それは僅かな兆候だったのかもしれません。 けれど私はそれを甘く見ていました。 しかし、仮に甘く見ていなくても私に何ができたのかはわかりません。 所詮私は一個人でしかなく、その力にも限りがある。 私の存在の目的が――――である以上、私は「救済者」ではないのだから。 ウルの月、第一ユルの曜日にフリッグの舞踏会は開かれる。 女神の名を与えられたこの舞踏会には、ある言い伝えがあった。 この舞踏会で一緒に踊ったカップルは将来結ばれるという言い伝えである。 その為か、会場のあちこちでは恋の駆け引きが行われいた。 沢山の男子たちに囲まれながらも、輪の外の男子に必死に目線を送る女子だったり、意中の女子に断られたのかガックリと跪き、辞世の句まで唱えている男子もいた。誰か止めろ。 そんな中、この盛り上がりには加わらずひたすら食事を続けている者が二名いた。 ミルアとタバサである。 ちなみにミルアはルイズからのダンス指導を終えてからタバサと共に食事についていた。 ミルアは舞踏会での駆け引きをぼんやりと見ながら、「この舞踏会の言い伝えですが、あれですね『将来』結ばれるであって『永遠に』ではないのが怖いですね」「穿った見方しすぎ」 タバサの言葉にミルアは「そうですか?」と首をひねる。 トリスタニアでの食事のとき同様、二人は物理的にどうなってるのか疑問に思うほどの量を、その小さな体に収めていた。 タバサの理由は定かではないがミルアに関してはちゃんとした理由がある。 ミルアの小さな体に高出力の魔力。 カロリーの消耗が半端ないのである。 普段はルイズに遠慮して人並みの量しか食べていないミルアは、ここぞとばかりに食べていた。 いや、食い漁っていた。 タバサはハシバミ草のサラダをボウルごと確保し、抱えるようにして食べている。 このハシバミ草、栄養はあるのだが、とても苦く人気がないが、タバサは大好物だった。 ちなみにミルアもこのハシバミ草は結構食べる。「お肉ばっかりで葉っぱ分が足りません。タバサさんボウルごと取らないでください」 そう言いながらミルアがフォークを持った左手でテーブルをとんとんと叩くとタバサはボウル抱えたまま、明後日の方向を向いた。 どうやら譲る気は一切ないようである。 仕方ないと、ミルアは別のテーブルからサラダを取ってくるべく立ち上がろうとした。 しかしミルアのドレスを掴み、その目的を阻止しようとする者がいる。 タバサだった。 ハシバミ草のサラダが、何故彼女にそうまでさせるのかは謎である。「あなた達、踊らないの?」 不意に声をかけられミルアとタバサは振り向いた。 二人の視線の先には多くの男子生徒を引き連れたキュルケが立っていた。 意中の相手がいるわけでもなく誘われることもないミルアとタバサが積極的に踊るわけがない。 ミルアが誘われないのは、あやふやな身分ということもあるが、何より見た感じの歳が十にも満たないということがある。 無論そういう趣向の者もいるだろうが、少なくともこの大衆の中でそれを表に出す勇者はいなかった。 タバサに関してもミルア同様の理由がある。 ミルアよりも十ほど高い、百四十二サントの身長にすとんとした体つき。 ミルア同様の黒のパーティードレスは、タバサを大人っぽく演出しているがそれでも声をかけられることはなかった。 これはタバサが普段から話しかけられても無反応ということが原因である。 親友といえるキュルケはともかくミルアの言葉には返すことが珍しいのだ。「あなた達、同じ黒のドレスといい髪形といいまるで姉妹みたいね」 キュルケにそう言われミルアとタバサは顔を見合わせた。 短めにまとめたタバサの青い髪。 ミルアのように尻尾のような後ろ髪はないものの正面から見た髪形は確かによく似ていた。「そういえばイクスはどうしたの? あの子なら相手は沢山いそうだけど」 キュルケの言葉にタバサは無言のまま首を横に振る。 この瞬間イクス目当ての男子の夢は潰えた。ご愁傷様。 サラダを諦め席に着いたミルアと未だボウルを手放そうとしないタバサを見ながら、キュルケは僅かに考え込むと、「いいわ。私があなたたちの相手を探してきてあげる。特にタバサ、あなたはいつも料理を食べてばかりなんだから。これは親友である私からの命令だからね」 キュルケはそう言い、ウインクをした後、タバサの頬にキスをした。 そして、取り巻きの男子達を引き連れ、そのままタバサたちの相手を探しに向かう。 すると、キュルケたちと入れ違うように一羽の伝書フクロウが窓から会場内に飛び込んできて、タバサの肩に止まった。 タバサはフクロウの足に取り付けられた書簡をとり、その内容に目を通した。『出頭せよ』 いつもの様に短くそう書かれていたが、今回ばかりはそれだけではなかった。 その内容にタバサは軽く目を見開き驚く。 そして奥歯をぎしりと噛みしめ、傍らに立てかけてあった杖を手に立ち上がった。「どうかしましたか?」 フクロウがタバサの肩に止まったときから、その雰囲気が変化したことに気がついていたミルアが声をかけた。 するとタバサはちらりとミルアを見てから、「付いてきて」 そう言うとバルコニーへと歩き出した。 ミルアもその後を追う。「二人とも夜の散歩かい?」 バルコニーにたどり着くと、そこに立てかけられていたデルフが声をかけてきた。 タバサはデルフに、「伝えて。ミルアを借りる、と」 タバサの言葉にデルフがその柄をかちりとならし答えた。 そしてタバサは高く口笛を吹き、バルコニーから身を躍らせ、ミルアもそれに続いた。 バルコニーから身を躍らせた二人はそのまま、滑空してきたシルフィードの背へと飛び乗った。 タバサは何故かきゅいきゅいと泣き喚くシルフィードの頭を、杖でこつき黙らせる。「説明をお願いします」 その背にミルアの言葉を受けたタバサは手にしていた書簡をミルアに渡した。 渡された書簡を見たミルアは、「読めません」 ミルアのその言葉にタバサは、「そこには最初に『出頭せよ』と書かれてある」「その後は?」 ミルアの問いにタバサは僅かに沈黙した後、「その後には『ヴァリエール家の娘が面倒を見ている娘を連れて来い』と書かれている」 タバサの言葉に書簡を眺めていたミルアは、「これは何処からの手紙ですか?」 ミルアの問いにタバサは答えない。 仕方ないと、ミルアは、「何故私が?」「それは私にもわからない」 そう答えたタバサだったが、しばらく黙った後、小さく消えそうな声で「ごめんなさい」と謝った。 ミルアはその言葉を聞こえなかったかのように、何も言うことなく、無為に夜空を眺めた。「暇よ」 トリステインのお隣の大国であるガリア。 内陸部にある王都リュティスは人口約三十万のガリア最大の都市だ。 その東の端には、ガリア王家の者が暮らすヴェルサルテイルがあり、現在、王であるジョゼフ一世はグラン・トロワと呼ばれる青い大理石で組まれた建物で政治の指揮を行っている。 このグラン・トロワから少し離れたところにプチ・トロワという薄桃色の宮殿に暇をもてあましてる少女がいた。 年のころは十七ほど、ガリア王家独特の青い瞳に青い髪。 絹のような長髪が僅かに頭を動かすだけでさらさらと流れていた。 頭の上で輝く豪華な冠で前髪が持ち上げられ綺麗な額が嫌でも目に付く。 ジョゼフ王の一人娘、王女イザベラ。 それが彼女の名前だった。「暇よ」 イザベラがベットのだらしなく寝そべったままそうぼやくと、傍らに控えていた者がため息をついた。 黒地を黄色で縁取られたマントを羽織り、マントにつけられたフードを目深にかぶっている。 フードから顔を覗かせている長く白い髪と、なにより、豊かに盛り上がっている胸部がその者が女性であることを示していた。 その女性は腰に提げた剣を鞘の中でかちゃりと鳴らし、「いいかげん貴様の『暇』という言葉も聞き飽きたんだがな。斬るぞ?」 その言葉にイザベラはうんざりした顔で、「あんたの『斬るぞ』っていう言葉も聞き飽きたわよ。そもそも王族の私にそんな口聞いてる時点であんたが斬られるわよ普通」 イザベラがそう言うと、女性はくっくっとフードの奥で笑うと、「このガリアに私を斬れるほどの者が居ればの話だがな。魔法を使おうとしてもルーンを唱え終える前にそいつの首が飛んでいる」 心底愉快そうに笑う女性にイザベラはあきれていた。 これで私より年下っていうんだから世の中は広い。いったい父上は何処からこんなのを連れてきたのか。 イザベラがそんなことを考えていると、「貴様、今、失礼なことを考えてなかったか?」「あんたの口の聞き方に比べたらかわいいものよ」 イザベラにそう言われ女性、いや、少女は「ふむ?」と呟きこてんと首をかしげた。 こういう仕草はなんかガキっぽいな。 そう思いながらも、再び暇という言葉が口をついて出そうになり、イザベラはそれをなんとか飲み込んだ。 すると入り口に控えていた騎士が、「七号様参られました」 その言葉を聞きイザベラは舌なめずりをして王女には似つかわしくない下品な笑みを浮かべた。「ふむ、シャルロットが来たようだな」 少女が腕を組みそう言うとイザベラは軽く睨みつけるようにして少女を見て、「七号だよ。七号。いちいちその名で呼ぶんじゃないよ」 イザベラはそう言ってから何か思いついたようにニヤリと笑みを浮かべた。 そして少女を手招きすると、何かをごにょごにょと告げる。 イザベラから告げられた内容に、少女はやれやれといった声色で、「貴様も好きだな。今回はそういう趣向か。まったくよくあきもせずに……魔法の才能に対する嫉妬も、ここまでくるとみっともないな」 少女の最後の言葉にイザベラは真剣に少女を睨みつけるも、少女はどこ吹く風。部屋の隅にいる使用人達だけが、がたがたと震えていた。 すると入り口に控えていた騎士が、「イザベラ様。七号様が小さな少女を連れてきているのですがいかがいたしますか?」 騎士がそう告げるとイザベラは不機嫌そうに、「その子供も私が呼んだんだよ。かまわないから七号ともども中に入れな」 そう言ってから、傍らの少女に目配せをして、少女も小さく頷いた。 そのすぐ後に扉が開く音がして、イザベラがいるベットと扉の間の、天井からぶら下がっている分厚いカーテンがめくられる。 カーテンをめくって現れたのは七号ことタバサだった。 次の瞬間、タバサに向けて鋭い風が吹く。 正確にはイザベラの傍らに居た少女が腰に提げた剣を抜き、一瞬にしてタバサとの距離をつめ、手にした剣を振り下ろしたのだ。 タバサは一切反応しなかったが、タバサの変わりに反応したものがいた。 共に呼び出されたミルアだ。 ミルアは振り下ろされた剣を、自分の鼻先ぎりぎりのところで白羽取りする。「やるではないか。小娘」 少女が愉快そうに言うと、「なんのつもりでしょうか? 説明を求めます」 そう言って、ぐっと剣を押し返した。 少女は数歩後ろに下がると剣を収め、「なにいつもの挨拶さ。その証拠に、当の本人は平然としているだろう」 少女はそう言って目深にかぶったフードから覗く唇をニヤリとゆがませた。 下から見上げているミルアには僅かに金色の瞳が見える。「いつものこと」 タバサが一言そう言うとミルアもしぶしぶ引き下がった。 見れば部屋に居た使用人達はその危なっかしい光景に腰を抜かしている。 少女の言うとおりにいつものことではあるが、平民である彼らにとっては毎回毎回が恐怖でしかなかった。「自己紹介をしておこうか小娘。私の名前はナイ。ナイ・セレネだ」「ミルアです。ミルア・ゼロ」 少女、ナイは腰の剣に手を掛けたまま自己紹介しミルアもそれに答えた。 そしてミルアはその視線をイザベラに移した。 それに気がついたナイが、「あぁ、彼女はイザベラ。ガリア王ジョゼフの一人娘。一応王女だ」「なんだい。その一応ってのはっ!」 ナイの物言いにイザベラは声を荒げるが、ナイはくくくと笑うばかりで、まともに相手にしていない。 ミルアはミルアで、イザベラをじっと見ていた。 主にその目立つおでこを。 イザベラはミルアの不自然な視線に気がついたのか怪訝な顔をしてミルアを睨みつけた。 ミルアは慌てて視線を僅かにそらした。 そんな二人を、何が可笑しいのかナイは一人で声を押し殺して笑っている。 そしてイザベラがナイを睨みつけた。 この王女、実に忙しい。 そもそもナイは完全にイザベラで遊んでいた。 不敬だとか、そんな言葉はナイの頭の中にはないのかもしれない。「ない」だけに。「用件を」 ぐだぐだな空気を読まず、タバサが一言そう呟いた。 その一言にナイは佇まいを直し、イザベラも軽く咳払いをした。 そしてベッドの上に転がしてあった書簡をタバサに向かって放り投げると、「今回の任務だよ。そこの小娘には道中説明してあげな。いいね?」 イザベラの言葉にタバサは黙って小さくこくりと頷いた。 プチ・トロワから出たところでミルアが口を開き、「説明お願いします」 ミルアがそう言うと何故かついてきていたナイが、「そうだな、まず、そこのタバサの本名を言っておこうか」 ナイがそう言うとミルアは首をかしげた。 タバサという名前が偽名などとは露にも思っていなかったのだ。 「シャルロット・エレーヌ・オルレアン。それがこいつの本名だよ」 ナイはそう言って前を歩いていたタバサの頭をわしわしと撫で回す。 タバサよりもナイのほうが身長は二十サントほど高いので、見た感じ、年上が年下をからかっているように見えた。「ちなみにシャルロットはさっきのイザベラの従姉妹だ。つまりはシャルロットも王族だ」 ナイがそう言い、更にタバサの頭を撫で回そうとするとタバサはその手を振りほどき、「今は違う」 そう一言呟いた。 タバサ。本名シャルロット・エレーヌ・オルレアン。 現在のガリア王、ジョゼフ一世の弟、シャルルの娘であったが、父親であるシャルルはジョゼフによって暗殺され、母親は毒薬により心を壊され今はオルレアンの屋敷で寝たきり。 シャルロットはほぼ全てを奪われて今のタバサとなってた。 そしてガリアの騎士団の一員として任務を受ける日々。「それでだ、ここガリアの騎士団は、別名『薔薇園』と呼ばれている宮殿にある花壇にちなんだ名前がつけられていてな。タバサはその内の一つ『北花壇警護騎士団』に所属している」 ナイがそう説明するとミルアは周囲を見渡した。 確かに季節の花々が咲き誇り、時折吹く風が、花々の香りを運んでくる。 少しでも強い風が吹けば花びらが舞い、とても幻想的な光景となるであろう。 するとナイは人差し指を自らの唇にあて、にやりとすると、「ここで一つ疑問が生じる。実は北側には花壇は存在しない。しかし北花壇警護騎士団は確かに存在する。さて、どういうことか……」 ナイの言葉にミルアは僅かに首をかしげ考え込んだ。 タバサはそんなミルアを見ていたが、ミルアはやがてわからないというように首を横に振る。 するとタバサが口を開き、「ガリア王家の汚れ仕事や、それに限らず、厄介ごとなどを一手に引き受けている」 タバサの言葉にナイが引き継いで、「そう、そして先ほどのイザベラがその北花壇警護騎士団の団長だ。まぁ、あの様な性格だし、魔法の才能もなくて家臣などからの忠誠心は底辺を漂っているが、実際のところ団長として、騎士達の扱いは見事だぞ。適材適所。騎士たちからの信頼だけはある。私もそこそこ気に入っているしな」 ナイはそこまで言うとタバサの顔を覗きこむようにして、「もっとも、魔法の才あふれるシャルロットには、その嫉妬心からか無理難題を吹っかけているがな。しかも結局シャルロットは任務をこなしてくるもんだからイザベラはいつも悔しがっててな。そばで見てる私としては実に愉快だ」 ナイはそう言うと今度はミルアの方を見て、「さて、シャルロットの事情のほうはまぁ大方こんなところだが、何か質問はあるかな?」 その問いにミルアはすっと片手を挙げて、「私が呼ばれた説明が一切ありません」 一切という部分に力を入れて言う。 そのミルアの言葉にタバサも頷いた。 ナイは首をかしげ、「知らん。もともとジョゼフ王が言いだしっぺだ。シャルロットの任務に同行させろと。あのヒゲ親父のことだ、面白いおもちゃ見つけた程度にしか考えてないだろ。イザベラ以上に暇してるし」 ヒゲ親父呼ばわり。不敬もここまで突き抜けていると凄いのかもしれない。「何ですかそれは。そもそもここの王が何故私のことを知っているのですか」「それは、イクスからの報告書にあった。面白い娘が学院に来たと」 ナイの口からイクスの名前が出て、ミルアは、「何故イクスさんが」「それはイクスがシャルロットの監視役兼悪友だからだよ」 さも当然のようにナイは答える。 ミルアは確認するようにタバサを見た。「悪友は違う」 タバサはそこだけ否定した。 ミルアは軽くため息をつくと、「つまり私は暇つぶしの一環ですか。見世物ですか」 ミルアの言葉にナイはかっかっと笑いミルアの頭を撫で回した。 少々力が強いのかミルアの頭がぐわんぐわんと揺れる。 ナイはそんなことお構いなしに撫で回し、「そう、しょげるな。ちょっとしたガリア観光だと思え。前向きに考えたほうが楽だろう?」「前向きすぎても、勢いあまって前のめりにこけるのが見えてます」 そういうミルアの頭からナイは手を離した。 見れば一行はプチ・トロワの前庭についている。 そこにはタバサとミルアを待っているシルフィードがいた。 それを見たナイは目深にかぶったフードの奥で、誰に気がつかれることもなく口の端に笑みを浮かべると、「さて、私の見送りはここまでだ。任務の内容に関してはシャルロットに説明してもらえ」 そう言ってナイはタバサを見ると、「国内の貴族の多くは未だシャルル派だ。お前が死ねばアルビオンのような内戦にもなりかねない。国民を思う気持ちがあるのなら死ぬなよ」 その言葉にタバサはちらりとだけナイを見た。「ミルア。シャルロットを頼む。まだ死ぬには惜しすぎるからな」 ナイはそう言ってミルアの頭をぽんと軽く叩き、そのまま背を向けて歩き出した。 それを見送っていたミルアは、「いまいちつかめない人ですね」 タバサもちらりとだけナイの背を見て、「何を考えているのかわからない」 そう言ってシルフィードにまたがる。 とにかく今は任務をこなすこと。 タバサにできるのはそれだけだった。 次いでミルアもシルフィードにまたがる。「屋敷へ」 タバサは一言だけそう呟いた。 きゅいきゅいとシルフィードが声をあげ、大きく翼を羽ばたかせ白み始めた大空へと舞い上がる。 シルフィードはぐんぐんと高度を上げた。 地上からは豆粒ほどの大きさに見えるほどまでに。 ナイは僅かに振り返りフードの奥の金色の瞳で、そんな一行を見つめていた。