公衆電話の受話器を見つめている一人の少年がいる。
『・・・・・・戻ってきたんだ・・・・・すべてが始まり終わったこの世界へ・・・・』
シンジはそっと後ろを振り向く。
そこには綾波レイが立っていた。
「レイ・・・・・今度は大丈夫だよね。
君もいるし、ショウもいる。
・・・必ず君を守るよ。」
シンジがやさしく微笑むと、レイは頬を染めながら微笑み返してくる。
 
みつめ合っている二人の邪魔をするがごとくにあたりに爆音が響いてくる。
シンジの上空を戦闘機が通過する。
シンジはその戦闘機の先にいる巨大な生物を見上げてつぶやく。
「第3使徒、サキエル」
 
 
 
 
 
エヴァンゲリオン〜Return to the past〜
第1話〜使徒襲来〜
 
 
 
 
 
進行を続けるサキエル。
攻撃を仕掛けている戦闘機。
シンジはその場から一目散に走り去っていた。
自分を迎えにくるであろう自分の姉だった人がくる方角に・・・・・・
シンジに向かって猛スピードで走りこんでくる青いルノーが急ブレーキかけてシンジの横でぴたりと止まる。
「ごめん、おまたせ!」
車の中には葛城ミサト作戦部長。
「葛城さん?」
シンジは懐かしさで思わず目頭が熱くなる。
「早く乗って!!」
シンジを車に乗せ急いで駆け出す。
戦闘機の破片やビルの破片で車がぼこぼこになっていく。
『そういえば、この車って結構高いんだよな』
どうでもいいことを考えるシンジであった。
 
 
 
 
 
その後、N2地雷によって車ごと吹き飛ばされた二人があたりの車からバッテリーを徴収し、ネルフへと向かっていた。
「どうもありがとう。助かったわ」
「いえ、たいした事はしてませんから」
『ミサトさんか、悪い人ではないんだよな。僕にとって姉さんみたいな人だったし。
でも、僕達を復讐の道具にしてたってことは納得いかないんだよな。
僕もレイもアスカも命かけてたわけだし』
「私は葛城ミサト。ミサトでいいわよ。よろしくね、碇シンジ君」
「はい、こちらこそ」
「そうそう、お父さんからID貰ってない?」
シンジは無言でIDの入った封筒を渡す。
手にもっていたのでグシャグシャになっていた。(ミサとの写真も含めて)
そのことにちょっとムッとなったミサトだが、すぐ気を取り直して
「じゃあ、これ読んどいてくれる」
シンジに[ようこそネルフへ]と書いてあるパンフレットを渡す。
シンジはパンフレットは受け取ったものの読もうともせずに外ばかり眺めて・・・
『レイ大丈夫かな?怪我がひどかったんだよな?早く会いたいな』
レイのことばかり考えていた。
その事にミサトが怒り愛車のルノーをご自慢のドライビングテクニックを披露したが、レイのことばかり考えていたシンジには効果がなかった。
『な、何で?何でこんな平然としてられるの??』
その事を不思議に思うミサトだった。
携帯で幾度となく彼女の車に乗り走馬灯を見つづけた部下、日向マコトに連絡を入れるミサト。
「ええ、そう、彼は最優先で保護してるわよ。迎えに行くのは私が言い出したことですもの、責任は取るわよ。
カートレイン用意しててくれる?そう、わかったわ。それじゃ」
「ミサトさん?」
「ん?なに?」
「これから父のところに行くんですよね?」
「ええ、そうよ。お父さんの仕事知ってる?」
「世間一般的にいうなら、人類を守る立派な仕事だそうですね」
「そうだけど。シンジ君はそう思ってないと」
「どうですかね?」
ごまかすシンジ。
「お父さんのこと、苦手?」
「そうなんだと思います」
「そう」
 
 
「ジオフロントか」
『懐かしいな。いろいろあったんだよな、ここに来て。
最後は最悪の結末になちゃったけど、今度は大丈夫だ。いっしょに戦ってくれる人もいる。
何よりレイ。君がいるから』
「そう。これがあたし達の秘密基地、ネルフ本部。世界再建の要となる所よ」
ミサトが自慢下に言うが、シンジはぜんぜん聞いちゃいなかった。
 
 
 
 
『そういえば、ゲイジにつくまで結構かかったんだよな・・・・』
シンジの記憶どおり葛城ミサトは迷っていた。
『でも、下手に僕がなんかしたら疑いかけられそうだしな。ショウがくるまで下手なことはしないほうがいいか』
シンジは前回の記憶をたどって下手なことをしないようにと考える。
「あの、ミサトさん?」
「べ、べべべ別に迷ってなんかないわよ・・・・」
「自分で言ってどうするんですか」
半ば呆れ顔のシンジ。
ミサトは一筋の汗を流す。
「誰かに迎えに来てもらったらどうですか?」
「ハハ・・・・アハハハ・・」
『ごまかそうとしてるな・・・』
 
 
数分後、電話をかけ赤木リツコに迎えに来てもらったミサト。
「遅いわよ。時間も人手もないんだから」
水着の上に白衣というわけのわからない格好で登場する赤木リツコ。
「ごみん!」
本気で誤っているのかわからないがミサトが一応謝っている。
リツコはシンジのほうに視線を向けると・・・
「その子ね、サードチルドレンって」
「はじめまして、碇シンジです」
シンジにとっては違うのだがリツコにとってははじめてである。
「私は赤木リツコ。よろしく。リツコでいいわよ。さっそくだけどちょっとついてきて。見せたい物があるの」
『初号機か・・・』
言葉には出さずに黙ってリツコについていく。
 
 
 

少しすると電気が一斉につく。

そして目の前には、水面に顔だけを出してたたずむエヴァンゲリオン初号機。
『・・・母さん・・・・』
「これはね人の作り出した究極の汎用決戦兵器、人造人間エヴァンゲリオン」
 
「これが僕の呼ばれた理由ですか?」
 
「そうだ」
ゲイジに重苦しい声が響く。
シンジは相手を確認することもなく誰だかわかっていた。
「久しぶりだな」
威圧的な態度でシンジを見下している碇ゲンドウ。
以前のシンジであれば、ゲンドウの顔もまともに見れなかったであろうが、今のシンジにはもはやゲンドウなど眼中になかった。
「3年ぶりかな?」
ゲンドウの気持ちはレイから受け取った知識では知っている。
悲しいやつだとは思う・・・しかし・・・・
『でも・・・レイを道具にしたり、トウジを殺したことは決して許されることじゃない!!』
「シンジ、私が今から言うことをよく聞け。
これにはおまえが乗るんだ。そして、使徒と戦うのだ」
「ちょ、ちょっと待ってください司令!!」
ミサトがゲンドウの言葉に反応する。
「綾波レイでさえエヴァとシンクロするのに7ヶ月もかかったんですよ!
今日きたばかりのこの子にはとても無理です!!」
「すわっていればいい。それ以上は望まん」
「しかし!!」
「葛城一尉!」
リツコがミサトを止める。
「今は使徒撃退が最優先事項よ。
それとも、ほかにいい方法があるとでもいうの?」
確かに方法はない。
ミサトはリツコの言葉に押し黙ってしまう。
「さ・・・シンジ君。こっちへ来て」
『やれやれ、やっと口論が終わったか』
シンジはゲンドウを見上げる。
「父さん」
「なんだ?」
「乗ってもいいけど、条件があるよ」
「乗った後で聞いてやる」
「今聞いてほしい条件が1つだけあるんだ」
「いってみろ」
「綾波レイに会わせてよ」
「「えっ!!」」
ミサトとリツコの声が見事にユニゾンする。
ゲンドウもこちらからわかるほど変化を表した。
「なぜ、レイのことを知っている?」
ゲンドウの目線が少し鋭くなっている・・・が、シンジはぜんぜん感じていない。
「そんなことはどうでもいいだろ。で、かなえてくれるの?」
笑いながらゲンドウを見るシンジ。
「冬月、レイをこっちへよこせ」
「使えるのかね?」
「戦わせるわけではない」
 
 
 
しばらくすると重症のレイが運ばれてきた。
シンジはレイの姿を見かけると一目散にそばにかけよる。
「レイ、大丈夫?」
シンジはやさしくレイの頬に自分の手のひらを重ねる。
「シンジ君・・・」
レイもシンジの頬に手を伸ばそうとするが、体に激痛が走る。
「無理しないで!使徒は僕が倒してくるから、安心して」
「うん」
その言葉を聞き安心したのかレイは眠りについてしまう。
 
一方、ミサトとリツコのほうはレイとシンジがなにを話しているのか気になって聞き耳を立てていたが声が小さいため聞き取れなかった。
 
「約束どうり、僕が乗るけど・・・後の条件は終わった後に聞いてもらうからね」
シンジはゲンドウを見上げるとそう言い放った。
「わかった。赤木博士、説明を」
「わかりました。シンジ君こっちへ来て」
シンジは黙ってリツコの後をついていく。
 
 
 
 
『主電源接続』
 
『全回路動力伝達』
 
『起動スタート』
 
『A10神経接続異常なし』
 
『初期コンタクト全て異常なし』
 
『双方向回線開きます』
 
 
「やるわね、あの子」
「ええ、驚くぐらいスムーズに進んでるわ」
「シンクロ率41%で安定」
「すごいわね、初めてで41%なんて」
「いける!!」
 
 
 
『・・・母さん・・・うん・・・・でも少しおさえないとね・・・・そう・・・・ありがとう』
起動もうまくいったようだな。
シンクロ率もばれることはないだろうしね。
今はこれでいいかな。
「シンジ君、いいわね」
ミサトがシンジに確認を求める」
「はい」
 
 
 
「いけるわ」
「エヴァンゲリオン初号機発進準備」
 
『五番ゲートスタンバイ』
 
『進路クリア、オールグリーン』
 
『発進準備完了』
 
「碇司令、かまいませんね」
ミサトはゲンドウに最終確認をとる。
「無論だ、使徒を倒さぬ限り我々に未来はない」
いつものポーズを崩さず言う。
「発進!!」
その言葉とともに初号機は地上に射出される。
 
 
 
 
目の前には第3使徒サキエルがこちらを見ている。
「最終安全装置解除。エヴァンゲリオン初号機リフトオフ!」
ネルフにいる人全員が息を飲む。
 
 
シンジは目でサキエルの動きに注意しながら考えていた。
『前回はやられたけど今回はそうはいかない。
トウジの妹ってどこにいるんだろう?
やられた振りしてあたりを探すか』
「シンジ君、今は歩くことだけ考えて」
スピーカーからリツコの声が聞こえる。
『敵を目の前にして歩く指示とはね、今思えばかなり間抜け』
シンジは軽くため息をはく。
『この辺にはいないようだけど・・・』
シンジがトウジの妹を探していると一瞬のうちにサキエルが突っ込んできた。
後ろに飛びながら衝撃を避けるシンジ。しかし、それでも数百メートル飛ばされてしまう。
「くっ!!」
『油断した!!』
シンジが立ち上がろうとした先には・・・・
トウジの妹ナツキちゃんが腰を抜かして座り込んでいた。
 
 
「民間人があんなところに!!」
「保安部に連絡して保護させて!!」
 
 
『まずい!!こんなところにいたなんて・・・・』
シンジはナツキをかばうようにサキエルに背を向ける。
「シンジ君!!」
サキエルは遠慮なしに光線を撃ってくる。
「ぐっ・・・く、くそ・・・」
ナツキはまだ呆然としている。
状況がつかめていないのだ。
『どうすればいい・・・・・いったいどうすれば・・・』
シンジがこの状況をどうにかしようと考えているとき、ナツキの体が不意に抱きかかえられた。
シンジもよく知っている人物。
「ショウ!!」
 
 
「また民間人!!」
「保安部はまだなの!!」
 
 
ショウはナツキを抱きかかえると初号機にむかって笑いながら親指を突き出す。
そのまま戦線を離脱した。
『ありがとう、ショウ』
シンジは一気に起き上がるとサキエルにむかって駆け出すが・・・・
サキエルはATフィールドをはり接近させまいとする。
 
 
「ATフィールド!!」
「だめだわ、ATフィールドがある限り・・・」
「使徒には接触できない・・・」
ミサトとリツコが愕然としているところに報告が入る。
「初号機もATフィールドを展開!位相空間を中和していきます」
「やはり、エヴァも使えたのね。でも、シンジ君がなぜ・・・」
 
 
「これで終わりだ!!」
一瞬のうちにATフィールドを中和し、初号機の拳がサキエルのコアにぶち当たる。
サキエルが初号機とともに自爆しようと絡みつくが、初号機に蹴り上げられ上空で爆発してしまった。