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No.4371の一覧
[0] ゼロの使い魔と炎の使い魔(ゼロの使い魔xデジモンシリーズ〈フロンティア中心〉)[友](2009/03/15 21:23)
[1] プロローグ[友](2008/10/07 18:36)
[2] 第一話[友](2008/10/07 18:51)
[3] 第二話[友](2008/10/10 19:17)
[4] 第三話[友](2008/10/13 16:12)
[5] 第四話[友](2008/10/20 17:57)
[6] 第五話[友](2008/10/26 04:02)
[7] 第六話[友](2008/11/01 17:51)
[8] 第七話[友](2008/11/08 17:50)
[9] 第八話[友](2008/11/15 12:02)
[10] 第九話[友](2008/11/22 17:35)
[11] 第十話[友](2008/11/29 14:53)
[12] 第十一話[友](2008/12/05 19:52)
[13] 第十二話[友](2008/12/07 21:43)
[14] 第十三話[友](2008/12/14 16:23)
[15] 第十四話[友](2008/12/21 12:18)
[16] 第十五話[友](2008/12/28 16:54)
[17] 第十六話[友](2009/01/01 00:05)
[18] 第十七話[友](2009/01/02 16:26)
[19] 第十八話[友](2009/01/09 00:29)
[20] 第十九話[友](2009/01/11 06:34)
[21] 第二十話[友](2009/01/15 20:24)
[22] 第二十一話[友](2009/01/18 17:32)
[23] 第二十二話[友](2009/02/01 11:52)
[24] 第二十三話[友](2009/02/01 11:54)
[25] 第二十四話[友](2009/02/08 22:23)
[26] 第二十五話[友](2009/02/15 11:45)
[27] 第二十六話[友](2009/02/22 20:46)
[28] 第二十七話[友](2009/03/01 13:24)
[29] 第二十八話[友](2009/03/08 19:44)
[30] 第二十九話[友](2009/03/14 00:18)
[31] 第三十話[友](2009/03/14 21:51)
[32] 第三十一話[友](2009/03/15 21:22)
[33] 第三十二話[友](2009/03/26 19:38)
[34] 第三十三話[友](2009/04/11 22:44)
[35] 第三十四話[友](2009/04/11 22:43)
[36] 第三十五話[友](2009/05/02 13:14)
[37] 第三十六話[友](2009/05/02 13:13)
[38] 第三十七話[友](2009/05/04 18:13)
[39] 第三十八話[友](2009/05/05 10:08)
[40] 第三十九話[友](2009/05/05 16:55)
[41] 第四十話[友](2009/05/31 14:53)
[42] 第四十一話[友](2009/06/21 11:00)
[43] 第四十二話 7/19修正[友](2009/07/19 20:21)
[44] 第四十三話[友](2009/08/01 12:23)
[45] 第四十四話[友](2009/08/12 13:39)
[46] 第四十五話[友](2009/08/31 23:37)
[47] 第四十六話[友](2009/09/12 20:57)
[48] 第四十七話[友](2009/09/13 16:58)
[49] 第四十八話[友](2009/09/19 00:53)
[50] 第四十九話[友](2009/09/27 10:46)
[51] 第五十話[友](2009/10/17 16:40)
[52] 第五十一話[友](2009/12/06 14:33)
[53] 第五十二話[友](2010/08/08 22:23)
[54] 第五十三話[友](2010/08/22 23:45)
[55] 第五十四話[友](2010/09/26 20:09)
[56] 第五十五話[友](2010/09/26 20:08)
[57] 第五十六話[友](2010/11/20 11:51)
[58] 第五十七話[友](2010/12/12 23:08)
[59] 第五十八話[友](2011/01/02 19:02)
[60] 第五十九話[友](2011/01/24 14:57)
[61] 第六十話[友](2011/02/13 19:25)
[62] 第六十一話[友](2011/02/13 19:22)
[63] 第六十二話[友](2012/01/15 20:45)
[64] 第六十三話[友](2012/01/15 20:39)
[65] 第六十四話[友](2015/02/08 17:28)
[66] 第六十五話[友](2015/03/08 21:45)
[67] 第六十六話[友](2015/05/03 15:33)
[68] 第六十七話[友](2015/06/07 21:34)
[69] 第六十八話[友](2015/10/18 17:11)
[70] 第六十九話[友](2016/02/28 20:03)
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[4371] 第六十話
Name: 友◆ed8417f2 ID:315f8cfe 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/02/13 19:25
ロマリアの策を見抜き、己の覚悟を示したシャルロット。

そして………



第六十話 激動のガリア



この日、リネン川の手前の草原は、騒然としていた。

それは、ヴィットーリオがガリアの兵士達に向けて、真の王とする者を紹介すると呼びかけたのだ。

そして、ヴィットーリオは、シャルロットが真の王であると宣言した。

最初こそ、ガリアの兵士達は信じてはいなかったが、かつてのシャルロットを知る貴族達が直接確認し、確かめた事によって信憑性が増し、寝返る兵士が続出した。

その中には、シャルロットに手紙を出した人物、カステルモールの姿もあった。




その日の前日、アンリエッタは、ウェールズと共に、アニエスだけを護衛につけ、ジョゼフの下を訪れていた。

そして、とある提案を持ちかけた。

それは、ハルケギニア列強の全ての王の上位として、ハルケギニア大王という地位を築き、そして、ロマリア以外の他国の王はそれに臣従する。

といった内容であり、ジョゼフには、エルフと縁を切る代わりに、そのハルケギニア大王に推薦するとも書かれていた。

そして、その場でウェールズもその提案に賛成している事を明かし、信憑性を高めたのだ。

だが、2人の誤算は、ジョゼフの目的が世界征服などという欲深いものではなかった事だ。

ジョゼフの目的は、かつて弟のシャルル・オルレアンを殺害した時から全く感じなくなった『悲しみ』という感情を取り戻したいだけであった。

そのために、手段を厭わないだけであり、ジョゼフはアンリエッタ達の提案に乗ることはなかった。





ヴィットーリオがシャルロットの即位を宣言すると、それに反応するかのように大艦隊が現れた。

それは先日の虎街道の戦いにおいて、ジョゼフに反乱軍とされた艦隊であり、ロマリアの計略により、この度のシャルロットの即位によって、再びガリア王国両用艦隊として名乗りを上げたのだ。

だが突然、その艦隊が巨大な火の玉に包まれた。

半径5リーグにも及ぶ、超巨大な火の玉であった。

それに巻き込まれ、艦隊の約半分が消滅する。

それを目撃した両軍は、一斉に声を失った。

その原因は、『火石』であった。

ジョゼフは、エルフのビダーシャルに火の精霊の力を結晶化させた『火石』を作らせた。

本来なら、冬に街を暖めたり、街灯に明かりを灯すような使い道しかないものを、ジョゼフは己の虚無を使い、火の精霊の力を閉じ込めている結界に亀裂を入れ、内部に存在する火のエネルギーを一気に解放させ、半径数リーグを焼き尽くしたのだ。

両軍が、余りの光景に声を失っていた時、再び火球が発生する。

それは、先程よりも規模が大きく、残った艦隊を焼き尽くした。

そこで、漸く事態を飲み込めた兵士達は恐怖した。

そして、誰もが我先にと逃げ出し始める。

だが、その中で火球が発生した方を見つめたまま動かない人物がいた。

「………なんて事を………!」

拓也は怒りに震える声で呟き、拳を握り締める。

「………酷い」

アイナが悲しそうな声で呟く。

「一体、なんが起こったんだ!?」

才人が目の前で起こった光景に叫ぶ。

「こんな事が……!」

輝二も、静かに怒りで震えていた。

「虚無よ! あれはガリアの虚無! 間違いないわ!」

一緒にいたルイズが叫ぶ。

「あんな魔法があるのか? 太陽が落っこちてきたみたいじゃねえか………」

才人がそう呟くが、

「違うのね! あれは………あれは精霊の力の解放なのね! おそらく『火石』が爆発したのね! 人間達の魔法じゃ、手も足も出ないのね! きゅい!」

イルククゥが叫ぶ。

「あれを止められるのは、タクヤさま達しかいないのね!」

「分かってる! 輝二! 才人さん!」

イルククゥの言葉に応え、拓也は輝二と才人に呼びかける。

「ああ!」

「分かってる!」

2人は迷い無く頷いた。

3人はデジヴァイスを取り出す。

「「ハイパースピリット! エボリューション!! うぉおおおおおおおおっ!!」」

拓也と輝二が5種のスピリットで進化する。

「カイゼルグレイモン!!」

「マグナガルルモン!!」

2人は超越形態となり、

「行くぞ! ギルモン! デルフ!!」

「おっけー!」

「おうよ!」

才人がデルフリンガーを上に向かって放り投げる。

―――MATRIX

   EVOLUTION―――

才人のデジヴァイスに文字が刻まれた。

「マトリックスエボリューション!」

「ギルモン進化!」

才人とギルモンが1つとなり進化する。

「デュークモン!!」

デュークモンに進化し、デルフがグラニとなりデュークモンがそれに乗る。

「行くぞ!」

カイゼルグレイモンの掛け声に合わせ、3体のデジモンが飛び立った。




3体が飛び立ち、辺りを見渡すと、北東の方角に遊弋する1隻のフリゲート艦を見つけた。

「あれか!」

3体は、一直線にそのフリゲート艦へ向かう。

イルククゥも、竜の姿へと変わり、アイナとルイズ、そしてシャルロットを乗せて後を追った。

更に、その意味を理解したのか、少し遅れてペガサスに跨った聖堂騎士達が続く。

だが、

「ッ!」

カイゼルグレイモンが前方から接近してくる存在に気付いた。

それは、一直線にカイゼルグレイモンに向かってくる。

カイゼルグレイモンは、すぐさま龍魂剣を抜いた。

その瞬間、

――ガキィィィィィィィン!

それとカイゼルグレイモンは交差し、金属音が鳴り響いた。

カイゼルグレイモンは、龍魂剣を構え、油断無く相手を見据える。

「ブラックウォーグレイモン………」

立ちはだかったのは、Xモードとなったブラックウォーグレイモン。

「退いてくれブラックウォーグレイモン! 今はお前と戦っている暇は無いんだ!」

カイゼルグレイモンは、そう呼びかける。

だが、

「だろうな………だからこそ、俺はここに来た!」

「何っ!?」

ブラックウォーグレイモンの答えに、声を漏らすカイゼルグレイモン。

「貴様は、護る時に真の力を発揮する。 そう! 多くの命が危険に晒されている今、この瞬間! 貴様が最も力を発揮する時! その貴様を俺は超える!」

そう言い放つブラックウォーグレイモン。

「ぐっ………」

カイゼルグレイモンは、ブラックウォーグレイモンとの戦いを避けられないと悟ると、

「マグナガルルモンたちは先に行ってくれ! ブラックウォーグレイモンは俺が抑える!」

そう言った。

「し、しかし………」

デュークモンが何か言おうとしたが、

「早く行くんだ! もしアレがここで爆発すれば、兵士達だけじゃない! 街にいる父さんや母さん達も巻き込まれるかもしれないんだ!!」

カイゼルグレイモンが有無を言わさずに叫ぶ。

「ッ…………わかった。 ここは任せるぞ!!」

デュークモンは、その言葉に頷き、マグナガルルモンやシルフィード達と共に、再びフリゲート艦へ向かう。

カイゼルグレイモンは、それを見送ると、ブラックウォーグレイモンに向き直る。

その時、遅れてやってきたペガサスに跨った聖堂騎士達が、デュークモン達の後に続こうとしたが、

「うぉおおおおおおおおおっ!!」

「はぁあああああああああっ!!」

――ドゴォォォォォォォン!

カイゼルグレイモンとブラックウォーグレイモンの激突の余波に耐え切れず、吹き飛ばされ後を追う事が出来なかった。




一方、フリゲート艦の上では、消え去った艦隊を何の感慨も感じずに見つめるジョゼフと傍らに控えるシェフィールド。

更には、両手を縛られ、身動きが取れないアンリエッタ、ウェールズ、アニエスの姿があった。

「………貴様は……何という事を………」

一瞬にして灰と消え去った艦隊を見て、震える声でウェールズが呟く。

「あれだけの艦隊……何人の……何人の人間が乗り込んでいたとお思いですか!? 一万……いや数万です! あなたはそれだけの数の人間を、一瞬で灰にしてしまったのです! あなたは……あなたは何も感じないのですか!?」

アンリエッタが感情のままに叫ぶ。

「お前に何が分かる。 お前に、俺の心の深い闇の何が分かる? 輝かしい勝利の中、全てに祝福されながら冠を被ったお前に、一体俺の何が分かるというのだ?」

ジョゼフは、憎々しげにアンリエッタを踏みつけ、そう言葉を吐く。

アンリエッタは、これから起こるであろう悲劇を前に、涙を流す。

「悲しんでおるのか? お前は……胸が痛むのか? 羨ましい事だ」

ジョゼフはそう言ってアンリエッタの頬を掴んで持ち上げると、

「お前のその哀しみを俺にくれ。 俺にくれよ。 そうすれば、お前の望むものをなんでもやろう。 全てだ。 この王国も、世界も、全てをお前にくれてやろう」

感情の篭っていない、だが、真面目な声でそう言った。

「神よ………どうか、どうかこの男を止めてください。 後生です。 世界が無くなってしまう前に。 すべてが灰に沈む前に……」

「ならば神に見せてやろう。 その世界が灰になるさまを」

ジョゼフは、『火石』の最後の1個であり、一番大きい物をシェフィールドから受け取ると、呪文を唱えようとした。

しかし、その時、

――ヒュウ

と、今までの風とは何処か違う風が吹いた。

ジョゼフは、空の一方を見る。

そこには、

「ジョゼェェェェェェフッ!!」

グラニに跨り、風竜よりも遥かに速いスピードで、デュークモンとマグナガルルモンが迫ってきた。

シェフィールドもそれに気付いた時、この艦に搭載されているガーゴイル全てに命令を出した。

その数は100を超える。

その全てのガーゴイルがデュークモン達に殺到する。

シェフィールドとて、ガーゴイル如きでデュークモンたちが倒せるとは思ってはいないが、多少の時間は稼げると思っていた。

だが、

「ロイヤルセーバー!!」

グラニと共に光の矢となったデュークモンは、一撃の元に全てのガーゴイルを粉砕した。

そのガーゴイルの中には、水の力に特化させ、再生するガーゴイルも混じっていたが、再生できないほどに粉々にされればその能力も意味は無かった。

そのままデュークモンは、スピードを落とさずにフリゲート艦の上空へ到達。

グラニから飛び降り、マグナガルルモンと共に甲板に降り立った。

「あなた達は!」

アンリエッタが、希望に満ちた顔で声を上げる。

「アンリエッタ女王とウェールズ王……それにアニエス……無事でなによりだ」

デュークモンは、アンリエッタ達の無事を確認すると、ジョゼフに向き直る。

その時、

「梵・筆・閃!!」

前方上面から輝く文字が迫ってきた。

だが、デュークモンは落ち着いてイージスを構え、その文字を防ぐ。

デュークモンがその先を見据えると、レナモンが進化したタオモンがいた。

「タオモンか……」

デュークモンは落ち着いた様子で呟く。

「ジョゼフ様の邪魔はさせない!」

シェフィールドがジョゼフを庇うように前に出てそう言う。

その言葉と共に、タオモンが飛び掛ってきた。

タオモンは袖を振り回して攻撃してくるが、デュークモンは簡単にそれをいなし、

「ハッ!」

グラムを一閃。

「くぅっ!!」

タオモンは飛び退くものの、逃げ切れずその一撃を受け、レナモンに退化しつつ甲板の上を転がった。

「無駄な抵抗は止めろ。 完全体までしかなれないお前に勝ち目はない」

デュークモンはレナモンに向かってそう言う。

そして、ジョゼフに向き直ると、

「そしてジョゼフ。 その石から手を離せ」

そう警告した。

デュークモンは、油断無くグラムを構える。

だが、

「ジョゼフ様はやらせない!!」

シェフィールドが再びデュークモンの前に立ちはだかる。

「シェフィールド………」

その姿に答えるように、レナモンが力を振り絞って立ち上がる。

「……お、お前達は……」

その必死の姿に、デュークモンは思わず声を漏らす。

「ジョゼフ様は、私が守る! 何があっても! どんな事をしても!」

シェフィールドは叫ぶ。

「……そんな君を、私は守り抜こう」

レナモンが呟く。

すると、シェフィールドとレナモンの周りに光が発生する。

「なっ!? この光は!」

デュークモンが驚愕の声を上げる。

―――MATRIX

   EVOLUTION―――

シェフィールドのデジヴァイスに文字が刻まれる。

「マトリックスエボリューション!」

「レナモン進化!」

シェフィールドとレナモンが1つとなり進化する。

それは、金色の狐のような武具を纏い、手には金剛錫杖。

陰陽道を極めし女性神人型デジモン。

その名は、

「サクヤモン!!」

デュークモン達の前に立ち塞がるサクヤモン。

「なっ!? 究極体に進化した!?」

思わず驚愕の声を上げるデュークモン。

『ジョゼフ様の邪魔はさせない!』

サクヤモンと一体となっているシェフィールドが叫ぶ。

「はぁあああああっ!!」

サクヤモンが錫杖を振り回すと、花びらと共に衝撃波が発生する。

「「くっ!」」

デュークモンとマグナガルルモンは飛び退く。

マグナガルルモンは滞空し、デュークモンはグラニとなったデルフリンガーが拾う。

サクヤモンが錫杖を構えると、

「飯網!!」

サクヤモンの周りから数匹の狐のようなエネルギー状のものが発生する。

それは、サクヤモンの合図と共に襲い掛かってきた。

「くっ! ロイヤルセーバー!!」

デュークモンは、迎撃の為にロイヤルセーバーを放つ。

サクヤモンの放った飯網とロイヤルセーバーはぶつかり合い、爆発を起こして相殺した。

すると、

「おおおおおおおっ!!」

デュークモンが爆炎の中を突っ切って、サクヤモンにグラムを叩きつける。

「くぅ!?」

サクヤモンは、錫杖でグラムを防ぐ。

そのまま鍔迫り合いの状態になると、

「マグナガルルモン! こいつは私が抑える! お前はジョゼフを止めろ!」

そのままマグナガルルモンに呼びかけた。

「分かった! 任せろ!」

マグナガルルモンは応え、再び甲板に向かう。

「ッ! 行かせない!」

サクヤモンはそれに気付き、マグナガルルモンに向かおうとしたが、

「お前の相手は私だ!」

デュークモンが立ちはだかる。

デュークモンはガンダールヴの能力で通常の究極体より強化されている。

総合能力で劣るサクヤモンは、デュークモンとの戦いを避けることは出来なかった。



甲板に降り立ち、ジョゼフと相対するマグナガルルモン。

マグナガルルモンは、右腕のスナイパーファントムをジョゼフに向けると、

「最後の警告だ。 その石から手を離して投降しろ」

そう宣言した。

だが、ジョゼフは応じない。

「迷いの無い姿だな………自分を信じ、己の正義を貫く眩しい姿だ」

どこか懐かしむように、言葉を紡ぎだしていく。

「俺にもお前達のような頃があったよ。己の中の正義が、全てを解決してくれると思っていた頃が………大人になれば、心の中の卑しい劣等感は消えると思っていた。 分別、理性……なんだろう? そういったものが解決してくれると信じていた」

マグナガルルモンは、ジョゼフの足元に狙いを定めた。

直撃はさせなくとも、人間相手には衝撃のみで十分だろう。

だが、ジョゼフは詠唱すら行なわずに、言葉を続ける。

「だが、それは全くの幻想に過ぎなかった。 歳を取れば取るほどに、澱のように沈殿していくのだ。 自分の手で摘み取ってしまった解決の手段が………いつまでも夢に出てきて、俺の心を虚無に染め上げていくのだ。 迷宮だな。 まるで。 そしてその出口は無いと俺は知っているのに………」

その時、マグナガルルモンは弾丸を放った。

だが、その瞬間にジョゼフの姿は掻き消える。

「何っ!?」

マグナガルルモンは驚愕の声を上げた。

「こんな技を、いくら使えたからといって、何の足しにもならぬ」

背後からジョゼフの声がした。

マグナガルルモンが振り返るが、再びその姿が掻き消える。

マグナガルルモンは、すぐにマストの上を見上げた。

そこに、ジョゼフはいた。

「この呪文は“加速”というのだ。 虚無の1つだ。 何ゆえ神は俺にこの呪文を託したのであろうな。 皮肉なものだ。 まるで“急げ”と急かされているように感じるよ」

ジョゼフはそう言葉を発する。

マグナガルルモンは、再びジョゼフに向かって弾丸を放つ。

マストは粉砕するものの、やはりジョゼフの姿は無く、いつの間には甲板の上に再び降りてきていた。

マグナガルルモンはジョゼフを見やり、

「…………なる程………確かに速い………」

ため息を吐きつつ、ジョゼフのスピードを認める発言をする。

「………が!」

その言葉と共に、アーマーをパージ。

身軽になると同時に、ジョゼフの姿が掻き消える。

だが、瞬時にマグナガルルモンは動き、高速のジョゼフを捕らえ、甲板に押さえつけた。

「ロードナイトモンよりは遅い!!」

「ぬぅっ!?」

思わず声を漏らすジョゼフ。

『ジョゼフ様!!』

それに気付いたサクヤモンが、デュークモンの一撃を防いだときの反動を利用して、フリゲート艦に向かい、マグナガルルモンに体当たりを仕掛けた。

「ぐっ!」

マグナガルルモンは、思わずジョゼフを手放し、飛び退く。

『ジョゼフ様! ご無事ですか!?』

シェフィールドが声をかける。

「むぅ……」

立ち上がるジョゼフの姿に安心するシェフィールド。

サクヤモンは、マグナガルルモンと、降りてきたデュークモンを睨み付け、

『よくもジョゼフ様を………』

錫杖掲げ、甲板に突き刺すと、魔法陣のようなものが発生する。

「金剛界曼陀羅!!」

そこから結界が発生し、デュークモンとマグナガルルモンの動きを止めた。

「ぐぅっ!?」

「何っ!?」

並のデジモンならそれだけで引き裂かれるほどの威力を持つ結界だが、究極体を越える2体のデジモン相手では、動きを封じるだけで精一杯だった。

『ジョゼフ様! 長くは持ちません! 今の内に!』

シェフィールドがジョゼフに呼びかける。

だがその瞬間、炎と氷の矢がジョゼフに向かって降り注ぎ、更には爆発まで起こる。

上空に旋回するシルフィードが見えた。

炎の矢はアイナが。

氷の矢はシャルロットが。

そして爆発はルイズの放ったものだ。

しかし、着弾点に既にジョゼフは居ない。

“加速”の呪文により、既に艦の船首にいた。

その手には『火石』を持ち、杖を振り上げている。

「俺はもう戻れぬ。 出口の無い迷宮を、俺は彷徨い続けるのだ」

ジョゼフが呪文を完成させ、『火石』に杖を振り下ろそうとした瞬間、右手にはめた土のルビーが輝きだした。







一方、激しい激突を繰り広げるカイゼルグレイモンとブラックウォーグレイモン。

「おおおおおおおっ!!」

カイゼルグレイモンが右手に持った龍魂剣で斬りかかる。

「むんっ!!」

ブラックウォーグレイモンは左手のドラモンキラーで防ぐ。

今度は、ブラックウォーグレイモンが右腕を振りかぶり、

「はぁあああああっ!!」

ドラモンキラーを突き出す。

「なんのっ!!」

カイゼルグレイモンは左手に持った覇竜刀でその一撃を受け止めた。

両手が互いに鍔迫り合いの状態になると、

「ッ……」

カイゼルグレイモンは軽く頭を後ろに振り上げ、

「はあっ!!」

ブラックウォーグレイモンの頭部に頭突きをかます。

「ぐおっ!?」

突然の事に、一瞬怯むブラックウォーグレイモン。

カイゼルグレイモンはその隙に追撃をかけようとしたが、

「……ッ、舐めるな!」

「ぐうっ!」

腹部にブラックウォーグレイモンの蹴りが入り、後退する。

「はぁ……はぁ……流石だカイゼルグレイモン。 この勝敗の見えない限界ギリギリの戦いこそ、俺が望んだ戦い! さあ! 続けるぞカイゼルグレイモン!!」

ブラックウォーグレイモンはそう叫んで、再び突撃してきた。

カイゼルグレイモンも迎え撃つ。

再び2体が激突しようとした瞬間、2体の間に黒い空間の穴が発生した。

「「ッ!?」」

2体は、思わず動きを止めてしまう。

だが、空間の穴が開いてしまう事も仕方の無いことだった。

元々この世界は、次元の狭間にいる何者かの所為で、非常に空間が不安定になっている。

そんな世界で究極体を越える力を持った者同士がぶつかり合えば、空間に影響を与えてしまう事は間違いない。

瞬間、その穴から黒い2本の巨大な腕が現れ、カイゼルグレイモンとブラックウォーグレイモンを掴んだ。

「何っ!?」

「コイツはっ!?」

その空間の穴から出てきたものは、あらゆるデジモンのデータを融合させ、生み出された合成型の完全体デジモン。

エンジェモンとエアドラモンの羽。

カブテリモンの頭部。

メタルグレイモンの髪。

グレイモンのボディ。

ガルルモンの足。

モノクロモンの尻尾。

そして、クワガーモン、スカルグレイモン、デビモンの腕。

その名はキメラモン。

「グガァアアアアアアアアアアアッ!!」

キメラモンは叫び声を上げる。

だが、キメラモンは正に逆鱗に触れた事に気付いてはいなかった。

ブラックウォーグレイモンにとって、カイゼルグレイモンとの戦いこそ至福の時。

その戦いを訳の分からない乱入者に邪魔されたとあっては、ブラックウォーグレイモンの機嫌は急降下だ。

「戦いの……邪魔を………するなっ!!」

ブラックウォーグレイモンは、そう叫ぶと共に、自分を掴んでいたデビモンの腕を粉砕した。

「はぁっ!!」

同じくカイゼルグレイモンも、デビモンの腕を吹き飛ばし、脱出する。

2体はまるで示し合わせたかのように上昇し、同時に急降下。

「「うぉおおおおおおおおおっ!!」」

キメラモンを、Xの字に切り裂いた。

消滅していくキメラモン。

カイゼルグレイモンとブラックウォーグレイモンは再び睨み合ったが、

「フン。 邪魔が入ったな。 興が削がれた。 決着はまた今度だ」

やはり、邪魔が入った事でやる気が無くなったのか、ブラックウォーグレイモンはそう言い残して飛び去る。

「やれやれ……」

カイゼルグレイモンは、気を取り直し、フリゲート艦へ急いだ。





ジョゼフは夢を見ていた。

いや、正確には、ヴィットーリオの虚無呪文、“記録リコード”によって土のルビーに宿っていた記憶を見ていた。

それは、ジョゼフに衝撃を与えた。

ジョゼフの弟であり、シャルロットの父であるシャルル・オルレアンの本当の気持ち。

シャルルは本当は悔しがっていた事。

自分を祝福する言葉は、シャルルなりの必死の抵抗だった事。

ジョゼフよりも認められるために必死で努力し、家臣を味方に付けるために根回しをしていた事などを知った。

ジョゼフの手から『火石』が滑り落ち、膝をついてジョゼフは顔を両手で覆った。

「シャルル……俺達は、世界で一番愚かな兄弟だなあ」

そう呟き、自分が泣いている事に気付いたジョゼフは、笑みを浮かべる。

「なんだ。 俺は泣いているじゃないか。 ははは……あれほど疎ましく思っていた虚無が出口を見つけるとは、あっけなく、なんとも皮肉なものだ」

ジョゼフは涙を流しつつ、そう呟いた。

その時、デュークモンとマグナガルルモンを抑えていたサクヤモンが力尽き、結界が解かれる。

サクヤモンは、シェフィールドとレナモンに分離すると、

「ジョゼフ様!?」

シェフィールドは一目散に駆け寄った。

「ミューズ………もうよい……もうよいのだ………」

ジョゼフはそう呟く。

すると、上空からシルフィードが降りてきて甲板に着地。

ルイズが一目散に飛び降りると、縛られているアンリエッタとウェールズ、アニエスを解放する。

そこで、カイゼルグレイモンも甲板の上に降り立った。

シャルロットがジョゼフの前に現れる。

「シャルロットか」

ジョゼフがシャルロットを見上げて呟く。

「似合いじゃないか。 天国のシャルルも喜んでいるだろう」

王族の衣装を着込んだシャルロットに、ジョゼフは言った。

その顔は、なんだか憑き物が落ち、深い満足が描かれている。

ジョゼフは冠を脱ぐと、それをシャルロットの足音に置いた。

「長い事、大変な迷惑をかけた。 まことにすまなく思う。 詫びの印にもならぬが………受け取ってくれ。 お前の父のものになるはずだったものだ」

その様子を怪訝に思ったシャルロットは、

「何があったの?」

そう問いかける。

「説明はせぬよ。 お前の父の名誉に関わることだからな」

その答えで、シャルロットは察した。

「そう……父様の真実を知ったのね」

シャルロットの呟きに、ジョゼフは驚いた表情で見上げる。

「知っていたのか?」

「母様から聞いた」

「……そうか……お前の母は全てを知っていたのだな………」

ジョゼフは笑みを浮かべると、シャルロットの前に首を差し出した。

「この首をはねてくれ。 それで、本当に全て終わりだ」

「…………………」

シャルロットは無言で杖を掲げ、呪文を唱えだす。

氷の矢が杖の先に発生し、

「……………」

無言で振り下ろした。

――ドスッ





「……………何故殺さない?」

ジョゼフが呟いた。

氷の矢は、ジョゼフのすぐ横に外れていた。

「………狂王ジョゼフは殺した。 そして、私の伯父様であるあなたには、私の復讐を手伝ってもらいたい」

シャルロットはそう述べる。

「何故だ? お前の復讐の相手はこの俺ではないのか?」

ジョゼフが問いかける。

シャルロットは首を横に振り、

「違う。 あなたも被害者」

そう言って、懐から何枚かの書類を取り出し、ジョゼフに差し出す。

ジョゼフは少々困惑しながらも、その書類を受け取り、目を通し始める。

読み進める内に、ジョゼフの表情が驚きに染まっていく。

そこに書かれていたのは、シャルロットの目指す平等な国の代表的な法律。

シャルロットは実際に日本へ行き、各国の法律を僅かな時間の中で学び、自分の目指す国の指針とした。

この書類は、シャルロットが独自に纏めた法案であった。

「………本気か?」

ジョゼフは、ある意味自分以上の無茶なシャルロットの法案に、思わず声を漏らす。

「私の人生を狂わせた元凶は、差別意識のある今の制度そのもの。 王族も、貴族も、平民も無ければ、父様とあなたが仲違いする事も無かった。 だから私は今の制度を殺す。 それが私の復讐。 そして、それを成し遂げる為には、あなたの……伯父様の手腕が必要」

シャルロットはそう言い切った。

「フ………フフフ………良かろうシャルロット。 こんな俺の力が必要とあらば、いくらでも貸してやろう。 それがシャルルへの僅かながらの償いだ」

ジョゼフの言葉に、シャルロットは頷く。

だが、その時だった。

誰にも注意を払われていなかったシェフィールドが、ジョゼフが落とした『火石』を拾い上げた。

「ミューズ!?」

予想外の行動に、ジョゼフは声を上げる。

が、当のシェフィールドは、『火石』を両手で持ったまま、涙を流していた。

「ジョゼフ様………あなたはどうして最後までこの私を見てくださらなかったのです? どうしてこの私を御手にかけてはくださらなかったのです? 私はただ少女のように、それのみを求めていたというのに………」

搾り出すような声で、シェフィールドは言った。

すると、シェフィールドの額のミョズニトニルンのルーンが輝きだすと共に、それに共鳴するように、『火石』もその力を解放しだした。

「何をする気だ!?」

デュークモンが叫ぶ。

「私は全ての魔導具を操るミョズニトニルン。 この、『火石』をただ爆発させるだけなら可能だ」

すると、シェフィールドは、寂しそうな表情で、

「ジョゼフ様、最後のお願いです…………一緒に死んでください」

その言葉と共に、『火石』が輝きを増し、

「馬鹿なことは止めろ!」

瞬時にマグナガルルモンがシェフィールドの腕を掴み、『火石』を奪い取ると、空高く投げ飛ばす。

「無駄よ! あの『火石』は、半径15リーグは焼き尽くす!」

シェフィールドはそう叫ぶ。

「ならば!」

カイゼルグレイモンは叫んで、甲板に龍魂剣を突き刺す。

「皆、離れろ! 九頭龍陣!!」

カイゼルグレイモンが九匹の炎の龍と共に、今にも爆発しそうな『火石』に向かって上昇していく。

すると、炎の龍はまるで『火石』を包み込むように動き、隙間無く『火石』を覆い尽くした。

――ドォォォォン

九頭龍陣の内部で『火石』が爆発したらしく、所々から炎が漏れ出す。

だが、それも大した事は無く、フリゲート艦までは届かない。

そして、

――ドゴォォォン!

小規模な爆発を起こして、九頭龍陣は吹き飛んだ。

カイゼルグレイモンは、九頭龍陣で『火石』の爆発をほぼ押さえ込んだのだ。

爆発地点から、カイゼルグレイモンが落下してくる。

「カイゼルグレイモン!」

落下してきたカイゼルグレイモンを、マグナガルルモンとデュークモンが受け止める。

「大丈夫か!?」

デュークモンが声をかけると、

「……ああ……この程度、ルーチェモンの攻撃に比べたら、如何って事は無い」

カイゼルグレイモンはそう答える。

そう言いつつも、カイゼルグレイモンは進化が解け、拓也に戻った。

ボロボロになった甲板の上では、シェフィールドが俯いていた。

「ミューズ………何故こんな事を……?」

ジョゼフがそう問いかけるが、

「私には分かる」

答えたのはシャルロットだった。

ジョゼフがシャルロットに振り向く。

「彼女は、あなたを愛してる。 自分のモノにならないなら、いっそ殺してしまいたいほどに………」

その言葉を聞いて、ジョゼフはシェフィールドに向き直る。

「ミューズ……お前は………」

「それからあなたにも言っておく」

シャルロットがシェフィールドに向かって言った。

「振り向いてもらえないなら、振り向いてもらえるように努力するべき。 言う事を全て聞く事だけが、振り向かせる方法じゃない。 こういった鈍感男には、もっと積極的に行かないと無理」

何気にジョゼフを鈍感男としているシャルロット。

「言いたい事はこれだけ」

シャルロットはそう言って下がる。

「ミューズ………」

ジョゼフが、俯いているシェフィールドに向かってそう呟いた瞬間、

シェフィールドがジョゼフに駆け寄り、唇を重ねた。

少しして唇を離すと、

「唇を重ねるのは、“契約”以来のことですわね………ジョゼフ様、はっきりと申し上げます。 私は、あなたを愛しております。 これ以上ないほどに………」

「ミューズ………お前も馬鹿な女よ……こんな俺を愛するとはな……」

「あなた以外を愛せる筈もございません」

「俺はまだ答えを出せん。 それでもついて来るなら好きにしろ」

その答えに、シェフィールドは嬉しそうな表情を浮かべ、

「はいっ! 必ず振り向かせて見せます!」

そう言うのだった。




一方、シャルロットは、遠くの空に1匹の風竜を見つけた。

ジュリオの風竜、アズーロであった。

その背に、教皇ヴィットーリオの白い、長い帽子を見つけ、シャルロットは僅かに眉を顰めた。

恐らく、ジョゼフの変心を引き出したのはヴィットーリオの虚無という事は察しがついた。

ロマリアは、人の心を簡単に利用する。

シャルロットは、それだけははっきりと確信した。

「ロマリア………私の前に立ちはだかるなら、私はあなた達と戦う」

その風竜に杖を向けるように、己の覚悟を口にするのだった。







次回予告


ガリアとの戦いが終わり、シャルロット、シルフィードと護衛に輝二を残して、拓也達はトリスティンに帰還する。

そんな中、巻き起こる騒動とは?

次回!ゼロの使い魔と炎の使い魔

第六十一話 魔法学院のとある一日 その3

今、異世界の物語が進化する。





あとがき

ちょいと家のことが忙しくて、一日遅れで第六十話の完成です。

前半は手抜きですね。

原作と殆ど変わりがないので。

さて、色々ありましたが、こんなもんでどうでしょう?

なんかデュークモンが悪役っぽい。

サクヤモンの進化はこれでいいかなぁ?

とりあえずジョゼフとシェフィールドは生存。

最後になんかラブコメ風になりました。

さて、では次回も頑張ります。



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