ヴァンデモンを倒しても晴れない霧。
拓也達に、不穏な影が近付く……
第五十五話 デーモン襲来! 復活の超越進化!!
ヴァンデモンを倒しても霧が晴れない事に拓也達が怪訝に思っていると、
「兄ちゃーん!」
信也を先頭に、アイナ、シャルロット、イルククゥ、神原家、大地と愛美。
そして、平賀夫妻が駆け寄ってきた。
平賀夫妻も、一日だけとはいえ家に泊めた輝二達が気になっているのだろう。
とりあえず、拓也達はそのメンバーと合流する。
「兄ちゃん! ヴァンデモンを倒したんだね!?」
信也が、嬉しさを隠しきれない表情でそう問いかけてくる。
「………ああ」
「どうしたの?」
拓也は頷くが、その様子に疑問をもったアイナが尋ねる。
「………霧が晴れないんだ」
拓也は、空を見てそう答える。
「霧?」
「ああ。 この霧は、十中八九ヴァンデモンの仕業………だったら、ヴァンデモンを倒した今、霧が晴れないのはおかしい」
その言葉を聞いて、信也たちもハッとなる。
「そういえば…………」
信也が空を見上げながら呟く。
「まあ、もしかしたらこの霧は設置型で、その元になる力が残ってるだけかもしれないけど、油断は禁物だ」
輝一がそう言う。
「とりあえず、霧の中心に行ってみようぜ。 こういう類の奴は、中心部分に何かがあるのがお約束だし」
純平の言葉で、霧の中心に向かうことにする一同だった。
街を回り、おおよその霧の中心部に辿り着いた一同。
そこは、とあるビルの屋上であった。
そこには魔法陣と思わしき模様が輝いており、それが原因であろうことは誰もが予想できた。
「これがこの霧の原因か……?」
輝二がそう呟く。
「多分な」
拓也もそう呟く。
「じゃあ、早くあれを壊さないと……」
信也がそう言いかけた時、
『フッ……どうやらヴァンデモンは敗れたようだな』
何処からともなく声が聞こえる。
「誰っ!?」
思わず泉が叫んだ。
すると、
「フッフッフ………」
そんな笑い声と共に、魔法陣から赤いローブを纏った何者かが現れる。
身長は3mほどだろうか?
「お前は何者だっ!?」
拓也が叫ぶ。
「……我が名は、デーモン」
「デーモン?」
デーモンの名乗りに、友樹が声を漏らす。
「目的は何だ!?」
輝二の問いかけに、
「全てを闇の世界に………」
そう答えるデーモン。
その言葉は静かだが、スピリットを受け継いだメンバーは冷や汗を流していた。
それは、デーモンと相対した時、まるで、ケルビモンやロイヤルナイツ、ルーチェモンと相対したかのようなプレッシャーを受けたからだ。
「その為に邪魔者の抹殺をヴァンデモンに任せたのだが……フン、1人も殺せないとは役立たずにも程がある」
そんなデーモンの言葉に、
「酷い! ヴァンデモンはあなたの仲間じゃないの!?」
愛美がそう叫ぶ。
だが、
「仲間? ふはははは! あのような輩等仲間などではない。 単なる駒だ」
デーモンはそう笑って答えた。
「何て奴だ!」
大地は怒りを露にする。
「拓也…………」
輝二が拓也に呼びかける。
「ああ……分かってる……コイツは生半可な相手じゃない。 少なくとも、ヴァンデモンなんかじゃ足元にも及ばない」
拓也は、一度信也達の方を向くと、
「信也、お前達は手を出すな。 奴は少なくとも究極体以上の力の持ち主だ。 お前達じゃ敵わない」
「え? あ、う、うん………」
拓也の言葉に、信也は頷く。
拓也の言葉は、信也達を心配する言葉だったが、遠まわしに足手纏いだから手を出すなと言っている。
それは信也も分かってた。
そして、足手纏いと言うのが事実だろうということも………
「貴様の考え方は、ルーチェモンと一緒だ! 放っておくわけには行かない!!」
拓也はデーモンに向かってそう叫ぶ。
「ふむ……ならば如何する?」
デーモンは余裕たっぷりの声でそう問いかける。
「お前を倒す!!」
拓也は言い放った。
「面白い。 貴様らごときがこの私を倒そうと言うのか?」
デーモンは余裕の態度を崩さない。
「やるぞ! 皆!」
拓也の掛け声に、
「「「「「おう!!」」」」」
仲間たちが答える。
拓也と輝二がデジヴァイスを掲げながら前に出た。
そして、拓也の後ろで泉と友樹が。
輝二の後ろで、輝一と純平がデジヴァイスを掲げる。
「風は炎へ!」
「氷は炎へ!」
『風』と『氷』のスピリットが拓也に集い、
「雷は光へ!」
「闇は光へ!」
『雷』と『闇』のスピリットが輝二に集う。
『炎』、『風』、『氷』、『土』、『木』の5種類のスピリットの力で拓也は進化する。
拓也の左手にデジコードが宿る。
そのデジコードを、デジヴァイスでスキャンする。
「ハイパースピリット!エボリューション!!」
拓也がデジコードに包まれる。
「はぁああああああああああああっ!!!」
拓也は叫び声を上げながらスピリットを宿す。
体に『炎』のヒューマンスピリット。
右腕に『風』のヒューマンスピリット。
左腕に『氷』のヒューマンスピリット。
右足に『木』のヒューマンスピリット。
左足に『土』のヒューマンスピリットを宿す。
更に『風』、『氷』、『木』、『土』のビーストスピリットが身体に宿り、最後に『炎』のビーストスピリットを頭部に宿すと共に、拓也は姿を変えた。
それは、焔の鎧を纏いし、紅蓮の竜戦士。
「カイゼルグレイモン!!」
『光』、『雷』、『闇』、『水』、『鋼』の5種類のスピリットの力で輝二は進化する。
輝二の左手にデジコードが宿る。
そのデジコードを、デジヴァイスでスキャンする。
「ハイパースピリット!エボリューション!!」
輝二がデジコードに包まれる。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
輝二は叫び声を上げながらスピリットを宿す。
体に『光』のヒューマンスピリット。
右腕に『雷』のヒューマンスピリット。
左腕に『闇』のヒューマンスピリット。
右足に『水』のヒューマンスピリット。
左足に『鋼』のヒューマンスピリットを宿す。
更に『雷』、『闇』、『水』、『鋼』のビーストスピリットが身体に宿り、最後に『光』のビーストスピリットを頭部に宿すと共に、輝二は姿を変えた。
それは、重火器を装備した、高機動爆撃型サイボーグ。
「マグナガルルモン!!」
2体の超越体が、デーモンの前に立ち塞がる。
「なっ!? す、凄い!」
信也が驚愕の声を漏らす。
信也たちも、カイゼルグレイモンたちの強さを肌で感じたのだろう。
「マグナガルルモン! ここじゃ皆を巻き込む! 先ずは奴を皆から遠ざけるんだ!」
「おう!」
カイゼルグレイモンとマグナガルルモンは同時に飛び出すと、デーモンの両腕を掴み、一気に飛び立つ。
「ぬうっ!?」
デーモンはいきなりの行動に声を漏らす。
「「うおおおおおおっ!!」」
カイゼルグレイモンとマグナガルルモンは、みんなから少し離れたビルの屋上にデーモンを叩きつける。
街の人たちは、ヴァンデモンによって一箇所に集められているので、少々暴れても問題はない。
「貴様らっ!」
デーモンは、全くダメージがない様子で立ち上がる。
デーモンが、すっと手を上げる。
そして、
「フレイムインフェルノ!!」
その手から地獄の業火とも言える様な激しい炎が放たれた。
「ちぃっ!」
カイゼルグレイモンが龍魂剣を回転させて、盾にする。
カイゼルグレイモンは、何とかその炎を受け止めた。
「ぐぅっ!!」
だが、フレイムインフェルノの勢いは凄まじく、炎の一部がカイゼルグレイモンの後ろへと反れる。
その一部の炎だけで、貫かれたビルは破壊される。
「ぐぐっ………!」
カイゼルグレイモンは、何とか全て防ごうと気合を込めるが、
「しまっ………!」
しまった、と言い切る前に、再び炎の一部がカイゼルグレイモンの後方へ反れる。
そして、その方向は皆がいるビルへ向かっていた。
炎が、皆がいるビルの端を掠める。
それによって、屋上の一部が崩落し始める。
「う、うわっ!?」
皆は安全な場所に逃げようとしたが、
「「「うわぁあああっ!」」」
「「きゃぁあああっ!」」
アイナ、シャルロット、イルククゥ、宏明、由利子、信也、ブイモン、平賀夫妻が崩落に巻き込まれる。
だが、
「「レビテーション!」」
アイナとシャルロットがレビテーションを唱えて全員の落下を防ぎ、
「きゅいい~!」
イルククゥが、元の風竜へと姿を変えて落下した全員を拾い、翼を羽ばたかせて空へ舞い上がる。
「ふう………」
その様子を見たカイゼルグレイモンは、安堵の息を吐く。
そして、直ぐに気を取り直し、デーモンへと意識を向ける。
「むんっ!」
カイゼルグレイモンは気合を込めて、フレイムインフェルノを押し返していく。
そこに、
「喰らえ!」
マグナガルルモンが上空からデーモンに向かって武装を乱射する。
「むっ!?」
マグナガルルモンが放った弾丸は、デーモンに直撃。
爆煙に包まれると共に、足場にしていたビルが崩壊する。
それと同時に、フレイムインフェルノも途切れた為に、
「はぁああああっ!」
空中に退避したカイゼルグレイモンが、龍魂剣をデーモンに向ける。
そして、刀身が展開。
「炎龍撃!!」
刀身がエネルギー状になり、鍔に付いている引き金を引くと共に剣先から撃ち出される。
それは、デーモンに直撃。
崩壊を始めたビルに叩き落した。
そのまま、デーモンはビルの崩壊に巻き込まれる。
「やったぁ!」
シルフィードの上で、その様子を見ていた信也は声を上げる。
だが、地上に降り立ち、崩壊したビルで巻き上げられた煙を見上げるカイゼルグレイモンとマグナガルルモンは、全く気を抜いてはいなかった。
今までの戦いを潜り抜けた2人の経験と勘が言っている。
「敵はまだ本当の力を見せてはいない」と。
そして、ビルの崩壊で巻き上げられた煙が晴れていく。
「なっ!?」
「嘘……」
シルフィードに乗っていた面々が声を漏らす。
その視線の先には、全長が20mほどに巨大化し、ローブが失われ、本当の悪魔のような姿があらわになったデーモンがそこに存在していた。
「ウォオオオオオオオッ!!」
デーモンの唸り声と共に、一気に増すデーモンの威圧感。
その威圧感に、
「ぐっ……ローブ一枚外しただけでこの威圧感………やはり只者ではない!」
マグナガルルモンがそう漏らす。
「だが、例えそうだとしても、俺達はここで引くわけには行かない!!」
カイゼルグレイモンがそう叫んで、刀身が無くなった龍魂剣を振ると、龍魂剣に再び刀身が生み出される。
「行くぞ!マグナガルルモン!!」
「応っ!!」
カイゼルグレイモンが龍魂剣を振り上げながら突っ込み、マグナガルルモンがブーストを吹かす。
「「うおおおおおおおおっ!!!」」
そのまま、デーモンに立ち向かっていった。
次回予告
本当の姿を見せたデーモンに、カイゼルグレイモンとマグナガルルモンは立ち向かう。
しかし、デーモンは強い。
苦戦するカイゼルグレイモンとマグナガルルモン。
だが、信也が拓也の言葉で本当の奇跡を知るとき、
奇跡の戦士が光臨する。
次回!ゼロの使い魔と炎の使い魔
第五十五話 奇跡の戦士マグナモン! デーモンを倒せ!!
今、異世界の物語が進化する。
あとがき
五十五話の完成です。
ちと短いですな。
思ったよりも引っ張れなかった。
ともかく、今回は超越進化しました。
あんま目立ってる気がしませんが……
とりあえず、マント形態のデーモンは割と簡単にあしらいました。
しかし、ここからが本番です。
ついでに言うと、次回で地球編は最後の予定。
では、次回をお楽しみに。