「アンタ達、誰?」
私……ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、たった今、酷く狼狽している。
なぜならば、二年の春、5の月。
使い魔召喚をしたら、人間が二人召喚されてしまいました。
認めたくない。何故、私だけいつもこうなの?
姉さまも、ちい姉さまも、かあさまも、みんなも、魔法が上手なのに。
なんで、私だけ爆発するの?
昔、魔法が失敗しても爆発はしない、と聞いたことがある。
では何故、爆発するのか?
……やめよう。今は使い魔だ。
目の前にいる二人。
一人……女の子の方は、なにやら白を基調とした、清潔感と威厳あふれる、ひらひらした服。白い、まるでシルクみたいな肌に、美しい白髪。赤い瞳も、爛々としていて、ルビーみたいだった。
もう一人……男の方は、青い見たこともない服に、黒いズボン。短めに整えられた漆黒の髪に、闇のように黒い瞳。その瞳には輝きがあり、まるで黒曜石のように煌めいている。その瞳の輝きは無垢な少年のようだ。
なんだか、貴族よりも美しく、気高く、しかし平民のような気がした。
……黒い髪の男の方の服が若干色褪せているからであるが。
「みろ、ミス・フランソワーズが平民を二人も召喚したぞ!」
「流石はゼロのルイズだな」
周りの罵声に、思わず涙目になる。なんで、私だけ……
すると、先程まで慌てたようにしていた二人が、ぼそりと何かを呟いた。
『失せろ』
『黙れよ』
その華奢な容姿とは、その纏う空気とはかけはなれた、二人の重く低い一声。
一瞬だけ。
一瞬だけだが、ぞぁっ、と体の中に何かが流れた。
冷や汗が止まらない。
なんだこれは。
生まれてはじめての……いや、感じたことがある。幼い頃、かあさまが城に行ったとき、兵士達にやったのと同じだ。
威圧。存在感そのものだけで人を圧倒する力。力あるものが放つ特別な力。
他の生徒や先生すら黙ってしまった。気の弱い子は座り込んでしまっている。
周りより早く立ち直ったミスタ・コルベールが慌てたように私をせかす。
「……っ! ミ、ミス・フランソワーズ! コントラクト・サーヴァントを」
「っ、ミスタ・コルベール! しかし! 人間と使い魔契約など、前代未聞です!」
その声で私も我に帰ったが。
それでも、相手は人間……それも、平民を、使い魔などになど、前代未聞だった。
「……もう一度の召喚は認められません。これを逃せば単位はあげれませんよ? いいですか」
ミスタ・コルベールにどやされる。なんなのよ。私、なんかいつも踏んだり蹴ったりね。
『ったく、なんだかしらねぇが……女の子を泣かしたらいかんだろ』
『そこは肯定させてもらおうかの。サイトお主、威圧が出来るとは何者じゃ?』
『え? 威圧?』
『無意識かぇ……』
なにやら話し合っているようだが、言葉がなにぶんわからないので、まずは。
「貴族にこんなことされるなんて二度とないのよ。光栄に思い、感謝しなさいよね」
と言った後に、少女の方に私はいきなりキスをした。
「にゃぁ!?」
珍妙な悲鳴をあげ、右腕を押さえている。
「み、右腕が……疼く……」
次は、少年に。
そういえば、男性へのキスはこれが初めてだな……とか思いながら、
「アンタも、感謝しなさいよ。こんな光栄なことは二度とないのよ?」
そう言った後、触れるようにキスをした。別に使い魔とキスをしても問題あるまい。
「ぁぐっ!? ――ッ!」
左手を押さえ、痛がっている。
「ルーンを刻まれているだけよ? すぐに痛みは引くわ」
少しすると、ルーンが刻まれ終わったのか、少女と少年は手を離し、その体に刻まれたルーンをまじまじと見ている。
「なぁ、アマツさん、ルーンってなんだ?」
「別にアマツでよいぞ。ルーン……つまり、ルーン文字というのは、まぁ……使い魔契約の時に刻まれる、この珍妙な文字の事じゃ」
ほれ、と少女が彼の左手を指す。
「それにな、基本的に、ルーンには軽い『ギアス』がかかっておる」
「絶対尊主、イエス、マイロードってか?」
「それであってるぞ。で、そこの桃色娘がその主じゃぞ?」
なにやら話し込んでいるようだ。というか、桃色娘とは私の事か、失礼な。
私は二人に話しかける。
「私、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。アンタ達のご主人様よ」
と、取り合えず自己紹介する。
「妾はアマツマガツチと申す。極東の国から呼ばれてきた。死なぬ限り、一生の付き合いとなるからの。よろしくたのむ」
そして、優雅に一礼。もしやこの少女は東の世界……ロバ・アル・カリイエの重要な人物なのだろうか?
「俺は平賀才人。ヒラガ、が苗字でサイト、が名前な。元学生。よろしく!」
と、呑気そうな少年……サイトが、そう挨拶する。こちらは苗字がある。貴族なのだろうか?
「面白いルーンですな。スケッチさせてもらいます」
ガリガリ、とコルベール先生がメモ帳に二人のルーンを書いていく。
「……はい、結構です。それでは皆さん、今日はこれまでです」
そういうと、先生生徒問わず、我先にとレビテーションで寮へ帰っていった。これで、私達三人になる。
「さあ、行くわよ?」
「魔法スゲー……お、おう」
「ふむ。了解した」
私はこれからどうすればいいのだろう?
まさか人が召喚されるとは思わなかった。動物用の藁しか用意してないのだけど……。
「空飛ばないのか?」
「妾達に会わせておるのじゃ」
「そうよ! さっさと行くわよ?」
――さて、どうしたものか。
私は、呑気な使い魔二人を見て、ため息をついた。
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投稿遅くなりましたが、感想への返信です。
[8]九尾◆7096efc3
い、異形好きでしたか(汗)
えーと、龍に戻る予定はありますのでご期待ください。
[7]じゅっ◆54bd32b7
短いのは、勘弁してください(汗
これから、徐々に増やしていくつもりです。
えーと……人化が出来る理由と、人化させた理由ですか……
人化出来る理由は後々本編で。
人化させた理由は、サイトをどうやって捩じ込むか、と考えたらこうなりました。シルフィードのくだりは全く思い付きませんでしたね……修行が足りないようです。
[6]一茶◆2a7322a4
確かに短いですが、そうズバッと言われると心苦しいですね……もっと文字数を伸ばせるように精進します……
[3]woodenface◆032fe187
うちの主人公ちゃんはチートではありますが、最強でなく、更に言えば「使い魔」です、とだけ言っておきます。
[2]レポ◆ad531c49
はい、確かに短過ぎましたね(汗
もう少し時間と環境が整い次第、プロローグとかを編集していきますので、今後ともよろしくお願いします。