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No.4371の一覧
[0] ゼロの使い魔と炎の使い魔(ゼロの使い魔xデジモンシリーズ〈フロンティア中心〉)[友](2009/03/15 21:23)
[1] プロローグ[友](2008/10/07 18:36)
[2] 第一話[友](2008/10/07 18:51)
[3] 第二話[友](2008/10/10 19:17)
[4] 第三話[友](2008/10/13 16:12)
[5] 第四話[友](2008/10/20 17:57)
[6] 第五話[友](2008/10/26 04:02)
[7] 第六話[友](2008/11/01 17:51)
[8] 第七話[友](2008/11/08 17:50)
[9] 第八話[友](2008/11/15 12:02)
[10] 第九話[友](2008/11/22 17:35)
[11] 第十話[友](2008/11/29 14:53)
[12] 第十一話[友](2008/12/05 19:52)
[13] 第十二話[友](2008/12/07 21:43)
[14] 第十三話[友](2008/12/14 16:23)
[15] 第十四話[友](2008/12/21 12:18)
[16] 第十五話[友](2008/12/28 16:54)
[17] 第十六話[友](2009/01/01 00:05)
[18] 第十七話[友](2009/01/02 16:26)
[19] 第十八話[友](2009/01/09 00:29)
[20] 第十九話[友](2009/01/11 06:34)
[21] 第二十話[友](2009/01/15 20:24)
[22] 第二十一話[友](2009/01/18 17:32)
[23] 第二十二話[友](2009/02/01 11:52)
[24] 第二十三話[友](2009/02/01 11:54)
[25] 第二十四話[友](2009/02/08 22:23)
[26] 第二十五話[友](2009/02/15 11:45)
[27] 第二十六話[友](2009/02/22 20:46)
[28] 第二十七話[友](2009/03/01 13:24)
[29] 第二十八話[友](2009/03/08 19:44)
[30] 第二十九話[友](2009/03/14 00:18)
[31] 第三十話[友](2009/03/14 21:51)
[32] 第三十一話[友](2009/03/15 21:22)
[33] 第三十二話[友](2009/03/26 19:38)
[34] 第三十三話[友](2009/04/11 22:44)
[35] 第三十四話[友](2009/04/11 22:43)
[36] 第三十五話[友](2009/05/02 13:14)
[37] 第三十六話[友](2009/05/02 13:13)
[38] 第三十七話[友](2009/05/04 18:13)
[39] 第三十八話[友](2009/05/05 10:08)
[40] 第三十九話[友](2009/05/05 16:55)
[41] 第四十話[友](2009/05/31 14:53)
[42] 第四十一話[友](2009/06/21 11:00)
[43] 第四十二話 7/19修正[友](2009/07/19 20:21)
[44] 第四十三話[友](2009/08/01 12:23)
[45] 第四十四話[友](2009/08/12 13:39)
[46] 第四十五話[友](2009/08/31 23:37)
[47] 第四十六話[友](2009/09/12 20:57)
[48] 第四十七話[友](2009/09/13 16:58)
[49] 第四十八話[友](2009/09/19 00:53)
[50] 第四十九話[友](2009/09/27 10:46)
[51] 第五十話[友](2009/10/17 16:40)
[52] 第五十一話[友](2009/12/06 14:33)
[53] 第五十二話[友](2010/08/08 22:23)
[54] 第五十三話[友](2010/08/22 23:45)
[55] 第五十四話[友](2010/09/26 20:09)
[56] 第五十五話[友](2010/09/26 20:08)
[57] 第五十六話[友](2010/11/20 11:51)
[58] 第五十七話[友](2010/12/12 23:08)
[59] 第五十八話[友](2011/01/02 19:02)
[60] 第五十九話[友](2011/01/24 14:57)
[61] 第六十話[友](2011/02/13 19:25)
[62] 第六十一話[友](2011/02/13 19:22)
[63] 第六十二話[友](2012/01/15 20:45)
[64] 第六十三話[友](2012/01/15 20:39)
[65] 第六十四話[友](2015/02/08 17:28)
[66] 第六十五話[友](2015/03/08 21:45)
[67] 第六十六話[友](2015/05/03 15:33)
[68] 第六十七話[友](2015/06/07 21:34)
[69] 第六十八話[友](2015/10/18 17:11)
[70] 第六十九話[友](2016/02/28 20:03)
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[4371] 第五十九話
Name: 友◆ed8417f2 ID:315f8cfe 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/01/24 14:57
ブラックウォーグレイモンと再び合間見えた拓也。

一方、才人は最後の対戦者から、手紙を受け取っていた。



第五十九話 シャルロットの覚悟



ブラックウォーグレイモンとの対決を終えた後、拓也達はロマリア陣営に戻ってきた。

すると、拓也は才人に話しかけられる。

「拓也………」

才人は小声で話しかける。

「才人さん?」

拓也が其方を向くと、

「最後の相手からタバサに渡すように言われた手紙だ。 俺から渡すより、拓也からの方が良いと思う」

その言葉と共に、目立たないように手紙が差し出される。

拓也は、すぐに理解して、周りの注意が向かない内にその手紙を受け取って懐にしまった。

「わかりました」

拓也はそう言って才人と別れた。




一方、シャルロットは、リネン川へと広がる草原からカルカソンヌの街へ上る為の階段を上っていた。

その階段は高低差が100メイルもあるため、歩いて上ろうと思えば一苦労だ。

フライやシルフィードを使えばひとっ飛びなのだが、シャルロットは歩きたい気分だったので、こうして階段を上っている。

因みに服装は、ルイズが着替えとして持ってきていた魔法学院の制服を借りたものである。

すると、階段の折り返し地点に1人の人物が立っていた。

ロマリアの神官にして、ヴィンダールヴのジュリオであった。

「やあ、タバサ」

ジュリオは、女性なら誰もが見惚れてしまう様な笑顔でシャルロットに挨拶をする。

「………………」

だが、シャルロットは、完全に無視してジュリオの傍を通り過ぎる。

既に恋する乙女となって、一年近く。

拓也への想いは、冷めるどころか益々燃え上がっている。

真っ直ぐで熱い心を持つ拓也と比べれば、目の前のジュリオは腹黒く、歪んだ心を持っている。

いくら顔が良かろうとも、シャルロットには嫌悪感しか湧かなかった。

「失礼。 呼び方を間違えたようですね。 シャルロット姫殿下」

ジュリオは、そう言い直す。

だが、シャルロットは立ち止まらない。

シャルロットは、母が心を取り戻して以来、自分の素性を隠そうとはしていない。

故に、ロマリアの人間であるジュリオが知っていたとしても、なんら不思議は無いからだ。

しかし、立ち止まらないシャルロットの後を、しつこくジュリオは追ってくる。

仕方なくシャルロットは立ち止まると、ため息を吐いた。

「………それで。 次はどんな陰謀を企てているの?」

振り向きもせずに、シャルロットはジュリオに問いかける。

「はて、陰謀とは?」

ジュリオは惚けるように言った。

「南部諸侯の寝返り。 何ヶ月も前から準備を進めねば、ここまでの素早い侵攻は無理」

シャルロットは、タバサとなっていた時と同じ、感情の篭っていない表情と言葉でそう言う。

「その通りです。 ご慧眼であらせられますね。 では、私が次にお願いする内容も、お見抜きになっているのでは?」

ジュリオは、隠そうともせずに肯定し、更に問いかけた。

「全てが貴方達の手のひらの上と思ったら大間違い」

「ですが、予想の範囲内なんですよ。 このカルカソンヌで足止めを食らう事も、そして、どのようにしてこの川向こうの敵を突破し、リュティスに到る道が出来るのかも………」

ジュリオは自信に満ちた態度でそう言った。

「………私は、もう“人形タバサ”になるつもりはない」

シャルロットは静かに、だが、確固たる意思を持ってそう呟き、歩き出した。

「困ったな。 どうして我々に、復讐のお手伝いをさせてくれないのです?」

その言葉に、シャルロットは決意に満ちた瞳を輝かせ、

「私の復讐は、ロマリア貴方達には絶対に手伝えないから」

そう口にするのだった。




立ち去るシャルロットの背中を、ジュリオは楽しげに見送っている。

ロマリアにとって、聖戦を完遂させる為には、ジョゼフの打倒は必須である。

そのためには、ガリア軍の注目を集める“神輿”が必要であった。

そこでロマリアは、シャルル・オルレアンの遺児であるシャルロットに目をつけた。

シャルロットが、正当な王権を主張し、ロマリア軍の先頭に立てば、これ以上ないほどの“神輿”になる。

そうすれば、未だにどちらにも付いていない諸侯も味方に出来る上、敵軍の寝返りも期待できるからだ。

だが、肝心のシャルロットは、ロマリアに協力する気は無いと言う。

「さて……どうしてハルケギニアのお姫様方ときたら、こうも頑固なんだろうね。 でも、何があっても我らの賛美歌に合わせて踊っていただきますよ。 シャルロット姫殿下」

そう呟き、ジュリオは策を巡らすのだった。





日が沈んだ頃。

シャルロットは、カルカソンヌの寺院正門前でこれからの事を考えていた。

ロマリアは、シャルロットの復讐を成し遂げる上での最大の障害であり、それを除いたとしても、信用がならない国だ。

だが、自分が王位に就く上で、この状況を鑑見れば、ロマリアが考えているであろう、自分が名乗り出るということが一番なのかもしれない。

しかし、ロマリアがどういう行動に出てくるのかが、全く予想できない。

そう考えを巡らしていた時、

「シャル、ここにいたのか」

拓也が、偶々寺院正門前にいたシャルロットを見つけ、声をかけた。

「タクヤ……?」

シャルロットは、自分に何か用だろうかと首を傾げる。

まあ、シャルロットにとっては、拓也と一緒にいられるという事は、それだけで嬉しい事なのだが………

拓也はシャルロットに顔を近づけ、

「渡したいものがある」

小声で呟いた。

シャルロットは顔を真顔にする。

シャルロットは、拓也の性格を良く分かっているので、こんな所で色恋の話をしたりするわけはないということを分かっていた。

更に、拓也の纏っている雰囲気から、真剣な内容だという事を予想する。

拓也は一度周りを見渡すと、こちらの様子を横目で窺っているロマリアの門番に気付いた。

「ここじゃ拙いな………よし!」

拓也は呟くと、デジヴァイスを取り出し、

「スピリット! エボリューション!! うああああああああああああっ!!」

ビーストスピリットでヴリトラモンに進化する。

「ヴリトラモン!」

拓也はヴリトラモンに進化すると身を屈め、シャルロットに背中に乗るように促す。

シャルロットは、コクリと頷くとヴリトラモンの背中に飛び乗った。

見張っていたロマリアの兵士が、慌てて駆け寄ってくる。

「どちらに行かれるのですか!? もう夜ですよ!」

「夜空の散歩だ。 悪いか?」

兵士の言葉に、ヴリトラモンはそう返す。

「い、いえ、ですが………」

兵士が言いよどむと、

「デートみたいなもの」

シャルロットがそう言った。

兵士は、困った顔で首を振ると、

「すぐに帰ってきてください! 私が怒られますから!」

そんな兵士を尻目に、ヴリトラモンは翼を羽ばたかせて飛び立つ。

地上からある程度高度を取ると、ヴリトラモンは手に持った手紙を、背中に乗ったシャルロットに差し出す。

「昼間に、俺達がガリア軍と一騎射ちをしてた事は知ってるか?」

「知ってる」

シャルロットは、その手紙を受け取りつつ頷く。

「それで、俺達の最後の相手……正確には才人さんの相手なんだけど、その手紙をシャルに渡すように頼んだらしい。 シャルの味方じゃないのか?」

シャルロットは、封筒を破り、中から1枚の便箋を取り出す。

杖に明かりを灯し、それを読み始めた。

「カステルモール」

シャルロットが呟く。

「知ってる奴か?」

「うん」

ヴリトラモンの問いに、シャルロットは頷く。

「どんな内容なんだ?」

ヴリトラモンが尋ねると、シャルロットは掻い摘んで説明した。

手紙の送り主、バッソ・カステルモールは、亡き父の信奉者でスクウェアのメイジ。

最近のガリアの陰謀に憤りを感じ、決起した事。

ヴェルサルテイルのジョゼフを襲ったが失敗した事。

その際に、東薔薇騎士団は壊滅した事。

運よく生き残れたカステルモールは、生き残りの兵士数名と共に、傭兵の振りをしてガリア軍に潜り込んでいる事。

そして、“正当な王として即位を宣言されたし”と自分に言っている事。

そうすれば、ガリア王軍の中からも離反者が続出する。

その彼らを纏め上げ、自分の元に参戦すると。

「そうか………それで、シャルはどうするつもりなんだ?」

ヴリトラモンはそう呟いてシャルロットに尋ねる。

シャルロットの内心では、既に答えは出ていた。

先ほどまでは、どうするべきか迷っていたが、この手紙を読み、カステルモールに後押しされ、更には傍に自分の『勇者』がいる。

既に先ほどの迷いはなかった。

この戦争を犠牲を少なく終わらせる為にも、自分の復讐を成し遂げる為にも、王として名乗ることは必要。

そして、その後にロマリアがどんな陰謀を用意していようとも関係ない。

自分の、自分達の『勇者』は、そんな陰謀など容易く叩き潰してくくれる。

ヴリトラモンが、拓也が傍にいることでそれを実感できた。

「私は………」

シャルロットが自分の決意を口にしようとした時、

――バサッ   バサッ

ヴリトラモンの驚異的な聴力がそんな羽音を捉えた。

「ッ!? (声を潜めろシャルロット!)」

ヴリトラモンは、声を殺してそう注意する。

シャルロットは、すぐさま黙り込んだ。

「(どうしたの?)」

シャルロットの問いかけに、ヴリトラモンは険しい顔をして耳を澄ます。

――バサッ   バサッ

確かに聞こえる僅かな羽音。

ヴリトラモンの上空約100メイルを、1羽の黒いフクロウが飛んでいた。

それに気付いたヴリトラモンは、動きが不自然にならないように旋回する。

思ったとおり、そのフクロウもヴリトラモンをマークするように旋回した。

「(クソッ! 空の上なら大丈夫だと思ってたけど、迂闊だった!)」

ヴリトラモンは、声を殺しながらもそう吐き捨てる。

「(どうしたの?)」

シャルロットが再び問いかける。

「(人間の感覚では分からないが、フクロウが俺達をマークしてる。 十中八九、ロマリアの使い魔か何かだろう。 恐らく……いや、ほぼ確実にさっきまでのやり取りは聞かれた)」

ヴリトラモンは、ほぼ確信を持ってそう言った。

「(ッ!)」

シャルロットも顔を顰める。

「(ここからは誤魔化すぞ)」

「(わかった)」

ヴリトラモンの言葉にシャルロットは頷く。

「もう一回聞くけど、シャルはどうするつもりなんだ?」

「………まだわからない」

シャルロットは、自分の決心を隠してそう呟く。

「……そうか……でも、どんな選択だろうと、俺はシャルを守ってやるからな」

「うん……ありがとうタクヤ」

2人は不自然にならない程度にそう言葉を交わす。

そのとき、

「きゅい~~~!!」

そんな鳴き声を上げつつ、地上からシルフィードが飛んできた。

その背にアイナを乗せて。

「きゅい! お姉さま! デートするならシルフィ達も呼んで欲しいのね!」

「ほんとだよ! 抜け駆けはズルイよ、シャルロット!」

ご立腹のお2人。

「ごめん」

シャルロットは頭を下げる。

2人は、予想外の乱入だが、監視されているこの場を誤魔化すには丁度いいかと思いつつ、1人と1匹の文句を大人しく聞くのだった。





翌日。

才人がルイズとなにやらやらかした様で、水精霊騎士隊のメンバーからからかわれていて、拓也がそれを呆れながら見ていると、

「やあサイト」

その声に才人が振り返ると、ジュリオが立っていた。

その瞬間、才人に怒りの感情が湧き上がる。

才人はジュリオに殺されかけたことを思い出したのだ。

才人は、殴りたい衝動に駆られるものの、何とか押さえ込み、睨むだけに止める。

拓也も、その事は才人から聞いていたため、隙を見せないように身構える。

「何か僕達に用でもあるのかい? 神官さん」

ギーシュが代表して問いかけた。

ジュリオは、ひらひらと手を振ると、首を振った。

「用って程のものは無いよ。 お勤めご苦労様です。 同盟軍の諸君。 先だっての中洲での活躍は聞いているよ。 敵の指揮を挫いていただいたとか。 従って、教皇聖下から、君達にこれを是非、と頼まれてね」

ジュリオは鞄から袋を取り出すと、それをテーブルの上にぶちまけた。

その中身は、大量の金貨であった。

「受け取ってくれたまえ。 神からの祝福さ」

水精霊騎士隊のメンバーは、その金貨に目を見開いたが、すぐに厳しい顔つきに戻る。

「坊さんのお布施なんかいらないよ。 自分の食い扶持ぐらい、自分で稼ぐさ」

「そう言わずに取っておきなよ。 金はあっても困らないだろう」

それからジュリオは才人に向き直る。

「………さてと、後は君に話があるんだ」

「なんだよ」

「ここじゃなんだから………ちょっと外までお願いできるかい?」

鋭い目で才人は立ち上がる。

ギーシュ達が間に割って入ろうとした。

「悪いね。 君達の副隊長をちょっとお借りしたいんだが………」

「ぼくらは騎士隊だぜ?」

そう言ったギーシュを、才人は押し止めた。

「大丈夫だよ」

「ま、そうは言っても、そこの君はついて来るだろうけどね」

ジュリオが、拓也に目をやりながらそう言った。




外に出ると、ジュリオはいきなり頭を下げた。

「なんと言ったらいいかわからないが………とにかくこの前はすまなかった」

才人はその姿に気勢をそがれるものの、油断無くジュリオを見る。

「………殺そうとしたくせに、謝ったぐらいで許せるかよ」

「君が大事な人たちを守る為なら何でもするように、僕達も聖地を回復する為なら、なんでもする。 それと同じ事だよ」

「聖地ってただの土地だろ? 一緒にするな」

「ただの土地じゃない。 ハルケギニアの民の将来がかかった土地だ」

ジュリオは真面目な声で言う。

「民? 神様の為なんだろ?」

「君は信仰を誤解している。 信徒にとって、“神様の為に”という言葉は、結局“自分の為に”という事と同義なんだぜ」

ジュリオの妙な迫力に、才人は押される。

「まあ、お前らが本気なのは分かった。 でも、何度も言ったように“聖戦”の手伝いなんてゴメンだぜ。 俺には俺の神様がいるんだ」

そう本音を漏らす才人。

「今度、俺とルイズに変なこと企みやがったら…………」

才人は精一杯凄んでジュリオを睨んだ。

「かまわないよ。 精々この胸を君の剣で抉ってくれ。 まあ、僕も抵抗はするけどね」

「心配すんな。 抵抗できないようにデュークモンで跡形も無く消してやる」

「それは怖いね」

「それだけじゃない!」

今まで静観していた拓也が口を開く。

「俺達の仲間や家族に手を出したら、ロマリアがハルケギニアの地図の上から消えると思え! 物理的にな!!」

拓也はジュリオを睨み付けながら言った。

「肝に銘じておくよ」

すると、ジュリオは気を取り直し、

「とにかく、君がこの世界にいる限り、僕達はもう手出ししないよ。 今となっては、君達は僕達ロマリアの大事なカードだからね」

「言っとくけど、俺達が協力するのはガリア王を倒すまでだぜ。 それから先は、知ったこっちゃないからな」

才人の言葉に、ジュリオは笑みを浮かべた。

「結構だ」

「あっさり引き下がるんだな」

「なに、少なくとも、君達とは話が出来るからね。 説得には自信があるんだよ」

才人はそんなジュリオの姿に、食えない奴だと再度認識する。

「さて、じゃあ仲直りをしようじゃないか」

ジュリオがそう言って、手を差し出した。

才人は暫くその手を見つめていたが、ぷいっと横を向く。

「流石に握手は無理だわ」

横で見ていた拓也が、当然だなと思った瞬間、

――シュンッ

「痛ッ!?」

拓也の頬を何かが過ぎり、痛みを感じた拓也は声を漏らす。

鋭い勢いで飛んできたのは、1羽のフクロウだった。

ジュリオの肩に止まると、ホーホーと鳴いてみせる。

「おや、ネロじゃないか。 お帰り」

ジュリオの言葉に、拓也は睨み付け、才人が口を開く。

「何だよそいつ……」

「僕のフクロウだよ。 おや、いけない! 血が出てるぜ」

そのフクロウの爪が当たったのか、拓也の頬からは血が出ていた。

ジュリオはポケットからハンカチを取り出すと、拓也の頬に当てる。

拓也の血が、そのハンカチに染み込む。

「大丈夫だ。 この位の傷、何でもない」

拓也は、ジュリオに嫌そうな顔を向けてそう言う。

「そうかい?」

そう呟いて、ジュリオはハンカチを引っ込める。

「いつまでガリアと睨み合いを続けるつもりなんだ?」

そう才人が尋ねると、

「さあね。 でも、まあ、そのうち風が吹くと思うよ」

思わせぶりな態度でジュリオは去っていった。

しかし、ジュリオは1つの失敗を犯した事に気付いてはいなかった。

それは、拓也の前でフクロウに言葉を発せさせてしまった事。

普通なら、動物を意を解せる者など、ヴィンダールヴである自分だけだと油断していた。

あの時のフクロウの鳴き声も、普通の人間にはただの鳴き声としか聞こえない。

だが、拓也は、アイナと契約した時のルーンの恩恵として、あらゆる動物、幻獣、文字の解読が可能なのだ。

しかも、拓也のルーン能力は、拓也に本当に近い者達だけしか知らない。

故にロマリアも、拓也のルーン能力は把握していなかった。

虚無であるルイズやガンダールヴである才人が傍にいて、拓也もデジモンへの進化という自身の能力が前面に出ていた所為もあるだろうが。

よって、拓也には、フクロウの言葉は筒抜けであった。

そう、拓也を傷つけたことは、故意であったという事が………







その日の夜。

シャルロットは自分の部屋で横になっているものの、まだ眠ってはいなかった。

その横で変身しているシルフィードもとい、イルククゥは、すやすやと寝息を立てていた。

シャルロットは、天井を見続ける。

まるで、何かを待っているかのように。

すると、

――コンコン

と、ドアがノックされた。

「………誰?」

シャルロットはそう問いかける。

「………俺だ、シャル」

答えたのは拓也の声だった。

シャルロットは、メガネをかけて扉へと駆けた。

「………どうしたの?」

「………話があるんだ」

その言葉に、シャルロットは扉を開ける。

そこに、シュヴァリエのマントで顔を隠すようにしている拓也が立っていた。

拓也は、そのまま部屋に入ってくる。

「………話って?」

シャルロットがそう聞くと、拓也が真顔になった。

「昨日の夜の話………俺、真面目に考えたんだ」

「………え?」

「ほら、シャルが王様になるってやつ」

「それが?」

「やっぱり、正当な王位継承者として、シャルは即位を宣言すべきだ」

力強い調子で拓也は言う。

「ロマリアに説得されたの?」

「まさか! 俺があんなクソ坊主達の説得なんかに応じるかよ。 全部自分で考えたんだ。 どうすれば、この戦が早く終わるのかなって。 やっぱり………これが一番だと思う」

「一体、何があったの?」

「そろそろガリア軍の総攻撃が始まるらしい。 そうなったら、ほんとに地獄のような戦いになっちまう。 沢山の命が、その戦いで失われてしまう……」

拓也は、悲しそうな表情でそう言った。

シャルロットは、それを聞くと俯き、

「でも、私は怖い……王位を宣言したら、私は敵の標的になる……」

シャルロットは、弱々しくそう言った。

「安心しろ。 シャルは俺が守る。 何があっても絶対にだ!」

拓也は、シャルロットの手を握り、力強く宣言する。

「…………どうして?」

シャルロットは問いかける。

「………好きなんだ」

拓也がそう呟く。

「………嘘」

シャルロットは、顔を背けながら呟いた。

「嘘じゃない。 気付いたら、ずっとシャルの事ばかり考えてた」

「アイナも………シルフィードもいる………」

「今は………シャルが一番好きなんだ」

その言葉に、シャルロットは顔を俯かせた。

拓也の手が伸び、俯いたシャルロットの顎を持ち上げる。

そして拓也は、シャルロットに唇を近づけていった。

シャルロットは目を瞑る。

そのまま、唇同士が触れ合うかと思われたその時、










「不愉快」










シャルロットの唇から漏れたそんな言葉と共に、シャルロットの姿が霞のように掻き消えた。

「え?」

拓也が驚きに声を漏らした瞬間、窓の方から無数の氷の矢が飛来して、拓也の胸を貫き、更にそのまま拓也を吹き飛ばすと、部屋の入り口のすぐ横の壁に磔にした。

窓のカーテンの陰から、怒りに満ちた表情のシャルロットが姿を現す。

先ほどのシャルロットは、本物のシャルロットが魔法で作り出した“偏在”であった。

スクウェアとなったシャルロットなら、“偏在”が使えるのだ。

すると、寝ていたと思われていたイルククゥが、ムクリと身体を起こした。

「きゅい~! ムカつくのね! タクヤさまの偽者を用意してお姉さまを騙そうとするなんてサイテーなのね!」

どうやら狸寝入りだったようで、今までのやり取りを全て聞いていたイルククゥが不機嫌な声で叫ぶ。

その時、磔にされた拓也が光に包まれ、光が収まると、氷の矢に磔にされた小さな魔法人形しかそこには無かった。

「スキルニル……」

シャルロットが、やはり、といった雰囲気でそう呟く。

シャルロットは、拓也から、故意的に怪我を負わされたことを聞き、怪訝に思った。

しかも、ハンカチに血が付いたことで、拓也の血を使って何かを仕掛けるという事は予想していた。

シャルロットが一番に思ったことは、血の持ち主をコピーする魔法人形スキルニル。

シャルロットは、自分の恋心を利用しようとした事と、自分の『勇者』を汚されたことで、今までに感じたことのない怒りを感じていた。

杖を掲げると、大き目の氷の矢が生まれ、シャルロットが杖を振り下ろすと共に撃ち出され、入り口のドアに突き刺さった。

シャルロットは真剣な表情になり、そのドアの向こうに居るであろう人物に呼びかける。

「貴方達に言われずとも王にはなる! けど、貴方達の思い通りになるつもりはない! 私が王を目指すのは、私の目的を達成する為!」

シャルロットは自分の決意を口にする。

そして、一呼吸置くと、再び怒りに満ちた表情になると、

「そして! 二度と私のっ……私達の『勇者』を汚す事は許さない!! この警告を破った場合、その氷の矢が、今度は貴方の胸を貫く!!」

ドアの向こうに居る人物に向かって、そう言い放った。

シャルロットはそれだけ言うと、穴の開いたドアに目もくれず、ベッドに潜り込んだ。




一方、ドアの外に居た人物は、

「まいったね…………」

軽い口調ながらも、自分の策が完膚なきまでに撃ち破られた事に驚愕するのだった。








次回予告


正当な王位継承者として、即位を宣言するシャルロット。

次々と寝返るガリア軍。

そんな中、アンリエッタはウェールズと共にガリア王であるジョゼフにとある提案を持ちかける。

ガリアとの戦争は、正に激動を迎えようとしていた。

次回!ゼロの使い魔と炎の使い魔

第六十話 激動のガリア

今、異世界の物語が進化する。







あとがき

あけましておめでとうございます。

今年初の投稿です。

正月休みなので頑張ってみました。

さて、五十九話は如何だったでしょうか?

なんというか、シャルロットの独壇場でしたが……

まあ、ガリア編は仕方ないかと………

今回は、拓也、シャルロット以外は殆ど空気です。

何と言いますか、今回の話は、原作では一、二を争うほど気に食わない話だったので、ご都合主義といいますか、思ったとおりに変えさせていただきました。

騙そうとした奴を逆に騙し返す。

ちったぁスッキリしました。

ともかく、今年も頑張ります。

目標は今年中にリリフロと生きる意味を終わらせて、新しい小説を1つ始める事です。

ゼロ炎は、原作が終わってないのでなんともいえません。

では、これにて。




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