才人の目の前で魔法弾の爆発の中に消える拓也。
それを見た才人は・・・・・・・
第三十一話 怒りの暗黒進化!メギドラモン暴走!
爆発の中に消えた拓也。
「う・・・・うわぁあああああああああああああっ!!!」
才人の絶叫が響いた。
間に合わなかった才人は、膝を付き、涙を流す。
「うっ・・・うあっ・・・・・拓也・・・・・・畜生・・・・」
地面に手を付き、うな垂れる。
敵の指揮官が、才人に近付いた。
「仲間が殺されて戦意を失ったか。誰一人として殺してはいないようだが、戦場での優しさなど邪魔なだけだ」
才人は、敵の言葉を黙って聞いていた。
「そのような甘ったれた覚悟で戦場に出てくるなど「うるせぇ黙れ・・・・」」
才人が言葉を発した。
その言葉は震えていた。
しかし、恐怖ではない。
(アイツの覚悟を“甘え”の一言で片付けるんじゃねえ・・・・・勝ち負けしか考えていないテメェらの覚悟と、拓也の・・・・護るための覚悟を比べるんじゃねぇ・・・・・)
「許さねえ・・・・・」
その言葉は、悲しみと、そして、怒りと憎しみが入り混じった声だ。
才人は剣を握る手を力いっぱい握り締める。
そして、勢い良く立ち上がると同時に叫んだ。
「ぶっ殺してやる!!!」
初めて才人が発した明確な殺意。
「うあああああああああっ!!!」
才人は感情のまま叫んだ。
それと同時に、メガログラウモンが禍々しい紅の光に包まれる。
「進化しろ!!メガログラウモン!拓也の仇だ!!」
「グギャァアアアアアアアアッ!!」
紅の光の中から湧き上がる咆哮。
その光の中から現れたのは、
「グガァアアアアアアアアアアアアッ!!!」
今までの勇ましい姿とは違い、血のような紅に身を染めた醜悪なその姿。
クロンデジゾイド製のボディに身を包み、禍々しき翼をもった邪悪竜。
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッ!!!!!!」
その竜は、この世のものとは思えぬほどの咆哮を上げる。
7万の大軍全てに、恐怖という名の動揺が走った。
「メギ・・・・ドラモン・・・・・」
才人はポツリと呟いた。
才人はメギドラモンの醜悪な姿に、半ば呆然としている。
メギドラモンの歯の隙間から炎が漏れ出す。
そして次の瞬間、
「グガァアアアッ!!」
地獄の業火とも思えるほどの赤黒い炎が、メギドラモンの口から7万の大軍に向かって放たれた。
メギドラモンの必殺技、地獄の業火『メギドフレイム』。
炎に呑まれてゆく兵隊達。
一瞬で1万人に近い数の兵が焼き尽くされた。
阿鼻叫喚が響き渡る。
才人は、目の前の現実が受け入れられないでいた。
ギルモンが進化したメギドラモンが全く躊躇することなく、1万人近い命を一瞬にして奪ったのだ。
「俺が・・・・・望んだのか・・・・・・・?」
才人は呆然としたまま呟いた。
「俺が・・・・こうなる事を望んだのか・・・・・・?」
ポケットから、デジヴァイスが落ちる。
今までの攻撃にも壊れなかったそれは、地面に落ちるとあっさりと砕け、消滅した。
メギドラモンが再び『メギドフレイム』を放った。
逃げ惑う兵達を次々に焼き払っていく。
「や、やめろ・・・・・・」
才人は言葉を漏らした。
殺戮の限りを尽くすメギドラモン。
「やめてくれ・・・・・」
逃げ惑う兵達。
響き渡る悲鳴。
「もう・・・・・やめろぉおおおおおおっ!!」
才人は叫んだ。
メギドラモンは才人へ視線を向ける。
「相棒!無茶だ!逃げろ!」
「あいつは、あいつはギルモンなんだ!」
「今のあいつにチビ竜の意思は無え!相棒のことも判断できてねえぞ!」
「そんなわけあるか!あいつは・・・・・」
その瞬間、メギドラモンの尾が才人の近くに叩きつけられる。
「うわあっ!?」
才人はその衝撃で吹き飛ばされた。
「だから言っただろう!無理だ!」
デルフリンガーが叫ぶ。
「ギルモン!俺だ!才人だ!」
才人はデルフリンガーの制止も聞いていない。
いや、焦りのあまり聞えていないのだろう。
「くっ・・・・・すまねえ、相棒」
デルフリンガーがそう呟くと、
「なっ!?体が勝手に!?」
才人の体が、才人の意思とは無関係に動き出し、近くの森に向かって駆け出した。
「一体何が!?どうなってるんだよ!デルフ!!」
「俺の能力の1つ。吸い込んだ魔法の分だけ使い手を動かす事ができる」
デルフリンガーがそう答える。
「何やってんだ!やめろ!戻れっ!!」
才人は叫ぶが、デルフリンガーは答えず、森の中に駆け込んだ。
どれだけ森の中を進んだかは分からないが、突然体の自由が戻ったために、才人は躓き、地面を転がる。
が、すぐに起き上がると、デルフリンガーを投げつける様に地面に叩きつけ、覇竜刀を上段に構えた。
「何で邪魔をした!!」
才人はデルフリンガーに叫んだ。
「・・・・・相棒に死んでほしくなかった。それだけだ。許してもらう心算はねえよ」
「ぐっ・・・・・」
覇竜刀を振り上げた才人の手は震えていた。
「その剣ならいくら俺でも耐え切れねえよ。それを振り下ろせば、俺は壊れる」
デルフリンガーは事実を淡々と述べた。
「ああ。これだけは言わせてくれ。相棒、短い間だったが楽しかったぜ」
デルフリンガーはそれだけ言うと黙り込んだ。
「う・・・く・・・・・うわぁあああああああああああっ!!」
才人は叫びながら渾身の力で覇竜刀を振り下ろした。
――ザシュ
一瞬の沈黙の後、
「・・・・・・・・・相棒、何で外した?」
デルフリンガーが呟いた。
才人の振り下ろした覇竜刀は、デルフリンガーのすぐ横に突き刺さっていた。
「くっ・・・・ううっ・・・・・」
才人から押し殺した泣き声が聞えた。
才人は崩れ落ちるように膝を付く。
「・・・・ううっ、す、すまねえデルフ・・・・・お前は・・・俺を助けようとしたのに・・・・・・」
才人は涙を流しながらそう呟く。
「いいんだよ相棒・・・・・」
「俺は・・・・大馬鹿だ・・・・・・拓也を殺されて・・・・・我を忘れてギルモンを進化させちまった・・・・・・俺の憎しみの心が・・・・・ギルモンに間違った進化をさせちまったんだ・・・・・・・・」
「仕方ねえよ・・・・・弟分を殺されたんだ。憎まないほうがおかしい」
才人は立ち上がろうとする。
「如何するんだい?相棒」
「ギルモンを止める。あいつをあんな姿にしたのは俺だ。俺が止めなきゃいけない。拓也を失った今・・・・・あいつだけでも助けなきゃ」
才人は歩き出そうとしたが、ふらつき、木に背中を預ける形になってしまう。
「うぐっ!?」
体中に痛みが走る。
「相棒、先ずは休みな。死ぬほどの怪我じゃねえが、軽い怪我でもねえ。暫く動けねえぞ」
夜通し移動していた事と、戦いの疲労によって、才人の意識は遠くなっていった。
一方戦場では。
才人が走り去った後、メギドラモンも何処かへ飛び去っていった。
偶然にも生き残ったアルビオン軍の将であるホーキンスは、呆然としながら損害の報告を聞いていた。
正確な人数は分からないが、少なくとも犠牲となった兵は2万を超える。
決戦を行なったときのような大損害である。
そして、大軍を立て直そうにも、メギドラモンへの恐怖が植えつけられており思うようには進まない。
軍隊を纏めるには1週間近くかかるとの予想だった。
ホーキンスは、才人が走り去った森のほうを見つめた。
才人が怒り狂ったとき、メギドラモンがあらわれた。
「私達は、正に触れてはならぬ逆鱗に触れてしまったようだな・・・・・」
そう呟いた。
所変わってロンディニウム城。
ここでは、神聖アルビオン共和国の皇帝であるクロムウェルが居た。
「なぜ、ガリアは兵をよこしてくれんのだ?2国で挟撃すれば、シティオブサウスゴータから敗走する連合軍など一撃だったものを・・・・・・」
そう愚痴を零す。
そんな時、部屋に連絡士官が飛び込んできた。
「陛下!緊急事態です!」
「何事だ?騒々しい」
「りゅ、竜がこちらに迫ってきております」
「竜だと?何匹の群れだ?」
「そ、それが・・・・・1匹なのですが・・・・」
「1匹だと?そんな事私に報告せずとも其方で対処すればよかろう。さっさと竜騎士を出撃させんか」
「も、もちろん出撃させました・・・・・そ、それが・・・・・・」
連絡士官は言いよどむ。
「何を躊躇している。はっきりと言わんか!」
「は、はい!その竜に対し、竜騎士を出撃させたのですが、既に100騎以上もの竜騎士がやられているとのことです!」
「な、なんだと!?」
クロムウェルが報告に驚愕したとき、
「グガアアアアアアアアッ!!」
凄まじき咆哮がクロムウェルの耳に届いた。
すぐにクロムウェルが窓に駆け寄ると、ロンディニウム城上空にメギドラモンがいた。
何故メギドラモンがここに来たのかは分からない。
もしかしたら、ギルモンの記憶にある、敵地の本陣という情報に突き動かされたのかもしれない。
ロンディニウム城を見下ろしていたメギドラモンの口からは炎が漏れている。
そして次の瞬間、
「グガアッ!!」
『メギドフレイム』がロンディニウム城に向かって放たれた。
「ひっ・・・・・」
その光景にクロムウェルは悲鳴を上げそうになったが、
――ドゴォオオオオオオン
悲鳴を上げる間も無く、ロンディニウム城は灰燼と化した。
再びメギドラモンは飛び去った。
「ピ、プ~?」
才人は変な鳴き声を聞いた。
才人はゆっくりと瞼を開く。
目の前には、
「パプ~~」
薄いピンク色の体を持った、クリオネのような姿の生物が浮いていた。
「・・・・・お前、デジモンか?」
才人はなんとなくそう思った。
「ピッピップ~~」
どうやら肯定しているようである。
才人は体を起こそうとした。
だが、
「うぐっ!」
体中に痛みが走り、才人はうめき声を漏らす。
すると、
「ピプ~」
そのデジモンは口から青色のハート型の泡のようなものを吐き出した。
そのハート型の泡のようなものは才人の体に当たると弾けた。
「え?あれ?痛みが和らいだ・・・・・」
先程まで激痛で動けなかったのが、何とか動けるぐらいまで回復している。
才人はゆっくりと立ち上がる。
「プペ~」
そのデジモンは森の奥の方へ飛ぶと、才人に呼び掛ける。
「付いて来い、ってか?」
才人はゆっくりと歩き出した。
そのデジモンに付いて暫く行くと、小さな集落に出た。
「ここは?」
才人が呟くと、目の前のデジモンは一軒の家に飛んで行き、窓からその家に入った。
少しすると、その家のドアが開き、先程のデジモンと金髪の少女が出てきた。
その少女は才人に気付くと駆け寄ってくる。
「大丈夫ですか!?」
その少女は、才人の怪我を見るなり慌てた声で叫んだ。
「えっと・・・」
「動かないでください!」
才人が何か言おうとした時、少女は右の中指に嵌められた指輪をかざした。
その指輪の宝石が輝きだし、光が才人を包んだ。
そして、光が収まった時には、
「え?嘘!?治ってる!」
無数にあった傷が全て塞がっていた。
才人は驚く。
「あの、傷は塞がりましたけど、体力は戻りません。今日一日は休んでください」
その少女はそう言う。
「そ、そうか、ありがとう。俺は平賀 才人。君は?」
才人はお礼を言って自己紹介をする。
「私はティファニアといいます」
その少女、ティファニアも名乗った。
「ティファニア、改めてありがとう。けど、何で助けてくれたんだ?こう言っちゃなんだけど、不振人物だぜ、俺」
「この子が助けてあげてって言ってたからです」
ティファニアが、横に浮いているデジモンを見ながらそう言った。
「ピプ~」
「それに、怪我をしている人をほっとく訳にはいきませんから」
ティファニアは微笑んでそう言った。
その笑顔に才人は少し赤くなる。
怪我の痛みから解放されたからか、今までよりもティファニアを良く見ることが出来た。
ティファニアは、体は全体的に細い。
足首も細い、腕も細い、首も腰も細い。
耳は尖っていて珍しい形だなと才人は思ったが、そんな考えを吹き飛ばすモノを見つけた。
「お、恐ろしい・・・・・」
才人は思わず呟いた。
ティファニアは思わずビクッと震える。
「やっぱり・・・・怖いよねエルフな「なんという胸だ」え・・・・・?」
ティファニアが、諦めたように呟こうとした時、才人の言葉で呆気に取られる。
(でけぇ、でか過ぎる!正にバスト・レボリューションだ)
そう。
この少女、ティファニアは、胸が大きかった。
才人も始めてみる胸の大きさだった。
「あの・・・・」
ティファニアに声をかけられてはっとなる。
「ああ、ゴメン。ちょっと考え事を・・・・・」
「そうじゃなくて。サイト、私が怖くないの?」
「へ?」
才人はティファニアの言っている言葉の意味が分からなかった。
「何で?」
「この耳を見てもそう思うの?」
ティファニアは自分の尖った耳を指差す。
「・・・・・確かに珍しい形だなって思ったけど、何で怖がるのさ?」
「本当に驚いてないの?怖くないの?」
疑わしそうな顔で、ティファニアは才人を見つめた。
「だからなんで怖がらなきゃいけないのさ?なんつうか、他にも怖いの沢山居るだろ。ドラゴンとか、トロル鬼とかさ」
ティファニアはホッとしたような顔になった。
「エルフを怖がらない人なんて、珍しいわ」
「エルフ?」
「そう、エルフ。私は“混じり物”だけど・・・・・」
自嘲気味にティファニアは呟く。
才人はティファニアの横に浮かんでいるデジモンに視線を移す。
「所で、そのデジモンって、君のパートナー?」
才人は尋ねる。
「え?でじもんって何?この子はマリンエンジェモン。ちょっと前にこの村の子供たちが見つけて、仲良くなったの」
ティファニアはそう答える。
「子供たち?」
「この村は、孤児院なのよ。親を亡くした子供たちを引き取って、皆で暮らしてるの」
「君が面倒を見ているのか?」
「私は一応年長者だから、ご飯を作ったりの世話はしてるけど、お金は昔の知り合いの方が、送ってくださるの。それで生活に必要なお金はまかなってるのよ」
「そっか」
その時、他の家々から何人もの子供たちが出てきてティファニアに駆け寄ってきた。
「ティファニアお姉ちゃん」
そう言って、ティファニアを取り囲む子供たち。
そんな光景に、才人は自然と微笑んだ。
だが、
「グガァアアアアアアアアアッ!!」
恐ろしき咆哮が響き渡る。
空を見上げた才人の視線の先にはメギドラモンがいた。
「ギルモン・・・・・」
才人は呟く。
子供たちはメギドラモンの恐ろしい姿に、悲鳴をあげてティファニアにすがりついた。
「だ、大丈夫よ。お姉ちゃんが守るから」
ティファニアは必死に子供たちを安心させようとする。
才人は駆け出した。
「サイトッ!?」
ティファニアが呼び掛けるが、
「ギルモォォォォォォン!!」
才人は叫んだ。
メギドラモンは才人に気付き、下りてくる。
「ギルモン!」
才人は必死にメギドラモンに呼び掛ける。
メギドラモンの目は、ギルモンとは全く違っていた。
それでも、才人は臆せずに呼び掛けた。
「ギルモン!もう止めてくれ!お願いだ!」
才人は悲しみが入り混じった声で叫ぶ。
「グアッ」
「元に戻ってくれ!ギルモン!頼む!」
メギドラモンは一瞬躊躇したようだったが、
「グアアアアアアッ!!」
才人を食らわんとばかりに、大口を開けて才人に襲い掛かった。
「ギルモォォォォォォン!!!」
才人はその場から動かず両手を広げて、心の底から叫んだ。
そして・・・・・・・・
メギドラモンは止まっていた。
あと10サントで才人に接触するという超至近距離で、止まっていた。
「・・・・・サ・・・・・イ・・・・・・・ト・・・・・・」
メギドラモンは呟く。
メギドラモンの目に、ギルモンの目の輝きがあった。
才人はゆっくりとメギドラモンに触れる。
「ゴメンなギルモン・・・・・俺のせいで、お前をこんな姿にさせちまった・・・・・俺は・・・・パートナー失格だ・・・・・」
そう言いながら、才人は涙を流す。
「ピプ~~」
その時、マリンエンジェモンが飛んでくる。
「ピッピップ~~~」
マリンエンジェモンは、また青いハート型の泡を吐き出した。
それはメギドラモンに当たって弾ける。
すると、メギドラモンが光に包まれ、小さくなっていく。
そしてそこには、気を失ったギルモンの姿があった。
才人は、ギルモンを抱きしめる。
「すまねえ・・・・・すまねえギルモン・・・・」
ギルモンを抱きしめながら、涙をながしつつ、そう呟いた。
ルイズが目を覚ましたのは、出航するレドウタブール号の甲板であった。
風が頬をなぶる感触と、帆がはためく音で目を覚ましたのである。
自分の顔を覗き込んでいるのは、マリコルヌにギーシュであった。
「おお、ルイズが目を覚ましたぞ」
「よかったよかった」
そんな風に頷いているクラスメイトに気付き、ルイズは呆けた声を出した。
「私・・・・・どうして?」
「さぁ。出航したとき、君がここに寝かされている事に気付いたんでね」
「・・・・ここ、船の上?」
動く回りの風景に気付いた後、ルイズは重大な事を思い出し、跳ね起きた。
「て、敵軍を止めなきゃ!迫ってくるアルビオン軍を!」
ギーシュとマリコルヌは、怪訝な顔でルイズを見つめた。
「敵軍を止める?」
「そうよ!味方の撤退が間に合わないじゃない!」
「間に合ったよ」
「これはロサイスを出航する最後の船さ」
「・・・・・え?」
ルイズは、訳が分からずに、甲板の柵に取り付いた。
下を見つめる。
ぐんぐんと小さくなる、アルビオン大陸が見えた。
「どういうこと?迫ってくるアルビオン軍は?」
「さぁ?間一髪どころか、ロサイスから見える範囲にすら敵は現れなかったっていう話だよ」
「よかったよかった。お陰で、僕達はこうして国に帰れるよ」
「帰ってからが、これまた大変そうだけどな」
ギーシュとマリコルヌは、顔を見合わせて笑っている。
ルイズの頭の中では、疑問が渦巻く。
アルビオン軍はどうして進撃速度を緩めたのだろう?
そして、どうして自分はこの船の上で寝ていたのだろう?
その時、重大な事に気がついた。
才人の姿が見えない。
ルイズは船上を駆け回った。
後甲板に、シエスタ達を見つけた。
「ミス・ヴァリエール・・・・・気が付かれたんですね」
「それより!サイトは何処!?」
シエスタの顔が蒼白になった。
「私も、ミス・ヴァリエールが目覚めたら、聞こうと思ってたんです。サイトさんは一緒じゃないんですか?」
ルイズは首を振った。
ルイズの不安げな表情で、シエスタも顔を蒼白にさせていく。
「ねえ、ミス・ヴァリエール、サイトさんは何処なんですか?ねえ、どこ?教えて」
その時、船内に続く扉が開き、アイナが現れた。
しかし、足取りはおぼつかず、フラフラとしている。
そして、その顔はシエスタ以上に蒼白であった。
「アイナ・・・・」
ルイズが呟くと、
「タクヤが・・・・いないの・・・・・」
アイナはポツリと呟いた。
「え?」
「タクヤ・・・・・ルイズが殿軍を任されているところを聞いて・・・・・・それで・・・大軍に向かって行ったって・・・・・」
アイナの瞳からボロボロと大粒の涙が零れる。
「嘘・・・・・・」
ルイズは血の気が引いた。
「本当・・・・なの?」
ルイズは震える声で尋ねた。
「本当さ・・・・・」
ルイズの問いに答えたのは地下水であった。
「相棒は、俺にアイナの嬢ちゃんを止めるように言って、大軍に向かって行ったよ」
「な、何で・・・・・?」
「相棒は、お嬢ちゃんの使い魔の坊主が、お嬢ちゃんの身代わりになるだろうって予想したのさ。お嬢ちゃんがここにいるって事は、その通りなんだろうな」
地下水の言葉にルイズははっとなる。
才人の不在。
地下水の言葉。
そして、進行を緩めたアルビオン軍。
それが意味する事は1つ。
ルイズは柵に駆け寄り、絶叫した。
「サイト!!!」
「ミス・ヴァリエール!何があったんですか!?説明してください!説明して!」
シエスタはそんなルイズに詰め寄った。
「サイト!!!」
ルイズは絶叫すると、柵を飛び越えて地面に飛び降りようとした。
「お、おい!死ぬ気か?」
ギーシュやマリコルヌが気付いて、止めに入った。
「おろして!お願い!」
「無理だよ!下にはもう、味方はいないんだ!」
「おろしてぇぇぇぇぇっ!!!」
ルイズの絶叫が、遠ざかるアルビオンに向けて響いた。
その後、ロンディニウム城の消滅により、皇帝のクロムウェルが死亡したことで、アルビオンは降伏を宣言した。
それが連合軍に伝わったのは、ロサイスの撤退から3日後のことであった。
次回予告
戦争が終結しても戻ってこない拓也と才人。
ルイズとアイナは2人の生死を確かめるため、『サモン・サーヴァント』を行う事を決意する。
だが、アイナはそこで驚愕の事実を知ることになる。
次回!ゼロの使い魔と炎の使い魔
第三十二話 拓也死す!? 召喚されてしまった使い魔!
今、異世界の物語が進化する。
あとがき
第三十一話完成。
超ハイペースですな。
今回を振り返りますと、先ずは犠牲となった兵士達に黙祷を。
流石にメギドラモンになったら犠牲が出る事は間違いないと思ったので・・・・
それはともかく、ロンディニウム城を狙い撃ちにしたのは無理がありますかね?
ストーリー自体は思ったとおりに進んだんですが、ティファニアと才人のやり取りがちょっとおかしいかな?
ついでと言っては難ですが、マリンエンジェモン登場。
コイツはティファニアのパートナーではありません。
野良(?)デジモンです。
テイマーズのクルモンのような位置に近いかな。
さてさて、気になる拓也の行方ですが・・・・・秘密です。
ずーっと温め続けていたネタなので。
さて、それでは次回も頑張ります。