ド・オルニエールで平和な日常を満喫する拓也達。
今回温泉で起こる騒動とは?
第六十九話 魅惑の露天風呂
エレオノールが、館に住み始めて数日。
男性陣が露天風呂に入って身体を休めていた。
「くぅ~~~~っ!! やっぱり温泉は何度入っても気持ちいいぜ!」
才人が身体を伸ばしながら石に背を預けている。
「ほんとっすね~………やっぱり日本人は風呂に入らないと………」
拓也も温泉の真ん中あたりで肩まで湯に浸かっている。
「きもちい~~~~…………」
完全に蕩けた声で、顔の上半分だけを出した状態で浸かっているギルモン。
「わ~~い!!」
温泉を泳ぐチビモン。
「泳いじゃダメだよ! チビモン!」
湯に浸かりながらチビモンを叱る信也。
各々が温泉を満喫していた。
すると、才人が切り出した。
「なあ、思ったんだけどさ、せっかくこんな広い温泉があるんだ。 俺達だけで独り占めするのは勿体無くないか?」
「そう言われればそうですね。 日本でも温泉といえば、旅館とかホテルとかが一般的ですから」
「だからさ、皆を呼んでパーティーしようぜ! 特に水精霊騎士団のみんなは『大隆起』とかで精神的に参ってるだろうし…………ここらで温泉に入ってもらってリフレッシュしてもらうんだ」
「僕は賛成!」
「俺もいい考えだと思います」
才人の案に、信也と拓也も賛成する。
「よーし! じゃあ、早速母さんたちに相談して、皆を呼ぼう!」
こうして、才人の発案により、温泉パーティーが開かれることとなった。
数日後。
ド・オルニエールの屋敷でパーティーが開かれていた。
参加者は、元から屋敷にいる拓也、アイナ、才人、ルイズ、シャルロット、リース、シエスタ、エレオノールに地球組とデジモン3匹。
ギーシュを始めとした水精霊騎士団の面々。
キュルケ、モンモランシー、ティファニア、オスマン、コルベールの、魔法学院の面々。
そして何故か、アンリエッタとそのお付のアニエス。
更に何故かカトレアや、ゲイルを始めとしたシンフォニア一家がいた。
「って、ちょっと待ってよ! 何で姫様やちい姉さま達がいるの!?」
参加者を改めて見たルイズが叫ぶ。
「あらルイズ。 わたくしは、偶然ド・オルニエールに温泉というお肌がスベスベになる効能を持ったお風呂があると聞き、それならば入ってみたいと思い、お忍びで来てみたらこのような催し物が開かれていただけですよ?」
アンリエッタはニコニコと答え、
「私は姫の護衛だ」
アニエスは真面目な顔で答える。
「カトレアに関しては私が呼んだわ」
そういったのはエレオノールだった。
「姉さま、どうして?」
「聞けば、温泉には病気に効くものもあると聞くわ。 それならカトレアの体にも良いかもしれないからよ」
「姉さま…………」
そっぽを向きながらもそう言うエレオノールの優しさに、ルイズは感動する。
そうして、予想以上に人数が増えた参加者でパーティーが行われた。
食事会が終わり、いよいよ温泉の時間になろうとしたときだった。
オスマンが屋敷の一部屋の中で、神妙な顔で俯いていた。
その部屋の扉が開く。
「お呼びですか? オールド・オスマン」
入ってきたのはギーシュとマリコルヌ。
オスマンは重々しく頷き、
「うむ。 君達に重要な任務を与えたい」
「任務………でありますか?」
「うむ………それは……………」
オスマンに言われた内容にギーシュ達は驚き、だが、すぐに気を取り直して直立した。
「ハッ! 我ら水精霊騎士団! 重要任務に着手いたします」
ギーシュとマリコルヌはそう言って退室した。
部屋を出て行ったあと、
「フフフ…………」
オスマンの目が、怪しく光っていた。
温泉には最初に女性達が入ることになっていた。
温泉に浸かる女性達。
「あの、良いんでしょうか? 私たちまで一緒に入っても………」
最初に切り出したのはシエスタ。
シエスタとリースは温泉の隅っこで遠慮がちに浸かっていた。
まあ、それも当然である。
地球組である人美と由利子を除けば全員貴族であり、挙句の果てには女王であるアンリエッタまでいるのだ。
萎縮するのも仕方ない。
因みに忘れそうではあるが、アニエスも元平民ではあるがれっきとした騎士であり、貴族の一員である。
「もちろん構いませんわ。 身分に関係なく、裸の付き合いをするのが温泉だそうですから」
そう言ったのはアンリエッタ。
その言葉で幾分かその場の緊張が和らいだ。
キュルケやモンモランシーは、アンリエッタに気軽に話しかけている。
一方、
「…………………………」
「な、何? シャルロット?」
シャルロットがアイナの身体をじーっと見ていた。
主に胸の辺りを。
「アイナ…………少し大きくなってる…………」
「なっ、何がっ!?」
シャルロットの言葉に、アイナは腕で身体を隠すような仕草をしながら顔を赤くして叫ぶ。
「胸」
どストレートなシャルロットの一言に、アイナは顔を更に赤くした。
「まあ、元がアレですからね」
シエスタがそう言いながら、視線をある人物に移す。
「あらあら、何かしら?」
それは、アイナの母であるフレイア。
因みにフレイアのスタイルは、アンリエッタ以上である。
「そうね。 少なくとも、ルイズよりかは可能性高いと思うわよ」
キュルケが口を挟む。
「私よりかはってどういう事よ! 私はちい姉さま似よ! いつかはちい姉さまのようになってみせるわ!」
ルイズがそう言いながらカトレアを見る。
因みにその横にはエレオノールがおり、2人の戦力差は絶望的なのが伺える。
「顔はカトレアお姉様似でも、身体はエレオノールお姉様似かも知れないじゃない?」
キュルケが余計な一言を付け足す。
「そ、そんな事ないわよ!!」
ルイズが一瞬頭に過ぎった嫌な予感を振り払うように叫ぶ。
その瞬間、ルイズの頬が引っ張られた。
「ちびルイズ~~!? 何がそんな事ないのかしら!?」
「あべべ~、あでざま、なんべもありばぜん~~~~~!」
その様子を見て、全員が笑う。
「それにしても、胸といえば、1人とんでもない子が居たわね~」
モンモランシーがそう言いながら横目でティファニアを見る。
ティファニアの胸、才人曰くバストレボリューションは、これだけの人数がいても、ひときわ目立っていた。
まさに桁が違う。
「そ、そんなに見ないで下さい~!」
ティファニアは両腕で胸を隠そうとするが、その大きな胸の半分程度しか隠せてはいない。
「むぐぐ…………」
「……………」
その様子に、ルイズは悔しそうな表情をし、シャルロットは無表情ながらジッと見つめている。
「お姉さま! 胸の大きさなんか気にする必要ないのね! あんなもの、唯の脂肪の塊なのね!」
イルククゥがシャルロットをフォローしようとしているのか力説するが、その際にたゆんと揺れるものに、シャルロットの視線は釘付けになる。
「……………………」
「痛い! 痛いのねお姉さま!」
何処から取り出したのか、シャルロットは無言のまま大きな杖でイルククゥの頭を殴る。
すると、
「そういえば、大丈夫かしら?」
モンモランシーが唐突に切り出す。
「何が?」
キュルケが聞くと、
「男共よ。 前にも覗きなんて前科があるわけだし…………」
「それなら大丈夫よ」
ルイズが口を挟んだ。
「ルイズ?」
「ちゃんと手を打ってあるわ」
ルイズはそう言うと、アイナに目配せし、アイナも微笑みで答えた。
「?」
モンモランシーは首を傾けるだけだった。
その頃、女性達が入っている温泉に向かって、森の中から匍匐前進で近付く複数の影があった。
「全員、止まれ!」
小声ながらも、強い指示で全員が停止する。
「諸君、これよりオールド・オスマンから受けた重要任務を開始する」
「「「「了解!」」」」
静かに、それでいて力強く唱和する。
まあ、才人を除いた水精霊騎士団であるわけだが、オスマンから受けた重要任務というのが、
「これより、アンリエッタ女王陛下の身辺警護を行う」
言ってることはまともっぽいが、その顔は完全にニヤけており、覗く気満々な事が伺える。
「さて、その為にはもっと近付かなくては…………」
隊長のギーシュが、匍匐前進を再開しようとしたその瞬間、
「いっ!?」
ズサッとギーシュの鼻先の地面に大剣が突き刺さった。
ギギギとギーシュはブリキ人形のように首を上へと動かす。
そこには、
「「…………………」」
龍魂剣を地面に突き刺し、冷たい瞳で見下ろすカイゼルグレイモンと、同じく冷たい瞳で見下ろすデュークモンの姿があった。
冷や汗を流す一同。
「や、やあ副隊長にタクヤ。 い、一体何故進化しているのかな?」
ギーシュが恐る恐る尋ねる。
「それはもちろん……………」
「覗きをする不届きな変態共を殲滅するためだ…………!」
2体の言葉に震え上がる。
「そ、それは不届きな輩が居たものだね…………僕達は野生の動物が温泉に近付かないか見回りに来ただけだから…………それじゃ」
ギーシュ及び隊員一同は踵を返してその場を離れようとするが、
「そんな言い訳でこの場を逃れられると思うなよ!!」
カイゼルグレイモンの言葉で全員が一斉に逃げ出し、
「「天誅!!」」
「「「「「ギャ~~~~~~~~ッ!!!」」」」」
水精霊騎士団の悲鳴が辺りに響いた。
「ねえ、今何か聞こえなかった?」
温泉に浸かっていたモンモランシーが辺りを見回しながら呟く。
「さあ? どこかの変態が竜の餌食にでもなったんじゃないの?」
そう言ってルイズは気にしようとしなかった。
同時刻、ド・オルニエールの屋敷の一室。
窓から外を見ていたオスマンは、
「スマンな、水精霊騎士隊の諸君。 しかし! 君達の犠牲は決して無駄にはせんぞ!!」
そう口に出すと、視覚を使い魔であるネズミ、モートソグニルへとリンクさせる。
モートソグニルは現在草むらの中を走っていた。
その場所は、先程水精霊騎士隊が居た場所とは反対方向。
即ち、オスマンは水精霊騎士隊を囮にし、使い魔のモートソグニルを温泉へ侵入させようとしていたのだ。
やがて、温泉に続く仕切りが見え始めた。
その前には少し大きな石がある。
「ゆけぃ! モートソグニルよ! いざ行かん! 約束の地へ!!」
オスマンは無駄に気合を入れて叫び、モートソグニルがオスマンの声に応えるようにジャンプしてその石を飛び越えた。
そして、その後は無事に着地し、温泉まで一直線…………の筈であった。
「チュ!? チューーーーーッ!?」
モートソグニルが突然鳴き声を上げる。
「どうした!? 何があったのじゃモートソグニル!?」
オスマンが慌てて確認するために感覚をリンクさせる。
すると、石を飛び越えた先に何故か粘着力のあるクモの巣のような糸が張り巡らさせており、モートソグニルはその糸に、物の見事に引っかかっていた。
「な、なんじゃこれは!?」
オスマンが叫ぶと、草むらの影から緑色のイモムシ………ではなく、ワームモンが姿を現した。
「これがアイナ達が言ってた学院長の使い魔だね」
ワームモンはそう言うと、口からネバネバネットを吐き出し、モートソグニルを更にグルグル巻きにする。
哀れオスマンの策は、既に読まれていた。
その時、
「えーっと学院長さん?」
突然聞こえた声に我に返ると、窓の外にはエクスブイモンの肩に乗った信也の姿があった。
そして、エクスブイモンは手にロープを持っている。
「な、なんじゃね? シンヤくん?」
冷や汗を流しつつ後ずさりするオスマン。
「えっと………その…………覗きは犯罪ですよ?」
次の瞬間、エクスブイモンが部屋の中に飛び込み、
「ア~~~~~~~~~ッ!!!」
オスマンの声が虚しく響いた。
日が傾き始めた頃。
屋敷の前の木の枝には、
「ゆ、許してくれ~~~~」
「は、反省してま~~~~す」
「あ、頭に血が~~~~」
オスマンと水精霊騎士隊、ついでにモートソグニルが簀巻きにされて、逆さ吊りにされていた。
「ダメよ。 一晩はそのまま。 しっかりと反省なさい」
ルイズが容赦無い宣言をする。
「ミス・ヴァリエール。 老体はもう少し勞ってくれんかの?」
オスマンは性懲りもなくそういうが、
「学院長? もう一日増やして差し上げましょうか?」
ニッコリと笑ったルイズの前に、敢え無く沈黙したのだった。
因みに彼らが解放されたのは本当に翌日だったりする。
次回予告
ド・オルニエールで平和な一時を満喫する拓也達。
しかし、そこにある訪問者達が訪れる。
驚くべき訪問者達の正体とは!?
次回! ゼロの使い魔と炎の使い魔
第七十話 エルフの訪問者
今、異世界の物語が進化する。
あとがき
皆様、お久しぶり&あけましておめでとうございます。
またまた長らくお待たせしてすみません。
仕事で年末年始に連続で不良が発生してしまい、テンションダウンで書く気が全く起きませんでした。
で、待望のゼロ魔21巻が発売したことですし、何とかやる気を出して書き上げました。
さて、アニメよりも大分人が増えましたがどうだったでしょうか?
かなりの桃源郷になったと思いますが、その場は皆様の脳内放送でお楽しみください。
ギーシュ達はやはり覗き。
しかし敢え無くカイゼルグレイモン達により撃退。
ついでにオスマンも犠牲に(笑)。
さて、次はどうやってエルフにとっ捕まろう?(笑)
では、次も頑張ります。