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No.4371の一覧
[0] ゼロの使い魔と炎の使い魔(ゼロの使い魔xデジモンシリーズ〈フロンティア中心〉)[友](2009/03/15 21:23)
[1] プロローグ[友](2008/10/07 18:36)
[2] 第一話[友](2008/10/07 18:51)
[3] 第二話[友](2008/10/10 19:17)
[4] 第三話[友](2008/10/13 16:12)
[5] 第四話[友](2008/10/20 17:57)
[6] 第五話[友](2008/10/26 04:02)
[7] 第六話[友](2008/11/01 17:51)
[8] 第七話[友](2008/11/08 17:50)
[9] 第八話[友](2008/11/15 12:02)
[10] 第九話[友](2008/11/22 17:35)
[11] 第十話[友](2008/11/29 14:53)
[12] 第十一話[友](2008/12/05 19:52)
[13] 第十二話[友](2008/12/07 21:43)
[14] 第十三話[友](2008/12/14 16:23)
[15] 第十四話[友](2008/12/21 12:18)
[16] 第十五話[友](2008/12/28 16:54)
[17] 第十六話[友](2009/01/01 00:05)
[18] 第十七話[友](2009/01/02 16:26)
[19] 第十八話[友](2009/01/09 00:29)
[20] 第十九話[友](2009/01/11 06:34)
[21] 第二十話[友](2009/01/15 20:24)
[22] 第二十一話[友](2009/01/18 17:32)
[23] 第二十二話[友](2009/02/01 11:52)
[24] 第二十三話[友](2009/02/01 11:54)
[25] 第二十四話[友](2009/02/08 22:23)
[26] 第二十五話[友](2009/02/15 11:45)
[27] 第二十六話[友](2009/02/22 20:46)
[28] 第二十七話[友](2009/03/01 13:24)
[29] 第二十八話[友](2009/03/08 19:44)
[30] 第二十九話[友](2009/03/14 00:18)
[31] 第三十話[友](2009/03/14 21:51)
[32] 第三十一話[友](2009/03/15 21:22)
[33] 第三十二話[友](2009/03/26 19:38)
[34] 第三十三話[友](2009/04/11 22:44)
[35] 第三十四話[友](2009/04/11 22:43)
[36] 第三十五話[友](2009/05/02 13:14)
[37] 第三十六話[友](2009/05/02 13:13)
[38] 第三十七話[友](2009/05/04 18:13)
[39] 第三十八話[友](2009/05/05 10:08)
[40] 第三十九話[友](2009/05/05 16:55)
[41] 第四十話[友](2009/05/31 14:53)
[42] 第四十一話[友](2009/06/21 11:00)
[43] 第四十二話 7/19修正[友](2009/07/19 20:21)
[44] 第四十三話[友](2009/08/01 12:23)
[45] 第四十四話[友](2009/08/12 13:39)
[46] 第四十五話[友](2009/08/31 23:37)
[47] 第四十六話[友](2009/09/12 20:57)
[48] 第四十七話[友](2009/09/13 16:58)
[49] 第四十八話[友](2009/09/19 00:53)
[50] 第四十九話[友](2009/09/27 10:46)
[51] 第五十話[友](2009/10/17 16:40)
[52] 第五十一話[友](2009/12/06 14:33)
[53] 第五十二話[友](2010/08/08 22:23)
[54] 第五十三話[友](2010/08/22 23:45)
[55] 第五十四話[友](2010/09/26 20:09)
[56] 第五十五話[友](2010/09/26 20:08)
[57] 第五十六話[友](2010/11/20 11:51)
[58] 第五十七話[友](2010/12/12 23:08)
[59] 第五十八話[友](2011/01/02 19:02)
[60] 第五十九話[友](2011/01/24 14:57)
[61] 第六十話[友](2011/02/13 19:25)
[62] 第六十一話[友](2011/02/13 19:22)
[63] 第六十二話[友](2012/01/15 20:45)
[64] 第六十三話[友](2012/01/15 20:39)
[65] 第六十四話[友](2015/02/08 17:28)
[66] 第六十五話[友](2015/03/08 21:45)
[67] 第六十六話[友](2015/05/03 15:33)
[68] 第六十七話[友](2015/06/07 21:34)
[69] 第六十八話[友](2015/10/18 17:11)
[70] 第六十九話[友](2016/02/28 20:03)
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[4371] 第二十七話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/03/01 13:24
従軍の許可を受けたアイナとルイズ。

そして・・・・・


第二十七話 ダータルネスの幻影


年末はウィンの月の第一週、マンの曜日はハルケギニアの歴史に残る日となった。

この日、トリステイン、ゲルマニア連合軍6万を乗せた大艦隊が、アルビオン侵攻のため、ラ・ロシェールを出向する運びとなったからである。

その中には、拓也とアイナ。

そして、ウェールズとアンリエッタもいた。

才人とギルモン、ルイズは後にゼロ戦で合流する予定である。




艦隊が出向して暫くすると、『ヴュセンタール』号の甲板に、ゼロ戦が着艦した。

才人とルイズ、ギルモンは、拓也、アイナと共に士官に案内されていく。

とあるドアの前に出ると士官はドアをノックする。

すると、中から返事があった。

士官はドアを開け、拓也達を中に入れる。

その部屋で4人と1匹を出迎えたのは、ずらっと居並んだ将軍達であった。

肩には金ぴかのモールが光っている。

随分な偉いさんたちのようである。

唖然とする4人に、従兵が席を勧める。

ルイズとアイナが椅子に腰掛け、才人、ギルモンと拓也がその後ろに控えた。

一番上座の人物が口を開く。

「アルビオン侵攻軍総司令部へようこそ」

その人物は4人が知っている人物だった。

「総司令官のウェールズ・テューダーだ」

拓也達は緊張したが、ウェールズは紹介を続ける。

「こちらが参謀総長のウィンプフェン」

ウェールズの左に腰掛けた、皺の深い小男が頷いた。

「ゲルマニア軍司令官のハルデンベルグ侯爵だ」

角の付いた鉄兜をかぶったカイゼル髭の将軍が、ルイズ達に重々しく頷く。

「そして、ご存知だろうが、トリステイン王国女王であるアンリエッタ女王陛下、並びにマザリーニ枢機卿だ」

「ひ、姫さま!?」

ルイズは思わず叫んだ。

「ルイズ、あなたが来てくれて心強いわ」

アンリエッタは微笑んで言った。

それには4人とも呆然となった。

流石に女王であるアンリエッタが戦場に来るとは予想すらしていなかった。

それからウェールズは、会議室に集まった参謀や将軍たちに、ルイズを紹介した。

「さて各々方。陛下の女官であり、“虚無”の担い手を紹介しよう」

しかし、そうは言っても会議室の面々は盛り上がらない。

胡散臭そうにルイズと才人を見つめるばかり。

「タルブの空で、アルビオンの艦隊を吹き飛ばしたのは、彼女たちなのです」

と、アンリエッタが言って初めて、将軍たちは関心を持ったらしい。

才人はルイズをつついた。

「あによ」

「・・・・・いいのか?バラしちまって」

「じゃないと、軍に協力できないじゃないの」

そのことに才人は思うところがあったが、何も言わなかった。

ウェールズは4人に、にっこりと笑いかけた。

「いきなり司令部に通されて驚いただろう。いやすまない。しかし、この艦が旗艦ということは極秘なのでね。見ての通り、竜騎士を搭載するために特化した艦なんだ。故に大砲も積んではいない。敵にバレたら、狙い撃ちにされてしまうからね」

「は、はぁ・・・・・・しかし、どうしてそのような艦を総司令部になさったのですか?」

ルイズが可愛らしい声で娑婆っ気たっぷりの質問をしたので、辺りが笑い声に包まれた。

「普通の船では、このような広い会議室を設ける事はできん。大砲を積まねばならないからな」

大軍を指揮する旗艦に必要なのは攻撃力より情報処理能力という事なのだろう。

「雑談はそのぐらいにして、軍議を続けましょう」

とゲルマニアの将軍は言った。

将軍たちから笑みが消える。



軍議は難航していた。

アルビオンに6万の兵を上陸させるための障害は2つ。

まずは、未だ有力な敵空軍艦隊である。

先だってのタルブの戦いでレキシントン号を筆頭に、戦列艦十数隻を屠ったとはいえ、アルビオン空軍には未だ40隻ほど戦列艦が残っている。

対してトリステイン・ゲルマニアは60隻の戦列艦を持つが、二国混合艦隊のため、指揮上の混乱が予想された。

錬度に勝るといわれるアルビオン艦隊を相手にした場合、1,5倍の戦力差は帳消しになってしまうかもしれない。

第二に、上陸地点の選定である。

アルビオン大陸に。6万からの大軍をおろせる要地は2つ。

主都ロンディニウムの南部に位置する空軍基地ロサイスか、北部の港ダータルネス。

港湾設備の規模からいって、やはりロサイスが望ましかったが、そこを大艦隊で真っ直ぐ目指したのではすぐに発見され、敵に迎え撃つ時間を与えてしまう。

「強襲で兵を消耗したら、ロンディニウムの城をおとすことは叶いません」

参謀長は冷静に兵力を分析して一同に告げた。強襲とは敵の抵抗を受けつつ、攻撃を加えることである。

連合軍に必要なのは“奇襲”であった。

敵の抵抗を受けずに、6万の兵をロサイスに上陸させたいのだ。

そのためには敵の大軍を欺き、上陸地点のロサイス以外に吸引しなくてはならなくなる。

つまり、6万のトリステイン・ゲルマニア連合軍が、『ダータルネスに上陸する』と、敵に思わせるための欺瞞作戦が何としてでも必要なのである。

それが、第二の障害であった。

「どちらかに“虚無”殿の協力を仰げないか?」

参謀記章をつけた貴族がルイズの方を見ながら言った。

「タルブで『レキシントン』を吹き飛ばしたように、今回もアルビオン艦隊を吹き飛ばしてくれんかね」

才人はルイズを見つめた。

ルイズも振り返り、首を振った。

「無理です・・・・・・あれほど強力な『エクスプロージョン』を撃つには、よほど精神力が溜まっている状態でないと。後何年、何ヶ月かかるかわかりません」

参謀たちは首を振った。

「そんな不確かな“兵器”は切り札とは言わん」

才人はその言葉に反応した。

「おい、ルイズは兵器じゃない」

「なんだと?使い魔風情が口をきくな」

騒ぎになろうとした時、

「失礼」

アンリエッタが口を開いた。

「彼女はわたくし直属の女官であり、友人でもあります。“兵器”というような発言は謹んでいただきたいわ」

「こ、これは失礼」

兵器発言をした将軍は慌てて謝る。

「そして彼女達の使い魔は、かのラ・ヴァリエール公爵とシンフォニア公爵から諸侯軍を預かっています。この場で発言する権利は十分に有しているとおもわれますが?」

アンリエッタのその言葉に将軍たちはざわめく。

そんな中、ウェールズが言った。

「艦隊は我らが引き受けよう。君たちには陽動の方をお願いしたい。できるかね?」

「陽動とは?」

「先程議題に上がったとおりだ。我々がロサイスではなく『ダータルネスに上陸する』と敵に思い込ませるんだ。・・・・・・そう、例えば『偏在』のような魔法で偽の艦隊を作り出す・・・・・などのね」

ルイズは考え込んだ。

才人が後ろから、そっと呟いた。

「・・・・・・デルフが言ってた。必要なときが来たら、読めるんだろ?」

ルイズは頷いた。

「明日までに、使用できる呪文を探しておきますわ」

「お願いする」

と、ウェールズは微笑む。

その後、退室を促され、拓也達は廊下に出た。


「ムカつく奴らだな」

廊下に出た拓也が開口一番にそう言った。

「ホント、嫌な感じ」

とルイズも同意して、

「そうだな」

と才人も相槌をうった。

「ウェールズ皇太子や女王陛下以外は、私達をただの駒としか見てないんだね・・・・・・・」

アイナがそう呟く。

「偉い将軍なんて、そんなもんだろ。戦争に勝つことしか頭にないんだからさ」

だが、それは戦いの中では正しい思考なのだろう。

拓也達には絶対に相容れない思考ではあるが。

そんなことを思っていると、才人が後ろから肩を叩かれた。

振り返ると、目つきの鋭い貴族が5、6人、才人を睨んでいる。

男というより、少年という歳だ。

才人といくらも変わらないだろう。

「おい、お前」

「なんだよ」

その中のリーダー格と思しき少年が、顎をしゃくった。

「来い」

なんだなんだ、と思いながら才人はデルフリンガーを掴んで歩き出した。

拓也達もその後を追う。

一行がやってきたのはゼロ戦が係留されている上甲板であった。

ゼロ戦はロープで各部を縛られ、甲板にくくりつけられている。

「これは、生き物か?」

と1人の少年貴族がゼロ戦を指差して、恥ずかしそうに尋ねてきた。

「そうじゃないなら何なんだ?説明しろ」

もう1人が、真顔で説明を求めてきた。

才人は気が抜けて、

「いや、生き物ではないけど・・・・・・」

と呟いた。

「ほらみろ!僕の言った通りじゃないか!僕の勝ちだ!ほら1エキューだぞ!」

一番太った少年が、わめき始める。

みんなしてしぶしぶポケットから金貨を取り出して、その少年に手渡す。

才人達が口を開けてみていることに気付き、少年たちは気まずそうな笑みを浮かべた。

「驚かせちゃったかな。ごめんね」

「はい?」

「いや、僕達は賭けをしてたんだ。こいつがなんなのかってね」

ゼロ戦を指差して少年貴族は呟く。

「僕は生き物だと思った。竜の仲間だと思ったんだ」

「こんな竜がいるもんか!」

「いるかもしれないだろ!世界は広いんだから!」

そう言って言い合いを始める。

そんな姿を見ていると、才人は故郷の教室を思い出した。

「これは飛行機械ですよ」

少年貴族たちは興味深そうに才人の説明に聞き入った。

しかし、どうしても魔法以外の動力で空を飛ぶ、という事が理解できない様子であった。



「僕達は竜騎士なんだ」

ゼロ戦の説明が終わると、少年たちは中甲板の竜舎に拓也達を案内した。

タルブの戦でほとんど全滅に近い損害を受けた竜騎士隊は、竜騎士見習いの自分たちを、そのまま繰り上げて正騎士として部隊に編入したんだと説明した。

「本来なら、あと一年は修行しなくちゃいけないんだけどね」

そう言ってはにかんだ笑みを浮かべたのは、先程賭けに勝った太っちょの少年であった。

自分は第二竜騎士中隊の隊長であると彼は言った。

才人達のゼロ戦をこの艦まで案内したのも彼であった。

竜舎の中にいたのは、風竜に成獣たちであった。

シャルロットのシルフィードよりも、2回りも大きい見事な風竜だ。

翼が大きく、スピードが出そうな面構えであった。

「竜騎士になるのは大変なんだぜ」

「そうなの?」

「ああ。竜を使い魔にすりゃ、そりゃ簡単だけどね。皆が皆、そううまくいくってわけじゃない。使い魔として契約しない場合、竜は気難しい、一番乗りこなすのが難しい幻獣さ。なにせ、自分が認めた乗り手しかその背に乗せないんだから」

「竜は、乗り手の腕じゃなく、自分に相応しい格を備えた魔力を持っているか?頭もいいか?なんてそんなところまで見抜くんだ。油断の出来ない相手さ」

竜騎士の少年たちはエリートであり、また相当なプライドの持ち主であるようだ。

「跨ってみるかい?」

と才人は言われて頷いた。

だが、

「のわあっ!?」

跨った才人はあっけなく振り落とされた。

少年たちが腹を抱えて笑う。

負けん気の強い才人は、再び挑戦した。

が、結果は同じ。

その時、

「俺も試していいか?」

拓也がそう言った。

少年たちは、お好きにどうぞといった感じであった。

拓也は風竜に話しかけた。

「なあ、ちょっと背中に乗せてくれないか?」

拓也がそういうが、風竜は聞く耳持たないといった感じだった。

だが、次の瞬間、

「「「「「え!?」」」」」

竜騎士の少年たちは揃って驚愕した。

なんと風竜が身を屈めたのだ。

「ありがとう」

拓也はそう言うと、風竜の背中に乗る。

拓也が乗っても、風竜は暴れたりせず、大人しくしている。

それを見た才人は、再び挑戦する。

が、あっけなく振り落とされる。

拓也と才人の違いは、ずばり覇竜刀である。

覇竜刀は竜族の覇王であるアカムトルムが拓也を認め、作り上げた刀である。

その刀は覇竜の加護を受けているといっても過言ではない。

故に、その刀から覇竜の気配を感じ取り、拓也を背に乗せたのだ。



その夜、ルイズはウェールズの言葉をヒントにして陽動に使えそうな魔法を探す。

始祖の祈祷書を開き、一旦目を瞑り深く深呼吸したあとカッと目を開いた。

始祖の祈祷書に精神を集中させ、慎重にページをめくっていく。

一枚のページが光りだして、ルイズは微笑んだ。




翌日。

使用する虚無の呪文を選択したルイズは、参謀本部へと提出した。

参謀本部ではそれを受けて作戦が立案され、作戦参謀たちによって計画書が作成された。

本日、早速その作戦は実行される事になった。

ただ、護衛の竜騎士はいない。

拓也が命令権を使い、断ったのだ。

ブラックウォーグレイモンが出てきた場合、竜騎士など足手まとい以外の何者でもない。

そして、竜騎士一個中隊より、アルダモン、メガログラウモンのほうが遥かに強いからだ。

才人は上甲板のゼロ戦の操縦席に座り、エンジン始動前の点検を行なっていた。

ルイズは既に後部座席に座って目を閉じ、精神を集中させている。

拓也は、アルダモンに進化して待機しており、アイナはギルモンの横にいる。

拓也はアイナも連れて行くことにした。

ここが軍艦の上である以上、安全とはいえない。

ならば、一緒に行ったほうが逆に安全だろうという判断である。

才人は甲板士官から作戦の説明を受ける。

そのとき、

――カンカンカン!

と激しく鐘が打ち鳴らされる音が響いた。

思わず空を見上げる。

遠くの雲の隙間に、明らかに味方とは違う動きの艦隊が、急速に降下してきてこっちに向かってくるのが見えた。

この総旗艦『ヴュセンタール』号を含む輸送船団の左上方を航行していた60隻の戦列艦たちが、現れた敵艦隊と雌雄を決するために進路を変えて上昇していく。

そこに伝令が飛んできた。

「“虚無”出撃されたし!目標“ダータルネス”!仔細自由!」

(もうかよ!早くねえか?いや、敵が来たから慌てて出撃させられるのか)

と、才人は思った。

「ギルモン!」

才人はギルモンに呼びかける。

「おっけー。任せて!」

ギルモンが答える。

――MATRIX

  EVOLUTION――

「ギルモン進化!」

ギルモンが光に包まれる。

その光の中で、完全体まで進化した。

「メガログラウモン!!」

才人はギルモンをメガログラウモンに進化させると、ゼロ戦のエンジンをかけるために、控えたメイジに指示を送った。

しかし、勝手が分からぬのか、もたついている。

エンジンをかけるためには、プロペラを回さなければならないのだが、どのような魔法をかければうまくプロペラが回るのか分からぬ様子であった。

これがコルベールなら、以心伝心、すぐに才人の意を汲んで行動そてくれるのだが、

「だから、その、これを回すんですよ!」

「え?どれだ?わからん。もっと詳しく頼む。

そんなやり取りをしているうちに、敵艦隊から分派した3隻ほどの船が、急速にこちらに向かって降下してきた。

「焼き討ち船だ!」

と誰かの声がする。

見ると、その船どもは真っ赤に燃えていた。

それらは、敵艦隊のど真ん中に無人で突っ込み、仕込まれた火薬を爆発させるというとんでもない船であるのだった。

「メガログラウモン!」

焼き討ち船の内、1隻が『ヴュセンタール』号の近くに来たので、才人は慌ててメガログラウモンに呼びかける。

「わかった!」

メガログラウモンは、焼き討ち船の方を向いた。

「アトミックブラスター!!」

焼き討ち船に向かって、アトミックブラスターを放った。

それによって、消滅する船。

才人はそれを確認すると、安堵の息を吐き、再びメイジにプロペラを回すように指示をする。

だが、未だにもたついている。

そこに、

「何やってるんだよ?」

業を煮やしたアルダモンが、ゼロ戦に近付いてきた。

アルダモンはプロペラに手を掛けると、一気に回転させた。

それを確認すると才人はエンジンを点火する。

近くにいた人員を退避させ、ゼロ戦は空に飛び立つ。

アルダモンも飛び立ち、メガログラウモンはアイナを乗せ、その後を追った。

こうして、ゼロ戦、アルダモン、メガログラウモンはダータルネスを目指した。




雲の切れ間にアルビオン大陸が見えた頃、ゼロ戦、アルダモン、メガログラウモンは敵軍の哨戒カラスに発見された。

空を飛べる使い魔を利用した、密度の濃い哨戒網の網の目の一個を形成するそのカラスは、すぐに竜騎士の駐屯所に待機する、自分の主人に侵入者の存在を知らせる。

多くの場合、使い魔の視界は精神を集中させた主人の視界となる。

3つの基地から、侵入者を邀撃するために竜騎士の群れが飛び上がった。

そして、その事を遅れて聞いた漆黒の竜人も・・・・・・



アルダモンは超人的な視力で、進行方向から十数匹の竜騎士がこちらに向かって急降下してくる所であった。

アルダモンはそれに気付くと先行する。

その手には覇竜刀が握られていた。

ある程度近付くと、攻撃が飛んでくる。

相手は風竜のようなので、ブレスは飛んでこないが、魔法の矢『マジックアロー』が飛んできた。

だが、アルダモンはそんなもの、ものともせずに直進する。

そして、敵竜騎士隊と交差した。

その瞬間、敵風竜の翼から1匹残らず血が吹き出る。

風竜の翼には斬り傷が付いており、飛行が困難となった竜騎士は戦線を離脱していく。

「やったあ!」

その様子を見ていた才人が喜ぶ。

だが、視線の先にあったものを見て、才人の笑顔が固まった。

「なんてこった」

前方に見えたのは、100騎を超えようかと思われる竜騎士の群れだった。

アルビオンの竜騎士隊は天下無双と誉れ高い。

質だけではなく、その数も“無双”なのであった。

まあ、ハルケギニアの中だけで言えばではあるが。

アルダモンがメガログラウモンに近付き、なにやら話しかけている。

それを聞いたメガログラウモンが頷き、前に出た。

そして、竜騎士の群れがある程度近づいてきたとき、

「グガァアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

メガログラウモンが、雲を全て吹き飛ばすかと錯覚させるほどの咆哮をあげた。

それを聞いた竜騎士達の竜は怯え、戦意を喪失する。

騎乗した騎士達は何度も竜をけしかけようとするが、竜は全くいう事を聞かなかった。

その間に、ゼロ戦、アルダモン、メガログラウモンは悠々と通過していった。

そんな時、猛スピードで近付いてくる黒い影にアルダモンが気付く。

「ブラックウォーグレイモンか!」

アルダモンは覇竜刀を構え、全速でブラックウォーグレイモンに突撃する。

「待っていたぞ!アルダモン!!!」

ブラックウォーグレイモンが叫ぶ。

「ブラックウォーグレイモン!!!」

アルダモンも叫び、お互い全速力で激突した。

――ガキィイイイイイイイイイイイイイイイイイン

耳をつんざくほどの金属音が鳴り響く。

ブラックウォーグレイモンがドラモンキラーで、アルダモンが覇竜刀で鍔迫り合いをしている。

「「おおおおおおおおおっ!!」」

お互いを弾きあった。

アルダモンは叫んだ。

「ここは俺に任せて、行けっ!!」

ゼロ戦に乗っている才人には直接声は聞えないが、何を言いたいかは理解した。

才人はサムズアップで答え、ゼロ戦を加速させる。

アルダモンはブラックウォーグレイモンに向き直る。

「行くぞ!」

アルダモンは覇竜刀を構え、ブラックウォーグレイモンに斬りかかった。

――ガキィン  キィン  ガキン  ガキィン

覇竜刀とドラモンキラーとのぶつかり合いで火花が飛び散る。

「やるなアルダモン!」

「お前もな!」

ドラモンキラーは、ダイヤより硬いクロンデジゾイドで出来ている。

アルダモンが使っている覇竜刀が普通の刀だったならば、最初の一撃で粉々だっただろう。

しかし、覇竜刀は究極体と同等以上の力を持つアカムトルムの牙から作られている。

その硬度は、クロンデジゾイドと同等であった。

何度か打ち合うと、両者共に間合いを一旦取る。

ブラックウォーグレイモンがエネルギーを集中させた。

「ガイアフォース!!」

ブラックウォーグレイモンがガイアフォースを放った。

対するアルダモンは、覇竜刀に炎を纏わせた。

「フレイムソード!!」

高速で近付いてくるガイアフォースに、炎を纏った覇竜刀を振り下ろした。

それは、ガイアフォースを両断した。

「何!?」

ブラックウォーグレイモンもこれには驚いた。

だが、

「フ・・・・フフフ・・・・」

不敵な笑みを零した。

「面白い!ますますお前に勝ちたくなったぞ!アルダモン!!」

ブラックウォーグレイモンは歓喜の声を上げ、再びアルダモンに襲い掛かった。




敵を振り切ったゼロ戦が暫く飛んでいると、眼下に“港”が見えた。

切り開かれただだっ広い丘の上、空に浮かぶ船を係留するための送電線のような鉄塔、何本もの“桟橋”が見えた。

「ダータルネスの港だぜ」

「上昇して」

ルイズが才人の耳元で呟く。

才人はゼロ戦を上昇に移した。

高度を上げるにつれ、徐々にゼロ戦は減速した。

風防を開けられる速度になったとき、ルイズが立ち上がり、風防をあけた。

風が舞い込む。

才人の肩に跨り、ルイズは呪文の詠唱を開始した。

片手には始祖の祈祷書が光る。

――初歩の初歩

  “イリュージョン”

  描きたい光景を強く心に思い描くべし。

  なんとなれば、詠唱者は、空をも作り出すであろう。――

ルイズが唱えているのは、幻影を作り出す“虚無”の呪文であった。

ダータルネス上空をゼロ戦は緩やかに旋回した。

じわっと、雲が掻き消えるように、空に幻影が描かれ始めた。

それは巨大な戦列艦の群れ。

ここから何百キロメイルも離れた場所にいるはずの、トリステイン侵攻艦隊の姿であった。

「すごい・・・・・・」

メガログラウモンの背でその幻影を見たアイナが思わず呟く。

ダータルネス上空にいきなり現れた幻影の大艦隊は、現実の迫力を伴って見るものを圧倒した。



「ダータルネスだと?」

ロサイスに向かっていたホーキンス将軍が、ダータルネス方面からの急便の知らせに驚いて呟く。

彼は、アルビオン軍3万を率いて、ロサイス方面に向かっている最中だった。

トリステイン軍の上陸地点がそこだと予想されたためだ。

しかし敵が現れたのは、首都ロンディニウムの北方、ダータルネス。

「全軍反転!」

全軍に伝わるまでには時間がかかる。

早いところ布陣したいものだ、と思いながらホーキンスは空を見上げた。





次回予告


殆どが女子生徒だけになってしまった魔法学院。

その魔法学院にアルビオンの魔の手が伸びる。

危機に陥る生徒たち。

だが、その時、過去の英雄が現れる。

次回!ゼロの使い魔と炎の使い魔

第二十八話 『神風』と『太陽』

今、異世界の物語が進化する。




あとがき

二十七話完成しました。

とりあえず、台詞が少ないです。

しかもアイナの台詞はギルモン(メガログラウモン)より少ない!?

しかも、戦場では何もしてないし。

活躍の場がなかったです。

もっと精進します。

さて、話の流れとしては、指揮官がウェールズであり、竜騎士隊の面々がついて来なかった以外は大体一緒ですかね。

戦争編ではアニメと同じでアンリエッタとマザリーニがいます。

理由は・・・・・・だって、ねえ・・・・・・

分かる人は分かると思います。

ブラックウォーグレイモンは、前回出せなかったのでここで出しました。

ガイアフォースを真っ二つ。

やりたかったことができて満足。

さて、次回は魔法学院編。

誰が出てくるかは丸分かりですが、北風と太陽ならぬ、『神風』と『太陽』をお楽しみに。


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