あの、とんでもない事件がようやく終わったかと思うと、あっという間に季節が過ぎていった。
そして、この街にも冬がやってきた……。
「あ、そういえば、明日はクリスマスイブになるんですね~」
夕食が終わり、居間で皆が揃ってのんびりと食後の紅茶などをたしなんでいると、不意に琥珀さんが手を打って言った。
この世間一般から隔絶された場所であるところの遠野家で、唯一のテレビの持ち主でもある琥珀さんだけあって、国民行事となったこのお祭りのことも知っていたようだ。
一方、対照的に一般常識に欠ける感のある我がお嬢様は小首を傾げていた。
「クリスマスイブ? クリスマスなら、私も聞いたことはありますけど、それとは違うの、琥珀?」
「はい。クリスマスイブは本来、クリスマスの前の日を指すんですよ~」
「あら、そうなの。どうしてそんな面倒な呼び方をするのかしらね」
肩をすくめる秋葉に、琥珀さんはちらっと俺を見てから言う。
「それがですね、秋葉さま。クリスマスイブには、恋人同士は二人っきりで過ごす習わしになってるんですよ~」
「こっ!」
絶句し、それから慌てて平静を装う秋葉。
「そっ、そうなの、それは知らなかったわ」
カチャカチャ
手にしていたティーカップを皿に戻す手が震えてるぞ、秋葉。
一方の琥珀さんは嬉しそうにぽんと両手を合わせながら、言葉を継ぐ。
「はい。聖夜っていうくらいですから」
「せ、性夜っ!?」
かぁっと真っ赤になる秋葉。……どうでもいいが、それは字が間違ってるぞ。
「そっ、そんな、私はまだ、えっと……」
秋葉は、ちらちらと俺を見ながら、指を突き合わせ始めた。
いかん、このままでは俺まで泥沼に誘い込まれそうだ。
俺は立ち上がって大きく伸びをした。
「さぁて、それじゃ寝るかな」
「あらぁ、志貴さんはもうお休みですかぁ?」
笑顔で俺に視線を向ける琥珀さん。
「はい。それじゃ」
まだぽーっとしたまま、指を突き合わせている秋葉をちらっと見て、そそくさとその場を退散する俺だった。
部屋に戻って、ドアを閉めると、大きく息をつく。
「……やれやれ」
これまで、秋葉に対して、どっちつかずの態度を取り続けてきてしまったけれど、そろそろはっきりとした答えを返してあげないといけない。
それは判ってる。そして、俺の返す答えも決まってる。
……そのつもりなんだけど……。
と、くいっと服の裾を引っ張られる。
そっちを見ると、青いロングヘアに黒い服の少女が、俺を見上げていた。
俺は屈み込んで頭を撫でてあげる。
「ただいま、レン」
レンはくすぐったそうに目を細めた。
元アルクェイドの使い魔で、今は俺のところにいるレン。普段は黒い子猫の姿をしているが、俺の部屋で和んでいるときは、この少女の姿でいることが多い。
と、ノックの音がした。
トントン
「すみません。もうお休みですか?」
「翡翠かい? いや、まだ起きてるけど」
「それでは、失礼します」
ドアを開けて、深々と一礼する翡翠。それから顔を上げて部屋を見回す。
「うん、どうしたの、翡翠?」
「……いえ、誰かがいたような気がしたものですから。でも、レンさんだけのようですね」
「ああ、そうだよ」
俺は振り返って、苦笑した。
レンはベッドの上で丸くなっていた。もちろん、さっきの女の子の姿ではなく、今は黒い子猫になっている。
そう、レンは秋葉や翡翠、琥珀には、俺が拾ってきた子猫という風に認識されているのだ。だからこそ、レンと一緒に暮らしていけるわけで、もし少女姿のレンが俺のベッドで添い寝をしているところなど見られたら、それこそどうなるか……、想像したくもない。
ちなみに、今のところレンの正体を知っているのは、当然ながら元の飼い主(本人曰く預かり主)のアルクェイドと、その経歴上魔法ということに詳しいシエル先輩くらいなものであり、遠野家の面々は、俺が拾ってきた子猫としか思っていないわけだ。。
閑話休題。
翡翠は一通り部屋を見回してから、俺に向き直った。
「お風呂の用意が出来ましたので、どうぞお入りになって下さい」
「ああ、ありがとう。……レンも一緒に入るかい?」
俺が振り返って尋ねると、レンはぷいっとそっぽを向いてしまった。
翌日。
授業そのものは午前中で終わったのだが、帰りがけにシエル先輩にばったり逢ってしまい、そのままメシアンに連行されたおかげで、ようやく遠野家の門に着いたときには、既に日は傾いていた。
ちなみにメシアンで何があったのかは……想像にお任せする。まぁ、シエル先輩がシェフに捕まって皿洗いをさせられている、という事実だけを述べておこう。
遠野家の門の前に立っていた翡翠が、俺の姿を見て深々と頭を下げる。
「お帰りなさいませ、志貴さま」
「あれ? どうしたの、翡翠? 今日は待ってなくてもいいって朝言わなかったっけ?」
ちなみにそう言ったのは、帰りがけにシエル先輩に拉致されるのを予想してたからなのだが。なにせ、メシアンではシエル先輩、連敗続きだし。
「はい、確かに志貴さまはそうおっしゃいました」
こくり、と頷く翡翠。
「ですから、ここで待っていたのはわたしの一存です」
う~ん、翡翠は時々頑固だからなぁ。
俺は翡翠の手を取った。思った通り、冷え切ってる。どれくらいここで待っていたのかが判る。
「しっ、志貴さまっ!」
かぁっと赤くなると、翡翠はばっと手を引いて一歩下がった。そのままじぃっと俺を睨む。
そんな翡翠に、俺は笑いかけた。
「そんなに体が冷えるまで待ってたんだね。ありがとう。それじゃ屋敷に戻ろうか」
「えっ? あ、はいっ」
頷いて、俺の後ろに従う翡翠。
そのまま、俺は門をくぐり抜け、屋敷に向かった。
屋敷の玄関を開けるなり、笑い声が聞こえてきた。その笑い声は、どうやら応接間から漏れてきているようだ。
「……?」
思わず振り返って翡翠に視線で尋ねると、すぐに聞きたいことは判ったらしい。
「本日は、秋葉様のご学友の方々が遊びに来られていらっしゃいます」
ご学友……って要するにクラスメイトのことなのかな。
自分で納得してから、翡翠に聞き返す。
「へぇ、珍しい……というよりも、そんなこと、俺がここに来てから初めてじゃないか?」
「いえ、志貴さまが戻られる以前にも、いらっしゃったことはありませんでした」
翡翠が答えると同時に、不意に応接間に通じるドアが開いて、琥珀さんが笑いながら出てきた。
「大変大変、急いで用意しないと……。あら、志貴さん、お帰りになられたんですか?」
見事なタイミングだった。まるで計ったような。
俺は頷いて答える。
「ええ、たった今」
「そうですか、お帰りなさい。あ、そうそう」
不意に一本指を立てる琥珀さん。
「志貴さん、しばらく食堂に来ちゃダメですよ」
「え? でも、どうして……?」
聞き返す俺に、琥珀さんは口元に手の甲を当てる独特の笑い方をした。
「夕食まではヒミツ、ですよ」
「……は、はぁ。わかりました」
なんか怖いような気もするけど、ここは大人しく従っておいた方が良さそうだったので、俺は素直に頷いた。それから訊ねる。
「ところで、秋葉のクラスメイトの皆さんって……」
「秋葉さま~、志貴さんがお帰りになられましたよ~」
その俺の言葉を遮るようにして、琥珀さんはドアの中に向かって声をかけると、「忙しいですね~」とか言いながら、厨房の方にぱたぱたと歩いていってしまった。
と、見たことのない女の子がひょこっと顔を出す。
「え~っ? 秋葉ちゃんのお兄さんが帰ってきたんですか~?」
「こら、羽居」
もう一つ聞き覚えのない声が応接間から聞こえたが、それよりも早く女の子は俺に視線を止めた。
「あっ、あなたが秋葉ちゃんのお兄さんですか~」
のんびりとした口調でそういうと、その娘は部屋から出てくると、深々と頭を下げた。
「初めまして~。秋葉ちゃんとおんなじ部屋の、三澤羽居です~」
「あ、はぁ、どうも。遠野志貴です。いつも妹がお世話になってます」
思わずこちらも丁寧に頭を下げてしまう。
その時、不意にドアが、ばぁん、という勢いで開かれた。
「羽居! それに兄さんもっ! 廊下でなにをしてるんですかっ!!」
言うまでもなくドアを開け放ったのは秋葉である。
「何って、挨拶だよ~。挨拶は大事なんだから~」
平然と答える三澤さん。
「そ、それはそうだけど……。兄さんっ!」
いきなり、じろっと俺を睨む秋葉。
「な、なんだ?」
「と、とりあえず、着替えて来てくださいっ! 話はそれからですっ!」
「まぁ、それもそうか。それじゃ三澤さん、また後で」
「はぁい。それじゃお兄さん、後でまたですっ」
「羽居っ! いいからあなたはさっさとこっちに戻りなさいっ!」
そういいながら、三澤さんの腕を掴んで応接間に引っ張り込む秋葉。
「きゃぁ~」
なんだか緊張感のない悲鳴を上げながら三澤さんが引っ張り込まれ、ドアがぱたんと閉まると、俺は振り返った。
「えっと、今の人が秋葉のクラスメイト?」
「わたしから申し上げるよりも、皆さんと直接お逢いになった方がいいと思いますが?」
う~ん、確かにもっともだ。
とすると、その前に着替えないといけないわけだな。
「それじゃ、まずは部屋に戻って着替えることにするよ」
「それがよろしいかと思います」
無表情のまま答える翡翠。……無表情なんだけど、なんだか心中穏やかならぬという雰囲気だった。
部屋に戻ると、ベッドの上で丸くなっていたレンが、顔を上げて俺の方に視線を向ける。
「や、レン。ただいま」
声を掛けてから上着を脱いでいると、不意に背後からぴたっとレンがしがみついてきた。
「こらこら、着替えてるところなんだから、邪魔しないで」
「……」
いやいや、と首を振るレン。
ははぁ、察するところ寂しかったんだな。まぁ、下であれだけ賑やかにされたんだもんな。
「レンも一緒に下に行くか?」
首だけ後ろに向けて訊ねると、レンは小首を傾げた。それから、少し俯いて考えてから、こくんと頷く。
「よし。それじゃ着替える間待ってて」
俺の言葉に素直に頷いて、一歩下がるレン。
俺は手早く制服を脱ぎ捨てて私服に着替える。そして、鏡を見ながら一通りチェック。
……こないだ、ズボンからTシャツの裾がはみ出してたのが秋葉に見つかったときには、延々と30分くらいお説教食らったからなぁ。
とりあえずおかしいところもないのを確認してから、レンに尋ねる。
「おかしくないかな?」
「……」
こくり、と頷くレンの頭を撫でる。
「それじゃ、行こうか」
部屋の外で待っていたらしい翡翠を伴って、俺は階段を降りていった。
レン(言うまでもなく子猫形態である)は、その俺達の後ろから、ちょこちょことついてくる。
振り返って、レンが付いてくるのに気付いた翡翠は、俺に視線を向けた。
「志貴さま、レンさんが来てますが、お部屋にお戻ししましょうか?」
ちなみに、子猫状態のレンに触れられるのは、うちの中では翡翠だけで、秋葉には触らせようともしないし、琥珀さんなど近づいただけで逃げ出してしまう有様である。
琥珀さんはともかく、秋葉は平然としてる振りを装っていたが、内心はかなり傷ついたらしい。こないだ何気なく秋葉の部屋に入ってみたら、『猫の飼い方』なんて本が本棚に何冊か増えてたし。
それはさておき。
「いや、レンも一緒に行きたいって。な、レン?」
にゃぁ、と鳴いてみせるレンを見て、翡翠は微かに表情を変えた。
「ですが、お客様の前にレンさんを連れて行っては、志貴さまが秋葉さまに怒られるのでは?」
「あ、心配してくれるんだ?」
「……」
からかったと取られたのか、翡翠は俺を無言で睨んだ。俺はぱたぱたと手を振る。
「いや、ごめんよ。そうじゃなくて、ちょっと嬉しかったから」
「えっ? あ、ええっと……」
今度はかぁっと赤くなり、翡翠は口の中でもごもごとなにやら呟いた。それから、頭を軽く振って、真面目な顔に戻る。
普段から無表情な翡翠だけに、こういうわずかな表情の変化が結構新鮮だったりする。
「あ、ありがとうございます。その、それでは、秋葉さまがお待ちでしょうから……」
「そうだね。行こう、レン」
にゃ、と答えて、レンは俺の足に身体をすりつけると、先に歩き出した。
トントン
「秋葉さま、志貴さまをお連れしました」
「ご苦労様」
応接間の中から秋葉の声が聞こえてきた。翡翠がドアを開ける。
僕はレンを抱き上げると、応接間に入った。そして、ぐるっと部屋を見回す。
部屋の中には秋葉と三澤さん、そしてアキラちゃんと少年が一人いた。
一番奥のソファに座っていた秋葉が、優雅に立ち上がり、一礼する。
「お帰りなさい、兄さん」
「ああ、ただいま。ええっと……」
「紹介しますわ。瀬尾はご存じよね。こちらが私のルームメイトだった三澤羽居と月姫蒼香」
「改めまして~、羽居ちゃんって呼んでくださいね~」
三澤さんが笑顔でぺこりと頭を下げる。そしてその隣の少年も軽く頭を下げて……。
……え? ルームメイトって?
俺の表情を見て、少年はにやっと笑った。
「あたしが月姫蒼香だ。確か、あんたとは一度逢ってるよな」
……女の子だったのか。
失礼だけど、それが正直な感想だった。でも、逢ったことって……?
「えっ? ど、どこで兄さんと逢ったのよ、蒼香?」
俺よりも早く聞き返したのは秋葉。彼……もとい、彼女は肩をすくめた。
「前にアキラをライブに連れて行った時にね」
「わわっ、先輩っ、そ、それは、そのっ!」
慌てるアキラちゃんを一睨みで黙らせると、秋葉は月姫さんに先を促した。
「いや、待ち合わせ場所にアキラが男連れで現れてね。その時の男の方が、そこにいる遠野志貴だった、と」
「……兄さん」
じろっと秋葉が俺に視線を向けてきた。
ああ、そういえばそんなこともあったような……。
「えっと、と、遠野先輩、それは、その、そのですねっ!」
「……瀬尾、後で体育館裏に来なさい。話がありますから」
「ひぃっ」
にっこり笑う秋葉を見て、アキラちゃんは慌てて頭を下げる。
「ご、ごめんなさいっ!」
「秋葉ちゃん、アキラちゃんをいじめたらだめだよ~」
三澤さんがおっとりと割って入る。
と、そこにノックの音がして、琥珀さんが入ってきた。
「失礼しますね~。あら、秋葉さま、そんな怖いお顔をして……。もしかして、修羅場でしたか?」
「……そんなことはありません」
タイミングの良い琥珀さんの登場に、秋葉も一気に毒気を抜かれた様子で、ソファに座り直した。それから俺に視線を向ける。
「兄さん、いつまでぼーっと立ってるんですか? さっさと座ったらどうです?」
「あ、ああ、そうだな」
俺は頷いて、手近なソファに座った。
と、三澤さんが俺の抱いているレンに気づいて、声を上げた。
「わ、お兄さん、その子猫ちゃんは?」
「ああ、レンっていうんだ」
「可愛い~。ねぇ、お兄さん、見せて見せてっ」
三澤さんは俺のそばまで来て、両手を組んで言った。いわゆるおねだりの姿勢ってやつだ。
「う~ん、俺はいいんだけど、レンは人見知りするから……」
「そっかなぁ? ほら、レンちゃん、おいで~」
俺の言ったことを聞いていたのかいないのか、三澤さんは手を広げてほわんとした笑顔で呼び始めた。
と。
しゅたっ
「わわっ、可愛いね~」
おお、と思わず息を飲んだのは、レンの偏屈振りを日頃から知っている遠野家一同。
俺の腕から飛び出したレンは、三澤さんの腕の中にすっぽりと収まってあくびを一つ。
そんなレンに頬ずりするようにして、三澤さんは嬉しそうに笑った。
「あははっ、柔らか~い」
そんな三澤さんとレンをじぃーっと見ている秋葉に尋ねた。
「……秋葉、感想は?」
「えっ? あ……。こほん。べ、別に悔しくなんてないですっ」
はっと我に返ってわざとらしく咳払いする秋葉。隣で月姫さんがきししっと笑っている。
「な、なによ?」
「いやぁ、あの遠野秋葉がこんなに可愛らしくなっちゃって、感心してたんだよ」
「……蒼香、あんたね……」
むっとしたように、月姫さんを睨む秋葉。
レンを撫でながら、三澤さんが笑う。
「あはは~っ、いつもならもっとおっかないもんね~」
「羽居、あんたまでっ!」
「ひゃぁ~、お兄さ~ん、秋葉ちゃんが怒るんですよ~っ」
笑いながら俺の座るソファの後ろに隠れる三澤さん。
「羽居、兄さんから離れなさい!」
すっくと立ち上がる秋葉。その隣で「ひぇぇ」と怯えたように身をすくませるアキラちゃん。既に傍観者を決め込んでいる月姫さんと琥珀さん。
さて、どうしたものやら。
思わず、俺も傍観者を決め込もうとかと思ったとき、影のように控えていた翡翠が口を挟んだ。
「秋葉さま、そろそろ夕食の時間では?」
その言葉に、再び我に返ったらしく、秋葉は咳払いをしながら座り直した。
「……そうね。琥珀、夕食の準備は出来ているのかしら?」
「はい、もう出来てますよ。それをお知らせに来たんですから」
にっこり笑う琥珀さん。
「それを早く言いなさいよね。まったく……。それじゃ、皆さん、食堂に案内いたしますわ」
「……おまえさん、いつも通りでも構わないんだぜ」
月姫さんが肩をすくめる。秋葉はきっとそんな月姫さんを睨んだ。
「蒼香、あんまり兄さんの前で変なこと言わないでちょうだい。誤解されるじゃないですか」
「へいへい。それじゃ行くぞ、羽居」
「はぁい。それじゃお兄さん、レンちゃんはお返ししますねっ」
三澤さんは、そう言ってレンを、脇の下を持ってぶら下げるようにして俺に返した。
「ありがとう、三澤さん」
「うーん、やっぱり“三澤さん”より“羽居ちゃん”って呼ばれる方が嬉しいかな、わたし」
小首を傾げるようにして言う三澤さん。
俺は頷いた。
「うん。それじゃ羽居ちゃんって呼ばせてもらうよ」
「わぁい、お兄さんありがとうっ」
嬉しそうに笑う三澤さん……もとい、羽居ちゃんの首筋を、秋葉が掴む。
「羽ピン、食堂はこっちよっ!」
「わぁ、秋葉ちゃ~ん、ちょっと待ってよぉ~」
そのままずるずると引きずられていく羽居ちゃん。
俺は、2人をやれやれという表情で見送っていた月姫さんに訊ねた。
「月姫さん、あの……」
「蒼香。みんなそう呼んでるから。そっちの方があたしもしっくりくるしね」
じろっと俺を見て言う月姫さん。
「それじゃ、蒼香ちゃん、でいいかな?」
「……ぷっ」
背後で吹き出したのはアキラちゃんだった。思わず振り返った俺と月姫さんの視線を浴びて、慌てて小さくなる。
「ごっ、ごめんなさいっ」
「……頼むよ」
ため息混じりに、月姫さんが俺に言う。
まぁ、小柄でボーイッシュな月姫さんに“ちゃん”付けは似合わないのはわかる。
「それじゃ、蒼香くん、は?」
「まぁ、そっちのほうがまだ悪くはない。で?」
「あ、うん。秋葉って寮でもいつもあんな感じなのかい?」
俺の言葉に、蒼香くんは肩をすくめた。
「寮じゃ、もっと過激かもな」
「……聞かなかったことにしてもいいかな?」
「その方が賢明だな」
と、その秋葉がドアから顔を出して俺達を呼んだ。
「3人とも、早く来なさいっ」
俺達は顔を見合わせて、応接間から出た。
「ほほぅ」
「わぁ」
「へぇ」
食堂の入り口で、皆がそれぞれに感嘆の声を上げる。
「えっへん」
琥珀さんは、得意げに割烹着の胸を張ってみせた。
いつもは質素なたたずまいの食堂が、この日ばかりはカラフルなモールで飾り付けられており、おまけにテーブルの脇には天井まで届きそうなほどもあるクリスマツリー(当然飾りおよび電飾付き)が、ちかちかと赤や黄色や緑の光を放っていた。
「……なかなか独創的な飾り付けね、琥珀」
秋葉は、半ば呆れたような口調で言った。
「でも、素敵です~。わたし、この時期はいつも忙しくて、こんな素敵なクリスマスパーティーには出たこと無かったから」
うっとりとするアキラちゃん。……でも、こんな時期に何に忙しかったんだろうか?
と、不意にそのツリーの影でゴホンと咳払いが聞こえた。琥珀さんが、はたと手を打つ。
「そうそう、このツリーを入手するのをお手伝いしてくださった人がいるんでした」
「お手伝いしてくださった人、ですって?」
秋葉は眉をしかめた。
「なんだかすごく嫌な予感がするんですけど、琥珀。もしかしてその人って……ものすごくカレー臭くありませんでしたか?」
「しっ、失礼なことを言わないでください!」
ざっ、とツリーの梢を揺らしながら立ち上がったのは、言うまでもなくシエル先輩だった。しかも法衣姿。
……考えてみると、先輩が法衣姿で眼鏡かけてるとこは初めて見たような気がする。
「シエル先輩、メシアンで皿洗いしてたんじゃなかったですか?」
俺が訊ねると、シエル先輩は腰に手を当てて明後日の方に視線を逸らした。
「そんな過去のことは忘れました」
「……まぁ、いいですけど。それで、このツリー、シエル先輩が用意してくれたんですか?」
「はい。法王庁から取り寄せてもらいました」
そう言ってにっこり笑うシエル先輩。って、はい?
「ほ、法王庁って、ローマですか?」
「当然です。何しろ遠野くんとの始めてのクリスマスですから。……きゃっ」
顔を赤らめて恥ずかしがる先輩に、秋葉が別の意味で真っ赤になってくってかかる。
「どうして貴女がここにいるんですかっ! とっととパリでもローマでもお帰りになればいいでしょうっ!」
それにシエル先輩が何か言い返そうとした、まさにその時、食堂のドアがバァンと開いた。
「やっほ~っ、志貴~~。メリー・クリスマ~ス!」
「……アルクェイド……」
俺は額を抑えた。
どうしてこう絶妙なタイミングで登場するのかな、この人は。
「私、知らなかったんだけど、今日はクリスマスっていってなんかお祭りなんだってね。テレビ見てたら、どこもそんな話ばっかりだったから、遊びに来てあげたよ~」 そう言って笑うアルクェイド。ちなみにどこで手に入れたのか、着ているのは紅白のいわゆるサンタクロースコートにとんがり帽子。
アルクェイドはすすっと俺の脇に来ると、腕を取った。
「ちょっとアルクェイドさんっ、いつも泥棒猫みたいにこっそり入ってこないでくださいっ!」
怒鳴る秋葉を、脇から羽居ちゃんがつつく。
「ねぇねぇ秋葉ちゃん、どなた? 紹介してよ~」
「兄さんの悪い友達よっ」
悪い、を強調して言う秋葉。
「あ~、妹、なんか感じ悪いぞ~」
「誰が妹ですか、誰がっ!」
やれやれ。しょうがない。
「いいから秋葉もおとなしくしろって」
「私はおとなしくしてますっ」
「まぁまぁ。それじゃ皆さん、そろそろ始めましょうか~」
なぜか場を仕切る琥珀さん。
今日はどうやら立食パーティー形式らしく、椅子は片づけられている。
秋葉もそれに気づいて、琥珀さんに視線を向けた。
「琥珀、今日は……?」
「はい。シエルさんのアイデアで、立食パーティーにしてみました~」
きっ、とシエル先輩に視線を向ける秋葉。シエル先輩はさりげなくその視線を受け流す。
「どこかの誰かさんは、すぐに志貴さんの隣に座りたがりますからね~」
「当たり前です! どこの馬の骨とも知れない人を兄さんに近づけさせるわけにはいかないんですからっ」
一方、琥珀さんは翡翠に囁いている。
「翡翠ちゃん、これなら志貴さんの隣にいても不自然じゃないわよ~。がんばってねぇ~」
「ねっ、姉さんっ……」
かぁっと真っ赤になって俯く翡翠。
……どうでもいいけど、琥珀さん、聞こえよがしにそういうことを言わないでほしいなぁ。
「わぁ、それじゃアルクェイドさんってお姫様なんですね~。すごいなぁ~」
「あははっ」
羽居ちゃんにほめられて照れ笑いをするアルクェイド。
「ねぇねぇ、志貴、聞いた? わたしってすごいんだって~」
「……まぁ、いろんな意味でな」
俺の口調に、不満げな顔をするアルクェイド。
「志貴、なんか冷たいよ」
「当たり前です。なんであなたみたいな人外に優しくしないといけないんですか」
今まで蒼香くんと話をしていたシエル先輩が、お皿を片手に割り込んでくる。
「なによ~、邪魔しないでよ、シエル~」
「そちらこそっ」
「ところでシエルさんって、教会の人なんですかぁ?」
羽居ちゃんが、そのシエル先輩に尋ねる。
まぁ、確かにそれらしい単語を連発してたし、それに法衣姿だし。
「はい。私、実はローマ法王庁の関係者なんです」
えへん、と胸を張るシエル先輩。……まぁ、その法王庁の中でも異端の埋葬機関に所属しているエクソシストだ、とまでは言わないでおこう。
「でもシエル先輩、どうして法衣なんて着てるんですか?」
まさか仕事? と視線で訊ねると、シエル先輩はあっさりと首を振る。
「これって、教会関係者の制服みたいなものですから」
「ところで、お兄さん。結局この外人さんのお二人さんってどういう方なんですかぁ?」
羽居ちゃんが俺に尋ねる。蒼香くんやアキラちゃんも、飲み物のグラスを片手に俺の方に視線を向けた。
「確かに、どうして外人さんの知り合いがいるのかは知りたいところだな」
「わたしも知りたいです。あ、もちろん嫌なら別にいいんですけど、その……」
最後はごにょごにょと口ごもってしまうアキラちゃん。
さて、なんと説明したものか……。
正直に全てを話すわけにも行かないし……、と困っていると、シエル先輩が笑顔で言った。
「そういえば、ちゃんと自己紹介もしていませんでしたね。ごめんなさい。私はシエル、フランスから来ました」
「へぇ、フランスなんですかぁ」
「はい。教会のお仕事もしてるので、今日はクリスマスってこともあってこんな格好してますけど」
法衣の裾を摘んでみせる。
「教会なんだ~。あ、そういえば、蒼香ちゃんは家がお寺さんなんだよね~」
「忘れろ。もしくは二度と口にするな」
きっぱりと言う蒼香くん。羽居ちゃんは慣れているのか気にした風もなく頷く。
「そうだったね~。ごめんね~」
「……で、そちらは?」
話を逸らそうと、蒼香くんはアルクェイドに視線を向けた。
うわ、まずい。アルクェイドに自己紹介なんてさせたら一巻の終わりだっ!
慌てて止めようとしたが、遅かった。
「あ、わたしはアルクェイド。アルクェイド・ブリュンスタッドよ。で、この子の元の飼い主」
足下にいたレンを抱き上げて言うアルクェイド。レンはじたばたっともがくと、その手から抜け出して俺のところに駆け寄ってきた。そして俺の足に体をすりつける。
「ま、こんな感じで今はすっかり志貴の猫になっちゃってるけど。ね、志貴?」
「あ、ああ、そうだな」
意外にまともな自己紹介だったので、ちょっと拍子抜けしている俺。
「ところで、皆さんはどうしてこちらに?」
シエル先輩が尋ねた。……そういえば、なんで来たのか聞いてなかったな。
「ああ、それは羽居がね」
にやっと笑う蒼香くん。
「羽居ちゃんが?」
「いや、こいつ、実家に帰りたくないってだだこねてね。まったく」
「あ~っ、蒼ちゃんひどい~。蒼ちゃんだって家に帰りたくないって言ったのに~」
羽居ちゃんがぷっと膨れる。
秋葉が肩をすくめる。
「うちの学校の場合全寮制ですから、長期の休みになると、普通の人は実家に帰るんです。ところがこちらの2人は実家に帰りたくないというわけで、うちに避難してきたんです。流石にここまでは、家の人も追いかけてきませんから」
「まぁ、そうかもしれないなぁ。ところで、アキラちゃんもそうなの?」
「わっ、わたしは、そのっ、ま、まぁ、そんなところです。えへへっ」
照れたように笑うアキラちゃん。
そんな騒がしい宴は、いつしかお酒が入ってさらに盛り上がった。
……未成年はお酒を飲んだらいけないんだけどなぁ。
で、真っ先に潰れたのが予想通り翡翠だった。続いて秋葉のルームメイト達やアキラちゃんも酔っぱらってしまい、琥珀さんに客間に送還された。
ここで、それまでそれなりに大人しくしててくれたアルクェイドとシエル先輩がいきなり喧嘩を始めてしまい、止める間もあらばこそ、そのまま2人で外に出ていってしまった。
まぁ、あの2人のことだから大丈夫だとは思うけど。
というわけで、ふと気づくと、食堂には俺と秋葉の2人きりになっていた。
「……なんだ、俺達だけか。それじゃそろそろお開きにしようか」
「……兄さん」
グラスを片手に、秋葉は俺に視線を向けた。
「私とでは、嫌ですか……?」
「そんなこと、あるわけないだろ?」
「……そう」
秋葉は、嬉しそうに微笑んだ。
思わず、俺が見とれるほどの艶やかな笑み。
俺は、咳払いをして、それから言った。
「正直、少し疲れたよ。ほら、ずっと立ちっぱなしだったし」
「ああ、そういえば。それじゃ……」
少し考えてから、秋葉は食堂を出た。そして振り返る。
「なにをしてるんですか? ほら、早く」
「あ、ああ」
頷いて、俺は秋葉の後を追った。今は琥珀さんも翡翠もいないので、このまま秋葉を放っておくこともできなかったし。
パチッ
紐を引くと、蛍光灯は数回瞬いて、光を灯した。
電気を付けた秋葉は、振り返る。
「さぁ、兄さん。ここならゆっくりと座れますよ」
秋葉が俺を連れてきたのは、離れの一室だった。
「……兄さん?」
「ああああああききききはははははは」
別にふざけているわけではない。真冬の最中に、10分ほどとはいえ、部屋着のまま外を歩かされた結果である。そのうえこの部屋には暖房も無いわけで、文字通り歯の根が合わない状態なのである。
秋葉はというと、酔ってるせいで寒さも感じないのか、いつも通り平然としている。
「どうしたんですか、兄さん?」
「さ、寒い、んだよ」
自分で自分を抱きしめるようにして言う俺に、秋葉は少し考えて、押入を開けた。
「確か、ここに布団があったかと……きゃぁ!」
どさどさっ
押入から崩れ落ちてきた布団に飲み込まれる秋葉。
「秋葉っ!」
慌てて駆け寄ると、俺は布団をかき分けた。
「大丈夫かっ、秋……」
「兄さん」
いきなり布団の中から腕が伸びてきたかと思うと、そのまま引っ張り込まれるようにして、俺は布団に倒れ込んでいた。
「こ、こら、秋葉っ」
「兄……さん」
秋葉の声に、どんな魔力があったのか。
少なくとも、俺の中から、秋葉に抵抗しようとする力を根こそぎ奪っていくには十分だった。
なぜなら、それは今にも泣き出しそうな声に聞こえたから。
「私では……いけないんですか……?」
「秋葉……」
気が付けば、至近距離で俺と秋葉は見つめ合っていた。
「兄さん……、私……」
「……秋葉、お前は酔ってるんだ」
「ええ。酔ってなければ……こんなこと、言えません。……笑ってください。私は、お酒の力を借りてしか、本当のことを言えない弱い女なんだって」
その青い瞳が潤んでいる。その赤い唇が震えている。
「兄さん……。好きです……」
俺は。
「……ごめんなさい。兄さん」
そう言って、身体を起こそうとした秋葉の肩を押さえる。
「……兄さん?」
驚いたような声音。
「勘違いしないでくれ。……俺は酔ってないし、同情やそんなくだらないものの為じゃない。俺も……、秋葉のこと、好きだから」
「兄さん……」
つぅっと、青い珠が秋葉の頬を流れ落ちた。
「まったく、この年の瀬の忙しいのに往診などさせおって」
遠野家の主治医である時南(じなん)宗玄は、そう言いながらベッドの枕元に立って俺を見下ろす。
俺だって、呼んだ訳じゃない。呼んだのは……。
「どうなんですか、時南先生?」
秋葉が心配そうに訊ねると、ヤブは聴診器を鞄に仕舞いながら、からからと笑いやがった。
「なぁに、秋葉嬢ちゃんが気にするほどのことではないわ。ただの風邪じゃよ」
「わざわざお呼びしちゃってすみません。わたしも、志貴さんは単なる風邪ですよって言ってるのに、秋葉さまったら、わたしの診断じゃ信用できない、なんて言うもんですから」
琥珀さんが苦笑しながら、時南先生のコートを広げて着せていた。
「おっと、すまんの、嬢ちゃん」
「いえいえ~」
「しかし、なんで風邪なんぞ引いとるんだ、こいつは?」
時南先生が訊ねると、琥珀さんはにっこり笑った。
「さぁ、わたしは知りませんけど。ただ、今朝わたしが見付けたときには、志貴さんったら離れで寝てたんですよね」
「離れって、あの離れか? ……志貴、お前さんが自分の身体をどう扱おうとかまわんが、医者としてはそんな無謀なことは二度とするなと忠告しておくぞ」
俺がこくりと頷いて見せると、とりあえずそれで納得したらしく、時南先生は部屋を出ていった。
「……コホン。琥珀、時南先生をお見送りしてきて」
赤くなった秋葉が、咳払いして言うと、琥珀さんは笑顔で俺に「それじゃ、お大事に」と言い残して、部屋を出ていった。
ドアが閉まると、俺は秋葉を手招きして、小声で囁いた。
「秋葉、琥珀さん、知ってるの……? その……、俺達の、こと……」
「……はい」
耳まで真っ赤になって、こくりと頷く秋葉。
……道理で、俺がダウンしてるのに、翡翠が姿を見せないわけだ。
「翡翠なら、私が命じて、蒼香や瀬尾達の世話をさせていますから」
俺の考えていたことが判ったのか、秋葉はそう言うと、枕元の椅子に座った。
「兄さんの看病は、私がしますから。御心配なく」
「……」
そうか、と頷く。
ちなみに、さっきから極端に俺の口数が少ないのは、喉が痛くて声が出せないからである。
「……ごめんなさい、兄さん。私のせいで……」
秋葉が泣きそうな顔で俺の額に手を当てる。
冷たい手が心地良い。
俺は首を振って、秋葉のせいじゃないと微笑んだ。
「……兄さん」
秋葉は、ゆっくりと顔を近づけながら、目を閉じる。
「……風邪、移るぞ」
「構いません……」
ゆっくりと、俺達は……。
「あ、そうそう」
不意にドアが開いて、琥珀さんが顔を出した。それから、不思議そうに秋葉を見る。
「どうしたんですか、秋葉さま? そんなところで転んで……」
「なっ、何でもないですっ」
咄嗟に飛び退いたまでは良かったが、その弾みにすっ転んでしまった秋葉は、ばつが悪そうに立ち上がると、琥珀さんに視線を向けた。
「それよりも、なんですかっ?」
「あ、はい。まだお二人に言ってなかったなって。メリー・クリスマス!」
「……クリスマスは昨日やったんじゃないの?」
「いえいえ。昨日はイブですから。クリスマスは今日なんですよ~」
笑顔でそう言うと、琥珀さんはドアをそっと閉めた。
秋葉は、そのドアをじっと見ていたが、ふぅとため息を付いた。それから、俺に向き直る。
「兄さん、メリー・クリスマス」
今度こそ、俺達は、静かに唇を重ねていた。
窓の外では、また雪が降り始めていた。
「……いいの、シエル?」
「……まぁ、今日はいいでしょう」
「なんだかよくわかんないけど……。でも、ま、いっか」
「アルクェイド、どこかで食事でもしませんか? 振られた者同士、ということで」
「わたし、振られてないよ。志貴は妹に貸してるだけだし」
「……」
「でも、食事は賛成。それじゃ行こっか」
ザッ
梢が揺れて、アルクェイドは地面に降り立った。
続いて飛び降りてくるシエルに、彼女は笑いかける。
「でも、考えてみれば初めてじゃない? あなたがわたしを食事に誘うなんて」
「……今日は、クリスマスですから」
シエルは微笑んだ。そして、空を見上げる。
「雪……。ホワイト・クリスマス、ですか……」
「行こっか、シエル」
歩き出そうとしたアルクェイドの足に、いつからそこにいたのか、黒い子猫が身体をすりつけた。
アルクェイドは、ひょいと子猫を抱き上げる。
「レンも、今日は一緒に行こっか」
なぁ~っ、と鳴き声を上げる子猫を抱いて、アルクェイドとシエルは並んで歩き出した。
Merry Christmas
あとがき
今回の書き下ろし、秋葉SSです。
いやぁ、難産だった(苦笑)
01/12/23 Up