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[12540] 【習作】無能姫の使い魔はリリカル的な先生(ゼロ魔×なのは) 
Name: 点太郎◆5392d2c1 ID:abb86e86
Date: 2009/10/27 01:29
初めての投稿です。

誤字脱字、濁点の有無等いろいろ問題点がありますが読んでくれれば、幸いです。
あと書き方も落ち着きのない感じです。





一応ドラマCD、小説を参考にしていくつもりですが、ついオリ的な部分が出てくると思います。ご了承を




[12540] プロローグ
Name: 点太郎◆5392d2c1 ID:abb86e86
Date: 2009/11/05 00:38
 大きくて立派なお城の薄暗い大きな部屋の中、高そうな身なりに身を包んだ一人の少女が居た。


 そんな、薄暗い部屋にいるのは、イザベラ・ド・ガリア由緒正しい大国ガリアの御姫様である。本来なら彼女には、侍女たちがいるべき人間であるはずだが、今ここには彼女一人しかいない。


「五つの力を司るペンタゴンよ、我に使える最高の使い魔よ、この私の前に……」


勉強や努力が嫌いな彼女らしくもなく、彼女は持てる精神力を最大に成るよう集中していた。

『いったい何が自分の使い魔として出てくるだろう?』

『できれば、ドラゴンのような幻獣がいいなぁ』

『でも、もし……』


などと、頭の片隅で考えてもいたが、集中し続け呪文を唱えていた。

そして呪文を唱え終えて、慎重に、慎重に、イザベラは杖を振った。


 数秒の静寂の後、期待と不安を胸にそこにいる存在を確認してみてイザベラは


  そこに何か居る=使い魔召喚が成功
 

という、何もいなくて失敗したんじゃないかという不安が消え小さく喜んだあと何がいるのか 期待を胸に確認したイザベラの声は喜びの声ではなく落胆の声であった。

 
       「こいつは、ねこ?」













side/?

 彼女は、混乱していた。それはもう盛大に、派手に、思いっきり混乱していた。



 なぜならばついさっき自分は、主との契約が終了したことを告げられ自分もそれを認識したのである。そして最後に、心から愛し自分の娘のように思っているたいせつな弟子のあの子に、自身が丹精込めて作ったインテリジェントデバイス”バルディッシュ”を託しあとは、バルディッシュとあの子の使い魔があの子を守ってくれると安心し

 そして・・・・・・・あのカプセルの中で永遠の眠りを続けるもう一人のあの子のことはきっと、きっと、大丈夫だろう必死に思い。

そして、愛する大切な自分の教え子であるあの子"フェイト"と自分の主である"プレシア"がいつか本当の記憶のもと笑顔で笑いあえる未来ある祈り、ついに自身の主からの魔力供給も途絶え彼女はその世界から完全に消滅した。
はずだった。



 だというのに自分は、ここに存在している。
それが彼女を混乱させている理由であった。そしてさっきまで人の姿だったはずなのに何故だか猫の姿に戻っている。



『こいつは、ねこ?』



頭上から聞いたことの無い年若い女性の声がしたので恐らくは私に対してだろうと考え見上げてみる。そこには何処かの世界のおとぎ話に出てくるような身なりをした青い髪の少女が立っていた。







Side/イザベラ

最初は落胆もしたさ。
だって仕方ないか。従妹であるあのガーゴイルはまだ幼竜ながらも立派な風竜を召還したらしいじゃないか。“猫VS竜”これじゃあ不満もある。
しかもそれを聞いた自分の城にいるあいつらときたら皆して

―――さすがシャルロット様。
 ――それに引き換え……、何もできない無能姫ときたら。
 ――威張ってばかりで、すぐ周りに当たり散らす無知なイザベラ様。
 ――シャルロット様のほうが……。
――イザベラ様よりもずっと……。
――シャルロット様のほうが……。
――イザベラ様よりもずっと……。
――シャルロット様のほうが……。
――イザベラ様よりもずっと………………



実際に、耳に聞こえずとも幼い時からずっと必死に勉強し魔法の特訓だってやったしかし努力してどんなに頑張っても出来のいい従妹と比較され続け笑われ何時かは自分の首を切り落とそうとする考える者たちからの目線を受けたのだ。
そんな訳でマイナス思考まっしぐらの彼女には、自身にくる視線も家臣や侍女たちの会話すべてが自分を笑うものにしか聞こえはしない。
今さら一人で前向きに考えることなど、とうの昔に放棄している。
しかしながらこの時ばかりはイザベラは前向きだった。





こいつは私の召喚に答えたのだからつまりは、こいつは私の完全な味方であるということが確だ。

そうと決まれば早速契約しよう。如何考えしゃがみ込んで召喚したその猫を掴もうとしたがその猫は、生意気にも嫌がり持ち上げられるのを拒否して抵抗しようとしている。

腹は立つがまぁいいさ。
契約はまだ出来ていないんだ。そう考えて必死に自分を落ち着かせる。
契約の呪文を唱えそして、その猫の口に自身の唇を近ずけキスをしたのである。

「ったく、この私に手間を掛けさせるんじゃないよ。」





そう文句を言いながらも猫にルーンが刻まれているかを恐る恐る確認しようとするイザベラ。
すると突然猫は暴れだしビックリしたイザベラは猫を落としてしまう。
そして、猫は床で少し震えてこちらを睨んだあと、動かなくなってしまったのである。

今度はイザベラが混乱する番であった。







慌てて侍女を呼ぼうと
「おい、だれか…………………・・・・っち。」
声を出したがしかし周りに一人もいないことを思い出し舌打ちをする。

そもそも何故誰も居ないのか、それは自分が使い魔の召喚で呼び出した物をまた従妹と比較されるのがイザベラは怖かったからである。
現われてくれる唯一の味方まで比較されそして笑われてはとても耐えられない。
それが此処にイザベラ以外誰も居ない理由であった。

それにもし失敗したらそれこそ自分は最後である。この召喚は一種すがる思いで行ったものであった。

 そして、自分に答えてくれた存在が動かなくなってしまったのである。
泣くことも諦めたつもりでいたイザベラであったが彼女の眼は、今にも涙を流しそうであった。

一発で召喚の魔法は成功したのに今さら失敗したんじゃないかと考えから始まり

自分が呼んだせいでこの猫を殺してしまったのでは?――

やっぱり私は無能なんだと。――


再びいつものマイナス思考で、負のスパイラルに入ろうとしたときその猫はわずかに呻き声をあげたので慌てて抱き上げてみると、猫は気を失っているだけであったことが分かり安心してほっと溜息をつく。

そして猫の手には確かにルーンが刻まれているのを確認できて喜んだが



「心配させんじゃないよ、まったく。」



とやっぱり文句を言うイザベラ姫。
そして、その猫に名前を付けたりどんな猫なのか調べたりこいつは何か出来るのだろうかなどといろいろと考えていた矢先急激な眠気に襲て来たのである。

 イザベラは、精神力を使いきったのだろう考えさっさと自室に戻った。
自分の部屋にある大きなベッドの上に眠っている自身の使い魔を置き自分もベッドに横になり猫を撫でながら呟く。


「お前だけは、私だけの味方でいてくれよ。」
と一言呟きその目を閉じた。





 しかし、彼女は知らない自分の中の変化を知らない。
使い魔との契約にするに事によって彼女の精神力は確かに使われていた。
だがしかしそれ以外の力が彼女から使い魔に流れていることを、ハルゲニアの長い歴史で誰も認識でるものはいなかった。いや、する必要がなかったのかも知れない、この世界において始祖が創りし魔法のルールには、そんなものは必要なかったのだから、自身の中にある確かな力    “魔力”が流れていることを。

 そしてもう一つの変化が起きていた本来この世界に居るならば普通決して使われることの無かったであろう器官“リンカーコア“が活性化していることを。


彼女イザベラ・ド・ガリアは、自分たちの使う魔法でもなくエルフなどの亜人が使う先住魔法でもない魔法。
確かな技術で構築されたまったく異なる世界の魔法をハルゲニアでただ一人操ることができる権利を得たことを彼女はまだ知らない。



[12540] 使い魔のプロローグ
Name: 点太郎◆5392d2c1 ID:abb86e86
Date: 2009/11/05 00:55
side/?

ベッドの上で彼女は少女が寝たのを確認したのち、その無駄に大きなベッドを飛び降りた。そして、絨毯の上には猫がいる筈はずだが、猫など何処にもおらず、一人の女性が立っているのであった。

「やっぱり、この姿が一番良い」

誰も見てなくても動物の姿は、どうも恥ずかしい。

そういえばアルフは普段でも基本尻尾と耳を出したままだったし、戦闘の訓練でもよく獣の姿に戻っていたっけ。
ほんの少し前まで一緒にいた筈なのにどこか懐かしむようにリニスは笑っていた。

そして、眠っている青い髪の少女見つめ彼女、頭を優しく撫でながら、

====彼女は、ついさっきの出来事を思い起こすのであった。====

あの時自身の中にある魔力は限りなく0に近くすぐにでも消滅して仕舞いそうなほどの状態であった。

そのせいで自分の一番嫌いなただの動物のように扱われていても少し動く程度しかできなかったのである。
そのあと、このベッドの上で眠っている少女は何か唱え自分に口付けしてきたのである。

次の瞬間様々なことが起きた。
まず魔力が急速に回復していくのが感じられる。何処から、これほどの魔力は来るのだろうか、


―――まさかプレシアが?―――

しかし、その考えが間違いであるのは直ぐにわかった。
魔力の出所がこの目の前の少女からであると、しかし自分の主であるプレシア以外の魔力は自身の存在維持には、何の意味もない筈なのになぜ?

さらに、より深く思考しようとしたとき彼女は思考を中断せざるを得なかったからである。

突如痛みとともに、自身の手に何かが刻まれつつあったのも一つだがそれ以上の緊急事態が起きたのである。

そのルーンが自身の根本的部分である―魂―プレシア・テスタロッサを模して存在する人工魂魄を侵食しだしたのである。


リニスは慌てた。何故ならばその魂は自身を形成する全てである。
もし完全に侵食されていたならば、どうなったか解ったものではない。
その浸食を止めようと、現状可能な限りのマルチタスクを展開し、有りっ丈の魔力をつぎ込んで、その浸食する存在が何なのかの解析、浸食の阻止を必死に行っていた。

そして、僅かながらも侵食されたが、自身の大切な思いである“愛する者”“大切な者”そんな様々な思考を置き換えようとする手前なんとか阻止することができたのは幸いであったのだが、そちらにすべての思考を傾けていたので目の前の彼女のことや自分がどんな状態かを不覚にも忘れていたのであった。

そのせいで、存在維持の魔力を差し引いて、魔力が空になり気絶してしまったのである。





=====あの時、浸食を思い出すと、恐怖がいまでも来るのであった。




そして今現在、自分の現状この置かれた立場を整理してみることにした。



まずこの世界である。
この世界は自分の感覚からするとはっきり言って未開の惑星である。
しかし、この大気に充満するこの魔力にかんしては異常である。これでは、ごく一般的なミッド系の魔導師はよほどの魔力に対する容量を持っているか、吸収する魔力を完璧にコントロールできなければ、過剰魔力によりリンカーコアにダメージを受けてしまいかねないほどだ。

使い魔である自分には意味のないことだが、ミッドの学会にでも発表すればただの新世界発見どころの騒ぎではないだろうに。

この次元世界がどこの位置に存在しているか確認しようと外を見て月が2つあるんだな、とふと思いながら空を見続けていた。・・・・ただの少年とは違うのである。

別段リニスは、ただ星を眺めているのではなくその向こう側を次元の向こう側を見ようとしているのであった。デバイスが無い以上限界はあるが可能な限り調べたが結局この世界が何処なのかまったくわからなかった。


「これでは転移は無理そうですね。」


行き先も現在の場所も解らなければデバイスが有ればともかく、このまま転移するのは、目隠ししていくようなものである危険すぎる。



次に自分の変化である。
これが一番大切なことだ、現状自分の主が誰かという登録は最早プレシア・テスタロッサではない、この眠っている少女である。確かイザベラとでしたか?

しかし人工魂魄は間違いなくプレシアを模しているままで。
それは間違いない。それを確かなのを改めて認識してほっとするのであった。

あの時口付をされた瞬間に起きたことは主の登録変更、ラインの開通、人工魂魄への侵食そのせいか自分のリンカーコアは不思議と完全にこの世界に対応している。

そして、魔力の流入と同時にきた彼女の感情や知識や記憶が流れて来たのである。
それが知らないはずのイザベラの名前を知る理由である。
おそらく何の知識もないイザベラは、リンクの制御が出来ないのであろう。

それはつまりこちらの感覚も多少は流れるということだ。
使い魔から主人への情報の流れは少ないけれども流れるのは危ないかもしれない。

問題はこちらの魔法を発動してその時の情報が彼女に流れようものなら訓練もせず知識も無い彼女の脳はその情報量にダメージを受けかねない。

一応の知識は手に入れたのでリンクは、閉じておこう。




最後にこの子イザベラについてである。
情報が確かなら、この子は一国の御姫様だという、今時御姫様ってなどと、思ったがまぁ有りなのだろうと考え直したが問題は、彼女の置かれた現状と性格である。

彼女の置かれた確かに同情するとこはあるが、だからと言って人や物に当たるのは容認できるものではないし努力を諦めるなどもっての外である。

この世界ハルゲニア式魔法とでも呼ぼうかこの魔法は、確かにこの世界ではきっと優れているのであろう。だが、よく解らないことがある。


それは、魔力ではなく精神力というものである。
この世界に魔力という表現は存在しないという。だが、イザベラは魔力のための器官リンカーコアが機能しているし何よりこの私を完全な状態で維持させている。


自分で言うのもなんだが、自分はそれなりの使い魔だと自負している。
あのプレシアですら病気で全盛期からすれば程遠いが維持するのは疲れると言っていたのにこの子は、私を維持している。
体調を調べてみたが何所も問題ないむしろ余裕すらある。

もっとも比較対象がない以上結論は出すわけにはいかない。もっと時間を掛けなければ。

他にも、言語理解の魔法を使っていないのになぜこの子の言葉が理解できるのだろうか?

まぁ今は置いとこう。





思考を終了し真剣な表情でイザベラを見つめる。


あの浸食はこの子の意思ではないだろう。


イザベラが眠る前に言ったことを思い出す。



―――『お前だけは、私だけの味方でいてくれよ。』―――



「それが、イザベラあなたの願いなのですね。」

この世界の魔法では使い魔の契約は終了しているが、まだ、こちらの使い魔の契約は完了してはいない。



「わかりました。 その願いによる契約が完了するまで私は、あなたの使い魔です。」




未練が無いわけないでも目の前のこの子を放っておくことはできそうにない。

ゆえに、プレシア・テスタロッサの使い魔という肩書は捨ててイザベラ・ド・ガリアの使い魔と名乗りましょう。



「・・・・。今をもって私リニスは、貴女の使い魔です。」



そう言って眠っている少女に笑いかけるのであった。

フェイトとアルフのような仲に成れるかどうか心配であるが、がんばりましょう。ええ!

「そして、誰も貴女を馬鹿にしないほどに貴女を立派な魔導師にしてみましょう。」

「それと、あなたの性格や態度は確り叩き治してみせましょう。」

メイジの才は無いのかもしれないのかもしれない。でも、貴女は魔導師としての確かな才がある。

そう考えて様々な問題はあるがどう教育していくかを考えるととても楽しくなる。
あぁ、やはり私は教育者だそんなことを思うのであった。












「よろしくお願いしますね。・・・ご主人様?」







あとがき
こうやって文にするのは難しいものです。
ああしよう、こうしようという考えは、出てきてもいざ文にするのは一苦労です。
どんどん書ける人たちはすごいですね。本当に。



[12540] その1
Name: 点太郎◆5392d2c1 ID:abb86e86
Date: 2009/11/19 00:21
次の日の朝。


『……イ…・・・起…』










「・・・・?」



『イザベラ…起きな・・・』







「・・・ん~?・」





『イザベラ! 起きなさい、もう朝です。』



「・・・・む~~・・・」





『寝すぎることは、体に良くありません。 起きなさい、イザベラ。』









「・・・・・・・・・・・・・・・。」





side/イザベラ

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


誰かが、私を生意気にも起こそうとする。
しかも、呼び捨て!
更には命令口調ときたもんだ。
未覚醒の頭で、そんな風に私を呼ぶのは誰だと考えてみる。


この国で面と向かって私を呼べるのは父であるガリア王のジョゼフ1世ただ一人だ。
しかし、あの父がこの私などを起こそうとするだろうか?
それは無いことだ。
あの父は例えこの自分の国であるガリアが戦争になったとしても、すべてがどうでもいいと、考えていそうな男である。
たかが、自分の娘に何かする筈などありえない。


すぐに考えを否定し、次の人物を考える。


じゃあいったい誰が、この私を図々しくも呼び捨てに?

いくら考えても出てこないので仕方なしに目を開けて声のする方に首を動かしてみるがそこには誰もいない。

視線を下げてみると猫が1匹いるだけだった。

なんで、ここに猫が?と慌てて体を起こすが、よくよく考えて自分が昨日呼び出した使い魔だと思いだし安心したが、先ほどの声の主を見つけようと部屋中を見渡してみる。
しかし人など何処にもおらず、人のいた気配すら無い。
いるのは自分の使い魔の猫1匹。


「まさか、お前か?」


あり得ない話ではない。
たしか使い魔になった動物の中には、急激に知能が高まり人の言葉を理解し、多少ではあるが喋ったりすることもあるはずだ。


「おい、 なんか言ってみろ!」






『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』




返事はないただの猫のようだ。


「はぁ~」 
「ん~~~、気のせいだったか?」


そう考えあと魔法の鈴を使ってメイドを呼びつける。
すると慌ててメイドがやってきた。

「遅い!」
そして、いつものよう悪態をつくイザベラ。

「も、申し訳ありません」
必死に頭を下げるメイドを見ながら、こいつをどうしてやろうかと考えるが、今はメイドをからかって遊ぶより先にすることが幾つもある今日は忙しいのだ。使い魔に名前を付けたりと色々しなくてはいけない。
なのでさっさと朝食まで済ませようと決め。

「愚図が、さっさとしな。」

そう言ってイザベラは、メイドに自分の着替えをさせるようにと指示をする。

言われたメイドは自分に暴力が来ないことに安心したがまた、いつものような癇癪を起されるのではと怯えながらもせっせと着替えさせていく。

着替えさせている途中自分の使い魔が何をしているか気になり確認してみるとそこには、どう見ても猫がする表情ではない顔をしている自分の使い魔がいた

何と無くだが、人がする"呆れ顔"そんな表情をしていたのである。
猫はそんな表情をするよう動物だっけ?

そう考えているうちに着替えなどの、朝の身支度が終わっていった。

一通り終わったところでメイドが猫の方に視線をちらちらと向けているのに気付いた。

「何勝手に私の使い魔を見てるんだい? えぇ?」

「も、申し訳ありません」
先ほどと同じように謝るメイドに舌打ちしながら料理を持って来るよう下がらせる。
使い魔の分の食事がいることを思い出し出て行こうとしたメイドを呼び止める。

「ああそうだ、こいつにやる食事がいる。何か持って来い。」
そう言いながら使い魔を指す。
一瞬考えたメイドは牛乳が良いだろうと思いつきイザベラに返答する。

「わかりました。ではミルクをお持ちいたします。」

「まぁ、それでいいか。」

「だけど、   こいつが少しでも嫌がったりしたら、ただじゃ済まさないからね?」

「は、っはい。」

思いっきり睨みそれに怯えて出ていくメイド。

「ったく」
豪華な椅子に腰かけて食事を待っているイザベラ、するとそこに聞いたような声が聞こえてきた。

「・・・・・あの、すいません。」

「はぁ?」


声のする方には使い魔がいる筈だと一瞬思ったが振り向いてみるとそこには猫などおらず一人の女性が立っているのであった。


「できれば、私ミルクなどではなく普通の食事がいいのですが。」





「きゃあああああああああああ~~~。」






突然の侵入者に慌てて叫び兵たち呼ぼうとするがそれより先に




「あ、 そんなに声を出してしまったら人が来てしまいます。」
そう言うなり、女の足下が光ったかと思うと魔法陣の様なものが現れた次の瞬間、部屋全体が何かの光に包まれているのであった





イザベラはこの現状に混乱しながらも目の前の女を睨みつけ

「何もんだお前は?」
「ここを何処だと思ってる?」
「私の使い魔をどこにやった?」

ついに来た自分を殺す存在が来たんだと怯えながらも、もうすぐさっきの声を聞きつけて兵たちが来るはずだと必死に強がるのだが



「部屋全体を結界で包みました。誰もここには来ることはできませんよ。」
そう言って笑いかけるのである。


「っひ! い、嫌、死にたくなんかない。」
結界とは何なのか解らないが、その女の笑顔が恐怖の象徴にしか見えないイザベラはそこから逃げ出そうとするが




「ああ、それとこの部屋からは出られませんよ。」
さらに恐怖を煽る様に語る女、イザベラは今すぐに逃げたいのにそれは無理なんて言われて今にも泣き出しそうな顔している。




「そんな怖がらないでくださいイザベラ、私があなたを殺したりするなんて出来る筈無いじゃないですか。」
「なんたって私はあなたの使い魔、あなたは私のご主人様なんですから。」



「・・・・・・はぁ?」



「ですから、私はあなたが呼び出した使い魔ですって。」

「意味の解らないことを言うな!私の使い魔は猫だ。お前みたいな怪しい人間なわけあるか!」


「ですから、その猫が私なんですって。」
「ほら、見てくださいこれ」

そう言って女は自分の手の甲を私に見せてくる。
そこには、確かに自分の使い魔の猫に刻まれたのと同じ形のルーンが刻まれていた。

「だ、だからって信じれるか!」


「じゃあこれでどうです?」
すると光が女性を包みこみ、次の瞬間そこに居たのは間違いなく自分が召喚した使い魔の猫であった。

「どうです?信じてもらえました?」




ふらり






「ああ、気絶はしないでください。朝食が来たときにどう説明すればいいか困ります。」


再び猫が人になり自分を支えてくる。
『たのむから頼むから気絶させてくれ』と言いたかったのだがそれより先に

「・・・ん?   どうやら、朝食がすぐそこまで来たようです。結界は解除しましたので私の分の食事と説明の程よろしくお願いしますね。」


「お、おい何勝ってな・・」


しかし、言い切る前に扉が開き朝食が運ばれてくる。

「朝食をお持ちしました。それと使い魔様のミルクはこちらになります。」


「ったく、 あ~~~牛乳の方はもういらん。だから適当な食事をもうひとつ分持って来い。」


「え? どなたか此処でお食事されるのですか?」


「違う、こいつが使い魔のくせに牛乳が嫌だと言いやがるから」

指さした先を見るとそこには、見たことのない服装をした女性が一人立っていた。

「え? 使い魔様は猫ではありませんでしたか?」

混乱するメイドにさらに混乱させることをいうイザベラ

「こいつがその猫だ。」


「・・は?」
ますます混乱していくメイドに、使い魔だと言われた女性は

「初めまして、私は山猫で名前はリニスと申します。このたびイザベラの使い魔をすることになりましたのでどうぞよろしくお願いします。」

そう言って頭を下げてくるリニスを見て固まっていると
 
「おい、名前初めて聞いたぞ。」

「ええ、今初めて自己紹介しましたので。」
 
「なんで主人のこの私より先にこんなメイドに自己紹介するんだ!」
今日は名前を付けたりと、いろいろ楽しもうとしていたのにメイドに対する自己紹介ですべて終わってしまいイラつくイザベラ。

それに対して
「イザベラ、誰であろうと“こんな“などと呼んではいけません。」

「使い魔の分際で私を説教するつもりか?」

「ええ、しますとも。私は貴女の使い魔ですから、主人が間違った方に行かない様に教育するのも契約の内です。」

「契約?何のことだ?」
疑問はあるが今はそれどころではない。こいつさっき何と言った?

「教育だって?この私を?」



「ふざけるな~~~~~~~!!」





その声に怯えるメイド、だがしかしリニスは悠然と構えているそしてイザベラは近くにある自分の杖を手に取りリニスに向けようとするが

「カッとなったからといってすぐに人にこんなものを向けてはいけません。こんな物でも一応危ないんですよ?」

杖はそこには無くいつの間にか別の位置に移動しているリニスの手の中に有るのであった。


「っな! 今どうやってここにあった私の杖を取った?私の杖がこんな物だと?
・・・・・お前まで私を馬鹿にするのか!

メイドが居ることも忘れてリニスに向かって叫ぶイザベラ。


するとリニスは真剣な表情でこちらを見つ直し
「貴方を馬鹿にするようなことなどたとえ何が有ろうと私が存在する限りそんなことは決してありません。なんたって貴方は私を存在させているのですから。」

やはり良く解らないことを言っているが、自分を決して馬鹿になどしないと言われ僅かだが怒りが収まったところに

「あと、どうやって杖を取ったかについてはただ単純に速く動いただけですよ?」

「え?」

「こうやって。」

再び消えたかと思った瞬間、目の前に現れたリニスに戸惑い後ずさりしようとするが、イザベラは肩を掴まれて動けないでいた。

「そんな簡単に暴力を振ってはいけませんイザベラ。いつか自分に大きなしっぺ返しが来るかも知れないのですから。」


「放せ、おい。放さないか!」
そんなこと、・・・だからって如何すりゃいいんだ。

「解ってくれないなら、解らすしかないのです。」
そしてリニスは小さく唱えるのであった『サンダーアーム』と

ッバチ!

「ひゃっう!?」
強烈な痺れの後、意識が遠くなり倒れる体をリニスが支える

「解ってくれました?」

そんなことを笑顔で言われたイザベラは痺れてうまく喋れないながらも必死に
「だ、誰がこんなんで・・・・・・・・・・・・」
しかし、言い切る前に意識を失うのであった。





side/リニス


「あ、 メイドさん?」
イザベラを抱きかかえたままメイドに声をかける。


「は、っはい!」
声をかけられようやく再起動したメイド


「朝食の方、簡単なものでいいので私の分お願いしますね?」


「………わ、わかりました。すぐにお持ちします。」

そう言って出ていくメイドを見送ったあと気絶したイザベラをベッドに寝かせてから取り上げた杖を眺めてみる。

「やはりただの杖ですか。」
そう言って溜息をつくリニス

「これでは出力装置として機能できるか疑問……いえ疑問にもならないでしょうね。」

間違いなくイザベラが将来的に扱えるであろう力の前では、こんな杖では役不足だ。

だからと言って替えのもっといい杖が有るかといえば無理な話だ。
こんな辺境の世界ではさまざまな特殊なパーツなど手に入れるのは不可能だ。

いつかこの子にもデバイスを作ってあげたいのは山々だが道のりは険しそうである。

しかし、ここは魔法が主の世界。
自分がいた世界のデバイスに使う工業製品は無くても、それなりの物もしくはそれ以上の素材、詰まりロストロギア級の何かがあるかも知れない。

そんな物があるのか解らないけど、いつか貴女が一人前の魔導師に成ったときには貴女に相応しいデバイスをプレゼントしたい。
そう考えるリニスであった。




[12540] その2
Name: 点太郎◆5392d2c1 ID:abb86e86
Date: 2009/11/19 00:22
目が覚めるとそこはいつものベッドの上

「なんだ。夢か。
そうだよな、やっぱ普通、猫が喋ったり、人に変身したりなんてありえないよな。」


そう自分に言い聞かすように呟くイザベラの耳に夢の声が囁く。





           ―――「確かにないですね。」―――






「ん?」
自分しか居ない筈なのに声が返ってくる。




「おはよう御座いますイザベラ。早くしないとご飯が冷めてしまいますよ。」






「きゃぁああああああああ~~~~~~~!!」










「だから大きな声を出さないでください。朝と同じじゃないですか!」




「っひ!」

朝!?同じそう言われ恐怖がフラッシュバックしてイザベラは怯えて声を出すのをやめる。


「そんな怯えないでください。」


そうは言ってもイザベラにとっては自分を攻撃するかも知れない自分の使い魔が怖くて仕方がないのであるがしかし、強気に行くのがイザベラである。




「黙れ! この、化け猫が!!」




「ば、化け猫? 私が化け猫だと仰るんですか?」

「そうだ、流暢に喋るは、人に変身するはでそんな猫今まで聞いたことがない。しかも良く解らん力も持っている正に化け猫じゃないか!」

「酷いですよ!」

「いいや、絶っ対に酷くない!!」

「そんな。」
ショックを受けているリニスに向かってさらに文句を言う。


「何が”そんな~”だ!ふざけるな、このバカ!」



「……朝のこと怒ってます?」

「当たり前だ!自分が何したと思ってるんだ?」

第一印象は最悪のようだ。
流石にいきなりあれ(サンダーアーム)はやり過ぎたか、そう反省するリニス。

「あの時はついやり過ぎてしまって、さすがにやり過ぎたと思っています。本当に反省します。」





「本当だろうな?」


「本当です。主人である貴女に誓って。」


「本当に私の使い魔だな?」
そこから疑いたくなるイザベラに

「もちろんです。」
そう言ってルーンを見せるよう胸に手を当てるリニス。

「はぁ~~~~もういい、じゃあ朝私に何をしてどうやって気絶させた?」


「ええっと、あの時やったのは《サンダーアーム》と言って魔力から変換した電撃を体の一部つまりあの時は手に集中発生させ、その手に触れた存在に電撃を流し込む魔力付与の防御魔法を使いました。こうやって。」
そうするとリニスは右腕を掲げるとその手からバチバチと電気が出ているのが見て取れた。

「っう。」
それを見たイザベラは、顔を引きつらせて1歩、2歩と下がる。

「魔法だと?お前は、メイ・・・違った。こいつは猫だよな、じゃあつまりお前は何か、先住魔法が使えるのか?」
メイジとは魔法を使う人を指す今は人型だがこいつは猫だ。そう考え指摘するが

「いいえ。私が使うのは先住魔法というものではありません。」
リニスはそれを否定する。

「だけど魔法を使うんだろ?他に何がある?」

「私が使う魔法とはミッドチルダ式という魔力を運用する技術の事を指します。
深く言えば、自然摂理や物理作用をプログラム化し、それを任意に書き換え、書き加えたり消去したりすることで、作用に変える技法を私たちは魔法と呼びます。」

「?・・?・・・ミッドチルダ?何だ、それ聞いたことがない?」

「魔力の運用方法の名称です。正確にいえば発祥の地がミッドチルダですのでそこから来た名称でもあります。」

「発祥の地?そこは何処なんだ?」
リニスの話すことすべてに質問していくイザベラにリニスは、応えていく。

「順に話します。まず、私が何者なのかについてですが。」

そう言ってイザベラに近寄ろうとしたが


「まて!それ以上こっちに来るな。」


「な、何で、ですか?!」

「何でだと? また朝みたいになったら堪ったもんじゃない。」

「それは貴女が・・・・・はぁ、解りました。では、説明しますね。」

「まず私は、居たところはこの世界ではありません。別の世界から来ました。」

「別の世界?ここ以外にどっかに世界が在るってのかい? 信じられないね。」

「これは事実です世界はここ以外にも幾つも存在します。私の居た世界の名前はミッドチルダと言います。そこはミッドチルダ式略してミッド式の発祥の地でもあります。」

「そんな場所が有るなんて証拠なんて無い。実はお前の妄想で東の砂漠の向こうとかじゃないのか?」

「そんな場所ではなく、"そんな世界が"が正しい表現ですね。あと証拠についてですが、あとで色々とお見せしますので今は話を聞いてください。」
 




「……分かった。」

追求したい気持ちはあるが今は一応全部聞いてやろうと納得するイザベラ。


「では、続けます。先に言ったように私はミッドチルダという世界に住んでました。そしてそこの時の庭園と呼ばれるところで私は庭園の主人であるプレシア・テスタロッサの使い魔をしておりました。」

「使い魔?」

「はい、私は貴女に召喚される直前までプレシアの使い魔でした。」

「じゃあ何か私はプレシアっていう奴のおh『ッバチ』――っヒ――――――!」
そう言い切る前にリニスの手が光ったような気がしたので慌てて質問を変えるイザベラ。


「ちょ、直前ってことはそのプレシアって奴は、死んだのか?」

ちょっと聞く質問が悪い様な気もするがリニスはすこし悲しそうな顔をして否定するのだった。

「いいえ、この世界のあなた達メイジと使い魔は一生の主従の関係に在りますが私の居たところでは魔導師と使い魔の関係というのは此処とはだいぶ違いがあります。」

「どう違いがあるんだ?それと魔導師ってなんだ?」

「魔導師については先に説明したミッドチルダ式の魔法を使う人の事を基本指します。
分かりにくいようでしたら今はメイジの様なものと考えてもらって結構です。

では、魔導師と使い魔の関係ですが、まずメイジは使い魔を召還して現れた動物などと契約し使い魔にしますが魔導師は使い魔を何かしらの目的完遂のために使い魔を“作る”のです。」

「作る?どうやって?」

「まず、動物が死亡する直前もしくは直後に、人工の魂魄つまり魔力で出来た仮想生命を作り出しそれを憑依させる事で造ります。故に私のこの体は山猫が素体ですがプレシアの作った人工魂魄によって出来ているので完全な山猫とは呼べないかもしれません。
それでも私は猫だと自分を言い切りますが。」


「次に契約ですが、目的の達成まで契約をして使い魔に魔力を与え目的が達せられた後に契約を解除するのが一般的な使い魔です。そして、契約を解除された使い魔は主からの魔力供給を断たれ消滅します。それが私がいた世界の使い魔と魔導師の関係です。
また契約の形によっては私の様な意思を持たず、ただの人形のようにしか振舞えないものもあります。」

「お前も契約が完了したから直前って事なのか?」

「ええそうです。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・じゃあお前のその……契約って何だったんだ?」


「私の契約は主人であったプレシアの娘であるフェイトという子を一人前の魔導師にすることでした。」


「そのフェイトって子はプレシアって奴が望む様な魔導師に成ったってことか?」


聞かれたリニスの顔はよくぞ聞いてくれたそんな顔をしていた。

「ええ、それはもう。もともと才能のある子でしたが、努力を怠らず私の教えることを完璧に学んでいきました。
また、母であるプレシアに似て高い魔力と電気の魔力変換資質を持ち、それはもう何処に出しても恥ずかしくない立派な魔導師に成りました。」

そう言うリニスは正に親が自分の子供を自慢するそれであった。






………天才か
「………それで、それで、お前は良いのか?」

「何がですか?」

「だってそうだろう。用がすんだらポイなんてあんまりだ。」
この世界の使い魔との関係と照らすとあまりにも違うことに戸惑うイザベラ


「………たしかにそうかもしれません。ですが使い魔と魔導師にも絆はあります。
フェイトも使い魔を持っていますがあの子は、使い魔との契約を《ずっとそばにいること》そう契約したんですよ。
それに、いつも一緒にいてまるで仲のいい本当の姉妹のようでした。そう、本法に…………あの子は本当にやさしい子でしたから。」

「……だけどそれは、フェイトって子とその使い魔の話だろお前には、あったのか?」

「私はいいんです。私はあの子を、………フェイトをプレシアに任されそして育てることが出来てとても満足でした。」











……………………………………………………不思議とこいつの言っていることは嘘とは思わない。
魔力がどうとか何てよく解らないが何となくだがこいつの話はホントだと思う。

主人と使い魔は何処かで繋がっているそう言われるくらいだ。

その繋がりから来る感なのかもしれない。


そう思うと悪くは無い気分だ。
肉親であるはずの父ですら何を考えているのか解らなかった自分が初めて本当に相手の事を解ることが出来たことはいい気分だ。

それに向こうも私の味方でいようとしてくれるのだ。

気分が悪い訳が無い。ただ少し怖いが。




だが、そんな味方であるリニスが使い捨てにされ消える直前だったと考えるといい気分ではない。



もし私が魔導師の使い魔なら消される前に何かしてやりたいね絶対に。
だというのにこいつは使い捨てにされたのに自分は満足だなんて言いやがっておかしいだろ普通。
リニスのいた世界の魔導師って奴らはどうかしてる。
あんまりじゃないか。


「…………………。」
いろいろと考えて黙っていると

「イザベラ?」

「ん?」

「少し冷めて仕舞いましたが話の続きは食事の後にしましょう。」

「……ああ、そうだな。」
そういえばまだ食べて無かったっけ。
こいつの話に夢中になりすぎて忘れてた。

そう言って食事の置いてあるテーブルに向い椅子に腰かけて待っているがリニスは来ないので見てみるとリニスは困ったような顔をしてさっきの所を動かないので如何したのか聞いてみる。

「如何したんだ?」

「近づくなって言いましたし。」

イザベラはそう言われて可笑しくなり少し笑う。

「もういいさ。こっちに来て一緒に食べよう。」

「はい!」

そういって2人は席に着き少し遅くなった食事を始めるので有った。

「お前の話だが、……一応は信じてやるよ。」

「如何して信じてくれるんですか?」

「何となくだ。それに半分まだ程度しか信じちゃいない。」
そう尋ねられたイザベラは素っ気なく答えたがリニスは嬉しそうだった。







「リニス。」
一応は言っとこうと思い手を止めて真顔でリニスを見るイザベラ。

「何でしょう?」
向こうも此方を見つめる。

「私は魔導師じゃなくメイジだ。メイジは使い魔を途中で捨てたりはしない。だから私が死ぬまで私はお前を散々扱使ってやるよ。」

「ええ、心得ておりますイザベラ。でも私は貴女を一人の魔導師として貴女と契約してるんですよ?」

「は?」
折角かっこつけて決めてみたのに再びよく解らないことを言われ顔を歪める。

「何を言ってる、私はメイジだ。お前とはメイジとしてリニス、お前と契約したんだぞ?
絶対に私は魔導師とか言う輩じゃない。」

「何言ってるんですか?あの時私に言ったじゃないですか『お前だけは私の味方でいてくれ』って。私はその契約を果たすまでは貴女の味方です。」
『それと貴女を一人前の魔導師にしたい』って言いたいのですが何だか変な誤解をしてる様ですから今は黙っときましょう。

「え?」
……じゃあ何か、こいつはその契約が有るから味方なだけで、本当は私の事はどうでもいいんじゃないのか?むしろ嫌じゃないだろうか?

「じゃあ契約が完了したらお前は今度こそ消えるのか?」
恐る恐る尋ねてみる。

「さぁ~、どうでしょうか?」

「分からないのか?」

「この契約内容を完了とするには主人である貴女と私の双方が完了したと思ったら完了なんです。あとこの契約どうやったら完了なのかよく解かりませんし、それに貴女を一人にするのは心配ですしね。」






「ふん、余計なことだ。せいぜい扱使ってやるさ。」
そう言って食事を再開するイザベラに

「ええ、契約が果たされるその日まで私は貴女の使い魔ですから。」
そう言いながらイザベラを見て小さく笑うのであった。

食事中にイザベラは思い出したようにリニスにあることを聞く。
「ああそうだ、そうだ、あとでお前の使う魔法を見せてくれよ。人に教えるくらいだ。
色々できるだろ?」

「ええ、元よりそのつもりでしたし、ここは少々手狭ですので後で外に行きましょう。」

「ここが狭い?」
何をする気だ?
冗談で言っているのかと思えたが、こいつの使う魔法がどんな物か分からない以上はもしかしたら本当に狭いのかもしれないそう考え冷や汗が出てきた。

「狭いですね。下手に撃つと此処が粉々になって仕舞うかもしれませんので。」

撃つ?何をする気だ?何を?
「……分かった。じゃあさっさと食べて外にいこう。」

「ええ。」

そう言って二人して食事をすませるのであった。





[12540] その3
Name: 点太郎◆5392d2c1 ID:abb86e86
Date: 2009/11/19 07:18
■プチ・トロワ中庭

「で、どんな物を見せてくれるんだ?」

「ん~~、手っ取り早く見た目で威力の分かり易い攻撃性の魔法をお見せしましょう。」

「ファイヤーボールみたいな炎の魔法か?」
自分たちの魔法で一番攻撃に適した属性は炎だ。
そう思って尋ねてみるが。


「いいえ、私の使う魔法はどっちかといえば電気ですね。」

「電気?」


「分かりやすく言って雷を操ります。」

「じゃあライトニング・クラウドみたいな物か?」
確かにあれは強力だ。人に当てれば簡単に死んでしまう。

「そうですねぇ~~、それ最大でどれ位の威力ですか?」

「人に当たればそいつが黒こげになる位だな。あと、お前のできる全力全開ってどれ位だ?」


「私は、そ~別段に広域作用型ではないですから、大きく作用させようと思うと儀式魔法になりますし、普通に全力で放つならばこのプチ・トロワを跡形もなく全て吹き飛ばすぐらいですね。」

「は?っちょ、ちょっと待て、お前今からそれを撃つんじゃないだろうな?
それと、それのどこが広域じゃあないだ!思いっ切り広いぞ!」
そう言いながら身振りで大きさを示そうとするイザベラ。

「さすがにそんな魔法危なくて撃ちはしませんよ。」
そう笑うリニスの笑顔は朝と同じく恐ろしく思う。
………あの時こいつに少しでも同情したのは間違ったかな?

「危ないで済むか!恐ろしすぎだ!」

「ちなみにSランク以上の魔導師の広域型だと町ひとつ簡単に消滅しますね。」

「……………………………………。」
魔導師って奴は使い魔で最低な奴らだと思ったが何なんだ一体?異常すぎだろ常識的に考えてさ。

「あ、別段魔導師が全てそうでは有りませんので。」

「そうなのか?」
イザベラがまだ見ぬ魔導師に恐怖しているとリニスがその恐怖を否定する。

「ええ、AAA以上はそう滅多にいませんから。普通の一般の魔導師では、そうはいきません。
あと簡単な使い魔なら未だしも、私の位の使い魔は魔力を多量に食いますので魔力の低い魔導師は使い魔を持ちたがらないというより持て無いんです。
ですから、結果的に持っている魔導師も多くありません。」

「そのAAAとかSってなんだ、何の意味があるんだ?」

「魔導師のランクのことです。最低ランクのFから始まりE、D、C 、B 、A 、AA 、AAA 、S、SS 、SSSの順番での11ランクが存在します。」

「?」
さらに意味が分からないという顔をしていると

「あ、この世界にはそんな名称ありませんでしたね。意味はだいぶ違いますがメイジで言う所の、“ドット”、“ライン”、“トライアングル”、“スクウェア”と同じです。」


「もういい、そう言った細かいことは後だ。今はお前の魔法がどれぐらいか見たい。」
じゃあリニスはトライアングルぐらいの存在なのか?
その主人だったのプレシアって一体どんなだったんだろう?
それに比べて私は、これか・・・・

「分かりました。ですが何か的になる物は有りませんか?」

「的ね~?」
そう言ってイザベラは辺りを見回して見る。









…………………………
……………
………
すると幾つかの像が有る。
そして手頃そうなのが一体目に入りリニスに声をかける。

「よし、あれを的にして良いぞ。」

それを見たリニスは戸惑う。
「え、本当に良いんですか?」
イザベラに的にして良いと言われたのは庭の一角にある見事な造りのガーゴイルがいた。

そう言われてイザベラは、そんなことかと溜息をついて
「いいんだよ、ここに有るのは全部私の物なんだから、あんな物壊れたってすぐ替えはき
…っ。」
リニスを見てあのことを思い出し途中で言葉を止め


「…………………やっぱあれは駄目だ!他にしよう、他に。」

「……ええ、そうしましょう。」
再び辺りを見渡すイザベラ













…………………………
……………
………
「お? よし、あいつにしよう。」
視線の先、少し離れた所に一人の男性が歩いていた。
距離が多少有るため顔はよく見えないがマントを付けていることからメイジだとすぐに分かる。

「え?あの人が的ですか?」
非殺傷で放てば外傷とかは無いでしょうから大丈夫だと思いますがでも、不味い様な気が……。

「違うは! そんな事したらやばいだろが!」

「いえ、……たぶん、大丈夫だとは思いますが。」

「…? まあいいや。お前、あそこで歩いている奴を此処に連れてきてくれよ。」
イザベラがリニスに命令すると

「分かりました。」
するとリニスの体が浮き上がり

「え?」

「連れてきますんで少し待ってて下さい。」

自分たちメイジはフライを唱えれば空中を飛ぶことは出来る。だが、所詮それは浮きながら移動するのが精々で在るのに対してリニスのそれは違った

「・・・・・あいつ飛べるんだ。」
まさに飛竜が空を飛ぶような速度で空中を移動しているのであった。



飛んで行ったリニスを見ていると、向こうで何か男と話しているようだ。
何か男の方が喚いている。
すると男は杖を取り出しリニスに向けようとしているではないか。

「っな、やばい。」
一瞬焦ったがそれは無駄に終わったのであった。

朝の自分と同じように男の杖をいつの間にかリニスが取り上げている。

「あ!」

しかし自分の時と違って混乱している男にリニスが手を翳すと何やら光の輪が現れ男を縛り上げる。
そして再びこっちに飛んでくる。
勿論縛り上げた男を掴んだままであった。


「連れてきましたけど如何するんですか?」
リニスは浮遊しながらイザベラに尋ねる。

「…………………。」
ふと、リニスに抱えられた男を見ると

「は、離せ。離さないか。」
色々と叫びジタバタしている男に対してイザベラは

「うるさいぞ、お前!」

「っ!」
目の前にイザベラがいることにようやく気付いた男は慌てて声を出すのを止める。

「こ、これは姫様、一体これは何なんですか?」

「何なんだじゃ無い!お前さっき私の使い魔に杖を向けたな?」

「つ、使い魔?この女性がですか?」
そう言って自分を抱えている謎の女性の顔を見ると此方に微笑んでくる。

「ええ、私はイザベラの使い魔リニスです。」

「っな!!!」
言葉を詰まらし顔を青くする男

「なんで、杖を向けた?」

「姫様の使い魔だとは露知らず申し訳ありません。
私はこのプチ・トロワをそして姫様を守るものです。
そんな中、突然杖も使わずに飛んで来てさらに一緒に来てくれと言うこの女性が危険な存在だと勘違いしてしまった次第なわけでして、
杖を向けたのは使命ゆえの行為であって決して悪意など。どうか姫様何とぞお許しを。」

そう頭を下げる男であるが未だ縛られたままでる。

多少混乱しているが必死で弁明している男に対しイザベラは
「………お前名は?あと得意な系統は?」

「は!私はモーガン・セランスと申します。
自分はラインで得意な系統は土で在ります。」

「ふぅんラインねぇ。如何してやろうかね?」

そう言われたモーガンはさっきよりも男は冷や汗を出して顔を青くしている。

「イザベラ。」

「ん?」

「別にいいじゃないですか。私は気にしてはいませんし。」

「だけど、こいつお前に攻撃しようとしたんだぞ。」
そう抗議するが

「別にこの程度の人がいくら来様と何の問題も有りませんから。」

リニスがそう言うならもういいか。そう思いモーガンを見てみると何か私の前だというのに、凄い嫌そうな顔をしている。

そりゃまぁそうだろうな。
メイジつまり貴族は皆無駄にプライドがある奴ばかりだ。
それをお前は雑魚だ!みたいなこと言われたそうなるだろうな、一応騎士みたいだし。



もっともこれじゃ本当にリニスにとって大方のメイジは敵じゃ無さそうだし。


「リニス、それ解いてやれ。あと杖を返してやりな。」

言われたリニスは男を地面に下ろしバインドを解く。

「御免なさいね。」
そう言ってモーガンに謝り杖を返すと嫌そうに杖も取る。

「よし、お前さっさと錬金で2メイルぐらいでいいから適当な的を作れ。」



      「え?」   「ああそう言うことですか。」



「え?じゃない。いいから錬金を早くやれ。」

「っは、はい!」
慌てて杖を振り石柱を5つほど錬金するモーガン。
「これでよろしいでしょうか?」

「リニスこれでいいか?」
聞かれたイザベラはリニスに尋ねる。

「ええ、大丈夫です。」

「よし、そう言うことだ。もういいぞ、お前どっか行け。」

「は、はい、では。」
そいってモーガンは下がる。
そうしてモーガンが見えなくなったところで

「じゃ見せてくれ。」
期待を込めてリニスに言うと

「イザベラ、さっきの対応は如何かと思いますよ?」
リニスは困ったような顔をしている。

「さっき?・・・・・ああ、あいつの事か?」

「ええ、あのような対応はあまり感心しませんね。」

「いいんだよ。本当だったらもっと言ってやる筈なんだし。」

「は~分かりましたその手の話はいずれその内。
では、基礎の基礎である射撃魔法を見せます。ランサースフィアセット!」
溜息をついた後に思考を切り替える。そして魔法を見せるためスフィアの展開を宣言するすると一つの光の球体が空中に出現した。

「何これ?」
そう言いながら光の球体を突っ突こうとすると

「あ、危ないですから触らないで!」
スフィアをイザベラから遠ざける。

「危ない?」

「ええ、今は物理干渉ONにしてありますから、触ると朝のように痺れるだけじゃ済まないかもしれません。」

「い!」
慌てて手を引っ込めるイザベラを確認してリニスは

「では、見てて下さいね。ファイア!」
石柱の1つを指差し宣言するリニス
するとスフィアから光が出たかと思うと 

ドン!

石柱に穴が開いていた。
「どうですか?これが射撃魔法の一つフォトンランサーです。」

「・・・ん?  ああ、凄いな。でも凄いけど何かねぇ~、私はもっと、こう派手なのを期待したのにさ」
イザベラは一瞬奇妙な感覚に首を傾げた後リニスの魔法にケチをつけ始めた。

「これが地味?」
心外そうな顔をする。

「だって~。」
そう言っていると
リニスの足元が光ると魔法陣が現れる。
「このスフィア形成は基礎の基礎です。増やしていくことにより・・・・・・」
そしてリニスの周りに2つ、3つ、4つ……10……20と次々にスフィアが形成されていくそして


「威力は上がるのです。・・・・・・・・撃ち砕きなさい。ファイア!」
先ほど穴を開けた石柱に対して再び宣言する。
するとリニスの周りに滞空していたスフィアより凄まじい数の光の矢が石柱めがけて発射される。

「うわ!?」
イザベラはその石柱が砕く爆音と閃光に目と耳を覆う。

「どうですか?イザベラ。基礎でも少し増やすだけで此処までの物に成るんですよ。」

「ん? んな!?」
目を開け石柱を確認すると“シュ~~”と煙を立て粉々になった石柱の残骸が有った。


「ああ、凄い・・・よ。ほ・・・・・本・・と・・・うに・・・。」
イザベラは頭を押さえながらリニス言う。

「イザベラ大丈夫ですか?」











side/イザベラ

なんだこれ?
こいつの魔法を観ていてさっきから変な感じがする。
この魔法を使っているのはリニスだ。それなのにまるでこの魔法を出しているのが自分だと思っている自分が頭の隅の方に居る。
どうやって発動しているかも解らないのに、この魔法を理解し操っている自分が居るのだ。

・・・・・・ボケたか私は?
いや、ボケるには早すぎる。じゃあ何なんだこれは?








side/リニス
どうやら上手くいった様ですが、予想よりだいぶ混乱しているみたいですが。
大分絞って流したつもりでしたがやはり時期尚早でしたか。


========イザベラが混乱している理由それはリニスがイザベラとの精神リンクを強めただけである。
何れは魔導師に、そう考えるリニスはこの世界の魔法とは違うのだと云うことをまず感覚からと自分が魔法を行使する時の感覚を僅かであるが、イザベラに送ったのである。

尤も何も分からないイザベラにすれば意味不明な物であり混乱するだけであったのだが。============


しかし精神リンクは、本来使い魔から主人に対して此処まで器用に情報を流すことは出来ない筈。
なのに、出来た理由はやはりこれの御蔭いえ、むしろこの所為でしょうか?

リニスはその手を観る。そこにはこの世界の魔法によって出来た使い魔の印が有った。

―――――――――使い魔に対して大きく違うこの世界の魔法。
一部のよく解らない魔法を除いて、あまり汎用性のない魔法だと思っていましたがこのルーンは随分とそして恐ろしく良く出来ている。
まぁ今はこれをもっと活用しましょう。

では、次の魔法の時には先に言った方がいいでしょうか?
・・・・・・・止めときましょう。むしろ閉じましょう。
時間は幾らでも有りますしフェイトの時のように急ぐことも有りませんね。


そうして精神リンクを元の状態まで戻しイザベラの混乱が治るのをリニスは待つのであった。








あとがき
台詞ばかりに成ってしまう如何した物か。






遅くなりましたがこんな作品に多くの感想ありがとうございます。
しかしその殆どが間違いの指摘なのが情けなくて仕方がないです。
一応は直して行きます。







[12540] その4 (一部変更)
Name: 点太郎◆5392d2c1 ID:abb86e86
Date: 2009/12/26 00:20

「・・・・・・・・・・・ああ、大丈夫だ。」
頭を何度か振った後リニスに答えるのであった。

「では次の魔法では非殺傷についてお見せします。」
何それ?と首を傾げている。

「非殺傷とは物理干渉を無くして魔力によるダメージのみを対象にぶつけることを言います。
先ほどの魔法は物理干渉ONでしたので対象を破壊しましたが非殺傷で目標を傷つけることは在りません。
これは犯罪者を逮捕、鎮圧に対して便利で対人に措いて相手を傷つけず取り押さえる技法として存在します。」

「じゃあさっきの魔法でもその辺にいる奴らに撃っても大丈夫、何だな?」
・・・・・・いつかあいつに向けて撃たせてみるか。





そう言ってイザベラは何か思いついたように笑うがリニスはそれを横目に。
「・・・・・・イザベラ、私はそんな簡単に人には撃ちませんよ。むしろそんなことばかり言っていると貴女に撃ちますよ。」
そう言ってリニスは手の上にスフィアを展開してちょっと脅してみる。


・・・・・もっとも貴女を守るためならどんな相手でも容赦なんてしませんが。


「ッじょ、冗談だって。冗談。そんなこと言わないから。」
朝のリニスの魔法を食らったことを思い出し冷や汗を出して首を振るイザベラであった。


・・あれも非殺傷なのか?だとしてもあの痛みは本物だ。でも怪我しなかったし。ホント怖いな、こいつの魔法は。



「あと非殺傷は対人に措いてはむしろ物理干渉ONの状態よりも強いんです。」

「どうしてさ、相手は傷も付かないんだろ?」

「だからこそです。
傷つけるよりも深く体にダメージを与えて押さえつけるものですのでちょっと擦ったら傷で済みますがちょっとでも擦ればそのままダメージに成ります。それにシールドやバリアジャケットを作れないこの世界の人たちなど簡単に押さえつけれます。
それに手加減は必要でないですし。」


「へ~。」



「では、まず物理干渉ONで・・・・」
そういって石柱に手を翳すするとその手の前と足下に魔法陣が展開される。そして手の先には光が溢れんばかりに集まっている。そして
「・・・轟けr「なぁ。」って・・・・・・・何ですか?」
リニスは魔法陣を消してイザベラに向き直る。
「朝から気になってたんだがお前の足下で光ってる奴なんだ?」

「ああこれですか? これは私たちが使う魔法に対し必要な魔力素を大気中からの収集し、圧縮、調整といった魔法発動を補助するための図式です。
そして、この図式こそ私の使う魔法が発動し力として作用する要因なのです。
・・・・・分かりました?」

「いや、全然! 大気がどうとか魔力素が何だなんて分かん。」

「あ~そこからですか。」

「なんだい馬鹿にしてるのかい?」
イザベラに対して慌てて否定するリニス。
「いえ損ことありませんよ。  さ、魔法を見せしましょう。先ほどの魔法より極端な魔法を見せましょうか。ですのでイザベラ、貴女の杖を貸して下さい。」

「杖?でもこれは私のだから無理だぞ?」
そう言って自分の杖を取り出し悩むイザベラ。

何故ならば杖は基本その持ち主しか使うことは出来ないのである。例えどんなに優れたメイジでも他人の杖では魔法は使えないはずである。

「それはこの世界の魔法の話であって私にはこの程度のプロテクト問題ではありません。
魔力つまり力が通りさえすればいいので。ですから杖を」
そう言って手をイザベラに向ける。

「何で杖が要るのさ、お前?杖なしで魔法使ってるじゃないか。」

「・・・いえ、まぁ確かに杖を使わないでも魔法は使えますが今から見せる魔法は
手から出すのは気分的にちょっと嫌なんですよ。」
何故だか歯切れが悪いリニス。

「何やるんだお前?」
またトンでもない魔法を出すのかと考えていると

「これ自体はそんな難しい魔法では無いんですが。ただ手から本物では無くても剣を出すのはちょっと・・・
やっぱりその手の魔法はちゃんとした形で展開したいので。」

「手から剣?」
  剣とは人が持って振るあれの事の筈だが手から剣が出るのか?
そう考えリニスの手から大きな剣が出るのを想像して気分が悪くなるイザベラ。
「・・・っう。わ、分かった。貸す、貸す。」
そう言ってリニスに杖を渡してから今度は別の想像をする。


それは杖から剣が出現する構図であった。


「壊すなよなそれ。大切なもんなんだから。」

「大丈夫です。出力はかなり低くしますので。」
リニスは杖を手に持ちその杖を右に左に何度も振ったりしている。

「さっきから何してるんだ?」

「剣の大きさを決めているんですよ・・・・・・・・・・ん~これ位ですかね。」
リニスが大きく腕を振ると杖の先より『ヴォン』という音と共に光が出てきて刃を形成した。


「・・・あれ?
・・・それが剣?それって本当に切れ・・・るんだろうな~やっぱ。」
想像していた金属の剣では無く光の刃が出てきて一瞬拍子抜けしたがさっきの魔法を思い出しその光の剣を肯定する。

「ええ切れますよ。名前はそうですねフォトンセイバーとでも呼んでください。
出力をこれ以上高めると杖が壊れてしまいますので現状、結界やフィールドなどに対しての破壊や貫通は無理でも物理への威力は十分に有ります。」

「・・・またよく分からないことを。で、これが見せたい魔法か?」

「ええ、これが解り易いと思いますので。」
そう言って石柱の前に立つリニス

「先ずは普通に・・・・・・・・っふ!」

『ズガン!!』
凄まじい速度で剣を振り石柱が切断すされる。
そして切断された石柱が地面に落ちるより速く、次なる魔法を畳み掛けるように放つのであった。
「砕け!」
放たれた魔法はフォトンバレット。初級の魔法でも必殺の一撃になる魔法である。
普通の雷では無い魔力の雷撃を受け、石柱は地面に接している部分も全て吹き飛ぶ。


「おお~~~~。」

感心しているイザベラにリニスが向き直り説明していく。
「これが普通の状態です。次に非殺傷で行きます。」
そして次の石柱の前に立ち剣を構えるリニスにイザベラが注文をつける。

「さっきの魔法で最後吹き飛ばす必要無いだろ。
あと、さっきの早すぎて良く解り難いからゆっくり頼む。」

そう言われて
「速かったですか?フェイトに教えるときはもっと速いので見せてたんですけどね。
分かりました。今度はゆっくり行きます。」


そう言って改めて構え直し剣をゆっくりと振る。
『ズガン』
そして切られた筈の石柱はさっきと同じように切られた音はしているが、切られてはいないのであった。
そしてさっきと同じようにフォトンバレットを放つ。

さすがに壊れただろうとイザベラが見ているとそこには無事な石柱が在った。

「如何ですか?先ほどと同じ出力で同じ魔法を対象に当ててもご覧の様に無傷です。しかし魔力によるダメージは通っています。
ゆえに手加減などでは無く全力で相手を倒すことが出来るんです。」

そう言われても未だに信じれにイザベラは
「それってただ派手に光ってるだけじゃないだろうな?」

「ならこれでどうです?」
そう言って先ほど非殺の魔法を当てた石柱に剣と突き刺しその手を離す。

「どうです?  これでも光ってるだけって言いますか?」
イザベラが言う通りならそのまま落ちるはずだが、そこには突き刺さったままフォトンセイバーがあるのであった。

試しにイザベラは突き刺さった剣を引っこ抜くと何の抵抗もなく引き抜くことは出来たが杖から出ていたフォトンセイバーは音もなく消えるのであった。
驚いた後突き刺さっていた部分を見るとどこにも傷は無いのであった。
「消えちゃった?」

「それはそうです。私の手を離れたんですからこの杖には魔力を保持することなんて無理ですから。
それに他者が持てば尚更です。」

「これ私の物なんだけどな。」  
自分の杖なのに他人が持ったからと言われ少しショックなイザベラであった。

「しっかし、凄いなお前の魔法は。」
そう言ってリニスが破壊した石柱だった残骸を見つめていた。

「そう言って貰えればこちらも見せた価値が有るという物です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・イザベラ貴女この魔法に興味は有りませんか?」

「………? 興味ならそれなりに有るさ。こんなに凄い物を見て無いって言う奴はいないと思うぞ?」

「………自分で使ってみたい、そうは思いませんか?」

「さっきからどうしたリニス? 何が言いたいんだ?」

「私の魔法……覚えてみません?」

「………は? な、何言ってるんだ!? そんなこと…「出来ますとも」……え? 」

「出来ますとも。私が教えれば。  貴女はこのミッド式魔法を覚え、そして使うことができます。」

「う、嘘だろ?  メイジのこの私が出来るわけ………。それにわ、私は………」
自分はメイジとしてすら、王族として満足に魔法も出来ない。そう言おうとするとリニスが手でそれを止める。

「そう自分を低く見てはいけません。
貴女はこの私を使い魔にしたのです。大魔導師と言われたプレシア・テスタロッサの元使い魔であるこの私を。」

「それと、これじゃあ関係ないだろ!」
リニスの言葉がただの励ましにしか聞こえず否定してしまうイザベラであったが、リニスは首を振ってからさらに続ける。

「それに、この世界にはこんな言葉が有るじゃないですか………『主人を見るにはその使い魔を見よ』って、ですからそう低く自分を観ないでください。
貴女は、私を呼んだのです。 それは、つまり貴女に才がある私が確かな証明。
そんな風に自分を才能の無いだなんて思わないでくださいよ。
そうでなくては、消える寸前だったこの私が折角第二の使い魔人生を始めたのに新しい主人が才能0で、この私以下なんて嫌です!」
そう言ってイザベラに笑いかける。

「………なんだそりゃ? 自分の為かそれ?」
イザベラはそう言っているのであったが何処かおかしそうに笑うのであった。

「とんでもない! これは主人を思ってのことです。」

「どうだか。」

「ホントですって。」

「じゃあ何で私に教えたいんだ?」

「そ、それは………」
教えたい理由それは、イザベラに何れ降り懸かる火の粉を自分で払えるぐらいは力を持って欲しいのが一つである。が、正直なことを言えば教育者として確かな才が有りながらその魔法を何も知らないイザベラを鍛えていくことでどんな魔導師に成っていくのかが観たいというのが本命であった。
故に言葉に詰まっているのである。

「はぁ。………………まぁ、いいさ。この私は使い魔思いの主人だ。お前の為にその魔法覚えてやるよ。」

「ほ、本当ですか?」

「あ、ああ。但し、この私が覚えようって言うんだ。
この私をその辺の魔導師に負けないような魔導師にしろよ!」

「愚問ですともそのようなこと。 ………ただ、この世界には魔導師一人も居ませんから私を使い魔にした時点で半場魔導師ですからすでに1番ですよ。」

「っぐ、揚げ足を取るな! 例えだ、例え! 全く。」
やや顔を赤くしてリニスに文句を言うのであった。

「なぁリニス。 私はどれぐらいの魔導師に成れる?」

「さぁ、それは貴女の努力次第の事ですので。何とも言えませんね。
貴女がどのような得手不得手なのか、また私のような電気変質を持っているのか、など全てが未知ですので。
ゆっくりと時間を掛けて検証していかなければ何とも。」

「ど、努力?」
さっきまでと違い急に顔つきが悪くなる。

「…? ……どうしたんです?」

「なぁリニス?」

「はい?」

「魔法で簡単に覚えたりとか出来ないのか?」

「は? ………………何を言ってるんです貴女は!!さっき覚えていくと言ったではないですか。」

「そう、怒るなよリニス。冗談、冗談だって。
………でも、……私には才能が有るんだろ?」
少し控え目な目でリニスを見ながら尋ねる。

「ええ、でも努力なしでは才能は花開きませんよ?」


「え~でも天才って何もしなくても出来る奴のことを言うだろ?」

「何を言っているんです!フェイトだって毎日、毎日しっかりと勉強してあそこまでの力を手にしたんですよ?」
そう言ってイザベラに詰め寄るリニスであった。。

「分かった。分かったから落ち着け。私はフェイトの事なんてお前からしか聞いてないからどれ位何て知らないんだ。
お前がそんなに言うんだそれなりなんだろ。・・・だから分かったって!」

「分かってもらえて幸いです。」
リニスの迫力に後ずさるりながらそう言うとリニスは落ち着くのであった。

「でもさ・・・・・お前の魔法ってどうやってやってるのか全然解らないんだよな。」

「確かに私の魔法はこの世界の魔法みたいに呪文を合言葉の様に唱えると結果が得られる魔法ではありませんから難しいかもしれません。私たちの魔法は様々な処理の結果、得られる物ですから。」

「さっきの魔法でいつその処理ってやつをしたんだ?」

「デバイスの無い以上全てマニュアル、詰り頭の中で処理します。」


「・・・・・・・・・・・・・・・なぁ、その、魔法でこうぱ~っと覚えることは出来ないのか?」

がく と音が出ている様にこけるリニス。
「はぁ~、有りますよ。」

「え、有るの? じゃあそれ使ってさ!」
楽できると思い喜ぶイザベラだがリニスは警告する。
「ただしそれをやったら貴女の精神は崩壊します。」

「・・・・・え?何それ。」

「方法は私の持つ魔法の知識、運用方法などを貴女にこのルーンを使って送れば出来ます。
本来使い魔は動物を素体にしますので動物の感情の起伏が主人に流れないように出来ているんですがこのルーンを介すことでこちらからの情報も自由に送ることが出来ます。」

「それで何で精神崩壊するんだ?」
何で駄目なんだと思っていると。


「送る量が圧倒的に多いんです。魔導師のようにそれに対応出来る処理能力がないと潰れて仕舞います。
其れにもし覚えれたとしても操ることは出来ないでしょうし。」

もっとも、貴女さっきあれ位で混乱してたから送ったら確実に終わりでしょうから。

「じゃあさ、少しずつ送ればさ。」

しかしそれも否定される。
「意味の分からない言葉や記号を延々と聞かされ続ける感じに成りますね。
はっきり言って苦しむ時間が増えるだけです。 “いっそ楽にして”みたいなことに成りますね。」

それでもやりますか?そう言ってルーンの刻まれた手をイザベラに出すリニスであったがイザベラは普通で良いとその手の誘いを断るのであった。

「・・・・で、まず私にどんなことを教えてくれるんだ?」
少し残念そうにリニスに尋ねるイザベラであった。

「其れについては後ほど、まず、お願いしたいことが有るんです。」

「・・・・分かった。でも本当に何がいるって言うんだ?」

「貴女に教えるのに必要な物です。」
そう言いながら二人は城の中に石柱を幾つか残したまま戻っていくのであった。



・・・・・・そう言えばリニスの居た世界がどんな物か聞いて無かったな。魔導師が作ったリニスでこれなら其れなりの魔導師はもっと凄い筈だ。
魔導師は私たちメイジみたいに貴族みたいな物じゃないのかな?



しかし、その二人を影から観ている男がいるのであった。
その男は二人が見えなくなると慌てて自室に戻り専用の連絡梟に手紙を付け空へと放つのであった。



[12540] その5
Name: 点太郎◆5392d2c1 ID:abb86e86
Date: 2009/11/19 07:10
「何でこんな物がここに在るんだ!?」






























 あの後リニスが侍女達に目的の物が在るか訪ねた結果この城には無いらしく取り寄せることが決まりそれまで暇だったからリニスの世界について話を色々と聞いて暇をつぶしていた。


その中で驚いたことはあれだけの力があるのにリニス達の世界は魔法はあくまでも一つの力でしかなく基本は科学とか言う物が主体らしい。
その科学と言う物をこの世界で再現できないか聞いたら年月を掛ければいずれはできるかも知れないがリニスの居た世界の科学技術に到達するには100年、200年では難しいらしい。



そして一番驚いたことが王を名乗る者は数百年近く前にいなくなってしまったと言うことだ。

じゃあ誰が国や世界を統治しているか聞いたら、時空管理局と言う巨大な組織とその世界に暮らす民衆だという。
王が居ることが普通だと思っていた私からすれば、王ではなく一つの組織と民衆の政治など正直理解できない。



それでもリニスはそんな世界が在るのだという。







そんなことを色々聞いて驚いた後、この世界について教えてやろうと思った時あることに気が付いた。

それは、こいつがどうして私の名前を含め色々な名称を知ってたのかということだ。
思い返せばリニスは普通にいろんなことを知っていた。あまりにも自然だったから気づかなかったがおかしい。


しかも、リニスにどうして知っているのか訪ねると情報を収集する魔法を使ったと言う。
あれだけ魔法を教えようとしていたはずなのに、どんな魔法か聞いてもそう言う魔法としか教えてくれない。



気になってそれでも知らないことはあるだろと言ってリニスに説明する振りをして色々と質問したり遠回しにこいつの知識がどれぐらい在るかを確認したところ、あることが判った。

こいつの知識は間違いなく私の知っている知識の量を越えてはいない、ということだ。
旨いこと誤魔化して知っている量を加減している感じだが間違いなく私とほぼ同じだ。

王族である私はそれなりの知識を持っている。しかしそれでも別に政治をしている訳じゃないし完璧な物じゃない。
そんな不完全な私の知識とほぼ同等のコイツの知識は怪しすぎる。

・・・・・・・・・だが、判ったとしてもコイツを追求する術も力も今の私には無い。

だから納得するしかないのだが・・・・・・。

しかし、コイツの情報収集の魔法の秘密を解き明かさなくては非常に不味い気がするのだ。
何故なら何とも言えない辱めを受けている気がしてならないのだ。

















そんなこんなを話していて夕暮れ時にリニスが頼んだ物が届いた。




「何でこんな物がここに在るんだ!?」


 それはこの豪華な私の部屋にはあまりにも不釣り合いな何の変哲もない小さめの黒板と地味~な勉強机そしてなにも書かれてない只の紙であった。
そして勉強机の上には羽ペンがある。







それらをチェックしていたリニスは手を止め説明を始める。
「これは勉強道具です。」

「そんなこと見れば判る。
私が聞きたいのはどうしてこんな物が必要なのかだ。」

「イザベラ、貴女には資質はありますが決定的に足りない物があります。」

「足りない? 何が?」

「魔導師としての基礎学力です。そのためにまず数学をまず勉強してもらいます。」


「はぁ?   なんで魔法に数学がいるんだ?
私はその手の物に関しては出来はよかったんだ。
今更一般教養なんて、そんな物小さい頃に一通り終わらしたさ。」
 魔法こそ全てのこの世界でも貴族足るもの馬鹿では当然駄目だ。普通の貴族なんかは魔法を学ぶために学園などに行く前に家庭教師などで一般教教養を身につけるものだ。

「その一般教養では足りないのです。
私の魔法は全て数式に当てはめて処理をします。」

「…………ど、どれぐらいのレベルの数学をやらせる気だ?」
「そうですね~」
そう言って黒板にすさまじい速度で数式を書き上げていく

「これぐらいは余裕で計算出来なければ駄目ですね?」
そして黒板に一通り書き終えてイザベラに告げるのであった。





そこにはイザベラが今まで見たことの無い謎の数式らしき物がいくつも書き上げてあったのだ。



「………………………………私は本当に才能あるのか?」











■~~?~

「・・・・・・火急に伝えたいことがあると聞いて急いできたがいったい何があった?」


「ええ、伝えたいと内容というのはあのイザベラ姫についてなんです。」

「また何かいつもの馬鹿な思いつきで何かやったのか?」

「いえ、今さらそのような内容では、わざわざこんな処で会うようなことは致しません。」

「確かにな。」


一人はバッソ・カスティモール、ガリア東薔薇騎士団の花壇騎士にして今は亡きオルレアン公シャルルに抜擢され深い忠誠を誓い、その娘であるシャルロットにもまた同じように忠誠を誓う者である俗に言うオである。

そしてもう一人は、プチ・トロワにて働く騎士つまりイザベラは守る対象であるがこの男もカスティモールと同じくオルレアン派の一人である。
男は、カスティモールが来るべき日のためにプチ・トロワに配置した部下であった。
名前をモーガン・セランスという。
リニスに一瞬で捕まったあと練金で石柱を作ったあの男である。

イザベラの前で貴女は守るべき対象であるだの言っていたがこれぽっちも思ってはいないのであった。

そしてこの二人が居るのはガリア城下町の酒場の小さな個室である。
配置した部下が自分に何かしら会って話さなければならない時の為にと決めてある場所であった。



「では、あの女がシャルロット様に何かしたのか?
今日はこちらに戻られるはずでは無いはずだが。」

「いえ、それも違います。実はあの女が使い魔を召還したらしいのです。」

「ほぉ、で、何が出たんだ?どうせあの無能姫にはそんなたいした物など呼ぶことなどできはしまい。
それに比べて、シャルロット様は見事な風竜を召還したじゃないか。
あの女など良くて猫を召還で来たら良い方だ。いや、むしろ失敗せずにできただけでも褒めるべきか?」

そう言って笑って置かれてあった飲み物を飲むのであったが、部下は首を振る。

「よくは分からないのですが、おそらく、いえ確実に猫ではありません。
実はあの女何やら得体の知れぬ物を召還したようなんです。」

「よく分からない?どういうことだ?」
そう言ってカスティモールは飲もうとしていた酒を口の前で止め部下に尋ねる。

「直接この目その使い魔を見ましたが、あれは未だに信じれません。
本当に謎なんです。」

「一体何を召喚したんだ?」

「…………人の形をしているのは確かですが・・・・・。」

「はぁ?  つ、つまり、人間を呼び出したのか?」

「いえ、恐らく人間ではないと思われます。」

「どういうことだ。説明しろ!」

「順を追って話します。これはメイドから聞いた話なのですが、朝メイドがあの姫の部屋に呼び出されて行った時猫が居たそうなんです。
そしてイザベラはその猫が自分の使い魔だと言ったそうなんです。」

「やはり、猫ではないか!」
ホントに猫が出たのか、そう思っていると

「これには、続きがあります。その後そのメイドは朝食と猫にやる食事としてミルクを持って来いと言われたのでそれをイザベラの部屋まで運んだそうなんですが、そこには猫などおらず見たことのない女性がいたらしいのです。」 

「それは、いつもの気まぐれでメイドをからかっているだけではないのか?」

「最初はそのメイドも自分か、その見たことの無い女性をからかっているのだと思ったのらしいのですがその女性をあの女は自分の猫であり使い魔だと言ったそうなんです。
その女性も自分はイザベラの使い魔で名前をリニスと名乗ったそうです。
・・・・・・・・・・・・・・・しかも自分は猫であると。」



「……………………その女性何か脅されてたのか?」




「さらに、暫くするとその女性つまりリニスとイザベラはなにやら喧嘩を始めたらしいのです。
その後、イザベラが杖を手に取ってそのリニスに杖を向けようとしたらしいのですがいつの間にか移動していた女性の手の中に杖は有ったらしいのです。
しかもイザベラに向かって何か言った後リニスはイザベラの肩をつかんだかと思うとイザベラは悲鳴を上げて気絶してしまったそうなんです。
・・・ただ、どうやったかについては平民のメイドからの話ですので分かりませんが。」


「ほ、本当にその女はあの女に何かしたのか?」
確かにこれはただ事では無い。
いくら略奪者の娘でも今は国王の娘である。そんなことをすればその女一人の命では足りないくらいである。

「まだ続きがあります。ここからが呼んだ理由です。」

「これ以上何があるんだ?」

「もしかしたらリニスという女性、我々の大きな障害かもしれません。」

「なに?」

「ここからは、私が見た話ですが・・・・・・・・・・・・・」
そいって今度は自分が中庭で見た話をする。
もっとも自分がリニスに一瞬にして取り押さえられたのは恥ずかしくて省いているのであったが。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・

「それは本当に在ったことなんだな?」

「はい、この忠誠に誓って。」

「・・・・・・つまり、魔法を使うのかその女は?」
・・あの女がそんな者を、・・・・・・・・・そんな訳が。

「はい、あれはそれ以外考えられませんでした。」

「聞く限りでは、あの女はリニスとか言うメイジを使い魔にしたのか?」
 
「いえ、あれはメイジとは思えません。何せリニスは杖を持ってはいませんでしたから。」
しかし聞かれたモーガンは首を振るのであった。

「そんなまさか! 見えなかっただけではないのか?」
声を上げ聞き返すカスティモールに対して

「確かに距離は有りましたが左右どちらの手にも杖もしくはそれに代わる物は有りませんでした。つまり・・・・・・・亜人の可能性があります。」

「何か特徴でもあったのか?」
カスティモールは“あり得ない“ そんな顔をしてモーガンに詰め寄った。

「いえ見えなかったんです。」

「見えなかった?」

「翼人のような大きな羽が有る訳でもなく、また日の良く照った昼間でしたので吸血鬼でも無いでしょうし。」

「耳はどうだったのだ?耳は!」
一般的にエルフは一流のメイジ10人そろってエルフ1人相手にできるかどうかの相手であるとされている。もしその女リニスがエルフなら確かに大きな壁になる。
そんな者が敵になったとしたらたまった物ではない。

「・・・・・そこは、髪に隠れて耳が見えずさらに大きな帽子を被っており尖っているのか普通の耳か確認できませんでした。」

ふと、モーガンは思い返す。あの時リニスは自分を抱えてかなりの速度で飛んでいた。
あの時はかなり混乱していたし確認することなんて考えなかったが、それでもリニスの顔を見たりはしたがいくら思い返しても耳が見えた気がしない。
もしかしたら、耳を隠す魔法を使っているのかもしれないそう考えるのであったが、必然的にあっさりと捕まったことを言うことになるためカスティモールに言うことをプライドが許せないのであった。




「………ふう、つまり分からんということか。」

「はい。」
申し訳ありません。と頭を下げる。





・・・・・・・・・・・・・・・これは確かにまずい。
自分の目の前にいるこのモーガンはクラスこそラインであるが実戦経験も豊富でポッとでのトライアングルなどには負けることは無いだろう実力が在る。
だからこそいざという時の連絡は彼が受け持っていたのだ。その彼がここまで恐怖する存在確かに驚異だ。

だがしかし、それ以上に驚異なのはその実態が掴めないことによる恐怖だ。

もし自分たちの同志の中でその恐怖に駆られて、そのリニスを無き者にしようなどと早まったことを起こす者が出ないとも限らん。

それにリニスの力はモーガン以外の者も見ているだろう。そこから確実に噂は広まるはずだ。
人が口にする噂話などという物は尾ひれが付き加工されて広がるものだ。
もしかしたら私の耳に届く頃にはリニスが魔法を使えば城を吹き飛ばすなんて物に成っているやもしれん。

つまりはその力以上に得体の知れなさこそ驚異だ。



・・・・・・・・・・・・・・早急に何かしらの手を打たねばならんな。

「・・・・よし。私が直接そのリニスの正体を見極める。モーガン、お前は皆に積極的には動かず静観するようにいってくれ。」

「え? 直接ですか?何も直接でもなくても、じ・・」
しかし、自分がと言おうとしたがあの時のことを思い出し押し黙る。

「いや、お前がそこまで言うほどの存在だ。自分の目で確かめたい。」
・・それに私が直接調べるとすれば他の者もそう速まった行為はそうしまい。

「分かりました。ではまた何か在りましたら連絡します。」

「ああ、頼む。私も近い内にそちらに行むかうことになる。そのときは頼むぞ。」

「は!」

そういって二人は酒場を後にするのであったがカスティモールは大事なことを聞き忘れていることを思い出してモーガンを呼び止める。

「ああ、そうだ、そうだ。そのリニスの特徴を教えてくれないか?」

そう言われてモーガンは少し考えて答える
「何分、見た目は唯の人ですので身体的な特徴はあまり、ただ特徴的な服でプチ・トロワに居ますのですぐ解るかと思います。
ああ、あと部屋に居る時もずっと大きな帽子していたのでそれが特徴に成ると思います。」

「帽子か、分かった。連絡感謝する。」

「いえ、そんなことは。・・・では、今日は。」

「ああ。」
そう言って飲み仲間のようにして別れる二人出会ったが、モーガンから見えなくなるとカスティモールは溜息を小さく吐いた。

「しかし調べるとは言ったがどうやったものか。」
最初聞いたときは人で魔法を使うと考えメイジだと思ったがモーガンは、リニスを亜人の類と考えて其れを否定していた。 
 冷静になって思い直して考えてみると確証は無いがメイジでも先住魔法を使う亜人でも無い気がする。

自分はエルフこそ無いが吸血鬼等の亜人とは戦ったことがある。
その経験から自分の感が違うと言っている。

亜人の使う先住の魔法はその土地の精霊と契約して行使する魔法だ。だがしかしリニスは今日現れた者だ。
『あれはまるで雷を操っているようだった。』モーガンはそう言っていたが雷を操る先住魔法は未だ見たことが無い。

・・・・果たして本当に唯の亜人なのだろうか?

そして再び溜息を吐くがすぐ体に力を入れる。
諦めるなどということは使命に燃える彼には無いのだから。


「・・・・・まぁ、まずは耳の確認だな。」
そう呟いて帰路につくのであった。







彼が想像しているのは彼女の耳が尖っているか、いないか等というレベル差でしかなかった。しかしその程度の違いではないことを誰も知らない。
イザベラを含めてもリニスの秘密を未だ誰も知らない。

何故なら彼女の耳は普通に横ではなく頭のやや上に在るのだから。
そしてその耳が正真正銘本物のネコミミで在ることをまだ誰も知らない。








「・・・・・・・・・・・・やっぱり、あれ挑戦してみようかな?」

「ええ!?  っちょ、本気で言ってるんですかイザベラ!!?」
そしてリニスもその帽子の中に隠して在る耳をつけ狙う者達がいることを未だ知らないのであった。








[12540] その6
Name: 点太郎◆5392d2c1 ID:abb86e86
Date: 2010/01/06 00:25
■あの日から勉強を始めて5日ほどたった日の昼下がりのこと

「そろそろ休憩にしましょうか。」
勉強が一区切り着いたところでリニスはイザベラに休憩を提案するのであった。

「はぁ~~。」
ようやく終わったとイザベラはダレているのであったがしかし
「行儀が悪いですよ。イザベラ。それと、まだ今日の勉強が終了した訳じゃないですからね?」
リニスはイザベラが書いていた紙を確認しながら今の彼女にとって残酷な事を言うのであった。
「うそ~。」

「そう言わない。イザベラ、貴女の出来は概ね良好です。このレベルを学んでいたフェイトより覚えも良く、出来は良いぐらいです。」

「私はいつまでこの勉強を続けるんだ?」
それを聞いて少し機嫌が良くなったイザベラは顔をあげてリニスに聞く。

「そうですね~。このペースで行けばあと2週間から20日ほどでこのステップは終了です。
さらに物理についての勉強をして、それから………」

「ちょ、ちょっと待て!?」

「・・? 如何しました?」

「わ、私はいつに為ったら魔法を使えるように成るんだい?」
リニスが話す予定に一向に魔法という言葉が聞けず焦るイザベラであった。


「そう焦らない。先はまだまだありますから。それに、このペースは結構急ピッチなんですよ。
フェイトはこれの更に倍、とまでは言いませんが 貴女より時間を掛けて学んで行きましたし。
それにイザベラ、貴女を含めこの世界の人たちは私の魔法を使うには余りにも世界を知らなすぎるんです。貴女は、ほぼ0から学んでいかなければ行けません。ゆえに時間を掛けて学んでいかなければ行けないんですよ。」

「そんなの、魔法には……」
「前にも言いましたが私の魔法は事象を理解し其れを書き換えて発動します。
何も知らなければ何も魔法を使うことは出来ないんです。……………………どうか分かってください。」
…もっとも最高級のインテリジェント・デバイスでも有れば少しの技能でも可能でしょうが。
ここには、魔法の行使におけるサポートする存在は何もない以上、マニュアルで大方のことが出来なければならないのだから。



だが、イザベラの魔力は本物である。それを一番分かっているからこそリニスもまた歯がゆい思いを持っているのであった。



「わかってるさ。 分かっちゃいるけどさぁ!」
実際リニスの教えてくれる知識には驚きっぱなしなのだ。何気なく上げるたとえ話ですら感心する言葉も在る。だからこそ納得できる。

それでもストレスが溜まっていくものなのだから。



「お茶も冷めてしまいましたし。ちょっと、新しいお茶を淹れてきますね。」
気分を変えようとリニスは話を変えていく。



「…………そんなこと、メイ…………ああ、行ってこい。行ってこい。せいぜいゆ~っくりお茶を淹れてこいよ。」

「?・・・・じゃあ淹れてきますね。」
そう言って部屋を出て行くそれをイザベラは勉強机に伏せたまま見送るのであったが扉が閉まると目に力がこもり顔を上げるのであった。
「・・・・・・・・・・・・よし!」

そうして扉が閉まり足音が完全に聞こえなるのを待ってから外に聞き耳を立ててそれでも足音が無いことを確認すると行動を開始するのであった。

「こんなこと、これ以上やってられるか!   まったく。」

イザベラはそう言うと部屋を飛び出すのであった。



しかし彼女の足は直ぐに止まることになった。
「そんなに慌ててどうか為さったのですか?」

「っぃぃい!!?    リ、リニス?」

慌てて振りかえって見るが、そこにはリニスは居らずメイドが居るのであった。

「姫様如何なさったのですか?  そんなに慌てて。」

「はぁ、ビックリした。 脅かすな、この馬鹿!」

「も、申し訳ありません。」
訳が判らなかったが相手はイザベラである。メイドは兎に角頭を下げて謝るのであった。

それを見てイザベラは頭を下げているメイドに近寄って行く。
「おい、お前!」
「っは、はい!?」
メイドは声を掛けられ顔を上げるとすぐ目の前にイザベラが居ることに内心少し怯えながらも表情を崩さずにしていた。

「いいか、私が出ていくことは誰にも言うなよ? いいか絶対だぞ。」
「は? …は、はい。」

「と、とくにリニスには絶対だ!  いいな?」

「リニス様ですか? …分かりました。」
其れだけ言うとイザベラは走り出すのであった。

そして一人残されたメイドは思うのであった。
別にリニス様に言うなといわれても部屋に居なければ直ぐに何処かに行かれたことはばれると思うのですが?……よほど慌てていたのだろうと。

そんな事を考えこの場に居なければ問題ないと思うに至りこの場を後にするのであった。







イザベラの地味な逃避行が起きていることを知らないリニスは新しいお茶を淹れに厨房に向かって歩いている所を物陰から見つめる一人の陰があった。

<side/?>
「ふぅう、まさかこの私が女性をつけまわす羽目になるとわな。」

そう言って物陰でため息を着くのは東花壇騎士団のカスティモールであった。
なぜスクウェアクラスでもある彼がこのようなことをしているかというと。
あの時、酒場でモーガンに近いうちにプチ・トロワに行くと言ったものの騎士団長でもある自分がそう簡単には行けず、また直ぐに行ってもプチ・トロワでのリニスの存在感が分からないと考えて5日間ほどの期間を開けて今日プチ・トロワに来たのであったが。

「しかし、如何したものか。」
そう呟いた後今日何度目かのため息を吐く。
カスティモールが悩む理由それは、モーガンから聞いた5日の間を置いてから聞いたリニスの行動、印象についての事が理由であった。


~・~~~~・~~~~・~・~~~~・~~~~・~・~~~~・~~~~・~・~~~~・~~~~・~・~~~~・~~~~・~・~~~~・~~

「まず、リニスの噂ですがあのメイドが周りに広めたらしく早くも話題にはなっていましたが、そのメイドがメイジと噂を広め、さらにイザベラに攻撃するような存在とも噂され気味悪がられ誰も最初は近寄ったりしなかったです。
もっとも、イザベラの使い魔というからには何かあってはたまったものではないと誰も話そうとはしなかったのですが。
ですが、リニスの方から周りに打ち解けるように積極的に行動していました。
たとえば厨房で見たことも聞いたことも無い料理や料理法を示しそれをイザベラや周りに振る舞ったりもしていたらしいです。
………………私、も………食べたんですがなかなかイケまして。
ああ、それとメイドと一緒に掃除を手伝っていることもありましたね。」

「他にもイザベラが侍女を困らしているとリニスがそれを注意や叱りつけたりと二人の上下関係に悩む者も多いようです。
私も何度か見たんですがあれは……何というか、まぁ、親が子を叱るような感じでした。………………ただ、時々、リニスは杖もなしに雷だと思える一撃をイザベラに撃ったり追いかけたりしていましたね。
城の者の中には、リニスに助けられたり話したりしていく中でリニスのことをイザベラの保護者だと言い出す者もいるようです。」

それを聞いてカスティモールはイザベラが雷に耐えるような存在なのかリニスの雷が虚仮威しなのか悩むのであった。

此処までの話しだけなら良い。むしろ歓迎したいほどだ。

親や、保護者と言うニュアンスには注意すべき感じもするが些細なことだ。もっとも、保護者と呼ぶには随分過激だが。
しかし、モーガンから聞いたのはこれだけではない。
リニスがイザベラに何かを教えているという事だ。
あの無能姫に何か覚えるなど不可能だとは思うが、………しかし、相手は魔法なのかすら怪しい存在とても無視できる要因ではないのだが、内容を聞いたときはさすがに悩んだ。

「直接見たことは無いのですが、部屋で何あら数学だと思われる物を教えているそうなんです。」

「数学?……しかし、なぜ数学らしい物とはなんだ?」

「実は、イザベラの部屋にリニスが持ち込んだ黒板に大量に数字が書かれているから数学ではと言われてるだけで何を意味する数字なのかさっぱりだそうで。その手のものが得意な奴がコッソリ見に行ったのですが理解でき無かったそうでして。ただ、イザベラはそれを理解しているのかどうかは判断できませんが日々それを教わっているそうなんです。」
……まさか暗号で何かやり取りしているとは思えんし。


そしてこれが一番はっきりさせねばいけない事だ。
自分たちの同志2人が何者かに襲われた。これこそ突き止めなくてはいけぬことだ。
本来、城内でこんなことが起きれば大騒動だが起きなかったのには理由があった。
 
「詳しいことですが、イザベラの……言い方が悪いですが悪口を言っていたら、いきなり誰かが現れその2人を滅多切りにしたそうなんです。
ただ、切られたといっていたのに何処にも後は無く怪我も無いないんです。
ですが、体が痺れて動けないと1日中寝たっきりでしたが。
周りは襲われたなんて信じてはいませんでしたが、一応聞いてみたんです。
相手を見たかと聞くと速すぎて解らなかったそうです。ですが一人が一瞬相手と目が合ったそうですが、とても人に睨まれた感覚では無かったということでした。」

~・~~~~・~~~~・~・~~~~・~~~~・~・~~~~・~~~~・~・~~~~・~~~~・~・~~~~・~~~~・~・~~~~・~~

「はぁ。そして、あれがその可能性のある人物、か。…とてもそうは見えんがな。」
……モーガンは彼女が犯人ではないかと言う者が居ると言っていたがどうしたものか。

呟き視線を向ける先では、厨房に居る料理人たちと笑顔で会話を楽しんでいるリニスが居るのであった。







「じゃあ、私はこれで。」
「ええ、また来てください。その時は、また、新しい料理教えてくださいよ。」

「ええ、いいですよ。今度は何処の世界の料理がいいでしょうかね?」

「ははっははっは!!
相変わらずですね。リニス様の教えてくれる料理はどれも素晴らしい。自分は料理の道は長いですが、まだまだ料理の世界は広いということを思い知りましたよ。自分もまだまだですなぁ。」
リニスの教える料理が本当に世界が違う料理だということを知らない料理人たちはリニスの冗談だと思い大きく笑うのであった。

「いえ、いえ。私など、貴方方に比べれば、ただ作り方を知っている位ですよ。
あなた達の料理はとても美味しいです。私もイザベラもいつも美味しく頂いてますよ。」

「いや~。そう言ってもらえるとやっぱり嬉しいもんですなぁ。
……でもなぁ、姫様に美味い何て言ったこと無いですし、それに・・ッ!?・・・・・・・・・あ、あの」
つい、イザベラへの愚痴をあろうことかリニスの前で言ってしまい顔を青くする料理人であった。

「あの子は素直じゃ無いだけですよ。もし本当に不味いなら一口も食べたりしないですよ。
じゃあ。私は行きますね。」
そう言って厨房を後にするのであった。


「ふぅ。」
「まったく お前、考えて喋ろよな  まったく!」
リニスが居なくなったあとの厨房では、安堵のため息が聞こえていた。

「ああ、悪い、悪い。でもなぁ、あの人があの噂の当人なんてとても思えないしな~」

「そりゃあ、俺も思うけど。でも見たって奴もいるんだし。」

「俺は、あんな旨い料理が出来る人がそんなことするはず無いと信じてるさ。」

「お前な~。    ん?…………………えっと、……何用でしょうか?」
そう、リニスが去った後、話をしていると一人の男が入って来るのが見えその男がメイジであることに気付き会話が止む。

「すまないが、その話少し聞かせてくれないか?」
そう言って隠れて観察していたカスティモールであったが気になる会話をする料理人たちに話を聞く為、厨房に入って行くのであった。


カスティモールが話を聞いている頃リニスはイザベラの部屋の前まで着いていたのだが、その扉を開けず扉の前で困った顔をしていた。

「変ですね。 ………人の気配が、しない?」
部屋には居るはずの最低一人分の気配が無いのであった。

「イザベラ~?」
部屋の扉を開け中に入ってみるがやはりイザベラは居ない。

「ま、まさか………そんなわけない、ですね。」
一瞬最悪の事が起きたのではと考えたリニスであったがもしそんなことが起きれば自分に何かしら伝わるはずだと思い直す。


「ふぅ~ これは、まぁ、逃げた、と言えばいいのでしょうかね? むしろこういう場合脱走なのでしょうか。」
イザベラがいつかは嫌がって勉強を拒否する事は、分かってはいたことだが逃げ出すとは思ってもいなかったリニスは少し苦笑いを浮かべるのであった。

「まぁ  迎えに行きますか。」
苦笑いが消えた後、残念そうにしながら呟き、リニスの足下に魔法陣が現れその陣が強く光った後リニスは部屋から消えているのであった。



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「………………………と言う訳でして誰も直接見たわけでは、ないのですがその近くを歩いているのを見たって者が居るというだけで、 えっと、………。」

「ああ、もういい。助かった。 世話になったな。
……これは、まぁ、手間賃とでも思ってくれ。」
カスティモールはそう言っていくつかの銀貨を渡すのであった。

「こ、これは、いったい?」
突然渡された銀貨に戸惑う料理人であった。

「それは、さっき言った通り手間賃だ。………頼むぞ?」

「ん!  は、はい。」
決して言うな、そう訴えるような目つきにやや怯えながら銀貨を手にするのであった。

カスティモールはそれを確認した後厨房を出て行くのであった。
………余りモーガンから聞いた話とは変わらなかったか。まぁリニスがその近くに居たと言う話だけで十二分か。

そしてリニスはもう部屋に戻っただろうと思いどうしたものか、考えて廊下を歩いていると前から自分に声を掛けてくる者が居るのに気づき顔を上げてみるとそこには一人のメイジがこちらに近づいて来ているのが確認できた。

「どうしたんですか? この城に何かあったのですか?」

「ああ、君か。私は何、友人に会いに来ただけさ。君こそどうしてこの城に?」
相手がグランド・トロワで働く知り合いであることに気付き挨拶をしながら答えるのであった。

「私は、仕事でして例の件の資料をあの女の所に」
声のトーンを抑えながら目線でイザベラが暮らす部屋が在る所を指す。

例の件とは北花壇の任務のことである。本来資料の運搬ならガーゴイルを使うのがこの国の常識であるが、任務の内容が内容だけに人の手で渡すようになっているのであった。
それを聞いたカスティモールは顔から血の気が引く思いであった。
「ま、まさか対象者は、」
相手が声を落としていたがカスティモールは声を上げて聞くのであった。
「ええ、あの方です。」

「!!?」
一瞬目眩に襲われるのであったが頭を振って直ぐに落ち着く。

「どうしました? あの方なら大丈夫ですよ。今回のは前回ほどでは………」

「い、いや、違うんだ。」

「……?…さっきから如何したんです? 顔色が悪いですよ。」
男はさっきからどんどん血の気が引いていくカスティモールの顔を見て心配そうにしていた。

「大丈夫だ、何でもない。   すまないが、そろそろ戻らなくては行けないので。」
………これは、まずいことになった。
それにしても、如何やらリニスの噂はまだ行ってはいないようだな。

「そうですか。 私は、これを届けるので。」

「ああ、またな。こんど酒でも一緒に飲もう。」

「ええ、期待しときますよ。」
そう言って男はイザベラが居る部屋に繋がる道を歩いて行くのであった。

「急ぎ連絡を入れなければ、だが大きく書けば危険をただ増やすだけに為るかもしれないし。 いや、しかし…………」
それを見送った後カスティモールは城を後にするのであった。




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明かりもついていない部屋の片隅で肩で息をしている一人の少女が居た。少女が居る部屋はプチ・トロワにある書庫である。
圧倒的な量は無いにしても王族の城だけあって立派な本が並んでいる書庫に彼女は居た。

「はぁ、はぁ、・・・・此処まで来れば。はぁ、はぁ、大丈夫だろう。」
さすがに此処に居る事をいくらリニスでも知らないだろうし。

そう思って安心して座っていると突然声が聞こえてくる。
『使い魔が主人の居場所を認識できないとお思いですか?』

「っな! 何だ?」
イザベラは突然のリニスの声に驚きながら辺りを見渡してもみるが、何処にもリニスは何処にも居ない。

「お、おい リニス何処にいる?」

『直ぐに行きますから。』

「直ぐに?」
此処に居ないのか?じゃあこの声どっから聞こえてくるんだ?

「ん?    うっわ!?」
そうこうしていると突然自分のすぐ近くでリニスの魔法陣が出現していた。
慌てて下がって様子を見ているイザベラ。
するとその魔法陣より強く光りだしたのでイザベラは堪らず光から目をそらす。

「見つけましたよ。イザベラ」
そして光が収まった所にはリニスが立っているのであった。

「なんで逃げたんです? すぐに見つかるなんて貴女なら判ってたでしょう?」
怒る訳でもなく呆れるようにイザベラに言うと。

「うるさい!  あんな毎日毎日、意味のあるか分からない勉強もう疲れたんだ。」

「だったら、そう私に直接面と向かって言えば良いじゃないですか?」

「お、お前にそんな事言ったら怒ってきそうでさ。」
実際今も怒っているのではと思いリニスに目を合わせれないイザベラであった。
「怒ったりしません。」

「は? ………怒らない、・・・のか?」
少し怪訝そうに聞いてみるのだがリニスは首ふる。

「むしろ、この5日間では、ありますが、私の我儘に付き合って私の教えることを学ぼうとしてくれたのです。感謝こそしても怒ったりなど。」

「我儘って、お前。    そういうのも我儘なのか?」
リニスは、自分に教えることを我儘であると言っているが、イザベラとしてはそれをわがままとは理解できないのであった。
イザベラが知る我儘とは自分の要求を相手に押し付け自分だけが贅沢を尽くすものなのだから。

「・・・・・?    さて、どうします これから? 
このまま、此処にいるのも何ですから、一度部屋に戻りません?」
イザベラがリニスの言う我儘という言葉に悩んでいると、勉強は嫌と拒否されたことも気にしないように声を掛けてくるのであった。

「………あの声」

「?」

「あれも、魔法か?」

「ええ、魔法です。念話と言って『こんな風に頭の中で話すことが出来るんです。』

「あ、ホントだ、聞こえる。」
先ほどと同じく頭の中に聞こえる声に驚くイザベラであった。

『貴女も聞こえるのですから。出来ると思いますよ?
この念話が聞こえる感覚を持ったまま頭の中で喋ってみてください。』

言われたイザベラは目を閉じ集中しながら頭の中で喋ってみるのであった。

『こ、こうか?』

『ええ、そうです。この感覚を忘れないでください。』この念話は別の余程遠く極端な話別の世界にでも行かない限りにタイムラグ無しで会話可能です。」

『これって、他のやつにも話せたり出来るのか?  あと、誰かに聞かれたりしないのか?』
念話ではあるが、リニスの使う魔法が使えたことにイザベラは少しばかりの喜びを覚えるのであった。

「まず、私以外には通じないでしょうね。私と貴女には使い魔のリンクが在りますからこうやって念話が貴女でも簡単に出来るんです。それに、貴女、念話のつなぎ方解らないでしょ?
それと、盗聴の心配ですが何かしらの装置、もしくは特殊な結界内でも無い限り無理です。つまりこの世界ではほぼ無いに等しいですね。」

「……通じないのか。」

「ええ、何か私が居ないときはこの念話で私を呼んでください。すぐに駆けつけますから。」

「……うん   期待しとく。」
そう、イザベラはそう言って納得していたのであったがリニスとしては出来ればそんなことは起きないで欲しいと思うのであった。

「ふぅ、 如何したんです? 貴女らしくもない、元気が無いじゃないですか。」

「いや、何でもないさ。 うん、何でもない。 
それと、勉強だけどもう少しやってみるよ。」

「ええ、わかりました。 ですが、またこうやってストレスが爆発しても困りますからすこし趣向を凝らしてみましょうか? 
あと、カリキュラムを数学一辺倒ではなく他のも混ぜて行きましょう。」

「・・・・・えらく、あっさりしてるな、お前。」
折角勉強を再びやると宣言してやったのに当然の様に対応するリニスにイザベラは残念そうにするのであった。
…本当は喜んだり、褒めたりを想像していたのに。




「さて。  じゃあ、部屋に戻りましょうか?」

「あ、待って」

「はい?」
先を歩いていたリニスは足を止めイザベラに向き直る。
そこにはへばっているイザベラが居たのであった。

「疲れて動けない。 もう少し休ませて。」

「あの距離でそこまで疲れるって何ですかそれ?貧弱すぎますよ!?」

「うるさい。疲れたんだからしょうがないだろ?
大体、お前は飛べるから良いけど私は足を使って動いているんだ。疲れて当然なんだ。」


「………………体力作りさせた方が良いでしょうか?」
一人、リニスは考えることに没頭していく。

「おい、リニス?」

「あ、はい 何ですか?」

「私は軍人みたいに走り込み何て面倒な事はしないからな。」

「そんなこと判かってますよ。」

「へ?」

「この手度では私の魔導師育成計画に何の支障も在りませんから。」
そう言ってリニスは薄く笑うのであった。

「………お前怖いぞ。その顔やめろって。」
イザベラはリニスの笑みにやや引くのであった。

「あ、失礼。」
そう言って普段の笑みに戻るのであった。

「それと、イザベラ 飛行魔法でも魔力を使いますからそれなりに疲れるんですよ。    さて、じゃあ今度こそ部屋に戻りますか。」
そう言ってリニスはイザベラを抱えるのであった。

「っひゃ?! お、おい、お前まさか私を抱えて飛ぶって言うんじゃないだろな?」
突然抱えられたイザベラはびっくりした後、今までの話の下りからこのまま城の中をあの速度で飛んで部屋まで戻る何て恐ろしい事をするのかと慌てるのであった。

「あら、そちらの方が良かったですか?  今から転移しようと思いましたけど。」

「転移?」
転移という言葉が分からないで悩んでいるとリニスは説明より体験した方が分かると思い転移を開始しる。

「開け、………………我が主の部屋へ」

「…へ?」
リニスが言葉を発したかと思うと次の瞬間目の前が光に包まれ二人は消えるのであった。








「着きましたよ。イザベラ。」

「う、嘘?」
突然目の前が光に包まれたと思ったら自分の部屋に居たイザベラはまさか瞬間的に移動できるなんて思ってもおらず衝撃を受けていた。

「さて、如何です? 今日はチェスや何かで遊んで過ごしません?」

しかし、今更リニスに驚きっぱなしでない。

「あ、ああ、いいけど。私は強い…ぞ?……………………?」
イザベラは直ぐに立ち直り答えようとするが突然扉をノックする音に気付き扉の方を見る。
すると、すでにリニスがその扉を開けていた。
そこには、この部屋付きであろう侍女が立っていた。
そして、その手には王族の印で封がしてある封筒があった。

「あ! ひ、失礼いたします。」
侍女は返事が来るまで扉が開けるのを待っていると突然扉が開いたので少し戸惑うのであった。

「何かようですか?」

「はい、先ほどグランド・トロワから使者様がお越しになったのですが姫様がお留守だったそうで代わりにこちらで預かっていた物があるのでお渡しに。それで、こちらがそれなんですが………えっと…」

リニスが訪ねると侍女は落ち着いて答えるのであったが今目の前に居るリニスにこれを素直に渡して良いものか戸惑っているのであった。

「これはおまえが見なくて良いものだ。」

リニスが相手の様子に困っていると横からイザベラが現れ侍女の手からその封筒をひったくる様にその手から取り上げるのであった。

「え?」
「もう、下がって良いぞ。」
リニスが突然の行為に驚いているとイザベラはそれを横目に部屋の奥に戻って行きながら侍女を下がらせるのであった。

「は、はい。では、失礼いたしました。」
そう言って頭を下げ侍女は扉を閉じ出てく。

「何なんですそれ?」

「こ、これは、この私宛の物だからお前は見なくていいんだ。」
……………忘れてた。ここ、最近色々有りすぎて完全に忘れてた。
まさか、これ、…あいつに対しての任務か?

そう考え慌てて中身を確認しようと封を切り中身を確認する。
そして、そこには………


「あ~、ど~しよ。」

そう呟くイザベラの顔はとても嫌そうな顔をしているのであった。
その手にある資料そこには、北花壇騎士7号と書かれているのであった。



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