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No.4371の一覧
[0] ゼロの使い魔と炎の使い魔(ゼロの使い魔xデジモンシリーズ〈フロンティア中心〉)[友](2009/03/15 21:23)
[1] プロローグ[友](2008/10/07 18:36)
[2] 第一話[友](2008/10/07 18:51)
[3] 第二話[友](2008/10/10 19:17)
[4] 第三話[友](2008/10/13 16:12)
[5] 第四話[友](2008/10/20 17:57)
[6] 第五話[友](2008/10/26 04:02)
[7] 第六話[友](2008/11/01 17:51)
[8] 第七話[友](2008/11/08 17:50)
[9] 第八話[友](2008/11/15 12:02)
[10] 第九話[友](2008/11/22 17:35)
[11] 第十話[友](2008/11/29 14:53)
[12] 第十一話[友](2008/12/05 19:52)
[13] 第十二話[友](2008/12/07 21:43)
[14] 第十三話[友](2008/12/14 16:23)
[15] 第十四話[友](2008/12/21 12:18)
[16] 第十五話[友](2008/12/28 16:54)
[17] 第十六話[友](2009/01/01 00:05)
[18] 第十七話[友](2009/01/02 16:26)
[19] 第十八話[友](2009/01/09 00:29)
[20] 第十九話[友](2009/01/11 06:34)
[21] 第二十話[友](2009/01/15 20:24)
[22] 第二十一話[友](2009/01/18 17:32)
[23] 第二十二話[友](2009/02/01 11:52)
[24] 第二十三話[友](2009/02/01 11:54)
[25] 第二十四話[友](2009/02/08 22:23)
[26] 第二十五話[友](2009/02/15 11:45)
[27] 第二十六話[友](2009/02/22 20:46)
[28] 第二十七話[友](2009/03/01 13:24)
[29] 第二十八話[友](2009/03/08 19:44)
[30] 第二十九話[友](2009/03/14 00:18)
[31] 第三十話[友](2009/03/14 21:51)
[32] 第三十一話[友](2009/03/15 21:22)
[33] 第三十二話[友](2009/03/26 19:38)
[34] 第三十三話[友](2009/04/11 22:44)
[35] 第三十四話[友](2009/04/11 22:43)
[36] 第三十五話[友](2009/05/02 13:14)
[37] 第三十六話[友](2009/05/02 13:13)
[38] 第三十七話[友](2009/05/04 18:13)
[39] 第三十八話[友](2009/05/05 10:08)
[40] 第三十九話[友](2009/05/05 16:55)
[41] 第四十話[友](2009/05/31 14:53)
[42] 第四十一話[友](2009/06/21 11:00)
[43] 第四十二話 7/19修正[友](2009/07/19 20:21)
[44] 第四十三話[友](2009/08/01 12:23)
[45] 第四十四話[友](2009/08/12 13:39)
[46] 第四十五話[友](2009/08/31 23:37)
[47] 第四十六話[友](2009/09/12 20:57)
[48] 第四十七話[友](2009/09/13 16:58)
[49] 第四十八話[友](2009/09/19 00:53)
[50] 第四十九話[友](2009/09/27 10:46)
[51] 第五十話[友](2009/10/17 16:40)
[52] 第五十一話[友](2009/12/06 14:33)
[53] 第五十二話[友](2010/08/08 22:23)
[54] 第五十三話[友](2010/08/22 23:45)
[55] 第五十四話[友](2010/09/26 20:09)
[56] 第五十五話[友](2010/09/26 20:08)
[57] 第五十六話[友](2010/11/20 11:51)
[58] 第五十七話[友](2010/12/12 23:08)
[59] 第五十八話[友](2011/01/02 19:02)
[60] 第五十九話[友](2011/01/24 14:57)
[61] 第六十話[友](2011/02/13 19:25)
[62] 第六十一話[友](2011/02/13 19:22)
[63] 第六十二話[友](2012/01/15 20:45)
[64] 第六十三話[友](2012/01/15 20:39)
[65] 第六十四話[友](2015/02/08 17:28)
[66] 第六十五話[友](2015/03/08 21:45)
[67] 第六十六話[友](2015/05/03 15:33)
[68] 第六十七話[友](2015/06/07 21:34)
[69] 第六十八話[友](2015/10/18 17:11)
[70] 第六十九話[友](2016/02/28 20:03)
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[4371] 第三話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73 前を表示する / 次を表示する
Date: 2008/10/13 16:12
デジタルワールドから、ハルゲギニアに召喚された拓也。

お隣さんの才人も含めて、使い魔の生活が始まった。



第三話  使い魔初日


「・・・う・・・・」

拓也は朝の日の光で目を覚ます。

「朝・・・か」

拓也は周りを見渡す。

横のベッドではアイナが寝息を立てていた。

「夢じゃない・・・か。それにしても・・・・」

拓也が身体を動かすと、間接がパキパキと音を立てる。

「流石に床が固いな」

デジタルワールドでは、トレイルモンのソファーで寝ることが多かったため、固い床では寝慣れていなかった。

「・・・う・・・ん・・・」

その時、アイナが目を覚ました。

「あ、おはようアイナ」

「・・・ふわぁ・・・おはようタクヤ」

アイナは欠伸を一回すると、拓也の挨拶に答える。

「それで、先ずはどうするんだ?」

「着替えるから廊下でまってて」

「分かった」

拓也は廊下に出る。

暫くすると、制服に着替えたアイナが部屋から出てきた。

「お待たせ。これから食堂に案内するからついてきて」

アイナがそう言った時、隣の部屋から才人とルイズが出て来る。

「ルイズ、おはよう」

「ええ、おはようアイナ」

アイナとルイズが挨拶し、

「才人さん、おはようございます」

「おう・・・おはよう拓也」

拓也は元気良く、才人は少し疲れた表情で挨拶した。

「どうかしたんですか?」

不思議に思った拓也は才人に尋ねる。

「頼む・・・聞かないでくれ」

才人にそう断られた。

その時、ルイズの部屋の隣(アイナの部屋とは反対側)の扉が開き、アイナと同じ赤い、しかし腰まで届きそうな髪を持った、褐色肌の女の子が出てきた。

背も高く、才人と同じぐらいあり、スタイルも良い。

「おはようルイズ」

彼女はニヤッと笑って、ルイズに挨拶した。

「おはようキュルケ」

ルイズは嫌そうに挨拶を返す。

「アイナもおはよう」

「おはようキュルケ」

こちらは自然な笑みで挨拶を交わす。

キュルケは視線をルイズに戻すと、

「貴方の使い魔って、それ?」

才人を指差し、馬鹿にした口調で言った。

「そうよ」

キュルケはそれを聞くと笑い出す。

「あっはっは!ホントに人間なのね!凄いじゃない!『サモン・サーヴァント』で平民喚んじゃうなんて、流石はゼロのルイズ」

「うるさいわね。その言い方だとアイナまで馬鹿にしてることになるわよ」

それを聞くとキュルケは拓也に視線を向ける。

「ふ~ん。優秀なアイナの使い魔がただの平民とは思えないけどね。試してみましょ。来なさいフレイム~」

キュルケがそう言うと、キュルケの部屋から、真っ赤で巨大なトカゲが現れた。

「うわあっ!真っ赤な何か!?」

才人は思いっきり驚き、

「お・・・・こっちの世界にもこんなのいるんだ」

拓也はさして驚きもせず、フレイムに近付いていく。

「あはははっ!貴方達、火トカゲを見るのは初めて?見てみなさいルイズ、アイナの使い魔と貴女の使い魔の差を!ルイズの使い魔は臆病ちゃんね」

それもそのはず。

才人は今までファンタジーとは全く無縁の普通の高校生だったのだ。

正直、才人の反応は正しい。

だが、拓也はデジタルワールドの冒険の中、色々なデジモンと関わってきたのだ。

目の前の火トカゲの強さはデジモンにしてみれば、成長期以上成熟期未満と言ったところ。

完全体や究極体、それを超えるロイヤルナイツ、果ては星をも破壊するルーチェモンと戦い、仲間たちと共に勝利してきた拓也にとって、目の前のフレイムは可愛いものでしかなかった。

拓也はフレイムの頭を撫でてやる。

「きゅるきゅる(気持ち良い)」

「へ?」

フレイムが鳴き声を洩らしたとき、頭の中に聞こえた声に拓也は驚いた。

(喋った?いや、鳴き声は聞こえたんだ。喋ってるわけじゃない。頭の中に声が聞こえたというか、鳴き声の意味が分かったというか)

拓也が考えていると、

「きゅる?(どうしたんだ?)」

フレイムが鳴き声を洩らし、また、拓也の頭に声が聞こえる。

(・・・・もしかして、コイツの言ってる意味が分かるのか)

「どうしたの?」

フレイムの頭に手を置いたまま、固まっていた拓也にアイナが声をかける。

「いや、コイツが喋ったというか、鳴き声の意味が分かったというか・・・・」

「あら?貴方、右手のルーンが光ってるわよ」

キュルケに言われ、右手を見ると確かにルーンが光っていた。

「このルーンの力か?」

「そうかもしれない。使い魔の中には契約することで特殊な能力を持つ時があるから」

拓也の疑問にアイナが答える。

「動物の声が分かるようになったのか?」

「少なくとも、タクヤの言ってることが本当ならね」

「ふ~ん」

拓也は右手のルーンをジッと見つめた。

「フフフ、如何ルイズ?貴女の使い魔とは天と地の差があるみたいよ」

「うるさ~~い!!動物の言葉が分かるからって何よ!強さだけなら年上のこっちの方が上よ!それよりも、これってサラマンダーよね」

ルイズが話を変えるように尋ねる。

「そうよー。火トカゲよー。見て、この尻尾。ここまで鮮やかで大きい炎の尻尾は、間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ。ブランド物よー。好事家に見せたら値段なんかつかないわよ」

「そりゃ良かったわね」

苦々しい声でルイズが言った。

「素敵でしょ。あたしの属性にぴったり」

「あんたも『火』属性だもんね」

「ええ、微熱のキュルケですもの。ささやかに燃える情熱は微熱。でも、男の子はそれでイチコロなのですわ。貴女と違ってね」

キュルケは、得意げに胸を張る。

ルイズも負けじと張り返すが、その差は月とスッポン。

それでもルイズは、キュルケを睨みつける。

かなりの負けず嫌いである。

「アンタみたいにいちいち色気振りまくほど、暇じゃないだけよ」

ルイズはそう言うが、キュルケにとっては負け犬の遠吠えである。

キュルケは余裕の笑みを浮かべ、才人と拓也の方を向く。

「貴方達のお名前は?」

「平賀 才人」

「神原 拓也」

「ヒラガサイトにカンバラタクヤ?変な名前ね?」

「やかまし」

「まあ・・・こっちの人からしてみれば・・・・」

「じゃあ、お先に失礼」

そう言うと、キュルケは髪をかきあげ、颯爽と去っていき、その後をフレイムが追っていった。

キュルケがいなくなると、ルイズは拳を握り締めて叫んだ。

「くやし~!!何なのよあの女!自分が火竜山脈のサラマンダーを召喚したからって!」

「いいじゃねえかよ。召喚なんてなんだって」

才人がルイズにそう言うが、

「良くないわよ!メイジの実力を測るには使い魔を見ろって言われてるぐらいよ!何であの女がサラマンダーで、私はアンタなのよ!」

余計に怒りをかっただけであった。

「悪かったな、俺なんかで。でも、お前らだって俺と同じ人間じゃないのかよ」

「メイジと平民じゃ、狼と犬ほどの違いがあるのよ」

得意げにルイズは言った。

「・・・・はいはい。ところで、あいつ、ゼロのルイズって言ってたけど、『ゼロ』って何?苗字?」

「違うわよ。ゼロは唯のあだ名よ」

「あだ名か。あいつが微熱ってのはなんとなく分かったけど、お前は何でゼロなの?」

「知らなくて良い事よ」

ルイズはバツが悪そうに言った。

才人はルイズの身体をジーっと見つめ、

「むね?」

その瞬間、ルイズの平手が飛び、才人が反射的にそれをかわす。

「かわすな!」

「殴んな!」

そんな2人のやり取りを見て、拓也は苦笑しつつアイナに問いかけた。

「そういえば、アイナのあだ名はなんて言うんだ?」

「私の?私は『灯』。灯のアイナって呼ばれてるの」

「『灯』ってことは、火属性?」

「うん」

「あ、やっぱり」

拓也は、自分の属性からアイナはおそらく火属性だろうと予想していた。

とりあえず、未だに騒いでいるルイズと才人を置いて、2人は食堂へ向かった。



食堂に着いた拓也が長いテーブルに置かれた朝食を見て一言。

「無駄に豪華じゃないのか?」

「あはは・・・私もそう思う。でも、『貴族は魔法をもってしてその精神となす』のモットーの元で、貴族たるべき教育を受けるから、食堂も貴族の食卓に相応しいものでなければならない、っていう理由らしいんだけど」

「何だそりゃ?」

日本人の拓也からしてみれば、明らかに重過ぎる朝食。

いや、夕食にしてみても、これだけの豪華な食事は滅多にないだろう。

「タクヤの席は私の隣で良いから」

アイナにそう言われ、拓也は席につく。

その時、才人とルイズが食堂にやって来る。

拓也が様子を見ていると、ルイズが床を指差し、才人と少し言葉を交わす。

すると才人は床に座り込んだ。

よく見ると才人の前には、皿が一枚置いてある。

貴族の食事と比べると、相当粗末な食事だ。

暫くすると、祈りの声が唱和される。

「偉大なる始祖ブリミルと女王陛下よ。今朝もささやかな糧を我に与えたもうたことを感謝いたします」

それを聞いた拓也は、

(これの何処がささやかなんだよ?)

当然そう思い、もちろん才人も同じ事を思っている。

食事が始まるが、才人は量も少ないためあっという間に終わってしまう。

それを見た拓也が、料理をいくつか皿に取り、席を立って才人の所に持っていく。

「才人さん、それだけじゃ足りないですよね?」

才人は拓也の持った皿の上の料理を見て喜んだ。

「おお!サンキュー拓也!」

才人が皿を受け取ろうとした時だった。

「ちょっと!なに人の使い魔に勝手に餌やってるの!?」

ルイズが怒鳴ってきた。

「何だよ?才人さんの食事が少ないから持ってきただけだけど」

「贅沢させたら癖になるでしょ!」

「癖になる・・・って、才人さんはペットじゃないぞ!」

「私の使い魔なんだから似たようなものよ!」

ルイズのその言葉は拓也にとって許せなかった。

「ふざけるな!才人さんは人間だ!勝手に呼び出しといてその言い草はなんだ!!第一、アンタは才人さんに謝ったのかよ!!」

「な、何で私が平民に謝らなくちゃならないのよ?」

「アンタは勝手に才人さんを家族から引き離したんだぞ!言い換えれば誘拐と同じことだ!平民だから貴族に従うのは当たり前?貴族だから犯罪を犯しても良いって言うのかよ!」

「そ、そんなことアンタには関係ないでしょ!」

「才人さんは俺にとって兄さんみたいな存在なんだ。その才人さんが理不尽な扱いを受けているのを黙ってみていられるか!」

「た、拓也。押さえて押さえて・・・」

才人が拓也を宥めようとしている。

だが、拓也は止まりそうにない。

その時、

「タクヤ!」

アイナが駆け寄ってきた。

「お願い、止めて・・・」

「アイナ・・・・・・・・・・分かったよ・・・」

アイナの悲しそうな顔を見て、拓也は折れた。

拓也はルイズに向き直る。

「怒鳴って悪かったな。でも、才人さんの扱いには気をつけろよ」

拓也はルイズにそう言って、アイナの所に戻っていった。




一波乱あった朝食の時間が終わり、現在は授業の時間。

教師であるシュヴルーズと名乗る中年の女の人が『錬金』の授業を行なっている。

ついさっきも、ただの石ころを真鍮に変えたところだ。

それで、才人が『スクウェア』や『トライアングル』などの意味をルイズに聞いていた。

拓也も興味があったので、聞き耳を立てた。

それによると、魔法使いのレベルは、系統を足せる数で決まり、1つだと『ドット』、2つで『ライン』、3つで『トライアングル』、4つで『スクウェア』となるらしい。

そこで、気になったことをアイナに尋ねた。

「なあアイナ。アイナのレベルって、幾つなんだ?」

拓也がそう尋ねると、アイナは少しうつむき、

「わ、私は・・・・スクウェア・・・なんだけど・・・・」

アイナは拓也がギリギリ聞き取れるぐらいのか細い声で言う。

「へ~。凄いな」

拓也が褒めるが、

「で、でも、実力的にはラインと同程度しかないから」

アイナはそんなことを言う。

(そうなのか?でも、メイジの実力を見るには、使い魔を見ろって言ってたぐらいだから・・・)

「なあ、参考までに聞くけど、朝に会ったキュルケって女の人のレベルは幾つなんだ?」

拓也が問う。

「キュルケ?キュルケはトライアングルだよ。火竜山脈のサラマンダーを召喚するぐらいだから、その実力は本物だよ」

「ふ~ん」(あれでトライアングルなら、やっぱりアイナの方が凄いと思うけどなあ)

アイナの答えを聞いて、拓也はそう思ったが、これ以上話してると授業の邪魔になるので頷いて会話を終わらせた。

丁度その時、才人と会話していたルイズがシュヴルーズに見咎められ、『錬金』の実演をすることになった。

すると、生徒たちが騒ぎ出す。

「先生、止めといたほうがいいと思います」

生徒たちを代表して、キュルケが言った。

「どうしてですか?」

「危険です」

キュルケが言うと、教室の殆ど全員が頷いた。

「危険?何故ですか?」

「ルイズを教えるのは初めてですよね?」

「ええ。ですが、彼女が努力家だという事は聞いています。さぁ、ミス・ヴァリエール。気にしないでやってごらんなさい。失敗を恐れていては、何も出来ませんよ」

「ルイズ、やめて」

キュルケは蒼白な顔で言った。

しかし、ルイズは立ち上がる。

「やります」

ルイズは緊張した面持ちで、教室の前に歩いていった。

隣に立ったシュヴルーズはにっこりとルイズに笑いかけた。

「ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を、強く心に思い浮かべるのです」

ルイズは、コクリと頷いて、手に持った杖を振り上げた。

その時位から、生徒達は落ち着きがなくなり、机の下に隠れるものが大勢いた。

不思議に思った拓也は、アイナに問う。

「なあ、一体どうしたんだ?さっき、先生がやった『錬金』をするだけだろ?」

「う、うん・・・そうなんだけど・・・・とりあえず、何が起きても対処できる心構えだけはしといて」

「はあ?」

そして、ルイズが呪文を唱え、杖を振り下ろした瞬間、石ころは机ごと爆破された。

「おわっ!?」

突然のことに拓也は驚き、油断していた才人は爆風の影響で椅子ごと倒れる。

爆心地にいたルイズとシュヴルーズは黒板に叩きつけられ、さらに、爆発で驚いた使い魔たちが暴れだした。

キュルケのサラマンダーが火を吹き、マンティコアが窓ガラスを叩き割って、外へ飛び出す。

そして、その穴から大ヘビが入ってきて、大きな口を開け、拓也に向かってきた。

「って、狙い俺かよ!?」

拓也は思わず口を大きく開けたヘビの顎を狙って下から蹴り上げた。

サッカー部で鍛えたその蹴りが、ナイスな具合にヘビの脳を揺らしたらしく、ヘビは気絶した。

「スネーク!しっかりするんだ!スネェェェク!!」

そのヘビの主らしい男子生徒が、そのヘビに声をかけていた。

(正当防衛だからな)

心の中でそう呟いて、拓也は前を向く。

そこでは、煤で真っ黒になったルイズが起き上がったところだった。

「ちょっと失敗したみたいね」

辺りの大騒ぎを意に介した風もなく、ルイズはそう言った。

「ちょっとじゃないだろ!ゼロのルイズ!」

「何時だって魔法の成功確率、殆どゼロじゃないかよ!」

その言葉で才人と拓也は、何故ルイズが『ゼロのルイズ』と呼ばれているのか理解した。




本塔の最上階にある学園長室には、このトリステイン魔法学院の学園長がいる・・・・のだが、

「あだっ!年寄りを。君。そんな風に。こら!あいだっ!」

その偉そうな肩書きを持つオスマンという老人は、現在、秘書であるロングビルという女性に蹴られていた。

理由は、俗に言うセクハラというやつである。

このオスマンは、偉大な魔法使いらしいのだが、この場を見る限りそんなふうには見えない。

そんな状況の学園長室に、突然コルベールが駆け込んできた。

「オールド・オスマン!!」

「なんじゃね?」

ロングビルは何事もなかったかのように机に座って仕事をしており、オスマンは腕を後ろに組んで、重々しくコルベールを迎え入れた。

恐ろしいほどの早業である。

「たたた、大変です!」

「大変なことなどあるものか。全ては小事じゃ」

「ここ、これを見てください!」

コルベールは、手に持っていた書物をオスマンに手渡した。

「これは、『始祖ブリミルの使い魔たち』ではないか。まーたこのような古臭い文献など漁りおって。そんな暇があるなら、たるんだ貴族たちから学費を徴収する上手い手を、もっと考えるんじゃよ。ミスタ・・・・・なんだっけ?」

「コルベールです!お忘れですか!?」

「そうそう、そんな名前だったな。君はどうも早口でいかんよ。で、コルベール君、この書物がどうかしたのかね?」

「これも見てください!」

コルベールは才人の左手に現れたルーンのスケッチを手渡した。

それを見た瞬間、オスマンの顔色が変わり、厳しい顔つきになる。

「ミス・ロングビル。席を外しなさい」

退室を促され、席を立つロングビル。

そして、部屋から出て行ったロングビルを見届けると、オスマンは口を開いた。

「詳しく説明するんじゃ。ミスタ・コルベール」





爆破された教室では、ルイズと才人が後片付けを命じられた。

罰といって、魔法で片付けることは禁止されたが、魔法を使えないルイズにとって意味は無かった。

シュヴルーズは2時間後に目を覚ましたが、ルイズの爆発がトラウマになったのか、今日は錬金の授業を行なわなかった。

片付けは拓也も手伝い、何とか昼前には終わらせた。

拓也が手伝った理由は、魔法で片付けるのは禁止だが人の手を借りるなと言われてない事と、どうせルイズは殆どを才人に押し付けるだろうと思い、事実そうだった。

3人が食堂へ向かっているとき、ルイズが魔法を使えないと知った才人がルイズをからかっている。

ルイズは、怒りが溜まっていくが、才人は浮かれていて気付かない。

拓也は、ルイズの引きつる顔を見て、ヤバイと思ったが、才人のからかいはエスカレートしていく。

「ルイズお嬢様。この使い魔、歌を作りました」

「歌ってごらんなさい?」

「ルイルイルイズはダメルイズ。魔法が出来ない魔法使い。でも平気!女の子だもん・・・・・・・ぶわっはっはっは!!」

才人は自分で爆笑してしまった。

「さ、才人さん・・・・・」

才人は既に拓也がフォローできない所まで言ってしまい、拓也は頭を抱えた。

才人は気付いていないが、拓也はルイズが完璧に切れてしまっていることに気付いていた。

食堂に着くと、才人はルイズに椅子を引いてやる。

「はいお嬢様。料理に魔法をかけてはいけませんよ。爆発したら大変ですからね」

未だその事を引っ張る才人。

それが拙かった。

才人は床に座り、食事しようとした時、目の前の皿が取り上げられた。

「なにすんだよ!?」

「こここ・・・・」

「こここ?」

ルイズの肩が怒りで震えていた。

拓也は、

「やっぱり来たか・・・・」

とつぶやく。

「こここ、この使い魔ったら、ごごご。ご主人様に、ななな、なんてこと言うのかしら」

才人は、ようやくやりすぎたことに気付くが、時既に遅し。

「ごめん!もう言わないから、俺の餌返して!」

「ダメ!ぜぇ~ったい!ダメ!ゼロって言った数だけご飯抜き!これ絶対!例外なし!」

「そ、そんなぁ~。・・・・そうだ拓也!拓也からも何か言ってくれ!」

才人は拓也に助けを求めるが、

「才人さん、今回ばかりは才人さんが悪いです。俺にはフォローできません」

「おほほほ、アイナの使い魔も世間知らずのガキンチョだと思ってたけど、なかなか分かってるじゃない」

「まあ、今回ばかりは」

唯一の望みの拓也に断られたために、ご飯抜きが決定してしまった才人は激しく落ち込む。

そして、ふらふらとした足取りで食堂から出て行った。

それを見送った拓也は、自分の食事をするために、アイナの所へ向かった。



暫くすると、才人がメイドと一緒にケーキを配っていた。

才人はメイドのシエスタから食事もらった代わりに仕事を手伝っているのだ。

才人がトレイを持ち、シエスタがそのトレイからはさみでケーキをつまみ、1個づつ貴族たちに配っていく。

そんなテーブルの先に、金髪の巻き髪に、フリルのついたシャツを着た、キザなメイジがいた。

薔薇をシャツのポケットに挿している。

周りの友人が口々に彼を冷やかしている。

「なあギーシュ。お前、今は誰と付き合っているんだよ?」

「誰が恋人なんだ?ギーシュ?」

そのキザなメイジはギーシュというらしい。

「付き合う?僕にそのような特定の女性はいないのだ。薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね」

見事なキザっぷりである。

それを聞いていた拓也は、

(ナルシストっぷりなら、ロードナイトモンといい勝負か?)

つい昨日まで戦っていた宿敵の片割れを思い出していた。

対して才人は、そんなギーシュを、死んでくれと思いながら彼を見つめた。

その時、ギーシュのポケットから、紫の液体が入っている小壜が落ちた。

才人は仕方なくギーシュに声をかける。

「おい、ポケットから壜が落ちたぞ」

だが、ギーシュは振り向かない。

才人はシエスタにトレイを持ってもらうと、しゃがみこんで小壜を拾った。

「落し物だよ。色男」

それをテーブルの上に置いた。

ギーシュは苦々しげに、才人を見つめると、その小壜を押しやった。

「これは僕のじゃない。君は何を言っているんだね?」

その小壜を見たギーシュの友人たちが騒ぎ始める。

「おお?その香水は、もしや、モンモランシーの香水じゃないのか?」

「そうだ!その鮮やかな紫色は、モンモランシーが自分のためだけに調合している香水だぞ!」

「そいつがギーシュ、お前のポケットから落ちてきたって事は、つまりお前は今、モンモランシーと付き合っている。そうだな?」

「違う。いいかい?彼女の名誉のために言っておくが・・・・・」

ギーシュが何か言いかけたとき、後ろのテーブルに座っていた茶色のマントの少女が立ち上がり、ギーシュの席に向かって、コツコツと歩いていた。

栗色の髪をした、可愛い少女だった。

「ギーシュさま・・・・」

そして、ボロボロと泣き始める。

「やはり、ミス・モンモランシーと・・・・」

「彼らは誤解しているんだ。ケティ。いいかい、僕の心の中に住んでるのは、君だけ・・・・」

だが、ケティと呼ばれた少女は、ギーシュの頬をひっぱたいた。

「その香水が貴方のポケットから出てきたのが、何よりの証拠ですわ!さようなら!」

ケティがギーシュの前から去ると、遠くの席から見事な巻き髪の女の子が立ち上がった。

才人は、その女の子に見覚えがあった。

彼女は、才人がこの世界に呼び出されたときに、ルイズと口論していたモンモランシーだった。

いかめしい顔つきで、かつかつとギーシュの席までやってきた。

「モンモランシー。誤解だ。彼女とはただ一緒にラ・ロシェールの森へ遠乗りをしただけで・・・・」

ついさっきとは180度違うことを言うギーシュ。

傍から見れば、かっこ悪いことこの上ない。

「やっぱりあの一年生に手を出していたのね?」

「お願いだよ。『香水』のモンモランシー。咲き誇る薔薇のような顔を、そのような怒りで歪ませないでくれよ。僕まで悲しくなるじゃないか」

モンモランシーは、テーブルに置かれたワインの壜を掴むと、中身をどぼどぼとギーシュの頭の上からかけた。

そして・・・・

「嘘つき!!」

と怒鳴って去っていった。

沈黙が流れる。

ギーシュはハンカチを取り出すと、ゆっくりと顔を拭いた。

「あのレディたちは、薔薇の存在の意味を理解していないようだ」

才人は、一生やってろ、と思い、シエスタからトレイを受け取り、再び歩き出した。

そんな才人を、ギーシュが呼び止めた。

「待ちたまえ」

「何だよ」

ギーシュは椅子の上で身体を回転させると、足を組んだ。

「君が軽率に、香水の壜なんかを拾い上げたお陰で、2人のレディの名誉が傷ついた。どうしてくれるんだね?」

才人は呆れた声で言った。

「二股かけてるお前が悪い」

ギーシュの友人たちがどっと笑った。

「その通りだギーシュ!お前が悪い!」

ギーシュの顔に赤みが差す。

「いいかい?給仕君。僕は君が香水の壜をテーブルに置いたとき、知らないフリをしたじゃないか。話を合わせるぐらいの機転があってもよいだろう?」

「どっちにしろ二股なんかその内ばれるっつの。あと、俺は給仕じゃない」

「ふん・・・・ああ、君は・・・・・確か、あのゼロのルイズが呼び出した平民だったな。平民に貴族の機転を期待した僕が間違っていた。行きたまえ」

ギーシュは馬鹿にしたように鼻を鳴らし、そう言った。

才人はそれが頭に来た。

「うるせえキザ野郎。一生薔薇でもしゃぶってろ」

才人はそう口走っており、ギーシュの目が光る。

「どうやら君は貴族に対する礼を知らないようだな」

「あいにく、貴族なんかいない世界から来たんでね」

才人はギーシュの物腰を真似てキザったらしい仕草で言った。

「よかろう。君に礼儀を教えてやろう。丁度いい腹ごなしだ」

ギーシュは立ち上がった。

「おもしれえ」

才人もやる気を見せる。

「ここでやんのか?」

「まさか。貴族の食卓を平民の血で汚したくはない。ヴェストリの広場で待っている。ケーキを配り終わったら来たまえ」

ギーシュはそう言って、体を翻すと食堂から出て行った。

ギーシュの友人たちがワクワクした顔で立ち上がり、ギーシュの後を追った。

一人は才人を見張るために残っている。

シエスタが震えながら、才人を見つめていた。

「あ、あなた、殺されちゃう・・・・貴族を本気で怒らせたら・・・・」

シエスタは走って逃げてしまった。

すると、後ろからルイズが駆け寄ってくる。

「あんた!何してんの!見てたわよ!」

「よお、ルイズ」

「よおじゃないわよ!何勝手に決闘なんか約束してんのよ!」

「だって、あいつが余りにもムカつくから・・・・」

才人はバツが悪そうに言う。

ルイズはため息をついて、やれやれと肩をすくめた。

「謝っちゃいなさいよ」

「なんで?」

「怪我したくなかったら、謝ってきなさい。今なら許してくれるかもしれないわ」

「ふざけんな!何で俺が謝らなくちゃならないんだよ!先にバカにしてきたのは向こうのほうだ。大体、俺は親切に・・・・」

「いいから」

ルイズは強い調子で才人を見つめた。

「嫌だね」

「わからずやね・・・あのね?絶対に勝てないし、アンタは怪我するわ。いいえ、怪我で済んだら運がいいわよ!」

「そんなのやってみなくちゃわかんねえだろ」

「聞いて?メイジに平民は絶対に勝てないの!」

「ヴェストリの広場ってどこだ?」

才人は歩き出した。

ギーシュの友人の一人が顎をしゃくった。

「こっちだ。平民」

「ああもう!ほんとに!使い魔のくせに勝手なことばかりするんだから!」

ルイズは才人の後を追いかけた。

そんな様子を見ていた拓也は、

(才人さん、怒ってたな。そりゃあそこまで言われりゃ頭に来るだろうけど、相手が魔法使いって事わかってるのかな?)

そう思い、心配になった拓也は席を立ち、才人のあとを追った。




拓也のルーン説明

動物や幻獣の声を含め、あらゆる言語、文字を翻訳する。

動物や幻獣とはあくまで話せるだけで、お願い事は出来ても、ウィンダールヴではないので操ることは出来ない。

因みに、ルーンの形が「火」に近いのは、元々このルーンの能力を炎を操れる能力にしようと思っていた名残です。

ですが、進化してしまえば全く使い道が無いので、何かと便利な翻訳能力にしました。





あとがき

第三話完成しました。

前回短くなった分、今回長くなりました。

キュルケ、フレイムとの顔合わせですが、こんなもんでよろしいでしょうか?

ルイズの話の変え方がやや強引かな~、と思いますが・・・・

朝食時、拓也が切れました。

家族を大事にする気持ちを持った拓也なら、兄貴分の才人がペット扱いされれば切れるでしょう(たぶん)。

とりあえず、拓也の言葉は自分が初期のルイズに言ってやりたかったことです。

原作読み返してみると、一巻で謝っている節を見かけなかったので・・・・

あと、才人とギーシュのやり取りが、殆ど原作と同じになってしまったのが痛いです。

もっとオリジナリティを組み込めればよかったのですが・・・・・

もっと精進です。

そして、次はいよいよ決闘です。

バトルシーン上手く表現できるかな?

次も頑張ります。


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