御注意、プロローグを読んで下さった方へ
 

今回の話にはプロローグで登場した主人公である碇シンジは登場しません。

彼の登場は二話以降となります。

この第一話に彼と同姓同名の別人が登場しますが、彼の出番は今回だけなので御容赦ください。

シンジのキャラが違っているじゃないかと混乱された方、ごめんなさい。
 
 
 
 

ユッケ



 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

歪な福音
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

1st Episode “ハンサム・アタック” A.Part


 
 
 
 
 
 
 
 
 

 夏の陽射しを受けて、陽炎を立ち昇らせている炎天下のプラットホーム。
 

「香澄さん・・・僕、行くね・・・」
 

 其処に佇む黒髪黒目の儚げな容姿を持った母性本能をくすぐりまくりの美少年。
 彼は今、第三新東京市へと向かうリニアへと乗り込もうとしていた。
 

「・・・やっぱり、私もついて行くわ」
 

 そう言ったのは、彼の正面に立っているスレンダーな肢体をシックなパンツスーツに包んだサングラスをかけた美女、香澄サヤである。
 

「ううん、大丈夫だよ。だって、あそこには母さんが待っているんだし・・・」
 

 男性とは思えないくらいに可愛らしい仕草で首を振る美少年。その行動には何故か光がキラキラと舞って見える。
 

「・・・だからって、貴方を一人で送り出せる訳ないでしょう?」
 

 腰に手をやって、やっぱりダメよと言った風情で彼女。
 

「ダメだよ、香澄さん。第三の新事務所の方へ持っていく資料の整理、未だ終わっていないんでしょう?」
 

「それはね、急な話だったんだもの」
 

 彼の目線と合わせるために少し膝をかがめサングラスを外す、そのまま見詰め合ったままで・・・。
 

「明日には終わるんでしょう? だったらそれまで向こうで待っているから、だから・・・心配しないでよ(ニコッ)」
 

 サヤに向かって彼の犯罪的とも言えるエンジェルスマイルが炸裂する。
 今までずっと彼の身近に居た彼女であり、その耐性もついているはずなのであろうが、今回のは頬を染めると言う強力なフィニッシュブローのおまけ付であったのだ。何故か背後には薔薇の花が咲いているし・・・。
 だが、美少年はそれだけでは済まさずに、更なる追い討ちコンボへと移行する。
 それは・・・・・・。
 

「んっ・・・ふぅっ・・・んんっ・・・・・・」
 

 くちゅくちゅと粘膜同士が奏でるハーモニーがその場所を支配する。
 その名はキス(笑)。しかも、ディープなヤツ(爆)。
 そう、彼はキス魔だったのだ!!!
 しっかりと腰に手を回している辺りが流石である。
 

「・・・ホゥ・・・・・・・・・はっ!? そ、それじゃ向こうで大人しく待っているのよ? い、良いわね、シンジ」
 

 一分ほどそうしていたのであろうか、二人の離れた唇には唾液の橋が陽光を反射してキラキラと光った。
 潤んだ瞳で彼を見下ろし、名残惜しげに呟く美女。
 

 香澄サヤ、二十三歳。彼女はその容姿もあってか、それなりに男性経験はあるのだが、彼のおかげで此処一年でショタコンの世界にどっぷり浸かってしまっていたのだ。彼女は、もう戻れない・・・。

 そして、彼女にシンジと呼ばれた少年はリニアに乗って去っていった・・・。
 

 そこへどたばたと金髪にサングラスをかけた黒いスーツを着込んだ長身の男が駆け寄ってきた。
 彼の瞳はサングラスに隠れてしまって見えないが、その顔のつくりは十分に美形の域に達していると言えよう。だが、彼の容姿はそれとは別の理由で人目を惹くのだ。
 それは、左頬に刻まれた大きな十字傷であった。
 

「か、香澄さん・・・ぼ、ぼっちゃんは?」
 

「遅いわよ! ぐれっち!! シンジなら、もう行ってしまったわ」
 

 サヤにぐれっちと呼ばれた青年、小暮ミキオ、二十七歳。彼のあだ名はぐれっち、グレミオでも可である(笑)。
 

「そ、そんな・・・・・・」
 

「だいたい、シンジ専属のボディーガードのあんたが遅れてどうすんのよ!」
 

「そんな事を言われましても、ほら・・・私自慢のシチューを、ぼっちゃんにリニアの中で召し上がっていただこうと思い・・・」
 

 そう、彼の特技は家事だったのだ! いかつい職業に似合わないと言うなかれ、彼はシンジが物心つく前から付き人をしており、その付き合いの長さも十年になる。更に、彼はシンジを目の中に入れても痛くないぐらいに可愛がっていたのだ。
 

「まあ、私としてはシンジとのキスを邪魔されなかったからありがたかったんだけど・・・」
 

 何故か勝ち誇った顔で言ってのけるサヤ。対してぐれっちは、
 

「ままま、またですか、ぼっちゃん!? この小暮、あれほど不埒な行いは慎んでいただくようお願いしたではないですか・・・」
 

 懐からハンカチを取り出し、天を仰いでその目を覆うぐれっち。彼の中でのシンジは穢れを知らない天使である筈なのだが、そこらへんはほら、時既に遅く、サヤによって大部分を仕込まれてしまっていたのだ(爆)。
 

「嗚呼・・・私のぼっちゃんが穢れてゆく・・・」
 

 彼の嘆きは何時もの事であった・・・。
 
 
 
 

「・・・全くもう、日向君もこんな時ぐらいモーニングコールしてくれたっていいじゃない!」
 

 市街地を爆走しているアルビーヌ・ルノー。言わずと知れたぐーたら作戦部長、葛城ミサトの愛車である。
 その速度は法定速度をトリプルスコアでぶっちぎり、完全にスピード違反であったのだが、彼女を取り締まる筈のパトカーはおろか、猫の仔一匹見つけられないほどに街は静寂に満ちていた。
 それは現在使徒接近中につき、非常事態宣言が発令されたからなのだが、ミサトはそれを良い事にまるでモナコを走っているかのようなハンドル捌きを見せ、
 

「よっしゃあっ!」
 

 等と快哉を上げている始末である。
 確かに彼女のドライビングテクニックは素人の域を凌駕しているが、何も市街地でやらなくても良いのに、とは彼女の仕事をいつも押し付けられている有能な副官の弁であり、作戦部の総意であったりもした。
 そう、作戦部のトップが彼女である以上、彼女の一挙一頭足が衆目を集めてしまう事は確かであり、基本的に彼女と同様の人間が作戦部に集まっていると言うのが他の部署の意見であった。
 それはかなり間違いなのだが、その事を幾ら彼女に言ったって聞きはしないし、何より体力だけは超一流の彼女の報復が怖いため、部下たちも半ば諦めが入っていた。
 最近に至って、まともじゃないのはどうやら作戦部長だけと言う事で落ち着いたようで、他の職員達も一安心であった。
 

「はぁっくしょ〜い! ・・・誰か噂でもしてんのかしら? まあ〜♪ あ・た・し・が美人だって事は周知の事実だし〜〜〜♪♪」
 

 彼女は野生動物並の勘を持っていた。だが、自分に対する周囲の認識はおもいっきり欠けていた。
 

「・・・って、余裕かましちゃいらんないわ! 待っててね、私のシンジ君♪♪♪」
 

 彼女は視線を落として舌なめずりをした。その表情は肉食獣のソレであり、その視線の先には一枚のブロマイドがあった。
 

「今をときめくスーパーアイドル、碇シンジ。貴方の“初めて”はお姉さんで決まりよ〜〜〜♪♪♪」
 

 何が初めてなのかよく分からないが、彼女は異様なまでに萌えていた。

 彼女が見ているブロマイド、其処に映っているのはYOSHIKIばりに妖しげなポーズをカメラ目線バリバリの半裸で決めた美少年であり、そのブロマイドには直筆サインらしき物まで入っていた。

 彼の名は碇シンジ。一年前に新生ジャ●ーズ事務所(略してN.J.E)からデビューして、僅か半年で世界的トップアイドルの地位にまで上り詰めた正統派美少年アイドルであり、世の女性達の大半は彼とともにベッドをともにする夢を見ては、枕とは違った場所を濡らしていたりした。
 彼のデビューシングルである『無限抱擁』は、前代未聞の四十八週連続トップを記録し続け、今もなお、オリコンチャート・トップに君臨していた。そして、今週末には全女性ファン待望のセカンドシングル『幸せは罪の匂い』が発売される事も決定しており、これを機に写真集も発売される等、彼の人気は留まる所を知らなかった。

 彼は儚げな容姿と芯の強い瞳を持った、護ってあげたいランキングで二位以下に二桁以上の大差をつけてブッちぎりトップを爆走しているのである。

 ちなみに、ミサトが持っているのは非売品のブロマイドであり、彼の親に無理を言って譲ってもらった、ファン垂涎物の一品であった。
 何故なら、正統派アイドルのシンジが、そのような汚れたポーズ(爆)を決めた物など、事務所の方が許す筈もなく、これは某特務機関の総司令がその権力に物を言わせて無理矢理作らせた代物だったのだ。
 故に世に出回ったらプレミアでどれほどの値がつくのか計り知れない物だった。
 

「ああんっ♪ いけないわシンジ君、私達未だ出会ったばかりなのよ♪♪ 一目惚れなんですミサトさん・・・僕にはもう、貴女しか見えない」
 

 妄想の果てに、なにやら身体をくねらせて不穏当な一人芝居を披露しているミサト。彼女の頭の中で何が起こっているのかは公然の秘密である。

 何やら話が逸れまくっているようなので元に戻すと、ミサトはシンジを迎えに行っているのだ!!!
 

「もう直ぐ駅に着く筈だし、其処でシンジ君を迎え入れたら・・・次はピンクのお城に迎え入れちゃうわ〜〜〜♪♪♪(おやぢだよ)
そんでもって、そんでもって、あ〜〜〜んな事や、こ〜〜〜んな事まで教えてあげちゃうんだから♪♪♪
ぐふ・・・ぐふふふふ・・・」
 

 妄想が理性による阻止限界点を突破したのか、ルノーはそのまま蛇行運転へと移り、シンジの貞操危険指数もウナギ昇りであった。

 そして彼女はひた走る。獲物をその手におさめるべく・・・。

 でも、彼女は知らない・・・彼がその敏腕マネージャーによって開発し尽くされている事など・・・。
 

 だが、不幸は起きてしまう。

 女性の都合を考えない使徒と、女性に対してレディーファーストの精神を持ち合わせていない戦略自衛隊の組み合わせは、世の女性を完全に敵に回してしまう事件を起こしてしまう。

 それは・・・。
 
 
 
 

 所変わって此処は謎の地下施設。

 そこには所狭しと動き回る職員達と、その施設の最上段に座っているむさ苦しい三人組が、なにやら喧しく喚いていた。

 そして、それを無視するような形で彼らよりも一段低い所に居る一組の男女が会話を交わしていた。
 

「十五年ぶりだね」
 

 彼女の後ろに立っている老紳士然とした男が語りかける。
 

「ええ、間違いありませんわ。・・・使徒です」
 

 場違いにもニコニコとそう言ってのけた女性は、腕を組んだまま返す。
 彼女の名は碇ユイ。年齢は何故か万年二十七歳で、外見年齢もその時から全く変化してはいなかった。
 彼女は特務機関ネルフの総司令を務め、事実上、この国の総理大臣よりも社会的地位が高かったのだ。

 現在、国連軍より送り込まれてきた居ても居なくても一緒の将官達が三人ほど青筋を浮かべながら怒鳴り声を発している事からも分かるように、危機的状況にあったのだ。彼等にとっては・・・。
 しかし、その視線の先はスクリーン上を傍若無人に闊歩している使徒と呼ばれた無粋なオブジェ等には露ほども注いで居らず、視線の全てを彼女のデスクに置かれたブロマイドに注いでいた。
 それは、先の葛城ミサトが持っていたものと全く同じものであり、それこそが彼女の息子、碇シンジなのであった。

 彼女の息子、碇シンジはそれはもう大人しい少年であった。仕事に追われ、家にろくすっぽ帰ってこれないユイに代わって、シンジの世話をしていたぐれっちが過保護すぎたのであろう。だからこそユイは思った。このままではシンジはいじめられっこになってしまう、と・・・。

 そして彼女は行動を起こす。何と、シンジをN.J.Eのオーディションを受けさせたのだ!
 結果は見事に合格。実弾と言う名のコネをたっぷり用意していた彼女であったが、それは全く使う必要がなかったのである。
 それほどまでに彼に対するジャニさんの評価は高かった!! いろんな意味で・・・。
 だが、それを十分に理解していた碇ユイ、流石である。
 彼女は彼女自身が持つコネを総動員し、シンジがやをいの道へと転落する事を防いだのだ(拍手)。

 そして二年半の特別カリキュラムを終えたと同時に、シンジは十三歳の誕生日に世界デビューを果たしたのだ!!!

 アメリカではジャパニーズ・ゲイシャ・ボーイの二つ名で大ブレイク。中国では超絶的美少年(何の捻りもない)で同じく大ブレイク。

 常任理事国は言うに及ばず、全世界を碇シンジ色に染め上げたのだ!!!

 デビューシングルは推定売上枚数一億枚を突破して、既に億万長者の道をひた走っている碇シンジ十三歳と十一ヶ月。

 そう、国民的アイドルなど及びもつかないぐらいにビッグな世界的トップスターになっているのだ、彼は・・・。

 そして、ユイにとってシンジは自慢の息子だったのだ。

 彼女は楽しみで仕様がなかった。

 より深いご理解を頂く為に以下、心の声、入ります。

 嗚呼、自慢の息子が三年ぶりに愛(字が違っています)に来てくれる。
 あの時からどれだけ成長したのかしら? それはそれは、太く逞しくなっているのよね?
 それに、香澄さんが色々と仕込んでいるようだし・・・もう、母さん嬉しくなっちゃう♪
 あ!? 赤マムシ、たくさん用意しなくっちゃ・・・それに、ベットのスプリング、新品と取り替えなくて良かったかしら?

 以上を持ちまして、碇ユイの妄想劇場を終了させていただきます。
 

 とまあ、こんな感じでミサトよりやばい世界へと突入しかけているユイであった。

 以上の事柄から推察できるように、人類は今日も平和であった(大嘘)。
 
 
 
 

 此処は第三新東京駅。
 
 某美少年の乗っていたリニアは漸く到着したのだ。
 

「・・・ふう、やっぱりリニアは堪えるね。こんな事なら香澄さんに一緒に来てもらって、膝枕してもらって居ればよかった・・・」
 

 等とたわけた事をぬかしている美少年、彼の名は碇シンジ。
 倫理観も十分に理解していない幼少のみぎりから、女体の神秘にその身を奉げてしまった不幸な少年なのだが、こんな不幸なら誰だってしてみたい。

 そう、彼は到着したのだが、最早お約束のようにその場所に待ち人は居なかった。
 

「ちぇっ・・・香澄さんは、じらす事を使い分ける事もイイ男の条件なのよ・・・何て言っていたけど、僕としては待たされるのは結構嫌だよ」
 

 こんな呑気な事を言っているから、ヘリが降って来るなんて不幸が起きるのである。

 次の瞬間、シンジの姿は燃え盛る炎に包まれた・・・。

 そして、この原因が遅刻したミサト自身に端を発していた為に、彼女の人生も降格、または解雇という名の暗雲に包まれた・・・。
 
 
 
 
 



 
 
 
 
 

 可及的速やかな業務連絡(意味不明)
 
 

 神威さん、これは浮気した訳じゃないんです。そう、ただの逃げなんです(最悪)。

 限りなく脆弱な基本ラインとプロットしか定めていない上で、書く時の気分で内容が変化するSS・・・わ〜お、我輩、こんなに楽に書き上げたのは初めてトカ!?(惑星Fで大流行の謎の言語)

 無論、ナデシコのほうも書いてはいるんですが、って言うか暇な時間を作っては書いているのはむしろナデシコのほうなんです。
 いやマジで・・・。

 ですが・・・第二話・・・何であんなに難しいの?(半泣き) 設定を難しくしたのがいけなかったのか、バランス取りにもう四苦八苦。

 昨日は昨日でヒントを求めて量子力学の本と睨めっこしていましたが、内容なんてさっぱりです。

 アチラを勃てればコチラが勃たず・・・ヒソカも上手い事言ったものです。
 
 リテイクの数も既に五回目を数え、マジでやばい感じになってきていますが、次、次こそは完成させますからもうちょっと待ってください。

 色々とお世話になっている身分であつかましい事この上ないのですが、きちんとした形で完結させますので・・・ナデシコの方です(爆)。
 

 最後に、舞さんは知っている私の定例句なんですが、見捨てないで下さい(マジ泣き)。