」
ギーシュに接近したデュマを制するモンモランシー。
中身はデュマだが、体はラリカ。はたから見たら女の子に違いない。
「 そんなに知りたいのだったら教えてあげなくもないよ。ちなみに・・・、そんなに必死になって探している理由は何なんだい?」
「決まってんじゃん。手に入れるためよ!!」
ギーシュの目の前で拳を握り締めるデュマの目はギラついている。
そんな彼女(彼)の言葉に、ギーシュも小さく微笑む。
「情熱的だねミス・メイルスティア・・・。」
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つづく