何故か東京に現れたマンモンを倒した拓也。
信也たちから理由を聞くが・・・・・・
第五十二話 進軍!ヴァンデモン軍団!!
あの後、全員で神原家に集まった。
一応、デジモン達のことは隠して。
「で?まず聞くけど、何で信也達がデジモン連れてるんだ?デジタルワールドに行ったのか?」
拓也が尋ねる。
「う、うん・・・・・・デジタルワールドの事を知ってるってことは、兄ちゃんたちも?」
信也が頷き、聞き返す。
「ああ。俺達は1年前にな」
「でも、パートナーはいないんですか?」
拓也の言葉に、愛美が尋ねる。
「ああ。俺達は自分たちがデジモンになって戦っていたからな」
輝二が言った。
「それで、何でデジモンを連れて人間界にいるの?」
友樹が尋ねる。
聞かれた3人は顔を見合わせると、
「僕達は・・・・・・救世主を探してるんだ」
大地が呟く。
「救世主?」
泉が首を傾げる。
「うん。大昔にデジタルワールドを救った九闘士のスピリットを受け継いだ人たちを・・・・・・」
「九闘士?十闘士じゃねえの?」
信也の言葉に、純平が疑問の声を漏らした。
「「「え?」」」
純平の言葉で、3人は同時に声を漏らす。
「君たちの言う救世主がデジタルワールドを救った際に相対した相手は、ルーチェモンなのか?」
輝一が尋ねる。
「う、うん。そうだけど・・・・・・」
「なら、それがどの位前に起こった出来事かわかるか?」
「1500年以上昔って聞いてます。あ、でも、人間界とは時間の流れが違うから、こっちでは1年ぐらいしか経ってないはずです・・・・・・って、1年前!?」
愛美が説明した時、自分の言った言葉で気付く。
「失われた『炎』のスピリットが、言い伝えの中で消えていったのなら、辻褄は合うな」
輝二が確かめるように呟く。
「じゃ、じゃあ、もしかして兄ちゃんたちが・・・・・・」
信也が驚愕に満ちた顔で呟き、
「俺達が、かつてデジタルワールドを救った『十闘士』のスピリットを受け継いだ人間たちだ」
拓也が続けた。
「まあ、俺はデジタルワールドから直接異世界に召喚されちまったから、『炎』のスピリットは持ってるけど、輝二達は持ってないぞ。現状、デジモンに進化して戦えるのは俺だけだ」
拓也がそう言った。
「そうなんだ・・・・・そうだ!なら伝えておかないと!」
「「「「「「?」」」」」」
信也の言葉に拓也達が首を傾げる。
「今、この世界にデジモンが来てるんだ」
「さっきのデジモンか?」
「それもそうだけど、敵の親玉はヴァンデモン。完全体の強敵だよ」
「完全体か・・・・・・だったら俺1人でもどうにかなるか?」
「「「え?」」」
拓也の言葉に3人は驚きの声を漏らす。
「に、兄ちゃん・・・・・・完全体がどうにかなるってホント?」
信也が、信じられないといった雰囲気で尋ねてくる。
「ああ・・・・・敵が何人いるか知らないけど、最低でも親玉が完全体なんだろ?究極体以上の相手じゃなければ、1対1ならそうそう負けねえよ」
「「「きゅ、究極体!?」」」
究極体の名が出たことに驚く信也たち。
「何だ?お前ら究極体のこと知らなかったのか?」
「う・・・うん・・・・・完全体が一番上だと思ってたから・・・・・・」
「そうか。まあ、究極体は、数が少ないし、めったに会うこともないしな。参考として言っておくと、究極体は、完全体の10倍位の力を持ってるからな」
「「「じゅ、10倍・・・・・・・」」」
その言葉に戦慄する信也たち。
「まあ、その話は置いとけ。で、そのヴァンデモンは、何で人間界に?」
「あ、うん。ヴァンデモンの目的は、デジタルワールドと人間界を含めた全世界を支配する事なんだ」
「それで、その目的に一番障害となりそうな、伝説の九闘・・・じゃなっかた十闘士のスピリットを受け継ぐ資格を持ったあなた達を探して、始末するつもりなんです」
信也と大地の言葉に、
「全く・・・・・典型的な悪党だな・・・・」
純平が呆れ顔で呟く。
「そんなこと言ってる場合じゃないわよ。今の話が本当なら、ヴァンデモンの狙いは私達ってことなんですからね。スピリットを持つ拓也なら未だしも、今私たちが襲われたらどうしようもないわよ」
泉がそう言った。
「そうだな・・・・・それを聞くと皆を1人にするのは危険だし・・・・・・はぁ・・・・・・流石に全員を家に泊めるのは無理があるだろうな・・・・・・・・」
拓也はため息をつく。
外はもう日が傾いて、暗くなり始めている。
だがその時、
――コンコン
部屋のドアがノックされる。
「は~い!」
拓也が返事をする。
扉が開いて、由利子が入ってきた。
「ちょっといいかしら。今、ニュースを見てたんだけど、駅の近くで爆弾テロがあったらしいのよ」
「爆弾・・・・・・」
「・・・・・・テロ?」
輝二と友樹が呟く。
(その爆弾テロってマンモンが暴れた奴だよな?)
(たぶん。あそこも駅の近くだったし)
小声で話し合う。
「それで、その影響で今日は電車が止まっちゃうみたいなのよ」
「「「「「「「え?」」」」」」」
由利子の言葉に、神原家以外のメンバーが声を漏らした。
「道路の方も混雑してるみたいだし、迎えに来てもらうのも大変でしょうから、今日は皆さん泊まっていって」
「え?あの・・・・・こちらとしては嬉しいんですけど、よろしいんですか?」
泉が尋ねる。
「遠慮しなくていいわ。部屋も、お隣の平賀さんにも事情を話して、お部屋を貸してもらえる事になったから」
由利子は笑顔でそう言う。
「それでは・・・・・お言葉に甘えさせていただきます」
輝一がそう言った。
今日だけだが、皆が傍にいることに安心する拓也だった。
しかし、暗くなる外では、不穏な霧が充満し始めていた。
――深夜 とあるビルの屋上
そこに、吸血鬼の姿をしたようなデジモン、ヴァンデモンがいた。
「もうすぐだ・・・・・・霧の結界を張り終える・・・・・その時この地は地獄に変わる・・・・・・」
ヴァンデモンの言葉と共に、霧が深く立ち込める。
「あの3人の子供が何をしようとこの私の敵ではない・・・・・・そして、スピリットを受け継ぐ人間共を始末すれば、我が野望を止める物は何も無い・・・・・・・フッフッフ・・・・・ハッハッハ!」
夜の闇に、ヴァンデモンの笑い声が響いた。
――翌朝
外は深い霧が立ち込めている。
拓也が起きて、テレビをつけた所、
「あれ?」
テレビは、荒れた画面しか映さない。
拓也はチャンネルを変えてみるが、何処も一緒だった。
「故障か?」
拓也は呟く。
他の皆も起き出して来る。
因みに宏明は既に仕事に出かけている。
その時、
――ピンポーン
と、家のチャイムが鳴る。
「は~い!」
由利子が玄関に向かう。
拓也は諦めてテレビを消す。
すると、
「きゃあっ!」
由利子の悲鳴が聞こえる。
「母さん!?」
拓也が玄関を見ると、数匹のバケモンがいた。
「バケモン!?」
拓也は咄嗟に壁に立て掛けてあったマントに包んだ覇竜刀と棚に置いてあった地下水を手に取る。
「拓也!信也!きゃあ!」
由利子がバケモンたちに連れ去られる。
「母さん!」
「お母さん!このっ、ブイモン!」
信也はパートナーであるブイモンを呼ぶが、
「待て信也!」
拓也は信也を止める。
「兄ちゃん!?何で!?」
「外を見ろ!」
信也は、拓也の言葉で外を見る。
そこには、大勢の人々がバケモンたちに連行されていた。
「ここで暴れたら大勢の人たちを巻き込んでしまう。ここは耐えろ」
「くっ・・・・・」
信也は悔しそうに歯をかみ締める。
家の中にバケモンが入ってくる。
「アイナ、シャル、杖は持っているな」
拓也は2人に確認を取る。
「うん」
「もちろん」
2人は頷く。
「よし、それなら、ここは大人しく掴まるぞ」
拓也達は特に暴れずに、バケモンたちに連行された。
隣の平賀家にいる輝二達も同じ考えだったのか、大人しく掴まっていた。
町の一角に連行される人々。
全員が不安そうである。
その中で、拓也達は宏明と合流した。
宏明は、駅で掴まったらしい。
そして、次々と人々が連行される中、上空にヴァンデモンが現れる。
その事に驚愕の声を上げる人々。
「人間たちよ!私の名はヴァンデモン!いずれこの世界の王となるものだ!」
ヴァンデモンはそう宣言する。
「こうして貴様達を集めたのは、不穏分子を処分するためだ。その不穏分子を処分することができれば、この場の他の者は見逃そう」
ヴァンデモンは続ける。
「私が探しているのは、スピリットを受け継ぐ人間の子供だ!聞こえているだろうスピリットを受け継いだ人間の子供よ!5人いることは分かっている!この場で貴様たちが名乗り出なければ、皆殺しも止む終えんぞ!」
ヴァンデモンのその言葉に、拓也達は顔を見合わせる。
「奴の狙いは、やっぱり俺達か」
拓也が呟く。
「でも、5人って言ってたぜ」
純平が疑問の声を漏らした。
「昨日言ってたじゃない。炎のスピリットは長い年月の中で、言い伝えの中から消えてしまった可能性があるって」
泉が言う。
「なら、そこが狙い目だね」
友樹が言った。
「俺達が囮になる。拓也はその隙に」
「分かった」
輝一の言葉に、拓也は頷いた。
「どうした!?出てこなければ皆殺しだぞ!」
ヴァンデモンが叫ぶ。
その時、
「待て!!」
輝二が叫んだ。
その声に、ニヤリと口を歪ませるヴァンデモン。
輝二、輝一、純平、友樹、泉が集まっている所にヴァンデモンは降りてくる。
「貴様たちがスピリットを受け継いだ人間どもか?」
ヴァンデモンが確認するように呟く。
「ああ。俺達がこの世界での時間で約1年前にデジタルワールドでスピリットを受け継ぎ、復活したルーチェモンを倒した人間だ」
輝二がそう言う。
「クックック・・・・・・なるほど、ルーチェモンの事を知っているのならば間違いあるまい」
ヴァンデモンがそう言い、マントを一度閉じる。
その行動で、輝二達は身構えた。
「貴様たちが消えれば、私の野望は完全な物となる」
ヴァンデモンは、そう宣言し、
「ナイト・・・・・」
必殺技を放とうとしたその瞬間、
「今だ!!」
拓也が飛び出した。
「スピリット!エボリューション!!」
拓也がデジコードに包まれ進化する。
「アグニモン!!」
アグニモンとなった拓也は覇竜刀を抜き放つ。
「なにっ!?」
ヴァンデモンは驚愕する。
「うぉおおおおおおおおっ!!」
アグニモンは、一気に覇竜刀を突き出す。
そして、次の瞬間には、ヴァンデモンの背中のマントから、覇竜刀が突き出ていた。
次回予告
ヴァンデモンとの戦いを始めるアグニモン。
しかし、ヴァンデモンの卑劣な手により、アグニモンは窮地に立たされる。
だが、拓也は1人ではない。
仲間たちがいる。
仲間達の想いがかつての戦友に届く時、
今ここに、デジタルワールドの伝説が蘇る。
次回!ゼロの使い魔と炎の使い魔
第五十三話 仲間との絆! 十闘士集結!!
今、異世界の物語が進化する。
あとがき
こちらでは久々の更新です。
とりあえず五十二話完成です。
試しに書いてみたけど、まだまだスランプ続行中です。
とりあえずまだ続けるという意味合いも込めてアップしときます。
内容には余り突っ込まないで。
とりあえず、こっちのデジタルワールドは、時間の流れが違います。
矛盾点が気になるかもしれませんが、ご勘弁を。
では、次も頑張ります。