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No.34778の一覧
[0] 【習作・チラ裏から】とある未元の神の左手【ゼロ魔×禁書】[しろこんぶ](2013/12/17 00:13)
[1] 01[しろこんぶ](2014/07/05 23:41)
[2] 02[しろこんぶ](2013/09/07 00:40)
[3] 03[しろこんぶ](2013/09/16 00:43)
[4] 04[しろこんぶ](2013/09/16 00:45)
[5] 05[しろこんぶ](2013/10/03 01:37)
[6] 06[しろこんぶ](2013/10/03 01:45)
[7] 07[しろこんぶ](2012/12/01 00:42)
[8] 08[しろこんぶ](2012/12/15 00:18)
[9] 09[しろこんぶ](2013/10/03 02:00)
[10] 10[しろこんぶ](2014/07/05 23:43)
[11] 11[しろこんぶ](2013/10/03 02:08)
[12] 12[しろこんぶ](2014/07/05 23:45)
[13] 13[しろこんぶ](2014/07/05 23:46)
[14] 14[しろこんぶ](2014/07/05 23:47)
[15] 15[しろこんぶ](2013/09/01 23:11)
[16] 16[しろこんぶ](2013/09/07 01:00)
[18] とある盤外の折衝対話[しろこんぶ](2014/01/10 14:18)
[21] 17[しろこんぶ](2014/07/05 23:48)
[22] 18[しろこんぶ](2014/07/05 23:50)
[23] 19[しろこんぶ](2014/07/05 23:50)
[24] 20[しろこんぶ](2014/08/02 01:04)
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[34778] 01
Name: しろこんぶ◆2c49ed57 ID:c6ea02e3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/07/05 23:41





「誰だ、お前」
 目の前に立つ男の声に、呆然としていた少女は見開いた目を瞬かせた。
 少女は背中まで伸びるピンクがかったブロンドの髪、白い肌にぱっちりとした鳶色の瞳をしていた。
 幼い造りながらに整った顔立ちはどこか品の漂うものだ。しかし、普段なら気位の高さを滲ませるだろうその表情は、咄嗟の事にそのなりをひそめていた。
 ぽかんとした顔には疑問の色しか乗っていない。
 ちらっと視線を中空に向けた後、少女は確かめるようにぐるりと辺りを見回した。

 遠くに見えるのは石造りの塔、辺り一面風にそよぐ草原。
 雲の流れる青空、良く晴れたいい天気だ。
 周りには囲うように並んだ同年代の級友達。
 そして。

 目の前には見知らぬ男が一人。

 確か、最初見た時は地面に座り込んでいた。
 不思議そうに辺りを見回して、それから億劫そうに立ち上がると上着の端を軽く払った。
 落ち着き払った態度でほとんど乱れなど無い服を整えてから、男はようやく彼女を見据えた。
 短い疑問の言葉には、はっきりとした不満がこもっていた。
 それを隠そうともしない態度に少女の眉が顰められた。

 マントもない、杖もない。
 どこからどう見ても平民がこんな所に居ようもないと少女の頭は判断する。

 そう。今、この場は大事な儀式の最中なのだ、使用人などが居るはずもない。

(なに、これ。わたしはさっきまで呪文を唱えて……やっとゲートが開いたと思ったのよね? それで、わたしの使い魔はどこ? こんなヤツ、知らないし――)
 男は睨むような目を向けたまま、まだ何か話し続けていた。
 少女はそれに取り合う様子もなく、顎に手を添えて難しい表情を浮かべている。
 あまりに薄いその反応に、男は何故か愉快そうに唇の端を吊り上げて見せた。
 まだ若い、少女とそう開きの無いだろう年頃の男の浮かべた暴虐的な笑みは、一見整ったその風貌に実によく馴染んでいた。
「おいおい聞いてんのか? 妙な真似しやがって、さっきの光と『空間移動テレポート』はお前の仕業でいいんだよな。何のつもりでこの俺に仕掛けてきてんだ、って聞いてんだろ」
 少女は、今度こそはっきりと耳に入った挑発的な質問には答えなかった。
 黙って自分より優に頭一つ分は高いだろう男の上から下まで、改めて視線を巡らせると大きな溜め息をついた。
 呆れたような細い肩からはすっかり力が抜けてしまっている。
 そんな少女の後方から囃すような声が響いた。
「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民を呼び出してどうするんだ?」
 彼女の周りを囲むようにぐるりと人垣が出来ている。
 その内一人がそう口にすると、そこに居た少年少女の一群は揃って声を上げて笑った。
 それにつられるようにルイズと呼ばれた少女は振り返った。

「ミスタ・コルベール!」
 白いシャツ、黒いマントを揃って着込んだ少年達の間から、呼びかけに応じて一人の男が歩み出る。
 壮年の、頭頂のやや、、寂しい男は黒いローブを纏っていた。
 手には長い木の杖を持っている。
「やり直させて下さい。もう一度! もう一度だけ召喚させて下さい」
 ローブの男の方に駆け寄ったルイズの目は真剣だった。必死と言っても過言ではない。
 しかし、そんな熱意と悲壮のこもった訴えにもコルベールは首を振った。
「ミス・ヴァリエール、残念だがそれは出来ない」
「どうしてですか」
 何故、と肩を落とすルイズに、コルベールはさも残念だと言いたげに目を向ける。
 しかし続く言葉は有無を言わせぬほどきっぱりしたものだった。
「これは決まりだ。進級に際した召喚の儀式で君達は『使い魔』となるものを召喚する。この神聖な儀式において一度呼び出した『使い魔』は変える事は出来ないのだよ。好むと好まざるとに関わらず、だ」
 ルイズの眉がキッと吊り上った。
「それはわかってます。でも、平民を使い魔にするなんて聞いた事ありません!」
 諦めきれず食い下がるルイズは威嚇する子猫のように唸ると、言い終えた後で悔しげに歯噛みした。
 その口から出た『平民』の発言に呼応するように再び嘲笑が沸く。
 笑い声に彼女は鋭い視線を送ったが、そんな小さな事でさざめくような声の波は止みはしなかった。
「これは伝統なんだミス・ヴァリエール。例外は認められない。例えただの平民であったとしても、君には彼を使い魔にしてもらわなければならない。さあ、早く儀式を続けなさい」
「そんな」
「ミス・ヴァリエール。君は召喚にどれだけ時間を掛けたと思っているんだね? 次の授業も迫っているんだ。早く契約を済ませたまえ」
 急かすようなコルベールの発言に、早くしろと周囲から野次が飛ぶ。
 それにルイズはますます不機嫌そうに表情を曇らせる。

「おい」
 そんなやりとりを断ち切ったのは、それまで傍観していた男だった。
 男は胡散臭そうな視線をルイズとコルベールに向けた後、ルイズの前に寄った。
「俺を無視して勝手に話を進めるなんざ、いい度胸だな。おまけに意味のわからねえ事を並べやがって、お前らふざけてんのかよ」
「なっ、なによ! そっちこそいきなり口を挟むなんて……」
 男は怒りも露に睨みつけてくるが、ルイズも負けじと睨み返した。
 貴族の会話に断りもなく割り込む、しかも今は儀式の最中だ。
 まさか、使い魔が何か言ってくるとは思わなかったルイズは面食らった。
 そもそも、口答えするような。人間のような思考をもった生き物が現れるだなんて考えもしなかったのだ。
 水を差されたルイズだけでなく、コルベールも困惑しているようだった。
 男はルイズの文句にも怯んだ様子はまるで無かった。
 ペースを崩さずに呆れたような、馬鹿にしたような口調で続けた。
「へえ? そっちの都合にイチイチ合わせてやるって本気で思ってんのか? だとしたら、テメェら随分とお人よしだ。揃いも揃って、随分愉快なアタマをしてるらしいな」
 ざっと視線を人垣に向けて見下したように言い放つ。
「おい平民! さっきから貴族に向かって生意気な口を利くとは。命知らずも大概に――」
 それまで愉快そうに見物していたうちの一人が、不意に口を開いた。
 丁度、男の背後にあたる方向に立っていた少年だ。
 ルイズに暴言が向けられているのはいいが、同じ枠に括られて気に食わなかったのか。
 それとも余りに無礼な態度に堪えかねたのか、少年は憤慨した様子で息巻いた。
 しかし、彼の言葉は最後まで続かない。

 ベゴン! と音を立ててその足元近くの地面が突然凹んだ。
 丁度ヒトの頭くらいは収まりそうな半球状の崩壊に、石ころや根ごと捥ぎ取られた草が砂の中に飲み込まれていく。
 それを少年は呆然と目で追っていた。
「今、なんか言ったか?」
「……いや」
 男は振り返りもせずそう口にした。
 目にした意味の解らない現象と、向けられているとはっきり分かる程の敵意に汗を滲ませ、搾り出すような声をなんとか出すと少年は首を振った。
 周りの、恐らく成り行きが見えなかった者達は少年の奇行に何事かと囁き合っていたが、彼も混乱しているのだろう。
 それを気遣う余裕はなさそうだった。
 男の正面に位置するルイズも何が何やら首を傾げている。
「おい、君……今、何を」
 こちらは、立っていた場所からきちんと見えていたのだろう。
 コルベールは目を見張り、杖を掲げていた。
 何やらブツブツと呟き出したのを無視して、男はルイズに向き直った。
「俺も外道のクソ野郎だが、好き好んでギャラリーにまで手は出さねえよ。いいか? お前にもう一度だけ聞いてやる」
 ふう、と仕方なさそうに男は息を吐いた。
「何のつもりでこの俺に仕掛けてきてんだ?」
「わたしは……あんたを召喚したのよ。認めたくないけど。来ちゃったからには、あんたと契約しなきゃいけないの」
「まるで決まりきった事みてえに言うんだな。契約なんてのは、互いに同意して交わすもんだろ。それを一方的に交わして事後承諾でなんとかしようって腹か? 随分な真似するんだな。ま、受ける気なんざねーけど」
 煽るような男の態度と言葉に、ルイズは再び言い返そうとした。
 しかし、その前にコルベールが動いた。
 男とルイズの間に割って入ると、返す言葉を留めるかのようにルイズの前に杖を持った腕を翳した。
「『コントラクト・サーヴァント』はそう言った契約とは異なる。神聖な儀式に則った魔法だ。さてミス・ヴァリエール、もう時間がない。この場は一旦区切るとしよう」
 男に向けて一言口にしてから、コルベールは肩越しにルイズを仰ぎ見る。
 その言葉に、行動に。
 ルイズは戸惑うしかなかった。
 先程まであれ程急かしていた契約を急に中断すると言われては、それまで気が進まなかったとは言え面食らう。
「ですが、先生」
「人間を使い魔とした事も、契約を望まない使い魔との契約執行も前例がない。私は監督者としてこの事を学院長に報告する義務がある」
 授業中の生徒の質問に答える教師。それ以上に整然とした態度で言い切ったコルベールは実に真剣な目をしていた。
 ルイズは、不満そうに眉を顰めたものの教師の言葉に逆らわなかった。
 そうまで言われてこれ以上、わがままを重ねるのが良くない事くらいは弁えている。


「で、ここはトリステイン魔法学院、貴族のガキが通う『魔法使い』の学校。使い魔召喚の儀式でお前が俺を召喚して使い魔って呼び名の下僕にしなきゃいけねえ。でなきゃ留年。今のところそう言う話だって?」
「そうよ! わたしだって、あんたみたいな平民なんかよりドラゴンとかマンティコアとか――」
「貴族だか魔法だか呼び方は何だか知らねえが、要は学園都市外部の能力開発機関なんだろ? この俺を勝手に連れてきておいて、随分無茶言うじゃねえか。死んでも嫌だって言ったらどうする? 不敬罪で斬首もんか?」
「……使い魔候補にいきなりそんな事しないわよ」
「へえ。ここのお貴族サマってのは随分とお優しくていらっしゃるらしいな」

 互いに罵り合うような会話の応酬はどこか子ども染みていた。
 少なくとも男の方にはからかっているような余裕が見える。
 変わらないその態度に、ルイズは頬を膨らませてそよぐ草の海を睨みつけた。
 召喚された男とルイズは草原から学院本塔を目指して歩いていた。
 コルベールは他の生徒に教室に戻るよう言いつけた後、一足先に学院長に知らせてくると言って『フライ』の呪文を唱えて飛んで行ってしまった。
 待つように、と言われていたが二人は既に塔までの道のりを進んでいる。ただその場で待つのは居心地が悪かったからだ。
 長々と無言でいるのも苦しかったので、ルイズはその間に男にこれまでの経緯を話していた。
 使い魔召喚の儀式で事情が通じなかったあたり、この平民はよっぽどの田舎で育ったのだろうとルイズは考えていた。
 仕方なく、馬鹿でもわかるようにお情けで説明してやっている。
 男の方は貴族のルイズに随分な態度を示しながら、何だかよくわからない事をぶつぶつ言っていた。
 ガクエントシとか何とか、ルイズには聞き覚えの無い単語があちこちに混じる。
 自分の少し後ろを大人しく歩いている男を振り返って、ルイズは小さく首を傾げた。
 今までの態度からして、さっさとどこかへ行ってしまうんじゃ、と心配していたが今のところその必要はないらしい。

「契約したくないって言う割にちゃんとついて来るのね」
「幾ら何でも、ここがどの辺だかわからねえ事には帰れねえからな。ついでにお前らのトップに文句の一つも言ってやるよ。ったく、校舎まで結構距離あるんだな。お前は他のヤツみたいに能力使って飛んでいかねえのかよ」
 不本意だ、と言外に洩らす男の言葉に納得しながらも、ルイズは最後の一言に口篭った。
「……いいでしょ。平民のあんたに合わせて歩いてあげるわ」
 仕方なく、こちらも合わせてやっているんだと示した。
 心の広いご主人様アピール、そんな目的も少なからずある。
 だが、ルイズは本当の理由を召喚したての平民相手に口にする気にはならなかった。
「いや、俺もその気になりゃあ……って端から人を利用する気でいる余所の能力者にホイホイ見せんのもマズいか? あー、めんどくせーな」
 勝手にそう口にして、何故か残念そうに息を吐いた男の足音が近付いてくる。
 ポケットに両手を突っ込んだ男の早足はルイズを追い抜いただけでは止まらなかった。
 背だけでなく足の長さも差がある二人の距離がどんどん開いていく。
 それをぽかんと見ていたルイズは慌てて後を追った。
 これではどっちが主人か分かったものではない。

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! メイジの前を勝手に歩く使い魔も平民も居ないわよ!!」
「俺にそんな常識は通用しねえ。嫌なら勝手に抜けよ。チビのお前に出来るならな」
「なんですって! わたしよりちょっと背が高い位でバカにしないでよね」
「うるせえチビ。そっちに付き合ってたら日が暮れちまうだろ」
 依然、まるで子どものような罵り合いを続けながら二人は草を踏み荒らすように進んだ。
 ルイズに至っては貴族の子女にあるまじき乱暴な足取りで。
「何よ! わたしには立派な名前があるの! せめて名前で呼びなさい!」
 小走りになって、息すら乱しながらルイズは怒鳴った。
 
 貴族は焦らない。走るなど以ての外。常に堂々と振舞うものだ。
 貴族は声を荒げない。それも淑女が大声を出すなど有り得ぬ行いだ。
 短気な彼女には難しい事だが。
 小さな頃にはよくそう言ったことを家庭教師に釘を刺されたものだった。

 そんな事も忘れてルイズは精一杯主張した。
 しかし、男の反応は彼女とは対照的に冷めたものだった。

「いや、お前の名前とか知らねーし」
 あっさりと流すようにそう言われて、ルイズの高いプライドにますます火が点いた。
 召喚した使い魔が、平民が。主人で貴族たるルイズにまるで興味を示していない事が腹立たしかった。
 それどころかまともに相手にもされていない。
 前を歩く背中に、馬鹿にされているどころか無視されているような気がしていた。
だからこそ、ルイズは歯を食い縛ると大きく息を吸った。
「何なのよあんた! もう、よく聞きなさいよ? わたしはルイズ! ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール! 旧く由緒正しい公爵家の三女よ。本当ならあんたみたいな平民、口も聞けないんだから!」
 うるさいと思われようとそれは耳に、意識に残る。
 ルイズは鼓膜に刻み付けてやるとばかりにしっかりと一言一言名前を叫んだ。
 精一杯の自己主張だ。
「貴族らしく随分めんどくせえ長ったらしいお名前だ。おまけに五爵の第一位か、そりゃまあ御大層だなオイ」
 男は小馬鹿にした口調だが、いかにも感心したかのように頷いた。
 しかし、その程度の反応だった。
 今までの非礼を詫びて平伏するとか、許しを乞い恭しく契約を結ぶとか。
 およそルイズが脳裏に描いた都合のいい想像とは程遠かった。
 平民だろうと貴族だろうと、このトリステインと言う国に公爵家の名が響かない、威光の届かない者はそうはいない。
 ルイズはますます呆れた。
 そして、ふと浮かんだある思いつきに一瞬顔を曇らせる。
(ここまで貴族にふざけた態度でいれるって、こいつよっぽどの馬鹿なのかしら。それとも……まさか、有りえないわね)
 そう、きっとただの馬鹿なのだろう。
 そう思い直してルイズは急いで男の後を追いかける。
「そうだ、あんた、名前は? 一々『使い魔』じゃ呼ぶ時不便だから聞いてあげてもいいわよ」
 あくまでも尊大に。しかし期待を込めてルイズは尋ねた。
 よくわからない、生意気で癪に障る相手だが自分の召喚に一応は応えた使い魔なのだ。
 知りたいことは山ほどあった、その第一歩をルイズは踏み出した。
 ふと、追いかける背中の速度が少し落ちた。
 ルイズは慌てて男の隣まで並んで様子を窺う。
 比べるまでもなく背の低いルイズではやっぱり見上げる形になってしまう。

 改めてみると、背はあるが細い男だった。
 明るい茶色の髪は肩に触れない位置ではねている。
 ワインのような色の上下にだらしなく着崩されたシャツ。
 平民だから仕方ないのかもしれないが、ルイズがほとんど見かけた事のないような地味な服装だった。
 少し緊張しながら見つめていると横顔がルイズの方を向いた。
 ルイズを見るその顔は、なんだか不思議なものを眺めるように眉を寄せている。
 そして。
 目が合って初めて、それまで相手の顔すらきちんと見ていなかった事にルイズは気付いた。

「……こっちも名前で呼んで欲しいもんだな。ああ、帝督・垣根とでも言った方がいいのか? 呼ぶ時は気軽に帝督様でも構わねえよ、ルイズ」
 相変わらず馬鹿にしたように軽口を叩く、その表情は思っていた以上にルイズと同年代の少年のもののように見えた。
「ちょっと、あんたこそ様を付けなさいよ!」
 そんな相手と、ある意味で気兼ねないとも言えそうなやり取りが出来ている実感に少しほっとしながら。
 ルイズは先程と同じように声を上げた。
 しかし、それはルイズの中では少し違うものになっていた。
 言い返しながらも、同じような時の同級生に対する不快感や苛立ちとはちょっと気分が違うような。
 そんな気がしていた。
「うるせー。キンキン怒鳴るなよ」
「なによ。生意気に指図しないでよね!」
 返って来る声は変わらず不機嫌そうだ。
 だけど、多分。
 本気で嫌がっている訳じゃない。
(そうよ。平民だけど、こいつは私の使い魔になるんだから。ちょっとは仲良くしてあげないとね)
 少しズレた前向きさで、ルイズは頷くと地面を蹴って前に進む。

 コルベールが戻ってくるまでの間、二人はそんな『言い合いコミュニケーション』を続けていた。



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