学院に帰還した才人達。
才人達が向かった場所は・・・・・
第三十六話 シャルロットの決意
学院の生徒達にもみくちゃにされた才人は、何とかその人ごみから抜け出す。
そして、ルイズと共にある部屋へと足を向けた。
その部屋は、言わずもがなアイナの部屋である。
ルイズが、アイナの部屋のドアをノックし、ドアを開ける。
そこには、少し顔色の良くなったアイナがいた。
「アイナ、ただいま」
ルイズがそういう。
「ルイズ。サイトと会えたんだね。良かった」
アイナは、微笑んでそう言った。
「ええ。それから朗報よ。やっぱり、拓也は生きてる可能性が高いわ」
「ホントに!?」
アイナはその言葉に敏感に反応する。
「ええ。サイトが覚えていたタクヤが最後に攻撃を受けた場所にタクヤはいなかったわ。生きてる可能性が高い証拠よ」
ルイズは笑顔でそういう。
「そう・・・・・ありがとうルイズ」
「それから、姫様の方からウェールズ陛下にタクヤの捜索を依頼していただけるわ。すぐに見つかるわ」
「・・・・うん!」
アイナは笑顔で答える。
それから、才人が口を開いた。
「アイナ、先ずはごめん。俺は拓也を助けられなかった」
その言葉に、アイナは首を振る。
「ううん。サイトのせいじゃない。それに、タクヤもサイトを責めたりはしないと思う。あと、タクヤはきっと生きてるから」
「・・・・そうか・・・・・そうだな」
アイナの言葉に才人は納得する。
すると、才人は覇竜刀を抜いて、アイナに見せる。
「戦いに挑む前に拓也から借りたものなんだけど、このまま俺が持ってていいか?」
アイナは頷き、
「サイトがタクヤから借りたものなら、サイトがタクヤに返さなくちゃ」
「・・・・わかった」
才人も笑みを浮かべてそう言った。
「あと、これだけは約束する。拓也が戻ってくるまで、アイナは俺が守る」
才人は真剣な表情で言った。
「・・・・・ありがとう、サイト」
アイナはそう呟いた。
「ところで・・・・・・」
才人は話を変える。
「さっきから気になってたんだけど、そいつは?」
才人はアイナの後ろにいるエンを見て尋ねた。
「その獣人は、アイナがサモン・サーヴァントで召喚した新しい使い魔よ。記憶喪失だけど」
答えたのはルイズ。
「あと、私が付けたんだけど、名前は『エン』だよ」
アイナがそう付け足す。
「そっか」
才人が相槌を打つと、ギルモンが顔を出した。
そして、エンに近付いていき、臭いを嗅ぐような仕草をする。
「な、何?」
エンがちょっとおっかなびっくりに尋ねる。
ギルモンは、才人の方を向くと、
「サイト。エン、デジモンなんだけど何か違う」
才人は驚いて聞き返す。
「え!?デジモンなのか!?」
「うん。けど、デジモンとはちょっと違う」
「違う?何が?」
才人は真剣に聞こうとするが、
「ん~と・・・・・・・わかんない」
気の抜けたギルモンの返事にズッコケそうになる。
「おいおい・・・・・」
「まあ、何だっていいじゃない」
ルイズが無理矢理にそう纏めた。
才人達がアイナの部屋から出ると、才人は思い出したように言った。
「そうだ!コルベール先生に報告しなきゃ!」
才人は、この学院で世話になっているコルベールに自分の出世を報告しようと思った。
その時、
「ミスタ・コルベールならいないわよ」
丁度通りかかり、才人の言葉を聞いたモンモランシーがそう言った。
「え?」
才人が聞き返す。
「だから、ミスタ・コルベールは、今、学院にはいないって言ったの」
「な、何で!?」
「なんでも、キュルケの実家がミスタ・コルベールの研究に興味を持ったらしくて、今はツェルプストー家にお邪魔しているそうよ」
慌てた調子で言った才人に、モンモランシーは淡々と答える。
それを聞いた才人は自然と笑みがこぼれた。
「そうなんだ。コルベール先生の研究が認められたんだ」
コルベールの考えに共感していた才人はコルベールの研究が認められたことに嬉しさを感じていた。
ルイズは、キュルケの名が出た事で余りいい顔をしなかったが。
才人が貴族になって、2週間後。
朝もやの中、ヴェストリの広場に、何人かの生徒が集まっている。
アルビオン戦役に参加した生徒たちであった。
彼らは、軽く緊張した面持ちで、自分たちの目の前に立った2人を見つめた。
黒いマントに身を包んだギーシュと、才人である。
ギーシュは緊張しているのか、かちんこちんにこわばっていた。
才人はそんなギーシュの肘をつつく。
「な、なんだね?」
「お前、隊長だろうが。ちゃんと挨拶しろよ」
「うう・・・・・・」
ギーシュは呻いた。
「なんだよ?」
「い、胃が痛い・・・・」
集まった生徒たちが爆笑した。
「・・・・・しっかりしてくれよ」
ため息混じりに才人が言えば、
「やっぱり、君が隊長になったほうが良かったんじゃないのかね?水精霊騎士隊(オンディーヌ)の隊長なんか僕には荷が重過ぎる」
困った顔でギーシュが言った。
アンリエッタの肝いりでこの近衛隊が作られたのは才人が魔法学院に帰ってきた日の三日後のこと。
決心した才人は、アンリエッタの元に赴き、騎士隊長に就任する事を告げたのである。
するとアンリエッタは、騎士隊を新たに作ると言い出し、本当に実行したのであった。
因みに、『水精霊騎士隊(オンディーヌ)』とは、千年以上前から存在していた由緒ある騎士隊の名前である。
序に言えば、騎士隊が編成されてから、毎日このような状態であり、グダグダしているのであった。
あと、才人には専属のメイドとしてシエスタが付いた。
これは、アンリエッタからの命令であり、学院のメイド長が、才人と一番仲の良いシエスタを選んだのだ。
それから、しばらくして新学期に入った頃。
シャルロットが自分の部屋に戻ってくると、ベッドの上に1羽のカラスがいるのを見つけた。
ガリア王家からの密書を運んできた、伝書カラスである。
「・・・・・・・・・」
シャルロットは、無言でそのカラスを見つめる。
この時だけは、シャルロットではなく、ガリア王国北花壇騎士であるタバサの顔になった。
少しすると、ぼんっ!と音がして、そのカラスが左右に割れた。
よく見ると、それは精巧に出来たカラスの模型であった。
そのカラスの模型の中には、手紙が入っていた。
取り上げ、目を通す。
シャルロットの眉間が僅かに寄った。
その夜。
シャルロットは、シルフィードに乗ってトリスタニアを訪れた。
シャルロットがいる場所は、チクトンネ街である。
そして、指定の酒場へ向かった。
酒場に入ると、店の主人が外見が子供のシャルロットに何かと言ってきたが、シャルロットは無視する。
すると、深いフードを被った女がシャルロットの隣に腰掛けた。
「遅れてごめんなさい。ああ、連れですの」
その女は、店の主人にそう言う。
主人はその女の雰囲気に危険なものを感じ、奥へと引っ込んだ。
深いローブの女はシャルロットに目配せした。
「始めまして。北花壇騎士タバサ殿」
シャルロットは軽く頷いた後、口を開いた。
「どうして」
どうしてガリアではなく、トリステインで任務を授けるのだ?と、そういう疑問であった。
「この国が、今度の任務の舞台だからよ」
「・・・・・・・・・・」
女は被ったフードをずらした。
切れ長の目。
さらさらした黒髪の間には、ルーン文字が躍る。
神の頭脳こと、ミョズニトニルンであった。
「あなたと私の主人はね、こういう風に考えているの。世界に4匹しかいない竜同士を戦わせてみたいんだけど・・・・・・どうしていいのか分からない。で、竜を捕まえる事にしたってわけ」
「・・・・・・・・・・・・」
「竜には、強力な護衛がついている。だから、あなたにその護衛を退治してほしいのよ。その隙に、私が竜を盗むってわけ」
「護衛を退治?」
「あなたも良く知っている人物よ」
ミョズニトニルンは、シャルロットに1枚の紙を見せた。
そこに書かれた名前と似顔絵を見て、シャルロットの目が見開かれた。
そこに書かれていたのは才人だった。
「この任務を成功させたら・・・・・・大きな報酬があるわ。あなたの母親・・・・・・毒をあおって心を病んでるのよね。その心を取り戻せる薬よ」
シャルロットは、ミョズニトニルンに視線を移す。
その目には明らかな敵意が含まれている。
「あら?天下の北花壇騎士様が、知り合いだからって私情を挟むの?分かってるの?あなた、自分の母親の心を取り戻せるチャンスなのよ」
シャルロットは、シェフィールドから、任務の日時と内容を聞き、学院へ戻った。
自分の部屋へ入ると、深く考え込む。
シャルロットは、才人と戦う事など最初から考えてもいない。
相手が、母親の治す薬を交換条件に入れてきたことから、未だに母親の演技はばれていない事が分かる。
しかし、才人と戦わないと反逆となり、最終的に母親の事もばれてしまうだろう。
シャルロットは悩み続けた。
それから一週間後。
今日はスレイプニィルの舞踏会である。
それと同時に、シャルロットの任務の決行日でもあった。
悩み続けていたシャルロットは、一つの決意をした。
その日の朝、シャルロットはアイナの部屋を訪れた。
そして、アイナに言った。
「アイナ、私に協力してほしい。キュルケがいない今、頼れるのはアイナしかいない」
アイナはシャルロットの言葉を聞き、話を詳しく聞いた。
そして、シャルロットの要望を受け入れた。
その夜。
シャルロットは、ヴェストリの広場に才人を呼び出した。
才人はルイズに舞踏会に参加するように言われていたが、シャルロットが「すぐに終わる」と言っていたので、先にこちらに来たのだ。
もちろん、ギルモンは才人についてきている。
才人は、ヴェストリの広場にぽつんと立っているシャルロットを見つけると、声をかけた。
「タバサ、如何したんだ?俺を呼び出すなんて珍しいじゃないか」
才人の言葉に、シャルロットは答えなかった。
「タバサ?」
才人は不思議そうに尋ねると、
「・・・・・・避けて」
「え?」
小さくポツリと呟かれた言葉に才人が声を漏らしたとき、氷の槍が才人に襲い掛かった。
「うわっ!?」
才人は咄嗟に避ける。
シャルロットが、ジャベリンの魔法を唱えたのだ。
「いきなり何するんだ!?」
才人が叫ぶが、シャルロットは再びジャベリンを唱える。
氷の槍が才人に向かって飛ぶ。
「ファイヤーボール!!」
それをギルモンのファイヤーボールが砕いた。
シャルロットは一旦間合いを取った。
才人の近接戦闘の高さは良く分かっているからである。
「おい!そろそろ理由を言わねえと・・・・・・」
「そんなことを言っても無駄よ」
突如、第3者の声が響いた。
上空から羽の生えた人型、ガーゴイルが降りてくる。
その背には、シェフィールドが乗っていた。
「シェフィールド!!」
才人が叫ぶ。
「久しぶりねガンダールヴ。覚えていてくれて光栄だわ」
シェフィールドが余裕のある声で、そう言った。
そしていつの間にか、その隣にはレナモンがいた。
「ぐっ・・・・・」
3対2、いや、ガーゴイルも含めれば4対2の状況に才人は焦る。
「タバサ!何でこんな奴といるんだ!?」
才人は問いかける。
返答は魔法だった。
何本もの氷の矢が作り出され、才人に向かって飛ぶ。
才人はデルフリンガーを抜き、その魔法を吸収する。
「教えてあげましょうか?この子は、北花壇騎士。私達の忠実なる番犬だもの」
「番犬?」
「見ものだねえ。シュヴァリエ対シュヴァリエ。私の主人が小躍りして喜びそうな組み合わせだよ」
笑いながらそう言った時、
「フレイム・ジャベリン!!」
巨大な炎の槍がガーゴイルを貫いた。
「なっ!?」
シェフィールドは吹き飛ばされ、
「ジャベリン!」
シャルロットが放った氷の槍に串刺しにされた。
突然の出来事に呆然とする才人。
才人は炎の槍が飛んで来た方を見ると、アイナがいた。
アイナはシャルロットに駆け寄る。
「シャルロット、やったの?」
アイナはシャルロットに尋ねた。
シャルロットは、少し悔しそうな顔をして、首を横に振る。
「魔法人形」
シャルロットの視線の先には、串刺しになったシェフィールドではなく、バラバラになった人形があった。
「どういうつもりかしら、北花壇騎士殿。飼い犬が主人にはむかおうというの?」
シェフィールドの声が響く。
「・・・・・・・・勘違いしないで。あなた達に忠誠を誓ったことなど一度も無い」
シャルロットはそう答える。
「あなたの裏切りは報告するわ。残念ね、せっかく母親の心を取り戻せるチャンスだったのに」
「あなたには関係ない」
そう言った時だった。
「サイト?」
ルイズの声が響いた。
ルイズは、才人の姿が会場に見えなかったために探しに来たのだ。
そして、これはアイナとシャルロットにとっても予想外の出来事であった。
「レナモン!」
シェフィールドがレナモンに呼びかける。
レナモンは眼にも止まらぬ速さで動き、ルイズを捕獲する。
「きゃあっ!?」
悲鳴を上げるルイズ。
「ルイズ!」
叫ぶ才人。
レナモンはルイズを掴んだまま、高く跳躍した。
そのレナモンを、何処からか飛んできた巨大なガーゴイルが拾う。
シャルロットはすぐさま口笛を吹いた。
シルフィードが唸りをあげて飛んできて、シャルロットの前に着地する。
ひらりと跨り、シャルロットは才人とアイナを促した。
「乗って」
2人はすぐにシルフィードの背に乗る。
続けて、エンとギルモンもシルフィードの背に乗った。
「追って」
短くシャルロットが命令すると、シルフィードは「きゅい!」と一声鳴いて飛び上がった。
才人達はシルフィードの背に乗って、巨大ガーゴイルを追いかけた。
シェフィールドは何処かでガーゴイルを操っているのか、その背に姿は見えない。
その途中、シャルロットは才人に言った。
「ごめんなさい」
「なあタバサ。教えてくれ。どうして俺を襲った?あいつらは何者なんだ?」
「詳しく話すと長くなる。ただ、相手の隙を付くために、従う振りをする必要があった。けど、あそこでルイズが出てきたのは予想外」
「そうか・・・・・・」
才人は頷いた。
ガーゴイルの速度は余り速くなく、シルフィードは難無く追いつくことが出来た。
「もっと近付いてくれ!あとは俺が何とかする!」
シャルロットは頷くと、シルフィードに命令する。
「近付いて」
そう言った時、空に小さな黒い点が、ぽつぽつと現れ始めた。
「な、なんだありゃ・・・・・・」
それは、ガーゴイルであった。
まるで、カラスの群れのように、空を圧する数のガーゴイルが押し寄せてきたのだ。
魔法で動くガーゴイルは、その目を金色に光らせ、シルフィードにまとわりつき始めた。
「くそっ!」
その数、おおよそ数十匹。
ルイズを運ぶ巨大な1体に近づけさせまいとして、大きな爪と牙で攻撃してくる。
「きゅいきゅい!」
シルフィードは怯えた声を上げた。
アイナやタバサも魔法で応戦するが、シルフィードの回りを上下左右360度自由に飛び回るガーゴイルには手を焼く。
才人は歯噛みしていた。
飛び道具を持たないガンダールヴはこんな場合、無力だ。
ギルモンもファイヤーボールを放っているが、命中率は低い。
(くそっ!せめてギルモンを進化させることが出来ればこんな奴ら1発だってのに!)
デジヴァイスを失っている才人にそれは不可能であった。
そんな時、
「アイナの嬢ちゃん。俺をそこの坊主に持たせるッス!」
アイナの懐から声がした。
地下水である。
アイナは地下水を取り出すと、才人に差し出す。
「坊主、俺が『フライ』の呪文をとなえるッスから、ちゃんとアイナの嬢ちゃん達を守るッスよ!」
才人の体が浮き上がる。
才人はちょっと戸惑ったが、デルフリンガーを右手に持ち、ガーゴイルに向かって飛んだ。
慣れない空中戦であったが、才人は1匹、また1匹とガーゴイルを切り裂いていく。
だが、まだガーゴイルは20匹以上残っている。
そんな時、上空に巨大な影が現れた。
シュシュシュシュ・・・・・と、独特の音が響く。
次に、久しぶりに色気を含んだ女の声が響いた。
「あなた達、何をしてるの?随分と楽しそうじゃない。いつの間にガーゴイルのお友達ができたわけ?」
キュルケの声であった。
「こっそり学院に到着して、この『オストラント』号を疲労して驚かせようと思ってたのに。この間航法を間違えて、トリスタニアについちゃったときには慌てて引き換えしたわ」
続けて、
「援護をするから注意しなさい。『空飛ぶヘビくん』は魔力に反応する」
コルベールの声が響いた。
「先生!」
才人が叫んだ。
次の瞬間、大量の筒がオストラント号の船底からばら撒かれた。
落下しつつある筒の後ろから、発火炎が瞬いた。
夜空に広がる花火のように、コルベールの空飛ぶヘビくんが一斉に点火する。
空飛ぶヘビくんの先端には、ディティクト・マジックを発進する魔法装置が取り付けられている。
ガーゴイルにその魔法装置は激しく反応し、鋭い勢いで迫っていく。
ガーゴイル1体につき2,3本の数が迫る。
空飛ぶヘビくんは、ガーゴイルの至近距離で爆発して破片をばら撒き、ガーゴイルを粉々に打ち砕いた。
「すげえ・・・・まるでミサイルだ」
才人は呆然と呟いた。
既に半数以上のガーゴイルが落されている。
しかし、
「弧葉揳!!」
レナモンが、木の葉のような輝く刃を無数に飛ばし、空飛ぶヘビくんを打ち落としていく。
続けて、レナモンは巨大なガーゴイルから跳躍した。
レナモンは残っていたガーゴイルを足場にしてシルフィードに接近していく。
「しまった!」
才人はシルフィードから離れすぎていた事に気付いた。
地下水のフライの呪文では間に合わない。
レナモンがシルフィードに乗っているアイナたちに襲い掛かった。
余りの速さにアイナたちは継撃も間に合わない。
その時、
「てやぁああああああっ!!」
シルフィードの背中から一つの影が跳び上がった。
エンであった。
エンはレナモンに向かって拳を繰り出す。
「くっ!?」
レナモンは咄嗟に防御したが、思った以上の力に弾き飛ばされた。
エンはレナモンがやっていた事と同じようにガーゴイルを足場にして跳躍した。
エンの脚力は思った以上に強く、頭を足場にされたガーゴイルは、頭を砕かれている。
レナモンはルイズが捕まっている巨大ガーゴイルまで下がる。
エンは、その巨大ガーゴイルに向かって跳躍した。
すると、突如、今まで逃走に徹していた巨大ガーゴイルが振り向き、エンに向かって攻撃を仕掛けてきた。
エンに向かって巨大な腕が伸ばされる。
「エンっ!!」
アイナが悲鳴に近い声を上げる。
「負けるもんかぁああああああああっ!!」
エンが叫ぶと、体中から炎を発する。
まるで、火の玉のようになり、エンはガーゴイルに突撃した。
エンを掴もうとしたガーゴイルの腕が砕けていき、火の玉となったエンは、ガーゴイルの体を貫いた。
砕けていくガーゴイル。
振り落とされるルイズ。
「ルイズ!!」
才人はフライでルイズの元に飛んで行き、ルイズを抱きとめる。
「サイト!」
怯えていたるイズは才人に抱きつく。
一方、エンは、
「うわあああああああっ!!」
ガーゴイルに突撃した後のことを考えていなかったのか、叫び声をあげて落下してゆく。
そんなエンを、シルフィードが拾う。
「大丈夫?エン」
アイナが心配そうに声をかける。
「う、うん。ありがとう」
「でも、びっくりしたよ。強いんだね、エンって」
「うん。アイナが危ないって思ったら、体が勝手に動いてた」
「フフッ、ありがとう、エン」
アイナは微笑んで礼を言った。
オストラント号の甲板にシルフィードを着陸させると、シャルロット以外がシルフィードから下りる。
そして、シャルロットは再びシルフィードを飛び立たせようとした。
「シャルロット!」
そんなシャルロットに、アイナは声をかけた。
「やっぱり行くの?」
アイナの問いかけに、シャルロットは頷いた。
「私の裏切りは、既に知れ渡っているはず。このままじゃ母さまが危ない」
そう言うシャルロット。
シャルロットは、既にガリア王家と敵対する事を決意していた。
アイナは少し考えた後、口を開く。
「やっぱり、私も・・・・・」
アイナがそう言いかけたとき、シャルロットは首を横に振る。
「今回は、王家が絡んでくる。トリステインの貴族であるアイナが私に協力すれば、国家間の問題に発展する可能性もある」
そう言われ、アイナは黙ってしまうが、再び口を開いた。
「気をつけてねシャルロット。それから、助けが要るときはいつでも言ってね。絶対に協力するから」
「ありがとう、アイナ」
シャルロットはそう言うと、シルフィードを上昇させる。
「ガリアへ」
シャルロットがそう言うと、シルフィードは夜の闇の中へ羽ばたいた。
次回予告
母親を救うために実家へと向かうシャルロット。
シャルロットの実家では、傭兵が母親を連れ出そうとする寸前だった。
傭兵を蹴散らすシャルロットだが、その前にエルフが立ちはだかった。
次回!ゼロの使い魔と炎の使い魔
第三十七話 エルフの脅威。囚われたシャルロット。
今、異世界の物語が進化する。
あとがき
はい、三十六話完成です。
まあ、出来はそこそこといったところかな。
漸く少しずつテンション上がってきました。
GWの休みの間に、もう一話ぐらいは更新したいなと思ってます。
では、次も頑張ります。