<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[13584] 銀習伝  現実→銀河英雄伝説   四十四話を投稿しました。
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2011/02/07 22:53
前書き


この作品は銀河英雄伝説の二次創作になります。
主に、作者の妄想で出来ておりますが、作者は、OVA版を見たことはありますが、
原作の小説は読んだ事がありません。
先日、偽モノブランド広告が色々な板にたっていたのを見て思いついた作品です。
カッとなって書きました。反省や後悔はこれからします。
私の処女作になります。精一杯頑張りますので、生暖かく見守ってください。
また、アドバイスや感想などがあったらお願いします。



※6月7日追加事項

本編と外伝の並び方ですが

本編は本編の時系列で、外伝は外伝の時系列で並べる事にしました。

外伝の最終話が、本編の第一話つながる様な形で行きたいと思います。












                       











                  


                       

                                   





[13584] 第一話  見切り発車
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/02/07 19:15





第一話  見切り発車


俺は不幸な人間なのか?それとも、幸運な人間なのか?

この宇宙を探せば俺よりも不幸な人間など

掃いて捨てるほど存在している

だから、自分は不幸ではない。

しかし、その論法では

「あたし、太っているけどお相撲さんよりはスマートよ」って

言っている主婦と一緒ではないか?

目の前で、第11艦隊司令官ウィレム・ホーランド中将が「俺の発案した芸術的艦隊運動が・・・・・」

と得意げに語っているのを見ていると、自分の境遇を哲学的?に考えてしまう。

俺はペトルーシャ・イースト少将

現在の俺の立場はホーランド提督が指揮する第11艦隊の副指令官で

まもなく開始される第3次ティアマト会戦の最終打合の為、ホーランド提督の旗艦での会議の最中だ。

ホーランド提督が延々と、自分の発案した芸術的(非生産的な)艦隊運動の

話を続けているのを聞き流しながら、特にする事も無いので

自分自身の生い立ちを振り返ってみたりする。




「ペトルーシャ・イースト」

宇宙暦761年フェザーンの商人の子に生まれる。

不思議な事に俺には前世の記憶があり、

直ぐに、これって銀英伝の世界?転生もの?

でもフェザーンなら軍隊に徴兵されなくてラッキーなんて思っていた。

フェザーンなら安心、安全、そう考えていた時期が俺にもありました・・・・・orz。

俺が3歳になったある日の事、家に初老のいかにも退役軍人って感じのジイさんがやって来て

両親と何か話をすると俺の事を引き取ると言い、そのまま自由惑星同盟の首都星ハイネセンまで

俺の事を連れて行きやがった。

俺の両親とはすでに話しが付いていたらしく法的にも俺はこの爺の被保護者になってしまった。

まるで、「約束通り一匹貰っていくぞ。」って感じで貰われて行く熊犬の気分を味わってしまった。

この爺さんは優しそうな婆さんと二人で暮らしており、諸所の事情はその婆さんから聞くことになった。

そこで、色々と新事実が発覚した。

この爺さんと婆さんは、俺の母親の両親

つまり、俺の祖母と祖父で、祖父は見た目通りの厳格な元軍人で

自分の娘は軍人としか結婚させないと考えていたらしい。

そこに、現れた俺の父親はフェザーンの商人であった為

「絶対に結婚は許さん」って感じになってしまったらしい。

許さん、許せ、の話し合いが延々とつづき

その結果、妥協案として男の子が生まれたら軍人にするって事で決着したらしい。

うん、どっかで聞いたことある話だな。

そして、俺は爺さんに幼少の頃より軍人になる為の教育を

ミッシリ受け、問答無用で士官学校にぶち込まれた。




入学した頃の俺は爺さんにスッカリ洗脳され

真面目な軍人を目指す好青年になってしまい

成績も学年で5本の指に入るほど優秀な生徒だった。

しかし、同期に優秀だが反骨精神旺盛で毒舌家な奴がいた。

事務処理能力が凄い奴で、組織工学の論文を発表して

大企業の経営陣からスカウトが来たりしていた

俺も、それなりに優秀だったが

事務処理能力に関してはまったく敵わなかった。

シルバーベルヒ工部尚書とクルックル(グルック?)次官

ぐらいの差があったと思う。

そいつの影響で少しづつ洗脳がとけ(地が出て来た)

上級生や教官、上官などに嫌われる不真面目な軍人になってしまい

あげく、その友人からは「ぼやきのペトルーシャ」などという

渾名を頂戴してしまった。

しかし、卒業時は士官学校を次席で卒業する事が出来た。



そして、次席卒業を爺さん達に報告したら

爺さんに「おめでとう」と言われたのには

驚いた。

「次席だと!!俺の孫なら主席を取れ!!」って

感じで怒鳴られると思っていたので

凄い拍子抜けだった。

あとで婆さんがこっそりと話してくれたのだが

爺さんが士官学校にいた時、

同期にマフィアの一味がいたらしく

爺さんは何とか十位以内に食い込んでいた状態だったそうだ。

あと、爺さんはユースフ・トパロウルのファンだったらしく

俺にトパロウルと同じ渾名がついたのも嬉しかったらしい。




それからの俺はコツコツと武勲を重ね

ついに少将になった矢先に

第3次ティアマト会戦において

ウィレム・ホーランド中将閣下の指揮する

第11艦隊の副司令官を拝命したという事だ。

よりによって、第三次ティアマト会戦だ。

しかも、ホーランドの第11艦隊だ。

たしか、序盤戦はホーランドの艦隊が芸術的艦隊運動で

アメーバ(単細胞生物)のように一定の陣形を取らずに

暴れまくりそれなりの戦果をあげるが

艦隊が行動の限界に達した瞬間に

ラインハルトの艦隊による主砲斉射三連を受け

旗艦は消滅、ホーランド戦死、残存艦隊は敗走し

帝国軍の追撃を受けるがビュコック提督及びウランフ提督の

援護により逃げ切る事が出来た戦いだったはずだ。

マジヤバイ。マジヤバイヨ。

どれくらいヤバイかって言うとマジヤバイ。

俺は無事に生きてハイネセンまで帰る為に

我が司令官にはけして採用されない作戦(主に自分の安全)を考えるために

思考の海に沈んで逝った。











[13584] 第二話  何とか二話目を書いてみた
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2009/12/08 12:39

第二話  何とか二話目を書いてみた


『イースト提督!!!!何か意見があるなら言ってみたまえ!!』

突然の大声で思考の海より帰還する俺

いや、寝てないよ。考えていただけだよ、

怒鳴った人物は勿論ウィレム・ホーランド中将閣下、

俺の所属する第11艦隊の司令官にして、帝国を滅ぼす男(自称)だ。

怒鳴られたのは、俺ことペトルーシャ・イースト少将、

第11艦隊の副司令官だ。

俺はこの司令官にとても嫌われている。

今も物凄い顔で睨まれてるし、間違いない。

理由は幾つか思い当たる。




理由その①

司令官閣下が発案した芸術的艦隊運動に対して

「非生産的だ」、「行動の限界を速めるだけだ」、

などと周囲にぼやいていたのが司令官閣下の耳に届いた事。



理由その②

今回一緒に出撃する事になった

第5艦隊、第10艦隊の司令官のビュコック提督とウランフ提督に

「本当にすいません。ウチの馬鹿(ホーランド提督)が迷惑かけると思うので

ほんとうにすいません。あのコレ詰まらない物ですが・・」(母親のような口調で)

と言ってワイロ(缶コーヒー)を渡した事が司令官閣下の耳に届いた事。

ちなみに、二人とも苦笑しながら缶コーヒーを受け取ってくれた。




理由その③

先日、グランド・カナル事件という物が発生した。

(※人為的ミスの所為で物資が滞り、軍では対応しきれず
民間船が100程雇われて軍の代わりに物資を運ぶ事になったが
宇宙艦隊司令長官だったロボス元帥の「戦いの前に貴重な戦力を失う事にならないように」との
ありがたい訓令に過剰に反応した護衛部隊が途中で引き返してしまう。
巡航艦グランド・カナルの一隻だけは護衛の為に残っていたが
帝国軍の巡航艦二隻に見つかり撃沈された。
民間船も二隻ほどやられたが残りは無事に逃げる事が出来た。
軍はこの不手際を隠すためにグランド・カナルの船員を英雄として祭り上げた。)

この事件に対し我がホーランド提督が

「一隻の犠牲で他の九隻が無傷だったのだから

司令部の訓令は的を得た物だ。」と

マスコミのインタビューに答えていたのを

後ろで聞いていた俺が

「味方がもう2、3隻いれば一方的に帝国軍を蹂躙し

敵の戦力を添いでおけたのに残念でしたね」

と茶々をいれた事。

ちなみに、その日の夜のニュースでこのインタビューが

放送されたが俺の入れた茶々もきっちり放送されてた。

テレビ出演(声のみ)で

ちょっと、テンションが上がった俺は

念のために録画しておいたデータを友人、知人に配って歩いた。

でも、後日にホーランド中将が滅茶苦茶怖い顔で俺を睨んでいたので

これからは、少し自重しようと思いました。あれ?作文?



また、この事件について非常勤参謀殿は

「グランド・カナルには百個の勲章よりも一隻の味方が必要だったと思いますよ。」

とインタビューに答えていたらしいが

マスコミには報道されなかった。残念。



理由その④

先日の朝のニュース番組「お目覚めハイネセン」内の

街角アンケートの企画(元帥に一番早く元帥になりそうな軍人は誰?)

一位 ヤン・ウェンリー(圧倒的差で)

二位 ペトルーシャ・イースト(俺)

三位 ウィレム・ホーランド(若手のホープ)

との結果が出ていた。(内容のほとんどがヤン・ウェンリーの事だった)

この時に番組内で今までの実績などをまとめた物を放送していた。

俺については大きい実績は無いが大きい失敗も無く地道にコツコツと

行く堅実なタイプの軍人と紹介されていた。


ホーランド提督は以前に自分の立てた作戦(G線上のワルツ作戦)について

「ネーミングセンスがちょっと」とアナウンサーのお姉さんに言われていた。


その日、統合作戦本部で伊達と酔狂が大好きな後輩が敬礼しながら

「おはよう御座います、未来の元帥閣下。」と

挨拶してきたのをホーランド中将に目撃された。

その時のホーランド中将は

帝国を滅ぼした後に皇帝と一緒にギロチンにかけてやると

言わんばかりの形相だった。

ワザとだな、自称革命家。






そして、現在もとても怖い顔で睨まれている。

会議の最中に考え事をしていたのが悪かったらしい。

けして、寝ていたわけではない。

俺は少しだけ人より瞬きが長いだけだ。うん。

とりあえず意見を言わないとあれなので

言わせて頂きます。


「司令官閣下の発案した芸術的艦隊運動(笑)ですが

敵が司令官閣下より無能であれば有効だと

小官は考えます」


うん、大丈夫だよね?ちゃんと褒めてるよね?

あと、芸術的艦隊運動の所でちょっと吹いてしまったが

問題ないよね。あれ?司令官?

何で震えてるの?


『貴様!!!!この俺を無能だと言うのか!!!!』

切れた。司令官が切れた。

周りの方々も驚いている。

とりあえず、会議を進めないといけないので

適当になだめる(誤魔化す)事にする。


「司令官閣下は、帝国軍が我々同盟軍より優れているとお考えですか?」

「なんだと!!」

「敵を過大評価して必要以上に恐れるのは武人として最も恥ずべき行為と小官は考えますが?」

「ぐっ!!・・・まあいい。会議を続ける。」

アムリッツァ前のアンドリュー・フォークっぽく反論する俺。

何とか、誤魔化す事が出来き

その後何事もなく会議は無事終了した。


俺の指揮する分艦隊は最後尾に配置された。

ホーランド提督の意図はなんとなく分かる気がする。

今回の作戦に絶対の自信を持っている司令官閣下は

自分を最前線に置き、あまり手柄を立てさせたくない俺は

後方にと考えているのだろう。

こちらとしても理想の配置だ。

しかし、自分の部隊だけ逃げるわけにも行かない。

俺は艦隊の副司令官なのだから。(べ、別に敵前逃亡で銃殺が、怖いわけじゃ無いんだからね!!)





今回の俺の目標

☆どれだけ味方の損害を出さずに撤退を完成させるか

大丈夫だ。秘策はある。









[13584] 第三話  第3次(大惨事)ティアマト会戦開始
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2009/12/08 12:39

第三話  第3次(大惨事)ティアマト会戦開始



「独創性の欠片も無い陣形から独創性の欠片も無い戦闘が生み出されている。」と

ラインハルト・フォン・ミューゼルが副官のジークフリード・キルヒアイスに愚痴をこぼしている丁度その時

同じ戦場の反対側の陣営でも同じ事を呟いている人物がいた。




「独創性の欠片も無い陣形から独創性の欠片も無い戦闘が生み出されている。」

とりあえず、ぼやいてみる俺。

心の底からそう思って言っている訳では無く

今頃、金髪も同じような事を愚痴っているのかな?

と思い、格好をつけて言ってみただけっだったりする。

しかし、副官のフック・カーン中尉は

そうとは思わず怪訝な表情をこちらに向けてきたので

「俺は一日、一回はぼやいておかないと体調が悪くなるのでな。

だから、ついぼやいてしまうのだよ。」

と言い訳をしておく。

「はあ。」

ますます、怪訝な表情になるフック・カーン中尉。

正直、俺も自分で何言ってるのか分からない。

言った後に後悔する。一日一回って何?メケメケ?

それにしても、このフック・カーン中尉

まさに副官をするために生まれて来たような名前だ。

将来、副官一筋35年とか言っているのだろうか?

そんな事を考えていると司令官のホーランド中将より

「全軍突撃せよ!!」

との命令が下った。

無視する訳にもいかない。

俺は「やれやれ、給料分働くか。」と

非常勤参謀殿のマネをしながら自分の指揮する艦隊に

「司令官閣下に続け、ただし無駄弾は撃つなよ。」

と命令した。






19:20分頃


「どうだ!!戦っているのは我が艦隊だけではないか。

戦果は全て我が手の内だ。一個艦隊で4倍近い艦隊を翻弄しているのだぞ。

こんな鮮やかな勝利はアッシュビーでも不可能だろう。

リン・パオもブルース・アッシュビーも守るだけだった。

俺は違うぞ。敵を撃破し、イゼルローン要塞を抜き、長躯してオーディンを攻略する。

皇帝を処刑し、ついでにあの男も処刑し、帝国を滅ぼすのだ。ウィレム・ホーランド元帥。

帝国を滅ぼす者、それは俺だ!!」

ホーランド提督の副官は上官の言った「あの男」に心当たりがあったが

彼は空気を読める男だったので特に反応せず聞き流す事にした。

ホーランド提督の第11艦隊は先覚者的艦隊運動で暴風雨の如く荒れ狂っていた。

しかし、この様な攻勢が無限に続く訳も無く

だんだんと攻勢の終末点に近づいていく。



「もうすぐ、限界か。」

第11艦隊の行動の限界が近づく

俺は自分の分艦隊には余裕を持たせて行動させていたため

まだ、弾薬、燃料には余裕があるが

他の分艦隊はそうは行かない。

「後方の第5艦隊、第10艦隊に通信を送れ。

第11艦隊はまもなく行動の限界に達す。

撤退の援護を要請する、と」

「しかし、艦隊司令官のご許可を・「かまわん。責任は俺が取る。」・・はい、了解しました。」

「まもなく、敵より砲撃が来る。

各艦分散し各々の判断で他の船より距離を取れ。」

俺は勝手に他の艦隊に通信送ったり、司令官を無視して

命令したりのやりたい放題だ。

事前に、根回し(主に飲みにつれていったり、飯奢ったり、ぼやいたり)

して置いた分艦隊は自分の指示にしたがってくれたようだ。

もし、司令官が生き残ったら軍法会議ものだ。

だが、ここまで来たら腹を括らねばならない。

とある副官が言っていた「毒を喰らわば皿まで、

皿を食ったらテーブルを齧りたおし、

テーブルを齧り倒したら食堂を爆破せよ!!」と

戦場に当てられて自分のテンションが上がって来たのを

自覚していたがそれにブレーキをかけるような事はしない。

なぜなら、冷静になってしまうと

とても怖いからだ。

俺はテンションに流されている訳ではない、

「コレが俺の本来のベストテンションだ。」と

自分に言い聞かせる。そんな自分に気付かないふり

そして、時々自己嫌悪。




俺のやりたい放題に対し司令官のホーランド提督からの通信が入る。

出たくないな、などと思っていると

突如前方に強烈な光が走り司令官からの通信が途絶える。

「旗艦消滅!!ホーランド提督戦死しました!!」

オペレーターより報告が入る。

俺の分艦隊は旗艦からは十分な距離を取っていたので

損害は無い、俺の指示に従ってくれた他の分艦隊にも

目立った損害は無いがそれ以外の部隊の損害はけして軽くないな。

ここからが本番だ。撤退戦は殿がしっかりしていないと

一方的な損害を出すからな。

昔の戦国時代の織田と武田の戦った長篠の戦いも

武田が撤退に移ってからの損害の方が多かったって

なんかの本に書いてあったな。

今回の殿は俺の艦隊が勤めるしかない、

大丈夫だ、後ろにはビュコック、ウランフの両提督が控えている。

それに、俺には秘策がある問題ない。

「司令官が戦死した為、俺が艦隊の指揮を引き継ぐ。

我が分艦隊は殿を務める。それ以外の艦隊は秩序を持って撤退せよ。」

この時の為に、温存していた弾薬を追撃してきた敵の先端部に

ピンポイントでばら撒きながら時間を稼ぎ徐々に後退する。

第5艦隊、第10艦隊が間も無く援護に入れそうな

距離まで来たのを確認すると俺の秘策を発動する。

この秘策とは何を隠そう

第2次ランテマリオ会戦でロイエンタールが使った擬似突出だ。

「各艦、戦術コンピューターのC5回路を開け」

俺は前もって作戦をコンピューターに入力しておいた。

何?非常勤参謀殿のパクリじゃないよ。

使ったのは俺のほうが先だもの。




       俺の予想


       敵の追撃  
  
        ↓

       秘策発動

        ↓

 敵「何だと、敵が突撃してきた、」
 敵「そんな非常識な、全軍後退せよ。」
 敵「敵の司令官は用兵を知らぬ。」

        ↓

    俺の艦隊急速反転後退

        ↓

  敵「おのれぇ、逃がしたわ。」
 金髪「ほう、敵にも中々出来る奴がいるな。」
 赤毛「善戦を称える通信文でも送りますか?」






        現実


       敵の追撃  
  
        ↓

       秘策発動

        ↓

 敵「何だと、敵が突撃してきた、」
 敵「そんな非常識な、あのような寡兵で一体何が出来る。」
 敵「よし、包囲し撃滅せよ。」

        ↓

 あるぇ?敵が、近づいて、来るよ?
   (味方部隊急速撤退中)
   (分艦隊各艦順次離脱中)
    (分艦隊旗艦突出中)←俺の乗ってる艦

        ↓

   
   帝国軍による包囲網完成。

  気が付くと回りに味方がいない。

   俺の艦だけが取り残された。 

  そして、敵より降伏勧告が届いた。






どうする俺。どうするよ。






           選択1



俺「ふははははは、コイツは良いぞ。どっちを向いても敵ばかりだ。

狙いを付ける必要は無い。とにかく撃てば敵に当たるぞ。」

          突撃開始

            ↓
   
俺「ふはははは、コイツは参った。騙されたぞ(主にロイエンタールに)!!」(※騙してません)

          チュドーン

            ↓

          二階級特進

   俺は34歳で自由惑星同盟軍最年少の大将の誕生


・・・いや駄目だな。1は却下。






           選択2



俺「コレは罠だ!!コレは罠なんだ!!分からんのかこの馬鹿共。コレは罠だ。

コレは罠なんだ。ロイエンタールが僕を陥れるために仕組んだ罠だ。」(※濡れ衣)

    
     
・・・・・・・いや駄目だな。

そもそも、コレでは何も解決しないし、

途中から別の奴になってるし、

落ち着け、落ち着くんだ。素数を数えて落ち着くんだ。

素数は1と自分の数でしか割る事のできない孤独な数字。

私に勇気を与えてくれる、素数は誰にも砕けない。

1、2、3、5,7、11?

「フック・カーン中尉、1は素数だったかな?」

「はぁ?」

「いや、何でもない。忘れてくれ。」

完全に俺のミスだ。

クソ!!オスカー・フォン・ロイエンタールめ。死して尚、俺に刃を突き付けるか!!(※死んでません)

・・・・・本当にどうしよう。



 金髪「・・・・・・・」

 赤毛「・・・・・・・」
 



 次回に続く?





[13584] 第四話  家に帰るまでが
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/02/07 19:17

第四話  家に帰るまでが


第3次ティアマト会戦で敗走する第11艦隊の

殿軍とつとめた俺は、ロイエンタールの罠に掛かり(※違います)

敵の包囲網の中で絶体絶命に陥った。

さっきまで、この艦から様々な指示を各艦に出していた。

帝国軍でもそれらの通信を傍受し、

すでに気が付いているはずだ。

単艦突出して来たのが旗艦でも何でも無い艦なら

問答無用で撃沈されていただろう。

だが、分艦隊とはいえ旗艦であるなら話は別だ。

と俺は思う。



当初、一個艦隊に蹂躙され

その危機を救ったのがラインハルトの艦隊。

いわゆる、生意気な金髪の孺子に助けられて愉快なはずが無い。

追撃による功績で名誉挽回しようとしたミュッケンベルガー達帝国軍諸提督の思惑を

目の前にいる分艦隊の旗艦により阻止されたのだ。

帝国軍の宇宙艦隊司令長官ミュッケンベルガー元帥は

自分のプライドを満足させるべく目の前の敵に

降伏勧告を行うことにした。

彼らしく、堂々と。



とりあえず、降伏勧告が来たので通信画面に出してみる。

「私は帝国軍宇宙艦隊司令長官ミュッケンベルガー元帥である。

汝の艦は完全に我が艦隊の包囲下にあり、これ以上の抵抗は無意味である。降伏されたし。」

生ミュッケンベルガーだ。本当に堂々としているな。

モニターには複数の通信画像が出ている。こいつ等が帝国軍の提督達か。

おっ、隅っこに金髪と赤毛を発見。こいつ等がラインハルトとキルヒアイスか。

「返答は如何に!!」

うわっ。怒鳴られた。

俺も軍人だ。

覚悟は出来ている。

「汝は武人の心を弁えず、我生きて汚辱に耐えるの道を知らず、死して名誉を全うするの道を知るのみ。

この上は国防委員長閣下の恩顧に報い、全艦突入して玉砕あるのみ!!」

俺の返答に軽く頷くと攻撃命令を下すミュッケンベルガー元帥。

中には、俺に向かって敬礼する提督もいた。

帝国軍の艦隊より無数のビームが放たれ、同盟軍第11艦隊の

分艦隊旗艦を貫き、爆沈する。







































「ふっははははははははは。」

旗艦爆沈後も俺の姿は通信画面に残り

笑い声が各艦に響き渡る。

唖然とする帝国軍の提督たち。

おっ、金髪、赤毛も驚いてる。

「ふっははははははははは、俺は初めからそっちにはいねぇんだよ」(※さっきまでいました。)

笑い転げる俺。

唖然としている所に、ビュコック提督及びウランフ提督の艦隊の攻撃を受け

さらに混乱が帝国軍に広がった。

その隙に第11艦隊の残存艦隊は安全宙域まで撤退し、

俺の第3次ティアマト会戦は終了したはずだった。

しかし、この時に気を抜いた事を俺は後に後悔する事になる
















俺は現在、ハイネセン記念病院に入院中だ。

無事に戦場から撤退できたので

テンションが上がりブリッジでパラパラを踊ったのが良くなかった。(後悔中)

つい足を滑らせて階段を転げ落ちてしまった。

一応、戦傷扱いになったらしい。

家に帰るまでが、第3次ティアマト会戦だって小さい頃習ったのに。(※習ってません)

俺はテレビ(お目覚めハイネセン)の「緊急企画第3次ティアマト会戦の英雄」を

見舞いに来てくれた友人、後輩と一緒に見ていた。

「で、本当の所はどうなんだ?」

この後方勤務に定評のある友人は俺がどうやって敵の包囲網から

逃げ出してきたのか興味津々のようだ。

軍事機密なのでテレビでは放送できないが、

こいつ等は軍人だから言っても問題ないな。

「トリックは簡単ですよ。艦を乗り換えて旗艦をその艦に変更しただけです。

例の擬似突出作戦に失敗して、咄嗟に後退して行く他の艦にシャトルで乗り付けた。(もちろん総員退艦で)

それだけですよ。敵艦隊への通信は情報部出身の部下(ナオオ・B中尉)にハックしてもらいました。」

素直に感心するお二人さんに

「こんなの、邪道中の邪道ですよ。戦闘中に旗艦を乗り換えるなんて。

アッテンボロー、お前はこんな策を使うなよ。」

不機嫌そうに返答する俺。

例の擬似突出作戦は失敗、結構巧くいくと思ってたのに。

アレじゃ自分から死地に飛び込んで行ったようなものだ。

偶然、思いついた策がうまくいったからよかったが

一歩間違っていたら今頃は、あの世か捕虜収容所行きだったな。

第3次ティアマト会戦以来、マスメディアはこぞって俺を英雄扱いしているし

親類縁者が大量に発生している。




(我が身を犠牲にし味方の撤退を支援した英雄)

それが今の俺の肩書きだ。



「でも、結構良い戦法だったと思いますよ。例の擬似突出、戦力の差がそう無ければ敵も追撃をためらったでしょうし。」

ケンカの準備が大好きな後輩がフォローを入れてくれたりする。

お前は良い奴だ。この毒舌家と違って。

「戦力の圧倒的差があった時点であの戦法を使った俺に問題があったんだ。

戦法自体には何の問題も無い。なんならあの戦法、好きに使ってくれていいぞ。特許はまだ取ってないからな。」

「やれやれ、お前さんがヤンみたいな事を言うとはな。」

エルファシルの英雄か。

「で?アッテンボローはともかく、ギャゼルヌ少将閣下は一体何の御用でいらしたのですか?

今頃は戦後処理や失った艦隊の再編で忙しいと思われますが?」

「いえいえ、これも戦後処理の一環ですよ。第11艦隊の司令官ペトルーシャ・イースト中将閣下。」

憎まれ口を叩く俺に、憎まれ口で返してくる恐妻家。

どうやら、俺は中将に昇進、第11艦隊の司令官にも抜擢されたそうだ。

ビュコック提督とウランフ提督が俺の擬似突出作戦を評価してくれたらしい

味方の撤退を援護しただけでなく、俺の作戦と演技に気を取られていた敵に

損害を与える事が出来たとの事だった。

以上の功績を持って昇進。

「つまり、面倒くさい艦隊の再編や上官の失敗を部下に押し付けようって事だろ?」

さらに、憎まれ口で返す俺だが、心の中では小躍りしている。

ヤバイ、テンション上がってきた。

「まあ、そんな所だ。用意する物資があったり遠慮なく言ってくれ。袖の下無しで話にのるぞ。」

袖の下無しでってのはコイツの得意ゼリフだ。確かヤンにも言っていたし

俺も何度か聞いたことがある。自分では面白いと思ってるのか?

「優秀な人材が欲しい。分艦隊指令でも作戦参謀でも何でもいい。

とりあえず、優秀な奴が欲しい。」

とにかく、まずは人材。

アンドリュー・フォークは要らないぞ。

主席で優秀だが奴は要らない。

そうだ、ジャンがいるじゃん。

ジャン・ロベール・ラップをくれ。優秀だろ。

後は、アッテンボローお前も来い。

それからヤン・ウェンリーとエドウィン・フィッシャー、チュン・ウー・チェンだ。

これだけ、人材がいれば我が第11艦隊は最強だ。

・・・二人とも、何なの、その目は。






そんなこんなで時は過ぎ、無事退院できた俺。

ジャン・ロベール・ラップ少佐は第11艦隊に配属になったが

残りの人物は駄目だった。

退院して直ぐに、ウランフ提督とビュコック提督に挨拶に行った時に

ついでに、第2艦隊の社長(パエッタ提督)にも挨拶をし、ヤンを下さいって

お願いしたが断られた。

艦隊の再編については今の所順調に進んでいる。

従来より工作艦を多めに配備しその運用には

徴兵されてきた元民間技術者を多数配置した。(この辺りの作業は事務処理能力に定評にある友人に丸投げ)

餅は餅屋だ。技術は技術屋に任せる。

なぜ工作艦なのか?理由は簡単だ。

ヤンがアルテミスの首飾りを破壊した時に使ったアレ(ドライアイスの塊にバサードラムジェットをつけた奴)を

使えば楽に勝てるんじゃね?俺天才?

と考えたからだ。でもラップ少佐にこの話をしたら

「動かない要塞なら兎も角、動く艦隊に効果があるとは思えません。また、持ち運びも不便です。」と反論された。

だが、この程度で俺は諦めない。

いつか、一夜でイゼルローン要塞を建設出来る位の立派な技術者を育ててみせる。

と、決意を新たに俺オリジナルの新作戦を考えるぜ。






作戦名「スノマタ」

日本の戦国時代、織田信長に仕え後に天下を取った武将「豊臣秀吉」

彼が、墨俣に一夜で砦を建て当時の人々を大層驚かせたらしい。

この、エピソードをヒントに俺が考え出した要塞建設作戦「スノマタ」

敵の目の前で要塞を作れば当然妨害される。

ならばどうする?簡単だ。

別の場所で要塞を作り一旦分解してから

要塞配置地点まで運びそこで素早く組み上げる。

流石に要塞は無理だが、この程度の作戦なら一夜で作れる。








・・・・駄目?


作戦を書いた紙を丸めゴミ箱に捨てようとした所に、

アッテンボローが入室して来た。ノックくらいしろよ。

で、何しに来たんだ?

「私の所属する第2艦隊の出征が決まったんで挨拶にと思いまして・・・

所で何ですか?今先輩が持ってる紙。」

丁度、紙を捨て様として振りかぶった状態で止まっている俺。

かなり、恥ずかしい。

「没にした作戦だ。」

ぶっきら棒に答えるとアッテンボローにその紙を投げつける。

投げ付けられたそれを受け取ると

「拝見させて頂きます。」

丸められた紙を伸ばし、読み始める。

勉強熱心なのは良い事だ。

それにしても、もう第4次ティアマト会戦か。

前回の第3次ティアマト会戦から半年も経ってないのに

本当によくやるな。

ちなみに、今回は第11艦隊の出番は無い。

再編についてはほぼ終了しているが、まだ訓練不足だと俺は認識している。

周囲からは、「もう充分です。」との声が聞こえてくるが

俺は慎重(心配性)な人間なのだ。出来る事はやっておくに越した事はない。

第4次ティアマト会戦についても、幾つか布石?を打って置いた。

第2艦隊のパエッタ提督と一緒に昼食をとった時に

「惑星レグニッツァの大気は水素とヘリウムだから核融合ミサイルを打ち込むととんでもない事になりますね。」

「敵の艦隊が横腹を見せたら、とりあえず撃っておけば良いんじゃね?」って言って置いたし

第2艦隊の分艦隊司令やパエッタの幕僚達には5,6回同じ事を言っておいたから大丈夫だろ。

パエッタさんは、実は優秀らしいからな。原作ほど酷い事にはならないはず。

ただ、その時パエッタさんには「いきなり、何言ってんのコイツ?」的な顔をされ

幕僚や分艦隊の指令達には「またかよ、コイツいい加減にしろ。」って顔で睨まれた。


「スノマタ作戦ですか?結構興味深い作戦ですね。何か問題があるんですか?」

さっと目を通すと、俺に質問をして来たアッテンボロー君。

少しは自分で考えろよ。(※お前もな。)

「目の前で組み立てるより、最初から作って置いた要塞を持って行った方が安全だろ。」

なるほど、と頷くアッテンボローに

後は同じ艦隊の説明好きの非常勤参謀殿に講義してもらえ。

アッテンボローを帰した後、いつ出撃命令がきても

大丈夫なように訓練を実施しようと決意する俺。





あとがき(言い訳)

ご愛読ありがとうございます。
いつもノリで書いてしまい後から後悔している状態です。
三話を書いている時もノリで書いていたら最後に詰んでしまい
何とかこのピンチを切り抜けさせようと作者の脳細胞をフル活用したのですが
この様な展開になってしまいました。

また、今後もあり得ない作戦を使ったり、一部のキャラが不当な扱いを受けるといった事が
あると思いますがご容赦の程よろしくお願いいたします。


※一部変更しました。(情報部出身の部下の名前追加、など)




[13584] 第五話  出番が無い
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2009/12/08 12:40
第五話  出番が無い


出番が無い。俺の第11艦隊の出番が無い。

第3次ティアマト会戦から、もうじき1年が経とうとしている。

ついさっき、アスターテ星域に帝国軍迎撃に出征した第2艦隊、第4艦隊、第6艦隊の

見送りに行って来た所だ。

半年ほど前に行われた第4次ティアマト会戦は無事?終了した。

第4艦隊の社長(パエッタ提督)とその仲間達は俺のアドバイスを覚えていてくれたようで、

惑星レグニッツァ上空での遭遇戦ではラインハルトの「マッチ一本火事の元」作戦を察知し

うまく退却する事が出来たらしい。

その後の本番(第4次ティアマト会戦)では戦場を横切ったラインハルト艦隊に

消極的ながら攻撃を加え多少の損害を与え、側面につかれた後は分艦隊(本来レグニッツァ上空で失っていた戦力分)で

なんとか食い止め、その隙にヤンとアッテンボローが敵本隊後方でデコイを使った囮作戦を発動。

デコイを敵艦隊と勘違いし、後退を開始した帝国軍の本隊を攻撃し大損害を与え

そのままの勢いで全滅させようとしたが、ラインハルトの艦隊が分艦隊を突破、

同盟軍の側面に攻勢をかけた為に、同盟軍はこれ以上の追撃を断念し撤退した。

以上が、第4次ティアマト会戦の全容だ。



なお、囮作戦を使ったヤン達は原作の用にラインハルトの旗艦ブリュンヒルトの下に張り付く

コバンザメ戦法は使わずにそのまま撤退し後で第2艦隊に合流した。

帝国軍の損害は原作以上に大きく追撃する余裕がなかったので

ヤンもわざわざ危険な作戦を使おうとは思わなかったようだ。

後で、アッテンボローに囮作戦に志願した理由について聞いたが

例の「スノマタ」作戦についての講義を非常勤参謀殿からして貰ってる姿が偶然に

パエッタ提督の目に留まり、やる気があると勘違いされてしまった。


「ヤン・ウェンリー准将、私は少し考え違いをしていた様だ。」byパエッタ提督


その結果、戦場を有利に進める為の作戦の立案と実行を任されてしまったらしい。

ぶつぶつと、文句(主に俺に対して)を言いながらも作戦を無事に実行した非常勤参謀殿に


「ヤン・ウェンリー准将、私はかなり考え違いをしていた様だ。どうだね今夜は一杯?」byパエッタ提督


パエッタはさらに考え違いしてしまったようで

ヤンをしつこく酒に誘ったらしく、ついにパエッタの熱意に折れたヤンが

アッテンボローを巻き込みパエッタ提督と三人で

酒宴を開き不満大会(主に俺に対しての文句)を開催した事を

後日アッテンボローから聞いたが

「作戦を立てるのも実行するのも給料の内だ。」

と正論で答え、

「お前の先生の非常勤参謀殿にもしっかり言っておけ。」

とアッテンボローを追い返した。

俺は心の広い人間だ。

この程度の事(俺に対しての不満大会開催)では怒らない。怒ってないぞ。


(※なぜ、パエッタがヤンに作戦を任せたか。

  ペトルーシャ・イースト「ヤンをくれ、アッテンボローもくれ。」

  パエッタ「駄目だ。(なんなんだ、いきなり)」

  ペトルーシャ・イースト「頂戴。頂戴。」

  パエッタ「とにかく、駄目だ。(よりによって何故あの二人なんだ?実は優秀なのかあいつ等は?
       よし、これからは注意してあいつ等を観察してみよう。)」

  ヤンがスノマタ作戦をアッテンボローに講義しているのを発見。

  パエッタ「(なるほど、理に叶っている。無能では無い様だな。
       よし、今度何かあったら率先してあいつ等にやらせて見よう。)」 


  結論  ペトルーシャ・イーストの所為           )




それはさて置き、第4次ティアマト会戦では俺の打った布石がうまく作用した。

この調子なら、アスターテ会戦も楽勝じゃね?

そう思っていた時期が俺にもありました。



第2艦隊のパエッタ提督の説得はうまくいったと思う。

例によって昼食中に

「二倍の兵力を態々三つに分ける必要は無いと思いますよ。

むしろ、各個撃破の危険が増大すると小官は考えます。」

って言ったら

「なるほど、確かにその通りだ。早速ウチの作戦参謀達と会議をしなければ。」

と言い足早に帰って行った。おいっ、自分の飯代くらい払ってけ。

第4艦隊、第6艦隊のパストーレ中将とムーア中将の両人にも昼食中に

「二倍の兵力を態々三つに分ける必要は無いと思いますよ。

むしろ、各個撃破の危険が増大すると小官は考えます。」

と同じように話したんだが、

パストーレ中将は


「今回の作戦は『リン・パオ』、『ユースフ・トパロウル』両元帥がダゴン星域で行った

包囲殲滅戦を再現しようというものだ。」と聞く耳を持たず、

ムーア中将にいたっては


「どうやら、第11艦隊司令官ペトルーシャ・イースト中将閣下は

時の司令官だった『リン・パオ』、『ユースフ・トパロウル』両元帥に勝る知恵の持ち主らしい。

そういえば、貴官は『ぼやきのペトルーシャ』と呼ばれているそうだな。

渾名『だけ』はユースフ・トパロウル元帥と同じだな。」


と俺の事を自分の幕僚たちと一緒に笑い者にしたので

ついカッとなって

「確かに、『リン・パオ』、『ユースフ・トパロウル』両元帥はダゴン星域での

包囲殲滅に成功なさいましたが、他人が成功したのをみて

自分も出来ると思うのは無能の証ですね。」と

宇宙海賊をやっている思想的には宇宙一危険なテロリスト医者の様な

皮肉を言ってしまい

両中将とその幕僚の気分を著しく損なってしまった。(大激怒させた)

俺は言った後に、直ぐヤバイと思いそのまま食堂を飛び出した。

代金を払わずに、結局は代金は両中将が払う事になったのだが

おかげで、俺はパストーレ中将とムーア中将に

とても嫌われた。

更に、この話(俺が両中将を無能と言った上に昼食代を払わなかった事)が

広まり、その場にいなかったパストーレ中将とムーア中将の幕僚達にも嫌われる様になってしまいました。

その所為で、俺はパストーレ中将とムーア中将に近づき難くなり、

結局、そのままアスターテ会戦を迎えてしまった。





ただ、この話が広まって良かった事が一つだけあった。

それは、パエッタ中将が以前俺に出させた昼食代を返しに来た事だ。








[13584] 第六話  アスターテ会戦とその後
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2009/12/08 12:41
第六話  アスターテ会戦とその後


     帝国軍ラインハルト艦隊

赤毛「星を見ておいでですか?」

金髪「ああ、星は良い。

   いつの時代、何処の社会でも人は幼い頃には夜空の星を見上げて

   それを取ろうと手を伸ばす。

   そして、やがて自分の腕が星に届くほどには長くないのだと知るという。」

   この台詞はアスターテ開始の時報のような物だと思う。









             中略








金髪「一つ問題があるとすれば、敵にあの男がいるかどうかだ。」   

赤毛「かつて第3次ティアマト会戦の英雄と呼ばれた男。ペトルーシャ・イースト中将。」










・・・・・・いませんでした。







      同盟軍第2艦隊

「パエッタ司令、如何でしたか?」

ヤン・ウェンリー准将の問い掛けに対に静かに首を横に振るパエッタ提督。

「ヤン・ウェンリー准将、パストーレ中将もムーア中将も当初の包囲殲滅作戦に固執し

私の進言には耳を貸そうとはしない。こうなっては仕方が無い。

勝つ事は出来ずとも、せめて負けない様にする事は出来るはずだ。

ヤン・ウェンリー准将、君の事だ。既に策を考えてあるのだろう?」

「はい、こちらをご覧ください。」

彼はパエッタ中将に作戦案を提示した。

彼の考えた「負け難い作戦」と「敵の取ると予測される作戦とそれに対する作戦」を。












アスターテ星域会戦の序盤戦はほぼ原作通りの展開だった。

同盟軍は帝国軍を三方からの包囲殲滅を目標としたが

帝国軍のラインハルト艦隊はまず三方に分かれた同盟軍の第4艦隊を撃破、次に第6艦隊を撃破し

最後にパエッタ中将率いる同盟軍の第2艦隊を殲滅しにかかったが、

同盟軍第2艦隊は予想以上に頑強に抵抗し、帝国軍は決定打を与えられなかった。

その後、調子に乗っていた金髪が同盟軍を一気に粉砕しようと中央突破戦法を使い

それを読んでいた同盟軍第2艦隊は中央突破戦法を逆手に取り

第2艦隊を二つに分け中央を突破された様に見せかけ

高速で敵の側面を逆進し背後に回り込む事に成功した。

背後を取った同盟軍第2艦隊はラインハルト艦隊を攻撃した。

これによって帝国軍のエルラッハ提督とフォーゲル提督を戦死させた。

これに対し、ラインハルトは時計回りに前進し同盟軍第2艦隊の背後に回り込もうとした。

この結果、同盟軍と帝国軍は互いを尻尾から飲み込もうとしている蛇の様な陣形になってしまい

これ以上、戦い続けても意味が無いと判断した双方の司令官が

お互いに呼吸を合わせて撤退した。

以上がアスターテ会戦の全容だ。

パエッタ中将とヤン・ウェンリー准将らの活躍で原作より被害を抑え、

帝国軍には原作以上の損害を与えたようだ。

そして、パエッタ中将も健在だった。

それから、ラップが俺の指揮下の第11艦隊に配属されている為

死なずにすんだので、慰霊祭でラップの婚約者ジェシカ・エドワーズによる

トリューニヒト弾劾事件は発生しなかった。

また、ヤン・ウェンリー准将では無く

パエッタ中将が『アスターテの英雄』と呼ばれる様になり

連日、テレビで報道されている。

この前のニュース番組(半バラエティ化)「お目覚めハイネセン」では

時期元帥間違い無しと特集を組まれていたが

半分以上はパエッタ中将の部下のヤン・ウェンリー准将に関する事だった。

流石、マスコミの英雄だ。



(※アスターテ会戦開始時に『第3次ティアマト会戦の英雄』に気を取られていたラインハルトは

 第2艦隊には、かつて『エルファシルの英雄』と呼ばれていた

 人物がいた事に気付いていなかった。

 また、第2艦隊攻撃開始時に第3次ティアマト会戦の英雄は

 今回の会戦に参加していない事を知ったラインハルトに油断があった為

 中央突破を見破られたと悟るのに原作以上の時間を必要とした。)

 










アスターテ後の俺も第11艦隊も

相変わらず訓練三昧だ。

この前、後方勤務本部長に呼び出され

俺の艦隊の訓練によって消費される弾薬や燃料が他の艦隊より

多いので自重する様にとの事だった。

この時の俺は

「確かに消耗品は大切に使わなくてはなりませんね。

軍隊における消耗品、即ち弾薬燃料と兵士ですね。

小官としては兵士という消耗品を大切に使う為に、

弾薬燃料という消耗品を効果的に使っているつもりなんですがいけませんか?」と

つい、皮肉で返してしまった。

最近、俺に新たな渾名がついたらしく『ぼやきのペトルーシャ』と呼ばれ無くなっているらしいので

ここらで色々とぼやいておく必要があると感じていた為に

こんな対応をしてしまった。

もちろん、すぐに謝って置いたし「自重します」と答えておいたので

問題ないはずだ。

それから、ヤン・ウェンリー准将は少将に昇進し

新設される第13艦隊の初代司令官に任命された。

パエッタ中将がアスターテ会戦における彼の作戦を

高く評価した為である。

他にもシトレ元帥やその他の提督達(俺も)が

彼を高く評価していたからだ。

しかし、自分の艦隊の結成式に

遅刻するってどう言う事だ?

集合時間の五分前、重要な事なら三十分前

大作ゲームなら前日からって相場が決まってるだろ?

おまけにあのスピーチは何だ?

「うまい紅茶を飲めるのは生きている間だけだから、みんな死なない様に戦い抜こう。」byヤン・ウェンリー

紅茶嫌いやコーヒー派にケンカを売っている様にしか思えない発言だ。

国防委員長閣下などはヤンを危険視しているんじゃないのか?

「まあ、遅刻はともかくスピーチに関しては誰かさんと大差ないんじゃないか?

『うまい夕飯を食えるのは一生懸命働いた人だけだから、みんなで一生懸命訓練しよう。byペトルーシャ・イースト』。」

「ふん。夕飯が嫌いな奴は余程の変人かダイエット中の奴だけさ。」

俺に対し相変わらず毒舌で返す友人にそっぽを向いて対する俺。

「お前さんはコーヒー派だから紅茶派の人間が憎いんじゃないのか?」

「別に、コーヒー派って訳じゃない、紅茶も好きだ。アルコールは嫌いだがな。それじゃ失礼する。」

キャゼルヌのどうでもいい質問に素っ気無く返すと、カップに残っていたコーヒーを飲み干し席を立つ。

意味も無くカフェに長居するとよからぬ輩が寄って来るからな。

アッテンボローとか、アッテンボローとか、アッテンボローとか。

アイツは平気で人にたかるからな。

他の奴らに真似されたら困る。この前も知らない奴らが

俺にたかりにきやがった。少し睨んでやったら顔色を変えて逃げてったが。

俺は会計を済ませるとキャゼルヌに軽く手を振りカフェを後にした。









[13584] 第七話  薔薇とコーヒーと歌
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2009/12/08 12:41
第七話  薔薇とコーヒーと歌






最新の技術を駆使して造られた都市や、最新の技術で製造された宇宙船や戦艦でも

そこに、人が存在する限り都市伝説や怪談のたぐいは幾らでも存在する。

アスターテ会戦の後、同盟軍内部において

とある都市伝説が蔓延していた。



『妖怪 Marked For Death(死亡フラグ)』

統合作戦本部内の食堂またはカフェで食事をしていると

いつの間にか出現するし、話しかけてくる。

この時に、そいつの機嫌を損ねると次の戦闘で戦死する。

実際には第3次ティアマト会戦のホーランド提督や

アスターテ星域会戦のパストーレ中将とムーア中将が戦死している。

なお、アスターテ星域会戦前にパエッタ中将も

そいつの機嫌を一時的に損ねた(昼飯代を払わせた事)が

出征前に謝罪(昼飯代を返した事)した為、戦死せずに英雄になったと噂になっている。

この様な噂を聞いた時の人々の反応は大きく分けて、信じない者、信じる者

そして面白がる者、利用しようとする者に分かれる。

 ある時、トリューニヒト派の将校が食堂でその妖怪を発見し

噂を利用しようとした。つまり、その妖怪の機嫌を損ねなければ自分達は

安全で栄達もあると言う事である。目上の者に媚びる事で今の地位を手に入れた彼らにとっては

その妖怪の機嫌を取る位の事は朝飯前の様に思えたのだ。

顔に笑顔を貼り付け、その妖怪に近づくトリューニヒト派の将校達。

しかし、次の瞬間その妖怪の強烈な眼光で威圧され、全員蒼白になり蜘蛛の子を散らすように

その場を後にした。







ローゼン・リッター連隊(※ローゼン・リッター連隊とは

帝国からの亡命者の子弟により編制された

同盟軍最強の白兵戦部隊である。)の

連隊長ワルター・フォン・シェーンコップ大佐も当然その噂を聞き及んでいた。

そして、ある日の昼食時に彼と彼の部下が食事しているテーブルに

その妖怪が出現した。

唖然とする彼の部下達をよそに、シェーンコップの口が不敵に歪む、

その時、彼の部下たちは自分達の隊長が

例の噂を直接確かめようとしている事を悟った。

「ドライロッド ドライロッド 我が生と死を彩るは呪われし色よ

 血と炎と真紅の薔薇が我が人生をただ彩る」

シェーンコップの口からある歌が紡がれる。

ドライロッド(三つの赤)だ。

この歌はシェーンコップの二代前のローゼンリッター連隊長だったヘルマン・フォン・リューネブルクが

好んで歌い広めた歌だが、彼が帝国に逆亡命をして以来シェーンコップ以外は

誰も歌わなくなった歌である。

シェーンコップ曰く「お偉いさんの前で歌うと嫌な顔をするのが面白くてな」との事である。

彼はこの歌を歌う事で、その妖怪の機嫌を損ねてみようと考えたのだが、

歌い終わった時に、その妖怪が彼と彼の部下の分のコーヒーをウェイトレスの少女に注文し

彼に歌のアンコールを希望してきた為

シェーンコップは自分の思惑が外れた事を悟ったのだが

彼の顔から不快な感情は見て取れなかった。

その後、シェーンコップは自分の部下のカスパー・リンツとライナー・ブルームハルトらと一緒に歌ったが

コーヒーカップの割れる音とウェイトレスの少女の悲鳴により

中断させられる事になった。

「すみません、すみません。」

同盟軍の将校に怯えながら謝る少女を助ける為に

シェーンコップ、リンツ、ブルームハルトの三人は席を立ち

その将校のいる方に移動する。

シェーンコップ達の後ろを例の妖怪が憑いて来るが

彼ら三人の意識は既に妖怪から

少女とその少女の胸倉を掴み上げる将校に移っていた。

「我が軍服を汚すとは我が軍を汚したも同じ事だぞ。」

シェーンコップが少女の胸倉を掴み上げる将校に静止の声を

掛ける前にその妖怪が声を発した。

「貴様らの軍服が幾ら汚れても同盟軍は穢れないが、

貴様が今やっている行為は、間違いなく同盟軍を汚す行為だな。」









その日、俺は昼食を取ろうと何時ものカフェに入ると

とても目立つ一団がいた。

ローゼンリッター連隊だな、あの集団は。

俺はいつもの技(畏れ発動)を使い

ローゼンリッターに紛れ込む。

しばらくその状態を保ち、チャンスが来たら会話に混ざり

いつの間にか知り合いになる。

よし、いつも通り完璧だ。







昼食が終わる頃、急にシェーンコップがドライロッド(三つの赤)を

歌いだした。

どうやら、紛れ込んでいたのがバレたな。

流石、白兵戦の達人だ。

俺の技が破られたのは初めてだ。

それにしても、生でシェーンコップのドライロッドが聴けるとは

今日はついてるな。

おひねりの代わりにコーヒーを全員に奢って

ついでにアンコールも要求してみる俺。

これに気を良くしたのかリンツとブルームハルにも一緒に歌うように催促して

三人でドライロッドを歌いだす。

かなり、シュールだ。

アンコールした事にチョット後悔していると

コーヒーカップの割れる音がした。

音のした方を見ると謝る女の子(ウェイトレス)と見覚えのある同盟軍の将校?がいた。

あいつ等、この前俺にたかりに来た連中だ。

その瞬間、俺の推理力が現状について一つの結論を導き出した。




  ワザとコーヒーをこぼさせる。

        ↓

  店員「すみません。すみません。」

  将校「誠意みせろや、ゴルァ!!」
 
        ↓

  食事代タダ。クリーニング代GET。




まるで、チンピラだ。なんて、うらやまけしからん事だ。

普通の同盟軍人ならこんな事をする筈が無いが

あいつ等はこの前、初対面の俺にたかりに来るくらいガメツイ奴らだ。

この程度の事は、朝飯前(実際は昼食前)のはずだ。きっと、今までに何回もやって来ているに違いない。

許せん。俺の心が怒りに打ち震えていると

シェーンコップとその他二名が席を立ち

そいつ等の方に歩いていったので

俺も便乗する事にする。

腕力沙汰になったらシェーンコップ達に任せよう。

うん、なんて心強いんだ。流石、白兵戦技達人だ。その場にいるだけで俺の戦意(テンション)が向上してくる。

よし、先ずは舌戦だ。

「貴様らの軍服が幾ら汚れても同盟軍は穢れないが、

貴様が今やっている行為は、間違いなく同盟軍を汚す行為だな。」

俺はチンピラ将校に凄まじい
口撃をくわえた。

シェーンコップも「口先だけで勝てるようになったら一人前だ。」って言っていたしな。

俺の登場に顔色を変えて退散する将校と俺の登場に不満顔な薔薇の騎士面々。

ヤバイ、またやっちゃった?だって、俺の中の何かが囁いたんだ。

少女を助けろって。

仕方が無いので不満顔な面々に言い訳しておく。

「俺は一度でいいから、チンピラにからまれる女の子を助けてみたかった。」と

心のウチを素直に白状し

何かを言われる前にその場を後にした。







足早にカフェを後にするペトルーシャ・イースト。

その姿を見送る幾つかの視線の中に

イゼルローン攻略作戦を任され

その作戦の補給面について相談している

ヤン・ウェンリーとアレックス・キャゼルヌがいた。

「彼が第3次ティアマト会戦の英雄ペトルーシャ・イースト中将ですか。」

「そうだ。エルファシルの英雄ヤン・ウェンリー少将閣下。」

「なんですか?その気持ちの悪い言い方は。」

自分の先輩であるキャゼルヌに気色の悪い呼び方をされ

眉をひそめるヤン。

「そんな呼び方をしたら、あいつも同じ様な反応をするから気を付けろよ。

それから、あいつは食事中に話しかけられると機嫌を悪くするから、

話し掛けるなら、食事を始める前か、ある程度食べ終わってから話しかけろよ。

アッテンボローだってその辺は気を付けているはずだ。(多分)」

「そういえば、キャゼルヌ先輩と同期でしたね。実際はどんな人なんですか?」

「ん?お前さんは面識が無いのか?」

「ええ、残念ながら、まだ面識はありません。」

「そうか。あいつにしては珍しい事があるもんだな。

それで、あいつの人となりか。

そうだな・・・・。他人が馬鹿な事をやろうとすると痛烈に批判をするが

誰も馬鹿な事をしないと率先して馬鹿な事をしようとするヤツかな?

まあ、人の言う事をちゃんと聞くから大きな失敗はしないと思うがね。」

ヤンの質問に少し考えてから口を開くキャゼルヌ。

「大きな失敗はしない・・・ですか。」

「人の事より、まずは自分の事を心配したらどうだ?

あのイゼルローン要塞を、しかも半個艦隊(アスターテでやられた第4・第6艦隊と新規の人員を加えて結成された艦隊)で

攻略しようとしているんだ。何か策があるんだろう?」

「あるような、無いような。」

「おいおい、俺にも秘密かよ。」









やがて、二人の興味は一人の人物から

一つの要塞にうつって行った。










[13584] 第八話  蝶と嵐と瓢箪
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2009/12/08 12:41

第八話  蝶と嵐と瓢箪





ずっと出番が無く、只飯を喰らっているみたいで居心地が悪い。

ヤン・ウェンリーの図太さが羨ましい。

これまでは、演習をして何とか日々を費やしていたが先日の事で演習を出来なくなった。

そんなこんなで無為に日々を過ごしていた俺は、統合作戦本部に呼ばれた。

俺を呼んだのは統合作戦本部長のシドニー・シトレ元帥だ。

「実は、君に行って来て貰いたい所があるのだが・・・・」

「私は軍人です。行けと言われれば何処にでも行きます。」

つい、調子に乗ってウランフ提督の様に返事をしてしまった。

「そうか。では、ヤン・ウェンリー少将の指揮する第13艦隊と供にイゼルローン要塞攻略に参加してくれ。」

呆気にとられる俺。

「しかし、イゼルローン攻略はヤン提督の第13艦隊のみで行う予定では・・?」

「予定ではそうだったのだが、実は・・・」

シトレ元帥が難しそうに口を開く。

簡単に説明するとこうだ。





ヤン提督が第13艦隊(半個艦隊)のみでイゼルローン要塞攻略を任された。

この事を知った第2艦隊の社長(パエッタ提督)が

「ヤン提督は同盟に無くてはならない人材だ」、「その貴重な人材をこのような無謀な作戦で散らすのか!!」

と猛抗議をシトレ元帥にしたらしい。

また、今回のイゼルローン攻略作戦は奇襲を前提としているらしく

少数の艦隊で行うのがベストだが、一個艦隊くらいの追加なら大丈夫じゃね?

って事で、「艦隊一個追加でよろしく」って事になったらしい。

そして、どの艦隊を一緒に出撃させるかとの話題になった時、


「それなら、第11艦隊のペトルーシャ・イースト中将が適任と思います。」byパエッタ提督

「第11艦隊のペトルーシャ・イースト中将でお願いします。」byヤン・ウェンリー

「演習が大好きのペトルーシャ・イースト中将が適任だな。」byアレックス・キャゼルヌ


で俺の艦隊に出番が回って来た。

今回の出兵は対外的には訓練と言う事で出発をするらしく、

俺の艦隊は演習大好き(別に好きでは無いが)で周囲にとおっているので

「演習大好き艦隊」と「新規編成艦隊」の合同演習と言う名目で出兵すれば良いカムフラージュになるので

この様な結果になった。

「余計な事しやがってあいつら、特に社長(パエッタ)と恐妻家(キャゼルヌ)。」と思う半面

「やっと出番が来た。」とホッとしていた。

楽勝だろ?今回は。





その後、ヤン・ウェンリーと初対面し簡単な自己紹介をすると

イゼルローン攻略についての基本となる作戦を二人で練る事になった。

俺は「1.5個艦隊だけでは正面からは無理。」「内部から攻め落そう。」

「そうだ、ローゼンリッター連隊に帝国軍に化けてもらって内部に侵入して貰うのが良い。」と

原作の丸パクリ作戦を提案しヤン提督もそれに賛成という形で基本作戦は決定した。

この作戦を、「イゼルローンの船」作戦と命名した俺。

ちなみに作戦名の元ネタは「トロイの木馬」から来ている。

その事についてヤン提督に説明した所、メチャクチャ食い付いて来た。

確か歴史家を志望していたんだっけ?

それから、例の「スノマタ」作戦の元ネタについても説明した所、これにも食い付いて来た。

こんな風に食い付いて来ると、こっちまでテンションが上がって来る。

お互いにテンションが上がり、歴史談議に華を咲かせた。

俺が知ってるのは、日本の戦国時代と中国の三国志の辺りと偏っているが

秀吉の墨俣以外のエピソードや、様々な武将の細かいエピソードなどを

面白がってくれたようだ。

その結果、ほとんどが作戦会議とは名ばかりの雑談になってしまった。

結局、イゼルローン要塞の攻略担当は、ヤン提督の第13艦隊。

俺の、第11艦隊の役割は第13艦隊の護衛になった。

要塞駐留艦隊と戦う方が、要塞とガチでやるよりは楽だろ。

ヤン提督は今回の作戦について、

「成功すればラッキー、普通は失敗する。」と考えているようだ。

俺もヤン・ウェンリーを見習って失敗したときには

第13艦隊を援護して素早く撤退できるように準備をして置く事にする。

実際、要塞駐留艦隊司令官のゼークト提督がオーベルシュタインの進言を一つでも取り入れたら

この作戦は失敗するからな。

さっきまでは「原作通り楽勝だろ?」って

思っていたがヤン・ウェンリーと話していると

危険な賭けの様な気になって来た。

備えあれば憂い無しだ。とにかく、準備だ。(主に精神的な)








それから、しばらく経った。

俺とヤン・ウェンリーはお互いに出征前の準備に急かされていた。

ヤンは優秀な副官が付いたので少しは楽を出来ている様だが

俺の副官は緑ヶ丘(ヤン嫁)さんに比べると

ちょっと見劣りしてしまう。

それに、参謀のラップ中佐(昇進した。)が現在ハネムーン中なので

その分、俺が頑張らなくてはならない。

ああ、そう言えばジャン・ロベール・ラップ中佐は

少し前にジェシカ・エドワーズさんと結婚した。

結婚式には俺やヤン・ウェンリーとその他の愉快な仲間達が招待された。

ヤンはその結婚式でスピーチを行ったが

流石のヤンも親友の結婚式でのスピーチは二秒で終わらせなかった。

貴重なものを見れたな。

その後、俺はラップとジェシカさんに挨拶した。

ジェシカさんは結構普通な感じの美人だった。

「あなたは今、何処にいます!!」とか「居るべき資格の無い場所から出てお逝き!!」って

言われないか内心ではビクビクしていたが杞憂だったようだ。

その後、俺はラップに無理やり休みを取らせるとハネムーンに送り出した。

で、そのツケが今の俺に廻ってきているという訳だ。

だって、しょうがないじゃん。ジェシカさんって怒らせると

とても怖そうなんだもん。少しは機嫌を取って置かないとね。









・・・・続く







[13584] 第九話  過去編に突入
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2009/12/15 19:56

第九話   過去編に突入



イゼルローン攻略の為の出征が間近に迫っていたある日。

出征の準備がほぼ終了していた、俺(第11艦隊の司令官ペトルーシャ・イースト中将)は

久しぶりに、ハイネセンにある彼の祖父母が住む

自分の育った家を訪れた。

訪れた目的は二つ、祖父母に出征の挨拶する為と

俺の被保護者にプレゼントを渡す為だ。(前者は後者のついで)

突然だが、俺には三人の扶養家族がいる。

もちろん、俺は独身だし

家族が殖えてしまう様な危険な行為には慎重な方だ。

なのに何故、三人も被保護者がいるのかというと

例の戦災孤児育英法。通称トラバース法の為である。

(※トラバース法とは、戦災遺児を軍人の家庭で養育する法律で、

 銀河帝国との戦闘状態から慢性的に生じる戦災遺児の救済と人的資源確保を目的として作られた法律である。)

この法律のおかげで、15歳まで養育費が政府から出るが

将来軍人または軍関係の仕事に就かないなら全額返しやがれ!!って感じの法律である。

うん、最悪だな。金で無理やり縛って軍人にしてしまうとは

この法律考えたヤツは最低だ。

俺は今は亡きトラバースさんに心の中で悪態をつき、

玄関の呼び鈴を鳴らすと

二人の被保護者に出会った経緯を思い出していた。







           ------回想中------



               宇宙暦792年


トラバース法により、俺の家(官舎の方)に被保護者が来る事になると

通知を受けた次の日に、俺は俺の家にそいつ等を送り込んでくる張本人の毒舌家の友人のオフィスに押しかけた。

「これは、通知は一体何だ?」

「トラバース法だ。知らんのか?」

「もちろん、知っているし俺の家に戦災孤児がやって来る事に問題は無い。

俺が問題にしているのは何故、『女の子が三人』やって来るのかと言う事だ。」

「えーっと、三人の内の二人は姉妹で、もう一人は姉妹の妹の方と同い年だし仲がいいからだ、

引き離すのは可哀相だろうと言う事だろ?」

「二人が姉妹だと言う事は、送られてきた資料を見ているから俺も知っている。

俺が言いたいのは、人数の事ではなく、独身男の家に女の子を送ってくるヤツの気が知れないって事だ。」

「お前なら大丈夫だろ?それに、二人も三人も同じ事だ。」

ここで、俺絶句。

反論を完全に封じられてしまった俺は渋々と家に帰った。

非常に拙い事だ。

俺はこれからの予定を頭の中で組み立てながら

送られてきた資料に再び目を通した。





 一人目

 アメーク・アジャーニ(10歳)
 
 とても可愛らしい女の子、ユリアン・ミンツと同い年。

 父親は戦死、母親は病死。他に身寄りは無い。




 二人目

 ベルナデッド・アジャーニ(8歳)

 アメークちゃんの妹。とても可愛らしい。




 
ここまでは、OKだ。

だが、次が問題だ。





 三人目

 カーテローゼ・フォン・クロイツェル(8歳) 

 母親は帝国からの亡命者で現在入院中、父親は不明。

 母親が以前同盟軍に所属していた為トラバース方が適用されたらしい。(実際はキャゼルヌが捻じ込んだ。)  






「って、シェーンコップの娘じゃねえか!!!!」と言う事で先ほど、キャゼルヌに抗議に行ったのだが

まさか、「原作キャラだから」とキャゼルヌに説明する訳にもいかず

結局は現状を受け入れる事にして

家全体の大掃除を始めた。

俺にもプライドがある。汚れた家で迎えるなど俺には到底出来ない。

その点、あんな状態でユリアンを家に迎えたヤンは凄いと思う。

家全他の掃除を完了し、可憐な少女達には有害なデータの類に三重のプロテクトを掛け

俺の寝室にある端末からしか操作できないように封印した。

その後、オルタンスさん(キャゼルヌ婦人)に連絡を取った。



(オルタンスさんと俺が知り合ったのは毒舌家の友人が結婚する少し前に

 婚約者として俺に紹介してきた時以来の知り合いだ。

 結婚式の時に俺は辺境勤務に行っていた為に出席は出来なかったが

 時々、夕食などに呼ばれたりしている。

 その度に、俺はオルタンスさんや嬢ちゃん達にご機嫌取りの品を渡すので

 毒舌家さんは「俺には無いのか?」といつも文句を言ってくる。

 蛇足

 ※オルタンスさんの父親は元軍人で俺の上官だった事もある人だ。

  一度、「娘を紹介してやる」との話しが在ったが俺がその後すぐに

  転属になった為、お流れになった。)



事の次第をオルタンスさんに説明し、毒舌家の横暴を必死に訴えた後に

今後、色々と必要になる物があるので一緒に買い物に行ってもらう事になった。

もちろん、キャゼルヌ家の嬢ちゃん達も一緒だ。

今回我が家にやって来るのは女の子なのでキャゼルヌ家の嬢ちゃん達の意見は色々と参考になると思う。

報酬代わりに後で甘い物を買ってあげなくては。

洋服などの着替えは後で一緒に買いに行けば良いと言う事で

とりあえず、必要になりそうな小物や日用品、

後は歓迎パーティの準備の品を揃えるとその日はお開きになった。

歓迎パーティには、キャゼルヌ一家にも出席してもらう事にした。

それから、俺の祖父母も出席する。



当日、歓迎パーティ用の料理を俺の婆さんとオルタンスさんに作って貰った。

そして、何故か俺も手伝わされていた。毒舌家は俺の爺さんと話し込んでいた。(少しは手伝え。)

出来上がった料理をテーブルに並べていると、俺の被保護者になる三人が我が家にやって来た。

丁度、手の空いていたオルタンスさんと婆さんが玄関まで出迎えに

俺は手に持っていた料理をテーブルに並べてから玄関に向かおうとしていたが

三人を連れたオルタンスさん達が来る方が早かった。

まず、アメーク・アジャーニ(姉)ちゃんを先頭にベルナデッド・アジャーニ(妹)、

カリン(カーテローゼ・フォン・クロイツェル)ちゃんが

オルタンスさんに連れられて部屋に入って来る。

アメークちゃんは活発そうな感じだが、若干緊張している様だ。

ベルナデッドちゃんは大人しそうな子で、お姉ちゃんの後ろに隠れる様にしている。

カリンちゃんは、若干警戒している様だ。

俺が三人を観察していると、三人はこれから自分達の保護者になる人物に自己紹介を始めた。

「始めまして、アメーク・アジャーニです。ご迷惑をおかけすると思いますが、これからよろしくお願いします。」

「・・はじめまして、・・ベルナデッド・アジャーニです。・・よろしく、おねがいします。」

「カーテローゼ・フォン・クロイツェルです。これからお世話になります。」

きちんと挨拶できるなんて偉いね、うん。

・・・・・でも、そいつは違うから。

君達が挨拶している奴は、俺の家にただ飯を喰いに来た革命家だから。

って、いつの間にウチに忍び込んできやがった。お前の事は呼んでねえぞ。

「ダスティは、ワシが呼んだ。」

ジジイ、何勝手に呼んでんだ。

俺の爺さんは、何かと革命家を可愛がるので困る。

前に理由を聞いたら、アッテンボローの戦死した祖父は

俺の爺さんの後輩だったそうだ。

そんな事より、保護者はこっち、ペトルーシャのお兄ちゃんはこっちだよ。

オルタンスさんに勘違いを指摘された三人は驚いて一斉にこちらを振り向き、

更に驚いた顔をする。

確かに、驚くだろう。

これから、自分達の保護者になる人物は軍人で

その人物の家に行ったら、唯一人軍服を着ている人物(自称革命家)いたので

その人物が自分達の保護者だと思い挨拶をしたら人違いだった。

で、本物の保護者になる人物は「ヒヨコのエプロン」を付けて料理の乗っている皿を持った人物だった。

これは、驚くだろう。誰だって驚く、俺だって驚く。

俺は呆けている三人に自己紹介をすると、手に持ったままの皿を差し出し

皿の上の料理を勧めた。

恐る恐る料理に手を伸ばし、それを口に運ぶ三人。

どうやら、掴みはOKな雰囲気だ。

そして、三人の後ろでこちらを見ながらクスクスと笑っているオルタンスさん

オルタンスさんに大きな借りが出来てしまった様だ。

お陰でうまくやって行けそうだ。





           ------回想終了------






ってな感じでそれ以来、カリン達とはうまくやっている。

だが、俺が長期の出征などで家を空ける時は祖父母の家に預かってもらっている。

女の子達だけで家に置いておくのは不安だからな。

特に、自称革命家が勝手に家に上がりこんで飯を食っているって事が

今までに何度かあったので特に留守中は注意しなくてはいけない。

「帰って来るならもっと早く帰って来い。三人とも、もう寝ているぞ。」

玄関前で回想してたら、いつの間にかタケ○の爺様が玄関を開けて俺の前に立っていた。

「誰が、タ○ダの爺様だ!!」

「いやいや、出兵の準備に手間取っちゃって気付いたらこんな時間に、

あ、これ三人に渡しておいてね。」

俺は祖父母に軽く挨拶を済ませると

そのまま、軍港に向かった。











過去編終了









[13584] 第十話  会議と紅茶と妄想と
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2009/12/15 20:28

第十話   会議と紅茶と妄想と




現在、同じ議題の会議が二つの場所で行われていた。

会議の議題は「イゼルローン攻略の基本作戦について」である。

会議の行われている一つ目の場所は同盟軍第13艦隊の旗艦ヒューベリオンである。

第13艦隊の司令官ヤン・ウェンリー少将とその幕僚が最終打合せの為の会議を行っている。

もう一つ、同じ議題で会議を行っている場所があった。

第11艦隊司令官ペトルーシャ・イースト中将の脳内である。






俺1「これより、イゼルローン攻略作戦会議を開始します。皆さんのご意見をお願いします。」

俺2「イゼルローン要塞だろ?正面からは無理だな。」

俺3「スノマタ作戦はどうだ?分解した要塞を持っていって速攻で組み立てる。」

俺2「馬鹿か?貴様は。それなら、造ってある要塞をそのまま持っていった方が早いし安全だろ。」

俺4「だが、如何せん我が同盟には移動可能の大型要塞が無い。これから造るにしても、経済状況も芳しくない。困ったものだ。」

俺1「つまり、スノマタ作戦及び、要塞作って持ってくよ作戦は現状では無理と言う事ですか。他に何か有りませんか?」

俺5「こんな作戦は如何でしょう?ドライアイスにバサードラムジェットを取り付けて、イゼルローン要塞にぶつけるというのは?」

俺4「なるほど、それは良い作戦だ。ドライアイスの代わりに岩や小惑星でも代用がきく。」

俺6「確かに、有効だ。しかし、それでは要塞が壊れてしまう。」

俺3「別の要塞を持って来れば良いではないか。」

俺2「さっきの話を聞いていなかったのか貴様は、代わりの要塞は同盟には無い。

   まさか、帝国に『イゼルローン要塞を壊してしまったのでガイエスブルグ要塞を貸して下さい』と頼むつもりか?」

俺3「なんだと、貴様!!!」

俺7「静かにせよ、見苦しい。」

俺6「要塞が無ければ我が同盟軍も帝国領への進入は容易になるが、逆に帝国側からも同じ状況になる。」

俺4「だから今回は要塞を奪取し、それでイゼルローン回廊に蓋をする、と言う事か。」

俺8「ぶっちゃけ、今更やっても間に合わないし。」

一同「それを言っちゃ、お終いよ。」

俺9「仕方ないさ、この会議の本当の目的は暇潰しだし。」

一同「・・・・・。」


優雅な俺「意見が纏まったようだな、ペトルーシャ諸君。まずは、紅茶でも「では、今回の方針はヤン提督にお任せ作戦でよろしいですね?」一同「異議なし!!」・・・・。」


俺8「あーあ、終わった、終わった。この後どうする?キャンディの掴み取りでもやるのか?」

俺9「それなら、オンディを呼んでこないと駄目だろ?」









こうして、脳内会議は無事に終了したのである。






作戦名「ヤン提督にお任せ」

中国の漢の時代、。劉邦に仕えた武将「韓信」

彼が、河を背に陣を構え相手を油断させ

城から引っぱり出す事に成功し別働隊で空城を乗っ取る事に成功した。

この、エピソードをヒントに俺が考えた要塞強奪作戦「ヤン提督にお任せ」(※考えていません)

イゼルローン要塞はお前に任せる。

俺は要塞駐留艦隊の足止めや戦闘を担当する。







俺の中での作戦会議(暇つぶし)の方は無事に終了した。

俺が第11艦隊の艦隊副司令の時に使っていた艦(初代アバイ・ゲゼル)は

帝国軍の攻撃で爆沈してしまったので今は違う艦に乗っている。

俺としては、新しい艦は最新のトリグラフが良かったのだが

まだ、テスト中と云う事で駄目だったので

よく分からない改造戦艦が俺の旗艦になってしまった。

そういえば前に一度、俺の考えた新構想戦艦を設計部の方に提案しに行った事があった。




ヤマト級戦艦

艦首に巨大な主砲を取り付けたタイプの艦で

主砲はトールハンマー並みの威力。

得意げに俺は設計部の連中に説明をしたが

「そんな威力の主砲を撃つと艦自体が吹っ飛びますよ。

と言うか、1艦だけの出力ではそんな威力の主砲は無理です。」

と、断られたのは良い思い出だ。

後で、ウチの艦隊の技術者連中にこの事を話したら大笑いされた。





脳内会議の後に回想をして時間を潰している俺。

今頃第13艦隊の方ではヤン提督が

「今、私の家に14歳の男の子がいるがその子が戦場に引き出されるのは見たくない。」と

会議をしめに入っているのかな?

本来ならば階級の上の俺の艦で第13艦隊の司令部と合同で作戦会議しなくてはいけないのだが

事前の打ち合わせで「要塞攻略についてはヤン提督に全面的に任せる。」って事で決着している。

俺の艦隊は要塞駐留艦隊の相手でもしていればいい。

大丈夫だろう。あの、エルファシルの英雄と薔薇の騎士なら。












現在、第11艦隊はティアマト星系でデコイの設置、及び無人の監視衛星の設置を行っている。

既に別れた第13艦隊は要塞の攻略に当たっている筈だ。

後は、俺の艦隊が設置したデコイに釣られて敵がやって来るのを待つだけだ。

「デコイ及び監視衛星の設置が完了致しました。」

「早いな。流石我が艦隊の技術陣は優秀だな。」

「しかし、提督。監視衛星など設置してもやって来た敵に破壊されてしまうのでは?」

「確かに目立つ配置をしてある奴は破壊されるだろうな。だが、偽装してある奴は大丈夫だ。

敵が何処にいるか分からない様な状況で、在るかどうかも分からない監視衛星を一々探す馬鹿などいない。(と、思う。)」

副官のフック・カーン中尉からの報告を受けつつ彼の疑問に答える俺。

「さて、設置が済んだらさっさと移動して隠れるぞ。」

第13艦隊の作戦成功を祈りながら、俺は新たな指示を出す。











同盟軍第11艦隊、第13艦隊がそれぞれの作戦を開始し、しばらく経った頃

要塞を出撃し敵を探し回っていた要塞駐留艦隊の司令官ゼークト提督の元に一つの報告が届いた。

「閣下、前方ティアマト星系、第四惑星アニシャルの周回軌道上に敵艦隊らしき反応があります。」

「よし、直ちに向かえ。」

部下からの報告を受け、迷う事無くゼークト提督は決断する。

要塞司令官のシュトックハウゼンや自分の幕僚のオーベルシュタインの慎重論に

反抗するような形で出撃して来た彼には

どうしても敵が必要だったのだ。

だが、要塞駐留艦隊がその宙域に到達した時

敵反応だと思っていた物が、敵の設置した囮だと気付いた。

敵の策に嵌った事に気付いたゼークト提督は

元々多い血の気が更に頭に上り冷静な判断が出来なくなっていた。(元々出来ていないが)

彼は憂さ晴らしに目立つ箇所に設置したあった敵の監視衛星の幾つかを

破壊するように命じ、その命令が実行され僅かながら気を落ち着けると

直ぐにイゼルローン要塞に引き返すよう全艦に命令した。













次回へつづく・・・・。







[13584] 第十一話 永遠と乙男と愛犬家
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2009/12/22 01:49



第十一話  永遠と乙男と愛犬家




「敵が予想していた宙域に現れました。」

「そろそろ、囮に気付く頃ですね。」

「予定通りだな、監視衛星はどうだ?」

「今の所は順調に機能しています。」

俺は副官とJ・R・L(ジャン・ロベール・ラップ)からの報告を受けた。

現在俺の第11艦隊は敵に見付からない様に隠れている最中だ。

敵の位置などは、先ほど設置して置いた監視衛星からのデータでほぼ把握している。

「敵艦隊からの砲撃で監視衛星が破壊されました。」

「全てか?」

「いえ、破壊されたのは目立つ様に配置してある衛星のみです。」

「予定通りだな。」

目立つ配置をしてあった監視衛星だけを破壊した後

要塞駐留艦隊はイゼルローン要塞に帰還すべく移動を開始した。

「よし、そろそろだ。ジャミングを始めろ。工作艦以外は駐留艦隊の背後を襲う。

工作艦は例の作戦を実行せよ!!」

敵艦隊が此方に背を向け移動を開始した時点で俺は全艦に指示を出した。

予め作戦内容は全艦に知らせてあった為、特に混乱も無く作戦行動を開始する第11艦隊。

繰り返された演習のお陰だな。







「これは!!」

「どうした!!敵か?」

「いえ、大規模なジャミングです!!レーダーが使えません。」

「何?」

「閣下、これは敵襲です。」

「そんな事は言われんでも判っておる!!」

ゼークト提督が陰気な幕僚に八つ当たりで怒鳴った瞬間

要塞駐留艦隊の後方に敵からの砲撃が突き刺さった。

「ええい、敵は後ろか。全艦回頭せよ!!」

「いけません、閣下。ここは時計回りに前進し・・「黙っておれ!!!!」」

そして、歴史は繰り返された。









今、俺の第11艦隊に背後を襲われている帝国軍要塞駐留艦隊が

敵前回頭をしている。

あれは、死亡フラグが立ったな。

心の中で「愚かな、死ぬ気か?」と呟きながら

俺はJ・R・L中佐に問いかけた。

「敵の取った行動(敵前回頭)についてどう思う?」

「正気の沙汰とは思えません。敵の司令官は、余程頭の逝かれたヤツです。

それで無ければ何を考えているか分からない変態です!!」

「・・そうか。」

いつもの温厚なラップ君とは思えない程に激昂している。

敵前回頭がそんなに嫌いか?(好きなやつはいない。)

自分の死因だからか?

俺はこれ以上深く考えないようにして

目の前の敵に意識を向けた。

回頭している敵を次々と此方の攻撃が貫き轟沈していく。

だが、いつまでも此方のワンサイドゲームと云うわけにはいかなかった。

元々、艦隊の絶対数では敵の方が数が多く

無事に回頭した敵艦が反撃をして来たからだ。

「一旦、敵から距離を取れ。」

俺は全艦に後退する様に指示を出した。

今現在の艦隊の数ではこっちが有利だ。正面から当たれば間違いなく勝てる。

ラインハルト曰く「単なる数の計算だ。勝つのが当たり前ではないか。」である。

しかし、正面決戦をすれば味方にも少なからず被害が出てしまう。

その為、俺は現時点での積極的な攻勢は控えていた。(味方に被害が出ない時は別。※敵の回頭中とか)

「提督、何故全面攻勢を掛けないのですか?あのままの勢いで勝つ事も出来たと思われますが?」

「今回の目的はあくまで敵の足止めだ。駐留艦隊に勝つ事では無い。

それに壊走した敵が真っ先に向うのはイゼルローン要塞だ。

そこには、要塞攻略中の第13艦隊がいる。奴らが要塞攻略に集中出来る様に気を使っている訳さ。」

副官の疑問に答えている俺。それに、今ここで敵を殲滅してしまっては

現在進行中のもう一つの作戦が無駄になってしまうからな。




















そろそろ、第13艦隊が要塞を落としている時間だな。(原作どおりならば)

俺の第11艦隊は先ほどから攻撃をしながら少しづつ後退し、敵が攻撃をしながらそれに合わせて前進して来ている状態だ。

流石のゼークト提督も自分達よりも数の多い敵に対して

無意味に突撃して来る様なアホでは無かった様だ。

原作での要塞突撃は、難攻不落の要塞を落とされたショックと

ヤン提督からの通信のから受けた二重のショックが原因だった様だ。

それに、現時点では要塞の状態を知らないゼークト提督は自棄になっていない為

この様な事になっていると思う。

さっきまでは、「突撃してきたら如何しよう?」と結構悩んでいた俺だったりする。

もっとも、此方の後退に合わせてジリジリと前進して来る様では無能と云うしかない。

俺だったら敵の後退に合わせずに逆に後退して要塞まで退却するのに。

それとも、並行追撃を警戒しているのか?

確かに、並行追撃などされたら要塞司令官のシュトックハウゼンは前任者の様に

いや・・、嬉々として敵ごとゼークト提督を要塞主砲のトールハンマーで吹き飛ばすだろう。

それを、警戒しているのか?

「提督。予定の宙域に到達しました。」

「工作艦の準備は?」

「完了してます。」

「よし、では作戦開始。」

予定の宙域に到達したので、俺は空かさず作戦開始の命令を出した。















ペトルーシャのもう一つの作戦とは?

ゼークトとオーベルシュタインはどうなるのか?

そして、第13艦隊の要塞攻略作戦の行方は?

次回へ続く・・・。















※言い訳

もう一つの作戦とはスノマタ作戦ではありません。

期待して頂いている方、申し訳ありません。







[13584] 第十二話 備えとロープと憂いあり
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2009/12/22 01:50



第十二話  備えとロープと憂いあり




「よし、では作戦開始。」

予定の宙域に到達したので、俺は空かさず作戦開始の命令を出した。

直ちに、工作艦隊による作戦が開始される。









少し、時は遡る。

今、俺は対要塞駐留艦隊用の作戦を第11艦隊の幕僚達としている。

「で、デコイの設置が終わった工作艦が隕石群にバサードラムジェットを取り付け、

 それを敵艦隊に向けて叩き込む。ってな感じの作戦で行こう。」

「なるほど、確かに一発ではなく複数で行えば効果はあると思います。

 その作戦で問題無いと小官は考えます。」

おお、J・R・L中佐が俺の作戦を誉めた。

この作戦は行けると思っていた俺に別の人物から待ったがかかった。

「それには、一つ問題があります。」

「どんな問題かな?コーンナーコート・モ・アーロカート技術中佐。」

俺は、問題を指摘して来た人物に問いかけた。

彼はコーンナーコート・モ・アーロカート中佐。

第11艦隊に所属している技術者連中(一応軍人)を

仕切っている人物だ。

階級は普通の中佐だが、俺は面白がって技術中佐と呼んでいる。

そしたら、いつの間にかにその呼び方が定着してしまい

今では、自分でも面白がっている位だ。

「取り付けるバサードラムジェットがありません。まさか、艦を解体してそれを使うわけにも行きませんし・・・・。」

「バサードラムジェットが無い?」

「はい。」

「・・・・何か代用できそうな物は?」

「ありません。現在の所持している装備は・・・『監視用衛星』『囮用のデコイ』『ゼッフル粒子発生装置』しかありません。

 後は・・・これらの装備の積み込みや運搬時に固定に使ったワイヤー位しか・・・・。」

なんてこった・・・・。

折角、ラップ中佐が賛成してくれる様な素晴らしい作戦が使えないとは・・・。

いや・・まて。

ワイヤー?

これ使えるじゃん。ヤンも使ってたし。

「ジェットが無ければワイヤーを使えばいいじゃない。」

一同「( ゚Д゚)ポカーン」

俺は唖然としている一同に、『ワイヤーを使って岩を牽引作戦』を説明し一同の賛同を得た為

この作戦を行う事に決まった。





作戦名「ワイヤーを使って岩を牽引」

ワイヤーで岩を数珠繋ぎにし

それを工作艦で牽引し敵艦隊に向けて突っ込ませる。(工作艦は岩にある程度勢いが付いたら離脱)

バーミリオン星域会戦でヤンが使っていたヤツのだ。













そして、時は戻る。

「我が艦隊側面に敵反応!!」

「何!!?敵の別働隊か?」

「拡大映像を出します。」

「何だ?これは。」

イゼルローン回廊で同盟軍第11艦隊と戦闘中のイゼルローン要塞駐留艦隊の側面に

突如として敵が出現した。

そして、その出現した敵は戦艦などではなく

無数の工作艦とその工作艦に牽引されている巨大な岩であった。

予想外の敵の状態に要塞駐留艦隊司令官のゼークト提督、

及び首脳部達の思考が一瞬停止する。

そこを、同盟軍第11艦隊からの猛攻撃が襲う。

「な、何だ!?」

「敵からの攻撃です!!」

「くそ!!叛乱軍どもめ!!先ほどまではモグラのように縮こまっておったくせに!!

 さっさと反撃せよ。」

さっきまでは後退しながら消極的に攻撃をくわえてしか来なかった敵からの

予想外の攻撃で一時はうろたえたゼークト提督だったが

直ぐに、気を取り直すと反撃を命じた。

この時、突然の敵からの猛攻撃を受け、

敵本隊に注意が移った為

ゼークト提督ら要塞駐留艦隊の首脳部の頭の中から

側面に出現した工作艦群の事はすっかり抜け落ちてしまった。

ただ一人、

陰気な幕僚を除いて・・・・・・。

しかし、陰気な幕僚はこの時点で

何度も自分の進言を無視し続けている

ゼークト提督を見限っていた為に、その事を進言する事は無かった。
















「敵、工作艦に気付いた様です。」

「敵の注意を工作艦よりそらす。全面攻勢に移つる。主砲斉射。」

俺の指示により、第11艦隊は今までの鬱憤を晴らすかのように

敵に猛攻撃をくわえていく。

それに、敵の注意が丁度、工作艦隊に逸れていた瞬間に

こっちの主砲斉射が決まった為、予想以上に被害を与えた。

今日の俺はなんか凄い。

ヤベエ、テンション上がって来そう。

俺が一人で興奮していると

工作艦隊から切り離された岩が次々に敵に突っ込んで行った。

凄いな、敵陣がズタズタだ。

岩やワイヤーに衝突し爆沈していく艦が続出している。

こんなに、旨く行くとは予想外だ。

でも、何か爆発の規模が大きくない?

メチャクチャ爆発してるよ?

敵のいない場所でも爆発してるよ?

疑問(不安)に思った俺は

直ぐに工作艦にいるコーンナーコート・モ・アーロカート技術中佐に通信を入れた。

「作戦は無事成功したようだ。アーロカート技術中佐。君達のお陰だ。」

「我々は作戦通り行動したまでです。提督の支援攻撃が無ければここまで旨くは行かなかった筈です。」

「支援攻撃位は当然の事だ。・・・所で、何か物凄く爆発しているんだが?

 技術中佐、何か余計な事をしなかったか?」

「その事ですか?余っていたゼッフル粒子発生装置を岩に取り付けて

一緒に送りつけただけですよ。もちろん、起動は遠隔操作で行ったので此方まで爆発は来ないと思います。多分・・。」

「多分?」

「なにぶん、急な作業だったので絶対の保障は無いです。もしかしたら、ゼッフル粒子発生装置を起動した状態で送り出したのも在るかも知れませんね(笑)」

その瞬間、俺の背筋が凍り付いた。

「全艦戦場より急速離脱!!!!敵には一切構うな!!!!」

(笑)じゃねえよ!!!!!

あの爆発がこっちまで来たら如何するんだよ!

その後、俺たち第11艦隊は混乱している敵を一切無視して戦場を離脱。

そのまま、イゼルローン要塞に向かった。

幸い、混乱している敵からの攻撃が一切無く、ゼッフル粒子も第11艦隊の方までは充満していなかった為

離脱時に被害は出さずに済んだ。

そして、イゼルローン要塞に到着した第11艦隊は

所有者を代えた難攻不落の要塞と

新たなる要塞の所有者に迎えられたのである。

ちなみに、この時の俺はゼッフル粒子から逃げる事で頭が一杯であり

駐留艦隊の旗艦に乗っているハズの

義眼の愛犬家の事はスッカリ忘れてしまっていた。













[13584] 第十三話 おかたづけ×4
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2009/12/23 21:46


第十三話  おかたづけ×4




難攻不落のイゼルローン要塞が陥落した。

この知らせは、同盟、帝国を問わず銀河中に瞬く間に広がった。

今頃、同盟の首都星ハイネセンや帝国の首都星オーディンは

大騒ぎだろうな。

しかし、そんな事は今の俺には関係ない。

やるべき事が多々ある。

要塞攻略によって発生した事後処理だ。

まず、捕虜の武装解除に戦闘で傷ついた艦の修理に要塞内部の調査、

周辺宙域の調査及び残敵の掃討、監視衛星の設置などなどやる事は山ほどある。

捕虜だけでも50万人いる。

とても、数日では終わらない。終わるはずが無い。

誰か、キャゼルヌを呼んで来い。300ディナールあげるから。

捕虜については階級の高い奴は

別の施設に移送しろと連絡があった。

残りの捕虜に対しての指示は無かったので

武装解除し、取り合えず要塞内部での様々な作業について貰った。





先ほど、補給の済んだ第13艦隊と

第11艦隊の中で整備や修理の必要ない艦が周辺宙域の調査と監視衛星の設置の為に出撃していった。

第13艦隊の方の指揮はエドウィン・フィッシャー准将が

第11艦隊の方の指揮はルグランジュ少将が担当している。

ルグランジュ少将は第11艦隊の分艦隊司令官の一人だ。

確か、原作では救国軍事革命のクーデターに参加してたっけ?

クーデター発生時の第11艦隊の司令官で

ドーリア会戦時にシェーンコップが

「それなりに勇猛で優秀」と言っていた通り優秀な人物だ。





それで、本来の第11艦隊指揮官は要塞内で必死に事務処理を行っているのだが、

第13艦隊指揮官は違った。

ヤンの野郎は全部副官に任せて

のほほんと紅茶を飲んでいやがる。

俺はこの時、ささやかな仕返しを思い付いた。

早速俺は、イゼルローン要塞攻略の簡易報告書を作る(創る)と

統合作戦本部長シドニー・シトレ元帥へ送信した。

兎に角ヤン・ウェンリー提督を誉めて褒めて誉めまくった内容だ。




『要塞を落したのはヤン提督の功績で、第11艦隊は敵を引き付けただけ、

 他の艦隊でもこの程度の囮役は出来た。

 いや、第13艦隊だけでもイゼルローン要塞攻略は成功していた。

 それに比べれば、俺なんて便所虫だ。

 ヤン提督バンザイ、ヤン・ウェンリーよ永遠なれ、

 ジーク・アドミラル・ヤン・ウェンリー、ジーク・フリープラネッツ。

 追伸

 ヤン・ウェンリー少将が退役したいと言い出すかも知れないので気を付けて下さい。』




と、大体こんな内容の報告書だ。(実際は言葉を選んで書いた。)

この報告書を読んだシトレー元帥やその他の上層部達は

俺よりヤン・ウェンリーを評価する筈だ。

そして、それを発表する同盟軍。

同盟軍の発表を信じたマスコミも

ヤンを英雄として評価する。

その結果、俺への注目が薄れる。

ついでに、帝国軍の注目もヤン一人に

集中すれば万々歳だ。

まあ、実際はこんなに旨くは行かないだろう。

仕返しが旨くいけば良し、旨くいかなくても良しだ。

報告書を送り終えた俺は直ぐに残りの事務処理に専念した。














それから、しばらく経ち

イゼルローン回廊内の調査と監視衛星設置の任務を終えた第13艦隊と第11艦隊が戻って来た。

丁度その頃にハイネセンから第13艦隊だけ先に戻って来いとの通達があったので

先ほど、第13艦隊は要塞を出発した所だ。

第11艦隊については、イゼルローン要塞に引継ぎ要員が到着しだい戻って来いとの事だった。

引継ぎ要員の到着までは、まだ大分かかりそうだ。

ついさっき、アーロカート技術中佐を筆頭とした技術者連中が暇を持て余しているので

何か仕事をくれと陳情してきた。

放って置くとこいつらは何を仕出かすか分からないので

取り合えず、先の回廊調査の時に

持ち帰ってきた航行不能になった帝国軍の艦を

好きにして構わないと言って

追い払っておいた。

この事を予想していた俺は

調査に出発する前のルグランジュ提督とフィッシャー提督に

「持って帰って来れる様な物があったら持って帰ってきてね。」

と、御願いして置いたので結構色々と持って帰って来てくれた。

二人に感謝を。















何事においても、引継ぎは大事だ。

俺の方は、要塞に到着した奴らとの引継ぎを無事に完了したが

アーロカート技術中佐を筆頭とする技術者諸君は

「今、丁度良い所だ。手が離せない。」byアーロカート技術中佐

だったので、イゼルローン要塞に置いて来た。

現在、俺たち第11艦隊は首都星ハイネセンに向っている所だ。

何もする事が無いのでテレビを見ている。

現在、イゼルローン要塞攻略を成功させたヤン提督と愉快な13艦隊の仲間達による

戦勝パレードの中継を見ているのだが・・・・・。

「・・・凄いパレードですね。」

「・・・ああ、本当に凄いな。ラップ中佐、もしかしたら貴官も俺も

 あそこに居たかも知れないな。」

「ご遠慮願いたいですね。」

「同感だ、まともな精神の持ち主には耐えられないな。あのパレードは。」

ただただパレードの豪華さに圧倒されていた。













「わずか1個半艦隊であの要塞を落すとは、敵にも出来る奴は居るものだな、キルヒアイス。」

「要塞を攻略したのは同盟軍第13艦隊、司令官はヤン・ウェンリー少将。

 要塞駐留艦隊を壊滅させたのは同盟軍第11艦隊、司令官はペトルーシャ・イースト中将。」

「ペトルーシャ・イースト・・・。あの男か。第3次ティアマト会戦の英雄。」

ラインハルト・フォン・ローエングラムは第3次ティアマト会戦で

帝国軍の包囲網を戦闘中に旗艦を変更する事で

突破した人物の事を思い返した。

自分やキルヒアイスの思考の死角を完全に突いた策を使った人物が敵にいる。

「同盟内部では、ヤン・ウェンリーの方が評価されている様だが

 それすらも、奴の策略かもしれんな。」

「確かに、油断のならない人物です。」

この時点での、ラインハルトとキルヒアイスは同盟軍の提督の中で

ペトルーシャ・イーストを一番評価していた。

ペトルーシャのヤンに対する仕返しが

裏目に出ているのだがその事を知る者は誰もいない。









[13584] 第十四話 イゼルローン 出発してから 幾星霜 ヤンに恨まれんとも 俺の身の為
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/02/07 19:20
第十四話  イゼルローン 出発してから 幾星霜 ヤンに恨まれんとも 俺の身の為




イゼルローン要塞を出発して幾星霜。

首都星ハイネセンに第11艦隊が帰還した。

第13艦隊の時に比べればささやかな迎えの式典だったが

それでも、俺にしてみれば充分に凄かった。

まあ、兵員の数は第13艦隊の二倍だから

その家族や関係者の数も二倍と考えれば当然とも言える。

流石に、戦勝パレードは無かった。

「第13艦隊の時に比べると控えめですね。」

「だが、それが良い。」

やや不満顔の副官に短く答える俺。

その後、俺は統合作戦本部に顔を出したが

そこで、色々とあった。

やはり、上層部はヤン・ウェンリー少将への英雄信仰を強化しようとしているらしい。

ヤンの第13艦隊は難攻不落のイゼルローン要塞を

犠牲を一人も出さずに攻略した。

それに比べ、俺の第11艦隊は数で勝っている要塞駐留艦隊を破った。

しかし、ほんの僅かではあるが犠牲は出ている。

俺も同じ英雄にするとヤンへのご利益が下がると上層部が考えたとしても不思議ではない。

実際、ヤン・ウェンリーは現在少将から中将に昇進している。

俺の第11艦隊の幕僚は一部を除いて昇進したが

俺は中将のまんまである。

一応、年が明けたら大将に昇進するとの通達が来たが

これは秘密でとの事だ。

結果、『味方の血を一滴も流さなかった』と云う点でヤン・ウェンリーは

今回の戦いの英雄(生贄)になりました。(めでたし、めでたし)




「結論を言うと、俺は悪くない、悪いのは上層部です。

 俺の小賢しい策の結果と言うよりは、上層部の方針が・・・・。」

「別に、ヤンもあいつ等も気にしてないと思うぞ。

 これも給料の内と思っているさ。」

俺の言い訳を遮って、さっさと帰れと手を振るキャゼルヌ。

しょうがない。今日はもう帰るか。

他に寄る所があるし。











今頃、ヤンの奴はマスコミ攻勢に晒されているハズだ。

俺も第3次ティアマト会戦の後の僅かな間だけだが

俺もマスコミに追い回された事があった。

最初はテレビに出れてラッキー位の感覚だったが

段々煩わしくなって行き、更には俺では無く

ウチの三姉妹を標的とし始めた奴らまで現れた。

なので、今の俺はマスコミが苦手だ。

それはさて置き、

現在俺は、ハイネセン記念病院にいる。

別に俺の体調が悪い訳ではなく

俺の義娘の一人であるカリンの母親である

ローザライン・エリザベート・フォン・クロイツェル(略称ローザ)

が入院しているからだ。

通常のお見舞いなら、カリン達と一緒に来るのだが

今回はローザの状態ついての話を担当医に聞く事と

手術についての話をローザとする為だ。

ローザは同盟軍に所属していた際に

爆発事故に巻き込まれ、破片を体に浴びた。

その一部が心臓に突き刺さっている状態だ。

現在の所、体調は安定しているが

主治医の話では、早い内に除去手術を受けた方が良いとの事だ。

問題なのは手術費がバカ高いと言う事だ。

とても、ローザが払える額ではない。

「俺が手術費を立て替えるから、手術を受けろ。」

と、今日もローザに言ったのだが

自立心の強い彼女は絶対に首を縦に振らない。

暇を見付けては俺はローザを説得する為に病院に来ているのだが中々うまくいかない。

今の所、ローザへの説得は俺の連敗続きだ。

お陰で、病院の看護婦さんとは顔見知りになってしまった。

さっきも「また、いらしてたんですね。(ニヤニヤ)」とか

「今日も駄目だったんですか?(ニヤニヤ)」とか

ニヤニヤと笑いながら声をかけられた。

お前ら、絶対何か勘違いしてるだろ。俺は手術を受ける様説得に来てるだけだぞ。

「はいはい、判ってます。大丈夫です。(ニヤニヤ)」

・・・・早く何とかしないと。色んな意味で。












「提督、こんな物が届いてます。」

その日、カリンが俺宛に届いた郵便を持って来た事が全ての始まりだった。

「招待状?同盟軍士官学校創立日記念式典?」

「如何するんです。」

何かを期待する目で俺を見て来る三姉妹。

「よし、久しぶりに四人で旅行だ。(式典はついで)」

そして、俺はその視線に屈した。





出発当日、俺とカリン、アメークにベルナデッド。

そして、ジャン・ロベール・ラップ大佐(昇進した)は空港へ向っていた。

何故、ラップ大佐が居るのかと云うと

同盟軍士官学校があるテルヌーゼン市に家(ジェシカとの愛の巣)があり、

偶々出発日が同じだった為

荷物持ちを手伝って貰う為に同行してもらった。

女の子が三人揃うと、荷物がハンパじゃない。

そして、空港で俺は見知った顔を見つけた。

「あれ?おはようございます、ヤン中将閣下。今日は、何処かにお出掛けですか?」

「おはようございます、イースト中将閣下。実は士官学校の創立日記念式典に招待されまして、

 イースト中将閣下とラップは何処かに旅行ですか?」

「こっちも士官学校の創立日記念式典に招待されたので、

 後、ラップ大佐は帰郷だそうだ。」

お互いに、慇懃に挨拶を交わしたが

面倒くさくなったので直ぐに止め、ウチの三姉妹を紹介する事にした。

「えーと、この子達はウチの三姉妹です。

 それから、皆は知ってると思うけど此方の人物はあの有名な

 『エルファシルの英雄』『イゼルローンの奇跡』『ミラクル・ヤン』『不敗の魔術師』

 と呼ばれているヤン・ウェンリー中将閣下だ。」

「始めまして、アメーク・アジャーニです。」

「ベルナデッド・アジャーニです。」

「カーテローゼ・フォン・クロイツェルです。」

三人とも少し緊張した様子で挨拶をする。

「どうも、ご丁寧に。ヤン・ウェンリーです。

 ユリアン、此方の御方はあの有名な『第3次ティアマト会戦の英雄』

 『ぼやきのペトルーシャ』『食堂の死神』『カフェのファントム』

 と呼ばれているペトルーシャ・イースト中将閣下だよ。」

「始めまして、ユリアン・ミンツです。提督、変な所で張り合わないで下さい。」

「始めまして、ペトルーシャ・イーストです。お宅のヤン提督には、いつもお世話になってます。

 ああ、それからヤン提督は他にも「「「いい加減にして下さい!!」」」・・・はい、スミマセン。」

ヤン提督が他にも色々と異名を持っている事をユリアンに教えてあげようとしたら

三姉妹に怒られてしまった。おのれぇ、ヤン・ウェンリー。




それは、さて置き

ヤンがここに居るって事はテルヌーゼン市の空港では

例の主戦論者代議員候補が取り巻きと一緒に待ち構えているな。

スッカリ忘れていた。

さて、飛行機に乗っている間に対策を考えるか。

政治ショーの登場人物にされるのはごめんだ。







つづく・・・・。




[13584] 第十五話 人の噂も75日
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2009/12/29 18:18


第十五話 人の噂も75日 




        例の主戦論者代議員候補への対策

空港で待ち構えている代議員候補やその取り巻き、マスコミの前で

「我々は軍人です。ですから、特定の代議員候補を応援する事はしません。」と

きっぱり言って置けば大丈夫だ。多分。

本音を言うと、これ以上いい案が浮かばなかった。

後は、アドリブで何とかするしか無い。






それはそうと、後ろの席ではウチの三姉妹はユリアン君と仲良く話してる。

さっき初めて知ったのだが、ウチのアメークとユリアンは

知り合いだったらしい。

まあ、同い年だから知り合いでも不思議は無い。

「で、何でお前がここに居るんだ。フック・カーン中尉、いや大尉。」

「小官の実家がテルヌーゼンにあるので、里帰りですよ。」

いつの間にか俺達一行に、俺の副官のフック・カーン大尉が紛れ込んでいた。

まあ、どうでもいい事だ。








その後、俺達は無事にテルヌーゼンの空港に到着した。

一応、飛行機の中でヤン御一行に

「空港でマスコミが待ち受けているかも?」って言って置いた。

事前に知って置けば、覚悟も出来る。

どっかの神父も『覚悟こそ幸福だ』って言っていたし。

飛行機を降りて空港の中に行くと

カメラを持ったマスコミ陣が大勢いた。


「お見えになったわ。」

「居た、あの方だ。」

「予定通りだ。」


ワラワラと寄って来る。まるで砂糖に群がるアリの様だ。

仕方ない、手ぐらい振ってやるか。

と、サービス精神で俺は手を振ったが


「誰だ?あの手を振ってるヤツは。」

「邪魔だ、アイツ。」

「どっかで見た事ある顔だな。誰だっけ?」

「きっと、ヤン提督の副官ですよ。」


・・・嫌いだ。マスコミなんて大嫌いだ。

俺は悪意の無い刃に胸を貫かれうな垂れていると

「元気だして下さい。」

アメークちゃんが声を掛けてくれた。

よし、頑張ろう。ガッツを取り戻す俺。

そこに、マスコミを掻き分け・・

いや、押し退けの方が正しいか。

マスコミを押し退けてやって来る人物がいた。

あいつが、某代議員候補だな。

よし、やるか。

俺は近づいて来る某代議員候補の前に進み出ると

先制の一撃を加えようとした。

簡単だ。

挨拶ついでに

(我々は軍人です。ですから、特定の代議員候補を応援する事はしません。)

と、マスコミの前で釘を刺して置けば問題ない。

しかし、現実は違った。

まさか、あんな事になるなんて

この時の俺には、想像も出来なかった。













某代議員候補は近づいて行った俺に只一言

「誰だね、君は?邪魔だ、退きたまえ。」と呟くと

俺を押し退ける様に・・・・・

いや、突き飛ばすようにと表現するのが正しいか。

某代議員候補は俺を突き飛ばすと

ヤン提督の方に近づこうと移動を開始した。



[        俺の心の中

 目的の人物(ヤン)まで後少しの所に

 急に訳の判らない人物(俺)が割り込んで来た。

 ついイラっとして突き飛ばして仕舞ったのは何となく判る。

 だが、『判る事』と『許せる事』は

 別の事だ。

 奴の一言『誰だね、君は?』この一言は

 先ほど、マスコミ陣によって付けられた俺の心の傷を抉り取った。

 この時、俺の心の中は悲しみや惨めさでは無く

 真っ赤な怒りの炎で染まった。

 代議員候補、お前は俺の心を裏切った。

 吐き気を催す邪悪、ゆるさねぇ、絶対。

 有権者はいつも黙って政治家に殴られるのを待っていると思っているのなら

 大間違いだ。                             ]      

 
 ↑この間、約0.2秒  





某代議員候補に突き飛ばされた俺は

大げさに声を上げると

自分から吹っ飛んだ。

「うわぁ!!」

ちょっと、嘘くさい悲鳴だったか?

その場にいた全員の視線が俺に集中する。

ラップ大佐とフック・カーン大尉と三姉妹は俺の演技に気付いた様だ。

ほんの一瞬だけ、唇を緩めると

俺の演技に悪乗りして来た。

「提督!!大丈夫ですか!!ペトルーシャ・イースト中将閣下!!」

「負傷したのは俺だ、貴官では無い。

 副官の任務に『上官に代わって悲鳴を上げる』と云うのは無かったハズだが・・・。ガクッ」

俺は駆けつけて来た副官に格好良く返すと気を失ったふりをした。

「ペトルーシャ・イースト提督、大丈夫ですか?

 フック・カーン大尉、貴官はヤン・ウェンリー提督を守れ。」

「了解しました!!」 

ラップ大佐もフック・カーン大尉も、そんなに大声で人の名前を呼ばないでくれ。

呆然としている、某代議員候補とその取り巻き達。

マスコミ陣も驚いているが

カメラを持つ手は動き続けている。流石、プロフェッショナルだ。その点は素直に尊敬する。


「あれはペトルーシャ・イースト提督だ。」

「何、あの『第3次ティアマト会戦の英雄』か。」

「本当だ。」

「大変だ。トリアチ代議員候補がイースト提督に襲い掛かったぞ。」


俺の正体に気付き、騒ぎ出すマスコミ陣、唖然とし必死にこの場を取り繕おうとする代議員候補。

ただただ、呆けているヤン・ウェンリーとユリアン・ミンツ。

そして


「お父さん、死なないで!!」

「パパァ!!」

「ペドのお兄ちゃん!!」


倒れた状態で気を失っている(フリ)の俺にすがり付いて泣いている三姉妹。

凄いね、君達。

将来、女優になれるよ。主演女優賞も夢じゃないね。

って、『ペド』じゃなくて『ペト』だ。

人を危険人物の様にいうな。




ちょっと、ふざけ過ぎたかもしれない

マジ、ヤバイ。

現場は騒然としている。

この雰囲気は  

「実は嘘でした(笑)」

なんて、言える状態ではない。

結局俺は、そのまま気を失ったふりをし続け

駆けつけた救急隊に運ばれる事になった。











運ばれた病院で精密検査を受けた為に

結構時間がかかってしまった。

検査結果、後頭部を強打しコブを作った程度。

「退院して問題無い」by医者

だったのでホテルに向う事にした。

検査に時間がかかりそうだったので

三姉妹はラップに送って貰って

ホテルに返した。

病院のテレビや俺の携帯端末では


「レイモンド・トリアチ代議員候補。ペトルーシャ・イースト提督を襲撃!?」

「テルヌーゼン空港、白昼の惨劇!!あわや、ヤン・ウェンリー中将も被害者に!?」


などと凄い事になっている。

他にも、現場を見ていたと言う人が

インタビューに答え


「トリアチ代議員候補が、行き成りイースト提督に襲い掛かったんです。」

「最初はヤン提督を標的にしていたみたいです。でも、イースト提督が庇う様に立ち塞がって。」

「軍人に何か恨みでもあったんでしょうか?」


皆、好き勝手に言ってる。

本当にとんでもない事になってしまった。

今なら言える。御免なさい。

俺は心の中で名前も知らない代議員候補に謝った。

でも、アスターテで父親が死んだ女の子を

政治ショーの道具にしようとした奴だから

バチが当たったんだな。と、心の中で言い訳をして

自分の中にある罪悪感を消し去ろうとした。

ちなみに、検査前に

「何故あんな嘘泣きをしたのか?」と

三姉妹に訊ねたら

「提督の事を馬鹿にしていたので腹が立ったから」by三姉妹

と答えてくれた。

俺は泣きそうになりながら

三姉妹の今は亡き両親に

『皆、いい子に育ってます。』

と、心の中で報告した。

あ、訂正。

カリンの両親はまだ生きてたな。

少し、反省する俺。

テルヌーゼンの夜はまだ長い。







・・・・つづく




次回も選挙編です。
長くなって申し訳ありません。






[13584] 第十六話 グラップラー・ペト 
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/02/07 19:22

第十六話 グラップラー・ペト 






今日は色々な事があった。

俺は頭の中の整理をつける為に

ホテルの少し手前で地上車を降り

軽い散歩をしていた。

決して三姉妹やヤン、ユリアン達と顔を会わせ難いからでは無い。

だが、これがいけなかった。

この散歩が原因で

またしても、トラブルに首を突っ込む事になってしまった。



散歩をしている俺の耳に

路地裏方から

人の争うような声が聞こえて来た。

で、興味本位で覗いて見たら

六人の憂国騎士団と

そいつ等に殴る蹴るの暴行を受けている男性が二人ほどいた。

流石に無視は出来ないな。

銃は・・・、ホテルの荷物の中だ。

仕方ない、素手でやるか。


「お前ら!!何をしている!!」


取り合えず、俺は大声で威嚇してみた。


「しまった、見られたぞ。」

「相手は一人だ。」

「かまわない、アイツもやっちまえ。」


俺の方に近づいてくる憂国騎士団、

あれぇ?何で?ヤンの時はすぐに逃げてなかったけ?

などと考えていたら余計な事を考えていたら

襲い掛かられた。



いてぇな、この野郎。

親父にはぶたれた事無いのに。(爺さんにはあります。)

一応、防御しているので致命傷はもらってないが

流石に六対一では分が悪い。

仕方ない、あれを使うか。

俺は脇と股を絞め、全身の間接を固定する様に構えた。

これぞ、『三戦立ち(さんちんだち)』だ。

達人にもなると、睾丸を腹部に移動して守る事も出来る

究極の防御の構えだ。

鉄壁、ゆえに無敵。

三戦立ちを構え、顔には不敵な笑みを浮かべる俺に

憂国騎士団の連中は戸惑う。


「何だ?あのポーズは。」

「あれは、『カルゥァーテ』だ!!」

「何、あれが『カルゥァーテ』。始めて見た。」

「知ってるぞ、『カルゥァーテ』の達人は

 2メートル以内にいる敵を、一度に4人までは殺せるぞ。」

「本当か!!」

「嘘だろ!!」

「いや、それだけではない。100人の敵と一度に戦えるらしい。」

「100人!!」

「馬鹿な、どうやって戦うのだ。」

「よく分からないが、達人からすれば

 4人も100人も同じらしい。」


何言ってんだ、こいつ等?

途端に、俺から距離を取り始める憂国騎士団。


「退け、退け。」


やがて、蜘蛛の子を散らす様に逃げ出した。

一体何なんだ?あいつ等。

・・・・・まあ、考えても仕方ない。

元々、頭のオカシイ奴らだ。

一々気にしていても仕様が無い。

そんな事より、倒れている二人を何とかする方が先だ。

俺は憂国騎士団の連中に襲われて倒れている二人に近づく

一人は辛うじて意識を保っていたが

俺に「『反戦市民連合の本部』に連れてって欲しい」と告げると

すぐに気を失ってしまった。

見捨てて行くのも後味が悪いし

乗りかかった船だ。

俺は丁度走って来た、無人タクシーを止めると

気を失っている二人を無人タクシーに放り込み

俺もそれに乗り込むと

無人タクシーを『反戦市民連合の本部』へ発進させた。

どうやら、襲われていた二人は反戦市民連合に所属しているらしい。

この二人は、例のトリアチ代議員『候補』(今日の空港での人)の

対立候補のゾンダーク代議員候補の関係者って事か。

対立候補の関係者を憂国騎士団を使って襲わせるとは

トリアチ代議員『候補』め、なんて酷い奴なんだ。

それにしても、自動で目的地に向ってくれる無人タクシーは便利だな。

 


※憂国騎士団について

憂国騎士団とは、同盟政府内の主戦論者と繋がりのある国家主義者の集団である。

反国家的及び反戦的な言動を暴力によって弾圧している

全員、変なマスクを付けている。










目的地の反戦市民連合の本部に到着した俺は

そこで、意外な人物と再開した。

一人はジェシカ・エドワーズ、いやジャン・ロベール・ラップと結婚したから

ジェシカ・ラップになるのか?

もう一人の人物はヤン・ウェンリー提督だ。

車から降りた俺は二人に声をかけた。

「やあ、お二人さん。こんな所で密会か?旦那さんには黙っていてやろうか?」

「イースト提督!!どうしたんです、その格好は!?」

「イーストさん!?早く手当てをしないと。」

俺の悪質な冗談にはまったく反応しないお二人さん。

そりゃそうだろ。

今の俺の姿を見れば、当然そうなる。

服は所々やぶれて、顔の一部は腫れてるし、

頭からしている出血が俺の顔をペインティングしてる。

「ちょっと、サーカス団に襲撃されてね。」

駆け寄ってきて、ハンカチで俺の血を拭おうとしているジェシカを制すると

俺は二人に話し掛けた。

「俺より重症の奴が二人ほど車の中にいる。

 手当てはそっちの方を優先してくれ。」

俺とヤンが気を失っている二人を担いで

反戦市民連合の本部内に連れて行った。

二人を移動し終わった俺は

ヤンに問いかけた。

「で、お前さんは何でここにいるんだ?」

「私も同じ様なものです。偶然、憂国騎士団に襲われていた運動員を助けてここまで連れて来のですが・・・。

 もっとも、私は襲われずに済みましたが。」

「憂国騎士団の連中も有名人の顔は覚えていたって事かな?」

「誰の所為ですか、まったく。」

「で、ジェシカさんは、何故ここに居るんだ?」

「・・・ジェシカは、ここの運動員なんです。

 その、ジェームズ・ソーンダイク代議員候補の選挙活動を手伝っている様で・・・。」

「なるほど、俺はてっきり二人で密会していた所

 偶然、憂国騎士団に襲われていた運動員を保護したのかと思った。」

「何を言ってるんですか!!まったく・・・・・。

 その・・。」

「何だ?何か言い難そうな事があるのか?」

「・・・ジェシカの事なんですが・・・。」

「つまり、参謀の奥さんが反戦運動してる事のついて

 何か、思う所は無いのか?って事か?」

「・・はい、そんな所です。」

「特に無いな、様々な価値観の共存が民主共和制だからな。

 それに、好戦的な人間は充分過ぎるほど居る。

 だから、もう少し好戦的で無い奴が多くても俺はいいと思うけどな。」

「そうですか。」

ホッとした表情のヤン。

えっと、ゾンダークじゃ無くて、ジェームズ・ソーンダイクか。

俺は対立候補さんの名前を頭にインプットする。



それはそうと、いつまでもこうしている訳にはいかない。

俺は席を立ったその時

一人の人物が俺に近づいてきた。

「始めまして、ジェームズ・ソーンダイクです。

 イースト中将、ウチ運動員を体を張って救ってくれたそうだね。

 彼らに代わって礼を言おう。」

「いえ、礼を言われるほどの事ではありません。

 それより、憂国騎士団の事ですが、連中がここを襲撃するかも知れませんし

 ここを標的とした爆弾テロなんてのもあるかも知れません。充分にお気を付け下さい。」

「判りました。気を付けるとしましょう。」

どうやら、この人物がトリアチ代議員『候補』の対立候補の

ジェームズ・ソーンダイクさんらしい。

礼儀正しい好人物だ。

一応、憂国騎士団に気を付ける様に警告しておいた。

俺とヤンはジェシカさんに別れを告げると

ホテルに向う事にした。

反戦市民連合の本部を出ると

怪しい奴ら(憂国騎士団)と遭遇した。

まさか、こいつ等ここを爆破しに来たのか?

俺が行動を起すより先に


「あいつは、さっきの達人だ!!」

「何!?本当か?」

「クソッ、反戦市民連合の奴ら達人を雇ったな。」

「如何する?」

「達人相手では敵わない。退却だ。」


憂国騎士団の連中は逃げていった。


「・・・何だったんだ?いったい。」


ぽつりと呟くヤン提督。

本当に何なんだ?あいつらは。

・・・・今日はもう疲れた。

帰って寝よう。

しかし、そんな俺の思惑を打ち砕く出来事が

この後、二つもあった。

一つはホテルの前で待ち構えていたマスコミである。

マスコミに気付かれる前にヤン提督と分かれたのだが

奴らはヤンには気付かないのに俺には気付きやがった。

お陰で色々と質問攻めに会った。


Q「その怪我は如何したんですか?」

A「憂国騎士団に襲われました。」

Q「その事とテルヌーゼン空港での事件の関連性はあるんですか?」

A「分かりません。皆さんで調べてください。」

Q「何故、襲われたのですか?」

A「分かりません。」


俺は歩きながら短く答え、ホテルの中に逃げ込んだ。

しかし、逃げ込んだホテルの中も安全ではなかった。

俺は自分の部屋に入ると

そこで待ち構えていた三姉妹に捕まってしまった。

『血まみれペト』になって帰ってきた俺を

三姉妹はそれぞれのやり方で迎えた。

アメークは無言で救急セットを持ってくると

無言で無表情のまま、俺の手当てを開始した。

・・・・これは、相当怒ってるな。

カリンは俺に説教を始めた。

「保護者の自覚が足りない」とか「自重して下さい」など

延々と俺に説教をしている。

ベルナデッドは泣きそうな顔で

俺をジッと見つめ続けている。

正直、これが一番堪える。

俺には三姉妹にひたすら謝り続けるしか選択肢が残されていなかった。

「所で、何でこの部屋にいるの?君達の部屋は隣でしょ?」

「ヤン提督から連絡がありました。」

おのれ、ヤン・ウェンリー。






翌日のトップニュースは


「ペトルーシャ・イースト提督、またも襲撃に遭う!!」

「今度は憂国騎士団に襲撃される!!背後にはトリアチ代議員候補か!?」

「何故、ペトルーシャ・イースト提督は命を狙われるのか?」


全部、俺の襲撃に関する事だった。

血まみれでホテルに帰ってきた俺が質問攻めに遭っているシーンが何度も(六時、七時、八時のニュース等)

放送され続けている。

ちなみに、このニュースのお陰で士官学校の記念式典には

「出席しなくても良い」

とありがたいお達しがあったので

サボる事にした。

一人で記念式典に出かけて行くヤンを

笑顔で見送った後

ラップとジェシカさんがウチの三姉妹とユリアンを引き連れて

市内観光をするらしいので

一緒に行こうとしたのだが

三姉妹の鋭い眼光に射抜かれた俺は

ホテルの部屋で惰眠をむさぼる事にしました。









その後、しばらくの間

憂国騎士団の内部では、

反戦市民連合には達人がいる。

命が惜しければ反戦市民連合には近づくな。

と、囁かれる様になった。






選挙の結果について

元々、ジェームズ・ソーンダイク候補が優勢だったが

一連の事件で更に優勢になり

無事に当選を果たした。








・・・・つづく


次回からはアムリッツァ編に突入出来ればいいなと思っています。







[13584] 第十七話 ダブル・ブッキング
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2009/12/30 20:24



第十七話 ダブル・ブッキング 






俺は基本的には規則正しい生活を志している。

俺がだらしないと三姉妹に悪い影響が出てしまうからだ。

毎朝、同じ時間に起き

同じ時間に家を出発する。

軍人で無くても

いや、社会人として遅刻は最低だと俺は思う。

だが、今現在、俺は必死に走っている。

今朝、いつも通りの時間に家を出たのだが

大規模な交通渋滞に巻き込まれた。

制御センターのコンピューターに

間違ったデータを入力した為に起こった渋滞らしい。

統合作戦本部に渋滞に巻き込まれた事を連絡した所

「近くの市民公園にヘリを向かわせたので

 それに乗って来て欲しい」

との事だった。

だが、その市民公園に到着した時に俺が目撃したのは

無慈悲にも俺の目の前から飛び立って行くヘリコプターであった。

俺の必死な叫び声はヘリのローター音にかき消された。

一人公園に取り残された俺に

周りの人々の哀れみの視線が集中する。

俺は何とかその場を取り繕う為に

軍用ベレーを右手に持ち、それを盛大に振って

如何にも見送りに来た人らしさを演出した。








今現在、俺は必死に走っている。

あの後、統合作戦本部に連絡した所

俺を置いていったヘリには

シトレ元帥、ヤン・ウェンリー、アレックス・キャゼルヌ、

そして、財務委員長のジョアン・レベロ議員が乗っているらしい。

ヤンやキャゼルヌ位なら、ヘリを呼び戻しても良かったのだが

流石に、元帥や財務委員長が乗っているヘリを呼び戻す訳には行かない。

別のヘリが無いのかと問い合わせた所、

近くの別の公園に向っているヘリがあるので

そっちに乗って来て欲しいとの事だった。

なので、俺はその公園に向い

必死に走っている所だ。

風だ、俺は風になる。









必死に走ったお陰で

俺が公園に着いた時

ヘリはまだ公園にいた。

しかし、今にも飛び立ちそうな雰囲気だ。

「そのヘリ、ちょっと待った!!」

あのヘリに乗らなくては遅刻してしまう。

なんとしても、乗らなくては。

大声を張り上げ、全力で走り

ヘリに飛び乗る。

やった。

やったぞ。

間に合った。

無事に乗れた。

俺は感動に打ち震える。

しかし、そんな俺に声がかかった。

どうやら、このヘリには先客がいた様だ。


「やあ、おはよう。

 久しぶりだね。ペトルーシャ・イースト提督。」

「・・・・・・おはよう御座います。国防委員長閣下。」








・・・・乗らなきゃ良かった。










「先日は酷い目に会ったそうだね。

 キズの方はどうだい?」

「はっ。国防委員長閣下のお陰を持ちまして

 良好であります。」


狭い機内で、あのヨブ・トリューニヒトと二人っきりになってしまった。

例によって、俺も国防委員長の事は好きではない。

だが、あまり表立ってそれを現しては拙い。

ヨブ・トリューニヒトは裏で憂国騎士団と繋がっていると噂されている。

俺一人がヨブ・トリューニヒトにマークされるなら

問題ないのだが

ウチには三姉妹がいる。

原作のヤンの様に家を襲撃されたら拙い。

それに、先日のテルヌーゼンでの事もある。

今思うとあれは拙かった。

現在俺は反省中だ。


「ははは、そんなに硬くなる事は無いよ。」

「恐縮であります。」


とにかく、今はコイツの機嫌を取らねばならない。

最初の内は、他愛の無い世間話で済んでいたのだが

やがて話題は、

最近、軍部から提出された『大規模な帝国領出兵案』についての事に移っていった。

流石に、軍事に関する話題については

正直に話さないと拙いと思った俺は

自分の心の内を正直に話す事にした。


「では、君は今回の出兵には反対なんだね?」

「はい、その通りです。小官は軍人ですので

 『行け』、と言われれば何処にでも行きます。

 しかし、現時点での大規模出兵については反対です。」

「・・・現時点という事は時期が来れば賛成、という事で良いのかな?

 出来れば、その時期とやらについて、もう少し詳しく話してくれないかな?」

「例えば、現在の銀河帝国の皇帝は高齢です。

 その皇帝が死んだ時、後継者を決める事で揉めるハズです。

 下手をすれば内乱が起きる事もあります。

 その時がチャンスだと考えます。」

「・・ふむ、なるほど。」


一応、有能で使える人物だという事もアピールして置く為

ペラペラと喋る俺。

この大規模な帝国領への出兵案。

アンドリュー・フォーク准将が私的なルートを通じて

最高評議会に提出した作戦だ。

確か今日、最高評議会で

作戦の是非を決定するハズだ。

恐らく、可決されるだろうが・・・・。

そうしている間に、

ヘリが最高評議会ビルの屋上に到着した。


「中々、有意義な時間を過ごせたよ。イースト提督。」


俺は、足早に去っていくトリューニヒトを敬礼で見送る。

姿が視えなくなると一気に体中の力が抜け

イスに座り込む。

本当に疲れた。

一日中の仕事をした様な気になって来た。

もう、家に帰りたい。

そんな、俺の気持ちとは裏腹に

ヘリは統合作戦本部に向って飛び立った。

ヘリの外を見ると

同盟建国の父と云われている『アーレ・ハイネセン』の

巨大な像が目の前に見えた。


「・・・俺も泣きたいよ。」


外を見ながらポツリと呟いた俺の独り言は

誰の耳にも届かずに消えていった。












つづく・・・・。


恐らくアムリッツァ出兵は採択されてしまうと思います。どうしよう・・。










[13584] 第十八話 憎まれっ子の魂は、留め置かまし、ハイネセン・スピリット 
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2009/12/31 23:56



第十八話 憎まれっ子の魂は、留め置かまし、ハイネセン・スピリット 






その日、最高評議会では

最高評議会議長を初めとする

各分野の長である計11名が集まり

一つの議題が決議されようとしていた。


「最高評議会を開会します。今日の議題は例の軍部から提出された

 帝国領への出兵案の可否についてですが。」

「議長。」

「ジョアン・レベロ君」


最高評議会の開会を宣言した議長に対し

まず、財務委員長のジョアン・レベロ議員が発言を求め、議長が発言を許可する。


「財務委員長として一言申し上げたい。妙な表現になりますが、

 今日まで銀河帝国と我が同盟とは、財政の辛うじて許容する範囲で戦争を継続して来たのです。

 ですが、それも最早過去の話となりました。」

「どう云う事ですかな?」

「このうえ、戦火が拡大すれば国家財政とそれを支える経済が破綻するという事です。」

「紙幣の発行高を増やすと云うのはどうかな?」

「財政の裏づけも無しにですか?何年か先には紙幣の額面では無く、

 重さで商品が売買されるようになりますよ。

 歴史的インフレーション時代の無能な財政家として、後世に汚名を残すのは御免こうむりたいですな。」

「しかし、戦争に勝たねば何年か先どころか明日も無いのだよ。」

「では、戦争そのものを止めるべきでしょう。

 ヤン中将のお陰で我々はイゼルローン要塞を獲得し、帝国軍は我が同盟に対する侵略の拠点を失ったのです。

 今こそ有利な条件で講和条約を締結する好機と言えるでしょう。違いますかな?」

「おいおい、あまりやり過ぎるなよ。」


同盟の経済状態を理由に銀河帝国との講和を口にするジョアン・レベロ議員と

それを心配する様に声を掛ける人的資源委員長のホアン・ルイ議員。

そこに、講和に否定的な別の議員が発言する。


「財務委員長はそうおっしゃるが、これは絶対君主制に対する正義の戦争なのだ。

 不経済だからと言って止めても良いものだろうか?」

「私もそう思う。経済的な問題は内政努力で何とかなるはずだ。」

「人的資源委員長として言わせて貰うと、経済はともかく人材の問題は最早どうにもならない所に来ている。

 優秀な人材が軍事方面に偏りすぎている。民間には老人や若年者しかいない。

 このままでは同盟の社会構造はガタガタになってしまう。

 戦争どころではない。」

「あんたも中々言うじゃないか。」

「まあね。」




            ・

            ・    

            ・

            ・

            ・

            ・

            ・

            ・





だが、財務委員長のジョアン・レベロ議員、人的資源委員のホアン・ルイ議員

この二名の抵抗も空しく、最終的には多数決により

帝国領への出兵案な可決されてしまった。

結局、出兵に反対だった議員はジョアン・レベロ議員とホアン・ルイ議員。

そして国防委員長のヨブ・トリューニヒト議員の三名だった。

それ以外の八名が出兵に賛成であり

賛成理由が

『この作戦で帝国軍に勝てば支持率が15%上昇する』

と云う政権の維持を理由とした

戦略的意義が存在しない無謀な出兵であった。
















俺には幾つかの渾名がある。

その一つで、一番付き合いが長い渾名が

『ぼやきのペトルーシャ』である。

最近は『食堂の死神』、『カフェのファントム』

呼ばれる機会が多く

心無い奴は『妖怪』などと呼んでいた。

しかし、近頃は改めて『ぼやきのペトルーシャ』と呼ばれるようになって来た。

その原因が、例の『大規模な帝国領への出兵』に対するぼやきであった。

ヤンにキャゼルヌ、パエッタ提督にウランフ提督にビュコック提督、

更にはアッテンボローにフック・カーン、ラップにシェーンコップ、

ポプランにコーネフといった面識のある連中に見境無くぼやいた事が原因だ。





ちなみに、空戦隊のポプランとコーネフは

俺がパエッタ提督の第2艦隊にぼやきに行った時、

たまたま、見かけて声を掛けた。

例によって


「次の戦いはどっちが勝つ?こっちが味方の同盟軍でこっちが敵の帝国軍。」byポプラン


と、『次の戦いでどっちが勝つか』で賭けをしていた所に

俺が出くわしたという訳だ。

俺に気付いて慌てて敬礼する空戦隊の面々だったが


「閣下も一口如何ですか?」


と、ポプランが冗談を口にしたのだが、

空かさず俺は


「帝国軍に1000ディナール。」


帝国軍の方に金を掛けた。

この時の空戦隊の面々の顔は

まるで鳩が豆鉄砲を食らった様な顔をしていた。

あれは、傑作だったな。



(※ちなみに、このすぐ後から第2艦隊の空戦隊の面々が

  急に真面目に・・・いや、死神にでも追い掛けられている様な勢いで

  訓練に励みだした事は、彼ら以外は知らない。)



そんなこんなで、暇があればぼやいている俺の所に

最高評議会で出兵案が可決された事と

グリーンヒル総参謀長が俺を呼んでいる事が同時に伝えられた時

俺のぼやきゲージはMAXだった。

今の俺に触れると線香花火が炸裂するぜ。















帝国領への出兵案可決の知らせと同時に

グリーンヒル総参謀長が呼んでいる事を

自らの副官に告げられたヤン・ウェンリーが

ドワイト・グリーンヒル総参謀長の執務室に入室した時

室内には面識の無い先客が一人いた。

服装から軍人だと分かるが

その人物は入室して来たヤンの方には目もくれずにテレビを見ていた。

グリーンヒル大将からイスに座るように促され

ヤンは無言でイスに座りテレビに目を向けた。

テレビでは、インタビューを受けている国防委員長のヨブ・トリューニヒトが

自分が今回の出兵には反対である事を強調していた。

ヤンは面識の無い先客がいささか不機嫌そうに

テレビを見ている様に感じた。

そのトリューニヒトに対し

グリーンヒル総参謀長が意見を述べた。


「役者だな。トリューニヒト委員長は」

「ええ。でも、この判断は正しいでしょうね。この時期の出兵、勝てると思う方が可笑しいでしょう。」

「何ですと!!」


自分の横に座っている見知らぬ人物が突然声を荒げる。

困惑気味に相手に名を尋ねるヤン。


「ええと、失礼だが貴官は?」

「アンドリュー・フォーク准将です。」

「フォーク准将・・?」

「ヤン中将、今回の出兵案を作成したのはここにいるフォーク准将なのだ。」

「ああ、それは・・。」


『アンドリュー・フォーク』その名を本人から聞かされても

ヤンにはこれと言った心当たりは無かった。

相変わらず、困惑しているヤンに

グリーンヒル総参謀長がフォローを入れ

ヤンはようやくフォーク准将が声を荒げている理由を理解する事ができた。

だが、自分の作戦を貶されたと感じたフォーク准将は

ヤンに舌戦を挑み、困惑しているヤンを救う為に

グリーンヒル総参謀長がフォーク准将の退出を促そうとした時


「失礼します、総参謀長閣下!!」


執務室の扉が開き、一人の人物が入室して来た。














「失礼します、総参謀長閣下!!」


俺がグリーンヒル総参謀長閣下の執務室に入ると

ヤンともう一人の人物が議論していた。

もう一人とはアンドリュー・フォーク准将だった。

ちなみに、俺とアンドリュー・フォークは初対面だ。


「声が外まで聞こえてましたが、何かあったんですか?」


ヤンとグリーンヒル総参謀長に尋ねると


「・・その、帝国領への出兵案について少し議論してまして・・。」

「これはこれは、ペトルーシャ・イースト中将。イースト中将は今回の出兵案について

 どのようにお考えですか?」


ヤンが歯切れ悪く答え、アンドリュー・フォークが挑戦的に俺に質問してきた。(多分、俺のぼやきが耳に届いたのかな?)

この時、挑戦的な態度が俺の中のぼやきゲージをブレイクさせたのだが

俺は悪くない。全部フォークが悪いのだ。

俺は正直に答える事にした。


「小官としては反対です。この時期の出兵に勝てると思う方が可笑しいですね。

 この作戦を立案した人物は、余程の阿呆か馬鹿か、

 あるいは帝国からのスパイかも知れませんね。」


「なっ!!」


あまりの事に言葉を失うフォーク准将。

グリーンヒル総参謀長も驚いている。

ヤンは何か必死に俺に訴えるような顔をしている。

全然わかんねーよ、

分からない事は無視する。


「まあ、馬鹿とハサミは使いようと言いますけど

 この馬鹿は使えない馬鹿ですね。

 ・・おや?どうかしましたか?顔が赤いですよ。

 すぐカッとなるようでしたら、カルシウム不足ですよ。

 軍人は常に冷静でないといけません。(どの口が言う)

 カルシウムは牛乳や小魚、チキンの骨、貝殻、

 後は・・・・『タマゴの殻』に含まれてます。定期的に摂取した方が良いと思いますよ。」

「タマゴの・・・殻・・。」

「・・イースト中将、実は今回の作戦は・「知ってます。」・・・え?・・。」


顔色が赤から蒼白になるフォーク准将。

グリーンヒル総参謀長がフォローの為に

俺にフォーク准将の紹介をしようとしたのだが

俺がそれを遮った。(まだ、俺のぼやきブレイクは終了してないぜ)


「知ってます。今回の帝国領への出兵案を立案したアンドリュー・フォーク准将ですね。

 始めまして。ペトルーシャ・イースト中将です。

 まあ、地図に線を引くだけなら幼児にも出来ますしね。」




      『オーバーキル』



その時、突然フォーク准将が白目を剥き倒れた。

倒れたフォーク准将は痙攣をしている。

俺のブレイクタイムは終了した。

今はただ目の前で痙攣しているフォーク准将を

見ながら呆然としている。

いや、びびるってコレは。

ヤンもグリーンヒル総参謀長も

あまりの出来事に固まっている。

このままにして置くのも不味いので

俺とヤンは再起動を果たすと

軍医を呼んだ。

最初はヤンと二人で帰ろうと思ったのだが

執務室にこんな不快な置物を残されたら

幾ら温厚なグリーンヒル総参謀長でも


「私は穏健派って言われているけど、空気読め!!」と


お怒りになろう事うけあいである。

とりあえず、俺達三人は駆けつけて来る軍医に

事後処理の全てを押付ける事で(心の中での)意見が一致していた。(全員無言だったが、俺にはわかる)

誰も何も言わず、イスに座って

テレビのトリューニヒト委員長に意識を向けていた。



「あっ、そういえば、この前トリューニヒト委員長と偶然、顔を合わせて。

 凄く緊張しましたよ。」

「そうか。それは災難だったね。」

「委員長と言えば、財務委員長がシドニー・シトレ元帥と幼馴染だったそうですよ。」

「へぇー、校長先生がね。」

「そういえば、君は知ってるかね。ヤン中将の副官は私の娘でね。」

「はい、存じております。士官学校で次席だったそうで、

 大変優秀だと聞いております。お陰でヤン中将も随分楽をしているそうで・・・。」

「ははは、そうなのかね?ヤン中将。」

「はい。大変優秀なお嬢さんで、楽をさせて貰ってます。」

「次席と言えば、私も士官学校では次席でした。後、キャゼルヌ少将と同期で。」

「ほお、そうなのかね。」

「はい、士官学校の在籍中に論文を書いて一流企業からスカウトが来てましたよ。」

「キャゼルヌ先輩は昔から優秀だったんですね。」

「同期と言えば、私の祖父は730年マフィアと士官学校の同期だったそうで。」

「それは本当かね!?」


俺達は軍医が到着するまで

まるで、深夜のファミレスにいる若者の様に

意味の無い会話を続けていた。









・・・・・・・つづく








[13584] 第十九話 自業自得?損?
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/01/02 09:08


第十九話 自業自得?損? 






ドワイト・グリーンヒル総参謀長の執務室で

卒倒したアンドリュー・フォーク准将。

彼を診察した軍医によると

ヒステリーとの診断だった。


「治すためには敵も味方もフォークの望みをすべてかなえて彼を満足させる必要がある。」by軍医


この診断をグリーンヒル総参謀長、及びヤン・ウェンリーと一緒に聞いていた俺は


「帝国軍にお願いしてみますか?諸事情を話し・・・。

 選挙の為と作戦参謀の自尊心を満たす為に負けたフリをして下さい。お願いしますって。」


と、提案したがグリーンヒル総参謀長と軍医殿の判断で

アンドリュー・フォーク准将は病気療養で予備役になってしまいました。(めでたし、めでたし)











フォーク予備役准将に対する処置が済むと

俺とヤンは、グリーンヒル総参謀長に向き直り

何故執務室に俺達が呼ばれたのか尋ねた。

グリーンヒル総参謀長によると、今回の出兵に先立って

第1艦隊司令官のクブルスリー中将が大将に昇進し

第1艦隊司令官から宇宙艦隊総参謀長に栄転する事が決まったそうだ。

そして、第2艦隊司令官のパエッタ中将が

空白になった第1艦隊司令官に移動。

第2艦隊は解散し、それぞれ第11艦隊と第13艦隊に割り振られる事になったそうだ。

原因は俺がもうすぐ大将になるかららしい。

はっきり言って、俺は一部の上層部の連中に受けが悪い。

特にロボス元帥には嫌われていると思う。

なので、俺が大将になり

艦隊司令官からその他の要職に昇進するより先に

適当な奴を昇進させて一つでも役職を確保しておこうと云う事だと思う。

特に今回の出兵では、成功しようが失敗しようが、席が一つ空く予定になっている。

統合作戦本部長のシドニー・シトレ元帥は

出兵が成功した場合は勇退、失敗した場合は引責辞任と云う形で退役し

宇宙艦隊司令長官のロボス元帥に統合作戦本部長の地位を譲る事になるらしい。






 
         現在の同盟軍偉い順番


№1 統合作戦本部長     シドニー・シトレ元帥


№2 宇宙艦隊司令長官    ラザール・ロボス元帥


№3 統合作戦本部次長    ドワイト・グリーンヒル大将



現在は、こんな感じ

グリーンヒル大将にいたっては統合作戦本部次長の他に宇宙艦隊総参謀長も兼任しているので

その一つをクブルスリー大将におすそ分けするという事らしい。






       出兵作戦終了後の同盟軍偉い順番(予定)


№1 統合作戦本部長     ラザール・ロボス元帥


№2 宇宙艦隊司令長官    ドワイト・グリーンヒル元帥


№3 統合作戦本部次長    クブルスリー大将



で、将来はこんな感じにするらしい。

こういうのを順送り人事の員数合わせって言うのか?

まあ、こんな事を考えるより先に

俺にはやるべき事が出来たので

そっちを優先する事にした。

旧第2艦隊から第11艦隊に約4000隻が編入される。

なので、艦隊の再編や新しい分艦隊司令官を決めないといけない。

そうだな。

アイツにやらせて見るか。

俺は艦隊の再編の事を考えながら

グリーンヒル大将の執務室を後にした。













「今回、色々あって第2艦隊が解散する事になった。

 それに伴って、我が第11艦隊に約4000隻が新たに加わる事になった。

 で、新たに必要になった分艦隊司令官の席の一つを貴官に勤めてもらいたい。

 マルコム・ワイドボーン少将。」

「はっ、光栄であります。」

俺の目の前にいる人物はマルコム・ワイドボーン少将。

銀河英雄伝説の二人の主人公であるヤン・ウェンリーとラインハルト・フォン・ローエングラムの双方に負けた唯一の人物である。

ヤンとは士官学校の同期で、その時の戦略戦術シミュレーションで負けた。(敗因は補給を無視して果敢にヤンを攻め立てた所為で物資不足になった為。)

原作では第6次イゼルローン攻防戦でラインハルトにやられて戦死している人物なのだが

何故か生きている。

第11艦隊に初めて配属されて来た時に

思わず、「生きてたの?」って聞いてしまった。

この時、ワイドボーンから

「はっ、閣下のお陰を持ちまして。」

と、返答され困惑したのはいい思い出だ。

後になって調べて分かったのだが

どうやら、第6次イゼルローン攻防戦で俺が偶然に命を救ったらしい。








第6次イゼルローン攻防戦時に、少将になったばかりの俺は

2000隻ほどの分艦隊の指揮を任されていた。

この戦いで帝国軍にラインハルトが参加し

ウロチョロしている事を知っていた俺は

積極的な攻勢に出ず、周辺宙域をウロチョロし

戦闘中の味方を見つけては援護のために

敵に遠距離からの攻撃を仕掛け、嫌がらせをしていた。

この時、偶々ラインハルトに攻撃されている

ラムゼイ・ワーツ少将が率いているワーツ分艦隊を助け

その結果、ラムゼイ・ワーツ少将の参謀のワイドボーンも一緒に助けていたという事だった。






ちなみに、帝国軍ではペトルーシャ・イーストが率いていた分艦隊を

『小賢しい虻(アブ)』と呼び、忌み嫌っていた。

この戦いの時に、ペトルーシャとラインハルトは

味方よりも敵に評価されていたと云う点に置いては同じだった。

同盟軍がラインハルトの分艦隊を殲滅する為に

作戦を立てたように、帝国軍も虻(ペトルーシャの分艦隊)を殲滅する事に躍起になった。

多くの参謀や提督が虻を駆除する為の作戦を立てたが

結局は、この害虫を捕まえる事は出来なかった。

なぜなら、その害虫は

『虻』ではなく『銀バエ』だったからである。


そして、この戦いには後に第11艦隊司令官になる

ウィレム・ホーランド少将も分艦隊を率いて参加していた。

もし、この時に同盟軍が『自称先覚者』より『銀バエ』を評価していたら

歴史は変わっていたかも知れない。












艦隊の再編については、

大丈夫だと思う。

マルコム・ワイドボーンは士官学校では『10年に一人の逸材』と呼ばれていたくらいだし

俺はそんなに心配はしていない。

人柄も、そんなに酷いとは思わない。

以前、俺の前では猫を被っているのでは?と思い(ヤン曰く、ワイドボーンは同級生や下級生には受けが悪い。俺は一応、上官で先輩に当たる。)

同じく第11艦隊の参謀で、士官学校の同期のジャン・ロベール・ラップにコッソリと尋ねた事があったが


「多少はありますが、以前に比べれば遥かにマシです。

 一度、死に掛けて人生が変わったんじゃないでしょうか?」


との事であった。

なので、今は安心している。

そんな俺の所に、統合作戦本部から一つの通達が届いた。









『本日付でペトルーシャ・イースト中将を

 第11艦隊司令官 兼 帝国領出兵における作戦参謀『代理』に任命する。』



え?何なの?作戦参謀『代理』って

作戦主任参謀の間違いじゃないの?

疑問に思った俺は

キャゼルヌの所に確認しに向った。

本当はグリーンヒル大将の所に行こうと思っていたんだが

こないだの事件の所為で顔を合わせ辛いので今回はキャゼルヌの所にした。








「キャゼルヌ、作戦参謀『代理』って何さ?」


挨拶もそこそこに、陽気に問いかけた俺に対し

処理している書類の山から顔を上げずに俺の問い掛けに答えるキャゼルヌ。


「分かりやすく言うと、フォーク准将を病院送りにした張本人に責任を取らせようと言う事だろうよ。」

「だったら、何故作戦主任参謀じゃないんだ。」

「それは、ロボス元帥がお前さんの事を嫌いだからだ。

 だから、責任は取らせるが地位は与えたくないんだろうよ。」

「ふーん、俺はそんなに嫌われてるのか。」

「当たり前だ、ロボス元帥は自分の優秀な手駒を二人も

 お前さんに潰されたと思っているからな。」

「二人?フォークと・・・誰だ?」

「第11艦隊の前の司令官ウィレム・ホーランド提督だ。」

「なるほど、・・・・優秀な?」

「この際問題なのは、お前さんが優秀と思うかでは無く

 ロボス元帥が優秀と思っていた、という事さ。」

「で、作戦参謀『代理』って結局、何をすればいいんだ?」

「それは知らん。シトレ元帥にでも聞くんだな。」

「そうか、分かった。忙しい所を邪魔したな。」


会話の最中に一度も此方を見ずに、書類の処理をしているキャゼルヌ。

流石に、これ以上邪魔するのは不味いの思った俺は

キャゼルヌの執務室を後にした。












・・・・・つづく



『虻』と『銀バエ』の違いについて

虻は血を吸うけど、銀バエは排泄物や死骸にたかる。

つまりは、銀バエは危険な事はしないという意味合いで出しました。

けっして、第6次イゼルローン攻防戦で罠にかからなかった主人公が

第6次イゼルローン攻防戦でヤンの罠にかかったラインハルトより優秀だという事では無いです。




そろそろ、タイトルを考えた方が良いですか?






[13584] 第二十話 机上の空論、議場の空論
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/01/07 21:11



第二十話 机上の空論、議場の空論 






俺は幸か不幸か『帝国領への大規模な出兵』に置いての、作戦参謀『代理』に任命されてしまった。

シトレ元帥に「作戦参謀『代理』って、何をすればいいの?」と確認した所、

取り敢えずは、作戦会議の時に病気療養になったフォーク『予備役』准将の代わりに、作戦を説明する役を仰せ付かってしまった。


「遠慮せずに徹底的にやれ。」byシドニー・シトレ元帥


シトレ元帥からの許可が出たので、俺は作戦会議で大暴れしてやる事にした。

この時、俺の頭の中のではミュッケンベルガー元帥が『そうか、ならば徹底的にやれ』と命令している様子と、徹底的にやられて指令席にへたり込むロボス元帥の様子が浮かんでいた。

あれは、第4次ティアマト会戦だったっけ?まあ、俺は参加して無かったけど。
















ついに、待ちに待った作戦会議の日がやって来た。

統合作戦本部内の大会議室に、統合作戦本部長シドニー・シトレ元帥や宇宙艦隊司令長官ラザール・ロボス元帥、

統合作戦本部次長ドワイト・グリーンヒル大将、宇宙艦隊総参謀長クブルスリー大将や

各艦隊の司令官など大量の将官が『帝国領侵攻作戦』について話し合う為に集合していた。

まず、最初にシドニー・シトレ元帥が発言した。


「さて、今回の帝国領への侵攻作戦は、すでに最高評議会によって決定されている。

 先ず部隊編成を後方主任参謀を勤めるキャゼルヌ少将から説明して貰おう。」

「はっ、先ず総司令官は宇宙艦隊司令長官であるラザール・ロボス元帥閣下が勤められます。

 総参謀長クブルスリー大将、作戦参謀コーネフ中将以下五名、情報参謀ビロライネン少将以下三名

 後方参謀は四名、実戦部隊としてビュコック中将の第5艦隊、ホーウッド中将の第7艦隊、

 アップルトン中将の第8艦隊、アルサレム中将の第9艦隊、ウランフ中将の第10艦隊

 イースト中将の第11艦隊、ボロディン中将の第12艦隊、そしてヤン中将の第13艦隊、と

 合わせて八個艦隊を投入します。その他を含めた総動員数30,827,400名。

 なお、最高評議会の予算処置が降り次第、ルフェーブル中将の第3艦隊が後方支援として参加する予定です。」

「この遠征軍の具体的な行動計画はまだ立案されていない。本日の会議はそれを決定する為のものだ。

 諸君の活発な提案と討論を希望する。」


キャゼルヌの説明が終わると周囲の人々から感嘆の声がもれる。

そりゃそうだろ。こんな大規模な遠征は今までに一度も無い、同盟至上初の試みだからな。

そして、シトレ元帥から会議スタートの合図があり、

その合図を待っていたかのようにウランフ提督が質問をして来た。


「総司令官にお尋ねしたい。我々は軍人であるからには、行けと命令があれば何処へでも行く。

 まして、ゴールデンバウム王朝の本拠地を突くというのであれば、なお更だ。

 しかし、それには周到な準備が欠かせない。先ずこの遠征の戦略上の目的をお聞かせ願いたい。」

「作戦参謀『代理』説明を。」


戦略上の目的?そんなもんは、初めからねぇだろが!!なに、俺に質問をふってんだよ。

まあいい。シトレ元帥の言うとおり『暴れてやる』


「はっ、作戦参謀『代理』を勤めますペトルーシャ・イーストです。今作戦を作成したアンドリュー・フォーク准将が

 ヒステリーで倒れ、予備役になった為、私が代わりに作戦説明を致します。

 先ず、戦略上の目的ですが作成者のフォーク予備役准将によると

 『大軍をもって帝国領土の奥深く侵攻し、帝国の人間共の心胆を寒からせしめ、更には高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処する』

 との事です。分かりやすく言いますと、『行き当たりバッタリ』という事です。」


俺の発言に対し皆、思い思いのリアクションで返してくれる。

シトレ元帥は苦笑し、キャゼルヌは『やれやれ』という感じで首をすくめ、

その他の方々も顔を見合わせたり、驚いたりと様々な反応をしている。

ロボス元帥のコメカミには青筋が・・・いや、俺は何も見ていない。

そして、ヤン提督は手を上げ発言の許可を求めてきた。


「いいですか?」

「ヤン中将、どうぞ。」

「帝国領内に進行する時期を、現時点に定めた理由を聞きたいのですが。」

「選挙が近いからではないかね?」


ヤン提督の質問に俺が答えるより早く、ビュコック提督が軽口を挟む。

まあ、実際その通りなのだが・・。一応、俺も質問に答えないとね。


「現時点で何故、帝国領内への進行するのか?と、言う事ですが・・ビュコック提督の言う通り『選挙が近いから』でしょう。

 つまり、政権維持を目的とした出兵という事です。

 銀河帝国の軍人の間では、我々同盟軍は選挙が近くなると好戦的になると噂されている位ですからね。

 更には、帝国軍の士官学校では『同盟における政権支持率と出兵関係の比例関係について』などと云う論文がある位ですからね。」


ビュコック提督の軽口に笑っていた将官達だが、俺が更に突っ込んでした発言を聞いてその笑顔が引きつっている。


「えーと、小官がフェザーンにある弁務官府を通じて入手した『その論文』が在りますので、皆さんにお配り致します。」


予め、全員分コピーした論文を配ると、将官達の引きつった笑顔が更に引きつる。

シトレ元帥は必死に笑いを堪えているようだ。キャゼルヌは頭を抑えている。

ロボス元帥は・・・見なかった事にしよう。


「今までは、前任者のアンドリュー・フォーク予備役准将の作戦を説明しただけですが、

 ここからは、小官の考えを話させて頂きます。

 先ず、敵の司令官はローエングラム伯になると思われます。

 そして、私がローエングラム伯ならば・・・焦土作戦を使い同盟軍と戦うでしょう。」

「焦土作戦?」 

「はい、同盟と接する各星系から食料などの物資を引き上げる。そして、進行していった我々同盟軍から帝国の民間人を使い物資を吸い上げる。

 我々が帝国人民の解放をうたっている以上、飢えた民間人がいれば食料の提供をしない訳には行かないですからね。先ずはそこを突いて来るでしょう。

 そして、物資を搾り取れるだけ搾り取ったら一気に反撃に移る。・・・あくまで最悪のパターンだったらですが。」

「では、一体どうするのだ。」

「・・・対策としては、進行するに当たって兵力の分散せず、占領については、無計画に占領地を増やさない。これを基本計画とし、帝国軍の反応を見て

 場合によっては早期撤退も視野に入れる必要があると思います。」


かなり消極的な作戦だ。簡単に言えば、『泥棒が玄関を覗き込みながら軽く声を掛け様子をうかがい、怖そうなオヤジが出て来たらすぐ逃げる。』こんな感じだ。

戦略的目的が何も無い作戦だ。まあ、元があんな作戦だし仕方ない。

俺の説明に対し、シトレ元帥は満足そうに頷いているが、ロボス元帥は不満顔だ。

他の提督達に至っては、凄くやる気が無さそうだ。もう、今にも帰りたそうにしている。

きっと今作戦の『戦略目的が無い事』や『政権維持の為に戦え』ってのが効いたのか?現実が予想以上に酷い為に、心が折れてしまったのだろう。


「かなり、消極的な作戦の様に感じるのだが・・・」


ロボス元帥が俺の作戦に不満そうに口を開くが


「いえ、作戦参謀代理殿の作戦は素晴らしいと思います。」

「その通りです。とても、素晴らしく非の打ち所がありません。」

「完璧な作戦です。」

「流石、第3次ティアマト会戦の英雄ですな。」

「反対意見の方は?」   一同「「「異議なし!!!」」」

「では、満場一致でペトルーシャ・イースト提督の作戦を採用する。以上を持って、本会議を終了する。では、解散!!!」


各艦隊司令官から次々に俺の作戦への賛辞の声が上がった為に、ロボス元帥は口を封じられ、間髪入れずにシトレ元帥が「満場一致で」と

俺の作戦採用を決めた為に、満場一致?で俺の作戦が採用された。

シトレ元帥も、他の提督達も酷い奴らだ。可哀相に、ロボス元帥は発言を遮られた時のポーズで固まってるぞ。

って、シトレ元帥はもう帰ってるし・・・。他の提督も次々に席を立って帰って行く。

まさに、『はい、はい、もう終わり。帰ろう、帰ろう。』って感じだ。

仕方が無いので、俺も帰る。

ちなみに、一人固まった状態で取り残されたロボス元帥が再起動するまで5分を要したが、そんな事は誰も知らない。












統合作戦本部内のアレックス・キャゼルヌの執務室にヤン・ウェンリーとダスティ・アッテンボローと俺が尋ねて行ったのは帝国領侵攻作戦の会議が終了した次の日だ。

話題は自然と『帝国領侵攻作戦』と『先の会議』へと移る。


「それにしても、中々上手い会議の運び方でしたね。イースト提督。」

「へえ、そんなに面白い会議だったんですか?」


ヤンの会議の感想に真っ先に飛び付いたのは、伊達と酔狂が大好きな自称革命家だ。


「最初に戦略的目的が無い事を強調し、次に戦略的意義が無い事を強調する。この場合は、今回の出兵が最高評議会で決定された理由が『選挙の為』だったという事で

 まあ、実際はどうか分からないが、こんな小道具まで出したお陰で、皆『選挙の為の出兵』と信じてしまったんじゃないかな?」


ヤンは、俺の用意した帝国の論文『同盟における政権支持率と出兵関係の比例関係について』を読みながらアッテンボローに会議の経緯を説明している。


「ああ、あれで一気に厭戦気分が蔓延したからな。」

「厭戦気分って、・・それは不味くないですか?」

「普通は不味いんだろうね。でも、今回は構わないんじゃないかな。」

「今回は高い士気で帝国領深くに突入していくより、入り口辺りで威力偵察程度の軍事演習をする位が望ましいな。危なくなったら即撤退でよろしく。」


実際の所、作戦会議は予想以上に上手くいった。

『ローエングラム伯が敵の司令官になる。』、『敵は焦土戦術を使ってくる。』これらの事は、俺の原作の知識であり、なんらの証拠も無い。

憶測に憶測を重ねた意見と言われても反論でき無い、もし会議の席で証拠を示せと云われたら万事休すだった。

会議場に蔓延した厭戦気分・・・と言うより、『やってられっか。』とか『馬鹿馬鹿しい。』が諸提督の本心だろう。

これらのお陰で、消極的進攻作戦を採択し、会議を早々と打ち切る事が出来た訳だ。実際に打ち切ったのは、シトレ元帥と諸提督だが。

俺が、ブルース・アッシュビー位有能だったら、『俺には判る』と言って開き直る位出来るんだが・・・。


「完全武装のピクニックって事ですか?」

「・・・アッテンボロー、その発言は、不味いぞ。フラグが立つ。他には、一気に進行し物資回収中の帝国軍を急襲する作戦とかあるけどボツにした。」

「フラグ?それより、どうしてその急襲作戦はボツにしたんですか?」

「本当に焦土戦術をやるかどうかなんて、実際には帝国領に進攻してみないと分からないだろ?『急襲したら万全の迎撃体制で待ってました。』ってな事になったら馬鹿だろ。

 飛んで火に入る夏の虫ってやつだ。フォーク予備役准将の曰く『高度の柔軟性を維持しつつ、臨機応変に対処する』だ。」

「行き当たりバッタリ・・・か。」

「そう云う事。」

「「「・・・・・・。」」」

















・・・・・つづく。





主人公の作戦は『威力偵察程度の進攻』って事になりました。
色々、皆様からアドバイスがあったのですが作者の頭では上手く扱えませんでした。



タイトルについて、銀河演習伝説・・・『銀演伝』もしくは『銀習伝』でいこうと今の所思っています。



年明け早々、色々とゴタゴタしてしまい更新が遅れてしまいました。
これからは、更に遅くなると思います。
ご容赦の程、よろしくお願いします。








[13584] 第二十一話 『バナナ』とか『濁った水』とか正直どうでもいい
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/01/13 22:28


第二十一話 『バナナ』とか『濁った水』とか正直どうでもいい




    
                              出兵のしおり


オヤツの金額は自由です。出来れば持てるだけ持って来て下さい。

お弁当は基本的には此方で用意致します。ただし、場合によっては用意致しかねる事も御座いますので、各自で非常食を用意ください。

人の食事を盗ってはいけません。嫌われます。

目的地に着くまではオヤツや非常食を食べてはいけません。

イゼルローン要塞に帰還するまでが出兵です。危険だと判断したらすぐに撤退しましょう。

                       作成者   作戦参謀代理 兼 第11艦隊司令官 ペトルーシャ・イースト中将










「それじゃ、行って来ます。三人とも、体に気を付けて、ちゃんと歯を磨いて、火の元に気を付けて・・・えーと、後はアッテンボローにも気を付ける事。

 留守中にアイツが来ても家に入れちゃ駄目。ちゃんと居留守を使って追い返す事。わかったね。」

「提督は心配症ですね。判ってますよ。それでも、帰らない時はアッテンボローさんのお姉さんに連絡ですね。」

「でも、アッテンボローさんも一緒に帝国領進攻に参加するんじゃ・・・。」

「「「・・・・・。」」」


そういえばそうだった。

我が家の家訓は『男は飢えたケダモノ』、『アッテンボローは違う意味で飢えたケダモノ』だ。

俺が家を留守にする時は、決まってこのやり取りをしている。

今回の出兵は、かなり長引きそうなのでいつもの様に祖父母の家に三姉妹を預けるのでは無く、祖父母の方を俺の家に呼ぶ事にした。

三姉妹にも学校があるからな。

それはさて置き、今日は俺の第11艦隊がイゼルローン要塞に向って出発する日だ。各艦隊の集合場所がイゼルローン要塞の為、現地集合って事になる。

他の艦隊も準備が出来次第に、集合場所に向って出発する筈だ。

今回の目標『生きて帰ってくる事』、そんな事を考えながら俺は家を後にした。いつもと違うのは、お菓子や非常食などを詰め込んだ荷物を大量に持っている事だ。




















自由惑星同盟軍による帝国領への大規模な進攻が近い事を、

フェザーン駐在弁務官のレムシャイド伯より知らされた銀河帝国は、帝国元帥ローエングラム伯ラインハルトに同盟軍迎撃の任に当たるべく勅命が下る。


金髪「私は、これを機に同盟軍を徹底的に叩いて置くつもりだ。その為にはイゼルローン回廊の出口から出てくる敵を叩くのでは無く、帝国領内深く敵を誘い込むのが肝要だ。」

赤毛「すると、敵の補給線が限界に達するまでは攻撃はかけないと。」

金髪「その通りだ、限界点に達した所を全軍を持って一挙に討つ。」

疾風「戦わずに引く訳ですか。」

金髪「そうだ。不満か?」

疾風「いえ、ただかなり時間がかかりそうですが?」

妖眼「我々は構いませんが、門閥貴族達はどう思いますか?」

金髪「奴らに余計な口を出させぬ為にもそんなに時間はかけぬ。あるのだ、それほど手間をかけずに同盟軍を飢えさせる手が。オーベルシュタイン説明をせよ。」

義眼「はっ。諸提督方も承知しておられる様に、同盟軍は『解放軍』『護民軍』を自称しており、即ち奴らは占領地域の民衆に生活の保障を与える責務を負う事になる。」

妖眼「つまり、敵軍の物資食料を民衆に吸い取らせようと云う事か。」

疾風「まさかっ!!」

義眼「そう、イゼルローンに近接する各星系から、駐留軍と供に食料物資を全て引き上げる。」

金髪「民衆の間には、同盟の進攻を歓迎する風潮もあるようだ。しかし、これによって彼らの幻想も消える事になるだろう。」


ラインハルトは、この『焦土作戦』に自信を持っていた。ただ一つ、気がかりな事は敵の作戦参謀にあの男がいる事だけだった。






















イゼルローンよ、私は帰ってきたぞ。・・・・と、云う事で帰ってきましたイゼルローン要塞。実際には叫んで無いけどね。

俺の第11艦隊が一番乗りだった。一番乗りの特権かどうかは知らないが、要塞内への駐留許可が出たので第11艦隊は要塞内部に駐留した。

他の艦隊がやって来るまで俺は、今作戦の司令部を設置したり、アーロカート技術大佐(昇進した)が色々と行った『帝国艦艇改造計画』の報告を受けたりしていた。


「で、こちらが以前話していた戦艦『ヤマト』のアイディアを元に改造した帝国軍の戦艦です。要塞主砲には及びませんが、強力な主砲が使えます。

 ・・・ただし、主砲を使うと艦も一緒に吹っ飛びますが・・・。」

「つまり、使い捨て戦艦って事か?」

「はい、現在十隻ほど改造が完了しており試運転も済んでおります。ただ、試運転時に主砲をぶっ放した二隻が吹っ飛びましたので、現在は八隻です。」

「・・・他には、何かあるか?」

「帝国軍の輸送艦から武装を外して改造した『高速輸送艦』や、装甲の厚い艦の装甲を更に厚くして武装を外した『装甲艦』などがあります。」

「武装を外した?」

「はい、ビームもミサイルやレールガン等の実弾を一発も発射できません。攻撃力は0です。・・・あ、装甲艦は体当たりで攻撃できるかも知れませんね。」

「・・そうか、大変貴重な戦力になる。ご苦労だった。今日はもう休んでくれて構わない。」

「はっ、ありがとう御座います。」


アーロカート技術大佐は、俺に敬礼をすると退出して行った。

うん、大丈夫だ。上手く使えば貴重な戦力になる筈だ。・・・・多分。

当面の問題は、この改造艦の名前を如何するかと云う事だな。ワイゲ○ト艦じゃ不味いよね?

こうして、イゼルローン要塞での俺の日々は過ぎていった。





















ウルリッヒ・ケスラー准将が帝国辺境より物資食料の引き上げをしながら幼馴染といちゃついている頃、

イゼルローン要塞から帝国領出口付近まで同盟軍の大艦隊が集結していた。





現在、要塞内に帝国領進攻作戦に参加する全提督達が集合し、出征式を行っている。ロボス元帥曰く『作戦参謀代理として訓示をたれろ。』

との事だったので一応、今回の出兵に役立つ話をして置こうと思う。ウォルフガング・ミッターマイヤー対策の話だ。


「作戦参謀代理のペトルーシャ・イーストです。私の方から難しい話はありません。

 ただ、一つ為になる『昔話』をしてみようと思います。

 『むかし、むかし、ある所に男が住んでおりました。男は大変足が早く、皆からは韋駄天の馳夫と呼ばれていました。

 ある時、馳夫が町を歩いておると『泥棒!!泥棒!!』と叫び声が聞こえてきました。馳夫が声のする方に行ってみると、

 如何にも泥棒と云う風体の男が馳夫のいきつけの店の店主に追いかけられていました。

 『おい、馳夫。あの泥棒を捕まえてくれ。』『よし、来た。』

 店主に頼まれた馳夫が泥棒を追いかける。泥棒の足の早さも中々だが馳夫の足の速さには敵わず、グングンと距離が詰まる。

 そして、馳夫が泥棒に追い付き、抜き去った。そこで馳夫が泥棒に一言『どうだ。俺の方が早いだろ?』

 ・・・ええ、お後がよろしい様で。」


一同「( ゚д゚)ポカーン 」

ロボス「(#^ω^)ビキビキ 」


そんなこんなで出征式は終了し、各艦隊の提督達は自分達の艦隊に帰還し、帰還完了した艦隊から帝国領へ進攻して行った。

第5艦隊、第7艦隊、第8艦隊、第9艦隊、第10艦隊、第12艦隊の合計6個艦隊が纏まって進攻し

一つの星系を占領し、そこに駐留しながら帝国軍の反応をみる事になった。

ちなみに、俺の第11艦隊とヤン提督の第13艦隊は要塞に残留し、後方支援の第3艦隊の到着を待つ事になった。(第11艦隊は要塞内部に駐留。第13艦隊は駐留用スペースが無いので要塞外待機。)



















同盟軍第5艦隊では、司令官のアレクサンドル・ビュコック提督と副官のファイフェル少佐の間にある会話が行われていた。ちなみに、この時のファイフェル少佐の手には例のしおりが握られていた。


「・・・ビュコック提督、作戦参謀代理殿の訓示は一体なんだったのでしょうか?」

「うーーん、恐らくは『目先の事に囚われて当初の目的を忘れるな』って事かな。(ボリボリッ)敵がいないからといって、

 当初の作戦行動を無視し、無計画に進攻するなと言う事じゃろうて。(ボリボリッ)」

「なるほど、流石は作戦参謀代理殿ですね。」


持って来た煎餅をボリボリと齧りながら答えるビュコック提督。彼の副官は、何度かまだ目的地に着いてない事を指摘したのだが、

その度に彼の上官は『煎餅はオヤツには入らない』との理屈を展開した為、やがてファイフェル少佐は考えるのを止めた。

しばらくの間、作戦参謀代理の訓示に関してのやり取りが彼方此方で行われる事になったが、

作戦参謀代理の真意を当てる事が出来た人物は当然ながら一人として存在していなかった。

その為、作戦参謀代理の訓示に対して様々な憶測が飛び交った。ただ、全員に共通していた意見は作戦参謀代理は『相変わらずの変わり者だ』と云う事だった。

































金髪「・・・・・同盟軍の奴ら、来ないな。」

赤毛「はい、ラインハルト様。」

















・・・・つづく。

訓示については後ほどで・・・・。

今回も難産でした。子供(作品)では無く別の物を出してしまったかも知れません。

一応、前哨戦や撤退戦については、頭の中で出来ているのですがそこまで持っていくのが難しいです。


タイトルは『銀習伝』で行きたいと思います。
作者が習い立ての初心者なので、『習』の字が相応しいと思います。
近日中にタイトルを変更いたします。










[13584] 第二十二話 逆襲のフォーク 
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/01/19 00:10



第二十二話 逆襲のフォーク 






同盟軍の帝国領侵攻作戦が開始されてからしばらく経った頃、イゼルローン要塞に駐留している俺の所に

帝国領に先行した六個艦隊が無事に最初の星系(有人の奴)を占領した。

先行艦隊からの報告によると、今の所は敵の抵抗は無く駐留部隊も居ないとの報告だった。そして、予想通りに物資や食料も引き上げられていた。

その為、当初の作戦通りこれ以上の進攻をせず様子見で行く事になった。

もちろん、占領地に餓えた民衆がいる以上食料を配らなくてはならないが、六個艦隊もいるし占領地も一つだけなら何とかなるだろ。

後、第7艦隊には農作業に詳しい技術将校のカミーユ(仮)少尉がいた筈だ。しばらく経てば自給自足出来る様になる。

『魚をあげるな、釣り方を教えろ』だ。























金髪「同盟軍め、やってくれる。焦土作戦を逆手に取られてしまった。これはやはり『あの男』の仕業か。」

赤毛「ペトルーシャ・イースト中将。」

金髪「・・・このまま辺境の人民を餓えさせる訳には行かない。だからと云って、物資食料を積んだ輸送艦を各星系に送れば間違い無く敵の手に落ちる。

   これが、恐らく、いや間違い無く奴の手だ。このまま食料の無い辺境地域を放置すれば、辺境地域に住む民衆の支持を失うのは

   彼らから物資食料を引き上げた我々帝国軍だ。キルヒアイス頼めるか?」

赤毛「はい、ラインハルト様。」

金髪「ペトルーシャ・イースト。恐ろしい奴だ。」

赤毛「はい、ラインハルト様。」


こうして、ジークフリード・キルヒアイスは大艦隊を率いて、物資を引き上げたが同盟軍が進攻して来なかった星系に食料物資を配って歩く事になった。























同盟軍の艦隊が帝国領に進攻し、最初の星系を占領してから少し時間が経った頃。

同盟の首都星ハイネセンでは一人の人物が暗躍していた。その人物の名は『アンドリュー・フォーク』予備役准将。

彼は自分を落し入れ自分の地位を奪った男に復讐し、再び元の地位・・いや、元以上の地位を得る為に自分の持っている私的なルートを使い、最高評議会議長である

ロイヤル・サンフォード議長に面会しある主張をした。


「では、君は第11艦隊司令官のペトルーシャ・イースト中将が同盟軍の一部の上層部と結託し、君を落し入れ作戦参謀の地位を奪い、更にその地位を利用し一部の企業と結託し

 その企業に利益のある作戦案を提案し実行していると言うのかね?」

「その通りです、議長。詳しい状況については現在調査中ですので、近日中に特定企業との癒着の証拠を提出できると思います。それに帝国軍が焦土戦術を使ってくる証拠などありません。

 現時点で敵の抵抗が無く占領に成功しているのは、帝国の民衆が我々同盟軍に進んで協力している結果に過ぎません。」

「なるほど、調査の方は君に任せる。・・・しかし、それが本当だとなると現在行っている『帝国領進攻作戦』の訂正が必要になるな。」

「議長、その事に関しては小官が考えた作戦案が御座います。現在こそ、帝国に対して大攻勢にでるチャンスです。」


アンドリュー・フォーク予備役准将。彼は自己の才能を示すのに実績では無く、弁舌で示す人間であった。しかも、その弁舌とは他者を貶めて自分を偉く見せるものであった。

その論法により、ペトルーシャ・イーストを貶める主張をするフォーク予備役准将と、その主張を信じてしまうロイヤル・サンフォード議長。

冷静に考えればフォーク予備役准将の主張は憶測に憶測を重ねただけの物であった。だが、人は信じたいと思っている事を信じてしまう。

少なくともフォーク予備役准将は心の底からこの主張を信じていた。サンフォード議長が今回の出兵に求めた物は帝国軍に対する軍事的勝利であり、それが政権維持に必要なものであった。

しかし、現在の同盟軍の出兵は帝国領の一部を占領しているものの、軍事的衝突は一度として発生していない。

そして、同盟軍もその占領した地域に留まり、それ以上深く帝国領に進攻していない。

その事に対し、サンフォード議長を初めとする多くの議員が不満に思っている。中には、マスコミを煽っている者までいる始末である。

そして、好戦的なマスコミにサンフォード議長も突き上げを喰らっている状態であり、議長自身も現状を何とかしたいと思っていた。(もちろん、支持率アップの為に)

そこに、フォーク予備役准将の自信満々な主張を受けた為、議長はフォーク予備役准将を信じ、彼が再び提出した『帝国に対して大攻勢に出る作戦』を最高評議会で決議する事に決めた。




























身辺の整理をしていた時、俺はある事に気づいた。

俺の持って来たオヤツの中に俺のでは無いオヤツが3個混ざっていた事だ。女の子の好きそうなキャラクターが描かれているパッケージでおまけが付いているお菓子だ。

俺のでは無いが、俺が買った奴だ。

俺がオヤツを買う時、一緒に三姉妹と行ったのだが俺一人お菓子を買うのは気が引けたので、三姉妹にも『好きな奴を好きなだけ買って良いよ』と言った。

それを聞いた三姉妹は俺の押すショッピングカートに、それぞれ好きなお菓子を大量に放り込んでいた。その中の一つだったのを覚えている。量が量だからな、きっと持って行くのを忘れてしまったんだろう。

それで、如何しよう。このお菓子。俺が食べるのも変だ。









        選択肢


① とって置いて帰ってから三姉妹に渡す。


② ハイネセンまで宅急便で送る。




‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


                選択肢①の場合


副官「イースト提督、我が艦隊はすでに敵の包囲下です。」

俺 「最早、ここまで・・か。」

副官「!!直撃、来ます!!」


               チュドーーーン!!!!


俺 「グハッ、もう・・お前達に・・このお菓子を・渡す事が・・出来ない俺を・許してくれ。」


・・・・その時、ペトルーシャ・イーストの時は永遠に停止した。








                選択肢②の場合


副官「イースト提督、敵は我が方のおよそ4倍です。敵将ジークフリード・キルヒアイスの名で降伏勧告が来ています。いかが致しましょう。」

俺 「俺は無能者と言われるのには耐えられるが、卑怯者と言われるのには耐えられない。・・・降伏は出来ない。」

副官「!!直撃、来ます!!」


               チュドーーーン!!!!


俺 「グハッ、お前達に・・渡した最後の・・・プレゼントが・・あんなお菓子・・だったとは・・もっと良い物・・送れば良かった・・不甲斐ない俺を・・許してくれ。」


・・・・その時、ペトルーシャ・イーストの時は永遠に停止した。

そして、ペトルーシャの帰りを待つ三姉妹の所に宅急便でお菓子が届いたのと、ペトルーシャ元帥の戦死の報が届いたのは、ほぼ同時だった。



‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



何か今、頭の中で物凄く嫌な感じがした。・・・このお菓子の事は後で考えよう。























ペトルーシャ・イーストが紛れ込んでいた三姉妹のお菓子の処遇について悩んでいた頃、自由惑星同盟の最高評議会である作戦案が決議され、









そして、採択された。






















・・・つづく。



今回の事は歴史の修正力とかでは無く、作者がアムリッツァ前哨戦とアムリッツァ会戦を書きたいが為にこの様な事になりました。








[13584] 第二十三話 ぶっちゃけ、カードが本体
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/01/21 00:10



第二十三話 ぶっちゃけ、カードが本体






統合作戦本部内にある自分の執務室でシドニー・シトレ元帥が、最高評議会で『帝国に対して大攻勢に出る作戦』が可決された報告を受け、頭を抱えていた時

最高評議会のメンバーの一人である、交通情報委員長コーネリア・ウィンザー議員が自分に面会を求めているとの報告を受け、更に頭を抱えた。

最初は適当に理由を付け、面会せずに済まそうと考えていたシトレ元帥だったが、その様な事を本当に行う訳には行かず、

結局はウィンザー議員を自分の執務室へ案内するよう部下に指示を出した。

そして、ウィンザー議員は彼の執務室へと案内されて来たのだが、ウィンザー議員だけで無く人的資源委員長のホアン・ルイ議員も一緒に執務室に入って来たのを見て彼は驚いた。

だが、ウィンザー議員はシトレ元帥に驚く時間を与えずに、直ぐに口を開いた。


「ペトルーシャ・イースト中将を即刻、作戦参謀から解任し、ハイネセンに呼び寄せて査問会に掛けるべきですわ。」

「・・・だが、ウィンザー議員。彼は第11艦隊の司令官なのだ。その彼を前線から呼び戻しては仕舞っては、一体誰が第11艦隊の指揮をとれば良いのかね?」

「そんなものは、代理の人物に任せれば良いですわ。」


彼女が何を主張する為に自分の執務室に来たのかは、ある程度予想していたシトレ元帥だったが、自分の予想が当たった事について、素直に喜ぶ訳にはいかなかった。

むしろ、予想が外れてくれる事を願っていたのだが結局は無駄だった。


「代理の人物など、そう簡単には見つかりません。」

「彼に任せれば良いではありませんか。」

「彼?」

「アンドリュー・フォーク准将ですわ。」

「・・な「まあまあ、ウィンザー議員。今日の所はその辺で、イースト提督については現在の所、物的証拠などは無いのだし」・。」

「それは、時間の問題ですわ。」

「なら、査問会を開くのはそれからでも遅くは無いと思うのだがね。」


ウィンザー議員の軍部内の人事に対する発言に、シトレ元帥は思わず声を荒げそうになったが、その瞬間にホアン・ルイ議員が強引に会話に割り込み、ウィンザー議員を宥めた。

この時、シトレ元帥はホアン・ルイ議員が何故ウィンザー議員に一緒に付いて来たのかを理解し、彼に感謝した。

宥められたウィンザー議員は足早に帰って行く。その背中を見ながらホアン・ルイ議員が


「・・・どんなに探しても、証拠など出てこないと思うのだがね。」


と、呟いたのがシトレ元帥の耳に微かに届いた。

























良い知らせと悪い知らせがある時、俺は悪い知らせから聞くタイプだ。

今日、悪い知らせと良い知らせがあった。帝国領に進攻した艦隊からの連絡では無く、同盟の首都星ハイネセンからだ。

無血で帝国領を占領した事で、同盟市民や政治家連中に帝国軍を甘く見る風潮が芽生えているらしい。(イゼルローン要塞無血占領が原因?)

少し前には、アスターテやティアマトで痛い目に合った事はもう忘れたらしい。

でも、軍の公式発表ではアスターテもティアマトも同盟勝利だから、一般市民が帝国軍を甘く見るのは分かるが政治家連中がこれではどうしようも無い。

で、好戦的な市民や政治家連中が占領地を増やさずに帝国領入り口付近でたむろしている軍にもっと攻めろと騒ぎ立て、

ある軍人が『帝国に対して大攻勢に出る作戦』とやらを発案し、最高評議会議長がこれに同調し、軍に大攻勢に出る様に最高評議会で新たなる作戦を可決した。

どうやら、主戦論者の議員の誰かが現在進行中の作戦状況を攻戦的な一部マスコミにリークし、そのマスコミが市民を煽ったのが原因らしい。

・・・・自称軍事アナリストやコメンテーターがテレビで『ピンポンダッシュ』作戦を批判している様子が目に浮かぶ。

それで、先ほど最高評議会から可決した『帝国に対して大攻勢に出る作戦』に従い、帝国へ大攻勢に出ろとのお達しがあった。

俺達軍人は政治家の決めた事には基本的に従わなくてはならない。今、俺の目の前に居るロボス元帥は何となく『帝国に対して大攻勢に出る作戦』に乗り気だが・・・。

この『帝国に対して大攻勢に出る作戦』の決行が決まった事が悪い知らせだ。


これは、後になって知った事だがこの時点で俺を作戦参謀代理から解任する案や、俺を首都星ハイネセンに呼び付け査問会を開く案などがあったらしい。

これらの事は、シトレ元帥やグリーンヒル大将、一部の良心的な議員が精力的に動いてくれたお陰で現時点で実行される事はなかった。

ロボス元帥も俺をハイネセンに送る事には反対だったらしく、一部の議員からの要求を突っぱねてくれた。お陰で俺は査問会に送られずにすんだ。


そして、良い知らせの方はルフェーブル中将の第3艦隊が最高評議会の予算処置が降りたので後方支援として援軍に来てくれると云う事だ。


「そういう訳だ。第3艦隊がイゼルローン要塞に到着次第、イースト中将の第11艦隊とヤン中将の第13艦隊は帝国領へ進攻して貰う。

 イースト提督、貴官は作戦参謀代理であると供に第11艦隊の司令官なのだからな。」

「了解しました。それで、前線からの物資の要求についてはいかが致しましょう。イゼルローン要塞の備蓄で充分賄える量ですので、第11艦隊と第13艦隊が

 要塞を出撃した際に、護衛を行い一緒に前線へ輸送すれば安全だと思うのですが。」

「その辺の所は、貴官に一任する。後方主任参謀のキャゼルヌ少将と話し合って決めたまえ。」

「了解しました。」


結局はこうなるのか?今回の進攻は威力偵察程度で済ます為に色々と努力してきた俺の苦労が、一瞬で駄目になった瞬間だった。

こうなったら、前線で適当にやってすぐに撤退するしか無い。

まったく、改造艦の名前を考える暇も無い。

俺はブツブツと文句を言いながら、前線へ移送する補給物資の事を話し合うためにキャゼルヌの所に向った。

そして、キャゼルヌの執務室には俺より不機嫌な執務室の主が待っていた。


「まったく、政府のお偉方は何を考えている。あんな奴の言う事を真に受けて。」

「何も考えていないんだろ?所で、あんな奴って誰だ?」

「アンドリュー・フォークだ。」

「フォーク?アイツ生きてたのか?」

「何故、死んだと思うんだ?」

「何となくだ。」

「・・・今回の作戦変更はアンドリュー・フォークが原因らしい。」


俺はテッキリ、アンドリュー・フォークが予備役になったと聞いた時、一緒に精神病院送りになったものだと思っていたが

フォークは一時的に病院に入院したが、直ぐに退院し自宅療養(待機)となっただけだった。

まあ、冷静に考えれば分かる事だった。統合作戦本部長暗殺未遂事件を引き起こしたわけでも無いし。

だが、今はフォークの事より、これからの作戦の事についての打合せをした方が建設的だ。


「早速本題で悪いんだが、補給物資の事だ。食料だけで5億トンだそうだ。」

「それ位ならイゼルローン要塞の備蓄してある物資で何とかなるが、問題はこれからだな。」

「・・・最低でも十倍は覚悟しておいた方がいいかもな。」

「50億トンか・・・。途方も無い数字だな。何か良い手は無いものか。」

「焼け石に水程度だが、フェザーン商人に頼むのはどうだ?『イゼルローン要塞から帝国領入り口付近で食料が不足しているから良く売れるぞ。』っと

 情報を流すなり、要請するなりすればハイエナの様に寄って来るぞ。」

「確かに焼け石に水程度だが、無いよりはマシだな。検討してみよう。」

「そうか、頼む。それで、要求のあった補給物資は第11艦隊と第13艦隊で輸送艦を護衛して前線まで持って行こうと思う。」

「ああ、それが良いだろう。出発はいつだ?」

「第3艦隊がイゼルローン要塞に到着してからだ。色々引継ぎもあるしな。とりあえず、物資の積み込みだけはやって置きたい。

 輸送艦や輸送コンテナを貰っていくけど大丈夫か?」

「その辺は好きにしてくれ。・・・で、その手に持っているのは何だ?」

「コレか?同盟軍チップスのおまけカードだ。」


俺は手に持っていたカードをキャゼルヌに渡した。


「・・・同盟軍第13艦隊司令官『ヤン・ウェンリー』中将。難攻不落のイゼルローン要塞を無血で占領した若き英雄である。」

「ヤン・ウェンリーのカードは全種類持ってるから、欲しければどうぞ。」


※同盟軍チップスとは、自由惑星同盟に貢献した同盟軍人のカードがおまけとして付いてくるお菓子だ。 
 
 ちなみに、俺は小さい時から集めている。



俺はダブったヤンのカードをキャゼルヌに渡すと、執務室を後にした。

前線に持って行く物資に関しては、後方主任参謀殿の許可が出たので好きにさせてもらうことにする。

こうして、俺は要求物資より若干多目の物資を輸送艦やコンテナ、後は例の『輸送艦・快速』に詰め込んで第3艦隊がイゼルローン要塞に到着するのを待つ事になった。

それから、改造艦の名前はシンプルに行く事に決めた。

主砲を撃つのは『主砲艦』で輸送をするのは『輸送艦・快速』、分厚い装甲『装甲艦・厚』だ。

シンプル・イズ・ベストって事で。















・・・本当の所は、俺が迷って中々決められずにいた為にアーロカート技術大佐達が暫定的に呼んでいた呼び名が定着してしまい、

『今更新しい名前に変えると混乱が生じるのでは?』と、参謀のラップ君からのありがたい進言を頂いた為、心の広い俺は参謀の意見を取り入れた訳だ。

その後、第3艦隊が到着し、第3艦隊司令官のルフェーブル中将との引継ぎと今後の作戦展開についての打合せを行い、

それが無事に終了すると俺の指揮する第11艦隊と、ヤン中将の指揮する第13艦隊は輸送艦を護衛しながら帝国領に進軍して行った。














・・・・つづく。











[13584] 第二十四話 「未来は僕らの手の中」byラインハルト 
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/01/25 18:47



第二十四話 「未来は僕らの手の中」byラインハルト 






イゼルローン要塞を出発した同盟軍の第11艦隊と第13艦隊は途中で敵襲を受ける事無く、無事に先行した艦隊が駐留している星系に到達した。

ここで各艦隊は補給を終え次第、バラバラに帝国領へ進攻する事になる。

俺はイゼルローンから運んできた物資を各艦隊に補給する為の事務処理に追われていた。事務処理について、ヤンは使い物にならないので必然的に俺がやる事になる。

一応、ヤンの副官のグリーンヒル中尉が手伝いとして俺の作業を手伝ってくれている。一緒に作業をしていると分かるが、彼女は本当に優秀だ。

そんなこんなで、作業中の俺の所に参謀のラップ大佐がやって来た。


「閣下、間も無く第5艦隊の旗艦『リオ・グランデ』で作戦会議が行われる時間です。」

「もう、そんな時間か?・・・グリーンヒル中尉とラップ大佐は先に向ってくれ。俺はキリの良い所まで終わらせてから向う。」


俺の返事を聞いたラップ大佐とグリーンヒル中尉が、俺に敬礼をしてから退出する。

本当は、作戦会議に遅れて行くのは、かなり不味いのだが今回は仕方ない。ロボス元帥とキャゼルヌから今回の補給については俺が一任された訳だし、

どうせ作戦会議といっても、基本計画はすでに立案されてるしな。俺が行ってもやる事なんて無いさ。

この時の俺は作戦会議を甘く見ていた。お陰で、あんな事になるとは・・・。









第5艦隊旗艦『リオ・グランデ』内に『第11艦隊司令官以外の』各艦隊の司令官、及び参謀達が作戦会議を開く為に集まっていた。


「まあ、作戦会議と言っても基本計画はハイネセンの阿呆によって既に立案され、最高評議会で可決されたのだ。ここで我々がどうこう言っても、せん無きことじゃて。

 それより、現在の各艦隊内に漂っている『だらけた空気』を何とかする方法を考える事が先決じゃな。」

「確かに最近は緊張感の欠片も無い。まるでピクニックにでも来ているつもりでいる。当初の『玄関開けたら、二分でサラバ』作戦通りなら問題は無いのだが・・。

 このままの状態で帝国領に一気に進攻するなど、考えただけで恐ろしい事だ。何か、良い案が無いだろうか。」


ビュコック提督とウランフ提督が、各艦隊の抱えている共通の問題を会議の議題として提出した。つまり、兵士達の士気である。

一同、頭を抱えて悩んでいる所に第13艦隊司令官のヤン提督より画期的な解決策が提示された。


「簡易出征式を行い、そこで第11艦隊司令官である作戦参謀『代理』殿に演説を行って貰うのは如何でしょう?」


画期的な解決策とは、詰まる所この場にいない人物に責任を押付け様と云う事であった。

そして、各艦隊司令官がヤンの案に賛成し、会議は不幸な作戦参謀『代理』の到着を待たずして終了した。

その後、事務処理を終えて『リオ・グランデ』内の会議室に到着したペトルーシャを待ち構えていたのは誰もいない真っ暗な会議室だった。









真っ暗な誰もいない会議室。

今の俺には先日の作戦会議の時に、一人取り残されたロボス元帥の気持ちが理解できた。

今なら言える『ゴメンナサイ』














補給が済んだ後、再び出征式を行う事になった。(今回のは簡単な出征式らしい。)

その式で、またまた作戦参謀『代理』として何か言えと言われた。どうやら、俺が遅れて会議に行ったのが原因か?(飼育係じゃあるまいし。)

毎度毎度の事だったので、俺は心良く『別に言う事はねえ。』と断ったのだが

ビュコック提督とウランフ提督に両腕を抱えられて無理やり壇上に引きずられて行った。

ちなみの、この様子は全艦に流されているらしい。

おい、笑っている奴ら。

全員顔を覚えておくからな。

覚悟して置けよ。

特に、ウランフ提督の艦隊の自称革命家。俺を指差して笑うな。


「ビュコック提督、演説って一体どの様な事を言えばよろしいので?」

「う~ん、全体的に弛んでいる士気を引き締めつつ、あまり好戦的にならない様な感じで頼む。やり方は貴官に一任するという事で。」


結局は訓示だか演説だかよく分からない事を話さ無くてはならなくなった。

なので、折角だから全員の気持ちを引き締める様な演説を行う事にした。


「現在我々がいる場所は何処だ。・・・そう、敵の領内の真っ只中だ。故郷の学校の裏庭では無い。

 我々には教師の目を盗んで昼寝を楽しんでいる余裕は無い。故に、今後は更に気を引き締めて作戦に望むよう切に願うものである。」




     ざわ・・・ざわ・・・


   「・・・あのイースト提督がまともな事を言ってる。」


                ざわ・・・ざわ・・・


  「今回の戦いは、そんなにヤバイのか?」  「あんなイースト提督は、イースト提督じゃない。」


 ざわ・・・ざわ・・・


     「どうするよ?」   「どうするも何も、イースト提督の言う通りにしないと危険が・・。」  「あのイースト提督は、偽物じゃないのか?」


                            ざわ・・・ざわ・・・




何?何なの、この反応。人が真面目に忠告したのに。結構良い事を言ったと思うのに・・・。

俺、怒って良い?怒って良いよね。

よし、言うぞ。

言ってやる。

・・・利根川さん、オラに少しだけ勇気を分けてくれ。


「ファ○ク ユー、ぶち殺すぞ。ゴミめら・・。」


                          シーーーーーーーーン


「今お前らがいる所は何処だ?此処はすでに地獄の釜の底(敵地の事)なのだ。

 いくら語ったって状況は何も変わらない。今、言葉は不要だ。今、おまえらが成すべきことはただ勝つ事、勝つ事だ。

 おまえらは負けてばかりいるから、勝つ事の本当の意味が分かっていない。『勝ったらいいな』ぐらいにしか考えてこなかった。

 だから、今、クズとして此処にいる。『勝ったらいいな』じゃない。『勝たなきゃダメ』なんだ。

 『リン・パオ』『ユースフ・トパロウル』『ブルース・アッシュビー』、彼らが脚光を浴び、誰もが賞賛を惜しまないのは言うまでも無く、ただ彼らが勝ったからなのだ。

 勘違いするな。よく闘ったからじゃない。勝ったからだ!!彼らは勝ったゆえに今その全て、人格まで肯定されている。

 もし彼らが負けていたらどうか?負け続けの人生だったらどうか?

 これも言うまでも無い。恐らく、『リン・パオ』は大飯喰らいの色情狂、『ユースフ・トパロウル』はボヤッキー、

 『ブルース・アッシュビー』口先だけの生意気な電波野郎。誰も相手にさえしない。分かりきった事だ。

 もう心に刻まなきゃいけない。勝つことが全てだと。

 勝たなきゃゴミ。

 勝たなければ!

 勝たなければ!!
 
 勝たなければ!!!!  」


演説が始まった辺りでは、多くの者が唖然としていたのだが、演説が終了した後に一瞬の間を置いて、所々で『勝つぞコール』が起こり始め

やがてそれは全体に感染して行った。


「勝つぞ!」 「勝つぞ!!」 「勝つぞ!!!!」


とりあえず、士気は上がったが・・・。いや、上げ過ぎか?このまま全員でオーディンまで突撃しそうな雰囲気だ。

これは不味いと思った俺は少し士気を下げる為に、もう少し演説する事にした。


「黙れ、ぶち殺すぞ。ゴミめら・・。」

「勝・つ・・・?」

「勝つだと?お前ら本当に勝てると思っているのか?だとしたら、救いようの無いゴミ共だ。

 此処は敵地だ。敵に地の利がある。その他諸々の利が敵にある。そんな状態で勝てるハズが無い。

 ならば如何するか?簡単だ。負けなければ良い。負けなければ良いのだ!!

 古代中国の兵法書『孫子』にも書いてある。(様な気がする。)『戦争で勝つ為の努力は無いが、負けない為の努力はある』と

 全ての戦争に敗因はあっても勝因は存在しないのだ。

 ならば、我々もそうしよう。勝てないならば如何する?

 負けない。

 負けない!

 負けない!!

 鉄壁ゆえに無敵だ。鉄壁!鉄壁!無敵!!」


「鉄壁!鉄壁!無敵!!、鉄壁!鉄壁!無敵!!」


俺は勝てと演説を行っていたと思ったら、いつの間にか負けるなと演説していた。恐ろしいモノの片鱗は特に味あわなかった。

それにしても、何なの?こいつ等。馬鹿なの?死ぬの?

凄い乗せ易い連中だ。思わず、全員サクラ?と疑ってしまう。

真剣に、こいつ等全員の将来が心配になって来た。悪い奴に騙されなければ良いが。(どの口が言う)







それから、出征式が終わって直ぐに、各艦隊がそれぞれ担当する星系に向って進攻して行った。

ちなみに、俺の第11艦隊の担当星系はかなり遠くの方だ。たぶん、一番危険だ。

俺は、再び生きたまま同盟に帰ってこれる様に旗艦の中で、祈っていた。





















一方の帝国では、動かない同盟軍を誘き出す作戦を考えていたラインハルトの所に、参謀のオーベルシュタインからの報告が入る。


「閣下、敵が動きました。同盟の各艦隊が帝国領へ進攻を開始しました。」

「何、今頃だと?・・・くっ、しまった。此方が辺境部へ食料の配布を完了した途端に進攻を開始するとは・・・。

 またしても此方の作戦を逆手に取られてしまった。おのれ、ペトルーシャ・イースト。」


その結果、ラインハルトはペトルーシャへの警戒心を更に強める事になった。




















第13艦隊の旗艦『ヒューベリオン』では、ヤンとシェーンコップが例の演説を行った作戦参謀『代理』について話していた。


「それにしても、作戦参謀『代理』殿の演説は、中々興味深い物でしたな。世が世ならヨブ・トリューニヒトの後継者・・、いや、対抗馬として充分やっていけるんじゃないですかね?」

「貴官はイースト提督と面識はあるのかな?」

「イゼルローン攻略戦の前に少し。その時も、少し変わっていると思ったのですが・・・。どうやら、かなり変わっている様ですな。」

「確かに、変わっていると云う意見には賛成だね。」


ヤンはシェーンコップが言っていた政治家になってヨブ・トリューニヒトとの舌戦を演じているペトルーシャ・イーストを想像し、それはそれで面白いと思った。























・・・・・つづく。




すみません。今回はかなりハッチャケました。思いついたネタをやってしまいたくなる私が悪いのです。

何か話しが全然進んでない。次回は前哨戦に突入出来ればいいなと思います。










[13584] 第二十五話 撤退反対派議員の思惑がひどい件
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/02/07 19:23


第二十五話 撤退反対派議員の思惑がひどい件 






占~拠♪ 占拠♪ 明るい占拠~♪っと云う訳で、無事に目標星域を占領した第11艦隊。

予想通りに敵の抵抗はまったく無く、駐留している敵もいなかった。

しかし、意外だったのは物資食料がある程度残されていた事だ。(実際には隠匿した食料がもっと隠されていると思うが)

占領地の民衆の話では、少し前に帝国軍の大艦隊がやって来て食料を配布して行ったそうだ。鉢合わせしなくて良かった。

それにしても奥深くに進攻し過ぎだと俺は思う。何故なら、お隣さんはブラウンシュバイクさんの家だ。

そのブラウンさん家の隣の星系(キフォイザー)にはあのガルミッシュ要塞があり、

もう一つのブラウンさん家の隣の星系(アイゼンヘルツ)にはガイエスブルグ要塞があったりする。

実際、この星系はイゼルローン回廊よりフェザーン回廊の方が近い。


「ラップ大佐、ブラウンさん家の隣の星系にあるガルミッシュ要塞を攻略し、簡易エンジンを取り付けて同盟領まで持って帰るのは無理かな?」

「(ブラウンさん?)中々面白い案ですが、我が艦隊のみの戦力では無理です。」

「そうだよな。無理だよな。攻略に成功したとしても、簡易エンジンを取り付けてる間に敵が殺到してくるだろうし。

 こんな事なら、帝国領侵攻作戦では無く、帝国領の要塞強奪作戦にすれば良かったんだよな。この様子では、もう一つの作戦『亡命者大量受入』も失敗だな。」


参謀のラップに愚痴っている俺だった。

実際、ブラウンさんの家に無断で上がり込めば、激怒したブラウンさん家のオットさんが大艦隊を率いてやってくるかも知れない。

それはそれで、怖い気がする。

『亡命者大量受入』作戦とは、その名の通り帝国領からの亡命者を募り『輸送艦・快速』に詰め込んで、同盟領に送る作戦だ。

俺の作戦失敗発言にフォローを入れる様に口を開くフック・カーン大尉。


「しかし、まだ亡命者を募っている段階ですので失敗かどうかは分からないと思うのですが・・・。」

「・・・いや、此処の領主が逃げ出さずに残っている時点で駄目だ。此処の領主が、民衆に圧制を布いている暴君ならば良かったのだが・・・。」


実際、第11艦隊が占領した星系の領主は特に圧制を布いている訳でも無い。

・・・いや、敵がやって来たのに逃げ出さずにいる時点で充分立派な人物と云えるのではないか?俺ならば、逃げ出す。

俺は占領してからすぐに領主のフェルデナンド・フォン・エスターライヒ伯爵に面会した。

壮年の男性だったが、開口一番に自分の事では無く、民衆の処遇についての話題を切り出してきた。

行き成り、この領主を処断しては民心に動揺を与え、暴動や反発などを引き起こす可能性が高いと判断した俺は、領主へはこの地の統治についての協力を要請した。

簡単に言えば、『今まで通り統治しろ』って事だ。

だって、面倒くさいじゃん。

すぐに、撤退する訳だし。














第11艦隊が、フォルゲン星系を占領してからしばらく経った。

相変わらず、基本的な統治はエスターライヒ伯に任せているが、俺としても何もしないと云う訳にはいかないので、

定期的にエスターライヒ伯の家で現在の領地の状態についての報告を受けている。

『後、どれ位の食料の備蓄があるか』とか『後、どれ位で作物が収穫できるか』とか、そんな事だ。

単純な計算でいけば、収穫前に備蓄が底をつく事になる。そうなったら、艦隊から食料を分けなくてはならない。

俺は、エスターライヒ伯の家からの帰り道で地上車に揺られながら窓の外の様子を観察している。

様々な人が働いている。俺に気付いた人は不安げな表情を浮かべる。

その表情から、今この地の民衆が望んでいるのは帝国からの開放でも無く、圧制からの開放でも無い。

ただ、この地が戦場にならない事を願っている、と俺は感じた。




















所変わって、帝国の首都星オーディンにあるライハルトの元帥府。


「閣下、フォルゲン星系が同盟軍によって占領された様です。」

「・・・まさか、そんな奥まで進攻してくるとはな。念の為に、焦土作戦の範囲にして置いて助かった。

 遥々、その様な所まで進攻して来るとはご苦労な事だな。で、どの艦隊が進攻して来たのだ?」


ラインハルトは余裕の笑みを持って、自分の参謀に問い掛けたが、その答えを聞くと同時にその笑顔が驚愕へと変わった。


「同盟軍第11艦隊です。」

「何!!またしても、ペトルーシャ・イーストか。・・・ヤツめ、一体何を企んでいる。

 ・・・・・そうか!!分かったぞ。ヤツの狙いはガイエスブルグ要塞とガルミッシュ要塞だ。直ぐに要塞に増援を派遣する。

 ガイエスブルグにはケスラーを、ガルミッシュにはレンネンカンプだ。ブラウンシュバイク星系には・・・特に必要無い。」

「はっ、直ちに。」

「そう何時までも、後手に廻っていると思うなよ。ペトルーシャ・イースト。」


執務室より退出していく参謀の背を見送ると、ラインハルトは一人呟いた。























食えば減る、食わねば腐る食べ物は、減らぬは人の食わぬなりけり。

フォルゲン星系を占領した第11艦隊だったが、これ以上やる事が無いので撤退命令が来るのを大人しく待っている所だ。(多分、来ないと思うが)

一応、撤退に備えて色々と小細工をしておいた。(敵の接近を素早く知る為に、星系の各所に無人偵察用の衛星を設置したりなど・・・。)

そして、ついにエスターライヒ伯爵領にあった食料の備蓄が底をついた為、第11艦隊から食料の配布をしなければならなくなった。

このままでは、第11艦隊の食料も直ぐに無くなる。

俺は、イゼルローンに『さっさと食い物、持って来い。持って来ないと帰るぞ。』っと、通信を送った。

副官は、『持って来ないと帰るぞ。』の所を聞いて「流石に、あれは冗談でしょう?」と言っていたが


「俺は本気だ!!」


と、言っておいた。

そう、俺は本気だ。食料が無くなるor敵がやって来る、これらの内どちらかの事態が生じたら直ぐに逃げ帰るつもりだ。





















その頃、、同盟軍第11艦隊を初めとする各艦隊の占領地で不足し始めた物資(実際にはまだ余裕がある)の要求が

イゼルローン要塞を経由し、自由惑星同盟の首都星ハイネセンへと伝えられた。

そして、最高評議会では一部の良識派から『直ちに、撤退すべき』との意見が出始めたのだが、


「元々、遠征の目的は帝国の重圧にあえぐ民衆を解放する事にあります。5000万人もの民衆を飢餓から救うのは人道上からも当然でありましょう。

 現時点で帝国からの抵抗が無いのは、民心が同盟に傾いている証拠です。直ちに、占領地の住民に食料などの必要物資を供与すべきです。」

「当初の予定だけでも必要経費は2000億ディナールだ。これだけでも、予算を大幅に上回る事は確実であるのに、これ以上の出費があれば財政の破綻は目に見えている。」

「占領地を放棄し、遠征を中止すれば良い。」


撤退反対派の議員の意見に対し、財務委員長のジョアン・レベロ議員と人的資源委員長のホアン・ルイ議員が遠征継続の無謀さと撤退を促す発言をする。

しかし、二人の撤退論はサンフォード議長の


「『我が軍将兵に戦死の機会を与えよ、手を拱いて日を送れば不名誉なる餓死の危機に直面するのみ』こう云う報告が届くようでは物資を送らない訳にはいくまい。」


との意見により、補給の物資の輸送が決定された。そして、撤退命令が出される事は無かった。

だが、撤退反対派の議員も決して無能では無い。本音では敵の焦土戦術に乗せられた事や現時点では撤退が最善の行動だという事は承知していた。

そして、自分達がある人物の扇動に乗ってしまった事についても薄々は気付き始めていた。

彼らが撤退反対する理由は、帝国領進攻に賛成した自分達の面子の為であった。

多くの議員が心の中で『一回だけでも戦術的勝利をあげたら直ぐに撤退命令を出す。』と自己正当化をしていた。

結果、イゼルローンの司令部から前線に対し撤退命令の変わりにある命令が送られた。


『本国より物資が届くまで必要とする物資は各艦隊が現地において調達すべし。』と
















またしても、帝国の首都星オーディンにあるライハルトの元帥府。あれ以来、たいした動きの無い同盟軍に対し警戒心を強めていたラインハルトの所に一つの報告が入った。

イゼルローン要塞から前線に輸送艦隊が派遣されるとの事だった。

ラインハルトはこの輸送艦隊の襲撃を、辺境星系への物資配布の任務を完了して帰還して来たキルヒアイスに任せる事にした。


「キルヒアイス中将。イゼルローンから前線へ輸送艦隊が派遣される。お前に与えた兵力の全てを持ってこれを叩け。細部の運用はお前の裁量に任せる」

「・・はい。ラインハルト様。」

「キルヒアイス、勝つ為だ。」


ラインハルトは、若干元気の無いキルヒアイスへ言い訳を行い、

心の中では『キルヒアイス、お前は何も言わないが今回の作戦(焦土作戦)には反対だったのだろう。だが、それももうすぐ終わる。いままでは・・・。』などと

回想モードに突入した。

しかし、キルヒアイスに元気が無いのには別の理由があった。

ただ単に、キルヒアイスは疲れていただけだった。

キルヒアイスはイゼルローン要塞に隣接している星系の全てに物資を配布し、帰還しようと思った矢先に同盟軍の大進攻が始まってしまった為に

同盟軍の艦隊に遭遇しない様に辺境星系を遠回りして帰還して来たばかりだった。

そして、キルヒアイスは艦隊を率いて同盟軍の輸送艦隊を殲滅しに出征した。
















・・・・つづく。









※フェルデナンド・フォン・エスターライヒ伯爵はオリキャラ(一発)です。出番はもう無いでしょう。

※作者の脳内星系図はPS版の『銀河英雄伝説』を元にしている為、若干可笑しい所があるかもしれません。ご容赦の程をよろしくお願いします。

次回こそは、前哨戦に・・・。








[13584] 第二十六話 「やっと分かった、同盟軍の奴らは阿呆だ。」byラインハルト
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/02/10 10:31


第二十六話 「やっと分かった、同盟軍の奴らは阿呆だ。」byラインハルト 






「イースト提督、イゼルローン要塞より指令が届いております。」

俺は副官からの報告を受け、指令を確認する。


『本国より物資が届くまで必要とする物資は各艦隊が現地において調達すべし。』


何これ?現地調達?略奪しろって事か?

副官のフック・カーン大尉も俺の隣で首を捻っている。


「一体、司令部は何を考えているんでしょうか。現地調達とは略奪の事では無いのですか?」

「あるいは、帝国軍の輸送艦隊に食料を分けてくれる様に要請しろって事か、もしくは帝国政府にお前らの民衆が喰った分の代金を払えって事で請求書でも送るか?」

「・・・そっちの方が、まだマシですね。」

「・・念のため、撤退準備をして置く様に全艦に通達してくれ。」

「了解しました。」


俺は念の為に隣接星系にいるヤン提督の第13艦隊に通信を入れ、撤退準備をして置く様に言って置こうと思い通信を入れた。


「って、訳で撤退の準備をして置いた方がいいだろ。『補給が失敗する』、又は『敵が進攻して来る』のどちらかの事態が起こったら直ぐに逃げようと思う。

 そっちも適当にやって置いてくれ。・・・後、ウランフ提督とビュコック提督にも連絡よろしく。」

「了解しました。それから、イゼルローンの総司令部の方に全軍撤退を進言して置いた方がよろしいと思うのですが・・。」

「そうだな。司令部の方へはビュコック提督かボロディン提督から進言してもらった方が良いだろう。

 自慢じゃないが、俺はロボス元帥に嫌われているからな。」

「・・確かにそうかもしれませんね。私からビュコック提督に伝えておきます。」


用件が済んだ為、互いに敬礼した後に通信を終了した。

もし、イゼルローンから撤退命令が来ても、撤退を開始した途端に追撃を掛けられたら不味いな。

俺は、念の為に小細工をして置く事にした。

・・・って、ヤンの野郎何気に酷い事言わなかったか?


「ヤン提督は無害なフリをして、結構毒舌家だな。」

「閣下と同じですね。」

「失礼だな。俺はちゃんと相手を選んでいるぞ。」

「確かに、悪い方に選んでいますね。」






















撤退戦の為の小細工が終了し、『イゼルローンからの補給物資』あるいは『輸送艦隊の壊滅の報告』、『敵襲の報告』の内のどれが最初に来るかと

待っている俺の所に慌てた副官が飛び込んできた。

俺は副官の慌てぶりから、悪い知らせだと推測する。多分後ろの二つの知らせのどちらかだな。


「如何した。輸送艦隊が壊滅したのか?それとも敵襲か?もしかして、両方だったりするのか?」

「半分正解です。襲撃を受けたのはイゼルローンを出発した輸送艦隊と、それを護衛していたルフェーブル提督の第3艦隊です。輸送艦隊の被害は50%ほどで、第3艦隊の被害は軽微の模様です。」


その後、副官から詳細な報告を受けた。

流れ的には、イゼルローン要塞を出発した輸送艦隊とそれを護衛する為のルフェーブル中将の第3艦隊が大規模な敵艦隊によって襲撃を受けた。

大規模な艦隊。報告によると、第3艦隊の約4倍の数だったそうだ。大体5万隻くらいか?多分、キルヒアイスの仕業だ。

流石に4倍の敵と正面から戦おうとは誰も思わない。ルフェーブル中将も、そう思ったハズだ。

第3艦隊は敵に遭遇した時点で、輸送艦や輸送コンテナを盾にして後退を開始した。


(輸送艦については、イゼルローンでの俺との引き継ぎの際に『輸送中に敵襲を受けた時に盾に使う為に、輸送艦を無人操縦にして置けばいいんじゃね?』って

 言って置いたのをちゃんと採用してくれた様だ。まあ、無人操縦にすると多少動きが鈍くなるが仕方ない事だ。

 同盟軍の使っている輸送艦はデカイ。どのくらいデカイのかと云うと帝国の輸送艦の約2.5倍で全長約2500メートルだ。

 積んでいた物資は勿体無いが、盾や障害物としても使える。)


更に、ルフェーブル中将は無人の輸送艦を帝国領に向けて突っ込ませた。

これには帝国軍も驚いただろう。何しろ、護衛をしている艦隊が護衛対象の輸送艦を盾にしたり、無防備な状態で帝国領に突っ込ませたりしたのだからな。

普通なら、護衛無しの輸送艦などに構う必要は帝国軍には無いのだが、今回の彼らの任務は輸送船団の襲撃だった為に突っ込んできた輸送艦に注意が集中した様だ。

敵の艦隊との戦いに集中した所為で突っ込んできた輸送艦を見失い、見失った輸送艦が同盟軍の占領星系に辿り着いたりしたら、本末転倒だ。

(まあ、どうせ一部の輸送艦が無事に辿り着いたとしても雀の涙程度の量だが。)

で、帝国軍が突っ込んできた輸送艦や盾になった輸送艦を破壊している間に、第3艦隊と残りの輸送艦は無事にイゼルローンまで撤退出来ました。めでたし、めでたし。

以上が、『赤毛の輸送艦隊襲撃事件』の顛末だ。

その後、イゼルローンより


『ま、まだ補給が失敗した訳じゃないんだからね!!帰って来て欲しい訳じゃないんだから!!』


と、通達があった。

何か、『イラッ』と来たので、俺は第11艦隊の将兵全員を艦に収容し、フェルデナンド・フォン・エスターライヒ伯爵に別れの挨拶をして

何時でも撤退出来る様に万全の体勢を整えた。






















キルヒアイス提督の指揮する艦隊が、同盟軍の輸送艦隊に大損害を与えたとの報告を受けたラインハルトは

自分の作戦が上手く行っている事を喜ぶと同時に、上手く行き過ぎている事を不審に思い始めた。


「可笑しい、ペトルーシャ・イーストともあろう者が後手にまわりすぎている。これは、何かあるハズだ。」

「閣下、確かにペトルーシャ・イーストは優れた戦術家です。しかし、優れた戦術家が優れた戦略家である訳でもありますまい。

 あるいは、ペトルーシャ・イーストは優れた戦略家なのかも知れません。しかし、彼は同盟軍の元帥でも総司令官でも無いのです。

 如何に優れた人物でも、上官が無能では能力を生かす機会はありません。」

「だが、同盟軍の上層部が無能では無かったら・・・。」

「閣下。そもそも、この時期に大規模な出兵をして来た事自体が無能である証拠ではありませんか?」

「・・・・確かに、オーベルシュタインの言う通りだ。これより、帝国領を占領している同盟を斉唱する叛徒共に対し、全面攻勢に移る。

 至急に、提督たちを招集せよ。キルヒアイス提督へは、輸送艦隊襲撃の任務は切り上げ、フォルゲン星系を占領している敵の第11艦隊を撃滅する様に通達せよ。」

「閣下、お待ち下さい。現在、キルヒアイス提督の位置する星系とフォルゲン星系は距離があります。フォルゲン星系には、別の艦隊を派遣するのがよろしいかと。」

「オーベルシュタイン、ペトルーシャ・イーストは優れた戦略家では無いかも知れないが、優れた戦術家である事は確かだ。

 その事は、卿もイゼルローン回廊で直接味わったハズだ。」

「はい、ですが・・。」

「キルヒアイスは私が最も信頼している部下だ。キルヒアイスなら、ペトルーシャ・イーストに遅れはとるまい。だから、私はキルヒアイスに任せる、それだけだ。」

「はっ。」


オーベルシュタインのお陰で、『ペトルーシャ・シンドローム』が治りつつあるラインハルト。

そして、ラインハルトはついに大反撃を決意し諸提督を呼び寄せると、帝国領を占領している同盟軍に対しての反攻作戦を開始した。

・・・キルヒアイスの眠れない夜は続く。






















同盟軍第5艦隊司令官のアレクサンドル・ビュコック提督は、イゼルローン要塞の総司令部に通信を開き

今作戦の総司令官であるラザール・ロボス元帥に面会を求めた。

しかし、実際に画面の向こう側に出た人物はラザール・ロボス元帥では無く、

総参謀長のクブルスリー大将だった。


「前線の各艦隊司令官は撤退を望んでいます。その件について、総司令官閣下のご了解を頂きたいのですが・・。」

「現在、総司令官は昼寝中です。」

「・・・昼寝?」

「はい。敵襲以外起すなとの事ですので、総司令官との面会は致しかねます。ですが、総司令官の昼寝中にのみ小官に総司令官代理の権限が与えられていますので

 その権限で全面撤退を許可致します。」

「!?それは、ありがたいですな。それにしても、昼寝とは・・・。もし、総参謀長に総司令官代理の権限が無かったらと考えただけでも恐ろしいものですな。」

「はい。・・・実は、この案もイースト提督からのアドバイスに寄るものでして。」

「ふむ。相変わらず、色々な意味で期待を裏切らない人物ですな。イースト提督は。」

「はい、巷では『死神』や『亡霊』、『死化粧』などと呼ばれていますが、中々優秀な人物です。」

「『死化粧』は、初耳ですな。その様に呼ばれておるのですか?」

「どうやら、イゼルローン要塞限定の呼び名だそうです。」


両副官「「オホン!!」」


「でっ、ではイゼルローンでお会いしましょう。」

「は、はい。」


撤退の許可が出たため、気を良くしたビュコック提督とクブルスリー総参謀長の話しが脱線する。

両名の副官が咳払いでそれを忠告すると、慌てた両名は敬礼をすると通信を切った。
























「イースト提督、大変です。」

「どうした。フック・カーン大尉、敵襲か?」

「はい、帝国軍の大艦隊がフォルゲン星系に進攻して来ました。監視用衛星が敵艦隊を捉えました。」


敵の数は、大体こっちの4倍か?キルヒアイスか?赤毛の赤髭が来たのか?

・・・いや、違うな。キルヒアイスにしては艦隊の進行速度が遅すぎる。

恐らく、我慢の限界に達したブラウンさんか、『( ゚∀゚)o彡°リッテン!リッテン!』(リッテンハイム)辺りが私兵を率いてやって来たんだろう。

兎に角、撤退の口実が出来た訳だし此処は素直に逃げさせて頂きます。


「『撤退案B』だ。第11艦隊を二つに分け、それぞれ別ルートで撤退を開始する。分隊の方はルグランジュ少将指揮下の分艦隊4000隻とワイドボーン少将指揮下の分艦隊4000だ。

 分隊司令官はルグランジュ少将、副司令官はワイドボーン少将だ。残りは本隊として小官ことペトルーシャ・イーストが指揮する。

 なお『ナナシー・ノ・ゴーンベイ』少将は本隊の副司令官とする。」


兵力の分散はあまりいい手じゃないと思うが、二手に分かれればどっちを追撃するか迷っている間の分だけでも時間稼ぎが出来るだろうし。

俺は予め、作成配布しておいた幾つかの撤退案の内の一つを実行するように命令を出す。

俺の命令に従い、第11艦隊は混乱無く二手に別れて、フォルゲン星系からの撤退を開始した。












・・・つづく。




フォルゲン星系にやって来た敵の正体とは一体!?次回、明らかになるかも。



※新たなる呼び名『死化粧』の詳細については後日という事で。

※銀英伝の漫画版と外伝の黄金の翼を買いました。





[13584] 第二十七話 ドヴォルザークの『新世界』を聴きながら。
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/02/23 22:54


第二十七話 ドヴォルザークの『新世界』を聴きながら。 






補給戦を絶たれ、窮地に陥った同盟軍を殲滅すべく、帝国軍は一挙に反撃に転じた。


同盟軍第10艦隊も、例外では無く、帝国軍の艦隊と遭遇した。

第10艦隊司令官のウランフ提督は知将と云うよりは猛将に分類される提督だった。

ゆえに、彼は目前に迫って来た敵に対して逃亡では無く、迎撃を選択した。


「来るぞ!!敵との予想接触時間は?」

「およそ、六分。」

「よし、全艦総力戦用意。総司令部及び第13艦隊に連絡。『我敵と遭遇せり』とな。」

「はっ。直ちに。」

「やがて、ミラクル・ヤンが救援に駆けつける。敵を挟み撃ちに出来るぞ!!」

「「「おーー!!」」」

「もっとも、ヤンの方も今頃は・・・。」


第13艦隊が援軍に来る事を信じきっている部下達の様子を眺めながら、ウランフ提督は誰にも聞こえない様に小さく呟いた。

そして、彼の予想通り、ヤン提督の第13艦隊がウランフ提督の第10艦隊援軍に来る事は最後まで無かった。












一方、ヤン提督の指揮する同盟軍第13艦隊は、ウランフ提督の予想通りに

ヤヴァンハール星系で、カール・グスタフ・ケンプ中将が率いる別の帝国軍艦隊と遭遇していた。


「閣下。」

「いよいよ始まったな。もう少し早く撤退命令が貰えれば良かったのだが・・・。スパルタニアンの出撃準備を。」

「はい。」


指令席では無く、デスクの上に胡坐をかいて座っているヤンは、

艦長のマリノ大佐が敵ミサイル群に囮を発射するのを横目で眺めつつ、副官のグリーンヒル中尉に艦載機(スパルタニアン)の発進準備命令を出した。



スパルタニアンの発進命令が出た為、艦載機を収容している空母からは準備が出来たスパルタニアンから順次発進して行く。

そんな中で、自分のスパルタニアンの最終調整をしている女性メカニックを口説いている『自称撃墜王』のオリビエ・ポプラン大尉。

ナンパ中の彼に、女性メカニックが迷惑そうに声を掛けるより先に、ポプランの相棒?であるイワン・コーネフ大尉が声を掛ける。


「ポプラン、先に出るぞ。・・それから、ナンパは後にしろ。『出兵のしおり』は読んでないのか?今のお前の背中に、死神が留まって見えるぞ。」

「げっ。ヤバイ、ヤバイ。」


コーネフの皮肉により、『出兵のしおり』のある一説を思い出すポプラン。

『出兵のしおり』の戦闘前にしてはいけない事の欄に、


『俺、この戦いが終わったら結婚するんだ。』と発言する事。

『俺、故郷に帰ったらパン屋を始めるんだ。』と発言する事。

『私も、この頃少しは艦隊運動に自信が持てるようになったので、後でアッテンフェルト提督を見習って本でも書いてみようと思います。』と発言する事。

『子供が生まれた事。』を自慢する事。


などと、事細かに記載されていた。

ポプランは、その中の一つ『スパルタニアンの最終調整をしている女性メカニックを口説いてはいけない。(機銃の斜角が12度は狂っちゃうぞ☆)』を思い出した。

彼は女性メカニックを口説くのを止め、斜角の最終調整をしてくれる様にメカニックに頼むと

大人しくスパルタニアンに乗り込んだ。

ちなみに、コーネフは『クロスワードパズルの答えが葬式になると危険だぞ☆』の記載を見て以来、クロスワードパズルを自粛している。



そんなこんなで、この戦いにおいて第13艦隊の空戦隊の活躍には鬼気迫るモノがあった。まるで、背後に迫って来ている死神を振りろうとしているように・・・。

当初、帝国軍の艦隊司令官カール・グスタフ・ケンプ中将(元撃墜王)は


「そうか、第13艦隊か。噂のヤン・ウェンリーの手並みを見せて貰おうか。」


などと、余裕を持っていたのだが、敵の空戦隊の恐るべき活躍を目にし


「何たる様だ。あの程度の敵に、何を手間取っている!!後方から反包囲して艦砲の射程に誘い込め。」


元撃墜王らしい、対スパルタニアン用の戦術を展開したのだが、思った様な戦果をあげる事は出来ずにいた。


















あ…ありのまま、さっき起こった事を話すぜ!

俺は、第11艦隊が占領していたフォルゲン星系に進攻して来た敵の大艦隊を

隣のブラウンさんの私兵か何かだと思っていたら、キルヒアイス艦隊だった。

オカッパ(フレーゲル)だとかキワミ(ランズベルク伯爵)だとか、そんなチャチなもんじゃ断じてねえ。

もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ。

・・・ 

・・ 



偵察用無人衛星が捉えた映像にキルヒアイスの旗艦『バルバロッサ』が映っていた。

なので、あの大艦隊はキルヒアイス艦隊だ。

動きが鈍いと感じたのも、こっちを誘い出す為の罠に違いない。

身の危険を感じた俺は、偵察用無人衛星の『ジャミング発生』及び『時限式自爆』のスイッチを遠隔操作でONにするとフォルゲン星系を後にした。

それにしても、偵察用無人衛星に自爆機能なんて付いてたっけ?

疑問に思った俺は副官に尋ねた。


「偵察用無人衛星の自爆機能だが、この前(イゼルローン攻略時)使ったヤツには付いてなかったと思うのだが、新バージョンか?」

「確か、アーロカート技術大佐が色々と弄っていました。」

「アイツの仕業か。・・まあ、今回は色々と助かった。後でお礼でも言っておくか。」


俺は、『アイツもたまには役に立つな』と考えていると慌てたオペレーターから報告が入った。


「イースト提督!!大変です。」

「如何した。敵の伏兵か?」

「いえ、敵襲ではありません。工作艦に収納してある偵察用無人衛星が『自爆モード』なりました。」

「なに?・・・解除は可能か?」

「いえ、色々試しているのですが・・・『自爆モード』に移行すると同時にシステムがロックされていて、解除できません。」

「・・・全部捨てろ。今すぐに、即刻、直ちに、全部、棄てろ。」

「はい!!」


先ほどの考えは訂正だ。俺はイゼルローンに帰ったら、真っ先にアイツに『不適合処理表や異常処理表を書かせてやる。』と、心に誓った。

どうでもいい話だが、確かバルバロッサって、遠征に行って水浴びをしてたら溺れて死んだ皇帝だっけ?














同盟軍第10艦隊は食料庫の底が見え始めた状態だったが、全面撤退の目途たっていたために特に気にせず食料を消費し続けていた。

その為、第10艦隊の将兵は餓えている訳では無く、十分に士気は高く、惑星リューゲン上空での帝国艦隊との戦闘を有利に進めつつあった。


「現在の所、敵味方の損害は絶対数においては我が軍が優勢ですが、元々敵の方が数において勝ります。」

「・・・負ける事は無いが、勝利したとしても我が軍の損害は無視できない物になるか。」

「はい、このままでは。」


第10艦隊司令官のウランフ提督は参謀長からの進言を聞き、この遭遇戦をどの様な形で落とし所を作るか考え始めた。

一方、帝国軍艦隊の司令官フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト中将は戦況を有利に進める事が出来ずにイライラを募らせつつあった。


「ビッテンフェルト提督、戦況は我が方にとって、不利な状況です。」

「・・・言われんでも、分かっている。」


参謀からの報告を受けたビッテンフェルト提督は両腕を組み、右足のつま先で何度も床を鳴らしながら、素っ気無く答える。

彼の頭の中では、『如何に戦況を変えるか』と、必死に考えていた。

だが、特にアイディアを思いつく事が無かった彼は、隣の星系にいるある人物の援軍を期待した。

本当の所は、直ぐにでも敵に向って突撃をしたい所なのだが、副参謀長のオイゲンが泣きそうな顔でこっちを見ている為、ビッテンフェルトは自重した。


(実際の所は、何度か『突撃だ!!』と、叫んで命令を出そうとして、その度にオイゲンに止められる、と云う事が何度かあり

 会を重ねる毎に、オイゲンの表情が沈んでいった。)














ビルロスト星系では、アレクサンドル・ビュコック中将の同盟軍第5艦隊が

帝国軍のオスカー・フォン・ロイエンタール中将率いる艦隊と遭遇していた。

ビュコック提督の第5艦隊は、既に撤退を開始していた為、敵艦隊との戦端を開かずに

最初から逃げの一手をとっていた。

その為、帝国軍のロイエンタール艦隊による追撃戦の、一方的な被害者になるかと思われていた。


「敵の追撃を振り切れません。如何されますか、ビュコック提督。」 

「如何するも何も、此処は逃げの一手じゃ。全速でイゼルローンに撤退するんじゃ。」

「はっ。」

「やれやれ、一番に撤退命令を貰った我々がこの有様。他の艦隊は駄目かな。」

「何か仰いましたか?」

「いや、気にせんでいい。年寄りは独り言が多いんじゃでな。・・・そういえば、イースト提督が持って来た無人偵察用衛星はまだ残っておったかな?」

「はい、使用しておりませんので残ってます。」

「気休め程度じゃが、・・・無人偵察用衛星をばら撒いておいて貰えんかな。ついでに、機雷も少々。」

「はっ、了解しました。」


追撃に遭っている同盟軍第5艦隊では、司令官のビュコック提督が、ふと思い付いた戦法を試す様に

副官のファイフェルに指示を出した。

一方、追撃を掛けている帝国軍艦隊の司令官ローエンタール提督は


「最初から逃げの一手か。戦術的には正しい判断だ。」などと、


敵の戦術を評価する程の余裕を持って追撃していた。

だが、そんな余裕も突如として前方より発生した強力なジャミングと所々で発生した爆発により打ち砕かれた。


「なにっ、全艦減速。敵艦隊との距離を取れ。」

「はっ。」


咄嗟に速度を緩め、前方の敵艦隊より距離を取った為、ロイエンタール艦隊には被害は無かったが

その代わりに、艦隊陣形が乱れてしまう。


「ちっ、やられたな。追撃は一時中断する。陣形を整えつつ、前方の索敵。その後、再攻勢を掛ける。

 こんな二流の戦術に嵌って仕舞うとは・・・俺もまだまだだな。」


前方宙域の、ジャミングは直ぐに収まった。ロイエンタールは艦隊陣形を整えつつ索敵を行い

前方の安全を確認すると直ぐに追撃に移った。


(それぞれの艦には、衝突防止用の安全機能が付いており、艦の距離が近いとその装置が働き速度が出なくなる。

 その為、陣形が乱れるとそれだけで追撃速度が落ちる。)


その結果、ビュコック提督の第5艦隊は一時的に敵の追撃を振り切る事に成功した。


「ふぅ、やれやれ。咄嗟に思い付いた作戦でも上手く行くものじゃな。彼ら(技術将校)も、中々良い物を作ってくれるもんじゃな。」


ビュコック提督は、イゼルローンの技術将校に感謝し帰ったら彼らに一杯奢ってやろうと思った。

どうやら、副官のファイフェルも同じ様子だった。

ペトルーシャ・イーストが『偵察用無人衛星』に対し厳しい評価をしている一方で

ビュコック提督たち第5艦隊の面々は『偵察用無人衛星』に対し、高い評価をしていた。

まさに、『捨てる神あれば、拾う神あり』だった。(物理的には、両方とも捨てたが)

ただ、


「はい、素晴らしい『遠隔操作型自爆装置』でした。」

「そうじゃな、中々使い勝手の良い『遠隔操作型自爆装置』じゃな。」


アーロカート技術大佐が、作った『偵察用無人衛星』に対する認識は間違っていた。



















帝国軍のキルヒアイス艦隊の旗艦『バルバロッサ』では

寝不足と過労で、今にも倒れそうなジークフリード・キルヒアイス中将に

幕僚の『フォルカー・アクセル・フォン・ビューロー』と『ハンス・エドアルド・ベルゲングリューン』の両名が

タンクベッド睡眠をとる様に必死に説得していた。


「閣下、どうか1時間でも構いませんからタンクベッド睡眠をとって下さい。」

「そうです、このままではお体に障ります。」

「いえ、・・大丈夫です。私が眠っては、皆が死んでしまいます。」

「「かっ、閣下・・・。」」


キルヒアイスの返答に絶句したビューローとベルゲングリューンが互いに顔を見合わせ頷きあう。

その直後、艦橋で何が起きたのかは記録に残っていない。

ただ、ベルゲングリューンが赤毛の人物を肩に担ぎ歩いている様子や、ベルゲングリューンがタンクベッドに赤毛の人物を放り込む様子が目撃されたが

その事に関しては皆が口を噤んでしまい、真相は闇の中である。


















・・・・つづく。




ビュコック提督は原作より少なめの損害で撤退。

ウランフ提督は如何に・・・。次回で多分明らかに・・・。





フォルゲン星系にやって来た敵はキルヒアイス艦隊でした。


没案として、大貴族やその子弟が私兵を率いてやって来て

辺境叛乱の討伐のノリで、フォルゲン星系の民衆相手に暴虐の限りを尽くし

後からやって来たキルヒアイスやその他のラインハルト貴下の提督たちが

それを止めさせようとして戦闘になる。と云うのがありました。















先日の雪の日に、家から1キロも行かない所で前の車に突っ込みそうになりました。

全力でブレーキを踏んだのですが、ガリガリっとABSが効いていた為、車はゆっくり前進し、あわや大惨事でした。

何年か前の雪の時も同じことをやったのに、またやってしまった。

ヤンも「人間は同じ過ちを繰り返す」って言ってましたがその通りです。




[13584] 第二十八話 牛乳は白い物の王様
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/03/11 23:57


第二十八話 牛乳は白い物の王様 






自由惑星同盟の首都星ハイネセンにある高級軍人居住区の一角の

とある官舎で一人の少女が夕食に使った食器の片付けをしていた。


「あっ」  パリーン!


洗い終わった食器の水気を拭き取り、食器棚に片付けていた時に

食器棚にしまってあった現在留守にしているこの家の主(ぬし)で自分達の保護者である人物のカップを落し、割ってしまった。


「どうしたの?大丈夫、カリン。」


カップが割れる音を聴きつけ、少女の姉のアメークが様子を見にやって来る。


「大丈夫、なんでもないわ。・・・痛っ。」


慌てて割れたカップを片付け様として、カリンはカップの破片で指を切ってしまう。


「大変、片付けは後でいいわ。救急箱持ってくるから、カリンは指を舐めてて。」


姉に言われるまでも無く、カリンは反射的に破片で切った指を口に含んでいた。

そして、姉が戻ってくるまでの間、カリンは割れたカップを見ながら遠くの宇宙にいる自分達の保護者の無事を祈った。


「提督、無事に帰って来て・・・。」
















ヤヴァンハール星系で帝国軍のケンプ艦隊と遭遇した同盟軍の第13艦隊は戦況を有利に進めつつあった。

しかし、第13艦隊司令官のヤン・ウェンリー中将は敵に勝つより

一刻も早くこの場から撤退する事を目標にして戦っていた。

ヤン曰く

「この戦いは無意味だからね、生き延びるのが先決だ。」

である。

ヤンは艦隊運用の名人と言われている『エドウィン・フィッシャー』提督に艦隊運用の実行を任せ

第13艦隊に半月陣を布くと、それを左右にシフトさせ、敵の陣形の防御ラインを少しづつ削り取っていった。


(この調子で行けば、間も無く敵は一時後退して陣形再編を行うハズだ。その隙に、全艦で逃げれば良い。)


実際、ヤンは読みは当たっていた。

帝国軍のケンプ提督も自分の参謀に


「このまま無様な失血死をするよりは、犠牲を覚悟で後退し陣形を再編した方が良い。」と語り


一時後退の準備を整えていた。

そのまま、何事も無く時が流れればヤンの読み通りに状況は推移し

ヤンの第13艦隊はヤヴァンハール星系からの撤退を成功させただろう。

だが、ここで両軍の司令官が予期していなかったある事態が発生した。

























その頃、惑星リューゲン上空での帝国軍ビッテンフェルト艦隊と同盟軍第10艦隊の戦況は膠着状態に陥っていた。

帝国軍の艦隊司令官ビッテンフェルト提督、同盟軍の艦隊司令官ウランフ提督は共に攻勢に定評のある人物であり、共に有能だった。

司令官の能力が互角なら、数が多い帝国軍が有利であったが

現状は同盟軍有利に傾きつつあった。

同盟軍の司令官ウランフ提督が敵将より有能だったのか、あるいは長年の経験の差であるのかは後世の歴史家に判断を任せるしか無い。


両艦隊共に二割程の損害を出した所で、積極的な攻勢を止め、相手の出方を待つ様になった。

攻勢に定評のあるウランフ、ビッテンフェルト両提督は本来なら、この様な消極的な戦い方は得意では無い。

両提督共に戦況を変えるきっかけを待っていた。

そして、ついにその『きっかけ』がやって来た。


「ビッテンフェルト提督、フォルゲン星系方面より艦隊が来ます。」

「フォルゲン星系?ああ、キルヒアイス提督か。やっと来たな、これで勝てる。一気に攻勢に出るぞ、敵を殲滅せよ。」


この時、ビッテンフェルト提督は接近中の艦隊の所属を確かめる事をしなかった。

彼の頭の中では『フォルゲン星系=キルヒアイス』と云う方程式が出来上がってしまっていた。

中には、接近中の艦隊の所属を確認しようとする艦がいたのだが

ビッテンフェルト提督が直ぐに全面攻勢を命じた為に、その作業は中断された。

だが、幾ら司令官が勘違いをしていたとしても、艦隊の距離が縮まれば嫌でも気付く事になる。

そして、接近中の艦隊が『味方では無く敵』と一部の艦が気付いた時には

その艦隊から放たれた攻撃がビッテンフェルト艦隊の側面に突き刺さった。


「な、何だと!!」

「敵です!!接近中の艦隊は敵です。」


敵による側面攻撃を成功させたビッテンフェルト艦隊には、一気に混乱が広がっていった。

そして、この『きっかけ』に反応したのは帝国軍だけではなかった。


「敵は混乱しているぞ!!紡錘陣形を取り、敵の左翼を突き崩し突破せ!!」

「はっ!!」


陣形を再編している最中に、同盟軍第10艦隊司令官ウランフ提督の参謀長がある疑問を投げ掛けて来た。


「敵を突破した後はどうします?」

「・・・そのまま、撤退だ。」

「撤退ですか?このまま戦えば敵を殲滅出来ると小官か考えますが。」

「あれを見てみろ。」


ウランフ提督が指し示したのは味方の援軍だ。そして、その援軍の艦隊は既に撤退に入っている。


「あの艦隊は既に撤退を開始している。この宙域で戦い続ければ、我が艦隊は敵地に取り残される事になり

 あの艦隊を追って来た敵と遭遇する事になる。だから、撤退だ。・・・それにしても、アイツらしい見事な逃げっぷりだ。」


そして、陣形を再編した同盟軍第10艦隊は、まだ混乱している敵に向って突入していった。





















キルヒアイスゥゥ!!×3(エコー付)提督の艦隊に追い掛けられた俺ことペトルーシャ・イーストは

自分の指揮している第11艦隊を二手に分け、それぞれ別ルートで逃げていた。敵に遭遇しない事を祈って。


「前方で戦闘中の艦隊あり。」

「そうか。で、どっちが敵だ。」

「黒い方です。」


なるほど、確かに黒い、驚きの黒さだ。遠めでも分かる。本当に黒い。

俺は今まで、『カーボンナノチューブ黒体』が、この世で一番黒いと思っていた。

だが、その俺の価値観がどうにかなってしまいそうな位の黒さだ。


「全艦、慌てず、ゆっくり、優雅に、蝶のように、前進せよ。」

「了解しました。」


どうやら、敵は俺の艦隊を味方だと勘違いしている様な感じだ。

此処まで近づいたのに、俺の艦隊には特に反応せずに前方の第10艦隊との戦闘に集中している。

第10艦隊と戦闘中なのは、帝国軍のビッテンフェルト艦隊だな。

通称『黒色槍騎兵(シュワルツ・ランツェンレーター)』だ。

艦隊全てが、黒いのが特徴だ。

・・・なるほど、確かに黒い。だが、近くで見てみると思っていたほど黒くないな。

俺は手元にある『カーボンナノチューブ黒体』と見比べて思った。

やはり、『カーボンナノチューブ黒体』は黒の王様だ。

『カーボンナノチューブ黒体』に比べれば『黒色槍騎兵』など、只の黒っぽいヤツだ。

心配した俺が馬鹿だった。


「全艦、前方の『黒っぽい』艦隊に向って主砲を斉射せよ。蜂のように刺せ。」


俺の命令で放たれた攻撃が、シュワルツランツェンレーターの側面に突き刺さり、敵艦隊に一気に混乱が広がった。


「よし。では、全艦逃げろ。ゴキブリの様にだ。」


ふっ、完璧な作戦行動だ。蝶の様に舞い、蜂の様に刺し、ゴキブリの様に逃げる。

まさに完璧だ。俺の心の中のランズベルク伯も

『イースト提督の華麗にして優雅な作戦行動、このランズベルク伯アルフレッド、感歎のキワミ。』

と、賞賛している。


「・・・所で、ラップ君は」

「別ルートの分艦隊の方で参謀をしております。」

「そう。」


誰か、突っ込んでくれ。

俺はツッコミが居ないと死んでしまう。

(※フック・カーンは任務中は基本的に忠実。)













艦隊司令官の性格はその艦隊全体に感染するものらしい。

第11艦隊のルグランジュ提督とワイドボーン提督の指揮する合計8000隻の分隊は

ヤヴァンハール星系を進む中で敵艦隊と交戦中の第13艦隊を発見した。

そして、ルグランジュ分艦隊とワイドボーン分艦隊は帝国軍のケンプ艦隊の側面に攻撃を加えながら反包囲する動きを見せ

第13艦隊は突如現れた味方の動きに合わせる様に全面攻勢に出た。

たまらず、後退しながら防御の為に陣形を組み直すケンプ艦隊を尻目に

第13艦隊とルグランジュ、ワイドボーン両分艦隊は素早くその場を離脱し

ケンプ艦隊が陣形を組み直し終わった頃には、撤退を成功させてしまった。




















「あっ」  パリーン!


自由惑星同盟の首都星ハイネセンに高級軍人居住区の一角の

とある官舎のキッチンに一人の少女(カリン)の声と食器が割れる音が響き渡る。


「カリンちゃん、大丈夫?」

「だっ、大丈夫よ、大丈夫。」


食器の割れる音を聴きつけてやって来たのは、カリンの姉のベルナデッド。

(ちなみに、カリンとベルナデッドは同い年なのだが、ベルナデッドの方が数ヶ月誕生日が早いので姉という事になってる。)

そんな、ベルナデッドに返事をしながら割ってしまった食器を手早く処理していくカリン。

カリンは割れた破片を集め、不燃物用のゴミ箱に捨てる。そんな、カリンにベルナデッドが問い掛ける。


「・・・カリンちゃん、今月に入ってから何回目?」

「・・・・女は、1だけ数えられれば生きて行けるのよ。」


カリンが破片を捨てたゴミ箱の中には、色々な食器の破片が積み重なっていた。
















帝国軍ラインハルト・フォン・ローエングラム元帥の旗艦ブリュンヒルトでは

ある報告書がラインハルトの元に届けられた。


「何っ!!ビッテンフェルトとケンプが、同時刻に別の場所で同盟軍の第11艦隊と遭遇しただと!!

 第11艦隊、・・・ペトルーシャ・イースト。どの様な魔術を使ったのだ。

 ヤツは艦隊の湧き出す魔法の壷でも持っていると言うのか。」

「閣下、落ち着いて下さい。」


その後、詳しい情報が届けられるまでの間オーベルシュタインは必死になってラインハルトをなだめる事になった。










・・・・つづく。


別に、死亡フラグでは無いです。カリンは日常的に食器を割る子という設定で。




ノートパソコンの調子が悪くなり30分も使っているとオーバーヒートして勝手に電源が切れてしまう様になりました。

得意?の分解で中を見てみたらファンの所に黒い綿埃が思いっきり詰まっていて、ファンが動かない状態でした。

たまには、お手入れをしないと駄目だなと思いました。







[13584] 第二十九話 特攻ウォルフ 
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/03/12 10:19



第二十九話 特攻ウォルフ 






オカマを掘られたと彼は怒った。
彼は前を見ていなかったお前が悪いと言った。

オカマを掘った人物は怒った。
急に止まったお前が悪いと言った。

どっちも悪いと、気付くのにあと何年?


                  フレデリカ・ベルンカステラ
















アルヴィース星系では後に『アムリッツァ前哨戦の悲劇』と呼ばれる戦いが行われようとしていた。

ただし、『アムリッツァ前哨戦の悲劇』を戦いと定義するか、それとも事件あるいは事故と定義するかは

後世の歴史家の間でも分かれている。

ただし、多くの歴史家は、後者を選択する。





イゼルローン要塞へ撤退中の同盟軍第9艦隊は、敵の追撃を受ける事無く順調に行程を消化していた。

だが、旗艦『パラミデュース』で艦隊司令官アル・サレム中将の参謀が突如悲鳴に近い声をあげた。


「あっ、あれは!!」

「ん?ああっ。」


参謀の声に反応し周囲を確認したアル・サレム中将も、それを確認し思わず息を呑んだ。

そこには、後方より追撃して来た敵艦隊がいた。

それも、アル・サレム中将の想定していた速度を遥かに超えた速度で追撃を掛けてくる艦隊だった。

実際、後方より追撃して来たハズの敵艦隊は同盟軍第9艦隊に肉薄し、並走し、更に一部の敵は第9艦隊を追い抜いていた。


「なんと、素早い。」

「まるで、疾風だ。」


アル・サレム中将とその参謀は、敵の艦隊運動を見た正直な感想を口から発した。

その時、アル・サレム中将の脳裏に先日『変なスピーチ』を行った、ある人物が浮かんだ。


『何、アル・サレム?敵の追撃を振り切れない?

 アル・サレム。それは無理矢理逃げようとするからだよ

 逆に考えるんだ。『追い付かれちゃってもいいさ』と考えるんだ。』


その人物だったらきっとそう言う筈だ、とアル・サレムは思った。少なくとも彼はそう思った。

そして、彼は『それ』実行した。

すなわち、「全艦急速減速!!」と命令を出し、第9艦隊の各艦はその命令を直ぐに実行した。











一方、同盟軍第9艦隊を追撃している帝国軍の『ウォルフガング・ミッターマイヤー中将』率いる艦隊では

充分に余裕を持って同盟軍を追撃をしていた。

ミッターマイヤー艦隊の旗艦『ベイオウルフ』では司令官のミッターマイヤー中将が


「いかんな。少し速度を落させろ。距離を持たんと攻撃も出来ん(笑)」

と命令を出し、参謀達も口元に笑みを浮かべてミッターマイヤーの命令を肯定した。

だが、その命令を実行するより早く『それ』は起こった。

一言でその事態を表現するとしたら













『大☆惨☆事』














まさに、大惨事だった。

一瞬にして、アルヴィース星系で追撃戦を演じていた同盟軍と帝国軍の将兵の約半数が冥界の門をくぐり、残りの半数の艦隊も戦闘に耐え得る状態では無かった。

同盟軍第9艦隊司令官アル・サレム中将も重症を負い、艦隊の指揮を引き継いだ副司令官『ライオネル・モートン少将』が

第9艦隊の残存兵力を纏め、すぐさま撤退を開始した。

帝国軍ミッターマイヤー艦隊の損害と混乱も激しく、ミッターマイヤーは混乱を纏めるのに精一杯で

撤退に移っている同盟軍を追撃する余裕は無かった。




















イゼルローン要塞では、永きに渡る眠りから覚めたロボス元帥が

総参謀長であるクブルスリー大将が『総司令官代理の権限』で全軍撤退の命令を出した事を知り、激怒していた。

しかし、今更再進攻を命じるわけにも行かず、心の中に鬱憤が溜まって行った。

そんなロボス元帥の所に、同盟軍第9艦隊の惨状についての報告が入り、続いて各星系で同盟軍艦隊が帝国軍艦隊と遭遇しているとの報告が入った。

どちらの情報も断片的な物であった為、ロボス元帥はその断片的な情報のみで現状を判断するしか無かった。

断片的な情報とは、『第9艦隊は敵の攻撃を受け、一瞬の内に半数を失った。』、『同盟軍の各艦隊は同数、又はそれ以上の数の敵と遭遇している。』

『最深部の第11艦隊が駐留していた星系には、約4倍の敵艦隊が進攻して来た。』であった。

実際は、第9艦隊を一瞬で半数にした帝国軍のミッターマイヤー艦隊であったが、与えた以上の損害を被るっていた。

また、帝国軍と遭遇した同盟軍の各艦隊は一進一退の攻防を繰り広げており、敵からの離脱を成功させた艦隊もいた。

そして、第11艦隊は約4倍の敵の追撃を完全に振り切る事に成功していた。

だが、そんな事を知らないロボス元帥は事態を深刻に受け止め

ある命令を全艦隊に下した。

すなわち、兵力の再編成を行い帝国軍に最後の抵抗をする為に『全軍、アムリッツァ恒星系に集結せよ。』と















猪艦隊を振り切り、無事に撤退に移る事が出来た第11艦隊(俺が率いている方)は

ウランフ提督の第10艦隊と無事に合流し、一緒に逃げている俺の所に

イゼルローンの司令部より命令が届いた。


『全軍、アムリッツァ恒星系に集結せよ。』


正直、『通信の調子が悪い』とか適当な理由を付けてイゼルローンに逃げ込みたい。

隣にウランフ提督の艦隊がいなければそうしたい所なのだが・・・。

ウランフ提督の手前命令を無視する訳には行かず、俺の第11艦隊と第10艦隊は命令通りにアムリッツァ恒星系に向った。





































帝国軍ラインハルト・フォン・ローエングラム元帥の旗艦ブリュンヒルトでは

先日の件についての詳細な報告がラインハルトの元に届けられた。


「・・・なるほど、つまりヤツは艦隊を二つに分けていただけか。

 ふっ・・ふはははははははっはは、何の事は無い。ただ、分けただけだ。何を恐れる必要がある。

 ふははははははははははははははははは・・はっ!!・・ゲホッ!ゲホッ!」

「閣下!!落ち着いて下さい。」


詳しい情報が届けられた後も、オーベルシュタインは必死になってラインハルトをなだめる事になった。

















・・・・つづく。



ついにやってしまった。ミッターマイヤーの追突はこの作品を書こうとした時、真っ先に思いついた事でした。

この事だけで書きたい事の半分は書いた様な気持ちです。

次回から少し『ペト無双』が入るかも知れません。ご了承下さい。



蒼天航路を読んでいたら、急に恋姫のSSを書きたくなってきた今日この頃です。

『二兎を追うもの、一兎も得ず』なので、とり合えず此方を完結させてからどうするか考えたいと思います。











[13584] 第三十話  落書きでも良いから載せて欲しい。
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/03/23 18:28

第三十話 落書きでも良いから載せて欲しい。 






イゼルローン要塞にいる総司令官ラザール・ロボス元帥によるアムリッツァ恒星系への集結命令を受けた同盟軍の各艦隊は

帝国領の各地からアムリッツァへと集結していった。

先ず、ビュコック提督の第5艦隊が到着し、続いてヤン提督の第13艦隊、ウランフ提督の第10艦隊。

そして、第10艦隊と第13艦隊に合流していたペトルーシャ・イースト提督の第11艦隊が到着した。

アムリッツァに到着した艦隊は機雷の設置や艦隊の再編などの作業を開始した。

そこに、ボロボロになった第9艦隊を副司令官のモートン提督が率いて到着した。

事の次第を第9艦隊の面々より聞いた各艦隊の司令官達が憤る中で

第11艦隊のペトルーシャ・イースト提督が最も怒りをあらわにしたと彼の副官が記録に残している。


「アル・サレム中将ぉ!!貴官の仇は絶対俺がとってやる!!」

「イ、イースト提督!?」

「チキショー、帝国軍の奴ら。敵は兎も角、味方の将兵の命も屁とも思ってねぇのかよ!!

 何でこんな事になったのか皆目見当もつかねーよ!!帝国軍の奴らこの宙域にやってきたら、マジぶっ殺してやんよ。」

「提督、如何したんですか?そんなに汗をかいて・・。」

「何か暑いぞ。もっと、空調をきかせろ、ボケ、コルァァ。」













そんなイースト提督の元に、彼以上に激怒した人物が訪れた。

第9艦隊の残存艦隊を率いてアムリッツァにやって来たモートン提督である。


「イースト提督!!」

「はい、済みませんでした!!」


モートン提督は自分を見るなり、行き成りジャンピング土下座して来たペトルーシャ・イースト提督を見て思わず目が点になってしまい呆気にとられた。


「・・・・イースト提督?何を為さっているのですか?」

「えっ?いや・・・その・・何か、怒ってたのでつい・・反射的に。・・いや、それより用件は?」

「おお、そうでした。是非、小官に復讐戦の機会をお与え下さい。アル・サレム提督の仇を討たせて下さい。是非!是非!!是非!!!」

「わ・・分かりました。小官にお任せ下さい。(少し離れろ、顔が近いぞ。)」


結局、モートン提督の迫力に押されてペトルーシャ・イーストはこれから行われるアムリッツァ星域会戦への

モートン提督の参戦を許可してしまった。


(さて、如何するか。モートン提督の様な優秀な提督が参戦してくれるのは嬉しいかぎりなんだが

 如何せん、第9艦隊が壊滅状態だからな。率いて貰う艦隊を如何するかが問題だな。

 ・・・まあ、その辺りは他の艦隊が合流してからか。とり合えず、ビュコック提督に相談してみるか。)


ペトルーシャ・イーストは、とり合えず問題を先送りにした。















あれから少し時間が経ち、機雷の設置も完了し、他の同盟軍艦隊もアムリッツァに集結した。

第7艦隊、第8艦隊、第12艦隊の状態は無事とは言い難いが、酷いとも言え無いそんな状態だった。

ホーウッド中将の第7艦隊の損害は3割程で、アップルトン中将の第8艦隊、ボロディン中将の第12艦隊は2割程の損害だった。

この三提督曰く『当初は有利だったのに、イゼルローンからのアムリッツァ集結命令を受け、急遽撤退を開始した為に出た損害だ。』との事で、かなりご立腹の様子だった。

特に第7艦隊のホーウッド中将は、終始『ぶつぶつ』と独り言を言っていた。『ロボス、シナス』とか『絶対に許さない、絶対にだ。』とか言っていたが俺は何も聞いていない。



全艦隊が集結したので俺を初めとする各提督達は戦力の再編を行った。

先ず、艦を『無傷の艦』と、『戦いには耐えられる程度の損傷している艦』、『損傷していて航行可能だが戦いには耐えられない艦』に分け

重態の兵士を病院船にぶち込み、命に別状無い程度の重症の兵士は輸送船に詰め込み、『損傷していて航行可能だが戦いには耐えられない艦』と一緒にイゼルローンに送る事にした。

なお、これ等の撤退する艦隊にも護衛が必要との事だったので、

一番ロボス元帥に会いたがっていたホーウッド中将と第7艦隊から5000程度割いて護衛として送り出した。

決して、ぶつぶつと独り言を言っていて、今にもラップを歌いだしそうな彼が怖かったからじゃない。







「と言う訳でして、いかが致しましょうか?」


俺は目の前にいるビュコック提督にモートン提督の処遇について相談している所である。


「そうじゃな。ワシとウランフの所から少し割いて、第7艦隊の残りを率いて貰うと云うのはどうじゃな?」

「小官の第11艦隊からは出さなくて宜しいのですか?」

「貴官の第11艦隊は其のままで良い。わざわざ、無傷の艦隊を削るのもなんじゃてな。その分、貴官には働いて貰うつもりじゃがな。」

「・・・了解しました。死なない程度に働かせて貰います。」


もう少しで『ビュコック提督の艦隊も無傷では?』と聞き返して仕舞いそうになったが、何とかその言葉を飲み込んだ。

もし言ったら「じゃあ、貴官の艦隊も分けて」って事になりそうだ。

そんなこんなで艦隊再編は無事に完了し、同盟軍艦隊はアムリッツァ恒星系で帝国軍を待ち構える事になった。











ちなみに、艦隊の状況はこんな感じだ。
                               


     艦隊名及び指揮官名          アムリッツァへ撤退して来た艦数     戦闘可能艦数       戦闘不可能艦数


第5艦隊(アレクサンドル・ビュコック中将)          13,000隻          13,000隻            無し

第7艦隊(ホーウッド中将)                    9,000隻           6,000隻           3,000隻

第8艦隊(アップルトン中将)                  10,000隻           8,000隻           2,000隻

第9艦隊(アル・サレム中将)※1                6,000隻           1,000隻           5,000隻 

第10艦隊(ウランフ中将)                    11,000隻          10,000隻          1,000隻

第11艦隊(ペトルーシャ・イースト中将)            16,000隻          16,000隻            無し

第12艦隊(ボロディン中将)                   10,000隻           8,000隻          2,000隻

第13艦隊(ヤン・ウェンリー中将)               14,000隻          13,000隻           1,000隻


 合計                                89,000隻          75,000隻         14,000隻               


※1、アル・サレム提督は名誉の負傷により、指揮権はライオネル・モートン少将が引き継ぎました。







     艦隊名及び指揮官名          アムリッツァ星域会戦参加艦数     


第5艦隊(アレクサンドル・ビュコック中将)       10,000隻        

第8艦隊(アップルトン中将)                7,000隻       

第9艦隊(モートン少将)                   4,000隻         
 
第10艦隊(ウランフ中将)                  8,000隻        

第11艦隊(ペトルーシャ・イースト中将)         16,000隻       

第12艦隊(ボロディン中将)                 7,000隻        

第13艦隊(ヤン・ウェンリー中将)            13,000隻     


 合計                             65,000隻       



第7艦隊司令官のホーウッド中将は5,000隻の護衛艦隊を率いて『戦闘不可能艦数』14,000隻と輸送艦、病院艦、工作艦と一緒にイゼルローン要塞へ撤退してもらった。       

・・・あれ?何か可笑しい様な気がする。気のせいか?






























※本日の『金髪と愛犬家』は作者の都合で休載になりました。またのご愛読をよろしくお願いいたします。




















・・・・つづく。






『極東杉の木撲滅委員会』会長の豆です。本当は『日本杉の木撲滅委員会』にしようと思ったのですが、そっちの組織は既にあったので極東にしました。

主な活動内容は雨が降るように祈ったり、杉林がテレビに映るたびに『燃えろ、消えろ、枯れてしまえ。』と祈る事です。

現在、会員募集中です。

参加方法は以下の通りです。



①適当に自分の役職を決める。何々支部長、名誉会長などなど

②決めた役職を宣言する。


以上です。





[13584] 第三十一話 イーストのパーフェクト再編教室
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/03/23 18:08



第三十一話 イーストのパーフェクト再編教室







お家(イゼルローン)から~♪  指令でて~♪

アムリッツァに89,000隻 集まった~♪


アムリッツァの~♪  再編で~♪

14,000隻  離脱した~♪


離脱艦の~♪  護衛の為に~♪

5000隻  離れて 行っちゃった~♪


残りの艦隊 65000隻

何故なら  何故なら それは~♪

動かせる人  居ないから~♪










怪我人を病院船や輸送艦に詰め込んで、見境無くイゼルローン要塞に送ったのが不味かった。

艦自体は小破で戦闘可能でも、中の人員は無事では無く、結構被害があったと云う事だ。

その所為で、人員不足に陥る艦が続出したので

適当に人員の配置変更をした結果がこれだよ。

もう少し、効率良く配置変更をすればこんな事には成らなかったと思うのだが

ハッキリ言って、そんな余裕は無い状態だし、今から再編する余裕も当然無い。

俺の心の中のフィッシャー提督も『再編をしている余裕は無い。時間を浪費する事無く、最短の道(地獄への)を逝くとしよう。』と仰っている。






急遽発生した無人艦5,000隻。

コイツを如何するかだ。


「イースト提督、第10艦隊のウランフ提督から通信が入っております。」

「そうか、繋いでくれ。」


俺が無人艦の処遇について悩んでいるとウランフ提督より通信が入った。


「ペトルーシャ・イースト提督、先ほどは助かった。それにしても見事な逃げっぷりだったな。」

「いえ、当然の事をしたまでです。それに、小官より逃げるのが上手な人物だっていまよ。本人も『敗走させたら右に出る者は居ない』と言っていますし。」

「ほお、誰だ、そいつは。」

「ウランフ提督の艦隊にいる『ダスティ・アッテンボロー大佐』です。その件については小官よりもヤン提督の方が詳しいと思います。

 それより、用件は無人艦の事でしょうか?」

「ああ、その通りだ。」

「その事でたった今、思いついた事なのですが、・・ダスティ・アッテンボロー大佐に無人艦隊の司令官代理に任命し運用を任せるのは如何でしょうか?」

「なに?」

「無人の艦艇ですし、非常時ですし、悩んでいる時間すら惜しい状況です。」

「・・そうだな。他の提督達に話して良い案が無ければ貴官の案で行こうと思う。」

「では、失礼します。」


互いに敬礼をし、通信を切る。

アイツなら大丈夫だろ?

ちなみに、無人艦隊の旗艦は『ユリシーズ』が良いと思う。後で進言しておくか。


















ペトルーシャ・イーストが提案したダスティ・アッテンボローを無人艦隊の司令官に任命する案は、他の提督達から特に反対も出なかった為に

アッサリと決まってしまった。

この事に対して一番不本意だったのは、恐らくアッテンボロー本人だった。

彼は、自分が司令官に任命された事をヤン・ウェンリーから知らされる事になった。


「おめでとう、アッテンボロー提督。」

「アッテンボロー提督?・・何ですか?藪から棒に。」

「今回の編成で、無人艦が大量に発生したのは知ってるかい?」

「はい。」

「その無人艦隊の初代司令官にお前さんが任命された、と云う事だ。」

「ちょっと待って下さい。行き成りそんな事を言われても・・艦隊運用の事や、作戦中の行動の事など色々と・・・。」

「その辺は、提案者と相談してくれ。」

「提案者?」

「お前さんの、『尊敬している偉大な先輩』だ。」

「偉大な先輩?キャゼルヌ少将ですか?」

「イースト提督。」

「偉大な先輩ねぇ。」

「前に、イースト提督がお前さんの事を『三十代で元帥になる』、

 『ヤン・ウェンリーやペトルーシャ・イーストよりも智勇の均衡が取れた剛柔な提督になる』って、誉めてたからな。」

「・・・・嫌がらせとしか思えませんけどね。分かりました、艦隊の運用方などについてはイースト提督と相談して決定します。」
















アッテンボロー無人艦隊司令官の件は、すんなりと決まってしまった。

提案した俺自身も驚いた。

そこへ、アッテンボローからの通信が入ったのでお祝いの言葉をかけて置く。


「おめでとう、アッテンボロー提督。」

「その台詞は、さっきヤン先輩から聞きました。それより、行き成り無人艦隊の指揮を執れと言われても、一体何をすればいいのか・・・。」

「別に難しく考える必要は無い。敵に『如何にも予備兵力があるぞ!!』と思わせる為に、適当に戦場をうろついていれば問題無い。まあ、嫌がらせみたいな感じで頼む。

 それから、無人艦隊の旗艦は『ユリシーズ』に決まった。直ぐに、旗艦に移乗して置くように。」

「ユリシーズですか?何でまたユリシーズなんですか?」

「第4次ティアマト会戦の時、ヤン提督と一緒にユリシーズに乗り込んで無人艦を率いてドンチャン騒ぎしてただろ?慣れている艦の方が安心だろ?」

「そんなもんですかね?」

「そんなもんだ。作戦の指示や変更があった時は、追って連絡する。」



無人艦隊を率いるアッテンボロー君。

正直、無人艦隊なんて原作の最終決戦でユリアンがやっていた囮や敵要塞に突っ込ませる位しか使い道が無い。

今回の事は、アッテンボローの良い経験になる事だけで、良しとしよう。








             アムリッツァ星域会戦艦隊編成    


 第5・第10連合艦隊               10,000+8,000隻        

 第8・第12連合艦隊                7,000+7,000隻

 第11艦隊                            16,000隻
       
 第13・第9連合艦隊               13,000+4,000隻     

 無人艦隊                              5000隻

 合計                               70,000隻       



うん、合計は間違ってないな。

俺達、同盟軍艦隊は機雷原を背に布陣完了した。

左から第11艦隊、第8・第12連合艦隊、第5・第10連合艦隊、第13・第9連合艦隊の順番だ。

で背後にアッテンボローの無人艦隊。

うん、完璧だ。

帝国軍め。何時でも来い!!

それから、連合艦隊と言ってもごちゃ混ぜになった訳では無い。只、近くに布陣しているので俺が勝手に名づけて読んでいるだけだ。























金髪再編中・・・・・・・































「来ないな、帝国軍の奴ら。」

「そうですね、イースト提督。」




















・・・・つづく。




極東杉の木殲滅委員会会員増加中です。

杉花粉に置ける災害は人災だと思います。成長の早い杉の木を見境無く植えまくった結果です。

梅雨よ来い、早く来い。

インディペンデンス・デイ。







言い訳じゃ無いよ。たとえ、言い訳だったとしても、言い訳という名の後書きだよ。


ペトルーシャ・イーストの『イースト』は『東方』からとりました。

漢字で書くとややこしいのですが、『東方(とうほう)』では無く『東方(ひがしかた)』です。

ジョジョの第4部の主人公?からです。元がディオの苗字だったので・・・。










[13584] 第三十二話 風林火陰山雷
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/06/07 22:30



第三十二話 風林火陰山雷








         前回までのあらすじ




    アッテンボローは無人艦隊を押付けられた。




         以上、あらすじ終了














「全艦戦闘準備!!」

前方より帝国軍が接近して来る。ついに『アムリッツァ星域会戦』が始まった。

それにしても、帝国軍の奴らは随分とやって来るのが遅かったな・・・。

こっちは艦隊の再編に布陣、機雷の設置とか色々やる事があって

何時、帝国軍が来るのかと戦々恐々としていたのに・・・。

お陰で食事や昼寝(タンクベット睡眠)の時間までとることが出来た。


「前方の帝国軍艦隊より通信が入りました。」

「通信?」


おっと、余計な事を考えていたら前方の敵艦隊から通信が入った。一体何事だ?













「アレが噂に名高い『ペトルーシャ・イーストの第11艦隊』か。」


帝国軍のオスカー・フォン・ロイエンタール中将は前方に位置する同盟軍第11艦隊を見ながら呟いた。


「ローエングラム伯があれほど警戒している相手だ。さて、如何するか。」


不敵な笑みを浮かべながら第11艦隊に対する戦法を考えていたロイエンタールだったが

結局、彼が取った行動は通信で『降伏勧告』を送る事だった。


「前方の敵艦隊に『降伏勧告』を行う。」

「降伏勧告ですか?・・・敵が、受諾するとは思えませんが。」

「当然だな。俺が敵だったとしても受諾しないだろう。」

「では、何故?」

「いや、特に意味は無いが。しいてあげるとすれば、ペトルーシャ・イーストの顔を見られるかも知れないからだ。」


こうして、ロイエンタールはペトルーシャ・イーストの第11艦隊に対して降伏勧告を行った。











「前方の敵艦隊より『オスカー・フォン・ロイエンタール中将』の名で、降伏勧告が入っています。」

「オスカー・フォン・ロイエンタールだとっ!!」

「イースト提督?」

「ヤツめ!!死してなお、俺に刃を突き付けるだけでは飽き足らず、こんな所までしゃしゃり出てくるとは!!

 こう返信してやれ『第3次ティアマト会戦では貴官の罠に陥ったが今回は貴官の番だ。』とな。」

「了解しました。」

「それから、恒星アムリッツァに核融合弾を投下しろ。」

「はっ。」

「風任せの人生も悪くは無い。そして、向かい風より追い風が良い。」













「ロイエンタール提督。敵艦隊より返信が来ました。」

「読んでみろ。」

「はっ、『第3次ティアマト会戦では貴官の罠に陥ったが今回は貴官の番だ。』、以上です。」

「・・・第3次ティアマト?何の事だ・・・。」


予想外の返答を受けたロイエンタールは、その内容に首を傾げていた所にオペレーターより悲鳴に近い報告が挙がってきた。


「敵艦隊、急速接近して来ます!!」

「何だと!!全艦後退しつつ、敵の攻撃を受け流せ!!」


敵からの返答に意識を向けていた事と核融合弾を使った予想外の突撃により

ロイエンタール艦隊はペトルーシャに先制攻撃を許してしまった。

そして、


「あの短時間に、此方の送った降伏勧告すら策に利用してしまうとは・・・

 ペトルーシャ・イースト、噂以上のだな・・・。」


ロイエンタールはペトルーシャに対する警戒を強めた。
















      恒星アムリッツァへ核融合弾投下
   
               ↓

  恒星アムリッツァからのお土産(ボットン便所方式)

              ↓

    恒星風で艦隊の突撃速度アップ(一時的に)

               ↓

           敵艦隊を急襲


ぶっちゃけ、ヤンのパクリ作戦だ。

ヤンの艦隊を確認して見ると同じ事をやっている。






「ははははっ!!圧倒的ではないか、我が艦隊は。」


アムリッツァに投下した核融合弾のお陰で、かつて無い艦隊速度で第11艦隊は

ロイエンタール艦隊に先制攻撃を加える事が出来た。

・・・正直言うと、予想していたより三倍は速い。自分でやって置いて、かなりビビった。


「敵艦隊が反撃を開始しました。」

「ちっ、全艦隊進撃を止めろ。これ以上前進すると敵中に孤立するぞ。」


流石、ロイエンタールだ。もう艦隊を立て直して反撃して来やがった。

俺だったら壊走してるぞ。


「攻め立てるのは此処までだ。後はいつも通り『山々山々』だ。」

「了解しました。」


(『山々山々』とはペトルーシャの考案した戦術で防御重視の戦法である。
 
 動かない事山の如し。動かざる事山の如し。不動なる事山の如し。後は野となれ、山となれ。

 簡単に言うと『防御を固め、周りの味方に何とかして貰おう。』と云う事である。)


臆病?慎重と言ってくれ。

人任せ?やりたい奴にやらせるのが一番良いってヤンも言ってただろ?

敵の数も圧倒的に多い訳じゃないし、こっちにはヤンにビュコック提督、ウランフ提督、ボロディン提督と優秀な提督が一杯いるしな。

何とかしてくれるだろ。













              現在の大雑把な艦隊配置(敵は省略)






         /\
       | |          /\               /\
         ̄ ̄          | |      /\     | |
                      ̄ ̄     | |      ̄ ̄
                             ̄ ̄
      第11艦隊     第8・第12  第5・第10  第13・第9    
                  連合艦隊   連合艦隊    連合艦隊



           △
          アッテン

















あれからしばらく経った。

俺の第11艦隊はロイエンタール艦隊と長距離砲での撃ち合いを、慎ましく続けていた。

時々、ロイエンタールさんの横の艦隊も長距離砲でちょっかいをかけて来ていたが無視した。

甘いな。

その程度の挑発で、このペトルーシャ・イーストが動くと思ったのか?

今の第11艦隊は山だ。

山は動かない。

ペトルーシャ・イーストも動かない。

俺と第11艦隊を動かしたかったら、熱気バ○ラを呼んで来い。

そんな事を考えていると、ついにヤツが現れた。

『帝国軍の呼吸する破壊衝動』、『失敗するたびに昇進する奇跡の人』と呼ばれる『フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト』中将の出現だ。
















              現在の大雑把な艦隊配置(敵は一部省略)









        /\
       | |       /\                 /\           / ̄│  シュワルツ
         ̄ ̄       | |       /\     | |          \_│  ランツェンレーター
                 ̄ ̄        | |      ̄ ̄
                            ̄ ̄
      第11艦隊  第8・第12   第5・第10   第13・第9    
               連合艦隊    連合艦隊    連合艦隊



        △
       アッテン























・・・・・つづく。




皆様、お久しぶりです。豆です。

仕事の関係上の資格を取る勉強をしていた為、更新が遅れてしまい申し訳ありませんでした。

とり合えず、試験が終わったので投稿を再開いたしました。




それから、本編と外伝の並び方ですが

本編は本編の時系列で、外伝は外伝の時系列で並べる事にしました。

外伝の最終話が、本編の第一話つながる様な形で行きたいと思います。










[13584] 第三十三話 今日こそ動かしてやる!!山よ、銀河よ、俺の歌を聴け!!
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/06/08 22:55



第三十三話 今日こそ動かしてやる!!山よ、銀河よ、俺の歌を聴け!!








             前回までのあらすじ




    

     アッテンボローは丁度良い感じのポジションをとった。






             以上、あらすじ終了














    『黒色槍騎兵(シュワルツ・ランツェンレーター)』が現れた。

 シュワルツ・ランツェンレーターは同盟軍第13・第9連合艦隊に突撃をかけた。

              
      しかし、第13・第9連合艦隊はひらりと身をかわした。

   第13・第9連合艦隊はシュワルツ・ランツェンレーターに反撃した。

       シュワルツ・ランツェンレーターはダメージを受けた。

 続けてシュワルツ・ランツェンレーターは第5・第10連合艦隊に突撃をかけた。


      しかし、第5・第10連合艦隊はひらりと身をかわした。


   第5・第10連合艦隊はシュワルツ・ランツェンレーターに反撃した。

      シュワルツ・ランツェンレーターはダメージを受けた。


 続けてシュワルツ・ランツェンレーターは第8・第12連合艦隊に突撃をかけた。

        第8・第12連合艦隊はダメージを受けた。






ビッテンフェルト提督の指揮するシュワルツ・ランツェンレーターが戦場に到着してからの戦況の推移を某RPG風に説明してみると上の様な状態になった。

側面に突っ込んできたシュワルツ・ランツェンレーターをヤンやビュコック提督、ウランフ提督達の艦隊は華麗にかわし(正確には艦隊を後退させただけ)

前方を突っ切っていったシュワルツ・ランツェンレーターに砲撃を浴びせ損害を与えた。

だが、第8・第12連合艦隊は後退が間に合わず側面にシュワルツ・ランツェンレーターの突撃を受けてしまった。  ←今ココ!!

これが現在の状況だ。

流石、同盟軍の将来を背負って立つ有能な提督達だ。ヤンとビュコック提督、ウランフ提督達はビッテンフェルトの突撃をかわした。

第8・第12連合艦隊は回避に失敗して仕舞ったが、それは彼らが無能だったからでは無い。

第8・第12連合艦隊が比較的前方に位置していた為に後退が間に合わなかった事と、シュワルツ・ランツェンレーターの突撃速度が予想以上に速かったのが原因だ。

(決してヤン達が避けたの原因では無い。・・・たぶん。)

正直、第8・第12連合艦隊が回避に成功していたら、より前方に位置している俺の第11艦隊は、後退が間に合わず側面を直撃されていた可能性が高い。

今は只、彼らの作り出してくれた僅かな時間を使って戦局を有利に進める為の策を実行するのみである。

大丈夫。敵はビッテンだ。

彼ならきっとやってくれる。

最後の最後に致命的なミスを・・・・。

期待しているぞ、ビッテン君。


「全艦隊後退せよ。その後、ルグランジュ少将並びにワイドボーン少将指揮下の分艦隊は本隊より分離し、

 右に九十度回頭後に第8・第12連合艦隊の後方を通り、第8・第12連合艦隊の右側面に食い込んでいるシュワルツ・ランツェンレーターの背後を襲え。」


「「了解しました。」」

「なお、分艦隊分離後の指揮はルグランジュ提督に任せる。臨機応変に頼む。」

「「はっ!!」」


ルグランジュ、ワイドボーン両提督への指示を出し終わり、両提督を映していたモニターが消えると

副官のフック・カーン大尉が心配そうに口を開いた。


「第11艦隊の戦力の半数近くを別働隊にして、本隊は大丈夫でしょうか?」

「普通は不味いな。だが、後ろでピクニックを楽しんでいる奴が居るだろ?そいつにも働いてもらう。

 戦艦『ユリシーズ』に通信を送れ。『ピクニックは終了、裏山で宴会せよ。』だ。」

「『ピクニックは終了、裏山で宴会せよ。』ですね。了解しました。」


戦艦『ユリシーズ』はアッテンボローの無人艦隊旗艦であり、アッテンボローが乗り込んでいる艦だ。

ちなみに、今回ユリシーズへは艦長以外の人員も乗り込んでいる。

第三次ティアマト会戦時の囮作戦の時は、ユリシーズを艦長とヤン、アッテンボローの三人で動かしたらしい。


・・・・・無茶しやがって。







                      ペトルーシャ・イーストの出した指示図(一部艦隊省略)
------------------------------------------------------------


          △
         △ △  
          △    ◇◇  ▲▲
               ◇◇  ▲▲   
            
      

          □



     △=第11艦隊   ◇=第8・第12連合艦隊

     □=無人艦隊    ▲=シュワルツ・ランツェンレーター




------------------------------------------------------------



          △
         △ △   ◇◇▲▲
          △    ◇◇▲▲
                  
            
          □ 

          



     △=第11艦隊   ◇=第8・第12連合艦隊

     □=無人艦隊    ▲=シュワルツ・ランツェンレーター




------------------------------------------------------------




               ◇◇▲▲
          △    ◇◇▲▲
         △    
              ◆  
          □  ◆      
            
           

          


     △=第11艦隊本隊   ◆=第11艦隊分隊    ◇=第8・第12連合艦隊

     □=無人艦隊      ▲=シュワルツ・ランツェンレーター






------------------------------------------------------------



              ◇
              ◇▲▲
              ◇▲▲
         △ △  ◇ 
          □       ◆  
                 ◆      
            
           

          


     △=第11艦隊本隊   ◆=第11艦隊分隊    ◇=第8・第12連合艦隊

     □=無人艦隊      ▲=シュワルツ・ランツェンレーター








------------------------------------------------------------



              ◇
             ◇▲▲ ◆
             ◇▲▲ ◆
         △ △  ◇ 
          □         
                       
            
           

          


     △=第11艦隊本隊   ◆=第11艦隊分隊    ◇=第8・第12連合艦隊

     □=無人艦隊      ▲=シュワルツ・ランツェンレーター





------------------------------------------------------------






「第11艦隊旗艦より入電『ピクニックは終了、裏山で宴会せよ。』です。」

「よし、これより無人艦隊は第11艦隊の後方へ移動する。」


第11艦隊司令官ペトルーシャ・イーストからの通信を受け取った無人艦隊司令官のアッテンボロー提督(仮)は

即座にペトルーシャ・イーストの思惑を察し、それを行動に移した。








一方、ビッテンフェルトに蹂躙されつつある第8・第12連合艦隊ではボロディン提督が指揮下の艦隊に『後退せよ』と

アップルトンの提督が指揮下の艦隊に『前進せよ』と、相反する命令を出していた。

この様な事になったのは彼等がパニックになった訳でも、無能だったからでも無い。

側面より突入して来た敵艦隊に対して、第8・第12連合艦隊内で前方に位置していたアップルトン提督の艦隊と

後方に位置しているボロディン提督の艦隊が、それぞれに空いていた前と後に移動し

敵をやり過ごそうとした結果である。

突入して来た敵を食い止めるのでは無く、あえて突破を成功させて被害を減らす方法を彼等はとった。

そして、ボロディン提督の艦隊は後退を成功させつつあった。

だが、前進したアップルトン提督の艦隊は、前方の帝国軍艦隊より集中砲火を浴び被害を拡大させつつあった。

他の同盟軍艦隊は、シュワルツ・ランツェンレーターの突撃をかわす為に

一時後退しており、アップルトン提督の艦隊に対して効果的な援護を出来ずにいた。







                      第8・第12連合艦隊と黒猪の動き(一部艦隊省略)
------------------------------------------------------------



            
               ◆◆  ▲▲
               ◇◇  ▲▲   
            
      

          



     ◆=アップルトン提督の艦隊   ◇=ボロディン提督の艦隊

     ▲=シュワルツ・ランツェンレーター




------------------------------------------------------------





            
               ◆◆▲▲
               ◇◇▲▲   
            
      

          



     ◆=アップルトン提督の艦隊   ◇=ボロディン提督の艦隊

     ▲=シュワルツ・ランツェンレーター




------------------------------------------------------------






                ◆
               ◆▲▲
               ◇▲▲   
                ◇
      

          



     ◆=アップルトン提督の艦隊   ◇=ボロディン提督の艦隊

     ▲=シュワルツ・ランツェンレーター




------------------------------------------------------------


             ▽▽ ▽▽ ▽▽
                


                ◆◆
               ▲▲
               ▲▲   
                ◇◇
      

          



     ◆=アップルトン提督の艦隊   ◇=ボロディン提督の艦隊

     ▲=シュワルツ・ランツェンレーター

     ▽=その他の帝国軍


------------------------------------------------------------











この様に、アムリッツァ星域会戦はビッテンフェルト提督の出現により、戦況が一気に変動していった。






















・・・・つづく。


いつも、ご愛読ありがとう御座います。豆です。

今回は皆大好き、ビッテン突破です。

それにしても、艦隊の配置図とか難しいですね。




極東杉の木殲滅委員会会員は着実に増加しています。

いつか、この運動が花粉症から人類を救うと信じて。





[13584] 第三十四話 彼を知らず、己を知れば、一笑一杯す?
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/09/01 15:47



第三十四話 彼を知らず、己を知れば、一笑一杯す?








             前回までのあらすじ




    

黒色槍騎兵(シュワルツ・ランツェンレーター)の突撃により、戦場の状況は一変した。

第11艦隊は分裂し、本隊は一歩後ろに下がった。

アッテンボローはドンチャン騒ぎを開始した。





             以上、あらすじ終了












黒色槍騎兵(シュワルツ・ランツェンレーター)の突撃により、戦場の状況は一変した。

シュワルツ・ランツェンレーターは、只ひたすら戦場を駆け抜け、数多の屍を築き上げ(敵味方区別無く)




「ビッテンフェルト提督。敵艦隊、突破致しました!」

「よし、次の標的にかかれ。」

「前方に敵影無し。」

「なんだと!!」


そして、いつしかシュワルツ・ランツェンレーターの前に敵は居なくなっていた。


「敵影無し?第11艦隊は如何した!!」

「九時方向に艦影確認、第11艦隊です。」

「戦わずして逃げるか、ペトルーシャ・イーストめ。ならば、コチラから仕掛けるまでよ。全艦左舷回頭、目標『同盟軍第11艦隊』」

「「「はっ!!」」」


多くの戦術家が無謀極まりないと評価する敵前回頭だったが

当のシュワルツ・ランツェンレーターの将兵達は、先ほどまでの戦闘の余韻を引き摺っており

冷静な判断を下せる状態では無く、司令官の命令を忠実に実行した。(一部、冷静な人物も居たのだが司令官や周りの空気に圧倒されてしまった。)























「我々は猛将の誕生する瞬間に居合わせているのかも知れない。」

「猛将?」

「味方の損害をまったく気にせず、敵に突撃する者を、人は『猛将』と呼ぶ。

 敵の戦意の高さは『あの黒い艦隊』の司令官が「閣下!!!今はそんな事より前方の敵に集中して下さい。」・・・すまない、グリーンヒル中尉。」


丁度その頃、同盟軍第13艦隊の旗艦に無駄話を副官に注意された司令官と

その司令官の話に乗り、話の風呂敷を広げてしまった副参謀がバツが悪そうにしていた。





























第11艦隊本隊を後退させ様子を見ていると、目の前に獲物(シュワルツ・ランツェンレーター)が飛び込んできた。


「前方の敵艦隊の側面に攻撃開始せよ。」


攻撃を躊躇う理由は特に無いので、俺は当たり前のように攻撃命令を出し、部下達は攻撃を実行する。

このまま、楽に勝たせてくれれば良いのだが・・・・・。


「前方の黒い艦隊が回頭を開始しました。」

「はぁ!?」


思わず変な声を出してしまった。

敵前回頭?

死亡フラグじゃん。

俺はてっきり第3次ティアマト会戦でラインハルトがやった様に、一度通り過ぎてから折り返してこっちの左側面に取り付いて来ると思っていたのだが

流石はビッテンフェルトだ。

俺には出来ない事を平然とやってのける。

シビれもしないし、憧れないが・・・・・。

まあ、回頭を済ませるのを待ってやる義理も無いので俺は攻撃を続行させた。














                          現在の第11艦隊周辺図

------------------------------------------------------------



                ■■
            ▲▲  ◆
            ▲▲  ◆

           △ △ ◇◇ 
             □         
                       
            
           

          


     △=第11艦隊本隊   ◆=第11艦隊分隊    ■=アップルトン艦隊  ◇=ボロディン艦隊

     □=無人艦隊      ▲=シュワルツ・ランツェンレーター





------------------------------------------------------------










どうやら、第11艦隊の分艦隊やアッテンボローは俺の指示通りに動いてくれている。

だが、状況は不味い。

前方には回頭を完了させたシュワルツ・ランツェンレーターがいる。

このままでは正面決戦になってしまう。

正面決戦では勝ち目は無い。

現在、第11艦隊を二手に分けているのでこの場にいる第11艦隊本隊は本来の約半数だ。

そしてシュワルツ・ランツェンレーターは無謀な突撃で数を減らしてはいるが

第11艦隊本隊の数よりは多いハズだ。

さっきの回頭中に与えた損害が、思いの他少なかった。

180度の回頭なら一気に壊走状態にしてやったのに、

シュワルツ・ランツェンレーターは元々こっちに側面を向けていた為、回頭が90度で済んでしまう。

ぶっちゃけ回頭する前が一番的が大きく、回頭するにつれて的が小さくなっていく訳だ。損害が小さくて済むハズだ。

第11艦隊の分艦隊やボロディン提督の艦隊が攻撃を開始するまで、まだ時間がかかる。

アップルトン提督は前方の敵と交戦中で、それ所では無い。

さて、どうしよう。

・・・・・そうだ、アッテンに任せよう。そうしよう。


「後方の無人艦隊旗艦ユリシーズに通信を送れ。内容は『前方の黒い艦隊の足を止めろ、やり方は任せる。追伸、危なくなったら逃げてもいいよ。』だ。」

「了解しました。」      

「それから、第11艦隊の本隊を一時後退させる。」


アッテンボローなら、きっと大丈夫だ。信じているぞ。
























「第11艦隊旗艦より通信が入りました。内容は『前方の黒い艦隊の足を止めろ、やり方は任せる。追伸、危なくなったら逃げてもいいよ。』です。」

「・・・やれやれ。無茶を言ってくれる。」


ペトルーシャ・イーストより命令を受け取った無人艦隊司令官のダスティ・アッテンボローは

軍用ベレーを右手人差し指に引っ掛けくるくると回しながら呟いた。


「どうします、アッテンボロー提督(仮)。」

「やらない訳には行かないな。それに、好きにやって良いとお墨付きが付いてる訳だしな。どうせやるなら、精々度肝を抜いてやろう。敵味方共にな。」


この時、アッテンボローは不敵な笑みを浮かべながら、シュワルツ・ランツェンレーターに対する足止めの策を考えていた。

だが、この事が後の悲劇に繋がるとは誰も気付いて居なかった。

























・・・・つづく。



7月末に無事に試験の方は学科、技能共に終了したので

創作活動の方に打ち込める様になったのですが、上手く筆が乗らないです。

頭の中と実際に文章にしてみる事は違いますね。


どうでもいい事ですが、小さい頃『油断』を食べ物だと思っていました。

よく見ていた戦隊モノのOPの歌詞に『油断は出来ないぜ!!』ってあったのが原因です。



        『油断は出来ないぜ!!』

             ↓

『ユダンは簡単には作れない、もうちょっと待ってろ!!』


アホですね。




[13584] 第三十五話 彼を知らず、己を知らざれば、戦う度に必ず敗れる。
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/09/03 17:48



第三十五話 彼を知らず、己を知らざれば、戦う度に必ず敗れる。








             前回までのあらすじ




    

        ペトルーシャはアッテンに無茶を言った。





             以上、あらすじ終了











「アッテンボロー提督(暫定)、敵が近づいて来ます。」

「よし、敵が射程に入る直前に無人艦一千隻を突っ込ませろ。文字通り体当たりだ。なぁに、責任はイースト中将閣下が取って下さる。」

「それなら安心ですね。」

「ああ。」


アッテンボローは無茶を言ったペトルーシャ・イーストに責任を押付ける気でいた。

一方、ビッテンフェルトは前方の艦隊が無人艦隊だと気付いていなかった。


「ビッテンフェルト提督、敵艦隊の一部が突出して来ます。」

「ふん、高々千隻程度ではないか。一気に突き崩せ!!」

「はっ!!」


そして、シュワルツ・ランツェンレーターの猛攻により、無人艦隊から突出した千隻は瞬く間に壊滅した。

その様相は、まさに鎧袖一触であった。


「見たか!!我がシュワルツ・ランツェンレーターの力を!!」


しかし、その一方的過ぎる戦果がビッテンフェルト提督を初めとするシュワルツ・ランツェンレーターの将兵の心に慢心と緩みを作る事になった。

そして、突出した無人艦隊は確かに『壊滅』したが『全滅』では無かった。

通常の艦隊なら壊滅から壊走、あるいは投降、自沈など各司令官や艦長の意思に従い

様々な行動を取る事になるハズであった。

だが、この艦隊は無人艦であり、その無人艦達は当初の命令通りに敵に向って突撃を続けた。

この無人艦隊の残党による突撃は、結果としてシュワルツ・ランツェンレーターの隙を上手く突く事になった。

だが、如何せん絶対数で遥かに劣る突撃の為、シュワルツ・ランツェンレーターに大きな損害を与える事は出来なかったが

僅かな足止めと混乱を与える事には成功した。

そして、その間に同盟軍の各艦隊は反撃の狼煙をあげた。













まず、第11艦隊本隊がクロスファイアポイント作り出した。(偶然に)

後日、ペトルーシャ・イースト提督が


「別々に後ろに下がってから、別々に撃ったら出来た。今は反省している。」  


と、語っていたとか、いないとか。





次に体勢を立て直したボロディン提督の艦隊がシュワルツ・ランツェンレーターの側面に攻撃を開始し

更に、迂回完了した第11艦隊分隊がシュワルツ・ランツェンレーターの斜め後方より攻撃を開始した。

これによってシュワルツ・ランツェンレーター対する半包囲網が出来つつあった。








                          現在の第11艦隊周辺図

------------------------------------------------------------



                ◆■■
               ◆
            ▲▲ ◇
            ▲▲ ◇
            □   
          △   △        
                       
            
           

          


     △=第11艦隊本隊   ◆=第11艦隊分隊    ■=アップルトン艦隊  ◇=ボロディン艦隊

     □=無人艦隊      ▲=シュワルツ・ランツェンレーター





------------------------------------------------------------


















「あー、死ぬかと思った。」


アッテンボローが上手く足止めしてくれなかったら、今頃は第11艦隊の本隊はシュワルツ・ランツェンレーターに突き破られていたと思う。

優秀な諸提督たちのお陰で半包囲網を作れたし、一先ずは安心といった所か?


「イースト提督、上手くいきましたね。これで敵艦隊を殲滅するのも、時間の問題ですね。」

「・・・確かに、時間の問題だ。」


フック・カーン大尉の言う通り、時間の問題だ。

いや、時間『が』問題って所か?

この戦場に存在している敵がシュワルツ・ランツェンレーターだけなら何の問題も無い。

だが、この戦場には他にも敵や味方が存在し、各々戦闘を繰り広げている。

ビッテンフェルト一人に時間を掛け過ぎ、気付いた時には大ピンチって事にだって成りかねない。

実際、アップルトン提督の艦隊はシュワルツ・ランツェンレーターの突撃をかわす為に前方に移動し、

現在、ロイエンタール艦隊を初めとする帝国軍艦隊の攻撃を受けまくっている。

第11艦隊分隊の一部がアップルトン提督の援護に回ったが焼け石に水だ。

だからと言って、シュワルツ・ランツェンレーターに対する包囲網を緩めるのは危険だ。


ちなみに、ヤンやビュコック提督達も戦っている様だが

第11艦隊とは少し距離があるので正確には把握出来ていない。

きっと、「閣下、アップルトン提督の艦隊が」「そいつは一大事。」「閣下!!」って感じの夫婦漫才を展開している事だろう。

そんなどうでも良い事を考えながら、戦況を変える出来事を待っていた俺の所に『ある報告』が飛び込んで来た。

そして、その『報告』が後に戦況を一変させる事になるとはこの時点では誰も気付いては居なかった。

























シュワルツ・ランツェンレーターへの半包囲網が完成しつつあった頃、

アッテンボロー率いる無人艦隊は被害を出しつつ、半包囲網の要として何とかその場に踏みとどまっていた。



「アッテンボロー提督(代行)、少し艦隊を後退させては如何ですか。全体的に前に出すぎです。」

「ああ、わかっているさ。だが、ココで艦隊を交代させては折角完成しつつある半包囲網を崩す事になる。」

「・・・・確かにそうです。ならば旗艦だけでも後退を「直撃、来ます!!」なにっ!!」

「くっ、回避しろ!!」

「っ!駄目です、間に合いません!!」


丁度、その時だった。

アッテンボローの乗っている旗艦に不幸の流れ弾が飛び込んで来た。






































・・・・つづく。






三姉妹「「「私たちの出番は?」」」

豆「しばらくは無いです。」

 


こんにちは、作者の豆です。

今年の夏はメチャクチャ暑いですね。



ウチにはクーラーが無いので、部屋では基本下着で

それ以外の所では上半身裸で過ごしています。

先日、地元の議員さんの秘書が挨拶回りに来たのですが

上半身裸で応対したのは、流石に不味かったかな?と思いました。














[13584] 第三十六話 彼を知り、己を知れば、百戦危からず
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/09/07 22:20



第三十六話 彼を知り、己を知れば、百戦危からず。










第2次ティアマト会戦で何故総司令官のブルース・アッシュビー提督が死んだかだって?

簡単な事だ。不運(ハード・ラック)で踊(ダンス)っちまったからだ。



                               後世の歴史家  プロフェッサー・クロコダイル






























ダスティ・アッテンボローの目に最初に飛び込んできた光景は、自分が座っていたハズの指令席だった。

次に自分が床に転がっている事に気づき、背中に軽い痛みを感じた。

どうやら、回避が間に合わず直撃を貰ったが轟沈は避けられた様だとホッとしているアッテンボローに

艦長が無事を確認する為に声をかけて来た。


「・・・・くっ、アッテンボロー提督(臨時)。・・無事ですか。」

「・・・こっちは大丈夫だ。艦長の方は?」

「こっちも無事です。お互い悪運が強いですね。」


アッテンボローとユリシーズ艦長のニルソン中佐は互いの無事を確認すると

自分の席に座り直し、各員に被害状況確認の指示を出す。



「各員被害状況を確認しろ。運用仕官は被害復旧に専念せよ。」

「こちら主砲制御室異常なし。」

「機関室異常ありません。」

「後部砲塔異常ありません。」

「ふう、どうやら大丈夫な様だな。」


ユリシーズは被弾したが重要な箇所は無事だと胸を撫で下ろしたアッテンボローと艦長だったが

次の瞬間、絶望的な知らせが飛び込んできた。


「こちら、トイレ制御室!!トイレ制御システムに異常が、・・・第1、第2、第3トイレに異常有り、第5から第9トイレに異常発生、

 第11、12、13トイレにも異常が!!汚水が溢れます。トイレ制御不可能です!!」

「・・・なんて事だ。」


報告に唖然とするアッテンボローをよそに、艦長か素早く指示を出す。


「全隔壁閉鎖せよ。」

「艦長!?彼等を見捨てるのか!!」

「・・・仕方ありません。それに、何が何でもブリッジだけは守らねばなりません。」

「・・確かにその通りだ。」

「「・・・許せ。」」


二人の呟きは直ぐに消えたが、ブリッジ以外の箇所から挙がる阿鼻叫喚は戦艦『ユリシーズ』に響き渡った。

これ以降、『ユリシーズ』は『便所艦』の異名を奉られる様になった。



































「おのれぇ、叛乱軍どもめ!!」


黒色槍騎兵(シュワルツ・ランツェンレーター)の指揮官、フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト中将は

前方の敵艦隊を睨みつけながら毒づいた。

このまま突撃し、前方の敵艦隊を食い破ってやりたい所だが、アムリッツァに到着してからの連続突撃により、

シュワルツ・ランツェンレーターには疲労と損害が蓄積されている。

その為、艦隊前方に築きあげられたクロスファイアポイントの突破は

現在のシュワルツ・ランツェンレーターの状態では難しい、あるいは突破したとしても多大な損害を出した挙句、敵中で立ち往生してしまうとビッテンフェルトは考えた。

だからと言って後退すれば敵の全面攻勢の切っ掛けを作る事になって仕舞う。

更に、シュワルツ・ランツェンレーターの左側面に別の艦隊が攻撃を加えて来た。

このままでは、壊滅は時間の問題であった。

そして、ビッテンフェルトは他に良い考えが浮かばなかったので総司令官であるラインハルト・フォン・ローエングラム元帥に救援要請の通信を送った。






















『便所艦』が誕生した頃、

第11艦隊司令官のペトルーシャ・イーストの元に『ある報告』が飛び込んで来た。

その『報告』はユリシーズの惨劇について・・・・では無く、前方の敵艦隊。つまり、シュワルツ・ランツェンレーターから発信された救援信号であった。



「敵の救援信号?宛先は俺達にか?攻撃を止めて下さいって?」

「いえ、違います。帝国軍の司令官『ラインハルト・フォン・ローエングラム』への救援を求めた通信の様です。」

「・・・なるほど。」


どうやら、俺の思っていた以上にシュワルツ・ランツェンレーターに限界が近い様だ。

それにしても、敵に救援信号を傍受されるとは余程慌てて通信を送った様だ。

・・こいつは使えるか?


「敵艦隊に返信を送れ。」

「・・敵の救援信号に対してですか?」


「そうだ。内容は 

 『建前 我に余剰戦力無し、現有戦力を持って部署を死守し、武人としての職責を全うせよ。


  本音 援軍だと、私が艦隊の沸き出す魔法の壷でも持っていると思うのか!! 

     我に余剰戦力無し、その場で戦死せよ。


  追伸 以後ビッテンフェルトからの通信を切れ、敵に傍受される。別働隊に三割も割いているのを敵に悟られると不味い。

     ・・・・・キルヒアイスはまだか?』以上だ!!」


「はぁ!?ええっと、『肩の後ろの二本のゴボウの真ん中にあるすね毛の下のロココ調の「全然違う!!!!」・・申し訳ありません。」


どんな耳してんだフック・カーン。

だが、今のは俺も悪いのか?などと考えながら、俺は自分で返信を打つ事にした。






















丁度ペトルーシャ・イーストが周りの冷たい目に耐えながら、通信を打っていた頃

帝国軍の総旗艦『ブリュンヒルト』にビッテンフェルトからの救援要請が届いた。


「ビッテンフェルト提督より援軍の要請です。」

「援軍?援軍だと!!私が艦隊の湧き出す魔法の壷でも持っていると思うのか?

 ビッテンフェルトに伝えよ。我に余剰戦力無し、現有戦力を持って部署を死守し、武人としての職責を全うせよ。」

「はっ。」


そして、ラインハルトからビッテンフェルトへの返信はスムーズに送られた。
          






















ほぼ同時刻に、戦場の別々の場所よりシュワルツ・ランツェンレーターの旗艦『王虎(ケーニヒス・ティーゲル)』に向けて発せられた通信合戦は

同盟軍側に軍配が上がった。

勝因はケーニヒス・ティーゲルへの距離だった。

この通信合戦で、もしも帝国軍側が勝利していたらアムリッツァ星域会戦は別の終わり方をしていたかも知れないと語る後世の歴史家は存在しない。

何故なら、そんな通信合戦が存在した事を当事者達を除て知る者は居ないからである。








「・・・ビッテンフェルト提督、救援要請についての返信が来ました。・・・・ですが、これは・・。」

「如何した?」

「これは、敵軍からの返信です。どうやら、救援要請を傍受された様です。」

「見せてみろ。」


ビッテンフェルトが副官のオイゲンから返信内容が書かれた用紙を受け取ると目を通した。

そこには




 『建前 我に余剰戦力無し、現有戦力を持って部署を死守し、武人としての職責を全うせよ。


  本音 援軍だと、私が艦隊の沸き出す魔法の壷でも持っていると思うのか!! 

     我に余剰戦力無し、その場で戦死せよ。


  追伸 以後ビッテンフェルトからの通信を切れ、敵に傍受される。別働隊に三割も割いているのを敵に悟られると不味い。

     ・・・・・キルヒアイスはまだか?』



と、書かれていた。


「何だこれは?フンッ、下らん。」


ビッテンフェルトは一通り目を通すと、用紙をクシャクシャに丸め投げ捨てた。

この時点でビッテンフェルトは、この返信内容はコチラの気を逸らす為の計略、あるいは救援要請を傍受された事へのからかいと考えていた。

オイゲンが、丸めて捨てられた用紙を拾い上げ伸ばしながらビッテンフェルトに問い掛けた。


「しかし、一体何の目的でこんな返信をして来たのでしょうか?」

「どうせ、大して意味の無い事だろうよ。」

「・・・発信者が、第11艦隊司令官『ペトルーシャ・イースト』となっております。」

「フンッ、司令官の癖に、暇な奴だ。」


ビッテンフェルトが掃き捨てた時、

第二の返信が総旗艦『ブリュンヒルト』より届いた。

まず、返信を受けた通信士が凍りつき、不審に思ったオイゲンが通信士より返信内容の書かれた用紙をひったくる形で奪い取った。

そして、用紙を奪い取ったオイゲンが次に凍りついた。

流石に、不審に思ったビッテンフェルトが凍りついたオイゲンから用紙を奪い取った。

そして、オイゲンから用紙を奪い取ったビッテンフェルトは内容に目を通した。

そこには


『我に余剰戦力無し、現有戦力を持って部署を死守し、武人としての職責を全うせよ。』


と、書かれており、その返信文を読んだビッテンフェルトは、今自分が見ている用紙は先に同盟軍から送られて来た通信だと思い

オイゲンの持っているもう一つのシワが付いている用紙を奪い取り内容を再確認した。

そして、確認した後、ビッテンフェルトの混乱は益々大きくなり、彼は最も安直な選択をした。

つまり、


「これは敵の策略だ、ローエングラム元帥に緊急通信を開け。」


『ローエングラム伯に直接聞けば良い』と考え、それを実行した。

しかし


「駄目です、通信回線が閉じられています。」


通信士から通信拒否の報告を受ける事になった。

その時、ビッテンフェルトの脳裏にペトルーシャ・イーストから受け取った返信文が浮かんだ。


『以後ビッテンフェルトからの通信を切れ、敵に傍受される。』


(ローエングラム元帥は本当に自分との通信を遮断したのか?

 そして、ペトルーシャ・イーストはローエングラム元帥の考えを見抜いたと云うのか?)


『別働隊に三割も割いているのを敵に悟られると不味い。』


(いや、それだけでは無い。

 別働隊が居る事も見抜いている。

 此方の作戦を完全に見抜いた?)


『キルヒアイスはまだか?』


(しかも、別働隊の指揮をジークフリード・キルヒアイスが執っている事を知っている?)


「しまった、これはイーストの罠だ!!全軍後退せよ、直ぐにローエングラム元帥にこの事を知らせねば。」


そして、ビッテンフェルトはシュワルツ・ランツェンレーターに後退の指示を出した。
























・・・・つづく。

 

アッテン「トイレ制御室?」

作者「すみません。つい出来心でやってしまいました。」

アッテン「出来心で?」

作者「実はかなり前からやってみたくてやりました。後悔はしていません。」


















[13584] 第三十七話 深追如退休年齢近的刑警(深追いする事、定年間際の刑事の如く)
Name: 豆◆f0891c05 ID:1b655e2c
Date: 2010/09/15 23:30



第三十七話 深追如退休年齢近的刑警(深追いする事、定年間際の刑事の如く)
















             前回までのあらすじ





    

       アッテンボローはウンが付き、幸ウンになった。







             以上、あらすじ終了

















「イースト提督、前方の敵艦隊が後退を開始しました。」

「良し、追撃だ。ただし、深追いはするなよ。

 良いか、絶対だぞ、絶対にするなよ。」

「はっ。」


シュワルツ・ランツェンレーターに返信文を送ってから30分も立たない頃、

シュワルツ・ランツェンレーターが後退を開始した。

返信文がどんな効果を生んだか知らないが、此方に有利な展開を作り出す事には成功した様だ。

なので、とり合えず追撃を開始する事にした。
























「シュワルツ・ランツェンレーターが後退を開始しました。」

「・・・見捨てる訳には行くまい。艦隊を前進させよ。」


前方で孤立していた味方(シュワルツ・ランツェンレーター)が後退を開始したのを確認したオスカー・フォン・ロイエンタールは

アップルトン艦隊をフルボッコにする作業を中断し、シュワルツ・ランツェンレーターを援護する為、艦隊を前進させた。




















現在、俺の第11艦隊本隊は逃げるシュワルツ・ランツェンレーターを追撃中だ。

アッテンボローの無人艦隊は後方で再編中、ボロディン提督の艦隊はアップルトン提督の援護をしている。

ロイエンタール艦隊がシュワルツ・ランツェンレーターの援護の為にアップルトン提督の艦隊への攻撃を中止し前進してきたが

他の帝国軍艦隊はそのままアップルトン提督の艦隊を攻撃中だ。

ただ、ロイエンタール艦隊は現在遊兵と化している。

何故なら、第11艦隊の本隊とロイエンタール艦隊の間にシュワルツ・ランツェンレーターが位置する為、

ロイエンタール艦隊は効果的な援護を出来ずにいるからだ。

まあ、俺はわかってやっているのだが

やり過ぎは禁物だ。

ロイエンタールを怒らせるだけでは無く、敵中で孤立しかねない。

なので、ある程度損害を与えたらビッテン・ガードを使って離脱しようと思う。








                    ロイエンタール、ペトルーシャの事情

------------------------------------------------------------





                     ◆◆
                     ◆◆







                     ▲▲
                     ▲



                     △△





                     □



     ◆=ロイエンタール艦隊     ▲=シュワルツ・ランツェンレーター

     △=第11艦隊本隊       □=アッテン

     ※その他は省略

------------------------------------------------------------












ロイエンタールは前方の宙域で行われている追撃戦を眺めつつ悪態をついた。


「ビッテンフェルトめ、逃げるならもう少し援護しやすい様に逃げれば良いものを・・・。

 ・・・・それにしても、ペトルーシャ・イーストか。厄介な奴が居たものだ。」


逃げるシュワルツ・ランツェンレーターをペトルーシャ・イーストの第11艦隊が追撃を加えている。

先ほどから長距離砲でシュワルツ・ランツェンレーターへの援護をしようとするのだが

そのつど、第11艦隊はシュワルツ・ランツェンレーターの影に隠れて仕舞い

ロイエンタールは効果的な援護を出来ずにいた。
















             ロイエンタール、ペトルーシャの事情2

------------------------------------------------------------





                   ◆◆
                   ◆◆




                   ▲▲
                   ▲



                    △△








                       □




      ◆=ロイエンタール艦隊      ▲=シュワルツ・ランツェンレーター

      △=第11艦隊本隊        □=アッテン

      ※その他は省略

------------------------------------------------------------















ヤバイ、調子に乗ってシュワルツ・ランツェンレーターを深追いし過ぎた。

ヤンは名将の戦い方を


『明確に目的を持ち、それを達成したら、執着せずに離脱する。』


って、言ってたっけ?

どうやら俺は名将の器では無い様だ。

もっとも、今はそんな事よりも現状を打破する事に集中した方が建設的だ。

ビッテン・ガードを効果的に使って離脱する事にする。

期待しているぞ、ビッテンフェルト提督。














                     ロイエンタール、ペトルーシャの事情3

------------------------------------------------------------





                     ◆◆
                     ◆◆


                    ▲▲


                   △△









                    □




      ◆=ロイエンタール艦隊      ▲=シュワルツ・ランツェンレーター

      △=第11艦隊本隊        □=アッテン

      ※その他は省略

------------------------------------------------------------



















「このまま、ペトルーシャ・イーストにやられっ放しでは目覚めが悪いな。・・・艦隊を二つに分ける。

 シュラーとバルトハウザー艦隊はシュワルツ・ランツェンレーターの左側面より回り込め、本隊は右側面より回り込む。」


このままでは埒があかないと判断したロイエンタールは、艦隊を二つに分ける事で事態に対処する事にした。



















             ロイエンタール、ペトルーシャの事情4

------------------------------------------------------------





                  ◆◆
                      ◇◇

                   ▲▲




                  △△











                    □




      ◆=ロイエンタール艦隊本隊    ◇=シュラー、バルトハウザー艦隊    ▲=シュワルツ・ランツェンレーター

      △=第11艦隊本隊     

      □=アッテン

      ※その他は省略

------------------------------------------------------------





















なんて事だ、ロイエンタールの奴、戦闘中に艦隊を二つに分けやがった。

『兵力を分けると各個撃破の対象にされ易いから分けないでね。』って云う用兵学の常識を知らないのか?

非常識な奴め。


「後退だ、急速後退せよ!!」


これではビッテン・ガードを効果的に使え無い。

もう、脇目も振らずに逃げるしか無い。

おのれぇ、ロイエンタールめ。

一度ならず二度までも、こんな目に遭わせてくれるとは。


































          




















































・・・・つづく。

 






今年も台風の季節が来ました。

皆さんも台風が来た時に

田んぼの様子や、用水路の様子を見に行く時は注意して下さい。




私は見に行きませんけど。





※協力 エキサイト翻訳







[13584] 第三十八話 名将?謎将?迷将?
Name: 豆◆f0891c05 ID:1b655e2c
Date: 2010/10/01 23:10


第三十八話 名将?謎将?迷将?













             前回までのあらすじ





    

          ロイエンタールは真の名将だった。







             以上、あらすじ終了



















「・・・全艦追撃中止、シュラー、バルトハウザーの両艦隊にも追撃中止命令を出せ。」

「宜しいのですか?」

「これ以上の追撃は敵中に孤立する危険がある。・・・・敵はあのペトルーシャ・イーストだ。

 どんな罠を仕掛けてあるか分からん、それにあの小艦隊での追撃は我々を誘い出す為の罠の可能性だってある。

 ここはビッテンフェルトに纏わり付いていた五月蝿いハエを追い払っただけで良しとしよう。」

「了解しました。」


オスカー・フォン・ロイエンタールは

『明確に目的を持ち、それを達成したら、執着せずに離脱する。』

真の名将であった。

その名将っぷりと、ペトルーシャ・イーストの巨像(虚像?)が第11艦隊への追撃を中止させる事になった。

































どうも、ペトルーシャ・イーストです。

ロイエンタール艦隊に追撃をくらっていたと思ったら、いつの間にか追撃が終わっていたでござる。

そんな訳で、第11艦隊の本隊は後退を完了させ、アップルトン提督の援護をしていた分隊との合流を済ませた所だ。

アップルトン提督の艦隊も他の艦隊の援護で安全圏まで後退した。まあ、パッと見た限りでは艦隊はボロボロだったが。


「提督!!大変です。」


はいはい、提督ですよ。何ですか?

まあ、大体内容の想像は出来るけど。
























ペトルーシャ・イーストがロイエンタールの追撃から開放された頃

同盟軍艦隊の背後を突くべく、別働隊を率いて迂回していたキルヒアイス艦隊がアムリッツァ星系に到着した。

そこに無事?復活を遂げたキルヒアイスがいた。

・・・・ただ、キルヒアイスの後頭部には大きなコブが出来ている事を除けば。


「閣下、前方空域に宇宙機雷群を確認しました。数、およそ四千万。」

「予想通りですね。指向性ゼッフル粒子を。」

「はっ。」


キルヒアイスは機雷群の中央に指向性ゼッフル粒子を使い、艦隊の通れる道を作り出し

そこを通って同盟軍の背後を攻撃しようと考えた。



(ゼッフル粒子について
 
 ゼッフル博士が発見した粒子。一定以上の高温で発火。レーザーやビーム砲などで発火、エンジン噴射では発火はしない。気体爆薬の『ような』物。)



「主砲、発射。」


工作艦に積み込まれた指向性ゼッフル粒子発生装置により、ゼッフル粒子がキルヒアイス艦隊前方の機雷群に撒かれた後

艦隊主砲により発火し、機雷を巻き込みながら巨大な炎の道となった。

そして、炎の道が消え去ると同時にそこに在った機雷も消え去っていた。

こうして、キルヒアイスは前方の機雷群に道を作り出す事に成功した。

だが、この炎の道の発生は同盟軍にも観測される事になった。















                    機雷原とキルヒアイス艦隊

------------------------------------------------------------





   жжжжжжжжжжжжжжжжжжжжж        жжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжж
   жжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжж        жжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжж
   жжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжж        жжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжж
  жжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжж        жжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжж
  жжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжж        жжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжж
  жжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжж        жжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжж
  жжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжж        жжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжж
  жжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжж        жжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжж
  жжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжж        жжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжж
  жжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжж        жжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжж
  жжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжж        жжжжжжжжжжжжжжжжжжжжж
   жжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжж        жжжжжжжжжжжжжжжжжжжжж
  жжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжж         жжжжжжжжжжжжжжжжжжжжж
  жжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжж        жжжжжжжжжжжжжжжжжжжжж
  жжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжжж        жжжжжжжжжжжжжжжжжжжжж



                          ▲▲▲
                         ▲▲▲▲








                ж=機雷原        ▲=キルヒアイス艦隊



------------------------------------------------------------














「イースト提督、大変です。背後に敵艦隊が現れました。」

「機雷原は突破されたのか?」

「巨大な炎を確認しました。恐らくゼッフル粒子を使ったものと思われます。」

「やれやれ、一息つく暇も無いな。」


やっとこ、ロイエンタールから逃げて来た所なのに

キルヒアイスには、もう少し空気を読んで欲しい。


「それで、背後の敵艦隊の数は?」

「およそ、三万隻です。」


三万隻とは結構な数だが、想定の範囲内だ。

幕僚たちも驚いているし、これでアムリッツァ会戦の勝敗は決したと云っても過言では無い。

まあ、後は被害を少なくして逃げる事に集中するべきだと思う。

まずは、キルヒアイス艦隊の足止めをして置く。


「機雷と一緒にばら撒いた『自爆装置』のスイッチを入れろ。」

「はい。」


『自爆装置』とは例の『偵察用無人衛星』の事だ。

ビュコック提督が撤退時にお世話になった偵察用無人衛星の事を


「素晴らしい『自爆装置』じゃな」


と、誉めていたので空気を読んだ俺は


「はい、素晴らしい『自爆装置』でした。」


と、賛同したら、いつの間にかアレは『自爆装置』と呼ばれる様になっていた。

ちなみに、機雷と一緒にばら撒いた奴は

第11艦隊やビュコック提督の第5艦隊以外の艦隊が持っていた『自爆装置』だ。

第11艦隊と第5艦隊の分は、先の撤退時に全部自爆してしまった。

何はともあれ、これで少しは時間稼ぎが出来るハズだ。

その隙を突いて撤退だ。


「全艦隊に通信を送れ。敵に傍受されても構わない。『戦術コンピューターのT-1000回路を開け』。」

「了解しました。」






















「キルヒアイス提督、大変です。」

「どうかしましたか?」

「前方の機雷原より強力なジャミングが発生し、レーダーが使用不能です。

 それだけではありません。所々で爆発音を感知しました。」

「・・・どうやら、敵も此方の機雷原突破を予測していた様ですね。現在の状態で、機雷原を渡るのは危険です。

 艦隊を一時後退させます。工作艦は再度、指向性ゼッフル粒子を前方に散布して下さい。」

「敵も一筋縄では行きませんね。」

「その通りです。」


ペトルーシャ・イーストの『自爆装置』もとい『偵察用無人衛星』を使った足止め工作により

機雷原に広大なジャミングが発生し、更には『自爆装置』の自爆が散発する事になった。

その為、キルヒアイス艦隊は機雷原の横断を一時中断せざるを得ない状況に陥った。
























一方、同盟軍第13艦隊では


(先ほどまでの戦況に置いては、僅かに同盟軍が有利だった。

 そこに背後に回った別働隊が来襲し、一気に帝国軍有利に傾いた。

 だが、背後の別働隊が機雷原を渡って来る所を狙えば少数の艦隊でも足止めは可能。

 逃げるべきか、戦うべきか、現状で判断を下すのを非常に難しい)


旗艦の艦橋で難しい顔をしながら戦況を眺めていたヤン・ウェンリーだったが

そこに副官から、ある報告が入る。


「閣下、第11艦隊より通信が送られてきました。」

「どんな内容だい?グリーンヒル中尉。」

「『戦術コンピューターのT-1000回路を開く様に』との事です。」

「ならば、それを開くとしようか。」


ヤン・ウェンリーは一時的に思考を放棄し、戦術コンピューターの中身に関心を向ける事にした。

だが『T-1000回路』の中に、ヤンや第13艦隊の面々の期待に応える様な壮大な戦術は無く、

だた一文


『オペレーション・ケーロク』と


だけ、書いてあった。









































・・・・つづく。

 





チラシの裏で新しく始まった銀英伝を読みながら

『読んでないで、早く書け』と、自分に突っ込みを入れている今日この頃です。


















[13584] 第三十九話 逃げるやつは兵隊だ。逃げない奴は殿(しんがり)だ。
Name: 豆◆f0891c05 ID:1b655e2c
Date: 2010/10/08 13:20


第三十九話 逃げるやつは兵隊だ。逃げない奴は殿(しんがり)だ。













             前回までのあらすじ





    

          キルヒアイスは足止めを喰らった。







             以上、あらすじ終了













                        『オペレーション・ケーロク』








『オペレーション・ケーロク』とは、アムリッツァ会戦直前の作戦会議において、ペトルーシャ・イーストが提案した全面撤退の事である。


「なるほど、全面撤退か。」

「しかし、提督。まだ負けた訳ではありません。小官は、撤退するにはまだ早いと思うのですが・・・。」


ヤンの呟きに真っ先に反応したのは参謀長のムライであった。


「逃げるられる余裕があるうちに逃げた方が良い、帝国領侵攻作戦は既に終了したって事だよ。」

「提督、作戦参謀代理のペトルーシャ・イースト中将が、イゼルローン要塞に帰るまでが作戦だと以前仰っていたのでは?」

「おっと、確かにそうだ。では、速く撤退して作戦を終了させるとしよう。」


ちなみに、この後ヤンが『ケーロク(鶏肋)』についての詳しい説明を展開し、副官と参謀長に『指揮に集中して下さい!!』と注意を受ける事になった。


























「オーディンに至る所か、アムリッツァ半ばにして大軍を失う。更にイゼルローンへの撤退も厳しさ極まるモノとなろう。

 敗北!!覇の道にあってはまさに大敗!!されど、地を行くペトルーシャ・イーストの道。

 大敗と云えど一敗!さらに経ねばならぬ敗北のひとつだ!!」

「イースト提督、遊んでないで真面目に指揮して下さい。」

「はい・・・。」


フック・カーンに怒られてしまった。

いや、『数万隻の追撃戦は凄いな』とモニターに見入っていたらつい・・・。

・・・・・まあ、俺達が追撃されている方だけどね。


「イースト提督、第13艦隊より通信が入っております。」

「つないでくれ。」

「はい。」


モニターには予想通りのヤン提督。とりあえず敬礼しておく。


「イースト提督、私の艦隊が殿(しんがり)を務めます。その隙にイゼルローン要塞への撤退をお願いします。」

「貴官達は如何する?」

「生憎、自滅や玉砕は私の趣味ではありませんから。」

「了解した。だが、無理に時間を稼ぐ必要は無い。貴官が危険だと判断する前に撤退してくれて構わない。」

「しかし、それでは・・」

「追撃可能な範囲に二つに分かれた敵軍がいれば、どっちを追撃するか多少は迷うはずだ。それが時間稼ぎになる。

 そして、こっちには秘策がある。貴官たちは僅かな間だけ時間稼ぎをしてくれれば良い。」

「了解しました。」


こうして、第11艦隊を初めとする同盟軍各艦隊はヤン・ウェンリー提督指揮下の第13艦隊を殿にアムリッツァ恒星系からの撤退を開始した。

戦いにおいて一番危険なのは撤退時だ。

武田軍が敗れた長篠の戦いでも織田・徳川連合の鉄砲よりも、撤退時の追撃で多くの損害を出したと何かの本で読んだ事がある。(本当かどうかは知らないが)

そんな訳で、退却時は殿を任せたら後ろを振り返らずに一目散に逃げるのが正しいハズだ。

逃げる事、金ヶ崎崩れの時の信長の如しだ。
























全面退却に移った同盟軍を追撃する帝国軍の総司令官ラインハルト・フォン・ローエングラムは

一進一退の攻防が、キルヒアイス艦隊の到着により一気に帝国軍側に傾いた為

余裕を持って戦況を眺めていた。


「数万隻の追撃戦は初めて見る。」

「旗艦を前進させますか?」

「いや、止めて置く。この段階で私がしゃしゃり出たら、『部下の武勲を横取りするのか?』と言われるだろうからな。」


オーベルシュタインの問いに答えつつ、ラインハルトは心の隅でキルヒアイス艦隊の遅れに疑問を抱いていた。





















「全艦後退をしつつ、艦隊を密集隊形に。敵の先頭に放火を集中するんだ。」


自ら、同盟軍の殿を買って出た第13艦隊司令官ヤン・ウェンリーは指示を出しつつ戦況を観察していた。

一方、帝国軍のラインハルトは第13艦隊の砲撃に感歎の声をあげつつ、貴下の提督たちに指示を出す。


「やるな、実に良いポイントに砲撃を集中してくる。」

「あれは、第13艦隊の様です。」

「第13艦隊、ヤン・ウェンリーか。此処で確実に仕留めて置くとしよう。両翼を伸ばして包囲陣を布け。」





第13艦隊を確実に仕留める為の陣形を布き始めた帝国軍の動きを対して、

参謀長のムライは常識的立場から司令官のヤン・ウェンリーに撤退を促した。


「提督、このままでは殲滅されてしまいます。」

「もう少し踏みとどまれば味方はイゼルローン回廊に逃げ込めるが・・・・イースト提督の言う通り、此処は素直に撤退するとしよう。

 右翼前方、敵艦隊の最も薄い部分に集中砲火。一点突破を図る、急げ!!」


こうして、第13艦隊は帝国軍の最も薄い部分(シュワルツ・ランツェンレーター)を突破し

無事にイゼルローン要塞に帰りつく事に成功する。

だが、アムリッツァ撤退戦はまだ終わっていなかった。

































あれ?何で敵が追って来るの?

ヤンは?第13艦隊は?殿は?


「提督。どうやら、第13艦隊は無事に撤退したようですね。良かったですね。」

「よくねぇよ。速すぎだろ。」

「『兵は神速を尊ぶ』ですね。流石はヤン提督です。」

「意味が違う!!」

「それより、ビュコック提督とウランフ提督から通信が入っています。モニターに出します。」


何か、嫌な予感がする。


「健在で何よりだ、イースト提督。」

「ビュコック提督もお元気そうで。」

「それより、ヤンから聞いたのだが何やら作戦があるそうだな。」

「ええ、あるにはありますが・・。」

「そうか!!では、殿を任せる。よろしく頼む、逝きて還れよ、イースト提督。」


ちょっと待て、ビュコック提督。


「貴官になら安心して任せられる。」


ウランフ提督、あんたもか。


「頼んだぞ、イースト提督。用兵家としての君の手腕を・・グフッ!!」


パエッタ提督まで・・あれ?


「あれ?今、パエッタ提督が居なかった?」

「何を言っとるんじゃ?パエッタはハイネセンに居るだろう。」

「まったく、その通りだ。」

「「では、任せたぞ。」」

「ちょっ・・」


通信切られた。

こうなったらやってやる。


「全艦隊反転し、密集隊形を作れ。射程内に入った敵の頭に集中砲火だ。

 それから、アッテンボロー提督(仮)を呼び出してくれ。」

「お呼びですか?」


速いなアッテンボロー。流石だ。


「アッテンボロー、無人艦隊は第11艦隊の方で預かる。代わりに、改造艦隊で第11艦隊の撤退援護を頼む。」

「改造艦隊?例の『主砲艦』や『装甲艦・厚』の事ですか?」

「そうだ、援護の仕方は戦術コンピューター内の『オペレーション・ステガマリ』を参照してくれ。」

「了解しました。」


後は、時期を待ちつつ殿を務めるだけだ。

それにしても、アッテンボローのいる『ユリシーズ』内が騒がしかったが・・・。まあ、俺には関係ない事だ。
















「後退しつつ敵艦隊の頭に集中砲火だ!!焦って陣形を乱すな、敵の思う壺だ。」


事態は悪化している。帝国軍艦隊にキルヒアイス艦隊が無事合流し、追撃に参加して来た。


「イースト提督、そろそろ撤退した方が宜しいのでは?」

「いや、まだ駄目だ。例のアレが完了した後でないと撤退したとしても、敵の追撃を一方的に受ける事になる。

 下手すれば全滅だ。かといって、敵中突破は無理だ。帝国軍の陣形に隙が無い。」


恐らく、ヤンにシュワルツ・ランツェンレーター辺りを突破されたんだろう。

その穴埋めに、他の艦隊(キルヒアイス艦隊か他の艦隊かは知らないが)を使って陣形を修正した様だ。

今撤退したら全滅だ。俺はアッテンボローからの連絡を神経の焼き切れる思いをしながら待った。


















ラインハルトは眼前に構える同盟軍第11艦隊に自分の中に渦巻くペトルーシャ・イーストへの感情と、

先ほど第13艦隊に敵中突破をされた怒りをぶつける様に命令を下す。


「ヤン・ウェンリーの次はペトルーシャ・イーストか。ヤン・ウェンリーには逃げられたが、ペトルーシャ・イーストは逃がさぬ。

 全艦隊で包囲陣を布け。シュワルツ・ランツェンレーターの穴はキルヒアイス艦隊に任せる。」

「敵艦隊、紡錘陣形を取っています。」

「紡錘陣形?やはり、此方を突破し退却するつもりか。そう何度も同じ手が通用すると思うなよ。中央部の布陣を薄くせよ!!」

「閣下、それでは本隊の守りが。」

「ワザとだ、ワザと突破し易い場所を作り敵の突撃を誘い出す。敵が突撃して来たら中央部を後退させ、両翼で取り囲み一気に包囲殲滅する。」


先ほどの失敗を教訓に組み立てた戦術を貴下の提督達に指示し終えるとほぼ同時に、紡錘陣形を取りつつあった同盟軍の突撃が始まった。


「敵軍突撃を開始、此方の中央部を狙っています。」

「やはり来たか。各艦隊、私の指示通りに動け。」


そして、アムリッツァ撤退戦最後の大勝負が始まるかに見えたが・・・。
















「イースト提督。アッテンボロー提督より入電、『設置完了』との事です。」

「そうか!!よし、撤退に移るぞ。」


今こそ、俺の考案した新戦術『擬似突出・改』を使う時が来た。第3次ティアマト会戦の時はあんな事(単機掛け)になったが

俺が更に改良を重ねた、この新戦術に隙は無い。


「これより、全面撤退に移る。無人艦を全て敵陣に突入させろ。如何にも、全艦隊で敵中突破を図っている様に見せ掛け、紡錘陣形っぽいモノをとる。

 その隙に全艦回頭し、イゼルローンに逃げ込め。」

「「「はっ!!」」」

「提督?紡錘陣形っぽいモノですか?」

「っぽいモノだ、帝国軍が勘違いしてくれれば良い。」






                     『擬似突出・改』


          無人艦隊を突撃させ、敵がそれに気を取られている隙に逃げる、以上。

          ロイエンタールのパクリ。





















「どうやら勝ったな。」


余裕の笑みを持って戦況を眺めていたラインハルトであったが、戦況が移り変わると同時にその顔から笑みが消えていく。


「突撃してくるのは敵の一部のみです!!本隊は反転後退に移っております。」

「くっ、しまった、囮か。」

「閣下、いかが致しますか?」

「最左翼のケンプ、最右翼のレンネンカンプは敵第11艦隊を追撃せよ、残りの艦隊は突撃してきた敵艦隊を殲滅後に、第11艦隊の追撃に移る。」

(またしても、ペトルーシャ・イーストめ。いや、これは偶然ではない。先ほどの第13艦隊との連携による戦術か?

 あえて、第13艦隊と同じ行動を取る事で敵中突破と誤認させる。やはり、ペトルーシャ・イーストは危険だ。何としてもここで仕留める。)






















「提督、どうやら追撃してくるのは敵の一部です。」

「一部ってどれくらい?」

「主に最左翼と最右翼の艦隊です。」

「合計するとコッチより・・」

「多いです。」


うん、ヤバイです。おまけに後ろから襲われたらひとたまりもありません。

なので逃げます。まあ、最初から逃げているけどね。

今、第1チェックポイント通過。


「それじゃ、今のチェックポイントのヤツを起動。」

「はっ、S-1起動。」


後は上手く行ってくれる事を願いながら逃げるだけだ。















「まもなく、敵第11艦隊を射程に捉えます。」

「良し、レンネンカンプ提督には悪いが先に始めさせてもらおう。射程内に入ったら敵の尻に火を付けてやれ。」


参謀長フーセネガー少将からの報告を受けたカール・グスタフ・ケンプ中将は、同僚よりも先んじて攻撃出来る事により上機嫌で答えた。

だが、敵艦隊が射程距離に入る直前にケンプ艦隊の側面より二本の光が放たれ、ケンプ艦隊を貫いた。


「何だ!!今の攻撃は!!」

「どうやら敵の伏兵が居たようです。」

「全艦隊、追撃中止。今の攻撃で乱れた陣形を立て直しつつ、周囲を索敵だ。伏兵の攻撃に備える。」

















敵艦隊の足が止まった。上手く行ったらしい。

もう片方の艦隊もポイント『S-2』での足止めが成功した。

それにしても同じ手で両艦隊の足が止まるとは、帝国軍の連中って横の連携が出来てないんじゃ無いのか?

だが、これで第11艦隊は無事にイゼルローンまで帰れるだろ。ヤンは今頃、酒でも飲みながら撤退してるのか?

まあ、命があっただけでも良しとしよう。

こうして、帝国領侵攻作戦は特に何の戦略上の意義を見出せぬまま終わった。









                    『オペレーション・ステガマリ(捨て奸)』



    逃走ルートに配置した『主砲艦』で近づいてきた敵艦に向けてを砲撃。『装甲艦・厚』は『主砲艦』の防御の為の壁。

    ちなみに、『主砲艦』の発砲と同時に『装甲艦・厚』の防御シールドを切り、『主砲艦』の自爆に巻き込まれる形で

    『装甲艦・厚』、『主砲艦』共に消え去り、証拠が残らない。






















・・・・つづく。

 



カリン「嫌な夢を見たわ。本編で何ヶ月も出番が無い夢を・・・。」

作者「大丈夫、世の中には十年も同じ敵と戦い続けたり、準主役のくせに一年も出番が無いヤツだっている。」



  





  鶏肋 = チキン・ボーン 

素手で食べるのにはちょっと抵抗があります。

私はティッシュやラップなどを使って食べています。



アムリッツァは今回で終了です。見直してみると十話以上でした。
こんなだから、某掲示板に『アムリッツァ以降、作者が展開に迷って』とか書かれてしまうんですね。




[13584] 第四十話 第1次査問会会戦
Name: 豆◆f0891c05 ID:1b655e2c
Date: 2010/10/13 21:40


第四十話 第1次査問会会戦
















             前回までのあらすじ





    

         同盟軍はイゼルローン要塞に撤退した。







             以上、あらすじ終了




















      チョナチョナチョ~ナチョ~オナ♪   ラッコを乗せて~♪

      チョナチョナチョ~ナチョ~オナ♪   荷馬車は揺れる~♪




どうも、ペトルーシャ・イーストです。アムリッツァ星域から撤退し、イゼルローン要塞に戻って来たと思ったら早速、首都星ハイネセンからの呼び出しが来た。

緊急の呼び出しとの事で、『艦隊の事後処理など放って置いて直ぐに来い。』と有り難いお言葉を頂戴奉ったので、キャゼルヌ君に事務処理仕事を丸投げし

巡航艦『ブルータス』でハイネセンに向っている所です。

フック・カーン大尉は俺の代わりにキャゼルヌ君と頑張って貰ってます。



「イースト提督、その歌は何ですか?」


歌を歌っていたら、ブルータス艦長のオーマ・エモカー中佐が喰い付いて来た。


「これか?この歌は『チョナチョナ』だ。水族館に売られて行く、可哀相なラッコの心情を歌った歌だ。

 正しく、今の現在の自分の立場を表現するに相応しい歌だとは思わないか?。」

「はぁ。」


呼び出しの理由は『査問会』を開くとか開かないとか。

まあ、軍法会議じゃなければ特に問題無いでしょ?ゆっくり休ませてもらいます。 
























俺は無事にハイネセンに到着した。

が、到着した後は無事とは言えないかもしれない。

空港までワザワザ軍のお迎えが来ており、そのまま査問会場?まで護送されて査問会を受ける事になった。

ヤンの査問会と同じ様な感じだ。

で、俺の目の前には獲物を見る様な目でコッチを見ているウィンザー議員がいる。



「今更名乗るまでもありませんが、私が当査問会を招集しました交通情報委員長コーネリア・ウィンザーです。これより、イースト提督の査問会を開催します。

 イースト提督、着席して下さい。この査問会はイースト提督、貴方に掛かっている様々な疑惑を晴らす為の機会であると私は考えます。

 その為には、私達は努力を惜しみません。ただ、それには提督の協力も必要になります。」



それにしても白々しい事を言ってる。

ヤンなら足を組んで座ったりするだろうが、俺は空気の読める人間だからそんな事はしないで普通に座る。

ウィンザー議員の他の参加者は・・・人的資源委員長のホアン・ルイ議員にハイネセン自治大学のオリベイラ学長、

軍人からはロックウェル大将にアンドリュー・フォーク准将?嫌な奴が居たな。

後は良く知らない連中だ。つまりはその他大勢って事か?

流石に此処にいる全員が敵って事も無いだろうし、とりあえず査問を受けながら敵味方の判別をして置こう。

最初は俺の経歴の確認から始まった。自分の経歴なんか見ても面白いわけが無い、適当に流して聞いて置く。




経歴確認中に誰も何も言わないので、沈黙に耐え切れなくなったオリベイラ学長が俺に当たり障りの無い質問をして来た。

「すると、イースト提督、貴方は三歳の頃にフェザーンの両親の元からハイネセンにいる祖父母に引き取られたと云う事なのかね?」

「記録上はそれで間違いありませんが、引き取られた本人としては若干の修正を望みます。」

「と、言うと?」

「引き取られたと云うより、実際は襟元を摘み上げられて貰われて行ったが正しいと思います。あくまで主観的立場から言わせて貰うとですが。」



特に問題も無く経歴の確認が終わると、待ってましたとばかりにウィンザー議員が口を開いた。



「誰であれ我が民主国家に置いては規範を超えて恣意的に行動する事は許されませんわ、その点に関する疑問を一掃する為に今日の査問会と相成りました。

 それで第一の疑問ですが、貴方は先日行われたアムリッツァ会戦に置いて巨額の国費を投じて配備された艦艇5000隻を無造作に敵に突入させましたわね。

 その結果、貴重な艦艇を失う事になりました。幾ら無人の艦艇と云えども、この様な運用をした事について一部では懸念の声があがっていますが

 イースト提督はどの様にお考えですか?是非聞かせて頂きたいですわ。」


「お答えします、ウィンザー議員。そもそもは人員不足が原因で無人艦隊を暫定的に設置する事になりました。

 無人艦ですと如何しても有人艦よりも単調な動きしか出来ず、その運用も限られてしまいます。

 小官としては、『人間の乗っている艦』を守る為に『人間の乗っていない艦』を効果的に使ったつもりですが

 『人間の乗っていない艦艇』の方が『人間の乗っている艦』より貴重であったとするならば、小官の考えは間違っていた事になります。」


「では、そもそもの原因となった人員不足を未然に防ぐ事は出来なかったのですか?」


「人員不足といっても主に民間での人員不足とは違います。民間での人員不足の主な原因は徴兵ですが

 今回、アムリッツァで起こった人員不足は帝国領侵攻時の戦闘、つまりはアムリッツァ会戦の前哨戦で発生した負傷者が原因です。

 帝国領侵攻作戦を行わなければ今回の負傷者は発生しなかったのですが・・・。

 確かに、『帝国領侵攻作戦を阻止できなかった』という事については小官にも責任はあると思います。

 『アレ』さえ無ければ人員不足など起きなかったのに、残念です。」




おっ、ウィンザー議員の顔が引き攣って来た。アンドリュー・フォークもプルプルと震えてるし。

まあ、当然だろ。今俺が言ったの事は要約すると

『帝国領侵攻作戦を提出したバカ(アンドリュー・フォーク)と、帝国領侵攻作戦を採択したバカ(ウィンザー議員と不快な仲間達)が悪い。』

って事だしな。



「・・では、この件は置いておき、次の件に移りたいと思います。」


逃げたな。


「帝国領に侵攻する直前、貴方は全将兵に向って『勝つ必要など無い』と仰いましたね。

 複数の人物からこの発言を聞いたとの報告がありましたが間違いありませんか?」


あの演説の事か?


「正確には『勝つ事ではなく、負けない様に戦え』との意味で使いました。」

「これはこれは、高名な閣下の仰りようとは思えませんな!!軍人が勝利を求めずして何を求めると云うのですか。

 小官だったらその様なマネは致しません。常に勝利を目指して邁進するのみです。」


フォークのヤツが乱入してきやがった。

ロックウェル大将やホアン・ルイ議員だけで無くオリベイラ学長まで『空気読め』って顔をしてフォークを見ているが

当のフォークとウィンザー議員は気付いて無い。

なるほど、この査問会の主催者はこの両名か。他の人達もこんな茶番劇に付き合わされ事になって可哀相に。

実際は俺が一番の被害者か?取りあえず俺はフォークを黙らせる事にした。


「戦いには勝因は無くとも、敗因は必ず存在します。故に、小官はその敗因を減らす事に意義があると考えます。

 負けなければよし。更には、敵の敗因を見つける事が出来ればなおよし。これが小官の考え方です。

 もっとも、この場はお互いの戦術論を展開する作戦会議ではありません。査問会です。

 これ以上の戦術論の展開は無用だと考えます。」


「ぐっ!!」




「おほん!!次の質問に移りたいと思います。イースト提督、貴方には特定企業との癒着疑惑が存在しますが

 この疑惑についてはいかがお考えですか?」


フォークが劣勢だと思ったウィンザー議員が無理やり話題を切り替えてきた。

それにしても癒着?どっからそんな話しが出たんだ?


「初耳です、そんな話は根も葉もない噂です。」

「ですが、火の無い所に煙は立たないといいますでしょう?」

「確かにそうですが、人類は百万年前に火を使い出しました。」

「ええ、そうですが。それがどうかしましたか?今の質問とかみ合ってませんが?」

「つまり、何も無い所に火をつける事が出来る様になったと云う事です。そして、火が付けば煙も発生します。」

「なるほど、企業との癒着は捏造だと言いたいのですか?」

「はい。」

「しかし、証拠が存在しますが?」

「証拠?」

「失礼だと思いますが、イースト提督の口座を調べさせて頂きました。その結果、フェザーンの某商会より多額の金銭が振り込まれていたのが確認されましたが?」


したり顔のウィンザー議員とフォーク。


「フェザーンから?それは何処の商会からですか?」

「ブランドー商会から、時期は10年以上前です。」

「これはこれは、高名な閣下ともあろうお方がこの様な金銭を貰っていたとは小官は失望いたしましたぞ。」


駄目だコイツら、早く何とかしないと。

さっきの俺の経歴確認を見てなかったのか?俺も見てなかったが。


「先ほどの経歴確認を見ていた方はご承知と思いますが、ブランドー商会は小官の父親が経営している商会です。

 商会といっても実質は小官の両親のみで他の従業員は居ない小規模な商会です。

 十年以上前との事でしたが、恐らく小官の養育費、あるいは生前分与のつもりで振り込んだものと思われます。

 確か、配偶者及び親子間の金銭贈与は6万ディナールまでは税金が掛からないハズでしたが、

 不安なようでしたら、財務委員長のジョアン・レベロ議員に尋ねてみては如何ですか?」


「イースト提督、あなたは口先だけはよく回るらしい。流石はフェザーン人の親を持つだけはありますな。」

「・・・・・フォーク『予備役』准将、貴方には敵いませんよ。一層の事、軍人を辞めて商人にでもなったら如何ですか?

 貴方ならフェザーン人と対等に渡り合えると思いますが?」

「小官はもう予備役准将ではありませんぞ!!」

「ああ、それは失礼しました。フォーク『退役』准将閣下。」

「なっ!!」

「・・・只のフェザーン・ジョークですよ。そんなに怒らないで下さい。

 小官からも疑問があるのですが、企業癒着等の疑惑があるのでしたらこの様な査問会を開かずに

 司法機関に任せるなり、軍法会議を開くなりやり様があったのでは無いですか?

 そもそも、何故『国防委員長』では無く『交通情報委員長』のウィンザー議員が軍人である小官の査問会などを招集したのですか?」



 ガンッ!!  ガンッ!!  ガンッ!!



「イースト提督、口を慎んで下さい。査問を受けるのは貴方であり、質問するのは私達です。」


かなり頭に血が上って来たウィンザー議員が木槌(ガベル)を打ち鳴らしながら、俺に警告してきた。

アレを打ち鳴らしている所を始めてみた。


「なるほど、その点は了解しました。ちなみに、先ほどからウィンザー議員しか質問をして来ないのですが

 他に質問のある方はいらっしゃいませんか?答えられる限りは答えますが。」


ウィンザー議員とフォーク准将を視界に入れ無い様に査問会メンバーズを見回しているが、誰も質問しようとしない。

そんなにウィンザー議員達に巻き込まれるのが嫌か?

しばらく経つと、沈黙に耐え切れなくなったのか、俺の視線に耐えられなくなったのかは知らないが、オリベイラ学長が質問してきた。


「えーと、イースト提督。君は今回の敗戦の責任は一体誰にあると思うのかね?」

「前線の司令官達にも多少の責任はあるでしょう、その点では小官にも責任はあります。

 更に小官は第11艦隊の司令官と云う地位だけで無く、作戦参謀代理も兼ねておりました。

 ですので、他の司令官達よりは小官の責任の方が多いと考えます。」

「なるほど。」

「ほほぉ!!つまり、イースト提督はご自身の責任を認めたと云う事ですね!!」

「ええ、その通りですわ。」


またコイツらか。俺がオリベイラ学長に返答するとフォーク准将とウィンザー議員が鬼の首を取った様な勢いで乱入して来た。


「はい、小官にも作戦参謀『代理』としての責任はありますが、この『帝国領侵攻作戦』を作成し私的なルートを通じて最高評議会に提出した作戦参謀や

 その『帝国領侵攻作戦』に賛成した御方の責任の方が遥かに大きいと考えますが?」


俺の返答を受け、フォーク准将とウィンザー議員の機嫌が一層悪くなる。


「多大な損害を出しておいて、よくもその様な事を言えますわね。」

「これはこれは、『全同盟市民が死に絶えても成すべき事がある』と仰られたウィンザー議員の発言とも思えませんね。」

「なっ!!その様な事は・・。」

「言っていませんか?」


俺が確認する様な意味で、チラッとホアン・ルイ議員を見ると


「そう言えば、最高評議会でウィンザー議員が言っていた気がするね。」


と、賛同してくれた。

このホアン・ルイ議員の発言を受けて、出席者がザワザワと騒がしくなる。

あれ?フォーク准将が居ない。


「それより、この辺で一旦休憩しては如何かね?イースト提督も疲れただろうし、私も呆れ・・いやいや、疲れたし

 フォーク准将など眠ってしまったでは無いかね?」


いやいや、それ多分寝てるんじゃないと思いますがホアン・ルイ議員?


「そうだな、疲れたし休憩しよう。」「疲れた、疲れた。」「・・・飽きた。」


いや、飽きる言うなよ。

まあ、結局最後はこんなグダグダな感じで初日の査問会は終了した。


















一方、ペトルーシャ・イーストが官舎に軟禁されている頃


「なるほど、ウィンザー議員とアンドリュー・フォーク准将がペトルーシャ・イースト提督の査問会を開いていると」

「はい、国防委員長閣下。」

「分かった、君はもう下がって構わない。ベイ中佐。」

「はい。」


(ウィンザー婦人がなにやら企んでいたのをあえて放置していたが、まさかここまで都合良く動いてくれるとは

 恐らく、イースト提督個人に責任を押付ける事で責任逃れをするつもりの様だが。)


「まずは、マスコミにこの話をリークするか。明日の見出しはウィンザー議員の事で持ちきりだな。ふふっ、羨ましい限りだ。」


国防委員長ヨブ・トリューニヒトは自分の最高評議会議長への昇進を確固たる物にする為に暗躍していた。

































・・・・つづく。

 



以下、どうでも良いおまけです。

即席で作りました。本当はこれを第40話にしようとしましたが流石に不味いですね。







――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――






『ここでは謝罪の勉強をして行きたいと思う。まずは、謝罪の中でも最上級である土下座を学んで行こうと思う。

 中には土下座より上の、土下寝なる物があると主張する不届き者が存在するが、当組合では土下寝については一切認可しないものとする。

 





 土下座には幾つかの形分けがある。

 先ず、通常の一式。









         / ̄ ̄ ̄ \
      /   :::::\:::/\
     /    。<一>:::::<ー>。
     |    .:::。゚~(__人__)゚   この通りだお、どうか国家の対面を傷つける事だけは黙っていて下さいだお。
     \、   ゜ ` ⌒´,;/゜
    /  ⌒ヽ゚  '"'"´(;゚ 。
   / ,_ \ \/\ \
    と___)_ヽ_つ_;_ヾ_つ.;._









          _,.、-‐''''"""""""'''ー- 、
        ,、-''゙             ヽ
        /  ,へ     ____..:.::l
     /    ゙ー' ,、-‐''"´、 、__ 、_  ``'〈
      l     ,.-'゙、 、 ゝ、`  、` `、 ゙:、
     ゙、_,.-'゙ ,小、ミミ、'ー゙ニ'ー`ー`:::`ヾ:ヽ,::';
      リ,  r<,'_゙、`` _ッ=,ニ,、`゛`!::::,:- 、:::::l
      'ハ、、ト (で!>i ´ 、:゙‐'::'  リ ,!/'i l:::::/
.         l  ´ノ 、  `    ノリ > !:::i゙
         l  i.. ,...':      /゙,ニ-'゙::::ト、  止めて下さい、人が見てるじゃないですか!?
.         ゙、  r─- 、     / !、:::::リ
          ゙、  l,Z二ノ   / ノ;''"^:、
           ゙、 `二´   / ,.r'゙..:.:.:.:::::::゙:、
        ,、-',ニ\__,.、-'ニr''゙  /゙、:::::::::::.`ー- 、
    _,,.、-''",ィ 「  f" `7´   |゙:、 ゙、/.::::::::::::::.:.:...
  ー''" '''"´  l ハ !        l::::゙:、 ':;:::::::::::::::::::::
          l,' ヾー- ..,,,.. -‐'゙::::::>;'/`ー-- 、,,_












斜め上から相手を見下ろし、体を左右に揺らす二式。









         i三i
        〃   ヾ、
       〃      ヾ、
     〃         ヾ、
   〃    ____    ヾ、
  〃   /  連年 \   ヾ、
 ||   /  _ノ  ヽ、_  \   ||   下級兵士ならともかく、上級大将ともあろう者が不名誉な捕虜に甘んじてしまったんだお。
 || /  o゚⌒   ⌒゚o  \  ||    ここは、死んでカイザーにお詫びするしかないんだお。
  ヾ,|     (__人__)    |//
.  (⌒)、_   ` ⌒´     _,(⌒)
  / i `ー=======一'i ヽ
 l___ノ,、          ,、ヽ__i










                            トイ
                            トイ
                            トイ
                           i三i
                          〃   ヾ、
                         〃      ヾ、
                       〃         ヾ、
                     〃    ____    ヾ、    チラッ…
                    〃   / 連年  \   ヾ、
                   ||   /  ⌒   ⌒\    ||
                    || /   (● ) (― )\  ||        
                    ヾ,|   ::::⌒(__人__)⌒:::::|//
.                    (⌒)、_       ̄   _,(⌒)
                      / i `ー=======一'i ヽ
.                    l___ノ,、          ,、ヽ___i
.                       l          l
  
   










    レ/   ,、r,r'゙Yx'、'゙   _,-'゙   >、≧三シ'゙    !l  ,!     i
    リf゙ ノ ,r,r'゙`~-ニ==三'',";'  ッイノ/ / ,i ,!   ヽヾ、/;'  ;'   |
  、.__」レ'゙ 〃   _,、-‐'''" ̄ '';';'_,:ィ'゙ '゙,/,イ,ィ N      ト;、ヾ '; ;';   l
  >      /ィ'" _,,、、ァ=テ、_ェニ-‐'゙ /イハ い,゙!、  ノ lト,ヾ!'; ';';';';'; i
 /゙/ 〃  //,、-''"」「 i゙ i゙ ;'゙   ̄``''-、_゙!、ヾ、`ー''",ノノ ゙!ll ';';'i, ;';': `:、
. l/゙/; '    //,;、-^、 、ヽ_ト、!   '"~`T''ァッ'ミ=、ニヽi「´,´ ,ィ リ   ヾ, ゙i、「i`ー'
 !/ l l  , ; /rィ"i゙ ⌒、゙、゙'tーゝ       `''ー゙-` `i「 リノィノ'゙レ「 !、 ヽ,il ;!|
 Y l    i f゙ff ;';| リ´,ハ ゙! ヾ;          `    -'"彳テミ,_トミ,_ヽ ゙いリハ!
  ヾ    i ! || !.!| ヽ(.  ! ;l゙'|                    | ``゙ー ノ,:ンラ | l'′
`ー'゙,、  ,  ゙!゙!゙!\`ヾ、| ,ハj                l  ーデ-彡ィ'゙リ            ・・・・・・・。
>'゙ ,r',,r'゙   ゙  〃:、゙リ/ ソ                 i,  ,「" '"´ '゙
, ィr'゙ィ'゙ , //  | ,〃  フf               '゙¬,r'"  /ト=‐'
ダィ'゙ , /// ,;! ;l ハ|   l゙、          ,、<`ー-ニ、   /リノ
f゙/////  ,;'タ,ハ!゙:!   ! \        !、_  ̄`¨`/  /ノ'′
/! ,r' ,、-'ノィ゙`''-、_   i  \         ̄`¨`''′ /
`L/!/-‐''"`'-、_ `'-、!i    \            ,:'
 ミ\      _`'-、_ `'-、_   `'-、_       /
  `、\    '" ̄`ヾ`-、_ `'-、    `'-、__   /
   -'  \      |l _....`-:、_`'-、_ /゙ ト「 ̄
       \   -‐'ン゙",、--、,_ `'-、_ Y`iノ、`ヽー-、
















寒地迎撃用の三式。












                       
                   
            / ⌒`"|⌒`ヽ、         
           /,, / ̄ ̄ ̄ ̄\          オンドゥルルラギッタンディスカー!
          /,//::         \           ウゾダドンドコドーン!
         ;/⌒'":::..            |⌒ヽ     
       /  /、:::::...           /ヽ_ \    
     __( ⌒ー-ィ⌒ヽ、   /⌒`ー'⌒  )    
    ━━━`ー──ゝィソノー‐ヾy_ノー─"  


















そして、これが奥の手。焼け焦げた鉄板の上で十秒間土下座する。


土下座零式。







      / ̄ ̄ ̄ \
     / ::::\:::/::::\
   /  <●>::::::<●>  \
   |    (__人__)   |    本当に申し訳ない気持ちで…
   \    ` ⌒´   /     胸がいっぱいなら…!   
,    /l ̄  '-~三~-'  ̄h
.   / |    レ兮y′ /  l         どこであれ土下座できる…!
  〈  く    ∨   / ,イ 
   \_,.>、    /,L..]]_           たとえそれが…
. 0ニニニ)而}ニニニニニ),リリニニ)
.   L| |_____|____| |          肉焦がし… 骨焼く…
    l | |._______| |  ,:
 ,  l \ヽ l  |   , '/  ;'            鉄板の上でもっ………!
 :, ____l_|_|_;_|_|___|_|__   ;
  |\゙;三三゙';三三三,;゙三三\ ;'
  |\\三三゙三ジジ三三,''三;'\,;'  ;'
  |、 \\三゙;三三ジジ・'三三三;\ ;
  0ト、\\\;'三三;'三三三;''三三,;'\
    \\\| 炎炎炎炎炎炎炎炎炎 |
      \\| 二I二二I二二I二二I二 |
       \LI二二I二二I二二I二二]]
        0]]            0]]
















                  _,,.._
            、,ィ'ヲィ;;;":: ̄::::: : :.:.:.`::ー-、_
          _,、ィ゙';;;;;;;;;;:;;;;;;;;:;:;;:::.::.:. ...\
           /;;: 彡;;;;;;;;;;;;:;:;;::.::.: : :: ::.,:ィ'タ彡トヾ、
         /:;;: 彡,イ ,r'`ヽ、;;;::;:;;.:...゙ゝ、ィ彳;'、Y; :.`ゞ,      
       /;; // ソ :,イ    `ニ='''ソ';;;ノ,ィty;、 : :.:.:. ,ト、 ノ
       ,! //,イ;;:: ,ソ   ー=-;、 '"´´_,ソ'゙,ノ`リv; ;::,;リ゙ _ノ  
       l|;;;;;,:、;;;::::r'´   ,,_\`;、  l,     '´;|::,ツ         
      ,!;;;/ヘ`i;;;::! ,  '´ヽ、_O,ゞiヾ`i、 、   l: ;,!l'       
      i|;/ヾソ`;;.! i    `ー--´';  `,ソiニ=、i:;;リ      
      ゙i`、 コゝ リ ヽ         .:: : |ヽ.Oゞ!ソ´      
       ゙l ヽ `゙   i        ,..;;: : l `ー'イ'´                ・・・・えっ。
       レゞ'y   ´      ゞ,.._ :;ソ  ノ             
       /:::::::|     ,ィ      ー   ,イ
        /::::::::::l    '´  ‐-=ニニ-、  ./
      ,f'´、::::::::::ヽ、.       `ー--、 ,' /
      //ミト、:::::::::::::`、          ,/
    .//    ``ヽ、::::::\.       、/
二ニコr'、;、      `丶、_ `ー-,、_/
     \ヽ、    (´,ニ:ヽ`ヾ;;;;::ト、
             `Yi ,///",fi、











――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――











[13584] 第四十一話 ゲシュタルト崩壊
Name: 豆◆f0891c05 ID:1b655e2c
Date: 2010/10/13 22:22



第四十一話 ゲシュタルト崩壊















ペトルーシャ・イーストは犠牲になったのだ。古くから続く犠牲、その犠牲にな。そもそもは自由惑星同盟が生まれた時からある大きな犠牲。

ペトルーシャ・イーストは犠牲になったのだ、その犠牲にペトルーシャ・イーストはなった。犠牲の犠牲にな。

犠牲だ。ペトルーシャ・イーストは犠牲になったのだ、犠牲の犠牲にな。



                                          後世の歴史家  プロフェッサー・クロコダイル



























「ただいま!!私は帰って来たぞ!!」













返事が無い、只の空き家のようだ。
























どうも、ペトルーシャ・イーストです。

査問会に呼び出されてハイネセンの官舎に軟禁されていたのですが、結構アッサリと開放されました。

なんか知らんがマスコミが俺の査問会の事を嗅ぎ付けて騒ぎ出し、ウィンザー議員を初めとする帝国侵攻作戦に賛成した最高評議会の議員達が辞職しました。

『フォーク准将とウィンザー議員のただれた関係!?』なんて見出しのゴシップ誌もあったりする。なんて恐ろしい記事だ。






結果をみるとウィンザー議員に他の議員たちが足を引っぱられた感じに見えなくも無い。

そして、開放された俺は久しぶりの我が家に帰って来たのだが、見ての通り誰も居ない。

あれ?

書置き?






『ちょっと、旅行行って来る。』












なぜじゃぁぁぁぁ!!

この如何にもぶっきら棒で、大切な事が何も説明されて無い文章の書き方。

俺の爺さん作だ。

久しぶりに還って来た孫に対してこの仕打ち。

悲しい、哀しい、悲しみが集う、俺もその一つ。

お前が悲しませた者達の悲しみを知るがいい。





























無事にハイネセンの我が家に帰って来たが何もする事が無い。

いや、無いと云うより出来ないが正しいのか?

外にはマスコミが張っていて外出もままならない。他の提督達が帰ってくれば少しは俺へのマスコミ攻勢も和らぐハズだが

諸提督方は現在イゼルローンからの帰還途中だし、しばらくは家から出られそうに無い。

今思えば、これを懸念した爺さんが三姉妹達を連れ出したのかも知れないな。その点だけは感謝しても良い。

そんな俺の所にシドニー・シトレ元帥からの呼び出しが掛かった。











統合作戦本部ビルか、いつ見ても代わり映えしないな。まあ、ちょくちょく代わり映えしてたらそれはそれで問題だが。


「シトレ元帥閣下、ペトルーシャ・イースト中将、出頭いたしました。」

「うむ、楽にしてくれ。」

「はっ。」

「レベロから聞いたぞ。査問会では大暴れしたそうではないか。」

「財務委員長からですか?本当はあんなに暴れるつもりは無かったのですが、諸悪の根源が目の前に居たのでついあんな事になってしまって。」


諸悪の根源。つまりは、フォーク准将とウィンザー議員の事だ。


「所で今日君を呼んだのは、これからの同盟軍内の人事について意見を聞こうと思ってな。」

「人事ですか?失礼ですがシトレ元帥とロボス元帥の今後の進退についてお聞きしても宜しいでしょうか?」

「先日の会戦の結果がどうであれ、私の退役は既に決まっている。ロボス元帥も退役せざるをえないだろう。」


確かに。同盟軍はティアマト、アスターテ、アムリッツァと負け続けている。この辺で上層部が責任を取らないと示しがつかないってのがあるしな。


「まず、イゼルローン要塞の司令官職について君の意見を聞きたい。」

「イゼルローン要塞ですか、イゼルローン要塞司令官にはヤン・ウェンリー提督がよろしいかと思います。

 イゼルローン駐留艦隊司令官ですがヤン・ウェンリー提督が兼任しても問題ないと思います。

 ですが、もし駐留艦隊司令官を要塞司令官とは別に設ける場合ですが、駐留艦隊司令官は要塞司令官の指揮下とし、階級も要塞司令官より下の人物にした方が宜しいかと思います。

 帝国軍では要塞司令官と駐留艦隊司令官が互いにいがみ合っていた様ですから、兼任か上下関係をつける事でその問題は解決するでしょう。」


「なるほど、貴重な意見だ。次に君自身の進退についてだ。今回の事では君に色々と迷惑を掛けた。

 私の最後の仕事として、多少の無理は通すつもりだ。何か望みはあるかね?・・・ただし、退職以外だ。」


「退職以外ですか?」

「ああ、そうだ。我が同盟軍の提督にはやたらと直ぐに退職したがる者がいるのでな。」

「・・・なるほど、エルファシルの英雄殿ですか。ええっと、小官の人事の件は大変有り難いですが、その前に一つお伺いしても宜しいでしょうか。」

「言って見給え。」

「アンドリュー・フォーク准将の件です。彼の処遇はどうなるのでしょう。」

「・・・現在の所、病気療養と予備役待遇に戻す事が決定している。」

「再び予備役ですか、了解しました。それでは小官の件についてですが、今回の敗戦及び作戦立案の責任を取らせるという形で

 二階級降格と左遷をして頂けませんか?」


俺の提案を聞いたシトレ元帥の顔が驚愕に染まった。


「私の聞き間違いかね?二階級降格と聞こえたのだが・・。」

「いえ、聞き間違いではありません。」

「何故かね?」

「今回の事で確信しました、フォーク准将は危険です。彼を抑える為に必要な処置だと思ってください。」

「つまり、作戦参謀『代理』の君を処罰する事により、作戦参謀だったフォーク准将を処罰する正当性を作りあげると言う事かね?」

「はい、その通りです。」

「だが、しかし・・・。」

「小官なりに、二階級特進と二階級降格を天秤にかけた結果の判断です。」

「取りあえず、二階級特進は置いて置くとして、君を降格という事はフォーク准将も二階級降格と云う事かね?」


いや、置いておくのかよ。必死に悩んだんだぞ、ペトルーシャ・イースト元帥誕生の誘惑と戦って勝利した俺の精神はボロボロだ。


「はい、アンドリューフォーク中佐の再誕です。」

「・・・・そうか。所でフォーク中佐の左遷についてだが、何処の星流しにしたらいいと思うかね。」

「『あそこ』しか無いでしょう?(ニヤリ)」

「『あそこ』か。(ニヤリ)」





「・・・正直の所、君には重要なポストを用意したいのだが・・・。」

「大丈夫でしょう。ヤン提督やビュコック提督、ウランフ提督にボロディン提督など優秀な人材が沢山いますよ。

 小官如きを重要なポストにつけたら、優秀な人材が就くポストが無くなってしまいますよ。」

「帝国領への侵攻作戦の時といい、今回の事といい、君には苦労ばかりかけている。

 本当に申し訳ないと思う。だが、私は謝らない。」

「いや、そこは謝って下さい!!」


つい、突っ込んでしまった。

一応は猫を被ってやり過ごす積もりだったのに、シトレ元帥も『ニヤリ』と笑っている。最後の最後で、してやられた。

いや、正確にはやられっぱなしが正しいな。

士官学校時代からずっと。

























今日、正式な書類(俺の降格の書類)を受け取る為に統合作戦本部ビルへ呼び出された。

書類を受け取るだけだと思って、気楽にエレベーターに乗り込んだが・・・

次の瞬間、俺は自分の間の悪さと運命を呪った。


「やあ、久しぶりだね。イースト君。」


そこには、舞台俳優の様にさわやかな男が居た。


「お久しぶりです。国防委員長閣下、いえ、今は最高評議会議長でしたね。」


我等が敬愛すべき最高評議会議長のヨブ・トリューニヒト氏とエレベーターの中で出くわした。

少し前にもこんな事があった気がする。


「今回は大変な事になったね。所で新しい任地は決まったのかね?」

「いえ、まだです。」

「何処か希望はあるかい?念の為に聞いて置こうか。」

「コレといった所はありませんが・・・。そうですね、出来ればハイネセンから離れた所が良いですね。

 ただ、余り辺境な所もちょっと。」

「なるほど、参考にして置くとしよう。」



あー、緊張した。






















爺さんから今日帰るとの連絡があり、テレビを見ながら三姉妹の帰宅を待っていると玄関のドアが開くと同時に


「「「ただいま!!」」」


「おかえり。」


元気なそうな三姉妹の声だ、それにしてもテンション高いな。


「「「提督、お土産は?」」」


行き成りそれかよ。

まあ、いいけど。一応、お土産?も用意してあった。

第11艦隊がフォルゲン星系を占領していた時に、そこの領主エスターライヒ伯爵さんの家の庭の土だ。

その土を持って帰って来て瓶詰めにした。ちなみにビンはハイネセンに帰って来てから小物屋で買った。


「銀河帝国の土だ。」

「おおっ!!でかしたぞ。流石、我が孫じゃ!!」


おい、爺さん自重しろ。


「爺さん、俺にはお土産ないの?」

「無い。」
















その後、爺さんは異様なテンションで銀河帝国の土の瓶詰めを持って帰っていった。

二度とくんな。




「やっぱり、提督のお爺さんですね。提督とそっくりです。」


ちょっと?アメちゃん、それってどういう意味ですか?

そこの二人も、なに頷いてるの?



























・・・・つづく。

 





作者「次は何を書くか、ドラクエか恋姫か」

黒猪「どの口が言うのか!!せめて、完結させてから考えろ!!」











[13584] 第四十二話 慢心は死を招く。
Name: 豆◆f0891c05 ID:1b655e2c
Date: 2010/10/23 22:40




第四十二話 慢心は死を招く。















変態じゃないよ。たとえ変態だとしても、変態と言う名の戦士だよ。



                            ただの変態  小君・クマ

























アムリッツァ星域会戦、並びにそれに先立って行われた帝国領侵攻作戦。

これ等の戦いの勝者は、同盟軍と帝国軍のどちらか?

この問いに対して後世の歴史家の評価は大きく二つに分かれる。

同盟贔屓の者達は『同盟軍の勝利である』と主張し、帝国贔屓の者たちは『帝国側の勝利である』と主張する。


前者の主張の根拠は『戦死者数』であり、後者の主張の根拠は『艦艇損耗数』である。

同盟軍の艦艇損耗数、約40,000隻。戦死者及び行方不明者数は約3,200,000人。

帝国軍の艦艇損耗数、約32,000隻。戦死者及び行方不明者数は約3,500,000人。

この様な艦艇損耗数と戦死者数の逆転は、他の会戦ではあまり見る事の無い珍しい現象だ。

この現象を発生した原因はアムリッツァ前哨戦で発生した大量の負傷者をイゼルローンに輸送した為に起きた艦隊運用人員不足と

人員不足を解消する為にペトルーシャ・イーストが急編成した無人艦隊の存在だ。


そして後世の歴史家の中で、同盟贔屓でも帝国贔屓でも無い比較的中立な立場の者たちは『帝国側の勝利』と主張している。

根拠は艦隊損耗数でも戦死者数でも無く『同盟軍の撤退』である。

第2次ティアマト会戦終了時に当時同盟軍第8艦隊司令官だったファン・チューリン中将が


「彼等は去り、我々は残った。一般的にはこれを勝ったと言うのではないかな。」と


語ったと云う。




後世の歴史家の評価はともかく、当事者達の評価は一致していた。

自由惑星同盟側は自分達の敗北だと思っていた。

いや、そう主張していた。

軍人達はこれ以上無益な出兵を避けるため、

そして国防委員長だったヨブ・トリューニヒトは今回の出兵に賛成した最高評議会メンバーを引き摺り降ろす為に。




銀河帝国側は自分達の勝利だと主張していた。

ラインハルト・フォン・ローエングラム元帥はこの勝利の功績により宇宙艦隊総司令官に就任した。

本来ならば余程の勝利を収めない限り、この様な昇進は在り得なかったのだが帝国軍艦隊がアムリッツァからオーディンに帰還する途中に

銀河帝国皇帝フリードリヒ4世が死去した。

フリードリヒ4世は次期皇帝を決めぬまま死んだ為、3名の皇帝候補とそれぞれの擁立者が争う三つ巴になった。

一人目はブラウンシュヴァイク公爵の娘で皇帝フリードリヒ4世の孫娘にあたるエリザベート・フォン・ブラウンシュヴァイク。

二人目はリッテンハイム侯爵の娘で皇帝フリードリヒ4世の孫娘にあたるサビーネ・フォン・リッテンハイム。

三人目はフリードリヒ4世からは直系の孫にあたるエルウィン・ヨーゼフ2世。

エリザベート、サビーネの両名の擁立者は父親であるブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯であった。

三人目のエルウィン・ヨーゼフ2世の擁立者は、国務尚書であるクラウス・フォン・リヒテンラーデ侯爵だ。


皇帝の外戚による帝国の私物化を快く思わないリヒテンラーデ侯は、強力な外戚の居ないエルウィン・ヨーゼフ2世を擁立したのだが

リヒテンラーデ侯は独自の兵力を持っていなかった。そこで、リヒテンラーデ候はラインハルト・フォン・ローエングラム元帥と手を結ぶ事で強力な軍事力を手に入れる事に成功した。

そして、宇宙艦隊司令長官だったグレゴール・フォン・ミュッケンベルガー元帥はこれから起こるであろう内乱に巻き込まれる事を嫌い退役してしまった。

ラインハルトは空位になった宇宙艦隊司令長官に収まる事になったが、彼自身はこの待遇を素直に喜ぶ事は出来なかった。

同盟軍を追い払う事には成功したが、味方の損害は予想以上に大きく、敵に与えた損害は思いの他少なかった。

今回の宇宙艦隊司令長官への昇進は、自分の上げた功績の結果では無く、リヒテンラーデ候がこれから起こる内乱を自分に有利に進める為の布石。

その事をラインハルトは屈辱と感じたが、今後の展開を有利に進める為に彼はそれを受けざるを得なかった。。


ちなみに、ラインハルト貴下の提督たちの中でウォルフガング・ミッターマイヤー中将、フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト中将、

カール・グスタフ・ケンプ中将、ヘルムート・レンネンカンプ中将の四名は、大事な局面での失敗により戦局を不利にした。

追撃に失敗したケンプ中将、レンネンカンプ中将へのラインハルトの怒りは大した事は無かった。元々は自分の戦術ミスが原因だった為である。


ただ、無謀な追撃でいらぬ損害を出したミッターマイヤー中将へのラインハルトの怒りは凄まじく、キルヒアイスもミッターマイヤーへの弁護を出来ずにいた。

が、ミッターマイヤーの能力は疑いようの無いものであり、最終的な処分は一時的な謹慎及び、減俸で済んだ。

このミッターマイヤーへの処分もこれから起こるであろう内乱時に、一人でも多くの優秀な提督を必要とするラインハルトの打算があった事は否めない。



最後にフリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト中将への処分は口頭での注意で済んだ。

ビッテンフェルトが敵の第11艦隊司令官ペトルーシャ・イーストから送られて来た通信文をラインハルトに見せた所

ラインハルトの『ペトルーシャ・イースト恐怖症』が再発し、オーベルシュタインが必死になだめる事になり

結果としてビッテンフェルトの失敗は有耶無耶になってしまった。以後、第11艦隊から送られて来た通信文について語る事はラインハルト貴下の艦隊ではタブー(禁則事項)となった。



























我輩は、ペトルーシャ・イースト准将である。二階級降格した。新任地の知らせはまだ無い。


久しぶりに家でゆっくりしているとアメークちゃんが進路の相談をして来た。


「私、将来は料理人になりたいんです。」

「なれば良いじゃん、なれるよ、きっと。」

「はい、きっと提督のような志の在る料理人になってみせます。」

「いやいやいや、色々とオカシイですよ?アメちゃん。」

「?」

「何で俺の志が料理人なの?」

「え?だって、ユリアンとアッテンボローさんが言ってましたよ。」

「・・俺の料理はあくまで実益を兼ねた趣味、それ以上でも以下でも無い。」

「趣味で古い文献でしか残って無い料理を復活させているんですか?」

「まあ、そんな所。特許は取って無いから、将来アメちゃんの開いたお店で使っても良いから。」

「そうですね、使わせて貰います。」


とりあえず一安心?どっかの誰かさんみたいに『軍人になりたい』とか言い出したら如何しようかと思ったが大丈夫なようだ。























今俺はハイネセン記念病院にいる。目的はカリンの母親ローザのお見舞い・・・では無く、担当医から大事な話しがしたいとの申し出があったからだ。

ローザの病状が悪化しているらしい。直ぐにでもに手術し、心臓の破片を取り除かなければ命の保障は無いと担当医に説明された。

そこで俺は覚悟を決めた。今日こそ、なにが何でもローザを説得する。絶対だ。

只今より、この両足は不動の地点だ。俺は一歩も引かない。この身は刃と化し、この地は死地となる。

我が背後は如何なる敵の手も届かぬ所、我が懐は如何なる婦人の手も届かぬ所。


「イーストさん、次の患者が控えていますので変なポーズを取ってないで診察室から出て行って貰えませんか?」

「はい。」


決意を新たにし、俺はローザの病室に向かい説得を開始した。


「ローザ、手術を受けてくれ。」

「いやです。」

「何故?金ならある、一回だけ、一回だけで良いから。」

「そう云う問題ではありません。」

「大丈夫、怖くないから。痛いのは最初だけ、直ぐに気持ち良くなるから。」

「別に怖がっている訳では無いです。」

「本当はやりたいんだろ?わかってるって。」

「知りません。」

「いやいや、本当に何もしないから、絶対に。」

「・・・。」

「黙って天井のシミを数えている間に終わるから。」

「・・・。」




何故だ!!何故上手くいかない。おかしい、こんなのおかしいですよローザさん。


「可笑しいのはペトルーシャさんです。」


ヤベ、声に出てた?まあ、冗談はこれ位で。


「本当の所、何で受けてくれ無いの?」

「これ以上貴方に迷惑は掛けられません。」


何時もこれだよ。仕方が無い、今日はここで引く訳には行かない。

正面が駄目なら側面から攻めよう。


「迷惑は掛けられ無いって言ってるけど、ここでローザに死なれた方が迷惑だぞ。

 ああ、きっとカリンは俺の事を恨むだろうな、お母さんを助ける事が出来たハズなのに、お金をケチって手術代を出さず死なせたって言われるな。

 俺の心も傷つくし、ローザは一生消えない心の傷を俺とカリンに負わせる事になるのか。」

「カリンはそんな子じゃありません!!」

「そんな子じゃ無いって、じゃあどんな子なんだ。何だかんだ言ってもアイツはまだ子供なんだよ。

 頭では俺は悪くないって理解していても、感情を持て余すって事だ。」

「・・・。」

「そんなに迷惑掛けたく無いなら、早く元気になってあいつ等の面倒をみてくれ。」

「・・・どうして、そこまで。」

「ローザはカリンの母親だ、俺はカリンの父親みたいなものだろ?つまり、俺達は義理の夫婦だろ。」

「ふふ、何ですか義理の夫婦って。」

「俺もよく分かんない。で、お受け頂けますか?」

「はい、喜んで。」


ついに俺の努力が実った。

俺は担当医を手術日程の相談をする為に病室から飛び出した。

しかし、そこには顔見知りになった病院の看護婦さん達がニヤニヤしながら待ち構えていた。


「外まで聞こえてましたよ。(ニヤニヤ)」

「おめでとう御座います。(ニヤニヤ)」

「結構情熱的ですね。(ニヤニヤ)」


お前ら、何かを思いっきり勘違いしてるだろ。







































・・・・つづく。

 




豆 「私も最近、自分の作品に自信を持てる様になりまして。」

黒猪「おのれ、エセ小説家野郎!!いつから、フィッシャー少将の真似をして、台詞を言う様になりやがった。」

豆 「猪に読ませるには、私の書いた作品で充分だ!!」

金銀「貴様も言う様になったな。」

豆 「金銀妖眼がなんの様だ?今の私は無敵だぞ!!」

金銀「貴様の鼻っ柱をへし折りに来た。『SS捜索掲示板 』を見てみろ。」

豆 「どれどれ『銀河英雄伝説のSSで、戦記や戦争物を探しています。』・・・・・!!」

金銀「そうだ、この作品が紹介されて無い。貴様の実力などその程度だ!!」

豆 「すみませんでした、調子に乗ってました。」









[13584] 第四十三話 新たなる旅立ち
Name: 豆◆f0891c05 ID:1b655e2c
Date: 2010/11/09 21:51



第四十三話 新たなる旅立ち
























ヤン・ウェンリーとペトルーシャ・イーストについて


ヤン・ウェンリーとペトルーシャ・イーストは同時期に活躍した同盟軍人だ。

後世の歴史家や後世の一般人のヤン・ウェンリーへの評価はほぼ一致している。

すなわち、『不敗の魔術師』等の呼び名をもつ優れた軍人、これがヤン・ウェンリーへの評価である。


そして、ペトルーシャ・イーストへの後世の評価は大きく二つに分かれる。

圧倒的多数とごく少数を同列に並べるとだが。

ペトルーシャ・イーストの事を、後世の一般人と後世の歴史家の多くはヤン・ウェンリーを一方的にライバル視していた軍人と認識している。

後年色々と製作されているヤン・ウェンリーが主役の映画やドラマでは

ペトルーシャ・イーストはアンドリュー・フォークと共謀し、ヤンを陥れようとする人物として描いている。


無謀な出兵案を提出したフォークと、アムリッツァ星域会戦でヤンの足を引っぱる為に全面撤退を指示した作戦参謀代理ペトルーシャ・イースト。

そして、これ等の事がシドニー・シトレ元帥の怒りをかい、両名を二階級降格にした。

反省し心を入れ替えたペトルーシャ・イーストは、以後真面目な軍人になる。これが一般的なペトルーシャ・イーストに対する認識である。


しかし、ごく少数派の主張ではペトルーシャ・イーストは真面目ではなかったが、有能な軍人であったとする評価もある。

そして、『不敗の名将』との評価はヤン・ウェンリーよりもペトルーシャ・イーストの方が相応しいと。


両雄並び立たず。

後世の人物の多くは一方を評価し、もう一方を貶すのが常であった。


しかし、当時の人達はヤン・ウェンリーとペトルーシャ・イーストのどちらが優れているかなど大した問題では無かった。

何故なら、それより重大な問題が山積みされていたのだから。






                    後世の歴史家  コペルニクス・スティーブン・ゲルガッチャ・ニコス・ヴィル・メイ・トロウ・ジャクソン4世


















今日は補給の失敗?の責任を取らせれたキャゼルヌが左遷先に出発する日だ。

折角なので、三姉妹を連れて空港に見送りに行く事にした。



お、ロビーで談笑中のキャゼルヌ一行を発見。

後ろから付いて来ている三姉妹にハンドサインで合図を送る。


『こちらペト、これより潜入任務を開始する。』


よし、装備は現地で調達だ。











よし、接近成功。まだ気付かれてない。


「しかし、補給の失敗と云ったって、別にキャゼルヌ少将の所為じゃ無いでしょうに。元々あの作戦自体が狂ってたんだ。」


その通りだ、アッテンボロー。狂っていたのは作戦だ。


「俺の為に怒ってくれるのは有り難いが、まあそう言うな。誰かが責任を取らなきゃならん。誰も責任を追及されない社会よりは、まともってもんだ。」


確かにそうだ、責任は取らなきゃならん。


「しかし、」


しつこいぞ、アッテンボロー。


「アッテンボロー。」


ほら、ヤンに怒られた。


「まあ、辺境とは言え第14補給基地の司令官だ。フォーク准将のように二階級降格の上にアバシリ補給基地逝きになるよりは遥かにマシだ。」


よし、今だ。


「そうそう、二階級降格の上、辺境に飛ばされる俺に比べれば遥かにマシさ。」


ミッション成功。


「大体、侵攻作戦を考えたのはアンドリュー・フォークでしょうに、何故イースト先輩が責任を取らなきゃならないんですか。」


あれ?驚いてくれないの?普通に返された。


「一応作戦参謀だったからだ、仕方ない事だ。それより、なんで驚かないんだ?」

「あれで、気付かれて無いつもりだったのか?」


そう言ってキャゼルヌは俺の被って来たダンボールを指す。


「何故、俺だと分かった。」

「こんな所であんな事をする人はイースト先輩位しか居ません。」


くっ、やはりダンボール万能説は都市伝説だったのか。

いや、違う。そうでは無い。

問題だったのは俺がキャゼルヌ一行の視界に入っている時に動いた所為だ。

やはりダンボールは万能だったんだよ。


「大体、なんだってイースト先輩をフォークと同じ扱いで・・・。」


アッテンボロー、今のは惜しかった。そこは『なんだってー!!』が正しい。

そんなどうでもいい事を考えながら、三姉妹がユリアンやシャルロット達とじゃれ合って居るのを眺めていると

アッテンボローがシトレ元帥・・・いや、退役したから元(もと)元帥か?

そのシトレ元帥を発見した。

俺的には凄く気まずい。今生の別れを交わした相手と、その翌日に道を歩いていたらバッタリ出くわした感じだ。

シトレ元帥の方も気まずいらしく、俺達はお互いに敬礼をしただけだったが

ヤンは何か話があるらしくシトレ元帥へと近づき何か話している。

・・・・そう言えば、シャルロットの妹の名前って何だっけ?

相変わらずどうでも良い事を考えながら時間を潰しているとシトレ元帥との話しが終わったヤンが戻ってくると同時にキャゼルヌが口を開いた。


「それじゃ、俺達もそろそろ行くよ。」

「キャゼルヌ先輩、実は今度イゼルローン方面軍の司令官と云う辞令を受けそうです。」

「おお、そりゃ凄い、おめでとう。」

「ついては先輩に要塞事務総監として、要塞の都市機能の運営など後方勤務の全てを引き受けて頂きたいのです。」


ヤンも抜け目無いな、早速キャゼルヌをスカウトしてる。

確かに、キャゼルヌの事務処理能力は凄いからな。


「しかし、俺はこれから・・。」

「ええ、分かっています。ですから直ぐには無理でしょう。ですが、なるべく早い時期に赴任して貰うよう軍に働きかける積もりです。来て頂けますか?」

「ああ、その時は喜んでお前さんの下で働かせてもらうよ。」

「それまで」

「ああ、しばしのお別れか。」

「お元気で。」

「お前さんこそあまり無理するなよ。仕事しているのが似合うガラじゃないんだからな。じゃあな。」

「またね。」 「ばいばい。」


キャゼルヌ、無事に戻って来い。俺もお前に聞きたい事がある。お前の娘の名前とか。

キャゼルヌ一家に手を振りながら去り行く背中を眺めていると隣に居たヤンがアッテンボローにまで魔の手を伸ばした。


「アッテンボロー、お前さんにも来て貰うぞ。イゼルローンへ。」

「アイアイサー。」
















え!?

俺は?


















「ヤン提督、どうしてイースト准将を誘わなかったんですか?」

「ユリアン、イースト准将は私の先輩だ。」

「はい。」

「以前は上官だったし、この前までは共に戦場に並んで戦った同僚だ。」

「はい。」

「私が上官になった途端に、『私の下で働け』ではイースト准将も気分を害するだろ?」

「なるほど。」

「私も少しは気を使っているんだよ、ユリアン。まあ、人事部の方へはこっそり要請して置くさ。」




















自由惑星同盟軍はアムリッツァの敗戦を受けて上層部人事を一新した。

№1、№2だったシドニー・シトレ元帥、ラザール・ロボス元帥は共に退役し、宇宙艦隊総参謀長クブルスリー大将は査閲部長に転出。

その為、空いたポストには新たに統合作戦本部長ボロディン大将、宇宙艦隊司令長官アレクサンドル・ビュコック大将、

宇宙艦隊副司令官ウランフ大将、宇宙艦隊総参謀長ホーウッド大将、№3である統合作戦本部次長は代わらずにドワイト・グリーンヒル大将が勤める事になった。

そしてアル・サレム中将、アップルトン中将両名は負傷の為、退役となった。


なお、現在同盟軍で健在な艦隊はパエッタ中将の第1艦隊、ルフェーブル中将の第3艦隊、司令官不在の第11艦隊、そしてヤン・ウェンリー大将の第13艦隊だ。

ただ、それ以外の艦隊が壊滅と云う訳では無く、司令官達の昇進及び4万隻以上の艦が修理点検の為のドック待ちの状況であり再編には時間がかかる状況だ。

これ等の状況により、同盟内部での軍人の飽和がおこり、更にペトルーシャ・イーストの行った無人艦隊5000隻の使い捨てにより

軍人の飽和が進んだ。つまり、働く所が無い軍人が大量に発生した。

その為、自由惑星同盟軍では専門職や専門技能を持っていて徴兵された軍人約200万人を退役させ民間に戻した。

これによって、僅かに自由惑星同盟の経済は向上する事になる。







そして、自由惑星同盟軍はヤン・ウェンリーを大将に昇進させ、イゼルローン要塞及びその駐留艦隊司令官に任じた。

副官フレデリカ・グリーンヒル大尉、参謀長ムライ少将、副参謀長パトリチェフ准将、要塞事務総監代理オディ・オー・ブランドー准将

艦隊副司令官エドウィン・フィッシャー少将、分艦隊司令官グエン・バン・ヒュー准将、ダスティ・アッテンボロー准将

空戦隊長オリビエ・ポプラン少佐、イワン・コーネフ少佐、要塞防御司令官ワルター・フォン・シェーンコップ准将

そして兵卒待遇の軍属として、ユリアン・ミンツもイゼルローンにその第一歩をしるした。

だが、そこにペトルーシャ・イーストの姿は無かった。











皆さんは今頃イゼルローンで楽しくやっているのか?

今日、俺はハイネセンから新任地へと旅立つ。

丁度イゼルローン要塞の反対側。つまり、フェザーンだ。

フェザーン駐在弁務官事務所が俺の新たな勤め先、駐在武官ペトルーシャ・イースト准将の誕生。

正直これは予想していなかった。普通は大佐より上の階級の人物が駐在武官になる事は無い。

少なくとも俺の知っている限りは無い。だが、俺の知っている限りと云っても俺は駐在武官の事など何も知らないけどな。



どうやら、トリューニヒト議長のお声がかりらしい。

そこで先日、俺が議長に言った事を思い返してみた。


『ハイネセンから離れた所が良いですね。』  

うん、フェザーンは確かにハイネセンから離れている。

『ただ、余り辺境な所もちょっと』

フェザーンは辺境では無い。


どうやら、俺の希望を聞いてくれたらしい。

ありがた迷惑だよ、コンチクショー!!


「それじゃ、行ってくる。」

「いってらっしゃい。」

「提督(元)、気をつけて。」

「早く帰ってきてください。」

「お気をつけて、イースト准将。」


三姉妹とフック・カーン大尉に見送られてハイネセンからフェザーン行きの船に乗り込む。

キャゼルヌと違い、俺は単身赴任になってしまった。

三姉妹は学校があるし、カリンはもうすぐ母親の手術が控えているし、フック・カーン大尉は元々は俺が艦隊勤務になった時に艦隊勤務の経験の在る人材としての副官にした。

今回、俺は提督で無くなった為、フック・カーンは副官から外れてもらった。

統合作戦本部の方からは、代わりの副官を用意するとか言っていたが誰になるんだろ。


「そういえば、フェザーンの駐在弁務官事務所には小官の兄が勤めていますので、色々とこき使って下さい。」

「フック・カーン大尉のお兄さん?・・・もしかして、ベン・ム・カーンさんとか、そんな感じの名前だったりするのか?」

「いえいえ、流石にそれは無いですよ。チュウザーイ・ブ・カーンです。」


その発想は無かった。























・・・・つづく。

 

豆 「例のSS捜索掲示板でこの作品が紹介されて仕舞った、如何しよう。」

ポプラン「面倒臭いヤツだな、お前は。」

豆 「ポプランさんも面倒臭いですよ。なんて渾名にすれば良いんですか?ビッテンは『黒猪』、シェーンコップは不良中年は略して『不中』。」

コーネフ「保母さんの『保母』で良いんじゃないかな。」

豆 「それ頂ました。」

保母「それだったら、コーネフの野郎は如何するんだ?大体コーネフだと、アイツと被るだろ?」

豆 「クロスワード、略して『十文』で。でも、もう出番は無いと思うけど。」

十文・保母「・・・・・・。」












[13584] 第四十四話 再会と再開
Name: 豆◆f0891c05 ID:1b655e2c
Date: 2011/02/07 22:52



第四十四話 再会と再開






















イゼルローン要塞は銀河帝国と自由惑星同盟の境界に位置する人口惑星である。その直径60km、内部は数千の階層に分かれ、

二万隻の駐留艦隊を収容する軍事宇宙港や兵器工廠を含む、戦略基地としての機能を全て備えている。

イゼルローンは民間人300万人を含む、500万人が居留する大都市でもある。

酸素供給システムの一環である広大な植物プラント、完全な自給自足を可能にする水耕農場と食品工場。

病院、学校、スポーツ施設、娯楽施設、商店飲食店などで大都市に在るべきもので無いものは無い。



                                                   ナレーション

























フェザーンか、久しぶりだ。

と、言っても物心ついた頃以来だから全然覚えていない。


「ペトルーシャ・イースト中将、お迎えにあがりました。」

「・・・俺は、もう中将では無いし、提督でも無いよ、ドールトン大尉。」

「知ってます、イースト大佐。」

「ちなみに大佐でも無い、准将だ。」

「冗談ですよ、イースト准将。この度、イースト准将の副官を再度勤めさせて頂きます。イブリン・ドールトン大尉です。よろしくお願いいたします。」

「またよろしく頼む、ドールトン大尉。」

「お互いに、左遷された身の上ですし仲良くやりましょう。(ニヤリ)」

「・・・。」


ドールトン大尉は以前俺の副官を勤めていた事もあり、それなりに面識があった。

だが、何処をどう間違ったのか性格の歪んだ人間になってしまった。

以前はあんなに可愛らしかったのに・・・。今は見る影も無い。


「イースト准将?聞こえていますよ。(ニコリ)」

「訂正します。ドールトン大尉は相変わらず、非の打ち所の無い美人です。」

「有難う御座います。」


実はイブリン・ドールトン大尉とはイゼルローン要塞を落とした直ぐ後に合っている。

その時にドールトン大尉はイゼルローンで『チョットした問題』をおこし、謹慎及び左遷になった。

その『チョットした問題』について語るには、ドールトン大尉のこれまでの経緯を説明しなければならない。

俺の副官を勤めた後、彼女はたちの悪い男に騙されて軍内部での不正に協力させられた挙句、その相手の男は帝国に亡命してしまった。

そして、彼女は一転エリート街道から転げ落ち、日陰道を歩いて来た。

そんな彼女と俺が再会したのがイゼルローンだった。イゼルローン攻略時に大量に発生した捕虜に対する処遇や、

イゼルローン要塞の管理などの作業に対する応援及び引継ぎ要員として彼女は要塞にやって来た。

偶然再会した俺達は懐かしさに心震わせたが、それから毎晩のように彼女の自棄酒に付きあわされた。

元々酒の弱い俺が先に酔い潰れていたのだが、そこで一つの問題が発生した。

彼女が酔い潰れている俺の顔に、毎度毎度落書きをした事だ。

俺は最初、気付かずに要塞内を歩き回り同盟軍兵士や帝国軍の捕虜達にそれを目撃された。


額に『東』『第三の目』や『万華鏡○輪眼』の開眼、『クルクルほっぺ』『カイゼル髭』『ピエール髭』『猫髭』『猫鼻』『キカ○ダー』『眼帯』などなど

彼女の暴挙は収まる所を知らなかった。

やがて、俺も落書きを一々消すのが面倒くさくなりそのままの状態で過ごす様になった。

その結果、イゼルローン要塞内部で『ある噂』になってしまった。

ただ、この程度の問題ならどうと云う事は無かった。俺の奇行の一つとして、『はいはい、イーストイースト』と処理されて終わりの事態だった。


問題だったのは彼女が再会してしまった事だ。

俺では無く『もう一人の人物』と、つまり彼女に罪を擦り付け帝国に亡命した男とである。


イブリン・ドールトン、彼女は非常に冷静で計画的な人物だ。

本来ならば、あんな事を起さずに冷静かつ大胆にその男に復讐をしただろう。

だが、連日の自棄酒の結果、アルコールが脳に回ったのか、

あるいは俺が『今度、そいつにあったらぶん殴ってやれ。タマタマを蹴り潰してやれ!!』などとアドバイスしたのが悪かったのか。

その男と再会した彼女は、公衆の面前でそれを実行してしまった。


すなわち、


           『右ストレート』

              ↓

      『金的』(潰れたかどうかは知らない。)

              ↓

           『かかと落とし』



この三連コンボを極めてしまった。

以上が『チョットした問題』だ。

だが、俺は見てしまった。倒れた男の後頭部をヒールの踵でグリグリと追撃していた笑顔の彼女を・・・。















「始めましてイースト准将、弟から話は伺っております。小官はチュウザーイ・ブ・カーン少佐と申します。」

「よろしく、カーン少佐。ペトルーシャ・イースト准将です。」


・・・本当に居たよ。




こうして、俺の駐在武官としての生活が始まった。

駐在武官とは主に情報収集を目的とし動く。

そしてこのフェザーンは、帝国と同盟の丁度中間点だ。

つまりは、帝国と同盟両方の情報が集まる所だ。

ついに、この時が来た。

帝国の情報、俺が喉から手が出るほど欲しかった帝国の情報が手に入る。

どれだけ、この時を待ったか。

おっと、感慨にふけるのは後だ。

早速、コンピューターで検索だ。正直、俺の将来に関わる事だ。



「コンピューター、銀河帝国の軍人を検索してくれ。名前は『ヘイン・フォン・ブ○ン』だ。」

『該当者無し』

「次、『エーリッヒ・フォン・タンネ○ベルク』」

『該当者無し』

「『エーリッヒ・ヴァレ○シュタイン』」

『該当者無し』

「・・・『フリーダ・フォン・ア○ベルト』」

『該当者無し』













どうやら俺の将来は安泰の様だ。

うーん、それはそうとして、何か忘れている気がするんだが何だっけ?























「よお、ユリアン、如何した。」

「ポプラン少佐、実はイースト准将から手紙を預かってまして。」

「手紙?」

「コチラです。」

「どれどれ」



『空戦隊の諸君へ、後で先日の賭けの取り分を徴収しに行きます。使い込まずに取って置いてね。』byイースト

















本当に何か忘れている気がする。ポプラン達との賭けの事はユリアンに手紙を持たせたし・・・。


「イースト准将、大変です。」

「何かな、ドールトン大尉?」

「銀河帝国の皇帝が死にました。」

「・・あ、そうだった。」

「?」

「いや、こっちの話。それより、皇帝ってフリードリヒ4世の事か?」

「はい。」

「そうか、わかった。」


ヤバイ、クーデターの事スッカリ忘れてた。

どうしよう。

とりあえず、ハイネセンに通信を送って置くか。


『銀河帝国の皇帝が死ぬ。これによって、帝国内での内戦が勃発する可能性極めて大である。

 その内戦に、我が自由惑星同盟の干渉を防ぐ為、帝国よりの内部工作、同盟内部でのクーデター、暴動等を扇動する可能性あり。注意されたし。』


これで良し?

まあ、オーベルシュタインも皇帝に敬語使って無かったし大丈夫だよね。












銀河帝国の首都星『オーディン』

暗闇に支配され、取調室を思わせるその部屋には数人の人物がいた。

帝国軍総参謀長パウル・フォン・オーベルシュタイン中将、宇宙艦隊司令長官ラインハルト・フォン・ローエングラム元帥、宇宙艦隊副司令官ジークフリード・キルヒアイス上級大将

そして、先ほどから一人で喋り続けている男、帝国軍の捕虜になっている同盟軍人アーサー・リンチ少将であった。



「逃げたんじゃ無い、民間人を連れて行けば足手纏いになる。そう考えたから俺達だけで脱出したんだ。脱出して味方の増援を頼めば、エル・ファシルなど直ぐに取り戻せた。

 それをヤン・ウェンリーの奴め、俺達が脱出したのを囮にしやがった。言わば、俺達を犠牲にして自分が生き延びただけの事だ。何がエル・ファシルの英雄だ。

 あの落ちこぼれ中尉が今や大将閣下だと、クソ。それに引き換え、この俺は『卑怯者よ』『恥知らずよ』と収容所でさえ白眼視され、風の噂に聞けば女房も子供も籍まで抜いちまったと。

 確かに俺の選択は間違っていたかもしれん。だが、ここまで貶められ、ここまで苦しめられねばならない事か?軍にはもっと残虐な事や卑劣な事をして来た奴がいっぱいいる。

 そいつ等に比べて、俺は道義的に劣る事をして来たと言うのか。」


「如何ですか?この男、今回の任務には適任かと。」


男が一息ついた所を見計らって、オーベルシュタインがラインハルトに声をかけ、それを受けたラインハルトがリンチに話し掛けた。


「リンチ、よく聞け。お前にある任務を与えてやるから、それを果たせ。成功したら帝国軍少将の位をくれてやる。」

「少将、少将か、そいつは悪くない。で、何をすりゃいいんだ?」

「お前の故国、自由惑星同盟に潜入して軍内部の不平分子を扇動し、クーデターを起させるのだ。」

「はっはっはっ、無理だ。そんな事は不可能だ。あんた素面で言ってるのか?」

「不可能では無い。ここに計画書がある、この通りやれば必ず成功する。」

「しかし、もし失敗すれば俺は死ぬ。きっと殺される。」

「その時は死ね。氏ねじゃなくて死ね。」

「えっ?」「ラインハルト様?」「閣下?」

「今のお前に生きる価値があると思っているのか?おまえは卑怯者だ、守るべき民間人も、指揮すべき兵士も捨てて逃亡した恥知らずだ。

 どのように言い訳しようと誰もお前を支持しない。そんなになってもまだ命が惜しいか?」

「・・・・そうだ。今更、汚名の晴らしようも無い。だとすれば、せめて徹底的に卑怯に恥知らずに生きてやるか。少将の件は間違い無いだろうな。」


こうして、ラインハルトによるクーデター扇動作戦が決定した。


「閣下、どの様にして工作員を同盟に紛れ込ませるお積りですか?」

「知れた事、自由惑星同盟に捕虜交換を持ちかけ、その捕虜の中に紛れ込ませつつ、その捕虜達とは別のルートでも工作員を紛れ込ませる。」

「なるほど、『イゼルローンは陽動で本隊はフェザーン行き』と言う訳ですね閣下。」

「その通りだ、オーベルシュタイン。」















「ん!?」

「ロイエンタール提督、如何致しましたか?」

「・・・いや、何でも無い。」













・・・・つづく。

 









金銀「オーベルシュタインめ、俺の台詞を盗りやがって!!」

豆 「いや、貴方のじゃ無いでしょう。」

黒猪「それより、もう戻って来ないと思っていたぞ。」

豆 「いや、色々とありまして。」

黒猪「疎遠スパイラルか?」

女預言者「私はあの事を知っているわよ?」

豆 「すみませんでした!!許してください。」

東方「そんな事より、時間が経つとネタはどんどん古くなるって、寿司屋の大将が言っていた。大丈夫か?」

豆 「大丈夫だ、問題無い。」

黒猪「消費期限が過ぎているぞ?」

















[13584] 外伝  黒歴史編  第一話  モラトリアム?いいえ、反省室です。
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/06/07 22:32


外伝  黒歴史編  第一話  モラトリアム?いいえ、反省室です。



※この物語は『第一話 見切り発車』の約7年前の物語です。








俺は今、悩んでいる。

原因は俺の新しい配属先である。

俺は、ある補給基地の司令官に任命された。

そして、階級も上がった。

詰まり、ペトルーシャ・イースト中佐、あるいはイースト司令官などと呼ばれる事になると云う事である。

通常なら嬉しい事のハズなのだが・・・・。

問題は俺の配属先の補給基地にある。

その補給基地は逆の意味で有名な所である。

同盟の一般市民でその補給基地を知っている者はあまり居ない。

だが、同盟軍人でその補給基地を知らない者は居ないだろう。

俺の配属先、それは


惑星『サイハテ』にある『アバシリ補給基地』だ。


惑星サイハテは、常に吹雪に覆われている惑星だ。晴れる日を数えるなら、年間を通して両手の指で足りるそうだ。

アバシリ補給基地の人員は司令官のみ、詰まり生きている人間は一人。後は無人の機械。

副司令官も副官も参事官も居ない。

そして、首都星『ハイネセン』から遠いど辺境である。

ハイネセンから遠いと云っても、帝国側でもフェザーン側でも無く、戦略的価値も無く、特に天然の資源も無く(あるのは氷だけ)

正直、補給基地の役割を果たしていない。

いや、何かに補給している基地では無く、補給して貰っている基地と云う意味では同盟一の立派な補給基地だ。

早い話が左遷先という事だ。

とり合えず、俺は目の前にいるキートン・・じゃ無くてキャゼルヌ君に不満をぶつける事にした。



「何故?!何故、俺が左遷されないといけない!!」

「本来は左遷先という意味合いが強いが今回は違うらしい。」

「違う?どういう事だ?」

「簡単に言うと手頃な生贄が居なかったので、素行不良な誰かさんを更生させる為に使うらしい。

 まあ、半年もすれば戻って来れるだろ。頑張って来いよ『イースト司令官』」

「俺とお前と一体何処が違う!!お前だって同じ、毒舌家じゃないか!!!!」


俺の魂の叫びは、俺達の居る部屋には響いたがそれ以外の所には特に響く事は無かった。

と、云う訳で氷の惑星に一人で送り込まれる事になった俺は

身の回りの整理をしながら赴任先の情報を集める事にした。










惑星サイハテ。

主に天候は吹雪。

外はむちゃくちゃ寒い。

軍の特殊な通信以外は使えない。(ネットは繋がらない。)

赴任時に私物等は全て検閲官にチェックされるらしい。(経験者談)

ある人は如何わしいグッツを持ち込んで検閲官(女性)にゴミを見るような目で見られた事があるらしい。(経験者談)

補給は一ヶ月に一回来る。事前に欲しいものを注文して置くと一緒に持って来てくれる。

ただし、注文した物は軍の記録に残るし検閲官もチェックするらしいので注意。(経験者談)

基地司令官の主な仕事は、その日の天候や温度を記録し報告する事。基地内の掃除、補修作業。

空いた時間は好きにして良いらしい。(経験者談)

基地内(私室及びトイレ、風呂以外)には監視カメラがあるので注意との事。

ある人は基地内に誰も居ないので常に全裸で行動していたらしい。

その映像が監視カメラに記録され、補給にやって来た検閲官(女性)がそれをチェックした為

汚物を見るような目で見られたらしい。(経験者談)











・・・・・・事前に知って置いて良かった。

危うく再起不能にされる所だったぜ。

同盟軍め、こんな恐ろしいシステムを作り上げるとはな。


















そんなこんなで、出発の日がやって来てしまった。

「それでは、逝って来る。」

「まあ、半年程度の辛抱だ。」

「気をつけて下さい。あっ、それと・・・お土産期待してます」

「・・・ああ。たっぷり、持って帰ってくる。(主に氷と雪を・・・・)」


それにしても、見送りがキャゼルヌとアッテンボローだけって・・・・。

俺は男二人に見送られながら、シャトルに乗り込んでいった。
















・・・・・・・つづく。












[13584] 外伝  黒歴史編  第二話  ペトルーシャ・イーストのアバシリ滞在日記
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/06/08 23:12



外伝  黒歴史編  第二話  ペトルーシャ・イーストのアバシリ滞在日記



※この物語は『第一話 見切り発車』の約7年前の物語です。








人は同じ間違いを繰り返す。

俺は他人の失敗を見て、学ぶ事が出来たと思っていた。

しかし、基本的な事は学んでいたが応用する事が出来なかった。

俺は失敗してしまった。

まさか、データディスクの中身までチェックされるとは・・・・。

それも、かなり美人の検閲官に・・・・・。

折角、さわやかな好青年的なイメージで通すつもりだったのに・・・・・・・。

しかも、軽蔑される訳でも無く、ゴミを見るような目で見られる訳でも無く、

目と目が合った瞬間に『くすりっ』と笑われた。

なので、心の傷が癒えるまではこの基地に引きこもって居ようと思いました。









四月一日   天気 吹雪



今日、このアバシリ補給基地に司令官として赴任した。

これからしばらくは日記をつけて見ようと思う。

他にすることも無いし、暇つぶしにはなるだろう。








四月二日   天気 吹雪



外は相変わらずの吹雪だ。

今日は、備品帳片手に基地内の探索をした。

基地は結構広く、この広い基地内で一人ぼっちだと改めて認識した。









四月三日   天気 吹雪



外は吹雪。

今日は、基地周辺の探索をした。

防寒具代わりに装甲服を着込み、トマホーク片手に基地周辺を徒歩で見て回った。

一面銀世界でした。

余った時間で氷柱相手に必殺技の開発をした。

『ヨーヨー』を編み出したが、トマホークが戻って来なかった。

その後、基地周辺を必死に探してみたがトマホークは見つからず、仕方が無いので紛失報告書を書きました。













四月四日   天気 晴れ



今日は晴れだ。

外に出たらテンションが上がってきた。

一人雪合戦をやってみたり、雪だるまを作ったり

『ネオ・アームスロロング・サイクロン・ジェット・アームストロング砲』を作って記念撮影をした。

それにしても完成度たっけーな、おいっ!!











四月五日   天気 吹雪



二日連続で晴れにはならなかった。

仕方が無いので司令官席で基地のコンピューターを弄っていたら隠しフォルダを発見した。

中には色々なゲームがダウンロードされていた。

とり合えず、暇つぶしに『信長の野望 銀河飛翔編』で遊んでみる事にした。














四月六日   天気 吹雪



昨日から『信長の野望 銀河飛翔編』遊んでいる。

新規武将が一万人ほど登録できるらしい。

流石に昨日一日で100人登録した所で気力が尽きた。

100人中80人は女性で登録。(俺の趣味)

もちろん、パラメーターはMAX。

担当勢力は蠣崎で。

謙信が女性だったと信じますか? もちろんさ。















































四月十日   天気 吹雪



今日、『信長の野望 銀河飛翔編』クリアした。

内容について言いたい事や突っ込み所は沢山あった。

日本列島統一編までは特に目立つ突っ込み所は無かったが、

アジア編、世界編、太陽系編、銀河編となっていくと突っ込み所が多すぎで困った。































































四月三十日   天気 猛吹雪



ココ数日猛吹雪が続いている。

通信は時々通じるが、悪天候の為補給船の派遣は遅れるとの連絡があった。

冷蔵庫の食材が尽きかけているこの状況では、

正直辛いが、倉庫に軍用レーションがあるので餓死する事は無いと思う。

俺一人で食べるなら半年は持つ量だ。











四月三十日   天気 猛吹雪



今日も、猛吹雪だ。

通信も繋がらなくなった。

冷蔵庫の食材も尽きた。

明日から軍用レーションが俺の主食になる。

確かリゾットタイプのレーションだ。

フリーズドライのライスにお湯を入れ、別々になっているリゾットの元を入れれば色々な味が楽しめるらしい。













五月一日   天気 猛吹雪



マジヤバイヨ。

今日からリゾット生活が始まるハズだったのだが・・・・・・。

ライスはあるが、リゾットの元が無い。

これではリゾットじゃ無い。只のおかゆだ。

仕方が無いので残っていた調味料用の塩を足して食べた。

・・・・おかゆだ。











五月二日   天気 猛吹雪



今日も猛吹雪。通信は不能。

今日は倉庫中探したのだが、リゾットの元は見つからなかった。

恐らく、前任者がスープ代わりに使い続け無くなってしまったのだろう。

・・・・使ったら、申請して補充しておけ!!!

・・・・おかゆだ。














五月三日   天気 猛吹雪



今日もおかゆだ♪

明日もおかゆだ♪

明後日もおかゆだ♪

ラララ~♪

そして~♪

君はマネージャー。














五月四日   天気 猛吹雪



塩が尽きた。

通信も来ない。

補給も来ない。

・・・・ヤツは来る。



















五月五日   天気 エターナル・フォース・ブリザード



くそ!!

『おかゆ』ばっかり食べていた所為で

ヤツが目覚めようとしている。

静まれ、俺の左腕。

怒りを静めろ!!

・・・・今日は、何とか乗り切ったが・・・明日はどうなるか。

ヤツが目覚めない事を祈る。

















五月六日   天気 ヒャダイン<ヒャダルコ(ポップ)



ヤツの声が聞こえる。

『お前は今まで、何粒ご飯を食べたか覚えているのか?』

最後の封印が破られるのも時間の問題だ。

恐らく、明日が最終決戦になるだろう。

その時は、この腕に巻いてある『聖骸布』を外さなければならない。

勝っても、負けても、俺は無事では済まない。

だが、ヤツを・・・

『この世全ての稲』にして『56石の米』である『アンリ・カユ』。

ヤツをこの世に出す訳には行かない。

俺は全てをかけて立ち向かわなければならない。

アイツの・・・・バスターの理想を受け継ぐものとして・・・・・。















五月七日   天気 米



体は炒飯で出来ている。

血潮は重湯で、心は玄米。

幾たびの厨房を越えて腐敗。

只の一度の完食も無く。只の一度のおかわりも無し。

彼の者は常に一人、厨房のスミで酒に酔う。

ならば、我がレシピに意味は要らず。

この体は、無限のお米で出来ている。

『アンリミテッド・グゥレイト・ワークス(偽・無限の炒飯)』






















五月八日   天気 宝具



ぶるぶると震えてゴーゴー。

くうくうお腹がなりました。

かゆくなったので帰りましょう。



























五月九日   天気 黒




おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ
おかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおか
ゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆお
かゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆおかゆ












































































五月十日   天気 



かゆ・・・

うま・・



































・・・・・・・つづく。





正直の所、かゆうまが書きたかっただけだったりして。

一応、複線的なものは入れてます。今後に期待して下さい。
























[13584] 外伝  黒歴史編  第三話  アバシリ症候群と鮫のヒレ
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/09/01 15:45



外伝  黒歴史編  第三話  アバシリ症候群と鮫のヒレ



※この物語は『第一話 見切り発車』の約7年前の物語です。








人は環境に適応する。

無人の補給基地で司令官を務め半年が過ぎ、俺はこの環境に順応していた。

だが、ハイネセン・・いや、人の居る所に帰りたいと云う欲求が無くなった訳では無い。

いや、日増しにその欲求が強くなっているのを感じる。

そして、ついに『ハイネセンへ、帰還せよ』との指令が届いた。

ついさっき、移動用のシャトルもアバシリ補給基地に着陸した。

ヤベエ、テンション上がってきた。

久しぶりに人と話せる。

どうしよう。

なんて話しかけるか。

迷うぜ。

おっ、いつもの美人の検閲官のお姉さんが歩いてくる。

よし!!

爽やかな好青年を演出しつつ、知的な感じをかもし出しつつ、連絡先やその他諸々を聞き出す。

これが基本戦略だ。

ミッションスタート。

話しかけるぜ!!






「とりあえず、貴女が好きです。」






























アバシリ症候群とは


アバシリ補給基地に配属になった者に現れる症状である。

詳しい事は分かっていない。現在調査中。









・・・・・・・つづく。







短くて済みません。











[13584] 外伝  黒歴史編  第四話  年越しジャンプと息止め
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/09/03 17:47


外伝  黒歴史編  第四話  年越しジャンプと息止め



※この物語は『第一話 見切り発車』の約7年前の物語です。



























俺は今まで失敗を恐れる生き方をして来た。

そして、この補給基地では色々と失敗してしまった。

だが、終わり良ければ全て良し。

結論を言うと、あの美人さんの連絡先を聞き出す事に成功した。

彼女はイブリン・ドールトン少尉。

士官学校を出たばかりで、行き成り弩辺境に飛ばされて色々と苦労しているらしい。

そんなこんなで、少しは仲良くなったのだが

俺は直ぐにハイネセンに向わなくてはならないので、ハイネセンへの便が出ている最寄の惑星まで送ってもらい、そこで別れる事になった。

で、今俺は惑星マスジットの宇宙港待合室にいると云う訳だ。

キャゼルヌの野郎め。『半年で帰れる』とか言っていたくせに半年以上経ってるぞ。

まったく。

ちなみに、今日は大晦日だ。

そんでもって、元旦までの時間は一時間を切ってる状態だ。

まあ、あの補給基地で一人で新年を迎えるよりは宇宙港待合室の方が遥かにマシだが・・・・。

だが、帰還命令があと数日遅ければ・・・・艦内で賑やかに(主にドールトン少尉と)新年を迎えられたと思ってしまう俺は、間違っていないはずだ。

そんな訳で、俺は生贄(話し相手)を求めてツマミと飲み物を持って宇宙港内を徘徊している所だ。

すれ違う人々は皆幸せそうだ。親子連れにカップル、それからついさっき巨漢の軍人ともすれ違った。

巨漢の軍人は二人づれだった様だが、もう一人は巨漢さんの陰に隠れて見えなかった。

まあ、俺が私服じゃなくて軍服を着ていたら敬礼をしたのだが

両手も塞がっている状態だし、色々と説明するのが面倒だったので無視した。

べっ、別に巨漢さんが怖かった訳じゃないんだからね。









おっ、獲物発見!!

一人で寂しそうに座っている老紳士だ。

幸せそうな親子連れをじっと見つめている。

よし、同志だ。


「お一人ですか?」

「・・・見た所、卿も一人の様だが?」

「ええ、生まれてこのかたずっと独身(ひとり)です。」

「残念だが、私には二人ほど連れがいてな。今、アルコールとツマミを買いに行って貰っている所だよ。」

「そうですか。アルコールはありませんが、ツマミならありますよ。お一つどうですか?」

「そうだな、折角だから頂こうか。・・・それにしても、こんな日にアルコールも飲まずに、

 一人寂しそうにしている老人に話しかけるとは卿は余程の物好きか、あるいは変わり者か・・・。」

「多分、両方でしょう。・・・それから、アルコールは苦手なだけです。」

「それは、人生の半分は損しているな。」

「お陰様で残りの半分を楽しませて貰っています。」


俺が話し掛けた老紳士は、中々面白い人だ。・・・後、この老紳士の訛りは帝国訛りかな?


「失礼ですが、帝国出身の方ですか?」

「ほう?どうしてそう思うのかね?」

「いえ、話しているだけで気品が漂ってきます。」

「くっふっふっふ!中々面白い御仁だ。そう云う卿は軍人かな?」

「分かりますか?」


本当に面白い人だ。

最初は一言二言話して別れようと思ったのだが、シャトルの時間ギリギリまでこの老紳士と話込むのも悪くないな。


「所で卿は『ジークマイスター提督の亡命事件』と『ミヒャールゼン提督の暗殺事件』を知っているかね?」

「ジークマイスター提督ですか?確か・・・六十年程前に同盟に亡命してきた帝国軍人ですね。

 ミヒャールゼン提督は、・・・帝国軍務省内の自分の執務室で暗殺された人物ですね?」(ちなみにミ『ヒェ』ールゼン提督は自分の艦の艦橋で暗殺された人物だ。)

「ほう!!卿は中々物知りだな。」

「・・・まあ、職業がら帝国の情報には其れなりに精通してますよ。」

「では、ブルース・アッシュビー提督については知っているかね?」

「ええ、勿論知ってます。第2次ティアマト会戦の英雄ですね。同盟人で知らない人は居ませんよ。」






(ブルース・アッシュビーについて『みWikipedia』より抜粋 

 第2次ティアマト会戦における同盟側の宇宙艦隊司令長官。同730年6月士官学校を首席卒業。
 同期の卒業生の優等生グループがそのまま彼の幕僚となった為、この一群を「730年マフィア」と呼ぶ場合がある。
 第2次ティアマト会戦の終盤に旗艦ハードラックの艦橋が被弾し死亡。35歳。死後、(生きていれば)36歳で元帥に昇進した。
 彼の戦死した12月11日は戦勝記念日として休日となっている。
 アルフレッド・ローザスによると、戦機を見るのが比類ないほど巧みであった。
 後世から見ると、乏しい情報でよくもあれだけの戦術的判断を下したものだと評されている。
 戦争では連戦連勝を重ねたが、それらはあくまでも戦術上の功績によるものであり、戦略的/政略的に意義のある功績は無く、
 アッシュビーの活躍が帝国と同盟の関係に何らかの影響を及ぼしたとは言えないとされている。

 また、イゼルローン回廊に要塞を建設する構想があり、基本計画案を国防委員会に提出したことがあったが、艦隊の強化案と引き換えに要塞構想を破棄した
 (その後、帝国軍によって同回廊にイゼルローン要塞が建設された)。そのためローザスは戦略家ではなく、戦術家と評している。
 帝国との長年にわたる戦争の中で出現した軍人の中でも、とりわけ英雄として扱われており、数々の伝記や映画が製作されている。
 コンピューター検索を実行したら、書籍で123件、テレビドラマと映画で12件が該当した。
 かなり長身で均整の取れた外見を有しているとされている。
 天才ではあったが非常に尊大で態度の悪い性格だったようで、勝つたびに挑発的な電文を発しては帝国軍からの憎悪を招いた
 (個人的な憎悪を招くことで帝国軍幹部を挑発、理性的な対応をないがしろにさせていたと評している歴史家も多い。)

 しかしその性格の悪さは味方にも向けられ、政府や軍上層部には評判が悪く、第2次ティアマト会戦直前においては730年マフィアの仲間たちでさえ我慢できなくなっていた。
 女性関係が派手で、2度結婚し、2度離婚している。その他、愛人や情人は一個中隊の人数ではきかないとされる。)






「その『アッシュビー提督の死因が謀殺だった』と云うのはどうだね?」

「・・・・それは、ありませんね。」

「ほう、何故そう思うのかね?」


俺の謀殺説完全否定に対し、老紳士は面白そうに口元を引き上げつつ、身を乗り出してきた。


「アッシュビー提督が謀殺されるとしたら、もっと後になってからだと思います。例えば、元帥に昇進した後に軍を引退し政界に進出した時・・とか。」

「なるほど、もっともな意見だな。」

「まあ、アッシュビー提督が政界進出した時は、謀殺するより730年マフィアの内から対立候補を出す、と言う方法を私はお勧めしますが。

 彼は色々と嫌われていたみたいですから。」

「卿もアッシュビー提督は嫌いかね?」

「公人としては尊敬しますが、私人としてはちょっと。幼い頃から彼の悪口を聞かされて育ったもので・・・。」

「ふっふっふ!卿は同盟人としては、珍しい環境で育ったらしい。アッシュビー提督の悪口は両親から聞かされたのかね?」

「いえ、祖父母からです。二人とも士官学校で730年マフィアと同期だったもので・・・。」

「!!すると、第2次ティアマト会戦に参加していたのかね?」

「いえ、あの会戦には参加していませんでした。」

「・・・そうか。」


何だ?この老紳士、第2次ティアマト会戦に喰い付いてきたな。

まあ、俺としては特に第2次ティアマト会戦について語る事は無いのでスルーして置く。


「お陰で、歴史書には載らない悪行の数々を聞かされました。」

「それは、中々興味深い。」

「もっとも、何処まで本当かは知りませんが。まさに死人に口無しって奴です。」

「なるほど、確かにその通りだ。」


少し長話しすぎたな。もうシャトル出発の時間だ。


「すみません。シャトルの時間なのでこの辺りで失礼させて頂きます。」

「それは残念だ。是非アッシュビー提督の逸話を聞いてみたいと思っていたのだが。」

「本当に申し訳ありません。これからどちらに向われるのですか?」

「ハイネセン、と云う事になっているらしい。私に選択権は無いのでな。哀れな囚われの身の上だ。」

「奇遇ですね、私もハイネセンです。」

「そうか。では、続きは次の機会にとって置くとしよう。」

「こちらが、私の連絡先と住所になります。私は居なくても祖父母が居ますのでアッシュビー提督の事も直接伺った方が面白いと思います。」


俺は持っていたメモ帳に官舎と実家の住所を書き殴ると、それを破り老紳士に渡し自己紹介もろくにせずその場を走り去った。

いや、失礼だとは思ったんだが時間が迫ってたので仕方ない。

慌てて移動した所為か、シャトルに乗り込む時にチョットしたアクシデントがあり、少し体が痛む。

アクシデントの詳細は秘密。

決して『年変わった瞬間、俺惑星上に居なかったんだぜ!!』的は意味でシャトル乗り込み用タラップで大ジャンプを決行したからでは無い。




















惑星マスジットの宇宙港待合室に一人の老紳士が片手にアルコール様のツマミ、もう片方の手にメモ帳から破られた紙を持ち考え事をしていた。

老紳士こと『クリストフ・フォン・ケーフェンヒュラー』は、先ほどまで自分の横に座り言葉を交わしていた青年の去って行く背中を眺めつつ

自分が同盟軍の捕虜になったのは、あの青年と同じ位の歳だった事を思い出していた。


(月日が経つのは速いものだな、もう43年か。)


一人で物思いに耽っていたケーフェンヒュラーは、アルコールとツマミを頼んだ同行者2名が戻って来るのを確認すると

メモ用紙を胸ポケットにしまい込み、彼等を出迎えた。


「やれやれ、哀れな捕虜から立派な市民待遇にして頂いて、ありがたい自由の身になった筈が、かえって窮屈になってしまったわい。

 ゆっくりと絞首刑に処されているような気分でどうにも落ち着かん。

 だが、外にも中々面白い奴がいるものじゃな。」


巨漢の同盟軍人より差し出されたビールを受け取りつつ、ケーフェンヒュラーが発した言葉を聴き

何の事かと同行者両名は首を傾げる事になった。






























「まったく!!この大晦日に、いい大人が!!」


実際の所、大晦日は数分前に過ぎ去り、現在の日時は元日が正しい。

所々に、ビールやシャンパンを掛け合う人々の歓声が響き渡っていた。

彼女が歩いている惑星マスジットの宇宙港待合室も同様であった。

その事に気付いたからといって、彼女の機嫌が良くなる訳でも無い。

むしろ、逆に彼女の機嫌は益々悪くなって行く。

彼女、『アレシア・ボーフォート』はこのマスジットの宇宙港に常駐している医師の一人だ。

只でさえ、大晦日から新年という時に勤務が入っている事により機嫌が悪いのだが

先ほどの事で、更に彼女の機嫌は悪くなった。

今から二十分ほど前、待機所に居た彼女の元に、急患発生の知らせが届いた。

如何に大晦日勤務の事で機嫌が悪かろうが彼女はプロだ。

医師である自分に誇りを持っている。

すぐに常駐のナースと共に、ストレッチャーや医療器具を持って現場に駆けつけた。

だが、そこから先が最悪だった。

患者は二十代の青年。

症状は全身打撲と擦り傷。

原因、はしゃいでタラップから転げ落ちた。

それを聴いた彼女は、一瞬帰ろうと思ってしまったがそこはプロ意識で何とか押さえ込み

青年の診察を開始した。

脳の簡易CTを取り、全身の骨をチェックした結果、軽度の打撲と擦り傷、骨や脳に異常無しとの事だった。

その結果、彼女の青年に対する治療が少し乱暴になったのは致し方ない事である。

青年の治療が終わり、ブツブツと文句を言いながら宇宙港待合室を歩いている彼女の耳に、

若い男性の叫ぶ声が届いた瞬間、彼女は声の聞こえる方へ走り出していた。

そして彼女の目に、床に倒れている初老の男性とツマミが床に散らばった光景が飛び込んで来た。


「ストレッチャーを!!はやく!!」


彼女は同行していたナースに指示を出しながら、倒れている男性へ駆け寄った。





















・・・・・・・つづく。









[13584] 外伝  黒歴史編  第五話  とんぼ返り
Name: 豆◆f0891c05 ID:1b655e2c
Date: 2010/10/08 22:33



外伝  黒歴史編  第五話  とんぼ返り











皆さん、蜻蛉(トンボ)は好きですか?

俺は好きでも嫌いでも無い。

まあ、そんな事はどうでも良い。

サイハテよりハイネセンへと帰還した俺は、統合作戦本部ビルへ呼び出され

そこで辞令を受け取る事になった。


「ペトルーシャ・イースト中佐。本日付けで大佐に昇進だ。おめでとう。」

「・・・ありがとう御座います。」

「さて、君の新しい赴任先だが『エコニア』の捕虜収容所の所長だ。」

「エコニア?」


惑星エコニアと言えば辺境だ。主な産業は捕虜収容所、他には何も無い。

しかし、あの『氷の惑星』に比べれば十分都会だ。町はあるし、人も居る。


「実は先日エコニアの捕虜収容所で事件があってな。現在、所長と参事官が不在で副所長も負傷し入院中なのだよ。詳しくは報告書を読んでくれたまえ。」


なにその、『続きはWEBで』的はヤツ。


「ああ。それから、君と一緒に赴任してもらう参事官だが・・・。『オディ・オー・ブランドー少佐』だ。確か君の同期だったね。」

「はい、その通りです。」


オディ・オー・ブランドー。アイツか。

俺やキャゼルヌの士官学校の同期で学年主席、ちょっと変な奴だ。

決して悪い奴じゃないが・・・。

俺は辞令を受け取り執務室を退出し帰宅した。

帰宅中に特にする事も無いので報告書に目を通した。











                 エコニア捕虜収容所事件報告書


        エコニアの捕虜収容所にヤン・ウェンリー少佐が参事官として赴任

                        ↓

     公金横領していた所長のコステア大佐がヤン・ウェンリーを秘密監察官と勘違い。
  
                        ↓

          コステア大佐が捕虜を使い(騙し)、ヤンを抹殺しようとする。

                        ↓

                   ヤン一行に返り討ちにあう。

                        ↓

   コステア大佐軍法会議逝き。副所長巻き込まれて怪我。ヤン・ウェンリー首都星ハイネセンに帰還。

                        ↓

          結果、エコニアの№1、2、3不在。ムライ中佐が職務を代行。









それにしても、俺が冬篭りをしている間に『エルファシルの英雄』が誕生していたとは、ちょっとショックだ。

リアルタイムで見ていたかったのに。

テレビをつけるとヤン・ウェンリー特集をやっている番組があるし、ドキュメンタリータッチでエルファシルの脱出劇を再現した番組もやっている。

で、ちょっと興味があるので今見ている所だ。

うわっ、エル・ファシル警備艦隊司令官のアーサー・リンチ少将が酷い扱いだ。彼に、同情したくなる。

って、誰だ?このイケメン。ヤン・ウェンリー?美化しすぎじゃね?









ピ!ピ!ピ!ピ!ピ!ピ!

「ん?」

官舎でテレビ観賞をしていると、キャゼルヌからテレビ電話が来た。


「よう、大佐に昇進したんだってな。同期の出世頭だな。」

「まあ、目の前の誰かさんに直ぐ追い着かれそうだがな。そんな事より、結婚おめでとう、これで人生の墓場入りだな。」

「おいおい。まだ、式は挙げてないぞ。」

「先に言って置いただけだ。なにしろ、俺は辺境行きの身の上だからな。悪いが式には出れそうに無い。」

「なあに、気にするな。半分は俺が仕組んだ事だ。」

「・・・それは、アイツの事もか?」

「いや、その事には一切関知して無い、偶然だ。」

「・・・・そうか。それにしても、もっと早く連絡してくると思ってたんだが何かあったのか?」

「ああ、例のエコニアの事件の後始末が忙しくてな。」

「エコニアの事件、エルファシルの英雄が所長と捕虜相手に大立ち回りをしたってヤツか?」

「それは少し、語弊があるな。それより、何時出発するんだ?」

「明日には出発するつもりだ。」

「明日!?随分速いな。コッチに帰ってきたばかりじゃないか、もう少しゆっくりして行ってもいいだろ。少しぐらい休んでも、誰も文句は言わないぞ。」

「いや、荷造りが面倒くさくて・・・。まだ、サイハテから送って来た荷物もダンボールから出して無い状態で・・。

 面倒くさいから、今日そのまま『エコニア』に送った。だから、官舎が空っぽでとても生活できない状態って訳だ。」

「変な所でズボラだな、お前さんは。」

「安心しろ、引越し業者にだけは就職しないつもりだ。そんな訳で出発は明日、参事官殿とは空港で待ち合わせしてある。

 見送りは必要ないからな。」

「大丈夫だ、最初から見送りに行く気は無い」


それはそれで複雑だな。

その後、どうでも良い様な事を二言三言交わし、通話を終了した。























「あんたは一体なんなんだぁぁーーーー!!」

「お前がなんだ!!」

ハイネセンの空港で参事官殿と待ち合わせしている俺に、まるで自由にやられた運命の様な魂の叫びをぶつけて来たバカが一人。

このバカがオディ・オー・ブランドー少佐だ。

時々、変な電波を受信するがそれ以外は普通?の人だ。・・・・多分。

まあ、コイツの事は放って置いてシャトルに乗り込む事にする。

それにしてもエコニアまでコイツと一緒か。かなりキツイ旅になりそうだ。



























道中、特に問題も無く俺達はエコニアに到着した。

問題は無かったが問題が無い事が色々あったが、そこは割愛する。

そんな俺達に敬礼しながら声をかけてきた美人さんが一人。


「お久しぶりです。ペトルーシャ・イースト大佐、エコニアにようこそ」

「ドールトン少尉?久しぶり、何時エコニアに?」

「三日ほど前です。このたびはイースト大佐の副官を拝命いたしました。よろしくお願いします。」

「此方こそ、よろしく。しかし、どうしてまた少尉が?」

「何でも、イースト大佐の到着が予定より随分早かったので副官の人事が未定でして

 それで面識のある私が急遽抜擢されたらしいです。」

「ああ、なるほど。」


とんぼ返りの余波がこんな所にまで影響してくるとは。

本来、副官人事は軍の任用権で自由に選べる様になっているらしいのだが、実際俺も統合作戦本部ビルで副官をどうするか聞かれた気がする。

特に要望は無かったので、『優秀な人を適当に付けて置いて』って感じで流した。


「ああ、そうだった。さっきから空気なこの人が新しい参事官のオディ・オー・ブランドー少佐だ。」

「オディ・オー・ブランドー少佐です、よろしく。ドールトン少尉?」

「イブリン・ドールトン少尉です。よろしくお願いします。所で参事官ってどんな事をするんですか?」

「それは「所長がミスをしたら代わりに責任を取るのが仕事。」・・・。」

「へぇ、そうなんですか。」


そこ、納得しちゃって良いの?

って、ブランドー君。冗談だって、そんなに睨むなよ。

まあ、始まりはこんな感じだったが俺達はその後、それぞれが別の任地に飛ばされるまでの間特に問題も無くエコニアで過ごす事になった。





















・・・・・・・つづく。





捕虜収容所の影の支配者「私は生きているのかね?」

作者「多分。」

捕虜収容所の影の支配者「再登場の予定は?」

作者「未定?」












[13584] 外伝 三姉妹編  第一話  ゲイとフラガと相打ちと
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/06/07 21:35


外伝 三姉妹編  第一話  ゲイとフラガと相打ちと



※この物語は『第一話 見切り発車』の約3年前の物語です。



因果律と云う物がある。

全ての物事に原因があり、そして結果がある。

原因無き結果は在り得ない。



蝶の羽ばたきが原因で嵐が起こる事もある。

俗に言う「バタフライ効果」である。

風が吹けば桶屋が儲かる事もある。

風が吹けば砂が舞い、それが目に入り目が、っと

現実逃避はこの辺でお終いにしよう。

俺は今、とても困っている。

そう、困っている。

いい年をした大人(俺)とその大人の前に泣きそうなほど悲しそうな顔をしている女の子が三人。

いや、訂正する。

一人は大泣き。

もう一人は目に溢れんばかりの涙を溜めている。(表面張力に感謝を)

最後の一人は目に涙を軽く滲ませている。

いい年をしている大人とは俺こと

ペトルーシャ・イースト准将だ。

そして、俺の前にいる三人は先日俺の被保護者になった女の子達である。

大泣きの子はベルナデッド。

溢れんばかりの涙の子はカリン。

軽く滲ませている子はアメーク。

俺が家に帰ってきた時からこんな状態である。

とりあえず、現状を打破する為に俺は三人にある指令を出した。

「おほん、全員注目。これより、貴官達三提督に極秘任務を授ける。

 いいか、これは秘密の任務だ。」

三人の視線が俺に集中する。

「今すぐに洗面所に向かい顔を洗ってきなさい。では、散開。」

俺は三人を洗面所に向かって送り出すと

三人が泣いていた原因を探る為に家の中の探索を開始した。

・・・が、原因はアッサリと見つける事が出来た。

まあ、ある程度予想は付いていた。

玄関から焦げ臭い臭いがしてたしね。

キッチンが酷い事になっている。

憂国騎士団の襲撃。

地球教徒のテロ。

爆心地。

あるいは、焦土作戦にあった農村の様だ。

大事に隠していた兵糧まで焼き尽くされた哀れな村人の姿を垣間見た。(それは、来年の種籾ですだ。勘弁してくだされ、お侍様。)

原因はこれだな。おそらく、何か料理をしようとして失敗したのだろう。

とりあえず、焦げ付いた鍋を水に付け

その後、時間的余裕が出来たので、三人が戻ってくるまで

適当に時間を潰す事にした。

しばらく経つと三人がトボトボと洗面所から戻ってきた。

元気の無い三人に俺は、これからする今日の予定を説明した。

「今日の夕食は外食にしよう。キッチンの片付けは明日にでもやればいい。

 昔の英雄も言ってる。『明日出来る事は明日やれば良い。』」

こうして、俺たちは悲惨な現実から一時的に目を逸らし安易な選択をした。

人も水も低きに流れるとは良く言ったものだ。(あんたの言うとおりだよ、クゼさん。)





        調査結果

キッチンの惨劇は三人が料理をした結果だった。








--------------------------------------------



                 『諸悪の根源』


別名 アレックス・キャゼルヌ

何故、俺にトラバース法が適用されるんだ?既婚者のみでは無いのか?

   諸悪の根源が無理やりねじ込んだ。←結論


原因 俺がキャゼルヌ邸に遊びに行くたびに

   オルタンスさん(キャゼルヌ夫人)にばかり恩土産を持って行き

   「三十にもなって独身などと、許しがたい反社会的行為だとは思わんか?」と言われれば

   「知らなかったのか?俺は反社会的な人間だぞ。」と返す男に

   少しは所帯持ちの苦労を分からせてやろうと考えたとしても不思議ではない。


※これらの事は全てペトルーシャ・イーストの独断と偏見によるものです。ただし、一部は真実です。
   


--------------------------------------------





[13584] 外伝 三姉妹編  第二話  ベーターカロチン
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2010/06/07 21:35


外伝 三姉妹編  第二話  ベーターカロチンは皮のすぐ裏側にあるのであって皮にある訳ではない。



※この物語は『第一話 見切り発車』の約3年前の物語です。



俺の家では家事は基本的に当番でやっている。

ただ一つ、料理を除いては。

俺は、最初から彼女達は料理が苦手だと知っていた訳ではなく

年端の行かない子供に火や刃物を使わせるのは危険だと思ったからだ。

だが、先日の様な事をこの先も繰り返されてはかなわない。

将来、彼女達が挟む物が得意になってしまったり

暗黒物質を量産してしまうような事が無い様にしなくてはならない。

と、いう訳で暇な時に料理を教える事にした。

もちろん、俺が。

婆さんに叩き込まれた料理スキルがこんな所で役立つ事になるとは。









「と言う訳で、これより第一回お料理教室を開催します。」

パチパチパチ・・・。

高らかにお料理教室の開催を宣言する俺に

三姉妹は社交辞令程度の拍手で答える。

「料理の基本は卵料理である。今日は卵料理を作ります。」

一同「タマゴ?」

「そう、タマゴです。ゆでたまご、卵焼き、目玉焼き、オムレツ、スクランブルエッグなどなど。

 今日は作れるだけ卵料理を作って行きましょう。」

作りすぎても大丈夫だ。

残飯処理係を呼んであるからな。

そろそろ来る頃だ。

ピンポーン。

お、呼び鈴が鳴った。来たか。

「今日はご馳走になります。」

「今日『も』だろ?とりあえず、料理が出来るまでは、これでもつまみながら

 あっちでテレビでも見ててくれ。」

「何ですか?これ。」

「お前の好物だろ?」

怪訝な顔をしているアッテンボローに

予め作っておいたつまみを渡すと

俺はキッチンに戻った。

お前好きだろ?厚めに切ったジャガイモの皮。(一応、軽く揚げて塩を振っておいた。)

「まず、卵を割る所から始めます。」

「全自動卵割り機を使うんですか?」

「カリンちゃん・・・、その・・全自動卵割り機って何?」

「この前、道端で変な格好をしてるおじさんが売っていました。

 『主婦の味方』、『将来は一家に一台』って言って・・・。」

カリンの言葉にうんうん、と相づちを打つアメークとベルナデッド。

「・・・・。」

駄目だこいつ等、早く何とかしないと。

そして、決意を新たにした俺による料理教室が行われた。

で、出来た料理はタマゴオンリーだ。

目玉焼き、卵焼き、ゆでたまご、オムレツ、スクランブルエッグなどなど。

三姉妹は不器用では無く、俺の教えた事を見る見るうちに吸収して行った。

しかし、このタマゴのパレードは残飯処理係の力を持ってしても処理し切れない。

仕方ない。余ったやつは明日キャゼルヌに持って行ってやるか。

それから、このタマゴの殻もただ捨てるのは勿体無い気がするな。

そうだ。

良い事思いついた。



タマゴの殻 → カルシウム → 怒り易い人にプレゼント → KOOLになる



タマゴの殻、食えない事も無いだろ?

こ○亀の両さんも食ってたし。

早速、明日持って行ってやるか。















次の日、俺は統合作戦本部に残った卵料理を詰めたタッパーと包装したプレゼント用の箱を持って行った。

ターゲットのデスクに誰にも気付かれない様に接近し(もちろんターゲットが席を外している時)

プレゼント用の箱を設置した。

メッセージカードを付け、俺が置いたと気付かれない様に細工をする。

『これを食べて、お仕事頑張って下さい。 あなたを愛する一人の女の子より』

これでよし。

箱の中は女の子じゃないけど、きっと気に入ってくれる筈だ。(ほうっ)

プレゼント用の箱の設置が済むと、俺は気付かれない様に素早くその場を移動した。




その後、タッパーをキャゼルヌに渡しに行った。

「アッテンボローから聞いたぞ。昨日は凄かったそうだな。」

「ええ、タマゴオンリーだからな。しばらく、卵は観たく無い。

 そういえば、さっき救急車が来ていたみたいだが・・・何かあったのか?」

「ああ、その事か。何でかは分からないが、倒れた奴がいたらしい。」

「倒れた?誰だそいつは。」

「名前は忘れたが、アッテンボローの一年後輩で士官学校で主席だった奴らしい。」

「ふーん。」

「不思議な事があるもんだな。」

この世には不思議な事など何も無いのだよ、キャゼルヌ君。







[13584] ※これは一発ネタです。続きません。
Name: 豆◆f0891c05 ID:cbf1eea4
Date: 2009/12/18 23:10



※これは一発ネタです。続きません。



我輩は貴族である。

名前はまだ無い。

貴族といっても、中世ヨーロッパや平安時代の貴族ではない。

ゴールデンバウム王朝銀河帝国の貴族だ。銀英伝だ。

しかも、帝国騎士などでは無い。公爵家だ。

大貴族である。門閥貴族の一角を担う大貴族だ。

世間では帝国一の貴族といえば、

「ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯、

そして俺の家であるのヴェルテンベルク公のどれかだ。」と

いわれる位凄い家だ。

こんな凄い家に生まれた俺は不幸か?

いいや違う。俺は幸運だ。ハッピーだ。

何しろ、一生遊んで暮らせるんだからな。

リップシュタット戦役の時に選択を間違えなければ安全だ。

帝国貴族万歳。



















そう思っていた時期が私にもありました。



もうすぐ二十歳を迎える俺に両親から連絡が入った。

何でも、俺の婚約者が決まったそうだ。

親から聞く所によるとかなりの美人らしく、

年は俺より少し下だそうだ。

で、今日その婚約者が俺の家に来た。

実際に見てビックリした。

凄い美人だ。

いや、可愛いと表現するのが正しいのか?

それから、名前を聞いて更にビックリ。

『アンネローゼ・フォン・ミューゼル』

獅子帝のお姉さんでした。

ヤバイ。

非常に危険だ。

立ったよ。

立った。

フラグが立った。

俺、殺される。

シスコン弟に殺される。

如何する。

如何するよ、俺。








[13584] ※ネタ2発目続いてしまうのか?
Name: 豆◆f0891c05 ID:1b655e2c
Date: 2010/11/09 21:40



※ネタ2発目続いてしまうのか?











話をしよう。

あれは今から500年・・・いや、900年前だったか。

私にとってはつい昨日の出来事(思い付いたのは)だが、君達にとっては多分・・・明日の出来事(これを読んでいるのは)だ。

















帝国の大貴族であるヴェルテンベルク公爵家を語る場合、

殆んどの人はルドルフ大帝の時代に海賊討伐で活躍した『トクガワダ・シンゲンシン』提督をヴェンテンベルク公爵家の始祖として語り始めるのだが

今回は少し指向を変えて話そう。まあ、シンゲンシン提督の事は後ほど語るとしよう。




まだ、宇宙暦が使われていない頃だ。

地球軍とブラック・フラッグ・フォースの戦い。俗に云う『シリウス戦役』だ。

この戦いで地球軍は大敗北を喫し、人類の盟主の座から転げ落ちた。

この時、地球で事後処理を行っていたブラック・フラッグ・フォースの提督の旗艦が大気圏内を航行中にとある島に落ちた。

機関部の故障が原因だったらしい。その船に乗っていた提督が『トクガワダ・ヒデムネ』。彼がヴェルテンベルク公爵家の遠い先祖だ。

まあ、故障自体は大した事は無く、重傷者も出なかった為、暇つぶしにトクガワダ提督は側近達と島の探索を始めた。

島自体は無人島だったのだが、彼等はそこで『とんでもない物』を見つけた。

所謂『埋蔵金』だ。何処かの政党が言っていたヤツじゃ無い。正真正銘の埋蔵金だ。

地球統一政府が隠した埋蔵金がトクガワダ提督の不時着した島にあった。

実際にそこにあったのは、地球統一政府が隠した埋蔵金の一部に過ぎなかったのだが

彼等からすれば、この世の全ての財宝を見つけた気分になっただろう。

トクガワダ提督は居合わせた側近達に、片手で掴める程度の宝を持って帰る事を許可し、この事は秘密にする様に指示した。まあ、片手SIZEって事かな?

この事が他の提督たちにばれたら不味い事になる。『トクガワダ提督達は地球軍に内通していた』などと、適当な事をでっち上げ財宝を横取りしようと企むに違いなかった。

そういえば、少し前に地球軍が惑星ロンドリーナのラグラン市を攻撃した際に、ダイヤモンド原石の研磨工場で獲物の奪い合いによる同士討ちがあったな。

この後、トクガワダ提督は地球での事後処理が終わるとシリウスに戻ったのだが、その時には既に首相パルムグレンが病死し

新たに首相になったタウンゼントと国防相フランクウールの二つの勢力が争っていた。

トクガワダ提督は日和見を決め込み、有利な方または権力闘争に勝った方に埋蔵金の情報を売り、新政権内部での自分の地位を固め様とした。

彼の持っていた埋蔵金の情報の価値は、彼が思っていた以上に大きかった。

彼がこの時に上手く立ち回っていれば、この権力闘争での主導権を握る事やタウンゼントとフランクウールの両名を和解させる事も可能だったかも知れない。

だが、彼はそうしなかった。その辺がトクガワダ提督の器としての限界だったのかも知れないな。

その後、トクガワダ提督は権力闘争に勝ったタウンゼントに近づき、埋蔵金の情報を売るタイミングを見計らって居た所

タウンゼントに目掛けて撃ち込まれた中性子爆弾の餌食になり、ターゲットだったタウンゼントと一緒に仲良くあの世に旅立った訳だ。・・・・まあ、良いヤツだったよ。

結局、埋蔵金の情報は誰にも売られる事は無かった訳だ。

トクガワダ提督の死も歴史の闇に葬られた・・・と言うより、忘却されたが正しいな。










それから、約400年後か。

銀河帝国が成立しルドルフ・フォン・ゴールデンバウムが銀河帝国初代皇帝になった頃の話だ。

トクガワダ・シンゲンシン提督が宇宙海賊の討伐で名を上げた。

ルドルフも政治家になる前は、宇宙海賊の苛烈な討伐で名を上げたものだ。

だからかな?シンゲンシン提督が活躍しだした事を帝国の民衆は新たな英雄の登場だと喜んだものだ。

ただ、ルドルフは自分の地位を脅かす存在だと当初シンゲンシン提督を危険視していた様だ。

しかし、シンゲンシン提督は彼を称える民衆と危険視するルドルフの期待を裏切る事に比類なき才能を発揮した。

どうやって期待を裏切ったかって?

簡単だ。彼はただひたすらに海賊討伐を繰り返し続けた。それだけだ。

ルドルフが『劣悪遺伝子排除法』や『共和主義者の弾圧』など、様々な悪政を行っているのにも関わらず

彼はただ、海賊討伐に奔走した。まるで他の事には一切興味が無い様子だったな。

その結果、民衆は『解放者』または『英雄』としての役割をシンゲンシン提督に期待する事を止め

ルドルフは自分の『好敵手』としての役割を、彼に期待する事を止めた。

いや、ルドルフの場合は違うか。シンゲンシン提督を自分と同格では無く、遥か格下の存在と認識したって言うのが正しいのか。

晩年にルドルフが側近に、『あのシンゲンシンは如何している』と問い掛けた時に

彼の側近は『海賊を討伐しています』と答えた。

この返答を受けたルドルフが『ヤツは海賊に片思いでもしているのか?』と返した事が有名だ。

この事により、シンゲンシン提督は『海賊に片思いしづつける提督』『求婚提督』『半世紀の恋煩い』などの渾名をつけられる事になった。

ルドルフがシンゲンシン提督に与えたのは渾名だけでは無く、晩年には広大な領地を今までの海賊討伐の功績として与えた。

ただ、彼の外見と名前が東洋風だった為に貴族としての地位は与えられなかったが貴族と同等の権限は与えた。

その後も彼は海賊を討伐し続けた。

もしかしたら、それがシンゲンシン提督の処世術だったのかも知れないな。

















銀河帝国第二代皇帝ジギスムント1世の時だったな。

トクガワダ・シンゲンシンの息子『トクガワダ・ウジモトマサ』にヴェルテンベルク伯爵号が叙せられたのは。

こうして彼は『ウジモトマサ・フォン・ヴェルテンベルク』になった訳だ。

彼は軍人としてより、内政家として能力を発揮し領地内の財政基盤を整えた。

ただ、彼の長男『オットー・フォン・ヴェルテンベルク』にはちょっとした問題があった。

彼は『放蕩息子』ならぬ『放浪息子』だった。

その名の通り、彼は祖父の時代に与えられた『銀河系の自由航行権』を行使し、自家用戦艦を使い銀河系内の至る所を巡った。

その結果、彼が三十になる前には銀河中に『放浪息子』の名が知れ渡っていた。

その放浪息子が偶々実家に帰って来た際に偶然に『宝の地図』を見つける事になった。

宝の地図とは例の『埋蔵金』の事だ。

宝の地図を見つけた彼は意気揚々と地球に向って出かけて行き、そこで現地の勢力に殺害された。

本来だったら彼ももう少しは自重したのかも知れないが、宝の地図が入っていた箱の中に一緒にしまわれていた一掴み程度の宝石に釣られた結果だ。

だた、彼の名誉の為に言って置くが、彼が欲したのは金銀では無く、名声だった。

彼は良く『宇宙一のトレジャー・ハンターになる』って言ってたっけ。

何れにしろ余り賢い子では無かった様だが・・・まあ、いい。

辺境の惑星『地球』で銀河帝国の伯爵家の跡取りが死んだという話は、最初驚きをもって銀河中を駆け巡ったが

死んだのが例の『放浪息子』だと知ると、皆一様に納得した。

しかし、納得したで済まされない人物が居た。彼の家族だった。

父親のウジモトマサ・フォン・ヴェルテンベルク伯爵は『息子の仇をトルノデス!!』と言って激昂する妻をなだめつつ『地球討伐』の準備を進めた。

彼は銀河帝国皇帝に地球討伐の許可をとった。

ジギスムント1世の返答は『許可は出すが金は出さない。やるなら、自費でやれ。ただし、現地での物資の接収は好きにして良い』だった。

皇帝としても、こんな馬鹿馬鹿しい事に付き合うのは御免被りたいとの気持ちも分からなくは無いな。

ウジモトマサ・フォン・ヴェルテンベルク伯爵は『地球討伐』で三つのモノを手に入れる事が出来た。

一つは『息子の仇を討ったと云う満足感』、もう一つは『内政家に続いて戦術家と云う評価』、そして最後は『埋蔵金』だ。

人間万事塞翁が馬って事か?こっちは息子は死んだが・・・。













その後、ヴェルテンベルク伯爵家は武門の名家として、極々無難に歴史の中を歩んでいった。

次にヴェルテンベルク伯爵家が歴史の表舞台に登場するのは銀河帝国の第14代皇帝アウグスト2世の時だった。

アウグスト2世は・・・・まあ、とんでもないヤツだったよ。

『史上最悪の暴君』『流血帝』などと呼ばれているが、私もそう思う。

アウグスト2世に対し、後の第15代皇帝エーリッヒII世が叛乱を起すと

イエヒサヨシ・フォン・ヴェルテンベルク伯爵は私兵を率いて真っ先に駆けつけ忠誠を誓った。

結局、叛乱は大成功。討伐軍が一戦も交えずに叛乱軍に降り、『新皇帝万歳』と叫びながら帝都に凱旋する事になった。

この後、イエヒサヨシ・フォン・ヴェルテンベルク伯爵は一番にエーリッヒの元に駆けつけた功績により、侯爵号に叙せられた。

更に、『流血帝』の直感により領主が処刑されたヴェンテンベルク領周辺の領地を大量に与えられる事にもなった。

だが、処刑された貴族達の家族や関係者はヴェンテンベルク伯爵に匿われており、後にその領地をその家族に返還したそうだ。

だから、ヴェンテンベルク領周辺の貴族達の結束は非常に固く、ヴェンテンベルク家を盟主として扱っている。

これを『流血の盟約』と呼んでいる。













次にヴェルテンベルク侯爵が歴史の表舞台に登場するのは第20代皇帝フリードリヒ3世の時代の『ナリチカリン・フォン・ヴェルテンベルク』だ。

そう、あの有名な『ダゴン星域会戦』だ。
ただし、彼はダゴン星域会戦には参加しなかった。

皇帝フリードリヒ3世の、この遠征の目的は自分の息子であるヘルベルト大公にハクをつけさせる事であり

武門の名家として有名なヴェルテンベルク候に手柄を横取りされる事を危惧した結果、彼を遠征軍から外した。

一方、ナリチカリン・フォン・ヴェルテンベルク侯爵もこの遠征自体には反対だった。

状況が許せば皇帝陛下に遠征中止の要請をしようと思ったほどだ。

だが、彼はそうしなかった。

少し前に御前会議で皇帝の異母弟で帝国軍上級大将だったハルトバッフェル候ステファンが遠征に反対を唱えた為に

その地位を追われ、男爵に格下げされた上に領地の八割を削減された。

その事が、我が身に起こる事を恐れたナリチカリン・フォン・ヴェルテンベルク侯爵は、口を噤んでしまった。

彼は優秀な軍人だったが、小心者でもあった。

その後、遠征軍は大敗北し、遠征に参加していたゴッドリーブ・フォン・インゴルシュタット中将は軍法会議で敗戦の全責任を負わされ処刑された。

その時の軍法会議で弁護人に選ばれたオスヴァルト・フォン・ミュンツァー中将が、カッコいい事を言ってインゴルシュタット中将を弁護したらしい。

まあ、悪いんだが私には興味が無いんでね。

ちなみに弁護人の話はヴェルテンベルク侯爵にも来たらしいんだが、彼は断った様だ。

仕方ない。彼は小心者なんだ。

彼が活躍したのは戦後の軍備再編だった。

艦艇は勿論、人材の育成にも力を入れた。

士官学校の増設を唱えたが、帝国では艦隊の再建に予算を使っていた為、却下された。

そこで、何を思ったのかこのヴェルテンベルク侯爵は自領に士官学校の分校を開校してしまった。

一応は皇帝に許可を貰ったのだが、例によって『許可は出すが金は出さない。やるなら、自費でやれ。』との有難いお言葉を頂戴したらしい。

ちなみにこの開校資金は『埋蔵金』から出した様だ。

当初、この通称『トクガワダ士官学校』は帝国全土から冷笑の対象になった。

次はこの士官学校が冷笑を跳ね除けた話でもしよう。











あれは第2次ティアマト会戦だったな。


ただし、トクガワダ士官学校の卒業生が第2次ティアマト会戦で大活躍したと云う話じゃない。

まあ、活躍した卒業生も居るにはいたが・・・。確か、『ハウザー・フォン・シュタイエルマルク中将』がそうだったんじゃないかな?

・・・・戦死した『コーゼル大将』も卒業生だったが・・・まあ、良い。話を戻そう。

この第2次ティアマト会戦で起きた悲劇。

『軍務省にとって涙すべき40分』

第2次ティアマト会戦後半戦での40分間に帝国軍の将官の戦死者は約60名に及んだ。

帝国軍はこの40分で被った損失を回復するのに、その後10年を必要とすると予想された。

だが、軍籍を持っているトクガワダ士官学校の教官や講師。

更には、ヴェルテンベルク侯爵家の私艦隊の提督達を大量に借り受ける事で帝国軍は人材の穴埋めを行った。

その所為で、トクガワダ士官学校の機能やヴェルテンベルク侯爵家の私艦隊の機能が麻痺する事になった。

この時に貸し出された提督を『貸出提督』などと呼び、『10年ローンで貸し出された提督』などと揶揄され

トクガワダ士官学校は『レンタル提督店』と冷笑された。

その汚名を返上したのが、第2次ティアマト会戦の6年後に行われた『パランティア星域会戦』だ。

この会戦で帝国軍は同盟軍に大勝利を収め、同盟軍の総司令官『ブルース・アッシュビー元帥』と『ジョン・ドリンカー・コープ大将』の二名を戦死させた。

この時の帝国軍の総司令部のメンバーは『ドウタツオキ・フォン・ヴェルテンベルク上級大将』『ハウザー・フォン・シュタイエルマルク大将』達トクガワダ士官学校の卒業生が占めていた。

結果として、それがトクガワダ士官学校の評価を上昇させる事になった。

その後もイゼルローン要塞の建造に活躍したりしたのだが、今回はこの辺にして置くとしよう。





























豆 「このネタは作者の妄想で出来ています。」

黒猪「そんな事は言われなくても分かっているぞ。」

豆 「ついカッとなってやりました。」

黒猪「反省しろ。」

豆 「ちなみに、装備うんぬんのセリフは後で使うので避けました。」

黒猪「お前は一体何を言っているんだ?」


感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.12573385238647