「待って下さい。」
そう言って出てきたのは桜咲だった。
「……ストーカーか?」
「だ、誰がストーカーです!!」
レヴュアタンの言葉を慌てて否定する桜咲。
「普段から近衛をチラチラと、時にはニヤニヤと見詰めているお前は明らかに危ない雰囲気を醸し出している。これがストーカーでなくてなんだと?」
「断じてストーカーではありません! そしてニヤニヤしてなどいません!? あれはお嬢様が日々お怪我なく幸せそうに暮らしている様子を見ていてこぼれる頬笑みです!!」
「ハァハァ言ってなかったっけ?」
「平和な日常に思わず漏れたため息です!?」
この言い訳苦しくない?
「近衛はよく下着が盗まれるって聞いたことがあるんだが。」
「お嬢様の下着が変質者に盗まれないように私が預かっているのです!」
予想外の返事に驚くレヴュアタン。
「……その代わりに違う下着が置いてあるとか。」
「お嬢様の着る物が無くならないように私の下着を代用品として置いて言っているだけです!!」
苦しい言い訳から一転して下着の事は胸を張って誇らしげに言う桜咲、もうダメだこいつ。
早く何とかしないと。
「下着云々は冗談だったんだが……まさか本当にしているとは。」
若干引き気味のレヴュアタン。
レヴュアタンを引かせるとか凄いぞ桜咲……ダメな意味で。
そこで桜咲は気がついたような顔をして。
「こんな話をしに来たんではありません!!」
「じゃあ何の用なんだよ?」
「どうして止めなかったんですか?」
途端に真剣な内容に戻るレヴュアタン。
「図書館島に行く事を?」
「はい。」
その口調は静かだが怒りを含んでいるようだった。
「何で止めるの?」
訳がわからないと言った感じに言うレヴュアタン。
「貴方はお嬢様の護衛です! 止めるのは当然でしょう!?」
語気を荒げる桜咲。
しかしレヴュアタンはそんな様子を気にもとめない。
「何でお前に言われなきゃなんないの?」
「それは私も護衛だからです。」
「じゃあ君が行けば? 俺めんどいからパス。」
「わ、私は……私などがお嬢様に……「それに俺仮契約してあるし、いざとなったら召喚するだろ。」 な、なんですってーー!!」
レヴュアタンの言葉に驚き叫ぶ桜咲。
何故彼女が仮契約について知っているかと言うと、何時かこのかとしたいと妄想しているからである。
勿論何時でも契約できるように陣の書き方まで記憶しているのだ。
「ま、まさか……口付けなどしていないですよね?」
震える声で聞く桜咲にレヴュアタンは何でもないように言った。
「え? 何で? あれが1番簡単なんだろ?」
事もなげに言うレヴュアタンに桜咲の中の何かが切れた。
「き、貴様ー!! お嬢様の唇を奪っただとー!!!」
叫びながらレヴュアタンに飛び掛かる桜咲。
「ちょ、おま!?」
行き成りの行動に驚くレヴュアタン。
普段の数倍の気で強化した体は見事にレヴュアタンの意表を突き、彼に抱きついた。
「この唇かーー!!」
そう叫びながら桜咲はレヴュアタンの唇に全力で吸いついた。
もうその姿は完全に変態だった。
第十一話
「落ち着いたか?」
口元を拭いながら言うレヴュアタン。
「お嬢様と間接キス……お嬢様と「ふん!」 あだっ!?」
怪しく呟く桜咲の後頭部を殴る。
「何するんですか!?」
「それで? 近衛を止めに行くんじゃなかったのか?」
「そ、そうでした!」
思いだしたかのようにいう桜咲。
「お前が魔法の本はある所まで護衛していけばいいんじゃない?」
「それはダメです。」
真剣な表情で言う桜咲。
何やら余程の理由がありそうだ。
「私の様な者がお嬢様に近づくなど 「あ、そう。じゃあ俺はこの辺で失礼する。」 聞いて下さいよ!」
服の端を掴んで止める。
どうも聞いてほしい様だ。
「はぁ……なんでダメなの?」
仕方なく聞くレヴュアタン。
「私の様な化け物がお嬢様の近くにいていいはずがありません。」
「あ、そう。じゃあ俺はこの辺で失礼する。」
一応聞いたので再び帰ろうとするレヴュアタン。
「最後まで聞いて下さい、それでも教師ですか!?」
帰ろうとするレヴュアタンに縋りながら言う桜咲。
「だってそれ建前だろ?」
「わかりました本当の事を言います!!」
そう言って彼女は密かなたくらみを暴露した。
「私は鳥族とのハーフなんですが、そんな事でお嬢様が私を拒絶するなんてありません。」
言い切る桜咲。
「えらい自信だな。」
「私とお嬢様の絆を見くびらないで下さい。」
どうも長時間ストーカーしてたら、このかがそんな事で差別する子じゃないって気がついたようだ。
そして最も確信に至った理由は、レヴュアタンが悪魔なのに普通に接しているところだった。
「はいはい、じゃあ何で行かないの?」
「折角何年も疎遠になっていたんです、仲直りするならその勢いで一気に最後までいきたいじゃないですか!!」
「今はその時ではないと?」
「その通りです。」
彼女は最良のタイミングを見計らって、その時に一気に決めるつもりのようだ。
恐るべし半デコ。
「あ~じゃあ今こっそりついていけばいいじゃん、図書館島の何処かで危ない目に会った時、さっそうと現れて助け、そんな雰囲気に持って行けば?」
「む……悪くないですね。」
顎に手を当てて本気で考えだした半デコ。
「ほれ、これでスネークしてこい。」
そう言って何処からともなく段ボールを取り出して、半デコに渡す。
その仕草はもう面倒くさい感じ丸出しだった。
「ついでに馬鹿共の様子も時折念話で伝えてくれ。」
「わかりました、では!!」
そう言って半デコは図書館島に入る前からやる気満々で段ボールを被り動き出した。
「ついでにお前も勉強しとけよ! バカレンジャー予備軍!!」
「了解です!!」
既にこの先の起こるであろう事を妄想して興奮した馬鹿半デコは、何を言われているかも気にせずに元気よく返事をして去って行った。
この後ネギが居る事を半デコから聞いたレヴュアタンは、ネギを連れて行いくのは止めとけばよかったと思ったが、魔法が使えない様子だと聞いて無視しておく事にした。
これは魔法の使えるネギだった場合は止めに行くが、レヴュアタンの中で魔法を使えないネギは役に立たないアイテムと判断したからだ。
「まあこんな感じで護衛について行った桜咲から定期的に念話が飛んできているから向こうの様子はある程度わかっている。」
自分と半デコの会話部分を端折って、クラスの皆に昨夜の出来事を説明するレヴュアタン。
「それならば安心はできますが……全く魔法の力に頼るなど、あの方達は! それにネギ先生まで巻き込んで!!」
アスナ達、バカレンジャーに憤慨する雪広。
主にネギを巻き込んだ所が気に食わないようだ。
「さて……お前等、話は変わるがお前等にも当然頑張ってもらう。」
「う~ん、流石にネギ君が可哀そうだし今回は頑張るか。」
「そうだね。」
ネギの為に頑張ると言ってくれる2-Aの生徒達に感心するように頷きながらレヴュアタンは爆弾発言をした。
「やる気があって宜しい、お前等に貸す課題は極めて簡単だ、社会の98点以上、他の4教科はなんと95点以上で良いよ。」
普通に厳しい注文をつけるレヴュアタン。
「もしその基準値を下回る者が居たなら、連帯責任で全員下着姿で踊ってる所を撮ってニヤニヤ動画に投稿するって事で。」
面白そうに罰ゲームまで付けた。
「そんなの嫌だよ!!!」
「鬼!」
「違うよ! 悪魔だよ!!」
抗議の声を上げる2-A。
流石にこれは嫌だったようだ。
「え~……じゃあ今後一切出番なしで。OPの顔写真並んでるとことか、ビーチバレーのシーンや、ネギとキスしそうな感じのシーンも全部Mに差し替えます。」
振りとは言えMと31回キスなどとネギも嫌だろう。
「え~、卑怯だよ。」
先程までではないにしろ上がる抗議にレヴュアタンは簡単に返す。
「嫌なら頑張ればいい。」
「それはそうだけど……。」
正論でもあるだけに強く言い返せない2-A。
「それに万が一馬鹿共が時間内に帰って来れなかったら、此処に居る全員が全教科100点とらなきゃ20位以内は無理だろうしな。」
「ええ! そんなにとらなきゃダメなの!!?」
そこまで厳しいとは思っていなかった柿崎は叫ぶ。
ため息を吐きながらレヴュアタンは言う。
「バカレンジャー+近衛+桜咲、あと誰かが居なくて計8人がいないから……つまり31-8で残り23人。全員が5教科100点とれば勿論平均も100点だ。それで全員の点数を足して2300点の時、クラスの平均点を出す為にそれを31で割ると、1人平均が約74.2点だ。毎回大体の1位の平均が81点位で最下位が69点位と考えれば多分74点なら20位以内に入れるかな? って感じだ。ちなみに平均が1点下がるたびに順位は激しく下がると思え、お前達だけでは最高で74.2点しか取れないんだからな。」
そう言ってクラス全体に危機感を覚えさせるように言うレヴュアタン。
これはもし7人が間に合わなかったらの事だが、レヴュアタンの授業により学年全体の社会の点数が向上しているためにこれよりもさらに厳しくなる可能性は高い為に冗談ではすまない。
「お前等はこれをやれ。」
そう言って彼はBSのソフトを取り出して言った。
「これが出来たら恐らくさっき言ったノルマはクリアできると思うぞ。」
先ほど言ったノルマ点数は、実を言うと7人が間に合わなかった時の最低ラインを彼なりに予想した点数だ。
大体このノルマを越えると1人平均97点で97×23÷31=約72点で20位のボーダーラインのすり切り一杯だ。
もしかするとこれでもダメかもしれない、それ程8人いないと言う事は厳しいのだ。
実際には1人はいないのではなくて見えないのだが。
「わかりましたわ。」
背に腹は代えられないと、渋々ゲームを了承する雪広。
こうして彼女達の2日間は地獄と化した。
―2-Fでの授業(社会)―
「授業始めるから席に着け。」
レヴュアタンはチャイムと共に教室に入って言う。
「起立! 礼! 着席!」
学級委員の生徒の号令で授業は開始された。
「え~と……今日は何処からだったかな?」
教科書をめくりながら言うレヴュアタン。
「今日は神様になる方法を教えてくれるって言ってましたよね!」
待ちきれない感じて言う生徒の言葉に内容を思い出すレヴュアタン。
「ああ、そう言えば次は神様になる方法を教えるって言ったな。」
「楽しみにしてたんですよ!!」
どうも興味があったようでクラスの大半が聞く態勢に入っている。
「あ~はいはい、神様になる方法ね。あれは別に概念的に神様になる訳ではなく、あくまで立場的に神様になる方法だからな。その辺を間違えるなよ。」
レヴュアタンの言葉に聞き入る生徒達。
「まあ言うは簡単だが実際にこの方法が成功した奴は俺の知る限り2人しかいない。」
「誰ですか!?」
驚いたように聞く生徒その1。
「まあ慌てるな、まずは方法だが……それは世界中の人間に神だと認めさせればいいんだ。」
「どうやればそんな事出来るんですか?」
方法が思いつかないように聞く生徒その2。
「う~ん……方法は人其々だが、1番有効とされている手段は1度死んで生き返る事かな?」
「そんなのやっと人いるんですか!?」
「まあ俺の知る限りではキリ○トと、と○だちの2人かな?」
とまあこんな感じで生徒達の興味を引く授業を彼はしていた。
―2-Aでの授業(社会)―
レヴュアタンは無言で教室に入る。
教室内の子供たちは言うまでも無く席についている。
レヴュアタンが中に入っても、誰1人顔を上げる事も無くただ手の中にある物に集中している。
それは携帯ゲーム機のBSだった。
そしてそこに刺さっているソフトは【柿太郎電鉄Ⅹ 魔法世界編もあるばい】 だった。
彼女達はまるで洗脳でもされているかのように黙々と攻略にいそしむ。
丸々一時間がそうして過ぎて行った。
―1-Eでの授業(英語)―
「ハイ皆、俺の後に続いて復唱するように……Is this a window?」
生徒達はレヴュアタンに続いて復唱する。
「「「「「Is this a window?」」」」」
「No,this is a pencil.」
「「「「「No,this is a pencil.」」」」」
「ありがちな英文だな。」
教科書を見ながら言うレヴュアタン。
いやないだろう……確かになんか似ているが。
―2-Aでの授業(英語)―
ネギが居ないためにレヴュアタンがこのクラスの英語の授業を受け持っているのだ。
しかし先程の社会の授業の時間動揺に皆無言でゲームをしている。
ゲーム機に刺さっているソフトは【脳を虐める悪魔のBSトレーニング 英語責め】 だった。
そしてこの時間も一言の会話も無いまま終了した。
土曜日の為に午前で授業が終わり生徒達は帰路に着く。
そのまま日曜日に突入しても彼女達がBSを手放す事は無かった。
そしてテスト勉強とは無縁のレヴュアタンは緩やかな休日を楽しんでいた。
尤も、こいつは毎日5日間のチャージタイムがあるのだが。
そのままゆったりとした休日になるかと思いきや彼は突然呼び出される。
―テスト16時間前・図書館島最深部―
水浴びをしていたアスナ達は再びゴーレムに襲われていた。
ネギは自身で封印していた事も忘れて魔法を使おうとしたが、やはり封印していただけあって使えなかった。
まあこの時使えてたら彼の教師生命は終わっていたかもしれないが。
ゴーレムから逃げる為、アスナ達は急遽出口を探す事にする。
このかは急いで皆の着替えや荷物を取りに行った。
「このままやと不味いな。」
そう言いながら荷物を集めるこのか。
その姿を見ている者が居た……半デコだ。
「キター! これは私の時代!!」
思わず叫ぶ半デコ。
半デコは物陰からずっとストーキング……じゃなかったスネークしてたのだ。
今の様子を離れた本棚の影から見ていた半デコは早くも助けた後の事に意識が言っている。
「召喚、近衛このかの従者レヴュアタン!!」
このかはそこでレヴュアタンを召喚した。
「ちょ! 私の出番が!!」
このかの行動に驚き焦った半デコはそのまま飛び出して言った。
「このちゃ……お嬢様!!」
「え!? せっちゃん!!?」
半デコの登場に驚くこのか。
「ご無事ですか!」
態とらしくこのかの前にひざまずく様なポーズをとる半デコ。
「せっちゃん、何でここに?」
驚きながらも問うこのかに見えないように、フォローを入れろとレヴュアタンに目で合図する半デコ。
「はぁ……近衛、そいつはお前の護衛で何時も影から見守っていたらしいぞ。」
小さくため息を吐きながら言うレヴュアタン。
「そうなん! せっちゃんなんで言うてくれへんかったんや!?」
「お嬢様がさえ無事でいて下さるのなら、私はそれ以上を望みません。」
内心でとんでもない事を望みまくっているにもかかわらず、そんな素振りは全くと言っていいほど感じさせない半デコ。
「うちは……うちは寂しかったんやで、何か嫌われる様な事してもうたんかと思ってんやえ。」
涙目で言うこのか。
「そんな事あり得ません!」
強く否定する半デコ。
「お嬢様。」
「昔みたいに呼んで。」
「このちゃん!」
叫ぶように言う半デコ。
「せっちゃん!!」
感極まって半デコに抱きつくこのか。
その時このかには見えなかったが、レヴュアタンにはバッチリと見えた。
半デコの顔がどこぞの天才みたいに、計画通り……となっていた事を。
「あ~~……いいのか、あっちは?」
言いにくそうにゴーレムの方を指差し言うレヴュアタン。
「あ! そうやった!!」
思いだしたかのように言いながら抱擁を解くこのか。
「チッ!」
抱擁が解かれた事に小さく舌打ちする半デコ。
言うなよ、と目線でレヴュアタンを責める。
「あ、俺が片してくるからお前等は続けとけ。」
引き気味にそういってレヴュアタンは1人ゴーレムに向かった。
面倒なのでレヴュアタンはゴーレムに向かって歩きながら指を突き出す。
「五式レーザー砲。」
その言葉と共に指先からレーザーが飛びさしてゴーレムに直撃した。
着弾したレーザーはゴーレムの上半身を吹き飛ばす。
どうでもいいけどレヴュアタンのレーザーは百八式まである。
威力は一式で爆竹程度、百八式でナッ○の挨拶程度だ。
「ええ!?」
「あ! レヴュアタン先生!!」
行き成りゴーレムが吹き飛んで事に驚いたがすぐにレヴュアタンの姿を確認してアスナ達は安堵した。
「お~い、お前等無事か?」
気の抜けたような声で聞くレヴュアタン。
「何とか無事です、助かりました。」
そう言うのは綾瀬だ。
しかしその綾瀬を押しのけるように慌てた様子でネギが聞いて来た。
「レヴュアタン先生! 何ですか今のは!?」
どうもレヴュアタンの放ったレーザーが彼の驚きを誘ったようだ。
「あれはCGだよ。」
事もなげに言うレヴュアタン。
「そうなんですか~……僕CGって初めて見ました。」
CGをよく知らないネギは簡単に騙される。
「ああ!? 魔法の本が燃えてる!!?」
「そんな~!!!」
アスナと佐々木が悲痛な声あげながら見る先にはゴーレムと一緒に吹き飛んだ本の一部が燃えていた。
「どうするアルか!?」
「あれがないと試験がダメになるです!!」
叫ぶ古菲と綾瀬。
何か暗い雰囲気が漂い始めたので自分のせいにされないよう、レヴュアタンは態とらしく芝居をしておいた。
「すまない……折角お前達が苦労して此処まで本を取りに来たのに、お前達を速く助けねばと焦って攻撃した結果がこの様だ。」
済まなそうな顔で言うレヴュアタン、もちろん演技だ。
「先生は悪くないでござるよ。」
「そ、そうよ! 私たち此処勉強してたんだから、あんな本なんてなくても大丈夫よ!!」
長瀬とアスナの声に頷く一同。
その言葉を聞きながらレヴュアタンが小さくガッツポーズをとっていたのは言うまでもない。
「じゃあ俺先に帰るわ。」
事もなげに言うレヴュアタン。
「でも帰り道がわからないんです。」
「大丈夫だよ、滝の裏に出口があるから。」
そう言ってレヴュアタンは皆を置いて先に帰って行った。
その後ようやく再会の挨拶を済ませたこのかと半デコの2人が戻ってきた。
その時2人の手に仮契約のカードがあった事は気にしてはいけない。
その後服を着たアスナ達も帰った。
所々に壁の様なものがあったが、全て爆発したように壊れていたので問題なかった。
その後、彼女達は寮に戻り徹夜で最後の追い込みをすることにした。
次の日の朝、レヴュアタンからアスナ達の帰還連絡をもらっていた雪広が一応様子を見に行くと、案の定寝ていたアスナ達は叩き起こされ教室に連れて行かれた。
そのおかげで遅刻はしないですんだのだが、彼女達は眠気を完全に取り払う事が出来ずに彼女達はテストを受ける事になった。
その様子を廊下から見ていたネギはアスナ達の眠気を覚ますために魔法を使おうとした。
「トゥース!」
「あだっ!?」
しかしその時ネギの頭を後ろから衝撃が襲った。
レヴュアタンが妙な掛け声とともにネギの後頭部にエルボーをかましたからだ。
何故彼がそんな事をしたかと言うと彼がチートは認めない男だからだ。
かけるなら平等に全生徒にかけるべきだと思っている。
「何するんですか!?」
後頭部を押さえてレヴュアタンに怒るネギ。
「悪い悪い、ちょっとつまずいてね。」
悪びれることなく言うレヴュアタン。
その時教室の扉が空き、中から試験管の先生が注意をしてきた。
「先生達、テスト中ですから向こうに行っていて下さい!」
「すいません。」
「はいはい。」
頭を下げるネギと、適当に返すレヴュアタン。
2人は廊下を後にし職員室に戻った。
その後もアスナ達は眠気と闘いながらもテストを受けきったのだ。
そしてクラス成績発表日。
放送部はやる満々でスクリーンまで用意している。
一部では食券を賭けている奴等もいるようだ。
どこぞの悪魔は余程結果に自信があるのか2-Aの1位に3000枚賭けていた。
そしてついに発表が始まった。
<<2年生の学年平均点は75.6点! 通常の平均点と比べてやや高いですね。全体的に社会の点数が高かった事が原因でしょう。――では第2学年の成績を良い順に発表しましょう!>>
まずは第1位からの発表のようだ。
<<第1位――2年A組!! 平均点87.0点!!>>
「「「「「やったー!!」」」」」
「おめでとうネギ君!」
「おめでとう!!」
発表と共に巻き起こる歓声。
2-Aの生徒達は次々にネギに祝いの言葉を述べる。
そのままネギを胴上げして祝賀会に突入しとていったのだ。
教師の1人が喜んでいる生徒達に近づいて告げた。
「桜咲、お前補習だからな。」
そう言って教師は去って行った。
そして馬鹿ホワイトが誕生したのである。
余談であるが2-Aの生徒達の成績は。
図書館島に行っていなかった生徒達だけの平均を計ると97点だった。
図書館島に行っていた8人の成績を足す。
それに神楽坂アスナ75点。
綾瀬夕映69点。
長瀬楓63点。
古菲68点。
佐々木まき絵68点。
近衛このか94点。
桜咲刹那29点。
相坂さよ0点。
もし見えれば馬鹿クリアが誕生していたかもしれない。
いや、そもそも彼女は馬鹿なのか?
それはわからないが一つ言える事は、彼女としてはバカレンジャーでも何でもいいから皆に見えるようになって欲しいだろう。
おまけ
Mは完成した縄製のブランコの輪の部分に、何故か首を入れて台から飛んだ。
M(マダオ)の大冒険(就職活動)vol.6「M(マダオ)逝っきま~す!」
あとがき
お久しぶりです。
この度板を移させて頂きました。
刹那が変態になりました。
以後モノローグでは刹那は半デコと呼ばれます。
ではまた次回。