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[11856] 【ネタ】朝起きたらメイドだった(H×H オリ主TS憑依)
Name: キノコ犬◆8f51415c ID:0246ef06
Date: 2009/09/17 00:11
注意書き(必読)
・オリ主のTS物です。恋愛要素は未定。
・オリ主には原作知識がありません。
・携帯からの投稿です。少し読みにくいかも。
・専門的なことは深く書きません。というか書けません。
・結構最強系かもです。

以上でもよろしい方はどうぞ。



プロローグ



「んあ?」

目を覚ますと、知らない天井だった。

昨日はサークルの新歓コンパで……入学早々、お堅いヤツだと思われたくなかったから、飲めやしない酒を浴びるように……

酔っ払って、誰かの家に泊まったのかな?

それなら大学生活の滑り出しは上々だ。朝まで馬鹿をやれる友達ができたのなら『ぼっち』にはならない。

……流石に女の子の家ではないだろう。この部屋からは男の生活臭がするし。
昨夜の記憶はまったくないが、童貞は捨てていないはずだ。

「あーー…」

体に違和感がある。頭や胸の辺りが重い。
これが二日酔いという現象か…
声も高いし、風邪がミックスされてるかもしれない…

誰の家かは分からないが(というか酒飲んだあたりから記憶がないから人の顔と名前が一致してない)、洗面所を借りよう。
とにかく顔を洗ってスッキリしたい。

立ち上がって洗面所を目指す。何故か場所が分かったけど、昨日使ったんだろうな。多分。


バシャバシャ


「ふうっ」

体から違和感は消えないが、ぼーっとしてた脳味噌は活性化しはじめた。

タオルで顔を拭く。
なんか今日の肌は異様にぷるんぷるんだったな……張りもあったし。

太ったのかな?

なんて考えながら鏡に目を向ける。





そして、そこにはメイドがいた。


「………メイドさんですね…」


俺の喋った通りに、鏡の中のメイドさんが口を動かす。


人間、ありえない事態が起こると逆に冷静(?)になるらしい。
鏡に映ったメイドさんの、というか自分の容姿を確認する。

肩にかかるくらいに伸びた、青が強めの空色の髪。
紫がかった黒の瞳。
綺麗にまとまった顔。
豊かな胸。
ウエストも感覚的には締まっているし、ヒップも、多分いい感じなのだろう。
身長は160後半くらい。
年齢は17、18くらい?

そして……メイド服。
ヘッドドレスまでつけている。
スカートは膝にかかるか、かからないかぐらい。
……脚とかからの感覚を考えると、ガーターベルトを着用している。
全体的に見ると、エロいメイド服ではないがコスプレっぽさが強い。

「まるでエロゲキャラですね………」

女の子ボイスでそんなセリフが出る。実際見た目はエロゲキャラだし。
てか、さっきから口調が丁寧な感じに強制変換されてる!?

「私はどうなってしまったんでしょう?」

『俺はどうなったんだ、一体!?』みたいなことを言おうとしたんだが………やはり変換されるらしい。


とにかく、俺はメイドになった。そして口調は女性っぽく丁寧に変換される。
それだけは分かった。



…………この時点で許容量を越えている。
何で女に?しかもメイド?ここって男部屋じゃないの?


様々な疑問が浮かぶが、まともに考えられない。
いや、こんな非常識な現象を『まとも』に考えてどうする。
……情報が足りない。

「とりあえず、この家を調べますか…」

何か出てくるかもしれないし。







「これは……」

一番最初にいた部屋に戻ると、一人の男が死んでいた。
年齢は30代に入ったばかりといったところ。椅子に座り、机に突っ伏して死んでいる。
悪臭はしないし、腐ってはいないようだ。
………というか、案外平気な自分にびっくり。普段は猫の死体とかでも気分悪くなるのに。現実逃避の一種かな?
理解不能なことが多すぎる。

机の上には錠剤の入った瓶とノートが。
睡眠薬自殺だろうか?

ノートは遺書代わりかな…。
下手に弄るのは駄目なんじゃないか?とかを全然考えずにノートをめくった。

そこに書いてある字を見たことはなかった。そのはずだ。
そのはずなのに、スラスラ読めた。


『今日は私の30歳の誕生日。結局、童貞を捨てられずに魔法使いになってしまった。
……念能力者の私が魔法使いというのも、おかしな話だな。
それにしても、一流の賞金首ハンターの私に彼女ができなかったのは何故だったのだろうか?
修行漬けのつまらない男、とか、死神、とか散々言われたな…収入は凄いのに。

彼女ができないのなら風俗へ!
そう考えたこともあったが、やはり初めては愛する人としたい。
だが私を愛してくれる人間が三次元にいるのか?

…そこまで考えて閃いた。彼女ができないのなら、文字通り「作れ」ばいい。

思いついてからは速かった。ハンターの権力を使い、犯罪者の女性の新鮮な死体をいくつも手に入れ、女性の体の具現化イメージ修行を始めた。
私は変化系能力者だが、無理ではないだろう。
だんだん元の能力が使えなくなってきたり、仕事仲間からも白い目を向けられたが、彼女を作ることと比べたら些細なことだ。
造り出す彼女を理想に近づけるため、エロゲ……高尚な文化をたっぷりと学んだ。やはりメイドさんは最高だ。

そして、とうとう能力が完成した。その名も「メイドインヘヴン(理想の俺の嫁)」。
彼女は私を無条件に愛する、最高のメイド嫁……………に、なるはずだった。

私の最大の誤算は、具現化した彼女を動かすのには操作系の才能が必要なことだった。
私は変化系。操作系の才能なんてあるわけがない。

泣いた。それはもう泣いた。隣の部屋の人に怒られた。

結局できたのは高性能ダッチワイフみたいなものだ。
見た目は美しい。だが、心がない。
抱こうか悩んだが、恐らく虚しいのでやめた。

この能力を作るために戦闘用の能力は食い潰したし、沢山あった金もなくなった。ハンターライセンスで金を借りることも出来たが、なんか、燃え尽きた。

私は親に捨てられてから、一人で生きてきた。誰にも愛されない人生。
それを終わらせたかった。

本当なら彼女に「メイ」という名前をつけ、愛し愛される人生を送る予定だったが…無理なら仕方ない。

一人で生きるのには疲れた。死んでメイドさんの国に行くのもいいかもしれない。

遺書みたいになってしまったが……というか遺書だな。友達も家族もいないのに。

………心残りは「メイ」のことだ。私が死んで、彼女が消えるのならいい。
だが、彼女が「死者の念」になる可能性も高い。私の愛で。

どのような形になるのかは分からない。自意識が目覚めるのか、化け物になるのか…。

私の勝手な都合で生み出した彼女だが、私がいなくなって自意識が芽生えたのなら幸せで健やかに暮らして欲しい。一人の人間として。


………遺書にこんな妄想を書くのは私くらいだろう。死者の念なんて、普通は呪いの類いになるのに…。


…………そういえば、来週行われる今年のハンター試験のナビゲーターを引き受けてたような………まあいいや。

全ての童貞と、メイに幸あれ。




キング=ドートゥウェイ』



「ひぎぃっ!」

この遺書を読み終わった瞬間、頭に触手のように情報が流れ込んできた。とても痛い。

念のこと。ハンターのこと。この世界のこと。恐らく、キングとやらの知識や経験だろう情報。

そして、自分の状態。



…………俺はキングが死の瞬間に願った『メイに人間として幸せで健やかに育って欲しい』という思念に引っ張られて、世界の壁を越えてメイに乗り移ってしまったらしい。
心がないのなら、持ってくればいいじゃないという感じ。

異世界に来るだけでも凄いのに造り物に乗り移るとか………しかし、マジで人間になってるっぽい。何故か分かる。

キングの持ってた知識から考えると有り得ない。
いや『有り得ないなんてことは有り得ない』とも言うか……。

死者の念は強い、という情報もあるが、そこに人間の魂が加わって人間になった。
無理があるけど、そんなところだろう。
男の魂なのにな……。

というか、この世界に呼ばれる前の俺は魂だけの状態だったらしい。
急性アルコール中毒で死んだ…ってところか。

何気にキングは命の恩人だった。
…………数々の性技がインプットされてたのには腹が立つが。
愛する、というよりエロいことしたかっただけじゃないのか?


性技の他には戦闘技能やらこの世界の常識やらが。
キングが死んだ時に大部分が『メイ』に流れ込んでいたんだろうな。流石に記憶までは貰えなかったが。

それに、もとは『死者の念』だったもの+俺の魂(これも死者の念みたいなものな気がする)で、オーラ総量が凄いことになってる。キングの愛(妄執)の影響か、オーラの見た目がまがまがしいし……まるでラスボス。『健やか』に暮らすために付加された能力も便利だし。もしかしてチート?

まあキングの知識が基準だし、他の念能力者のことも知らないから実際の強さは分からないけど。
…死体見ても淡々とできたのはキングの経験からだったんだろうな。


それにしても、

「これからどうしましょうか?」

戸籍もないし、部屋には死体。

キングの死体を放って置くのは、ちょっとできそうにない。能力の影響か、自分のなかでのキングへの好感度の初期値が凄い。

まあ、新しい命も貰えたし葬式ぐらいはしてやりたい。

だが、俺には戸籍がない。
喪主になれないし仕事もできない。


そうなると、

「ハンターライセンス……」

キングも持っていた、最強の身分証明書。
ありとあらゆる特権がつく上に、受験資格は誰にでもある。
これを手に入れるかな…。
今年の試験は来週らしいし、会場はここから三日もかからない。
基礎身体能力も、何トンとかの物体を動かせる人外レベルでプロハンターが使う技術の念も使えるし、プロハンターだった人間の知識もある。


試験の内容はわからないが、かなり合格できる可能性は高いだろう。
それで身分証明書を手に入れ、キングの葬式をする。
その後は…………その時に考えよう。ライセンスを手に入れたら色々できるらしいし。



唐突に学生生活は終わりを告げた。
ショックではないと言えば嘘だが、あまり考えすぎても気分が悪くなる。
今は先のことを考えよう。

戸籍を手にいれたら、名前はどうしようか?
もとの名前は何故か思い出せないし『メイ』にするほかないのだけど。
名字は……キングのを使おう。




さて、これから『メイ=ドートゥウェイ』としての人生が始まる。
いろいろ後回しにしてるけど、まずはハンター試験、頑張るぞ!


<続け>

ハンタのSSはあんまり読んだことないんで、ネタが被ってないか不安です。まあ、『死者の念』っていうのは某主人公の正体に度肝を抜かれたSSの影響ですけど。

『メイ』の見た目は某エロ漫画の表紙の人です。題名は本編で微妙に出てます。

また次回、があったらいいな。



[11856] 1話・能力名修正
Name: キノコ犬◆8f51415c ID:0246ef06
Date: 2012/02/09 02:57
メイの保有能力(メイ自体は変化系能力者)

・『右手は恋人、左手は愛人(セルフハンドラバーズ)』
変化系能力。
刃物の特性をもたせたオーラを手刀の形にした手に纏わせる能力。サイズは手に纏わせるくらいから身の丈ほどまで変化できる。
手を手刀の形にしないと発動できないし、手刀から形を崩すと能力が解かれる。いろいろ切れる。メイはこの能力を『手』と表現することが多い。
流石に正式名称を常に使うのには躊躇いがあるようだ。


もともとキングの能力だったが、メイが人間になりメイドインヘヴンが実質消滅したことでメイの能力として復活。当然、能力を命名したのは故キング。



・『理想の俺の嫁(メイドインヘヴン)』
操作系能力。
具現化系能力の部分はメイが人間になったことで実質消滅したが、キングの無念から『死者の念』としてメイに影響を与えている。

しかしキングは操作系の才能が皆無だったため、精神が女性に近づく程度の効果しかない。キングにもう少し才能があったらこの作品はXXX板に連載していた。

メイは今の体になったのが原因と考えていて、この能力に気づいていない。



・『メイド服(ゴッドクロス)』
具現化系能力。
キングの「メイに幸福で健やかに暮らして欲しい」という思いからメイに備えられた能力。「死者の念」による呪いに近い故に、制約と誓約がないに等しい。しいて言えば普段着がメイド服になるくらい。
すいません、制約ありました。

メイド服一式(下着含む)を具現化する。素っ裸でも具現化すれば一瞬でメイド。常に綺麗な状態をキープするので洗濯いらず。

着ていれば防御力が凄く上がる。いろいろなことから守ってくれる。



1話

………攻撃能力も防御能力も効果が抽象的すぎると思う。なんだよ、いろいろって。
まあ自分で能力作る手間がかからないのはいいけど。

それに、『手』も『メイド服』も昔からの愛用品のように馴染む。
この肉体の創造主が作ったんだから当然か。

あんまり馴染むもんだからメイド服か下着で過ごしてる。

……この体はエロいが、見ててムラムラするとかはなかった。
もはや自分の肉体だし、今は自分も女だからかもしれない。
息子がないのは少し寂しい。

息子の代わりに付いたものは………正直、弄くるのが怖い。
女の快楽を知ったら戻れなくなりそうな気がする。
……もう戻れやしないんだけど。

いっそ開き直るかな?

でも、男に抱かれる覚悟はちょっとないな……


よし、後回しにしよう。



今はザバン市のホテルにいる。
会場の場所や合い言葉が書いてあった紙はキングの家を探したら見つかった。
ナビゲーターになってくれてて助かった。もはやご都合主義。

キングの死体は、何故か冷蔵庫機能付きの棺桶があったのでそれに保管した。

多分、遺書に書いてあった新鮮な女性の死体用だったんだろうな………。


後三時間ほどで試験開始。
そろそろ会場に行くかな。





「ステーキ定食」
「焼き加減は?」
「ミディ……弱火でじっくり」

実に危なかった。
店員の怪しい人を見る目がツライ。

というか、こんな合い言葉でいいのだろうか?
普通にステーキ定食食いたかった人がハンター試験会場についたりとか……よく見たらメニューにステーキ定食がなかった。



地下に下るエレベーターに乗り、会場に到着。
着いた瞬間、他の受験者たちに変な目で見られた。
街中でもそうだったけど。
でも、何故か別の服を着る気も起きないんだよなあ。

入り口で突っ立ってたら係員の人が丸いプレートを渡してきた。これに書いてる数字が受験番号らしい。


397番。もう少し遅く来ればキリ番ゲットだったのに……。

それにしても、みんなピリピリしてる。ライバル同士だし仕方ないか。


「君、新人だね?」

「へ?」

いきなり声をかけられた。
さっきピリピリしてると思ったばかりだったが、フレンドリーな受験者もいるらしい。

「そうですけど……あなたは?」

「俺はトンパ」

「私はメイです」

話しかけてきたトンパさんとやらは、背が低めの太った中年男性だった。



それにしても

「なんで私が新人だと分かったんですか?」

「俺は10歳の時から35回も受けてるからね。初めて受けるヤツは分かるってことさ」

35回……

「普段はどんなお仕事を?」

「ん?…アマのハンターとして働いてるよ。収入はそれほど多くないけど、独身だから問題ないしね」





……………この人、すげえ。
子供の頃からの夢を、この年まで追い続けるなんて…。なんという不屈の精神。

普通は現実に打ちのめされて諦める。

だが、この人は諦めずにこの場所にいる!

か…漢だ…!


「トンパさん」

言って、トンパさんの手を両手で握る。

「今年こそ絶対合格しましょう!応援します!」

「あ…ああ……」

「あ!すいません!」

そりゃあ、いきなり手を握られたらびびるよな。失敗。

「べ、別に気にしてないよ………つまり、俺は試験の大ベテランなんだ。
分からないことがあったらなんでも聞いてくれ」

「トンパさん……」

いい人だな、本当に。
ライバルになる人間の手助けなんて…これで落ちてるのかな?

「では聞きますけど……あそこのピエロとか顔面針畑の情報ってありますか?」

この会場に着いてから真っ先に気になった二人だ。
二人とも、おそらく念能力者。

纏っているオーラが一般人と違い、俺と似たような感じ。
……まがまがしさも俺と似てる。オーラってそういうものなのかな?

「ああ。ピエロの方はヒソカ。
去年合格確実と言われながらも、気に入らない試験官を半殺しにして不合格になった。試験官以外にも受験者を20人は再起不能にしてる。こいつには関わらないほうがいい。
針のほうは君と同じで新人。
それ以外は分からないな。」

「それはまあ…」

随分いかれたヤツらしい。
しかも念能力者。最悪だ。絶対関わんない。

「他にも有名所はいるが…」

「いえ、その二人だけで十分です」

今の肉体で念能力者以外に負けるとは思えない。
素の肉体でさえ、もとはプロハンターが作った念獣なのだ。

「結構自信あるみたいだね。
……さて、合格を祈って乾杯でもしないか?
ジュースだけどね。」

そう言ってジュースを渡すトンパさん。

……新人の俺を気遣ってるんだろうな。

「では、ありがたくいただきますね」


ジュースを飲む俺を、とてもいい笑顔で見つめるトンパさん。

て、照れるじゃないか…。

「ご、ご馳走さまでした。
いろいろとありがとうございます」

「どういたしまして。
これからも困ったことがあったら聞いてくれよ」

「トンパさんも、困ったことがあったら言ってくださいね。
私が助けてあげますから!」

「はは、そうするよ。
それじゃあ、また」

いい仕事したぜ、みたいな顔をして去っていくトンパさん。かっけー。



………受かって欲しいな。


でも、あまり人のことばかり考えている場合でもない。
合格できなきゃ根なし草。それは避けなきゃいけない。









試験の対策を考えていると、開始の合図がなった。

それと同時に試験官の男が現れる。
どうやら念能力者のようだ。
おそらくはプロハンター。
オーラは…まがまがしくない。いや、まだ3対1だ。

一次試験は、とにかくあの男について行けばいいそうだ。

そして


「六時間とか…」

走り始めた辺りはトンパさんが心配して話しかけてくれた。
お腹痛くないか、とか。

大丈夫だと答えると不思議そうな顔をした。
見た目に騙されてるな。


俺は今、最後尾付近を走っている。前の体の感覚で体力を温存しようとしたんだが……全然必要なかったな。息ひとつ乱れない。
この体のスペック、というかこの世界のレベルをまだ嘗めていたらしい。
脱落者が出ない。

流石に超難関試験。受験者も化け物揃いか。


「ぜーっ、ぜーっ、はー、はー、はー…」

…さっきから、考えたことと逆の現象が起きてる気がする。
隣で走ってた若くて小綺麗なトンパさんみたいなヤツがもう駄目そうだ。

「大丈夫ですか?」

「ひゅー…ひゅー…」

会話も無理そうだ。

「今年は諦めませんか?
死んだら元も子もないですよ」

「ぜーっ、ぜーっ」

「世の中には35回もこの試験を受けている人もいるんです。1回落ちるくらい、たいしたことないですよ」
すいませんトンパさん。

「超難関試験なんです。
1回で受かる人の方が珍しいんです」

「ひゅーっ、き、……君…は、ぜーっ」

「ん?」

「はーっ、どうする、ん、ぜーっ、ぜーっ、だい…」

「私は続けますよ。今年受からなきゃ不味いんです。

それに…まだ全然余裕ありますしね」


そういうと、隣の男は絶望した顔でその場に崩れ落ちた。



あれ?俺、なんか悪いこと言った?



少し前の方を走ってた、似たようなメイクをした帽子三人組が俺に微妙な目線を向けている。
あ、トンパさんもいる。なんか笑顔だけど、あの笑顔は……

もの凄く気を使われてる!?







それに耐えきれなくて、一気に前方集団に躍り出た。

<続ける>
どうも。続きました。

前回は本当に申し訳ありませんでした。
携帯からパソコンサイトビューワー使って投稿してたんですけど、プレビュー押してもプレビューが出なかったんですよね。
そしたら、あんな事態です。
血の気が引きました。


ハンター試験編です。
トンパの普段については独自設定。
おかしい…なぜトンパフラグが立ってるんだ。
レオリオを希望してくれた方、ざまあ(ry


キングは金持ちでしたが、女性の死体を手にいれるために全財産を使いきりました。
いろいろな女性の死体を見聞して修行したようです。

『メイド嫁』読者が多くてびっくり。見た目だけ借ります。
鬼月あるちゅ先生の作品がコミックになって喜んだのは作者だけではなかったんですね。


ドートゥウェイは、はい、童貞です。
ちなみにメイと組み合わせるとメイド帝になります。強引ですね。


感想返しみたいなのをここでやってしまいましたが、感想掲示板のほうが良かったですかね?


では次回。





[11856] 2話
Name: キノコ犬◆8f51415c ID:0246ef06
Date: 2012/02/09 03:01
さて、勢い余って先頭まできたものの……

「階段ですか」

ちょっと不味いかも。
体力ではなく、スカートの中身が。

角度あれば後ろのヤツらに見られるんじゃないか?

そう思ったけど、杞憂だったようだ。
後ろの集団から「ちっ」とか「なぜ見えない……」とかの怨みがましい声が聞こえてくる。

………どうやら『メイド服(ゴッドクロス)』はスカートの中も守ってくれるらしい。

2話

階段に突入してからは脱落者が増えた。
高低差があるとキツいよね。胸が揺れて邪魔。

俺の前を走る試験官は、普通に歩く感じで二段飛ばしで登ってる。
見た目が気持ち悪い。


そんな感じで先頭を走っていると、10歳越えたぐらいの男の子二人が前の方に出てきた。

一人は釣竿を持った黒髪のツンツン頭で、もう一人はスケボーを持った白髪…というか銀髪の生意気そうな子。
こんな子供が試験に参加してるのにも驚いたが、先頭集団に来たのにはもっと驚いた。
銀髪の方は汗ひとつかいてない。俺もだけど。

二人で会話する余裕もあるようだ。
なんとなく聞き耳を立てていたら結構いろいろ分かった。
黒髪の方の名前はゴンくんで、銀髪はキルアくん。
ゴンくんはハンターの父親を探すためにハンターになりたいそうだ。
ろくな父親じゃねえ。
キルアくんは難関だから受けてみた、だけど簡単で拍子抜け。みたいなことを言ってた。
まあ、それは俺も思ったけど。まだ一次試験だし。
専門的なことを扱う試験が出てきたらかなり危ないだろうな、とも思う。


盗み聞きしてると地上に到着。どっかの湿原に出た。

服汚れそう。あ、汚れても綺麗になるんだったよな、確か。やっぱ便利だな『メイド服』。

試験官の説明によると、ここは『詐欺師の塒』。
人を騙して餌にする動物とかの住み処とのこと。

……ようは試験官にぴったりくっついてたら安全ってことですね、わかります。

完璧な計か「嘘だ!そいつは嘘をついている!」く……はあ?


試験官が説明していると、自称試験官の男が、今の試験官は猿で自分が本物の試験官だとか言い始めた。

確かに…今の試験官の見た目は自称試験官が持ってきた猿そっくり。だけど、今の試験官…サトツは念能力者。
猿ごときに負けんだろ。


そう思ってると、自称試験官の顔にトランプが突き刺さった。サトツの方にも投げられていたが、しっかりキャッチ。

投げた馬鹿は……例のヒソカってヤツだった。
アイツも念能力者ならサトツは本物だと分かるだろうに…なんで試験官に喧嘩売るんだよ。オーラの感じも好戦的だし。

バトルマニアとか殺人狂だったりするのかな?



結局、なんだかんだで上手いことまとまって試験続行。
俺は当初の予定通り試験官の後ろでぴったり。

だって、ヒソカのオーラがなんかヤバい。後ろの方にいたらアイツの暴走に巻き込まれそうだ。

念能力者に自分がどこまで通用するのか試したい、とも思ったけどアイツは難易度高過ぎる。オーラがまがまがしいし、殺気がおかしい。

……オーラのまがまがしさなら負けてない自分が悲しい。

走っていると後ろの連中がはぐれたりして人数が減り、悲鳴も聞こえてきた。

…うん、平気だ。
他人の命にドライになっているのが分かる。その方が精神衛生上いいけど。

後ろのゴンくんとキルアくんは大丈夫そうだな。霧で全然見えないが会話は聞こえるし。
さっきはゴンくんが大声で友達を呼んでた。
うん、前に来ないと真面目に死ぬぞ。


ふと、空気が変わった。
ヒソカが殺戮を始めたのだろう。聞こえる悲鳴の種類がさっきと違う。


まあ、はぐれた時点でほとんど死んだようなものだから、速いか遅いか程度の違いしかないんだろうけど。

だけど、ゴンくんが後ろにいる友達を助けに行ったのは予想外。戻ってこれるの?

というか、あんな子供を殺したりは流石にない…よね?


……殺しそうだなあ。
助けてあげたい気もするが、試験官から離れたら確実に迷う……。
こっちも生活かかってる=命がかかってるからな。

こんな試験に自分から参加したんだ。死んでも自己責任。

何か戻ってこれる策もあるかもしれないし。




悶々と自己弁護してたら、いつの間にか第二試験会場到着。
体育館ぐらいの大きさの建物の中から獣の唸り声っぽいのが聞こえる。


着いてから試験開始まで待っていると、成人男性を抱えたヒソカが到着。死体ではないようだ。
もしかして友達?

遅れて少し。ゴンくんと金髪の少年が到着。金髪の少年がさっき呼んでた友達かね。
それにしても生きてたのも凄いが、なんでたどり着けたんだろ。ヒソカも。

ゴンくんと金髪の少年はさっきヒソカが抱えてきた成人男性に駆け寄る。
知り合いらしい。

相互関係とか霧の中で何が起きたのかとか超気になる。



とにかく、ほっとしたけどね。盗み聞きなんてするんじゃなかったな。多少情が移った気がする。



そして第二試験開始。
試験官はメンチとブハラ。メンチはスタイルのいい美人で、ブハラは肉の固まりだった。ジョジョ第五部のポルポみたい。
さっきから聞こえてた音はブハラの腹の虫だった。ひでえ。


二人とも念能力者。オーラの感じは……普通。
これで俺が知ってる念能力者でオーラがまがまがしいのは3人、オーラが普通なのも3人。

………いや、もう薄々気付いてるんだよね。こっちが少数派だって。まがまがしい側は殺人ピエロに顔面針畑になんちゃってメイドさんだ。

だけど……あの二人と同列に見られるのは嫌だな……。




試験内容は、メンチとブハラが出したそれぞれの課題の料理を提出し「おいしい」と言わせれば合格。

…………一番危惧していた試験に近いかもしれない。
料理は得意な方だが、専門的な料理が課題に出されたら手も足も出ないぞ。


最初はブハラ。課題はブタの丸焼き。
ここに棲んでるブタをなんでもいいから捕まえて丸焼きにしろとのこと。


あれ?楽じゃね?
ブタに負ける気はしないし、丸焼きなら軽い下処理だけで済む。


探すこと5分。異様に鼻がデカいブタがいた。

しかも突進してきた!?

「ちっ!『右手は恋人、左手は愛人(セルフハンドラバーズ)』!」

咄嗟に能力を発動して縦に真っ二つにしてしまったけど、念は必要なかったかも。前の体の価値観とこの体での価値観が混ざってるのが面倒なところだ。

それにしても、いい切れ味。骨にも手応えを感じずに切れる。





「半分でも丸焼きっていうんですかね……」

真っ二つにしたブタを焼いてブハラのところに持って行った。
ブハラは特に気にせずに食べてた。


というか他の人たちの焼き方がアバウトすぎる。
ほぼ生だったり、もはや炭になってるブタもある。

それを旨いというブハラはなんなんだろ…しかも食べる量がおかしい。
持ってこられた約70頭を全部食べてた。
………見てるだけで吐きそうだ。



続いてメンチの課題。
『スシ』だった。握り寿司しか認めないとも言ってた。




これは、マジでツいてるのかもしれない。


早速川に魚を取りにいった。ご飯は準備してあったし。

川にそこら辺にあった大岩を叩きつけて魚を気絶させて漁終了。
何匹か身繕って会場に戻り調理開始。

会場に戻る最中に川に向かう受験生たちと入れ違ったけど、ヒントが出たりしたのかな?

まずは一番海魚の見た目に近いフグっぽい魚で作ってみた。ちょっと食べて見たけど結構美味しかったので提出。一番乗り。



「ブフゥッ!!」



盛大に噴出されました。
メイド服に飛び散った分が自動洗浄される。

「この魚!思いっきり毒があるじゃない!成人男性百人殺せるわよ!!
あんた試験官殺す気!?」

「え?私が食べても平気でしたけど…」

「どんな胃袋してんのよ…。
とにかく、もう持ってくんな!!」


ヤバい。超ヤバい。
一次試験で試験官にトランプ投げたヒソカより危険人物になってしまった。

てか、なんで俺は平気なんだろう……………『メイド服(ゴッドクロス)』か!

『いろいろ』の範囲が広い。もしかしたら防御タイプの能力じゃ最強クラスなんじゃないだろうか。
多分、肌が荒れたり髪が痛んだりしないのも『メイド服』のお蔭だしな…こりゃあ『健やか』に暮らせるわ。


悩んでる間に他の受験生が面白寿司作ったりハゲの忍者が作り方バラしたりしてた。

俺は新しい寿司を持って近づくたびに睨まれて追い返された。




最終的に、合格者ゼロ。誰かがメンチにメンチ切ってた気がするが割りとどうでもいい。
メンチの言い分は理不尽極まりないが、俺の件については俺の方が悪い。試験官を毒殺しようとする受験生は今年じゃ俺だけだろう。


絶望してると、お爺さんが空から降ってきた。
審査委員会の会長だそうだ。



あのお爺さん…半端じゃなく強い。総オーラ量ならそこそこいい勝負できるように思えるが、お爺さんのオーラは今まで会った(まだこれで6人)誰よりも洗練されてる。勝てる気がしねえ。


お爺さん…ネテロ会長からの進言で再試験が行われることになった。
お題はゆで卵。

クモワシとかいう、崖にクモの巣に似た巣を作る鳥の卵を使って作るというもの。
卵は簡単に取れた。崖を飛び降りるのには勇気が必要だったが、スカートの中の心配が必要ないと思うと意外と何でもできるもんだ。

既に前世の価値観が麻痺してきてる。


今度は合格。相変わらず警戒されてたようで、卵を取ってくるところから茹で終わるところまで監視された。
毒なんて所持してません。




飛行船に乗って三次試験の会場へ。ネテロ会長も一緒に来るみたい。
翌日の朝8時開始とのこと。起きられるかな?


あ、トンパさんが金髪少年とヒソカに担がれてた成人男性に注意してる。

……なるほど。開始時間や次の会場がブラフで、ここで試験が行われる可能性もあるのか。

それなら

「じゃあ、トンパさんは寝ててもいいですよ。
試験が始まったら起こしてあげます」

「うおおおおおっ!!
いつからそこにいた!?」

「トンパさんがさっきの二人に話しかけた辺りからです」

『絶』を使って近づいたのは失敗だったな。驚かれてしまった。

「ということで、トンパさんは休んでください。
私は全然疲れてないし、一晩寝ないくらいどうってことはないので」

起きられない可能性を考慮すれば寝ない方がいいかもしれないし。
『絶』状態なら体力を温存できる。

「いや、疲れてないってのはさすがに……」

「いえ、本当に疲れてませんよ」

マジで。

「………それじゃあ、お言葉に甘えさせて貰うよ」

「はい、お休みなさい。
明日も頑張りましょう!」

「ああ、お休み……」

すんごい疲れた顔をして部屋の隅に行くトンパさん。
四捨五入すれば50代。一般的にはかなりハードな試験だし、疲れるのも当然かな。

このくらいの手助けならしてあげてもいいと思う。
こっちの世界で初めて優しくしてくれた人だし。




さすがにまだ時間はあるだろうし、とりあえず備え付けのシャワーでも浴びるかな。

<続く>
感想掲示板には紳士が多いようですね。

能力名が酷いと突っ込む人は作者と同じレベル、もしくはハイレベルの紳士です。

主人公たちと少しは絡ませるつもりだったのに、未だにトンパとしか会話してねえ………






[11856] 3話
Name: キノコ犬◆8f51415c ID:0246ef06
Date: 2012/02/09 03:04
・『メイド服(ゴッドクロス)』補足説明
『いろいろなことから守る』のいろいろとは病魔や毒、果ては念能力にまで及ぶ。念能力から守ると言っても操作系能力が効かなかったり(既にメイドインヘヴンの操作を受けているからでもあるが)、敵の攻撃用の念をある程度押さえるといったもの。単純な能力ほど防ぎやすい。しかし、強化系相手にはあまり意味がない。基礎能力までは防げないからだ。
基本的な能力は防御力の増加。纏の状態ならば常に堅を発動しているようなもの。絶の状態でも通常の纏ほどの防御力になる。

能力の出し入れはメイの自由だが、この能力はキングの『死者の念』である。よって、メイの容量はほとんど使われていないし独立している。
隠もかかっているため、凝を使われなければ念能力だとは気付かれない。

容量を使わず、制約も軽い。

効果の割りにリスクが少ないので、便利さでは世界トップクラスの能力と言えるだろう。

3話

………毒を食べても平気だったあたりから『メイド服(ゴッドクロス)』についての追加情報が頭に流れてきた。

これだけの能力を呪いとしてではなく、『メイ』を守るために造り出したキングは天才だと思う。
才能使う方向間違えてるけど。



トンパさんと別れて飛行船を散策していると、死体が二人分転がってた。

ヒソカに喧嘩でも売ったのかな…?

いや、ヒソカはさっきの大部屋の隅でトランプタワーを作っていた。寂しいヤツである。
つまり、こいつらはヒソカが殺したわけではない。

……ヒソカ以外にも殺すの大好き人間がいるのか……気が滅入る。


にしても、この死体どうしよ?

試験官の人に聞くかな。







コンコン

試験官の人たちがいる部屋の扉をノックする。

「すいません、受験生です。試験官の皆さんに試験とは関係のない用事があるのですが……」

返事はなし。
開けても…いいよね?

「失礼しま「どらあっ!!」すぁあああ!!?」

いきなり何!?

メンチさんが包丁で切りかかかってきたんですけど!

「プロハンター3人に喧嘩売りに来るとはいい度胸ね……」


はあ?


「なぜそんな結論に」

「そんな邪悪なオーラを纏った上に、私を毒殺しようとした人間の試験とは関係ない用事なんて殴り込みしか考えられないじゃない!!!」

なるほど。納得。

「いやいやいや、そんな、ヒソカじゃあるまいし」

「ヒソカ?ああ、44番ね。
あんたもアイツと同じぐらいヤバいな、って今みんなで話してたとこよ」

ジーザスッ!

「とりあえず、今の要件は殴り込みではありません。
廊下に受験生の死体が落ちてるので、どうすればいいか聞きにきただけです」

死体が落ちてる、の辺りから警戒度を上げるメンチさん他二人。

「……そう。放っておいていいわ。そのうち係員が処理するから」

「わかりました。では」



審査委員会側の俺の評価がヒソカ並ということが分かった。


……………まあ、これからは大人しく(今までも特に何かした覚えは…ああ、毒殺未遂がありましたね)していれば問題ないだろう、多分。



ちょっとテンション下がりながらもシャワー室で『メイド服』をオフにして入浴。
入浴後は体を拭いて髪を乾かし能力発動。これで終わり。

風呂上がりにメイド服? とも思うかもしれないが、このメイド服は超快適なのである。寝間着にしても問題がない。


飛行船をうろちょろしていると朝日が見えてきた。
綺麗。

そろそろトンパさんを起こすかな。
朝8時が正しいのなら、今のうちから起きて頭を活性化させた方がいいだろう。


「トンパさん、トンパさん」

ゆさゆさ

「トンパさーん」

「んーー、後五分……」

テンプレな朝寝坊台詞。
5時はちょっと早かったかな。

「後五分だけですよー」

「うーん……」

………ガキの頃、休みの日に疲れてた父さんを無理矢理起こしてたのを思い出すな……。
トンパさん、うちの父親に似てるかもしれない。腹回りのあたりが。あと無精髭。


……後一時間くらいしたら起こすかな。




一時間後、何故かトンパさんを膝枕している俺の姿が。

いや、トンパさんは座った状態で寝てたんだ。それがバランスを崩して、隣で正座してた俺に倒れこんできたためにこの状態に。

無理に動かして起こすのも悪いので、膝枕がキープされた。少し恥ずい。
周りからも変な圧力を感じる。

「トンパさーん、そろそろ起きてくださーい。トンパさーん」

「うーん…うん?」

目を開けるトンパさん。

「おはようございます。トンパさん」

「ん…………」

今の状況が理解できていないらしい。

「あの………さすがに恥ずかしいので……起きてもらえますか…」

「へ?………………うおおおあああああっっっ!!!?
何がどうなってやがる!?」

「実はですね……」

こうなった経緯を話す。



「……そうか。悪かったよ」

「いえ、私の不注意でもありますし」

何故隣で正座待機してたんだ、俺は。

「試験官の人たちが言ってたことが正しければ、後二時間ほどで到着ですね。
……もう少し寝てたかったですか?」

「いや、このぐらいでよかったよ。ありがとう。
……俺はちょっと飛行船の中を回ってくる。体動かしておきたいし」

「私はここで少し休んでます。
今日もお互い頑張りましょうね」


そう言うと、部屋から脱兎のごとく駆け出すトンパさん。
同時に部屋から変な圧力も消えた。受験生も数人出ていった。





さて、少し『絶』で休むか。








8時から数十分遅れて三次試験会場に到着。
トリックタワーという搭で、72時間以内にここの頂上から一番下まで降りることができれば合格。

……階段とか入り口とかが見当たらない。
さっき壁面を降りていったロッククライマーは鳥に食われた。


『手』を発動して落下スピードを落としながら降りることも考えたが、切れ味が良すぎるのでスピードが落ちない気がするので却下。

やっぱり床に隠し扉があるのかな。

微妙に人数減って来てるし。

近くの床を探ると、微妙に沈む床板(石?)があった。
多分、これが正解だろう。
そのまま床に力を入れると、床下に落下した。



床の下は少し広めの空間になっていた。

……………落ちた瞬間、背筋がぞわっとした。

これは………

「やあ◆」

「…………………どうも」

挨拶は大事だよね。


「ここは二人で進むルートみたいだ………行こうか◆」

「はい…」

あー。なに、これ?

…………『円』使って、中の様子を確かめとけばよかったよ…………









ヒソカと一緒になった現実が嫌で意識を飛ばしながら歩いてると、いつの間にかヒソカが試験官と戦ってる。
去年半殺しにした人らしい。今年は復讐しに来たって…そんな人を試験官にすんなよ。



というかあの人、何系の能力者なんだろ?
剣にオーラを乗せてはいるけど大した量じゃないから放出系ではないだろうし、操作系にしては剣の動きがお粗末だ。

切り札は隠しているのか………とも思ったが別にそんなことはなかったぜ!

ヒソカに剣を止められて戦意喪失してる。

そして、ヒソカはそのまま試験官の首を……

「ちょっと!ストップ、ストップです!」

「……どうしたんだい?」
やっぱり駄目だコイツ。

「あなたは去年試験官を半殺しにして失格になったんでしょう?
そんな人が今度は試験官全殺しにしてどうするんですか!
私まで不合格になるのは御免ですよ!」

コイツが失格になっても知ったことじゃあないが、今の俺はこいつとペアみたいなもんだ。
巻き込まれる可能性はある。

「ああ◆それは困るね……じゃあ、行こうか◆」

「そうですよ。あんな雑魚、相手にしててもしょうがないですって」

「雑魚…」

とにかくヒソカの試験官への興味を無くさせなくちゃ!
試験官が傷ついたように呟いていたが、命を助けて上げるんだから見逃して欲しい。

「それじゃあ……君が相手をしてくれるのかい?」

「ノーサンキューです。
私は平和主義者なんですから」

元日本国民なら大体そうだろ。

「クククッ◆そんな嘘をつかなくてもいいんだよ◆
オーラを見れば分かる◆君は僕と同類なんだろう?」
「……………」

侮辱罪で訴えれば勝てるかな?

「そんな怖い目で見ないでくれよ◆欲情しちゃうじゃないか◆」

へ、変態だーーーっ!!

「……私は、今年絶対合格しなくてはいけないんです。あなたと遊んでる暇はありません」

「つれないなあ◆」

肩を竦めるヒソカ。
……案外話が分かる人?

「じゃあ、試験が終わったら………」
「急ぎましょう!時間は限られているんですから!」
全速力で廊下を駆け抜ける俺と、それに追い付いてくるヒソカ。



結局、三時間ほどでクリアした。もちろん、一番乗りで。





「それでね◆一次試験で見つけた青い果実が……」

「随分、ゴンくんがお気に入りなんですね」

「あげないよ◆あれは僕のだ◆」

「いりませんよ…」


試験をクリアしてからずっと話を聞かされてる。
同好の士だと勘違いされてるな。

まあ、一次試験で何が起きたかは分かったけど。
コイツに一撃入れたゴンくんは天才だと思う。
俺も最初からチートだし、羨ましいとかではないけど。

「同じ子供なら、キルアくんは凄いですよね。
年齢の割に完成度が段違いです」

一次試験の余裕ぶりは驚いた。

「あの銀髪の子だね◆
でも、あの子には怖いお兄さんが付いてきてるから手を出しちゃ駄目だよ◆」

「その『手を出す』って言い方だと私が変態みたいだから辞めてください。
というか出しませんよ」

お前と一緒にするな。




そのあとも、頭がおかしくなりそうな変態トークに試験が終わるまで付き合わされた。
他の合格者がこっちを見てドン引きしてる。

……名実共に受験生たちの中でもヒソカの同類扱いです。


残り数分でゴンくん、キルアくん、金髪、成人男性、トンパさんが一緒にクリアした。五人一組の試験だったのかな。



ヒソカと一緒にいる俺を見てトンパさんがもの凄く引いてた。ATフィールドが見える。


トンパさんっ!違うんです!トンパさーーんっ!!

<続け>
やっとトンパ以外と絡みました。ていうかトンパ自重。そろそろトンパタイムは終わる…はずです。

『メイド服』は強すぎですかね?
メイドならこんぐらいの能力は必要だと思うんですけど。

そのうちトンパ視点でも書きますかね。

ではまた。



[11856] 4話
Name: キノコ犬◆8f51415c ID:0246ef06
Date: 2009/09/27 02:27
只今、四字次試験会場に向かう船の上。


「はあ……」

三次試験が終わってからトンパさんに避けられてる。

唯一の話し相手が………

「どうしたんだい?ため息なんか吐いて◆」

「ほぼ貴方のせいです」

こいつを話し相手とは認めたくない。
こっちくんな!


というか、

「よく話しかけられますね。次の試験の内容聞いて」

次の四次試験は、無人島での一週間のサバイバル。
しかも受験生たちは互いのナンバープレートを奪いあって、六点分を期間内に手に入れなければならない。
プレートの点数は自分のが三点、ターゲットのも三点、その他のものは一点。
ターゲットとは、あらかじめ引かされたクジに書いてあった番号のプレートを持っている相手のこと。
ちなみに俺のターゲットは191番。
誰だよ。


「僕のターゲットは君ではなかったし…仮に僕が君のターゲットだったとしても楽しめるからね◆」

「残念、違います。ほら」

ターゲットの番号を見せる。

「確かに、残念だ◆」

「……」

三次試験の時から思ってたが、ヒソカはどこまで本気なのかが全然分からない。

…もしかすると、俺はコイツの好みから多少外れているのかもしれない。同類と思われてるし。

トリックタワーで聞かされた話だとコイツは幻影旅団だかいう集団に所属していて、そこの団長にフォーリンラヴ中。

他にも、一次試験で『試験官ごっこ』に合格した連中が育つのを待ちたいとか言ってたし……俺の優先順位は低いんだろう、多分。


それでも、気は抜けないが。
キ○ガイは何をするか分からないのが怖い。




そんな風に少し会話しつつも島に到着。

島に入る順番は三次試験の合格順なので、俺が一番最初に島に入った。

……ターゲットが誰か分からないから意味ないよな、これ。
いっそ待ち伏せして全員ぶちのめすことも考えたが二番目に来るヤツがヒソカなので無理。
できるだけ開始地点から離れた。



どうしようもないので『円』を使いながら半日ほど歩き回っていたら、武道家風のお爺さんに話しかけられた。
いろいろ言ってたけど、要約すれば俺がお爺さんのターゲットだからプレートを寄越せとのこと。紳士的な対応で驚いた。女性には手を出せないとか、そういう人だろうか。


適当に後ろに回って当て身を喰らわせる。向こうには消えたように見えただろう。当て身ってなんかカッコいい。


お爺さんのプレートは191番。運がいいにも程がある。
お互いにターゲット同士だったらしい。


後はヒソカが暴走してないかに気を配っていれば問題なく合格できるな。アイツがまた『試験官ごっこ』始めても巻き込まれないようにしないと。




数分ごとに『円』を使い、ヒソカに出会わないようにしながら休める場所を探しているとトンパさんを見つけた。ぼこられて縛られたようだ。
『餌は与えないでください!!』と書かれた看板をくくりつけられている。これは酷い。

「大丈夫ですか!トンパさん!」

「ひぃっ!来るなぁ!」

「……」

ちょっと傷ついた。
まあ、俺だって身動き取れない状況でヒソカに近づかれたら舌噛む。

そのまま無言で近づき、ロープをほどく。

「え?」

「では…」


……この状況を見る限りだと、トンパさんの合格は絶望的だろう。
俺がトンパさんのプレートを取り返して、トンパさんのターゲットのプレートを奪う。そうすることは簡単だ。

だけど、それで喜ぶような人だろうか?
新人にアドバイスしたり35回も試験を受けてる人だ。
きっと、そんなあからさまな施しは受けないだろう。協力とかならともかく。

……だけど、完全に恐がられている。一緒の空間にいるのも嫌なのだろう。

ここはロープをほどいて去るのが正解なんだ。

「ま、待ってくれ!」

向こうから呼び止めてきた。

「ど、どうして俺に構うんだ?お前みたいなヤツからすれば俺なんてゴミ同然だろ?」

そんなこと、思ってない。

「好きだから」

「へ」

「トンパさんが好きだからです」

「ぶふぉあ!!」


あ、これじゃ告白だ。

「いや、変な意味ではなくて………トンパさんって父さんみたいだなあ、と」

「父さん?」

「試験が始まる前にいろいろ教えてくれたし、元気づけてくれましたよね?
『私』、優しくされたのって初めてだったんです」

実際、こっちに来てからは初めてだ。雛鳥が初めて見たものを親と認識するみたいなもんか。

「……」

「それが嬉しくて…できればトンパさんには合格して欲しいな、って思って……」

「……」

「でも、余計なお世話でしたよね。ごめんなさい。
……さよならっ!」

「あっ!おい!」


客観的に見れば変なことやってるな、とか考えながらその場を離れた。

二度と会うことはないんだろうな……










それから何事もなく一週間が過ぎた。
合格者は9人。
……トンパさんは落ちたようだ。来年頑張って欲しい。


次は最終試験。
また飛行船に乗った。

最終試験の前に簡単な面接をするとのことで、ネテロ会長に呼び出された。

「何故ハンターになりたいと?」

「自分の証明が欲しいからです」
戸籍もないし。

「一番注目している受験生は?」

「44番です」
針男も警戒してはいるが、一番ヤバいのはコイツだ。

「一番戦いたくないのは?」

「405番です」
あの子をボコるのは気が引ける。



面接はそれで終了。内容から考えると最終試験では戦闘する必要がありそうだ。


会場に到着。最終試験は負け抜けトーナメントで、不合格者は一名だけ。一回勝ちさえすればハンターになれる。ただし、殺人は失格。

案外楽で助かった。

しかし、トーナメント表を見て軽く絶望。俺はヒソカと金髪の戦いで負けた方と戦うことになってる。

ヒソカが負けるとは思わないが…………

ちらっと、ヒソカの方を見る。



にやぁ



うん。対戦相手は決まったね。

おまけ
<トンパside>
今年の新人は曲者ぞろいだった。
まあ、それでこそ潰しがいがあるってもんだぜ。

………397番のメイは変なヤツだったな。メイド服だし。あそこまで俺を信じたヤツは初めてかもしれない。
下剤も効いていないようだ。



一次試験が始まって六時間。そろそろ新人のニコルが脱落しそうだったので、三兄弟に精神攻撃を頼んだ。
ああいったエリート嗜好のヤツは挫折に弱いからな。
そこら辺を強調すれば二度と試験を受けに来ないだろう。

そう考えてたら、メイがニコルに話しかけていた。
少しするとニコルは絶望した表情を見せて崩れ落ちた。

そう!その顔が見たかった!

思わず笑みが浮かぶ。

メイは俺と似た人間なのかもしれない。





二次試験が終わって、俺と似た人間だという認識は改められた。
試験官を毒殺しようとするとは………ヒソカ側の人間かもしれない。単に事故の可能性もあるが。


三次試験会場に向かう飛行船の中でレオリオとクラピカに『試験はいつ、どこで始まるか分からない』といったデタラメを吹き込んだ。
せいぜい緊張でズタボロになりな、と思ってたらメイにも聞かれていたらしい。

起こしてあげるから寝ていいよ、私は寝ないから。要約するとこんな感じのことを言われた。
全然疲れていないらしい。
ヒソカレベルの化け物かよ!

それなのに俺を起こしてくれる?
訳が分からん。

精神的に凄く疲れながら眠りについた。
あんまりこういうヤツには関わりたくないんだけどな……







目を覚ますと、メイドさんに膝枕されているという黄金体験をしていた。
俺が、起こしにきたコイツに倒れこんだらしい。


周りからの圧力が凄いので即座に逃げた。しかし、三兄弟やらレオリオやらにボコられた。

「メイドさんの膝枕とか……」「どこのエロゲ主人公だよ!」「羨ましいぞ!このっ!」「中身はともかく、可愛いメイドさんと仲良くしやがって!」

その中身が問題だろうが。
確かに……感触は最高だったが……どちらかと言うと死を覚悟したぞ、俺は。





三次試験になんとか合格すると、談笑(トンパ視点)するメイとヒソカの姿が。
やはり危険人物らしい。

何故か近づいてくるので徹底的に避けた。悲しそうな顔をしてたが騙されやしない。





四次試験、ソミーと組んでレオリオを嵌めたがクラピカにやられた。
プレートもないし身動きも取れない。
そこにメイが現れた。
これは死んだかもしれない。




しかし、予想に反してメイは俺を助けてくれた。
あまりに予想外で、止せばいいのに呼び止めて理由を聞いてしまった。

「トンパさんが好きだからです」

思わず噴き出した。


……ラヴではなくライクだったようだ。
俺が父親みたいだとか、人に優しくされたのは初めてだったとか好き勝手ぬかして去っていった。



………アイツは善人ではないと思う。

新人潰しを辞めようとは思ったわけでもない。



だけど、なんとなく、本当になんとなくだが………………来年ぐらいは本気で合格目指そうかな、と思った。


<続く>
少し短いかも。
やっとトンパタイム終了です。再登場させるかは未定。

後二回くらいでハンター試験は終了です。
メイの能力について意見をくれた皆さん、ありがとうございました。
そのうち開発します。






[11856] 5話・かなり修正
Name: キノコ犬◆8f51415c ID:0246ef06
Date: 2012/02/09 03:42
トーナメント戦第一試合、ゴン対ハンゾー。

番号ではなく名前で呼ぶみたい。
試合内容はハンゾー(忍者)ペース。レベルが3つは違うね、なんとなくだけど。

腕を折られても降参しないゴンくん。
…根性があるのとは違う気がする。無謀と言ってもいい。
今までの印象では才気溢れる将来有望な子だったのだけど、なんか怖くなった。
タイプは違うけどヒソカに通ずるものを感じる。

結局ハンゾーが降参してゴンくんは合格。そりゃあ、あんな馬鹿な理論を展開する人間とまともに戦いたくはないだろう。
これ以上はエグいことになるだろうし。
ゴンくんは納得いかないと我が儘言い出したが、ハンゾーにアッパーでぶっ飛ばされて気絶。

………面白い、という感想を持った人間が多いんだろうな。周りの様子を見る限り。
だけど、やっぱり異常だと思う。
元日本人の感性のせいかもしれないけど。

将来、ヒソカみたいになったら泣く。



第二試合はクラピカ(金髪)対ヒソカ。

軽く打ち合ったと思ったら、ヒソカがクラピカくんに何かを囁いて降参。
そしてこちらを振り向いて笑顔を向ける。


い、いやあああああぁぁぁあああ!!!!


念能力者に自分が通用するか試したいとは思ったさ!

だけど、あいつが初めての相手ってのは絶対嫌だ!!



…………はあ。覚悟、決めるしかないかあ…………。


第三試合、ハンゾー対ポックル。

次の自分の試合のこと考えてて見てなかった。ハンゾーが勝ったっぽい。



そして
<ちょっと三人称視点>
「第四試合!メイ対ヒソカ!」

膨れ上がるメイとヒソカのオーラ。

そしてヒソカがオーラを込めたトランプをメイに向かって五枚投擲する、が

「甘いです」

全て『メイド服』に弾かれる。

トランプはヒソカ愛用のものなので、オーラは乗りやすい。
しかし、『メイド服』+『堅』を突破するには至らなかった。

「!!」

だが、ヒソカが驚いたのはそこではない。
投擲したトランプに付けていた『バンジーガム』まで弾かれたことに驚愕したのだ。

『バンジーガム』は『隠』で隠していた。よって、メイに気づかれて対処されたわけではない。

常時発動の防御能力だろうと当たりをつける。中々に厄介だ。そして、恐らくオーラ量はメイの方が上。


ヒソカの思考を余所に、メイは両手を手刀の形にし『右手は恋人、左手は愛人』を発動させる。
ヒソカのトランプに対抗するためだ。


能力発動の隙をついて、ヒソカがトランプを両手に構えて肉薄する。
あの防御を突破するには直接オーラを込めた攻撃をぶつけるべき。
それは間違いではない。

メイの手刀とヒソカのトランプがかち合う。

「だから、甘いと言っています」

手刀に触れたトランプが真っ二つに切り裂かれ、手刀はそのままヒソカの首に向かう。

ヒソカはそれを回避。薄皮一枚の被害で抑えた。
ヒソカの失敗は、メイの能力を甘くみたこと。
防御を主体においた能力と当たりをつけていたために、無意識に攻撃力を低めに見積もっていたのだ。


「ククッ」


昂る。

一連の攻防で、ヒソカはメイとの相性の悪さを悟った。
『バンジーガム』を直接つけることができない、これが致命的だ。
さらに、恐らく自分の防御を簡単に突破する攻撃力に、投擲系の攻撃を完全に防いだ防御力。
オーラ量では確実に負けている。

「ククククク◆」

だが、勝ち目がないわけではない。
このルールつきの舞台では厳しいだろうが、本当の殺し合いなら殺りようはいくらでも…………


「参りました」

そして、メイは降参した。

<視点戻ります>
「「「「「は?」」」」」

みんな呆けてるな。まあ、こっちが圧倒的に有利だったし。
だけど、しょうがないじゃないか。

「このまま続けてたら、殺し合いになりますしね」

そうなったら、今度はこっちが不利だ。
さっきヒソカが見せた殺気は半端じゃなかった。
明確な死のイメージ………あんなもの、漫画とかの中だけの現象だと思ってた。

………不利と言っても、ヒソカに深手を負わせることはできただろう。相討ちとか。でも、

「私は今年絶対合格しなきゃいけないんです。三次試験の時もいいましたが、貴方と遊んでいる暇はないんです」

こっちが勝ったとしても、それはヒソカの死という形になったと思う。そしたら不合格だし、やっぱり殺し合いはハードル高い。
結構余裕を持って闘っているように見せかけて、元日本人としての意識はヒソカにビビッてた。
なんというか……格ゲーのキャラを操作する感覚で自分の体を扱っている感じ。そのおかげで表面上は普通だった。


「つれないね……ホントに◆」

残念そうなヒソカ。
というか………

「その…………前を隠してもらえませんか……目のやり場に困ります」

こいつ、途中からチ○コ勃起してたんだよなあ……サイズがあり得ねえ。

それに微妙に先っぽが濡れ………ゲフンゲフン!


命+貞操の危機だし、降参したって赦されると思う。

「ん?見たいの「切り落としますよ」……怖い怖い◆」


今までの人生で最高の殺気を出せたと思う。

そしてヒソカの愚息のサイズがまた増大した。

「ッ! キャあああぁぁぁあああぁぁぁッッ!!」

俺は悲鳴をあげながら全力(硬)でナニを蹴り上げた。

が、

「危ないなあ◆」

ヒソカはギリギリで横に避けた。
しかし、蹴りが起こした衝撃波で会場の壁に大きな亀裂が入った。

それを見た他の男性陣は明らかに冷や汗をかいている。

「はぁ~っ……はぁ~……ふぅ。ヒソカさん、あなたは1秒でも早く死ぬべきです」

強気な台詞だが、実際は涙目だ。

………どうにも、精神が女に近づいてきてるな。

「おやおや◆ 随分と嫌われたみたい◆」

「あなた、最低です」

ま、俺は念能力者ともそこそこ闘える。それが分かっただけ良しとするか。




第五試合、キルア対ポックル。

ポックル勝利。
キルアくんがあっさり降参した。次で勝つ自信があるんだろうけど……次の相手の針男って念能力者なんだよな。
針男の実力は分かりにくいんだが……キルアくんじゃ勝てない気がする。
慢心しすぎだね。




第六試合、俺対レオリオ(成人男性)

ここで負けたらキルアくんか針男と闘うことになる。

情報不足の針男が何かの気まぐれで負け残ってきたら困るので、ここで合格しておきたい。


しかし相手は決死の表情。

………足をぶらつかせてナニ蹴りを仄めかす。

壁の亀裂をチラリと見るレオなんとかだかリオなんだか。
少し悩む素振りをしたかと思えば、

「参った!!」

すぐに降参してくれた。賢い選択だと思う。

「レオリオ! 自分が情けないと思わないのか!」

「うるせえクラピカっ! てめえは玉無しになんのが怖くねえのかよ!」

「死は怖くないと前にいったはずだ」

「死よりも怖いわッ!!」

なんか外野がうるさいが、何はともあれ

ハンター試験合格!!

やった!第三部完!











まだ続くけどね。



第七試合、キルア対ギタラクル。

ようやく名前が分かった針男だったが、すぐに針が抜けて能面みたいな顔をした長髪の男になった。
あれが能力かな。針を指したものを操るとかの。

いろいろ言ってたけど、家庭の事情だね。首を突っ込むものじゃない。可哀想だとは思うけど。

……ちょっとゴンくんが不味いかな……ヒソカが守る気もするけど、今は使いものにならんし。

というかキルアくんも随分駄目なヤツだな、親を刺すとか。それで喜ぶ親も凄いが。キルアくん家こえー。

ギタラクルがキルアくんに軽くオーラを向けたらキルアくんが降参した。
生身じゃ辛いよな。




最終試合、キルア対レオリオ。

半ば予想してたがキルアくんが即降参。そのまま会場を出ていった。
自宅に帰ったと思われる。
これから酷い目に会うんだろうな……。

クラピカくんやレオリオさんが話しかけてたけど、無駄だったみたい。
ゴンくんが起きてればな……あのハゲめ。


試験が早く終わったため、明日の合格者説明会までは時間がある。

軽く休むかな。正直、凄く疲れた。



<続く>
最近連載中のシリーズを見て、やっぱりヒソカは強キャラの方が好きだと思いました。
なので、前々から後悔してたヒソカの過剰なコミカル部分を修正しました。
6話の冒頭も修正します。




[11856] 6話・5話修正に伴い、冒頭部分をかなり修正
Name: キノコ犬◆8f51415c ID:0246ef06
Date: 2012/02/09 04:03
説明会開始十分前。

ヒソカが俺の隣の席に座った。こっち来んな。

「来ないでください。妊娠したらどうするんですか」

「まあまあ◆ そんなに殺気だたないでよ◆」

こいつに言われたらオシマイである。
だけど、確かにこいつに下手に殺気をぶつけたせいで興奮されても困る。

とりあえず我慢するのが正解か。

「ところで◆ メイは果実はとれたて派? 完熟派?
僕は前にも言ったけど…………」

やっぱり無理かもしれない。






軽い拷問のようなトークに耐えていると、ネテロ会長を始めとした審査委員会の方々がやってきた。

同時にヒソカのトークが終わる。

拷問タイムを終わらせてくれたネテロ会長の背に観音様が見えたぜ。

合格者はゴンくん以外全員揃っている。

まだ寝てるんだろうね。昨日のアッパーはいい感じに決まってたし。

「ではこれより、合格者説明会を開始する」


……説明の大半はキングから貰った知識通りのものだった。
一年以内に5人に1人はハンター証を紛失する、つまりは奪われる。

念能力者の俺がハンター証を盗られることはまずないと思うが、戦闘力の強化をした方がいいんだろうか?

ヒソカが弱いとは思わないが、念能力者の相場が分からないからな………。
一応用心はしよう。


後は一流企業並みの融資を受けられるやら公共機関をただで使えるやら………………ニートできるじゃん……………いや、あれはあれで辛いと聞くし働こう。


説明は大体そんな感じ。

クラピカくんとレオリオさんが何かそわそわしていたけど、どうせキルアくんのことだろう。
でも、昨日の試験は傍目から見れば不自然ではあるが特に問題と言えるようなことはなかった。
異議を唱えるには足りないな。



バーンッッ!!!



ドアが勢いよく開いたかと思ったらゴンくんだった。

もう少し礼儀正しく入室して欲しい。内心びびった。

入ってきたかと思えばギタラクルに喧嘩を売るゴンくん。


「お前に兄貴の資格ないよ」

「兄弟に資格がいるのかい?」


お、何かギタラクルがいいこと言った。やってることは酷いけど。

……あれも愛情、と見ることはできなくもないけど。
歪んでるなあ。価値観が違いすぎてついてけない。

ちょっと会話をしたかと思えばギタラクルを投げようとするゴンくん。

ギタラクルは着地したけど……あれ?腕折れてね?

やっぱり末恐ろしい。隣のヒソカがハァハァうるせえ。



話の流れ的に、ゴンくんはキルアくんの家に行くのだろう。
知り合って約一週間、薄い友情だ。暗殺一家の家に殴り込む理由にはならないと思う。実際、キルアくんはゴンくんとの友情よりも自分の保身を選んだんだ。

それが悪いとは言わない。

ようはゴンくんがお人好しなだけなんだろう。



説明会も終わり、廊下に出る。

ふと見ると、ヒソカとギタラクルが会話している。


「意外ですね。仲、良かったんですか?」

「この試験中は組んでたのさ◆
言ったろ?あの子には怖いお兄さんがいるって◆」

「そう言えば………」

そんな話をされた気もする。



「こうやってお話するのは初めてですね、ギタラクルさん。
メイ=ドートゥウェイと言います。
早速ですけど、この変態の抹殺っていくらかかりますか?」

「ヒソカは……20億は欲しいね。これ、名刺。
頼みたくなったら連絡頂戴。三割引きで請け負うから」

「これはご丁寧に。
命や貞操の危機を感じる前にお金を貯めて依頼しますね。
………あ、偽名だったんですか」

「キルにバレるわけにもいかなかったし……暗殺者なら偽名ぐらいなきゃね。
地元じゃ実家が観光名所になってるけど」

「ははっ。思ってたより面白い人ですね、イルミさん。
もう少し堅い人のイメージありました」

自分でも驚くくらい和やかに会話できてる。なんだこの紳士。

最近はヒソカとしか会話してなかったから感覚が麻痺してるのかもしれない。


「ところで、ヒソカはこれからどうするの?」

「待つよ◆果実が美味しく実るまで…」

恍惚の表情で震える変態。
だが、待つということは俺の優先順位はやはり低いのだろう。イルミさんにも喧嘩売ってないし。

悪いなゴンくん、君は生け贄だ。

「メイは?」

俺にも聞くのか。

「私は……兄の葬式をやって………その後は未定ですね。
金稼ぎはしたいと思いますが」

兄とはキングのこと。戸籍はキングの妹として登録するつもりだ。それならホームコードとかをそのまま使えるし。

「それなら天空闘技場はどうだい?
メイなら簡単に稼げるよ◆」

「天空闘技場?」

なんだそれ?


ヒソカが言うには、天空闘技場は大きなタワーでありそこで闘えば実力に応じたファイトマネーが貰えるとのこと。

一試合で二億とか貰える場合もあるとか。

それに、ファイトマネーは貰えなくなるが、勝ち進めば念能力者がいる階にいけるらしい。

念能力者の相場が知りたい俺にはうってつけではないだろうか。


「教えてくれてありがとうございます。
一段落ついたら行ってみますね」

「是非そうしてくれ◆
ついでに、これ、僕の連絡先」

「マジでいらないんですが」

「まあ、そう言わずに◆」

「…………」


まあ、連絡先ぐらいはいいかな。これからはハンター仲間になるわけだし。
同業者との繋がりはあった方が安心できる。
保険(イルミさんの名刺)も手に入ったことだし。

「……これは私のホームコードです。
携帯は今ないので、手に入ったら連絡します」

「分かった◆

…ところで、君はこれからどうするのかな?」

イルミさんに尋ねるヒソカ。
そういや聞いてなかった。

「仕事だよ。これでも忙しくてね。9月にも大きい仕事があるし」

「9月……ヨークシン関連かな?」

「そうだけど」

「僕も9月はそっちで仕事があるんだ◆
もしかしたら手伝いを頼むかも◆」

「有料ならいいよ」

ヨークシン……知識検索………ヒット。天空闘技場の時も使えば良かったな。

それで、9月1日からヨークシンでは世界最大のオークションが開催されるらしい。

そこで大きな仕事がある暗殺者……首を突っ込まないほうがいいな。



しばらく三人でビジネスライクな会話をしているとゴンくん、クラピカくん、レオリオさん登場。
キルアくんの居場所が知りたいらしい。
あっさり教えるイルミさん。

………観光名所って、冗談じゃなかったんすね。



ゴンくんたちが行ったあと、9月にヨークシンで仕事が重なったら会えるかもね、的な会話をして解散。
できれば会いたくねえ。




ハンター試験で手に入った連絡先は暗殺者と変態…………これから先のハンター人生に暗雲が立ち込みまくってる気がする。





帰宅。棺桶の中身チェック。
……よし、腐ってない。


帰りにハンター証を使って戸籍を登録したし、金も借りた。


さあ、葬儀屋を呼ぶぞ!





葬式当日。新聞にも日程を載せたのだが、誰も来ない。
一人で御焼香をあげて読経を聞いていると涙が込み上げてくる。


てか仏教徒だったんだな…キング。


結局、お通夜にも誰も来なかった。




キング……………哀しき男よ、誰よりも愛深きゆえに。




今さらだが、葬式に参列者が来ない男の妹になって良かったのか不安になった。

<続く>
二回続けて短めの話。
ここで区切るのがちょうど良かったので。

メイはちゃくちゃくと死亡フラグを立ててますね。
まあメイドさんは死にませんが。

能力は、それほど強くない能力を一個か二個、今の能力の派生という形などでつけます。
あんまり無茶苦茶やるとグダグタになりかねないので。

まあ、もう十分グダグ(ry

この作品って、勘違い系なのでしょうか?
一応最強もののつもりだったんですが………




[11856] 7話・修正
Name: キノコ犬◆8f51415c ID:0246ef06
Date: 2009/09/24 18:56
「ご奉仕推奨波!!」

「ぐふうっ!!」

「クリティカルヒット!アンド、ダウン!
勝者メイ!!」



沸き上がる歓声と怒号。



むう……放出の系統別修行の代わりに念弾だけで攻撃したけど………イマイチだったな、威力も相手を10メートルくらいぶっ飛ばす程度だし。

何発かは車椅子からオーラを放出する回避技で避けられた。


スピードは遅い、威力も込めたオーラ量より低い。
放出は向いてないかもな。頑張るけど。



孤独感溢れる葬式から約1ヶ月、俺は天空闘技場で自分を見つめなおしています。



7話



ヒソカが言った通り、天空闘技場で金を稼ぐのは楽だった。

オーラを解いた状態でも、200階クラス未満の連中は適当に近づいて蹴ったり殴ったりで勝てた。

むしろ手加減が難しい。これは200階クラスでもそうだ。

たいていの奴らは、そこそこの力で攻撃するだけで波動球を喰らったみたいに観客席まで飛ぶ。


200階クラスに来てからは、比較的早く身障者の三人組(さっき戦ったのが最後の一人)と試合ができたが、戦績の割に弱くて驚いた。
能力使う必要が全然ない。

だから、今回の試合には自分で制限をつけた。

念弾だけで倒す。

オーラを飛ばすこと自体はキングも修行していたことだからできた。ヒソカクラスの奴と闘う時とかには到底役に立たないと思うが。

それでも勝てた。

俺、結構強いのかもしれない。


でも、あの三人ってハンター試験の試験官連中と比べるとオーラが弱いんだよな。

プロハンターが強いのか、ここのレベルが低いのか………?

まあ、試験官でも会長以外には負ける気はしなかったのだけど。



結論から言うと、俺は平均よりは強い。これは確か。

そして、ヒソカも強い。



もう少し詳しく言うと、今まで会った人間で俺より総オーラ量が多いのは会長くらい。しかも、差はそこまで大きくない。
ハンター協会の会長に近い総オーラ量、つまり、総オーラ量だけで言えば俺はかなりのもののはず。


しかし、戦闘技術ではヒソカに劣るし、顕在オーラ量自体にヒソカと大きな差はなかった(能力のおかげで攻撃力、防御力は共に上だったが)。


よって会長とは比べることもできないし、本気のヒソカ相手だと多分負ける。能力もまだ分からないし。

それが今の俺。


ヒソカと本気で敵対した時やアイツより強いヤツと敵対した時に備えて修行をしておこう、そう思った。



そして修行。
この1ヶ月修行しただけで顕在オーラ量が増えた。肉体自体はまだ経験値を積んでいなかったんだろうな。
まだまだ伸びるぞ。



修行内容。
基本的には纏と練の修行や応用技の修行、隠がクソムズいです。

さらに放出系の修行。
念弾が最低限実戦に使えるレベルになったら『手』とかと合わせて能力開発をしようと思う。
やはり遠距離の攻撃手段は欲しい。威力は高くならないだろうが、牽制にでも使えれば上出来だ。


打倒ヒソカ!!


……向こうが俺に興味を持たないのが一番だけどね。


長々と語ったが要約すれば、「自分が強い方だとは分かったけど不安だし、やることもないから修行してるぜ!」って感じ。



………このままじゃな…。
修行は大事だけどね、ハンターとして生きるなら。



だが俺はハンターとして生きる気があるのか?

ハンターライセンスは必要だから手に入れた。それだけだ。
もともとハンターになるために頑張ったとかではない。


じゃあ前世でやりたかったことをやるか?

それもない。ただなんとなく大学に通ってたようなやつに夢なんてない。

ただ漠然と生きているだけの人生だった。


それを考えれば、生きるためには修行する必要のある今の生活は充実しているのではないか?


それも違う。やりたいことをやっているのではなく、やらなきゃいけないことをやっているだけだからだ。

つまり、プロハンターとして働いてみるか別にやりたいことを探すか。
最近はこれで悩んでいる。

プロハンターの仕事自体が多岐に渡るから、その中から見つかる可能性も高いが。







そういうわけで、今は闘技場のファミレスでアルバイトをやってます。

200階クラスだと試合ごとの間が広いし仕事もできる。

ファミレスでのバイト自体は前世でもやっていたことだし、とりあえず何でもやってみよう精神を出して働いている。


ていうか、制服は着れない、なんてアホなこと言う女を雇ってくれるこのファミレスはすげえ。

俺のスカートの中身を盗撮しようとしてカメラが爆発した馬鹿な客が10人ほど来たりしたけど。


そう、メイド服で働いています。
最近気づいたが、これって制約と誓約だよな。
厄介なような、楽なような………


「メイさーん!三番テーブルのオーダーお願ーい!」

「はーい!」

おっと、仕事仕事。


「失礼します。ご注文の方は御決まりでしょうか?」

「あれ?」「げ!」

ん…………あ!

「…今年のハンター試験で会いましたね。ゴンくん、キルアくん」

「確か……メイさん!
こんなところで何してるの?」

人なつっこい子だな。
キルアくんは超警戒してるのに。

「何って……アルバイトですよ。
私はここの200階クラスの選手なんですけど、時間には空きがあるので自己を見つめなおすために働いているんです」

「え!そうなの!
俺たちは今100階にいるんだ」

「ほう………小遣い稼ぎですか?」

「それもあるけど……強くなりたいんだ。
ヒソカに借りを返すために」


進んでヒソカに関わらない方がいいと思うんだけど………

「……ヒソカもここの200階クラスの選手ですよ。
休みがちらしいですが」

「「本当(マジで)!?」」

俺もこっちに来てから知った。
あの野郎………。


「やっぱり最上階を目指すのは間違いじゃなかったんだ……」「うまく行き過ぎだけどな」


…………てか、なんでキルアくんいるんだろ。
ゴンくんが巧く御家族を説得できたのだろうか?


「テンション上がってるところ申し訳ありませんが………今のあなた達では200階に来ても死ぬだけですよ」

「「!!!」」

忠告ぐらいはしてやろう。

「まだ早いんですよ。もう少し勉強してから来てください」

「どういう意味……?」

キルアくんが訊いてくる。

「そのまんまの意味ですよ」

「ネン、ってやつ?」

「知ってるなら分かるでしょう?」

「……やっぱり何かの技なのか」

はっ!誘導尋問!?

「知らなかったんですか……?」

「名前は知ってる。多分兄貴が使ってるのもそれだ。
…ただ、どういうものなのかは全然知らない」

知りたくて堪らない顔してやがる………こりゃあ注意しても200階にエントリーに来るかも。

「……忠告はしましたよ」

「分かったよ。あ、俺ハンバーグ定食」

「俺はカレーライス!」

「はい!ハンバーグ定食が一点、カレーライスが一点…ご注文は以上でよろしいですか?」

「いいよー」

「かしこまりました!それでは、少々お待ちください」



………ゴンくんたちが来てるのを知ってて、200階に行かせたりしたらヒソカに殺されそうな気がする。
これは対策を立てねば。






あれから一週間と少し。
二人とも200階に来る資格を手に入れたらしい。
今日中にエントリーするだろう。


よし、エレベーターのところで待機…………って!

「やあ◆」

「お久しぶりですね………もしかしてゴンくん達の動きを追跡してましたか?変態さん」

「そうだよ◆二人がここに来てたのは知ってたけど、200階で闘ったら壊されかねない◆
だから、ここで待ち伏せして……」

「オーラを向けて動けなくさせるんですね。
ちょっと過保護じゃないですか?」

「壊れるにはとても勿体ない玩具なんだよ◆
それに……君だって止めに来ただろう?」

「……………」

お前が来たことに驚いてるんだよ。
まあ、俺は保身のために止めに来たわけだけど。


「…来たようです。私は行きますね」

「そうかい◆
………君も成長してるみたいだね◆」

「舌なめずりしないでください。訴えますよ」






その後、ゴンくんたちは念を覚えて200階に上がってきたらしい。
何故分かるかって?

それは…………


「新人のゴンと、『メイド帝』のメイの試合だよー!!
大穴のゴンに賭けるヤツはいないかい!?」

「馬鹿野郎!あのメイドがガキに負けるかよ!!」




いや、試合日は『いつでもいい』にしてたけどさ……………何故準備期間を使わないんだ…………。

纏使えるだけなんて、戦闘じゃ全然意味ないだろ。


ヒソカの視線が怖い。
…………適当に苛めて終わらせるから、そんな殺気向けないで!!



<続く>
新能力はそのうち御披露目します。

読み返すと、確かに勘違いものっぽさがありますね。
これからもそういう雰囲気はあると思います。


どうにも、作者の書き方が悪かったのかメイが弱く見られてますね。実際、超強いつもりですよ。
強化系能力を防げない、っていうのはリッパーサイクロンとかで上昇した威力までは軽減できないよってことです。防御力自体は上がってるので致命傷とかは喰らいません。

操作は完全無効だし、他の系統の能力も効果を軽減したり防いだりできる。
防御系の能力ではかなり強いほうだと思います。



まあ、護衛軍とか見た後だと最強ものとは言えませんね。
この作品はメイドものとします。



[11856] 8話・一部修正
Name: キノコ犬◆8f51415c ID:0246ef06
Date: 2012/02/09 04:07
「はあ……」

目の前にはやる気まんまんのゴンくん。
とうとう試合が始まってしまった。


『さあ今回の試合は新人のゴン選手とコアな人気のあるメイ選手!
メイ選手には「メイド帝」なんていう意味不明な通り名があったりしますが………』

『メイ選手のフルネームはメイ=ドートゥウェイ。それを無理矢理もじった通り名だ。
実際の強さも帝王と呼ぶに相応しい。
ヒソカやカストロレベルの使い手と言えば分かりやすいかな』

『なるほど。ところで、あんた誰?』



ヒソカ、の部分でピクッと反応するゴンくん。

……カストロって誰だ?


『おっと!ゴン選手からいったー!!』

お、来たな。
うん、動きはそこそこ早い。だが、見える。

この肉体の動体視力はかなり優れている。

並みの使い手とは流れる『時間』が違う。
板垣学みたいに。例えが微妙すぎる。


でも、ここは

『当たったー!ゴン選手のパンチがメイ選手のボディにヒット……』

避けない。

「ぐうっ!」

「その右手、大丈夫ですか?」


『……いや、どういうことだー!?
攻撃を喰らったメイ選手ではなく、攻撃を当てたゴン選手が悶絶していますっ!
レフェリーはヒットカウントを取りません!

というか腹殴られても微動だにしないメイドさんこえー!!』


普通の纏の状態に『メイド服』を着ているだけでも堅に匹敵する防御力を誇る俺を、功防力移動どころか練でオーラを増やすこともできないヤツが攻撃したって痛いだけだ。
鉄板ぶん殴るよりも痛いと思う。


「……諦めてくれませんか?
あなたの攻撃は釣竿を含めて、私には一切通用しません。
急ぎすぎなんですよ、君は。
ここは退いて、修行して出直してください。
あなたには才能があるんですから」


一応降伏勧告はするが………無駄だろうなー。

「嫌だ!」

ほらね。


「……誰かが一回思い知らせなきゃいけないんでしょうか………それも無駄かも…………でもなあ………」

「??」


「……ゴンくん」

「!」

「少し……頭冷やしてください」


適当に近づいて適当に蹴った。
適度にボロボロになった。

それを三回やった。
動かなくなった。

それを、少し強めにオーラを込めて観客席にサッカーボールみたいに蹴り飛ばした。


観客席から悲鳴が聞こえた。





『しょ、勝者メイ選手ー!!』



まあ、死にはしないだろう。後遺症は………どうだろうか?
頭に攻撃はしてないから脳に異常はでないだろうけど………いっそ、壊れたほうがいいのかもしれない。

人の幸せを勝手に決めつけるのは間違ってる気もするけど、あんな死に急ぐような真似をして、あまつさえボコられながらも楽しそうだったあの子は将来ろくな死に方をしない。

再起不能にすることもできた……でも、しなかった。
最後の蹴りの時、観客席のヒソカが凄い殺気を向けてきたから。反射的に加減してしまった。




でも、これで纏だけで闘うという念能力者を舐め腐ったマネはしなくなるだろう、多分。絶対と言えないのが辛い。
まあ、2ヶ月は動けないとは思うけど。




………お見舞いは行った方がいいんだろうか?





というわけでフルーツを適当に見繕って病室にゴー!
どの面下げて行くんだよ、という突っ込みはなしで。

やっぱり罪悪感が半端じゃないんです。


そしたらゴンくんとキルアくんの他に、眼鏡をかけた強そうな人がいた。この人が師匠かな?


「どうもこんにちは。これ、お見舞いのフルーツです」

「あの……俺、両腕骨折してるんだけど」

つまり、腕でガードが出来てたのか。やっぱ末恐ろしいよ、この子。

「キルアくんにあーんして食べさせてもらってください。

ところで、あなたがこの二人の師匠ですか?」

「ええ……そのようなものです」

「てか、なんであんたがいんだよ!」

「? お見舞いですけど」

「だから……あー!もうっ!!」

言わんとすることは分かる。だが、ここは無理矢理押し通る。

「それで……あなたがゴンくんが闘うことを許可したんですか?
もしそうなら……」

「ウイングさんは悪くないよ!俺が勝手にエントリーしたんだ!」

「そうですか……それは失礼しました」


確かに、あんな馬鹿なことをさせるわけはないか。


「それじゃあ、もう行きますね。元気そうですし。
それと、ゴンくん」

「何?」

「君とは二度と闘いたくないです」

「えーっ!!ずるいよ!」



後味が悪すぎる。子供と死闘を繰り広げる趣味はないんだ。
てか『ずるい』って何だよ『ずるい』って。




師匠のウイングさん。
これからあの人は苦労するだろうな。







あれからは試合をせずに修行に専念した。バイトもしたけど。

ヒソカ対カストロ戦は衝撃的だった。
メモリの無駄遣い…………今の俺の修行もそうなのだろうか?


ヒソカの能力もそうだったが、変化系能力者はオーラを体から離すのが苦手だ。
俺の念弾も全然威力がないし、『手』も最大サイズを身の丈までと設定しているからこその切れ味なわけで………。


放出能力を身に付けるには制約がいくつか必要だな。


…………いよいよ扱いが難しい能力の予感がしてきました!



でも、近距離だけだと思ってたヤツに遠距離攻撃を喰らえば隙ができるはず。

『手』の長さの上限あげればいいじゃん、そう思うかもしれない。
だが、遠距離攻撃できる長さの武器の扱いなんてインプットされてないんだ………もともと射程が短いから威力が高かった部分もあるし。


キングの戦法は手に纏う程度の攻撃オーラだと相手に油断させて、身の丈サイズに拡大させて殺るというものだった。


俺はそこにさらに遠距離を入れる。戦略の幅を広げる。


ただ単に、オーラ飛ばすのかっこいいな、というのもあるが。念能力は気持ちが大事な部分もあるし、問題はないだろう。





ゴンくんが復帰したようです。
時が過ぎるのが早い。

基礎能力は伸びたけど、新能力はまだまだ。
形は見えてきたけど、それだけ。



ゴンくんとキルアくんの成長は凄いな。
身障者トリオを軽く倒してた。
もう、ここのルールなら少しは闘いになるかな?
やらないけど。



そう考えてたらヒソカとゴンくんの試合が決定。
……つまみ食い?



試合内容は、やはりヒソカの圧勝。ゴンくんも何発か入れてたけど。


途中ヒソカの顔が怖かった。よく殺さずに我慢できたな、アイツ。




そして、俺は準備期間がすぎてもエントリーしなかった。


バイト中にこれからどうするかを思いついたからだ。

そのせいかは分からないが、能力開発も一気に進んだ。
とりあえずの形ができただけではあるが嬉しい。
気持ちの持ち方でも念は上達するんだな。





「と、いうわけで私はここを卒業しますけど………あなたはフロアマスターになる気とかあるんですか?」

「今はそれほど興味ないね◆
君と戦えなかったのが心残りさ◆」

「私はハッピーですけどね。
それでは、二度と会わないことを願ってさようなら」

「またね◆」

「だが断る、です」



バイバイ天空闘技場、そしてヒソカ。






さて、まずは電話だ。

「あ、もしもし。そちらはバッテラ氏のお宅で間違いないでしょうか―――――」


<続く>
急いで更新したので短いです。最近短い話ばっかだ。

能力についての説明回でしたね。メイは変化系です。
放出よりの能力を作りましたが、今はあんまり強くないです。
てか、具現化が放出に一番遠い系統のはずなのに、具現化能力と放出能力って似てますよね。

新能力については詳しくは次回。たいしたことないので期待はしないでください。


一気に時間飛ばしすぎたかな……



[11856] 9話・修正
Name: キノコ犬◆8f51415c ID:0246ef06
Date: 2012/02/09 04:09
「何が目的だ」

「………………」

こんにちは、就活中のメイです。

それが何故かプロハンター級の人たちに囲まれてます。


9話


話は天空闘技場でファミレスのバイトをしていたころにまで遡る。


俺のスカートの中を盗撮しようとしてカメラが爆発した馬鹿の23人目が警察に連行される時に言った言葉が俺に衝撃を与えた。


「僕もまた、メイド服に踊らされた被害者の1人にすぎないのさ…………てかなんで常にメイド服なんだよ、本職?」


『なんで常にメイド服なんだよ』


まあ、最近は気にしていなかったが普通におかしいよね。面と向かって言われたのは初めてだった。
相手は犯罪者だけど。


今一度自分を客観的に見ると、ただのコスプレ女でしかない。


……………これは駄目だ。

だが、このメイド服は制約であり俺を守る鎧でもある。


なら答えは一つだ。





そうだ、メイドになろう。





そう決めてからは速かった。
使用人関連の求人を探し、ハンター専用サイトまで使って雇用条件のいい職場を探した。

中にはどう考えても地雷な募集先もあったけど。
ゾルディックとか。キルアくんやイルミさんと同じ名字じゃん。普通に死亡フラグ。


そしてその中からとっておきの職場を見つけた。

大富豪バッテラ。

有名な大富豪の使用人として働く。
なんかカッコいいじゃないか。

しかも、ハンター専用サイトにしか載っていなかったが、念能力者も募集していた。
使用人やSPなどの求人の方には書いていなかったが、念を使える人材も隠れて募集しているということだと思う。
確かに、大富豪ともなれば敵も多いだろうから強い人材は必要だ。


つまり、念能力者である俺が雇って貰える可能性は高い。


プロハンターレベルの使用人を求める、給金のいい職場。
まさに俺にうってつけ。
運命を感じた。




そして面接。メイドとして働きたいということは伝えてある。
場所はバッテラ氏の屋敷の一つ。バッテラ氏もいるらしい。

面接官は執事っぽい初老の男性。
本物の執事だ……俺はメイドだけど。

「こんにちは、面接の段階からメイド服とは気の速い方ですね」

「すいません。一身上の都合でして………」

「? 別に構いませんよ。
それでは面接を始めます。
まず、自己紹介を」

「メイ=ドートゥウェイです。
設定年齢は永遠の17歳。
本当の年は知りません。
持っている資格はプロハンターライセンスです」

「………………特技は」

「イオナズ……ギガスラッシュです」

「……ギガスラッシュとは?」

「はい、『飛ぶ斬撃を見たことがあるか?(ギガスラッシュ)』という感じのもので、大体は言葉通りです」

「…………もう結構です」

「あれ?いいんですか?
やっちゃいますよ?ギガスラッシュ」

「ギガスラッシュでもアルテマソードでも好きにしていいので帰ってください」

「では」

『右手は恋人』を発動させて最大の身の丈サイズにする。
そこにオーラを溜める。三秒ほどかけて。
そしてその右手を思いっきり振り切る!!

『ギガスラッシュ!!』


面接に利用していた部屋の壁に2メートル弱の傷がついた。
いや、貫通してるから穴か?



ここで能力説明。
『飛ぶ斬撃を見たことがあるか?(ギガスラッシュ)』
・『右手は恋人、左手は愛人(セルフハンドラバーズ)』の派生能力。
刃物上にしたオーラにさらにオーラを乗せて振り切ることで発動。
『手』よりも切れ味の弱い刃物状のオーラを正面に飛ばす。今の切れ味は本来の1割にも満たない、極めたとしても6割がいいとこだろう。しかし、それも飛ばした段階の話であり、メイから離れていくほど威力は落ちていく。
今の飛距離は10メートル程だが、いずれはメイの「円」が使える範囲まで飛ばせるようになるかもしれない。(メイの現在の「円」の範囲は70メートル。修行で伸びるかもしれないが、伸びないかもしれない。
単にオーラが多ければ「円」の範囲が広いというわけではないからだ)

欠点は、『手』のサイズを最大にしなければいけないこと。
そこへオーラを溜める時間が長いこと。
腕を振り切らなくてはいけないこと。
溜めは改善の余地はあるだろうが、いずれにしろ前動作が多いので実戦で使うのが難しい技である。遠距離からの奇襲も、今の射程では無理。
つまり、今は形だけはできたという段階。雑魚には十分通用するけど。

説明終わり。




壁の穴から見える隣の部屋の様子を見ると、特に何かが切れてるとかはなかった。
壁を壊して力尽きたらしい。
これなら適当に蹴り砕いたほうが速い。前途多難な能力である。


さて、能力まで見せたわけだけど面接官の反応は……………

「………………ツェズゲラさーーん!!!
来てくださいツェズゲラさーーーんっ!!!!」


半狂乱になりながら部屋から走って出ていった。

チェジュゲダサン?






そして待っていたら冒頭の状況。
何がどうした。
多分、孔明の仕業だろう。
何か起きれば孔明のせいにしておけばいいから楽だ。


「何が目的、と言われても………面接を受けに来ただけなんですけどね」

「面接?
グリードアイランドのプレイヤー募集はオークションが終わってからだが………」

そう答えるなんかリーダーっぽい人。多分チェジュゲダさん。
というか、

「グリードアイランド?
なんですか、それ?」

「え?」

「え?」


いろいろとグダグタだな。


「待て、1つずつ確認しよう。
君は念能力者だな?」

「はい」

「そして『面接』を受けにきた」

「はい」

「つまりバッテラ氏に害意はない」

「はい」

「面接とはなんの面接だ?」

「見て分かりませんか?」

「分からん」

「はあ………」

やれやれだぜ。

「そこはかとなくムカつく溜め息なのだが」

「何処からどう見てもメイドになりたいメイド(仮)じゃないですか!」

「壁が切れてなくて、君が嫌なオーラを纏っていなければそう見えたかもな」

「いや、やれるもんならやってみろ的なことを言われたので面接の一環だと…………」

「………害意がないならばそれでいい。
もともと、俺の職務は護衛ではないからな。
………ところで、君はプロか?」

「はい、メイ=ドートゥウェイ。今年合格したばかりのプロハンターの卵です」

「ドートゥウェイ…………まさか、『死神』『童貞王』キングの関係者か!?」

ひでえ渾名だ。

「……………ええ。兄ですけど………兄の友達ですか?」

「いや、知り合いだ。
………あいつに妹がいたのか………」

気の毒そうな目で見てくるチェジュゲダさん。

それより!

「あの、兄の知り合いだったのなら葬式ぐらい出てくれても良かったんじゃないですか?」

ぶしつけな気もするが、1人で葬儀をする俺の寂しさといったら………

「葬式?
……ヤツは死んだのか!?
いつだ!?」

「…3ヶ月ほど前ですけど………」

「……すまない。その時は忙しくて気づかなかったのだろう。
………わかっていても、葬式に出た保証はないが」

「何故ですか?」

1人も知人が来なかったわけを知りたい。

「そうか、君は知らないのか…………妹の前では普通だったのか?

……………ここ数年はいい噂を聞かなかったが、昔のヤツは優秀なハンターだった。
俺と同じ一ツ星に認定されるほどのな」

何気に自慢入ってるぞ。

「しかし、ここ数年のヤツは仕事をしなくなった。昔は暇さえあれば賞金首を刈り取っていたというのに…………」

「…………」

やべえ、なんかわかってきた。

「ヤツは自分の部屋に籠るようになった。
そして『理想の嫁』を作ると言い出して女性の死体を集め、弄び…………狂ってしまったんだ、ヤツは」

返す言葉もねえよ。

「できれば関わりたくなかった。
ヤツはプロハンターの中でも嫌われものの1人になっていたんだ。
…………血縁者の君への風当たりは厳しいものになるだろう」

頑張れ、と言って俺の肩を叩き部屋を出ていくチェジュゲダさん。
周りの人たちも一緒に出ていった。こちらを気の毒そうに一瞥くれながら。





その後、面接は何事もなかったかのように再開された。
合否は3日後に、この屋敷で教えてくれるらしい。


しかし、俺は合否よりも、これからハンター社会の中でどう立ち回ればいいのかを考えていてそれどころではなかった。




戸籍変えられないかなあ?


<続く>
さあ、お前のメイドの数を数えろ!

作者です。
新能力はあの一連の流れのためだけに作られたと言っても過言ではありません。

そして生きてても死んでも害しかないキング。

メイはメイドになれるのか?

また次回。






[11856] 10話
Name: キノコ犬◆8f51415c ID:0246ef06
Date: 2009/09/30 02:03
3日後。バッテラ邸にて。

「不合格です」


そう告げる先日の面接官さん。

「……………」

何がいけなかったのだろう………やはり、雇い主の屋敷の一部を破壊したことか?


「ですが………」

「なんでしょうか?」

研修を受けさせてくれるとかかな?
期待を込めた視線を送る。

「ツェズゲラさんが、『もし仕事がないのなら9月にヨークシンに来い』、と。

……気に入られたのかもしれませんよ?」

「?……どういう意味でしょうか?」

「もちろん性て………同じハンターとして、何か思うところがあったのではないでしょうか?
今は詳しいことを言えませんが、仕事(ハント)の誘いですよ。これは」

「………」

先日の様子を見る限り、チェジュゲダさんは気を使ってくれてるのだろう。

「話はこれで終わりです。
……使用人になるより、プロハンターとして頑張った方がいいですよ。余計なお世話かもしれませんが……」


それに特に答えもせずに退室する俺。
そしてバッテラ邸を後にする。






屋敷から十分離れ、近くに人がいないことを確認すると、



「落ちた……………」


へたりこんだ。



というか、面接だけなのは頂けない。実技試験ぐらいやって欲しかった。

ラ○スで言うなら、スキル:メイドLv3、ぐらいは働けるっていうのに……………………………………いや、ごめんなさい、流石に嘘です。

それでも、この肉体のスペック的には最凶のメイドになれるはずなのに…………。






………………………うだうだ言ってても仕方ない。


次を探すか、面接官さんの言ってたようにプロハンターとして頑張るか。

いや、プロハンター云々以前にメイド服を着てても自然な環境……つまり、メイドとハンターの両立? 意味が分からない。





「メイドハンター?」


なんとなく呟いたが、どこの変態だ。メイドが遺跡や幻獣と同一になってる。

しかし、メイドハンター…………なんか引っ掛かる。メイド………ハンター……………メイド……………閃いた!!



そうだ!何故思いつかなかったんだ!てか思いついた俺って天才!



そうと決まったらハンターサイトの交流掲示板に書き込みをして…………上手くいくかな?



10話



1週間後。俺は大自然の中にいた。

「ビーストハンターのナックル=バインだ。宜しく頼むぜ」

「メイドハンターのメイ=ドートゥウェイです。宜しくお願いします」

そういってお辞儀する。


俺が思いついたアイディアとは、プロハンターたちのメイドになることだった。

ハンターとしての活動をしつつ、メイドっぽく働く。

特定の主を持たない、フリーランスのプロハンター専用メイド。
これはメイドにとってもハンターにとっても新ジャンルだ。

「では、契約内容を確認しますね。
期間は1ヶ月。この山に生息する希少動物を密猟者から保護、ないしは密猟者の捕獲のサポート。
…よろしいですか?」

「おう」

「あと、掲示板にも書きましたが私の仕事について詳細を説明しますね。

メイドハンター、と名乗りましたが、正しくは『メイドのハンター』や『ハンターのメイド』と言ったところです。

基本的には雇用者の身の回りの世話をしつつのハントのサポート、ご利用者に快適なハントを提供します。

そして雇用者がハントで立てた功績や得た富には関係なく、料金は事前に話し合って決めた額の前払いです。それ以上を望むことはありません。

ナックル様のようなビーストハンターの場合ですと、ナックル様が歴史に残る希少動物を見つけて富を得たとしても、私は分け前を要求しません。

そして、私が新種動物などを発見したとしても発見者の名義はナックル様のものになります。

逆に何もなかった場合でも、返金請求は受け付けません。

…………他に確認したい事項はありますか?」

「…………特にはねえが、あんた、それでいいのか?」

「と、言いますと?」

「………掲示板で『メイドハンターいりませんか?』とかいう題名の記事を見た時はさっぱり意味が分からんかったが、クリックして中身を見てみると意外と真面目な内容で驚いた。

サポート専門のハンターってのもいるからな。
…………だが、それでも大抵は功績とかは山分けする。

今回の仕事ではあんまり意味ねえけど、固定料金だけってのは割に合わないんじゃねえか?」


………………この人、ヤンキーみたいな見かけによらず優しい?


「そんなことはありません。
身の回りの世話やメイドとして従う立場になることもあって、料金設定はサポート専門ハンターにしては高めですしね。

……それに、雇用者の方が偉大な発見をしたとしたら、そんな偉大な人に仕えていたという事実だけでも嬉しいものです。

まあ、簡単に言いますと………」

「?」

「奉仕上等ってことです。メイドですから」


本当は、あまり目立ちたくないだけだったりする。
それでも、ハンターとして未知のものを探したりとかはやってみたいよね。前世ではできないようなことだし。
元は男の子。力があるのなら好奇心を満たしたい。


「ぷっ…………ハハハハハッ!なんだよ『奉仕上等』って…くっ…ハハハハハ!」

「あのー……」

なんかツボに嵌まったようだ。


「ハハ………はー………悪かったな。
そうだよなー。目指すハンター像なんて人それぞれだよな」

「爆笑された後に言われても………」

「だから悪かったって。
改めて宜しく頼むぜ、メイ」

「はい、ナックル様」

「別に『様』はいらねーよ。むず痒いぜ」

「メイドですし…………あ、オプションについての説明を忘れてました」

「オプション?」

「はい。基本的な呼び方のパターンは『様付け』『御主人様』などですが、追加料金で好きな呼び方を指定できますよ。御主人様」

「い、いきなり御主人様とか呼ぶんじゃねえ!」

「例として『旦那様』『先生』『ちゃん付け』『パパ』『豚野郎』『お兄ちゃん』などですね。

……本当ならこれも前払いなのですが、お兄ちゃんは初めてのお客様なので追加料金はいりません」

「だから辞めろ!怪しい夜のお店かテメーは!」

「…………『下の世話もして貰おうか』のような命令は受け付けてませんよ」

「………し、しねーよ!!!」


その間はなんだ。何故どもった。顔が赤いぞ。


「呼び方はもっと普通でいい!様付けも無しだ!」

「では、『ナックルさん』で」

「……………疲れた」



この人、こちらがメイドだと分かって頼んだわりにノリが悪いな。

まあ、顔合わせは上手くいった。
プロハンターとしての初仕事だ。気合い入れていこう!










気合い入れた結果……………。

「元々俺が受けた依頼はな、『ここらを縄張りにする密猟組織を一掃すること』だったんだ」

「…………」

「普段なら一緒に仕事する相棒とは予定が重なっちまったし、お前に依頼を頼んだんだ。
実力がよく分からなかったから期間を1ヶ月にして」

「…はあ」

「だが、お前は凄かった。『円』はかなり役に立ったし、実力もある。
……オーラ量に至ってはウチの師匠を越えていた(しかも凶々しい)。
………つまり、まさか1週間で仕事が終わるなんて思ってなかったってことだ」

「3週間余りましたね。
返金請求は受け付けていないので、このまま身の回りの世話をさせたり次の仕事に同行させた方がお得ですよ」

「………調理器具や食器をどこから出したのかは分からんかったが、飯も旨かった。
ハントがあそこまで快適だったのは初めてだ。
………病みつきになる」

「ではこのまま残り3週間も契約続行でよろしいですか?」

「ああ………なんか堕落しそうで怖いけどよ」

「そこまで責任は取れませんが」




超好評である。
流石メイドボディ。あらゆる意味でチートだった。


元々、ナックルさんは『1人じゃキツいかな?』ぐらいの感覚で助っ人を求めていたらしい。
そこで偶々目に入った俺の書き込みを見つけて依頼をした。

だが、予想外に俺が便利だったようで最初の依頼内容を1週間で完遂してしまった。

しかし期間は残っているので、契約は続行中というわけだ。



うん、最初の依頼人がナックルさんで良かった。
自信もついたし、向こうもこちらを気遣ってくれた。


………よく考えたらまともに仕事をしてるプロハンターに悪質な人間はいないよな。


それにナックルさんはキングのことも知らなかったようだし、以外とハンター社会でもなんとかなるかもしれない。



今のところは順風満帆。先週就活に失敗した人間とは思えないほど、今の俺は充実している。




ようやっと『やりたいこと』が見つかったのかな、と思えた。今はまだ。


<続く>
最近は勘違い要素がないですね。無理に作るものではありませんが。


というかアバンストラッシュ・クロスが感想掲示板で先に言われたー!!
いつかネタにしようと思っていたのに……!


まあ、ハンタの戦闘じゃ全然意味ないですけどね。


ではまた。



[11856] 11話・修正
Name: キノコ犬◆8f51415c ID:0246ef06
Date: 2009/10/10 00:38
『メイドインヘヴンによる精神汚染レベル:1→3』





11話



今、俺はナックルさんの家でハタキやら掃除機やらを使って掃除している。

次の仕事はまだ入っていないし、今回の仕事は早く片付いたから一度帰っておきたかったらしい。

結構長く空けていたようで、埃が凄い。


ちなみにナックルさんは買い物に行っている。俺がやるからいい、と言ったのだが…………。



メイドの職務をもう少し理解して欲しい。



トゥルルルル………トゥルルルル…………


お、電話だ。


「もしもし、ナックルか?」

「もしもし。こちらはプロのビーストハンター、ナックル=バイン様の番号です。
ご用件をどうぞ」

「あれ?
…………すいません。間違えました」

そう言うと電話は切れた。
なんだったんだ?




トゥルルルル…トゥルルルル…


またか………


「もしもし、ナックルか?
シュートだ」

さっきと同じ人だな。

「はい、こちらはナックル様の番号で間違いありませんよ」

「……………すいません。間違え「てませんよ、多分」………君はナックルとどういう関係だ?」

そんなの、決まってるじゃないか。

「ナックル様は私の御主人様です」

「…………………」

「もしもし?シュート様?」

今は職務中だし、ナックルさんにしろ、電話相手にしろ様付けだ。


「………ナックルに言っておいてくれ。『師匠には報告するからな』、と。」

「? はい、そう伝えます」

「それじゃあ、切るぞ」


切れた。


前に言ってた相棒さんだろうか?

さて、お掃除再開。








「巫女巫女ナース♪巫女巫女ナース♪巫・女・巫・女ナース♪」

最初は淡々と掃除していたが、歌を歌う余裕が出てきた。選曲は無視して欲しい。

掃除中にテンション上がってくることってあるよね。

「巫女巫女ナース♪巫女巫女ナー「帰ったぞ」………ス………」

振り付けしながら歌ってるところにナックルさん帰宅。

「……………」

「……………」

「あ、あのよ………」

「さてと…………」

『手』にオーラを集中させて首筋に当てる。

「ちょ、ちょっと待てやコラァ!!」

「離してくださいー!死なせてくださいーっ!!」

「早まるな!俺は何も見てないし、『巫女巫女ナース♪』とかも聴いてねえ!!」

「やっぱり私が歌ってたの聴いてたんじゃないですかー!!」

「うおっ!しまった!」


殺せ!殺せよ!





………………………………………………………………………



「お騒がせしました」

「まったくだ、コラ」

「………すいません」


気持ちが落ち着いたわけではないし顔も赤いが、自決は思いとどまった。
人の家を血に染めるのは駄目だもんね。

誰もいない山奥で………

「……また物騒なこと考えてそうだから言うけどよ、俺は気にしてねえぞ」

「私が気にするんです」

「……誰にも言わねえから」

「ナックルさんだけが知ってる私の一面ですね」

「そうだけど………釈然としねえ言い回しだな、おい」


………この人は『言わない』と言ったら言わないだろうし、このことでもからかってはこないんだろうなあ…………本当にいい人だ。

「あ、そういえばシュートさんという方から電話がありましたよ」

「シュートから?」

「ええ。『師匠には報告するからな』、と」

「なんのことだろうな?
……仕事の件は報告したし………今度集まる時にでも聞くか…………」



「………あ。お昼、何食べたいですか?」

「なんでもいい」

「それが一番困るのですが」

「お前の作るもんは何でもうめえからな」

「……褒めても何もでませんよ」


その日の昼食は少し豪華だったけど。







ナックルさんの家で2、3日寛いでお仕事再開。

雇用期間中に5つの仕事のサポートをした。

その期間で分かったことは、ナックルさんは本当に動物が好きで、『優しさ』と『甘さ』を持った人だということ。

魔獣の討伐でさえ微妙に辛そうな表情をしていた。

プロとしてはどうなのか分からないが、人として尊敬できる。


「今日で雇用期間も終わりですね。本当にお世話になりました」

「おう。世話んなったのはコッチの方だけどな」

「いえ、やっぱりお世話になったのは私ですよ……………初めての主人がナックルさんで本当に良かったです。
貴方がこれからも『優しい』ままでいてくれることを願います」

「………ただ『甘い』だけだ、俺ぁよ」

「そんなことはありませんよ…………もしかして、泣いてます?」

目に輝くものが見えた。

「だ、誰が泣いてんだよコラァ!?人に言うなよ!ぶっ飛ばすぞオラァ!!!」

「ナックルさんも、私に秘密にして欲しいことができましたね」

「うっ!」

「まあ、誰にも言いませんけどね」

「当たり前だコラ」

「あ、寂しかったら次は三割引きで請け負いますし、プライベートでも会おうと思えば会えますよ」

「誰が寂しいっつったよ!!」

「冗談です」

「………はあ。で、お前は次の仕事はどうすんだ?」

「ヨークシンに行こうと思ってます。仕事の誘いを受けてるんです」

「ヨークシンって言うと………オークション関連か?」

「詳しくは知りませんけど、オークションの終わり頃に呼ばれてますね。
それまでは観光を楽しむつもりです。

ナックルさんのこれからの予定は?」

「年末までは空いてるな。メイのおかげで仕事は纏めて片付いたしよ」

「じゃあ………一緒に来ませんか?
ヨークシンのオークションって前から興味ありましたし。一人で行くのも、なんだかなあ、って感じだったんですよね」

「…………まあ、たまにはいいか」

「決まりですね」


ヒソカやらイルミさんが来るんなら確実に何か起こるだろう。
その時に1人じゃ心細い。

オークションに興味あるのは本当だし、契約が終わったから『御主人様』ではなく『友達』のナックルさんと遊びたい、という動機もあったが。

修行はお互いに毎日してるけどね。


「じゃあ、9月1日。
ヨークシンシティで!」

「ほんの1週間後だけどな」

気分の問題です。

結構楽しみだ。








9月1日。ヨークシンシティ。

「凄いですねえ…………」

「話には聞いてたが…………」

街中至るところでオークションが行われてる。
上流階級の人たちがカタログを買って参加するオークションもあるが、今見てるのは路上オークションとでも言うもの。

フリーマーケットみたいなノリのだったり、単純な賞品制の賭け事だったり。


活気に溢れてる。オークションなんだかお祭りなんだか……………。


「いろいろ見て回りましょうよ。
中には掘り出し物もあるかもしれませんし」

「無駄使いして破滅すんなよ。そういうヤツがゴロゴロいるって話だぜ」

「むしろナックルさんが心配ですね。ぼったくられたり足元見られたり………すぐに騙されそうです」

「なんだ?俺が馬鹿だって言いてえのかコラ?」

「……とても私の口からは」

「………契約が終わったと思ったら遠慮がなくなったな、おい」

「その方がいいでしょう?」

「…まあな」



雇用期間中でさえ、たまに居心地悪そうだったし。

多分、今後仕事を頼んでくれても、メイドとしては扱ってくれないんだろうな。
対等な仕事仲間として扱われると思う。



チェジュゲダさんの呼び出しやヒソカやイルミさんのこともあるけど、今は楽しんでおこう。



ホント、俺は今を生きる人間だよな。

<続く>
ヨークシン編です。
キメラアント編を除けば一番危険な章ですよね。


だんだん思考が女性……というかメイドになっていくメイですが、エロエロにはしません。したら板が変わります。


最近、他のハンタSSをいくつか流し読みしましたが、能力数が多いですね。驚きです。
原作ではそこまで能力数多いヤツとか余り見ませんけどね。
そのぶん、制約とかよく考えてるな、と思いましたが。
他の作者様が考えた凝った能力を見てると、ウチの能力適当すぎますね。

あと、能力もうちょっと作れるんじゃね?という意見もありますが、しばらくは作りません。

あんまり能力が多いと、1つ1つの錬度が低くなるので。
もともと『右手は恋人、左手は愛人』『メイド服』は既に極めた能力ですが、『ギガスラッシュ』の錬度はまだまだ低いのです。
まずはそっちに集中してます。


他に思ったことは、ハンタSSってオリキャラが複数でたり、主人公の目的(現実に帰る、復讐とか)が定まってる作品が多いよなあ、ってことです。

うちのSSじゃ転生者仲間なんて扱いが難しいのは出せません。作者の展開力的な意味で。

主人公はかっこたる目的もなくメイドやりながらダラダラしてます。


…………………ホント、なんなんだこの作品。

終わりのイメージはできてますけどね。そこに至る過程が何パターンかあって……それを煮詰めるのが大変です。


ではまた。





[11856] 12話
Name: キノコ犬◆8f51415c ID:0246ef06
Date: 2009/10/10 00:47
オークション一日目を満喫した俺とナックルさん。
一緒に回ったり別行動を取ったり………
今は夜も遅くなったので宿を取って休んでいる。
予約しないでもOKで助かった。

あ、さすがに部屋は別々。
今はナックルさんの部屋に遊びに来てるけど。


「〜♪」

「ご機嫌そうだな、おい」

「一日目から掘り出し物を見つけましたからね。
そりゃあ機嫌良くもなります」

「掘り出し物?」

「ベンズナイフです」

「……確か殺人鬼が作ったとかいうヤツか?」

「ええ。熱狂的なマニアもいるらしくて数百万から数千万はする品物です。
それがたったの五百ジェニー。
テンション上がりますって」

ベンズナイフについてはキングの知識から。実際優れた武器でもある。

「よくそんな安値で手に入ったな」

「素人から見れば使いづらいナイフでしかありませんからね。今日は専門家がいなかったようです」

「運が良かった、ってことか」

「そういうことですね。
………ナックルさんは何かいい物見つけました?」

「いい物というか…………ほらよ」

「へ?」

掘り出し物を見つけたか聞いたのに、小さな箱を渡された。

「やたら腕相撲が強いガキがいるって聞いてな。
そんで勝負しに行って………勝ったらもらった。
俺はいらねーからお前にやるよ。
三百万のダイヤ」

開けてみると本当にダイヤだった。

「いいんですか?
ダイヤがいらないんなら売るとか……」

ほいほい貰うには高価すぎる。

「お前には仕事で世話になったし、その礼みたいなもんだ」

「……料金はちゃんと貰いましたよ」

「確実に元の料金の数倍は働いてたぞ。
……もらってもらわねーと俺が困る」

変に生真面目だよな、この人。

「分かりました。
………ありがとうございます」

「おう」

正直、俺も宝石なんて興味ないけど……売り飛ばしたりはしないで手元に置いておこう。

「それとナックルさん。箱の中身って見てましたか?」

「見てねーけど…?」

「これ、指輪ですよ」

ダイヤというよりも正確にはダイヤの指輪。

他意はないだろうけど、さっきの台詞
『もらってもらわねーと俺が困る』
と合わせると……

「!?……いや、俺にはそういうつもりとかは微塵もねーぞ!コラァ!!」

うん、恥ずかしすぎるよね。

「わかってます。なんとなくからかっただけですよ」

会ってからまだ一月ちょっとだし、俺の中身は男として20年近く生きてたんだ。
乙女思考なんかになるわけがない。

「わかってんならいいんだよ……」

拗ねるナックルさん。
からかわれたのが気に喰わないのだろう。

「はいはい。
………他には何かなかったんですか?」

「思いっきり話逸らしたなコラ。
………犬用の首輪。職人お手製のヤツで、犬に全く負担にならない優れ物だ。
元々そんなに高くはないけど数が少ねえ。それが二つもあったし両方買えた」

「良かったですね。
犬を飼う予定が?」

「今はねーけど、ハンターとして成長してもう少し落ち着いてから……」

「ナックルさんって犬に好かれますし、ナックルさんも犬好きですもんね。
むしろ今まで飼ってなかったのが不思議です」

仕事先でやたら野良犬が寄って来てたし。

「ハンターとして働く以上、家を空ける期間が長くなるからな」

「ですね」

「あ、これもお前に一個やるよ」

「は?」

貴重なもんなんじゃねえの?

「お前が犬を飼う時にはそれを使ってくれよ。
市販の安物使われるくらいならその方がいい」

「私が犬を飼うことは確定なんですか………」

「1ヶ月も一緒にいれば分かる……てめえは犬派だろ?」

ぴくっ。

なぜバレたし!

「俺が犬と戯れてる時に羨ましそうにしてたしな。
それに……『犬好き』は引かれあうんだよ」

「なるほど……」

前世では実家で犬飼ってたしね。
こっちでも飼いたいと思い始めたのはナックルさんと仕事してからだけど。
ま、しばらくは飼えないという点ではナックルさんと同じ。
老後の楽しみにしよう。

「そういうことで、もらってくれや」

「……なんか悪いですね。
ベンズナイフあげましょうか?」

「いらねーよ。俺の戦闘スタイルには合わねーしな」

「じゃあ……ありがたく貰っておきます」

男に貢がせる悪女みたいだなー、なんてアホな考えが浮かんだ。
別におねだりとかはしてないけど。

「……今日は普通に回っただけですけど、明日はサザンピースのカタログを買います」

「あの馬鹿高いオークションの?」

「指定された時間と場所が10日のサザンピースなので……カタログがなきゃ入れませんし」

「そういや仕事の誘いを受けてたんだったな」

「あのあとハンターサイトとかで(有料情報含む)調べたんですが、ゲームのプレイヤーを募集しているようです」

「ゲーム?」

「グリードアイランド、ってゲームです」

「て言うと……世界一高いゲーム、か」

「しかも念能力者しかプレイできないらしいですよ。
ゲームの中に入るとか」

「……それは少し興味あるかもな」

「ナックルさんも来ますか?
10日にはプレイヤーの募集と審査をするそうですけど」

「そうだな……行ってみるか」

「……ここに誘った時も思いましたけど、意外とノリいいですよね」

「プロハンターにも息抜きは必要なんだよ」

「私は息抜きオンリーですよ」

「威張るな」



どうにも一緒に行動する期間が長引くな。俺が誘ってるわけだけど。
本来の相棒さんを放っておいていいのだろうか?






次の日、9月2日。

「カタログも買ったし、これでサザンピースのオークションにも参加できますね」

「何か落札できるだけの金があるか?」

「うーん。五億ありますから、軽いものくらいなら」

「なら止めた方がいいぞ」

「…ナックルさんってお金のことになると少し厳しいですよね。
冷やかしぐらいならいいでしょう?」

「それなら文句は言わねえ」

高い金出して買ったんだから、オークションの空気くらい味わいたい。



それから暫く適当にぶらついてたんだが、

「お?
昨日の腕相撲のガキだ」

なんか見つけたらしい。

「ダイヤを商品にした条件競売してた子でしたっけ。
どこですか?」

「あそこのツンツン頭。近くに銀髪のガキとスーツを来た男もいる」

「どれどれ………あー、すんごい見覚えありますねー」

具体的にはハンター試験や天空闘技場あたりで。
ゴンくんにキルアくんに………忘れた。

「知り合いか?」

「……ハンター試験の同期です」

「ってことはアイツもプロか。道理で強いと思ったぜ」

「まだ発展途上ですけど、天才ってヤツですよ」

「へえ。
…話しかけてみるか」

「いや、ちょっと待って……!」

できれば関わりたくないのになー。

「よう」

「あっ!昨日の!」

もう声かけちゃってるしなー。

「それに……メイさん!」
見つかったよ畜生!







なんだかんだで近くの喫茶店に入ることに。
ゴンくんには変なカリスマ?があるよなー。

「それにしても…よく会いますよね」

「本当にね。もしかしてストーカ「あの変態と一緒にしないでください」……ごめん」

殺気を向けると大人しくなるキルアくん。
ナックルさんが『大人気ねえな』みたいな視線を送ってくるけど気にしない。

「メイさんは何しに来たの?それとそこの……「ナックルだ」…ナックルさんとはどういう関係?」

やっぱり普通にしてればいい子にしか見えないゴンくん。
でも付き合うには面倒な人間だ。

「ヨークシンには仕事で。
ナックルさんは前回の仕事の依頼人。
そこそこ強いですよ」

「……おい。そこそこってなんだよ、そこそこって」

不満たっぷりなご様子。

「だって……私の方が強いじゃないですか」

「いや、確かにそうだけどよ…」

「それなのに『ナックルさんは凄く強いです』とか言ったら自慢になりますし」

「……十分自慢してると思うがな」

ポツリと呟く……れお、りお?……いや、リオレオさん。
残念だが聞こえてます。


「ゴンくんたちは何しに来たんですか?」

天空闘技場で稼いだんだからそこら辺のオークションには出れると思うけど。

「グリードアイランドが欲しいんだ」

「無理ですね」

「えーっ!!」

はっ!間髪入れずに突っ込んでしまった。

「……どういう意味?」

キルアくんが探るような視線を向けてくる。
断言されれば理由があるって分かるか。

「まず、そちらの予算はどのくらいですか?」

「現時点で0」

「話になりませんね」

馬鹿かこいつら。
天空闘技場で稼いだ金はどこ行ったんだ。

「……これから増やすアテはあるんだよ」

「最低落札価格でも八十億越えてるんですけどね…………それに、その倍の金額があっても足りませんよ」

「倍でも!?」

リオレオさんが驚く。
ゲームに百億以上も払うのが信じられないのかな。

「…大富豪バッテラという人がいます。あの人は今回のオークションに出回るグリードアイランドを全て落札するつもりです」

「「「何ぃ(えーっ)!!?」」」

「つまるところ、現時点で所持金0でも八十億でも関係ないんです。バッテラさんの総資産はそれだけ凄い」

「うー……どうしよう…………」

項垂れるゴンくんと考え込むキルアくん。
……いや、いじめてるわけじゃありませんよナックルさん。

「……ゴンくんはグリードアイランドが欲しいんですか?
それとも、プレイしたいんですか?」

はっ、とした顔をするゴンくんとキルアくんに、分からなそうなリオレオさん。

「それじゃあ、そろそろ行きましょうかナックルさん」

「お、おう」

「ゴンくん、キルアくん。『また』会いましょうね」


挨拶もそこそこに喫茶店から出る。

「おい」

「はい?」

「あれだけで良かったのか?」

「あんまり甘やかすのもダメだと思いますし……プロのあの子たちに1から10まで教えるのは失礼でしょう?」

「それもそうか……」


正直、『また』とか言ったけどあんまり会いたくないだけだ。あの子の側だと変態遭遇率が高くなる。

「そういえば、ナックルさんあんまり話に参加してませんでしたよね」

ナックルさんが話しかけたのに。

「お前の同期だろ」

「別に気を使わなくても………あの二人、どう思いました?」

「まだまだ負ける気がしねえな。多分、実戦経験も足りねえだろうし」

つまり、まだまだヒソカには喰われないってことだ。
あの二人を見てるうちは俺には危害は及ばないだろうから暫くは安全かな?



プルルルルル……プルルルルル………



「おい、ケータイ鳴ってんぞ」

「あ、失礼。
………もしもし」

『やあ◆』


ぶつっ。
反射的に切った。

空耳乙。


「………いいのか?」

「いいんです」

プルルルルル………

「また鳴ってるが……」

「気にしたら負けです」

「いや、でも」

「黙れ」

「………」



プルルルルル…………プルルルルル…………



<続く>
ナックルを連れてきたけどあんまりゴンたちと話させませんでした。
メイもゴンたちと仲がいいわけじゃないし。


今回の件でゴンたちは旅団を追う理由がなくなりました。
4日にはクラピカと会ったりするから理由はできるけど、3日にノブナガたちに捕まるイベントは消滅。

微妙に占いの運命を変えてしまったメイです。


あ、旅団そのものには深く関わらないストーリーになるはず、多分。

ではまた。





[11856] 13話
Name: キノコ犬◆8f51415c ID:0246ef06
Date: 2009/10/20 02:39
あの後、電話は諦めたらしくメールが来た。

俺がヨークシンにいるかを確認したかっただけらしい。
とりあえず「いる」と返信はしたが…………


『何かあったら手伝いを依頼するかも◆』


と言ったメールも届いた。
嫌な予感しかしない。

あ、わかってると思うけどヒソカからの連絡である。

「はあ………」

溜め息が出るのもしょうがないと思う。

「……さっきから様子がおかしいが、大丈夫なのか?」

『黙れ』とか言っちゃった俺の心配をしてくれるナックルさんは間違いなくいい男。

「大丈夫ですけど……精神的に疲れました。
今日はもう宿で休みます」

まあまだオークションの期間はあるし、早めに帰る日があってもいいだろう。

「んじゃあ俺も戻るわ。
纏と練の修行ぐらいはやっとかねえと落ち着かないからな」

おそらく気を使ってくれてるナックルさん。

「………ツンデレですか?」

思わず聞いた俺に罪はない。

「なんだそりゃ?」

「分からないならいいです」



13話



さて、宿に帰ってきたわけですが…………

「ナックルさん。私たちの宿から悲鳴やら命乞いやらが聞こえてくるんですが」

「奇遇だな、俺もだ」

これは酷い。オークション期間中はマフィアとかも来るから、こういうことが起こってもおかしくないが…………。


「とにかく、適当に止めましょう。
宿が無くなるのは困るし、荷物も心配です」

「応ッ!」

何故か気合い十分な現在の相棒さん。こういうところは見た目通りだ。





騒ぎの中心っぽい部屋に行くと、マフィアっぽいヤツの死体を片手に持ったムキムキの原始人スタイルの男がいた。


こいつ………強いな。

ナックルさんも微妙に強張ってる。

「念能力者が2人…………てめえらもこいつらに雇われてんのか?」

尋ねてくる原始人。
俺たちをマフィアの御抱えと勘違いしているようだ。

「そんな人たち……もとい糞袋たちなんて知りません。
あえて言うなら、せっかく素敵な人と楽しい旅行に来てたのに宿泊中の宿が大変なことになってる哀れなメイドですよ、私は」

冗談めかしながら、非難するように言う。

原始人は俺を見て、隣のナックルさんを見て、「素敵な人?」と言いながら首を傾げた。

………人を見た目で判断すんなや。
そしてナックルさん、変に狼狽すんな。

「あー………そいつは悪かったな。
もうここでの用事は済んだからすぐに出ていく。
後は好きにイチャイチャしてろ」


そう言ってマジに出ていこうとする原始人。

………まあ、マフィアの抗争に関わってもいいことないからな。
ここは見逃すのが最善か?

「オラァッ!」

「ッ!」

「ナックルさんっ!?」

なのにいきなり原始人を殴りつけた馬鹿一名。
何考えてんだ?


「……何しやがる?」


原始人のオーラが交戦状態になっていくのが分かる。
このオーラ量は…強化系かな?


「この惨状を見せられて、はいそうですか、と帰すと思うか?」

「ナックルさん、それじゃあ丸っきりマフィアです。
というかこの人と戦う意味は……」

「ないかもな。
だけど、こいつを野放しにするのは不味い……。
なんでかそう思うんだ」

よく分からないが………間違ったことは言ってないよな。この状況を見るに、相手は善意の人ではない。マフィアに悪意を持って関わってる念能力者、という時点で危険人物だ。

「はあ……」

今日、何回目の溜め息だろうか?

「仕方ない……か。
まあ、最近運動不足だったからちょうどいいですね」

そう言いながら懐からベンズナイフを取り出す。


「随分強気だな……もう見逃して貰えると思うなよ…」

既にキレてた原始人だが、今の俺の台詞で完全に臨戦体制になってしまった。

……だって、強気にもなるさ。

「そっちこそ、言葉には気をつけな」

「こっちは2人です。それに……」


そう、2対1!
しかも、すでに攻撃は始まっている!


『時間です。利息がつきます』


「!!」

原始人は気づいていなかったようだが、さっきナックルさんが攻撃した時からアイツの隣にかわいい物体が浮遊していたのだ。
そしてそれが何かを告げる。

俺も初めて見たが、あのマスコットみたいなのがナックルさんの能力なんだろう。

効果は分からないが、あの原始人の視線が俺たちから逸れた!

その瞬間に一気に近づき、手に持ったナイフで切りつける

が、

「皮膚だけですか……でもっ!」

「俺の肌に傷をつけるだけでも大したもんさ」

ドゴォッ!!

「かはっ」

相手の胸の皮膚に数ミリの厚さの傷をつけるのが精一杯。かなり鍛えた能力者のようだ。

しかも会話をしながら殴りつけてくるおまけ付き。

ボディーにいいのが入った。『凝』は間に合ったからダメージは殆どないが、隙ができてしまった。

それを見逃さずに追撃がくる。

「まず一人!」

「だから、2対1なんですけど」

ちょっと油断しすぎじゃね?

「らあっ!」

「くっ!」

ナックルさんのフォローが入る。
ほんと、頼りになる人だ。

「……悪いな、嘗めてたぜ。
そろそろ本気で「そらっ!」…って、そんなん当たるかっ!!」

なんか敵キャラの死亡フラグな台詞を言い始めた原始人の額にベンズナイフを投げつける。
避けられるが(つまり、ナイフに何か付与効果があるかを警戒していたということ)、避ける動作で隙はできるし、俺が武器を手放したことでまた油断が入る。

………単純馬鹿、とは思わない。自分の強さに自信があるだけだろう。

だが、それが命取り!


『右手は恋人、左手は愛人』


能力を発動し、右腕を切り飛ばした。


「ぐっ……があああぁぁ!!!」


こうも上手くいくと楽しくなる。
まずはベンズナイフを使い、相手に自分の攻撃力は『あの程度』だと思わせる。

会話やオーラから自分の強さに自信がある強化系だというのは分かっていたし。
ナイフに能力があるのかと考えさせることに成功したのも大きい。

最初に切りつけた時に『でもっ!』とか思わせぶりに言ったりしたが、実はなんの意味もなかったのにね。

『時間です。利息がつきます』

「畜生が……」

ナックルさんの能力は未知数ながらも健在。
しかも腕を一本取られたことでオーラも軽く乱れている。

これは、勝ったか………って!?


「ビッグバンインパクトォ!!!」

「「!!」」

「てめえら……次会ったら絶対に潰すっ!!」


原始人が残った左腕にオーラを集めて床を殴りつけた!
しかも威力がおかしい。床は崩れ落ちるし、建物全体が揺れている。


そして俺たちが体制を立て直そうとしているうちに、アイツは切り飛ばされた右腕を持って窓から逃げ出した。









9月3日。

あの後、普通にあの宿は使用不能になった。

「なんだったんでしょうね、昨日のアレ」

確実にヒソカレベルだった。ヒソカのが普通に怖いが。あの原始人は………なぜか弱く感じた。
肉体の強さならヒソカより格段に上なのに。

「ポットクリンは付いたままだし、効果範囲に入れば俺が分かる。
次は逃がさねえさ」

別にどうでもいい。

「……昨日はあの後、新しい宿探しで疲れました」

ジト目で睨む。
昨日の戦闘の原因はナックルさんによる所が大きいし、実際なんのメリットもなかった。

「いや、その、すまん」

「……別にいいですけど。
怪我したわけでもないですし」

「あのパンチを喰らって無傷ってのも………」

「何か文句でも?」

「ないです」

人を化け物みたいに……失礼な。




この日も適当に街を回った。
途中でゴンくんたちにも会ったけど………サザンピースのカタログを買うためにハンターライセンスを質に入れるなんてアホなことしてた。
今はハンターライセンスをまた買い取るためにオークションで稼ぐつもりらしい。
鑑定家(?)みたいな人も雇ってた。

せいぜい頑張ればいいさ。
俺は普通にその発想には着いていけないから。







9月4日。

なんかヒソカから

『死体はフェイク◆』

とかいうメールが届いた。
なんの脈絡もない。

とうとう狂ったか。南無。

<続く>
戦闘シーンは苦手です。



ヒソカ、痛恨の送信ミス。

以下、ヨークシン編の流れ。


ゴンたちは、3日目に旅団の追跡をしなかったのでパクノダの存在を知らない。
ウヴォーギンはクラピカと戦う前にメイたちにやられたのでアジトに帰ってマチに治して貰った。よってクラピカとの戦闘はなし。
当然、また出掛けようと駄々をこねるが、団長に「今日は仕事だ」的なことを言われたので渋々我慢。

クロロ対ゾルディックは原作通り。
ヒソカはクラピカに送るはずのメールを間違えてメイに送信。直前にメイにもメールしてたが故のミス。
よって、クラピカの中では旅団のことが決着する。手を血に染めずに。
これからは仲間の眼を探すことが目的になる。


旅団の方も、特に欠員が出たとかではないので今回はホームに戻った。我が儘言ってるのはウヴォーだけだし。
一応ウヴォーを占ったが、『メイドに17分割される』とストレートに書かれてたので皆に強く止められる(特にノブナガに)。

そんなわけでパクノダとウヴォーは生存。当然、団長は念が使えるまま。

団長と戦うのがまたお預けでヒソカ涙目。


ポットクリンはウヴォーのトレードマークになりそうです。シズクが気に入ってる。


微妙にスクワラ生存。




大体こんな風に変化しました。
ちょっと無理矢理だったでしょうか?
だが、私は謝らない。


『なんでナックルにしたん?』という質問があるかもしれないが、それはただ単に作者がナックルのキャラを好きだから。


ではまた。ヨークシンが一気に終わってグリードアイランド編に。
ある意味、一番むずい部分です。





[11856] 14話
Name: キノコ犬◆8f51415c ID:7cf0811b
Date: 2009/12/23 22:40
9月5日。

「明日はサザンピースのオークションに参加しましょう」

そろそろ大規模なオークションの空気を味わいたい。

「見に行くだけだからな」

即座に釘を刺してくるマイフレンド。

「もちろんですよ。
まあ、他の目的もありますけどね」

「ほう?」

「バッテラさんを見ておきたいんです。明日からはグリードアイランドが出品されますしね」

「なるほどな」

俺を誘ってくれたのはチェジュゲダさんだが、実際の依頼人はバッテラさんになるんだろうし。

「さて、決まったところで服を買うなりレンタルするなりしないといけませんね。
さすがにメイド服と特攻服(笑)じゃ門前払いコースでしょうし」

「何故か特攻服の発音に悪意を感じる」




14話




9月6日。

オークション当日。

ナックルさんは普通にスーツを借りた。
結構似合う。

俺は簡素な黒いドレス。
背中が開いてるタイプの。

どんなのを着たらいいか分からなかったので店員さんに「テキトーに選んでください」と頼んだらこうなった。


そんな感じに珍しく正装をした俺たちは、現在サザンピースのオークションに参加し(冷やかし)ているわけなのだが…………


「うう………気持ち悪い………」

「………大丈夫か?」

「ダイジョバないかもですねー………」


俺、絶不調。


そういや『常時メイド服』の誓約を破ってるもんな。
この体調不良やら情緒不安定気味なのも誓約破りの代償なのだろう。

吐き気と寒気が止まらないしイライラする。酸っぱいもの食べたい。


「帰るか?」

「………いえ、言い出しっぺは、私ですから………終わるまで我慢しますねー………」

「我慢できるんならいいけどよ………てか、いきなり具合悪くなったよな」

「能力の誓約とかの関係ですよ」

「そうか……」


そう言うと追及を止めるナックルさん。
能力の詳しい情報は軽々しく話すものではないと知ってるからだろう。




そんなこんなでオークション終了。よく考えなくとも、ここまでして来る必要があったのかは疑問である。

まあ楽しかったけど。


「ナックルー………レモン水買ってこいやー……………」

「分かった。ここで待ってろ」


今は会場から出てロビーみたいな所にあった長椅子に座って休んでる。
………冗談のつもりだったのにパシりに行ったナックルさんには後で謝ろう。



「あれ………メイさん!」



「………最悪です」

あんまり会いたくないツンツン頭くんの声が聞こえたのでそちらを向くと、なんとスーツを着たゴン君とキルア君の姿が!

二人も気づいたようで、こっちに近づいてきた。

「……ここに来た目的は私と同じですか?」

「多分ね…………というかメイド服以外も着るんだな。
しかも体調最悪って感じだし」

あんたも人間だったんだな、等と小声で呟くキルア君。
人間じゃなかったら何なんだよ。

「メイさん大丈夫?」

「ダイジョバないですよー」


言いながら椅子にクテンと倒れて横になる。
なんかゴン君とキルア君が顔を赤くして目を逸らした気がするが無視。


「………宿に帰ったら?
その調子じゃ目的果たせないかもよ?」

心配してんだか邪魔に思ってるんだか知らないが、キルア君が帰宅を勧めてくる。
……そういやこの子たちは選考について詳しく知らないんだよな。


「帰りませんよ。
本番はまた別ですし…………それに、今の状態でも君たち二人の首を一瞬でスパることぐらいはできますので…………」

「………そうかよ」

滅茶苦茶切れた感じのキルア君。今すぐにでも襲いかかってきそうだ。



「随分と物騒な空気だな」

そんな中、特に気負いもせずに乱入する影が。
この人は………

「お久しぶりです。チェジュゲダさん」

「ツェズゲラだ」

やべ、間違えて覚えてた。

「すいません、噛みました。ツェッペリンさん」

「…………わざとだろ」

「噛みまみた」

「わざとじゃない………だと………!」

案外ノリがいい人で助かった。

「あなたがここにいるということは………」

「ああ、バッテラさんもいる………だからもう少しシャキっとしろ」

「ふぁい」

適当に返事を返して立ち上がる。


「ツェズゲラ、彼女は……?」

「前に屋敷の壁を破壊した危険人物です」

「ああ、あの時のか……」

気づいていなかった(不覚にも)が、ツェズゲラさんの後ろに金持ちオーラを垂れ流しているお爺さんの姿が。
この人がバッテラさんなのだろう。


「その件ではご迷惑をお掛けしました」

そう言って頭を下げる。

「いや、構わないよ。普段は使わない屋敷だからね。
………ツェズゲラは君を買っているようだし、今度の選考では期待しているよ」

「ありがとうございます」

「お前には一応受けてはもらうが、落ちることはまずないだろう。
………今の状態でなければな」


あの時に臨戦体制時のオーラを見ただけなのにベタ褒めしてくるツェズゲラさん。
知り合いのよしみみたいなのもあるのだろうが。


それでも、今のだれている俺にはしかめっ面だ。


「よっぽどのことがなければこの状態にはならないのでお気になさらず。
それで「あのっ!」……ん?」


ゴンくんが割り込んできた。まあ、おそらく今日のこの子たちの目的はバッテラさんに雇ってもらうことだろうから、今の無視されている状態はよくない。


そしたら予想通りに、自分たちをグリードアイランドのプレイヤーにしてくれというゴン君たち。
そんで云々かんぬん話をして、『練』を見せてみろというツェズゲラさん。

ハンター用語の方だよね、多分。

二人は四大行の『練』を見せてたが。


………天空闘技場の時よりはよくなったと思うけど…………


「散々逃げ回ったあげくに死ぬだけです」


ツェズゲラさんの評価は厳しい。
この二人も弱いわけではないと思うが………

「基本しかできない人には厳しいゲーム、ってことですかねー………」

「そういうことだ」

なんとなく呟いたことに返事が返ってきた。


「丁度いい。お前の『練』も見せてみろ。
壁を壊した方ではなく、今この子たちが見せた方でだ」

「体調最悪で自信ないんですけど」

「よっぽどのことではならない、と言っていたが、その状態になることがあるなら不安なのだよ」

…………確かに、今の俺を見たら不安にもなるか。


それに、別にこれが本番というわけでもなし。

気軽にやりますか。


「ではツェズゲラさん、バッテラさんを庇う位置に立ってください」

そう言ってオーラを全開にする。

うっ!……やっぱりキツい…………。


普段の半分も出てない………。

頑張って修行してるんだけどなあ………。


「もういい!もういいから止めろ!バッテラさんを庇いきれん!」

バッテラさんにダメージを与えるのは不味いのでやめる。
ツェズゲラさんも案外だらしないな。


「普段の半分以下ですけど………OKですか?」

「…………(それでも俺を軽く越えているんだが)」

「ツェズゲラさーん?」

「……すまん。少し心が折れかけただけだ。
…………選考会までには本調子にしておけよ」

「はーい」

結局合格圏なのか駄目なのかは分からなかったけど。


「おーい!レモン水買って来たぜーっ!」

そんなこんなでナックルさんが小走りで戻ってきた。


「連れが来たみたいなので戻りますね。
それではまた今度。」

「ああ(レモン水?)」


そう言えば『練』見せた後、ゴン君たち黙ったまんまだったな。










「気持ち悪ーい…………」

「だから『帰るか?』っつったんだよ………」

「申し訳ないです………」

あの後レモン水を飲んだが回復せず、ナックルさんにおぶさって帰路についている。
真面目に歩けねえ。


「………ホテルに帰る前に適当なお手洗いに寄ってください」

ささっと脱いで、能力発動するから。

「……吐くのか?」

失礼な。

「違いますよ…………うっぷ」

やっぱり吐くかも。

「………急ぐぞ」

スピードが上げる。

ってか速っ!

酔う!酔うって!


「うえええぇぇぇ…………」

「なっ!待て待て待て!
もう少しだから我慢……………アッーーーー!!!」




…………………マジですいますん。



<続く>
かなり久しぶりの更新です。
リハビリがてらに繋ぎの話を投稿。

最近忙しいけど、ハンタ復活記念に。

まあ次の更新はハンタの今回の連載が終わる頃になるでしょうけど。




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