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No.4371の一覧
[0] ゼロの使い魔と炎の使い魔(ゼロの使い魔xデジモンシリーズ〈フロンティア中心〉)[友](2009/03/15 21:23)
[1] プロローグ[友](2008/10/07 18:36)
[2] 第一話[友](2008/10/07 18:51)
[3] 第二話[友](2008/10/10 19:17)
[4] 第三話[友](2008/10/13 16:12)
[5] 第四話[友](2008/10/20 17:57)
[6] 第五話[友](2008/10/26 04:02)
[7] 第六話[友](2008/11/01 17:51)
[8] 第七話[友](2008/11/08 17:50)
[9] 第八話[友](2008/11/15 12:02)
[10] 第九話[友](2008/11/22 17:35)
[11] 第十話[友](2008/11/29 14:53)
[12] 第十一話[友](2008/12/05 19:52)
[13] 第十二話[友](2008/12/07 21:43)
[14] 第十三話[友](2008/12/14 16:23)
[15] 第十四話[友](2008/12/21 12:18)
[16] 第十五話[友](2008/12/28 16:54)
[17] 第十六話[友](2009/01/01 00:05)
[18] 第十七話[友](2009/01/02 16:26)
[19] 第十八話[友](2009/01/09 00:29)
[20] 第十九話[友](2009/01/11 06:34)
[21] 第二十話[友](2009/01/15 20:24)
[22] 第二十一話[友](2009/01/18 17:32)
[23] 第二十二話[友](2009/02/01 11:52)
[24] 第二十三話[友](2009/02/01 11:54)
[25] 第二十四話[友](2009/02/08 22:23)
[26] 第二十五話[友](2009/02/15 11:45)
[27] 第二十六話[友](2009/02/22 20:46)
[28] 第二十七話[友](2009/03/01 13:24)
[29] 第二十八話[友](2009/03/08 19:44)
[30] 第二十九話[友](2009/03/14 00:18)
[31] 第三十話[友](2009/03/14 21:51)
[32] 第三十一話[友](2009/03/15 21:22)
[33] 第三十二話[友](2009/03/26 19:38)
[34] 第三十三話[友](2009/04/11 22:44)
[35] 第三十四話[友](2009/04/11 22:43)
[36] 第三十五話[友](2009/05/02 13:14)
[37] 第三十六話[友](2009/05/02 13:13)
[38] 第三十七話[友](2009/05/04 18:13)
[39] 第三十八話[友](2009/05/05 10:08)
[40] 第三十九話[友](2009/05/05 16:55)
[41] 第四十話[友](2009/05/31 14:53)
[42] 第四十一話[友](2009/06/21 11:00)
[43] 第四十二話 7/19修正[友](2009/07/19 20:21)
[44] 第四十三話[友](2009/08/01 12:23)
[45] 第四十四話[友](2009/08/12 13:39)
[46] 第四十五話[友](2009/08/31 23:37)
[47] 第四十六話[友](2009/09/12 20:57)
[48] 第四十七話[友](2009/09/13 16:58)
[49] 第四十八話[友](2009/09/19 00:53)
[50] 第四十九話[友](2009/09/27 10:46)
[51] 第五十話[友](2009/10/17 16:40)
[52] 第五十一話[友](2009/12/06 14:33)
[53] 第五十二話[友](2010/08/08 22:23)
[54] 第五十三話[友](2010/08/22 23:45)
[55] 第五十四話[友](2010/09/26 20:09)
[56] 第五十五話[友](2010/09/26 20:08)
[57] 第五十六話[友](2010/11/20 11:51)
[58] 第五十七話[友](2010/12/12 23:08)
[59] 第五十八話[友](2011/01/02 19:02)
[60] 第五十九話[友](2011/01/24 14:57)
[61] 第六十話[友](2011/02/13 19:25)
[62] 第六十一話[友](2011/02/13 19:22)
[63] 第六十二話[友](2012/01/15 20:45)
[64] 第六十三話[友](2012/01/15 20:39)
[65] 第六十四話[友](2015/02/08 17:28)
[66] 第六十五話[友](2015/03/08 21:45)
[67] 第六十六話[友](2015/05/03 15:33)
[68] 第六十七話[友](2015/06/07 21:34)
[69] 第六十八話[友](2015/10/18 17:11)
[70] 第六十九話[友](2016/02/28 20:03)
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[4371] 第四十三話
Name: 友◆ed8417f2 ID:11075f73 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/08/01 12:23
日常を満喫する拓也たち。

その時、ルイズは・・・・・


第四十三話 二重奏の心


今日は朝からルイズの様子がおかしい。

起きる時間になってもルイズが部屋から出てくる気配がない。

拓也とアイナが如何したのかと首を傾げていると、誰かが廊下を駆けてくる。

「サイトォ~~~~~~~~~~~!!ご下命が来たぞ!我が水精霊騎士隊に、陛下のご下命だ!!」

駆けてきた人物、ギーシュはそう叫んでルイズの部屋に飛び込んだ。

拓也とアイナもギーシュに便乗してルイズの部屋を覗いた。

そこにはベッドの横に座り込んで元気のないルイズと、それをなだめているシエスタ。

そして、飛び込んできたギーシュに驚いている才人であった。

「ご下命?」

才人が尋ねる。

「そうだ!ルイズと、我ら水精霊騎士隊に直々のご下命さ!ああよかった!罰こそいただかなかったが、陛下の御不興を買ってしまったかと戦々恐々としてたんだ!」

「お前の何処が戦々恐々としてたんだよ。馬鹿騒ぎをしてたくせに」

「そんな意地悪を言うなよ。顔は笑っていても、心中穏やかじゃなかったんだぜ。とにかく、そんな僕の心配は杞憂だったみたいだな。僕たちに対する、陛下の信頼は揺るがなかったというところだね」

「で、姫様はなんだって?」

「とにかくお城に来てくれとのことだ。ああ、参ったなぁ。また授業に出れないではないか!」

嬉しそうにギーシュは身震いした。

才人はなんだか迷うような仕草をする。

しかし、すぐにデルフリンガーを背負った。

「他の皆は?」

「とりあえず、僕と君とルイズ。それと、強制ではないが、アイナとタクヤにも出来れば来て欲しいそうだ」

「ルイズはいい」

「え?何でだい?」

「行くわ」

すっくと、ルイズは立ち上がった。

「無理すんなよ。調子が悪いんだからよ」

「調子が良かろうが悪かろうが関係ないわ」

「一体、どうしたんだね?」

ギーシュが怪訝な顔で2人を見つめる。

拓也とアイナも、2人の様子がおかしい事に疑問を持っていた。

「いや、こいつな?今、呪文が・・・・あいでっ!」

才人が説明しようとした所で、いきなりルイズに股間を蹴られ、才人は悶絶した。

「・・・・・・・余計な事言わないで。姫様は何かお困りなのよ。私が行かないでどうするのよ」

その時、窓から1羽のフクロウが飛び込んできた。

「あら。トゥルーカス。どうしたの?」

そのフクロウは、ルイズに一通の封筒を手渡した。

「ルイズ様にお手紙です」

「手紙?」

ルイズはその手紙を読み始めた。

一瞬顔が輝いたが、再びその顔が曇っていく。

みるみるうちに蒼白になっていった。

「どうしたんだよ。誰からの手紙だよ?」

返事はなかった。

ルイズはその手紙をポケットにねじりこむと、着替えるためによたよたと歩き出した。

拓也とアイナ、ギーシュは、一旦部屋から出る。

「それで、君たちはどうするのだね?」

ギーシュが2人に尋ねた。

「何故か分からないけど、ルイズの様子がおかしかったから、心配だし。私も行くよ」

アイナが即答した。

「女王様の依頼だと、才人さんがルイズに振り回されるだろうからな。俺も行くよ」

拓也もそう言った。



「おい、お前、ホントに大丈夫なのかよ」

才人はルイズにそう尋ねたが、ルイズは答えない。

きゅっと唇を真一文字に結んで、黙々と馬に跨った。

そんな時、

「才人さん」

拓也達が姿を見せた。

「拓也か」

「俺たちも行きますんで、俺がヴリトラモンで乗せていきますよ」

拓也がそう言った。

確かにヴリトラモンならば、馬で行くより相当早い。

「そうか、助かるよ。ルイズ!拓也が乗せてってくれるってさ!」

才人はルイズに呼びかけるが、ルイズは心ここにあらずといった風情である。

馬に跨ったまま、1人先に行こうとしている。

「おいルイズ。馬で行かなくてもいいだろ。運んでくれるって言うんだから、拓也に乗せてって貰おうぜ」

才人かそう言っても、ルイズは馬に鞭をくれて走り出す。

「なんだあいつ」

才人が首を傾げていると、上空からシルフィードが降りてきて一同の前に着陸した。

「何だよ、お前たち」

見ると、シャルロットとキュルケが乗っている。

「私も行く」

そう言ったのはシャルロットであった。

「この子、窓からあなた達を見かけたら、すぐに飛び出していくんだもの」

キュルケが両手を広げていった。

「な、何でお前が?・・・・・って、拓也がいるなら当然か」

少々驚いたものの、すぐに理由に思い至り落ち着く。

「それじゃあ、乗せてってくれるって事か?」

シャルロットは頷く。

「んじゃ、お言葉に甘えるとしますか」

才人達がシルフィードに乗ると、シルフィードは勢いよく羽ばたいて、空に駆け上った。

眼下を見ると、ルイズは前のめりになって、必死に馬を走らせている。

ほうっておくわけにもいかず、才人はシルフィードに話しかけた。

「シルフィード、あいつも乗せてやってくれよ」

「きゅいきゅい」

嬉しそうにシルフィードは鳴くと、降下してルイズと跨った馬を一緒くたに銜えあげた。

銜えられた馬は驚いて、ヒヒーン!と鳴き叫んだ。

シルフィードは器用に長い舌を動かし、ルイズだけを背中に放り込んだ。

そんな乱暴にされているというのに、ルイズときたら文句を言うわけでもなく、肩を抱いてぶるぶると震えているではないか。

「ん?どうしたの?この子」

キュルケが不思議そうに呟く。

才人も不思議に思ったが、ルイズが自分から話してくれるまで、そっとしておこうと決めた。





王宮に到着した一行を、待ちわびていたのは、随分と悩んだ様子のアンリエッタであった。

「ようこそいらしてくださいました。あなた方にお頼みしたい事があるのです」

「どのようなご用命でございましょうか?」

膝をついたギーシュに、アンリエッタは頼みごとを打ち明けた。

「アルビオンの虚無の担い手を、ここに連れてきていただきたいのです」

「ティファニアを?」

才人が驚いた声で言うと、アンリエッタは深く頷いた。

「・・・・・・やはり、虚無の担い手を1人で住まわせておくには参りませんから。それに彼女はアルビオン王家の忘れ形見だし、つまりはわたくしとウェールズさまの従妹ではありませんか。やはり放っておくわけにはいきませぬ。ルイズ、あなたを襲ったように、いつ何時ガリアの魔の手が伸びるやもしれませぬ。本来なら、ウェールズさまが保護するべきでしょうが、アルビオンはまだ戦争の傷跡が深く残っている状態。ならば、少しでも余裕のあるトリステインで保護する事にしたのです」

「彼女は1人じゃありませんよ。孤児たちも一緒に暮らしてるんです。ティファニアは彼らのお母さん代わりなんだ」

「ならば、その孤児たちも連れてきてください。生活は保障いたしましょう」

「・・・・・・わかりました。それほどにご心配なら、連れてきますよ」

「ありがとう。お願いするわね」

アンリエッタは深いため息と共に、椅子に肘をついた。

その様子に、才人は首をかしげた。

「なにかご心配事でもあるんですか?」

「いずれ話します。今は急いでくださいまし」

「船で行ったら時間かかるよなぁ・・・」

才人が呟く。

すると、

「あ、俺がエンシェントグレイモンで運びますよ」

拓也が言った。

「いいのか?」

「ええ。エンシェントグレイモンなら、シルフィードより速いです。それに、体力もどの程度消費するか調べておきたいので」

「そうか、ならお願いするよ」

アンリエッタはシャルロットに気付き、その手を取った。

「ガリアの姫君でございますわね。いずれ改めて、あなたのご境遇と今後の身の振り方を相談させてくださいまし」

シャルロットは小さく頷く。

「帰りには、ロサイスまで船を用意させましょう。とにかく、早くアルビオンへ向かってくださいまし」

アンリエッタは深く悩んでいる様子で、そう一行に告げた。

才人は、ルイズとアンリエッタを交互に見つめた。

仲良しの2人が口を利かないのは珍しい。

お互い、心ここにあらず、といった風情である。

それほどに心悩ます事態が、2人の心には渦巻いているのだ。




数時間後。

一行は既にウエストウッドの村まで来ていた。

エンシェントグレイモンは、ほんの1時間足らずでアルビオンに到着した。

その際、拓也はかなりの疲労感を感じた。

戦ったわけではないが、やはりエンシェントグレイモンは、体力の消費が普通の進化に比べてかなり多いらしい。

「こ、ここがその、胸が不自然なハーフエルフが住むという村だな」

そわそわした声で、ギーシュが言った。

「そう言い方すんなよ」

「君が言ったんじゃないかね。そのハーフエルフの少女の特徴を教えてくれと言ったら、耳が長い。あと『胸がおかしい』って」

「あなたたち、こそこそなにやら話していると思ったら、そんなよからぬ会話をしてたってわけね」

キュルケがにやにやしながらからかうような調子で言った。

「だ、だってコイツが、どうしても特徴を聞きたいって言うもんだから!」

「僕の所為にしないでくれたまえよ」

「でも、ほんとにその子、胸がおかしいの?あたしとどっちがおかしいの?」

キュルケが自分の胸を持ち上げた。

「し、知るか」

ちょっと照れたように、才人は言った。

一行はガリア行きの時と比べたら、随分と砕けた雰囲気であった。

今回の任務は、ティファニアを連れて帰ってくるだけである。

面倒な事は、精々ティファニアを説得する事ぐらいであろう。

危険な事はない、といった雰囲気が、一行の態度を明るいものに変えた。

しかし、ただ1人、ルイズだけはずっと黙りこくったままである。

キュルケが才人をつついた。

「ねえサイト。ルイズ、一体どうしちゃったの?朝から変よ。黙っちゃって・・・・」

その言葉を聞いた拓也とアイナも2人の会話に聞き耳を立てる。

「いや・・・・・実はな」

才人は、ルイズが精神力が切れて、魔法が全く使えないという事を打ち明けた。

「まあ!精神力が!」

「しっ!声が大きいよ」

才人は前を歩くルイズに聞こえないように、声を潜めた。

「あらら、じゃあゼロのルイズに逆戻りってわけ?でも、爆発すらしないんじゃ、さらに重症ね」

「言うなよ。気にしてるんだから」

「でも、そっちの方がいいんじゃない?」

キュルケが、真顔で言った。

「何でだよ」

「あの子に“伝説”なんて、常々荷が重いって思ってたの。あたしぐらい楽観的のほうが、過ぎたる力にはちょうどいいのよ」

そうかもしれない、と才人は思った。



才人は懐かしい村を見回した。

ウエストウッド村は殆ど変わっていない。

森の中に立てられた、こじんまりとした佇まいの素朴な家々を見つめる。

ティファニアの家は、入り口からすぐのところにあった。

藁葺きの屋根から、煙が立ち上っている。

「お、いるみたいだな」

「いやぁ、こんな簡単な任務でいいのかねぇ。何時もの苦労に比べたら、なんだか拍子抜けしてしまうよ」

ギーシュが鼻歌交じりに言った。

「もう、ほんとにお前ってば緊張感がない男だな」

「君に言われたくないな。というか最近の君はおかしいぞ」

「俺が?」

「そうさ。副隊長になって張り切る気持ちもわかるがね、なんだか妙な使命感に振り回されているように感じるよ。昔の君はもっとこう、適当だったじゃないか」

「そうか?」

「ああ。もっと気楽にいきたまえよ。気楽に!あっはっは!」

ギーシュは大声で笑った。

「そんな油断してるとね、碌な事が無いわよ」

キュルケが言った。

「望むところさ!悪魔でも化け物でも何でも来い!さてと、この家だな」

そう言って、ギーシュがティファニアの家の前に来た時、

「さっきから、何の騒ぎだ?」

ティファニアの家の裏から、サジタリモンが顔を出した。

「ひゃあっ!?」

突然顔を出したサジタリモンにギーシュは驚き、

「ああぁっ!サジタリモン!」

拓也が指をさして叫んだ。

「なっ!テメェは!?」

サジタリモンは拓也を見て身構える。

拓也も身構えた。

「拓也!知ってるのか!?」

才人が尋ねる。

「はい。コイツはデジタルワールドの盗賊です。ハルケギニアでも2回ほど見かけてますけど」

それを聞くと、才人も身構えた。

「この村に何しに来たんだ!?」

才人はサジタリモンに向かって叫んだ。

「はん!そんなこと、教えてやる義理はねえっ!!野郎共!出て来い!!」

サジタリモンが叫ぶと、手下のケンタルモン達が何処からともなく現れる。

拓也と才人はデジヴァイスを構え、他の面々は杖を抜く。

そんな一触即発の雰囲気が高まり、今にも弾けそうな瞬間、

――バンッ!

と、ティファニアの家の扉が勢いよく開き、

「うるさいよ!一体何の騒ぎだい!?」

1人の女性が叫んだ。

それを見た一同は固まる。

「あ、姐御・・・・・」

サジタリモンは申し訳なさそうに呟く。

「フーケ」

シャルロットが呟いた。

その人物は、かつて拓也達と戦った盗賊、土くれのフーケ。

「な、何でテメエがここに!?」

才人が叫ぶ。

「それは私のセリフだよ」

フーケも威圧するように言った。

才人がデルフリンガーを抜き、フーケも杖を構えた。

その瞬間、

「やめてぇっ!!」

ティファニアが2人の間に飛び込んできた。

「何で2人とも戦うの!?サイト!剣をしまって!」

「で、でも・・・・・」

「マチルダ姉さん!この方に手を出してはダメ!」

「マチルダ姉さん?」

才人はフーケを見つめた。

人違いかと思ったが、その鋭い目と、意志の強そうな顔は、紛れもなくかつてそのゴーレムと戦った、土くれのフーケである。

フーケはどうしたものかと、とでもいうように、才人とティファニアを交互に見つめた。

それから、参った、とでもいうように首を振る。

「仕方ないね」

才人も、しぶしぶと剣を鞘に納める。

「ありがとう」

ティファニアは、サジタリモン達にも話しかける。

「サジタリモンたちもやめて」

「御嬢がそう言うなら・・・・・」

サジタリモンも身構えていたからだから力を抜く。

「あんたたちも随分と久しぶりだねぇ。先ずは旧交を温めようじゃないか」

フーケが、疲れた声でそう言った。



ティファニアの家に入り、フーケと一行は暫く睨み合っていたが、まず、痺れを切らしたのかフーケがどかっと椅子に腰掛けた。

「あんた達も、杖をしまって、先ずは座りな。長旅でつかれてるんだろう?」

一行はどうしようかと顔を見合わせたが、キュルケが「そうね」と呟いて腰掛けたので、仕方なくそれに習う。

「ねえティファニア。何でこいつらと知り合いなのか、話してごらん」

ティファニアは、許可を求めるように才人を見つめた。

才人は頷く。

ティファニアはフーケに説明した。

アルビオン軍を食い止め、大怪我した才人を助けた事。

迎えに来たルイズとも知り合いになったこと。

「ああ、じゃああれはあんたたちだったのかい。7万のアルビオン軍を2人と一匹の竜が食い止めたっていうのは」

才人は頷いた。

「ふふ、やるじゃないの。少しは成長したようだね」

フーケは笑った。

「じゃあ次はこっちの番だ。お前とティファニアは、どうして知り合いなんだよ」

フーケの代わりにティファニアが、才人達に説明した。

「いつか話したことがあったよね。私の父・・・・・財務監督官だった大公に仕えていた、この辺りの太守の人がいたって」

「ああ」

「彼女は、その方の娘さんなの。つまり私の命の恩人の娘さん」

「何だって!?」

才人は驚いた。

「それだけじゃないの。マチルダ姉さんは、私たちに生活費を送ってくださっていたの」

才人は何か言おうとしたが、フーケに遮られた。

「おっと。あんた、わたしの前職は言わなくていいよ。ここじゃ秘密で通ってるのさ」

「サイト、マチルダ姉さんが何をしていたのか知ってるの?」

ティファニアが、身を乗り出して尋ねてきた。

「ん?あ、ああ・・・」

「教えて!絶対に話してくれないのよ!」

フーケは、じろりと才人を睨んで言った。

「言ったら殺すよ」

才人は仕方なく、苦し紛れの嘘をついた。

「・・・・・その、宝探しっていうか」

「トレジャーハンター?かっこいい!」

「まあ、そんな仕事をしていてね。こいつらとはその、お宝を取り合った仲なのさ」

ほっとしたように、ティファニアが言った。

「だから仲が悪いのね。ダメよ。仲直りしなきゃ。ほら、乾杯しましょ」

ティファニアは、戸棚からワインとグラスを取り出した。

仇敵同士の、奇妙なパーティが始まった。



パーティと呼んでいいのか微妙な飲み会のあと、才人はティファニアにトリステインに来ないかと打ち明けた。

ティファニアは最初渋っていたが、孤児たちも生活を保障するという言葉と、なによりフーケの同意があったため、それを了承した。

フーケはティファニアが眠った後、サジタリモン達にティファニアの護衛を頼み、1人立ち去った。

その後、拓也は床に付いていたが、話し声が聞こえ、目を覚ました。

「どうして、あんたは私の前で泣かないの?」

ルイズの声である。

「どうしてって・・・・」

才人の戸惑った声が聞こえる。

「どうしてあんたは、私に本音を打ち明けてくれないの?」

才人は考える。

「ねえ、どうして?」

ルイズの問いに、後ろから小さな声が聞こえた。

「使い魔だから」

「タバサ」

ルイズの後ろに、いつしか小さな青髪の少女が立っている。

いやいやをするように、ルイズは首を振った。

自分に言い聞かせるような声で、ルイズは言った。

「そう。その通り。タバサの言う通りなんだわ。だからあんたは、私が傍にいると、帰りたいと心の底から思わない。いや、思えない。こっちの世界に、いなければならない理由まで作り上げて、あんたは私の傍にいようとする。いや、させられている」

「違う、それは違う。それは・・・・」

才人は悩む。

ルイズの言葉を否定しきれなかった。

「そんなこと聞かれても・・・・・」

「さっきの話を聞いて、一つの事実を思い出した」

シャルロットが呟く。

「事実?」

「使い魔は、主人の都合のいいように“記憶”を変えられる。記憶とは、脳内の情報全てのこと。あまり故郷の事を思い出さないのもそう」

そこまで聞いて拓也は身体を起こした。

「じゃあ、才人さんが異様に文字の習得が早かったのも・・・・・」

拓也は呟く。

「拓也!」

才人は驚いた声を上げ、シャルロットは頷いた。

シャルロットは言葉を続けた。

「“使い魔のルーン”は、あなたの心の中に『こっちの世界にいるための偽りの動機』を作ったのかもしれない。あなたは本当の気持ちをごまかされている可能性がある。“こっちの世界で何かしたい”。そう思わされることで、本当の気持ちが見えなくなっているのかもしれない」

才人は驚いて言った。

「そんなの有り得ねえだろ!だったら拓也はどうなるんだ!?俺は昔から拓也のことを知ってる!今の拓也は昔と変わってない!」

「その効果は時間が経つに連れ強くなる。使い魔が徐々に慣れ、最後には主人と一心同体になるのは、そういうこと。あなたの変化が現れだしたのは戦争が終わった後から。タクヤは、その頃に一度契約が解除され、使い魔でなくなっている。再契約したのもつい最近。使い魔のルーンの効果が殆ど現れていないのも、恐らく再契約まで時間が空いたために、以前の契約の効果が薄れたから」

「おいおい、そんな、自分が自分でなくなるなんて、そんなことが・・・・・」

才人がそう言ったら、デルフリンガーの声が響いた。

「まあな、自分のことは、自分が一番分からんもんさ」

次に拓也が口を開いた。

「才人さん、正直に言います。最近の才人さんは、皆が言うように変わりすぎてます」

「俺が・・・・変わりすぎてる?」

「はい、俺もデジタルワールドを旅して、確かに成長したと自覚していますが、俺の根っこの部分は変わってないと思います。仲間たちだって旅の最後も本質は変わってないと感じました。ですが、才人さんはおかしい。才人さん自身の本質から変わってきてる気がするんです」

気付くと、その場の全員が目を覚ましていた。

「確かに、最近の君はおかしかったな。妙に生真面目というか・・・・・」

ギーシュがうーむと悩みながら言った。

「まあね。主人に似たのかも、なんて思ったわ」

キュルケも呟く。

アイナにいたっては、移動中のルイズと同じように顔が蒼白になり、なんともいえない表情をしていた。

「シャ、シャルロット・・・・・・今の話・・・・本当なの・・・・?」

アイナが震えた声で呟いた。

シャルロットは頷く。

アイナは更に顔色を悪くする。

ルイズが目の下を擦りながら言った。

「だって、再会してからのあんた、少しおかしいもの。なんだか妙な使命感に目覚めちゃって・・・・・そんなのあんたじゃないわ」

「でも・・・・・でもな。それはこう、なんか上手くいえないけど、別にそれほど変でもないっていうか・・・・・・うーむ」

「サイト、それ、本当なの?」

「ティファニア」

すっかり眠っていたはずのティファニアも、才人の傍にきて言った。

「わかんねえ。自分がどうなのか、自分じゃよくわからねえ」

皆に見つめられ、正直にそう呟くと、ルイズがティファニアの方を向いた。

「ねえ、ティファニア。あなた、記憶を消せるじゃない。その部分を消す事は出来る?使い魔のルーンが作った才人の心の中の、『こっちの世界にいるための偽りの動機』を消す事が出来る?」

「分からないけど・・・・・・」

「出来るだろうさ。“虚無”に干渉できるのは、“虚無”だけだ」

「おいおい、人の心に勝手な事すんなよ!」

才人は叫んだ。

「ねえサイト」

「何だよ」

ルイズは決心したような顔で才人に告げた。

「あんたの心の中には、2つのメロディが流れてる。認めたくないけど、それはやっぱり本当なのよ。何時までも、そんな二重奏を続けさせるわけにはいかないわ」

困ったような声で、デルフリンガーが言った。

「でもな、娘っ子・・・・・その部分を消したら、お前さんへの気持ちも無くなっちまうかもしれないんだぜ」

「いいわ」

ルイズは、きっぱりと言った。

涙を拭いながら、ルイズは気丈に言い放った。

「め、迷惑だもん。す、好きでもない男の子に言い寄られるなんて酷い迷惑だわ。勝手にナイト気取りでおかしいわよ。ほっといてよ!」

「ルイズ・・・・・お前・・・・・」

「ほら、さっさと魔法をかけられて、元のあんたに戻るがいいわ。元のあんたに戻ったら、帰る方法を探しなさい」

「ルイズ!」

ルイズは駆け出したが、一旦立ち止まり、俯いて言った。

「私、お手伝いがしたいけど。今の私じゃ無理ね。本当のゼロのルイズじゃ・・・・」

ルイズはそれだけ言い残すと、部屋を飛び出して行ってしまった。

駆け寄ろうとした才人の腕を、キュルケとギーシュが掴んだ。

「離せよ!離せ!」

「僕はね、君を友人だと思う。だからこそ、こうした方がいいと思うんだ」

「あたしも同じ気持ちよ」

2人は珍しく真剣な顔で頷きあう。

それを見ていた拓也の手をアイナが掴んだ。

「アイナ?」

「・・・・・・タクヤも・・・・・ティファニアの魔法を受けて・・・・・」

アイナは、涙を流しつつ、震える声で言った。

「タクヤも使い魔のルーンの影響を受けてる・・・・・・だから、効果が現れていない今のうちに・・・・・・」

アイナはそっと拓也を押し出した。

「ナウシド・イサ・エイワーズ・・・・・」

虚無のルーンが響く。

「ハガラズ・ユル・ベオグ・・・・・」

「ティファニア・・・・」

見ると、真剣な顔をしたティファニアが、才人と拓也に向かって虚無のルーンを唱えていた。

「ニード・イス・アルジーズ・ベルカナ・マン・ラグー・・・・・・」

呪文が完成する。

拓也と才人の意識が薄れ、2人はその場に崩れ落ちた。





次回予告


罪の意識を感じ、拓也と才人の前から去るアイナとルイズ。

自分の本当の気持ちと向き合う拓也と才人。

だが、それは突然現れる。

アイナ達の前に最凶最悪の敵が今蘇る。

次回!ゼロの使い魔と炎の使い魔

第四十四話 復活!最凶の敵!!

今、異世界の物語が進化する。





あとがき

四十三話完成。

で、祝20万PV突破!!

ここまで来るとは自分でも予想外。

最初は、1話辺りのPV数は3000ぐらいだったはずですけどね。

読んでくれている皆様には感謝感激雨あられ(古っ!)。

それで今回なんですが、まあ、出来はそこそこ。

前回に比べれば遥かにマシ。

まあ、基本原作通り。

ちょこっと弄くっただけですね。

にしてもマリンエンジェモンの出番がなかったな。

ともかく、次回の敵は何でしょうね。

楽しみにしててください。

では、次も頑張ります。



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