僕は今激しく混乱しています。
何を言いたいのかというとつまりはこういうことです。
現在進行形で僕の間隣で目を回し、気絶している彼女に僕は見送られながら新しい生を受けるためにゲートに入ろうとしたのだが、どういうわけだかそれまで僕の手前にあった灰色のゲートは、突然青色のゲートにすり替わっていた。
そのことに驚いた僕は彼女にこれは何なのかを聞くのだが、時はもうすでに遅く青色のゲートに僕の左手が触れてしまい、そのまま吸い込まれてしまった。
それを何とか止めようした彼女は僕の右手をつかみ、必死に止めようとしたのだが、そのかいはなく僕ともども引き込まれてしまった。
そのゲートを抜けるとそこは青々とした草花と、遠くにはまるで御伽話の世界にあるような綺麗で立派なお城が建てられていた。
ただ、どういうわけだか僕たちがいるところは土がえぐれ、クレーターができていたのだ。
そういえば僕の背は縮んでいるし…だいたい六~七歳ぐらいか?
うん。まったく訳が分からないです。
「いったい何が起こったの?」
思わずそうつぶやいてしまった僕は悪くないはずである。
そういえいま気が付いたけど目の前に―…親子、かな―ピンクブロンドの髪を持つ目つきの鋭い女性と、その女性の面影がどこか似ている同じ髪色をした小さな少女が目の前にいた。
その二人は何というか、ハトが豆鉄砲を食らったかのような表情をしていた。
まぁ、そりゃそうだと思う。突然何もない空間からいきなり人が現れるんだから、そんな状況が当たり前かのように起こる世界があるんだったらまだしも、そうじゃない限り状況に追い付けずに頭が思考能力を放棄するに決まっている。
そして彼女たちから見たら僕たちは不審者極まりない。
そんな人物が下手なことをしてしまったとしたら?
もしここが人様の敷地内だとしたら?
どうやらここら辺はきれいに人の手が加わっているようなので誰かの敷地内という可能性は高く、そんなところで下手なことをしてしまったら何をされてしまっても文句を言えない。
思うにおかしなことだらけだ。
僕は死んだ。
そのあと僕はちゃんとしたプロセスをふんで様々なことを知り、そのうえで自分の意思と世界の意思の元僕は生まれ変わるはずだった。
そう、“はずだった”のだ。
そのことに一番詳しそうな世界のバランサーと名乗る少女はどうやら気絶してしまっているようだし、行動を起こすにも、やはり情報は必要だ。
やはり、まったくわけわからないことには変わりはないが、だがやらなくてはならないことはわかった。
要は相手をへたに刺激をしないようにここはどこか、この世界の歴史、社会構造などを聞き出し、知ることだ。
そこまで考えを一巡させた後いまだに茫然としている女性に声をかけようと口を開いた。
「あ、あの…あなたt「はっ ここはどこなんよ!? 私、せかいのはざまからでられないはずなんよ!? そういえば優君は… ―あ!いたんよ~」
が僕の横で気絶していたバランサーの少女がいきなり『ガバッ!!』と起き上り騒ぎだした。
あちゃ~と僕は頭を抱えるがそれはもういろいろと遅く、片袖を両手で握りながらゆすり、僕の無事を喜んでくれているようだったが、これはもう、いろいろとタイミングが悪すぎる。
そのせいでどうやら女性はハッとしたのかもともと吊り上がっているその眼をさらに鋭くさせ、僕たちを睨み付けながらその右手に持っている杖を僕たちに向け警戒心をあらわにした。
正直に言うとかなり怖いです。元普通の、しかも病弱の人間がさっきに近いようなにらみつけに体制なんかあるわけがないんです。
それなのに僕の隣にいるこの子はそのことに気が付かない。
もうね?この子は鈍感なのやら、それか分かっていてわざとやっていつのかわかりませんよ。
威圧感がすごいというのに。
もうガタガタと震え上がってしまいますよ。
そんな僕の思考を置いてけぼりにし、状況は無慈悲に進んで行っているわけなのだが。
「貴方がたはどこのどなたですか? どうやってここに侵入してきたのですか? ことと場合によってはたとえ子供といえど容赦はしませんよ?」
そんなことを言われたも、僕にはさっぱりなんですよ。
それに杖をこっちに向けないでください。コワクテショウガナインデ。
その杖に何の意味があるのか分かりませんけどすごく怖いんで。
それにそんなことをしなくても僕はあったことをありのまま、そのままに話しますよ。
もうこうなったら開き直ってポーカーフェイスで恐怖心を表に出さずにやり取りしてやりますよ。
それはそうと、いい加減まとわりつくのやめてくださいよ、バランサーさん。
「すいません。実は僕も何でここにいるのかわからないんです。何だか知らないんですけど突然青い鏡みたいなものが現れたと思ったら半ば強引に引きずりこまれてしまって…そしたらいつの間にか僕たちはここにいた、という感じです。」
「強引に引きずり込まれた? どういうことですか」
あ、少し雰囲気が柔らかくなった。
そうですよ。まず話を進めるには信頼関係を築けなくてはいけませんからね。
ですから嘘はつきませんよ。
まぁ、僕は実は病気で死んでしまった人間だとか生まれ変わろうとしたときになんたらかんたら~ の話は信じてもらえそうにないですから話しませんけれども。
「そのままの意味です。今さっき言ったように僕には何の心当たりもありません。もちろんここがどこだとか、あなたたちが誰なのかとか、そんなこと一切わかりません。わかることと言ったらあなたが着ている服と僕が着ている服の素材が違うことから、ここが少なくとも僕がいた土地とまったく異なった土地だということぐらいしかわからないです」
「……どうやら嘘は言ってないようですわね」
「そうですよ。うそを言ってもお互いに何のメリットもありませんから」
「…………」
とりあえずお互いに? というより僕が相手に情報を提供したことにより女性はどうやら納得がいったらしく、僕たちに向けていた杖をそらし気疲れしたような溜息をついたかと思ったら、どういうわけか女性の足元にしがみついている少女のことをどこか困ったような、あきれたような複雑な目で見つめた後、|佇《たたず》まいをただし僕たちに軽くではあるが確かに頭を下げてきたのだ。
「どうやら私の勘違いのようですわね。警戒のためとはいえ杖を向けてしまいすみませんでした。よければ事情を話しますので私たちについてきてくれませんか? 私たちの屋敷に招待いたします」
よかった。どうやら話をしてくれるだけの信用を勝ち取ることができたみたいだ。
なんか知らないけど屋敷に案内するって言ってるし、悪いような扱いは受けないだろうことはすぐに分かったので僕は女性の言葉におとなしく従うことにした。
そういえばバランサーの少女の反応がなくなったと思って横を向いたら何やら唖然としていた。
なんていうか、意外なことに意外なことが重なったかのような、そんな顔だった。
そんな顔をするということは何か分かったことがあるのか、それともどうしようもないことがあるのか。
どちらにしろ何かあったということだ。
「それではこちらについてきてください。少し遠いところなので馬車に乗って向かいます。ですので少し窮屈な思いをすると思いますが、それは我慢してください」
まあ、そのことはどうでもいいとして、女性はそう僕たちに声をかけたと思ったら、身を返し女の子を連れて歩き出したので僕たちもそれについていくことになった。
そして僕たちは客間…にしてはかなり広い部屋に通され、やけに長いテーブルを挟み、女性―カリーヌ
さんとその娘さんのルイズちゃんと向かい合いながら腰を掛けていました。
今更ですけれども随分とお金持ちの家なんですね~。
さっきまでいたあそこの原っぱも、この目の前にいる人たちの敷地内とか言っていたし、メイドいたし。
こんなすごいファンタジックな家? があるなんてびっくりを通り越して絶句してしまいましたよ。
まぁ、今はその話は置いといて、とりあえず僕たちはカリーヌさんからここはどこなのか、この世界の文明などを簡単に話してくれた。
話によるとこの世界は貴族社会によって形成させており、貴族は一部の例外を除いてみんな魔法を使えるらしい。
その魔法使いを総称して“メイジ”と呼ぶらしい。
ただ、そんな世界であるが為に存在する裏側は容易に想像できた。
それは果てしない闇だ。そんなものはどこにでもある。
当然貴族がいるのだとすればその反対となる平民が必ずいる。
その平民は後で知ることとなるのだが、時に貴族に殺されることあるそうだ。
そんなことを思ってしまうも、僕は一通り疑問に思っていたことをカリーヌさんに質問し、それに彼女は答えてくれた。
それはそれ相応の信用を得ただけれはなく、この世界の常識を知ってもらわなくては後々面倒なことになるということも含まれていることは誰にでもすぐにわかることだろうが、これには別の意味も含まれているだろう。
それはカリーヌさんがこの世界のことを話したのだから今度は貴方たちのことを話しなさいということだろう。
だけど僕が切れるカードはあの原っぱで初めて会ったときに切ってしまったし。
僕は不安になって隣にいる羽をはやした少女を見つめ、そのことに気が付いた少女は小さくだがはっきりとうなずいた。
しばらくの沈黙の後、そのうなずきに背中を押された僕はすべてを包み隠さず話すことを決心し、カリーヌさんを見つめ、そっと口を開いた。
「この世界のことを話してくれてありがとうございます。正直とても助かりました。それでは今度は僕たちのいた世界のこと、僕たちはいったいどのような人間なのか、その他の貴方が疑問に思っているようなことをこたえていきたいと思っていますが、正直に言いますと古今東西聞いたことのないような話になると思います。ですがこの話はすべて事実です。ですからどうか…どうか僕の話を最後まで聞いてください」
「……わかりました。私も“全部”とは言えませんが、貴方がたがおっしゃることを本当だと前提に話を聞かせてもらいます」
「ありがとうございます。それでは僕の生い立ちから話そうと思います。僕は……」
どうやら少年の名前はカジョウ ユウという名前らしい。
そのユウと名乗る少年は異世界から来たそうです。そこではカガクというものがあり、それは老若男女選ばず、決まったプロセスを踏めば必ず同じ結果を導き出し、世界にあるすべての仕組みと理由を解明したものらしいです。
そこに生まれた少年は生まれつき病に侵されていたらしく、それでも家族と幸せに暮らしていたといっていました。
まるでカトレアみたいですね。
その少年の父親は事故にあって死んでしまい、母親は女手一つで少年を育て、そしてその少年は病のために死んでしまったそうです。
その死後の世界には神様など存在しなく、亜人と思われる翼をはやした少女に出会い、転生する準備をした後、そこに繋がるゲートをくぐろうとしたらしいのですが青い鏡のようなものが現れそこに吸い込まれ、今に至るという話でした。
少年が話したことをまとめると大体こんなかんじになるのですが、細かいところではこんな出鱈目な話を肯定するための裏付けは話の中でされているために信じることしかできませんでした。
まぁ、そこまではまだ信じられたんですよ。彼がこんななりで実は十七歳の青年なんてこと以外は。
本人|曰《いわ》くいつの間にか縮んでいたらしいです。理由がどうしてもわからないらしいです。
ですが、おかしなことに私と今対等に話し合うことができているわけですし、信じるしかないのでしょうか?
とりあえずは聞くべきことは聞きましたし、あとは話していない一つの可能性のことを目の前の二人に話さなくてはいけないようですわね。
この話を聞く限りではこちらが完全に加害者ということになってしまいます。
ルイズ、あなたとんでもないことをしてくれましたわね。
「話は大体わかりました。いろいろ納得いかないところはありますが、貴方たちがおっしゃったことが本当だと信じることにしましょう」
よかった。どうやら信じてくれたようだ。
「ありがとうございます。信用してもらって、正直に言うと話している本人である僕ですら出鱈目なことを言っているものだなと思ったものですが……それでも信じてもらえて幸いです」
「えぇ、出鱈目にしか聞こえませんでしたわね」
あ~、正直に言いますか。僕としても耳が痛いですよ。
その思いが僕の顔に出てしまい、思わず眉間にしわを作ってしまった。
それを見たカリーヌさんはそんな僕の顔を見て苦笑いしながらさらに言葉をつづけた。
「ですが、だからと言って頭から否定するつもりはありませんから安心してください。ですが貴方たち二人の真剣な表情や筋の通った話、何より貴方の目を見て嘘は言っていないものだと判断しました」
「つまり…その、どういうことですか?」
「要するに私は貴方たちの話す言葉に信用したのではなく、貴方たちそのもの信用したということです。その意味、貴方ならわかりますね?」
「…はい」
そういいながら僕はうなずく。
「それでは、まず私は貴方たちに謝らなくてはいけないことがあります」
謝らなくてはいけないこと? 僕はそんな心当たりはないんですけど。
「それはいったいどのような意味で言っていることなんですか?」
「私は、実は貴方たちに話していないことが一つだけありました。本当はもっと前に話さなくてはいけないことだったのですが、どうしてもそのための“確信”を持つことができなかったのです」
「確信…ですか?」
「そうです。ですが私は貴方たちの話を聞き、確信を持つことができました」
そういうとカリーヌさんは目を伏せ申し訳なさそうに言葉をつづける。
「それは貴方たちがこの世界に来てしまった原因です」
…………え?
「「原因わかってたんですか!?」」
「え…えぇ」
僕たちはあんまりな答えに思わず目をむき、食いつくようにカリーヌさんに聞き返した。
カリーヌさんはカリーヌさんで僕たちの権幕のせいで苦笑いしながらたじたじである。
「あぁ、その。すみません。あまりにうれしいことでしたので」
「本当にごめんなさいなんよ」
「いえ、気にしなくても結構です」
とりあえずはそう言ってはくれましたが…カリーヌさん、顔は笑っていますが口元がひくついていますよ。
「実は、貴方たちの言うこの世界に一つの特別な魔法があるのです」
「特別な魔法、ですか?」
「えぇ。その魔法の名前はサモン・サーヴァント、使い魔召喚の儀式です。この儀式は本来このハルケギニアにいる動物や幻獣を一つ召喚し契約を結ぶものなのですが…」
「どういうわけだか僕たちが召喚されてしまったということですか?」
「その通りです。ですから本来人間が召喚されるなんてことは…」
「ないはず、ということですか」
何ですか、そっちのほうがよっぽど出鱈目じゃないですか。
ていうことは何ですか? その話が本当だとすると僕を召還した人物は世界の壁どころか次元の壁さえ超えて僕たちを召喚し、あまつさえ僕だけではなく僕の隣で唖然としている彼女を偶然とはいえ二人も召喚してしまうのだから始末に負えない。
ナンデコンナコトニナッタノ?
「それで……私たちを召還した人は誰なんですか?」
いまだ半分意識が飛んだ僕の代わりに横から凛とした声がカリーヌさんに質問としてかかった。
そうだ。こんなところで呆然としている場合じゃない。
少なくとも向こうから答えをくれるといっているのであれば僕はそれを聞かなくてはいけないんだ。
「僕も気になります。要するに僕らは召喚されたのだからその人のもとについて何かをしなくてはいけない…ということですよね? だったら僕達はその人の存在を知る権利はあるはずです。まさかとは思いますけどカリーヌさん、貴方というわけではありませんよね?」
空気の温度が数度下がったかのような感覚がこの一帯を支配した。
僕が言ったことはある意味カリーヌさんに対する嫌味、挑発みたいなことなのだから。
場合によっては、僕はこの状況をひっくり返すために行動をしなくてはいけない。
その行動はいったい何を意味するものなのかはハッキリしていないが、それでも意味のあるものになることはすぐに分かる。
カリーヌさんは、その僕の言葉の真意を正しく受け止めようとしてくれていることは僕の目から見てもすぐに分かった。
それを図るための沈黙。
だが、その沈黙も長くは続かなった。
「わかりました。素直に話しますわ」
「…すみません、なんか試すようなことをしてしまって」
「いいえ、結構です。確かに私も隠すような話し方をしていましたから、そういわれても仕方がないと自覚しています」
「それで、僕たちに紹介してくれるんですよね?」
僕はもうカリーヌさんは誤魔化すことはないだろうと確信し、ストレートに質問した。
「えぇ。もちろんそうさせてもらいます。とはいっても、もうあなたたち二人は会っているのですけれどね」
え? ということは―――
「もしかして……」
「その通りです。私の娘のルイズです」
…………え~と、あの女の子ですか? カリーヌさんとずっと一緒にいた。
はぁ、これから先が大変そうです。
よかったよ~
副腎に腫瘍が出来ていなかったよ~
精密検査を受けた結果、ただ血圧が高くなりやすい体質だったらしいし…
ほんとうによかったよ~~~!!(泣笑)