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No.26782の一覧
[0] 【ゼロ魔】チート少女は、普通に生きたいようです。【オリ主・TS転生チート?】[くきゅううう](2013/11/21 00:46)
[1] 第一話「少女は転生事故の被害者のようです」[くきゅううう](2011/04/08 23:34)
[2] 第二話「少女は名前をつけるようです」 ※リースの容姿について追記。『根暗と言われるような~』の下辺り。[くきゅううう](2011/04/08 23:57)
[3] 第三話「少女は怖いようです」 ※4/12 小瓶を拾うの、シエスタからサイトへ修正。[くきゅううう](2011/04/12 23:37)
[4] 第四話「少女は友達が少ないようです」 4/12 小瓶を拾うの、シエスタからサイトに変更。それに伴う会話文を修正。[くきゅううう](2011/04/12 23:40)
[5] 第五話「少女は誓われるようです」 ※4/8 最後の方に追記。2回目[くきゅううう](2011/04/08 23:41)
[6] 第六話「少女は嬉しいようです」 ※4/14修正 タバサの「お願い」をなかったことに。[くきゅううう](2011/04/14 19:25)
[7] 番外編01「少女の穏やかな日々」 5/19微修正 位置変更[くきゅううう](2011/05/19 14:41)
[8] 第七話「少女は戸惑うようです」[くきゅううう](2011/04/15 16:01)
[9] 第八話「少女は貫かれるようです」※グロ描写有りにつき注意。[くきゅううう](2011/04/18 02:01)
[10] 第九話「少女は受け止められるようです」[くきゅううう](2011/04/20 11:13)
[11] 第十話「少女は暴れるようです」※5/10色々修正、追記 グロ描写有り注意[くきゅううう](2011/05/19 12:18)
[12] 第十一話「少女は装うようです」[くきゅううう](2011/05/19 14:40)
[13] 第十二話「少女は読み上げるようです」[くきゅううう](2011/05/30 00:25)
[14] 第十三話「少女は伝えるようです」[くきゅううう](2011/09/16 23:56)
[15] 第十四話「少女は傷つけるようです」[くきゅううう](2013/11/29 00:52)
[16] 第十五話「少女は謝りたいようです」[くきゅううう](2013/11/29 00:52)
[17] 第十六話「少女は仲直りするようです」[くきゅううう](2014/05/22 00:23)
[18] 第十七話「少女はときめくようです」[くきゅううう](2014/05/26 01:17)
[19] 第十八話「少女は幸せそうなようです」[くきゅううう](2014/05/27 16:02)
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[26782] 第三話「少女は怖いようです」 ※4/12 小瓶を拾うの、シエスタからサイトへ修正。
Name: くきゅううう◆a96186a0 ID:59dccddd 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/04/12 23:37



「……お、リースじゃん。おはよ」


 召喚の儀式が行われた翌日の朝。
 少し早く目が覚めたのでブリスと学院内を散歩していると、サイトが声をかけてきた。
 どうやら彼は、洗濯の仕事をしているらしい。眠そうにあくびしながら、桶に入った洗濯物をごしごしとこすっている。


「おはよう。ルイズとは、仲良くやれてる?」

「いいや、まったく話になんねえよ。あいつ、俺のこと人間だと思ってねえよ」


 ルイズとサイトの相性は、とても悪いらしい。
 昨日、2人と別れるまでの間に見ていただけの自分でも、それは納得できた。


「今だってこれ、あいつの下着洗わされてるんだぜ?」

「……!? ちょ、それルイズの物だったの!?」


 思わず戸惑う。
 自分の視線からでは、洗い物が何なのか詳しくは確認できなかったのだ。


「俺もどうかと思うって言ったんだぜ? けどこっちの意見なんて聞かねえし、『仕事しなきゃ飯抜きよ!』って脅しやがるし……嫌になるぜ、ったく」

「……その割には嬉しそうじゃない?」

「へ!? い、いや! そんなことナイデスヨ?」


 文句を言いつつも、サイトの口元はにやけている。
 女性としては咎めたいところだが、彼とて主であるルイズからの命令に従っているだけだ。
 サイトは、使い魔としての責務を果たそうとしているのに、私が彼を怒るのもおかしいかもしれない。
 もしかしたら、ルイズにも何か考えがあるのかもしれない。
 しばらく様子を見て、明らかに問題ありと感じた時は何らかの対策を考えればいいだろう。


「まあ、ルイズ本人が納得しているなら、いいか。頑張って」

「おう、サンキューな。……つっても、これでもう終わりだけど、な」


 そう言って、彼は洗い終えたらしいルイズの下着を桶から取り出す。
 他の洗濯済みの下着を入れた籠に、最後の一枚を放り込んで、彼は「よっと」言いながら立ち上がった。


「……なんか、手馴れてる?」

「い、いやいや! 女物の下着触るのなんてこれが初めてだよ! さっき親切なメイドさんに詳しく教えてもらっただけで……って、噂をすれば戻ってきた」


 彼の視線の先を追うと、1人のメイドが洗濯物の詰った籠を持って歩み寄ってきた。
 トリステインでは珍しい黒髪の、優しそうな少女だ。


「サイトさん、終わりましたか? そろそろ干しに行かないと……あ、ミス・リロワーズ。おはようございます」

「おはよう、シエスタ。お仕事ご苦労様。……そうだ。申し訳ないんだけど、私の使い魔ねこだから部屋の中に毛が落ちちゃって……」

「はい、分かりました。掃除の際に気をつけるよう、他の方にも伝えておきます」

「助かるよ、ありがとう。自分でも少しは掃除したんだけどきりがなくて……今度お茶でも奢るよ」

「いえいえ、これが私達のお仕事ですから。お気になさらず」


 私とシエスタの会話を、しばらく黙って聞いていたサイトが、会話の切れ目を狙って質問してきた。


「……もしかして2人って、知り合いなのか?」 

「はい、初めて会った時に『君、私とどこかで会ったことない?』と口説かれてしまいました」

「……え? なに、リースってそういう趣味の人?」

「シ、シエスタ。それは内緒にする約束……サイト、そうじゃないんだ、あれは……」


 学院で、初めてシエスタを見た瞬間、何故かとても懐かしい気持ちになって、思わず言葉にしてしまったのだ。
 一応誤解は解けたけど、今でも時々からかわれる。
 普通なら、平民が貴族にそんな態度をするなんてとんでもないことだけど、私は気にしていない。
 むしろ、親しく接してくれることに、安らぎを感じている。
 もしかしたら、私が友人だと胸を張って言えるのは、今のところシエスタだけかもしれない。
 彼女がどう思ってるのかは分からないから、片思いかもしれないけれど……いや恋愛的な意味ではなくて。

 しかし何故、シエスタに懐かしさを感じたのか未だに分からない。
 子供の頃に出会ったことはないはずだ。出身地も離れているため、接点があるとも思えない。
 だけど、シエスタを……というより、彼女の黒髪を見ていると、自分でも説明できないが、懐かしいと感じてしまう。
 ……そういえば、サイトも黒髪だ。
 そう思って改めて彼を見ていると、こう、シエスタの時と同じような気持ちが……。


「サイト。私達、もっと昔に会ったことない?」

「りょ、両刀使い!? いや人の趣味とやかく言う気はないけど、大人しく見えて意外とアグレッシブ!?」

「わ、私という者がありながら!?」

「あ、いや! 違うんだそういう意味ではなくて! シエスタもからかうのやめて!」


 呟いてしまった言葉の意味に気付き、慌てて訂正しようとした時、学院の鐘が鳴った。
 どうやらけっこう時間が過ぎていたらしく、起床時間になっていたようだ。


「あ、お、おれルイズ起こしにいかないと!」

「私もお仕事が! リースさん、サイトさん、失礼します!」

「ってああ!? おれまだ洗濯物干してねえ!」

「サイトさん、そちらの分も私がいっしょに干しておきます!」

「ご、ごめん、サンキュー!」


 呼び止める間もなく、2人は駆け足で去っていってしまう。
 シエスタは、分かった上でからかっているんだろうけど、サイトは私のことをどう思ったのだろうか……。


「……また、やっちゃった」


 はあ、と溜め息をつく。
 他人との交流に慣れていないなのだろうか。
 いざ知人と会話をすると、思ったことをそのまま呟いてしまったり、変なことを言ってしまうことがある。
 誤解、解かないと……けどシエスタの時も、ちゃんと分かってもらうまで時間がかかったし、今回もちゃんと説明できるのだろうか。

 もう一度溜め息をつくと、足元でブリスが「にゃー」と鳴いた。
 ……とりあえず、朝食の時間だし食堂へ行こう。
 サイトとは、また後でじっくり話し合うしかない。
 今できることは、ご飯をしっかり食べて、授業に行くことぐらいだ。


   ○


 食堂でも、ルイズとサイトは言い争っていたらしい。
 私とルイズ達の席は離れていたため、事情はよく分からない。
 とにかく2人とも不機嫌な様子で、話しかけられる雰囲気ではなかった。

 食堂からそのまま教室に向かう。朝食後はすぐに授業が始まるので、部屋に戻っている時間はない。
 新学期最初の授業は、使い魔のお披露目と、1年生の頃に学んだことの復習。
 それと新しいクラスメイトとの顔合わせが主な内容だ。


「ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を、強く心に思い浮かべるのです」


 ミセス・シュヴルーズが教壇で、ルイズにそう呼びかけている。
 授業中にサイトと私語を交わしていたのを注意されて、罰として“錬金”の実技を行わされているのである。
 周囲の生徒は「先生、考え直してください!」「ルイズ、お願いだから止めて!」と大騒ぎだ。

 ルイズの魔法は成功率ほぼゼロ。魔法を使おうとすると、失敗して爆発する。
 リースも噂で聞いたことはあるし、召喚の儀式の際にも……あの時はブリスに夢中だったからいまいち覚えていないが、何度も爆発音がしていたような、気がする。
 けど、サイトを召喚することはできたんだ。絶対に失敗するとは限らないはず……だと思う。

 周囲の静止を振り切り、ルイズは詠唱を始める。
 間違いなく“錬金”の呪文が唱えられて、それが壇上に置かれた小石を対象にして発動する……その瞬間。


「――!?」


 ズキン、と。
 急に、耐え難い頭痛に襲われた。
 脳髄に直接、氷柱を突き入れられたような、おぞましい感覚。
 思わず悲鳴を上げそうになった私の脳内に流れ込んでくる、鮮烈なイメージ。
 そのイメージの中で、ルイズの魔法は失敗して爆発する。
 教室内の使い魔達がパニックになって暴れて、ミセス・シュヴルーズは気絶して、授業は中止。
 ルイズはぼろぼろの格好で「ちょっと失敗したわね」なんて呟いて、周りの生徒達から文句を言われて――。


「……な、に。いまの、は」


 飛びそうになる意識をなんとか繋ぎとめて、ルイズの様子を見る。
 彼女が魔法を唱え終わった瞬間、小石は……私の脳内に流れ込んできたイメージと同じように、爆発した。
 使い魔達が暴れて、ミセス・シュヴルーズは気絶して、授業は中止。
 そしてルイズが「ちょっと失敗したわね」と、呟く。
 何もかも、あのイメージと同じ結果となった。


「……何なんだ、いったい……!」


 未だ余韻の残る激しい頭痛が辛くて、思わず目の前の机に頭を抱えて突っ伏す。
 爆発の影響で騒がしい教室内に、私の呟きが聞こえた人はいなかったらしい。
 もっとも、聞こえたところで……私に起こった現象を信じて、理由を説明できる人なんて、いるのだろうか。


   ○


 時間が経つと、あの謎の頭痛も治まっていった。
 念のため医務室の先生に診察してもらったが、特に異常は見当たらないとのことだった。
 イメージ云々については話していないし、言ったところで信じてはくれないだろう―― 一瞬先の未来が見えた、なんて。


(こんなこと、今まで一度もなかったのに……)


 物心ついた時から、強すぎる力は持っていた。
 けど、未来が見えたなんてことは一度もないし、あんな激しい頭痛だって今回が初めてだ。


(私、どうなってるんだろう。どうなっちゃうんだろう)


 痛みは消えても、不安は拭えない。
 誰かに相談したらいいのか。相談しても大丈夫なことなのか。そもそも誰に言えばいいのかも、分からない。

 私がそんな風に悩んでいても時間は過ぎていき、昼食の時間になった。
 周囲の喧騒を無視して、自分の身に起きた異変について、どうすればいいのか考えていると、クラスメイトの男子達の大声が聞こえた。


「ギーシュと平民が決闘するぞ!」

「場所はヴェストリの広場だ!」


 そんな言葉が聞こえたと思った瞬間だった。
 先程教室で起こったのと同じ、突然の頭痛。そして浮かんでくるイメージ。


「がっ……ぅあ……!」


 2度目だから慣れた、なんてことはまったくない。
 むしろどれほど痛いか理解している分、またあの苦しみを味わうのかと思うと泣き出したくなる。
 けど、そんな私の気持ちなんて構うことなく、イメージはこの後の未来を伝えてくる。

 何度傷つき倒れようとも、ギーシュに挑み続けるサイト。
 ずっと劣勢だったサイトが、剣を握った瞬間戦況は覆る。
 圧倒的な強さで逆転勝利するサイト。
 けど、大怪我をしていたサイトは気絶して、医務室に運び込まれる――。


「……とめ、なきゃ」


 自分に何ができるのかなんて、分からない。
 サイトと私は、昨日出会ったばかりで、友達と言える程の付き合いはないかも、しれない。
 最後にちゃんと勝てるというなら、私が庇う必要なんて、ないだろう。
 だけど、傷つくと分かっている相手を放っておくわけには、いかない。

 頭を抑えながらも席を立とうとした。
 だが、頭痛のせいなのか、眩暈がしてふらつき、椅子に躓いてしまう。
 倒れてしまった身体を起こそうとするが、全身に力が入らず、また倒れてしまう。


「ミ、ミス・リロワーズ!? どうかなされましたか!?」


 声が聞こえる。
 その声の主が誰なのかも分からないまま、私の意識は――。


  ○


 目が覚めると、医務室だった。
 どうやら倒れた後、ここのベットに誰かが寝かせてくれたようだ。
 ゆっくりと身体を起こしたところで、部屋内を仕切っているカーテンが開いた。
 カーテンを開けたのはシエスタだ。水の入った小桶とタオルを持っている。


「あ、目が覚めましたか? リースさん」

「……シエスタ、君が介抱してくれたの?」

「いえ、私はついさっき交代したところで……ほとんどの処置は、別の方々が」


 意識がはっきりしていくにつれて、倒れる寸前のことも思い出してきた。


「サ、サイトは!? 決闘はどうなったの!?」

「……いま、ミス・ヴァリエールの部屋で療養されています」


 シエスタの表情が少し曇ったように感じて気になったが、まずはサイトのことを確認しようと思い、立ち上がろうとする。


「ま、まだ寝てないとだめですよ!」

「けど……サイトが……!」

「サイトさんは、その……大怪我をしていますが、治療はもう済んでいて、命に別状はないそうです」


 私が気を失っている間に、決闘は終わっていたらしい。
 あの時見えたイメージでは、決闘後の様子は分からなくて不安だったが……サイトの命は助かったようだ。
 それを理解すると、身体から緊張と共に力が抜けた。ベットに再び倒れこむ。


「……私、逃げちゃったんです」


 シエスタは懺悔するように、落ち込んだ様子で呟いた。


「サイトさんが、ギーシュ様と決闘すると騒ぎになって……私、怖くて、1人で逃げ出してしまったんです。
 サイトさん、こんなにボロボロになってまで立ち向かっていたのに。
 私は自分のことばかり考えて、サイトさんを見捨てて、逃げて……」


 シエスタの瞳から大粒の涙が、床に零れた。
 平民は貴族に敵わない。平民が逆らえば、貴族はそれを厳しく罰する。
 魔法を使えるか、否か。その差は、超えられない壁として、確かに存在している。
 だから、平民のシエスタが、魔法が使える貴族を恐れることを……どうして、責められるというのか。


「シエスタは、悪くない」

「で、でも!」

「サイトも、シエスタが自分を責めてるって知ったら、たぶん悲しむよ」


 まだあまり親しくない間柄だけど、サイトは女性が嘆き苦しむことを喜ぶような人間ではないと思う。
 その考えを伝えると、シエスタはしばらく考え込んで、彼女自身が考えた答えを言った。


「サイトさんの目が覚めたら、まずは謝って、それから……どうするか考えようと思います」

「……ん。それでいいんじゃないかな」


 事情に詳しくない私には、それ以上何か言うことはできそうにない。
 結局は、当事者同士が話し合って、今後のことを決めていくしかないのだろう。



 私の容態が落ち着いているのを見て安心したのか、シエスタはしばらくすると医務室を退出した。
 サイトのところへ行ったのか、別の仕事があるのかは分からない。あるいは両方こなしているのかもしれない。
 私は、ベットに横になって考える。
 あの、頭の中に直接刻み込まれるようなイメージは、確かに未来の光景だったようだ。
 2回とも、あのイメージと同じ結果になっている。偶然と考えるのは、難しいだろう。

 どんなタイミングであのイメージが流れ込んでくるのかは分からない。
 だけど……そのまま放っておけば、イメージと同じ未来になるようだ、ということは分かった。
 この先、あれがいつ起こるか分からないけど、もし大変なことが起こった時は、今度こそ――。


「……今度こそ、何だっていうんだ」


 自分の浅はかな思いつきに、自虐の意味を込めて溜め息を吐き出す。
 あのイメージが頭に浮かぶ時、私は激しい頭痛に襲われている。
 2回目ではついに意識を失った。次は……無事に済むとは限らない。
 いつ倒れるか分からない自分が未来を変えようなんて、思い上がりもいいところだ。

 そもそも、私に何ができるというのか。
 私には確かに、化け物じみた魔法の才能がある。その力を使えば、大抵のことはできてしまうだろう。
 けど、それを使うということは、今までついていた嘘をばらすということ。何より……化け物な私を他の人に見られる、ということだ。それは、とても怖いことだ。
 子供の頃に父親が呟いていた一言が、今でも悪夢として現れるぐらいに、私が恐れて、避けていること。
 
 その恐怖に負けて、私は――今すぐ自分を回復させて、サイトの元に行き、彼の怪我を完全に治癒するという、とても簡単な解決策を選べないでいる。


「最低だ、私……自分のことを守りたくて、みんなを見捨ててる」


 彼はきっと助かるだろう。
 けど、怪我が完治するまでの間に彼や、彼を看病する人達に与えられる負担はあるだろう。
 その負担を、私は一瞬で取り除けるはずだ。なのに、やらない。
 ただ、自分のことが大切だから、それ以外を切り捨てている。


「……ほんとに、さいていだ」


 シーツに顔を埋めて、勝手に漏れてくる嗚咽を無理矢理、押さえ込んだ。
 もちろん、その程度で私の罪悪感が消えるわけがなかった。




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