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[13824] 【完結】ちゅうに的なそんざい+わん(現実→ネギま! オリ主 短編連作)
Name: uyr yama◆157cb198 ID:c975af4b
Date: 2009/12/11 10:13
「はぁ~、憂鬱だ……」


 この世全てをくだらなく感じてくる。

 いや、違うか。くだらない存在なのは僕か……



 

 僕には前世の記憶があった。
 自分なりに精一杯生きて、そして死んだ記憶。
 ごく普通の学校へ通い、2流程度の大学を出て、市役所務めの公務員になり、そして風邪をこじらせて死んだ。


 覚えているのは、泣きながら僕の名前を呼び続ける母の顔。
 親不孝な息子でごめんよ、母さん……、最後にそう言って僕は死んだ。


 死んだ筈だった。
 ホント死んだ筈だったのに、気づけばぼんやりと見知らぬ天井を見ていて。
 身体が自由に動かない。声が思い通りに出ない。目も良く見えない。

 初めはね? この状況は何とか命が助かって、何らかの状況で身体が動かせないんだと思っていたんだ。
 でも、ぼんやりと見える人の影が物凄く大きくて、そして自分を抱きかかえた時、気づいた。

 僕は赤ん坊なんだって。

 それからは自意識が閉じて、唯の赤ん坊、もしくは幼児として過ごしていたんだけど……
 3歳ぐらいの頃に、ようやく意識の統合が完全に行われて今の自分になったんだ。
 前世の両親には申し訳ないけれど、今世の両親の事も大好きで、その上、可愛い妹までいたんだから今度の生は幸せ一杯に生きるぞ!


 なんて思ってたのに、5才くらいになった頃、気づいてしまった。
 いや、見てみぬ振りをしていたのが限界になったと言うか……


 僕さ、銀髪でオッドアイだったんだ。

 謎だ……。だって両親は黒髪黒目だよ? 妹だってそうさ!

 なのに何で僕だけ……

 その上、僕がちょっとでも微笑んだりすると、老若男女問わず顔を赤らめやがる。
 妙に動物に好かれまくる。異常なまでに身体能力が高い。
 物覚えが良すぎるし、頭の回転率が異常。



 中二だって言いたいんだろ?
 ニコポ野郎だって言いたいんだろ?


 でもな、一言だけ言わせてくれ。

 ニコポなんて能力、最低だぞ?
 微笑んだだけで惚れるんだぞ?

 それってさ、本当に僕の事、好きになってくれてるのかなぁ。
 もしも、何らかの要因でこの能力が失われた時に、それでも僕の事を好きになったままでいてくれるのかなぁ。
 そう思ったらさ、恋愛なんて出来なくなっちまったよ。

 それからは出来るだけ表情を変えない様にしてきたんだけど、無理だね!
 どっかの勘違い系の主人公みたいに、表情が鉄のように変わらないなんてムリムリ。

 だって僕は、両親も妹も大好きなんだもの。
 顔が綻ぶのは当たり前だろ?

 でもさ、両親が僕の事を好きでいるのは、もしかしてニコポのせいなんじゃ……


 そんな不吉で悲しくなる事を思ってしまう様になった時、僕は両親の下を出て、学校を経営している祖父の下へと行く事にした。
 泣いて止める両親や幼馴染の女の子を置いて、僕は祖父の下へと行ったんだけど……


 
 行かなきゃ良かった。じいちゃんの所になんか。
 そうしたらもう一つの嫌な現実に気づかずに居られたかも知れないのに。


 祖父の名前は近右衛門。父の名前は詠春。妹の名前は木乃香。



 僕の名前は近衛衛華。

 今居る場所は麻帆良学園都市。


 そうさ、ここは『魔法先生ネギま!』の世界だったのさ。


 なんでもっと早く気づかなかったんだって?
 普通さ、自分がマンガの世界に来たなんて思わねーよ!
 顔見てマンガの登場人物だなんて思わねーよ!!


 だって、自分の父親だぞ? 自分の妹だぞ? そんな風に思える訳なんてねーだろ!!
 今だって半信半疑だ。いや、3信7疑位か?


 家に女中さんと言う名の巫女さんが居たのは、僕も不思議に思ってはいたよ?
 でもさ、そんなの日常なんだから、気づいたら当たり前になっちゃうんだよ!



 まあ、それはもう如何でも良い事なんだけどね。
 マンガだなんて、実際ここに僕がこうして生きている以上、そんなの関係ないし。
 ネギま!のストーリーなんて、すっかり忘れてしまってるし。
 ここがネギま!の世界だって気づいた事自体がビックリなくらいさ。



 そんな訳で、初めはそれなりに平和に過ごしていたんだ。
 出来るだけ人と関わらず、誰にも微笑を見せない様に気をつけながら。
 でも、木乃香がやって来た辺りからそれが崩れ始め……
 今も木乃香と腕を組みながら街を歩いていると言う訳さ。


「兄様、兄様! ウチのこと、好き?」



 胃が痛い……


 内容は覚えていないが、これからネギま!ストーリーに関わる事が決定済みっポイのがキツイ。
 木乃香のクラスメイト全てが僕にポッしてると言う現実がキツイ。


 ニコポを打ち消すために、神楽坂さんに叩いてもらったりとかしたのに、全然消えなかったのがキツイ。
 ニコポどころか、ナデポまで持っていた現実がキツイ。





 ああ、この先、僕はどうなってしまうんだろうか?
 せめて、せめてニコポとナデポ能力だけは失くしてしまいたい。
 神様、もしもおられるなら、僕のささやかな願いを聞き届けて下さい。

 そうでないなら、アレだ。

 YOKOSHIMAとかEMIYAとか召喚して下さい。別にKYOUYAでも良いです。

 そうすれば彼等が全部受け持ってくれそうだし。



「はぁ~、憂鬱だ……」


 今、こうして僕の隣に居る愛しい妹が、僕を好きでいるのがニコポのせいだったら……
 そしてもし、突然その効果が切れて、今までニコポされていた人達が一斉に僕の事を嫌いになったら……
 くだらない、本当にくだらない存在だ、僕は……


「どないしたん、兄様?」

「いいや、何でもないよ、木乃香」






 多分、僕はこうして一生を過ごすのだろう。
 他人の好意を信じられず、ろくに恋愛する事も出来ず。


 そして、孤独に死んでいくのだ。





「兄様ぁ。ウチな、兄様のこと、だぁーい好きやっ!」





 儚げに笑う僕。

 それを見て頬を赤らめる妹。

 近くで僕の微笑を見てしまい、ポッしてしまう人達。





 本当に、くだらない。























 後書き

 忙しくて鬱っていたら書いちゃった。




[13824] 2番
Name: uyr yama◆157cb198 ID:c975af4b
Date: 2009/11/11 18:15

 僕は前世の記憶を持っていた。
 25才まで生きた記憶が。
 それなりに精一杯生きた記憶が。
 そして、今の僕は15才。

 中学3年生。去年の僕はリアル厨二だったと言う訳さ。


 何でいきなりこんな事を言い出したかと言うと、僕は今、心底困っている。
 精々15年生きた僕ではどうしていいか分からない。
 前世での25年の人生ではこんな事は無かったし。


 転生・憑依系主人公って、25年+15年で精神年齢40歳です。
 なんて言うけど、そんな事はないと思うんだ。

 だって僕は40才になった経験が無いのだから。
 だから最大上限みても、僕の精神の年齢は25才。

 そんな25才程度の青二才では解決出来ない問題が。




 本当にどうしようか……

 僕は眼前で頬を桃色に染めている少女を見て、心底悩んでいた。

 目の前の少女は僕の大切な妹のルームメイトで親友。
 ツインテールに釣り目がちな目を、上目遣いで僕をチラチラと見ている。
 指をもじもじして、緊張しているのか忙しなく身体を揺らす。

 正直な話、少し好みだ。
 僕がニコポなんて能力持ちじゃなかったら、間違いなくお付き合いしたこと疑いない。

 そんな彼女の名前は、神楽坂明日菜と言う。
 恐らくこの世界の元になったマンガ、魔法先生ネギま!のメインヒロイン。
 ネギ先生の恋人役と思われる。

 僕が必死で思い出したストーリーでは、


 彼女はパソコンの中から出てきた、とある亡国のお姫様。
 記憶を失って彷徨う彼女は、とある魔法先生に憧れて東大を目指す。
 そんな時、男のくせに麻帆良女子寮の寮長になったのがネギ・スプリングフィールド。
 彼が巻き起こすちょっとエッチなハートフルラブコメディー。



 多分だが、ネギ先生とやらが現れるのはまだ先の事なんだろう。
 なんせ僕の妹や明日菜ちゃんは、僕の病気と一緒で中2。
 いくらなんでも中2じゃ、東大を目指す少女がヒロインのマンガには成り得ないだろう。
 と言う事は、速くても後2年は大丈夫と言う事なのだろうか。

 それにしても何だ、この世界の東大は魔法も教えてるのだろうか?

 この世界の東大、マジパネェ。


 いや、そんな事はどうでもいいんだ。

 問題なのは、彼女が僕に「学祭一緒に回りませんか?」と聞いてきた事だ。


 正直な話、言われた瞬間は素直に喜んだ。
 こんな可愛い女の子から誘われて、嬉しく思わないヤツなんていないだろう?

 でもさ、彼女が僕の事を好きなのは、ニコポの所為なんだ。
 そう思ったら空しくなる。
 この考え自体が傲慢なんだと分かっていても。


「あの……、なんか予定があるんなら、別に……」


 目の両端に、今にも零れそうな位に涙を溜める。

 こんな顔されて、断る事なんて出来ない……

 でも、なぁ……

 もちろん、ネギま!ストーリーが如何のなんて悩みじゃない。
 この世界は僕が生きる世界であって、決してマンガの世界の中に潜り込んだなんて思ってないから。

 何度も言うけど、ニコポだ。

 この能力さ、すんごく性質の悪い洗脳なんだ。
 好きでもない男に強制的にポさせる能力。

 そんな能力で僕の事を好きになった女の子。

 この能力が無くなった時、それでも彼女が僕を好きでいてくれる自信が無いのだ。

 本当にくだらない男だ、僕ってヤツは!

 情けなく、最低で、本当に、本当に……!!


「2日目の昼からだったら時間あるよ」


 相手の好意を振り払えない自分が、とても嫌いだ。
 結局、自分がニコポを使って、良い思いしようとしてるだけなんだと。


 それでも、明日菜ちゃんがパァ~っとひまわりみたいな笑顔を見せてくれる。

 自分がニコポなんて物で洗脳されてるなんて思いもせずに。


「そうやな~、だったら3人で回ろうな、兄様。そ・れ・に、ア~ス~ナ~!!」

「ヒィッ!? こ、このか……?」 


 突如何処からとも無く現れた木乃香。

 僕の大切な妹である彼女は、明日菜ちゃんの頭に右手を置くと、ギリギリと万力の様に締め上げる。


「ええやろ? 兄様ぁ~」


 甘えた声で言ってくるも、彼女の背後から黒い何かが噴出している。

 ヤバイ! 僕はこの状態を良く知っている。

 
 僕がまだ京都に居た頃の話だ。

 幼馴染の女の子と2人で遊んでいると、木乃香が現れ……


 ダメだ! 忘れろ!! 川に流されてなんかいないっ!! あーーーっ! 逃げてーーーっ! せっちゃーーーーんっ!!


 僕は内心の恐怖を表に出さないように必死になりながら立ち上がる。

「うん、良いよ木乃香。待ち合わせは~、そうだな、世界樹の前でPM12:30ってトコで」


 そう言うと、木乃香と明日菜ちゃんの答えも聞かず、走って逃げた。



 本当に情けないヤツだ、僕は……


「みぎゃぁーーーーーーーーーーーーーーっっ!!」


 明日菜ちゃんの断末魔の叫びを聞きながら、僕はそう呟いた。


































「いっつぅー! 何すんのよ、このかっ!」

「ウチの兄様に手を出そうとする淫売を殲滅しただけや」

「淫売って……、アンタねぇーっ!!」

「大体アスナは高畑先生の事が好きだったんよね?」

「そんな昔の話されてもね。そんな事より、アンタ、私のデートの邪魔しに来ないでよっ!」

「ふっふーん。アスナなんかに兄様任せたら、暗がりに連れ込まれて手篭めにされてまうわ。ウチがしっかりと見張っとかんとな」


 木乃香はそう言うと、手をパンパンと2回叩く。

 すると、シュバッと音を立て、一人の片結いの少女が木乃香の眼前に現れ跪く。

「兄様の警護、しっかりとな。アスナみたいな輩が多数現れる時期や。兄様を誘うとする女、全て見敵必殺や」

「はい、分かっています」

「良し、行けっ。頑張ったらウチと一緒に兄様に甘えるんを、少しだけ許してあげるかんな」

「はっ!」


 出て来た時と同じく、シュバッと音を立て消える少女。

「相変わらずね、刹那さん。ウチのクラスって忍者2人もいるなんて、可笑しくない?」

「アスナ、せっちゃんは忍者やない。侍や」

「どこがよ……」



















 後書き

 やっぱ続けたんは失敗だったよ。
 この設定は一発ネタでやってこそだね。

 まあ、暇つぶしに時々書く程度でお許しを。

 あと、本板に出てきたのは、1発ネタは2回やったらネタじゃねぇー。
 って言うのと、XXX板とは言え、本板で投稿してる以上、習作じゃダメだよな……って事で。

 よろしく。



[13824] 3審
Name: uyr yama◆157cb198 ID:c975af4b
Date: 2009/11/13 21:59


 近衛 衛華、

 彼の中には幾つもの厨二的な力が眠っている。


 その中でも、特に彼が消してしまいたいと願っている力が2つ有る。


 一つはニコポ。絶対順守のポの力。


 いかなる堅牢強固たる心の壁を持つ女性でも、彼の微笑みの前では恋する乙女になってしまう王の力である。



 そして、もう一つは……



























 何でこんな事に!?


 恐怖で上手く回らない頭で必死に考える。
 いつもなら寮に帰っている時間だ。

 だけど、僕は今日に限って寄り道三昧。
 珍しく遊びまわった挙句、まっすぐ寮にも帰らず、何故か森の中へと行ってしまった。




 其処に居た、時代錯誤な格好をした男。
 彼は僕を見るなり変なお札を投げつけてきた。

 なんだ? そう思う間もなく、其処に現れたのは大きな鬼。

 その鬼が、地面に落ちている石を拾うと、僕に投げつけてきた。


「があっ!?」


 石を腹にまともに受け、僕は地面を転がり回る。

 痛い、痛いよぉ……
 痛みから呼吸が出来ない。
 そんな僕を男は嘲笑う。

 そして、

「殺せっ!」


 必死に後ずさりながら僕は逃げようとする。


 ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ……


 呼吸が荒い。
 手も足も思ったように動いてくれない。
 身体の震えが止まらない。
 目の前の存在が恐ろしい。

 怖くて怖くて如何にもならない。


 誰か、助けて……


 そう思い、叫びだしたくても、恐怖で口が回らない。


 目の前の鬼とおぼしき化け物が、右手に持つ大きな金棒を振り上げる。


「すまんなぁ、にいちゃん。これも仕事や、堪忍なぁ」


 何故か関西弁で喋る鬼は、どこか陽気に僕に語りかける。
 にやついた顔で……



 ああ、ここで、僕は、死ぬのか。

 
 漏らしてしまったのか、下半身がじんわりと熱くなる。
 歯がガチガチ鳴って止まらない。


 僕は自分を厨二的な存在だと思っている。
 恐らくだけど、鍛え上げれば誰にも負けない俺TUEEEEEEEEEEが出来るはず。

 でも、僕は自分を鍛えたりなんかしなかった。

 だってさ、僕は人を殴る事も出来ない普通の平凡な日本人だもの。
 鳥や豚の肉を食べる事が出来ても、鳥や豚を殺す事なんて出来やしないもの。

 そんな平々凡々な僕だ。どんなに修行を重ねたって、誰かを傷つけるなんて出来やしない。


 だけど、今、こうして危険を目の前にして思うんだ。

 自分の身を守れる位はしても良かったよね? って……

 今更だ、本当に今更な話だ。
 いつも僕はこうなんだ。
 言い訳をして、世間を斜め見て!

 でも、それももう終わり。

 
 鬼が金棒を振り下ろすのが、スローモーションの様にゆっくりと見える。
 身体が動けば、簡単にかわせる位に。
 動けば、だけど……


 僕の身体に金棒の影が覆い被さって来た時、視界の端にあの娘が見えた気がした。



「衛華さまぁーーーーーーーーーっ!?」

 


 せっちゃんの声が聞こえた、そう思った瞬間、僕の中の何かが弾け飛んだ。


 背中が熱くなる。
 制服とシャツが背中から破れ、12枚の光の翼が現れる。
 翼から発する光は世界を満たし、目の前にいる鬼は手に持つ金棒ごと塵となって消えて行く。

 そして、僕に鬼をけしかけて来た男も。



 僕は、人を殺したのか……?


 頭が真っ白になる。
 思い浮かぶのは、どうしよう? ただそれだけ。
 目から涙がボロボロ零れて止まらない。

 そう、僕は人殺しになったんだ……


「大丈夫ですよ、衛華さま。貴方は人を殺してません」


 暖かい声色。僕の大切な幼馴染の声。


「せっちゃん……?」

「はい、衛華さま」


 せっちゃんが僕を見てにっこりと笑うと、指を指し示す。
 その先には、麻帆良における僕の保護者。
 忙しいじいちゃんに代わって、色々と僕の面倒を見てくれる女性、刀子さんが。

 その刀子さんの足元には、ボロボロになったさっきの男が!




 ホッとした……、心底ホッとした。
 良く周りを見てみると、周囲にあった木々が消え失せている。

 翼の光で消し飛んだんだろうか?

 そして、せっちゃんと刀子さん以外にも人影がチラホラ。
 せっちゃんの隣にいて、僕に手を差し伸べてくる龍宮さん。
 ウルスラの制服を着た女の子と、木乃香達と同じ女子中等部の子。


「おい龍宮っ! 何をしているっ!?」

「何って、衛華先輩に手を差し伸べている」

「それは私の役目だっ!!」


 せっちゃんと龍宮さんのやりとりに、命が助かったんだと実感した。

 平和な日常が戻ったのだと。
 恐怖が、終わったのだと。



 僕は油断していた。

 せっちゃん達に向って、安堵から微笑みかけてしまった。
 もっとも、見知らぬ2人の女の子を除けば、すでにニコポに汚染されている人達ではあったけど。

 女の子達は一斉に頬を染め上げる。

 刀子さんを女の子って言って良いモンだか分からないけど。


 あっ、しまった! そう思った時だ。

 僕に秘められていた、もう一つの力の片鱗が現れたのは。


 彼女達は頬を染めながら、時間が止まった様にぼ~っと僕を見つめる。

 サァーっと一陣の風が吹いた。


 さっきの僕の翼から発せられた光でも浴びたのかなぁ?
 彼女達の着ている服が、僕の目の前で塵となっていく。

 
 キレイだなぁ。本心からそう思う。

 せっちゃんの真っ白い肌に、小さな胸。
 龍宮さんの大きいおっぱいも魅力的だ。
 刀子さんの大人の色気。
 ウルスラの子の高校生的魅力。
 もう一人の子は、まあ、可愛いよね?


 なんて、現実逃避をしてみた。

 僕、悪くないよね? たぶん……

 さっきとは又違った意味で、時間が止まる少女達。

 一瞬の間を置いて、

「「「「「キャアアアアアアアアァァアアアアアアアアアッッッ!!!」」」」」


 そして、ウルスラの子の腕が黒く染まっていく。
 ブルブルと震え、僕の方に駆け寄ると、

「いやぁぁあああああああああっ!?」


 と叫びながら、僕に鉄拳を喰らわせた。


「もげらっ!?」


 クルクルと宙を舞う僕。
 地面に落ちるまでの短い時間で僕は悟った。


 これは、『ラッキースケベ』だと。


 そうして僕は、意識を手放した。










 次に気づいた時は、病院のベッドの上だった。
 土下座して謝るウルスラの子、高音さんを見ながら思った。


 ラッキースケベは僕には耐えられない。
 スケベでラッキーな思いをする度に、暴力的行為を受けるのだ。
 とてもじゃないが、このままでは死んでしまう。

 あんなマンガ見たく宙を飛ぶ程の一撃。

 今こうして生きてる事自体が厨二だ。


 あれ? そう言えば……、

 僕は病室に集まっていた、せっちゃん、龍宮さん、刀子さん、高音さん、愛衣ちゃんに向って聞いてみた。


「あの、僕の着替え、どうしたんですか?」


 そう、僕の下半身はお漏らしで濡れていたんだから。

 恥かしいけど本当にどうしたの?

 そんな思いを込めて彼女たちを見つめると、

「さあ、そろそろ帰りますよ、皆さん」


 刀子さんの言葉に、皆さん一斉に病室から出て行く。
 僕の目線を受けないように目を逸らしながら。

「ねえっ! ホントにどうしたのっ!!」

「あ、ああ、みんなで大切にわけ「オイ、龍宮っ!!」」


 せっちゃんが龍宮さんの言葉を遮り、そのまま何食わぬ顔で出て行く。





 僕は……もう……ダメだ……






















 近衛衛華の現在判明している厨二の存在。

 前世、銀髪、オッドアイ、ニコポ、ナデポ、背中に光の翼、ラッキースケベ










 後書き

 今回書いてて思ったんだが、ネギまが子供主人公なのって、ラブひなでラッキースケベでの暴力行為をやり過ぎたせいかも。
 ラッキースケベしても、殴られない存在、それが子供って感じで。

 あと、感想は全部読ませて貰ってます。
 ただこちらは、完全に気分が乗ったときに書く息抜き作品なので、感想返し免除させて下さい。

 それと、この作品、
 プロットが、主人公とその周辺の設定までしか作っておらず、ストーリー展開などと言った高尚な物は一切ありません。
 勢いと思いつきだけで出来ています。
 そのため、感想の内容が作品にモロ影響を受けます。
 今回の絶対順守とか。ソゲブも考えた位に。

 その辺りをご確認の上、お楽しみ下さい。



[13824] 4球
Name: uyr yama◆157cb198 ID:c975af4b
Date: 2009/12/13 19:32
 僕は今、途方に暮れている。

 思惑とはまったく違った方向に世界が進みつつあると言うか……

 僕のほのかな期待を裏切り、僕の最後の希望の火が消え去ってしまったから。

 もちろんあの子が悪い訳じゃ無い。

 勝手に期待した僕がバカってだけだ。

 あの子供、ネギ・スプリングフィールドを……




























 なぜ僕がこんな事を言っているかと言うと訳がある。

 僕はラッキースケベに目覚めてからというもの、毎日が地獄だった。

 街を歩けば目の前の女性のスカートが捲れ、躓けば女の子の胸を鷲掴み。

 気を抜いて何処かの部屋に入れば、中には裸の女の子。

 お風呂に入れば何故か木乃香が裸で……

 眠ろうと横になれば忍者が……

 人気の無い所で一息つけば吸血少女が茂みに……


 ああ、後半はちょっと違うか。

 でも分かるだろう? 僕がラッキースケベに遭遇する度にどうなるか。


 天に飛び、地にメリ込み、人にボコられる。

 これぞまさしく天地人。 

 そんな毎日送っていたある日、いつもの様に石に躓き転び、転んだと同時に女の子を押し倒して胸の谷間に顔を突っ込んでしまった。

 そしていつもの如く、殴り飛ばされ宙を舞い、地に落ち、更にボコられてた時に思い出したんだ。

 本当のネギま!のストーリーを!!

 そう、ネギま!は東大を目指す漫画じゃなかったって事を!!

 『チートな子供先生』が活躍するトンデモバトル漫画だったんだよ!
 
 僕は脅威のリカバー能力でアッと言うに怪我を治すと、必死になってネギま!ストーリーを記憶の底から掘り起こしていった。






 悲しい過去。天才的頭脳。スーパー戦闘能力。ラッキースケベ。そして、ハーレム構築能力。

 この子供先生は、僕と同じ『ちゅうに』なんだ!


 仲間が出来て嬉しいとか、そういう話じゃない。

 僕のニコポに犯されている中心的なクラス、木乃香のクラスに子供先生が就任するんだ。

 と、言う事はだよ? 彼のハーレム構築能力によって、僕のニコポに犯されてる少女達が寝取られていくんだ。

 胸に微かな痛みはあれど、それ以上にこの罪悪感から解放されていく事を望んでしまう。

 少し病んでいる考えだと言うのは分かっている。

 それでも僕は望むんだ。

 前に神様に望んだ、EMIYAやKYOUYAやYOKOSHIMAの代わりを。

 僕以上のニコポで、この世界の女の子達を蹂躙して貰うのを。

 そして、もしも子供先生のニコポを受けても尚、僕の事を好きだと言ってくれたのなら、僕はその子の事を一生涯かけて守り通す。

 その子だけを愛し、そしてその子の為に死のう。

 もしも誰も僕の事なんか気にしなくなったら、それはそれでいいさ。

 元々僕は一人寂しく生きていくつもりだったのだから。

 悲しい事だけど仕方の無い事だから。






 僕はそんな想いを胸に秘め、彼がこの学園都市にやってくるのを一日千秋の思いで待ち侘びた。

 そして、高等部に進学する為の準備に追われていたその時、ついに彼がやって来たのだ。

 学園中に激震が走った。

 可愛らしい顔の子供先生。

 きっと男の娘ってのは、こういう可愛らしい子の事を言うんだねって思ったよ。

 これは人気が出ない訳が無い。

 案の定、彼はあっという間に人気者になり、予定通りにフラグを立てまくり、そして……























 今では僕のルームメイトって訳さ!

 最初はね? 木乃香と明日菜ちゃんの部屋に間借りしてたんだよ、この子。

 木乃香と明日菜ちゃんのグチめいた文句を聞きながら、僕は計画通りとほくそ笑んでいたんだ。

 なのに、なのにだ!!

 気づけば学園都市は子供の先生の事など無かったかの様に平穏を取り戻し、高校生になった僕の部屋に彼がやって来た時、全てが終わったのだと僕は悟った。

 男の子が女子寮に居るのは可笑しいと、女子生徒皆さんが常識を持って学園長に訴えたからだ。

 しかも中心になって訴えたのが木乃香のクラス、要するに、ネギ先生が受け持っていたクラス。

 自分が好意を持つ子を追い出すなんて普通はしないだろう。

 その上、追い出す原因で一番大きかったのが、近くに男の子なんか置いていたら僕に変な誤解をされてしまうかも知れない。

 そんな理由……

 って事はだよ? ネギ先生のハーレム構築能力を、僕のハーレム構築能力が上回ったって事じゃないかッ!!


 しかも、しかもしかもしかもだっ! この子、男の娘じゃねぇーっ!!



 女の子じゃぬぇーーーーーかぁーーーーーーーーーーっ!?


 なんで、なんで気づかないの、木乃香達は!!

 一緒に暮らしていたんでしょうがっ!!




「あっ、おいしいですか? 衛華さん♪」

「う、うん、凄くおいしいよ、ネギ先生」




 彼……もとい、彼女が作った夕食を食べながら、さっき聞いた事を思い返す。

 なんでも、聞けば英雄の子供だからと色々な意味で狙われ、女の子のままでは危険だったんだそうな。

 身近な人達の進めもあって、彼女はコレまで男の娘として生きてきたんだって。

 なにこの原作改変?

 なにこのチートオリ主の為の原作主人公殺し、及びハーレム要因追加はっ!?


 疲れた……

「本当に疲れた……」

「でしたらお風呂に入りましょうか?」

「へっ?」

「お背中流しますね♪」

「いや、ネギ先生は女の子でしょ? ダメだって!!」

「ぼく、まだ10歳になる前の幼女です。それに衛華さん、ぼくは間違いが起きても気にしません。むしろドンと来いです!」


 素早く僕に無詠唱の戒めの風矢を放ち、僕の自由を奪うと服を剥ぎ取っていく。


 ちょっ!? 何をする気なの! 

 それにこの子、やっぱりチートだよっ!?

 光の翼が顕現してからと言うもの、こっそり鍛え上げ、今ではそこら辺の三下を一瞬で蹴散らせる程になった僕が、まったく抵抗が出来ないよ!?


 シャツを脱がされ、ズボンを脱ぎ下ろされ、そしてパンツに手がかかる。


「いーーーーやーーーーーだーーーーーーーーっ!! だーーーれかーーーーたーーーすけーーーーーーーてぇーーーーーーっ!」

「大丈夫です衛華さん。痛いのはぼくですよ? あっ、キツすぎてちょっと痛むかも知れませんね? でも、スグに気持ち良く……」



 ずる、ずる、と少しづつ僕のパンツがズリ下げられ、遂には僕の息子が「こんにちわ!」する瞬間、天の助けが舞い降りた。

 バリーン! と部屋の窓ガラスを割って……


「何やってんのよ、ネギ!!」

「ナニって……コレからですよ、アスナさん」


 ネギ先生の挑発的な言葉にヒートアップした明日菜ちゃんは、気と魔力を合一させネギに襲い掛かった。

 あれって確か咸卦法とか言うスーパーチート技能だよね?

 なんでアスナちゃんが? そんな技使うと簡単に人を殺しちゃうよ?

 でも、ネギ先生とてスーパーチート。

 そんなチート技能を使うアスナちゃんと、ほぼ互角の勝負を繰り広げる。

 僕の部屋を滅茶苦茶に破壊しながら……


「アンタっ! 女の子だったんじゃないのよ!? さっさと女子寮に戻んなさい!!」

「いやー残念ですね。アスナさん達に追い出された所為で、もう戻れませんよ。はっはっはっ」

「ムキィーーーーっ! 衛華さんは私のよっ!」

「ふざけないで下さい! 衛華さんはぼくの絶対運命です!」

「お父さん捜してるんでしょ! さっさと捜しに逝きなさいよ!!」

「昔の事ですよ! 今はもっと大切な人を見つけたんです! 男親よりも好きな男を取って何が悪いんですかっ!!」

「うっ……、それはそうよね。でも、許さんっ!!」

「アナタに許される必要性なんてありません!」








 ああ……、僕は……、どうしたら……


 気づけばアスナちゃんだけでなく、次から次へと増えて行く女の子達。

 みんな、僕のナデポに犯されている女の子達。

 みんな、どこか楽しそうに喧嘩して、僕を取り合っている。

 望みが叶わず、結局僕はニコポを無効化出来なかった。

 なのに、何処かホッとしている自分が居て……


 本当に最低なヤツだ、僕は。

 でも……、昨日まで感じていた心の重石が取れた気がする。

 やっぱり怖かったんだね、僕は。

 今まで好意を向けてくれてた人達が、僕に無関心になるのがさ。



 くすっ。


 僕は自嘲めいた笑みを浮かべ、そして……


 今の今まで喧嘩して暴れていた子達が一斉に僕を見て顔を赤らめた。


 ああ、しまった。やってしまった。こんな時に、一番やってはいけない事を。


 ニコポを。


 少女達は頬を朱色に染め上げながら、それでいて何処か恐ろしい目をして僕を見つめ続ける。

 ハァハァと荒く興奮した息遣いで。

 戒めの風矢で拘束された僕が、逃げ出す事が出来ない状態で。

 しかも僕はパンツ一丁、しかも半脱ぎ状態。

 そんな僕の状態に思い到ったのか、鼻から血を大量に噴き出しながら、一人、また一人とじりじり僕に近づいて来て……


 こ、怖いっ! 女の子なんだよ、君達は!! そ、そんなはしたない姿で、何を!?


「だ、大丈夫でござる。すぐにそんな事は気にならなくなるでござるよ」

「そうネ。よりよい未来の為に、その身体を私に差し出すと良いヨ」


 みんな携帯のカメラでパシャパシャと僕を激写しつつ、ぼ、ぼくは……や、や、や……やめ














 ちゅうに的な原作主人公がいない、このちゅうに的な世界で、僕はちゅうに的な存在として生きていくのだろう。

 何度も世界を皮肉り、何度も自分を卑下しつつ、それでも何も変えられずに。




 ねえ、お父さん、お母さん、大好きな妹、大切な幼馴染、僕の事を好きだって言ってくれる皆さん。

 本当に、僕の事が、好きですか……?



 僕は、向けられる好意を信じ切ることが出来ずに、今日を、そして明日を生きる。



[13824] とぅるーえんど?
Name: uyr yama◆157cb198 ID:c975af4b
Date: 2009/12/11 11:03
 光の奔流が僕を包んだ。

 この、新世界と呼ばれる世界を打ち消す力が。

 明日菜ちゃんの力を使った陰謀を食い止める為に。

 背中の光の翼を最大限に広げ、明日菜ちゃんの力が拡散するのを防ぐ為に。


「ぐ、ぐぐ、ぐがぁああああああああああああああああッッ!!」


 邪眼の宿った右目が魔力のオーバーロードで弾け飛び、視界が赤く染まっていく。

 痛みと恐怖で心が壊れそうになる。

 でも、まだだ。まだ、力を抜くわけにはいかないんだ。

 僕の後ろには沢山の大切な人達が居るんだから。
































 ジャック・ラカンと呼ばれる男がいる。

 ネギ先生のお父さんの仲間だった人だ。

 彼女はその人からお父さんの話を聞く為に、夏休みを利用して魔法世界に行きたいと僕に相談してきたのだ。

 実家に帰るぐらいしかする事が無かった僕は、一緒に行って欲しいと涙目で訴える幼女の嘆願に答える他無く。

 何故か一緒について来る事になった、木乃香のクラスメイト達を引率しながら魔法世界に入ったのだ。


 そこからは、単行本にして20巻は越える冒険の日々。

 ネギ先生の素性や、明日菜ちゃんの過去など様々な事が解り、そして……











 明日菜ちゃんが浚われたのだ。

 眼下に広がる魔法陣の中心で、彼女は儀式魔法の要となり、意思を奪われ、澱んだ瞳で虚空を見つめる。

 コレこそが世界を救うたった一つの方法なのだと彼等は言う。

 でもソレを認める訳にはいかない。

 沢山の命が奪われるなんて認められない。

 ネギ先生の言葉だ。

 僕はその言葉に賛同し、明日菜ちゃんを救う為に命をかける事にしたのだ。

 どうせ生きていても、ニコポの被害者を増やすだけの人生。

 ここで思い切り良く使っても後悔はない。

 今僕が死んだら皆泣くだろう。でも彼女達は自由になるのだ。

 僕と言うタチの悪い鎖が消失する事で。

 もちろん簡単に死ぬつもりなんか無い。

 怖いし、それなりに心残りもある。

 でも僕は確信している。



 此処こそが、僕の命を賭ける場所なのだと。






 明日菜ちゃんが浚われている場所に乗り込んだ僕らは、迫り来る敵の少女達を、自分の意思でニコポを使い無力化していく。

 嫉妬めいた視線を向けてくる木乃香のクラスメイト達の視線に気づかない振りをしながら、奥へ奥へと侵入していき、


 儀式魔法の発動と同時に現場に辿り着いた。


「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア……」


 血の涙を流して絶叫する明日菜ちゃんが居る。

 光を放ち、全ての魔法や不可思議な力が無効化され、僕はネギ先生やここまで一緒に来た子達に、心からの笑みで告げる。


「大好きだよ、みんな。この先は僕の仕事だ。必ず明日菜ちゃんを連れて帰るから、先に戻って僕たちを待っていてくれないか?」


 彼女達の抗議の声を、叱り付ける様な口調で退けると、僕は背中から光の翼を出して光の奔流に飛び込んだ。


「必ず、必ず帰ってきて下さい! 私の、ううん、私達の元へっ!!」


 背後か聞こえる彼女達の声を聞きながら、

 僕は右目に宿る魔の力、邪眼と、背中から発せられる聖なる力、光の翼で明日菜ちゃんの力を喰い止める。

 僕の最大魔法、永久なる暴風雪で道を切り開くと同時に、明日菜ちゃんを抱きしめた。

 彼女の完全魔法無効化能力を、僕のちゅうにぜんかいで防ぐために。






















 一枚、また一枚と、僕の光の翼が剥ぎ取られていく。

 明日菜ちゃんの魔法無効化能力を相殺するために。

 そして、僕の生命力が消失していくのが分かる。

 右目が潰れた時から赤く染まっていた視界が、暗闇になっていく。

 この世界全てから、僕と言う存在が消えていくみたいに感じる。


 腕の中の明日菜ちゃんの暖かさも感じなくなり、僕は……










 夢を見た。

 前世の夢を。

 大切な両親が僕に笑いかける。



 元気だったかい?

 辛い事は無いかい?

 友達は出来たのかい?

 お前は不器用な子だから私達は心配なのよ。



 僕は微笑む。

 懐かしい暖かさに包まれて。


 うん、元気だよ。

 辛い事は一杯あるけど、何とか頑張ったよ。

 友達は……あんまり出来なかったけどね。

 ゴメンね、母さん。先に死んじゃってさ。

 でもね、こっちでも僕はもう……


 母さんはうな垂れる僕の胸に手をあて、トン、と軽く押した。


 行きなさい、アンタを待っている子達のもとへ……




 母さんの優しい笑みと、暖かい光に包まれながら、僕は思った。



 なに? このちゅうにイベント?



 こんな事を思ってしまう自分に絶望した……














 そっと目を開く。

 そこは知らな……、いや、良く知ってる。

 ラッキースケベでボコられた後に良くお世話になった、麻帆良学園の医務室だ。

 なんで? 僕は確か魔法世界に……

 そんな事を考えながら、ベットから出ようと立ち上がる。


 ギシ、ギシ、と間接が鳴り、思うように動かない。


「衛華さん! 衛華さんが起き……」


 声のする方を向いた。

 そこには、ネギ先生と思しき人が。

 僕が知る彼女と違い、背が伸び、ルビーの様な髪が腰まで届き、そして、可愛らしい幼女ではなく、美しい少女だ。

 僕の胸に飛び込み、そのままワンワンと泣き始める。

 その声を聞きつけ、次から次へとやってくる大人に成りかけの少女達。

 どれも見覚えがあり、どれも知らない姿。

 皆泣きながら喜び、そして泣きながら怒る。


 あれからどれだけの時が過ぎたのだろうか……

 そう思う僕の隣に腰掛ける木乃香は、「3年や……、あれから3年も経ったんよ」涙をボロボロ零しながらそう告げた。

 明日菜ちゃんは号泣しながら何度も謝り、そして……超さんの言葉が僕の胸に突き刺さる。


「衛華先輩の力は、アスナさんの魔法無効化能力と相打って全部消えてしまったネ」



 何度も、何度も突き刺さり、そして、爆発した。




 イイイイイイイイヤッホォーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!




 心の中で喜びのダンスを踊りまくる僕。

 顔が綻び、満面の笑みを浮かべる。

 そして、近くに控えていた女医さんと女の看護師さんが、僕を見て頬を赤らめ……ないっ!!


 身体中を巡っていた魔力を感じない。

 背中から光の翼の波動を感じない。

 邪眼が無くなった筈の目が普通に見えるのに、それでも魔の力を感じない。

 笑っても誰もポッしない。


 僕は、救われたのだ。

 これが命がけで戦った僕へのご褒美なのか?

 ありがとう、神様! ありがとう、前世のお父さん、おかあさん! ありがとう、明日菜ちゃん!

 僕は今だ謝り続ける明日菜ちゃんを抱きしめる。


「気にしないで、明日菜ちゃん。僕は逆に喜んでいるんだ。これで、ようやく普通の人生を歩めるってね」


 そう、普通の人生をだ。

 3年間眠り続けた事による弊害は沢山あるだろう。

 それでも、ニコポを始めとするちゅうにが無くなってくれた事に比べれば小さいこと。

 あれは僕では如何にもならないモノだったけど、これからは違うのだから。



 僕の栄養不足でコケタ頬を何度も撫で、「ありがとう、衛華さん」そう呟く明日菜ちゃん。

 微笑むネギ先生達。

 それを見て、彼女達がニコポの影響下から脱していると確信した。


















 それからの話をしよう。


 僕はそれからと言うもの、彼女達の面会を完全に断ると、ひたすらリハビリに精を出した。

 せっかくニコポの影響下から抜け出したのに、今度は罪悪感で僕に縛られるのを防ぐ為だ。

 少し距離を置くのが一番良いのだから。

 そして半年がアッと言う間に過ぎ去り、大検を受けた僕は麻帆大に入学する事になる。

 恥ずかしながら、妹と同期って事になったけど。

 ちゅうにの力が無くなり、明日菜ちゃん達とも少しづつ罪悪感では無い付き合いをしていく事になる。

 事になったんだけど、確かに罪悪感では無い。ちゅうにの力も殆ど無い。

 ニコポもナデポも無い。ないないないないないんだ!!


 でも、ラッキースケベとハーレム構築能力はそのままだったんだよ!!

 再び殴り飛ばされる日々を送り、気づけば不死身体質を再習得した。

 かつてニコポに犯されていた子達の殆どは、僕の事を良い友人程度に思っているみたいだけど、中には昔のまんまの子達も沢山いて……



「はぁ~……前よりは遥かにマシなんだけど……ホントに僕の事を好きなのかな……?」


 寂しげに呟く僕の声を聞きつけた、元3-Aの子達+ネギ先生。

 ニコポの影響をいつまでも持っている子達。


「ほんま馬鹿なんやから、兄さま」

「ニコポと言いましたか? そんなの関係ないですよ、衛華さま」

「僕が貴方を好きなのは、そんな訳の分からない力の所為じゃないですよ」


 えっ!? なんでニコポのこと……?


「衛華さんが3年間眠っていた時に、うわ言の様に呟いていたからよ」


 明日菜ちゃんがそう言いながら、たわわに育った胸を僕の腕に押し付け、それを見た他の子達がヒートアップしていく。

 いつもの光景、でも、あれ? だったら、みんなは?




 楽しそうに喧嘩する彼女達。

 僕はさっきまでとは違う意味で胃がキシキシと痛む。  

 ニコポの所為とか言い訳が出来ないのだから。

 僕はこれから、本当に好きなたった一人を選ばなければならないから。

 でもま、とりあえず木乃香はないけど。

 愛してはいるけど、あの子は妹だからね。


「兄様? ウチと兄様は血ぃ繋がってへんよ?」

「へっ?」

「銀髪碧眼で白色人種なんて、どう考えても血なんて繋がってへんやろ?」

「そ、そうだったのっ!?」

「だからな、ウチも候補に入れといてな? それとな、一人を選ばれへんのやったら……」


 僕の耳元に口を近づける木乃香。


 みんなでもええよ?


 そっと呟いた声が、僕の脳裏で木霊する。

 胃が……痛む……


 でも、ちょっとそれもアリかも。

 何て思ってしまう。

 ああ、ちゅうにが減っても尚、僕って最低な野郎だ……



 楽しそうに喧嘩する皆を見て、懐かしいフレーズを呟いた。








 こうして僕のちゅうにがおわ、おわ、おわ……らない




















 完。








 後書き

 これで本当の終わりです。
 トゥルーエンドです。
 誰と結ばれたか、それとも皆となのか、その辺を書くのは野暮ってもんです。
















 近衛 衛華 の人物設定


 衛華自身は知らない事だが、彼は魔法世界のとある亡国の王の忘れ形見。
 王と旧世界の少女の間に出来た子で、彼は新旧両方の世界のハーフである。
 当然、ウェスペタリア王国の王族的な血もその身に流れており、とてもちゅうにである。
 第1話での転生間もなくの頃に彼を抱き上げたのが父親で、その後すぐにえーしゅんに引き渡された。
 それからはえーしゅんの実子同然の扱いを受け、実際彼は木乃香に言われるまでは知らなかった。

 同じウェスペタリアの血筋である明日菜の魔法無効化的なちゅうにと相殺する事で、殆どのちゅうにを失ってしまう。
 ニコポ・ナデポもその時に失くしてしまうのだが、その効果は永遠である。
 衛華は気づいていないが、一度ニコポの影響下を受けた少女達はこれから先、ずっと彼の事をその胸の中で想い続けるだろう。
 ただし、既にニコポは持っていないので、これ以上の想いの蓄積はなく、彼女達にとっての永遠のアイドル的存在程度なのだが。

 衛華が眠っている間に、うわ言の様に呟くニコポの事を聞いた3-Aの子達は、素早く対応を検討。
 結果、あやかの財力、超とはかせの化学力、桜子の幸運、朝倉の諜報、パルの扇動、のどかの読心、四天王を始めとする武力、ネギのカリスマを用い他の女達を討滅した。
 もちろん、衛華は知らない事だ。

 近衛 衛華のちゅうに

 前世、悲しい過去、銀髪、オッドアイ、ニコポ、ナデポ、背中に光の翼、邪眼、えたーなるふぉーすでぶりざーどな魔法、ラッキースケベ、
 再生能力、、ハーレム、力を失い一般人、そして……


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