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[10229] 黒翳の舞姫 (H×H TSモノ 15禁相当《オリ主×男性キャラの絡み》描写有り)【チラシの裏から移動しました】
Name: Mr.凸凹◆5dba541c ID:39705aec
Date: 2013/01/08 17:51





 この作品はHUNTER×HUNTERの二次創作です。


 ・このSSは第287回ハンター試験(原作開始時)をハンター歴2000年としています。
 ・一応オリ主のTS転生モノです。
 ・TS転生モノですが性の葛藤はある意味超越しちゃています。
 ・15禁相当の《オリ主×男性キャラの絡み》描写があります。
 ・そこはかと無くチート臭が漂っているかもしれません。
 ・原作キャラに独自見解が多少有ります。
 ・他作品からのパロディが有ります。
 
 以上の設定で構わないという猛者の方は、拙い作品でお目汚しかと思いますがお読みになりご意見とご感想をよろしくお願いします。

 XXXSS投稿掲示板に貴金属イチハチ禁な番外編を投稿しています。よろしければお読み下さいませ。

 
 ・2009/07/13 プロローグを追記しました。
 ・2009/07/15 第02話とアンナちゃんの『ひ・み・つ♪』【オリ主設定】を追記しました。プロローグと第01話のルビの不備他を修正しました。
 ・2009/07/19 第03話を追記しました。アンナちゃんの『ひ・み・つ♪』【オリ主設定】を一部加筆修正しました。
 ・2009/07/20 タイトル・前書きに15禁《オリ主×男性キャラの絡み》描写の表記を追記しました。
 ・2009/07/24 第04話を追記しました。第03話の脱字と一部加筆修正しました。
 ・2009/07/31 第05話を追記しました。第01話と第02話を微修正しました。
 ・2009/08/10 第06話を追記しました。第03話と第05話、アンナちゃんの『ひ・み・つ♪』【オリ主設定】の誤字などを微修正をしました。
 ・2009/08/23 第07話を追記しました。プロローグを微修正しました。
 ・2009/11/11 第08話とアンナちゃんの雑記帳【その他設定】を追記しました。アンナちゃんの『ひ・み・つ♪』【オリ主設定】を加筆修正しました。
 ・2009/12/18 第02.5話をXXXSS投稿掲示板に投稿しました。プロローグ並びに第01・02・03・04・05・06・07・08話を微修正しました。
 ・2009/12/21 第09話を追記しました。アンナちゃんの『ひ・み・つ♪』【オリ主設定】を加筆修正しました。
 ・2009/12/22 第09話の誤字脱字を修正しました。
 ・2012/12/16 各話とアンナちゃんの『ひ・み・つ♪』【オリ主設定】を修正しました。
 ・2012/12/17 第10話を投稿しました。アンナちゃんの『ひ・み・つ♪』【オリ主設定】とアンナちゃんの雑記帳【その他設定】を修正及び追記しました。
 ・2012/12/18 第10話とアンナちゃんの『ひ・み・つ♪』【オリ主設定】とアンナちゃんの雑記帳【その他設定】を修正しました。
 ・2012/12/19 第04話と第10話を微修正しました。
 ・2013/01/07 第11話を投稿しました。第02・04・05・09・10話並びにアンナちゃんの『ひ・み・つ♪』【オリ主設定】を修正しました。
         チラシの裏板からH×H板に移動しました。
 ・2013/01/08 第03・11話を微修正しました。







[10229] プロローグ
Name: Mr.凸凹◆5dba541c ID:39705aec
Date: 2012/12/16 17:23





 この記憶はまだボクが『わたし』だった頃の記憶。
 楽しいはずの誕生日の思い出が理不尽に蹂躙された絶望の記憶。





 わたし達『シュナイザー劇団』は総勢十数人の小規模な旅の劇団です。
 小さな町や大きな都市を巡回しながら歌や踊りの興行を生業にしています。

 今は移動中で昨夜から大きな湖の畔を野営地にしています。
 骨休みも兼ねて2~3日此処に留まるそうです。





「お早うございます。パパ、ママ。お早うございます、みんなさん」
「ああ、お早うアンナ」
「お早うアンナちゃん。今日は少し早起きさんですね」
『「「「「お早うアンナちゃん」」」」』

 わたしの家族は沢山います。
 血の繋がっているのはパパとママに小さい頃に離れ離れになった異母兄お兄ちゃんだけですが、わたしにとって劇団の皆さんは大切な掛け替えのない家族です。

「だって今日からわたしは11歳のれでぃーだもん」

 わたしはママに抱き付きながら頬にお早うのキスをしました。

「そうね。アンナちゃんも今日で11歳……もう立派な淑女レディーね」

 ママが嬉しそうにわたしを抱き上げながらくるくるとステップを踏んでいます。
 わたしは為す術もなくママのお胸に埋もれながらされるがままに振り回されるしかありません。

 助けを求める様に視線を向けると、皆さん微笑ましそうに母娘のスキンシップを眺めています。
 そんな中でパパは一人羨ましそう見詰めていました。

 そんなに羨ましいなら代わってくださいぃ~~!?
 はぅ!? さすがに眼が廻るよぉ~~!?





 あの後パパにも振り回されてしまいました。
 パパ、貴方もですか!?

 あまりの激しさに綺麗なお花畑が見えました。
 ママとお姉さん達が止めてくれなかたら今頃は綺麗なお花畑がある川の畔から向う岸へ渡っていたかもしれません。





 気が付くとパパが心配そうにわたしの顔を覗き込んでいました。

「大丈夫かいアンナ? ごめんよ」

 パパが涙で顔をくしゃくしゃにしながら抱き付いてきました。
 
 昨日までなら“パパなんて大嫌い!!”と言うところですが、今日からわたしはれでぃーです。

「許してあげるよ、パパ。今日のプレゼントを奮発してくれたらね♡」

 れでぃーは転んでもタダでは起きません!!
 男の人に貢がせるのが良いれでぃーの使命だとお姉さん達に教えられました。

「りょ、了解しましたお嬢様。飛び切り豪勢な誕生日にしような……」

 パパは何故か引きつった笑みでわたしを見ていました。
 大道具のおじさんがパパの肩を叩きながら慰めています。

 わたしナニか間違えたのかな?

 不思議そうに首を傾げていると衣装のおばさんが苦笑しつつ手招きしてきました。

「アンナちゃん。朝食の準備が出来たからおいで」
「はぁ~い」

 背中が煤けているパパと大道具のおじさんを残して、ママ達と朝食を美味しくいただきました。





 朝食の後片づけも終わり、皆さん思い思いに休暇を楽しんでいます。
 パパは狩りに出かけて大道具のおじさんは離れた場所で釣りをしています。
 わたしはママとお姉さん達数人と湖で水遊びをしています。
 
 ママを始め皆さんとてもお胸やお尻が大きくて水着から零れそうです。
 その上、腰も細くて羨ましいです。
 わたしはまだ成長を始めたところなので殆ど膨らみや括れがありません。

 自分の胸を押さえながら俯いていると頭から水を浴びせ掛けられました。

「隙有りだよ、アンナちゃん」

 顔を上げるとママがにこやかに微笑みながら更に水を浴びせてきました。

「えい、お返しだよ!」

 わたしはママのお顔に水を掛けて反撃しました。





 お昼は大道具のおじさんが釣った魚やパパが狩ってきた獲物でバーベキューをしました。
 何のお肉か判らなかったけど美味しかったです。





 そして日が沈みお誕生会を始めようとすると野蛮な男の人達が現れました。
 男の人達は卑しい笑みを浮かべながらこちらを窺っています。

「なんだね、君達は!!」

 パパがわたし達を庇う様に男の人達へと立ち向かいました。

「見ての通りの野盗さ。金目のモノと女達をよこしな」

 言葉と共にパパに沢山の武器が向けられました。

「断る!! 君達に渡すモノなど何もない!!」

 パパの躰からナニか危険な感じがするモノが放たれました。

 こちらに向けられている訳でもないのに酷く寒い様な感じがします。

 ですが、男の人達は涼しげな顔で佇んでいます。

「ほォ……念能力者か。なかなかのオーラだな、面白い」

 リーダー格の男の人が楽しげにパパを見下ろしています。

 そして男の人達からパパと同じ様なナニかが立ち上りました。

「まず貴様から遊んでやろう」

 その言葉を合図にパパに男の人達が躍り掛かりました。


 


 わたしは隙を見てテントの中に逃がされて衣装箱の中に隠されました。

 わたしは神様に祈る様に眼を瞑ることしか出来ませんでした。

 暫くすると男の人達がママ達を連れてテントへと入ってきました。

 そして始まる獣欲の宴。

 箱の外で行われている悪夢を耳を押さえ眼を瞑り震えながら追い出そうとします。

 不意に一人の男の人がナニかに気付いた様にこちらに歩み寄ってきました。

「見ぃつけ~た。こんな所に隠れてたんだ。さあ、隠れん坊の時間は終わりだよ♡」

 男の人は卑しい笑みを浮かべながらわたしを引きずり出しました。

 わたしは恐怖に戦くことしか出来ませんでした。
 
 男の人はわたしの服に手を掛けて破り捨てました。

「いっ、いやぁああ~~!!?」

 満天の星空に悲鳴が響き渡りました。





 ・
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 ◇ ◆ ◇





 目覚めるとそこはとある病院の一室だった。

 そこで自分自身があやふやではっきりせずにただ日々を過ごした。

 聞こえてくる会話やTVのニュースなどで此処が『HUNTER×HUNTER』の世界だと理解した時は更に混乱した。
 頭に流れ込んでくる所謂『原作の知識』とあやふやな前世の記憶。

 そして堰を切った様に忘れていた……いや、忘れている振りをしていた記憶が溢れ出した。

 大切な家族が穢された上に殺され、自身も穢された記憶が――――





 その後死を選ぶのに時間は掛からなかった。

 だが死ぬことは出来なかった。

 自身を包むモヤが念だと朧げながら理解出来た。

 それでも死のうと発作的に幾度と無く手首を掻き切る日々が始まった。

 拘束具で躰を固定されても紙の様に引きちぎり手首を掻き切る。





 数え切れない程リストカットを繰り返したある日、病院を抜け出して当てもなく彷徨ってお師匠様になる人物と出会った。 

 そのお師匠様とは――――





 ☆ ★ ☆





 ~ビスケside~





 偶々立ち寄った町で奇妙な少女と出会った。

 痩せこけ虚ろな表情。
 手首に巻かれた血で染まった包帯がかなり痛々しい。

 今にも消えて無くなりそうな儚い少女モノ
 だが瞳の奥底には強い煌めきが燻っている。

「ねえ、そこのお嬢ちゃん。あたしと一緒に行かないかい?」

 あたしはかなりの値打ちモノを拾ったのかも知れない。
 この娘を鍛え上げたならば何処まで高みへと昇っていくのか想像するだけで心がときめく。
 このくすんだ原石を磨いたならばさぞ美しい宝石になるだろう。





 ☆ ★ ☆





 この出会いは偶然なのか、それとも必然なのか。

 この少女宝石の名はアンナ=レイ・シュナイザーバイカラー・フローライト
 二面性の魅力を持つ少女宝石

 彼女が路傍の石で終わるのか、それとも完全に調和して至高の宝石となるのか。

 その物語は今始まったばかりである。







[10229] 第01話
Name: Mr.凸凹◆5dba541c ID:39705aec
Date: 2012/12/16 18:04





 ボクの名前は『アンナ=レイ・シュナイザー』です。
 もうすぐ13歳の誕生日を迎える花も恥じらう女の子なのですよ。

 二年程前までは旅の劇団の座長の一人娘兼劇団の花形として世界各地を巡業する普通の少女でした。
 今はとある事件で現世の人格が消えかけて前世の人格が蘇って混ざったTS転生者だけどね。

 前世と現世の人格が混じり合った結果、拙くなった記憶によると此処はなんと『HUNTER×HUNTER』の世界だったのですよ!!
 そのことを理解した時はかなり鬱が入っていました。

 ただでさえ劇団の皆が殺されて孤独で頼る者がいないのに、あの富樫ワールドですよ!?
 死と殺戮が身近な面白r(ry恐ろしいところなんですよ!?

 人格統合が上手く行かない上に事件の精神的外傷トラウマで精神的に追いつめられて死のうと数え切れないぐらいリストカットしました。
 しかし、いつの間にか拙いですが纏を修得していてなかなか死に切れませんでした。

 現在は幸か不幸か立派なお師匠様の元で修業を積んだおかげで人格統合も上手くいきました。
 精神的外傷トラウマは性癖に昇華するというオマケ付けですけどね。





「起きなさいな、アンナ。修業を始めるだわさ!!」

 可愛らしい同年代(?)の女の子が笑みを浮かべながらボクを見下ろしています。

「ふわぁ~お早うございます、ビスケ」

 そうなんです。ボクの師匠はあの『ビスケット=クルーガー』なんですよ。

 何度目か忘れましたが発作的に死のうとしていたボクは病院を抜け出して当てもなく彷徨っているところを偶然にも彼女と出会い、擦った揉んだのあげくに弟子入りさせられました。
 したんじゃなく、させられたというところがミソですよ。





 今日も相変わらずボク好みの美少女(正体はマッチョな○リババァでしたよね?そんなの関係ねぇえ~~!!)に虐めらr(ry修業をつけてもらっています。

「何か言ったかい?」

 敬愛するお師匠様ビスケちゃまが血も凍る様な綺麗な笑みを浮かべながらボクの顔を覗き込んできました。

「イッ、イエ……ナンデモゴザイマセン」

 やばいです。このパターンでいくと――――

「まだまだ余裕があるみたいだわね。仕上げにあたしと流々舞をするだわさ」

 いやぁあ~~こっ、殺されるぅう~~!!?

 パパ、ママ。それに劇団のみんな。ボクも天国そっちに逝くかもしれないです。





「今日はここまでにしておいてあげるわさ」
「あっ、ありがとう……ござい……ました……」

 どうにかビスケの怒りが収まり死なずに済みました。
 紙一重でしたけどね。

 ビスケとニャンニャンするまでは……そして、ゴンくんとキルアくんと懇ろになるまでは死んでも死にきれません!!

「寝てなさいな」
「ぐふぅ……おっ、お休み……なさ……い……」

 ボクは恐r(ry優しい笑みと共に振り下ろされた拳によって強制的に眠りにつかされました。





 ◇ ◆ ◇





 これは記憶ゆめ
 現世わたし前世オレが混じり合い『ボク』になった切っ掛けの絶望の記憶。
 躰だけでなく精神さえも蹂躙された記憶。





 夢見が悪く眼が覚めてしまい、憂鬱な気分で何となく窓に浮かぶ月を見上げました。

 ボクは未だに慣れない下腹部の痛みを始め様々な症状を感じ、気怠げにため息を吐きました。
 ふと気づくとビスケが心配そうにこちらを窺う様に見詰めていました。

「平気かい?」
「大丈夫だよ。まだ数えるぐらいしか体験してないけどボクのは比較的軽いみたいだし……」

 笑顔で答えたつもりだけど少しぎこちなかったかな?

「取りあえずゆっくり休みなさいな」

 ビスケは苦笑しながらボクの髪を優しく梳いてくれました。

 その感触に心地よさを覚えながら微睡むままに再び眠りにつきました。

 良い夢見られると良いな。





 良い匂いに釣られて眼が覚めるとエプロンドレス姿のビスケがリビングから顔を出してきました。

「起きたかい? 簡単な食事を用意したけど食べるかい?」
「うん、食べる」

 寝ぼけた頭でビスケの後ろ姿を眺めながら、ついでにビスケも喰べたいと思ってしまっても間違いじゃないよね?





 食後の紅茶を楽しんでいると鼻歌交じりに電脳ページをめくっていたビスケが一枚の用紙を渡してきました。
 そこには天空闘技場の所在地などが印刷されていました。

「なに、コレ?」
「そこで今までの養育費を稼いでくるんだわさ」

 ビスケの眼は冗談を言っているようには見えないけれどここは聞き返すのがオヤクソクだよね? 

「マジですか?」
「大マジだわさ。アンタもだいぶ落ち着いてきた上、修業も一通り済んだしね」

 まあ約一年半も寝食を共にしていたらそれなりにお金も掛かりますか。

「判ったよ。寂しいけれどずっと一緒って訳にもいかないもんね」

 それに少し距離を置いた方がビスケのフラグを増強できるかな?

「因みに30億ジェニー。鐚一文も負けないだわさ」
「りょ、了解です。耳を揃えてビスケの口座に振り込まさせていただきます」

 さすがは宝石ストーンハンター……ぼったくりな金額ですね。
 悲s(ry嬉しくて涙が出ちゃいますよ。





 ◇ ◆ ◇





 ビスケとのある意味感動的な涙の別れから約一週間が経ちました。

 そして、やって来ました格闘のメッカ『天空闘技場』……なのですがナニか忘れている様な気がしてならないのだよワト○ン君?

「まあ、いっか……さっさと並ぼう」

 此処まで来て思い出せないんだから大した事じゃないよね?





 周囲の奇異の視線を無視しつつ並ぶこと数十分、やっと受付に辿り着きました。

「天空闘技場へようこそ。こちらに必要事項をお書き下さい」

 受付のお姉さんから用紙を受け取って書き込んでいきます。
 名前は『アンナ=レイ・シュナイザー』と、生年月日が『1985年2月13日生まれ』の、闘技場経験は『無し』で、格闘技歴は『10年(嘘)』にしといて、格闘スタイルは『心源流拳法(仮)』と、これでOKだね。

「はい、書けました」
「それでは中へどうぞ」

 お姉さんに用紙を渡し、いざゆかん男達の戦場へ!!
 ボクは一応女の子だけどね。

 まあ、既に乙女ではないから問題ないかな?
 ナニがとは言いませんがね♡





 ファイトマネーの152ジェニーでアップルジュースを買い、一気に呷る様に飲み干しました。
 さてと、もう一試合頑張りますか。





「さあ皆様お待たせしました、続きましての試合は可愛いらしい女の子が登場します。しかし、その実力は未知数!! アンナ選手は先の試合で対戦相手に触れさせることなく勝利しました」

 紹介されると失笑が彼方此方から発せられました。

「その対戦相手はまさに野獣と呼ぶに相応しい大男です! ではギャンブルスイッチ、オン!!」

 オッズはボクが5.85で相手が1.3ですか。
 自分に賭けられないのが残念な倍率だね。

「お嬢ちゃん、可愛いね。おじさんといいことしないかい?」

 対戦相手が舐めまわす様な視線でボクを見詰めてきています。
 もしかして炉のお人ですか?

「それでは試合開始です!!」
「ふはははは! アンナちゃ~ん!!」

 開始の合図と共に卑しい笑みを浮かべながら対戦相手が器用に脱皮する様に服を脱ぎつつ跳び掛かってきました。

 あれは伝説のル○ンダイブ!?
 アンナちゃん、貞操のピンチ!?
 ……なんてね。

「ボクと犯りたいなら、美女か美少年に生まれ変わって来な!!」

 カウンター気味に相手の首に足を搦めて頭からリングに叩き落としました。

「クリーンヒット!」

 対戦相手の様子を窺っていた審判が手を頭の上でクロスさせました。

 TKOでボクの勝ちです。

 ボクは恍惚の表情を浮かべながら気絶している対戦相手に背を向けてリングを降りました。

 少しサービスが過ぎたかな?





 ◇ ◆ ◇





 190階に上がっては態と負けるという事ばかり続けて大方目標金額に近付いて来た頃になると、ボクは『黒翳の舞姫』という二つ名で呼ばれる様になりました。
 漆黒の外衣ポンチョを身に纏い、踊る様な体術で闘う様が名の決めてだそうです。

 それはさて置き、目の前の対戦相手は何処かで見た様な気がするんですよ。

 首を傾げていると直ぐに疑問が氷解しました。

「さあ本日の注目の試合です。彼女は今度こそ200階へと上がれるのか? 『黒翳の舞姫』ことアンナ選手! 対するのは誰が呼んだか『血化粧の奇術師』の異名を持つヒソカ選手!」

 どう見ても変態ピエロヒソカさんです。有り難うございました。
 
 いやはや、ナニか忘れていると思っていたら彼の事でしたか。
 やっとスッキリしましたよ。

「君も使える様だね♠ ……美味しそうだ♥」

 どうやらボクは彼の御眼鏡にかなった様です。
 
 そんなに見詰められると濡れちゃいますよ?

 震えるほどの恐怖を感じますが、同時に興奮してきました。
 ヒソカさんほどの手練れと手合わせ出来る喜びを感じると同時に、彼ほどの使い手になら組み敷かれて無理矢理犯されたいと頭の隅で考えてしまいます。
 やっぱりボクもある意味変態さんですかね?
 
 でも、ボクは高いですよ?
 そう簡単には負けるつもりはありません!!
 
 さあヒソカさんとの試合ダンスを始めましょう!!







[10229] 第02話
Name: Mr.凸凹◆5dba541c ID:39705aec
Date: 2013/01/07 15:57





「試合開始!!」

 合図と共に自然体のまま堅を行うとヒソカさんが腰に手を当てながらウィンクしてきました。

「レディーファーストだよ♥ お先にどうぞ♣」
「では遠慮無く……」

 ボクは《瞬動術》で一気にヒソカさんに詰め寄って演舞の様に流を行い連撃を打ち込みました。
 
 ですが、ヒソカさんには的確な流で連撃を全て防がれてしまいました。

 ボクは最後の一撃の反動を利用して、ヒソカさんから距離を空けて間合いを計りました。

「いいね♠ 想像以上だよ、君は……♥」

 ヒソカさんはうっとりとした表情でボクを視姦する様に見詰め、更に禍々しくオーラを立ち上らせます。

 はぅ!? 逞しい♡ ……じゃなくて、さすがに今のボクじゃ彼の防御を抜くのは難しいみたいですね。
 
 凝を行いつつヒソカさんの股k(ry動向を注意深く探っていると、一瞬の隙にヒソカさんが【伸縮自在の愛(バンジーガム)】を発動させてボクの腕に貼り付けました。
 
「捕まえた♦ こっちにおいで♥」

 ボクは引っ張られるままにヒソカさんへと引き寄せられます。
 しかし、ボクは《虚空瞬動》で体勢を立て直すと同時に、更に加速を付けて硬で彼を蹴り飛ばしました。

 ヒソカさんは驚愕の表情でリング端まで吹き飛んでいきます。

「クリティカル!! 2ポインッ!! アンナ!!」
「アンナ選手の跳び蹴りがヒソカ選手の胸に突き刺さった!? ヒソカ選手耐えられずにリング端まで押し遣られました!!」

 実況のお姉さんが眼を擦りつつ信じられないような様子で声を張り上げました。

 一瞬の静寂の後で観客席から歓喜とも驚愕とも取れる声が上がりました。
 
 同じ手は通用しないでしょうね。
 さてと、お次はどうしましょうかね?





「……驚いたよ♦ まさか【伸縮自在の愛(バンジーガム)】を外されるなんて……その外衣の能力かい? 面白いね♠」
 
 ヒソカさんが口元の血を拭いながら訊ねてきます。

 やはり戦闘経験豊富なヒソカさんには、もうタネが割れちゃいましたか。

「ご明察道理ですよ。ボクには貴方の発は効きませんよ」

 先程のオーラ程度なら今の【影織りの外衣(ディープ・ストッカー)】で充分に無効化出来るけど――――

「成る程……本当かどうか試させてもらうよ♦」

 気づかれてる!?

 明らかに先程よりもオーラを込めた【伸縮自在の愛(バンジーガム)】が襲いかかってきました。
 ボクは舌打ちをしつつ【影織りの外衣(ディープ・ストッカー)】を広げて振り払いました。

「なるほど……その外衣に込められたオーラ以下ならば消せるんだね♠ でも、消すたびにオーラが消費されるのか♥」

 とほほ~一発で見抜かれましたよ。

 やはりヒソカさんは頭の切れも一流なんですね。
 ますますイケナイ想いが強くなってしまいますよ。





 その後一進一退の攻防を続けて、ヒソカさんが9ポイント迄取得すると徐に提案きました。

「最後のチャンスを上げるよ♥ 早くしないと……」

 ヒソカさんの言葉が終わらない内に再び《瞬動術》で間合いを詰めて鳩尾に《吼破・改》を叩き込みました。

「クリーンヒット!! アンナ、プラスポインッ!! 3-9!!」
「アンナ選手、やっと追加ポイントを取りました!! しかし、対するヒソカ選手は既に9ポイントでチェックメイト寸前です!!」

「……それでお終いかい? じゃあ、そろそろお終いにしようか♣ ……うっ、動けない?」

 ヒソカさんは目線だけを下ろして凝で自分の足下を見下ろしました。
 そこには隠で隠された【影鬼の小刀(レ・ラナンデス)】が六本彼の影に突き刺さっています。

「それじゃあ、いきますよ!!」

 ボクは動けないヒソカさんに連撃を浴びせて一気にポイントを修得して逆転しました。

「プラスポインッ、アンナ!! 10-9!! 勝者アンナ!!」
「なっ、何と!? アンナ選手が逆転勝利しましたぁあ~~!!!」

 闘技場を揺るがす様な大きな歓声が会場を包みました。





 ☆ ★ ☆





 ~ヒソカside~





 ボクの眼の前にはエキゾチックな褐色の肌をした少女がコケティッシュな微笑を浮かべて佇んでいる。
 まるで紫水晶の様な美しい髪、そして吸い込まれそうな黄金の瞳。
 体付きこそスレンダーで胸も小振りだが彼女からは女の色香が滲み出ている。
 同時にキラリと光る八重歯が年相応のまるで少年の様な活発的な印象を醸し出している。

 今まで喰べてきた中でも五本の指に入る程の上玉だよ♥
 しかも、彼女は戦闘面でも潜在能力が高いのが窺える。

 彼女の堅はまるで流水の如く澄んでいてとても綺麗だ♦
 例しに彼女に先制攻撃を譲ると眼で追うのがやっとな程のスピードで距離を詰め、まるで踊る様な美しい連撃を浴びせられた。





「いいね♠ 想像以上だよ、君は……♥」

 今はまだ青い果実だが彼女はどんどん美味しく実っていくだろう。

 そそり立った一物を発情期の雌の様な眼差しで凝視している隙に【伸縮自在の愛(バンジーガム)】を彼女の腕に貼り付けた。

 彼女の匂いを胸一杯吸い込むために力強く引き寄せようとすると、胸に飛び込んできたのは彼女の跳び蹴りだった。
 しかも【伸縮自在の愛(バンジーガム)】が外されている。

 除念? いや、少し違う様だね♣
 あの外衣の能力かな?
 面白いね、試してみようか♠





「なるほど……その外衣に込められたオーラ以下ならば消せるんだね♠ でも、消すたびにオーラが消費されるのか♥」

 なかなか良い能力じゃないか。
 でもあの外衣には他にもナニかありそうだね♣





 彼女の雌の薫りが一段と強くなってきたね。
 彼女もある意味ボクと同類なのかな?
 
 ますます彼女を喰べたくなってきちゃたよ♥





 暫く彼女との試合バトルを楽しんでいると終わりが近づいてきてしまった。

 もう少し彼女と戯れたいな♥
 
「最後のチャンスを上げるよ♥ 早くしないと……」

 なかなか腰の入った良いパンチだけどこれだけなのかい?
 ならもう終わらせよう♦

「……それでお終いかい? じゃあ、そろそろお終いにしようか♣ ……うっ、動けない?」

 指一本動かせないよ……眼は辛うじて動くね♣

 足下を凝で確かめるとボクの影にナイフが六本刺さっていた。

 成る程影縫いか♠
 柄の部分が右手のリストバンドの中から延びている血の様な赤い糸と影の様な漆黒の糸で編まれた紐で繋がっているね♦
 さっきの外衣といい、彼女は影に関する具現化能力者なのかな?





 負けちゃったね。
 さすがにポイント制なら彼女と五分だね。

 それにしても楽しかったね。
 まだ興奮しているよ♥





 ☆ ★ ☆





 ヒソカさんとの試合が終了すると、ボクは足早にトイレへと駆け込みました。

「はぅ~下着がどろどろになちゃってるよ。太股にもかなり垂れちゃってるし……」

 凄くたのしい試合だったからしょうがないかな?
 
 ボクは徐に下着を下ろし処理しました。

 十数分はトイレの個室に籠もってしまいましたけどね。
 女の子には色々とあるのですよ。





 トイレから出るとヒソカさんが壁に背を預けながら佇んでいました。

「やあ、楽しい試合だったよ♥ どうだい? この後一緒に夕食でもしないかい♦」

 ヒソカさんが和やかな笑み(?)を浮かべながらお食事のお誘いをしてきています。
 
 折角のお誘いだけど、どうしようかな?

 断る理由もないし受けましょうか。
 
「いいですよ。ヒソカさんの奢りですよね?」

 ボクは頬を染めつつ上目遣いで微笑みながら聞き返しました。

「もちろん♥ 外で食べると色々と煩そうだしボクの部屋にルームサービスを呼ぼうか?」
 
 ヒソカさんはさり気なくボクを誘っているみたいですね。
 デザートはボクを頂くつもりかな?
 
 躰の火照りがまだ残ってるし……丁度良いですね。

「構いませんよ。エスコートをお願いしますね♡」

 ボクはヒソカさんに抱き付く様に腕を絡ませました。
 
 今夜は寝られないかもしれませんね。

 よゐこは早く寝ないとダメだぞ♡







[10229] 第03話
Name: Mr.凸凹◆5dba541c ID:39705aec
Date: 2013/01/08 17:50





 カーテンの隙間から洩れる朝日が優しく顔を撫でる感触でボクは眼が覚めました。
 小鳥達の囀りが耳に心地よく響いています。

 どうやらボクはヒソカさんの腕枕で眠っていた様です。

「お早うアンナ♥」

 ヒソカさんがボクの髪を梳きながら朝の挨拶をしてきました。

「お早うございます、ヒソカさん♡」

 ボクは照れた表情を隠す様にヒソカさんの胸に擦り寄りました。

 部屋中に充満していてる残り香が昨夜の凄まじさを物語っています。

 五ラウンドまでは数えていましたがその後ははっきりとは覚えていません。





「先にシャワーを浴びなよ♦ それとも一緒に浴びるかい♣」
「おっ、お先に浴びさせてもらいます……って、アレ?」

 ボクは頬を染めながら【影織りの外衣(ディープ・ストッカー)】を具現化して肌を隠して立ち上がろうとすると、足腰に力が入りませんでした。

「もしかして立てないのかい? しょうがないね♥」

 ヒソカさんはボクをお姫様抱っこして浴室まで連れて行ってくれました。
 そしてシャワーを浴びせてもらったのですがその前に三ラウンド程戯れてしまいました。

 はぅ~ヒソカさん凄すぎだよぉ~♡

 結局ボクが自力で立ち上がれたのはお昼過ぎでした。





 ヒソカさんとレストランで遅めの昼食ランチを楽しんでいると、周囲から探る様な眼が向けられてきました。
 どうやらヒソカさんと一晩過ごしたことが既に噂になっている様です。

 周囲に会話に耳を傾けると、昨日の勝利はボクが躰を使ってヒソカさんに譲ってもらったという事だという話になっているみたいです。

「確かに美味しく頂いたけどね♥ ……200階クラスで君の実力を見せつければ直ぐに収まると思うよ♣」
「200階クラスですか? お金も稼げたしお暇するつもりだったんですが……」

 ゴンくんとキルアくんが闘技場ココに来るのは確か再来年のハンター試験の後でしたよね?
 その時一緒に再び挑戦するつもりでしたが――――

 キルアくんを攫い迎えに行った後に先回りして200階クラスで待ち伏せをして諭し、ボクが二人の精孔をこじ開けるはじめてを貰うプランでいきますか。

 そして、師匠として手取り足取りナニを取りで導いてボク好みの強い男に育て上げましょう!!

 その為にはボク自身が更に精進して強くなる必要がありますね。

 そうすると一応登録だけは済ましていたのは幸いでしたね。
 昨夜はナニのことで頭の中が一杯で上の空でしたから――――

「他にすることも無いし良いかもしれませんね。ヒソカさんも遊んでいくんですよね?」
「そうだね♦ 仕事も暫く無いだろうし……」

「お仕事ですか? そう言えば何のお仕事をしているんですか?」

 昨夜は【薄っぺらな嘘(ドッキリテクスチャー)】のクモの入れ墨は付けていませんでしたけど、既に入団しているはずですよね?

「秘密だよ♠ ちょっと恥ずかしくて言えないんだよ♣」

 ヒソカさんは少し照れた振りをしてそっぽを向きました。

 さすがにこんな人目の有る所で旅団の話はしませんか。

「分かりました。気が向いたら教えてくださいね」

 ボクは照れた振りをしたヒソカさんの横顔を眺めながら食事を再開しました。





 ヒソカさんと別れて部屋に向かう途中、見るからに軽そうな男が声を掛けてきました。

「お嬢ちゃんが『黒翳の舞姫』のアンナちゃんだよね?」

 ボクは興味がないので無視をして行くことにしました。

「ちょっと待てよ!! カマトト振ってるんじゃねえぞ、この淫乱が!! ……痛っ!? なっ、何しやがる!?放しやがれ!!」

 振り向くとボクを掴もうと伸ばされた男の腕が他の男性の手で捻り上げられていました。

女の子レディーにそんな口の利き方をするものじゃないよ」

 何処かで見たことのある長髪の男性が爽やかな笑みを浮かべて軽薄そうな男の腕を更に捻り上げています。

「わっ、分かった。オレが悪かったよ!」

 男は腕を放されると脱兎の如く走り去りました。

「有り難うございます、助かりました」
「いや、君の実力なら大丈夫だと思ったんだけど見てられなかったからね」

 お礼を言うと男性ははにかみながら自己紹介をしてきました。

「私の名はカストロ……今度、君の対戦相手を務めさせてもらう者だよ。よろしく」

 カストロ? 確かヒソカさんの洗礼を受けた後に再試合で殺された人でしたね。
 原作と違い七部袖の碧い功夫胴衣を着ているので気づきませんでした。

「よろしくお願いします」

 ボクは差し出されて手を握り返しながら彼を観察して良い実験体が見つかったことを天に感謝しました。
 彼で精孔をこじ開ける実験をすればゴンくんとキルアくんの時に失敗しなくてすみます。

 それにカストロさんの【分身(ダブル)】とビスケの【魔法美容師(マジカルエステ)】を思い出して新たな発のアイディアが天啓の様に閃きました。
 彼で試すのもよいでしょう。
 纏を修得していれば多少の無茶をしても壊れることはないでしょうしね。

 万が一壊れたらソレまでです。
 もし耐え抜いて高みに上れるならばカストロさんも本望でしょうし、なかなか良い男なのでキープ君としてもよいでしょう。

「こんな所で立ち話も何ですし、お礼にボクの部屋で紅茶でもご馳走しますよ」
「レディーが簡単に男性を部屋に入れるものじゃないよ」

 カストロさんがボクの頭を撫でてながら諭してきました。
 ですが手が微妙に震えているのが感じられます。

 どうやら女性の扱いには慣れていないようですね。
 初な反応が可愛いです。

「カストロさんはそういうことをする人じゃないですよ。遠慮なさらずに……」

 表向きは信頼の表情を浮かべながらカストロさんをボクの部屋に招待しました。

「……ご馳走になろう」

 巣に掛かった獲物は逃がす気はありません。
 じっくりとボクの虜にしてあげますよ。





 ボクはカストロさんと暫く紅茶を楽しむと、さり気なく本題に入りました。

「カストロさんは武術をなさっている様ですが念は修得されていないんですね」
「念?何のことかな?」
「念とはオーラと呼ばれる生命エネルギーを自在に操る能力のことです。カストロさん程の武道家ならば無意識に使っていることは多々あります」

 カストロさんは思い当たる節があるのか顎に手を当てて考え込んでいます。

「200階クラスは全員が念の使い手ですよ。今のカストロさんなら瞬殺がオチですよ」

 それ程の使い手は一握りですがね。
 さあ、どうしますカストロさん?

「君も念の使い手なんだね。つまりこのまま闘えば……」
「運が良ければ死なずに念に目覚めることが出来ます。しかしその代償に身体の一部を壊してしまうことになります」

 カストロさんは視線を外さずにボクの眼を覗き込んでいます。

「どうやら本当の様だね。だがわざわざ私に念のことを教えると言うことは……」
「ええ、今ここでカストロさんの精孔をこじ開けて万全の状態で試合に臨んで欲しいんですよ」
「……お願い出来るかな? 『黒翳の舞姫』殿」

 カストロさんは深々と頭を下げてボクにお願いしてきました。

 計画通りですね。

「では上着を脱いで背を向けてください」
「うっ、上着を? わっ、分かった……」

 ボクはカストロさんが背を向けて上着を脱いでいる間に舌なめずりをしながらゆっくりと歩み寄りました。





 ☆ ★ ☆





 ~カストロside~





 200階クラスの登録を済ませて部屋に向かう途中数歩先を褐色の少女が歩いていた。

 噂では昨日の試合は躰を売って譲ってもらったという話だが、彼女の立ち振る舞いから感じられる限りでは実力で勝ち取ったのだろう。

 改めて彼女に視線を向けると見るからに軽薄そうな男が彼女に話しかけていた。





女の子レディーにそんな口の利き方をするものじゃないよ」

 男が暴言を吐きつつ彼女の肩を掴もうとしていたので腕を取り捻り上げた。

 腕を放すと男は脱兎の如く走り去っていった。
 私が男の姿が見えなくなるまでそちらを眺めていると少女がお礼を言ってきた。

「有り難うございます、助かりました」
「いや、君の実力なら大丈夫だと思ったんだけど見てられなかったからね」

 手に触れるほどの距離になると彼女の牡を引き寄せる魔性の魅力が私にも理解出来た。

 私も気を抜けば彼女に呑み込まれてしまいそうだ。





 お礼にお茶にと誘われたがどうしたものか。

 思わず誤魔化す様に彼女の頭を撫でてしまったが気を悪くしないだろうか?

 彼女の信頼に満ちた表情を見て私はわき上がった感情を恥じた。

「……ご馳走になろう」

 彼女の好意を無駄にしてはいけない。





「カストロさんは武術をなさっている様ですが念は修得されていないんですね」

 紅茶を楽しんでいると彼女が不意に真剣な眼差しで訊ねてきた。

 彼女の説明を聞くと念というモノには私も心当たりがある。

 彼女の眼を覗き込むと嘘を言っている訳でもなさそうだ。

「……お願い出来るかな? 『黒翳の舞姫』殿」

 私は一武道家として彼女に敬意を表し頭を垂れた。

「では上着を脱いで背を向けてください」
「うっ、上着を? わっ、分かった……」

 私は立ち上がりかける愚息を彼女に気づかれない様に背を向け手早く上着を脱いだ。

 落ち着けカストロ!! お前は武道に身を置く者だろう!!

 私は自分自身に言い聞かせる様に心に強く念じた。





 ☆ ★ ☆





 カストロさんの背に手を当てるとかなり緊張しているのが文字通り手に取る様に理解出来ました。
 視線を下ろすとナニやら躰の一部が堅くなっているのが見て取れます。

 なかなか良いモノを持っていますね♡
 でも今はダメですよ。

「まず深呼吸をして下さい。高ぶったままでは失敗しますよ」 

 ボクはカストロさんの背中に手を当てながら心を落ち着かせる様に促しました。

 暫くするとカストロさんの緊張が解れてきました。

「では、いきますよ」

 ボクはカストロさんの全身を撫で回す様なイメージで発を行いました。

「こっ、これは!?」
「それがオーラですよ。眼の精孔も開かれていますから視ることが出来るんです。ではそのオーラを留めてください」

 ボクの言葉にカストロさんは眼を瞑り胸の前で合掌して呼気を整えています。
 そして暫くすると纏が綺麗に完成しました。

「それが念の基本中の基本技能である纏です。これを行うことによって肉体は頑強となり、更に老化を防げます。慣れれば寝ながらでも使えますよ」

 その後簡単に念と燃の四大行について説明を行いました。





「試合が終わればボクの兄弟子を紹介しますよ。それまでは自己鍛錬を欠かさずに……お互いに頑張りましょうね」
「ああ、有り難う。次は試合会場で相まみえるとしよう」

 ボク達はお互いに手を差し出して堅く握手を交わしました。

 カストロさんの顔がまるでトマトの様に真っ赤だったのは気が付かない振りをしてあげました。







[10229] 第04話
Name: Mr.凸凹◆5dba541c ID:39705aec
Date: 2013/01/07 15:58





 夜の帳につつまれた薄暗い部屋。

 夜空に浮かぶ満月が群雲を従えて覗き見る乙女の園。

 自身の呼吸と鼓動が耳に響く程の静寂が支配する翳りの空間。

 その主は影を従え君臨する妖艶なる少女。

 その少女の黄金の瞳は闇の中で天空の月の如く一際輝いている。




     
 月明かりが照らす鏡にボクの一糸纏わぬ姿を映しながら、影を媒介にもう一人のボクが浮かび上がるイメージで念を練ります。

 不意に月が雲に覆われて更に闇が濃くなりました。

 そして再び月影が鏡に映ると、そこにはボク自身と両手にそれぞれ陰と陽の仮面を携えた分身ボクが此方を見詰めている姿が映し出されていました。

 どうにか形だけは出来上がりましたね。

 しかし、こうして客観的にボクの躰を見るとある一部分がその……ちっ、小さいですね。
 その上、白板つるつるですからね。

 確か幸運の星の伝説の少女も“小さいことはステータスだ!! 希少価値だ!!”と言っていましたし、それに一部の大きいお友達にも大人気ですから……いっ、良いのかな? 良いんですよね!?

 それにまだボクは13歳ですからこれから成長しますよね? そうですよね!?
 あっ、あれ?眼から心の汗が零れ落ちそうです。

 ボクは心にわき上がる不安を誤魔化す様にキャビネットに置かれたカクテルの残りを呷りました。
 程良い酔いがボクの躰と心に染み渡り、少しだけ心が軽くなった気がしました。





 暫く月を肴に一人で呑んでいると、部屋の隅に置かれた椅子に縛り付けて猿轡を噛ませた傷だらけの男が眼を覚ましました。

「お目覚めですか? 貴方もご協力有り難うございました、お礼に天国・・に逝かせてあげますよ」

 ボクは微笑みながらゆっくりと男の側に歩み寄っていきます。

 男は首を横に振り乱しながら拒絶の意志を表しています。

 怯える顔がボクの嗜虐心を擽りますね。

「どうしてそんなに怯えているんですか? ……さあ、始めましょう」

 ボクは満面の笑みを浮かべながら宴の始まりを告げました。
 そして徐に彼の胸の傷に舌を這わせて血を舐め取りました。

 嘉酒には程遠い味ですね。
 やはり生命エネルギーに溢れる年下の男の子の体液が甘露で好みですね。
 頭の中身まで軽そうな男ではこの程度でしょう。

 簡単に逝かせて・・・・あげるのも面白くないですね。
 せめてボクの気が晴れるまでは相手をしてもらいましょう。





 気が付くと空が白んできていました。

 ボクの他に息遣いの無い・・・・・・部屋には噎せ返る程の臭いが充満しています。

 取り合えず臭いの元は【影織りの外衣(ディープ・ストッカー)】に収納して置きましょう。
 後で適当に処理しないとダメですね。

 片付けが終わるとボクは汚れた躰をシャワーで洗い流すために浴室へと向かいました。

 少し戯れすぎましたね。
 もう少し自重しないとダメですね。

 熱めのお湯を浴びて赤黒い・・・汚れを洗い流しました。





 ◇ ◆ ◇





 昨日行われたボクの200階の初戦はある意味一方的な展開に終わりました。
 フルボッコでカストロさんは全治六ヶ月の重傷になりました。

 フィニッシュに客席まで石板ごとカストロさんを蹴り飛ばしてボクの力量を観客達に見せつけておきました。
 カストロさんは念を修得していなかったら確実に壊れて死んでいましたね。

 これで馬鹿な男達は近づいてこないでしょう。
 かなり鬱陶しかったので彼等の座っていた場所に石板が偶然・・直撃した時は思わず顔がにやけてしまいました。

 実況のお姉さんはあまりの展開に気を失ってしまいました。
 観客達も水を打った様に静まりかえりました。

 やりすぎましたかね?

 それにしても虎咬拳の使い手と雖も念初心者のカストロさんに簡単に負ける程ボクは弱くないですが、普通ならかなり梃摺ったはずです。

 ではどうして一方的な展開になったというと、偏にカストロさんの精神鍛錬不足が原因ですね。
 ボクのミニスカートが翻ってスキャンティー(白と翠のストライプ)が顕わになる度に顔を朱に染めて固まってしまい、それが致命的な隙になって攻めやすかったです。

 しかし、このままだとボク好みの強い男に成長しても襲ってくれませんよね。
 折角なかなか良いモノを持っているのに勿体ないですよ。

 念を鍛える共に女性慣れさせる必要がありますね。
 でも年上でまだそこそこの実力のカストロさんにボクからアプローチするのは趣旨に反しますし、どうしましょうか?

 色々と考え事をしながら歩いているとカストロさんの部屋の前まで辿り着きました。





「カストロさん。ボクです、アンナですよ。お邪魔してもいいですか?」

 ボクは親愛の意味を込めて三回のノックをして、扉越しに声を掛けました。

「あっ、アンナくんかい? 丁度良かった……今扉を開けてもらうよ」

 暫く待っていると中から看護師のお姉さんが扉を開けてくれました。

 かなりボク好みの小柄でオリエンタルな黒目と黒髪の美人さんです。
 胸は大きめですね。美味s(ry羨ましいです。

 はぅ~このままお持ち帰りしたいぐらいですよ♡
 
「ほなカストロはん、うちはお暇しますけど、何か入り用でしたら何時でも連絡して下さいね。ほな失礼します」

 看護師のお姉さんは微かに頬を染めつつカストロさんに会釈して部屋を出ていきました。
 そして、擦れ違う時にボクを軽く睨んでいった様な気がしました。

 ボクは暫く彼女の後ろ姿を眺めてからカストロさんの方へと歩み寄りました。

「カストロさんも隅に置けないですね。あの看護師さんかなり可愛いですよ、お付き合いするんですか?」
「よっ、よしてくれ。彼女はそんなんじゃないんだ、純粋に私を看護してくれていただけだよ。ただ……」

 真っ赤に顔を染めたカストロさんが一瞬横目でサイドテーブルに眼を遣り俯いてしまいました。

 そこには溲瓶が鎮座していました。

 成る程、あのお姉さんは嬉々として下の世話までしてくれたんですね。
 彼女は使えるかもしれませんね。

 後でたっぷりと『お・は・な・し♡』しないといけませんね。
 あはははは~楽しみですよ♡





 ひとまず彼女のことは置いておくとして用件を済ませるとしましょう。

「傷つけたボクが訊ねるのも可笑しいですが、怪我の具合はどうですか?」
「見ての通りだよ。私の油断が原因とはいえ、暫くは試合は疎か歩くことも出来そうにないよ」

「御免なさい……」

 ボクは目尻に涙をためながら俯きました。
 もちろん嘘泣きですけどね。

 涙は女の武器だから何時でも泣ける様にと、ビスケに訓練させられました。
 かなり重宝していますよ。

「すっ、すまない……責めているんじゃないんだ」

 あたふたとするカストロさんはなかなか可愛いですね。
 何だか年下の男の子の様で思わず飛び掛かってしまいそうです。

「ボクの発でその怪我を治させてくれませんか?」

 ボクは胸の前で手を組みつつ眼を潤ませて上目遣いに訊ねました。
 カストロさんが面白い様に真っ赤になって固まっています。

「ダメですか?」
「おっ、お願いするよ……だっ、だからもう少し離れてくれないかな?」
実験治療するのに離れては意味がないですよ? では指を出してください」

 カストロさんの真っ赤な顔を誤魔化す様に差し出された指に【影鬼の小刀(レ・ラナンデス)】で小さな傷を付けて、口に含んで血を舐め獲りました。

 なかなか美味しいですね。
 このまま吸い付いていたいくらいです。

「なっ!? ナニをするんだい!?」

 ボクは答える代わりにカストロさんの影に周を行いました。

 すると陰陽の仮面を手にしたカストロさんの分身が影から浮かび上がりました。
 そして、徐に陽の仮面を身に着けました。

 分身がカストロさんに触れると傷が瞬く間に分身へと移って、カストロさんの傷が大半癒えました。

「こっ、これは!?」

 カストロさんが驚いて傷を確かめています。

「【影法師(ペルソナ)】(陽)の能力です。ですが、まだ未完成なので完全には癒えていませんね」

 見たところ全治一ヶ月ぐらいまで回復した様です。
 もう少し制約と誓約を煮詰めないといけませんね。

「いや、十分だよ。凄いな、念とはこんな事も出来るのか」

 カストロさんは感嘆の表情を浮かべながら【影法師(ペルソナ)】とボクを交互に見詰めています。

「はい……ですが、あまりお勧めしませんよ?」

 一応釘を刺しておきましょう。
 このままだと原作通りに【分身(ダブル)】を実行してしまいそうです。
 それでは折角の才能を食い潰してしまいます。

 そうするとボク好みの強い男の人にはほど遠くなってしまいます。
 それだけは阻止しなくてはいけません。

「何故駄目なんだい?」
「カストロさんはおそらく強化系に分類される念能力者だと思います。分身を形作るのは主に具現化系の能力で、操るのは操作系の能力です。どちらも強化系とは相性が悪いんですよ」

「強化系? それに具現化系と操作系? なんだい、それは?」

 どうやら興味が移った様ですね。
 良い感じです。

「発の分類ですよ。詳しくはカストロさんの傷が癒えてからに教えますよ。それに兄弟子を紹介する約束だったでしょう?」
「そうだったね。何時お会い出来るのかな?」

「カストロさんの都合が良ければ明日にでも……」
「あっ、明日かい? 特に不都合はないが急な話だね」

 カストロさんが若干顔を顰めながら聞き返してきました。

「元々明日に会う予定だったんですよ。何でも弟子を取ることにしたので歳の近いボクと会わせてみたいとのことです」

 この頃にウイングさんの弟子になるのは確かズシくんでしたよね?
 会うのがとても楽しみですよ。

「私もお邪魔して良いのかい?」
「構いませんよ、兄弟子に許可は得ていますから遠慮なさらずにご一緒しましょう」

 ボクは満面の笑みを浮かべながらカストロさんの手を握りました。

「……おっ、お言葉に甘えるとするよ」

 ちょろいですね。
 このままカストロさんをウイングさんに押しつけて、代わりにボクがズシくんの修業を手取り足取りナニを取りで行いましょう。
 そしてカストロさんがボク好みの強い男になったら――――

 あはははは~我ながらあくどいですね。
 思わず惚れ惚れとしてしまいますよ。





 カストロさんの部屋から出てボクの部屋に向かう途中で例の看護師のお姉さんに出会いました。

今日こんにちは、先程カストロさんの部屋でお会いしましたね」

 彼女はボクが声を掛けると美しい黒髪を翻しながら振り向いてくれました。

「ええそうどすな。うちの名前は『かおり=観月』といいます。よろしゅう『黒翳の舞姫』のアンナはん」

 ボクが手を差し出すとしっかりと……いえ、かなりの力で握り返してくれました。
 成る程、ボクがカストロさんとの逢い引きを邪魔したのでかなりご立腹の様ですね。

 好都合ですね。このまま『お・は・な・し♡』と行きましょうか。

「かおりさんとお呼びしてもいいですか?」
「よろしおますえ、うちもアンナちゃんと呼ばさせてもらいましょ」

「カストロさんのことで相談があるんですが……ボクの部屋まで来てもらえますか?」

 ボクが周りを気にしながら耳元で小声で囁く様に訊ねると、かおりさんは少し逡巡してから小さく頷きました。

「では行きましょうか」

 無意識に唇を舐めながらかおりさんを案内する様に歩きだすと、ボクの下の口から愛液ヨダレが太股を伝って滴り落ちていきました。

 覚悟してくださいね、かおりさん。
 ボクの虜にして上げますよ。
 今夜は百合なお遊戯を楽しみましょうね♡





 ○ ● ○





【影法師(ペルソナ)】 ※未完成 

 能力系統 特質(具現化+操作+放出)

 効果
 ・対象(自身or他人)の分身を生み出す。???
 ・分身の能力は陰陽の仮面を着け変える事によって変化する。一度の具現化で身に付けられる仮面は一種類のみ
  陰=対象と同等の戦闘能力を有している
  陽=対象が一日(24時間)以内に受けた傷や毒等を分身に移して治療する。消失した部位は復元出来ない
 ・?????
 
 制約と誓約
 A. 術者以外の分身を具現化するためには以下の条件をクリアする必要がある
 ① 対象の血液を舐める
 ② 対象の影に周??を行う
 ③ ?????
 ④ ?????

 B. 能力を使用するための条件は以下の通り
 ① 分身が対象に触れていないと傷の受け渡しは不可能
 ② ?????
 ③ ?????


 第04話の時点では制約と誓約が不足気味で100%傷の受け渡しは出来ません。
 話が進んだら陰の仮面の能力と他の制約と誓約も発表します。







[10229] 第05話
Name: Mr.凸凹◆5dba541c ID:39705aec
Date: 2013/01/07 16:22





 朝月夜が覗く乙女の園。

 今や百合が咲き誇る秘密の花園と化した部屋。

 その主の少女は何故か妙に疲れ切っていた。





「はにゃ~~太陽が……きっ、黄色い……」

 綺麗な朝焼けがやけに眼に染みますよ。

 部屋中に散らばった玩具や皺くちゃのシーツが先程までの乱戦を物語っています。

 まさか、ここまで梃摺るは思いもしませんでした。
 いやはや、かおりさんを嘗めていましたよ。
 色事にはあまり慣れていない様でしたが、一度火がついたら凄かったです。

 それはそうと――――

「はぅ~~げっ、限界です。おっ、お休みな……さ……い……Zzz~~」

 ボクは最後の気力で目覚ましをセットしてベッドへと沈みました。





 ◇ ◆ ◇





 ボクは目覚ましが鳴る音で眼が覚めました。
 寝ぼけ眼で俯せのまま手探りで目覚ましを探していると、不意に目覚ましの音が止まりました。

 ボクの掌には目覚ましの代わりにナニやら柔らかいモノが収まっています。

 ふにゃふにゃと形を変えるソレを確認する様に揉みしだいていると、手を抓られました。

「アンナちゃん、おいたはいけまへんえ♡」

 顔を上げると割烹着姿のかおりさんが頬を朱に染めつつ潤んだ瞳でボクを見詰めていました。
 どうやら彼女には誘い受けの素質もあった様です。

「……お早うございます」
「お早うさんどす。お風呂沸いてますえ」
「有り難うございます。汗を流してきますね」

 ボクは逃げる様に浴室に駆け込みました。

 ヤバかったです。
 さすがに日が昇っている間からかおりさんのお相手はキツいですよ。

 まあ、用事がなければ望むところですがね。
 残念ですが今日はとても大切な用事がありますからね。

 念のため何時もより念入りに躰を洗いましよう。
 ズシくんに万が一にでも嫌われる訳にはいきませんからね。





 お風呂から上がると用意されていた浴衣に袖を通しました。
 さすがに着付けまでは出来ませんでしたので、かおりさんに手伝ってもらいました。

 勿論下着を穿くなんて無粋な真似はしません!! って言いたいところですが、真相を明かすとかおりさんがボクに下着を穿かないのが正しい和装だと力説しながら教えてくれたからです。
 あまりの勢いに肌襦袢のことを訊ねることは出来ませんでしたよ。

「似合ってますえ。アンナちゃんにソレと洗い替え様にもう一つプレゼントしますわ」
「……あっ、有り難うございます。大切にしますね」

 かおりさんの獲物を狙う様な狩人の眼は見なかったことにしました。
 ボクは起こしてはいけないモノを呼び起こしてしまったのでしょうか?

 一晩でここまで変わるなんて想像もしませんでしたよ。
 表面上は大和撫子のままですが、内面は……見ぬが花というレベルまで性長してしまいました。

 まあ、ボクもかおりさんのことをとやかく言う資格は有りませんがね。





 部屋の隅には何時の間に運び込んだのか二畳の畳と卓袱台が備え付けられていました。
 更に“これぞ和食!!”という遅めの朝食ブランチが用意されていました。

 お箸の使い方はあやふやな前世の知識で辛うじて覚えていますが、この躰ボクになってからは実際に使った事は無いのでなかなか上手くいきません。
 見かねたかおりさんがボクに食べさせてくれることになりました。

「はい、あ~んどす♡」
「……あっ、あ~ん」

 料理は美味しいですし、食べさせてくれるのも嬉しいですよ?
 でも口移しで味噌汁を飲まそうとするのは勘弁してくださいよ!?
 我慢出来なくなるじゃないですか!!





 何とか誘惑食事が終わりました。

 危うく陥落するところでしたけどね。

 ボクは着崩れた浴衣の裾を押さえながら薄氷の勝利を噛み締めました。

 取り合えず愛えk(ry汗を流さないと少し臭いますね。

「もう一度お風呂に入ってきますね」
「お背中を流しましょうか?」

 かおりさんがさり気なく振りをして訊ねてきましたがここは丁重にお断りしましょう。

「遠慮してきます……それより浴衣がこのままだと染みになりますので洗っておいてください」
「はいな、お任せあれですわ」

 かおりさんは少し残念そうに浴衣を受け取って手洗いの準備を始めました。

 今の内にとっとと湯浴みを済ませましょう。
 あまり時間を掛けると浴室に乱入されそうですからね。
 残念ですが約束の時間までそれ程残っていませんしね。





「そう言えば、昨日お願いしたことの返事を聞いていませんでしたね」

 お風呂上がりに用意されていた麦茶を飲みながら『カストロさん性長計画』の事を訊ねました。

「お願い?……ああ、カストロはんの事どすな。基本的にはうちの思う様にしてよろしおますんやろ?」
「構いませんよ、ボクはカストロさんがもっと強くなったら少し借りたいだけですからね。それまでは協力しますよ」

「アンナちゃんも好き者ワルどすな」
「いえいえ、お代官様かおりさんには適いませんよ」

 お互いに乙女がする様な表情から懸け離れた笑顔で、強く握手を交わしました。

「「契約成立ですね(どすな)!! あはははは!!」」

 お互いの高笑いが部屋に響き渡りました。

 彼女に性長を任したカストロさんはどんな漢の人になるんでしょうか?
 いやはや、楽しみの様な怖い様な不思議な気分です。





 ◇ ◆ ◇





 約束の時間の10分前に闘技場のラウンジに向かうと既にウイングさんとズシくんが待っていました。
 ボクが近づいていくとウイングさんが声を掛ける前に振り返ってきました。

「やあアンナくん、久し振りですね」
「お久し振りです、ウイングさん」

 相変わらずウイングさんには喰指があまり動かないんですよね。
 なかなか強くて良い男なんですが、シャツがはみ出たり寝癖の付いたままの所がボクの好みからずれているのが原因と思いますが……でも、それだけじゃない気もします。
 何故か無意識に避けてしまうんですよね。
 どうしてでしょうか?


「それにしてもまた一段と綺麗になりましたね」
「有り難うございます、お世辞でも嬉しいですよ。それでその子が……」

 ウイングさんのおべっかを半ば無視する様にして、ボクは隣のズシくんに微笑みかけました。
 ズシくんはボクと眼が合うと顔を真っ赤に染めながら俯いてしまいました。

「ええ、弟子のズシです……ズシ、挨拶なさい」

「おっ、押忍!! はっ、始めまして……じっ、自分はズシといいます!!」

 ズシくんが子犬の様な眼差しで精一杯元気な挨拶をしてくれました。
 
「初めまして、ズシくん。ボクはアンナ……アンナ=レイ・シュナイザーです。よろしくね」

 はぅ~可愛いですよ、お持ち帰りしたいですよ♡
 でも我慢です!!
 今手を出すと嫌われてしまう可能性が極めて高いです。

 犯り捨てるのはあまりにも軽率ですしね。
 時間はたっぷりと有りますから、じっくりと虜にしてボク好みの強い男に育てましょう。

 取り合えず手付け金として、後で“お姉ちゃん”と呼んでもらうとしましょうかね。

 などと、脳裏で考えながらズシくんの頭を撫でています。
 もちろん表情に出す様な間抜けなことはしていません。

 ウイングさんは微笑ましいモノを見る様な眼差しでこちらを眺めています。




  
「そう言えば、私に会わせたい人物がいるとのことでしたが……」

 暫くズシくんの撫で心地を堪能していると、ウイングさんが思い出した様に訊ねてきました。

「はい、カストロさん……彼の部屋までご案内します」

 ボクはズシくんと手を繋ぎながらゆっくりと歩き出しました。
 ズシくんは手を引かれるままに、顔を真っ赤に染めて付いて来ています。





 ☆ ★ ☆





 ~カストロside~





 私が部屋で点による精神統一を行っているとアンナくんの気配オーラが扉の向こうから感じられた。

「鍵は開いているよ。どうぞ、アンナくん」
「お邪魔します、カストロさん」

 扉越しに声を掛けると彼女がノックをしてから入ってきた。
 
「そちらのお二方もどうぞお入り下さい」
「お邪魔します」
「押忍! お邪魔します」

 背の高い青年から感じられるオーラは私と比べて穏やかだが力強く感じられる。
 見た目は少しばかりだらしがないが、立ち振る舞いは達人の域に達している。

「カストロさん、こちらが兄弟子のウイングさんです。それでこの子が彼の弟子のズシくんです」
「初めまして、心源流拳法師範代のウイングと申します」
「押忍! 弟子のズシっす」

「カストロと申します。本来ならば私から訊ねて行くのが礼儀なのですが……」
「お気になさらずに、お怪我をしているのですから……事のあらましはアンナくんから聞いています」

 私が頭を下げて非礼を詫びると、ウイング殿がアンナくんの頭を小突きながら苦笑された。

「実際に貴方に出会ってアンナくんの選択が正しかった事が分かりました。しかし、アンナくん……」
「申し訳ございませんでした」
 
 アンナくんが私とウイング殿に深々と頭を下げている。

 理由を尋ねたところ、精孔をこじ開けることは大変危険を伴うそうだ。
 アンナくんの力量が足りなかったり少しでも悪意が有れば、私は死んでいたかもしれないとの事だった。

 だが私は生きて念を修得している。
 彼女はやはり優秀な念能力者なのだろう。
 
 彼女に出会えたことを神に感謝しよう。





「アンナくん。カストロさんとお話がしたいので、その間ズシのことをお願いします」
「分かりました。それでは失礼しますね、カストロさん……行こうか、ズシくん」
「はっ、はいっす……」

 アンナくんはズシくんの手を引いて、まるで姉弟の様に部屋から出ていった。
 普段は妖艶な彼女にもやはり母性というモノが感じられる一幕だった。





 ☆ ★ ☆





 他に行くところも無いのでズシくんをボクの部屋に案内してしっかりと鍵を掛けておきました。

 しかし、こんなに早く二人きりになれるチャンスが訪れるなんて思っても見ませんでしたよ。
 邪魔が入らない内にズシくんに手付け金を払ってもらいましょう。

「ねえ、ズシくん。ボクのことをお姉ちゃんって呼んでみてくれる?」
「……えっ!? どっ、どうしてっすか?」

 さすがに行き成りすぎたかな?

 ズシくんが困惑の表情でボクを見上げています。

 はぅ~困った顔のズシくんも可愛いですね♡

「えっとね……ボクね、一人っ子なの。でも、やっぱり姉弟って憧れているんだよ。ズシくんみたいな男の子が弟なら嬉しいなって……ごめんね、急にそんなこと言われても迷惑だよね?」

 ボクは苦笑しながらズシくんの頭を撫でて誤魔化す振りをしました。

 まあ、本当は年の離れた異母兄がいるんですが音沙汰がなくなって久しいので……それに年下おとうとじゃないのでノーカンですよね?
 ごめんね、グィンお兄ちゃん……でも、何年も逢っていなかった貴方が悪いんですよ♪





「そっ、その……おっ、お姉ちゃん……」

 暫く撫でられるままだったズシくんが、真っ赤な顔で俯いたまま囁く様な小声で呼んでくれました。

 気が付くとボクはズシくんを抱きしめて頬ずりをしていました。

「ちょ!? ……放してくださいっす、アンナさん!!」
「アンナさんじゃないもん、お姉ちゃんだもん♡」
「あっ……だっ、ダメっすよ!? ……あうぅ!?」

 全身を真っ赤にして暴れるズシくんを逃がすまいと、更に力を入れて抱きしめながら耳朶や頬や首筋に甘噛みする様に口付けをしていると何やら甘い栗の花の様な薫りが鼻孔を擽りました。

「ごっ、ごめんなさいっす……お漏らししちゃったみたいっす……」

 ズシくんは泣きながら俯いて謝ってきています。

 はぅ!? かっ、可愛すぎますよ♡
 それにこの牡の臭いを嗅いでいると、もう我慢が……って、お漏らし?
 これは、ひょっとすると――――

「ズシくん、もしかして精通はじめてなの? ……大丈夫だよ、コレはお漏らしじゃないんだよ」

 泣きじゃくるズシくんを宥めながら大人になった証拠だと教えました。





 ズシくんに洗濯している間にシャワーを浴びて来る様に勧めました。
 幸いにも拳法着にはそれ程付着しておらず、軽く拭き取るだけで済みました。

 シャワーから上がったズシくんはノーパンで着心地が悪いようですが、ブリーフは洗濯中だと言って我慢してもらいました。

 本当はズシくんの一番搾りが染み着いたブリーフは洗濯しておらず、後で心ゆくまで堪能するつもりですがね♡ 





 程無くしてウイングさんが向かえに来ました。
 ズシくんが少し歩きにくそうにしているのを帰り際にウイングさんが訝しがりましたが、概ね問題なく初顔合わせは済みました。

 カストロさんの怪我が治り次第、本格的にウイングさんが指導するとのことで話は纏まったようです。
 そしてその間はズシくんの指導はボクが担当することになりました。

 まあ、言葉巧みに誘導しましたけどね。
 
 さてと、それではオカズを取り出して楽しみましょうか♡







[10229] 第06話
Name: Mr.凸凹◆5dba541c ID:39705aec
Date: 2012/12/16 17:28





 ズシくんとの出会いから約一ヶ月が経ちました。

 カストロさんの傷も完全に癒えて、今日から修業を始める事になりました。
 彼は水見式の後、本格的に修練を始める様です。

 ボクはその間ズシくんを指導することになっているのですが、既に纏と練に拙いですが凝まで修得していました。
 ズシくんの水見式は絶を修得したら行うことになっています。

 それにしても原作では纏だけでも三ヶ月掛かっていましたよね?

 どうやらボクとのスキンシップが影響して色々と成長したみたいですね。

 まだ下の毛は生えていない様ですけどね♡





 凝は辛うじて使えるレベルなので、コレを実戦レベルまで鍛え上げることにしました。
 絶は回復も兼ねて締めに行っていきましょう。

「いい、ズシくん? これからボクが指を一本立てたら透かさずに凝をしてね。そして何が見えたか大声で言うこと!!」
「押忍!!」

「因みに遅かったり間違えたら罰ゲームが待ってるからね♪」
「ばっ、罰ゲームっすか!?」

 ボクが人差し指を立てながらにこやかに宣言すると、ズシくんは眼を真ん丸にして驚いています。

 そして気付いたズシくんが慌てた様子で凝を行いました。

「すっ、数字の6っす!!」
「正解! でも遅いよ! ……と言う訳で罰ゲームだよ。スクワットと腕立て、それに腹筋と背筋を300回ずつね」
「押忍!!」

 ズシくんは元気良く返事をしてスクワットから始めていきました。

 ズシくんに飛び掛からない様にするのはなかなかに大変そうです。
 徒でさえボク好みの可愛いショタっ子なのに、声変わり前の高い声で“お姉ちゃん”って呼んでくれるんですよ!!
 これでナニも感じないのは不感症可笑しいでしょ?

 でも犯るからには逃げられない様に最初はズシくんから手を出してもらわないといけません。
 そうして躰だけでなく心も縛って目一杯楽しみましょう。

 はぅ~それにしても思春期独特の甘酸っぱい汗の臭いが堪りませんね。
 コレだけで三回はイっちゃいそうですよ♡





 そんなこんなで一日目の修練は何とか無事に終了しました。
 何度ズシくんを押し倒そうかと考えたか分かりませんがね。

「お疲れさま、ズシくん。はい、ジュースだよ」
「押忍、いただきます」

 ズシくんは強精剤入りの特製ドリンクを美味しそうに飲んでいます。
 これから毎日少しずつ薬の分量を増やしていってズシくんの性教育に備えましょう。

 やっぱりモノは逞しい方がお互いに良いですからね♡





 ◇ ◆ ◇





 夜半過ぎになるとかおりさんが一升瓶を携えて訪ねてきました。

 この一ヶ月の間、かおりさんはカストロさんのところに通い妻看病をしていたのですが未だに何の進展も無いみたいです。
 このところ週に3~4回程愚痴りに来ています。

「……うちはそないに魅力無いんやろうか?」
「そんな事は絶対に無いですよ。かおりさんはお嫁さんにしたい位の器量好しさんですよ」

 お猪口片手に愁いの表情を浮かべながら訊ねてくるかおりさんは、思わず押し倒したい程の色香が漂っています。
 実際に毎回犯し慰めていますので間違い有りません!!

「……そうやな、此くらいで諦めとったらあかんな!!」
「その意気ですよ、かおりさん!! それと頼まれていた媚薬が手に入りましたよ」

 材料が特殊な物ばかりで入手困難な上に少しばかり値が張りましたが効き目は折り紙付きです。
 何しろあのゾルディック家御用達の薬問屋謹製の品です。

 仲介してくれたヒソカさんにはたっぷりのお礼をしておきました。
 その為丸一日寝込むことになってしまいましたけどね。
 
 いやはや、さすがはヒソカさんです。
 堅さと大きさ、更に持久力も桁外れで壊されてしまうかもと本気で心配しましたよ♡

「大きに、アンナちゃん。これで既成事実を……あははは!!」

 かおりさんは大分酔いが廻ってきたみたいですね。
 なかなか悪女の顔が似合っています。

 そう言うボクもかなり酔いが廻っていて、既に裸外衣ポンチョですがね。

 さてと、そろそろ今夜も酒宴はお開きにして眼の前のかおりさんご馳走をいただきましょうか♡





 ☆ ★ ☆





 ~カストロside~





 念を修得すると自分が如何に井の中の蛙だったのか良く理解出来た。

 確かに200階クラスの闘士のほとんどは念を覚えたばかりの私でも楽勝とはいかないが勝てる者達ばかりだ。
 しかし、見た目は妖え(ry普通の少女のアンナくんは念の精度だけでなく、身体能力でさえ私の遥かに上の実力者であった。
 そのことが実際に手合わせして骨身に沁みた。

 聞いたところによると彼女は念どころか格闘技の技能でさえ、習い始めてから僅か一年半程であれほどの実力を身に着けたそうだ。
 天性の才能だけでなく並外れた努力も相俟ってあれほどの高みまで昇っていったのだろう。

 私は何時の間にかアンナくんのことを尊敬出来る武道家としてだけではなく、異性として惹かれていた自分に気づいた。

 それなのに私は――――





「カストロはん……あん♡ ダメどす……」

 隣りに寝ているかおりさんが寝返りを打ち、頬を染めながら寝言を呟いている。

 私は思わず昨夜の情事を思い出して、顔どころか躰全体が火照るのを感じた。

 昨夜の私は何故だか何時も以上に……そっ、その……高ぶっていた。
 そして酔って上気したかおりさんの悩ましい表情を見ていると我慢出来ずに本能のままに襲いかかってしまった。

 拙い、非常に拙い!!
 かおりさんが私に好意を寄せていることは薄々感じていたがはぐらかしてきていた。
 それなのにこれでは好意に付け込んで事を致した最低の男そのものではないか。

 この事をアンナくんに知られてしまったら私は――――





「ふわぁ~~お早うさんどす、カストロはん」

 私が自分の愚かさに頭を抱えているとかおりさんが眼を覚ました。
 そして寝ぼけ眼だった彼女が私の顔を見詰めながら段々と頬を朱に染めていった。

 最早何と釈明してもかおりさんを抱いたことは揺るぎない事実だ。
 年貢の納め時という事なんだろう。
  
「おっ、お早うございます。そっ、その……」 

 かおりさんは顔を更に朱に染めながら私の言葉の続きを期待する様な眼差しで見詰めてきている。

「……わっ、私と結婚して下さい!!」
「喜んでお受けしますわ♡」
 
 かおりさんは感極まった様子で私に抱き付いてきた。
 私は直接感じる彼女の体温と女性特有の甘い薫りに固まってしまった。

 だからかおりさんが“計画通り”とほくそ笑んでいたことに気が付かなかった。





 ☆ ★ ☆





 カストロさんとかおりさんが婚約してから一週間が経ちました。

 報告に来たカストロさんは何故だかボクの一挙一動を確かめる様に此方を窺っていました。
 ボクが“おめでとうございます”と讃辞を述べると安心した様な残念の様な複雑な表情をしてしまいました。

 早くもマリッジブルーという事なんですかね?

 後でかおりさんから事の顛末を聞いた時にはカストロさんに少しだけ同情してしまいました。
 協力しておいてなんですが、ここまで上手くいくとは思いも寄りませんでしたよ。

 話を聞くと媚薬の影響でカストロさんは文字通り獣の様にかおりさんを蹂躙していたみたいですね。
 其の癖カストロさんの記憶にはしっかりと残っていたみたいです。

 かおりさんが嬉しそうに惚気るので途中からは砂糖を吐きながら聞き流していました。

 それにしてもこのままだとボクがカストロさんを借りるのは、少なくとも赤ちゃんが出来るまではお預けですよね。

 まあ、守るべき家族が出来ればカストロさんも必死に強くなろうとするでしょうから好都合ですかね?

 お二人のお子さんなら男女どちらでも可愛いでしょうからとても楽しみです。 





 ◇ ◆ ◇





「それでは今日から発の修業に入るね。何か質問はある?」
「えっと……お姉ちゃんのその格好は何っすか?」

 ズシくんはボクが部屋着として着ている浴衣姿を、頬を染めながらチラチラと窺う様に見ながら訊ねてきました。

「これはかおりさんに貰った浴衣っていうジャポンの衣装だよ。いつもの服は洗濯中なんだよ……似合ってる?」
「押忍、とっても似合っているっす!!」

 ズシくんは首が取れるかと思うくらい元気に答えてくれました。

 はぅ~やっぱり可愛いですね♡

 本当は洗濯していても換えがあるんですが、今日こそズシくんの筆下ろし性教育をするつもりなので浴衣を着ています。
 もちろん下着は着けていません。
 何時もの服装はズシくんが見慣れてしまって照れにくくなりましたからね。

 折角ウイングさんが所用で出かけていて明日の夕方までズシくんと過ごせるんですから、このチャンスを逃す気はありません。

 仕込みも上々ですし、何よりこれ以上はボクが待てません!!

 まずは真面目に水見式を行ってからゆっくりと楽しみましょう。





 ズシくんに発の六性図を示して説明をして、まずはボクが水見式を実演することにしました。

「グラスに手を翳して練を行い、その変化で資質を見極めるんだよ」

 ボクが練を行うと葉の影が広がりグラス全体を覆って真っ暗にしてしまいました。

「この変化は何っすか? さっきの説明には無かったっすよね?」
「特質系は更に個々の資質によって様々な変化が起きるんだよ。次はズシくんの系統を見てみようか」
「押忍!!」

 ズシくんが練を行うと原作通りに葉が動きました。

「ズシくんは操作系みたいだね。この変化が顕著になるまでは今までの修練と平行して水見式をしていくからね。それが済んだら一つズシくんの系統に合った技を教えてあげるね」
「押忍!! 頑張ります!!」

 ズシくんは嬉しそうに躰全体で頷きながら返事をしてくれました。

 教える技はどちらかというと応用技より発に近いですが、彼なら使いこなせるでしょう。




 
 ◇ ◆ ◇





 ズシくんは修練が終わると何時も通りに帰ろうとしたので、言葉巧みに今夜は泊まっていく様に勧めました。

 始めは恥ずかしがってなかなか頷いてくれませんでしたが、必殺の泣き落としでお願いすると仕方n(ry快く頷いてくれました。

 夕食には牡蠣のニンニク炒めや牡蠣の卵スープと白子の酢の物、更に食後のデザートにはイチジクなどを用意しました。
 勿論滋養強壮に良い特製のモノばかりですよ。

 ズシくんは美味しそうに平らげてくれました。





 食事も済んで寛いでいると、どうやらお風呂が沸いたみたいですね。

 湯沸かし器が軽快なメロディーで知らせてくれました。

「ズシくん、お風呂が沸いたから入ってきてね♪」 
「おっ、押忍……お先にいただきます」

 手持無沙汰にテレビを見ていたズシくんはそそくさと脱衣場へと逃げる様に入っていきました。

 ボクはその後ろ姿を食い入る様に見詰めています。

 暫くすると浴室の扉が開く音がしました。

 さてと、それでは裸の付き合いと洒落込みましょうか♡







[10229] 第07話
Name: Mr.凸凹◆5dba541c ID:39705aec
Date: 2012/12/16 17:29





 まるで果てない様な水面が広がる大きな湖。

 空にはまるでこぼれ落ちそうなぐらいに沢山の星が瞬いています。

 ふと足下を見下ろすと、水鏡にはボクの代わりに泣きじゃくる現世わたしと彼女を守る様に抱き竦めている前世オレが映し出されていました。

 その二人に大きな漆黒の蛇が襲いかかろうとしています。

 正に大蛇が飛び掛かろうとした瞬間、ボクの意識は夢から現へと浮上しました。





 眼が覚めると寝汗でぐっしょりとワイシャツが濡れていました。

「はぅ~気持ち悪い……」

 ボクは汗で重くなったパジャマ代わりに着ている大きめの男性用のワイシャツを脱ぎ捨てて浴室へと向かいました。

 そして蛇口を捻って徐に頭から水を被ります。

 アレはボクの心象世界……深層意識の底に刻まれた記憶イメージが顕在化したモノでしょう。

 痛みは和らいでいますが、未だ癒えることのない心に刻まれたモノ。

 水の冷たさで汗と共に心の澱まで洗い流す様にシャワーを長めに浴びました。





 ◇ ◆ ◇





 ズシくんと裸のお付き合いを実行してから義姉弟の仲がある意味より深まりました。

 強精剤の影響もあったのでしょうが、ズシくんのモノは歳の割になかなかのモノでしたよ♡

 あれからズシくんは正に鰻登りな勢いで成長しています。

 既に凝と絶を完璧にを修得しましたし、水見式も葉が高速で揺れ動くまでになりました。

 その上、《瞬動術》まで修得してしまいました。

 やっぱり焦らしプレイ飴と鞭は有効な戦術ですね。

 必死に修練をするズシくんは漢の顔をしていて格好いいですよ。

 時々だらしなく表情が崩れることもありますけどね。





「約束通りにズシくんの系統に合った技を教えてあげるね」
「押忍! お願いします!!」
「まずはコレだよ」
「……水風船っすか?」

 ズシくんが不思議そうに見詰める前で中の水を操作して破裂させました。

「コレが出来たら口でして上げるよ♡」

 ズシくんに新しい水風船を投げ渡す際に投げキッスをしながら微笑みかけました。

 ズシくんは一瞬耄けた表情をしてから真剣な表情をして水風船を掴みました。

 始めは四苦八苦していたズシくんでしたが暫くすると水が回転し始めました。

 しかし水風船は横に広がるばかりで一向に割れる様子は有りません。

 ボクはズシくんが頑張っている横で自身の【影法師(ペルソナ)】と流々舞を行います。

 ボクと【影法師(ペルソナ)】(陰)の戦闘能力は全く同等なので、他人と行うより効率的に修練が出来ます。




 
「今日の修練はそろそろ終わりにしようか。ズシくん、何時も通り絶をしながら点をしてね」
「押忍!!」

 さすがに一日ではズシくんは水風船を割ることが出来ませんでした。

 一から全て教えても身に付かないので、ズシくんには自分で気が付いてもらう必要が有ります。

 その方が思い入れも強く、自ずと念の威力も向上しますからね。





 ボクは修練の妨げにならない様に携帯電話を切っていたので、自身のホームコードを確認するとビスケから伝言が入っていました。

 直ぐ様ビスケの番号をプッシュして耳に携帯電話を当てながら、“まるで恋人に電話する乙女の様だな”と他人事様に思いながらコール音を聞いています。

 数コール音の後、電話が繋がり目の前にビスケが居る様な錯覚を覚えました。

「もしもし、ビスケ? 久し振りだね」
『そうだね、誰かさんは滅多に電話してこないからね。前に連絡が有ったのは養育費が振り込まれた時だったね』
「便りがないのは元気な証拠って言うじゃない」

 ボクは思わず顔がにやけそうになるのを押さえながら、ちゃかした様に受け答えをしました。

 本当なら毎日でもビスケの声を聞きたいところですが、敢えてメールも必要最小限のやり取りで済ましています。

 何故ならその方がビスケフラグを回収しやすいと考えたからです。

 我ながら思考がアキバ系だとは思いますけど、折角『HUNTER×HUNTER』の世界に居るんですから楽しまないとね。

『まあ、元気なら良いけどね……ところで来週の予定は空いているかい?』
「来週の予定? ……試合も暫く無いし大丈夫だよ」
『詳しいことは会ってから教えるけど、来週はあたしの仕事ハントを手伝って欲しいんだわさ』
「了解、待ち合わせはどこで?」
『月曜日の10時にあの場所・・・・でね。遅れたら……お仕置きだわさ』

 ビスケは最後に意味ありげな声色で釘を差しながら通話を切りました。

 絶対に遅刻だけはしない様にしましょう。
 考えたくはありませんが、もしも遅刻すれば世にも恐ろしい出来事が待っているんですよ。

 はぅ~考えただけで寒気がしそうです。

「お姉ちゃん? 顔がかなり青いっすけど大丈夫っすか?」

 ズシくんが心配そうにボクの顔色を覗き込む様にしながら訊ねてきました。

「だっ、大丈夫だよ……それより来週は仕事ハントが入ったから修練は自己鍛錬を欠かさずにしてね」
「押忍!!」

 ズシくんの元気な返事に癒されながら今日の修練を終えました。

 ズシくんの為にも生きて帰って来ましょう!!

 まあ遅刻さえしなければ問題ないんですけどね。





 ◇ ◆ ◇





 ボクは約束の時間の30分前に待ち合わせ場所に辿り着きました。
 此処はボクとビスケが出会った場所です。

 その時のボクは人格が安定していなかったので良く覚えていないのですが、ビスケにお持ち帰りされたのは間違いありません。
 一緒に暮らしだしてからビスケは時に母や姉の様にボクに接してくれました。

 まあ、念の修練の時は一欠片の容赦もなかったですけどね。
 振り返るとよく死ななかったものだと思います。

 今となってはそのことも良い思い出です。





 ビスケは10時丁度に遠巻きに此方を窺う人垣を掻き分けながらやって来ました。

「お待たせ、ちゃんと遅れずに来てたみたいだね……ところで後ろの山はなんだい?」

 ビスケは折り重なる様に泡を吹きながら鎮座している男達ゴミを指差しながら訊ねてきました。

「……ただのナンパ野郎身の程知らず達だよ」

 折角人が思い出に浸っていたのに下心丸出しで言い寄って来たので、ちょっとばかり手加減抜きで股間を蹴り上げておきました。
 ビスケとの出会いの場所じゃなければ血祭りに上げているところです。

 中には手錠と拳銃を持った制服姿の人・・・・・・・・・・・・・・が混じっている様な気がしますが気のせいでしょう。
 若しくは眼の錯覚ということにしておきましょう。そう眼の錯覚です。
 大事なことなので二回言いましたが……ナニか問題でもありますか?

「そっ、そう……それじゃ早速行こうか」

 ビスケは引きつった笑みを浮かべながら、ここから離れる様に促してきました。

 ボクが歩き出すと人垣がまるで蜘蛛の子を散らす様に崩れていきました。 





「ムーンライト・ルビー?」
「そう通称『朱い月』って呼ばれている希少宝石……ソレを奪い返すんだわさ」

 ビスケに今回の仕事ハントを訊ねると、案の定宝石関連でした。

 宝石のことを嬉しそうに語るビスケの蕩けた表情を見ているとある意味ボクと同類だと理解出来ますね。

 やっぱり類は友を呼ぶんでしょうか? 
 
「盗んだのは犯罪組織『夢幻師団』……まあ、今回は下っ端の雑魚ばかりだけどね」

 ――――ボクの大切な家族を滅茶苦茶に壊した野盗達が所属する『夢幻師団』の一味が相手ですか。

 劇団のみんなが敵討ちを望んでないのは分かっています。

 彼等が望んでいるのはボクの幸せでしょう。

 それならばボクは復讐のためではなく、ボクの大切なモノを守るために闘いましょう!!
 それがボク自身の手で守れる範囲内で『わたし』と同じ悲しみを生み出さないことに繋がるでしょう。





 ☆ ★ ☆





 ~ビスケside~





「あれが奴等の塒の一つ……あそこにムーンちゃんが囚われているんだわさ♪」
「……で、どうするの?」

 あたしが囚われのお姫様朱い月を助け出す王子様の様にちゃかして言うと、アンナは冷ややかな声で訊ねてきた。

「相手は雑魚とばかりとはいえ念能力者……叩きのめしただけじゃ意味がないわね」

 あたしはを意味有りげにアンナの外衣をちらりと横目で見てから、アンナの表情の変化を見逃さない様見詰めている。

「了解……気絶させて【影織りの外衣(ディープ・ストッカー)】に閉じこめておけばいいんだね」

 どうやら復讐心に囚われている訳じゃないみたいだね。

 先程見せた決意の表情は間違いなく未来まえを見ている者にしか出来ない顔だったわね。 





 今回の相手を調べていた時、『シュナイザー劇団』の惨劇のことを知り愕然とした。

 あたしは一年半ほど一緒に暮らしていてアンナの過去について何一つ知らないでいた。

 確かに拾った時はぼろぼろでくすんだ原石の様だった。

 一緒に過ごして心を通わせていき、そして念の修練を重ねていく内にどんどん光り輝いくアンナの成長に夢中になってそのことを失念していった。

 今回仕事ハントに同行させたのは、アンナを見定めて闇に堕ちる様ならば叩き出してでも救うつもりだった。
 だが、アンナの心は過去に囚われず未来まえを見ている。

 それならばあたしはこの娘の師匠家族として付かず離れず見守っていこう。





 ☆ ★ ☆





 ボクは闇に乗じて一人ずつ静かに【影鬼の小刀(レ・ラナンデス)】で念を封じながら締め墜していき、【影織りの外衣(ディープ・ストッカー)】に閉じこめていきました。

 ビスケはその間周りを警戒しながら少し後ろを付いてきています。

 粗方片付けて奥へと進んでいくと無造作に物が置かれた部屋に辿り着きました。

「ここは……」
「どうやらここが目的地みたいだね。アンナ、見張りよろしくだわさ」

 ビスケはボクの返事を待たずに喜々として物色を始めました。

 ボクはため息混じりに辺りを警戒しています。

 暫くすると廊下の奥から一人分の足音が近づいてきました。

 ボクはビスケに目配せしてから素早く相手の元へと向かいました。

 そして相手の影に【影鬼の小刀(レ・ラナンデス)】を投げ刺そうとした体勢のまま固まってしまいました。

「……パパ!?」

 そこにいたのは死んだはずのパパと瓜二つの人影モノでした。







[10229] 第08話
Name: Mr.凸凹◆5dba541c ID:39705aec
Date: 2012/12/16 17:30





 薄暗い廊下を僅かに照らすランプの明かり。

 その明かりに照れされて揺らめく影。

 そして照らし出された顔は見間違えることのない懐かしいモノでした。

「……パパ!?」
「やあアンナ、大きくなったね」

 しかし、感じられるオーラにどことなく嫌なモノを感じ、ボクは思わず身構えてしまいました。
 そう、丸であの夢の様に漆黒の大蛇に呑み込まれる様な錯覚を覚えたんです。

「……ほっ、本当にパパなの?」
「そうだよ、我が愛娘アンナ……」

 ニッコリと微笑むその表情はボク……いえ、『わたし』が大好きだったパパの笑顔そのものでした。

 その笑顔をに誘われる様にゆっくりとパパへと歩み寄って行くと、額が灼熱の焼き鏝を押しつけられた様に熱くなりました。
 そして、そのまま意識が遠くなっていきました。





 ◇ ◆ ◇





 そこはまるで果てない様な水面が広がる大きな湖でした。

 『わたし』は一糸纏わぬ姿で水面に佇んでいます。
 空を見上げると、そこにはまるでこぼれ落ちそうなぐらいに沢山の星々が瞬いていました。

 呆然と佇んでいると空に浮かぶ月から朱い月影が降り注いで漆黒の大蛇が現れました。
 大蛇が鎌首を擡げて近づいてくると空に瞬いていた星々が消え失せて、辺りは真っ暗になっていました。

汝、大罪を宿すモノよ。我にその身を捧げよ

 大蛇はゆっくりと『わたし』の足首から這い上がってきました。

 『わたし』は恐れをなして泣きじゃくることしか出来ませんでした。





 ☆ ★ ☆





 ~ビスケside~





 あたしが部屋を物色していると廊下の奥から一人分の足音が近づいてきた。

 アンナがあたしに目配せしてから素早く相手の元へと向っていた。

 何故か嫌な予感がしてアンナが向かっていった廊下に意識を向けていると、微かにアンナの驚いた声が聞こえてきた。

 あたしが急いで駆け付けると、男が手にしていた『朱い月』から放たれたオーラがアンナに吸い込まれて気を失う様に倒れていく姿が眼に映った。

 そして『朱い月』はくすんだ色になって砕け散ってしまった。

「アンナ!!」
「おや? 貴女は……」

 あたしは直ぐにでもアンナの側に駆け寄りたかったが、男から眼を逸らすことが出来なかった。

「あたしはその娘の師匠だよ」
「なるほど……貴女がアンナを育ててくれたビスケさんですか。わざわざ連れてきていただいて手間が省けましたよ。お礼申し上げますよ」

 男はにこやかに微笑みながら仰々しく会釈してきた。
 だが、あたしが踏み込める様な隙は見せていない。

 手間が省けた!?
 つまりあたしは填められたってこと!?

 『朱い月』の情報はアンナをここに連れてくる為に故意にあたしの耳に入れられた訳なんだね。
 アンナにもしものことがあったらあたしは自分自身を許せないかもね。

 あたしが自己嫌悪に陥っていると、アンナがまるで操り人形の様に立ち上がった。

 驚きつつもアンナに眼をやると額に朱色の逆十字架アンチ・クロスが浮かび上がっていた。

 その上、アンナから徐々に異様なオーラが発せられてきている。
 そしてそのオーラに呼応する様に徐々に逆十字架アンチ・クロスに絡まる様に漆黒の蛇が浮かび上がってきていた。

 虚ろな眼をしたアンナは血涙を流し始めた。

 あたしにはその姿が泣きじゃくっている子供の様に感じられた。

 あたしは何をびびっているんだ!!
 あたしはあの娘の師匠家族だろう!!

 あたしはアンナを助けるために駆け寄っていた。

 男は目の前を通るあたしを無視して懐から出した煙草に火を付けていた。
 まるであたしがすることを無駄だと言う様に煙草を吹かしながら眺めている。

「アンナ!! あんたはあたしの弟子家族だわさ!! ……だから負けたら承知しないよ!!」

 あたしはアンナに微笑みかけながら力強く抱きしめた。





 ☆ ★ ☆





 不意に耳が痛くなる程の静寂を破る様に一陣の暖かな風が水面を揺らしました。
 暖かな風はまるでママが抱きしめてくれている様に感じられました。

 ふと足元を見ると、水鏡に映っている大蛇の影は自分自身の影……いえ、罪に染まったモノの姿でした。

 この大蛇は根源な欲求が具現化したモノ。
 過去の記憶……未だ癒えることのないに刻まれた傷より生まれ出でしモノ。
 
 しかし、何も恐れることはありません。
 『ボク』はもう泣きじゃくるだけの『わたし』ではありません。

 『ボク』は己を見失わず、この大蛇大罪を受け入れてみせます。
 何故なら『色欲』も自分自身のの一部なんですからね。

 それにまだビスケやゴンくんとキルアくん……ついでにカストロさんとニャンニャンしていません!!
 そして未だ見ぬ強い男性や美少年と美女を味わう機会を逃したくありません!!

 そうです!! このままでは死んでも死にきれませんよぉお~~!!





 ◇ ◆ ◇





「このままでは死んでも死にきれませんよぉお~~!!」

 ボクは自分自身の叫び声に驚いて眼が覚めました。

 覚めて最初に眼に映ったのは、ため息を吐いているビスケの姿でした。

「ビスケ……?」
「この馬鹿弟子が!! ……心配掛けるんじゃないよ」

 ビスケはボクに怒鳴りつけて勢い良く振り返りました。

 ビスケの目元が潤んでいたのは気のせいじゃないですよね?

「おやおや……どうやら罪に呑まれずにすんだみたいですね。それにしても陰陽の蛇ですか」

 パパの姿をした人影モノが銜え煙草をしながらこちらを興味深そうに眺めています。
 その表情は先程と違って見たこともないモノでした。

「貴方、誰?」

 確かに声や仕草と癖などはパパに似て……いえ、パパそのものですが何か違和感を感じます。

「クフフフ……そういう君こそ誰ですか? あの時と違って魂魄オーラが斑模様の様に入り交じっているようですが……」
「ボクはアンナ……『アンナ=レイ・シュナイザー』だ!!」

 そう、ボクは間違いなくシュナイザー劇団の忘れ形見の『アンナ=レイ・シュナイザー』です。
 それ以外の何者でもありません。

 それにしても、あの時・・・ですか。
 なるほど、この人は――――

「まあ、良いでしょう……では、改めて自己紹介といきましょうか」

 煙草を吐き捨てた男が顔に手を当てると、声色だけでなく姿形まで変化しました。
 その額には藍色の逆十字架アンチ・クロスに絡まった漆黒の蛇が浮かび上がっていました。

「私の名はレヴィ=ヴァレンシュタイン……『夢幻師団』の幹部の一人、『嫉妬』を司る者です。そして……」

 レヴィが別の具現化した仮面を被ると、忘れもしない人物へと変化しました。

「君の家族の敵さ!!」

 レヴィはあの時の野盗のリーダー格の姿でこちらを挑発する様に高笑いしています。

 ビスケが一瞬心配そうにボクの表情を覗き見てからレヴィを睨み付けています。

「……お久し振りですね」
「おや? 以外と冷静だね……つまらないですね」

 レヴィは心底残念そうにため息を吐いています。

 冷静ですか……そうでもありませんよ。
 前もって予想出来たから感情を抑えることが出来ただけですけどね。
 それに、あの時の事を思い出して『憤怒』よりも『色欲』の方が強まりました。
 我ながら嫌になりますよ。

「まあ、感動の再会は済んだから一応最後のお仕事といきましょう……『色欲』を司る者よ、我ら『夢幻師団』の元に来なさい!!」
「答えはNoです!!」

 ボクは声と視線に強い意志オーラを漲らせて言い放ちました。

「……『強欲』に続き、『色欲』までも離叛ですか」

 レヴィはどこか『嫉妬』混じりの様子でボクを睨み付けてきています。

「それでどうします? ボク達と一戦を交え一曲踊りますか?」
「そうしたいところですが次の予定が差し迫っていますので、またの機会を楽しみに待つとします……それでは失礼しますよ」

 レヴィが壁に立て掛けていた鏡に触れるとその躰が徐々に鏡の中へと消えていきました。
 円で辺りを確かめてみましたが影も形も有りませんでした。
 恐らく鏡を使った転移を行ったのでしょう。





「アンナ……その、大丈夫かい?」
「有り難う、平気だよ。それよりもお目当ての物は壊れちゃったし、どうしようか?」

 ビスケの心配そうな表情を遮る様に、ボクは努めて平気を装って笑顔を見せました。

 ここでビスケに甘えるのは甘美な誘惑ですが我慢です。
 さすがに『色欲』を受け入れたばかりで自制が効きそうにありません。
 甘えてしまうと箍が外れて、ビスケを押し倒して欲望のままに壊れるまで蹂躙してしまいそうになります。

「他に目ぼしい物はないし……そうだね。少しは足しになるだろうし、捕らえた奴等をトリックタワーに打ち込んで賞金を貰うだわさ」
「勿論山分けだよね?」

 ボクがさり気なく訊ねるとビスケは聞こえない振りをして歩き出しました。

 まあ、良くて2:8ってところですかね。





 ◇ ◆ ◇





 結局あの後トリックタワーまでの道程は、最寄りの飛行場まで徒歩で半日、更に飛行船で丸一日掛かりました。

 飛行船で移動中『色欲』を食欲で誤魔化すために【影織りの外衣(ディープ・ストッカー)】に収納していた食料を食べまくりました。
 ビスケがボクのあまりの食べっぷりにドン引きしていましたよ。

 御陰で到着する頃には『色欲』は大分落ち着きましたが、代わりに本の少しふt(ry〈禁則事項です♪〉かもしれません。

 おのれこの恨み晴らさでおくべきか!!





「お久し振りすね、ビスケさん。そちらは……」
「ああ、弟子のアンナだよ……アンナ、彼が此処の所長のリッポーだよ」
「初めまして、リッポーさん。アンナ=レイ・シュナイザーです。これがボクのホームコードです。『夢幻師団』の情報が入ったらどんな些細な事でも連絡下さいね♡」
「ああ……了解した。必ず連絡しよう」

 リッポーさんが引きつった表情でボクの名刺を受け取ってくれました。

 どうやら先程の乙女の体zy(ry〈禁則事項です♪〉の所為で、リッポーさんに少しばかり殺気を向けてしまったようです。
 ボクもまだまだ未熟者ですね。

「ところで連絡を受けた犯罪者達は何処に?」

 ボクが落ち着くために深呼吸をしていると、リッポーさんが思い出した様に訊ねてきました。

 ビスケが目配せをしてきたので、ボクは頷いて【影織りの外衣(ディープ・ストッカー)】から2ダース程の野盗達を解放しました。

 リッポーさんは一瞬驚いた様に眼を見開きましたが、空かさず野盗達に枷を填めてしまいした。

 そう言えば二日弱程ですが生命活動に必要最低限とはいえ、彼等のオーラを肩代わりしていたのにまだまだ余裕がありますね。
 これはもしやボクの潜在オーラが急激に増加している?
 『色欲』を受け入れた影響ですかね?
 ですが大蛇大罪に振り回されない様にオーラを操るには更に精進しなければなりませんね。





 野盗達の引き渡しが滞りなく済み、リッポーさんにお茶をご馳走になりました。
 テーブルには色々なお菓子が用意されていますが、ボクは手を付けずにお茶だけいただいています。

「そういえば彼等は三流とはいえ念能力者ですが大丈夫なんですか?」

 ボクはふと疑問に思ったことを訊ねてみました。

「トリックタワーの地下部分の収容施設は囚人を強制的に絶に出来るので大丈夫さ」
「それがリッポーさんの発ですか?」
「さて……それは企業秘密だよ」

 簡単に教えてはくれませんか。
 まあ何処からか漏れてしまっては刑務所として機能しなくなる恐れがありますからね。







[10229] 第09話
Name: Mr.凸凹◆5dba541c ID:39705aec
Date: 2013/01/07 15:59





 ボクは今ヨークシンシティに来ています。
 原作のヨークシンシティ編は二年後ですが“そうだ……ヨークシンに行こう”と思い立ち、息抜きを兼ねた下見にやって来ました。

 何故息抜きが必要かというと『色欲』をこの身に受け入れた所為で一度火がつくと歯止めが利かない様なので、この所閨事がご無沙汰なんです。
 大蛇大罪に振り回されることなく増加したオーラを自在に制御することが出来れば問題なく楽しめる筈なので、鬼気迫る勢いで修練しているのですがご褒美が無いので欲求不満なんですよ。
 ヒソカさんが居れば充分相手をして貰えると思っていたのですが残念ながらお出掛け中で不在でしたので、例しにズシくんの【影法師(ペルソナ)】を具現化してラヴドール代わりにしてみたのですが、基本的に無感動なので味気なく自慰するより幾分か増しというレベルでした。





 値札競売市で掘り出し物がないか凝を使いながら散策していると、念が込められた一組の指輪ペア・リングがふと眼に入りました。

「おじさん、その指輪を見せてくれる?」
「これかい? どうぞ」

 手に取ってみると何の変哲もない純銀の指輪なのですが、何故か懐かしい感じがしました。

「どっ、どうしたんだい、お嬢ちゃん!?」
「あっ、あれ? どうして涙が……」

 ボクはいつの間にか手にした指輪を眺めなら静かに涙を流していました。

 零れ落ちた涙が指輪に触れると、込められていたオーラが丸でボクを慰める様に包んできました。

 このオーラには既視感デジャ・ビュを感じます。

「こっ、これは……まさか!?」

 指輪の内側に掘られた消えかけたイニシャルをなぞるとその理由が分かりました。

「パパ……ママ……」

 この一組の指輪ペア・リングはパパとママの結婚指輪でした。

 この指輪はあの事件の後で売り払わ処分された物がこの露店に流れ着いたのでしょう。

 ボクがこの指輪に出会えたことは運命なのでしょうか?

「おじさん……この結婚指輪ペア・リングを売ってくれない?」

 ボクは有り金をはたいて指輪を購入して指に填めようとしましたが両方ともサイズが合いませんでした。
 予想以上に高く売れたことに気を良くした露店のおじさんが見兼ねて、十八金の鎖ネックレスをオマケに売ってくれたので指輪を通して首に掛けました。

 指輪はボクの首元で再会出来た喜びに震える様に光を反射して淡く輝いています。

 ボクはこの指輪が守ってくれている様に感じられ、笑顔で歩き出しました。





◇ ◆ ◇





 ヨークシンシティに滞在して約一週間が経ちました。

 今回の下見は息抜きに最適でした。
 形見の指輪を見つけることが出来ましたし、その他にもベンズナイフを始め様々な掘り出し物を手に入れました。

 おかげでかなりストレスを発散することが出来ましたよ。

 これなら一人で来ないでズシくんやかおりさん達を誘えば良かったですね。
 まあ、来た当初のボクは性に飢えた獣も同然でしたので、死ぬまで搾り取ってしまいそうでしたから連れてくる訳にはいきませんでしたけれどもね。





 ボクが上機嫌でクレープを片手に散策していると、突然銃声がして一台の車が蛇行しながらこちらに突っ込んできました。

 躱しても良かったのですが食べかけのクレープが崩れると嫌なので、車の影に【影鬼の小刀(レ・ラナンデス)】を突き刺しました。
 ついでに銃を撃って車をパンクさせた男の影にも【影鬼の小刀(レ・ラナンデス)】を突き刺して縫い止めておきました。

 直ぐ後ろから来た数台の車が横付けする様に停車して、護衛らしき男達と犬が数匹飛び出してきて縫い止めた車を守る様に辺りを警戒し始めました。

 ボクは残りのクレープを食べながら、何となく縫い止めた車を覗き込むと後部座席に座っていた少女と眼が合いました。

「……かっ、かわゆいぃい~~♡」
「ねっ、ネオンお嬢様!?」

 暫く見つめ合っていると少女が車から飛び出してこようとし、着物を着た女性が少女を羽交い締めにして押し留めようとしています。
 ボクと車の間には護衛達と犬達が守る様に立ち塞がり、こちらを警戒しています。

「放して、エリザ!!」
「おっ、落ち着いてください、ネオンお嬢様!!」

 ネオンにエリザ?
 それに操作されている犬達ですか?
 もしかして、あの『ネオン=ノストラード』ですか?

「お騒がせした……口元にクリームが付いているぞ」

 ボクが首を傾げていると縫い止めた車の助手席から男が出てきて、苦笑しながらハンカチを差し出してきました。
 ですが、その眼は警戒の色を宿しています。

 ボクはハンカチを受け取らず口元のクリームを舐め取りました。

 男はハンカチを差し出した格好のままで僅かに頬を染めて一瞬固まってしまいました。





 あの後、ボクはネオンさんの泊まっているホテルにお持ち帰りされてお茶をご馳走になっています。
 一応襲撃した男と無関係と分かり警戒レベルが下がったようですが、部屋の中には数匹の犬が寛いでいる振りをしながら眼を光らせていますし、部屋の外には直ぐに部屋へ飛び込める様に護衛達が佇んでいます。

「アンナちゃんの髪の毛は丸で紫水晶の様で綺麗だね。ねえ、譲ってくれない?」

 ネオンさんがボクの髪を梳きながら嬉しそうに訊ねてきました。

 さすがは人体収集の性癖の持ち主ですね。
 まあ、ここは無碍に扱うわけにもいきませんよね。

「髪ですか……対価を頂けるなら少しだけ差し上げますよ」
「本当? 有り難う!!」

 ネオンさんは満面の笑みを浮かべながら抱き付いてきました。

「何が欲しいの、アンナちゃん? お金なら幾らでも用意するよ♪」
「そうですね……噂で聞いたことがあるんですが、ネオンさんの占いは百発百中なんですよね?」

 ボクが訊ねると犬達がこちらを窺う様に体勢を整えました。
 外の護衛達のオーラも一瞬乱れました。

「うん、そうだよ。占ってあげればくれるんだね? ……この紙にフルネームと生年月日、それと血液型を書いてね♪」

 ネオンさんは緊張した空気を物ともせずに、嬉しそうに紙とペンを手渡してきました。

 多分ネオンさんは自分の能力の特異性を理解していないんでしょうね。

 ボクは苦笑しながら紙に必要事項を書き込みました。

「それじゃ占うね」

 ネオンさんの右手にブサ可愛い天使が現れて、ペンを走らせていきます。

 程なくして予言の詩が書き上がりました。

「はい、出来上がりっと……わたしの占いはその月の週事に四行詩で構成されているから、一つ目の出来事は終わっている筈だよ」

 ボクはネオンさんに手渡された占いに目を通しました。

 その内容は――――





 『 欲望の渦巻く舞台の袖で

   踊り子は両親の愛に再会するだろう

   太白の輝きを全て貢ぎ物にすると良い

   何時しか御利益が踊り子を守り導くだろう 』





 『 無邪気な巫女が主催する演劇に

   踊り子は主演として巻き込まれる

   巫女の心の赴くままに踊ると良い

   巫女との友愛を深めておけばいずれ訪れる祭りが楽しくなる 』





 『 借宿への帰り道で怨みに唆された空腹が踊り子に襲いかかる

   空腹に倒れることなく踊り続けるために

   湧き上がる欲望に恐れを抱くことなく立ち向かうと良い

   虹から橙色を掻き消すためには悪口を述べよ 』





 『 踊り子の元に蛇に憤る乙女が訪れる

   その者は蛇に呑まれる運命を宿す者だから

   隠すことなく蛇との縁を話して闘う術を教えと良い

   踊り子の導きに因って乙女は何時しか蛇の呪縛から解き放たれるだろう 』





 やはりこの指輪に出会えたのは運命だったみたいですね。

 二つ目の詩はネオンさんの望む様にして仲良くしろってことでしょうね。
 そうすれば、因果が巡って原作時二年後のオークションが楽になるってことですかね?

 三つ目の詩は何やら物騒なことになりそうですね。
 対処法の書かれていますし、心構えが出来るだけ増しですけどね。

 四つ目の詩はなかなか興味深いことが書かれていますね。
 どんな女性ですかね?
 まあ、手取足取り調ky(ry教育して上げましょう。

 ボクは《マルチタスク》を使用して予言の内容を吟味しながら、【影織りの外衣(ディープ・ストッカー)】から鋏を取り出して、両サイドの一部を三つ編みにしている毛先を5cmずつ切り取りました。

「はい、どうぞ……大切にして下さいね」
「わぁ~有り難う、アンナちゃん♪ はぁ~綺麗だね。それに良い匂い♡」

 ネオンさんはうっとりした表情でボクの髪を眺めたり匂いを嗅いだりしています。

「さてと、そろそろお暇しますね」
「……えっ!? もう帰ちゃうの? もう少し一緒に遊ぼうよ!」

 ボクが立ち上がると、ネオンさんは頬を膨らませながら涙眼で上目遣いに見上げてきました。

 かっ、可愛いですね。
 思わず抱きしめたくなってしまいますよ♡

「オークションが終わるまではヨークシンに滞在する予定ですから、明日またお会いしましょう」
「本当!! 約束だよ♪」
「はい、約束しましょう」

 ネオンさんが笑顔を浮かべながら小指を差し出してきたので、ボクも小指を絡めて指切りをしました。





 ◇ ◆ ◇





 ボクは今予言の詩の二つ目の出来事に遭遇しています。
 間違えなくこの事でしょう。

 ボクは普段基本的に動きやすい服装を好んで着ている上に、化粧も『わたし』の時に舞台上でのみしていたのですが『ボク』になってからはスキンケアだけで全くした事がなかったのですよ。
 
 それを鬼気迫る勢いでネオンさんだけでなくエリザさん達御付の人にも勿体ないと力説されました。
 気が付くとボクはナチュラルメークとはいえしっかりと化粧をされており、その上彼此五時間程着せ替え人形をさせられていました。





「ねえ、コレなんてどうかな?」
「……こちらも似合いそうですね」
「いいですね。それならこれと合わせれば……」

 目の前の鏡には、思わずお持ち帰りしたくなる様な可愛らしいゴスロリファッションで身を包んだ少女が胸にクマの縫いぐるみを抱いている姿が映っています。

 どう見てもボク自身です。有り難うございました……と、しか言いようがありません。
 混じりっ気無しの純度100%の皮肉ですけどね。

 これ系統の服装は『わたし』の時なら喜んで着ていたのでしょうが、今は“こんなのボクのキャラじゃない”と叫びながら逃げ出したいくらいです。

 “タスケテ”と護衛の人達に視線を送ると、何故か一斉に眼を逸らされてしまいます。

 ボクにこんな可愛い服装が似合わないのは分かりますが、何も耳まで真っ赤にしながら笑いを堪えることないじゃないですか!?
 あっ!? 一人倒れた!?

 気絶する程似合わないんですね。
 確か、トチーノさんでしたか。
 月のない夜は背中に気を付けて歩くがいいさ!!

「アンナちゃん、次はこれに着替えてね♪」
「はっ、はい……分かりました……」

 こうなったら毒を食わば皿までです。
 護衛の人達をを全員笑い殺して見せましょう!!





 結局オークション終了までの数日間は毎日の様に、ネオンさん達の玩具として過ごす羽目に陥りました。
 下手な拷問よりも過酷でした。

 確かにボクも女の子ですから多少の興味は有りましたが、あれは行き過ぎです。
 おかげで発散したストレスが、お釣り所か利子まで付いて帰ってきた気分ですよ。

 これで本当に原作時二年後のオークションが楽になるんでしょうか?

 取りあえず今日中に飛行船に乗り込みましょう。
 そうしないと週明けにパドキア共和国に辿り着けませんからね。
 さすがに飛行船の中で襲われるのは危険すぎますからね。







[10229] 第10話
Name: Mr.凸凹◆5dba541c ID:fa96cef3
Date: 2013/01/07 16:00





 厚い雲に覆われて星どころか月明かりさえ射さぬ漆黒の夜空。

 眼下に広がるのは吸い込まれそうな漆黒の海原。

 その景色を窓越しに眺めながらボクは予言の詩の三番目の内容を思案しています。





『 借宿への帰り道で怨みに唆された空腹が踊り子に襲いかかる

  空腹に倒れることなく踊り続けるために

  湧き上がる欲望に恐れを抱くことなく立ち向かうと良い

  虹から橙色を掻き消すためには悪口を述べよ 』





 借宿への帰り道で怨みに唆された空腹が踊り子に襲いかかるとは天空闘技場に戻る道すがらで襲撃に遭うって事でしょうね。

 怨みとは多分『嫉妬』……レヴィの事でしょう。
 『妬み』ではなく『怨み』なのは、ボクが『夢幻師団』に反感を持っていて敵対しているからでしょうね。

 そうなると空腹とは『暴食』の事でしょうね。
 空腹に倒れることなく踊り続けるためにとは、『暴食』を司る者に殺されない様にという事でしょうね。

 湧き上がる欲望に恐れを抱くことなく立ち向かうと良い……つまり、大蛇大罪に呑まれることなくオーラを解放しろって事ですかね?

 は七色だし、確かどこかの国では蛇の一種と見なす筈ですし……つまり、七つの大蛇大罪の事でしょうね。
 そして、橙色『暴食』で間違いないでしょう。

 悪口を述べよは“悪口=毒を吐く”……毒を使えって事だと思うんですが、毒ぐらいで『暴食』を司る者倒せるのでしょうか?

 毒……毒ですか。
 はっ!? もっ、もしや……七つの大罪を司る者達はお互いに……!!?
 もしそうなら虹から橙色を掻き消すためには悪口を述べよとは……アレ・・の事ですよね?

 ボクは頭を過ぎった考えを有り得ないと思いたかったのですが、の隅でどこか納得している自分に気が付きました。





 ☆ ★ ☆





 ~???side~





 無数の人形達フィギュアが見つめる雑然とした部屋。
 その部屋の主は荒い息をしながら二体の人形達・・・に伸し掛かっている。

 人形達はそれぞれ左右の耳に片方ずつの銀細工のイヤリングを身に着けていて、その容姿は似通っていて幼い姉弟の様だ。
 人形達は精巧に作られおり、丸で生きているかの様・・・・・・・・に見える。

 部屋には漢の体臭等が充満しており、この行為が長時間行われていることを物語っていた。
 不意にその情事を映し出していた鏡に、別の者が映し出された。

「お楽しみのところ恐縮ですがお邪魔しますよ」
「レヴィか……何の用だよ?」

 情事を邪魔された漢は気怠げに顔を鏡に向けた。

「新たに『色欲』を司る者が誕生しましたが……『夢幻師団』に組みしなかったのですよ。このままでは我らが主母上また・・泣いてしまいます」

 レヴィは俯きながら淡々と語っていった。

我らが主ママにはまだ報告してないのか?」
「ええ……我らが主母上は未だ今の躰・・・に馴染みきっていませんからね。少しでも御躰に障る事は避けないといけません」
「今はお眠りになっているんだよな?」
「そうです……さて、コレが『色欲』を司る者です」

 レヴィを映し出していた鏡が一瞬揺らめくと、アンナの姿が映し出された。

「……なあ、オレが『色欲』喰らって・・・・もいいのか?」

 漢は舌なめずりをしながら喰い入る様にアンナの姿を見つめている。

「ご自由に……お眼鏡に適ったならば、抜け殻は貴方のコレクションに加えても結構ですよ。では、お願いしますね『暴食』を司る者よ」

 鏡が揺らめくと、そこには雑然とした部屋の主が映し出された。

「この娘ならオレの左手の薬指に相応しい戦利品銀細工になりそうだ」

 鏡には橙色の逆十字架アンチ・クロスと共に狂気の笑みを浮かべた漢の顔が映し出されていた。




 
 ☆ ★ ☆





 飛行船がパドキア共和国に到着して飛行場を出てから誰かに観られている気がして落ち着きませんね。
 出来れば自意識過剰な勘違いなら良かったのですが、明らかにボクの後を付けてきている者がいます。

 巧妙に隠れている様ですがボクの額の逆十字架アンチ・クロスの疼きから確実に居ますね。
 これは間違えなくボクと同じ大蛇大罪に憑かれた者ですね。

 さてと、人気のない隠れる所が少ない場所まで移動しますか。





「そろそろ出てきてくれませんか? サインならお断りしますよ」
『「あはっ♪ お姉ちゃん、もう鬼ごっこはお終いなの?」』

 ボクが幹線道路から外れた徒広い荒野で振り返ると兄妹……いえ、男装の姉と男の娘の弟の姉弟がハモる様に話しかけてきました。
 『色欲』を宿してから男女の違いが否でも応でも理解できる様になりましたからね。

 それにしても美味しいそうな幼い姉弟ですね♡
 思わずお持ち帰りしたくなりますね。

 ですが、眼の前の二人からは嫌な気配オーラを感じます。
 しかも分かりづらいですが、どう考えても先程尾行してきていた者と同じ気配オーラも感じられますね。

 つまり二人は操作されたモノで、本命は離れている『暴食』を司る者ですね。
 ですが、ボクの円の範囲には本命は感じられません。
 嫌な気配オーラが強く感じられる方向に強化した視線を向けると、辛うじて人影がうっすらと見える程度ですね。

『「鬼ごっこが終わりなら、今度はお姉ちゃんがあたし達の遊びに付き合ってよ。ご主人様に遊んでおいでってお願いされたんだからね♪」』

 男装の姉の方が楽しげな笑顔のままで僕に躍り掛かって来て、男の娘の弟の方はその場を動かずに両手をこちらに向けてきました。
 男装の姉の背後に隠れて男の娘の弟が見えなくなった瞬間に、ボク目掛けて無数の念弾が飛来しました。

 男の娘の弟が放ってきた念弾を全て避けるのに気を取られていると、男装の姉がボクの死角から近づいて来ました。
 ボクは慌てず男装の姉に向かって牽制の為に【影鬼の小刀(レ・ラナンデス)】を投げつけましたが、何故か悉く擦り抜けてしまいました。

「なっ!? 擦り抜け……いえ、飛ばされた!?」

 驚きつつも男装の姉の影へ飛ばした【影鬼の小刀(レ・ラナンデス)】は男の娘の弟の念弾に全て弾かれてしまいました。

 ボクが一瞬固まってしまった隙に男装の姉はボクの首筋に触れてきました。

『「あはっ♪ 捕まえた。その首輪はプレゼントだよ♪」』

 気が付くとボクの首に錠前付きの首輪が填められていました。

 ボクが一瞬首輪に気を取られている隙に二人は懐から札を出すと、眼の前から掻き消えてしまいました。

「逃げられましたか……嫌な予感がするのでこの首輪は速攻で壊しますか」

 ボクがため息混じりに【影織りの外衣(ディープ・ストッカー)】で首輪を消散させようとすると、首輪はびくともしませんでした。

「なっ!? まっ、まさか……あの姉弟は屍体ですか!!?」
 
 所謂除念擬きな【影織りの外衣(ディープ・ストッカー)】では、死者の念までは除念出来ません。

「ガッテム!! これは屍体を操っている術者をどうにかしないといけませんね」

 多分術者を倒せばこの念も解除出来るでしょうね。
 もしそれでも駄目なら【影法師(ペルソナ)】で『暴食』の分身を作成すれば良いでしょうね。
 未だ、制約と誓約が不十分で少し心配ですが……その際はその場で以前から考えていた制約と誓約を煮詰めて付け加えましょうか。

 今は気を抜かずにしっかりと警戒しておかないと、殺されてしまっては何の意味もありませんからね。

 ボクがうっすらと見えている人影の方を睨むと、先程の姉妹に加えて他に三人の人影が見えました。

 そしてボク目掛けて飛来する雪崩の様な物が眼に映りました。

「はわっ!? ちょっ、ちょっと……しゃっ、洒落にならない物量ですね」

 慌てず【影鬼の小刀(レ・ラナンデス)】で迎撃すると、突然爆発しました。

「はわわっ!!?」

 ボクは爆炎に紛れて飛び出してきた撃ち漏らした物を紙一重で避けていきます。
 良く見るとナイフやフォーク等の金属製品でした。

 ほっとしたのも束の間に、避けた物が軌道を変えてボクに迫っていきました。
 ボクは堅を行ってナイフ等が刺さらない様に防御しましたが、触れた瞬間に大爆発を起こしました。

「げほっ!? ごほっ!? 痛っつ……」

 念の防御を抜かれて傷ついてふらつくボクに容赦なく次弾が迫ってきています。
 これはさすがにピンチですかね?

 仕方ありません。
 未だに制御できるかどうか分かりませんが、恐れず自身の大蛇大罪を解放しましょう。

 まだまだここで死ぬわけにはいけません。
 念とは己の想いで制御するモノですからね。

 それに予言の詩にも書いていましたしね。
 己を信じて絶対にズシくんの元に帰ってみせます!!

我に宿りし大罪よ。今こそ、その枷を解き放ち我の力と為りたまえ!!

 自身を鼓舞する様に眼を閉じながら祝詞を唱えると、意識が闇に呑まれそうになりました。

 ですが、ここで負ける訳にはいきません!!

 確かにボクは闇に属すモノかもしれないです。
 ですが、光が無ければ影は存在出来ません。
 そして、光が強ければ強い程影は濃く強くなるんです!!

 ボクは決して大蛇大罪には呑み込まれ負けません!!

 そうです!! ボクは一人じゃありません!!
 パパとママも見守ってくれています!!

 首から提げた両親の形見の指輪がボクを優しく、しかし力強く応援してくれている気がします。





 ボクが再び眼を見開くと辺りは丸でクレーターが出来た様に吹き飛んでいました。

 さすがにきついですね。
 気を抜くと意識が大蛇大罪に呑まれそうになります。

 今まで以上に念が暴風の様にボクの躰から吹き荒れています。
 このじゃじゃ馬を躾るためにも『暴食』を司る者との戦闘は好機と為るでしょう。

 さあ、反撃を開始しましょうか!!
 『暴食』を司る者を喰らい尽くして・・・・・・・やりますよ!!







[10229] 第11話
Name: Mr.凸凹◆5dba541c ID:ea3c3cab
Date: 2013/01/08 18:01





 夜の帳に包まれた荒野を照らす月明かりスポットライト

 その舞台で華麗に舞うは影を統べる舞姫。

 彼の舞姫は己の闇と向き合い清濁合わせて遥かな高みを目指し舞い続ける。






 『暴食』を司る者との戦闘開始から半時間ほど経ちましたが、未だにどちらも決定打がなく膠着状態が続いています。
 『色欲』を開放してからボクのスピードと防御力は飛躍的に向上しましたが『暴食』を司る者は一箇所に留まらず転移を繰り返して攻撃を続けています。
 四方八方から飛来してくる念を込めた金属製品は徐々にその威力を高めてきています。
 
「ああっ~~!! もうぅ~~!! うっとおしいですねっ!!!」

 ボクは飛来する金属製品を迎撃したり防御しながら大きな声で文句を言います。
 そうでもしてないと意識が『色欲』に呑まれそうになっています。
 
 一応視力も強化されたので『暴食』を司る者の姿を確認できました。
 拙くなった原作知識と照らし合わせると、あれはもしや『ミルキ=ゾルディック』ですかっ!?

「ゾルディック家と対立する気はないんですけど……そうも言ってられませんねっ!!」

 躊躇してボクが死んだら意味がありませんからね。
 『暴食』大蛇大罪を喰らい尽くしてもミルキくんが死ぬ訳ではない筈ですしね。

 さてと、転移のパターンも読めて来ましたからそろそろ反撃といきますか!!
 攻撃力では負けていても嵌め様によっては十分妥当出来ますからね。






 ☆ ★ ☆





 ~ミルキside~






「ちきしょうぅ!! なかなか粘りやがるな……もう直ぐ時間制限タイムリミットだし……仕方ない、お前らもう少し俺の血を吸え!!」

 徐々に転移の場所を把握されて距離を詰められているミルキは苛立ちげに爪を噛んで操作されている屍体達に命令した。
 操作されている屍体がミルキの腕に噛み付いて血を啜ると屍体達のAOPが増加していく。
 それにより別の空間から取り出せる金属製品の量が増えて、爆発の威力も上がっていった。

「よし……この程度なら念の防御力を抜けても躰をそんなに欠損させる事無く気絶させられるだろう」

 ミルキは舌舐りをしながらアンナの躰を嬲る様に視姦している。

「はぁはぁ……たまらねぇ~あのエキゾチックでエロい女が俺のモノになるなんて……しかも裏切り者の宿す大蛇大罪喰う奪う事が出来るなんて最高だっ!!」

 ミルキが高笑いすると同時に根負けしたのかアンナに雨霰と金属製品が殺到して大爆発を巻き起こした。

「さてと、それじゃお食事・・・といきますか♪」

 ミルキはスキップしそうな軽やかな足取りでアンナの元へと向かっていった。





「ぐへへへ……さてと、お前達! その女を上向かせて手足を固定しろっ!!」

 うつ伏せで倒れているアンナは重傷で服装はぼろぼろになっていて辛うじて大事なところが隠れているだけである。
 ミルキは血走った眼でアンナに近づいていく。

「なんだっ!? この仮面、外れない!? ……まあ、良いか。感じられるオーラも微弱だし、大蛇大罪喰う奪う前に先ずは楽しもうかっ!!」

 ミルキは下品な笑みを浮かべながらアンナに伸し掛かろうとする。
 だが突如アンナの姿は跡形もなく掻き消えてしまい、屍体達も糸の切れた人形の様に倒れた。

「はぁ!? なっ、何で……ぐへぇ!! はっ、離……うぇ……」

 ミルキは後ろから現れた泥まみれだが掠り傷程度・・・・・・・・・・・のアンナによって絞め落とされた。
 





 ☆ ★ ☆





 さてと、思いっきり油断してくれていますね。

 ボクは隠れていた地面の下から静かに這い出しながらほくそ笑んでいました。

 では、さくっと【影鬼の小刀(レ・ラナンデス)】を影に突き刺して絞め落としましょうか♪





 ボクは泥を【影織りの外衣(ディープ・ストッカー)】で取り除き収納しながらミルキくんを見下ろしています。

「やっぱり……術者を倒してもこの首輪は外れませんか」

 ボクは忌わしげに首輪を引っ張りながらため息を吐きました。

 さてと、それじゃ【影法師(ペルソナ)】に以前から考えていた制約と誓約を正式に付け加えましょうか。

 先ずはミルキくんの血を舐めて、影に周だけだなく硬を行います。
 そしてミルキくんに触れながらキーワードを発声します。

「ペルソナ……」

 以上を10分以内に行います。

 すると今までより遥かに見事に瓜二つな【影法師(ペルソナ)】が出現しました。

「よしと……発動条件はこれでOKですね。後は、対象の念能力を使用する制約と誓約ですね」

 先ずは他者の分身が個別能力を使用する条件は、術者が対象の発の使用系統を理解した上に発動前の60分以内に実際に目視する必要がある。
 次に他者の分身は一対象に付き、一日間24時間内に一体のみ具現可能である。

 「……以上を我が名『アンナ=レイ・シュナイザー』において硬く守ると誓います」

 誓いを言葉にしてしっかりと心に刻みました。

 早速ミルキくんの【影法師(ペルソナ)】(陰)を操作して、更に男装の女の子を操作させて首輪を解除しました。

「はふぅ~やっと首が軽くなりましたね……」
 
 ボクは首を軽く振りながら凝りを解しました。

「さあ……早くしないとミルキくんの絶が解除されてしまうかもしれませんね。では『暴食』大蛇大罪祓う喰うとしましょうか」

 ボクは更にミルキくんへと歩み寄りました。
 そして額に浮かび上がる聖痕同士を重ね合わせて祝詞を唱えました。

暴食を司る大蛇よ。汝は捕食者に在らず。我が色欲の大蛇の糧となれ!!

 額の聖痕がより一層を輝きだして焼け付くほどの熱を発し始めました。
 ボク達を中心に大蛇の形をしたオーラが渦巻いています。
 『暴食』の漆黒の大蛇大罪『色欲』の漆黒と純白の二頭の大蛇大罪が捕食している様にオーラが交じり合っています。

 正しく大蛇大罪の共食いですね。
 予言の詩の悪口を述べよ は“悪口=毒を吐く”……毒は毒でも蟲毒・・の事で間違えなかったようですね。

 暫くすると交じり合っていたオーラが『色欲』の漆黒と純白の二頭の大蛇大罪のみとなりました。
 『色欲』大蛇大罪は一回りも二回りも大きく力強く感じられます。

 その大蛇大罪はボクを中心に渦巻いて躰と精神を蹂躙する様に入り込んできました。

「くはっ!? ……こっ、これは……かはぁっ!? ……うっ、うわぁあ~~~!!!」

 ボクは湧き上がってくる『色欲』の熱に魘されて膝を折りながら自分自身を強く抱き締めました。
 それでも疼きを抑えきれずに頭を振りながら涎や涙を振りまいてしまっています。
 乳首も硬くしこり立ち、下の口からは淫靡な愛液ヨダレが止め処なく溢れ出して来ています。

 駄目です!! 意識が『色欲』呑まれ染まるっ!!?
 ああ、このまま本能のままに生きれたらどんなに楽になれるでしょうか。

 ボクの意識が闇に呑まれそうになっていると、胸元から暖かなオーラが感じられました。
 
 はっ!! パパ、ママ。
 そうだよね、ボクは一人じゃない!!
 帰りを待っていてくれる人がいる!!
 まだ見ぬ人達とも触れ合いたい!!

 それにグィンお兄ちゃんに一発決めるまでは死んでいられないよね!!
 ボクは無事だと一発殴ってから言ってやらないとね!!!

汝、色欲を司る大蛇よ。我は汝を受け入れる。我は汝、汝は我なり。我ら死が別つまで共に歩んでいくモノなり!!

 意識を奮い立たせて立ち上がり祝詞を唱えると、今までの暴風が嘘の様に静まり返りました。






「うぅ~んむにゃむにゃ……ぐへへへへ……はっ!?こっ、 ここはっ!?」
「気が付きましたか?」

 ボクは膝枕をしていたミルキくんに訊ね掛けました。

「ああ……何だか、久し振りにすっきりとした気分だ……」

 ミルキくんはどこか晴れ晴れとした表情で笑っています。

 さてと、ミルキくんも目覚めた事ですし、ここからはお楽しみの時間と参りましょうかね♡

「ねえ、貴方の名前を教えてくれるかな?」
「ああ……おれはミルキだよ。君はアンナちゃんだったかな?」
「ええ、そうですよ……ミルキくん、ボクと火遊び・・・しませんか?」

 ボクは徐々にミルキくんの唇に顔を寄せながら妖艶に微笑みかけました。

「いいね……お願いするよ♪」
「にゃはぁ♪ 契約成立だね♡」

 ボクとミルキくんの唇の距離がゼロになり重なり合いました。





 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・





「もっ、もう勘弁……し……て……」

 あれから幾度となく交じり合いミルキくんは精も根も尽き果てた様にげっそりとしてしまいました。

「ええっ~~!? もっと楽しもうよ、ミルキくん♡」

 ボクのお願いにミルキくんは力なく首を横に振っています。

「さすがにそれ以上搾り取られると死んでしまうじゃろ……勘弁してやってくれんか?」
「……まあ、腹八分目までは楽しめたからね。分かりました……」

 ボクはミルキくんの上から立ち上がりながら全身の白濁した汚れ・・・・・・を【影織りの外衣(ディープ・ストッカー)】で取り除き収納しました。
 そして振り返る前に衣服を【影織りの外衣(ディープ・ストッカー)】から取り出して着込みました。

「今晩は、お爺さん……ミルキくんのご家族の方ですよね?」
「そうじゃ……ワシはゼノ……ゼノ=ゾルディックじゃ、可愛い嬢ちゃんや……」

 ゼノさんは髭を弄りながらにこやかに話しかけてきています。

「ボクはアンナ……アンナ=レイ・シュナイザーです。お爺さんも美味しそうですね♡」

 ボクは思わず舌舐りをしながらゼノさんの引き締まった躰を視姦しています。

「ほぉほぉほぉ……嬉しい事を言うってくれるの。じゃが、今は孫をつれて帰らんとな」

 チッ!! さすがに今は味見できませんか……って、不味いですね。
 ミルキくんで大分『色欲』が収まりましたが、気を抜くと思考がそっちに流されてしまいますね。

「残念です……またの機会に遊んでくださいね♪」
「ああ……そうじゃ名刺コレを渡しておこう。殺しの依頼なら半額で受け持つぞ」

 ゼノさんは僕の言葉を聞き流しながら名刺を手渡してミルキくんを担ぎ上げました。

「嬢ちゃんには改めて礼を言わせてもらうぞい。バカな孫に憑いておった蛇を祓ってくれてありがとう……どうじゃ、家に嫁に来んか?」
「う~ん……魅力的な提案ですけど、考えさせてくださいね」
「そうか……何時でも家に遊びに来てくれ。それじゃの……」

 ゼノさんがミルキくんを抱えたまま上空へと飛び上がり、オーラで出来た龍に乗って帰っていきました。

「……さてと、ボクも愛しのかおりさん達が待っている天空闘技場に帰りましょうか」

 ボクは湧き上がる『色欲』を押さえ込みながらゆっくりと歩き出しました。





 ◇ ◆ ◇





「はふぅ~やっ、やっと帰って着ました……つっ、疲れたよぉ~」

 ボクは夜通し走り続けて天空闘技場に辿り着きました。
 取り敢えず気力を振り絞りシャワーを浴びてベッドへと倒れこみました。

 『色欲』を押さえ込みすぎてなんだか眩暈がします。

「あっ……やばい……おっ、堕ちるぅ~~Zzz~~」

 ボクは手招きしている睡魔に誘われて夢の世界へと旅立ちました。






「はにゃ? かっ、躰が重い……?」

 眼が覚めると躰に違和感を感じました。

 アノ日・・・は周期が違いますし、これは『色欲』大蛇大罪が強まりオーラが激増した事に躰が適応しきれていないようですね。

「はぅ~へっ、ヘルプミィ~~~」

 枕元の受話器を上げてかおりさんに救難信号ラヴコールを送りました。





「39.8℃……えらい高熱ですな。ゆっくりと休んでおくれやす」

 かおりさんはボクの脇から取り出した体温計を見ながら頭を撫でてくれました。

 ボクはこっくりと頷いて微睡に躰を委ねていきました。







[10229] アンナちゃんの『ひ・み・つ♪』 【オリ主設定】
Name: Mr.凸凹◆5dba541c ID:39705aec
Date: 2013/01/07 16:29
【氏名】 アンナ=レイ・シュナイザー


【性別】 ♀ 


【血液型】 AB型
 

【生年月日】 ハンター歴1985年2月13日生まれ(誕生石:バイカラー・フローライト)


【身体特徴】

 肌色  褐色

 髪色  紫

 髪型  ボブカット(両サイドの一部を三つ編みにしている)

 瞳   黄金 

 利き腕 左
 
 体型  すらっとした手足(筋肉の上に薄く脂肪をつけている。白板)

     チャームポイントである八重歯がまるで少年の様な活発的な印象を醸し出している

     感情が高ぶると額に朱色の逆十字架アンチ・クロスに陰陽二匹の身を喰らう蛇ウロボロスが絡まっている聖痕が浮かび上がる


※13歳時

 身長 153cm

 体重 ××ナイショkg

 B74cm(AA) / W58cm / H80cm


【服飾】
 ミニスカートとニーソックスにスキャンティーを好んで穿いている
 ハーフトップ(スポーツブラ)の上に具現化した漆黒の外衣ポンチョを羽織っている
 手首に朱色のリストバンドとおさげに翠色のリボン、靴はショートブーツを履いている
 両親の形見の結婚指輪ペア・リング十八金の鎖ネックレスに通して首に掛けている


【生い立ち】
 旅の劇団の座長の娘として育った普通の少女だったが11歳の誕生日に一座諸共に野盗に襲われた
 その時に母親達と共に強姦され処女を散らしている。その後皆殺しにされたがアンナは作為t(ry運良く生き延びた
 その後ビスケに出会い人格統合が進む中で初潮を始め様々な二次性徴が始まり、混じり合った人格(精神)が身体に引っ張られてほぼ女の子となっている
 その上人格統合が進む課程で精神的外傷は次第に性依存症へと変化していった
 

【性格】
 基本的にボーイッシュで活発的
 一度自分の懐に入れた気に入ったモノは大切に扱う。それ以外は基本的に無関心
 バイセクシュアルで『強い男に犯される&年下の男の子と美女を犯す』のが大好き
 軽度の露出狂脱ぎ上戸


【戦闘スタイル】
 スピード重視の舞う様な体術が主体


【修得スキル】

 攻撃系 《吼破・改》

 移動系 《瞬動術》 《虚空瞬動》

 思考系 《マルチタスク》
 

【念能力】

 系統 特質系(具現化系寄り)

 水見式 葉の影が広がりグラスを覆う


【影鬼の小刀(レ・ラナンデス)】 ※リストカットし続けたために発生した能力

 能力系統 具現化

 効果
 ・右手首の傷痕と柄が赤色黒色で編まれた紐で繋がっているナイフを具現化する

 制約と誓約
 ① 対象の影にナイフを突き刺すと束縛出来る。本数が増える事に束縛力が上がる
 ② 対象の影にナイフを同時に七本突き刺すと強制的に絶に出来る。一分経つ毎に50%の確率で絶が解ける
 ③ 一対象の影に突き刺せる本数は一日間24時間に七本まで、八本以上突き刺すと術者が強制的に一分間絶になる
 ④ 紐の長さはリストカットした傷痕の数に比例して長くなる


【影織りの外衣(ディープ・ストッカー)】

 能力系統 具現化

 効果
 ・収納庫を備えている漆黒の外衣ポンチョを具現化する
 ・収納物は収納時の状態で保存される
 ・外衣の重量は変化しない
 ・外衣に触れたオーラが込められたオーラ以下ならば任意に消散させる事が出来る。所謂除念擬きで、死者の念までは除念不可能

 制約と誓約
 ① 収納する際は対象に周を行いつつ外衣で包む
 ② 念で具現化&操作されたものは収納出来ない
 ③ 生物を収納する際は仮死状態で保存される。対象の生命活動に必要なオーラを術者が肩代わりする
 ④ 収納物を取り出す際は外衣に手を添えて対象の名称を呼ぶ。その際はどんな小さな声でも良い
 ⑤ オーラを消散させると外衣に込められたオーラが同量消費される。再び具現化するまで回復しない
 ⑥ 具現化を解くと〔収納物の総重量×消費オーラ分〕が術者に体感重量として加重される。再び具現化すれば加重は解除される
 

【影法師(ペルソナ)】  

 能力系統 特質(具現化+操作+放出)

 効果
 ・対象(自身or他者)の分身を生み出す。分身は対象を基点として操作範囲が決まる。術者の分身は半自動操作で、他者の分身は術者の遠隔操作
 ・分身の能力は陰陽の仮面を着け変える事によって変化する。一度の具現化で身に付けられる仮面は一種類のみ
  陰=対象と同等の戦闘能力を有している
  陽=対象が一日間24時間内以内に受けた傷や毒等を分身に移して治療する。消失した部位は復元出来ない
 ・分身は対象のPOP現在値の50%を均等に奪って具現化する。具現化を解くと未使用分のPOPは対象に返還される
 
 制約と誓約
 A. 術者以外の分身を具現化するためには以下の条件をクリアする必要がある
 ① 対象の血液を舐める
 ② 対象の影に周+硬を行う
 ③ 対象に触れながら“ペルソナ”と発声する
 ④ ①~③を10分以内に行う

 B. 能力を使用するための条件は以下の通り
 ① 分身が対象に触れていないと傷の受け渡しは不可能
 ② 他者の分身が個別能力を使用する条件は、術者が対象の発の使用系統を理解した上に発動前の60分以内に実際に目視する必要がある
 ③ 他者の分身は一対象に付き、一日間24時間内に一体のみ具現可能






 後書き

 アンナちゃん(オリ主)は《現世:前世=40%:60%》の割合で人格(魂)が混ざったTS転生者です。
 最初に念能力を設定してそこから名前を考えて、その後色々と肉付けしていきました。

【キャライメージ】は某TRPG『夜闇の魔法使い』の“ぽんこつ大魔王様”×某ゲーム『竜の冒険の旅・4作目』の“踊り子さん”÷2です。
 CGイメージ(18禁)を斧に再UPしました。

 age13ヴァージョン 2717358.png(Sc_405967.png) バイカラー・フローライト
 ダウンロードpass:アンナちゃんのスリーサイズ(age13)『**(**)/**/**』

 age15ヴァージョン 2717359.png(Sc_405968.png) バイカラー・フローライトⅡ
 ダウンロードpass:アンナちゃんの誕生日『****/**/**』

 マスクpass:タイトルのローマ字綴り

 因みに11歳わたしの時のイメージは某ゲーム『英雄伝説・6作目』の“執行者ⅩⅤ・殲滅天使”です。





 ※物語の進行に応じて設定を追加していきます。
  
  ・2009/07/19 【生い立ち】を加筆修正しました。
  ・2009/08/10 【身体特徴】の体型を修正しました。
  ・2009/11/11 【身体特徴】に聖痕を追記しました。
  ・2009/12/21 【服飾】に形見の指輪と、【念能力】に【影法師(ペルソナ)】(※未完成)を追記しました。
  ・2012/12/16 【念能力】の【影法師(ペルソナ)】(※未完成)を微修正しました。【身体特徴】にチャームポイントの八重歯を追記しました。
           【修得戦闘スキル】を【修得スキル】に変更し、思考系を追記しました。【キャライメージ(18禁)】を斧に再UPしました。
  ・2012/12/17 【影織りの外衣(ディープ・ストッカー)】の設定を追記しました。
  ・2013/01/07 【影鬼の小刀(レ・ラナンデス)】の設定を修正しました。【影法師(ペルソナ)】の設定を全て公開しました。






[10229] アンナちゃんの雑記帳【その他設定】
Name: Mr.凸凹◆5dba541c ID:39705aec
Date: 2013/01/07 21:34



『夢幻師団』

 マフィアンコミニティーに属さない中規模の犯罪組織
 通称は身を喰らう蛇ウロボロス又は略して蛇と呼ばれている
 幹部は額にそれぞれ七色の逆十字架アンチ・クロスに絡まったウロボロスの聖痕を有し、それぞれ七つの大罪に照らし合わせた性質を秘めている

 No.03『憤怒』とNo.06『暴食』は(第11話)現在欠番
 No.05『強欲』&No.07『色欲』は離叛

 No.01 傲慢(紫色) ???

 No.02 嫉妬(藍色) レヴィ=ヴァレンシュタイン

 No.03 憤怒(青色) ???

 No.04 怠惰(緑色) ???

 No.05 強欲(黄色) ???

 No.06 暴食(橙色) 欠番(元⇒ミルキ=ゾルディック)

 No.07 色欲(朱色) アンナ=レイ・シュナイザー


 ▽ ▲ ▽


 『夢幻師団』の幹部 No.02『嫉妬』を司る者  


【氏名】 レヴィ=ヴァレンシュタイン


【性別】 ??


【念能力】

 系統 特質系(具現化系寄り)


【変化の仮面(デス・マスク)】

 念系統:特質(具現)

 効果
 ・対象の念を写し取り使用する
 ・対象の記憶や仕草と癖を再現できる
 ・対象の身体的特徴『声紋・指紋・網膜パターンなど』までも完璧に再現事が出来る
 
 制約と誓約
 A:対象の念を写し取るための制約と誓約
 ① 対象の念能力を実際に目視しする
 ② 対象に能力について質問し、対象が答える
 ③ 対象に具現化した仮面を被せて殺害する
 ④ 対象の心臓をえぐり出し具現化した仮面に血を注ぐ
 ⑤ ①~④を60分以内に行う

 B:写し取った能力や身体的特徴を使用するための制約と誓約
 ① 写し取った仮面を被る
 ② 仮面を被った瞬間に対象の死に様を幻痛として追体験する。心身が耐えられなければ術者は死ぬ
 ③ 変化を見破られた仮面は一度具現化を解くと1176時間49日間使用不可能


 ▽ ▲ ▽


 元⇒『夢幻師団』の幹部 No.06『暴食』を司る者  


【氏名】 ミルキ=ゾルディック


【性別】 ♂


【念能力】

 系統 特質系(操作系寄り)


【似非戦乙女の宝具(シルバー・プリンセス)】

 念系統:特質(操作+具現)

 効果
 ・自作の銀細工に対象の念を記憶させる。最大12個まで、一個に付き一人の能力。新たに上書きすることは可能だが以前の能力は消去される
 ・自作の銀細工を念を記憶させた対象屍体に身に着けさせると、能力を再現しつつ操作することが出来る
 ・?????

 制約と誓約
 A:対象の念を記憶させるための制約と誓約
 ① 銀細工を対象に身に着けさせながら、念能力を使用させる
 ② 銀細工を対象の生き血に浸す
 ③ 術者が対象の躰の一部を喰らう
 ④ ①~③を一日間で完了させた後、翌日の丑三つ時に対象を殺害する
 
 B:記憶させた能力を再現するための制約と誓約
 ① 一日に念を再現出来る銀細工の数は四つまで、四体と屍体を掛けてある
 ② 一つの銀細工の記憶を再現することが出来る時間制限タイムリミットは一回に付き60分
 ③ 時間制限タイムリミットを使い切ると、再び使用するには対象屍体と同じ血液型の末期の血が必要

 C:対象を使用するための制約と誓約
 ① 対象の操作距離は術者の円の広さに比例する
 ② 対象の念の精度は殺害した当時の精度が最低スペックだが、術者の血を吸わせる事で威力を向上させる事が出来る



 右手の銀細工に記憶している能力
   親指:???
 人差し指:???
   中指:周をした金属に爆発能力を付加する能力(変化系)
   薬指:???
   小指:???

 左手の銀細工に記憶している能力
   親指:???
 人差し指:???
   中指:周を行って触れた事のある空間を任意に繋ぐ事が出来る能力(放出系)
   薬指:花嫁用に未だなし。アンナを狙っている
   小指:???

 耳の銀細工に記憶している能力
   男装した姉右耳の銀細工男の娘の弟左耳の銀細工で一つの念能力
   ① 姉が触れると具現化した錠前付きの首輪が対象に装着されて的になる(具現化系)
   ② 弟が周を行った物体が対象に命中するまでどこまでも追いかけていく追尾弾丸となる(放出系+操作系)


 ※屍体の背中にそれぞれ神字で防腐の入れ墨を彫っている
 

 ☆ ★ ☆


 アンナちゃんのお友達(情婦)&カストロのお嫁さん


【氏名】 かおり=(旧姓)観月


【性別】 ♀


【血液型】 O型


【生年月日】 ハンター歴1979年11月22日


【身体的特徴】

 肌色  黄褐色

 髪色  黒色

 髪型  ポニーテール

 瞳   黒色

 利き腕 右


 身長 143cm

 体重 ××ナイショkg

 B86cm(D) / W63cm / H83cm


 ☆ ★ ☆


 ※物語の進行に応じて設定を追加していきます。


  ・2012/12/17 『夢幻師団』の幹部 No.06『暴食』を司る者の設定を追記しました。
  ・2012/12/18 内容を微修正しました。
  ・2013/01/07 『暴食』を司る者の正体を明かしましたが『暴食』は欠番になりました。






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