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No.34778の一覧
[0] 【習作・チラ裏から】とある未元の神の左手【ゼロ魔×禁書】[しろこんぶ](2013/12/17 00:13)
[1] 01[しろこんぶ](2014/07/05 23:41)
[2] 02[しろこんぶ](2013/09/07 00:40)
[3] 03[しろこんぶ](2013/09/16 00:43)
[4] 04[しろこんぶ](2013/09/16 00:45)
[5] 05[しろこんぶ](2013/10/03 01:37)
[6] 06[しろこんぶ](2013/10/03 01:45)
[7] 07[しろこんぶ](2012/12/01 00:42)
[8] 08[しろこんぶ](2012/12/15 00:18)
[9] 09[しろこんぶ](2013/10/03 02:00)
[10] 10[しろこんぶ](2014/07/05 23:43)
[11] 11[しろこんぶ](2013/10/03 02:08)
[12] 12[しろこんぶ](2014/07/05 23:45)
[13] 13[しろこんぶ](2014/07/05 23:46)
[14] 14[しろこんぶ](2014/07/05 23:47)
[15] 15[しろこんぶ](2013/09/01 23:11)
[16] 16[しろこんぶ](2013/09/07 01:00)
[18] とある盤外の折衝対話[しろこんぶ](2014/01/10 14:18)
[21] 17[しろこんぶ](2014/07/05 23:48)
[22] 18[しろこんぶ](2014/07/05 23:50)
[23] 19[しろこんぶ](2014/07/05 23:50)
[24] 20[しろこんぶ](2014/08/02 01:04)
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[34778] 14
Name: しろこんぶ◆2c49ed57 ID:c6ea02e3 前を表示する / 次を表示する
Date: 2014/07/05 23:47




 午後の日差しが穏やかに差す部屋の中。
 肩を強張らせたメイドはおずおずと口を開いた。
「ミス・ヴァリエール。あの、よろしいんですか」
「なにがよ」
「いえ、その……用事も済んだのに私、まだ出て行かなくていいのでしょうかと。あの、思いまして」
「いいのよ。ちょっと話し相手も欲しかったの。あいつは泣いてるばっかりだし」
「はい。申し訳ありません」

 いちいち謝んなくていいわ、とルイズに言われてシエスタは顔を上げる。
 テーブルの上を片付けてしまったシエスタは、そうは言われても落ち着かなかった。
 そうとは知られない程度に視線をあちこちに巡らせた。
 すぐ側のルイズはまだ不満そうな様子で椅子に浅く掛けている。

 いつものように朝、着替えを手伝いに来たら必要ないと部屋の中に入れてもらえず。
 朝食の席にも姿が見えなかったルイズの事を、差し出がましいと思いながらもシエスタは心配していた。
 とうとう昼時の食堂にも姿を見せなかったから、シエスタは慌ててバスケットに料理を詰めて部屋まで運んだ。
 それでやっと中にいれてもらえたが当のルイズはベッドに転がったままぼんやりとしていた。
 それを何とか引っ張り起こし、食事だけはとってもらえた。
 話を聞きだすと病気ではないらしいが、日頃真面目な態度で過ごしていたルイズが授業を休んでまで部屋に籠もっているのは明らかにおかしかった。
 ふと、部屋に入ってはじめて室内に足りないものがある事にシエスタは気付いた。
 いつもシエスタがここに来るときには決まっていた筈の、もう一人の住人がいない。
 昨日、食堂には来ていた筈だから彼は当然普段通りにしているのだろうとシエスタは思っていたのだが、どうも違うらしい。
「ミスタ・カキネはどうされたんでしょうね?」
 その言葉にばっとルイズが顔を上げる。
 無言のルイズは責めるでもなく、ただじっとシエスタを見つめていた。
 異質な剣幕に固まるシエスタを後目に、うっすらと赤い目をしたルイズは再びベッドに戻っていた。
「あいつね。今、ミスタ・コルベールのところにいるんですって。先生ったら聞いても無いのに昨日の夜廊下ですれ違ったらわざわざ知らせてくれたわ。ここに帰ってこないでなにしてるのかしら。いやになっちゃうわほんといやになっちゃうわ」
 シーツにくるまりながら、ぼんやりと同じ言葉を繰り返すルイズはすっかり参ってしまっているらしい。
 プライドの高い彼女は心配しているとは一言も口にしないが言葉にしなくてもそれくらいはわかる。
「はあ。それは、なんでまた」
「わたしが聞きたいわよ。なんか、あの先生いやに機嫌がいいらしいわ。授業中に鼻歌歌って、変な発明を前に浮き足だってたって話よ」
「まさか……いえ、あの。何でもありませんわミス・ヴァリエール」
 じろりと不意にルイズに睨まれてシエスタは泡を食った。
 身の回りのお世話をさせていただくようになってから、この貴族令嬢の事をそれなりに知っていると自負するシエスタはルイズの事は嫌いではなかった。
 日課の仕事の合間に見聞きする使い魔の少年とのやりとりや、ルイズの様子を見ればそれなりの印象も抱く。
 ちょっと素直じゃないだけで、本当は優しいらしいと言う事もわかっているつもりだった。
 しかし、それでも怖い時は怖い。
 シエスタの中に染みこんだ平民根性が、体に流れる平民の血が。
 ルイズの持つ高貴な貴族の雰囲気に圧倒される。
 貴族様がお怒りだ、とぴりぴりした感覚がシエスタの中にある平民センサーに伝えられる。
 今、使い魔の彼の話はタブーだ。竜の逆鱗にハイタッチするようなものだ。
 何とか話題と、ルイズの機嫌を余所にむけようと、シエスタはかつて無いほどに必死で頭を働かせた。
 自然に低く低く下がっていく頭が、床に転がったものを視界に収めて。
 救いの光を見たシエスタは勢いよく顔を上げた。
「ミス・ヴァリエール。読書、お好きなんですか?」

 緊張と、わずかな高揚に乾いた唇を舐めてから文頭に目を走らせる。
「――そして、騎士は跪くと目の前に差し出された足を恭しく掲げてから――」
 そっと、視線を上げるとシエスタはルイズの様子を窺った。
 シエスタは手にした、最近買ったばかりの本をルイズに読み聞かせていた。
 貴族のルイズは庶民の娯楽本などには縁が無いのか、渡した時は最初こそ面白そうに頁を捲っていたが。
 気に入らなかったのかすぐに閉じるとぱっと本を放り投げてしまった。
 しかしまあ、その態度が気に入らなかったという割にはあんまりだったので。
 シエスタはあれこれ宥めすかして、結局読んで聞かせる事にした。
 ルイズの気分転換、と言う名目だが、その時は正直シエスタ自身もちょっと楽しくなっていたりした。
 さて。
 相変わらずシーツにくるまったルイズは覗かせた顔を両手で覆ってシエスタの話を聞いている。
 放っておかれた小さな両耳はすっかり真っ赤になっていた。
 手の平の下で、その顔がどうなっているかは想像するまでもない。
 隠すところが違うんじゃないかとも思ったが、それを指摘するのはあまりに失礼な気がしてシエスタは口にはしなかった。
(まだ全然、そんな恥ずかしがるようなところじゃないんですけどね)
 物語のさわりどころか冒頭。
 主人公の伯爵夫人の下にやってきた若い騎士が夫人に言葉を尽くして愛を伝える、と言った部分だったが。
 どうやらその手の話題に慣れないらしいルイズにはそれでもかなり刺激的だったらしい。

 シエスタも、元々はどちらかと言うと大人しく引っ込み思案な方だ。
 ノリと勢いに任せてしまうと、慣れないだけにその止めどころと言うのがわからなくなりがちだった。
(このページ読んだらいい加減止めにしましょう。って、なにしてるんでしょうね私。恥ずかしい。おかしな奴だって思われてますよね絶対)
 熱が冷めて我に返ってしまうといつものシエスタに戻ってしまう。
 一人勝手に突っ走って、これまた勝手に気落ちして。
 後悔の溜め息と共にシエスタは本を閉じた。
 そんな時だった。

「あら、どうしたの?」
 ベッドに丸くなるルイズ、近くの椅子に掛ける使用人、と言う状況。
 それにきょとんとした目を向けるのは隣室のキュルケ・フォン・ツェルプストー。
「きゅ、な、なに勝手に入ってきてんのよ」
 ルイズの顔からは、さっきまでとは反対に血の気がひいているようだった。
 まるで冷や水を浴びたような反応だったが、キュルケはどこかほっとしたような笑みを浮かべていた。
「ちょっと元気になったんじゃない? ってやだ、また読書なの?」
「ちょっとあの、ミス・ツェルプストー」
「何これ。『バタフライ伯爵夫人の優雅な一日』?」
 つかつかと寄って来てシエスタの手から本を奪うと、背表紙を読み上げてキュルケは首を傾げた。
 隣についてきたタバサを見たが、彼女も首を振る。
 二人に不思議そうな顔を向けられる前で、ルイズはわかりやすくうろたえだした。
「あああああのこれはシシシシエスタが貸してくれてそのあの」
「そうです。わたしが、あのミス・ヴァリエールは本がお好きなようでしたのでわたしがあの、これ庶民の間で流行ってまして」
 つられて、つい焦ってそこまで言ってから、シエスタは立ち上がると素早く姿勢を正した。
 ルイズに水を向けられたからと言って、学院の生徒はやすやすとメイドが話しかけていい相手ではない。
 すっかり体に染み付いた振る舞いは、すぐに使用人と言う空気同然の存在にシエスタを戻してくれた。
 そんな二人の言葉などどこ吹く風、と頁を捲っていたキュルケは暫くしてから。
 ははあ、と納得した様子で頷いた。
 ばつが悪そうに目を伏せるルイズをにやにやと眺めている。
「ふーん。そうなの。あら、だめよ」
 本、と聞いて手を伸ばしたタバサから届かない位置へ本を持ち上げると、ついでに眼鏡まで取り上げてキュルケは首を振った。
「あなたにはいくらなんでも早いわ」
「ケチ」

 テーブルの前、空いた椅子に勝手に座るとキュルケは肩に掛かる真っ赤な髪を背中に流した。
 ベッドの上から不満そうな視線をくれる部屋の主にも構わない、勝手な振る舞いだった。
「昨日からだから、もう二日? あなた一体何してるのよ」
「いいでしょ。あんたにはかんけいないでしょ」
「調子狂うわねー。あら? ダーリンは今いないのかしら? ……あたしとタバサはさっき中庭で会ったけど」
「えっ」
 目を剥くルイズにタバサが黙って頷いた。
 思わずと言った様子で起き上がったルイズに、目を細めたキュルケは頬杖をつくと続ける。
「なんか、白い盾みたいなのに幾つか魔法ぶつけてみろ、とかって言われたけど。何でもあのミスタ・コルベールの所にいるらしいじゃない。彼ったら変な実験にでもつき合わされてるんじゃなくて? ヴァリエール、あなた主人の癖にそんな事も知らないの?」
 最初は何の気もないと話を向けた癖に、その態度もルイズにかまをかけるためだったらしい。
 むっとした表情を浮かべるルイズは、挑発的な目をするキュルケに怒鳴るような事をしなかった。
 どこか、既に気の抜けたように肩を竦めると、扉に近い空のベッドに目をやった。
「知ってるわよ。わたしは、知っててあいつの好きにさせてやってるのよ。何よ、だからってあの研究室に押し掛けるような真似しないでしょうね。ツェルプストー」
「いやだわ。そんな事しないわよ。あの人は『火』系統なのに情熱の欠片もないし、おかしな事ばかり言うじゃない。あたし、ああ言うの嫌いなの」
 キュルケは途端に顔を顰めると指を曲げて爪を眺め始めた。
 授業がどうの、今日の食堂のメニューだとか。後はキュルケがほぼ一方的に話す事をルイズは特に口も挟まず聞いていた。
 かと言って、文句も言わない。出て行けとも言わない。
 どうやら、シエスタの仕事は本当にすっかり終わってしまったらしい。
 頃合を見て、シエスタは礼だけすると黙ってルイズの部屋を後にする。
 ルイズ以外とはただでさえ滅多に間近にしない貴族同士のやりとりは何と言うか居場所がなくて、息が詰まった。


 仕事に戻ったシエスタが厨房へ入るといつものテーブルにはルイズの使い魔が掛けていた。
 コック長のお気に入りである彼には、食堂の使用が決められている生徒達とは違いその時間外でも食事が振る舞われている。
 普段なら割とルイズ達生徒の食事時間に合わせてここに来ている垣根もまた、遅い昼食をとっているようだった。
 そうして、垣根はいつものように出された食事に手を合わせて一言呟くと、あとは黙って平らげる。
 最後に一言だけ礼を言ってから席を立つ。
 その様子は、いつもと余り変わらないようにシエスタには見えた。
 が、何かが気になった。
 これが初めてではない気がするが、一体なんだろう。
 そんな風にふと首を傾げるシエスタの隣に来ると、腕組みしたマルトーは去って行く垣根を見ながら満足そうに頷いていた。
「シエスタ、ああ言うのがいい男の粋ってもんだ」
「そうなんですか?」
 シエスタの頭にひっかかっていた何かは、マルトーに声を掛けられたおかげでどこかに行ってしまった。
 マルトーは、とことん彼の事が気に入っているらしい。
 しかし。

 平民とは言え、どこか近寄り難い雰囲気の垣根の事がシエスタは何となく苦手だった。
 嫌いと言うほどではないし、話してみても嫌な人間ではないと思う。
 だが、彼からは。
 貴族である生徒達以上に、シエスタなどは近付く事を許されていない。
 そんな気がしていた。

 ルイズの事が心配だったし、垣根本人の様子ももちろん気がかりだった。
 けれど今出て行ったばかりの垣根は、とてもではないが話を聞けるような様子ではなかった。
(ミス・ヴァリエール以上に疲れて、ピリピリしてるみたいでしたけど……)
 流石のマルトーも、今日ばかりは余計な事をしなかったらしい。
 


*  *  *






 コルベールの研究室に戻った垣根は、箱の上に新たに出来た紙束をまとめると片手でペンを回しながら改めて目を通し始める。
 『未元物質ダークマター』に起きた異変。
 それについて考察し、原因を追究するためにはまず正しく状況を押さえなくてはいけなかった。
 演算の理論値と引き起こされる現象に差異はないか、能力の使用に関する一切のデータと照らし合わせる事が必要だ。
 学園都市においても散々繰り返されすっかり頭に染み付いているそれを、垣根はもう一度丁寧に洗いなおしていた。

 一般的な能力者たちは、基本的な化学の知識をまず頭に入れる事が多いだろう。
 能力開発の元となる量子化学がニュートンの法則などとは密接な地続きではないと言っても、ミクロからマクロの世界へと引き起こされる現象のほとんどは既存の枠の中に当てはまるものだ。
 能力に即した物理現象の知識は、多くの能力者にとって能力を伸ばす上で欠かせないものだった。
 だが、垣根帝督に求められたのはむしろその逆。
 『未元物質』に影響された後の世界の把握だった。
 既存の法則に上書きされた新たなルールを知る事が、能力の制御において必要な情報であり、一角の能力者として最低限守るべき水準だった。
 だから。
 例えば、太陽の周囲を地球が回っているかどうかや、現代の世界を動かす権力者達の顔や名前なんて下らないものは垣根帝督の辞書には取り立てて載せる必要がなかった。
 関係のないもの、変質し消え去るものにあえて気を向ける意味も感じなかった。
 垣根帝督に求められたのは既知ではなく未知。
 そしてそれを扱う力だった。

 長年の実験の積み重ねで『未元物質』の引き起こす事象に精通している垣根でも、実際は『未元物質』については知っている事の方が少ない。
 既存の世界には存在しないもの。
 後にも先にも、垣根帝督以外には観測も発見すらも叶わないだろう新物質。
 今ある世界を、変質させる事の出来る異分子。
 わかっているのはそれ位だ。
 しかしそれも『未元物質』が何であるか、と言う根源的な問いにはまるで答えていない。

 現代科学では言葉を尽くせない存在を、科学の街でただ一人手中に収めた少年はそれを意に介さなかった。
 今の今までそれを考える理由はなかった。
 知る必要はなかった。
 垣根に求められたのはそれが何か、を紐解く為の知識ではないからだ。
 優先されたのはそれをいかに有効に有益に、そして確実に扱う為の手段。
 そして、必要な力は既に手の中にあった。

 そして今。
 垣根帝督は、今まで意識すらしなかった壁の前にただ立ち尽くしていた。

 書き、記し、手を止め確認する。
 考える。
 能力の使用。
 見る。
 考える。
 手を動かす。
 考える。
 見る。

 反復作業のその大半が思考に費やされる。
 そんな作業を延々と繰り返すうちに辺りはすっかり暗くなっていた。
 垣根がルイズの部屋を出てもうすぐ丸二日が経つだろう。
 最初の数時間は身を置く所を捜し、『ガンダールヴ』のルーンについての検証を行った。
 そして後の時間はすべて『未元物質』の現状を把握するのに費やした。
 机の周りには、細かく注釈の足された手書きのレポートが散乱し小さな山をあちこちに築いている。
 大量の羊皮紙などは言うまでもなく、インク瓶も既に新しいものを失敬していた。
 垣根は自らが『未元物質』を発現して以来、何年も掛けて立証し、理論化してきたその一切を現段階で可能な限り確かめていた。
 最初は『未元物質』の発現と指定した条件の確認。
 試薬となる物質との反応。
 途中でちょっとしたチャンスがあったので、気分転換も兼ねて『系統魔法』に対する防御性能も試してみた。
 そちらの方はまずまずと言ったところだが、今の垣根の目的にはその結果は影響しない。
 そして、今までの結果を再び試算。
 出来るだけ漏れのないよう、隙間を潰し徹底したチェックを重ねた。
 学園都市第二位の莫大な演算能力と情報処理のスキルを持つ垣根でも、既に確立された手順をほとんどなぞるだけの作業にそれだけの時間を要した。
 思考を続けて疲労の浮かぶ、血色の悪い顔で垣根は紙面を見つめていた。
 自動発動する『ガンダールヴ』などという悪条件下の能力の使用も相まって。その負担は、ある意味苦労知らずとも言える垣根が今まで体験した事のないものだった。

 凝り固まった筋肉と思考を解すように、軽く肩を動かす。
(今の所わかってんのは……演算に必要な式に不備はねえ筈だって事。能力の発現、使用にも不都合は感じないが、干渉した物の性質を変化させる作用がまるでねえ事。そしてそんな『未元物質ダークマター』は前とてんで別物だって事だ)
 導き出される現実。
 悔しさより、虚しさで垣根は口元を歪める。

 それは、垣根が最初に能力の異変に気付いた時に得た感覚からほとんど変わっていない。
 その時点から今まではそれを裏付ける為に考え、動いたようなものだった。
 立ち止まって足元を確認しただけ、これと言って目覚しい前進はなかった。

 垣根は以前と同じように、必要な条件を設定し式に挿入し、能力を発現し『未元物質』を引き出す。
 このプロセスも、用いる式も何もまるで以前と遜色ないものだった。
 しかし、そうして出来上がる『未元物質』は垣根の定めたものから外れた、どこか違うものになってしまう。
 今までそんな事は一度もなかったのに、だ。
 そんな状況で能力に暴発も、何のエラーも見られないのがかえって奇妙なくらいだった。
 何かが、ずれている。
 何かが、足りない。

 まるで、未完成で虫食い穴だらけのジグソーパズルを前に、抜け落ちたピースの形と行方を推理している気分だった。
 それがいつ、何故、どうして零れ落ちたのか。垣根の頭脳をもってしてもわからない。
 異変の生じる前と比較しようにも、『未元物質』そのものを理解していない垣根では最初から、判断材料は足りなかった。
(いや、変わったのは本当に『未元物質』だけか?)
 その思いつきに、はっとして垣根は顔を上げる。
 考えられる可能性としては、能力の変化ではなく垣根自身の変化に原因があるかもしれない。
 垣根の精神に、思考パターンに、『自分だけの現実パーソナルリアリティ』に何らかの差異が生じれば、由来している能力に影響が出る事も充分考えられる。
 しかし、充分な設備どころか機材もない現状ではそれを確認する術は無い。
 思いつきもただの可能性に過ぎない。
(仮説仮説仮説、もしもの話はいらねえ。今、使えるのは何だ。何が必要だ。俺には、何が残ってる?)
 空の手の平を確かめるように、垣根は指を曲げる。
 開発を受けて以来、こんな風に胸をざわめかせた事はほとんどなかった。
 手を尽くしてもまるで先が見えない。
 その余りの手ごたえのなさに。焦りそうになる心を垣根は何とか押し留める。
(だが、腑には落ちた。今の『未元物質』も押さえてるって感覚はちゃんとある。今までとはちょっと勝手が違うだけだ。能力の性能としちゃ多く見積もっても精々六割って所でも、な)
 内心でそう言い聞かせて。
 自嘲気味に垣根は目を細めた。
 他の物質への干渉をしなくなった『未元物質』は以前のように、それを生かした多様な性質は現せなかった。
 強みであった選択性、機能面での長所を失い、能力としての価値、その幅は以前と比べて大いに狭まっていると言っていい。
(ちょっと丈夫で今までにねえ新素材を操るだけの能力、ってところか。超能力者レベル5も形無しだな。これじゃあ、俺は……何の為に――)
 濁ったようなその目に一段と暗いものが注した。

 かつての垣根帝督は唯一と言っていい稀有な能力を持っていた。
 学園都市の能力者が開発によって手にする能力は、厳密に言えば皆全て違うものだ。
 発電能力エレクトロマスターのようにその体系に大別されたものは、使える演算式、法則、成長傾向に共通性があるからこその分類だ。
 だが、そのどれにも当てはまらない、その筈がない未知の能力。
 科学でさえその本質を知る事は適わないだろう物質、それを生み出し、操る事を可能にした垣根帝督は、『未元物質』は特別なものだった筈だ。
 それ以下の、下らない雑多な能力者の群れ。
 況してやあんなもの、、、、、とはまるで違った筈だった。

 ふと、嫌な事が垣根の頭を過る。
 垣根は目を閉じると、俯いた額を乗せていた左手を強く握った。
(違う! 違うだろ。下らねえ事考えてる状況かよ。切り替えろ。俺に要るのはそんなもんじゃねえだろうが!)
 柄にもなく、気弱になっているらしい自分を叱咤する。
 この数日で慣れたつもりでいたが。
 今まで自身を支えてきた柱の一つを損なった事は、垣根帝督にとって予想以上に堪えているようだった。

 答えにならない思索を繰り返し、疲弊した頭は意思に反して段々と働かなくなっていく。
 そうして次第に切れ切れになる思考の片隅で。
 垣根は現状の理不尽さに、信じるどころか、居もしないだろう架空の存在を苛立ち紛れに罵倒した。



■ * □







 前後左右上下の区別も曖昧な黒一色。
 そんな闇の中で垣根は目を開いた。
 遠くに、ぼんやりと光るものが見える。
 巨大な光の河。
 そんな何かがゆったりと流れていくのを、垣根はしばらく眺めていた。
 その単語に想起される、宇宙空間に浮かぶガスの残り火とは違っていた。まるで、暗闇で生きる生物が進化の末に獲得した光明のような。
 どこか有機的な生々しい光の群れだった。
 もう少し、それに近付いてみようと一歩踏み出したその時。
 不意に背後から声が響いた。
「ご機嫌いかがかな。垣根帝督」
「何だテメェ」
 振り向いた垣根が目を向けた先には、燐光を纏った金があった。
 うっすらと光を放つような金の髪、それだけでなく白い装束に包まれた長身も何故か輝くように見える。
 フラットな顔立ちはまるで異質なものの上に人間的な感情の全てを詰め込んだような、どこか女性的なものだった。
 ヒトの形をしたそれが口を利く事が、垣根に何故か奇妙な感覚を与える。
「ご挨拶だな。私は、そうだなちょっとしたhboie在abだ。む、いけないな。ヘッダがここでも足りない。我々が人とgzr話hfifyzzrにおいて、先ずsrglml形pzgzgrdlglifと言うのでさえネックだと言うのに。自由に話くらいしたいものだ」
 それは、よく出来た人形のように大きく表情を変えずに口を開いた。
「あれだ。ルーンの精みたいなものだ。当代のガンダールヴよ。そんな事にしておこう。今のqrpzm時pffにおいて私のpvm顕tvmはイレギュラーだからな。
slm本gzrではないと言え、どんなsr害tzrが起きるか予測出来ない。君には充分な価値と興味があるが……今は名乗るのは控えておこう」
「御高説痛み入る、って言うべきところだろうが。何言ってんだかさっぱりわからねえんだけど」
「魔法によるvhfイrwlの伝達によっても理解出来ないか。面倒だな。かつての経験も活かせてはいないとは。それほどにqr元tvmの違いは深刻と言う事か。
なるべく君達に合わせた表現にしているはずだが、ノイズもかなり混じっているらしい。
ああ、君は拡……いや、接続も不十分なようだな。再試行は適わなかったか。なら不便だが仕方ない。君には後で検索したまえ、とも言えないからな。不十分なところはそのままにさせてもらおう」
 声の調子を確かめながら。金髪は誠に遺憾です、とでも言い出しそうな様子で首を振った。
 洒落や冗談、と言う様子ではない。
 そもそも、音の聞こえ方からしておかしいのだ。
 金髪の声がブレる瞬間だけ音源の方向性からズレているような。
 なんとも奇妙な音の広がりが起きていた。
「まあいい。ええと――今日はガンバル君にこのワタクシ応援をしに参りました。さあこの精霊様になんでもいってみなさい――こんな所か?」
「おい、どっからカンペなんて出した」
 明らかな棒読みで、隠しもせずメモを片手に金髪の変人はそんな事をのたまう。
「気になるかな? 残念ながら、これは衣服と言うより私のnzhhblf部yfmだが……君には深遠を覗く覚悟があるかね」
「いい。そこは興味ねえから捲んな。持ち上げるな」
 それどころか。いやに含みのある悪趣味な笑顔、にも見えそうな表情で、両脚をすっぽり覆う長い服(のようなもの)の端を捲ろうとする。
 何故だろう。
 その見た目に、雰囲気に余りにそぐわない、馬鹿馬鹿しい物言いを聞く度に。
 垣根はこの見ず知らずの筈の奇妙な存在にひどくがっかりさせられていた。
「ん、んん。さて、君の悩みと言えば」
 今更、咳払いなどした所で印象が変わる訳もない。
 それどころかわざとらしすぎて胡散臭さが増している。
 そんな金髪を睨むと、垣根はどうせ夢だと率直に今の疑問をぶつけた。
「テメェ、『未元物質』の事もわかるのか? なら、今起きてるおかしな状況について教えてもらいたいもんだ」
「そっちか。何だ、もう少し愉快な話題を期待していたのに。例えばそう、女の子や浮いた話だ。君は思ったよりユーモアに欠けているようだな」
 金髪は不満そうに唇を尖らせて見せた。表情は相変わらず大して変わっていない。
 考えれば、夢に本気になっているのもかなり奇妙な状況だ。
 しかし夢は夢。普段の思考や理屈は意味を成さないものだ。
「面白おかしいのはあの翼で充分だろ。いいから知ってる事があるってんならさっさと吐け」
「ふむ。能力者である君を前に、私の主観を述べていいなら少し話させてもらおうか」
 そう前置きして金髪は口を開いた。
 これが夢で、今が切迫した状況でなければ。
 垣根がわざわざおかしな他人に自らの能力について話を聞こうなどとは思わなかっただろう。
 垣根帝督以外の存在が、『未元物質』について垣根の知らない知識があると言うのも本来ありえない事だった。
「『未元物質』、君の能力そのものは実にユニークだよ。科学と言う一側面ではとても語りつくせない。折角だ、そのもう一端によって話を進めて構わないかな」
「ご丁寧にお伺い立てたところでテメェが人の話を利くようなタマにはとても見えねえんだけど」
「ありがとう、と一応言っておこうか。『未元物質』とはnzqfgf的hlpfnvmdl備vgz能力だ。他の能力と一線を隔すその特異性、そしてrnzwz無grmznznz力zlsfiffと言う点で私は君に注目している。
また、その能力は名前からして愉快だ。付けたのは君自身か研究者か。どちらにしても実に皮肉めいている。『宇宙空間を満たし、人間が見知る物質とは反応しない』とされる架空物質、暗黒物質ダークマターの名で
かつて微粒子間を埋める微細な存在とされた物質エーテル』であり『宇宙を満たし「永遠なる光の一点」の性質を示すものエーテル』を基にして発生する『人の知りえない新たな物質』を表そうと言うのだからね」
 語り出した金髪の言葉は、ところどころ音とも言葉ともとれない物として垣根の耳に届いた。
 なんとなくでも話の雰囲気がわかればましな状況だ。
 『未元物質』について引き合いに出された三つ、いや二つの存在。
 その内特に後半のものなどは一応日本語だと言うのに垣根にはさっぱり思い浮かばないものだった。
 何となく、言葉を変えて同一のものを語っているらしい、と言う事とあの『未元物質』に多少なりとも接点を持つ存在が垣根の知らないところにはあるらしい事くらいが何とかわかる程度だ。
「そしてあの『第一候補メインプラン』と共にほぼ開発のみでgvcr6ivglに手を掛けkzilpvgl幕evvifを覗く事が出来、将来的にはまた違ったアプローチからkvgvif頂lfpzmに至る可能性。
いずれも極めて貴重なものだ。にとっても、また私にとっても非常に興味深い」
ぴく、と垣根の眉が吊りあがるが、金髪は気にもしない様子で話し続ける。
「現段階では、どちらもまだ未熟なものだが……上の如く、下も然りとはよく言ったものだ。君達はそれぞれの特性を降ろした上で下位のものとしてよく置換出来ている。
力、形質、創造、破壊。その能力はそれぞれに当てはめられた機能を見事に反映出来ていると言っていいだろう。
同qrpff軸lfにおいて他にも多くの稀有な能力者達をこうも上手く揃える事が適ったのは彼、にとっても幸運な筈だが、少々焦っているな。実が熟れる前にその旨味を欲しているようなものだ。それがヒトの美点であり欠点だが……」
 先程から意味ありげに金髪が呼ぶ相手。
 荒唐無稽で当たり前、理屈などあてにならない夢の中だからかもしれないが。
 なぜか垣根にはそれがはっきりとイメージ出来た。
 何より、金髪の口から出たもう一つの忌々しい呼称が明言するまでもなくそれを物語っている。
 それを口にするのは、その人物と計画の関係者のはずだった。
 顔を顰める垣根に、金髪はふとその忙しい口を止めると軽く頷いた。
「何だ。『第一候補メインプラン』を引き合いに出したのがお気に召さなかったか? 誤解のないように言っておけば、私は君を『第一候補』より下に見ている訳ではない。は『第二候補スペアプラン』などと言っているが……
そのsvuriz性hrgfに則って言うならば、本来なら切り離し、比較するようなものではないんだ。
さながら組み合う二頭一対の蛇、隣り合う頂点同士、そしてあくまで機能の単位に等しい。今回はたまたまあちらの条件が都合よく整い、また揃うのが早かった。
彼、の『プラン』に都合よく照らしてみればそんなところだ。後は君の素養がqr側srに偏ってしまったのも惜しいな。一方通行アクセラレータ……そうだな彼と呼ぼう。彼の方が生来の性質ではある点においては将来的な可能性の幅が広い。それも君達の違いに繋がっているだろう。
その上で見れば、『未元物質』と『一方通行』と言う能力の性質上、そしてそれぞれの象徴と役割からすると――どうしても一見あちらを立てるような形になってしまう。それは優劣に因るものではないのだが、そんな事を今聞いても納得は出来ないだろうな」
 滔々と、意味ありげに語られるその中身にじっと耳を傾けながら。
 垣根は金髪を睨んだ。
 怪しい、はとうに通り越している。
 信じられない相手だが、しかしその言葉には奇妙な説得力があった。
 虫食いだらけでなくとも理解に苦しむ話だが、有益な情報はなるべく引き出しておきたかった。
「テメェ、あのクソ野郎の何なんだ? それにアイツの事も、能力も知ってやがるのか?」
「クソ野郎とはの事かな。大した事もない古い既知の間柄だよ。『第一位』に関してなら君よりは知っているとだけしておこうか。一応、面識もある。情報は、まあ少し毛色の違う話になるがね」
 勿体を付けた言い方に苛立ちながら、垣根はかといって文句も言えずに組んだ両手に力を込める。
 仮に、この金髪が気を変えてやっぱりやめた、などと話を切り上げられても困るからだ。
「『一方通行』の能力は君も知る通り『反射』、『ベクトル』の向きを制御する能力者だが、それはその一側面に過ぎない。『第一位』の本質は理解。思考し、観測した情報を基に力を制御し適応した形に整えるのが大きな役割と言える。もう少し詳しい話も出来るのだが、今の段階で君の頭を無意味に汚染するような事があっては申し訳ないからな」
 少し残念そうな口ぶりで、しかし言いたくて仕方ないと言った様子で金髪は肩を竦める。
「さて。そんな君達がそれぞれに持つ超能力とは炎に似ている。君達超能力者とは、新時代の火を齎す存在だ。ああ、もちろん単なる比喩だが君の話をする上ではお誂え向きな単語と言っていいだろう。
火とはかつて猿とヒトを分けたもの。愚かなヒトの蒙を啓いた光だ。古代における火、nzif門pfglの火の元素、それら天上の火をヒトの地まで降ろす者……君はその翼の意味すら考えた事がないようだから無理もないだろうが
……ある視点、、、、からはそのような愉快な見方も出来る。そしてそれに照らすなら、彼、には君達の行動は予見――いや既定事項かもな。君達がいずれ学園都市に反旗を翻すのは、正しく予定調和、、、、に過ぎないのだから」
 ただでさえ意味の通じない話が次々と飛び出す。
 それに理解が及ぶかと言う以前でさえ端々に混じる単語――特に第一位の事など――はかなりの興味を引いたが、垣根は現状の問題を思い出して先ずはそちらを優先する。
「何だそれ。そんな事より、こっちに来てから妙だ。どうしたら戻る」
 眉間に力を込めながら垣根はそう詰め寄るが、話を遮られた金髪は一転してつまらなそうに口を開いた。
「そんなものは学園都市に帰る事が出来れば解決する。瑣末な事だ。その能力の端から端まで君に教えている時間は今はないし、面白くもないからしないが……それで、妙とはどんな具合だ」
「何つーか……足りねえ、、、、。中身がスカスカになった感じだ」
 その垣根の曖昧な返事は、何故か金髪のお気に召したらしい。
 一転、愉快そうに――やはりそう変化しないが――みえる表情を見せると、まるで新しい玩具を見つけた子どものように垣根をじっと見つめてくる。
「そこまで解れば大したものだ。いや、流石は『ガンダールヴ』と言った所かな。まあそれが無くとも、意識せずとも呼吸が行われるように、君は始めからその本質を手にしていたんだったな。理解が後を追う形になってしまったのも無理はない」
「帰るったってまだその当てもねえんだけど」
「それはいつか君の主人に聞けば済む。だが今はまだ、と言うべきか」
 ふむ、とわざとらしく呟いて、金髪は顎に手を添える。
 美術品としては一級品、正しく神自ら鑿を振るったような――と形容出来そうな見た目だというのに、何故か雰囲気は妙にしまらなかった。
「じゃあ、私から君に一つ贈り物だ。君の疑問を解決するだけじゃない、お役立ちなヒントをあげるとしよう」
 金髪のいやに好意的な申し出に、垣根は疑いの目を向けた。
 元より垣根は、他人は信用しない方だ。そもそも人かどうかも怪しい存在にそれを言うのもどうか、といった気はするが。
 そんな垣根の心情を見透かすように口元を歪めると更に続けた。
「私は君に期待しているんだよ、垣根帝督。何、簡単な事だ。やり過ぎると死ぬんだけど」
「は?」
「最悪死ぬかも。まあ、破格の贈り物ギフトだから相応のリスクも仕方ない。『未元物質ダークマター』をより確かな物にするには、君には元より足りないものが多すぎる。それは君の素養上、ある意味仕方ない事だった。しかし、今の状況は図らずもそれを覆す絶好の機会となっている。
最小限のリスクで最大の利益を得られる事請け合い、とお勧めしておこう。君に無粋な蛇の唆しはそもそも意味がない。毒を孕むその蜜の味は自ら口にしてもらわなくては面白くないからな」
 ふっふっふーなどと棒読みで付け足しながら愉しげに金髪は腕を組んだ。
 無意味な一挙手一投足が一々垣根の勘に障る。
「意味のわからねえ勿体つけてんじゃねえよ」
「少しのお喋りくらい構わないだろう? 私は滅多な事ではhbfgf現hfifplglf出来ないんだ。さて、方法は簡単だ。ちょっとnrtvmyf質mlslmhrgfdl識ifplgl」
「……おい」
「ええー。もうか、言語wvmgzgfslm訳prmlfslf壊hlpfwlが予想以上に早いな。このr界pffpzmへのrgrqr接alpfにはやはりplm難があったか」
「おい」
「……rcv夢hlwlでの干渉も限界のようだな。私のhlm在も保たないか。それじゃあご機嫌よう、bf垣根pzr帝mz督。いgfまpzた。ああ、それと。垣根帝督、君は夢をたかが夢だと思っているらしいがそんな事はない。rcv夢hlwlとは無意識下と言う内面に肉体と精神と、望む像を映す鏡だ」
「おい! サラッとフェードアウトしてんじゃねえぞクソボケ!! 肝心な所はまるでグダグダじゃねえか!!」
ボロボロと、髪の端から崩れるように薄くなっていく金色は、その途端に不自然に奥行きを失ったように見えた。
しかし、その異変の最中も薄く、愉しそうな笑みを浮かべ。口を動かし続けていた。
「pzgfgv生nvrml木dl原azrmrblir愚pzmrnl犯hrhlmldl追dziv堕grgzprnrgzgrtz再yrhlmltfdllpzhfmlpzhlivglnl経gvrgzwzprsvgl至gzif道dlhfhfnfplgltzwvprifpzpr待hrgvrif」



■ * □






「ふざ、けんな……クソボケ、ってああ?」
 ぼんやりと呟くと、垣根は重い頭を上げた。
 箱の上に突っ伏したままどうやら眠っていたらしい。
 手にしたままのペンは寝惚けて動かしたものか――大量の奇妙な文字とも絵とも言えない図柄を近くに散らばった白い紙の一面に書き殴っていた。
「夢、だ? まぁ、そうだろうな。しっかし、明晰夢なんていつ振りだよ」
 たかが転寝てみた短い夢だと言うのに何だか酷く疲れてしまった。
 だが、同時にあれこれわからない事に頭を悩ませていたのがひどく馬鹿馬鹿しいような。
 不思議とそんな気にはなっていた。
「こちとら端から常識外なんだ。少々のイレギュラー如きで狼狽えてる暇はねえな」
 当てもない。
 根拠もない。
 確証もない。
 しかし、垣根の中で何故か迷いは吹っ切れていた。

 壁がどうした。
 ブチ壊せばいい。
 壊れないなら飛び越えればいい。
 手段も可能性も関係ない。
 そんな物は選ばない、関係ない。
 常識を捩じ伏せてでも、進むしかない。

「そっちの都合なんか構うもんか。俺は好きにやらせてもらうぜ」
 誰にともなくそう口にすると。
 垣根はゆったりと笑った。
 どこか晴れやかなその目には、強い光が戻っていた。




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とある未元の神の左手(完)

ってくらいなんか今までにないくらいきれいに最後のとこがまとまった気がします。
けどルイズ分が足りない! もっとルイズを!

「折角色々助言してやったんだからちゃんと出せ」とまた夢枕に立たれたのでおまけの番外編も。
エイワスさんこんな所の垣根帝督でも気にしてくれてるんですかね。
シリアスな雰囲気を纏われると、それはそれで色々とブチ壊されそうで怖いので。
夢だから!とそんな、とんだ仕様になっています。
あんまりにもセリフが長いので、ところどころ改行させてもらいました。
あとエイワス大先生に『未元物質』についてあれこれ言ってもらってますが。
もちろん勝手な当SS独自設定です。
15巻の描写とか以降のちょっとした情報を参考に、『未元物質』は『一方通行』のスペアと言うか対、一部対照的なものをもとにした能力とした上でアレコレ設定しています。偶像の理論バンザイ。
大部分sfhvqrにしておいてなに言ってんだって気も我ながらちょっとしますが。
無くても作品の展開には問題ないとこなのでどうか雰囲気で流してください。



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