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[10044] 【ネタ】FF6 上司の奇行に疲れました。(完結)
Name: UZUKI◆4b052ae5 ID:6cb4b8e6
Date: 2009/11/19 06:19
 なあ、ガストラ帝国って知ってるか?

 そうそう。魔導の研究に力を入れてるその国だよ。
 うん。俺、そこで兵士やってんの。
 上司?
 聞いて驚け。世に名高いレオ将軍……ってことはない。
 実は俺の直属の上司、結構イタイ人なんだよ。
 名前くらい聞いたことあるだろう?





 ケフカって言うんだぜ。






「おい、交代だ」

「えっ、もう? これ一杯飲み終わるまで待ってくれねえ? あ、やっぱムリ? でも今日の任務、かなり嫌なんだけど」

「バカ言うな! ケフカの野郎を待たせたらどうなると思ってんだよ」

「だよなー。でもケフカさんのお供っていいことねえんだもんよ。この前なんか俺、その辺に転がってたイヌの排泄物投げつけられたんだ。その前は……」

「うるせえよ。いいから行け、このバカ」

「分かった。分かったよ! 行けばいいんだろ!」


 俺が同僚に追い出されつつ酒場を出て向かったのは、上司の待つ執務室。
 そこには相変わらずよく分からないファッションセンスの彼がイライラしながら今日のお供を待っていた。

「はいはいはーい。ケフカさまー」

「お・そ・い!! 俺サマを待たせるなんてどういうことだ!?」

「あー。スンマセン。ちょっと酒飲んでました」

 軽く言い訳してみたものの、ケフカさんはかなりご立腹の様子だ。
 毎度の事ながらこの人の扱いには困る。
 
「仕事くらいちゃんとやりなさいよ! 実験体希望か? そうなのか!?」

 やべ。ちょっとマトモなこと言われた。
 確かに、休憩中だったとはいえ、任務中だった俺が酒を飲んでいたのは実は不味い。
 レオ将軍にでも見つかったら一発でクビになる程度には。
 だがそこは、俺ももう慣れたものだ。ケフカさんを言いくるめるくらいは朝飯前なんだな!
 そんな自分が嫌いになりそうだけどな。もう嫌だ、こんな上司。

「いやですねー。こうしてテンションを上げつつ、ケフカさまのためにユカイな日々を提供しようかと思ってるだけじゃないですかー」

「……本当に? また俺サマを騙そうとしてない?」

 最近の彼は段々と知恵を付けてきたから厄介だ。
 もちろん、帝国唯一の魔導士として名高かった彼だから、決して頭が弱いわけではない。……筈だ。
 だがどういうわけかここ数年、幼さを感じる言動が増えてきている。

 初めの頃、まだ俺が新米兵士だった頃の彼は、レオ将軍と並んで一般兵からの尊敬を集めていたというのに、この変貌はどういうことか。
 噂によれば、まだ少年だった頃に妙な実験の犠牲になった後遺症が今更出てきたということだが、そんなことはあるのだろうかと疑問に思う。

 まあ、どうでもいいんだけどな。俺としては。
 そもそも初めからレオ将軍の部下になりたくて兵士になったわけだし。

 とにかく今日も、こうしてワガママ魔導士のお守りに精を出すくらいしかできないわけだ。

「してない、してない。俺はいつだって誠実じゃないですか。で、今日はどこへ行くんですー?」

「とうとう魔導の力を持つ娘が見つかったのだ! 早速捕まえさせたから様子を見に行く。ついて来い!!」
 
「えー。また女の子イジメるんですかー? ちょっと前にもそんなこと言ってて結局死んじゃったじゃないスか」

 ここ最近の帝国軍はこの噂で持ちきりだった。
 魔導の研究をより発展させるために必要なことなのだそうだ。

 俺のような下っ端兵には詳しいことが知らされることはないが、直属の上司がこのケフカという男であることも相まって、それらの事態に対応することが特に多いことも否めない。
 当然、気分の良いものではないのだ。
 何が一番辛いかといって、やはり軍内で後ろ指を差されることだろう。

 ケフカさん、嫌われてるからな。
 特にレオ将軍の部下に。

 この人の部下だというだけで、俺たちはそれはもう肩身の狭い思いを味わいつくしてきた。
 軍内のイジメとこの人のキテレツな行動のおかげで、ノイローゼになり辞職する兵士のなんと多かったことか。
 今ではケフカ軍に在籍している兵士の8割はアブない薬の愛用者と化している。

 俺が今日まで軍人として勤めてこられたのは、ひとえにレオ将軍のおかげだ。
 あの人がケフカさんに同情しつつ、俺たち兵士をねぎらってくれるからこそ、こうして一見すれば何事もないかのように生きることができているんだよ。
 マジ、尊敬。

 それに比べてこの人は。

「うるさいうるさーい! 行くのか!? 行かないのか!?」

「もちろん行きますって。でも、ちゃんと約束守ってくださいよ?」

「約束?」

 不思議そうな顔をして首を傾げるケフカさん。
 こりゃ完全に忘れてるな。

「困りますよー。俺、レオ将軍に頼まれてるんですって! ケフカさまの衣装をセリス将軍用に作り直してプレゼントしないと」

「ボクちゃん、そんな約束したっけ?」

 若干顔色を悪くしながら聞き返してくるケフカさん。
 いや、気持ちは分かるよ? 俺もどうしてあの美少女将軍にそんな奇妙な服を着せたがってるのかは知らないけどさ。
 でもレオ将軍の頼みなら断れるはずないんだって。

 それに俺は知っている。
 この人が自分をボクちゃんなんて呼ぶときは、機嫌がいいか何かを誤魔化しているかのどちらかだということを。
 おそらく、ケフカさん自身はレオ将軍に詳細を聞かされているはずだ。
 セリス将軍にケフカ服を着せたい理由。
 俺は知りたくないけどな。

「とにかく! あんな男のことなんてどうでもいいから行くぞ!」
 
 ちっ。誤魔化しやがった。
 まあいいさ。任務50回なんて、まだまだ先のことだし。

「それで、その少女の名前はもう分かってるんですか?」

「知らん! 勝手に調べろ!」

 何てテキトーな。
 しょうがないか。ケフカさんだし。

 その後、また訪れた休憩時間に必要な情報は集められた。
 少女はティナという名前らしい。
 
 そして俺はケフカさんと2人、少女が待つ個室へと足を向けたのだ。
















************

 ケフカが好きなことを思い出して書いてみたら、収集がつかなくなった。
 せっかく書いてみたのでネタとして投稿。

「つまらん」「ケフカキモいから好き!」などの一言感想は大歓迎です。それでは。



[10044] 【ネタ】FF6 上司の奇行に疲れました。2
Name: UZUKI◆4b052ae5 ID:6cb4b8e6
Date: 2009/07/05 05:39
 その部屋に居たのは、まだあどけなささえ残る年頃の少女だった。
 どこから連れてこられたのかとか、彼女の両親はここに連れ去られたことを知っているのかとか、疑問に思うことは多々あったものの、俺はその答えを得ることはできなかった。
 分かっているのは、彼女の名がティナであるということだけだ。

「これが、魔導の力を持つ少女か!」

 めちゃくちゃハイテンションなのはケフカさん。
 ピエロっぽいメイクのせいでただでさえ口が裂けてるってのに、更に浮かべた笑みの効果は果てしない。
 ぶっちゃけ直視に耐えない。

 いや、ダメだ。頑張れ、自分。

「えーっと、それで、この子に何しに来たんスか?」

 今日の任務目的を確認しなければ。

「察しが悪いね、お前も!」

 キイキイと怒鳴りたてながら、ケフカさんは少女に何かヘンな道具を向けている。

「よーし。魔導の力があるってのは本当のようだな。じゃあこれから儀式に入る!」

 いや、儀式ってなに。
 いやいや、その首輪なに。

「これさえあればコイツの意思はなくなり、どんな命令も思うがまま! 俺サマ天才!」

 だから何なのそのいかがわしい効果。

「えー。首輪をつけた挙句に絶対服従とか、なんですかソレ。ケフカさまやっぱりヘンタイだったんですか」

 しかもこんな幼い少女に。
 ヤバイよ! この人かなりキてるよ! って、今更か。

 思わず本音がダダ漏れになってしまった俺に、ケフカさんの鋭い視線が突き刺さる。

「お前、命が惜しくないみたいだな?」

 命は惜しいよ。まだ生まれてから30年も経ってないんだからもう少し生きていたいよ。

 この人のヤバさは十分すぎるほどに知っている。
 ここで反抗したが最後、俺の命の灯火は呆気なく消え去ってしまうだろう。
 だが、こんな少女を首輪で縛り付けなくても、ちょっと説得すればちゃんと協力してくれるような気がするのは俺だけだろうか?

「嫌ですねー。俺はただケフカさまの発明品に感動しただけのことですって!」

「……お前、俺のことバカにしてるだろう?」

 胡乱気な瞳でケフカさんは俺を睨みつける。
 俺にバカにされていることに気づくなんて、なかなかやるもんだ。
 でもまだ甘い。この人のことを馬鹿にしたり軽蔑したりしているのは別に俺だけじゃない。
 心の奥底まで辿ってもそんな感情を持っていないのは、精々レオ将軍くらいのものだろう。
 あ、もしかしたらセリス将軍もそうかも。髪の毛ひと筋ほどの興味もない的な意味で。

 レオ将軍は、ケフカさんの古くからの友人なのだそうだ。
 軍役に就いた当初からの同期だったかなんだかで、苦楽を共にしたかけがえのない戦友なんだってよ? レオ将軍が言うには。

 ケフカさんは否定していた。それはもう真っ青な顔で。
 同期でもなんでもないし、苦楽を共にした覚えもないんだって。
 全くかみ合っていない2人の話を同時に聞いたせいでなにがなんだか分からなくなった俺は、とりあえずレオ将軍がケフカさんと仲良くなりたがってるんだってことだけを理解して、それ以上のことを考えるのは止めておいた。
 人間、知らない方がいいことも多いんだ。

 それでも俺はレオ将軍を尊敬している。いい人だよ、ケフカさんに関わりのないところでは。

「そ、それより、その首輪をしちゃっても魔導の力に影響はないんですか?」

 何でも、その首輪には人間の感情を抑制する働きがあるらしい。感情がなければ理不尽な命令にも逆らおうという気が起きないから、結果的に従順になるんだとか。
 
「問題ない! 何を考えていようと、何も考えていなかろうと、魔導の力は普通に使えるんだよ! これだからシロウトは……」

 ブツブツと文句を言っているが、それならこの前ケフカさんが開発した魔導アーマーで十分なのではなかろうか。
 ちょっと気になって言ってみたら、それもそうかも、とか言い始めた。

「じゃあコレいらなーい! どうしようかな、邪魔だから殺しちゃおうかな」

 ケフカさんがとんでもないことを言い出してようやく、俺はその発言がかなりの失言であったことに気がついた。
 このままでは本気でこのかわいそうな女の子を殺してしまいかねない。
 それは非常にマズイのだ。

 日ごろから彼の非人道的な振る舞いは軍内でも問題になっている。
 そのせいで俺たち部下も散々な目に合っているというのに、これ以上下らない非道を増長させることができるわけがない。

「いやいやいやいや。そうじゃなくてですね。感情も残して、なおかつケフカさんのオネガイを聞いてくれるようになったら、もしかしたらすっごくいいことがあるかも知れないじゃないですか」

 何とかして説得しようと、そのときの俺はとにかく必死だった。
 後で思うと、失敗だったとしか言いようがない。それだけ自分も余裕がなかったということだろう。

「でもめんどくさいじゃないの。俺サマそういうのキラーイ!!」

 きらーい、じゃねえよ。このクソ上司。
 アンタのせいで俺たちがどれだけイジメられてると思ってんだ。

「俺が説得しますって! それでもどうしようも無かったら、セリス将軍のお話し相手として献上するとかどうでしょー!? ほら、年も近いみたいだし!」

「なんでセリス?」

「きっとレオ将軍が喜びますよー! しかも、もしかしたらセリス将軍がケフカさまへの感謝のあまり、レオ将軍のお話し相手を一手に引き受けてくれちゃうかも!?」

 嫌そうな顔をしていたケフカさんが、みるみるうちに嬉しそうな顔に変わっていく。
 最後の一言は、特に彼の心を揺さぶったらしい。

「ふふん、いいでしょう! そういうことならこの娘の処遇は任せますよ! くれぐれも! 私に迷惑がかからないように!!」

 おお、ゴキゲン。
 やったぜ、同僚ども。俺はイジメの激化を回避した!

「ただし、お前減給ね」

「そんな! 何で!?」

「当たり前だろうが。この首輪作るのに、一体どれだけの国家予算かけたと思ってんのよ! 貴重な発明の活用を妨害したんだから、クビにならないだけ喜べ!」

「横暴じゃないですか! 何で俺が減給だよ!」

 理不尽だ。俺はただ、偉大なるガストラ帝国のヘンタイを止めただけなのに。

「軍っていうのはそういうところなんだもんね。 皇帝の不利益が容認されるわけないんだよ!」

 ちくしょう。言い返せねえ。
 なんでこの人、時々マトモなこと言うんだろう。
 存在は全然マトモじゃないくせに。

「じゃあ俺サマは部屋に戻るから、その小娘の説得を終わらせておくように。今日中だからな!」

 そこまで言うと、ケフカさんは最近稀に見るほどの上機嫌で部屋から去っていった。
 嵐は過ぎ去り、気がついてみれば部屋の中には、今まで完全に蚊帳の外に置かれてしまっていた少女と俺の2人きり。
 怯えた様子で俺を見上げる少女の姿は、ただただ哀れで仕方が無かった。

 しょうがねえ、説得、始めるかね。

 ため息をひとつ吐いて、俺は少女に向き直った。
 できるだけ安心させるように、精一杯の笑みを浮かべながら。

 さあ、これからもう一つ、大仕事だ。

























************

 目が覚めたらヘンな時間だったので、することも無いしとりあえず投稿。
 すごく楽しかった。



 1話目コメント、ありがとうございました。なんか、たくさんもらって驚きました。




 ・帝国兵士Aはいつまでも軽いノリでいたいと思います。もし良ければ今後も楽しんでください。


 ・ケフカ→セリスは初耳でした。まだまだ勉強不足ですね。精進します。


 ・さてはケフカ好き同志さんですね。ありがとうございます。


 ・ありがとうございます。調子に乗って続きを書いてみました。


 ・>ケフカキモいから好き!
  >さあこれで満足か!w

  ありがとうございます。大満足です。


 ・>ケフカはクジャ&皇帝と同ランクかそれ以上の変態だと思っている私です

  同感です。同志さんが多くて嬉しいばかりです。


 ・>ケフカはFFシリーズ1紙一重だと思っているおいら。

  さらに、同感です。ケフカ好き同志さん、ありがとうございます。


 ・>ひょっとしてレオ将軍も何だかダメっぽいことになっている?

  ダメな人一直線かも知れません。ごめんなさい。






 息抜きのつもりで書き始めたら勢いづいてしまった……。
 今回もケフカに釣られて見に来てくれた人がいたら喜びます。

「オナニー乙」「ケフカ万歳」など、一言コメントはまだまだ大歓迎です。それでは。



[10044] 【ネタ】FF6 上司の奇行に疲れました。3
Name: UZUKI◆4b052ae5 ID:6cb4b8e6
Date: 2009/07/06 18:10
 結論から先に言おう。

 ティナの説得は一晩ではムリだった。
 しょうがないから今日も説得を続けようと思っている。





「おい、ケフカが少女を攫って来たって噂は本当か!?」

「うーん、攫って来たって言うより、ガストラ皇帝へーかが隠してた秘蔵っ子を、ケフカさんがごり押して譲り受けたらしい?」

 あれから一晩。今日の軍内はこの話題をターゲットに決めたらしかった。
 俺がこのことを聞かれるのはこれで何度目になるだろうか。

「なんで疑問系だよ。お前一緒にいたんだろうが」

「そうなんだけどさー。俺もよくは知らないんだよ。でもあの子本人が言うには、物心ついた頃には帝国で暮らしてたって言うからさ」

 これは今日になって、レオ将軍からも聞かされた話なのだが、ガストラ皇帝は10年くらい前からこの少女を密かに囲っていたのだという。
 帝国軍でも最高機密の一つとされていたことで、この事を知っていたのは皇帝以外だとレオ将軍と魔導研究所の一部の人間だけだったのだとか。

 だが、それ以上のことは知らない。
 機密事項なんて怖いこと、できるだけ聞きたくないし。
 
 何で今更ケフカさんがその少女を探し始めたのか、とか、色々疑問はあるけどね。
 所詮はしがない一般兵士である俺は、身の程をわきまえるのが長生きの秘訣ってことだ。

「レオ将軍からも、これ以上のことが知りたければ皇帝に直接聞きに行けって釘刺されたし、俺らは気楽に構えるくらいしか出来ないってことじゃない?」

「お前、前から思ってたが何でそんなにレオ将軍と親しいんだよ。基本的に接点無いはずだろ?」

「羨ましければお前もケフカさんのお供の回数を増やすんだな! レオ将軍の方から勝手に話しかけてくるようになるぜ!」

 ただし、そのときは色々と覚悟を決めておくことをオススメする。
 レオ将軍への憧れが音を立てて崩れ去っても責任は持たないからな!










「で、どうよ? 協力してくれる気になった?」

「私は……怖い。何をさせるの? あなたたちは何者なの?」

 だからー。何度も同じ質問するのはやめてくれないかなー。
 最終的にはケフカさんにしか分からないんだってば。

「私はどうしてここにいるの?」

 皇帝が連れてきたらしいよー。
 軍事的に利用したいみたいだし。

 俺は自分の知る限りのことを包み隠さず少女に伝えた。
 問われるたびに、根気よく。ただひたすら、少女の問いに答え続けた。

「あなたは私を、傷つけたりしない?」

「うん、まあできるだけ。でも逆らえない命令だったらやるかも」

 嘘を言うのは嫌いだし、ここで隠し立てをしたら得られる信頼も得られない。
 俺はまだ幼いこの少女にとって酷であろう返答も、ありのままに返していく。

 不安そうな表情が消えることは無いが、それでもだんだん俺の言葉に耳を傾ける頻度が上がってきたところで、とんだ邪魔が入ってくる。

「ちょっと! いつまでやってるんだよ! いい加減にしないと俺サマがガストラ皇帝に怒られるだろうが!」

 ケフカさんだった。

「何しに来やがったんですか、ケフカさま! その首のジャバラにこの子が怯えちゃったらどうしてくれるんです!」

 しまった。思わずまた本音がダダ漏れに。
 マズイ。マズイよ。機嫌の悪いこの人に口答えなんかして、その後も命があった兵士なんてそうはいない。
 
 案の定、ケフカさんの様子が変わっていく。
 それまではいつもの通り、ただのヘンタイだった彼の纏う空気が、帝国一凶悪な魔導士のものへと。

「そうか。お前は俺に歯向かおうと、そう言うんだな?」

 標的は間違いなく、俺1人に定まっていた。
 彼の持つ魔導という力は、一瞬にして俺の体を消し去ってしまうことだろう。
 自分の軽率さに呆れながら、やがて訪れるであろう衝撃に備えて身を竦ませる俺。
 だがその直後、響いたのは魔導による爆音ではなく、甲高い少女の叫び声だった。

「待って! ひどいことしないで!!」

 目を丸くしているケフカさん以上に俺が驚いた。
 これまでケフカさん相手には一言も発することのなかった少女が、初めて彼に言葉を向けた瞬間だったから。

「なんでも言うことを聞くわ! だからお願い……ひどいことしないで」

 なんだろう、この展開。
 もしかして俺、いつの間にかこの子に懐かれていたりするんだろうか。
 
「あなたが、ケフカなのね」

 少女は一歩も引くことなくケフカさんを睨みつける。
 その瞳にはなんだかよく分からない意思の力が宿っている。ような気もする。

「レオ将軍から話を聞いたことがあるわ」

 何だってえ!?
 レオ将軍からだけケフカさんの話を聞くだなんて、そんなバカな。

「とても繊細な心を持っているのでしょう? 友であるレオ将軍のためにどんな残酷な任務も肩代わりしてあげたのでしょう?」

 違うよ。この人は好きでやってるんだよ。っていうか、繊細ってどういう意味で?
 神経質という意味では、確かにそうかも知れないけど。

「そのせいで兵士たちには誤解も受けているって、レオ将軍は悩んでいたわ!」

 恐る恐るケフカさんの様子を盗み見ると、予想通り顔面蒼白になってぶるぶると震えている。
 
 いつも思うけど、なんでケフカさんはこんなにレオ将軍を毛嫌いするんだろう。
 一方的に嫌われてるから鬱陶しい、とかなら分かるけどむしろ逆だし。
 一方的に好かれてるし。

「この人のように、あなたのために必死で任務をこなす部下もいるのだから、きっと慕われているはずだわ」

 その部下って俺かよ。
 なんかこの子もちょっと電波かも知れない。
 あれだな。レオ電波とか、受信しちゃったんだな、かわいそうに。

 というか、ケフカさんを慕っているとか、そういうことを大声で言わないで欲しいんだけど。
 周りの連中に聞かれたらどうしてくれるんだよ。俺の人生、お先真っ暗じゃないか。

「あなたがムリをする必要はないわ。私でいいのならどんな命令だって聞くもの」

 だって、そうすればあなたはひどいことなんて絶対にしないでしょう?

 とか言って締めくくる少女。
 その後もいかにレオ将軍がケフカさんに友情を感じているかを懇々と語ってくれた。

 俺以上に詳しいぞ、こら。
 ちょっと知りたくなかった。そこまでは。

 俺の精神力の限界と、ケフカさんの忍耐力の限界に、そう差は無かったらしい。
 げんなりとしすぎて意識を失いたくなりながらも様子を伺ってみたら、彼は精も根も尽き果てたという風貌で俺に振り返った。

「おい」

「はい」

「コレ、レオのヤツに突き返して来い」

「了解しました」

 俺は一も二もなく頷いた。
 こんな危険物を軍内に持ち込むわけにはいかない。
 
 一般兵の士気がこれ異常なく下がりきって、一気に帝国滅亡の危機だ。
 何が悲しくて、ケフカさんの人間性を褒め称える言葉を聞き続けなきゃならないってんだよ。






 レオ将軍に少女を返しに行ったときも大変だった。
 軍事的にはかなり有用であろうその少女に、何一つ非道を行うことなく返却したケフカさんに対し、レオ将軍がいたく感動してしまったからだ。
 ただでさえ瀕死の精神状態だった俺は、レオ将軍が放つケフカさんへの賛辞にとうとう心が折れ、気絶してしまったのだ。
 しばらくして目が覚めたとき、俺の部屋まで運んで来てくれたという同僚からは、かつて無いほどの同情の視線を贈られたが、この一件は瞬く間に軍中に知れ渡り、俺はケフカさんのシンパとして、非常に残念な称号を得てしまった。

 人生に希望なんて持っちゃいけないんだな、と悟った。
 同僚であるビッグスとウェッジだけを心の支えに、これからは生きていこうと思う。



























************

 今回も見てくれた方、ありがとうございました。
 前回はケフカ万歳の声が多くて驚きました。コメントありがとうございました。


 次もまた投稿すると思います。どんどんいじめてください。それでは。



[10044] 【ネタ】FF6 上司の奇行に疲れました。4
Name: UZUKI◆4b052ae5 ID:6cb4b8e6
Date: 2009/07/07 16:15
 あれから数年。
 今ではティナも立派な軍人として、帝国軍に多大な貢献をしている。
 本来なら、俺たち一般兵は『ティナ様』と呼ばなくてはならないほどに。
 だが、そうでないのには理由があるのだ。
 一番はやはり、彼女が皇帝をあからさまに疎んでいるという事だろう。

 彼女の皇帝嫌いは有名だった。
 事あるごとに反発し、しばしば懲罰房へ入れられていることはベクタでもよく知られている。
 たまにその懲罰房の見張りとして立たされることがあったのだが、その時彼女は決まって皇帝への不満を吐き出し続けていた。

 軍人としては、あるまじき行為だ。
 当然のことながら、彼女の後見人として正式に手続きをとったレオ将軍への非難も集まっている。
 このまま彼女を放置していたら、さすがのレオ将軍と言えども立場が悪くなることは明らかだった。

 だから、とうとうレオ将軍の部下たちがケフカさんに頭を下げに来たと聞いたときは、実はあまり驚かなかったんだ。





「で、結局あいつらはどうして欲しいって言ってきたわけ?」

「かなり前に、お前が必死で止めた洗脳の首輪、あったろ? あれを使えってことらしいぜ」

 俺はちょうどその日は非番だったので、詳しい経緯は分からなかったが、事情は大体把握できた。
 要するに、レオ将軍のお気に入りはイジメるわけにもいかないし、嫌われ者のケフカさんに汚名を被ってもらおうと、そういうことだ。

 気に入らねえんだよな、あいつらのそういうところ。
 基本的には悪いやつらでは無いんだが、他人からの視線や評価を必要以上に気にかける傾向があるから。

 特に、ケフカさんをはじめとする俺たちの軍に対しては、無条件に見下してくる。
 ぶっちゃけムカつく。
 イジメられっこは執念深いんだぞ。

「それで、ケフカさんはどうするって?」

「もちろん、速攻で追い返してたよ。だれがレオ将軍の為になることなんかしてやるもんかってな」

 なるほど。ケフカさんらしい。
 きっとあのヘンな衣装のケツだけ向けて、おしーりぺんぺーん! とかやったに違いない。
 恐るべし、30代後半。

「でもそれじゃ、その日はケフカさん機嫌悪かったろ。災難だったな、ウェッジ」

「全くだ。しかも、あんな連中を部屋に入れるな! とか言いがかりつけてキレられて、挙句次の幻獣探し任務まで押し付けられたぞ」

 ため息を吐くウェッジは本当につらそうだ。
 なんて運が悪いヤツ。心から同情するぜ。
 代わってはやらないけどな。

「その任務って確か、ナルシェの炭鉱へってヤツだろう? ウェッジ、かなり危険なんじゃねえの?」

「そうなんだよ。まあ、魔導アーマーの使用許可も出てるから、ガード程度ならまず問題ないとは思うんだけどな」

 確かにそうかもな。
 ケフカさんのよく分からない発明品の中でも、魔導アーマーは一際有益なものだった。
 帝国の技術で量産でき、なおかつ乗り手となる俺たち兵士には高度な技術が必要とされることはない。
 それでいて、魔法っぽい力で攻撃することができるって言うんだから、さすがにすごい。
 
「あれの研究にはティナも関わっていたんだったか?」

「そうらしいな。ケフカと共同の任務だってんで、レオ将軍が喜んで貸し出したとか」

 レオ将軍は相変わらずだ。
 大事なことだから2回言うぞ、『相変わらず』だ。
 決してなにか妙な部分だけ拍車がかかったりなんて、して……いな……い。

「ま、まあいいや。それより! その任務ってまさかお前1人ってわけじゃねえんだろ?」

 余計なことを考えていたせいでどもっちまった。
 ウェッジもおそらく同じところに意識が飛んでしまっていたのか、慌てて話を合わせてくる。

「お、おう! ビッグスも一緒だ。お前だけハブ」

 ハブって、ガキじゃねえんだから。

「もう1人、できるだけ魔導に詳しいやつが合流する予定らしい。今のところ最有力なのはケフカだが、本人が嫌がってるからどうなるかな」

 そういえば、ちょっと前にナルシェの視察に行った時、それからしばらく愚痴が絶えなかった気がする。
 寒い! だとか、獣くさい! だとか。

 しょうがねえじゃんな。雪が降ってりゃ寒いのは当然だし、あの街にはモーグリだって住み着いているんだから。
 まあ、なんとかなるだろ。

「がんばれや」

「ちくしょ、人事だと思いやがって。帰って来たら覚えてろよ!」

 ウェッジは気分を害してしまったらしく、詰め所から去っていってしまった。
 残された俺は、仕方が無いから休憩を終え、ビッグスのもとへ任務の交代に向かう。その先はもちろん、ケフカさんの執務室だ。
 俺とビッグスは基本的に2人で1組扱いで、休暇も任務もほとんど一緒だった。
 今回のナルシェ行きのように、ケフカさんの気分で変わってしまうこともあるにはあるが、ここ数年では無かったことなので彼の顔をしばらく見ないというのは随分久しぶりになる。






「よう。ちょっと早いが交代するぜ。今度の任務はキツそうだしな」

「なんだ、もう聞いたのか」

 ビッグスはやけに疲れた様子だった。
 何とはなしに嫌な予感がする。

「キツいなんてもんじゃねえよ。皇帝陛下のゴメイレイでティナがケフカの部下になるってんで、アイツ荒れてるんだ」

 それは初耳だ。
 ティナがケフカさんの部下とか、誰かの陰謀だとしか思えない。

「何だよ、そりゃ? 俺らへのイジメか!?」

 今やレオ将軍と並んでケフカさんの鬼門と化しているティナである。
 それを同じ軍内に配属するだなんて、どういうつもりなのか。

 それじゃあ荒れるよな、あの人。
 そして八つ当たりされるのは俺らなんだよな。
 なんて不幸なんだ。

「とにかく、助かったぜ。後はよろしく頼むな!」

 走って逃げるようにして、ビッグスは詰め所へ向かっていってしまった。
 その後ろ姿がいつになく小さく見えてしまったせいで、呼び止めることはできなかったけれど。

 覚悟を決めて執務室をノックすると、何の反応も返ってこない。
 
 良かった。まだヒステリーは起こしていないようだ。
 
 彼がノックに反応するときはむしろ危険信号。よっぽど機嫌がよくて何か企んでいるときか、よっぽど機嫌が悪くてやはり何か企んでいるときのどちらかだけ。
 今日はまだ、そのどちらでも無いらしい。

 できるだけ中の人物を刺激しないようにと、内心必死になりながらも扉を開けたその先には、意外な人物が立っていた。

「お前は、ケフカの部下か」

「はい! その通りであります、セリス将軍!」

 なんでこの人がこんなところに。 
 というかケフカさんどこ。

「ケフカは皇帝に人事の件で直談判に向かうと言って窓から出て行った」

 あ、そうなんだ。
 窓から行ったんだ。ここ、かなり高いところにあると思うんだけど、あの人には関係ないんだよね。そうだよね。

「それでは自分は室外で待機しております」

 俺、彼女ニガテなんだよな。
 何考えてるのか分かんないところとか。

「待て。聞きたいことがある」

 嫌だよ。

 とは言えないのが、下っ端兵士の悲しいところだ。
 ましてやこの人は強大な帝国でもたった2人しかいない将軍の1人である。
 無視をすることなんてできるわけが無い。
 たとえそれが、ティナとそう変わらない年齢の少女であったとしても。

「はあ、なんでありますか?」

「ケフカのことだ」

 よくよく話を聞いてみたら、今ここに彼女がいるのはティナの為だと言う。
 あの首輪で行動を抑制されるのではないかと心配していたのだそうだ。

「それなら、心配ないと思いますよ」

 だって、レオ将軍に嫌がらせをするためならどんなことでもするのがケフカさんなのだから。
 あのヘンなファッションだって、はじめはその為だったらしい。
 ドン引きして関わらなくなることを期待していたのに、むしろ気に入られてしまって落ち込んだこともあったとか。
 これ、本人談ね。
 それでも俺はレオ将軍を尊敬している。
 ちょっと自分、すごいかも、とか思う瞬間。

 で、じゃあどうしてケフカさんは失敗したのに止めなかったのかと言えば、あの姿が気に入ってしまったかららしいが。
 要するに、本人の趣味。
 あれがあの人のファッションセンス。

「ならば、良いのだ。時間を取らせて済まなかったな」

 軍内外で美しいと評判の顔を歪ませながら、セリス将軍は立ち去って行った。

 なんか俺、今日は誰かの後ろ姿を見送ってばっかりだ。
 殉死していったかつての戦友たちを見送ったときのような焦燥感を感じてしまうのは、何故なのだろう。
 話の内容なんて、いつも通りケフカさんの噂話ばかりだというのに。

 堂々巡りになりそうな思考を無理矢理押さえ込んで、俺はケフカさんの帰りを待った。
 かなり長い時間待ち続け、ようやくケフカさんが執務室に姿を現したとき、彼は輝くばかりに満面の笑みだった。
 うわー。ゴキゲンじゃん。嫌な予感再び。

「誰です、お前?」

 誰だじゃねえよ。毎日のように顔を突き合わせてるんだからいい加減に覚えろってんだ。

「えー、それより、ゴキゲンですね。どうしたんスか?」

 でも言わない。これで名前なんか覚えられた日には、かつてのケフカさまシンパ説がまた浮上しちまうかもしれないからな。

「あの小娘の活用法が決まったのだ! 次のナルシェ行きの作戦に組み込むぞ」

 浮かれまくりのケフカさんは、自分がナルシェに行かなくて済むと大喜びだ。
 だが、俺はそれに待ったをかけたい。

「ティナと一緒に作戦とか、ビッグスとウェッジが精神疲労で死んじゃったらどうしてくれるんですか!」

 彼女の発言は俺たちにはいろんな意味でキツすぎる。
 やめようぜ。

「ふーん。知らないもんねー。僕ちん、皇帝の命令に従うだけだもんねー!」

 うぜえ。

「ナルシェって言えば、リターナーが潜んでるかもしれないらしいじゃないですか。もし万が一にもティナを奪われたりしたらどうするんです?」

「そのときはそのままリターナーに潜入させる。ス、パ、イ、だー!!」

 ケフカさんによると、どちらかといえばスパイが本任務だということだ。
 元々ティナには帝国への忠誠心なんて無いわけだから、スパイと疑われることも少ないだろうと、そういうことらしい。

「本当に裏切るかも知れませんよ?」

「そこは不本意だが、俺サマが説得した。何故か快く了解してきたから問題ない!」

 そうなんだ。
 まあ、ティナだしな。そうかもな。

「リターナーに不審がられて、潜入なんてできないかも?」

「そこは、コレが役に立つ!」

 ゴキゲンなままに取り出されたそれは、俺も見覚えがあった。
 怪しげな首輪だ。

 ちょっと待とうよ。
 俺、ついさっきセリス将軍にそれは使わないと思うよー、なんて言っちゃったのに。
 俺をウソツキにしようというのか。なんて下劣な男なんだ。

 俺の必死の説得も、今回は役に立たなかった。
 彼はもう作戦の実行を決めてしまっていたし、何より全ての行動が皇帝の命令だという事実は、俺のような一般兵の諫言を聞き入れる事態ではないことを示していたのだ。

 なんだかなー。またセリス将軍のケフカさん嫌いに拍車がかかるかもしれない。
 いつかセリス将軍が帝国を裏切る日が来るとしたら、間違いなくケフカさんへの個人的感情から来る行動だろう。

 彼女もさ、せっかく美人なんだからレオ将軍のシンパなんか辞めて他の人に目を向ければいいのに。
 ケフカさんに何の興味もなかった頃が懐かしいよ。

 あいつらのナルシェ行きは明日か。
 何事も、起こらないといいけど。


























************

 セリスだけは普通にするつもりなんだ。
 でも壊したくなってきた。



 もともとネタとして書き始めたから、キャラの後にプロットを作った。
 いきなり破綻し始めた。

 コメント、ありがとうございました! 今後の指針の参考にもなっていますし、何より励みになっています。
 今回も読んでくださった方、ありがとうございます。

 それでは。



[10044] 【ネタ】FF6 上司の奇行に疲れました。5
Name: UZUKI◆4b052ae5 ID:6cb4b8e6
Date: 2009/08/17 19:23
 あれから半月。ビッグスとウェッジが帰って来ることは無かった。ティナから伝書鳥で送られた手紙の内容でも、一言も触れられていない。

「どういうことなんでしょう? ビッグス隊長はどうなったんですか!?」

「ウェッジさんがいなくなったら、俺たちはどうすればいいんですか!?」

 俺と同じケフカさんの部下の中では、明らかな動揺が広がっていた。
 無理もない。今まで同僚として軍内のイジメに耐え抜いてきた仲間の消息が知れないなんて、不安になって当然というもの……。

「あの人たちがいなくなったら俺たちにケフカのお供が回ってくるじゃないですか!!」

 そっちかよ。
 もうちょっとこうさ、心配とかしてあげようとか思わないかな。

「次はフィガロへ向かうんだって、さっきあの野郎が張り切ってたぜ! どうしてくれるんだ!」

 いや、俺にそんなこと言われても困るんだけどな。
 しかもその任務、ケフカさんのお供って俺だし。
 お前らはいいよな。そうやって文句言ってればいいんだもんな。

 そう。
 次の任務はもう確定していた。
 俺はそれこそ苦楽を共にしてきた数少ない同期を失ったかもしれないという悲しみに浸るヒマすら与えられず、また過酷な日々へと身を投じなければならないのだ。

 次の行き先は砂漠の城、フィガロ城。
 ケフカさんはやけに張り切っていて、その任務の為に衣装を新調するほどの浮かれぶりだった。

 なんでも、フィガロ国王に対して思うところがあるらしい。
 帝国と対等だと思い込んでいて気に入らないだとか、田舎の国主のクセになんたらだとか、色々言っていた。
 だが、俺が思うに、ケフカさんはあの国王がイケメンだから気に入らないだけなのではないだろうか。

 最近あの人気持ち悪いよ。じーっと手鏡を覗き込んでると思ったら、

「な、なんていい男……!」

 とか呟いてたし。
 そこまではまあ何とか理解できたんだ。自分の顔が好きで好きで仕方が無い人種なのだろう。
 その後、全身鏡に向かっておしーりぺーんぺーん! の練習をしていたことはもう忘れたほうが良さそうだが。

「ケフカが気持ち悪いのなんて昔からだろうがよ。とにかく、俺たちはもう決めた。もし今後、ケフカのお供係なんて言いつけられることがあったら、その場で退役願いを出して故郷に帰るからな!」

 おいおい。
 帝国への忠誠はどこへ行ったんだ、お前ら。
 レオ将軍が聞いたらきっと嘆くぜ。

「レオ将軍への憧れなんてとっくの昔に消え去ってるんだよ! いいな! 俺たちは言っておいたからな!」

 いつの間にか俺を取り囲んでいた同僚たちは、口々に騒ぎ立てながら詰め所を去っていってしまった。
 手には何か紙のような物を握り締めていたから、きっとさっきの言葉は本心だろう。






 しばらくして、詰め所にノックの音が響いた。
 だらけきっていた姿勢を正しつつ、扉を開いてみると、そこに立っていたのはレオ、セリスの両将軍。
 その表情は一様に暗い。

 俺ちょっと、何の話かわかっちまった。

「こんなところまでお二方にご足労頂くとは、申し訳ありませんでしたー」

 ウチのやつらがご迷惑おかけしたんですねー?

 尋ねた俺に、2人はそろって頷いた。

「セリスの所に、全員で押しかけてきたらしい。今後、ケフカの指揮下では一切任務に就かないとな」

 やっぱりなー。そんなことだろうとは思ったけど。
 心底呆れ果てたといった様子のセリス将軍とは対照的に、レオ将軍は怒りの面持ちも顕わに怒鳴りたててくる。

「おれは納得いかん! ケフカのどこが不満だと言うのだ!」

 どこもかしこも不満だらけに決まってんだろうが。
 そもそもあの人、マトモじゃないんだって。

 だがそれを言って納得するようなレオ将軍ではない。
 俺はただひたすら、黙って耐え続ける。

「レオがこう言って聞かなかったのだ。私までこんなところに連れ出されていい迷惑だぞ」

 そうなんですか、すみません。
 でもね、セリス将軍。そんなこと俺に言われたってどうしようもないですよ?

「あの者たちのような部下がいるから、ケフカは淋しくてグレてしまったんだぞ!!」

 この言葉を彼から聞くのは、これで何度目になるだろうか。
 ケフカさんがかつて、俺たち部下からの畏怖と敬意を受けていたことは確かだ。
 しかしそれも、もう15年近く前のこと。

「レオはそう言うが、そんなに昔と違っているのか、ケフカは? 私はどうも、今のケフカしか知らないから想像がつかないのだが」

 セリス将軍が言うように、当時のことを知らない兵が大半になっている。
 俺にしたって、その頃はまだ声変わりすらしていない少年だったのだ。
 まあそれでも一応、新米ながら正式な帝国兵として就職してはいたが。

「うーん、あんまり変わってないと思いますけどね。確かに言葉遣いやら立ち居振る舞いやら、ファッションセンスやらは飛躍的に変わってはいますけど」

 少なくとも、あの高笑いはしてなかった。フォッフォッフォッフォッフォ! ってやつな。
 それ以外のことはよく知らん。
 ぶっちゃけ興味が無かった。

 それより、この人たちは結局ここに何をしに来たのだろうか。

「俺よりもレオ将軍の方が詳しいと思います。で、そろそろ本題に入っていただけないでしょうか」

 慌てて話を逸らした俺に恨みがましい視線を送ってくるレオ将軍を無視しながら、セリス将軍が話を引き継いでくれる。

「さすがに、あの人数の兵を一度に退役させるわけにはいかないのでな。かと言ってケフカ1人をフィガロへ送ったら、どんな面倒を起こしてくるかもわからん」

 まあ確かに。
 フィガロ国王の暗殺くらいはしてくるかもしれない。
 仮にも同盟国家に対して、そんな非道が許されるはずが無いのだが、いかんせん皇帝はケフカさんに甘いので絶対に無いとも言い切れないのが怖いところだ。

「だからな。私かレオがケフカと共にフィガロまで向かうことになったのだ」

 何てこった。
 いつも通りキツいだけの任務かと思ったら、いつも以上に辛い任務に変わってしまうだなんて。

 俺にとっては、どちらが同行するにしろ辛さに大した違いは無い。

 レオ将軍が一緒なら、ケフカさんの暴走は全て彼に向かうだろうから人的被害に関してだけは心配がなくなるものの、精神的な被害は計り知れない。
 逆にセリス将軍が一緒に来るとすると、ケフカさんの暴走を止めるのは俺一人。
 むしろ、セリス将軍自身がケフカさんを良く思っていない今の現状を考えれば、ケフカさんだけに同行する以上の緊張感が漂うこと間違いなしだ。

 正直、どっちも願い下げなのだが。

「あのー、それってもう決定事項なのでありますか? 自分が何としてでも暴走をお止めイタシマスので、ここはお二方とも残られてはどうでしょうか」

「安心しろ、皇帝陛下にはちゃんと許可を頂いてきた。おれかセリスのどちらかはマランダ攻略に向かうことになるが、片方は同行できるぞ!」

 レオ将軍は実に朗らかな笑みを浮かべている。
 まさかこの場で、それは却って迷惑だ、と本音をさらけ出すわけにもいかず、結局すごすごと引き下がるしかない俺。

 なあ、誰か。
 俺に同期との別れを惜しむヒマくらい与えてくれよ。
 休む間もない不幸なんて、お呼びじゃねえってんだ。


 そんなこんなで、明日にはまたわめき始めるであろうケフカさん相手に、どうやって機嫌を取ろうかと考えつつ、俺は一日を終えることになったわけだ。

























************

 起きなきゃいけない時間まであと1時間。ヒマだったから投稿してみた。







 前話もコメントをくださった方、ありがとうございました。

 愛あるご指摘も頂いたので、ここで謝罪させていただきます。
 確かに、余計な一言でした。今後は男らしく言い訳はしないように心がけます。

 該当部分はあえて削除せず、自分への戒めとして残しておくことにします。


 今回も読んでくださった方で気が向いたら、誤字脱字も含め、どうぞご指摘、ご指南よろしくお願いします。
 褒めていただけるのは本当に嬉しいですし、今回も含めてあらゆるご指摘は糧になります!

 それでは。



[10044] 【ネタ】FF6 上司の奇行に疲れました。6
Name: UZUKI◆4b052ae5 ID:6cb4b8e6
Date: 2009/08/17 19:27
「どういうことですか、ケフカさまー」

「どういうもこういうも無いね! どうしてこの俺サマが! レオなんかと一緒に任務につかなきゃならないんだ!!」

 それはアンタの日ごろの行いの悪さが原因なんじゃないかな。
 俺だって好き好んであの人たちの同行を受け入れているわけじゃねえんだぜ。

「でも、皇帝陛下の勅命ですからねー。いいじゃないですか、セリス将軍は別任務だということですし」

「冗談じゃない。私は今回は行きませんからね!!」

 ケフカさんがゴネ出したのは、さあ今からフィガロに向けて出発だ、というそのときのことだった。
 いつも通り時刻ギリギリに集合場所までやってきたケフカさんが、レオ将軍を見つけて盛大に罵り始めたのがきっかけだ。
 俺としては予想通りのことだったので初めこそ落ち着いて対処できたものの、レオ将軍が何故かとてもとても喜んでケフカさんに付きまとうものだから調子が狂った。

「ケフカがこんなに楽しそうにしていると嬉しくなるぞ」

 とは、彼の言だ。

 マジ、空気よもうよ。本当にさ。真剣に困るからカンベンしてほしい。

 どうにかこうにかなだめすかし、やっとの思いでケフカさんを任務に連れ出すことが出来たのは、悠にまる2日は経った日のことだった。





「レオ将軍、本当にお願いしますから。くれぐれも、ケフカさまを刺激しないように気をつけてくださいね!?」

「分かっている。とにかく、ケフカの視界に入ったときは大人しくしていればいいのだろう?」

 大丈夫だ、と胸を張るレオ将軍。砂漠を歩き回っているというのに何とも涼しげなその表情は頼もしささえ感じる。
 これでケフカさんとのことさえなければ、と思う時期は随分昔に過ぎ去った。
 彼がケフカさんに構うのをやめる日なんて、レオ将軍が男を辞める日よりも遠いことは確実だ。

「おい、お前! 砂、砂!! クツに砂が!!」

「はいはいー。今行きますよー」

 俺はこの蒸し暑い中、ひたすらケフカさんの靴を磨きつつ、フィガロ城への道行きを進んでいる。
 城の全体も見えてきたし、この辛い道中もあと少し。
 
 頑張れ、超頑張れ、俺。

「あ、そろそろ着きますね。じゃあ俺はケフカさまが来たことを一足先に伝えにいってきますから、お二方はゆっくりいらしてください」

 そう言い残して急ぎ足に二人と別れたのは、正真正銘、任務のためだけであって他意はない。あしからず。




「開門せよ! 同盟国家ガストラ帝国、首都ベクタより、皇帝陛下直属、筆頭魔導士、ケフカ様がお越しである!」

 ケフカさんは筆頭魔導士です。理由は簡単。ガストラ帝国にはケフカさん以外に魔導士として認定された人物が1人としていないからだ。
 魔導の力が使えるのだ、その実力は世界でも一、二を争うものであることは間違いない。
 だからこそ彼の名は、キテレツな道化師としてでも、奇行の多いヘンタイとしてでもなく、ガストラ帝国の有する天才的な魔導士として世に響き渡っているのだ。
 事実、こうして彼の名を叫べばフィガロ城の門番たちが慌てふためいて城内へ姿を消していく。
 それほど待つことも無く城門は開かれ、俺は先触れとしてフィガロ国王との謁見を許された。

「遠路はるばる、ようこそお越しくださった。だが、今日こうしていらっしゃることは知らされていなかったのだが、何事なのか?」

 長々とした口上も述べてクダサッタが、要するにこのイケメン国王が言いたいことは、

『突然、何の連絡もなしに城までノコノコと来やがって、一体どういう了見だこのやろー』

 と、そういうことだ。
 何でも、今日はこの後大事な会議がある予定だったらしく、かと言って帝国からの正式な使節を無下に扱うこともできないから非常に困っているという。
 とりあえずケフカさんたちは客間に通してあるけど、俺との謁見にかける時間も惜しいのだ、と直接言われてしまった。
 
 確かに、しかもその相手があのケフカさんとくれば文句の一つも言いたくなる気持ちは痛いほどよく分かる。
 ちょっとでも不手際があれば騒ぎ立てて面倒だし、下手に機嫌を損ねようものなら何をやりだすかわかったものではない。
 以前何かの遣いでドマへ行ったときもすごかった。
 城を開けるのが遅いという文句に始まり、最後には茶の温度が気に入らないだの、給仕の顔が暑苦しいだのと言いたい放題だったのだ。
 後で聞いた話だが、そのときの給仕係は本来ならば給仕をされる側の地位の人物だったのだとか。
 人手不足も極まって、その日はケフカさんに付き従う仕事を押し付けられ、なおかつそれを快諾するほどの好人物とのことで、俺の中で彼の株は天まで上る上昇ぶりだったことを覚えている。

 今も妻子と仲良く、元気に暮らしているだろうか。
 休みが取れる日が来たら、ぜひ一度彼を訪ねてみたいと思っている。
 それまでどうか元気にしててくれ、カイエンさん。

 おっといけね。思考が逸れた。
 こういう不信感も顕わな対応をされたときの為に俺が先行しているのだから、少しは役に立たなくてはレオ将軍に面目が立たない。

「フィガロ側の事情を考えずに押しかけてしまったのですから、お怒りはごもっともです。ですがここだけの話……」

 ここで、内緒話ですよー、という空気を匂わせるのが、俺の言い訳を聞き入れてもらうためのコツだ。
 直属の上司がいない状態で、しかも帝国の軍人が言い出すことに耳を傾けない領主はいない。
 近年の帝国が進めている領土侵攻のことを考えればなおさら、当然の反応でもある。
 ここフィガロでも例に漏れず、とりあえず聞くだけは聞いてくれる姿勢のようだ。

 とはいっても、実のところ内緒話のネタなんて持っていなかったりする。
 今回はどういうわけか、視察という名目以外に、ケフカさんの任務については知らされていないのだ。
 直前になってレオ将軍の派遣が決まった以上、それ以前の任務内容は完全に白紙に戻っていることだけは間違いない。
 通常ならばこういう場合、元の任務内容とは全くかけ離れた任務に変更され、ケフカさんのお供も別の人間に代わるのが規則になっていたりする。
 今回は諸事情で俺がそのままお供をすることになってしまってはいるものの、新しい任務に関しての通達はたった一言、

『ケフカのワガママを快く聞いてやること。なお、フィガロ城へ到着した後、一番に単独で国王に謁見し、ティナの潜入をより確実なものにすること。以上』

 という通達書がレオ将軍から手渡されたのみ。
 ケフカさんにはこの手の任務は向いていない。レオ将軍辺りは俺と同じ趣旨の任務を与えられているのかもしれないが、本当にケフカさんは何をしにこんな城まで来たのだろうか。

「どうなさった? 言いかけてやめるのはまるで疚しいところがあるようにも見えてしまうが」

 一瞬、自分の考えに集中してしまったためか、フィガロ国王がそれまで以上の不審の目を向けてくる。
 この様子だと、ガストラ帝国との同盟をどれ程信じているかも怪しいところだ。

「申し訳ありません。ですが、ここで私がお話する内容は他言無用でございます。そしてできれば、この場からは国王陛下以外の全ての方に退室していただけないでしょうか」

 こういう国では、どんな他愛の無い会話であっても悪し様に捕らえられて言質を取られてしまうことがあることを、俺は経験上知っている。
 だからこの発言は、俺自身と、何よりガストラ帝国の威信を保つために譲れない一線になった。

 イケメン国王はさほど悩むようなそぶりも見せず、こちらが拍子抜けするほどにあっさりとそれを承諾する。
 程なくして、その場には俺とイケメン国王の2人きりになる。

「これでいいかな? 一体何を話すつもりなのか、少し緊張してきたな」

 言葉とは裏腹に、微塵もプレッシャーを感じていない声と表情のまま国王が言う。
 その姿は、さすがにこの若さで一国を治めているだけの威厳が感じられた。
 
「ありがとうございます。それでは、私が存じている限りのことをお伝えさせていただきます」

 俺はある一つのことを除き、嘘偽りや隠し事をすることなく、自分の知りうる全てのことを伝えた。
 ティナという少女がガストラ帝国にいたこと。
 彼女に操りの環を身につけさせ、ナルシェへ向かわせたこと。
 そこで、彼女と共にいた2人の兵士と彼女自身を帝国が見失ったこと。

「ではケフカ殿はそのティナという少女を連れ戻す為に、この城まで捜索の足を伸ばしたということなのか?」

 警戒するように視線を突き刺して来ながら国王が言う。
 
 だが、そんなハズは無い。
 俺が伝えなかったただ一つ。それこそ帝国がティナを追う必要が無いという明らかな理由。
 ティナからの報告書は、絶えることなくベクタへ届き続けている。
 だからこそ、その報告を踏まえてレオ将軍も派遣されているはずなのだ。
 
 俺はこのことに関してだけは、意図的に嘘をつかなくてはならなかった。

 腐っても俺も軍人さ。
 お国のためなら嘘でも何でもいいますよー。

「いえ、違うと思います。むしろ、万が一にも今ここでティナを見つけることがあったなら、帝国は総力を挙げて彼女を亡き者にしようとするはずです」

「……どういうことだ?」

「それだけ、彼女は危険視されているということです。更に言うなら、ケフカさまの発明品である操りの環に対する、絶対的な信頼感も理由の一つでしょう。あれはたとえ手足が千切れていても、無理矢理体を動かして帝国に帰還させるだけの拘束力を持っていると聞いています」

 にもかかわらず、生きていながら帝国に帰還しないということがどういうことか。
 聡明なフィガロ国王は最後まで言わずとも、その先を理解してくれたようだ。
 
「なぜそんな話を、私に?」

 それはもちろん、今後もティナにはスパイとして働いてもらわないといけないからです。

 とは言えない。だが、こうして俺が密告という形を取って伝えた事情を踏まえれば、ティナがスパイと疑われる心配も少しは減ってくれると思う。
 思いたい。
 ティナについて伝えておくのが今回の任務だというのももちろんあるが、それより何より、

「帝国では決して口に出すことのできないことですが、私はティナが心配なのです。そして、できれば、生きていて欲しい」

 いや、ほら。
 やっぱり、直接顔を見て話しただけの縁はあったわけだし。
 スパイが発覚して殺されるなんて、そんなむごい殺され方はしないといいな、と、思ってみるわけだ。
 
「とはいえ、ここでお話したことの多くは、私個人からの、身分を弁えないお願い事の前情報であることを、心にお留めください」

「……いいだろう。その願い事とやら、聞き届けられるかどうかは分からないが、聞いてみたい」

 国王はその言葉を発したその時、驚くほど穏やかな表情をしていた。
 他人の善意につけ込むようなマネをしている自分を鑑みて、少しだけ、俺の良心が痛んだのはケフカさんには秘密にしておこう。

「頭に奇妙な環をつけた、不審な少女を見つけたそのときは、どうか名を問うことなく、見過ごしていただきたい。……そして、もしティナという名の少女を見つけることがあったら、帝国のため、そして何よりこのフィガロという国を守るため、どうか帝国へお知らせください。ガストラ帝国はティナを匿う相手は何者であろうと許すことはありません」
 
「分かった。肝に銘じておこう」









 私、とか、存じています、とか。
 そんな気の張り詰める謁見もようやく終わり、俺と入れ替わりでケフカさんとレオ将軍が謁見室へ通された。
 すれ違いざまにレオ将軍からかけられた『ご苦労』の一言でやる気を取り戻せるんだから、俺も大概ゲンキンな男だと思う。
 どうやら今日のところは客室を借り受けて一泊することになったらしいから、俺は今夜は寝ずの番をすることになるだろう。


 今のうちに一眠り、しておくことにしようか。

























************

 久しぶりの、6話投稿です。

 ずっと書き溜めていた分をようやく投稿できました。
 今回も読んで下さった方がいたら嬉しいです。


 

 5話コメント、ありがとうございました!
 温かい励ましの言葉にはいつもとても元気付けられています!
 誤字の連絡も頂いたので、6話と同時に訂正しておきます。ありがとうございました。



 それでは!



[10044] 【ネタ】FF6 上司の奇行に疲れました。7
Name: UZUKI◆4b052ae5 ID:6cb4b8e6
Date: 2009/08/19 00:48
 段々、辺りが騒がしくなってきた。
 客間の前で立ったまま浅い眠りについていた俺は、ゆっくりと目を開けて周囲の様子を観察する。

 帝国からやってきた俺たち3人の為に急遽用意されたその客室の入り口には、今のところ俺の姿しかないようだ。
 やや離れた場所では、畏まった物言いの兵の声が聞こえてくるから、どうやらケフカさんたちの話も終わったらしい。
 俺もすぐに居住まいを正し、2人がこの部屋へやってくるのを迎える。

「ケフカさま、レオ将軍、お疲れ様ですー」

 よし、名前を呼ぶ順番も間違えなかったぜ。
 かなり前にも一度だけこの2人が同じ任務についたことがあったのだが、その時ついうっかりレオ将軍に先に声をかけた先輩兵士がケフカさんの魔導の餌食になってあえなくご臨終なさったことがあったのだ。
 どうも、自分より彼を優先されることはどんな些細なことであっても許せないらしい。
 こうして、先人の命を懸けた教えのおかげで俺は今日まで命をつないでいることを忘れてはならないのさ。

「ご苦労だったな、何も変わりは無かったか?」

「はい、レオ将軍! 客間にも異常はなかったので安心してお休みください」

「よろしい!! 僕ちんはもう休むから警護を怠らないように!」

「りょーかいです、ケフカさま。お休みなさいませー」
 
 予想外に機嫌が悪くないケフカさんは、何事もなかった様子で用意された客間に入っていく。
 部屋のすぐ前には相変わらずフィガロ兵の姿もなく、その場には俺とレオ将軍が残された。

「どうしました、レオ将軍? 何か緊急の任務でありますか?」

「ああ、本来ならばケフカから伝えるはずなのだが、あの様子だからな」

 うん。新しい任務の通達なんて微塵も感じさせないまま部屋に入ったよね。
 まあ、しょうがないさ。
 あの人にやる気とか義務感とか求めるほうが間違ってるんだって。

「砂漠を歩いたのが余程体力的に堪えたのだろう」

 なにやら微笑ましい表情に変わってしまうレオ将軍。
 ここで歯止めをかけないと、またケフカさんの思い出話が始まってしまう気がした俺は、慌てて本題を持ちかけた。

「それで、俺は何をすればよいのでしょう」

 そこで我に返ったレオ将軍から伝えられたのは、ティナとじかに接触するようにとのお達しだった。
 何でも、ティナからの報告によると、今日のこの段階で既に彼女はフィガロ城への潜入を果たしているらしい。
 既に国王との面会も済ませ、ひとまずのところ身の安全は保証されているという。

「ですが、それならば俺が直接話すのはマズイのでは?」

「本当にマズイ状況ならば、彼女自身の判断ですぐにでも身を隠すだろう。とにかく、君には悪いが、一晩待ちぼうけを食う覚悟で彼女からの接触を待って欲しい」

 これ以上この会話を廊下につっ立ったまま続けるわけにもいかなかったので、レオ将軍に促されて客間内で詳しい説明を受けることに。

 ティナが潜入した後の行動については、基本的に本人の判断に任せるというのが帝国の方針なのだそうだ。
 しかし、レオ将軍を見かけるようなことがあった場合は、できうる限り直接の報告をすることを言いつけてあるのだとか。

 なるほど、その為に今回レオ将軍が同行したわけか。

「了解いたしました。お任せください」

「よろしく頼む」

 普段なら上司からかけられることなどありえないその労いの言葉だけで、一晩の徹夜などどうということもない気がしてきた。 
 つくづく、俺は上司に恵まれない男だよな。






 来ない。
 誰も来ない。
 どういうわけか、ティナどころかフィガロ城の見回り兵すら来ないのが非常に気になる。
 なんというか、イヤな感じだ。

 こんな深夜にというのは気が引けるが、レオ将軍に相談してみるべきだろうか。

 一人悶々と考え込んでいたところで、ようやく人の気配を感じ、そちらに全ての意識を向ける。
 暗がりに身を隠すようにして現れたその人影は、俺が待ち望んでいた少女の姿だった。

「お、お話したいことが……」

 どうやら、彼女には俺の顔は見えていないようだ。
 初めて見た相手に対するようなその話しぶりに、本当に初対面だったときのまだ幼いティナが思い出される。
 意図せず緩んでしまう口元を必死に食いしばりながらも、俺は声を殺して言葉を返す。

 誰もいないように思う。
 思うが、それでも、彼女が帝国のスパイだと知られる要素は何としても取り除かなくてはならないのだ。

「城の娘か? フィガロの見張りは何をしているのだ。ここは今、一般人が立ち寄って良い場所ではないぞ」

「あ、あの。お城の人たちは今、その、会議で」

 会議? こんな夜更けにか?

 不審に思うのも当然のことだ。
 廊下の窓から見える満月が天頂を通り過ぎ、傾き始めてからもう随分と時間が経っている。
 普通であれば、会議どころか人が起きて活動するような時間はとっくに過ぎたはずなのだから。

「見張りの一人すら残さずに、か? それはまた随分と無用心なものだな」

「はい、その、それで、この手紙を、その」

 一刻も早くこの場から立ち去ろうと、俺の顔を確認することすらしないままに手紙を差し出してくるティナ。
 その様子は頼もしさを通り越してむしろ痛々しさまで感じてしまうほどだ。

 かわいそうになー。
 レオ将軍に可愛がられていたばっかりに釣られてケフカさんに心酔だもんなー。
 そのせいでこんな危険な任務を与えられちゃってさ。
 しかもそのことでケフカさんを恨もうなんてこれっぽっちも思って無いんだよ、きっと。
 
 思わずしみじみと感傷に浸ってしまっていた、その時。

「そこで何をしているのかな、お嬢さん?」

 つい先ほど、イヤというほど耳にしていたタラシ声が静かに響いた。
























************

 7話投稿です。
 ちょっと短めだけど、<次号に続く!>感が出る気がして、ちょっと嬉しかったのでここで切ってみました。

 6話コメント、ありがとうございました!
 100話続いても付き合ってやるぜというコメント、なんだかすごく心に響いちゃいました。
 このところ思うように投稿できていなかったので心の底から嬉しかったです!
 
 フィガロの考察も頂きました。
 基本の情報ソースがゲームのみなので、フィガロの外交姿勢についての新情報でした。
 せっかくいただけた情報なので何とか役立たせようと思っています!

 ありがとうございました!

 また次回も読んでくださる方がいたら嬉しいです!
 そのときはまた、

「ケフカ出せ、ケフカ!」

 などの一言コメントでも残して頂けるとものすごく喜びます。

 それでは!



[10044] 【ネタ】FF6 上司の奇行に疲れました。8(ちょっと修正)
Name: UZUKI◆4b052ae5 ID:6cb4b8e6
Date: 2009/08/19 15:22
 これは、かなりマズイかな。

「姿が見えないと思って探しに来てみたが、これはどういうことだろうか?」

 そこに現れたのは、金の髪を青のリボンで緩く結わえたイケメン国王だった。
 表情も立ち居振る舞いもいたって自然体にも思えるが、その瞳だけは笑っていない。

 やべえな。
 絶体絶命の危機ってヤツか?

 こっそりとティナの様子を盗み見ると、動揺からか表情も強張り、明らかに緊張感が増している。

 これじゃあさ、余計にマズイんだよ。
 彼女は俺と違って軍人教育を受けたことが無いから、仕方が無いといえばそうなのかもしれないが。

 こうやってマズイ場面をとっ捕まった時は、むしろ開き直るくらいのほうがいい。
 人目を忍んで会っていたのだということを、追求される前にこちらから宣言してしまうのだ。

 その理由の説明なんて、一山いくらの俺たち一般兵に擦り付けてしまえば良いだけのことなのだから。

「俺……いえ、私が彼女を呼び止めたのです」

「ほう。何故?」

「あまりに、私の見知っている少女と酷似していたもので」

 国王の表情が、今日見た中では始めて、おおきく変わった。
 驚いたような、不審がるような、そんな表情に。

「ケフカさまとレオ将軍はご就寝になりました。私も警護という職務中ではありますが、フィガロ国王には個人的にお伺いすることをお許しいただきたい」

「言ってみろ」

「ありがとうございます。それでは、お耳を失礼……」

 声を潜めながら耳元へ囁く動作をすると、彼も素直に耳を近づけてくる。

 さっきも思ったことなのだが、この国王にはどうも警戒心というものが欠けているような気がするんだよ。
 いや、国を守る国王としては十分過ぎるほどの警戒心を持ってはいるんだが、こう、自分の身を守るという意味でさ。
 好都合だけどな。

「彼女、この城のものでは無いんですね?」

「……その通りだ。つい先ほど、私の古い知人と共にこの城を訪ねて来たばかりだからな」

「ならばせめて、トイレの場所くらい教えてあげてください。かわいそうに、恥ずかしがるばかりに一人で部屋を抜け出した挙句、私のような余所者に声をかけられるまで彷徨い歩いてましたよ」

 若い女の子が砂漠の真ん中で用を足すなんて事態にはくれぐれもなさらないように。

 と、付け加えてやった。

 とたん、必死に堪えながらも大笑いを始める国王。
 俺から身を離すや否や、ティナに歩み寄って何かを耳打ちすると、彼女は一目散に駆け戻っていく。

「さあ、これで彼女も城で彷徨い歩くこともなくなるだろう。……それで? こんな嘘までついて彼女をここから引き離したことについて釈明はいただけるのかな?」

 うむ。バレバレであります、レオ将軍!
 このままじゃティナは殺され、俺も重大な過失のおかげで軍人生命どころか正真正銘命の危機だよこんちくしょう。

 いやいや。こんな若造に負けてたまるか。
 俺だって伊達に長く軍人やっちゃいねえんだからな。
 設定だ。設定を考えよう。
 俺は何故ティナに話しかけたのか。
 どうして彼女の存在を上司に報告しないのか。

 結論はすぐに出た。

 俺、これからティナの為に命を欠ける良い人になりきろう。
 理由ならあるって。
 何て言ったって一時期はあの子の親代わりだったんだし。追求されても理由は十分だろ。
 よし。

「フィガロ国王陛下の寛大なご措置に感謝いたします。そしてどうかその寛大さをそのままに、お聞きいただきたい」

 無言のまま先を促すようにこちらを見つめるのを真っ直ぐな視線で受け止め、言葉をつなぐ。

「彼女は、私が知っている少女ではありませんでした。そして、貴方も、彼女の名など全く知らない。そうですね?」

「……ああ、知らない」

「それに加えて、その少女であれば必ず額に身に着けているはずの環もありませんでした。それは、ご存知ですか?」

 依然、無言のままに頷いてくる。

「ですから、私は奥の部屋でお休みになっている将軍方に、彼女のことを報告する義務はありません」

 国王は、今度こそ目を見張った。
 俺の言葉の真意を探ろうとするかのように、じっとこちらを見据えてくる。

 ここで目を逸らしたら負けだ。
 自分の本気が伝わるように、そして、その意思で相手を呑み込むほどに。

 これ以上話す気はねえぞ。
 もう十分伝えたし。
 っていうか、そろそろボロが出そうだからカンベンして欲しいんスけど。

「最後に、2つ、確認したい」

 ふざけんな、もう嫌だ。

 とは言えない俺は、表面上快くそれに応じてみせる。

「君の行動は、帝国に限らず軍人としてあるまじき事のはずだ。謁見のときと今と、私が君と話をしたのはそれだけだが、軍人としての心得は十分に持っているように感じられる。それなのに、何故」

 おや。意外と高評価だな。
 俺の次がケフカさんだったから相対的なものだろうけど、ちょっと嬉しいじゃねえかこの野郎。

「恐縮です。ですが、そうですね。強いて言うなら、俺も所詮、軍人である前に一人の人間だということでしょうか」

 って、何だよその微笑ましい表情。
 やめてくれよー。良心が痛みまくるからよー。

「一時期は親子のように生活した少女です。生きていて欲しい。ですが、遠目に彼女を見つけたとき、つい、直接話しをしてみたくなってしまいました」

 うん、いい感触だ。
 この国王、帝国での評価とは裏腹に随分と善人らしい。
 おそらくは、日ごろからの帝国への不審感も相まって、帝国を裏切るような真似をしていると思われている俺にかなり同情的になってるみたいだし。

「任務上ここを離れるわけにもいきませんから。銃を向けて無理矢理呼びつけるなんて、我ながら彼女には悪いことをしました」

 ティナがここまで来ていた理由、こんなところでどうだろうか。
 ちょっと厳しいかな? まあいいか。失敗したらあの世で会おう、ティナ。

「事情は分かった。それで? どんな話をしていたんだ?」

「何も。だってそうでしょう。彼女は俺の知っているあの娘では無かったのですから」

「……いいだろう。では、最後に一つ」

「はい」

「君は彼女の存在を、絶対に君の上官には伝えないのだね?」

 えー、すみません。もちろん伝えます。
 だってティナと接触したのって任務だし。
 もうやだなー。腹ン中と口に出すことと全く違うってのはどうにもやりづらい。

「当然です。ですが」

「なんだ」

「レオ将軍は俺と同じく、率先してティナを探し続けることは絶対にありませんが、ケフカさまは別です」

 ここが問題なんだよな。
 ぶっちゃけ、ここにティナがいることが分かっていてケフカさんが来たってことは、どう考えてもきな臭い。
 たぶん、なんだかんだ言いがかりをつけてフィガロを攻撃しに来たんじゃないかな。

「彼自身が、万が一にもこの城でティナとよく似た少女を見かけることがあれば、フィガロを滅ぼすことも辞さないでしょう。くれぐれも、ご留意ください」

 気をつけても無駄だとは思うけどね。だから言える。
 あの魔導の力に対抗するなんて、どう考えても人間にはムリだ。

 国王はおおきく頷き、ゆっくりとその場で踵を返した。

 どうやら、ようやく解放されたようだ。
 ホッと息をつきかけた瞬間、背中越しに国王から声をかけられる。

「もし帝国に愛想を尽かしたら、私のところへ来るといい。死ぬまでフィガロ兵としてこき使ってあげるよ」

 それだけ言い残して、彼はその場を去っていった。

 うわーを。だんでぃー。

 って、いかんいかん。俺が憧れる年下はレオ将軍だけだぜ!

 しかし、この様子なら当面の間ティナの身の安全は保証されそうだ。
 あんな善人なら、よもやたった一人の少女が殺されるのを承知で放り出すことも無いだろう。
 ティナを連れ出した青年がリターナーの一員だということは既に分かっているし、その男がこうして転がり込んだ以上、フィガロは既に反帝国組織に与していることは確実。
 どうにか、任務を乗り切ったな。あとは、ティナから受け取ったこの手紙をレオ将軍かケフカさんに渡して、任務終了だ。

 今度こそ誰の気配も無くなったその廊下で、やっと気を緩めることが出来た俺だった。


























************

 8話投稿です。

 7話コメント、ありがとうございました。

 と、いつもならこのくらいにしておくのですが、一言言いたい!

 や ら な い か

 アーッ!

 という展開はありません! 大丈夫、ありません!

 ケフカと主人公は健全です! ケフカと! 主人公は! 健全です。

 大事なことだから2回言いました。

 


 それでは!



[10044] 【ネタ】FF6 上司の奇行に疲れました。9
Name: UZUKI◆4b052ae5 ID:6cb4b8e6
Date: 2009/08/20 23:02
「おはようございますー。朝ですよー」

 何が悲しくて朝からケフカさんと一緒?
 なんて考えたところで仕方が無い。
 今の俺にできることは、これまた先人の残した知恵を大いに活用し、決してメイク前のケフカさんの顔を覗き込むような真似はしないことだけだ。

「やあ、昨夜はご苦労だったな」

「あ、レオ将軍。おはようございます」

 いつの間に起き出していたものやら、俺が意を決して客間へ足を踏み入れたときには、レオ将軍はもう身支度を完璧に整え終わった後だった。
 うん。爽やかであります。

「上官殿にお渡ししたいものがあるのですが、ケフカさまにお渡しして良いものでありますか?」

 俺は一刻も早く、この物騒な手紙を手元から離したい気持ちが急いて、こちらから尋ねてみた。
 本来なら、任務中に俺が手に入れた全てのものは当然、上官であるケフカさんに渡すべきところだ。
 しかし、任務の詳細を知らされていない今、勝手な行動を慎まなくてはならないことも確かなんだよ。
 場合によっては、ケフカさんがこの手紙を受け取ったという事実が重要な弱点になることもありえるからだ。

「いや、それはおれが受け取ろう。以後は今までの通り、ケフカに従って任務を終えるように」

 案の定、それはレオ将軍の手に渡ることになった。
 ならば俺はこれ以上、その手紙の存在について言及することはしてはならない。

 帝国軍人の心得その1。
 不必要に機密に触れることの無いよう、重々留意すること。ってな。

「それでは、俺はしばらく部屋の外で待機しますので。何か御用の際は何なりとお申し付けください」

 触らぬ神に祟りなし。
 俺はいそいそとその場を辞し、次なるケフカさんの無理難題に耐えるべく、客間の外へ飛び出した。







「で、本気ですか、ケフカさま?」

「私が嘘をついたことなどありますか!? 当然、本気です!」

 ありゃ。ちょっとゴキゲン。かつ、若干お仕事モードのケフカさんだ。
 こういうときは間違っても御機嫌を損ねないよう、細心の注意を払わなければならないのだが、それにしても。

「それ、レオ将軍がすごく嫌がると思いますよ?」

 だってめちゃくちゃ卑怯じゃんか。
 しかも、俺の身が危ない。かなり危険。そこが嫌だ。

「それこそ願ったりなんだよ! あのいけ好かない男が不快に思うことだったらどんなことだってして見せますよ!」

 おいおい。本気なのか? 

 本気なんだろうな。さっきなんか俺が泣いて止めるまでひたすらメイクしてたもんな。
 レオ将軍の顔に。

 信じられないものを見ちまったね。
 あのケフカさんが。まさか自分のメイク用品を他人に分け与える日が来るだなんて思っても見なかったぜ。
 レオ将軍がそれを嫌がらなかったのは、まあ、想定の範囲内ってもんだけど。

 って違う。そうじゃなくて。

「いくらなんでも、同盟国で国王暗殺ってのはマズイですって。しかもどうして実行係が俺ですか。アンタそれ、思いつきなんじゃないでしょうね!? 俺が死んだらどうしてくれるんです!!」

「僕ちんは死なないもんね。お前とレオは勝手に死ね」

 なんてこと言いやがりますか、この人は。
 ここに来るまでさんざんアンタの靴の砂を払ってやったことをまさか忘れたんですか。
 俺ら一般兵がいなっきゃ行軍さえマトモにできねえって専らの噂なんですよ、ちょっと!

 ケフカさんはとにかくハイテンションに跳ね回っていて、どう見ても俺の反論なんて聞こえちゃいない。
 そして俺は彼のその手元に、不穏な輝きを見つけてしまった。

 もしやとは思うが、聞かざるを得ない状況だぜ?

「あの、ケフカさま。その手に持ってるもの、もしかして、ティナに付けたのとよく似てないかなー、なんて思うのでありますがー」

「似ているか、と聞かれたら、そうだ、と答える代物だな」

 そのときのニヤリ、という笑みを、俺は死ぬまで忘れることは無いだろう。
 邪悪なんてもんじゃない。禍々しさなんて軽く通り越して、いっそ神々しいまでの壮絶な笑みだった。

 なんでも、それはティナに装備させた後、ケフカさんが独自に改良を重ねたもので、ある特定の人物に対してのみ、強烈な嫌悪感を感じるように感情を制御するためのものだという。
 
「そんなもん、俺に付けてどうなるって言うんです。貴重な研究の無駄遣いってヤツじゃあないんスか?」

 震える声をそのままにやっとのことでそう言うと、彼もようやく我に返った様子だった。

「なるほど。確かに、このチンケな国一つ潰すためにこれを使うのはもったいないか。よし、決めた。これはレオに付けさせる!」

 でもその方向性はどこまで行ってもケフカさんだったよ。

 レオ将軍につけてどうしようってんだ? あの人がどれだけあのイケメン国王を嫌ったところで、卑怯な真似を許すなんて思えない、ってまさか。

「それで嫌わせるの、もしかしてケフカさまの事だったりします?」

「……お前、なかなかカンがいいね。でも、それを知ってどうするつもりだ? お前にこの俺サマが止められるとでも思ってるのか?」

 止める?
 俺が?

 そんなまさか!!!!

 やったぜ、この野郎! ケフカさんもたまにはマトモなことするじゃねえか!
 レオ将軍の唯一と言ってもいい欠点といえば、誰に聞いてもケフカさん好きの一言に尽きるってのに?
 それがなくなるんだって?

「とんでもない! どうぞどうぞ! どんどんやっちゃって下さい! あ、なんなら俺、今から城中に火でもつけてきましょうか!?」

 憧れのレオ将軍がついに、全てにおいて完全無欠な男になるのを止めようだなんて、そんなことをするやつは他の誰でもない、この俺が許さん!
 その為だったら昨夜うっかり憧れかけたイケメン国王にだって、どんなひどいこともして見せようじゃないの!




「火事だー!!!!」

 城中に、兵士たちの叫び声が響き渡る。
 砂漠の中央に聳え立つ一つの城が今、炎にまかれて崩れ去ろうとしていた。

「フォッフォッフォッフォッフォ!! 燃えろ燃えろ! 焼けてしまえ!」

 ケフカさんはゴキゲン。

「ケフカ! お前は……いや、お前たちはなんということを!!」

 レオ将軍は激怒。

「えっとー。焼け死ね?」

 俺は士官以来、かなり久しぶりにレオ将軍に怒られて涙が出るほど悲しいやら、ケフカさんに対して本気で怒り狂っている彼の様子に安堵するやら。

 慌てふためく兵たちを横目に、豪奢な金の髪がこちらへ向かって進み寄ってくるのが見える。
 それに相対したのは、当然ながらレオ将軍。

「違う! これは断じて、帝国の総意ではない!!」

「ならばこれはどういうことなのか。この城には多くの一般人がいる。女子供の数も、それに比例して多い。あなた方が今行っているのは、紛れも無い虐殺だ」

 イケメン対渋メン。世紀の大決戦。にらみ合う2人は正に、乱世に生きる勇将そのものだ。
 なんて、カッコよさげな事を考えている俺は、もしかしたらかなり気が動転しているのかもしれない。

「レオ将軍、私は貴方と、そこにいる貴方の部下を信用したからこそ、客間を開放してお休みいただいたのだ。それをこの仕打ちとは、同盟国に対してあまりの対応なのではないかな?」

 レオ将軍の部下って、もしかしなくても俺のことか?
 
「国王サマ、違いますよ」

「……何?」

「俺は帝国に仕官してから今日この日まで、ずーっとケフカさまの部下です」

 それはもう、不幸なほどに。
 レオ将軍の部下になりたかったけどね。もうムリだね。今日のこれで完全に嫌われたからね、俺。

「そうか。君は結局、一人の人間でありながら帝国の軍人であり続けると、そういうことか」

 うーん?

 なんというかこの王様は、回りくどい話しかたが好きなようだ。正直言って、何が言いたいのかイマイチよく分からん。
 どう答えたものかと、俯きながら考え込んだ俺を見て彼が何を感じたのか。それは当然、俺に分かるはずも無い。

 今の俺に分かることは、イケメン国王がそれきり何一つ言葉を発しないまま踵を返したことと、砂漠に聳える一つの城が、あっと言う間に地中に姿を消してしまったこと、そして、イケメンと青バンダナに守られるようにチョコボで駆け抜けるティナがいたという事実だけだった。




























************

 9話投稿です。

 久しぶりにたくさんのコメントを頂きました! 本当にありがとうございます!!

 その中でご指摘いただいたのでここでお答えさせてもらいます。

「このゲームに銃なんてあっただろうか」

 はい、すみません。記憶をどこまで辿っても見たことありませんでした。

 あの辺りは我ながらこじつけだったので、機会を見て修正したいと思います。当分は今のままということで……。すみません。


 今後も、ご指摘、ご意見等ありましたら、ぜひお伝え下さい!

 それでは!



[10044] 【ネタ】FF6 上司の奇行に疲れました。10
Name: UZUKI◆4b052ae5 ID:6cb4b8e6
Date: 2009/10/17 07:50
 長い、長い旅路だった。
 フィガロ城を発ってからどれ程の日数が経っただろうか。ほんの数日だったような気もするし、とても長かったかも知れない。
 日にちの感覚すら薄れるほどに、俺にとって辛い日々だった。




 後になって聞いた話だと、レオ将軍は俺のことを殊のほか気に入ってくれていたらしく、ケフカさんへの同行任務の後には今の帝国進軍では一番安全だろうと言われているサウスフィガロの包囲任務へ付けてくれるつもりだったらしい。
 でもそれも、フィガロ城の焼き討ちでお怒りを買ってしまったため、取り止めにされてしまった。

「で、ドマ城攻略ですか」

「……お前はケフカの部下だ。あいつの任務に同行するのは当然だろう」

 仰るとおりでございます。
 たとえそれが生還率4割と予想される激戦区であろうと、上司のケフカさんが向かう任務である以上、俺も配置されるのは至極当然のことだ。
 じゃあ何故ケフカさんからでなくレオ将軍から任務のお達しを受けているのかと言えば。

「とは言え、今のケフカには直属の部下はお前しかいないからな。今回は例外的におれの軍に配置されることになった」

 ということらしい。
 今の帝国軍は色々とマズイ事になっているから、どれをとっても苦肉の策、といった状況だ。
 セリス将軍が。
 あのセリス将軍が、裏切ったらしいという噂が流れてるんだよ。
 おかげでケフカさんのご機嫌はうなぎ登り。反してレオ将軍は心労のためかため息を吐いていることが多いらしい。
 これ、同僚情報。
 意外と言うべきか、何と言うか。
 フィガロ城でやってきたことに嫌悪感を示しているのは、俺の知る限りではレオ将軍と一部のその配下たちだけで、ほとんどの連中は何とも思っていないらしい。
 中には、とうとうレオ将軍にまで嫌われちまって可哀想に、と同情してくれている奴までいる。
 要するに、ケフカさんの取る行動としては珍しくも無かったということな訳だが。
 むしろ、実質的にフィガロには大きな被害を出せなかったという事実は、今回の俺への軍内評価をさほど下げずにいてくれた。
 いつもよりは外道じゃないってな。
 俺の本心としても、それは変わらない。
 何と言っても、ケフカさんの部下としてもう何年も軍人をしてきたのだ。
 敵将の寝首を掻くような任務だって少なくなかったし。
 たかだか火をつける程度のことには慣れているとも言っていい。
 俺の気を重くさせたのは、レオ将軍に嫌われてしまったという事実と、そのせいで帰りの道中に一切の私語が許されなかったということ。
 分かるか? ケフカさんのワガママっぷりに耐え続けた上に愚痴の一つも許されないあの精神的苦痛が。
 とまあ、そんなことがあったせいで、今の任務通達もキツい。
 俺、前線の配置がいいっス。
ケフカさんのワガママに振り回される必要無いし、とりあえず戦って来いっていう単純な任務だから。
 適当にやってりゃ死ぬことは無いだろう。これでも軍人歴は長い。
 なんて思っていたが。

「だが、お前の任務自体は通常と変わらん。作戦部隊に入り、以後はケフカの指示に従うように」

 俺の希望が叶うことは無かった。
 
「了解であります……」

 要するに、

『俺の目の届かないところになんて配置してやらねえぞ。ケフカもろともきっちり監視してやるから覚悟しやがれ』

 と、そういうことだ。
 俺の休暇は当分先のことらしい。





「あのー、ケフカさま? そのビン、何ですか?」
 ドマ城近郊、帝国キャンプ。
 帝国軍の進軍はここまで概ね順調だった。
 ケフカさんはうるさくならないように魔導アーマーに乗せてやっての道中、驚くべきことに事件はなし。
 レオ将軍は尚も監視の目を緩めることは無いが、ケフカさんの異常なゴキゲンっぷりを警戒するどころか安心してしまっているフシがある。
 根本的に、あの人は身内に甘い。
 身内どころか敵にも甘い。
 そんな性格だから、あの環を付けられるまでケフカさんのことを大好きでいられたんだと思う。
 その甘さは、今でも変わることは無い。

「ふん。レオの野郎、ドマの物資補給路は絶たないなんて言いやがった」

「そうですね。言ってましたね」

 それがケフカさんにはどうも受け入れ難いらしい。

「それとそのビンと何の関係が?」

 卑怯なニオイがぷんぷんするね。
 俺、ドマにはちょっといい思い出があるから、あんまり酷いことはしたくないんですけど。

「ムダに戦を長引かせてなんになります! これさえあればあんなチンケな城の1つや2つイチコロだ!」

 毒だってよ。
 えげつねえな、全く。

「それ、宣戦布告の直前にすることじゃねえですって。俺、またレオ将軍に怒られるの嫌ですからね」

 反論した俺に、ケフカさんはキイキイと怒鳴り散らしている。
 よおーしそうだ。叫べ! 喚け!
 そしてレオ将軍にバレてしまえ!!
 俺の身を挺した行動が実を結んだ。
 レオ将軍がケフカさんの異常に気がついたのだ。

「何をしている!」

 ビン取り上げた。
 中身確認。ってうわ、何だこのニオイ。相当ヤバそうなんだけど。
 あ、頭が、くらくらと……。
 って、なんだとう!?

「いったーい!! 僕ちんを殴るなんて、お前何様なんだよ!」

「馬鹿者が! こんな危険なものを使ったら我が軍にまで被害が出るだろうが! 第一、こんな卑怯な真似は断じて許可できん」

 妙な毒のせいでクラクラしていた意識は一気に覚めた。
 まさか、まさかこの目でレオ将軍がケフカさんを殴るのを見る日が来るなんて!
 俺、今まで生きてて良かった!
 慌てて周りを見渡してみると、そこには俺と同じくその様子を発見して感動しきりな兵達が。
 やったな! 素晴らしいものを見たよな!
 これでこそ誇り高き帝国軍人! 尊敬すべき将軍様ってもんだ。



 そんなこんなで、俺たちは図らずもケフカさんの陰謀を阻止することに成功した。
 レオ将軍率いる帝国軍は、明日の朝にもドマへ宣戦布告を行うことになるらしい。



















************

久しぶりの投稿です。

皆さん、コメントありがとうございます!

>狂人の部下は狂人でした
しかも自覚がありません
というオチですか

そうですね、書いてたらそんなことになっちゃいました。
あまりに批判が増えたりしたら改善します。今のところはこのままで。


銃については好意的なコメントありがとうございました。お言葉に甘えて設定はこのままでいこうと思います。

それでは、また1言コメントなどお待ちしています。



[10044] 【ネタ】FF6 上司の奇行に疲れました。11
Name: UZUKI◆4b052ae5 ID:6cb4b8e6
Date: 2009/10/19 07:09
 夜通しの警邏が終わり、やっと朝を迎えた今この時。
 俺は非常に悩んでいる。

「なあ、お前ら。こんな所で犬と戯れるのはどうかと思うぞ?」

「な、何でテント内の宝箱の中に犬がいるんだよ!」

「ああそれ? 昨日からケフカさまのペットになったらしいぜ」

 侵入者発見。さあ、どうしてくれようか。



 そこにいたのは、怪しいことこの上ない2人組だった。
 金髪の長身マッスルと、妙な服装のマスク男。小脇に抱えたワンころがきゅーてぃー。
 ケフカさんだけならいざ知らず、レオ将軍がいる今の帝国軍で正規の鎧を着ていないということは十中八九不審人物だ。
 しかも、犬小屋代わりになっていた宝箱を蹴り飛ばすというマヌケな行動に反して武装した俺を見ても動揺すらしないこの余裕。
 これは不味いことになったかもしれない。
 俺1人で撃退できれば問題は無いのだが、いかんせん自信が持てないのだ。
 どうしたものか。

「で、ここが帝国キャンプだということは分かっているな? 何用だ」

 様子を伺いつつ、なるべく軽い口調で尋ねた俺に筋肉男が朗らかなまま答えてくる。

「いやあ、ちょっとここを通りたくてさ。アンタら橋を塞ぐようにして駐屯してるから困るんだよ旅行者としては」

 なるほど。
 どうやら何が何でもこちらと事を構えるつもりでいるわけではないらしい。
 俺としても1対2の戦いに望むよりはよほど好都合といった状況だが、油断した隙に後ろから襲い掛かられたらたまらないし、扱いかねるというのが本音だ。

「旅行者か。それなら行き先を変更するか戦が終わるまで待ってくれると助かるな」

「……待つってどれくらいだい?」

 表情を変えることなく聞き返してくる筋肉男は、見た目どおりの体力バカではなさそうだ。
 さりげなく情報を得ようという姿勢はなるほど、この物騒なご時勢で旅をするだけのことはあるのかも知れない。
 しかし、尚更困る。
 バカならバカでどうにでもなるだろ? 場合によっては現地徴兵って事にして前線に立たせる事だってできるんだし。
 逆に、本当に頭のいい奴ならお互いの不干渉を持ちかければ今この状況で無下にしてくることもないはずだ。
 一番厄介なのが、ある程度腕に自信があって正義感溢れるタイプ。
 そういう連中はとにもかくにもケフカさんのことが大嫌いなんだよ。
 過去の経験から言って、野放しにすると帝国兵が危険だ。
 無謀にもケフカさんにケンカを売るセイギの味方。
 相手の実力によってはケフカさんが取り逃がしちゃったりなんかして、その後ケフカさんが不機嫌になったりなんかして、さらにその後俺を含めた帝国兵にケフカさんが八つ当たりとかしちゃったりして、最終的に帝国軍壊滅の危機なんて事にもなりかねない。
今ならレオ将軍もいるから、一般兵の被害は少なくて済むかもしれないが、その場合の俺の精神的打撃は計り知れない。

「ああ、ちくしょう。こんなことならケフカさんの名前なんか出すんじゃなかった」

「さっきの犬もケフカのペットだって言ってたな。ここの指揮官はまさかケフカなのか?」

 もうホントにやめてくれよ。
 なに戦闘モードになってんだよ。
 お前、見るからにヤバそうじゃねえか。俺たぶん勝てねえぞ。

 悩んだ。
 必死で悩んだ。
 負けないため、死なないため、最善の策は何なのか。

「指揮官はレオ将軍さ。ここだけの話、ケフカさんとは比べるのもおこがましいほどの好人物だよ。せっかくだ、会っていくといい」

 ケフカさんに見つかる前に会えれば、手荒なことはされないって保証できるな。

 俺の結論は、敵前逃亡だった。




 意外なことに、彼らはすんなりと頷いた。
 マスク男の武装解除を強制しなかったことも理由の1つだったのかもしれない。
 俺としては、見るからに格闘タイプの男がいる以上、片方だけの武器を取り上げたところで大した意味はないと思ったからに過ぎなかったが。

「おい、誰だそいつらは?」

「知らねえ。キャンプの近くをウロついてたから拾ってみたんだ。万が一にもドマへ向かう途中の一般人だったりしてみろ、戦に巻き込んだらレオ将軍が悲しむだろうが」

「……お前は信用できねえが、確かにその通りだな。で、どこへ連れて行くつもりだ」

 それはもちろん。

「レオ将軍のところへ。処遇をどうするにしろ、ケフカさんに見つかったらそれこそ面倒しか起こらねえし、さっさとレオ将軍に判断を仰ごうかと」

 仕事熱心なレオ将軍の副官に見つかった。
 俺の同期にあたる男だが、彼について語るとしたらレオ将軍のシンパ1号、かつケフカさん嫌いの筆頭だ。
 自動的に俺のこともかなり嫌っているらしいが、基本的に職務に忠実な男だから個人的感情を理由にここで彼らを攻撃することはないと信じたい。

 どうか、命惜しさに嘘を吐いていることがバレませんように。

 祈る気持ちをひたすらに隠し、精一杯平常心を装った俺の努力は実った。

「いいだろう。宣戦布告はお前に任せるとの命令も下っている。丁度いいからそのまま連れて行け」

 吐き捨てるようにそれだけ言って、彼は武器テントへ向かっていく。
 俺が言うのもなんだけど、帝国軍人って無能ばっかりなんじゃないだろうか。
 どう見てもこれ一般人じゃねえだろ。
 ムキムキとマスクとかおかしいって、絶対。
 どうしてみんな不審に思わな……アレか。ケフカさんのせいだ、これ。
 うん、分かるよ。そうだよな。
 あんなヘンなもん見慣れちまったら人間らしい分まともだもんな。

「なあ」

「何だよ」

「帝国軍って結構適当なんだな。意外だった」

「それは言うな」

 俺だって情けないとは思ってるから!



「事情説明は以上であります!」

 レオ将軍は思ったとおり、彼らに手荒な真似をすることは無かった。
 俺の報告を無言のまま聞いた後はいくらか警戒した様子ではあるものの、不要な戦いを嫌う彼らしく紳士的な対応を取っている。

「私はガストラ帝国の将軍でレオと申します。貴方がたのお名前を伺ってもよろしいですか?」

 相手の身分や地位に関わらず、それがたとえ敵であっても敬意を尽くすレオ将軍の姿を間近に見るのは、随分と久しぶりの経験だ。
 ケフカさんにもこんな頃があっただろうか。
 遠い記憶の彼方に、片鱗が見え隠れするような、しないような。

「オレはマッシュ。こいつはシャドウだ。なんとか、戦が始まる前に橋を通らせてはもらえないだろうか」

 どうやら、両者は交渉の体制に入ったらしい。
 俺が聞くのは、ここまでだな。

 聞こえてくる声を意図的に聞き流し、テント内を見渡してみる。
 マスクの男の視線が見えないのが気がかりなんだよな。
 ここは一般兵用のテントだから大したものは無いはずだが、万が一ということもありえる。
 外部に漏れてはならない情報、というものは確かに存在しているから、そういったものが無いかどうか、それを確認しようと思っただけだった。
 それなのに。

「何をしているんだ、このノロマ!! 俺サマを待たせるなと何度言ったら分かるんだよ!」
 どうして来るかな、この人。
 いつもなら座り込んだきり動こうともしないくせに。

「ケフカ! 取り込み中だと伝えたはずだろう!」

「うるさいうるさい! そもそもどうしてこの俺サマがお前の命令なんかにしたがわなくちゃならないんだ!」

 いや、うるさいのはアンタだから。
 
 できることなら関わりたくない。今ならこのキンキン声だって聞き流せる気がする。
 だが、レオ将軍はそれを許してはくれなかった。
 ケフカさんがうるさいから連れて行け。ついでにさっさとドマ城まで宣戦布告へ行って来いと、まるで子供におつかいを頼むかのようなこの軽さ。
 どれだけレオ将軍がイラついているかがよく分かるな。

「了解であります」

 でも、そのあまりの軽さに落ち込むことくらいは許してもらいたい。

「くっそー、腹が立つ! 誰だか知らないけどそこのお前! レオなんか毒殺してやりなさい!」

「バカ言ってんじゃありませんよ! ただでさえ宣戦布告の役目なんていいつかって落ち込んでるのにこれ以上俺をヘコませてどうしようって言うんです! 俺はもう何年もケフカさまの部下やってるんですから、もう少し労わってください!!」

 思わず本音が出てしまった。
 面と向かってバカと言ったのはさすがに初めてだ。
 これはとうとう死を見るかと覚悟したが、興奮状態のケフカさんは運よく聞き流してくれたらしい。
 すぐ後ろで聞いていた筋肉男が驚いた声を上げていたから、レオ将軍にはバッチリ聞こえていただろうが。
 宣戦布告というのは、大体にして俺のような一般兵の役割だ。
 理由はごく単純で、言葉を選ばずに言ってしまうなら捨て駒としての役割だから。
 前回フィガロ城へ先触れに行ったときとは話が違う。
 伝書鳥を飛ばしたところで手紙が届くはずもなし、敵対することを宣言しにノコノコと出向くしかないこの任務では、その場で殺されなかった兵は数少ない。
 ケフカさんからの命令だったら、俺は断固として拒否していただろう。

「すまない、配慮が足りなかった」

 でも、こうして俺にまで頭を下げてくれるようなレオ将軍の命令だったから、文句は無いんだ。

「いえ、これも任務ですから」

 生きて戻れる可能性が無いわけでもなし。

「それでは、直ちにドマ城へ向かいます」

 ケフカさんの背を押しながらだったから敬礼はできなかったが、それでも俺は決意を込めてそう告げた。

 さあ、これから1つ、大仕事だ。















************

11話投稿です。


前回のコメント、ありがとうございました!

今後もご指摘や感想などありましたら、気が向いたときにでも残していってください!



[10044] 【ネタ】FF6 上司の奇行に疲れました。12
Name: UZUKI◆4b052ae5 ID:6cb4b8e6
Date: 2009/10/20 01:23
 門の上からドマ兵たちがこちらを睨みつけている。
 その中には当然のことながら見知った顔は一つもない。
 怯えず、堂々とした態度で一方的に宣言することが重要だ。

「ガストラ帝国より通告する!」

 声は、どうやら届いているらしい。



 宣言が終わった。ドマ側には未だ動きが無いのが不気味に思えてならない。
 さあ、どうしたもんか。
 俺の予想だと、そろそろ返事が返ってくるか攻撃されるかだと思うんだが。
 背中はちょっと、向けづらいよな。
 お互いに相手の出方を伺った硬直状態が続く。
 そこへ、以前聞いた声が響き渡った。

「拙者はカイエン! そちらは以前ケフカ殿と共に来ていた方かとお見受け申す。しばしお時間をいただけるだろうか」

 運が良かったのか、悪かったのか、これじゃわかんねえな。
 前にドマへ来たときに、ケフカさんの給仕なんてしてくれちゃったカイエンさんだ。
 誠実で、実直。その誇り高さにはレオ将軍と通じるものを感じたことを覚えている。

「願っても無いお申し出です。どうぞ、こちらへ」





「お久しぶりでございますな。拙者を覚えていらっしゃるだろうか」

「もちろんです、カイエン殿。かつての非礼を詫びる間も無く、こうして相見えてしまった事を残念に思っております」

 いい人なんだが、あれだ。
 この人の喋り方はウツるからちょっと嫌だ。

「これも時代の流れというもの。貴殿には何の落ち度もないでござる」

「そう言っていただけると、幾分心も晴れます。ご壮健の様子で何よりです」

 彼はこの非常時に関わらず、供すら連れずに門外まで足を運んだようだった。
 もちろん、自分の実力への自信もあるのだろうが、それ以上に俺が1人でここへ来たことを疑う素振りすらないその様子が嬉しかったりする。
 うん、俺この人も結構好きだな。レオ将軍みたいだ、本当に。
 しかしながら、いつまでも堅苦しい話し方を続けようとしたらボロがでる。絶対に噛む。ござるとか言っちまったらどうしてくれるんだ。

「さっきも言いましたが、俺はここへ宣戦布告に来ました。こちらの指揮官はレオ将軍。お気づきでしょうが、レオ将軍配下の軍勢と合わせてケフカさまもいらしてます」

「レオ殿の名は聞き及んでいるでござる。しかし、ケフカ殿も共にとなると、全面抗争の構えだということなのだろうか?」

 話が早いところもいい。
 実を言うと、レオ将軍の伝言が伝えられる相手かどうか心配もしていたのだ。

「その通りです。ガストラ帝国軍はこれからドマ城への攻撃に入ります」

 俺の言葉に、カタナと呼ばれる剣を構えるドマ兵たちが見える。
 俺だけ警戒しても意味ないってのに、やっぱり緊張しているんだろう。
 しかし、カイエンさんの様子は変わらない。腰に携えたカタナを抜くことなく、俺の言葉に耳を傾けている。

「ここからはレオ将軍からの伝言です。――我々はドマ城に対する全ての物資補給を絶つことはない。また、ドマ城からの避難は全面的に許可する。降伏もまた、同様である。その場合には全員の身の安全を保証することを約束し、戦闘の意思ありと判断した場合に限り武力を持ってこれに対抗する――以上です」

 聞き入っていた兵達から動揺の声が上がった。
 まあ、当然だろうな。
 帝国軍が攻め込んでるってのに、避難も降伏も自由にしていいよなんてことはまずありえない。ケフカさんだったらそれこそ宣戦布告なんてしないまま奇襲して皆殺しだし、セリス将軍は敵に対して容赦をしないということも有名だ。
 レオ将軍が派遣されるのは俺たち帝国軍にとっても頼もしいことだが、それ以上に敵の運がいいと言うべきだろう。
 他に問題があるとすれば、ケフカさんが同行していることか。
 
「指揮官はレオ殿だと言っていたが、ケフカ殿はなんと言っているのでござるか?」

「よく聞いてくださいました! これは俺の個人的な見解になりますが、戦えない者の命を優先するのであれば、戦うのでも降伏するのでもなく、今すぐにでもこの場から逃げることをお勧めします」

 いざ戦いになったら、ケフカさんを止められる人間なんているわけがない。
 勝手な単独行動を取るのはもはや当然のこととして、何事にも効率を優先するあの人のことだ。まず初めに狙うのは戦う力のない女子供に違いない。
 いや、一応フォローするとさ。
 いくらケフカさんだって、そんな非戦闘員が逃げていくのを追いかけてまでどうこうするって事はないんだよ。
 基本的には自分以外のことにはあんまり興味がないし。
 実際のところ、そういう弱者がどれほど集まったって自分の身を脅かすことにはならないっていう自信もある人だから、虐げられた連中が寄せ集まって集団になることも大して気に留めてないらしい。
 だからさ。俺は思う。
 生き残りたいなら、ケフカさんからは逃げ出すのが正解だ。

「ご忠告、感謝する。貴殿の言葉は必ず主に伝えるでござる」

 カイエンさんはしっかりと頷いた。
 よし、これで俺の任務は達成だ。出掛けに渡されたメモの伝言はしっかり伝えたし、俺のほんのわずかな良心も満たしたし、後は……うん、無いな。

「それじゃ、俺はどうしましょうね。このまま陣に帰らせてもらえるのが一番ですけど、捕まえるならなるべく苦しくないように一思いにやっちゃって下さい」

 その覚悟は、できてるからさ。
 言った俺に、カイエンさんは少し驚いたような顔をした後、厳つい顔をほころばせる。

「いや、ドマの兵はそんな卑怯なことはしないでござる。危険を冒して単身やってきた上、忠告までしてくれた貴殿を手にかけることは拙者が許さないので安心して欲しい」

 なんてこった。
 世の中にはこんな正々堂々とした男がゴロゴロしていたのか。
 認めたくない。認めたくなくなってきたぞ。
 レオ将軍といい、カイエンさんといい、そういえばフィガロのイケメン国王もそうだったか。
 みんな男らしすぎるって。
 ちくしょう、俺もこんな上司の下で働きたかったぜ。
 でも、そうか。
 俺はまだ死ななくて済むのか。
 その事実は素直に、嬉しかった。




 俺がカイエンさんに見送られて帝国キャンプに戻った丁度そのとき、レオ将軍とケフカさんの出陣の準備が整っていたらしい。
 任務達成の報告に向かった俺を、レオ将軍は喜んで、その部下とケフカさんは嫌そうに、迎え入れてくれた。
 なんだ、帰ってきやがった。なんて言っているケフカさんはどうでもいい。この際、そんな酷い上司のことなんかどうでもいい。

「よく、無事に帰ってきてくれた」

「レオ将軍! こんな野郎を労うなんてもったいないです!」

 おいおい。仮にも同期なんだしさ、命をかけた重大任務を終えて帰ってきたときくらい労いの言葉を貰ったっていいじゃねえかよ。
 むしろお前のほうがダメ軍人だろ。

「おれはどんな人間であれ、それが自分の部下である以上、生きて戻ってくれれば嬉しい。それを副官のお前が否定するのか?」

「いえ、それは……」

 よっしゃ、ざまあ見やがれ。もっと怒られろ。

 なんて、冗談を言っていられる時間は長くは無かった。
 忙しなく走り回る伝令の1人が、ドマ軍の攻撃を伝えてきたからだ。
 それが、開戦の合図になった。




 結果から先に言おう。
 対ドマ戦は帝国軍の圧勝に終わった。
 レオ将軍が出る暇さえないほどに。
 ケフカさんがさ、やる気マンマンだったんだよ、珍しく。

 魔導アーマー隊が先陣を切って道を拓いた後は、比喩でもなんでもなく、文字通りケフカさんの独壇場だった。
 どう考えても、ストレス発散だな。楽しそうだもんな、ケフカさん。
 俺は魔導に詳しくないからよく分からなかったが、とてつもない大範囲の炎や雷が、4人や5人の小隊なら一撃で蹴散らしていく。
 怯んで歩みの止まった連中を凍りつかせ、勇ましく切り込んでくる男達を燃やし尽くし、それでも本人はまるで散歩でもしているかのようなゆったりとした歩みを止めることは無い。
 俺はその後ろから、ただついて行くだけで良かったんだ。
 ドマ城内に乗り込む頃には、帝国軍さえケフカさんには近寄らなかった。
 俺はケフカさんのそんな様子を見るのは初めてではなかったから今更どうとも思わなかったのだが、日ごろはレオ将軍の下で戦い続けていた彼らにとって、その様子は地獄の具現でしかなかったのかもしれない。
 俺だって、見ていて気分の良いものではないんだよ。
 人の焼けるニオイっていうのは、いつまで経っても慣れられるもんじゃねえし、恐怖のあまり戦意を失った相手に対しても、ケフカさんは躊躇をしない人だから。
 だが、それを遠くに見ていたはずのレオ将軍は、決してケフカさんを諌めることは無かった。
 つまりは、こうやって殺しつくすのも軍人の仕事だって、そういうことだ。
 俺たちにできるのは、この圧倒的な力の向かう先が自分や知人でないことを祈り続けることくらいってな。
 不本意にも見慣れてしまった光景の中、重なって倒れていく人影にカイエンさんの姿が無かったことは救いになったぜ。
 俺とケフカさんしか生きるもののいない城の中を、高笑いがこだまする。
 
「城主も討ち取りましたし、そろそろ帰りましょう、ケフカさま」

「ツマンナーイ! たったこれだけか!?」

「これだけです。ケフカさまもこれでレオ将軍との共同任務が終わって嬉しいでしょう? 魔導アーマーも無事みたいですから、あとはベクタへ帰ってゆっくり研究でもしてたらいいんじゃないですか?」

 機嫌を取ろうとまくし立てる俺に、きょとんとした瞳を向けてくるケフカさん。
 ある意味純粋なその表情が、怖いと思っていた頃が懐かしい。

「それもそうか。じゃあ僕ちんはこのまま帰る! 後のことはやっておけよ!」

 ひと暴れしてとりあえず満足したらしいケフカさんは、それだけ言ってさっさと踵を返していく。
 俺も、ようやく休暇がもらえそうで喜ばしい限りだよ。
 とりあえず、レオ将軍のところへ帰って報告を済ませてしまおう。
 


 凱旋だ。































************
12話投稿です。


前回もコメントを頂きましてありがとうございました!
シャドウについては後々に言及するつもりです。

また次回もよろしくお願いします。それでは!



[10044] 【ネタ】FF6 上司の奇行に疲れました。13
Name: UZUKI◆4b052ae5 ID:6cb4b8e6
Date: 2009/10/21 08:32
 ガストラ帝国首都ベクタ。
 今日もとても平和な一日だった。

「おい、そこで何でオレに絡むんだ!」

 俺は短い休暇の最後となるこの日を、旧交を温めるという有意義な時間で締めくくることに決めたのだ。

「オレの休暇は今日だけなんだぞ。何が悲しくてお前なんかと酒を飲まなきゃならないんだよ!」

 いいじゃねえかよ。仲良くやろうぜ。

「冗談じゃない。ケフカの犬となんか誰が仲良くできるってんだ」

「うるせえんだよ、てめえ人間言っていい事と悪いことがあるってわからねえのか? せっかく全軍の再編成があるって聞いて、喜び勇んで移動願いを出したってのに結局ケフカさんの軍に配属された俺の絶望は分かるだろ? なあ、分かるよな?」

 かつて悲しみを分け合ったビッグスとウェッジはもういない。
 いつの間にか同期のヤツらはどんどん死んでいて、まだ軍内に残っているのは俺たち2人になってしまった。

「俺だって、本当は分かってたのさー。今更ケフカさんから離れて平穏に暮らすには、ちょっとばかし余計なことを知りすぎてるってこともさ」

 それは他でもない、ティナのことだ。
 今でも定期的に伝書鳥を飛ばしているであろう彼女について、その報告の内容を知らされることはない。
 だが、帝国にとってそれを知る下っ端が未だに生きているという事実が都合の悪いことであるらしいことは、俺にも予想がついていた。

「でもよー。せめてレオ将軍の軍に入りたかったんだよ、俺は。今のあの人、欠点も無くなって素晴らしいだろう?」

「それは、そうだな。さすがにドマ城攻略のキャンプでケフカを殴ってるのを見たときには驚いたよ」

 だよな。あの環の力はさすがに偉大だ。
 ケフカさんにしてみれば、結局うるさく見張られているという意味では期待外れだったかもしれないが、あの人の取った行動の中で唯一、世のため人のためになることだったと今でも思う。
 それにしても、嫌だ嫌だ。
 次のケフカさんの任務はナルシェで発見された幻獣の確保なんだとさ。
 できることなら行きたくない。
 俺まで消息不明なんて、冗談じゃねえぞ。




 とは言え、俺の個人的な感情なんて何の役にも立たないことは分かっている。
 任務の伝達を受け、向かう先は上司の執務室だ。
 日程やら諸々の確認をしてケフカさんのゴキゲンを伺うのは今や、俺だけの役割になってしまった。

「――概要は以上ですね。それと、非常に言いづらいんですが、今回もレオ将軍との共同任務だそうです」

 いよいよ、帝国もリターナーの殲滅に本腰を入れるということなんだろう。

「リターナーの撃退に関してはレオ将軍の部隊が担当するそうですので、ケフカさまは直接幻獣の確保をするようにとことでした」

「なるほど。とうとうあの力が俺サマのものに」

 レオ将軍の名前に反応し、不機嫌になりかけたケフカさんだったが、幻獣を手に入れるというところを喜ぶことに決めたらしい。
 以前とは違い、レオ将軍からの接触がかなり減っていることもあって、それほど不快ではないと判断したのかもしれない。

「でも、変なんですよ。レオ将軍はもともとベクタの守護の予定だったらしいんですが、今朝になって急に変更になったとか」

 前回のドマ攻略なら分かるんだ。
 あの国は元々、反帝国の勢力としてはかなり高い戦闘力を有していることで警戒されていた。
 結果的にケフカさんが1人で殲滅してきたとは言え、あれは偶然の産物と言うべきだろう。
 あの時あそこにいたのがレオ将軍だけであれば帝国軍の被害は多数に登っていたはずだし、普段のケフカさんはやる気がないから、更に多くの兵が犠牲になっていたと思う。
 基本的にケフカさんはギリギリまで遊び続けるし、部下だってこの人の為に命を懸けて戦えって言われても士気が上がるはずもなし。
 だからこそ、レオ将軍の統率力とケフカさんの戦闘力を合わせてぶつける必要があったわけだ。
 だが今回はどう考えても、ここまで本気で叩き潰すほどの相手だとは思えない。

 って、俺が考えることじゃなかったな。
 余計なことに首を突っ込んだら長生きできないって事は分かってるはずなのに、深入りしすぎてしまった。

「とにかく、今回の作戦指揮官はケフカさまになりました。細部については一任するそうですので、伝達事項があればお伝え下さい」

「じゃあお前でいい。レオにくっついてリターナーに混ざってるセリスと小娘を拾って来い」

 は?
 ちょっと待て。何か重大なこと言われた気がするんだが、気のせいだろうか。

「ティナと、セリス将軍、ですか?」

 セリス将軍って、サウスフィガロの包囲中に裏切ったんじゃなかったのか?

 呆けていた俺を面倒くさそうに睨みながらケフカさんが言ったことを総合すると、こうだ。

 ティナの報告は、ベクタに届けられた後でセリス将軍やレオ将軍にも伝えられていたらしい。
 それにはリターナーの本部に潜入したことに加えて、単独でサウスフィガロへ向かうメンバーがいることが記されていたんだとか。
 そこで、女好きで守りたがりだというその男を誑し込み、セリス将軍もリターナー側に潜入する作戦が立てられた。
 どんな方法を使ったのかは分からないが、それは成功したようだ。
 2人旅になるから以後の報告は出来ないという文面どおりその後の連絡は無いものの、ナルシェでティナに合流することは間違いないだろうとのこと。

「甘ちゃん集団だということが分かりましたからね。ここらで帝国の力を見せ付けておけば当分逆らうことも無いでしょう」

 喋っているうちに段々機嫌が良くなってきたケフカさんは、そう締めくくった。
 俺、やっぱりとんでもないこと聞かされちまった。

「何てこと言ってくれちゃったんですか! それどう考えても機密事項でしょう!?」

「分かってるなら大声出すな。とにかく、あの幻獣を手に入れるにはティナがいた方が好都合だから、しくじるなよ」

 どんどん深みに嵌っていくな、俺。
 なあ、ビッグスとウェッジよ。そろそろ友がもう1人、お前達のところへ行くかもしれねえや。




 俺の絶望をよそに、作戦決行の日は近づいていく。
 ナルシェへの出発は、もう明日に迫っていた。
























************
13話投稿です。

こんなことになった言い訳は理由を聞かれてからする。



前回もコメントありがとうございました!
とても励みになっています!


とりあえず、カイエンは死んでません。



[10044] 【ネタ】FF6 上司の奇行に疲れました。14
Name: UZUKI◆4b052ae5 ID:6cb4b8e6
Date: 2009/10/23 06:28
 ケフカさんの言いつけどおり、俺はレオ将軍の部隊に合流してナルシェへ向かうことになった。
 任務内容について、他言無用との命令は受けてはいないが、やはりここは黙っておくのが賢明だろう。

「お前、一体何を企んでやがる! ケフカの部下と一緒に寝泊りするなんて空気が悪くていけねえよ」

「彼も任務なのだから仕方あるまい。そんなことより、じきにナルシェだ。各自戦闘の最終準備を怠らないよう指示を出しておけ」

 部隊長のレオ将軍があっさり受け入れてくれたおかげで、俺の精神的疲労の他に弊害はなさそうだ。
 



 前回ビッグスたちが訪れた視察任務とは違って、今回は戦の為に訪れたナルシェでは、ガードたちが待ち構えていた。
 まずはここで、第一戦か?
 レオ将軍が指示を飛ばしているのが聞こえる。
 こちらから手出しはせず、警戒状態で陣形を取って進軍、だとさ。
 リターナーと帝国と、どちらに気持ちが傾いているのかは分からないが、今のところは中立を宣言しているナルシェだけあって、卑怯を嫌うレオ将軍はこちらから攻撃を仕掛けるつもりはないらしい。
 めんどくせえ。
 とは思うものの、上官命令には従うけどな。
 
 俺の配置は最前線。
 この次に交戦する予定のリターナーに接触するときに必要な措置だったから、自分から願い出ていたりする。
 今までの俺はなんだかんだ言ってケフカさんの周りで突っ立っていたから、こうして敵を倒すかやられるかの緊張感を味わうのは随分と久しぶりのことになる。

「おい、お前はさっさとやられて来いよ。止め刺されんのをしっかりと見届けてケフカのヤツに報告しておいてやるぜ」

「てめえ、ふざけんな。万年一般兵の根性ナメんじゃねえぞ? せいぜいレオ将軍の陰にでも隠れて震えてろ」

 同期とこうして軽口を叩き合うのも、久しぶりだ。
 一触即発の空気の中、ガードの飼い犬が襲い掛かってくる。
 まあ、死なねえ程度に暴れてくるかね。


 


 敵に囲まれる心配が無いのはいい。
 でも陣形を乱せないのは面倒だ。
 切りかかられ、避けると後ろに一つの悲鳴。
 お返しとばかりに切り倒せば、視界の端からワンころの襲撃。
 仕官したてのころには、こんな光景を夢に見て怯えたこともあったかな。
 肌に突き刺さる戦いの空気から感じるものは、今では疲労感でしかないってのに。
斜め前に見える帝国兵が、喉元に噛み付いたワンころを引き剥がそうとした体勢のまま倒れこんだ。
 そちらに気を取られたガードの隙を突いて、正面のガードを振り払う俺の手は汗で滑ってマズイ状況になっていたりもする。

 本当に、こんなもんは早く終わらせるに限るよな。
 戦う時間が短けりゃ、休む時間が増えるわけだし、それに何より。

「あんまりトロトロしてると、雷に打たれて敵ごと消し炭だぜ」

 きっとそろそろ俺らの後ろに、あの人が来ちまうよ。

「全員、直ちに後退!! 陣は忘れろ! 急げ!!」

 突如、レオ将軍の声が響き渡る。
 状況を理解するよりも早く、ガードに背を向けて走り出す俺。
 チャンスとばかりに背を刃物が掠める気配がしたが、そんなもんに構っていられるもんか!
 後衛だった連中を追い抜き、必死に走って、とにかく走って。
 そろそろ息が切れてきたから足を止めた、その瞬間。
 大気を切り裂くかのような轟音と共に、あたりが一瞬白く染まった。
 続いて暗転。
 いや、強すぎる光をまともに目に入れたせいで眩んでいるだけか。
 瞬きを何度も繰り返し、ようやく目が慣れてきたところで背を向けていたガードたちに向き直る。

「しっかし、酷いな」

 そこには死屍累々と横たわる、ガードたちと何人もの帝国兵の姿があった。
 逃げ遅れたか、逃げなかったか。
 運が悪かっただけとも言えるし、ちょっとばかり下調べが足りなかったとも言える。
 どちらにしろ、俺は死ななかったし、ガードという差し当たっての脅威は消え去ったと思って間違いないだろう。
 不謹慎にも安心してホッと息を吐き出したのと、どちらが早かったか。
 再び響き渡ったレオ将軍の声には、明らかな怒りが込められていた。

「どういうつもりだ、ケフカ!! 帝国兵を、おれの部下を! 巻き込むような攻撃をする必要がどこにあった!?」

 街外に出ていたガードに、生き残りはいなかった。
 対して帝国側の被害の方は、レオ将軍の部隊が3分の2程度に減ったのみ。ケフカさんの部隊には傷一つ付いていないことを考えると、大快挙と言っていいのではないだろうか。
 だって相当強かったぞ、ガードども。

「うるさいねえ、レオ。今回は急ぐ必要のある任務なんだよ。あのまま放っておいたらどれだけかかったか分からないだろうが、この無能が!」

 てめ、このピエロ野郎! レオ将軍を無能呼ばわりした挙句、高笑いとは何事だよ!?
 そりゃあ確かにこれじゃヤバイとは思ったさ! ケフカさんがいなきゃもっと兵が死んでたかも知れねえとは思うが!!
 それでも、それにしたって、やり方、が……?

「第一、お前がそう煩いから先に宣言してやったじゃないですか。逃げる時間は十分にくれてやったのにこうなったんだから、上官が無能なんですよ」

 なるほど、分かった。
 この人、こうやってレオ将軍をバカにしたくてわざとやったんだ。
 考えてみれば確かに、普段だったらこういう行動を起こされたとき。

「生き残れるのは、たまたま最後衛にいた兵だけです」

 ポーションを飲み終わって、小さく呟いた俺に視線が集中した。
 レオ将軍まで、責めるような目で俺を睨みつけている。
 居心地が悪い。
 非常に居心地が悪い。
 しかしながら、ここでみんなに罵られたりなんかして不機嫌になられた場合、より困ったことになるのはケフカさんの方であることも確かなわけで。

「俺は最前線にいました。いつものケフカさまだったら何の前触れも無く魔導で殲滅していたはずで、そうなっていたら当然、俺は生きてここにはいません」

「そう! 俺サマがわざわざ退却の時間をやったんだ! 感謝しなさい!」

 結局、不本意にもケフカさんのフォローなんて事をやっちまった。
 すみません、レオ将軍。
 俺は八つ当たりでケフカさんに殺されるよりも、貴方に嫌われるほうを選びます。





 ナルシェの守りを突破して向かう先は、炭鉱ではなく切り立った崖の上。
 帝国の求める幻獣は今、そこで静かに眠っているらしい。

「お前、こんな時に役に立たなくてどうするんだよ!」

「す、すみません。ちょっと、ポーションじゃ塞がらない傷だったみたいで」

 俺は残念なことに、ガードから切りつけられた背中の傷が予想外に深かったため、レオ将軍から戦力外通達を受けてしまった。
 当初の予定通り、前線に立っていち早くティナたちに接触することが不可能になってしまったのだ。
 ケフカさんは怒った。
 それはもう、泣きじゃくる子供のように怒り狂った。
 ケフカさんの部隊へ戻れと言うレオ将軍と、そのまま前線に立てというケフカさんの板ばさみになり、さすがに心が折れかけていたところで出た妥協策が、レオ将軍の部隊を後ろで観察し、戦闘が終わってから彼女達とコンタクトを取るというもの。
 無理言うな、と言える立場では無かったから、渋々ながら了解してしまったわけだが。

「ケフカさまは先に幻獣の確保ってことでしたけど、どうするんスか?」

「俺サマはもう知らん! レオのヤツ、オレの部隊を横取りしやがって!」

 へそを曲げてしまったため、全て状況が整ったころに勝手に出てくることに決まったようだ。
 我慢できなくなればさっきのように自分から手を出してくるだろうから、俺もそれ以上は何も聞かないことにした。
 色々と事情が変わってしまったこともあり、俺に与えられた任務にも少しばかり変更が出ている。
 ここでリターナーを確実に殲滅することができない可能性が出てきたため、セリス将軍には今後も彼らに同行してもらうのだという。
 本人はここで帝国に合流するつもりのはずだが、そこは俺がなんとかしろとのこと。

「ケフカさま、さっきみたいに魔導で一気に蹴散らしちゃうとか、無理っスか?」

「バッカもん! あんなの何度も打てるわけ無いでしょうが! 今日は打ち止めだよ!!」

 いらねえところで本気出して、この後は大したことはできないんだってよ。
 どっちがバカだよ。
 とは、さすがに言わなかったが。



 作戦も決まり、決行のときが訪れる。
 リターナーから選りすぐったのであろう足止め部隊には、見知った顔が多すぎて驚いた。
 ティナとセリス将軍は当然のこととして、ドマで出会った筋肉男とカイエンさんまでがリターナーの実動部隊に参加していたとは。
 遠目に見える様子から察するに、フィガロ城で後ろ姿だけ見かけたバンダナ男もいるし、一番ありえないと思ったのはフィガロ国王が混ざっていた事実。
 普通はな? 王サマってのは後ろに引っ込んでふんぞり返ってるもんなんだよ。
 たとえば、奥でボーっとつっ立ってるヒゲもじゃのように。
 だってのに見てみろ、あの王サマ。かなりエグいぞ。
 さっきからぶん回してんの、アレ確かかいてんのこぎりだろ。
 俺は無理だね。
 あんなもん人間に向けて攻撃するなんて。

 しかしながら、これはいよいよマズイ状況になってきた。
 予想とかけ離れすぎた戦力を、リターナーが有していたのだ。
 既に帝国軍はほぼ壊滅状態になっていて、戦う力を残しているのはレオ将軍と副官の2人だけ。

「やばいです、ケフカさま! レオ将軍が!!」

 最後の頼みの綱はケフカさんしかいない。
 が、しかし。

「負けろ! 負けろ! レオやられろ!!」

 ダメだあの人。
 全く助ける気なんかねえ。

 こうなってしまったら、俺の取るべき行動は一つしかなかった。
 レオ将軍に向かって、フィガロ国王がきかいを向けるのが見える。
 ――大丈夫、きっと大丈夫だ。急げばいい。
 敵側にはティナもセリス将軍もいる。
 最悪の事態は、避けられるに決まっているんだから。

「待ってください!!」






























************
14話投稿です。

主人公もちゃんと兵士をしていることをアピールしたかった。
でも戦闘シーンなんて難しいもの書けなかったんだ。



前回もコメントありがとうございました!
これからも読んでいただけたら嬉しいです。
そしてできたら、また一言声をかけていってください。

それでは。



[10044] 【ネタ】FF6 上司の奇行に疲れました。15
Name: UZUKI◆4b052ae5 ID:6cb4b8e6
Date: 2009/10/24 00:15
 ああ、ちくしょう。背中が痛えな。

 叫んだその声は、やや遠いリターナーの面々にも届いていたらしい。一斉に振り返った彼らは、それぞれに表情を変えた。
 俺にとってありがたかったのは、そのまま俺を待つようにこちらに体ごと向き直ったことで、レオ将軍への攻撃が中断されたことだ。
 ゆっくりと雪道を踏みしめて、彼らの元へ歩み寄る。
 もう、走る体力は残っていない。

「お、ひさし、ぶり、の方が多いですね。皆様、お元気そうで、帝国軍と、しては、困ったこと、です」

 息が切れる。
 めっちゃくちゃ疲れたぞこの野郎! 

「君がいる、ということは、ケフカも近くに来ているのかな?」

 最初に反応して声をかけてきたのは、フィガロ国王だった。
 警戒した様子であたりを伺っているが、すぐに俺やレオ将軍たちへ攻撃するつもりはなさそうだ。

「ええ、来てます、が、あの人、は、当分、出てこないと、思い、ます」

「当分って、いつまでだ?」

 バンダナ男は耳ざとい。
 美人には甘くても、男には容赦が無いタイプと見た。
 セリス将軍に誑かされた無能の癖に。

「そう、ですね。レオ将軍、が、やられるのを、待ってますよ。嬉々として」

 不信感も顕わにこちらを見やるリターナーと俺の同期。
 おい、お前まで睨むなよ。

「そうだ! 何でこんなことになってもケフカの野郎が出て来ない! 裏切ったんじゃないだろうな!?」

「裏切り? バカだろお前。そもそもあの人に仲間意識なんて高尚なものが備わってると思うのが間違ってるんだ。むしろドサクサに紛れてレオ将軍を暗殺しようとするのを必死で止めたぞ、俺は!」

 あれ、何だこの生温かい空気。
 やめろよ! そんな哀れみとか色々入り混じった目でこっちを見るな、リターナーども!

「と、とにかく。そういうわけで、あなた方がケフカさんにとって都合のいい行動を取っている間は、あの人は絶対に出てきません。部下の俺が保証します」

 慌てて宣言した俺に、疑惑の目を向け続ける彼らは言葉も出ないといった様子だ。
 分かるけどな。
 でも本当なんだから仕方ねえよな。
 どちらも口を開かず、ただ凍える空気だけが吹きすさぶ中、ようやく口を開いたのはセリス将軍だった。

「ならば、何故お前はここへ現れたのだ。まさか『私に』レオの命乞いをしに来たのではないだろうな?」

 私に、と強調されて初めて、俺は重大なことを忘れかけていたことに気がついた。
 ここでセリス将軍はこちらに戻ってくる予定だったはず。
 どうしたものだろうか。
 これほど会話に集中されている中で、疑われず、しかし的確に作戦の変更を伝えなくてはならない。
 考える時間は、ないな。

「俺は――」

 誰も口を挟んでこない。
 さすがに、緊張するな、これは。

「ケフカさまからの任務を、果たしに来ました」

 リターナーたちがそれぞれに武器を構える。
 違うよ、馬鹿。だから体が痛くて戦えないって言ってんだろ。

「伝えることがあるんです。セリス将軍」

 セリス将軍が筋肉男を制した。
 大人しく拳を下げた彼に倣って、国王やカイエンさんたちも武器を下ろす。

「『ナルシェに入ってから』ケフカさまから聞きました。セリス将軍は我々を裏切り、リターナー側についた」

 レオ将軍の表情が変わるのが分かる。
 それまで淡々と俺の言葉を聞き流していた様子の彼が、初めて動揺した。
 ケフカさん、レオ将軍に作戦の変更を伝えていないらしい。

「あなたは『今後も彼らに同行する』と。こちらの認識を伝えてくるようにとのことでしたが、『理解していただけましたか?』」

 正直言って、不安だ。
 リターナー側には、セリス将軍が裏切ったと確信させ、信頼してもらわなければならない。
 それに加えてセリス将軍には、もうしばらくだけそっちにいて、後でまた帰ってきてね、と伝えなくてはならないのだが。

 本当に切り捨てられたのだと、思い込んではしまわないだろうか。

 ここは、セリス将軍の忠誠心や深読み能力に賭けるしかないところだ。
 こっそり後ろの男を盗み見ると、ちょっと嬉しそうにも見えるから、リターナーに対しては意図した通りに伝わっているだろう。
 しかしセリス将軍は相変わらず無表情のままで、どう感じているのかなんて到底推し量れない。

「私からも、いくつか聞こう」

「はい、なんでしょう」

「帝国は私を、殺しに来るか?」

 これまた、微妙な質問だな。
 何と答えれば、こちらの意図が伝わるのか。
 これでもう少し俺がセリス将軍と親しければよかったのだが、生憎と彼女とはほとんど接点を持ったことがなかったから、非常に困る。

「うーん、わかりません」

 ケフカさんが殺せと言うことはまず無いだろうが、帝国が、となると判断ができないところだ。

「なら、もう1つ。私の執務室は、どうなった?」

 これは、いいことを聞いてくれたな。
 思わず顔がほころびそうになるのを必死に押しとどめる。
 意識して眉を寄せ、もう1度セリス将軍の表情を伺えば、そこには苦笑とも微笑とも付かない笑みが浮かんでいるのが分かった。

「最近は専ら、ケフカさまのクローゼットにされていますね。あの妙な服装にもこだわりがあるらしくて、最近また新調したところです」

 怪訝な顔を浮かべるリターナーたちだが、レオ将軍とセリス将軍は納得したといわんばかりに頷いている。

「俺が生きて帰れたら、次の任務はその部屋の片付けだそうで。ポケットの中にメイク道具や紙切れがごちゃごちゃと入っているから俺としてはごめん被りたい限りですが、あの様子だと服も『紙切れ』もどんどん増える予定のようですよ」

 言い終わると、セリス将軍は満足した様子で分かったとだけ答えた。
 さすがにあの年で将軍になる人は違うな。
 報告書を結ばれた伝書鳥はみな自分の巣箱へ帰っていくわけなのだが、セリス将軍がその巣箱を自分の執務室に置いていたらしいことを思い出した。
 何のためにそんなことをしたのかと思ったものだったが、こういうときのためだったのかも知れない。
 レオ将軍も、俺があえてケフカさんの、と言ったところに安心した様子だ。
 自分が嫌われていることには今の彼は気づいているようだから、純粋にセリス将軍の心配だけをしていたんだろう。

 セリス将軍への伝言がひと段落したところで、俺はティナに向き直る。
 終始俯き加減のその少女は、同世代のはずのセリス将軍より幾分幼いように見えた。
 うん、よく頑張ったな。
 ひとまず任務は終わりだから、安心するといい。

「伝言はこれだけです。あとは、個人的な話、させてもらえますか?」

 こう聞いたのは、俺がこの場にいるほとんどと面識があるからこそだった。
 年齢も立場もさまざまな彼らだが、俺の知る限りでは彼らには共通点がある。
 何事につけ、甘いんだよ。
 見るからに不審なティナを随分と早い段階から連れまわしていたことといい、理由も分からないままにセリス将軍をあっさり戦力に組み込んでしまっていることといい、こうして俺やレオ将軍たちを、殺さずおいていることいい。
 個人的には、そういう人間は嫌いじゃない。
 ああ、善人なんだなと素直に思うし、俺だって初めは、正義の志を持って仕官した真面目男なんだ。
 ただ彼らと違うのは、上官があまりにもあまりな人だったせいで染まっちまったこと。
 お国のためなら卑怯なことでもできるようになった、そんな俺だからレオ将軍への尊敬は人一倍なんだろう。
 なんにせよ、こうして許可を取ってしまえば、しばらくは邪魔をせずにティナと話ができるだろうと、そんな目算があった。
 しかし。

「その前に、1ついいかな?」

 口を挟んできたのは、イケメン国王だった。

「レオ殿の首にあるその環。ティナは見覚えがあると言うんだ」

 ガストラ帝国の全軍人に告ぐ。
 俺たちはたった今、果ての無い絶望のふちに立たされようとしている!!























************
15話投稿です。


前回もコメントありがとうございました。

主人公はケフカじゃなくてレオ将軍の信奉者です。


コメントはとても励みになっています! 嬉しいです! そしてドMな作者は苛められても喜びます。
これからも読んでみてください。気が向いたらまた声をかけていってくれると嬉しいです。


最後に1言。

ビバ、ケフカ!



[10044] 【ネタ】FF6 上司の奇行に疲れました。16(ちょっと修正)
Name: UZUKI◆4b052ae5 ID:6cb4b8e6
Date: 2009/10/26 01:40
「そ、の環が何であれ、あなた方に不利益を与えることはないと思うんです」

 だから本当に、そこに触れるのはやめてください。




 俺の必死の説得が功をなすことは無く、それどころか、以前俺が国王にもらした情報の1つが重大な意味を持ってしまっていた。

「君は言ったね。あれは手足が千切れても、無理矢理体を動かさせるほどの強制力を持っている、と」

 うわ、ソレ、確かに言ったわ。

「その上、今この近くにはケフカもいるんだろう? 彼にそんな無茶をされては、こちらも困るんだ」

 それは俺も困る。
 レオ将軍のいない帝国軍なんて、しかも将軍が2人ともいなくなってケフカさんが今以上に威張り散らすような帝国軍なんて!

「それに、君の言ったことをそのまま信じるとすれば、彼の命を奪ったとして、次にやってくるのはケフカのはず」

 その通りです。
 でも、その環をどうこうするのはカンベンです。

「だからその環がティナの身に着けていたものと同じかどうか、教えてもらえると助かるんだが」

 ただの装飾品だと言い張りたい。
 だが、そんな嘘はおそらくレオ将軍自身によって暴かれてしまうだろう。
 取れないもんな、自分では。
 悶々と悩む俺。
 目が泳いでいることは分かっている。さすがの俺でも平然としているなんて無理だ。
 そんな様子を容認してくれなかったのは、同期であるレオ将軍の部下だった。

「おい、どういうことだ! まさかお前、ケフカの野郎と一緒になってレオ将軍に何か」

「ホントお前黙れよ」

 空気読んでくれよ、頼むから。

「黙れるか、こんちくしょうが! 何を考えてそんなモンつけてやがるんだ!」

 全帝国軍人のことを考えて。
 あわや逆ギレしそうになったその時、更に口を挟んできたのは筋肉男だった。

「なあ、将軍さん」

 しゃがみこんで、地に崩れ落ちているレオ将軍と目線を合わせる筋肉男。
 頼みごとをするときは対等な立場でものを言うってことが分かっている、随分と誠実な男であるらしい。
 さすがあのフィガロ国王の弟だな。

「この前、ドマ近郊でオレを逃がしてくれたとき、言ってたじゃないか。気持ちはリターナーに近いって」

 あれ、そんな話してたのか?

「最近のケフカの行動が赦し難いって、そう言ったろ?」

 あ、俺やケフカさんが出て行った後のことか?
 逃がしたときって言うなら、たぶんそうなんだろう。
 俺がキャンプに戻ったときにはもう、彼らはいなかったのだから。

「アンタみたいな人が帝国にいるなら、オレたちの行動は絶対に無駄にはならない。だからさ」

 言いながら、こちらに視線を向けてくる。

「この人を操るようなことは、してもらっちゃ困るんだ」

 言いたいことは分かった。
 要するに、帝国と交渉をするときの足がかりになるとでも思っているんだろう。
 目の付け所は悪くないとは思う。
 実際、今の帝国で一番理性的に物事を考えられる人はきっとレオ将軍をおいて他にはいない。
 リターナーに対して同情的な感情を持っていることは軍内でも密かに知れ渡っているし、今のレオ将軍ならばケフカさんを押さえ込んで会議に持ち込むこともあるかも知れない。
 だが、それならば尚更。

「今のままのレオ将軍でいて欲しいなら、それは外しちゃダメです」

「……どういうことだい?」

「お察しの通り、それはティナが身につけていた操りの環とよく似たものだそうです。ケフカさまがフィガロ城内でレオ将軍にお渡ししました」

 レオ将軍に目を向けると、ゆっくりと頷いてくれる。
 そうだよな。
 本人が知らないはずが無い。
 だってそれは。

「ご自分で身につけたんですからご存知ですね、レオ将軍?」

 そう。
 この人はケフカさんからの初めての贈り物だとたいそう喜んだ挙句、自らいそいそと装備したのだ。

「レオならやりかねん」

 さっすがセリス将軍。わかってらっしゃる。

「私はその環を外すことには反対だな。今後リターナーが帝国との交渉も視野に入れているなら尚更だ」

 もっと。もっと言ってやって。

「そうです! それに、レオ将軍がやられるだけならケフカさまも喜んで見てますけど、環を外そうとしたら本気になって襲い掛かってきます! これ絶対です!!」

 やべ、興奮したら傷口が開いたかも。
 って、何だよ。そんな険悪な空気出さなくたっていいじゃねえかよ。

「セリス。君を疑いたくはないけれど、今の状況でそれを言うのは些か納得がいかないな」

 王サマは意外とクールだった。
 どうも、帝国にだけ都合のいいように話を持っていこうとしているように感じてしまったようだ。
 というかね、ダメ。
 もうそろそろ、ダメ。
 こんな不穏な話を続けていたら、来ちゃうから!

「ってお前マジ何やってんだよ!」

 レオ将軍の首に手をかけるなんて正気かコラ!? 
 ああああああ、ダメなんだって。本当にそれを外すとか壊すとかダメなんだって!

「見りゃ分かんだろうが。ケフカが何を企んでんのかはこの際どうでもいい。レオ将軍の危機は副官の俺が救うんだ!」

 空気の読めない愚か者が、ここに1人。
 試作段階ながらも多大な効果を示していた救世の神器が、それゆえの脆さで音もなく外され、呆気なくも地に落ちた。

 文字通り憑き物の落ちたレオ将軍が、疲労のせいで濁っていた瞳を輝かせる。
 満足そうな様子のリターナーどもと馬鹿同期を尻目に、焦ったのは俺とセリス将軍。
 ティナはむしろ、この世の楽園に辿り着いたかのように満面の笑みを浮かべているのは、見なかったことにしておく。

「セッ、セリス将軍! ケフカさまが!!」

「分かっている!! 全員下がれ! ヤツが来るぞ!!」

 彼女の動きは機敏だった。
 ティナを更に後ろに下がらせ、レオ将軍を引っつかんで立たせると、そのまま剣を振りかざす。
 噂の、まふうけんというものだろうか。
 この目にしたいという好奇心は未だ尽きないものの、今はそれどころではない。
 幸い、この事態についてこられていないバンダナ男は俺から注意が逸れている。
 
「ティナ! 逃げるぞ!!」

 きょとんと立ち尽くしていたティナの元へ走り、腕を掴んで奥へ走る俺。
 国王やカイエンさんが立ちふさがるのを何とかすり抜けて向かう先は、幻獣の元だった。

 せめて幻獣は確保しないと、どっちにしろ殺される!!
 背後で響き渡る爆音なんて聞こえないと、自分に暗示をかけながら。





「ティナ。あの幻獣の確保、できるな?」

「う、うん。やってみる」

「よし。……これが終わったら、好きなところに帰るといい。ケフカさまは君を帝国へ連れ帰るつもりだけど、彼らの方を選んでもいいんだ」

 幻獣さえ確保すれば、とりあえず機嫌は直るはず。たぶん。きっと。おそらく。
 だから、俺はもともとティナだけは、自由にしてやるつもりだった。

「どうして? 私はもういらない?」

「そうじゃなくてよ。これだけずっと一緒に居たら情も移るんじゃないかと思ってさ。ただ1つ頼むとしたら、リターナーにつくならレオ将軍も連れて行ってくれ」

 予定にちょっとばかり打算が含まれただけで。
 今のケフカさんはヤバイ。
 このまま元に戻ったレオ将軍が帝国に帰ったらヤバイ。
 本気で世界を壊しつくす気がする。
 そこで俺は考えたわけだ。
 レオ将軍、近くに居なけりゃいいんじゃね?

 そうだ。レオ将軍が帝国を裏切ったとなれば、当然帝国は全力を挙げて制裁を加えることになるだろう。
 まさかあの人が俺らにやられるはずもなし、ケフカさんもレオ将軍と敵対することになればむしろ機嫌が良くなるかも知れない。
 結果として帝国が負けるようなことになったとしても、俺はむしろ本望だね。

「なら、君も来るかい?」

 追いかけてきた連中から、意味の分からない言葉が聞こえてくる。
 振り返るのも怖いな。

「私には分からないんだ。ケフカの忠実な部下にも見えるし、誰よりもケフカを恐れて疎んでいるようにも見える。私としては、ケフカの心理に詳しい君も居てくれたほうが、何かと都合がいいんだけどね」

 冗談言うな、イケメンだからって何言っても許されると思うなよ?
 っつうか、いつから聞いてやがった。

「残念ですが、無理ですね。レオ将軍が帝国にお帰りになるなら、俺も当然戻ります」

「彼が我々に味方するとしたら?」

「その時は、うっかりケフカさまに殺されるのが嫌なんで帝国に戻ります」

 レオ将軍は敬愛しているが、ケフカさんに嬲り殺されるのは断じて拒否する。
 話しながら、こっそりとティナを幻獣のもとに促すと、彼女はゆっくりと進んでいった。
 遠くでは、変わらず爆音が響き渡っているまま。

「本当に残念だ。君のような男が仲間に居てくれたらと思ったんだが」

「俺も、あなたのような上司だったらと何度も思いましたよ。いっそ帝国軍に就職しませんか?」

 何とか間をもたせようと会話を続けると、意外な返事が返ってきた。

「それもいいね」

 うっかり気が抜けるからやめてくれって。
 へらへらと笑う彼からは全く考えが読めない。

「今の皇帝とケフカには牢にでも入ってもらって、私が即位するんだ。民衆には平和な世を約束することで認めてもらって、君は私の部下になる。うん、いい考えだ」

 おお、確かにいい考えだ。

「ぜひとも、実現してみてください。俺は今まで通り帝国軍で雑用をしながら見守りますから」

 フィガロの国王がガストラ皇帝に取って代わり、レオ将軍やカイエンさんが率いる軍で平和に任務をこなす。
 素晴らしい話だって、マジで。
 ありえないはずの夢物語が、現実のように感じられる。
 そういえば、背中の痛みをだんだん感じなくなってきた。
 俺、かなりヤバイな。
 
 失いそうになる意識を必死に保ちながら、俺は後ろを振り返った。
 ティナが幻獣と反応し、妙な光に包まれている。
 今後のことがどうなるかは分からないが、どうやら俺のすべきことは終わったらしい。
 いつの間にか、爆音は止んでいる。
 ああ、セリス将軍、無事だったのか。
 お、レオ将軍とアイツも居るな。
 ケフカさんは、来ないみたいだ。

 とりあえず同期よ。俺、疲れきったぜ。
 後のフォローは、よろしく頼む。



 崩れ落ちる自分を認識しながらも、俺はもう立っていることはできなかった。
 さんざん俺を嫌い尽くしていた同期が、どこか心配そうな表情で走りよってくるのが見えた気もするが、それはとりあえずおいておこう。

 誰か。
 俺にエクスポーションを下さい。



















************
16話投稿です。

本当はここまで書いてあったけど、あえて途中で切ったんだ。
あんまり面白くなかったら申し訳ない。

前回はたくさんのコメント、ありがとうございました!
変更はしないけど、今回も異論は受け付けます。どんどんどうぞ。


それでは、次回も読んでみてください。



[10044] 【ネタ】FF6 上司の奇行に疲れました。17
Name: UZUKI◆4b052ae5 ID:dbb24b74
Date: 2009/10/26 01:51
 これは後から聞いた話なんだが、俺はあの後完全に気を失っていたらしい。
 出血による体力の消耗で戦闘不能、なんて、笑えない状況に陥っていたのを助け出してくれたのは、驚いたことにティナだったんだとか。

「あの時は驚いたぜ! こう、ぴかーっと光ってしゃーっと飛んで、ふわっと浮かんで、またがーっと……」

「お前馬鹿だろ」

 状況を知りたいとは思ったのだが、生憎と俺の同期はあまりの恐怖体験に頭が混乱したままらしく、詳しいことは分からないままだ。
 どうしても知らなければならないというわけでなし、深く追求することはしなかった。
 そんなことよりも、もっと重要なことがあるからなんだが。

「それで、ケフカさまとレオ将軍はどうなった?」

「レオ将軍は、元に、戻っちまった。最近の、あの、様子が、嘘の、ように」

 ああ。まあ。そうだろうな。
 お前のせいでな。
 情けない顔をしてうなだれる彼を励ましてやるほど広い心を持っては居ない。

「ってことは、一応命は無事なんだな?」

「以前に増して、お元気だ。まるで魚の尾びれのように、ケフカの背後を右へ左へ……」

 それでよくもまあ、命が続くもんだ。
 さすがはレオ将軍。俺の尊敬レベルはまた上がったぜ。

「よし、必要なことは分かった。助かったよ」

 それにしても、なんだってコイツはこんなに怯えた様子であたりを伺っているのか?

「お、お前は平気なのか!?」

 だから、何がだ?

「あの環だよ! ケフカの目の前で外しちまったのは俺たち2人だ。せ、制裁、とか……」

 ああ、なるほど。ケフカさんに怯えてたのか。
 安心しろって。怒りに触れたその場でならそれもあるかも知れねえが、これだけ日にちが経ってれば大丈夫だよ。
 だがこれだけは言っておく。

「アレを外したのはお前1人だからな」

 そこさえ誤解が無いならば、フォローくらいはしてやるよ。





「いい加減にあの男を何とかしろ!」

「いやー、ちょっと俺らみたいなヒラがどうこうできる方じゃないっスねー」

「そもそも! あの時のクズがだらだらと話なんかしてなければ、俺サマの計画は完璧だったのだ!!」

「本当にけしからんですね、どこの誰ですか、その無能は」

「……お前、似てない?」

「そんな滅相もないっス! 俺なんかがケフカさまの大事な任務を言い付かったはずないじゃないですかー」

 皆さんどうも。相変わらずケフカさんの部下なんてやってます、俺です。
 任務に失敗した事だってありますが、こうしてなんとなく平和に生きてます。
 どうせこの人、俺ら一般兵のことなんかそこらのジャガイモかカボチャ程にすら認識してねえし、まともに相手なんかする必要は全く無い。
 ケフカさんに慣れきった俺と、それ以外の連中の一番の差はこういうところだ。
 不必要にビビると却って危ないってことくらいは、みんな覚えたほうがいいぜ。

「で、次はティナと共同で魔導研究でしたっけ?」

「冗談にもならないことを言うんじゃない! アレは幻獣界の扉を開かせる」

 意味が分からん。

「えー、とりあえず、俺が知らなきゃならないことだけ教えてもらえます?」

 ケフカさんの説明によると、ガストラ皇帝からの指示であるティナとの魔導開発はケフカさん1人で行い、彼女には幻獣を呼び出す仕事を与えるらしい。

「それ、命令違反ですね。ヤバイですね。不味いですね」

「うるさーい! 逆らうならどうなるか分かってるだろうな!?」

 別に逆らう気はないが、ケフカさんの命令違反に付き合って俺まで反逆罪なんて冗談じゃねえとも思う。
 その場は適当に同意だけして乗り切った俺は、レオ将軍に事の次第を報告することにした。

「ということです」

「なんと! ケフカがそんなことを考えていたとは……」

「大変ですよね。どうしましょうね」

 レオ将軍は沈んだ表情で考え込んでいて、その様子からはケフカさんへの憤りや不快感というものは感じられない。

「それもこれも、おれがアイツに酷いことを言い続けたから……」

 いや、それ絶対関係ないっス。

「しかし! ただでさえ部下から引き離されて落ち込んでいたはずなのに」

「全然落ち込んで無かったです」

「自分1人でもドマを攻略しようと知恵を絞った作戦まで潰してしまった」

「あの毒は使わなくて正解です」

 こうなってしまったレオ将軍は誰にも止められない。
 ケフカさんでも止められない。
 結局、レオ将軍は力の限りケフカさんの命令違反をフォローすることに決めたらしい。
 俺の方は、せいぜいがケフカさんのゴキゲンを取るために、こっそり注文しておいた新しい人形を献上したくらいだ。
 当分はあの辛気臭い研究所で缶詰にされることだろうし、今のうちにしっかり酒を飲んでおくことは決めておいたが。





 3日後、ベクタは壊滅した。
 焼け落ちた城下は未だ、住む家を失った人々が溢れかえっている。
 レオ将軍は想定した以上の被害を憂い、城内への民衆の受け入れのため奔走しているらしい。
 不幸中の幸いと言うべきか、軍人以外の人的被害がほとんど無かったことだけは救いだった。
 レオ将軍が、俺の報告を聞いた直後に1人の男を雇っていたからだ。
 名前はシャドウ。ドマ近郊で俺が見つけたマスクの男だ。
 ケフカさんには内密に彼をティナの監視につけていたらしいのだが、封魔壁をティナが解放したときに現れたらしい多数の幻獣たちがベクタに向かっていることにいち早く気づいた彼が、レオ将軍に事態を伝えたことが理由だったのだとか。
 あの時ばかりはケフカさんも真面目だった。
 このままじゃ自分も危ないと言って、必死に対抗したのだ。
 途中で進路を変えた幻獣は取り逃がしてしまったが、ベクタへ一直線に飛んできた連中は全て、ケフカさんの力で魔石に変えられていった。
 俺はその様子をただただ見つめることしかできなくて、後になって考えると自分の無能さには頭を抱えるしかない。
 レオ将軍以下、ほとんどの兵が民衆の警護にあたり、その9割は幻獣によって命を落としたというのに。
 唯一残っていた同期の、あの男も。
 今や帝国は、世界を手中に収める強大な国家では無くなっていた。
 こんな事態に一番早く反応するのは、当然リターナーたちだ。
 何の意味も無いとは思うのだが、今まともに動ける兵は総動員して場を整え、リターナーとの会食に臨むのだという。人数ばかり集めるところは、誇りなのか見栄なのか。

「レオ将軍。お気持ちは十分に分かるつもりですが、あまり塞いでいると体にも障りますよ」

「ああ、君か。しかし、ケフカとティナを止めなかったことがこんな事態を引き起こすとは」

 レオ将軍はこの事態をとても悲しんでいる。
 当然だ。
 俺やレオ将軍は、ケフカさんの独断で封魔壁が開かれることを知っていたのだから。
 もちろん、俺もそのことに責任を感じていないはずが無い。
 レオ将軍と違って、自責の念よりも幻獣への怒りの方が大きいだけであって。
 それを伝えると、レオ将軍は諌めるように俺に言った。
 幻獣たちの怒りは、当然のことなのだと。

「どういうことですか?」

「セリスやケフカの持つ魔導の力。あれは、どうやって手に入れたのだと思う?」

 そういえば、あまりそれについて考えたことは無かった。
 どこかから魔導の力を手に入れたということなのだろうが。

「君も見たはずだ。ケフカが彼らを魔石に変えていく様を」

 まあ、あれは壮絶だったから忘れられるはずもないが、それがどうしたというのか。

「おれも、魔石がどうやって作られていたかまでは考えたことが無かったのだ。だが、あれを見てようやく分かった。幻獣たちの命こそが、我々の誇っていた魔導の力の源だったのだと」

 その言葉は、意外なほどあっさりと俺の心に落ちてきた。
 へえ、なるほど。
 と、その程度の認識だったと言ってもいい。
 だが、その軽さとは裏腹に、今までに感じたことが無いほどの衝撃があったことも事実だ。
 ついこの前まで、面倒だとしか思っていなかった上司の奇行の1つ1つを思い返して。
 かつてレオ将軍と並び称された優秀な研究者は、けして自己主張の激しい人物ではなかったと、仕官当時の先輩から聞かされたことがある。
 興味が無かったからあまり気に留めていなかったのだが、もしかしたら彼らやレオ将軍の言っていた通り、魔導実験の後から何かが狂っていったのかもしれない。
 
「レオ将軍」

 釣られて沈み込みそうになる気分を払拭するために、意識していつも通りの軽い口調で話しかけてみると、やっと将軍がこちらに視線を向けてくれた。
 俺のような一般兵のいる前では常に、将軍としての責任感からかとりわけ毅然とした態度を取り続けていたレオ将軍だったから、こんなに落ち込んだ様子を見るのは初めてだ。ケフカさんとケンカしたときを除けば。

「ここは軍人らしく考えましょう。こちらの被害は9割、その成果は魔石の多数確保です。今回のことでレオ将軍の評価は更に上がってますし、もしかしたらケフカさまの功績も好意的に評価されるかもしれません」

 なんと言っても、今回の襲撃を退けた立役者なわけだし。

「帝国の未来を担う少年達は救われました。これは、死んでいった兵達の功績ですね! さすがはレオ将軍の部下だけあって、自分の命をかけてまで救うべきものは分かっていたってことじゃないですかー」

 続けた言葉に、レオ将軍ははっとした表情を浮かべた。
 うん、いい感じだ。
 いい言葉だよなー。自分が死んだとき、こう言ってくれる人がいるのなら、帝国の為に命を捧げるのも悪くないって、そう思う。
 初めてこの言葉を聞いたとき、俺は感動して言葉も出なかった。

「まだ小国だったガストラ帝国の少年将軍が、昔俺に言ってくれた言葉なんです」

 だから、思ったんだ。
 俺は絶対、この人の役に立てるようになろうって。

「彼らもそうですが、俺も。レオ将軍と、レオ将軍の愛するガストラ帝国の為なら、どんな任務だって喜んでやりますから、安心してください」

 それこそ、ケフカさんのお守りだってやりきってみせる。
 言いながら微笑んでみると、ぎこちないながらもようやく笑みを浮かべてくれた将軍。俺はそれに安心して視線を逸らし、更に続けた。

「リターナーから使いがあったそうです。近々、彼らとの交渉の席が設けられます。ケフカさまとレオ将軍には、その場に臨席するようにとのことでした。ティナも召集されているようです」

 今や完全に逆転した戦力を背景に、事態はどんどん動き出す。

















************
17話投稿です。

展開を早くしてみた。早すぎだろ! と思ったら教えてください。
主人公がレオ将軍のシンパな理由を説明しておきたかった。
ついでに今回は捏造多数。異論、反論受付中。



前回もコメント、ありがとうございました!
色々お答えするべきものがあるとは思うんですが、一番重要なところだけ。
原作未プレイだという方からコメントを貰ったのは初めてだったので慌てました。

レオ将軍はこんな人じゃありません!
レオ将軍は断じて壊れた人じゃありません!

本物を知った後の批判は受け止めます。すみません。

それでは。また読んでみてください。



[10044] 【ネタ】FF6 上司の奇行に疲れました。18
Name: UZUKI◆4b052ae5 ID:240ee466
Date: 2009/10/26 23:41
 リターナーとの会食は、ベクタの城内で行われることになった。
 帝国側から出席するのは、皇帝の他、レオ将軍、ケフカさん、あとは皇帝の親衛隊と魔導研究所のシド博士、それにティナだ。
 俺たちは準備だけ整えた後は、詰め所で待機することになっている。

「せ、先輩! 自分たちにはケフカ様の説得は無理です!!」

「はっはっは。俺の苦労を思い知れ、新入りども」

 今回は俺が会食準備という重大任務を仰せつかっているため、ケフカさんを会食に出席させるための交渉は別のヤツに押し付けてやった。
 いや、普段なら仕方ないから俺がそれも引き受けてやるところだったんだが、新しくケフカ軍に配属になった連中が聞き捨てならねえことを言っていたのが聞こえちまったんだよ。
 いわく、ケフカさんのお守りほど兵として楽な任務は無く、それだけで俺のように戦火を逃れることができるのがわかっていれば、自分達もその任務についていた、と。
 もうふざけんなって感じだよなー。
 帝国軍人の誇りはどこへ捨ててきたんだって思ったよ。
 しかも、楽な任務って何だ、楽な任務って。
 俺がこうして一見平和に生きていられるのが、先人たちの尊い命を懸けた教えあってこそだって事が分かってねえ。
 まだ若い連中の言うことだし、普段だったらなんだかんだ言って許してやったんだが、今回ばかりは気持ちが治まらなかった。
 とまあこんなわけで、ケフカさんの怒りを買ったらしい新たな同僚たちをフォローしてやる気は全くないってことだ。

「ケフカさまのお付きが楽な任務だって自分で言ったんだぞー? 俺はこれから会食の準備に行かなきゃならねえから邪魔すんなー」

 既に、リターナーは城内に入っているし、そろそろ皇帝との謁見を終える頃だろう。
 でかい図体で半泣きになっている男などというむさ苦しいものに構ってやる暇などあるはずも無かった。





「何か、手伝うこと、ある?」

 けして狭くはない会食場で1人、黙々と準備を進めていた俺に声をかけてきたのは、直接話すのは久しぶりになるティナだった。

「ああ、ティナか。いいや、もうすぐ終わるから席で待ってろよ」

 できるだけ優しく聞こえるように答えを返すと、綻ぶような笑みを浮かべて頷く。
 なんつうか、かーいいな。
 幼い頃そのままの仕草は、かつて俺の親心というものを生んだ純粋な少女を彷彿とさせてくれたりする。
 それでも、誰かが守ってやらなければ、生きることさえままならなかったあの頃と違って見えるのは、長い旅の間に培った経験があるからだろうか。
 そういえば、ナルシェで俺を助けてくれた礼を、まだ言っていなかった。

「ナルシェでは、ティナが助けてくれたんだってな」

「う、うん。あの時は必死で、よく覚えてないんだけど」

「それでも、助かったよ。ありがとう」

 もう一度頷いたティナは、どこか誇らしげにも見える。
 礼を言われる、ということに慣れていないのかもしれない。
 これ以上はかえってティナが居心地を悪くしてしまうかもしれないし、他の話題にしておくか。

「そういえば、レオ将軍は一緒じゃなかったんだな?」

 てっきり2人で来るかと思っていたんだが。
 尋ねた俺に、ティナは不思議そうな顔をして聞き返す。

「レオさん? ケフカを誘ってくるって嬉しそうにしていたから、あの2人で来るんじゃないかしら?」

 なんだって?
 レオ将軍、先走りすぎだろ。

「ねえ、ケフカはまだ来ないの? 私、本当はまだリターナーのみんなとは会いたくなかったけど、ケフカと一緒にご飯が食べられるって言われたから来たの!」

 うきうきしてんね、ティナちゃん。
 そうだったよな。お前もケフカさん大好きだもんな。
 しかし、意外だ。ナルシェでの様子を見る限りイケメン国王やら青バンダナやらに可愛がられていたんだと思っていたが、やはり帝国へ飛んだという事実は気まずいのだろうか。

「旅の仲間に、会いたくはないのか? もしかして、苛められてたか?」

「ううん。みんないい人ばっかりだった。でも、あの人たちはケフカのことが嫌いだから、せっかくケフカといられるのに、楽しくないかもしれない」

 ああ、なるほど。そっちか。
 確かに、そうだろう。
 リターナーにとってケフカさんは帝国の非道を先導する悪の魔導士だ。
 むしろ、世界共通の認識として、あの人は悪の魔導士だ。
 おまけに、ほんの短い期間ではあるが、ティナたちにはセリス将軍が同行していた。
 言いたい放題言っただろう。間違いなく。
 もともと彼女はケフカさんをよく思っていなかったし、それを発散しようにも、隣には必ずレオ将軍がいた。
 セリス将軍がわざわざレオ将軍の後ろを追い掛け回していたわけだから、レオ将軍には罪はないものの、溜まった鬱憤を晴らすには最適の環境だっただろう。

「一緒に悪口言っておけば良かったのに」

「ケフカは何も悪くないわ!」

 失敗した。
 ちょっとした軽口のつもりだったが、ティナの機嫌を損ねてしまったらしい。
 親衛隊もそろそろ着席してくるはずだし、俺がいつまでもここにいるのもまずそうだ。

「ああ、悪かった。じゃあ、俺はそろそろレオ将軍を探しに行ってくるから、そのまましばらく待っていてくれ」

 女のヒステリーからは、逃げるに限る。




 裏から会食場を出てしばらくすると、あたりの空気がいつもと違うことに気づいた。
 みんなやけに深刻な表情をしているから、どうやら何かあったようだ。

「おい、どうした?」

 手近にいた男に事情を聞くと、どうやらリターナーたちは、会食の準備を待つ間に帝国兵を説得して回っているのだという。
 結果、ほとんどの兵がなんとなくリターナーに共感したり、なんとなくリターナーに同情したりしてしまい、よどんだ空気だけが残された、ということだ。

 まあ、そこまではいいだろう。
 別に俺に害があるわけでもないし、この程度の影響は上層部で予想しているだろうし。
 だが問題は。

「で、そのリターナーの面々はどっちに行ったって?」

「それが、いつの間にか2階へ上がっていったらしくて」

 そっちは将軍方の居室だ馬鹿ヤロー!!
 いかん。このままではいかん。
 今そっちではレオ将軍とケフカさんが対面中かも知れないんだ!
 俺は守らなくてはならない。
 帝国の誇りを。
 レオ将軍の威厳を!
 素のままのレオ将軍なんて、リターナーに見せられるもんか!!



「やあ、君も無事だったのか!」

「お、お久しぶり、です、国王、様。あ、セリス、将軍、も、お変わり、なく、なにより、でした」

 必死になって城を駆け抜け、真っ直ぐにケフカさんの執務室へ向かっていく途中、俺はリターナーたちに遭遇した。
 どういうわけか、俺と同じく、一直線にケフカさんの部屋へ進んでいたらしい。
 息が切れてなんとも情けないことになってしまったが、挨拶だけは欠かさなかった自分を褒めよう。
 頑張った、よくやった、俺。

「ちっ、どうした。会食の準備が整ったか?」

「ええ、ええ。後はケフカさまとレオ将軍が向かわれるのみですー! 皆様も、そろそろお戻り下さい!」

 舌打ちなんてしやがりました/。
 セリス将軍、美少女のイメージを壊すようなことはホントしないで。

「レオもケフカの部屋にいるのだろう? せっかくだから共に向かおうと思うのだが」

 何を考えているのかはさっぱり分からないが、どうやらセリス将軍はあのレオ将軍をリターナーに見せ付けておきたいらしい。
 もちろん、全力で阻止させていただくことにする。

「いえいえ、とんでもない! お客人に俺ら一般兵のする召集なんてさせたりしたら、今度こそ俺の首が飛びます! 許してください!」

 真剣な顔を作る必要なんて無い。
 真実、ありのままの俺の形相を見るだけで、彼らは十分に納得してくれた。
 渋々もと来た道を戻っていくセリス将軍の後ろを、筋肉男とイケメンが続く。立ち止まったのは、それまでしきりにあたりを伺っていたカイエンさんだった。

「貴殿がご無事で、拙者も安心したでござる」

「心配してくださったんですか、ありがとうございます」

 相変わらず渋い。
 だが、正真正銘敵であるはずの俺を心配してくれたというのは、なんとも嬉しい。最近の俺は報われないことばかりで、こんな些細なことで気分が浮上していたりする。

「次に会うときは、敵同士ではないと良いでござるな」

「ええ、そうですね」

 ひと時の邂逅は、少しだけ、俺の心を癒してくれた。




「で、お前らは一体何をしてやがった?」

「自分らには説得は無理だったんですって!」

「だからってわざわざレオ将軍を連れてくるとかありえないだろ! どうすんだよ、この事態!?」

 意を決してケフカさんの部屋へ足を踏み入れたとき、俺が見たのは壮絶なまでの追いかけっこだった。
 マジギレしているケフカさんを、至福の表情で追いかけるレオ将軍。
 どっちも本気で走っているから、調度品は既に壊されつくしている。

 あーあ。あれは昨日届いたばかりの洋服ダンスだ。
 確か、珍しくケフカさん自ら選んできたというお気に入りのはず。
 あ! 俺の献上した人形が!
 ちくしょう、まだケフカさんから代金の徴収をしていなかったのに。

「先輩! 自分が悪かったっス! 何とかしてください!!」

 もうお前はどうでもいいよ。
 とにかく、本気で急いでもらわないとこっちも色々困るわけだし。

「ケフカさまー! レオ将軍―! じきにリターナーとの会食が始まりますよー」

 ためしに声をかけてみる。

「この状況が分かってないのか!? 無能か!? 早くコイツを連れて行きなさい!!」

「あー。ケフカさまも来てください!」

 罵声はあえて無視。ここが重要だ。

「なんで俺サマがこんなヤツと食事をとらなくちゃいけないんだよ! 絶対に行かない!!」

 まあ、そう言うとは思った。
 しかたない。この状況を活用させていただくしかないだろう。

「そうですね、もしケフカさまが会食にだけ耐えてくださるなら、レオ将軍とティナにもお行儀よくしていただきましょうよ。終わったら好きなだけ部屋で人形と戯れてくださって結構なので」

 説得は俺がするからさ。

 途端、レオ将軍はこの世の終わりのような悲痛な表情を浮かべ、ケフカさんは戸惑ったような自信の無い顔に変わる。
 悩んでる、悩んでる。
 しかし、逡巡は一瞬のことだった。

「分かった! 私は先に行きます! いいですね? レオとティナはくれぐれも私に近づけさせないように!!」

「了解しましたー」

 任務完了。
 なんとか会食は無事に始まりそうだ。

 後ろを振り返ると、今までさんざん俺を馬鹿にしつくしてきた後輩が、キラキラと輝くような瞳で見つめてきていた。
 キモい。コワい。ムサい。こっち見んな!

「と、いうわけで。ご協力、お願いします」

「そうか……残念だ。久しぶりにケフカと語らう時間が持てるかと思ったのだが」

 いや、別にお食事会じゃないんだから、語らう時間は普通に無いと思うな。
 ケフカさんが絡むと途端にとんでもないことになるレオ将軍の思考回路は、さすがの俺にも理解不能だ。
 これさえ久しぶりのことだから、なんとなくホッとしてしまった部分もあったりするが。
 それにしても、どうしてケフカさんはレオ将軍から逃げ回るのだろう。
 ぶっちゃけた話、あの強大な魔導の力をそのままレオ将軍にぶつけたら、さすがの彼も無事では済まないだろうに。

「お前、その辺どう思う?」

「えっ!? たぶん、それどころじゃないくらい動揺してるんじゃないっすか? こう、とりあえず反射的に逃げてみてる、みたいな。先輩の方が詳しいでしょうけど」

「なるほど」

 研究の余地はありそうだが、まあ、どうでもいいか。
 疲れる任務もひと段落。これから上層部の方々は会食を始める予定だ。
 ヒラ兵士の俺としては、しばらく休暇がもらいたい。











************
18話投稿です。

初めのころのテンションに戻ろうとした。
ちょっとシリアス入りそうになったけど、基本は軽いノリで終わりへ向かいます。


前回もコメント、ありがとうございました!
とりあえず、主人公はケフカより年下で、レオ将軍より年上です。



それでは、次回も読んでくれると嬉しいです!



[10044] 【ネタ】FF6 上司の奇行に疲れました。19
Name: UZUKI◆4b052ae5 ID:6cb4b8e6
Date: 2009/10/29 08:04
「昨日はお疲れ様でした、ケフカさま。今日は俺の休暇届を受理してもらいに来たんですがー」

 リターナーとの会食から一夜が明け、城内は比較的落ち着いた様子になっている。
 ケフカさんのお供は新入りに押し付けたし、新たな任務の連絡も受けていない今がチャンスと、俺は上司の元へ休暇の申請に来ていた。
 いつも通りに扉を叩き、いつも通りに扉を開くと、いつもと違う光景が目に入るから不思議な気分だ。
 そこにいるのは、部屋の主であるケフカさんともう1人。

「よう、元気か新入り!」

「元気じゃないっス! 自分、もう兵士やっていく自信無くなってきました」

 今までなら俺か、その前はビッグスたちがいたその場所には、新入りが立ち尽くしている。
 こうして、新たな世代へ後を託していくというのはなんとも気分がいいものなのだということを知った。

「それで、申請は通りますかー?」

 取り立てて不機嫌そうでもないケフカさんに視線を向けたが、残念ながら全くの無反応。
 どうやら、聞こえなかったことにして無視するつもりのようだ。

「ってことは、また任務があるんですね」

「あ、はい! 先輩はリターナーの方々と面識がある様子だったんで、次の大三角島行きに同行することになってます!」

 彼が言うには、次の任務はリターナーと帝国との共同で行われるらしく、それにはレオ将軍やティナに加えて、リターナー側の人員としてセリス将軍が向かうことになっているという。

「あれ、ケフカさまは行かないんですか?」

 俺の素朴な疑問はこれまた無視。
 何だ? 妙に考え込んでいるというか、大人しすぎるというか。
 任務の内容を聞く限り、これもまた幻獣に関係することの様だし、普通に考えればティナだけではなくケフカさんも同行するのが当然だと思うんだが。
 そこまで考えて、そもそもレオ将軍とティナが両方とも関わっている遠征にケフカさんが関わるはずが無いことを思い出した。
 このところレオ将軍との共同任務が多すぎて忘れてしまいかけていたが、元々ケフカさんは道理を曲げてでもあの人との任務は避けていたんだった。
 
「でも、どうして俺が? ケフカさまの任務でないなら、俺に任務が回ってくる理由なんて無いよな?」

「えーと、何でもティナ様のたっての希望らしいっス。ケフカ様と先輩と、どちらもいなければ絶対に行かないって言い張ったそうですよ?」

 なぜそうなる。
 いやいや、ケフカさんにこだわるのは、まあ分かる。
 だが何故俺だし。
 確かにまだ幼い頃にはレオ将軍がお忙しいのもあって遊び相手になってやったことはある。友人といえば精々セリス将軍くらいだったため構ってくれる人もなく、寂しそうに袖を掴んで兵達の気を引こうとする姿に心打たれて。
 しかし何故俺だし。

「自分に聞かれても困ります! とにかく、伝えましたからね。出発は今日の夕方っス!」

 ああ、決定なのか。
 そろそろ俺、酷使され過ぎて倒れる気がしてきた。




 大三角島への道中は、けして和やかなものではなかった。
 レオ将軍の采配はさすがのもので、リターナーに対し比較的柔和な態度を示している兵達だけで編成された、ごく少数での遠征隊であったものの、つい数日前まで敵同士だった両者が進んで関わりを持つこともない。
 結果として目に見えた諍いは起きなかったが、終始緊張感が漂う旅だったとあっては感じる疲労もひとしおだ。
 更に言うなら、帝国軍から派遣された兵は俺を除いて全員がレオ将軍の部下達だったため、大変居心地が悪かったことも付け足しておこう。
 
「ティナさま、こんなところで何をしてるんです?」

「……あなたまでそんな呼び方をするの? 私は何も変わってないのに、周りの人たちはみんな変わってしまったのね」

 そんな気鬱を少しでも晴らそうと、1人甲板に佇んでいたティナに声をかけたのだが、彼女はかつて見たことがないほどの落ち込みようだった。

「そうは言っても、あなたは今回の功績で帝国魔導士としての地位を得たんですから、ここは耐えていただかないと」

 これはアルブルグで乗船する時に聞かされたことなのだが、リターナーとの会食ではティナの処遇に関しても議題になっていたらしい。
 彼女が帝国に報告書を送り続けていたことは頑なに隠し、帝国へ飛んだのは無意識下の行動だとごり押したそうなのだ。
 本音はどうだか知らないがリターナー側もそれを了解し、確固たる帝国での地位を与えることを条件にして身柄をベクタで引き取ることを承諾したのだという。
 その結果、帝国魔導士ティナさまが誕生したわけだ。
 ケフカさんと同列だってよ。
 かわいそうだと思う必要は無い。彼女は『ケフカとおそろいね!』と言って喜んでいたくらいだから。
 ただ、俺やその他の兵からの扱いが変わったことには大いに不満があると、声を大にして言っているのはいかがなものか。
 だが俺からは何も言わない。ヒラだから。
 誰かがそれを諌めるとすれば、それはきっと。

「ティナ」

 そう、レオ将軍だろうな。

「彼らは軍人で、お前は軍属についた。この旅が公式なものである以上、上下関係を明確にして接することは当然のことだ」

「だって、レオさんやセリスちゃんは上官だけど、私は違うわ。みんな私の部下ではないでしょう?」

「それでも、地位というのはそういうものだ。曖昧なままにしてしまっては、軍は成り立たなくなってしまう」

 何と言うかこう、上から押さえつけるようなセリフの割りに、押し付けがましく聞こえないのは何故だろう。
 気遣いがにじみ出る声音のためか、優しげなその表情のせいか。

「安心しろ。俺もそうだが、ケフカも、そこの彼も、私的な場では今まで通りに接するさ。そうだろう?」

 って、急に振られても困る。
 仕方ないから、とりあえず頷いて誤魔化しておこう。

「本当?」

 だからどうしてそんなうるうると見上げてくるんだよ。
 やめてくれよ。
 俺、あんまりケフカさんのシンパと仲良くしたくないんだよ。
 レオ将軍は別だが。
 しかしそんな心の声は、俺の口をついて出ることは無かった。
 結局、俺は子供には甘いみたいだ。

「そうですね、他に兵のいない場でなら」

 つい機嫌をとってしまったが、ティナがあんまり嬉しそうに笑っていたから、まあいいかと思ってしまった。
 俺も嫁さん貰ったら、こんな素直で可愛げのある娘が生まれるだろうか。
 ちょっといいかもしれない、なんて、夢を見すぎだな。

「よし。そろそろ到着だ、準備をしておけよ。……ところでセリス。もう少し離れてくれると歩きやすいのだが」

 あ、そこ触れちゃうんだ?

「そういえばセリスちゃん、さっきから一言も喋らないね?」

 そうだな。無言だよな。
 だからこそ怖い。
 あえて見えなかったことにしていたその光景が。

「セリスちゃんがそうやってレオさんの背中に張り付いてるのを見るのも久しぶりね。なんだか、やっと帰ってきたんだなー、って思うわ」

 あれ、これってまさか日常風景だったのか?
 俺はとうとうセリス将軍が乱心したのかと思ったぜ。
 レオ将軍の背後にぴたりと張り付き、頬やら体やらを摺り寄せたまま影のように付いて回るその様子は、常の無表情も加わって壮観だ。

「い、いつもこうなんですか?」

 思わず口に出した言葉に、真っ先に反応したのはセリス将軍だった。

「失敬な。いつもこうしていたのなら、知らぬ者がいるはずも無いだろう」

「そ、そうですよね」

「毎晩、レオの寝室でだけの習慣だ」

 いやいやいやいや。それはちょっと聞きたくなかった。聞きたくなかった!

「セリス! 誤解を生むような発言をするな!!」

 慌てたのはレオ将軍。
 そんなに必死になって否定したところで、今の今まで背中の美少女を気にも留めていなかったあたり、慣れを感じます。
 そうですか。寝室で。しかもティナが知っているということは、ティナもレオ将軍の寝室に。

「お、おい! 誤解だと言っている!!」

「いえ、そんな! いいんです。レオ将軍が美少女2人を毎晩寝室へ連れ帰っていたとしても、俺の尊敬するレオ将軍には変わりありませんから!」

「いやだから」

「ああ安心してください。別に言いふらしたりしませんし!」

「違うと言うのが分からないのか!!」

 せっかく気を遣ってフォローしたのに、何故か俺が叱責を受けた。
 理不尽だとは思うが、まあここはアレだ。
 仮にも年上の男として、耐えることに依存は無い。

「今は帝国の将軍としてではなく、リターナーの一員としてここにいるからな。ただの少女として振舞うのは罪ではあるまい?」

「それは構わんが……いいや、構う! 俺の部下に示しがつかん!」

 照れて真っ赤になっているレオ将軍なんて見るのは珍しいことだったから、つい声を出して笑ってしまった。
 不満げな顔をしているセリス将軍とレオ将軍を横目に、船はもう碇を下ろしている。
 幻獣たちは、この島のどこかにいるらしい。
























************
19話投稿です。

作者はセリスも大好きです。
そしてレオ将軍は別にロリコンではないので安心してください。

前回もコメント、ありがとうございました!

17話はやっぱり展開早すぎますか。もうちょっと何とかできるように、少し考えてみます。
ご指摘ありがとうございました。


それでは、次回も読んでいただけたら嬉しいです!



[10044] 【ネタ】FF6 上司の奇行に疲れました。20
Name: UZUKI◆4b052ae5 ID:6cb4b8e6
Date: 2009/11/01 17:54
 辿り着いたのは、サマサという小さな村だった。
 こんな辺境の村のわりに宿があるなど、余所者に寛容な雰囲気はあるのだが、どうにも村人が胡散臭い。
 何かを企んでいるというか、何かを隠しているというか。
 レオ将軍も俺と同じ不審を感じたのか、今日のところは宿に一泊して今後の予定を考え直すことにしたらしい。

「あ、じゃあ私はロックたちに会ってきてもいいかしら?」

 ティナは相変わらず帝国で新たに与えられた地位というものに慣れず、つい最近までの旅仲間のもとへ避難していく。
 レオ将軍の返事を待つことはしなかったあたり、許可が出ないことを予測しているのだろう。
 俺はといえば、早々に荷物を置いてアイテムの買出しだ。
 そろそろフェニックスの尾を補充しておきたいと思って。
 ここまでの道中、俺たちの手に負えないような強敵こそ将軍方が蹴散らしてくれたものの、やはり皆が皆全くの無傷というわけには行かなかった。
 おかげで帝国から支給された数少ないポーション類はほとんど底をつき、フェニックスの尾に至ってはストックがゼロの状態。
 こういうとき、消費アイテムの補充は原則的に自己負担しなければならない。俺たち帝国兵が与えられる給与はけして少なくは無いと思うが、それでもエーテルを3つも買えば1月分は一気にパアだ。
 だから今回、こうしてアイテムの補充をしなければならないのは、非常に懐に優しくない事態だということになる。
 普段ならば俺だって、当然無理に補充をしたりはしないのだが、どうも嫌な予感がするんだよな。
 結局、俺はフェニックスの尾とハイポーションをいくつか購入し、宿に戻ることにした。
 お、子供が。
 って火遊びかよ。
 火事にならなきゃいいんだが。




 その晩、サマサの村では1つの事件が起きた。
 どういうわけだか民家の一つが発火し、中に子供が取り残されているというのだ。

「レオ将軍、どうします? 一応こうして消火作業にあたってはいますが、あまりに火が強すぎるんじゃ」

 帝国兵にとっても人事ではなかったし、俺たちは必死で水を運んではいるのだが、いかんせん火の勢いが強すぎて何の役にも立っていない。
 どうするべきか。
 住民を避難させるのが先決か?
 いつに無く、考え込むばかりで指示を出してくれないレオ将軍に戸惑いながらも、俺は住民達に避難を促すことにする。

「はいはーい。子供はきっと助けますから心配しないで。はーい、もっと下がってー」

「おい! もっと緊張感を持てねえのかよ! だからケフカの部下は」

「でも俺らまで動揺してたら不安を煽るだけだろー? だーいじょうぶ、ここにはレオ将軍もいらっしゃるんだからどうにかなるさ」

 他力本願と言うなかれ。
 なかなかどうして、これくらいの気構えでいたほうが上手くいくことは多いもんだ。
第一、 俺の喋り方や考え方は別にケフカさんの影響では無いはず。
 何もかもケフカさんのせいにするというこの風潮に否やは無いけれど、さすがにここまで全面的に俺の人間性を否定されると実は辛い。

「それにほら、アレだ。ここにケフカさまがいたらそれこそ大惨事だぞ? あの人は炎やら雷やらの熱くて危ないモノを見ると途端にテンションが上がっ……」

「それはどうでもいいんだよ! いいから働け!」

 住民の安全確保に奔走していた俺を呼び止めたはずのその兵士は、まるで俺をそもそもの元凶であるかのごとく罵倒して走り去った。
 色々と思うところはある。
 あるが、今更軍内での扱いを憂えたところで何も変わりはしない。
 ただちょっと。そう、ただちょっとだけ、あまりの報われなさに頭を抱えたくなるだけで。
 その後の俺は火事の混乱を収めるために走り回っていたから、その時どんな会話がなされていたのかは知らない。 
 ただ分かったことは、何かの事情でリターナーが幻獣の居場所を突き止めたということ。
 青バンダナとセリス将軍が山中で発見したらしい彼らは、今回の帝都襲撃を謝罪したいとサマサの村まで足を運んできた。
 事件が起こったのは、その時だ。

「ぼくちんの魔導アーマー隊の力を見せてやるぞ!!」

 ケフカさん、登場。





「ケフカ! ケフカじゃないか! どうしたんだ?」

「お黙んなさい! お前達、やっちゃいなさいよ!」

 喜び勇んで走り寄ろうとしたレオ将軍に怯むことすらなく、ケフカさんは部下に命令する。
 魔導アーマーに乗っている兵は残念ながら見覚えが無い。
 彼らはこともあろうかレオ将軍に向けて魔導ミサイルを発射した。
 
「ケフカさまー!? 何やってんですか、アンタ!」

 思わず叫んだ俺に、ケフカさんは面倒くさそうな視線を向けてくる。
 一瞬不思議そうな表情に変わり小首を傾げる仕草をしたものの、しかし彼は俺を無視することに決めたようでそれ以上の反応を返されることは無かった。
 続けて言葉を発したのはティナだ。

「ケフカ、どうしたの? ここへは来ないって言っていたのに、予定が変わって私に会いに来てくれたの?」

「ティナ、それは違う! ケフカはおれに会いに来たんだ!」

 目を輝かせるティナとレオ将軍には悪いが、絶対どちらも違うと思う。
 というか、魔導ミサイルをモロに食らってびくともしていないレオ将軍が怖い。

「馬鹿なことを言うんじゃありません! 私は皇帝の命令で魔石を確保しに来たんですよ!」

 言うが早いか、ケフカさんは無造作に腕を振り上げた。
 呪文を唱えている様子は無いのに、その腕からは何かの力を発しているような気がする。
 状況が分からずに傍観していた俺だったが、その力はやってきたばかりの幻獣たちに向けられていたらしく、彼らは悲鳴を上げることすらなく魔石に変えられてケフカさんの手元へ吸い込まれるように移動していく。

「ケフカ、これは……!」

 さすがに慌てて走り寄ろうとしたレオ将軍だったが、それを妨害したのは魔導アーマーの兵たちだった。
 やっぱりおかしい。アレ、本当に帝国の兵だろうか。
 まさかケフカさんに味方してレオ将軍を邪魔するような人間がいるとは思えないんだが。

「うーん、つまらん! 簡単すぎて面白くない! ちょっとお前たち、こんなチンケな村なんて焼き払っちゃいな!」

 いや、意味わからねえし。
 どうしてそこで焼き討ちですか。

「てめえ、冗談じゃねえぞ!」

 それに怒りを顕わにしたのは青バンダナだ。
 さすがコソ泥だけあって身の軽さはピカイチで、小回りの利かない魔導アーマーの間をすり抜けてケフカさんのもとへ走る。
 が、あれは無謀だ。
 思ったとおり、彼はケフカさんのモーニングスターの餌食になり、地に伏せてしまった。
 あの人、どういうわけか実は力持ちだったりする。
 あんな重たい武器、俺は到底マトモには扱えないが、彼はその見た目に反してモーニングスターの扱いだけはそこらの兵とは比べ物にならないほど上手い。
 見事なまでに敵を撃退したケフカさんはゴキゲンに高笑いを上げている。

「ど、どうしましょうね、レオ将軍」

「うむ。おそらく自分ひとりだけ帝都に残されて寂しかったのだろうが、さすがにこれは良くないな」

 遠く離れたレオ将軍に叫んでみたものの、彼は嬉しそうな表情を崩さないままにそう答えた。
 いつものことだから、俺はあえて何も否定はしない。
 ただ、彼はどうやらアテにならないようだし、他の人に助けを求めよう。

「セリス将軍、何とかなりますか?」

「ああ、まずはティナ」

 きっぱりすっぱりレオ将軍は諦めてセリス将軍の様子を伺うと、彼女はティナを促した。
 ティナは心得たとばかりに頷くと、何かの呪文を唱え始める。
 その直後。
 魔導アーマーごと、2人の兵士は氷漬けになって動きを止めた。

「ぼくちんの邪魔をするのか? ティナ、邪魔をするんだな?」

 怒り狂うかと思ったケフカさんだったが、予想とは逆に彼は薄い笑みを浮かべている。

「ならば殺してあげましょう。皇帝にはお前が裏切ったと報告しておきます」

 久しぶりに聞いたな、ケフカさんの鬼畜発言。
 酷いよな。ティナは今のところ大して悪いことはしてないような。
 って、してるか。
 一応帝国の鎧を来た兵士に攻撃した。
 この事実は確かに、裏切りと呼べなくもない。
 しかし、セリス将軍は動揺しなかった。

「いや、それは無理だ」

 何でだ?

「セリス、何故です」

「私がもみ消す」

 へえ。
 そうか。
 セリス将軍、俺サマ気質だったのか。

「フォッフォッフォ! お前は今リターナー側の人間です! 皇帝が信じるはず無いだろう!」

「なら、レオがもみ消す」

 いやいやいや。
 もみ消し前提ですか。そうですか。

「そうですか。では、ここでレオにも死んでもらいましょう。もともと邪魔だったんだ。いい機会になった」

 って、これやばいんじゃ。

「セリス将軍! 不味いっス! ケフカさん本気ですよ!?」

 いくらレオ将軍が強いと言っても、ケフカさんの魔導の標的にされたらひとたまりも無いはず。
 これはどう考えても命の危機だって!
 ほら見ろ! あの人何か呪文唱えてるじゃねえか!!

「死ね!」

 もう、ダメだ。
 これで帝国の希望はついえるのだと確信してしまった。
 絶望しかないってヤツだな。

「安心しろ、レオは死なん」

 安心できません、セリス将軍。
 後は瞳を固く閉じ、その後に鳴り響くはずの爆音を待つしかない。

 セリス将軍がレオ将軍に駆け寄っていくのを感じながら、俺はただひたすら立ち尽くすだけだった。






















************
20話投稿です。


前回はたくさんのコメントありがとうございました!

また次回も読んでもらえたら嬉しいです!

それでは。



[10044] 【ネタ】FF6 上司の奇行に疲れました。21
Name: UZUKI◆4b052ae5 ID:6cb4b8e6
Date: 2009/11/02 22:45
 立ち尽くしていた俺とは裏腹に、レオ将軍の部下達は優秀だった。
 何人もの男達が俺を押しのけていくのを感じて目を開くと、そこにはレオ将軍やセリス将軍を庇うように覆いかぶさる彼らの姿がある。
 そんな中、押し倒されて倒れこんだセリス将軍は手に持った剣を手放すことは無かった。
 しかし、そんな有様を目にしても俺の恐怖が晴れることはない。

 仕方ないじゃないか。
 今までここにいる誰よりも戦場でのケフカさんを見てきたのはこの俺だ。
 敵に向けられる力だったからこそああまで慣れることができたものの、その力が自分たちに向けられているとなれば話は違う。
 普通の人間が太刀打ちできる相手じゃないんだ。色んな意味で。
 たとえばそれは常人離れした思考や口調かもしれないし、見事なまでの戦闘力かもしれない。
 どちらかというとその人間性に苦労をしてきた俺ではあるが、ケフカさんの強さが身に沁みていることも確かなのだ。

「駄目だ、行くんじゃねえよ!!」

 俺が叫んだのと、辺りを爆風が包み込んだのはほぼ同時だった。




「フォッフォッフォ! 愚かですねー。お馬鹿さんですねー。人壁の10や20でこの私の魔導が止められると思っていたんですか?」

 眼前に横たわるいくつもの塊。
 それは確かに、一瞬前まで生きて動いていた同胞たちだったはずなのに。
 
「きゃー。地獄絵図再びー」

 うっかり間の抜けた感想を漏らしてしまったことに意味はない。
 他に言えることなんて無いし、かと言って黙ってじっと見つめるには衝撃が強すぎただけのこと。

「レオ将軍? ティナ。セリス将軍」

 声をかけてみたものの、彼らからの応えは無い。
 積み重なった兵たちを下から押しのける何かも、無い。
 とにかく、助けないと。
 大丈夫だ。俺はフェニックスの尾を買い込んだばかりだし。
 やっと動き出した足を引きずるようにして彼らに駆け寄った俺に、ケフカさんが興味を持つことは無かった。
 上から兵たちを一人ひとり覗き込み、息のあるヤツを探していく。

「全く、呆気なくてツマンナーイ!」

 コイツも駄目か。
 次。

「せーっかく最大級の炎をぶつけてあげたのに、反抗もしないなんて!」

 息の無い兵は放り投げるようにしてどかしながら、下へ下へと様子を探る。
 見たところ、下へいけばいくほど炎による体の損傷は少ないようだ。

「さあお前たち! 今度こそ村を燃やしちゃいな!!」

 これならもしかしたら、一番下に庇われている将軍たちなら息があるかもしれない!

「ここの次はベクタだからな! 城ごとあの役に立たない皇帝も燃やしてやるんだ!」

 それまでずっと聞き流していたケフカさんのタワゴトだったが、最後ばかりは聞き捨てならなかった。
 ベクタだって?
 城ごと燃やすって?

「ちょっと何言っちゃってんですか!? そんなことしたら反逆罪ですよ!」

 手に持っていたフェニックスの尾は、いつの間にか無くなっていた。
 気づかないうちに落としてしまっていたようだが、それどころじゃない。

「やめときましょうよー! ケフカさまの大事な大事なオニンギョウさんたちも一緒に燃えちゃいますよー!!」

 我ながら間の抜けた説得だとは思うが、これが俺の精一杯だ。
 必死の思いでそれだけ言うと、立ち上がってケフカさんに向き直る。
 あまりのことに恐怖なんて消え去ってしまっていたから、正面からケフカさんの目を見据えることができた。

「お人形?」

 何のことかと言わんばかりに、また小首を傾げるケフカさん。
 やっぱりどこかおかしい。
 いくらなんでも、あれー? なんて言いながら首を傾げるなどという気色の悪い仕草をしたことは無かったのに。
 これは、断言できる。
 華奢だし、年齢不詳に見えるまでの奇天烈メイクをしているけれど、これでもれっきとした30代男性なのだ。
 その事実を知っている俺が彼のこんな仕草を今までに目にしていたならば、覚えていないはずが無いんだって。
 体中を戦慄が走る。
 キモッ!

「え、ケフカってお人形が好きだったの?」

 緊迫した空気に割り込んできたのは、場違いなまでにのんびりとした少女の声だった。

「……ティナ?」

「うん。フェニックスの尾、ありがとう。さすがにセリスちゃんのまふうけんも間に合わなかったみたいで」

 言われてやっと足元に目を向けると、セリス将軍も何とか命が助かったらしく、辛そうながらも体を起こそうとしている。

「よく、生きて」

「さすがに危なかったわ。セリスちゃん、大丈夫?」

「ああ、なんとかな。レオはどうだ?」

 そうだ、レオ将軍!
 慌てて辺りを見回してみると、倒れこんだままのレオ将軍の姿が目に入った。

「将軍? レオ将軍!?」

「安心しろ。私が無事だったのだ、レオも心配いらない」

 動揺するばかりの俺を横目に、セリス将軍はティナを促しただけでケフカさんに向き直る。

「しかしケフカ。どうやら穏やかではない事態にしたいようだな?」

「ああもう! なんなんだよお前ら! ちょっとしぶとすぎるでしょう!?」

 セリス将軍とケフカさんの会話に紛れて、ティナが何かの呪文を呟いている。
 俺はどうせ何も出来ないから、せめてハイポーションを準備して待つことに。

「それより、何故レオに何も言わずにこんなことを始めたんだ」

「……言ったところで何になります?」

 ティナの詠唱が終わった。

「レオなら迷わず、帝国よりもお前を取るだろうな」

「その通りだ!!」

 ですよねー。





「どうして相談してくれなかったんだ!? 悩んでいたんだろう? かわいそうに、おれにまで攻撃するほどに思いつめていたとは!!」

 戦線復帰の第一声がこれとは、なんともレオ将軍らしい。
 彼にはもう、3人を助けるために犠牲になった兵たちの姿など見えてもいないのだろう。

「なあ、ティナ。今のも魔導だろう、どういうものなんだ?」

「あれはアレイズといって、戦闘不能から完全に回復するの」

 そうか。
 絶好調なんだな。
 少しでも痛みが残っていれば、いつものレオ将軍らしく部下たちを真っ先に思いやるくらいのことはしてくれただろうに。
 残念でならない。

「だからそこが嫌なんだよ! お前なんか消えちゃえ!!」

 またも詠唱を始めたケフカさん。 
 しかし、さすがに今回はセリス将軍がじっとしてはいなかった。
 短い呪文を唱えて、握ったままだった剣を天にかざす。
 放たれるはずだった魔導がそのまま剣に吸い込まれていくのが俺にも分かるあたり、彼女の力も相当のものなのが目に見えるな。

「くそっ!」

 次はモーニングスターを振りかぶるが、それはレオ将軍にやすやすと受け止められている。
 今まで、正直言って何故この2人が将軍という地位に就いているのか分からなかったのだが、今日のこれではっきりした。
 ケフカさんを止めるには、これぐらいの人たちじゃなきゃならないんだ。
 権力も地位も同等で、なおかつ戦闘面でもケフカさんを止められる人材でも囲ってなきゃ、今の帝国の繁栄はありえなかったということだろう。
 結局、ケフカさんがレオ将軍を倒すことはできなかった。
 疲れきって呼吸を荒げているケフカさんを、レオ将軍ががっちりとホールドすることで戦闘終了。
 残されたのは、遠巻きに俺たちを見つめる村人達と、初めに叩き落された青バンダナくらいのものか。
 帝国兵は、俺以外は全滅だな。

「ええい、離せ!!」

 暴れるケフカさんはいつも通り。
 長年、嫌々ながらも上司と仰いできた男だ。

「ねえケフカ。どうしてこんなことを?」

「お前に話す義務は無い! レオ、離しなさい!」

 叫びながら、彼は俺に視線を投げかけてくる。

「え、俺っスか?」

「お前! 確か俺サマの部下だったな? このヘンタイを何とかしろ!!」

「いや、ヘンタイってケフカさまのことじゃないんスか?」

 あ、いけね。
 あんまり普段どおりに戻ってるもんだからつい本音が。

「ちっっっっくしょー! どいつもこいつも俺を馬鹿にしやがって!」

 ああもうホントすみません。ゴメンナサイ。

「って、どうして手を離すんですかレオ将軍!?」

「ケフカが嫌がることはしないぞ、おれは」

 嘘つくなし。
 っつか逃げられてんじゃねえか。
 急いで追ってみたものの、結局俺は走って逃げ去るケフカさんに追いつくことはできなかった。
 すっげえ足速え。
 逃げつつ落としていたモーニングスターを拾っていったところもさすが。

「……逃げられちゃったね」

「ああ、逃げられた」

「ティナさまもセリス将軍も落ち着きすぎだと思います」

 呆然と見送ってしまった俺たちだったが、このまま即ベクタに帰還するのは難しいだろう。
 この地で命を落とした兵たちのこともあるし、どう考えても反逆の意思があるとは言え、帝国軍の所属であるケフカさんがリターナーのメンバーに危害を加えてしまったという事実もある。
 事後処理をするのは、誰になるんだろうか。


















************
21話投稿です。

展開はバレバレでしたね。
でもしょうがない。この場にセリスがいるのにまふうけんを使わない方が不自然だと思うんだ。


前回もコメントいただきまして、ありがとうございました!
また次回も読んでみてください。

それでは。



[10044] 【ネタ】FF6 上司の奇行に疲れました。22
Name: UZUKI◆4b052ae5 ID:6cb4b8e6
Date: 2009/11/09 10:53
 命を落とした兵たちの埋葬は、俺たちには許されなかった。
 サマサの村は混乱の極みに達し、一刻も早い出立を余儀なくされていたからだ。
 レオ将軍はせめて部下達の遺体を持ち帰りたいと説得していたのだが、彼らはそれを了承してはくれなかった。
 せめてもの救いは、村人達の手でサマサの地に埋葬することを約束してくれたことぐらいか。
 そういうわけで、俺たちは帝国へ帰還することになったのだが、生憎リターナーのバンダナ男が意識不明のままなのだ。

「どうしましょう、セリス将軍」

「……さすがにここへ放り出していくわけにも行くまい。幸いこの村で知人もできたことだ、世話になれるか頼んでみよう」

 いつの間に。

「火事の夜よ。巻き込まれていた女の子とそのおじいちゃんが、リターナーに協力してくれるらしいの」

「リターナーにですか?」

 帝国とリターナーに、じゃなく?
 それはこう、実は危険分子だったりしないのだろうか。

「それは私も気にしている。さすがに1人で残しておくことはできないから私は残るが、お前たちは別行動のほうが良いだろうな」

 さすがはセリス将軍。抜け目は無いな。
 レオ将軍も納得した様子で、このまま俺たち3人だけがベクタへ先行することになりそうだ。
 しかし、気まずい。
 だってそうだろ? たとえ独断での凶行だとしても、またまたケフカさんが倫理や常識に反する行動を取ったことには変わりない。
 そして、正式な辞令が出されていない以上、彼はあくまで帝国の軍属に就いているのだ。
 世の中の人々はどう思うか。それはけして想像に難くない。
 もう、嫌だ。俺、疲れたよ。
 誰かあの人の奇行を止めてください。
 あんなのの部下をやっている自分を消してしまいたくなるから。

「って、そういえば」

 そんなことを考えていた俺は、大変なことを思い出してしまった。

「ケフカさまが俺を見て自分の部下だって言ったの、覚えてます?」

「うん。部下なんだから命令を聞けって言ってたよね?」

「そうなんです。アレ、おかしいですよね」

 あの時は色々と一杯いっぱいだったからスルーしてしまっていたのだが、どう考えても奇妙だろう?
 何で俺の顔を見ただけで、自分の部下だって分かったんだ。

「え、分からないものなの? セリスちゃんはどう?」

「いくら帝国を離れていたとは言え、分からないはずが無いだろう」

 まあ、普通ならそうだろうな。
 特に俺なんか、当人の意思とは関わりなくも随分長いこと直属で部下をやっていたわけだし。
 ところがだ。

「相手はあのケフカさまですよ? つい最近まで俺を見たって、お前は誰だとしか言ってなかったのに」

 名前だとか仕官歴だとかを知らないのは当然のこととして、俺の顔にしたって世界が終わっても覚えることは無いと思っていたというのに、これは一体どういうことか。

「でも確かに、ヘンだったよね」

「ああ、レオだけでなくガストラ皇帝にまで害意があるかのような口ぶりだった」

 そうだよな。
 もう世界征服とか企んでそうだよな。
 めんどくせえ人だな、本当に。

「とにかく、おれたちがここで話し合ったところで何も分からん。まずはベクタに帰って状況を把握せねば」

 レオ将軍の鶴の一声で、その場はお開きになった。
 ということは、俺の任務はこれで終わりか。
 真実がどうであれ、後のことは偉い方々がなんとかしてくださることだろう。
 帰還が楽しみだぜ。





 帰りの道中はあまり会話も無く、至って平穏な道行きだった。
 押し寄せる魔物たちはティナやレオ将軍が蹴散らしてくれたおかげで、俺の出番は一度もなかったし。
 本当のことを言えば、ベクタが出発時以上に荒らされてはいないかと少し心配すらしていたのだが、幸いにもケフカさんはベクタで暴れだしたりはしなかったらしい。
 それどころか、サマサから逃げ出した後の消息が分からなくなっているという。

「おい、そりゃまたどういうことだ?」

「それが俺たちにもよく分からないんですよ。いきなり長期休暇を取るって言い出したと思ったら、数時間後には姿が見えなくなってたんです」

 休暇。
 これもまた珍しい。
 もともと軍規なんて無視しまくっているケフカさんだから、実のところ休暇なんて取らなくても十分にやりたい放題のはず。
 休暇を取ることで利点があるとすれば、完全な単独行動を取っても誰にも監視されないで済むことくらいだ。

「で、上司のいない間にみんなで集まって、何を話し込んでたんだ?」

「ちょっと気になることを言われたんで、みんなの意見を参考にしようかと思ってたんです。そうだ、先輩も考えてくれます?」

「何だ、どうした?」

「ガストラの行き着く先って何なんでしょうね?」

 なんてこったい、いつの間にここは哲学者の集団になっていたんだ。
 自慢じゃないが、俺はそういう小難しい話題は大嫌いだぜ、こんちくしょう。

「そうですよね。俺も正直言って、こういうテツガク的な話題は苦手なんですが、どうせ暇だし考えてみようかと」

 なるほど。
 良い心がけだ。帝国軍人として、帝国の行く末を案じることは決して悪いことではないからな。

「でも、あれだな。そういう話題ってのは10年以上経った頃にぶり返すモンなのか」

「ぶり返すって、もしかして昔にもこんな話題があったんですか?」

「おうよ。忘れもしない、俺が勤務中に初めてムダ話として振られたのがその話題だったぜ。懐かしいな、もしかして退役軍人にでも会う機会があったのか?」

 今のこの状況だ。軍から離れて平穏な日々を送っていたかつての兵たちが、今の世代を心配して駆けつけてくることもあるだろう。
 誰だろうな。
 こんな話をするくらいだから、ケフカさんの部下だった人なんだろうな。

「期待を裏切るようで申し訳ないんですが、退役軍人じゃありません」

「って違うのかよ! マジがっかりだよ!! ……で、じゃあ誰がそんな話を始めたんだ?」

「それが、あのケフカの野郎なんですよ」

 俺は自分の耳を疑った。
 ケフカって、あのケフカさん?
 もしかして最近同じ名前のヤツが仕官してきてたりしない?
 そうか、いないか。
 ということは。

「俺たちの上司の、あのケフカさんか?」

「はい。人形と夜な夜な語り合っていると専らの噂の、あのケフカです」

 ますますおかしいじゃねえか!
 どうしたっていうんだ、あの人は。
 サマサの時といい、その直前であろうこの話題といい。

「なんか、あれだな。もしかして昔を思い出すような出来事が何かあったんかな?」
 
 よくよく思い返してみれば、当時この話題を会うもの全てに投げかけてちょっとした波紋を呼び起こしていたのもケフカさんだった気がしてきた。
 ああそうだ。そういえばあの頃はまだ今よりもずっと普通の言動をしていたんだった。

「で、その当時は結局これに結論は出てたんですか?」

「ああ。出てたみたいだな。というか、今やっと思い出した感じだけど」

 そうだ。とても重要なことを思い出した。

「ちょっと悪い。すぐにレオ将軍に報告しなきゃいけねえ事ができた」

 急がなければいけないかもしれない、大変なことなんだ。




「ケフカがそんなことを?」

「はい。確かレオ将軍ともそんな話をしてたはずだと思いまして。正直なところ、当時はあまり興味の無い話題だったので、ケフカさんがもう結論が出たって言い出した後はすっぱり忘れ去っていたんですが」

 もう昔のことになってしまったものの、記念すべき雑談第一号は不思議と俺の心に留まっていた。
 それは例えば、声をかけてくれたその人が、憧れのレオ将軍を一から育てた優秀な人だったからかも知れないし、俺の心の根深いところに何かを植えつけていたからかも知れない。
 理由はどうあれ、今この場で思い出すことができたのは良いことだった。

「おれも覚えているぞ。何と言っても、ケフカからおれに話しかけてきてくれたのはあれが最後だったからな」

 そうなんですか。良かったですね。でもその事実は別にどうでもいいです。

「色々と話は膨らんだが、結論といったら……そうだな。なあ、ガストラ帝国は皇帝の独裁国家だ。そうだろう?」

 もちろん、その通りだ。何を今更。

「ケフカが言うにはな、独裁国家というものは必ず滅びるから、世界に必要なのは独裁者なんだそうだ」

「それはまた、極論ですね」

 独裁者といっても、人間1人の力なんてたかがしれているだろうに。
 たった1人で世界を支配できるのなんか、それこそ神しかありえないと思うんだが。

「神、か。ケフカが幻獣や神の力にあれほどの関心を見せ始めたのも、今思うとあの頃からだったな」

 しみじみと呟くようにしていたレオ将軍が、はっとした表情で顔を上げる。

「そうか、幻獣だ! ずっとケフカの行方を探っていたのになかなか掴めなくて困っていたが、君のおかげで分かったぞ!」

「どういうことですか? 一体どこに」

「封魔壁の向こう側に。あそこには世界の秩序を作り上げている神々がいる」

 レオ将軍はそれだけ言うと、身支度もそこそこに部屋を飛び出そうとした。
 その表情には必死さはあるものの、鬼気迫った様子ではない。
 大方、ちょっと迷子になった子供を迎えにいくくらいの気持ちでしかないのだろう。

「待ってください! どう考えても、このところケフカさまは妙です。しかも封魔壁の向こう側って幻獣の世界なんですよね? おおごとになるかも……」

「たとえ世界が滅びたとしても、おれの居場所はケフカの隣だ。こればかりは誰が何と言おうと止められん」

 きっぱりとしたこの口調には、言葉と同じく迷いなどひとかけらも無かった。
 ダメだな。これじゃどうやってもケフカさんのところへ行くんだろう。
 
 そして、二度と戻ってこないかもしれない。

「あーもう! 嫌な予感しまくりですよ! 言っておきますけど、俺はレオ将軍の部下になる為の手段として軍人になったんです! アンタがいなくなっちゃったら今までケフカさんを我慢し続けてきた意味がなくなっちゃうじゃないですか!!」

 だから、俺も決めた。
 誰に何と言われようとも、絶対にレオ将軍に付いて行ってやる。
 昔に抱いた、俺の夢。
 レオ将軍の目の前で戦い、敗れて死んで。立派な男だったって、そう言ってもらう夢。
 何があっても押し通す!

「俺も行きます。そこんとこヨロシク」

























************
22話投稿です。

どうやってリターナーより先にケフカと合流しようかめちゃくちゃ悩んだ。
結局こうなった。

批判、感想、どんどん寄せてやってください。待ってます。


前回もコメントありがとうございました!

ティナとセリスはレベル60くらいのイメージで書いてます。
毎日のスパイ活動は大変な経験値を残していきました。
とかどうだろう。


それでは。



[10044] 【ネタ】FF6 上司の奇行に疲れました。23
Name: UZUKI◆4b052ae5 ID:6cb4b8e6
Date: 2009/11/12 10:56
「そういえば、君はおれよりも仕官したのは後だったな」

 レオ将軍がそう切り出したのは、ケフカさんを追って封魔壁の中へ足を踏み入れた直後のことだった。
 あたりにはのどかな風景が広がっているものの、どこか異質な空気を感じる。
 この奇妙な感覚に気圧されているのは、もしかしたら俺だけではないのかもしれない。

「はい。レオ将軍はもう将軍になっていて、ケフカさまはまだ魔導士になっていなかった頃です」

 当時のことはよく覚えている。
 まだ希望と期待に満ち溢れていた俺の、今思えば一番幸せだった頃のことだ。

「君はいつからおれのことを知っていたんだ?」

「レオ将軍は有名でしたから、将軍になったときはベクタもその噂で持ちきりでしたよ」

 何と言っても、帝国初の将軍の誕生だったのだから。
 当時のガストラ帝国はまだ小国で、軍系統も今ほど徹底してはいなかった。
 一応軍としての体裁は持っていたからある程度の階級分けはなされていたらしいのだが、今のレオ将軍やセリス将軍のように確固たる地位を確立しているのは皇帝ただ一人だったのだ。
 その分、レオ将軍には羨望と憧憬が集中した。

「本当のことを言うと、その時はそれほど興味があったわけでは無いんです。俺は軍人なんて大嫌いでしたから」

 そう言って笑って見せると、レオ将軍は驚いた様子でこちらを見つめてくる。
 そんなに意外だろうか。

「驚いたな。今の君を見る限りではそんな様子は全く感じないが」

「そりゃ、今は自分も軍人の端くれですし。それに、いい年した男がそんなこと言っていられる時代じゃないですよ」

 ただ、当時はまだ俺も子供だっただけのことで。

「何故、軍人が嫌いだったんだ?」

 レオ将軍が尋ねてくる。その間も歩みが止まることは無いが、興味は尽きないといった様子だ。

「そうですね。強いて言うなら、思春期特有の反発心と言うか何と言うか」

 要するに、偉い人が嫌いだという理不尽かつ明確な感情だ。
 街の片隅に座り込んで、ちょっとしたイタズラや大人への反抗を繰り返す、そんな子供だった頃が俺にもある。
 時にはイタズラが過ぎて、軍人から特別な指導を受けることもしばしばあったりしちゃったのだ。

「そんなことまで!? 余程のことが無ければ街でのいざこざに軍が介入することは無かったはずだが」

「それが、余程のことだったんですよ」

 当時はまだ治安がいいとはいえなかったベクタでは、強盗まがいのチンピラも少なくは無かった。そんな中で無駄に集団を作っていた俺たちは、住民にとってさぞ目障りな存在だったのだろう。

「単に親のいない子供が集まって仲良くなってただけなんですけどねー」

 しかしながら、勝ち戦が続いて豊かになりつつあった帝国にはそう言った子供を明らかに蔑視する風潮が高まり始めていたし、国がそういった連中を保護する方針は全く無かったから、俺たちはひたすら迫害され続けるしかなかったわけだ。

「だからまあ、助けてくれるどころか一緒になって苛めてくる軍人サマに、いい感情は無かったんですよ」

 集団のうちの数人が、やけを起こして街の外に飛び出していったのはその頃のことだ。
 今も昔も変わらずこの周辺にいる魔物は凶悪で、まともな戦闘訓練を積んでいない子供だけで飛び出したらどうなるのか、それは明白だった。
 俺も一応止めたのだが、結局彼らは街から出てしまって、そこで事件が起こったのだ。

「あの時か! 確か、軍の制止を振り切ってベクタから出ようとした集団がいたと」

「はい、その時です。ほとんどの軍人は見てみぬフリだったんですけど、1人だけ助けに向かってくれた人がいたんですよ」

 それがレオ将軍だ。
 部下を引き連れて俺の仲間を助けに来てくれた将軍は、何の含みもなくただひたすら彼らの心配をしてくれていた。

「君も、その中に?」

「そうなんです。必死で止めようとしたんですが、聞く耳を持ってくれなくて。仕方ないから一蓮托生とばかりに一緒にバカやってました」

 運悪く魔物に遭遇した俺たちは、もうダメだと腹を括りかけていた。
 それを、レオ将軍の部下達は文字通り命を懸けて救ってくれたのだ。
 目の前で死んでいくのはそれまで毛嫌いしていた軍人達で、俺たちは一人も欠けることなく、戦いの終わりを目にすることができた。
 さすがの俺たちも、事態の深刻さと理不尽さには気がついていたんだ。自分達の短慮が誰かの命を奪うことになったというその事実が、ただただ重く圧し掛かって。
 そんな時、レオ将軍は言ったんだ。

「俺たちみたいなバカなガキに向かって、街で評判のエリートがですよ? しかも見た目からして自分と同じ年頃の将軍が、未来を担う子どもたちを救えて良かったって、そう言ったんです」

 馬鹿にされたと憤慨するヤツもいた。綺麗事なんて聞きたくないと怒りに震えたヤツもいた。でも俺は。

「嬉しかったですよー。何の意味も無く生きて、何の意味も無く死んでいくと思ってた俺でも、何かの役に立てるかもしれないと思ったりして」

 仕官しようと心に誓ったのは、その瞬間だ。それがこうして本当に仕官して、しかもあのレオ将軍とこうして肩を並べて歩いていたりして。

「とりあえず、満足です」

「……そうか」

 話しているうちに、視界に人影が飛び込んできた。
 黄色いあの後ろ姿は、もう見慣れてしまったあの人に間違いない。

「レオ将軍、当たりです」

「ケフカ!」










 振り返ったケフカさんはどこかうつろな表情を浮かべている。
 こののどかな風景の中にあって、しかしその不気味さはいつも以上。

「レオか。何故ここに」

「お前を探しに来たんだ。ここで何を始めるつもりなんだ?」

 だが何よりも不思議なのは、ケフカさんがレオ将軍に会っても取り立てて大きな反応を示さないことだろう。
 本当にどうしちゃったって言うんだ。

「地上に裁きを下すんだ。生まれてくるもの全てに死を、生み出そうとするもの全てに滅びを。その為に、大地を浮上させる」

 なんですかその壮大な計画。意味不明なんですけど。

「俺が神! 世界の神! いいね、邪魔するなよ!!」

 うん、キてるな。カミサマごっことか痛々しいにも程があるよな。そのうちセリス将軍あたりに刺されるぜ、覚悟しろ。
 
 そんな俺の思いとは裏腹に、レオ将軍はなにやら納得したような顔をして頷いている。

「ケフカが言うなら、邪魔はせん」

 邪魔しないの!? って、当たり前か。レオ将軍だもんな。

「だが、手伝いはするぞ!」

 馬鹿言うな。

「ちょっと、レオ将軍? それじゃアレじゃないですか、世界的にみて悪役ですよ?」

 レオ将軍は正義の味方でいて欲しいって。マジで。

「仕方ないな。ケフカが悪の大魔導士で、俺は悪の将軍だ。うん、悪くない」

 自分の顔から血の気が引いていくのが分かる。
 ケフカさんとレオ将軍が組めば、本当に世界ぐらい滅ぶ気がする。
 そんな俺を見てどう思ったのか、またしても不思議そうな顔をしたのはケフカさん。

「何だ? レオ、何を連れてる?」

「彼はお前の一番の部下だ。きっと役に立ってくれる」

 違う。一番の部下チガウ。っつうかケフカさんのためについてきたんじゃねえし。
 何を言っちゃってんだこの人。

「ふーん」

 不審そうな表情のケフカさんは、明らかに俺の存在を歓迎してはいない。だがそれでいい。
 そうだよ。そもそもレオ将軍が何を言い出したところで、ケフカさんがそれを受け入れるはずがないじゃねえか。
 どうせ今回もアレだろ? ウザいから帰れとか言い出して、レオ将軍が食い下がって、あわやケンカかというところで俺が止める。そしてそのままベクタへ連れ帰る。
 うん、完璧だ。
 よーし、いつでもいいぞ。さあケフカさん、嫌がるんだ!

「いいでしょ。じゃあレオ、これから大陸を昇らせますよ。魔大陸の完成だ!!」

 なぜ受け入れるし。

「任せろ」

 任せねえよこの野郎が!

 世界の危機が、音を立てて迫ってくる。ケフカさんの破壊をレオ将軍が手助けし、そう遠くないうちに破滅が訪れるのだろう。

 ティナ! セリス将軍! 黙って置いてきて済みませんでした! 早く来てこの2人を止めてくれ!!




















************
23話投稿です。主人公の過去編と名づけてみる。

たまには自分の書く主人公の設定を公開しようと思ってみた。


前回もコメントありがとうございました!

みんなロックが好きすぎると思います。人気に嫉妬したくなってきました。

また気が向いたらコメントを残して言ってくれると嬉しいです。
それでは!



[10044] 【ネタ】FF6 上司の奇行に疲れました。24
Name: UZUKI◆4b052ae5 ID:6cb4b8e6
Date: 2009/11/13 00:52
 ああ、世界の形が変わっていく。
 本来ならば地上に在るはずのこの大陸が浮き上がってしまったことは、周辺の大地にも多大な影響を及ぼしていた。
 巻き込まれて死んだ人間は1人や2人ではないだろう。
 だがまあベクタは一応無事のようだし、俺としてはさほど不満でもなかったりするのだが。
 そうだろう? もともと普通にケフカさんが出陣なんてしたら、この天災だか人災だか分からない状況で人が死んだのよりずっと多くの命が散っていくのだから。
 それがレオ将軍なら死ぬのはお互いの兵だけかも知れないが、ケフカさんなら話は違う。

「ところでケフカさま。さっきから上空に飛空挺が見えてますけど大丈夫ですか?」

「あれか。大方リターナーの連中でしょう。好きにさせておけばいい」

 自信満々のケフカさんは言葉通り気にも留めていない様子。
 意識はひたすら、目前にある3つの石像に向けられている。

「その石像って何なんですかー?」

 怪しげなそれらは、これまた奇妙な光を発して向かい合っている。
 面倒くさそうにこちらを向いたケフカさんだったが、俺のその問いは完全に無視をすることに決めたらしくすぐに視線を逸らされてしまった。
 まあいいか知らなくても。
 さっきケフカさんが言ったとおり、あの飛空挺はリターナーが乗り込んでいるはずだ。この魔大陸へ上陸するつもりなのだとしたら、おそらく彼らの目的はケフカさん。
 全面抗争の始まりが近そうだ。









「こんなところにいたのね」

 真剣な面持ちで声を発したのはティナだった。
 どういう経緯でかは分からないが、リターナーと行動を共にしているらしい。
 その後ろにはセリス将軍もいる。
 ケフカさんはもう色々と仕方が無いとして、レオ将軍といい彼女達といい帝国の上層部の面々が揃いも揃って首都を放り出すとは何事か。
 やる気ねえならどっかで出世欲に満ち溢れてる連中に譲ってやって欲しいものだ。

「レオ、なぜお前がここにいるんだ」

「不思議なことを聞くな、セリス。俺がケフカと共にいるのは当たり前のことだろう」

 いつの間にかセリス将軍とレオ将軍がシリアスな空気を漂わせ始めている。
 ティナは初めにケフカさんに声をかけたきり返事待ちの状態で静止しているし。

「なんなんですかね、この状況?」

 手持ち無沙汰になった俺が思わず間の抜けた問いを投げかけてしまったのは仕方のないことではないだろうか。
 呆然と佇みたい誘惑を押しのけ、何とか苦笑に留めている俺の問いに答えてくれたのは、ティナたちと一緒にこの場へやってきたイケメン国王だった。

「なかなか因縁深い組み合わせのようだからね。それより、まさか君までこの場にいるとは思わなかったな」

 同じく苦笑で返してくるイケメンは、どうやらこの状況のまずさを根本的に理解していないらしい。
 ここはひとつ、確認をしておかなければ。

「あの、もしかしてこの4人でケフカさまに挑みに来たーとか、言っちゃいます?」

 イケメン国王とその後ろで一言も言葉を発しないまま立ち尽くしているカイエンさんを見つめつつそう問うと、2人は無言のままに頷く。
 そうか。そうなのか。
 セリス将軍を完全に信用しているのはよく分かった。
 ティナの戦闘力を確実にアテにしているのもよく分かる。
 だがよりによってこの状況で、しかもたった4人のメンバー内にあの2人を組み込んでくるなんて。

「悪いことは言いません。一度退却してメンバーを組みなおすか、緻密な作戦を練るとかして出直してきたほうがいいです」

 だってあの2人は……。

「そんな時間はなさそうだよ」

 君には悪いけどね、と笑うイケメン。
 促すように向けられた視線の先を追うと、不機嫌さすら感じない無表情のケフカさんがゆっくりと歩き始めていた。

「俺は世界の神になる。逆らうものは皆殺しだ」

 今までほとんど聴いたことの無いほどに落ち着いた声だった。
 視線はティナを通り越して後ろの2人やセリス将軍に向けられている。

「従うのなら、命は助けてやってもいい」

 どうする気だ、と静かに言ったその言葉は、明らかにティナやセリス将軍に対してのものだ。

「拙者は何があろうとお前にだけは従う気はないでござる!!」

「私もだな。ケフカ、お前に任せてしまっては世界の破滅しか見えない」

 予想通りといえばその通りの返答だった。彼らは言うなり武器を取って戦闘の構えを取っている。
 反して、ティナやセリス将軍はただ立ち尽くすだけで戦う様子も無く、かと言って残りの2人を止めようとする様子も見えない。
 傍観を決め込むつもりなのだろうか。
 ちょうどいいとばかりに俺もそのままボーっと見ていようと思っていたのは、残念ながらケフカさんによって阻まれてしまった。

「おい兵士!」

 どんな呼びかけだよ。

「あちらは戦うつもりのようですよ。ためしにやっつけてみなさい!」

「いや無理です!」

 マジ無茶言うなってヤツですケフカさん。
 俺がカイエンさんに敵うわけがないじゃねえか!

 慌てて助けを求めようとレオ将軍に向き直ってみたが、彼は神妙な顔をして頷いたかと思うと、

「行って来い」

 なんて言ってくれちゃった。
 レオ将軍にこう言われては、逆らうことなんてできるはずが無い。
 覚悟を決めて、俺は剣を抜き放つ。

「ってことらしいんで、ここはひとつお手柔らかにお願いしますねー」

 命を張るには些か緊張感が無さ過ぎる一言を皮切りに、リターナー対俺の戦いは幕を開けたのだ。








「君はどうしてケフカに従ったりしているんだ!?」

 俺の剣を軽々と受け流しながら、国王が叫ぶ。
 カイエンさんは何故か俺にカタナを向けることを躊躇っている様子で、攻撃してくる気配は無い。

「レオ将軍が言ったからですよー。まあ俺も一応兵士ですし、戦えって言われるのは当然かなと思うことにしました」

 それに答える余裕があるのは、偏に国王が手加減をしてくれているからだろう。
 さっきからこちらの攻撃をいなすばかりで攻撃をしてこようという意思が全く見えない。
 ナメられてんなとは思うが、これは好都合としか言いようがない。
 ガチったら負ける。確実に。

「私は君を買っていたんだ! 見込みのある男だと、そう思っていたのに!」

 なんとなくイライラし始めているのが伝わってくる。
 それでも、俺は攻撃の手を休めることは無い。

「それはありがたいですね。できればこのまま俺に負けてくれると助かるんですが」

 言ってはみたが、さすがにこれを聞き入れてくれることは無いだろう。
 俺の実力ではこうして正面から立ち向かったところでどうにかできるはずもなし、どうしたものかと一瞬意識が逸れたその瞬間、左肩にやけつくような痛みが奔る。
 はっとしてそちらを見やれば、カタナを構えたカイエンさんが実に痛々しい表情でこちらを見据えているのと目が合ってしまった。

「いつかのレオ殿のように、操られているのだと思いたかったでござる」

 言いながらまたもカタナを振りかぶるカイエンさん。
 俺はその斬撃を必死の思いで避けていく。
 すげえ俺、意外に避けてるじゃねえか。

「ドマで女子供が死なずに済んだのは貴殿のおかげでござる。その恩人にカタナを向けるのは不本意だが、戦士同士の戦いに迷いは禁物。全力でやらせていただく!」

 だが残念ながら、それもここまでのようだ。
 カイエンさんの言葉に触発されてしまったのか、国王も再び、いや、新しくきかいを構えて俺に鋭い視線を突きつけてきた。

 くっそ、だからなんなんだよそのかいてんのこぎりは! 人間に向けるもんじゃねえだろうが!

 俺の心の叫びは届かない。
 カタナを避けながら少しずつ距離をとっていた俺に向かって同時に迫ってくる2人を視認し、仕方がないから潔く覚悟を決めた。

「討ち死に、上等だ」

 耳の端に、ティナの呟く声が聞こえる気がする。呪文の詠唱だろうか。
 あのティナが、ケフカさんに対立すると言うのか?
 そんな珍しいモンが見られるなら、ちゃんと見てから死にたかったぜ。

 2人の間合いまで、あと1歩。
 制止の声は、どこからもかからない。






















************
24話投稿です。


前回もコメントありがとうございました!
楽しんでいただけているなら光栄です!
すごくやる気でます。

でも作者はドMなので、罵ってもらうのも好きです。

それでは。



[10044] 【ネタ】FF6 上司の奇行に疲れました。25
Name: UZUKI◆4b052ae5 ID:6cb4b8e6
Date: 2009/11/19 06:19
※途中に一箇所とても痛い描写が含まれます。想像力の豊かな方は注意してください。










 目を瞑って、来るべき衝撃に備える俺。
 間を空けずに訪れたのは、鋭い刃物で一閃される感覚だった。

 カタナが、先か。
 すげえな俺。一発でやられなかったぜ? 何でだ。

「御免!!」

 走り抜けていったカイエンさんの声は、俺の後ろから聞こえてきた。1つの足音が遠ざかり、次いでけたたましい音を上げるきかいの気配が近づいてくる。
 一応防御体勢は取るが、おそらく無駄になるだろう。
 その時、なにやら暖かい感覚と共に体中に力が湧き上がってくるのを感じた。
 一言で言うと、元気百倍! といったところだろうか?
 驚いたのは、俺だけではなかったらしい。
 思わず見開いてしまった視界の中に、愕然とした表情の国王が映る。
 それでもきかいを振りかぶるその動作に変わりはなく、一直線に降りてくるかいてんのこぎりは俺が防御の為に構えた剣をあっさりと折ってしまった。
 とっさに腕を構えなおして体を庇ったものの、国王は攻撃の手を止めない。

 腕。俺の腕が。ギリギリと! ぎりぎりと!!

 痛みに耐えかねて意識を手放してしまいそうになったその時、ようやく俺に救いの手が差し伸べられた。
 レオ将軍だ。
 すさまじい勢いで振り上げられたその剣は、国王本人ではなくその手に持ったきかいをこれまた勢いよく跳ね飛ばす。
 さすがの国王もこれには怯んだのか、すっと体を引いていった。

「た、助か、り、ました。ありがとう、ござい、ます」

「ああ、よくやってくれた。後はもう下がっていてくれ。――ティナ!」

 ティナを呼ぶその声は、どこか嬉しそうな弾んだ響きを帯びている。
 俺は痛みに耐えるので精一杯で、なかなか状況が掴めない。

「よく彼を救ってくれた。もう一度回復してやってくれ」

「うん!」

 どういうことだろうか。
 てっきりティナはケフカさんやレオ将軍を攻撃しようと呪文を唱えていたのだとばかり思っていたが。
 
「ティナ? 俺、は、助けられた、のか?」

「ごめんね。セリスちゃんと違って、私はケアルやケアルラでしか援護が出来なくて……痛いよね?」

 言うが早いか、ティナは再び何かの呪文を唱えると俺に向かって解き放つ。
 淡い光に包まれた体にまたも力が湧き上がり、感じていたはずの強烈な痛みが和らいだ。
 そういうことか。
 どうやら先ほどの暖かい感覚は、ティナが俺に何かの回復魔法をかけてくれたからだったらしい。
 あのタイミングでの援護が無ければ、俺は間違いなく今生きてはいないだろう。

「いや、助かったよ。ありがとう。だが……」

 ここにきてのその行動は、リターナーとの対立を明確化した。もっと他のタイミングで反目したほうが良かったはずなのに、足をひっぱってしまった事は申し訳ない。

「ごめんな」

「ううん、いいの。だってほら、ケフカも来たよ」

 言われて振り返ると、つまらなそうな顔でのっそりと歩み寄ってくるケフカさんの姿がある。
 今まで何してたんですかとか、だから俺じゃ無理って言ったじゃないかとか、そんな軽口が叩ける雰囲気ではなかった。
 視線はただ、セリス将軍に向けられている。
 レオ将軍は俺を助けてくれたのを皮切りに国王とカイエンさんを相手に戦闘に入っているが、俺と違って綱渡りのような危なげな様子は微塵も感じられなく、悠々と相手の攻撃を受け流し、時には避け、戦い続けていた。
 全く手ごたえが感じられない状況に焦れたのか、国王が声を上げてくる。

「ティナ、どういうことなんだ! まさか君は」

 一見すると戦いの最中に気を散らしているようにも見えるが、実際はそうでもないのだろう。視線はしっかりとレオ将軍に向けられているし、攻防の手は緩まないし。
 本当に器用だな、あの人。

「私はガストラ帝国の魔導士、ケフカの部下。知ってたでしょ?」

 そう、その通りだ。
 我らがガストラ帝国の誇る魔導の使い手。
 そしてケフカさんのシンパ2号、その名はティナ。

「たとえ帝国を裏切ることがあったとしても、ティナはケフカを裏切らない」

 言葉を受け継いだのは、まるで空気のように黙りこくっていたセリス将軍だった。
 ケフカさんの視線を一身に受けてなお、怯んだ様を見せないのはさすがといったところか。
 どうするつもりなのか分からないが、彼女はその手に剣を握り締めたままゆっくりと足を踏み出してくる。
 その瞳に、ケフカさんの姿を映しながら。

「それはレオも同じこと。そして私は、そのレオを裏切らない」

 一歩、一歩、確実に踏み出されるその歩みを止めるものは、誰もいない。
 そうしてついにケフカさんの正面にまでたどり着いたその瞬間、事件が起こった。

「だが、残念ながらケフカのことは大嫌いだ」

 言葉と共に、握った剣を真っ直ぐ突き出したセリス将軍。
 その切っ先は、吸い込まれるようにケフカさんの腹に突き刺さった。








「いっっっっっっっっっったーい!!!!!!」

 ははん、ざまーみろ。
 とうとう刺されやがった、ケフカさん。
 惜しむらくは、腹を突き破って背中から切っ先が飛び出すほどに深く刺されているにも関わらず、当の本人がピンピンしていることだろうか。
 いっそこのまま倒れこんじまった方が世のため人のためになると思う。間違いなく。
 この光景に驚いているのは、当然のことながら国王とカイエンさんだけだ。
 俺は常日頃からこんな光景を目にする日を待ちわびていた感があるし、ティナはおそらくセリス将軍のこの行動について何か聞かされていたのだろう。
 慌てず、騒がず、迅速にケフカさんの回復に当たっている。もう既に腹から剣は引き抜かれ、破れた服の隙間からのぞく傷口は完全に塞がっているようだ。
 レオ将軍は、まあ、アレだろ。
 ケフカさんがこの程度の怪我でどうにかなるような人じゃないことはよく分かっているのだと思う。
 表情一つ変えることなく、国王とカイエンさんの相手を引き受けているまま様子は変わらない。

「なんてことをするんだ、セリス!! この、この俺サマの美しい肌に傷が残ったらどうしてくれるんです!!」

「問題ない。いっそ腕の一つも飛ばしてやればよかったか」

 そこの兵のように、なんて言いながらこちらに視線を送ってくるセリス将軍。

「いや、まだ一応飛んでませんでしたから。ティナのおかげでちゃんと繋がってますから。縁起でもないこと言わないでくださいよー」

 軽く受け流してはみたものの、マジでその話題はカンベンして欲しい。
 思い出すだけで寒気がするんだよ。
 しかし、セリス将軍も単なる軽口の一つに過ぎないのか、それ以上話題を引き伸ばすこともせず、ケフカさんから引き抜いた剣をもう一度構えなおして、今度は国王やカイエンさんに向き直る。
 それに合わせて、ケフカさんの治療を終えたティナとケフカさん自身も鋭いまなざしに変わって彼らを見据えた。

「気が済んだんだな?」

「ああ、ひとまずはな。レオに剣を向けるような不届き者を成敗するのが先決だ」

「ケフカの悪口言う人なんて大嫌い」

 悪鬼のような形相のセリス将軍と、かつての仲間を睨み付けるティナ。
 2人にはなにやら共通する心理が働いているのか、ガッと手を握り締めあっている。
 そうか。セリス将軍のレオ将軍好きとティナのケフカさん好きは同じレベルだったのか。
 こりゃ大惨事だ。
俺としてはかなり好意的な感情を持っているだけにいたたまれないが、国王とカイエンさんの2人が明日の日の目を拝むことは無いだろう。

「邪魔なものは、さっさと消すぞ」

 そして、不気味なほどに無表情なケフカさんが静かなままに攻撃態勢に入った。
 後ろの様子に気づいたレオ将軍が、踵を返してケフカさんのもとに向かう。
 帝国屈指の戦闘力を持つ4人が、揃って一つの敵に立ち向かっているこの様子を目にすることができるのは、俺を含めてこの場にいる3人だけ。
 悪夢のような第二ラウンドが幕を開ける。
既に疲労困憊の彼ら2人を相手取って、この戦いが長引く要素はどこにもなかった。
俺ができたのは、その様子をあるがままに見つめ続けることだけだ。






「みなさまお疲れさまでしたー」

 あまりに一方的過ぎた戦いが終わり、ほとんど無傷の状態で石像のもとへ戻ってきた4人に声をかける。
 セリス将軍とケフカさんは無反応で、ティナとレオ将軍は満足気な表情でそれに応える。
 
「ところで、俺があの2人に立ち向かった意味って、全くありませんでしたよね?」

 これは純粋なる疑問というヤツだ。
 精々がちょっとばかり2人の体力を削ったくらいで、何の役にも立てなかったんだから当然だろう。

「何を言う。君は十分役に立ってくれた」

 尋ねた俺に、こっそりとそう言ったのはレオ将軍だった。
 人がよく、部下には優しい彼ではあるが、お世辞を言うことなどまず無い人のはずなのに。
 それほどまでに俺が哀れなんだろうか?

「あの、別に慰めが欲しいんじゃなくてですね……」

「馬鹿なことを言うんだな。おれが慰めや気休めで物を言うわけが無いだろう。真実だ」

「えー、それじゃ一体何の役に?」

 とてもじゃないが信じられない。
 追求するような心持ちでそう聞き返すと、レオ将軍は無言でセリス将軍に目をやった。
 
「すみません、セリス将軍がなにか?」

「彼女はおれに好意的ではあるが、決して盲目的に従うわけじゃない」

 それは知らなかった。てっきりケフカさんに対するレオ将軍くらいには献身的なのかと。

「特にケフカに関わりのあることではそうだ。むしろ、ケフカと共闘するくらいならおれと戦う方を選ぶのがセリスだな」

「そうなんですか!?」

 じゃあ何でまたよりによって今回は協力したんだ。
 なおも問い詰めた俺にレオ将軍が語って聞かせた内容はこうだ。

 セリス将軍は、実はリターナーにかなり絆されていたらしい。
 特に、今回この場に姿を見せていない青バンダナにはご執心で、ギリギリまでレオ将軍とバンダナ野郎のどちらにつこうか悩んでいたのだという。
 レオ将軍がそれをセリス将軍から聞かされたのは、ちょうど俺がケフカさんの奇行を後輩から聞かされていた頃で、その時にちょっとした問答があったんだとか。

「セリスはケフカを、奇行に走るしか脳の無い男だと思い込んでいた。おれとティナ以外でケフカの為に戦おうという人間を見たことが無いからだと」

 うん、そりゃそうだろ。
 誰が好き好んであの人に命を預けるもんか。

「だからおれは、セリスにこう言ったんだ。ケフカの為に命を懸ける兵もいると。そしてそれを実際に目にすることがあれば、今はおれを信じてケフカの為に戦って欲しいと」

 ちょっと待て。何か話の方向がおかしくないか?

「その時はまさか、こんな事態になるとは思っていなかったが。それでも結果としてこの場には君がいたし、実際に命をかけて戦ってくれた。セリスはそれを認めたから、今もこうしておれ達と一緒にいるんだ」

 ありがとう、と締めくくるレオ将軍。
 だが俺は物申したい。
 何が何でも物申したい。

「断じて、決して、俺はケフカさまの為に戦ったんじゃありませんから!!」

 正真正銘、本心からの叫びだったのだが、レオ将軍はそれを笑い飛ばし、ティナはどういうわけか微笑ましいものを見るような目でこちらを見つめていた。
 ケフカさんとセリス将軍はもう完全に俺なんかには興味を持っていなかったため、戦いを終えたときと同じく無反応。
 もう駄目だ。
 さすがに俺はもう駄目だ。
 とても心が折れたから、後のことなんて気にするのは辞めて気を失ってやった。
 だから、その直後にケフカさんが魔大陸で何をしていたのかなんて知らないし、ケフカさんの行動が何をもたらしたのかも知らない。
 ただ一つだけ言えることは、所詮眠っていただけの俺は、幸か不幸か翌日には朝日に照らされて目を覚ましてしまったのだということ。
 いい夢、見てたんだけどな。
 俺はフィガロ兵になっててさ、同僚にはカイエンさんもいて、何故か上司にレオ将軍。
 もちろん国王はあのイケメンで、ケフカさんなんて影も形もない。
 目が覚めて、それが夢だったって理解したとき、イケメン国王もカイエンさんももういないんだって事実をやけにしんみりと実感した。






 世界のバランスがどうとか、瓦礫をあつめて塔を建てる計画とか、そんなものはもちろん知らない。
 世界の神として君臨したケフカさんには4人の部下がいただとか、部下として一番長く仕えた男こそ真に彼の理解者だったのだとか、そんな噂が立っていたなんていうことも、絶対に、無い。



 俺、もう、本当に、疲れました。




















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完結しました。今までありがとうございました。
読んで、コメントを残していってくださった皆様のおかげです。
楽しかったです。
それでは。


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