ガリアとの戦いを終え、学院に帰還する拓也達。
そこで起こった出来事とは…………
第六十一話 魔法学院のとある一日 その3
戦争が終わり、拓也達が学院に戻ってきて数日が経った。
戻ってきたその日にはパーティが開かれ、戦争で(主に才人が)活躍した水精霊騎士隊が勲章を授けられ、隊長であるギーシュには、シュヴァリエの称号が与えられた。
しかし、才人や拓也には何の恩賞も無かった。
パーティのオスマンの話では、ジョゼフは死んだ事になっているが、実際は生きている。
それは、ジョゼフ、シェフィールド、レナモンとの戦いが終わった後、シャルロットは、ジョゼフに止めを刺さず、自分に協力するようにした。
だが、このままジョゼフが生きていると、必ずロマリアが処刑するように言ってくる。
そのため、シャルロットは一芝居うった。
幸運にも、近くにロマリアの兵は居ない。
ならば、ジョゼフは死んだ事にすればいいとシャルロットは判断したのだ。
ジョゼフとシェフィールドをマグナガルルモンに予め脱出させてもらい、デュークモンがファイナルエリシオンでフリゲート艦を吹き飛ばした。
こうなれば、死体があったとしても、跡形も残るはずもなく、生死の判断は不可能である。
そしてジョゼフは髭をそり、髪の色を魔法薬で染めた事で、別人に成り代わる事に成功したのだ。
それから、状況が一段落したために、アイナ、ルイズを始めとしたトリステイン人は学院に帰ることになったのだが、拓也はシャルロットのことが心配だった。
そこで名乗り出たのが輝二であり、輝二がガリアに残ると言い出したのだ。
確かに輝二ほど信頼が置けて強力な護衛は他にいないために、拓也は輝二にシャルロットの護衛を頼んだ。
念のために、輝二に地下水を託して。
そんなこんなで学院に戻ってきたわけで、拓也達は、久しぶりの平和を満喫していた。
まあ、帰ってきた拓也とアイナは、リースに泣かれたりもしたが、おおむね問題は無かった。
拓也と才人の家族は、特別に使用人の寮を使わせてもらえる事になった。
そんなある日の事。
朝。
朝食の仕込をしている厨房に訪れる人物がいた。
それは、拓也の母親の由利子と才人の母親の人美、そしてアイナの3人だった。
その訳は、先日才人が言った一言が原因であった。
その一言とは、
「母さんの作った味噌汁が飲みたい」
であった。
才人にしてみれば、1年以上も母親の料理を食べていない為、食べたくなる気持ちも当然であった。
問題は材料だったが、シエスタからの情報で、タルブの特産品に味噌があり、学院にも少量だがあることが分かり、それならばと母親2人が腕を振るうことになったのである。
序に、米もあることが分かっている。
アイナが料理長のマルトーに頼んだところ、「我らの剣と我らの炎の母親なら」と言って、快く厨房の一部を貸し出してくれる事になった。
それで、今は朝食の準備をしているのだが、
「アイナちゃん、弱火でお願い」
「はい」
「アイナちゃん、こっちは強火で」
「分かりました」
当然ながらハルケギニアにはガスコンロなどという物は無い為、釜の火の加減が難しい。
現代日本人である由利子と人美に釜が使いこなせる筈も無い。
だが、アイナは日本にいってガスコンロの火の強さを大体分かっていたので、アイナが魔法で火の調節をしているのだ。
そんな様子を後ろから眺めているマルトー。
「貴族の魔法も、使い方次第ではこんなに便利なものなのになぁ……」
意味深げな事を呟きつつ、自分の仕事に戻るのだった。
そして朝食の席。
才人は、目の前に並べられた、白いご飯、味噌汁、焼き魚に感動していた。
「う、うぉおおおおお………1年ぶりの日本の朝食だぜ………!」
才人はそう言いつつ、自作していた箸でご飯を口に運ぶ。
「おおっ! 飯だ! 久しぶりの白いご飯だ!!」
才人は感極まりつつ、味噌汁を飲んだ。
すると、
「………ッ」
突然才人は涙を流した。
「母さんの……母さんの味だ………」
そう呟く才人。
「うっ……ううっ……」
そんな風に泣く才人を見て、
「まあ、流石の俺も、お袋の味って奴には敵わねぇか」
マルトーは、そう感想を漏らしたのだった。
その後、拓也とアイナ、才人、ルイズは家族と共に中庭でこの後の身の振り方をどうするかと相談していた。
「とりあえず、先ずは住む所を探さないとな。 いつまでも学院に迷惑をかけるわけにもいかないし………」
拓也がそう切り出す。
「まあ、運良く金はあるからな。 家探しには困らないと思うが……」
「でも、皆はこの世界の常識に疎いから……あんまり離れすぎるのも心配です」
才人は、ふとルイズを見た。
「なあルイズ、お前ってロマリアの教皇様が使ってた“世界扉”って使えねえの?」
「えっ?」
「いや、やっぱりさ、父さんや母さん達だけでも地球に戻せないかなって」
才人の言葉に、ルイズは考え込む。
「どうなんだろう………?」
ルイズは試しに、ヴィットーリオが唱えていた呪文を呟いてみる。
そして適当に打ち切り杖を振った。
すると、
「…………出来たわね」
ほんの野球ボールぐらいのゲートが現れていた。
「よし! これで父さん達は帰せるんだ!」
才人は喜ぶ。
だが、
「そう簡単な話でもないみたいよ」
ルイズは、ゲートを消しつつそう呟いた。
そんなルイズの顔には、疲労の色が見える。
「お、おい。 大丈夫か?」
才人はそう声をかける。
「ええ。 ちょっと疲れただけよ。 だけど、教皇聖下が言っていた通り、この呪文はかなりの精神力を使うわ。 どちらにせよ、今は人が通れるだけのゲートは開けないから、暫くはハルケギニアに留まってもらわなきゃいけないわ」
「そっか………どっちにしろ家は探さなきゃいけないわけか………」
才人はそう呟いて空を見上げる。
すると、
「ん?」
才人が何かに気付く。
「如何しました? 才人さん」
拓也が尋ねると、
「何だあれ?」
才人が空を指差す。
全員が其方を向くと、空の遥か遠くに影が見える。
「鳥?」
信也が呟くが、
「鳥にしちゃおかしいだろ?」
確かにその影は羽ばたいているものの、鳥とは違う。
その間にも、その影は近付いてくる。
「………あれって」
アイナが何かに気付いた。
「風竜?」
ルイズが呟く。
その影は、こちらに向かって羽ばたいてくる風竜だった。
その風竜は、どんどん近付いてきて、
「って、こっちに向かってきてねえか!?」
その風竜は、かなりのスピードでこちらに接近してきて、
「「おわぁあああああっ!?」」
「「うわぁああああああっ!?」」
「「「「きゃぁああああああっ!?」」」」
拓也達の近くに着陸した。
「な、なんだぁ!?」
才人が叫んだ瞬間、
「アーーーーーーイーーーーーーーーナーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」
一陣の風が駆け抜け、
「むぎゅ!?」
アイナが抱きしめられた。
「アーーーーイーーーーナーーーーーーー!! 無事だったかーーーーーーー!? 心配したぞーーーーーーーー!!」
抱きしめている人物は、言わずもがなアイナの父親であるゲイルであった。
「あ、ゲイルさん」
拓也はゲイルに気付いてそう呟く。
「お、お父様………」
アイナも、突然の事にビックリしている。
地球組は唖然としていた。
すると、ストームの方から、フレイア、クリス、ミーナが歩いてくる。
「フレイアさんにクリスとミーナまで、一体どうしたんです?」
「あら、タクヤ君。 お久しぶりね」
「あ、はい。 お久しぶりです」
「それでね、あの人が学院からアイナが戻ってきたって言う報告を受けたら、いてもたってもいられずに飛び出してきちゃったのよ」
フレイアが、ゲイルを見ながらそう説明した。
「ああ、親バカのゲイルさんなら当然といえば当然ですね」
それだけの説明で、拓也は納得する。
「拓也………其方は?」
由利子が尋ねる。
「あ、こっちはフレイアさん。 アイナの母さんで、今アイナを抱きしめてる人がアイナの父さんでゲイルさん。 で、こっちの2人がクリスとミーナ。 アイナの妹だよ」
「まあ、私は拓也の母で、神原 由利子と申します。 この度は拓也がお世話になっていたようで……」
「タクヤ君の母君でしたか。 これはご丁寧に。 わたくしは、アイナの母でフレイア・フォルダと申します」
由利子とフレイアは互いに自己紹介する。
すると、
「あなた」
フレイアがゲイルに呼びかけた。
「おう。 どうしたフレイア?」
ゲイルがアイナを抱きしめたままフレイアの方を向く。
「こちら、タクヤ君の母君だそうですよ」
「何っ!?」
ゲイルはビックリしたように由利子の方を向く。
「序にこっちが父さんと、弟の信也です」
拓也はそう紹介する。
「拓也、私は序か?」
宏明は少し寂しそうな顔をする。
「これはこれは、私はゲイル・サーバー・ド・シンフォニアという。 あなた方のご子息であるタクヤ君は、真に勝手ながら、アイナの婚約者候補とさせていただいておりますゆえ、よろしくお願いします」
その言葉を聞いた瞬間、宏明、由利子、信也は固まった。
そして、
「「「はぁああああああああああっ!?」」」
3人の驚愕の声が空に響き渡った。
その夜、大人たちは酒を飲み交わしていた。
「なる程、拓也がアイナちゃんの婚約者候補になったのは、そんな経緯が……」
「ええ。 貴族の大部分は欲に目を晦ませていますので、アイナを任せられる人物がいなかった為に……その点、タクヤ君やサイト君は素晴らしい心の持ち主です。 良いご子息をお育てになりましたな」
「いえいえ、私達は特に何も。 子供達が自身が自分で選んだ道です」
「しかし、その土台を作ったのはあなた方です。 十分誇っていいと思いますよ」
酒を飲み交わして、話に華を咲かせている大人達。
「なんか、隣で堂々と誉められると、恥ずかしくなってくる」
「だな」
拓也の呟きに才人が答える。
「でも、兄ちゃんがまさかアイナさんの婚約者候補になっていたなんて………」
「婚約者候補と言っても、最後に決めるのは俺達だからな。 ゲイルさんが言うには、お互いが結婚を望むなら、反対しないという事らしい」
信也の呟きに拓也が答えると、
「それでも十分驚きだと思うけど………」
と、信也は漏らす。
「で、この2人はそれで?」
信也は拓也の横を見る。
そこには、
「兄上……」
「お兄ちゃん」
クリスとミーナが、拓也の横を占領していた。
「まあ……な」
拓也はやれやれといった雰囲気で呟く。
アイナも、2人は妹で、拓也の事を兄としか見ていないことが分かっているので、大人しくしている。
序に、アイナは抜け駆けはしないとシャルロットとシルフィードに約束しているので、これといってアタックをかけるようなことはしない。
因みにその横では、ギルモンとチビモンが食事に夢中である。
「ガツガツ」
「うまうま」
チビモンはブイモンの幼年期後半であり、普段はエネルギー消費を抑えるために幼年期の姿になっているそうだ。
ともかく、久しぶりの平和な一日は過ぎていくのだった。
次回予告
ガリアに残り、新しい国づくりを始めていくシャルロット。
シャルロットが行なう政治とは。
次回、ゼロの使い魔と炎の使い魔
第六十二話 シャルロットの政策
今、異世界の物語が進化する。
感想で、キャラ紹介をやったほうがいいという意見があったので、主要キャラのキャラ紹介を簡単ですが行ないます。
・神原 拓也
この物語の主人公。
原作のアニメよりも若干落ち着いており、多少頭が良くなってる?
イルククゥから地下水を貰ったので魔法も使える。
十九話の覇竜との戦いで、覇竜に認められ『勇者』の称号を受ける。
その証に、覇竜の牙で作られた覇竜刀を受け取る。
原作では出来なかったエンシェントグレイモンへの進化が可能になっており、アイナ、シャルロット、イルククゥと共にカイゼルグレイモンXモードへの進化も可能。
現在、アイナ、シャルロット、イルククゥに惚れられている。
拓也自身も最初は戸惑っていたが、現在では3人に惹かれ始めている。
ただし、拓也自身誰が一番好きなのか分かっていない。
・アイナ・ファイル・ド・シンフォニア
拓也をハルケギニアに召喚した赤毛の少女。
拓也のヒロインその1。
最初こそ自分に自信が持てなかったが、拓也と共に行動している内に自信が芽生え、今ではスクウェアメイジとして自覚している。
家族構成は、父、母、妹2人。
優しい性格で、平民受けは良い。
拓也の事が好き。
・平賀 才人
原作の主人公。
基本的に原作と性格は変わりないが、拓也の兄として意識している為か、少し自重している。
ゼロ戦の中でデジタマを見つけ、以後ギルモンのパートナーとなる。
アルビオンでの戦いで、ギルモンをメギドラモンに進化させてしまい、多くの人間を殺してしまった事を悔やみ、一時期デジヴァイスを失ったが、三十九話で完全復活。
デュークモンへの究極進化を遂げる。
ギルモンとは友好なパートナー関係を築き、原作よりも若干大人っぽくなった。
因みに、本人はルイズ一筋。
ただし、女性の色気には弱い為に、色々ルイズには誤解される。
・ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール
才人のご主人様。
序にこの小説で、原作と比べると一番出番が減った人。
基本的に原作と一緒だが、アイナの影響か、所々大人な対応を見せることもしばしば。
才人の事が好きだが、性格の為に素直になれない。
・シャルロット・エレーヌ・オルレアン
原作と比べると恐らくこの小説で一番変わったキャラ。
拓也のヒロインその3。
水の精霊の一件で、拓也のお陰で母親が心を取り戻し、拓也に惹かれる。
国民全員が平等な国を目指し、現在奮闘中。
・イルククゥ(シルフィード)
シャルロットの使い魔で韻竜。
拓也のヒロインその2。
フーケとの一件で、ヴリトラモンに進化した拓也に救われ、一目惚れする。
原作と比べて人型でいる事が多い。
後、誰を紹介すればいいんだろう?
あとがきとお知らせ
第六十一話の完成です。
相変わらず日常編は難しい。
物足りない気がする。
とりあえず、両親ズを地球に戻すフラグを立てました。
これでやりたい事やったら地球に戻します。
あと、突然なんですが、このゼロの使い魔と炎の使い魔を、また一時的に更新停止しようかと思っております。
理由は、他にも自分はリリカルフロンティアと生きる意味の2つの小説を投稿しているわけですが、自分の執筆スピードだと、一週間に1話が限界です。
となると、3つの小説を平行して進めると、それぞれ1話進めるのに3週間、つまり1ヶ月近くかかってしまいます。
そして、それだけの期間が空くと、考えていたネタを忘れて、話がわからなくなる時があります。
よって、真に自分勝手ではありますが、3つの小説の中で唯一最後が見えていないこの小説の更新を停止しようかと思います。
予定では、2つに集中すれば半年ぐらいでリリカルフロンティアが終わりますので、それまでは停止しようかと思っております。
本当に自分勝手で申し訳ありませんが、よろしくお願いします。