それは小説より奇なる事。

信じられない光景に対して、我が身をつねり痛みを確かめる。

人間、誰でも非常識すぎる事が起これば、現実逃避したくなるものである。

今、ここにいる女性もそれは例外ではなく・・・・・・・

その女性は己が目の前で起こった事が現実だと知らせる己の感覚を恨みに恨んだ。

「一体・・・・・・何が起こったのよ・・・・・・・・」

一部始終を見ていたにもかかわらず、女性はその言葉を呟いた。

かけているサングラスを外し、先ほど起きた事実が見間違いでない事を確かめる。

もしそれが幻であったのならば、サングラスを買い換えようと思っただけで済んだのだろうが。

目の前に広がる光景・・・・・・・それは、自分たちの敵である存在が、

自分たちの探し人である人間をN2地雷の爆発から身を呈して守った光景であった。

女性の乗るアルピーヌ・ルノーはその存在の影にN2の爆発を遮られたので事無きを得たが、

そのおかげで女性は認めることの出来ない真実を見てしまう事になったのだ。

それはすなわち・・・・・・・

「その存在は、もしかしたら自分たちの敵だという訳ではないのかもしれない」という真実を・・・・・・

 


イービル  アイズ
Evil Eyes

第弐章 使徒への疑惑


 

「碇・・・・・・シンジ君ね?」

その女性は焼け爛れている存在の下で膝を抱えていたシンジに恐る恐る声を掛けた。

焼け爛れている存在に対しての恐怖はもはやどこかへ飛んでしまっている。

とにかく今はこの少年を何とかしなければと言う考えが女性の思考を満たしていた。

「・・・・・・・・・・・・・」

しかし、シンジは虚ろな瞳でその存在をただ、見上げている。

その瞳はサングラスで隠されている物の、シンジがどんな表情をしているか、女性は解っているつもりだ。

沈黙するシンジに女性はもう一度声を掛ける。

「私は葛城ミサトよ。・・・・・・・・君を迎えに着たわ。とりあえず、車に乗ってくれる?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

しかし、帰ってくるのは重い沈黙。

だが、このままこうして時を過ごす訳には行かない。

いかに自分の目の前で起きた事が真実でも、

自分は自分に与えられた仕事を、使命を優先しなければならない。

それが、ショックで頭が正常に働かなくなったミサトと名乗る女性の答えであった。

・・・・・・・・結局は現実から逃げているだけだという事に気付いているのだろうか。

「悪いけど・・・・・・・時間が無いわ。一緒に来てちょうだい。」

そう言ってシンジの腕を引き立たせるミサト。

「・・・・・・・・・・・友達を・・・・・・・・・・・・・」

「え?」

ここではじめて口を開いたシンジに、ミサトは驚き反応した。

「・・・・・・・・・初めて出来た・・・・・・・・・友達を・・・・・・・・・無くしました・・・・・・・・・・」

かすれた声で呟くシンジに、思わずミサトは口を開く。

「まだ・・・・・・生きてるわ・・・・・・・あれは。」

中途半端な慰め。思わず口から出た言葉。

その言葉に対して、シンジのサングラスの下の瞳がミサトをしっかりと射抜く。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・それでも、僕に殺させるのでしょう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その発言をしたとき、シンジは他の存在に拒否され続ける事を覚悟した。

 

・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・

 

「彼の”魔眼”には気をつけなさい。下手に瞳をさらしたら、心の底まで見抜かれるわ。」

非科学的な事はナンセンスだと口癖みたいに語る、

科学のかたまりのような友人の発言にミサトは目を丸くしたのを思い出した。

あの時は何言っているのかと鼻で笑ったが、

それでも親友のキツイ忠告にサングラスをかけて行く事を決意する。

 

・・・・・・・・そして現在・・・・・・・・・・

少しサングラスを外して瞳をさらしただけなのに、この少年は自分の心の底を見抜いて見せた。

・・・・・・・・”魔眼”

まさか本当にあったとは思っていなかったそれも、実際に見たら信じられずにはいられない。

だから、今はサングラスは必需品となった。

しかし・・・・・・・・何故、この少年は自分の瞳を見てなおついて来る気になったのだろうか?

これから起こる事が解っていて・・・・・・・・何故?

 

「どうせ拒否しても、強制的に連れて行かれる事が解っていたからですよ。」

 

突然、ミサトの心を読んだかのようにシンジが口を開いた。

また読まれたのだろうかと恐怖しながらミサトはシンジの顔を振り返る。

「・・・・・・・別に、読んだ訳じゃありませんよ。

 ただ、この状況で貴方が考えるであろう事を考えてみただけです。」

前を見つめながらシンジが無関心そうに語った。

「・・・・・・・・・・・・これから、父の所へ行くのですよね?」

それは質問ではなく確認。

「・・・・・・・・そうよ。・・・・・・・・・何処まで読んだの?」

「別に・・・・・・あの時に読めたのは貴方が僕に対しての感情だけでしたから。

 ”この少年は本当にこれからこの存在と戦う事が出来るのだろうか?”という感情をね。

 心配せずとも・・・・・・もう読みませんよ。意識して読もうとしなければその奥の心は解りませんから。」

「・・・・・・・・・・それじゃあ」

「どうして読もうと意識したか、ですか?」

またも言いたい事を先読みするシンジにミサトは少々顔を引きつらせる。

 

「「その性格、改めた方がいいわよ。」」

 

今度は台詞にユニゾンさせるシンジにミサトは思わずこめかみを抑えた。

もちろん、運転している最中なので前方は器用に見ているが。

「・・・・・・・解りやすい性格してますね。もう少し精神年齢を上げた方が良いかと思います。

 意識したのは・・・・・・・・写真を見て、面白い人だな、と思った事と、

 あの状況で”普通の人間”はどう言う考えをするか興味をもったからです。」

「・・・・・・・ったく」

「”君となら会話しなくても意思疎通が出来そうね”ですか?

 申し訳ありませんが意思疎通に関してはこちらから辞退させて頂きます。

 僕は・・・・・・・人と付き合うつもりはありません。信じるのも、受け入れるのも。

 孤独では生きていけない人間の中で・・・・・・・・僕は異端ですから。」

無表情で、言葉しっかりに言い放つシンジに、ミサトは脅威と戦慄を覚えた。

 

・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・

 

「お父さんから、IDカード貰ってない?」

カートレインに乗って進むルノーの中で、ミサトが化粧を直しながらシンジに問い掛ける。

シンジは無言で、胸ポケットに入れて置いた封筒ごとミサトに手渡した。

手紙の中身を見たミサトが顔を引きつらせる。

「シンジ君・・・・・・・・」

「質問は”この手紙で来る気になったのは何故か”でよろしいですか?」

「聞くまでも無いわ。」

もはやシンジの先読みにミサトは慣れてしまったのか、溜息をつきながらダルそうに答えた。

「別に・・・・・・・久々に人間の姿を見れるオフィシャルな口実が出来ましたから。

 後はあの生活から逃れたかったからですか。ジメジメとした地獄より僕は灼熱地獄を好むもので。」

自虐気味に笑うシンジの口元を見て、ミサトは息を詰まらせる。

「シンジ君・・・・・・・貴方もしかしてソッチ系の人間?」

「・・・・・・・? 何を言っているか解らないんですが・・・・・・・

 申し訳ありませんが俗語に関してはまったくと言って良いほど無縁なんです。

 もしかして、自己に加えられる傷害を快感と錯覚する・・・・・なんだったかな・・・・・・

 ・・・・・・・そう、マゾヒストか否かという事ですか?」

改めて言い直すシンジにミサトは調子を狂わせながらも控えめに頷く。

完璧に会話の流れが狂ってしまっているのだが、

吐いた台詞は元には戻らず、もう良いわと言っても相手はその台詞の中にある表情を見てウソを見抜く。

葛城ミサト、生涯生きて29年、ここまでやり難い強敵に出会ったのは初めてだった。

そんなミサトの心境は露知らず、シンジは先ほどの自虐な表情を浮かばせながら口を開く。

「さて・・・・・・・・どうでしょうね? 別に僕は苦痛を快楽とはとりませんが、苦痛を望む存在ではあります。

 ただの自殺願望者ですよ。世間ではそれを何と言っているかは知りませんがね。」

手元においてある碇シンジの報告書。

中身はほとんどと言って良いほど見ていないが、ミサトは性格の所はしっかりと把握していた。

 

”自虐的で自殺願望者に近い性格。他人を徹底的に拒絶する姿勢は、孤独を好む性格と取れる。

 人間不信、人間恐怖症、拒絶の理由は様々挙るがおそらくそれの全てが理由ではないかと思われる。

 自分の両眼に異常なコンプレックスを抱いており、常時サングラスを着用している。”

 

読んだ時にはその暗い性格、性根の底から叩きなおしてやろうとも思ったが、

現物を見るとその考えも風前の灯となる。

聞いて天国見て地獄という格言があるが、

聞いた地獄より現実の方が酷い光景だった言うケースは初めての経験だ。

 

・・・・・・・・参ったわね・・・・・・・・・報告書で性格の深さが表せないほどの物とはね・・・・・・・・・

 

まったくお手上げだと人知れず苦笑するミサトを横目で見ながら、シンジは興味を無くしたように瞳を閉じた。

その途端、膝に四角いものが置かれた感触が走る。

目を開くと、一つにまとめられたファイルがあった。

「・・・・・・・・それ、読んでおいて。これから行く所の最低限の知識よ。」

サングラスを指で押し上げ、足を組んでそのファイルに目を通すシンジ。

そのファイルの裏側には極秘と書かれた判があり、

表紙には”ようこそNERV江”と仰々しくプリントされていた。

それを見て思わずシンジは眉をひそめる。

「・・・・・・趣味が悪い、矛盾している、興味無い・・・・・・・・次の貴方の台詞は何かしらね?」

苦笑しながらシンジに習い、その台詞を先読みするミサト。

シンジはそれに対して、そのファイルを黙ってミサトに突きつけた。

「・・・・・・・・・・興味無いのね。」

「言うまでも無し、です。」

ミサトは溜息をついてそのファイルを受け取ると、無造作に後部座席に放り投げた。

「特務機関NERV。ドイツ語で”神経”を意味するその組織は、国連直属の非公開組織。

 何故UNがつかないだとか、神経なんだとか、ドイツ語なんだとか言う質問は遠慮して。」

「・・・・・・・・・・・やはり、活動内容は・・・・・・・・・・・」

「言わずもなが、人類の敵と見なされている使徒の殲滅よ。・・・・・・・・貴方の言う、”お友達”ね。」

「・・・・・・・・・・・・・・使徒・・・・・・・・・・・・・・・」

「そう。あの存在を私たちはそう呼称しているわ。あれの敵である人類は悪魔か堕天使って事かもね。」

ミサトの台詞を聞きつつ、シンジは右手を閉会する。

何か考え事をする時の癖なのだろう。そして、ふと頭をよぎった疑問を口にする。

「・・・・・・・・何故、あの存在が人類の敵ですか?

 僕には一方的に攻撃を受けていたようにしか見えなかったのですが。」

シンジの疑問にミサトは少し間を置くも、やがてゆっくりと口を開いた。

「・・・・・・・・・セカンドインパクトを起こしたから。巨大隕石の衝突というのは真っ赤なウソよ。

 南極に現れた使徒の調査の際に発生した原因不明の大爆発がセカンドインパクト。」

「・・・・・・・・原因不明の爆発が何故使徒のせいと解ります?」

「・・・・・・・・・・・私はその事を枷にして生きて来たわ。

 さっき私の瞳を見た時にも、しっかりと”見えた”んじゃ無いの? 使徒に対する復讐の炎が。

 ・・・・・・・・・・私は、南極調査隊の唯一の生き残り。セカンドインパクトをまじかで見た人間なのよ。

 使徒は許してはいけない。あたしの父さんを殺した使徒を許しては置けない。・・・・・・・でも・・・・・・・」

「それも解らなくなりました、か。」

シンジが続ける台詞に、ミサトは無言で頷いた。

「シンジ君の言う通り・・・・・・・今回の使徒に対して、人類は問答無用で総攻撃を掛けたわ。

 使徒の反撃はそれに対するものばかり・・・・・・・・・

 言わば、派手にやられたからやり返すという人間でもする行為だった。

 もしかしたら・・・・・・・・・人間と同じように、使徒にも良い使徒と悪い使徒がいるのかもしれないわね。」

ミサトの台詞が終わると同時に、カートレインの景色が変わる。

「・・・・・・・・・・ジオ・フロント・・・・・・・・・・」

「そう。人類最後の砦。まあ、シンジ君に言わせれば、

 人類を守るべき人間が地下に隠れてどうするみたいな辛口批評が出てくるんでしょうけどね。」

少し投げやりに窓の外を眺めながら口を開くミサト。

「・・・・・・・・・それで・・・・・・・・具体的に僕は何をさせられるんですか?」

やや皮肉気味に言い放つシンジに、ミサトはそれを溜息で受け流した。

ここまで来ると、もはや何もかもが慣れである。

「・・・・・・・着けば解るわ。何にしろ・・・・・・・シンジ君には辛い事になるだろうけど。」

ミサトは大きく溜息をつく。

「使徒の説得・・・・・・・・出来ればそれが一番いいんだけどね。」

「・・・・・・・・父の敵ではないのですか?」

少し不思議そうに尋ねるシンジに、ミサトは思わず苦笑した。

「別に・・・・・・・父さんを殺したのはあの使徒じゃないし。

 そう考えれば私はあの使徒に対して何の感情も持ち合わせていないわ。

 だから使徒の目的が、我々にとっても平和的な物だったら喜んで叶えてあげたいわね。お詫びって。」

ふざけ半分に喋るミサト。しかしシンジは、その言葉にウソを見出す事は出来なかった。

「・・・・・・・・・・誰かに、会いたいみたいですよ。孤独を消すために、寂しさを消すためにね。

 彼からは真の孤独が見えました。・・・・・・・・・僕と同じ存在だったんです。

 だから・・・・・・・・・友達になって、って言いました。彼は・・・・・・・それに手を差し伸べてくれました。」

俯いて話すシンジの姿に、ミサトは思わず目を細める。

「・・・・・・・・・だから・・・・・・・・・”友達”ね。

 ・・・・・・・”彼”の会いたがっている”誰か”には心当たりがあるわ。機密だから言う事は出来ないけど。」

悪いわね、と続けるミサトにシンジは黙って首を振る。

「別に・・・・・いいです。その情報だけでも・・・・・・NERVに何があるかは想像がつきますから。」

その台詞と共に口を閉ざすシンジ。

そして車内は重々しい沈黙によって支配された。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

・・・・・・

 

コツコツコツコツ・・・・・・・・・・・

広大なNERV廊下を歩くシンジとミサト。

人気がなく音響が良いので足音を響かせるその廊下の裏には沈黙と威圧感があった。

当然、発生源はシンジである。無言の会話の中で響く足音がそれをまるで引き立たせるように耳に入る。

ミサトは人気が無いのを逆に恨んだ。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

無言でミサトの後をついていくシンジのプレッシャーにだらだらと冷や汗を流すミサト。

下手に皮肉や毒舌を言われるより、こっちの方がより効果的なのを本人は理解しているだろうか?

それは限りなく確信に近い疑惑だった。

そんな訳で、ミサトは内心のシンジの評価にサディストの判を押す。

別にシンジ本人はこの状況を楽しんでいる訳ではないのだが。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

サングラスごしでも、そして背中からでも、ビシバシ感じる視線のプレッシャー。

普段のミサトならば「そんなに見つめられたら、お姉さん照れちゃう♪」だとか何とか言うのだろうが、

この状況で言おう物ならさらにプレッシャーの圧力が強くなる事は本能で理解している。

そんな中、シンジがふうっとため息ついてゆっくりと口をあけた。

 

「・・・・・・・・・・・・5回目。」

 

何の数字かは定かではない。しかし、ミサトはその数字の意味する物を痛いほど理解していた。

そしてシンジの追い討ちがかかる。

 

「・・・・・・・・・・・・30分。」

 

そしてさらにプレッシャーを上乗せするシンジに対してミサトはがっくり肩を落とした。

「ゴメンなさい・・・・・・・お迎え呼びますのでどうか許して・・・・・・・」

「もっと貴方が素直だったらこんなに時を浪費する事も無かったんでしょうけどね。」

涙ながらのミサトの謝罪に帰って来たのはこれ以上ない嫌味だった。

・・・・・・・・・・こ、こいつは・・・・・・・・・・・

ミサトの顔が思いっきり引きつる。

「・・・・・・・・・本当に父親そっくりね、ですか?」

この台詞ほどシンジの先読みが憎たらしく思えたのは初めてなミサトであった。

 

・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・

 

「何をしているの葛城一尉。時間も人手も足りない時に。」

すぐ底にあったエレベーターから、何故か水着に白衣を纏い、サングラスをした金髪の女性が出て来る。

「ゴメン、リツコ。まだ不慣れでさ。」

そう言って顔の前でフザケ気味に手を合わせるミサトの表情の中には反省の色は少しも見えなかった。

それを溜息で受け流し、金髪の女性の顔がシンジの方向へと向く。

「この子がサードチルドレン?」

「ええ。マルドゥック機関が選び出したサードチルドレン。碇シンジ君よ。」

ミサトがそう言ってシンジの方を向くと、シンジは無言で会釈した。

そのシンジに金髪の女性が自己紹介に口を開く。

「私は技術一家E計画担当博士、赤木リツコよ。・・・・・・・・・よろしくね? ”魔眼”の碇シンジ君?」

「ちょっと、リツコ!!」

リツコと名乗る女性の言いようにミサトが思わず声を上げた。

「・・・・・・・・・なるほど・・・・・・・・最初から僕に人権はありませんか。」

「どうやら解っているようね。それじゃあついて来てくれる? 見せたい物があるわ。」

自嘲気味に呟くシンジにリツコは威圧的な態度を保ちつつエレベーターに乗り込む。

流石にこのやり取りにミサトはキレたが、リツコに掴みかかろうとしたのを止めたのはシンジだった。

「わざわざこんな事で無駄な労力と時を浪費しないで下さい。僕も無駄に時間を使うのは御免です。」

「シンジ君、貴方こんな扱いうけて平気な訳!!? 貴方の事を人間だと思ってないのよ!!?」

「別に・・・・・・・拒絶と異端視は慣れっこです。化け物だってことは自覚してますから。

 むしろ赤木博士のような態度を取られた方が気が楽なんですがね。」

表面上冷ややかに言い放つシンジの態度に、感情のたかぶりが極限に達するミサト。

そしてしばしの沈黙の後、ミサトは己がサングラスを床に叩きつけて踏み潰した。

「なっ!!?」

「ミサト!!?」

サングラスを取ると言う行動の意味を理解しているにもかかわらず

それを行うミサトにシンジとリツコは声を上げる。

ミサトはそれに構わず、シンジの顔をじっと睨みつけた。

「・・・・・・・・私はシンジ君を化け物扱いするなんて御免よ。

 たとえ望まれてもそう言う態度は取らないからそのつもりで。

 心を読みたければいくらでも読めばいいわ。

 確かに読まれたくはないけど・・・・・・・・心を知られるのは嫌だけど・・・・・・・・

 私はもう心は読まないといったシンジ君の言葉を信じるわ。

 本人に読む気はないんだもの。サングラスは不要でしょう?」

そう言ってやわらかに微笑むミサトにシンジはサングラスの奥からでも解るほどの驚愕を表す。

「・・・・・・・・・・正気ですか? 何故そこまで人を信じられるんですか?」

 

「・・・・・・・・・一人くらい、貴方の事を信じる人がいてもいいと思ったからよ。」

 

ミサトはそう言ってエレベーターに乗り込もうとするが、すぐに顔を青くしてピタッと足を止める。

 

「ああっ!! あのグラサン5千円もしたんだっけ!!

 ・・・・・・・かぁ〜・・・・・・カッコつけて粉々にするんじゃなかったぁ〜・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

思わず頭を抱え込むミサトを見て、シンジは本気でこの人物の思考がわからなくなった。

「・・・・・・・・ブザマね。」

顔を引きつらせて僅かにサングラスをずり落としながら、

リツコはミサトに対して心からの台詞をプレゼントするのだった。

 


 

・・・・・・・・短い文章に心理状況の移り変わりを詰め込みすぎました。

本来はもうちょっと時間を掛けてからするべき行動がたった一日で起こってしまってます。

たとえばミサトのサングラス着用の放棄とか。

心理描写や台詞も、うまく組み立てられずになんだかなぁ〜というようなものが続出。

・・・・・・・・やはり僕の力では心理描写をテーマにした小説は無理だったのでしょうか・・・・・・・・・

とりあえず未熟ながらも精一杯頑張ってみようと思います。

そのうち修正とかすると思うので、どうかこの先も見ていただけると幸いです。

それでは意見感想、心待ちにしております。

以上、アンギルでした。