真の姿を現したデーモン。
カイゼルグレイモンとマグナガルルモンが立ち向かう。
第五十六話 奇跡の戦士マグナモン! デーモンを倒せ!!
「「うぉおおおおおおおっ!!」」
カイゼルグレイモンとマグナガルルモンが、デーモンに向かって突撃する。
カイゼルグレイモンが地を蹴って跳び上がり、龍魂剣を振りかぶる。
「はぁああああああああっ!!」
そして、デーモンの頭目掛け、振り下ろした。
だが、
――ガキィ
デーモンは、左手で龍魂剣を受け止める。
「フン!」
そして、そのまま力尽くでカイゼルグレイモンを押し返し、吹き飛ばす。
「くっ!」
カイゼルグレイモンは、吹き飛ばされながらも空中で体勢を立て直し、足から地面に着地する。
しかし、
「スラッシュネイル!!」
デーモンは、左手の鋭い爪でカイゼルグレイモンを引き裂かんと左腕を振り下ろした。
「くぅっ!!」
――ガキィィィィ
カイゼルグレイモンは、龍魂剣で何とか防御するものの、デーモンの強烈な一撃は、カイゼルグレイモンを10mほど後退させる。
その時、空中から後ろに回りこんでいたマグナガルルモンが、
「こいつめぇっ!!」
デーモンの無防備な背中に向かって武装を乱射する。
マグナガルルモンの放った無数の弾丸は、デーモンの背中に直撃。
「ぬうっ!」
だが、多少怯んだようだが、たいしてダメージを感じさせないデーモンがマグナガルルモンの方へ顔を向け、
「ケイオスフレア!!」
口から灼熱の炎を吐き出した。
「チィ!」
マグナガルルモンはブーストを吹かし、間一髪その炎を避ける。
「おおおおおっ!!」
その隙を突き、カイゼルグレイモンが斬りかかろうとするが、
「小賢しいっ!」
デーモンの右の拳が裏拳の様に振るわれる。
「ぐあっ!!」
カイゼルグレイモンはその直撃を受け、ビルに叩きつけられる。
そのビルは崩壊し、カイゼルグレイモンは瓦礫に埋もれた。
「兄ちゃん!」
「「拓也っ!」」
シルフィードの背で、信也、宏明、由利子が悲鳴に近い声を上げる。
だが、次の瞬間には、瓦礫の中からカイゼルグレイモンが飛び出し、デーモンに向かって剣を構えた。
「炎龍撃!!」
炎龍撃がデーモンに撃ち込まれる。
その姿にホッとする一同。
しかし、
「このままじゃ拙い」
シャルロットが呟く。
「「「えっ?」」」
信也たちが疑問の声を漏らす。
「相手のダメージに対して、タクヤ達が受けるダメージが大きすぎる」
シャルロットは、冷静にそう分析する。
爆煙が晴れていくと、そこにはあまりダメージを受けていないデーモンが姿を見せる。
シャルロットの言うとおり、ローブを纏っていた時も含めて、デーモンには相当の攻撃が入った筈だが、今のデーモンにはダメージが少ない。
対して、カイゼルグレイモンは、まともな攻撃を一発喰らっただけで、相当なダメージがあることが見て取れる。
はっきり言って不利なのは明らかだ。
「せめて、覇竜刀を渡せれば……」
アイナはそう呟く。
ヴァンデモンの戦いの後、覇竜刀はアイナが持っていたのだ。
その様子を見ていたブイモンが、
「俺が渡してくる!」
そう叫んだ。
「ブイモン!?」
その言葉に、信也が驚いて声を上げる。
「戦いには役に立たなくても、剣を届けるぐらいなら!」
ブイモンはそう言うが、
「でも、成熟期レベルじゃ一撃受けるだけでも、致命的なんだよ!」
アイナがそう叫ぶ。
「大丈夫! 回避に徹すれば何とかなるよ!」
ブイモンがそう言ったとき、
「フレイムインフェルノ!!」
デーモンが掲げた右手から、先程よりも数段勢いのある地獄の業火が放たれる。
「ぐぁあああああっ!!」
「うぁあああああっ!!」
カイゼルグレイモンとマグナガルルモンは、その炎に飲み込まれ、吹き飛ばされた。
傷だらけになり、ビルに叩き付けられる。
「ぐぅぅ………」
「まだ……まだぁ!」
それでも、カイゼルグレイモンとマグナガルルモンは、力を振り絞って立ち上がる。
その様子を見た信也が、
「ブイモン……頼める?」
ブイモンにそう告げた。
「シンヤ!?」
アイナが驚きの声を上げ、シャルロットも驚きの表情を浮かべている。
「アイナさん……お願いです……ブイモンを信じてください!」
信也は、アイナにそう頼む。
「シンヤ……ブイモン……」
そう呟くアイナには、信也とブイモンの姿が、才人とギルモンの姿に重なって見える。
拓也と同じく、幾度も奇跡を起こして来たパートナーの絆の姿に。
「…………」
アイナは、何も言わずに覇竜刀を差し出した。
ブイモンがそれを受け取る。
「………気を付けて」
アイナはブイモンにそう告げた。
「応! 任せとけ!」
ブイモンは元気よくそう言った。
「じゃあ、行くよ! ブイモン!」
信也がブイモンに呼びかけた。
「応!」
ブイモンが応える。
信也はデジヴァイスを掲げ、
「デジメンタルアップ!」
ブイモンを進化させるキーワードを叫んだ。
「ブイモン! アーマー進化!」
ブイモンが光に包まれる。
「燃え上がる勇気! フレイドラモン!!」
そして、炎の竜人型デジモンに進化した。
フレイドラモンは、覇竜刀を持ってシルフィードの背から飛び降りる。
フレイドラモンは地面に着地すると、カイゼルグレイモンの方へ駆け出した。
灼熱の業火を吐くデーモン。
「「くっ!」」
カイゼルグレイモンとマグナガルルモンは飛び退いて避ける。
その時、
「カイゼルグレイモン!」
フレイドラモンが呼びかける。
カイゼルグレイモンがその声に振り向くと、自分の方に向かってくるフレイドラモンの姿を視界に捉える。
「フレイドラモン!? 馬鹿! 来るんじゃない!!」
カイゼルグレイモンがそう叫ぶ。
「塵芥が何をしに来た!?」
デーモンは、そう言うとフレイドラモンに向かってケイオスフレアを放つ。
「ハッ!」
フレイドラモンは、地を蹴って跳び上がり、更にビルの壁を足場にして更に跳び、ケイオスフレアを避ける。
そして、
「カイゼルグレイモン! 受け取れぇ!」
フレイドラモンは、カイゼルグレイモンに覇竜刀を投げ渡した。
回転しながら飛んでくる覇竜刀を、カイゼルグレイモンは上手く受け取る。
「覇竜刀か!」
カイゼルグレイモンがそう言った瞬間、覇竜刀が輝き、カイゼルグレイモンに合った大きさに変化する。
しかし、
「小癪な塵芥め!」
デーモンは、再びフレイドラモンに向かってケイオスフレアを放った。
フレイドラモンは、着地した瞬間で体勢が悪く、回避が一瞬遅れる。
「くっ!」
フレイドラモンは、すぐに飛び退いて何とか直撃は免れるものの、攻撃の余波が襲い掛かる。
「うわぁあああああっ!」
フレイドラモンは吹き飛ばされ、ブイモンに退化し地面を転がった。
「ブイモン!!」
シルフィードの背からその様子を見ていた信也が叫ぶ。
「くっ!」
カイゼルグレイモンとマグナガルルモンが、ブイモンを守るように立ちはだかる。
デーモンが歩いて近付いてくると、
「塵芥よ。 何故貴様らはそうまでして我に歯向かう? 貴様らが勝てる可能性があるとでも本気で思っているのか?」
そう言った。
それを聞くと、
「………確かに、力はお前の方が上だろう。 それは紛れもない事実だ」
マグナガルルモンはそう呟く。
「だが! だからといってそこで諦めるほど、俺達は絶望しちゃいない!! 後ろに護る者がいるのなら、尚更な!!」
カイゼルグレイモンはそう叫ぶ。
すると、ブイモンが力を振り絞って立ち上がろうとしていた。
「それに……俺は信じてるんだ………奇跡は必ず起こるって………絶対に……奇跡は起こるんだ!」
ブイモンがそう叫ぶ。
「うん!」
信也も頷いた。
だが、
「信也……ブイモン……それは少し違うぞ」
カイゼルグレイモンが呟く。
「「え?」」
信也とブイモンは声を漏らす。
「待ってたって……奇跡なんか起きやしない……」
カイゼルグレイモンはそう言うと、龍魂剣を背中に納める。
そして、覇竜刀を両手で持つ。
「奇跡って言うのは!」
カイゼルグレイモンはそう叫ぶと、デーモンに向かって突撃した。
「無駄な足掻きだ! 消えろっ!!」
デーモンはそう叫んで、口からケイオスフレアを放った。
しかし、カイゼルグレイモンは避けようとはせず、そのまま灼熱の炎の中に飛び込んだ。
「兄ちゃん!?」
信也が驚愕の声を上げる。
だが次の瞬間、ケイオスフレアの炎に切れ目が走り、その炎が切り裂かれるように消し飛ばされる。
「何っ!?」
驚愕するデーモン。
その隙を、カイゼルグレイモンは見逃さない。
「奇跡っていうのは! 自分の手で起こす物なんだよっ!!」
その叫びと共に、覇竜刀でデーモンの左の肩口から右腰にかけて一閃する。
「ぐぁあああああっ!!??」
デーモンは苦しみの声を上げ、覇竜刀の傷口から血が吹き出る。
「ぐっ!」
だが、カイゼルグレイモンのダメージも半端ではなく、その場で膝を着く。
「おのれ! 塵芥の分際でぇ!!」
デーモンは、怒りの表情でカイゼルグレイモンを睨み付け、その左腕でカイゼルグレイモンを掴む。
「ぐぅ!」
そして、そのまま力を加えてカイゼルグレイモンを締め上げる。
「ぐぁあああああああああああっ!!」
カイゼルグレイモンは悲鳴を上げた。
「拙い!」
マグナガルルモンは、ブーストを吹かしてカイゼルグレイモンを助けようと動くが、
「貴様は引っ込んでいろ!」
その言葉と共に、ケイオスフレアが放たれ、近づく事が出来ない。
「焦らずともコイツを片付けた後は貴様の番だ!」
デーモンはそう言うと、カイゼルグレイモンを掴む力を更に強める。
「うぁあああああああああああああっ!!」
カイゼルグレイモンの悲鳴が更に響く。
その時、
「……奇跡は……自分の手で起こすもの……」
信也はカイゼルグレイモンの言葉を呟いていた。
「そう……だよね……どんな奇跡も、自分達が起こそうとしないと起こるわけがないんだ!」
信也は何かを悟ったようにそう言った。
すると、
「信也! 俺はまだ戦えるよ!」
ブイモンが立ち上がってそう叫ぶ。
「ブイモン!」
信也が叫ぶ。
「信也! 俺達で起こそう! 奇跡を!!」
ブイモンの言葉に、
「うん! 今度は待ってるだけじゃない! 僕達の力で奇跡を起こすんだ!!」
信也が答えるように叫んだ。
その瞬間だった。
信也が持っていたデジヴァイスから黄金の光が放たれる。
「何!?」
突然の光にアイナが叫ぶ。
「し、信也!?」
宏明も、信也のデジヴァイスから放たれる光に戸惑いの声を上げた。
信也がデジヴァイスを取り出すと、その黄金の光が収束し、黄金の箱のような形をしたものが信也の目の前に浮かんでいた。
「これって……デジメンタル?」
信也がそれに手を伸ばすと、まるで吸い寄せられるかのように、それは信也の手に収まった。
少しの間、信也はそのデジメンタルを見ていたが、顔を上げると、
「ブイモン! 行くよ!」
ブイモンに呼びかけた。
「応!」
ブイモンも応える。
信也はそのデジメンタルを掲げ、
「デジメンタルアップ!!」
アーマー進化のキーワードを叫ぶ。
ブイモンが黄金の光に包まれる。
「ブイモン! アーマー進化!」
光の中で、ブイモンとデジメンタルが1つとなり進化する。
「な、何だこの光は!?」
デーモンは進化の光に目を庇う。
そして、
「奇跡の輝き! マグナモン!!」
黄金の鎧を纏った聖騎士がここに誕生した。
「行け! マグナモン!!」
信也の掛け声に、
「うぉおおおおおおおおっ!!」
マグナモンは一直線にデーモンに突撃した。
デーモンは、進化の光でまだ目が眩んでおり、正確に状況を把握できていない。
マグナモンはその隙を見逃さない。
「マグナムパンチ!」
マグナモンの右の拳がデーモンの顔面に叩き込まれる。
「ぐおっ!?」
デーモンは、一瞬怯む。
「マグナムキック!」
続けて、マグナモンは蹴りをデーモンに叩き込んだ。
「うおおっ!?」
デーモンは一歩後退する。
「プラズマシュート!!」
マグナモンは、鎧の各部から無数のミサイルを発射した。
その全てはデーモンに直撃する。
「がぁああっ!?」
デーモンは、堪えきれずにカイゼルグレイモンから手を離し、その場で転倒する。
落下しかけたカイゼルグレイモンを、マグナガルルモンが受け止めた。
「大丈夫か!?」
「ああ……何とかな……」
カイゼルグレイモンは地上に降りると、自分の足でしっかりと立つ。
すると、デーモンから一旦距離を取ったマグナモンが合流する。
「無事か!?」
マグナモンがそう呼びかける。
「ああ……お前はブイモン……なんだな?」
カイゼルグレイモンは、確認するように問いかける。
「おう! 今はマグナモンだ!」
マグナモンはそう答える。
「そうか……ならば、デーモンが動揺してる今がチャンスだ! 俺達3人で、全力の攻撃をデーモンに叩き込む! 一気に決めるんだ!!」
「「応っ!!」」
カイゼルグレイモンの言葉に反対する理由がないマグナガルルモンとマグナモンは、迷いなく頷いた。
その時、デーモンが起き上がる。
デーモンは、最早冷静ではいられなかった。
「おのれぇ! 虫けら共! チリも残さず焼き尽くしてくれる!!」
デーモンがそう叫びながら右腕を掲げ、
「フレイムインフェルノ!!」
今までの比ではない地獄の業火を放った。
その炎がカイゼルグレイモン達に襲い掛かる。
すると、カイゼルグレイモンは背中の龍魂剣を抜き、
「頼むぞ! 覇竜刀!!」
展開させた龍魂剣に覇竜刀をセット。
そのまま龍魂剣をデーモンに向ける。
炎龍撃のエネルギーが覇竜刀に集中し、覇竜刀が輝く。
「覇竜撃!!」
そして、引き金を引くと共に、覇竜刀が撃ち出された。
本来、炎龍撃とフレイムインフェルノでは、フレイムインフェルノの方が圧倒的に破壊力で勝っている。
しかし、炎龍撃のエネルギーが覇竜刀によって一点に集約され、凄まじい貫通力を得た。
その結果は、
「何ぃ!?」
デーモンが驚愕する。
カイゼルグレイモンの放った覇竜撃は、フレイムインフェルノのど真ん中を貫通した。
しかも、覇竜撃の威力は然程衰えてはいない。
驚愕によって回避が遅れたデーモンは、
――ドシュッ
「がはぁ!?」
腹部に覇竜刀を深々と突き刺される事になった。
「今だ! 叩き込め!!」
カイゼルグレイモンが叫んだ。
「うぉおおおおおおおおおっ!!」
マグナガルルモンがブーストを吹かして、デーモンに接近していく。
「マシンガンデストロイ!!」
ウイングのミサイル。
左腕の大口径砲、ストライクファントム。
右腕の大砲、スナイパーファントム。
身体の各所に装備された全武装を乱射する。
「ぐぉおおおおおっ!?」
放たれる無数の弾丸はデーモンに全弾命中し、デーモンは苦しむ声を上げる。
だが、まだ終わりではなかった。
マグナガルルモンがストライクファントムとスナイパーファントムをパージすると、背中のブーストを使って急接近。
爆発の煙に包まれていたデーモンの顔の目の前に来る。
すると、マグナガルルモンは両肩の砲身にエネルギーを集中させ、
「うぉおおおおおおおおっ!!」
至近距離から強力なビーム砲を放った。
「ぐわぁあああああああっ!!??」
デーモンは、ビームの光に包まれ叫び声を上げる。
マグナガルルモンは、爆発に巻き込まれる前に超スピードで離脱していた。
次に、マグナモンが空中に飛び上がる。
すると、マグナモンの黄金の鎧が輝き、
「エクストリームジハード!!」
そこから黄金の光線が放たれた。
「がぁああああああっ!!」
デーモンは、耐え切ることが出来ずに転倒する。
そして、ダメ押しとばかりにカイゼルグレイモンが龍魂剣を地面に突き刺し、
「九頭龍陣!!」
龍魂剣を地面に突き刺した時の罅が八方向に伸び、そこから8匹の炎の龍が出現する。
「うぉおおおおおおおっ!!」
更にカイゼルグレイモンが気合を込めると、カイゼルグレイモンの足元から周りよりも一回り大きな炎の龍が出現し、カイゼルグレイモンはそれを纏う。
合計9匹の炎の龍は、デーモンを飲み込むように覆いつくし、灼熱の炎に包んだ。
爆炎の中からカイゼルグレイモンが飛び出してくる。
そして、マグナガルルモン、マグナモンと合流し、攻撃地点へと向き直った。
爆煙が晴れていくと、
「ぐぅ……はぁ……はぁ……」
力を使い果たしたのか、ローブを纏っていた時と同じ3m程の大きさとなり、腹部を覇竜刀に貫かれているデーモンの姿がそこにあった。
しかし、デーモンはまだ立っている。
すると、カイゼルグレイモンは、龍魂剣をデーモンに向ける。
「ここまでだな」
カイゼルグレイモンは、そう言い放つ。
だが、
「フッ……フフフ……」
デーモンは不適な笑いを零した。
「何がおかしい!?」
マグナガルルモンがそう問いかける。
「いや、確かに見事だ……貴様達を侮っていた事は認めよう……ダメージも致命的だ」
デーモンはそう言う。
すると、
「悔しいが、ここは退くとしよう」
デーモンはそう言った。
「逃がすと思っているのか!?」
マグナモンが叫ぶ。
「ククク……そうせざるおえんさ」
デーモンは、そう呟くと手を掲げる。
すると、空間が歪み、真っ黒い穴が出来る。
「なっ!? 空間に穴が!?」
カイゼルグレイモンは驚愕する。
「この穴は次元の穴。 ありとあらゆる世界に繋がっている」
デーモンはそう言うと、その穴に入ろうとする。
「ッ! 待て!」
マグナガルルモンがそう叫んで追おうとしたが、
「追ってくるのは構わんぞ! 何処の世界に飛ばされるかは分からんがな?」
デーモンのその言葉で踏みとどまる。
「ククク……追って来れまい。 追ってきて私を倒した所で、この世界には二度と戻れんのだからな……フハハハハハッ!!」
デーモンは、してやったりと言わんばかりの笑い声を上げる。
そして、デーモンはカイゼルグレイモンたちの方を向いたまま、後ろ向きに空間の穴に入っていく。
カイゼルグレイモンは、目を瞑って俯き気味になっている。
「フハハハハハハッ!! ハーッハハハハハハ!!」
デーモンの笑い声が響く。
その瞬間、カイゼルグレイモンが目を見開いた。
そして駆け出す。
「うぉおおおおおおおっ!!」
「何っ!?」
カイゼルグレイモンの行動に驚愕するデーモン。
カイゼルグレイモンは、デーモンの腹部に突き刺さっていた覇竜刀の柄を掴み、更に深く突き刺す。
「ぐはぁ!? き、貴様っ……!」
デーモンは苦しみの声を漏らす。
「お前を逃がせば、不幸になる命が増える! だから、お前は今ここで倒す!!」
カイゼルグレイモンはそう叫ぶ。
「き、貴様、どんな世界に飛ばされるのか分からんのだぞ! そして、私がいなければこの世界に戻ってくる事も叶わんのだぞ!!」
デーモンは、焦りを隠せずにそう叫んだ。
「望むところだ!!」
カイゼルグレイモンは、迷い無くそう言い放った。
カイゼルグレイモンは、覇竜刀を握る手に力を込める。
「ぐぅぅ……こんな所で、貴様などに!!」
デーモンは、そう叫ぶと、口からケイオスフレアを吐いて、カイゼルグレイモンを吹き飛ばそうとする。
「ぐぁあああっ!! はっ、放すものか!!」
カイゼルグレイモンは、吹き飛ばされまいと覇竜刀を更に強く握る。
だが、今までのダメージは深刻で、遂に耐え切れなくなり、覇竜刀から手が離れそうになった。
その時、
――ガシィ!
突然、カイゼルグレイモンが後ろから支えられる。
「えっ?」
カイゼルグレイモンが振り向くと、そこにはブーストを吹かしてカイゼルグレイモンを支えるマグナガルルモンの姿。
「マグナガルルモン!?」
カイゼルグレイモンは、思わず声を上げる。
「1人で格好つけようとするな!」
マグナガルルモンはそう言う。
それを聞いて、カイゼルグレイモンは軽く笑みを浮かべ、
「フッ……お前も馬鹿だな」
そう呟く。
「お前に言われたくはない!」
マグナガルルモンはそう答えた。
カイゼルグレイモンは、再びデーモンを見据え、
「ならば行くぞ!!」
覇竜刀を握る手に再び力を込めた。
「応!」
マグナガルルモンもブーストを全開にする。
押し返されかけた所から、再び拮抗状態に持ち直す。
その姿をシルフィードの背から見ていた信也。
その信也も、決意したように顔を上げる。
「マグナモン!!」
信也はそう叫んでシルフィードの背から飛び降りた。
「「「「「「信也(君)!?」」」」」」
アイナ、シャルロット、宏明、由利子、才助と人美が驚愕して叫ぶ。
「信也!?」
マグナモンが信也を受け止める。
すると、
「マグナモン! 僕達も!!」
信也がそう叫ぶ。
「信也……!」
マグナモンはカイゼルグレイモンたちの方を見る。
そこでは、未だに拮抗状態が続いている。
マグナモンは、もう一度信也を見る。
信也は頷いた。
そして、マグナモンにもう迷いは無かった。
マグナモンは、肩に信也を乗せる。
「行こう! 信也!!」
「うん!!」
マグナモンの声に、信也が応える。
マグナモンは、一直線に駆け出した。
「「うぉおおおおおおおっ!!」」
信也とマグナモンの叫び声が重なる。
そして、カイゼルグレイモンの背を、マグナモンも支えた。
「マグナモン! 信也まで!」
カイゼルグレイモンは、一瞬驚いた。
だが、それ以上何も言わない。
2人の目を見ただけで理解したのだ。
2人の覚悟を。
カイゼルグレイモンは、デーモンへ意識を集中する。
拮抗状態だったのが、マグナモンも加わった事により、優勢に変わる。
覇竜刀が、デーモンの腹に根元まで突き刺さる。
「ぐぁああっ! な、何故だ!? 何故貴様達はそうまでしてっ!!」
デーモンは苦しみながらそう叫ぶ。
「お前には分からないだろう………これが!仲間との“絆”の力だ!!」
カイゼルグレイモンは、覇竜刀を反転させ、刃が上を向くようにする。
「仲間の想いが! 絆が! 心が! 俺達の強さだ!!」
そのまま、覇竜刀を斬り上げる。
「無に帰れ!! デーモン!!」
デーモンは、腹部から頭部にかけて真っ二つになった。
「ぐぁああああああああああああああっ!!!???」
デーモンは断末魔の叫びと共に消え去る。
そして、カイゼルグレイモン達は、そのまま空間の穴に消えようとしていた。
「拓也っ!」
「信也っ!」
宏明と由利子が拓也と信也の名を呼ぶ。
アイナとシャルロットは、拓也達を追おうとしたが、宏明達が乗っていることでそれを踏みとどまっていた。
その時、
「追ってください!」
人美がそう叫んだ。
「私達のことは構わずに!」
才助もそう言う。
「で、ですが……」
宏明はそれでも躊躇する。
「折角会えたんですよ! ここでまた離れ離れになるなんていけません!」
人美はそう叫ぶ。
「ッ…………」
由利子は、一瞬躊躇したが、
「シャルロットちゃん! お願い!!」
すぐにそう叫んだ。
シャルロットはすぐに頷き、
「シルフィード!」
シルフィードに呼びかける。
「きゅい! 待ってたのね!!」
シルフィードは、待ってましたと言わんばかりに翼を羽ばたかせ、今にも消えそうな空間の穴に向かう。
「急ぐからしっかり掴まっているのね!」
シルフィードはそう言うと、翼を折りたたみ、空間の穴に急降下する。
そして、空間の穴が消える寸前、その穴に飛び込んだ。
次回予告
次元の穴を越えた先、辿り着いたのはハルケギニアだった。
だが、ハルケギニアではロマリアの教皇、ヴィットーリオ・セレヴァレによって聖戦が宣言され、ガリアとの戦争状態に突入していた。
才人は? 拓也は? そして、シャルロットは如何するのか!?
次回!ゼロの使い魔と炎の使い魔
第五十七話 虎街道の戦い
今、異世界の物語が進化する。
あとがき
第五十六話完成!
久々に手応えのある出来になりました。
まあ、デーモンフルボッコはやりすぎた気もするが………
ともかく、これにて地球編は完結。
そして、まさかまさかの神原一家+平賀夫妻のハルケギニア行き。
輝二のハルケギニア行きを予想してた人はいるとしても、これは予想してた人はいないでしょう!
いないよね?
デジアド無印でも気になってたんですが、子供達にデジタルワールド行きを認めるのはいいとして、何故自分も着いていくという事を誰も言わないんでしょうか?
デジアドのデジタルワールドはデジヴァイスを持ってないといけませんが、そういう発言が1つぐらいあっても良いんじゃないかと。
故に、この小説ではこんな感じに。
まあ、準レギュラー位の出番になると思いますが。
準レギュラーといえば、パートナーデジモンを持ってる信也君。
ブイモンの進化形態ですが、このままマグナモンを最強進化としてアーマー進化のみで行くか、マグナモンの出番は今回だけで、ブイドラモンの進化形態でいくか、ワームモンのパートナーを持つキャラが出てきてインペリアルドラモンへと進化させていくか(多分、この場合は、キャラはリース辺りになるかと)どれがいいですかね。
ご意見ください。
ではこの辺で、次も頑張ります。