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[13869] ポケット×ハンター (現実→H×H +四次元ポケット) 【完結・打ち切り】
Name: YSK◆f56976e9 ID:e8ca58e9
Date: 2011/05/01 21:30
 初出2009/11/11 以後修正


 前書き


 なぜか突然ハンター×ハンターの世界に飛ばされ、ポケットには四次元ポケットが設置されていた男の話。

 なんで四次元ポケットとひみつ道具を持っているのかは本人も知りません。
 原作知識はおぼろげにあり。主人公はヘタレ。巻き込まれ型。逃げようと努力してドツボにはまるタイプ。
 現実来訪のようですが、実際にはその世界への自分への憑依です。
 意識は30目前の男ですが、ハンター世界の主人公は17歳くらいの年齢。

 基本四次元ポケットは念能力と思われますが、それが本当に念能力かどうかは不明です。
 主人公本人は念能力が一切使えません。見えません感じられません一般人です(ポケットは例外)
 きっと強引に念を習得しようとしたらマトモに維持できず死ぬでしょう。ゆっくり開こうとしても70年くらい修行が必要。そんな一般人がハンター世界でひーこらいいながら生きていきます。

 ただし四次元ポケットより出てくる『ひみつ道具』は激しくちーとです。
 あと主人公が名前で呼ばれることはありません。名称不明。
 主人公が手を入れるポケットが全部四次元ポケットにつながります。服を変えても、他人のポケットでも、彼が手を入れるとそこは四次元ポケットです。
 道具のデザインはハンター世界基準。手に持っても違和感はないようになっています。
 前作『ネギえもん』でもやってますが、まあ、基本はその時と一緒(ただ今回はポケットとハンター世界のみ)


 以上が基本設定。なにか足りない場合は付け加えます。


 というわけで、ほんの少しのハンター知識とひみつ道具を携えて、三十路(目前)男が行きます。


 あとハンター×ハンターを読んでいる事前提で書いているので要注意。
 ついでにだらだら書く予定なので更新スピードとか完結の可能性とかそういうのはあまり期待しないでください。


2011/04/24 追加
 いつまでも放置しておいても仕方ないので、打ち切りという形だけど決着をつけることにする。
 10話で打ち切りエンドという形だけど、それでもいい人はお付き合いくださいな。



[13869] 第01話 目覚めたらハンター試験
Name: YSK◆f56976e9 ID:e8ca58e9
Date: 2009/11/13 21:54
初出2009/11/11 以後修正





 なんか湿原ぽいところで、悲鳴とか血飛沫が舞っている。



 まあ、なんだ。いきなりだが、俺は目を覚ました。時間は、昼? もやがかっているけど明るいので昼。
 嫌な事に、人の悲鳴で目を覚ました。

 血しぶきが舞ってます。
 断末魔も聞こえてきます。

 目を開いた先で、一方的な虐殺ってヤツがくり広げられてます……
 ちょっと待って。ちょっと待ってくださいよ。もう非現実過ぎて現実感なくて逆に変な気分だよ。
 なんかデキのいいホラー映画とか、リアルな夢を見ている気分だよ……

 でも、耳に響く悲鳴。血の匂い。それらは到底夢とは思えないほど。とんでもなくリアルだった。


 しかも、その虐殺している人って見た事……と言ったら語弊があるけど、見た事あるよ。
 コスプレとかじゃ絶対無いよ。だって、血がぶしゃーって、明らかに死んだ人がどたーって倒れているんだもん。
 カード一枚で、人を笑って殺しているんだもんあのピエロ。


 どう見てもハンター×ハンターの世界です。ありがとうございました。


 ちょっ!
 なんで、なんでいきなり、ハンター一次試験のヒソカ試験管ごっこのところに俺みたいな三十路目前の超一般人がほうりだされているんだよー!?

 なんで俺、こんなところにいるのー!?
 目が覚めたら異世界。ハンターの世界でしたってよく二次創作ではあるけど、目が覚めたら虐殺中って普通ないよ!
 死亡2秒前とか普通ありえないよ!
 なんで俺こんないきなり死亡確定の状況で目をさまさなきゃならないのー!?

 とりあえず、たくさん倒れている死体の中に、俺も一緒に倒れているという状況です。
 絶対俺生きてるのバレてる。
 そんなの見逃すほどあのピエロ甘くないのは知ってる。
 だからこんなゴロリと転がっているの無意味とわかる。

 絶対俺生きてるってバレてる。

 俺に出来る事……

 逃げる。無理。絶対追いつかれる。
 命乞い。無理。興味なくされて殺される。
 死んだふり。無理。とどめ刺される間違いない。
 立ち向かう。あっさり殺される。もしくは、万に一つだが、気に入られたらぶん殴られるが生き残る!

 殴られるけど生き残る!
 あの医者志望のふけ顔レオリオさんと同じ結果。
 これ! これに賭けるしかない!


 だだだっと誰かが走って逃げた音が聞こえる。
 覚えてる。あれだ。クラピカとレオリオが一度逃げ出したところだ。
 この後レオリオが戻ってきて合格もらうところだ!


「なるほど好判断だ。ご褒美に、10秒待ってあげよう☆」


 って、なんかこっちに歩いてくるような音がするよ。

 もう迷っている暇はない!


 目に付いた棒(他の受験者の武器だろうか?)を拾って、立ち上がる。


「あ、もう狸寝入りするのやめたんだ☆」
「あんた、見逃してくれそうにないからな」
「それで逃げないのは、いい心がけだね★」


 レオリオさんの代わりに、ぶん殴る! そして、ぶん殴られる! これしか、これしか生き残る道はない!


 頼むぜ。カードはやめて、顔面パンチ一発。それだけで!

 生き残るとか考えるな。これで死ぬと考えて攻撃しろ。いや、むしろ生きて帰るくらいの想いの方がいいのか! ええいどっでもいい!!

 この一撃にかけるぜ! 届け、この想い!!


 想いは、届いた。あんまりよくない方向で。


『秘剣“電光丸”』


 飛び掛った直後、頭の中に、そんな言葉が響いた。
 俺の体が、勝手に動く。振り上げた棒を投げ捨て、棒を支えていた腕とは別の腕が、ポケットから、一本の刀を、取り出したのだ。


「っ!」
 変態ピエロの表情が、変わる。


 斬!


 ピエロの持っていたカードが真っ二つになった。
 ピエロ本人は、カードを残し、飛びのいている。

 でも、そのピエロのほおが、少しだけ、斬れていた。
 それを確認して、ぺろりとピエロが自分の血をなめる。

 そしてピエロは、ものすごく嬉しそうに笑っていた。

 ものすごくイイ顔で笑っていた。

 イヤアァァァァ!
 その笑みイヤアァァァァ!

 ついでにその股間の膨らみもイヤアァァァァァ!!


「……まさか、そんな奥の手を持っていたなんてね★ 君、具現化系能力者?」


 その言葉の瞬間、無数のカードが俺にふりそそいでいた。


「ちょっ! まー!!」

 死ぬ! そんなの防げない! 死ぬ死ぬ死ぬ!
 だが、刀を適当に振り回したら、全部防げた。


『秘剣“電光丸”』
 レーダーと電子頭脳を搭載した刀。
 たとえ目を閉じていたり、目線を相手から離していても相手の位置を探知し、振り回すだけで斬り合いが出来る道具。
 持つだけで一流の剣士となれる代物。


 そんな説明が、頭の中に響いてきた。
 ……これ、アレか? ドラえもんの。道具……?


「……いいね☆」


 ひぃー! なんか嬉しそうにじゅるりって舌なめずりされたあぁぁぁ!

 考えてる暇ねー! やる気満々だー! 俺の死亡フラグ折れてねー! むしろビンビンー! 色々ビンビンー!


 だが、即座にピエロの動きが止まる。
 そして、俺をいぶかしむようにして見る。

「……? ひょっとして君、見えないのかい?◆」

 そんな事を、突然言ってきた。

「は? なにを?」
 足ががたがた震えそうなのをおさえ、俺は平静を装って答える。
 会話が出来るのなら、なにか譲歩案を引き出したりして見逃してもらえるかもしれないからだ!

「コレ◇」
「どれ?」

「コレ☆」
 と、今度は一本指をあげる。

「なにも見せませんよ」
「そっか。君、天然モノなんだね。だから、こんなにイビツ☆」

 にぃっと笑われました。なんかすごく我慢してるけど満足してるようにも見える。
 ヒィ! なんか、すごく捕食されそうな気分です!

「つまり、まだまだ熟れていないんだ……これで、まだつぼみ……花が咲いたら、実をつけたら、熟れたら、どうなるんだい……?☆」

 なんですかー!? なんなんですかー!?


 この時、彼はヒソカがなにを言っているのか、理解できなかった。
 ヒソカが言った天然とは、なんの訓練もつまずに、自然と念能力を使えるようになった、自覚のない念能力者の事である。
 例えるならば、100パーセントの正確さで占いをするあのノストラードファミリーのネオンが該当するだろう。
 そういうものならば、能力だけで、凝もなにも出来なくても不思議はないと、納得出来るのである。

 つまりヒソカから見れば、彼はまだまだ成長する余地が残っているという事!
 この時、ヒソカの最も熟れてから味わうという性癖に、彼はヒットする!


 が、ヒソカも知らない。
 彼の手にしているものは、具現化系能力で作り出されたものではないという事を。


 ん? なんだ? 動かなくなったぞあのピエロ。
 嬉しそうに俺を見てるだけだ。つーかその目やめて。観姦すんのやめて。股間膨らますのやめて。
 でも、ひょっとして、俺、助かる……?

 気に入られるという、先延ばしの方向性でだが。



「……やっぱ駄目だわな。こちとらやられっぱなしじゃ我慢できねえ!」
 棒を携えたレオリオ登場。


 ちょっ! なんかふけ顔レオリオさん登場ですよ! 助かったって言うよりきちゃ駄目って感じです!

 だって……


「……空気の読めない子だね。今ボクは、ちょっと昂ぶっているから、君で慰めちゃうよ◆」


 ……って、俺のせいで我慢して猛って殺る気満々のピエロ状態なんだから!!
 空気読んでー!


「しるかあぁぁぁぁぁ!」
 掛け声と共にとびこむレオリオ。


 っ! ヤバイ! レオリオ死ぬ!

 本能的に、それを確信した瞬間。俺は動いていた。


 『秘剣“電光丸”』を、レオリオめがけて投げつける!
 くるくるっと刀が回転し……


「うぁっぷ!」
 俺の考えどおり柄の部分がレオリオの顔面にぶつかり、彼は転げまわる。

「ってーじゃねーか!」
 がばりと立ち上がり、そのまま今度は俺の方へとやってくるレオりん。
 なに一人で怒ってんねん! 誰のおかげで助かったと思ってんだ!
「お前の方こそアホか死ぬ気か!」
 助けてやったのに怒るとは何事かと俺も怒鳴り返す。

「誰がアホだ! お前を助けてやろうとしたんだろうが!」
「それがアホだって言ってんだよこのアホ! むしろお前今死んでたぞ!」

「誰が死ぬか! お前が死ね!」
「うっさいお前が死ね!」
 もう、ピエロそっちのけででこがごつごつぶつかるレベルでメンチ切りあってののしりあう。

 ちなみに変態ピエロことヒソカはそんな俺等を見て毒気が抜かれ萎えたのか、笑って楽しそうに見ていたいた。

「アホ!」
「ふけ顔!」

「だ、誰がふけ顔だとー!」


「あ」
 そんな中、俺達を、完全に面白傍観していたピエロの声が響く。


 ゴン!!

 直後、俺の後頭部に、衝撃。

「レオリオ!」

 薄れ行く意識の中で、俺は、釣竿をふりかぶったこの物語の主人公。ゴンの姿を見た……
 あ、釣竿の錘が、ヒットしたのね……


「仲間を助けに来たのかい? でも彼は敵じゃないよ◇。むしろ味方。この場合、狙う相手はボクの方さ◆」
「え?」

 ぼてりと倒れた俺の上を、楽しげに笑うピエロの声とゴンの間抜けな声が飛び越えていった……


 微妙な空気がその場を包んでいたそうだ。




─あとがき─

 四次元ポケットシリーズとでもしておけばいいかしら。ハンター世界編はじまります。
 ヒソカの語尾につくハートやスペードがないので☆とか◆になります。心情とあってないかもだけどあんまり気にしないで。
 あと、主人公最初に大量虐殺見せられたので、人の死に対して微妙に感覚が麻痺している可能性アリ。



[13869] 第02話 二次試験と現状確認
Name: YSK◆f56976e9 ID:e8ca58e9
Date: 2009/11/13 21:53
初出2009/11/13 以後修正




 目を覚ますとそこは第2次試験会場だった。
 どうやら俺は、あの変態ピエロの御眼鏡に適い、試験に合格したようだ……


 気づいたのに気づかれると、いきなりゴンとレオリオに謝られた。

「俺を助けてくれたんだろ? 助かった。サンキュな」
「ごめんなさいおニーさん。オレ……」

「ああ、いいっていいって。俺も思わず熱くなった事だし」
「いや、本当にすまねえ。俺の命を助けてくれたっていうのによ」

「まったくだ。あそこで彼が止めなければ、お前もあそこで転がっていた死体の仲間入りだった可能性が高いんだぞ」
 あ、はじめてみる顔だ。これがひょっとして性別不明のウルトラスーパー特質系キャラ。クラピカさんですか?
 綺麗な顔してる。さすが性別不明。レオリオと並ぶとそのギャップに余計引き立つね。


「本当に、助かった。ありがとう」

 主人公+おっさんに謝られた。しかもお詫びとして第2試験の第1課題豚の丸焼きまでプレゼントされた。
 そしてあの後どうなったのかを聞く。
 あの後ゴン&レオリオはピエロに顔を見られ合格を言い渡され、気絶した俺はあとから合流したクラピカと三人にこの場へ運ばれてきたらしい。
 ちなみにあの刀。『秘剣“電光丸”』はあの場に放置されてしまったようだ。あとで回収せな。

「これで貸し借りはなしだからな」

「OKOK。ありがとよおっさん」
「待て! 俺は19(歳)だ!」

「……マジ?」
「マジだ!」

「……ごめん……本当に、ごめん……」
「なんでそんなに絶望的な顔しやがるんだー!」

「ジョウダンデスヨ。ジョウダン」
「……なぜ片言棒読み」

 ぽんと、レオリオさんの肩をクラピカが手を置いた。
 レオリオさんからかうのおもしれー。
 殺伐な試験の中、一服の清涼剤ですよ。


「とりあえず、早く君も提出してきた方がいい。あれ以上は彼の体積を超えてしまう」
 そうクラピーに促された。

「ああ。ありがとう」

「それじゃ、がんばれよ!」
「それじゃね。おニーさん」

 そう言い、俺はもらった豚を引きずって主人公クラス3人の元を去り、合格をもらってきた。


 ぼわーん。

「しゅーりょー!」


『豚の丸焼き71頭!! 化け物だ!』
 とか、大勢の人が思っていたり。

「おかしい! 妙だぞ。明らかに奴の体積より食べた量の方が多い!」
「いや、そんなにマジに悩まられても……」
 とかクラピカとレオリオのコントがなされている中。


 俺は、必死に自分の現状を把握していた。
 なにせ目が覚めたら虐殺中で、ここはハンター世界。しかもいきなり試験中なんてわけがわからん。


 2次試験後半の説明そっちのけで現状把握をしていた。


 まず、なぜかここはハンター世界。
 しかも三十路直前だったの俺の体はぴっちぴちの17歳(身分証があった上ハンター文字も読めた)。これはいわゆるこの世界の俺への憑依ってヤツだな。
 ちなみに出身はジャポン。やっぱり日本的な場所なのかなジャポン。ハゲ忍者いるし。

 そしてどうやらこの世界の俺は、ハンター試験を受けて……見事ヒソカにぶっ殺されるモブだったようだお。
 ひょっとすると俺、漫画に出てたのかもね! とか思うと、あまりのウレしさにちょっと涙が出そうになった。
 ちなみにプレートのナンバーは72番。前に0とかついてたらさらに欝になってたところだ。

 そしてなぜか、ポケットに手を突っ込むと四次元ポケットにつながるという謎仕様。

 んで、現在ハンター試験二次試験会場におります。
 以上。現状確認終了。


 とりあえず、この謎仕様の四次元ポケットだけは、この世界にきてよかったとは思える。
 でも、このおかげであの変態ピエロにすげー気にいられた可能性もあるのでむしろ大きくマイナスだろうか。
 まあ、あの事はとりあえず忘れておこう。思い出すだけで欝になる。

 なのでさっそく、なぜか設置されたポケットの恩恵を受けるべく、道具を取り出し、さらなる現状把握をするため、俺は一人、調理台のところで○×ゲームに興じる事となった。


『○×占い』
 ○と×を象った二つ一組の道具。
 これを床や地面に置いて質問をすると、○×いずれかが空中に浮かび、答えを○×で回答する。
 的中率は100パーセント。意思らしきものもあるようで、占い結果にケチをつけると相手を叩きつけて叱ったりする。
 ただし、質問の仕方によっては正確な情報は得られないので質問の内容には注意が必要。


 とりあえず、道具は取り出すと俺の頭の中に説明が流れるようだ。
 コレはコレで便利だね。さってと。まずは……

「ここは俺の知るハンターハンターの世界である」
 ○ピンポーン。

 よし。これで基本の流れは同じという事だな。


「俺は元の世界に帰れる」
 ○ピンポーン。

 おお! すごいぞ! そんな方法あるのか!


「ポケットの中にある道具を使えば帰れる?」
 ×ブブー。

 ……道具じゃ無理だが、帰る方法はある。と。

 ……あ。


「その帰る方法は、グリードアイランドにある?」
 ○ピンポーン!

 そういう事か。よくある現実世界でカードを使え。ってヤツだ。
 そしてグリードアイランドはハンター専用ゲーム。
 つまり、元の世界へ帰りたければハンターになって念を覚えろって事だな。


 さて、ここで問題だ。
 今微妙にヒソカに目をつけられている。だが、ここで試験を棄権すれば、多分もう一生会う事はないだろう。
 アレは自分で成長しないものは追わない。ヒソカの試験に合格して、歯牙にもかけられないレオリオという例もある。ここで視界から消えればすぐ忘れ去られるはず。
 その後、四次元ポケットの道具を使って自由気ままにこの世界で生活をすればいい。一番リスクの少ない選択だ。
 ただし、ハンターと関わらないので念に触れる機会が格段に減り、グリードアイランドへはまずいけない。現実帰還は最も絶望的となる。

 その2、このままハンター試験を続ける。
 ヒソカとか、死ぬ危険というリスクもあるが、この先の試験の内容を知っている&四次元ポケットの道具があるというとんでもないアドバンテージがある。
 なにより、この世界においてハンター証というものは絶大な力となる。立ち入り禁止区域にでも家を持てば、非常に安全な生活をおくれるだろう。

 リスクはあるが、リターンが非常にでかい選択だ!

 そしてなにより、現実世界へ帰るためには、グリードアイランドへ行かねばならない。アレはほぼハンター専用ゲーム(念が使えりゃハンターじゃなくてもいいわけだが)。となると、ハンター試験は避けて通れない。


 リスクとメリットを天秤にかけ、二次試験後半が終わるまでに決めなくてはならない。


 さて、どちらを……


 ……ん?


 そこで俺は、とんでもない事を思い出した。

 この第2試験後半の課題は寿司。だが、ハゲ忍者とグルメ舌な試験官のせいで、合格者はゼロ!
 この段階は、ゼロなのだ!

 そしてこの次の年、キルアが一人で受けた試験は、第1次試験の段階で、彼のみが残るという事態が発生し、そこで試験が終了している!

 つまり、一人しか残らなければ、合格確定!!?

 ならば、ここで試験官をうならせる寿司を作り、合格する!

 そうすれば、合格者は俺だけ! 俺一人が残り、そこで試験も終わり! ハンターになれる!
 寿司だけで合格! これなら、楽勝! ここで棄権する理由はまったくない!


 この第二次試験で俺だけが受かってしまえばいいのだ!


 原作の流れが狂う? んなこた知るか! ゴン達ならこのくらい自力でどうにかするよ。どこかのハーレム学園子供先生とかだと流れ外れたら即効アウト一殺だろうが、こっちの彼等のメンタルやバイタリティならこの程度のズレまったく問題ない! 新しい物語がつむがれるだけ!
 せいぜい俺の原作知識が使えなくなるくらい。
 だがその時点でゴン達の物語と俺は、全然関係ない!

 俺はハンター権力と『四次元ポケット』を使って悠々自適に暮らしたり帰る方法を模索すればいい。

 か、完璧じゃないか!
 しかもリスクがほぼなく俺ハンター試験に合格出来る!

 そうと決まれば、ハンターになるしかねーな!
 課題の寿司なんて握った事はないが、俺にはコレがある!


『グルメテーブルかけ』
 これを広げ、食べたい料理をリクエストすると出してくれる。
 ちなみにその味は食通をうならせるほどの絶品であり、名前さえわかればどんな料理でも出す事が出来る。


 でたー!
 これで俺の合格は間違いなし!
 合格者一名! はれてハンターの仲間入り!


 俺が一人で『○×占い』やっている間にみんな必死で魚を手に入れに行っている。これで寿司がどういう物かバレる事もない!

 イける!

 さあ、れっつ合格!!


「……あんた、寿司知ってるわね?」
「いけませんか?」
「いいえ。運も知識も立派な力。あとは味ね……って、うわっ、これすごく美味しい。お代わり駄目? 駄目。くー。文句なし。合格!」
「よっしゃ!」


 でも、再試験、ありました……
 全員戦闘不能になったわけでもないし、試験の趣旨がすでに変わっていたとかで……


 結局あのハゲ忍者が作り方をばらして、味勝負でお腹いっぱいと俺が合格した以外はおんなじ展開。
 でも、そこから先もおんなじ展開。


 オーノー。
 一人しか残らないとか関係ないのねー。
 せっかく楽勝合格かと思ったのにー。


 再試験の時に棄権しようかと思ったらおいらすでに合格しているから、崖から飛び降りなくていいってさ。
 やさしくしないで! やめにくくなるから!!
 このまま三次試験受ける気になっちゃうから!



 ちなみに、この次の年のハンター試験でキルアが合格したのは、第1試験が『2時間で他人のプレート5枚奪う』というものと、前年の実績を評価されたからなのであって、キルア一人が残ったからという理由とは関係ない。彼の記憶違い、勘違いである。





─あとがき─

 なんだかんだで二次試験も無事突破。
 他の受験者から見た彼は寿司を知ってたラッキーなヤツ。程度の認識です。
 次回ボール取りゲーム&第三次試験。

 ちなみにヒソカの強制排除はグリードアイランドクリアの際に力を借りなくてはならない可能性があるのでやりたくても出来ないというジレンマ。



[13869] 第03話 ボール取りゲームと第三次試験
Name: YSK◆f56976e9 ID:672abedf
Date: 2011/04/26 21:43
初出2011/04/24 以後修正




 飛行船の中。
 一次、二次試験の試験官が食事をしながら今年の出来はどうかと話していた。

「今年は、ルーキーがいいですね」
 第一次試験の試験官サトツが言う。
「あたしは294番がいいと思うのよねー。ハゲだけど」
 それに、二次試験後半の試験官メンチが答える。

「72番は? 唯一メンチを味で満足させて、自力で合格したけど」
 巨漢のブラハが聞く。

「72番?」
 一次試験の時、まったく彼の存在に気づかなかったサトツが聞き返す。

「あの子は別に寿司を知っていただけでしょ。味は確かによかったけど、それだけ。才能としてはむしろ寿司職人になるべきね」
「そうかもねー」

「そんな事よりブラハは?」
「そうだね。新人じゃないけど44番かな……」

 こんな感じで、72番の彼は、まだ試験官の目には留まっていなかった。




──────




 さて。飛行船に乗りこんでしまいました。
 ごうんごうんと空を飛んでます。

 一晩たったら第三次試験です。
 正直このまま棄権してしまいたいくらいです。


 でもまだ、一発安全ハンター資格ゲットチャンスがあるのを思い出したのでこの場にいます!


 そう、それは、あのハンター協会会長とのボール取りゲーム!
 そこでボールが取れればハンター資格をやるとゴン達に約束していたはず。
 あれに参加出来れば、これ以降の試験に参加せずともハンターになれるという事!

 ふっふっふ。ただの勝負ならば絶対に勝ち目はない。だが、ボールをとるという事だけならば、道具を使えば、どうにでもなる!!

 天はまだ、俺を見放さなかった!


 というわけで、主人公ゴンと仲良くして、ハンター会長に誘われようと思います。
 一緒にいればきっと誘ってくれるよね!


「よう。お前もひょっとして、ジャポン出身なのか?」

 飛行船の中、探検に行ったというゴンを探していたら、ハゲの忍者に話しかけられました。
 自己主張の強い名刺ももらいました。

 ……あ、この世界漢字もあるんだな。『半蔵』って書いてあらあ。

「……でよー。なんで俺の寿司は駄目で、お前の方はいいんだって話だよな! やっぱあれか? 顔か? 顔なのか!? 坊主とかって受けよくないのか?」

 いや、知らんがな。そんなに一方的にべらべらしゃべられても困るねん。
 そんな事より俺にはやる事があるねん。

 自己主張の強い忍にかまってる暇はないんだよ。


「俺忙しいんだけどいいかな?」

「いいじゃねえか。せっかく同郷なんだ。もう少し話そうぜ」
 ばんばんと背中を叩かれた。
 久しぶりに同郷の人間を見て嬉しくなっているようだ。気持ちはわかるが、今君にかまっている暇はないんだ。

「いやいや。今じゃないと駄目なんだよ」

「どういう事だ……?」

 俺は面倒なので、一つの賭けに出た。

 すっと、ある場所を指差す。

「なっ!?」

 そこにあったものに、ハンゾーは驚愕する!


 それは、『W.C』(トイレ)への案内板!!


「緊急。事態、なんです」
 青い顔してお腹をおさえる俺。

「そ、そうか。それはすまなかった。薬、いるか?」

「気は使わないで。むしろ、そっとしておいて……」

 だっと俺はそのまま走り出したのであった。
 哀れみの視線を背に受けながら……


 ふっ、かかった! 俺様の演技力見たか! これでゴン達を探しに!


 ゴン!


 ……トイレに向かうフリして急いで角を2回ほど曲がった俺は、また、そんな音と共に、吹っ飛ばされた。


 ごろごろと廊下を転がる。


「うぐぐぐぐぐ……なんかぬらりひょんみたいなのに吹っ飛ばされた気がする……」

「大丈夫かの? いきなり飛び出したらあぶないぞい?」

 転がった俺に手を差し出したのは、目的の人物。ハンター協会会長だった。
 どうやらこの爺さんにぶつかって吹き飛ばされたようだ。

 さすがハンター協会最強。走っていた若者なんて逆にふっ飛ばしますか。


「いえ。俺もちょっと急いでいたもので」

「そうかの。じゃあ、暇はないちゅうこっちゃな?」

「いえいえいえ。急いでいたのはある場所から逃げていただけであって、目的はありません。めっちゃ暇です! むしろ匿ってください!」

「おお、そうかの。それじゃあ、暇なじいにちょっと付き合ってくれんか?」

「いいですよ」

 おおお! ラッキー。主人公達と出会わずともこんな事があるなんて、なんてラッキーなんだ!

「お、あっちにも暇そうな小僧がおるな。あっちも誘ってよいかね?」

「どーぞどーぞ」

 その方向を見ると、ゴンとキルア? と思しき人影がいた。
 俺が彼等を見た直後、驚いたようにして俺の方を振り返ってきた。

 ? なんやねん。
 だが、俺を見ているというわけではない。

 そして、いつの間にか彼等の背後に会長がいた。
 あ、そうか。会長がなんかして、それにあの二人が気づいた。と。
 んで、振り向いている隙に二人の背後へ会長移動。
 俺の方を見たのはそういうわけね。
 すげー。全然見えなかった。そしてそれに気づいた二人もすげー。

 やっぱ、俺みたいな一般人とは住む世界が違うね君達。


 俺の方を見たゴン&キルアも、すぐ背後の会長に気づいて会話。ゲームに承諾したようだった。




──────




「さて。この船が目的地に着くまでに、この球をワシから奪えば勝ちじゃ。そっちはどんな攻撃も自由。ワシの方は手をださん。そして、ボールを取れたら、ハンターの資格をやろう」
 上着を脱いで、ボールを持ったハンター協会会長。ネテロがそう言う。


 キター!
 当然俺もその場にいます!
 そして当然参加です!!


 最初にキルア。
 次にゴン。

 そして全員一緒でいいとの事で、二人同時にボールを奪いに行く。


 俺は結局その間傍観しています。


「なんじゃ、参加せんのか?」
 少年達と戯れながら会長が、俺にそう聞いてきた。
「会長が疲れるのを待ってるんです」

 そう、笑顔で言い放った。

「えー。せっかくだから一緒にやろうよおニーさん!」

「んじゃあ、君等がじーさんのもう片足か片手を使わせたら参加するよ」

 実際は全然わからないのだが、原作知識でゴンの言葉をかわす。
 いったれ原作知識!

「え?」
 この中で驚いているのはゴンだけ。

「おや、バレてたか。うまく隠してたつもりだったんじゃが」

「そっちの銀髪の子も気づいていたようだけど」
「そうなのキルア?」
「ああ。とことんむかつくじーさんだぜ。今のままじゃ一年中追い掛け回したってボールうばえっこない」
「ひょっひょっひょ」

「はっはー。とことんむかつくじーさんだぜ。もー行こうぜゴン。やってらんねー」
「あ、オレもうちょっとやってく」

 なに言ってんだお前。ってな顔でキルア君ゴン見てる。

 その後ゴンはボールはいいから右手くらいは使わせてみせるとキルアをあきれさせ、少年はそのまま出て行った。

「んじゃ、俺の出番はもう少しあとですね」
「そのようじゃな」

「ゴンー。がんばって俺のためにじーさん疲れさせてくれよー」

「うん。がんばるー」

「ひょっひょっひょ」


 ちなみにキルアは、俺の方をちらっと見たけど、そのまま部屋から出て行った。
 俺に興味とか全然ない目だなーあれ。別にいいんだけど。


 そこからさらに3時間ほど経過。
 見事ゴンが会長の右手を使わせて、「勝ったー!」と趣旨の違う喜びを見せて就寝。


 その間俺は半分仮眠を取っていましたとさ。


「さて、最後はおぬしの番じゃな」
「そのようですね」

 満を持して。という気分で立ち上がる。

「疲れておるからといって、負けるつもりはないぞ?」


 ふふふふ。別に疲れさせるのが目的というわけではない。とゆーか全然疲れてなんていないだろうし。このじーさん。
 単に一対一の状況でボールをとりたかっただけだ。いや、あんまり深い意味はないけど。
 先に勝っちゃったらゴンに悪いなー。とか、そんなレベル。
 主人公達にこれ以上目をつけられたくないという理由もある。
 あと、ここだと他に人が来ないから安心して休めるから(ちょっとうるさかったけど)


 ま、そんな事はどうでもいいさ! はじまれば一瞬で終わるからな!


「では、ワシからこのボールをとれば、おぬしははれてハンター資格を手に入れる。よいかな?」

「OKOK。では、行きますよ……」

 俺は、けだるげに両手をポケットに入れたまま、歩き出す。


 そして、ポケットの中で持った一つの時計のスイッチを入れた!


 シィィン!!


 次の瞬間、時間が止まる。
 そう、これこそが俺様必勝の策! 『タンマ・ウォッチ』で時間をとめてボールを奪おう大作戦!


『タンマ・ウォッチ』
 とっても有名な時間を止める事の出来る道具。
 発動時発動者に触れていた者も一緒に時間の止まった世界へと入る事が出来る。
 ちなみに止まった時の中で、止まっているものをこの道具で触れる事により、その触れられたものも時間の止まった世界へといざなう事が可能。


「ふふふふふ。勝った! 時間さえとめてしまえば、いかに強力な人間でも、まったく無意味! あとは、ボールをとるだけ! なんと簡単にハンター資格を手に入れられるのだ!」


 むんず。

 とったー!!

 ぴたー。

 ……あれ?


 会長が手に持ったボール。
 それをとろうとしたのだが、まるで会長の手に張り付いたかのように、動かなかった。


 ちょっ! 手の上にあるだけなのに、まるでくっついているかのようじゃん! なにこれ!? ずるい! ずるいよ!!

 ぺしぺしと手を叩いたり、広いでこを叩いたりなでてみたり、体をくすぐってみたりするが、当然無駄。

 道具も使わない俺の力では、まったく引き剥がせない。


「……なんという」

 これが念というやつ? それともただのパワー? なんか無理にひきはがそうとすると、会長の皮膚とかがべりっとかいきそう。

 ええい。なら、手から離れた瞬間に時間をとめればいいだけの事!

 いくらなんでも空中なら手に持つだけで勝ちと宣言出来る!
 空中にあればそこで奪ったと宣言出来るからな。
 手から離れたら時間停止。
 こっちでいこう!


 では、一度最初の位置へ戻って……時間停止、解除!

 そしてボールが宙を舞うのをま……


「よし、やめじゃ」


 ってー!?

「なんでいきなり!?」

「うむ。つかりちった」

 てへっとペコちゃんみたいに舌を出して、えへへとかわいく笑う会長。

「なんでやねーん!」

「か弱い老人をこれ以上虐待するというのか。ひどい若人じゃの」

「いやいや。あんたこれからあと1日くらい動き回っても全然平気な人じゃん! 絶対嘘だろ!」

「それでもワシがやめといったからやめなんじゃもーん。ワシ会長じゃもーん」

「なんという……」

 がっくりと、俺は思わず両膝をついた。
 せっかく、危険なくハンターになれるチャンスだったというのに……


 るーるるーるるー。
 寂しくなったので隅っこですねてやった。

 想いっきり無視されたけど。


「てゆーか筋トレはじめるなー!」

「ひょっひょっひょっひょっひょ」

「るーるるるー」
 なんか腹立ったのでこの場で寝る事にした。




───ネテロ───




「るーるるるー」
 部屋の隅ですねて寝ている男が一人。


 ……今のは、本当にやばかったのう。
 背中に冷や汗が流れるのがわかる。


 あのまま続きをやっておれば、確実に、ワシの手からボールが消えておったじゃろう。


 一見すると。本当に一見すると、彼はどこにでもいるただの若者にしか見えない(ハンター試験に参加するレベルとは思えないほどに)
 暇つぶしをしようかと思ったんじゃが、彼だけじゃと相手にならんと思って、99番と405番の子供達も誘ったほどじゃ。

 じゃが、その本質は、その身に秘めたモノは、ワシに勝負を躊躇させるのには十分なものじゃった……

 ほんの一瞬。ゲームとしてほんの一瞬。相手が一歩踏み出す程度の時間相対しただけじゃが、その瞬間、まるで全身を撫で回されたかのような感覚に襲われた。
 なにかが体を這いずり回ったような感覚。
 体中を撫で回されたような異質な感覚。

 触れられてもいないのに、まるで実際に触れられたような錯覚。
 今まで感じた事もない、異質で異常な錯覚。

 ワシの本能が即効で、ヤバいと告げよった。



 ネテロもこの時、なにが起きたのかまでは理解出来ていない。
 だが、今まで培ってきたその経験により、止まった時の中、彼に触れられたその極小の感触。かすかに残る、体の違和感。それにより、事態の異常さを敏感に感じ取った!
 今までの経験から、彼と相対する事が危険であると判断したのだ!

 ハンター協会会長であり、ハンター協会最強であり、ハンター協会で最も経験豊富である彼であるがゆえ、このゲームをやめるという決断が、瞬時に出来た。

 もし、あそこでやめる事を決断していなければ、今期のハンター試験での合格者第1号が誕生していただろう。
 彼の望みはかなっていただろう!

 そう。このルールの中。この引き分けこそが、ネテロの選べた、唯一の『勝ち』!!



 ……ワシに負けをイメージさせる。
 それだけとっても、ほんに末恐ろしい若者じゃ。

 感じられる力は微々たるもの。
 感じた才能といったものでは、その前の99番(キルア)や405番(ゴン)の方が上じゃろう。
 はっきり言って、素質らしい素質は感じられない。念能力者かと思えば、肝心の『念』が見えるそぶりもまったくない(彼が一歩踏み出しあの錯覚を感じた瞬間、あまりの事に一瞬自身の『念』を発動してしまったが、彼は無反応だった)


 じゃが、だからこそ、末恐ろしいともいえる。

 試験官の中で彼に注目している者は一人としていなかった。
 当然ワシも、そんな事思ってもいなかった。
 彼と相対するまで、まったくその異質に気づけなかった。
 つまり、彼の才能を、ワシ等は完全に見違えていたという事にもなる。


 一見するとどこにでもいるただの若者。じゃが、逆に言えば、まだ彼は、ワシ等にまったく底を見せていないという事になる(それどころか蓋すら開けていない可能性もある!)


 その彼の、底……


 その底を見て見たい。
 その蓋を、開けさせてみたい。
 ワシは、一瞬そう思ってしまった。

 思わず、疼いてしまった。

 だが、この場では出来ない。
 この場は飛行船。彼の底を見るという事は、ワシも本気を出さねばならない可能性がある。そうなれば、この船が木っ端微塵になってしまう事もあるじゃろう。
 それゆえ、出来ない……

 これも、ネテロがこのゲームをやめた理由でもある。
 この場が飛行船でなければ、試練の途中でなければ、負けるとわかっていても、勝負をしたかもしれない。


 その底を見てみたい。
 彼は、この老人に、そう思わせてしまっていた……



「るーるるーるー」


 ……やっぱ、単なる勘違いじゃったかもしれん。
 隅でふてくされる男を見て、ネテロはそう思った。




──────




 やってきました第三次試験!

 そして安全確実ハンター化計画も無に帰りました!

 さーて。再び選択のお時間です。

 あきらめるか、あきらめないか!


 まず、この三次試験。トリックタワーと呼ばれるアホみたいに罠のある塔を降りるというもの。だがこれは、外を降りてもいいので、道具を使えば楽勝である!

 問題は、この次!
 第四次試験。

 狩る者と狩られる者の試験!

 こっちはホントに命の危険がある。
 これをどうにかして安全、確実にクリア出来る方法があれば、最後の試験はなにもしなくてもハンターになれるわけだ(ラストは失格する子が決まってるからね)

 つまり、第四次試験だけが問題となる。
 そこを安全にクリアする方法さえあればいい!

 確かあの試験はプレートを奪い合う試験だったよな。


 自分のが3点の標的も3点で標的じゃないプレートが1点で、合計6点集めればいいんだっけ。

 ……失格になった人のプレートって、点数になるのかな?

 もしなるのなら、今のうちに6枚集めておけば楽勝!?
 い、いけるかもしれない!


 あとは、島で安全にすごす方法だが、それもクリア出来る方法を思いついた!


 もし失格者プレートが駄目だったら、ハンターは諦めて命をとろう。
 大丈夫ならば、ハンターになろう!

 よーしよしよし。希望が見えてきた!

 あとは、この塔をただ降りるだけ!


「おーい!」

 そうやって喜んでいると、ゴン達四人に声をかけられた。


「ん?」


 彼等の話は、隠し扉を発見したのだけど5個あるから一つどうだ? という提案だった。


「あー、俺はいいや」

「でも、隠し扉に入らないと下へいけないよ?」
 ゴンが曇りなき眼で俺を見てくる。

「ああ。俺は外行くから平気」

「そとぉ!? さっきのあれ見ただろう。自殺行為だぞ」
 レオリオが俺を心配してか、言ってくる。

「問題ない問題ないむしろ俺やらなきゃならない事があるから先に行っちゃっていいよ」

 なんで俺がそんな危険な道に行かなきゃならないんだ。俺の場合は外を行った方が安全なんだよ。
 そりゃ、この先なにがあるかわかっているから、彼等と行くのも一つの手だ。

 だが、それよりも楽にクリア出来る方法があるというのに、わざわざついていく必要もない。
 ついでに、もう彼等とあんまり関わりたくはない。

 主役と仲良くなるという事は、物語の最前線に行くという事にもなる。
 ヒソカとか幻影旅団とかノーサンキューもいいところだ。
 俺が望むのは、平穏な日常。

 あー、でも、グリードアイランドクリアには彼等が欠かせないのか……?
 いやいや。だからってトラップタワーなんて危険極まりないところには行けない。行きたくない。
 中は普通に危険なんだぜ。リアルで岩に追いかけられたり、原作内では描かれていないデストラップだってあるだろう。そんなのお断りだ。

 よって俺は俺の道を進むぜ!


「それじゃ、一つあまるから、気が向いたらそれ使ってね」

「おう」

 隠し扉に消える4人を見送った後、俺は塔の隅っこの方で次の準備をはじめる。


 まず、第四次試験用のプレートを集める事。
 これは、『取り寄せバック』を使用して、すぐ集まった。調子に乗って8枚も集めちまったぜ。
 あと、湿原に残してきてしまった刀も回収した。


『取り寄せバック』
 この道具は遠くの場所にある物をバッグの中に手を入れて手元に取り寄せる道具。
 バッグの上下を反転させて水を取り出すことも出来る。取り寄せる際、手だけがそこの場所に現れるため、そこを狙われ攻撃される欠点がある。


 そして次はこの塔攻略。

 さっきゴン達に外から行くと言ったが、別に俺は外から行くつもりはない。
 いや、正確に言えば、外からゴールへ行くのだから間違ってはいないはずだが。

 どういう事なのかといえば、とてもシンプル。
 この道具を使うから。


『どこでもドア』
 説明不要なほど有名なテレポーター(転送装置)。
 まさかこれの説明が必要な人などおるまいな?


 これを使い、ゴールへ行ってしまえばいいのだ。この屋上(外)からゴールへと!
 ちなみに、『どこでもドア』をくぐるのを見られると、あとで誰に目をつけられるかわからないので、屋上から人がいなくなるのを待ち、さらにゴール地点のカメラの死角を指定して行く予定だ。


 そんなわけで!



 後に、この時の状況を知る第3次試験の試験官であるモヒカンの男は、こう語る。

「気づいたら、彼が部屋の中に現れていた。私は、カメラから目を離したりはしていない。それなのに、彼は部屋に忽然と、カメラの死角より現れたのだ……仮にもプロハンターである私が、声をかけられるまで気づかないとは」

 と。


『な、72番三次試験通過第1号!』


 いっちばーん。
 楽勝すぐる!!


 この時、ゴールした喜びで、試験官がどれほど動揺していたのか、彼は気づかなかった。
 そしてさらに……


「……あれ? ボクが一番だと思ったんだけどな☆」


 ……あ。

 しばらくして、変態ピエロが2番目に降りてきた。
 あれ? ひょっとして、しばらくコレと、二人っきり?


「やっぱり君は興味深いね☆ 我慢できなくなっちゃいそうだ◆」




 ……しもうたあぁぁぁぁぁぁぁ!!






─あとがき─

 四次元ポケットと未来の展開を知っていて、素直にハンター資格を諦めろ。というのも無理な話ですよね。

 ちなみにキルアから見た彼は、寿司を知ってたモブの一人。くらいにしか興味がありません。
 今のところ彼に注目しているのは、ヒソカと会長くらいでしょうか。
 ゴンとレオリオは話しかけやすいどこにでもいそうな普通のにーちゃんくらいの認識です。ハンター試験癖の強い人が多いから(ゴンはそのあたり気にしてないでしょうけど)



[13869] 第04話 第四次試験とかくれんぼ
Name: YSK◆f56976e9 ID:672abedf
Date: 2011/04/26 21:44
初出2011/04/25 以後修正




 ……困った。本当に困ったぞ。

 今、第三次試験が終了して、あとは72時間経過を待つだけというところなんだけど……

「二人きりだね☆」

 ……変態ピエロことヒソカと、二人っきりの状況ってやつなんだ。
 試験よりこっちの方がつらいいぃぃぃ!


「そうそう。いい事を思いついたんだ☆」

「なにがですか?」

「君、ボクの弟子にならない? 色々教えてあげるよ? 色々と、ね◆」

「遠慮します勘弁してください!」


 絶対嫌です! なに教えられるかわかったもんじゃないし常にタマ(命)を狙ってくる師匠なんてお断りだよ!
 しかも育ったら刈りとる気満々の。


「そうかい。修行がしたくなったら、いつでも声をかけてくるといい。君なら大歓迎さ☆」

「一生ありませんから安心してください。俺はゆっくりじっくり覚える派なんです」

「でも、弟子にもならないのなら、いっそこのまま食べてしまっても◇」


 ひぃぃー。あかん! あかんて! このねっとりとした視線はあかんて!
 早く。早く誰か来てー!

 もしくは、時間をすっとば……

 ……あ、そっか。


 俺は、第四次試験にやる予定だった事を、実験的にしてみようと思い、立ち上がった。


「もしかして、やる気になったのかい?☆」


「いやいや。せっかくだから、かくれんぼしようかと思って」
 俺はあえてここで、この変態ピエロに背を向ける。ドキドキものだが、なにもしてこないという確信が逆にある。

「へえ。面白そうだね☆」

「つーわけで、残り1分になったらまた会おうぜ」

 そう言って俺は、上着に隠して腰に巻いたベルトを発動させた。


『タイムベルト』!
 ベルト型のタイムマシン。これを使用すれば、つけたもの限定だが、タイムトラベルが出来る。
 ただし、空間移動能力を持たないので、時間移動した時と同じ場所に出る。長い時間を跳躍すると、地殻変動などで地形が変わり、石の中にいるなどということもありえるので注意だ。


 これを使い、終了一分前に時間跳躍した!!


 しゅぽっと現れると、丁度そこは、ゴン達が出て来ているところだった。
 終了直前に現れた5人。注目は当然そこに集まっている。
 ので、誰も俺が増えた事には気づいて……

 ……いや、一名いるかもだけど、無視。
 無視無視!!
 無視無視無視!


 だがこれで、第四次試験もこれでいけると確信した。
 あとは、すでに失格した人のナンバープレートが使えれば、開始直後に一週間後へ飛べば合格確定!
 なんとすばらしい事か!


 やべー。ハンター試験こんなに楽勝でいいの?
 ほんとにいいの?
 すげー。ひみつ道具マジすげー。


 調子に乗った俺は、最後に出てきたゴン達に話しかけたのだった。


「やー君達。ぎりぎり到着とは余裕だね」
 へらへらとレオリオに近づく。

「あ、てめー。お前があそこで入ってくれば、こんな苦労しなくてすんだってのに!」
「ちょっ、いきなりヘッドロックすんな!」

「うるせえ! お前が、お前が!」
 レオリオにぐりぐりされた。
 そーいえば、あそこ5人多数決で進む道で、あとで落ちてきた新人つぶしの人と一緒に歩かなきゃならないんだったっけか。

 確かに俺が入った方が多数決楽だったろうなぁ。

 背後では、件の、レオリオと一番衝突したあの新人つぶしの人がやれやれと部屋の中へ歩いて行くのが見える。
 ちなみにキルアは俺に興味がないのか見てもくれない。

「でも、おニーさんも無事でよかったよ」
 ありがとうゴン。君の言葉が心にしみるよ。

「しかし、どうやって降りてきたんだ? 見たところ、傷も汚れも見当たらないが……」
 まっとうな質問をクラピカから受ける。

「ああ、言っただろ。外(屋上)から降りてきた」

「うそつけよ」
「ぐげ……」
 きゅっとレオリオにしめられる。

「嘘違う。嘘違うね。実際俺合格第一号だし」

「うそくせえなぁ」
「オレは信じるよ!」
「……」
 クラピーも怪しげな目で俺の事見てるー。
 ゴン、君だけだよ。俺の心のよりどころは。


 んで、四次試験説明の時、タワー脱出した順にくじを引くとき、俺が一番に呼ばれてレオリオすげー驚いてた。

 ふふん。ちょっと気分がいいぜ。


 そして、試験官による第四次試験の説明がはじまる。

 まあ、知っての通り、くじに書かれたナンバーを取れば3点。自分のも3点。その他は1点で合計6点で合格。
 期間は一週間というものだ。

 試験官の説明が佳境に差し掛かったところで、俺は用意していた質問をぶつける。

「しつもーん」

「なにかね?」
「試験官は先ほど「それ以外のナンバープレートは1点」と、言いましたけど、俺、途中で失格になった友人のを記念にもらってあるんです。それも得点として使えますか?」

「それは幸運な事だな。私はナンバープレートとしか言っていない。この意味はわかるかね?」

「OKOKありがとう」
 よっしゃー! つまり、俺の手にある失格したナンバープレートも得点となる! これで、俺の計画は完璧という事だ!

 ふふふふふ。もう余裕しゃくしゃく極まりない。
 たとえヒソカに目をつけられていようと、全然関係ないわけだからな。

 あ、でもそうだとすると。俺をターゲットだった人がかわいそうだ。よーし。勝者の余裕ってやつ、見せちゃうぞー。


「質問は以上かね?」

「以上です。というわけで、俺、このナンバープレートはもういらないや」


 失格者のプレート6点分以上ある俺は、自分のナンバープレート。72と書かれたそれを、近くにいた受験生へと投げ渡す。


 ざわっ!!


 受験生がいっせいにざわめいた。


 俺はそのような事を気にしないかのように、船へと乗りこんでゆく。




───クラピカ───




「というわけで俺、このナンバープレートはもういらないや」

 彼はそういい、手近にいた受験者に、自分のナンバープレートを投げ渡した。


 ざわっ!!
 他の受験者がいっせいにざわめく。


 そんな彼を見て、試験をあきらめたのかと思うもの。
 わざと0点にして狩りをする狂人であると思うもの。

 そして……


「な、なに考えてんだあいつ……あきらめちまったのか……?」
 レオリオが、彼の行動を理解出来ないと、呟く。
「……いや、逆だ。私達は、彼を過小評価していたのかもしれない」
 それを聞いていたクラピカが、その独り言に答えを返す。

「あん? どういう事だよ? どう考えてもこの試験あきらめたとしか思えねえだろ?」

「そうじゃない。思い返してみろ。彼は試験官に他人のナンバープレートは失格になった者の物でもいいのかと聞いた。そして試験官は問題ないと答えた」

「だからなんだよ? ダチのをたまたま持っていただけだろ? 1枚くらいなら、俺だってマラソンの時誰かダチがいたら託されていたかもしれないからな」
「そうじゃないレオリオ。友人という言葉に騙されがちだが、誰が、1枚なんて言ったんだ?」

「っ!? まさか!?」

「そうだ。彼はすでに、6枚。下手するとそれ以上の枚数のナンバープレートを持っている可能性がある。だから、自分のナンバープレートを捨てたんだ。そうすれば、彼を追う狩る者もいなくなる」

「あ、そうか。つまり、この試験中安全になるって事か!」

 すげぇ! とレオリオ。

「そう。そしてお前のように単純に諦めたと考える者にも狙われなくなる。という事だ」
「……」
 ひくっと頭に怒りマークをあげるレオリオ。


「でもよ、そんな事四次試験がどんなのか知らなきゃやれないだろ」
「いや、今までの試験を見て、この四次試験を推理出来ない事もない……。それに、過去の試験の中で、プレートを奪い合うという試験がなかったとも言い切れない。受験生同士を戦わせ、プレートを回収するというのは、最もありえる試験方法だからな」

 さらに彼は、観察力を試すという名目だった二次後半試験を唯一合格した者でもある(単に知っていたという可能性もあるが)
 三次試験の時、我々が隠し扉へ誘った時、彼は他にやる事があると言った。彼はあの時、すでに第四次試験の事を考えていたのだろう……
 しかも彼は、三次試験をトップで通過している。それも、汚れ一つなくだ。それはつまり、最短で安全なルートも見つけたという事を示している。それが、外側を進むルートだったのだろう(外壁を行くのは無理という心理をついたルートがあった可能性は否定出来ない)

 これほどの観察力、分析力があるのだ。
 それを考えれば、第四次試験の内容を予測出来ていたとしてもまったく不思議はない。


「おいおい。俺には単に諦めたようにしかみえねーけどな」
「そうともとれる」


 だが、逆に考える事も出来る。
 そこまで準備しているという事はつまり、彼は、戦闘はそこまで得意ではない。という事だ。
 ヒソカやそれ以外の武闘派とマトモにやりあいたくないという事。


 つまり、この四次試験中、彼は誰に対しても脅威ではないと考えていいという事にもなる。


「つーか、結局諦めていようとすでに合格分のプレートがあろうと、どっちにしてもこの試験中はもうあいつ自分からはなにもしないって事だろ? なら、俺等が気にする必要ないだろ」

「……」

 結論がレオリオと同じになった事が、非常に不服なクラピカである。
 レオリオの方はすでに気にせず、自分の狙いのプレートが誰なのか、必死に思い出そうとしていた。




──────




 そんなわけで、2時間後無事島に到着。
 そして、一番に船に降りたあと。

 俺は、『タイムベルト』を発動して、7日後へ即効退去した。
 集合時間には1時間の猶予があるので、その真ん中くらいに。

 これで、俺の合格は確定!

 いやー、ひみつ道具様々だね。



「さて、行ってくるとしようかの」
 そう言い、立ち上がったのは、ネテロ会長。
「本当に彼の試験官を会長がなさるのですか?」
「うむ。そのとおりじゃ」
 聞いたのは、第3次試験も担当したモヒカンの試験官。
 第4試験は、受験生一人ひとりに、試験官がつき、採点を行うという事もやっているのだ。
 その試験官として、会長がわざわざ動く。それは異常と言っても差し支えのない事だ。
「おぬしも気にならんか? 彼」
「……少しは」

 第三次試験を一番でクリアした若者。
 トリックタワーを監視していた彼も、彼がいつゴールへと現れたのか、わからなかった事実があるからだ。
 さらにその後、合格者2号が出た後、彼は合格者2号の受験番号の44番と『かくれんぼ』と証したゲームをはじめた。
 それにおいても、彼は宣言どおり、監視していた自分にも、44番にも発見されず、終了時間一分前に忽然と現れたのだ。

「しかし、さすが会長。第3次試験以前から、彼に目をつけているとは」
「ひょっひょっひょ。当然じゃわい」
 ……ホントは偶然じゃけどなー。とは口が裂けても言わない会長だった。

「それでは、ちょいといってくるでな」

 そう告げ、会長もまた、彼を追い森へと消えていった。
 だが、しばらくして、戻ってくる。

「……みうしなっちった」
「ええー!?」
「どうしよか」
「どうしましょう……」

 会長をまくというある意味最高の事をしているが、それでは試験としては点をつける事が出来ないので、彼のみ採点不能という事態に陥るのであった。

「ま、最終試験を決めるのワシじゃからよしとしとこう」
「……会長」
 いやー、彼の担当がワシでよかった。と胸をなでおろす会長に、それでいいんかい。と思わずつっこむモヒカンの試験官なのだった。

 ちなみに、彼は自分のプレートを捨ててしまっているので、その反応を頼りに居場所を探す。なんて事も出来ないので、彼が本当に島にいたかすら確認不能なのであった。



 二番手に降りたヒソカは、この試験で彼がすでに見つからない事を理解していた。
 あのトリックタワーで見せた『かくれんぼ』
 終了1分前という予告そのままに、彼はその時出現するまで、あの狭い待機室の中、まるで存在などしていなかったかのように、匂いすら見つけられなかったのだ。
 『円』を使い確認しようと、なにをしようと、終了1分前。あの405番達が出てくるまで、彼を発見する事はかなわなかった。
 具現化系と見ただけあって、彼はその存在すらも自由に現したり隠したり出来るのだろう。

 あの時、彼がそこにいたと知っているのは、ヒソカと試験官くらい。
 だから、他の受験生は彼が消えていた事にすら気づいていない。

 だが、ヒソカは知っている。
 それと同じ事を、この島でやられたのならば、彼は決して発見出来ない。と。

 彼はすでに失格者のプレートを6点分手に入れているのだろう。
 ならば、最初に森に消えたあの瞬間に、もう手の届かない場所へと消えているはずだ。


(残念だね。ここならば、彼の熟れ具合を確かめられると思ったんだけど◆)


 だが、それでいい。
 それはつまり、彼はこの瞬間も、自分好みに熟れているという事なのだから……

 あぁ、彼が本当に『念』を覚えたのならば、一体どこまで美味しくなるのだろう……
 それはそれは、とても甘美な味となるのだろう。

 なので、この試験中は、彼には執着せず、そのまま、森の中へと消えた。
 原作と同じように、目標も決めず、テキトーにプレートを狩るために。

 この後は、皆の知るとおり、ゴンにプレートを取られ彼を気に入るという、いわゆる原作どおりの展開となった。


 他の流れも変わらない。
 ハンゾーが最終的に『彼』のプレートをふくめた三枚を手に入れていた。というくらいの変化である。


 合格者は、彼が増えただけで、一切の変化は存在しなかった。




 タイムワープアウト!

 出現してみると、『第四次試験は終了となります。残り30分までにスタート地点へとお戻りください』という放送が船から流れてきていた。

 なので、そのまま回れ右をしてスタート地点へと戻る。


 よっしゃー! こんなに楽でいいのかしら。


「お、やっぱり無事だったんだな」
 と、レオリオが俺の方に手をあげてくる。

「やー。ずいぶんボロボロだね~」
「お前は全然汚れもしてねーな」

「はっはっは。実力実力」
 ホントは開始2分くらいな体感なわけなんだけどね。
 ちなみにクラピーは無言で俺を見てました。


「あ、おニーさん!」
「あ、生きてた」

 こっちはゴンとキルア。

「よー」
 しゅたっと挨拶。ゴンは体中に噛み傷と誰かにぶん殴られたほっぺと、ぼろぼろ。

 周囲を見回してみても、俺を入れれば10人。
 どうやら、俺の知ってる展開と差異はないようだ。

 ……たぶん。

 いや、原作で実際に何人残ってたか正確な人数は覚えてない。
 多分全員そろってる? そんなレベル。



 こうして、合格者10人は飛行船に乗って、最終試験へと向かうのでありました。




─あとがき─

 次回、最終試験。



[13869] 第05話 最終試験とお昼寝タイム
Name: YSK◆f56976e9 ID:672abedf
Date: 2011/04/27 21:34
初出2011/04/26 以後修正




 ついにきました最終試験会場。
 つーか、最終試験て第四次試験から三日後なのね。
 それまでは、ハンター協会の所有するホテルを貸切にして完全休養。

 まあ、7日くらいサバイバルだったから、心も体も癒すのに三日くらいかかるってのはわかる。
 試験中だから三日間ホテルの外に出てはいけないのもわかる。
 さすがにヒソカとかも、最終試験を控えたこんな場所じゃ無茶はしないので、みんな最大限にリラックスは出来るのはわかる。

 でも、俺は三次試験無傷の上第四次試験体感時間2分&無傷無疲労。つまり、俺はこの三日間は、超がつくほど暇というわけなのだ(外出禁止だからホテルから一時消える時間跳躍も出来ない)

 しかし、ホテル自体は貸切なのでその恩恵はただで最大限に受けられる。
 食事も施設も全部ただ! ならば、最大限その恩恵を受けるしかない!

 んで、ボロボロの癖に、俺と同じようにその恩恵を最大限に受けようと考える貧乏性がもう一人。

「あ゛~」
 マッサージ椅子で至福の表情してるレオリオさんがいた。

「ふつーにマッサージ師がマッサージしてくれるサービスあるのにそれどーかと思うなー」

「って、うおぉ!?」
「や」

 にこやかに挨拶してみた。
 というか、仮にもここまでやってきた人が人が近づいてきているのに気づかないとか駄目だろ。
 いや、多分俺も同じ反応すると思うけど。だらけきって。

 だからというわけでもないが、微妙にレオリオとは親近感を感じる。

 なんというか、一般人的ポジションで。


「な、なんだよ?」
「いやー、すげーだらけきってるなーと思って」

「しょうがねーだろ。あの七日間すげー大変だったんだ。お前だってわかるだろ?」
「ごめん、わかんねー」

 なんせあの試験。体感時間2分だから。てへっ。

「うっわ、なんかすげー腹立つ。ホント腹立つ」
「ま、いいじゃん。そんな事より」

「あん?」
「これから三日は試験もなんにもないし、こんなホテル貸切で自由に出来るなんて滅多にない。その上ハンター試験が終わるまで自由に使える上、支払いはハンター協会。だからよ、一緒にホテルを楽しまない?」
 一人だとなんとなく利用しづらい(だからマッサージ椅子)。だが、二人なら理論でレオリオを誘う。

「……お前」
 この俺の言葉に、二人の普通人の貧乏性が共鳴を起こした。

「「友よ!」」
 がっちりと俺達は、固い握手を交わすのであった。

 その後レストラン、映画館、フィットネスにプールに温泉マッサージなどなどと、レオリオと二人でホテル中の施設を遊び回った。

「レオリオ、これうまい! まじうまい!」
「うおおー! こいつもいけるぞ! いける!」

「レオリオのー、ちょっといいとっこみってみたいー♪」
「んごっ、んごっ、んご……ぶはー!」
「ひゅー! かっこいー!」

「うおおおおー! めざせすとらーいく!」
 ガーター。
「のー!」
「お前駄目だなー」
「笑わないでレオリオさん!」

「うおー、カラオケ全然わからなーい!」
「なんだお前~、全然だめじゃねーか」
「知ってる歌が一つもないのよさー」

「……なにやってんだお前等?」
「あ、ハンゾーも一緒にやらね? このストラックアウト」
「おうこいこい!」
「おもしろそうじゃねーか!」
「うおー、ハンゾーさん三枚抜きとかまじぱねぇ!」

「かきーん!」
 すかーっと空振りー。
「うわ、そのてーども打てねーのかお前!」
 かきーん!
「うわー、レオリオに負けたー!」
「ふっ、俺の方が上だな!」
 ハンゾー160キロかきーん!
「「すげー」」

「ジョイステあったジョイステ! 対戦しようぜ!」
 レオリオジョイステ発見。
「これがジョイステかー」
「お前の部屋でいいか?」
「おっけー。負けないぜー」
「オレ、ゲームってはじめてやるぜ」
「同郷の人……」
 いや、俺もはじめてだけどさ。ジョイステは。


 いつの間にかハゲが増えたりして、俺達はこのホテルのリフレッシュ三日間を堪能しまくったのであった。



 ……結果。



「うう゛~。めっちゃ眠い~」

「なんだだらしねーな。たった三日程度で」
「だなー」

 俺はレオリオとハンゾーと遊びまくった反動で逆にへろへろ。
 レオリオもハンゾーも俺と遊んでたくせにぴんぴんピチピチしてやがる。

「だりー」
「大丈夫か? ただの寝不足だと思うが……」
「さすが医者の卵。だいじょぶさー。まかせろー」

 へろへろだけど、レオリオに親指立てておいた。
 いぇい!

「……これから試験だというのに、なにをしていたんだお前達は」
 クラピーにあきれられました。
 てへっ。


 そして、最終試験の発表。
 皆も知ってる通り、失格者一人となる、一対一の負け上がりトーナメント。
 そして、俺の対戦相手は……


 403番のレオリオだった。
 第1回戦の最後。あのトーナメント表に俺の72番が403番のレオリオと対戦する形で付け加えられただけ。


 きたぁぁぁぁ!! ボーナスステージ!
 会長に質問された時『レオリオ! 戦うならレオリオがいいです! レオリオじゃなきゃダメ! あとはどうでもいい(きりっ)』と熱望したかいがあったぜ。


「俺の相手はお前か。わりーが、手加減はしないぜ」
「ああ。どっちが勝っても恨みっこなしな」

 がつっとこぶしをぶつけ合った。
 といっても、さすがにレオリオさんには負ける気しないな~。

 いや、さすがに素じゃ負けるかもしれないけど、俺には道具があるからね!
 レオリオさんなら楽勝さ!



 そして第1回戦第1試合。
 ゴンVSハンゾーがはじまる。


 ガシ! ボカ! ゴンは「まいった」を言わなかった! なげ~っす。


 ……あー、そういや、ゴンの試合って、めっちゃ長いんだよなー。ゴン参った言わないから三時間以上続くんだっけ?

 しかもゴンが一方的になぶられるだけの展開で。
 それややなー。

 ゴンとハンゾーのガシボカは長いし見てるの痛いし、今俺眠いし。眠いし。超眠いし。

 結果がわかっているスプラッタは見ていて面白いものでもない。でもここで試合も見ずに寝るのってすげー嫌味で失礼だよな。
 でも超眠い。


 ……よし、寝よう!


 でも、寝てるのがばれないように時間をとめてちょいと細工して。ごそごそっと。
 俺は鏡の世界へっと。おっと、目覚ましを、俺の試合は第1回戦のラストだから、3時間は眠って平気だろ。にセットして。

 寝よう。
 それじゃ、俺VSふけ顔レオリオ君の勝敗わかりきった試合で~。


 おやすみ~。



 この時俺は、あまりに眠くて、『道具』で眠気を吹き飛ばすという発想には、いたらなかったんだ……




───ゴン───




 がばっ!

 ゴンは、目を覚ますのと同時に、起き上がった。

「おや、目覚めましたか」
 ゴンの横にいて、本を読んでいた第一次試験官サトツが声をかける。

「ここは……?」
「ここは最終試験会場横の控え室です」

「まず、合格おめでとうございます」


 そして、ゴンは、原作どおりハンゾーにぶっ飛ばされて気絶したあと、会場でなにが起きたのか説明を受ける。
 唯一の失格者は……


「キルアが、なんで?」

「反則による失格です」
「反則……まさか」

「相手を死にいたらしめました」

「─!!」

「そして、死んだのは……」

 ゴンは一瞬、その言葉が、信じられなかった。

「いえ、事実です。一瞬の事でした。開始の合図と同時に……『彼』の体を刺し貫いて……」


 失格した者は、原作とかわらず、キルアだった。

 だが、死んだものは、原作と呼ぶべき、ハンター×ハンターとは、違った。
 そこでキルアに心臓を刺し貫かれ、殺されたのは、『彼』だったのだ……




──────




 ぱちくり。

 目が覚めた。
 んで、起きたらなんか、ハンター試験、終わってた。



 寝過ごしたあぁぁぁぁぁぁ!!!?





─あとがき─

 次回ハンター試験編終了にございます。
 ちなみにボドロさんこっそり生存。

※試験管の誤字、ご指摘ありがとうございます。修正しました。



[13869] 第06話 ハンター試験終了
Name: YSK◆f56976e9 ID:672abedf
Date: 2011/04/27 21:38
初出2011/04/27 以後修正




 ……あ、ありのまま起こった事を話すぜ。
 ゴンの試合が長くなると思って昼寝をしたら、ハンター試験が終わっていた。
 超スピードとか(以下略)とかそんなもんじゃねえ。


 ぶっちゃけ目覚まし時計を蹴っ飛ばして一日ほど眠っていたんだぜ。

 しかも最終試験中俺死んでた。
 なんと恐ろしい。


 いや、意味わからないよね。うん。とりあえず、ひとまず状況を整理しよう。
 まず、なんというか、俺眠かったから寝たじゃん。あの時こっそり代理としてコピーロボット置いて寝たんだよ。時間を止めて入れ替わって。
 だって、必死に戦っているのに横でごろりと寝ていたらそれすげー嫌味じゃない。だから、そんな事ないようにって配慮でさ(俺は『入り込みミラー』使って鏡の世界に行って寝てた)

 そしたら、俺、目覚まし無視して熟睡しちゃって。そのままコピーが戦う事になったんだ。
 どうにもコピーロボだと『四次元ポケット』使えないみたいなんだわ。
 だから、レオリオに負け。その次も負け、さらに負け、もっと負けして、最後の試合でなんと俺、キルアにぶっすりやられてしんじゃったんだよ!
 あ、コピーロボがね。死んだんだけどね。それだけなんだけどね。
 死んでもロボットに戻らないのはある意味道具の鏡だよね(ロボも彼の知識を持っているため、自分がやられる可能性を予期していた。そのため壊れたわけではないらしい)


 んで、起きて時計見てびっくり。戻って近くを歩いていた黒服に聞いて黒服と俺どっちもびっくり。

 俺は大急ぎで俺の死んでた霊安室へ行き、コピーを回収。
 再起動させたらコピーに怒られて泣かれて説明された。すまん。でも心臓に穴開いた俺の姿で泣くな。きもい。
 頭くっつければ記憶把握出来るんだから、嫌がらせだろそれ。まあいい。

 俺大急ぎでハンター講習やってる部屋に走ったわけ。
 講習終わったらハンター試験完全終了。次の機会はまた来年に。となってしまう。
 最終試験で死者出なかったというのはいい事だけど、俺がハンターになれなきゃここまで必死にがんばった意味がないじゃん!


 ここでハンターなれなかったらなんのためにここまでがんばったのかわからないじゃん!



 だったら最終試験前の三日遊んでんなとか言われそうだけど、そいつは無視するぜ!



 とにかく急いで俺を合格だと認めてもわらねば!!




──────




 一方。講習所では、試験の事情を聞いたゴンがギタラクル(イルミ)につめより、兄弟の資格はないとか、操られていたとかの話題となり、最終的にゴンが合格云々の問題ではなく、殺しを強要していたかどうかをギタラクルに問う。ところに差し掛かっていた。


「もしも今まで望んでいないキルアに無理やり人殺しをさせていたといたのなら、お前を許さない」

「許さない、か。で、どうする?」

「どうもしないさ。お前達からキルアを連れ戻して、もう会わせないようにするだけだ」

 ぎりっとギタラクルの腕がきしむ。
 ゴンにその反対の腕を向けたところで、ゴンはギタラクルから離れた。


 そこに……


「あのー、そろそろ、話はひと段落ついたかな?」


 もうしわけなさそうに、聞こえたきた言葉。
 それは、この部屋にいたものすべてを、驚愕させた。


 そこには、死んだはずの男が立っていたのだから。
 ひょっこりと、扉から、顔を出したのだから。


「─!?」
 ギタラクルは表情こそ変えなかったものの、『彼』の姿を驚いていた。

 他の者達も、まるで幽霊でも見るかのような目で、彼を見ていた。


「えーっと、安心してください。ちゃんと生きてますから。ほらちゃんと足もある」
 おどけて彼は、片足を上げてぺしぺし叩いてみせる。

「お、おま……おまえ……」
「よ、レオリオ」
 レオリオが彼に向かって走り出し、そして、抱きついた。

「おま、無事だったのか! 本物だ! 本物だよー! ちくしょー!」
「ぎゃー! や、やめ! きしょい! きしょいからー!」

「おニーさん!!」
「おぎゃー!」
 さらに、ゴンが彼に抱きつき、悲鳴を上げさせる。

「……まさか……どうして……?」
「おいおい……」
「……」
 そして、その無事な姿を見て、クラピカ、ハンゾー、そしてネテロも驚きは隠せない。


 あの時の彼は、心臓を貫かれ、確かに死んでいた。
 それなのに、ああして無事に生きて帰ってくるなんて……


「やあ。まさか無事だったなんて、どんな手品を使ったんだい?☆」
「……うれしそーだね」
「そりゃあ☆ どうだい? せっかくだからもう一回死んでみるのは?◎」
「断固拒否する!」

 そして彼は、抱きついてきていたゴンとレオリオを押しのけ。

「おら、お前等は席に戻れ。そっちのピエロも寄ってくるな。散れ散れ! この程度の事で」

「どこがこの程度だ! お前、マジで死んでいたじゃねーかよ! マジでオレ……」
 心臓を刺し貫かれた彼を、医者の卵のレオリオは看取っている。それゆえの反応だった。

「細かい事は気にするなって言ってんの」
「全然細かくねえって!」

「うっさい」
 げしっと尻を蹴ってレオリオを席へ蹴り飛ばす。

「その前に俺の用件を済まさせろ」

「うぐぅ……」
 納得は出来ていないようだがしぶしぶレオリオは席へと戻っていった。


「あと、ゴン。つーわけだから、キルアは、俺を殺してない」
「うん!」
 そう元気良くうなずき、席へと戻って行った。


「んで、会長」
 コホンと一呼吸置いて、彼が言う。

「なんじゃ?」

「キルアの不合格は覆らないとしても、俺の合格は、どうなるんだい?」

「……むっ?」

「失格者は一名。それに死んだら不合格ってのは聞いてない。だから俺は当然合格ですよね?」
 そう。失格者は一名。ゆえに例え死亡していたとしても、その人は実質的には合格者のはずだ。


「……そうじゃな。おぬしがあの時死んでいたとしても、合格者のわけじゃからな。じゃがちょいと待て。おぬしのハンター証も用意させる」


「オッケー。なら説明を続けてくださいな」

 お邪魔しました。といった感じで、彼は適当な席に着く。


「……」


 それでも部屋のほとんどの視線は、彼に集まったままだ。



「みんなー、前見て~。会長~。続き続き~」


「あ、ああ、そうじゃな。続きを」
 会長が司会進行役をうながす。
「あ、はい」

 彼に促され、説明会は再開された。
 彼のカードはこの説明会後渡される事となるが、説明はそのまま進む。



 こうして、9名の新しいハンターが誕生する事となったのだ!




───ネテロ会長───




 今、ワシの目の前に、受験番号72番の彼がおる。
 唯一遅れて合格したため、ハンター証の発行を待っておるからじゃ。


 なぜ、彼だけハンター証の発行が遅れたか。
 事を聞けば、多くのものはそんな事はありえないと言うじゃろう。


 一度死んだ人間が、蘇るなど。


 いかな『念』をもってしても、完全なる死からの復活など、ないのだから。


 だが、あの時彼は死んでいない。と考えれば、さまざまな可能性が思う浮かぶ。
 そう。『念』を使えば、死を偽造する事は可能だからだ。
 例えば、自身の分身を作り出し、身代わりにする。など。


 じゃが、問題は、それが起きる事を、いかにして知るか、そして、用意するか。

 彼が、あの99番(キルア)が301番(ギタラクル)の支配下にある事を理解していたという事は、今までの試験において見せた彼の観察、分析、洞察力を考えれば、十分に納得がいく。
 あのような事が起きる事を、彼は予測していたという事になる。


 では、なぜそのような事を、彼が行ったのか。


 じゃが、それもすぐ思い至る事があった。
 それは、裏ハンター試験の事。

 『念』を覚えるというもう一つの試験。

 万一、彼がそれを知っていたとすれば、彼の行動も納得がいく。
 彼は、ハンター試験中にそれも合格してしまおうと考えたのだろう。
 そして、それを実行した。

 死んだはずの彼が、生きて帰れば、それはもう『念』が使用された事は疑いようがない。

 すべての試験を効率よくクリアしてきた彼を考えれば、最終試験と一緒にそれの合格を考えても不思議はない。

 あの場を支配したのは、301番の男かと思ったが、その実は、その301番も、『彼』の掌の上で踊っていたという事にもなる。
 彼の『念』が使えるという事を証明するための演出に利用される形で。

 ……とはいえ、わざわざそんな事はせずとも、彼ならば裏試験などすぐ合格出来ように。
 それとも、まだ他に目的があっての行動だったのであろうか?


 それと、今だわからないのが、彼が『念』を見えるのか、見えないのかというところである。
 今回の一件で彼が『念』を使えるのは間違いない。じゃが、彼は『念』の見える、感じるそぶりをまったくといっていいほど見せない。

 これは、わざとなのか、それとも、実際に念が見えない、感じられないのか。


 それが、わからん。


 なので、直接聞く事にした。


「一個質問なんじゃが」
「はい?」

「おんし、念は見えるのか?」

「あー、全然見えませんよ。あと感じられません」

「……マジか?」
「マジです」

「マジでか?」
「マジですって」


 ……この言葉で、ワシはすべてを、理解する。


「ふぁっふぁっふぁ。そーかそーか。もう一個聞くが、裏試験の存在は知っとるかね?」

「あの念を覚えるってヤツですか?」

「うむ」
 やはり彼は知っている。じゃが、念が見えないと言う。
 そうか。この違和感。それがなんなのかよーくわかった。

 彼は、念を知っている。そして、すでに習得している。
 だが、念は見えないし、感じられない。

 それはきっと、そういう制約をかけたからであろう。
 しかしそれは、念能力者にとって命を賭けるにも等しい制約。目と耳。いや、五感すべてを捨て、戦いに望むに等しい狂った制限!!
 それを設けたのであれば、彼の念能力は、念能力者にもまったく悟らせない精度のレベルで、自身の分身を具現化するほどの力を持っておるのかもしれん。
 下手すると、あの程度では死なないのかもしれん。さらに、あの島で彼を発見出来なかった事も納得出来た。


 そして、彼がどうしてこれほどまで、観察力と分析力に優れているのかも、理解出来た。
 これほどイカれた念設定をするのだ。『念』に頼らず『念』を知るほどの洞察力を持っていなくてははじまらない。


 そして、彼がなぜ最終試験に裏試験の証明をしたのかも理解出来た。

 見えない感じられない。それは念の基礎が喪失していると言ってもいい。
 ここでやらねば、他の者では、決して裏試験の合格を貰えないと理解しているから。
 じゃから、あそこであれほどのインパクトを与え、証明しなくてはならなかったのじゃ。
 この試験中、彼を注視していた我々の前で。

 そこまで考えて、あの場で動いていたとは……
 ワシの目をもってしても、彼にヒントをもらえなければ、その底の一片しか見えてこない。
 ひょっとすると、あの最初に出会った時でさえ、彼の計算だったのではないか? と思えてくる。
 なんとも末恐ろしい男じゃ。


 ハンター試験と、試験している側にもかかわらず、こちらも試されているような錯覚に陥る。

 これは、将来なにを成すのか、楽しみじゃ。


「それでは、これが君のハンター証じゃ」
 ワシは、そのような事を思いながら、ハンター証を、彼に渡す。


「ありがとうございます」


 そして彼はそれを受け取り、部屋から出て行った。




「うむ。では、彼の望みどおり、その裏試験。ワシが合格にしておこう」

 老人は、彼の出て行った扉に向かって、そう呟いた。


 72番、裏試験合格!!





 なんだか彼の知らないうちに、彼の裏試験は終わっていた。
 しかも、ハンター協会会長のお墨付きという形で。

 だが、この会長の善意により彼は、念の師匠を探すのにとんでもなく苦労する事となるのだが、それはまた別の話。




──────




 ハンター証の発行も終わり、俺は部屋を出た。


 いよっしゃー!
 ハンター資格とったどー!


 これで、現実世界に帰るための第1段階はクリアした。帰らないにしても、この世界で暮らすためによい権力を一つ手に入れた。どっちにしても、いい事だー!


 しかし、こいつはすごいね。
 民間人が入国禁止の国の約90%と立ち入り禁止区域の75%まで入れて、しかも公共施設の95%は無料で使える。
 この世界で生活するにしても、便利極まりない。
 しかも『四次元ポケット』にしまっておけば盗難の心配もないときたもんだ。


 もう俺って勝ち組じゃね?
 ウハウハじゃね?


 さーて。とりあえずハンター試験も終わったし。グリードアイランドを手に入れるのにもまだまだ時間もあるし。
 ゴン達がクリアすればあそこも一度安全になるわけだから、それからプレイする予定とかでもいいよな。
 あの一件が終われば、ソフト自体も格段に安くなるだろうし(貧乏性)

 それにゴンのクリアに関わって帰るにしても、ゴン達がクリアするのは来年のハンター試験後(プレイ中にキルアが試験受けてた記憶がある)だから、まだまだ時間もある。
 てーことは、1年くらいはのんびりとして原作に関わらず、アリの発生だけ潰しておけば、安全というわけだ!


 よーしよーし。
 完璧だ。あとは安全に道具を使ってひっそり楽しく慎ましやかに生きていこう。
 安全にいくぞー。


「よぅ」
「あ、ハンゾー」

 部屋から出てきたところで、ハンゾーが声をかけてきた。

「本当に生きてんだな。一体どうやったんだ?」
「はっはっは。忍法変わり身の術ってヤツにしとけ」

「お前も忍者だったのか! こいつは一本とられたぜ」
「だろー」

「「ぷっ、はっはっは」」

「……最終試験前の三日間は意外に楽しかったぜ」
「ああ。俺もそう思う」


 ごつっとこぶしをぶつけ合った。
 詳しい事を聞いてこないのは、彼もまた忍として教えられない事を抱えているからだろう。


「オレは一度国に戻るぜ。お前ももし里に来る事があったら、ぜひ言ってくれ」
「ああ。その時は頼むよ」

「ところでよ」
 と、ひそひそ話をするように、顔を近づけてきた。
「ん?」
「ジョイステって、どこで手に入るか知ってるか?」
「あ、はまった?」
「ち、ちげーよ! 土産だ土産! 里にな!」

 ……はまったんだ。ゲームに。

「たしか……」
 ジョイステはちょっと古いゲームだった気がしたから、そういうのをあつかうゲームショップに行けばいいと教えてやった(ゲームショップの事とか色々聞かれたけど)

「助かったぜ!」
「いえいえ」

「……楽しかったぜ。じゃあな相棒!」
「ああ。またなハンゾー」


 といってもお前、これ以後原作での登場皆無だけどなー。なにしてんだろこの後。こいつ。


「さってと。他に友達らしいのはレオリオだけど、あっちはあっちで面倒だからなぁ」
 無視してこの世界観光がベストかなー。


「おお。こんなところにいたのか」
 っと、さっそくレオリオに見つかっちまったい。

「よし、そろったな」
「そうだな」

「……は?」
 クラピカとレオリオが、俺を挟んで言う。

「じゃ、出発だね!」
 俺の前にゴン。

「……えー、君達がどこへ行くかは知っているけど、なんで俺も?」

「君が必要だからだ」
 そう簡潔に答えたのは、クラピカだった。

「ぱーどん?」

「君が死んでいないという事を、キルアに見せるためだ。君が死んでいないという事は、殺しが失敗したと彼に思わせる事になる。これは、あのギタラクルの思惑を狂わせるために必要な事だ」

 クラピカ君。君ってそんなに仲間おも……いだね。
 家族に操られるとか、嫌いそうだね。

「彼を、暗殺業から足を洗わせるには、君を殺せなかったという事実が第一歩として必要だ。だから、来てほしい」

「別に口で伝えればいいじゃないか」
「本人がいるといないとじゃインパクトが違うだろ? 嘘じゃねぇって一発だし」
 これはレオリオ。

「……つーか、逆に今度こそとどめ刺されたらどうすんの?」
「それはない。君を殺すという事は、あの時された命令にまた従うという事だ。君を殺せばそれを認めてしまう事になる。だから、逆に殺せない。兄の命令を自分が受け入れている事を肯定してしまうからな。それは、友達を作れないという事も肯定してしまう」
「あー」
「だから、君に手出しはしないはずだ」
「そっかー。なら安心だ」

「ホントかよ?」
 だが背後でひそひそとレオリオの声。
「知らない。ただの方便だ」
「おいぃー!」
「やべっ、聞こえてたみてーだぞ!」

「……ただ、死んだものは本来、生きてかえっては来ないんだ。それを覆した君を見せれば、それが逆に少しは伝わるかもしれない」

「……あー」
 逆転療法ってヤツかな。

「だから、頼む」

 君がそういうこと言うの、反則だと思うんだ。
 一族郎党を殺された君が。
 しょうがない。迎えに行くのだけはおじさんつきあってあげよう。

「ありがとおニーさん!」
「いやいや。でも俺なにもしないからな。キルア君に顔を見せるだけだ」
 つーか俺、このハンター試験中キルアとマトモに話した覚えないし。

「それでいいぜ。ありがとよ親友」
 そうレオリオに言われて、肩を叩かれた。

「へいへい」

 しょうがねえ。ククルーマウンテン編が終わるまでは付き合ってやるか。


 こうして、本来はいない彼を加え、一路キルアの家。ククルーマウンテンへと向かうのであった。




──────




 そんな彼の背後を見ている人影が二つ。
 ギタラクルを名乗っていたイルミと、ヒソカの二人だった。

「面白い素材だ」
 ゴンと彼を見て、イルミが言う。


 特に、『彼』。念を使えば、死を偽装する事は可能だろう。
 だが、問題はそこではない。

 死を偽装したという事は、彼は、自分のやっていた事を完全に理解していた事になる。
 あの場を完全に掌握していたつもりだったが、その実は、彼のデモンストレーションに、自分も利用された事を意味している。

 それでいて、ヒソカの話では、彼はまだ、中途半端な念しか使えないのだというのだ。

 それが今から、キルアに会いに行く。
 イルミが彼を危険だと思うのも、無理はない。


 だが、そんなイルミを、ヒソカが見る。


「どちらも、ボクの獲物だ◆ 手を出したらただじゃおかないよ◆」
「わかっているよ。短い付き合いだが、ヒソカの好みは理解した」

「で、君はどうするんだ?」
「じっと待つよ。果実が美味しく実るまで……☆」
 ぞくぞくぞく~と、ヒソカはその時を待ち続ける。

「でも、もうチャンスがあるなら、彼は、つまみ食いしてみたいものだけどね……」
 にやりと、ヒソカは去り行く彼の背中を見た。


(早めにそうしてくれるとありがたいね)
 イルミはそう思った。



「……っ!?」
「どうした?」
「い、いや、なんか悪寒が」
「風邪かぁ? なんなら俺が見てやるぜ?」
「いや、そーいうもんじゃない気がする……」



 少なくとも彼の望む平穏は、ヒソカをどうにかしないと手に入らないと思う。




─あとがき─

 ハンター試験編終了。
 ハンゾーはグリードアイランド編で出てくる……かも。



[13869] 第07話 試しの門と6の扉
Name: YSK◆f56976e9 ID:672abedf
Date: 2011/04/28 21:34
初出2011/04/28 以後修正




 飛行船でしゅごーっと飛んで、やってきましたパドキア共和国(ゴン達にあわせているので道具での移動は考えてません)

 飛行船とか、空港とか、普通の街もあるんだよなー。
 やったら広い平原とかどう見ても未開の地とかもあるけどこの世界。


 それでも、普通に現実の現代日本と同じような生活もちゃんと出来る。
 このままそういうところで永住してもいいよなー。とか思わないでもない。


 まあ、それは今は置いといて。


 さらに電車で観光バス。とうとう到着ゾルディック家の門にございます。



 ……でけー。
 つーかあの門あんなでかい意味あるのか? 趣味か? 趣味なのか? だとしたらいい趣味してるなぁ。


 そんな事を思っていると、ゴンがガイドの人に中に入れないの? と聞き、バスの奥から現れた賞金稼ぎが守衛から鍵を奪って門から入って骨になって出てきました。

 ミケさん服と骨だけ残して食べるなんて、器用なんすね。



「なるほどねー。キルア坊ちゃんのお友達ですかい」

 
 ゴン達がキルアを連れ戻しに来た事を守衛に伝え、お茶をもらう事になった。


 あー。なんで他人の家で飲むお茶は美味しいんだろう……


 そうやってのんびりお茶を飲んでいると、クラピカが本当の門には鍵がかかっていないという結論に至りました。


 んで、レオリオが必死にあけようとするが、まったく動かず。
 つーか片方2トン合計4トンでそれから倍々ゲームで7の扉まであるとかすごい家だよな~。
 1が4トンで2が8トンで3が16トンの4が32で5が64の6が128で最後の7が256トンだぜ。256トン。
 しかもあの銀髪坊やのキルア君は3の扉開けてお帰りになられたとか。もうね。


 その後守衛さんのデモンストレーションで門を開け、ゴンが「なら侵入者でいいよ」とか言い出した。


 まあ、その後のやり取りは俺は見ているだけ。
 守衛さんが執事のところへ電話したり、ゴンが強引に入ろうとしたりでてんやわんわ。


 その間俺はずっとお茶と茶菓子をつまんでました。
 ぶっちゃけマンガで見たのとまったく同じ展開だったからね!


「おい、お前もなにか言ってやれよ!」
 レオリオが俺に救援を求めてくる。

「しゃーないな。ゴンー。そうやって入ると守衛さんに迷惑がかかるよー。それでもいいのかー?」

「……え」
 門の上に釣り針を引っかけのぼろうとしていたゴンの行動が、俺の言葉にとまる。

「お坊ちゃんのお友達をこのままいかせて、むざむざ見殺しにしたら、もうあわせる顔なんてないだろ?」
「……そうですね。私も死んだも同然でしょう」
 守衛さんが、俺の言葉にうなずく。

「わかったよ。ごめん。おじさんの事全然考えてなかったね」


 そして、正面から入ってミケを見てはどうか? となった。


「それでは、一度正面からミケを見てください」
 守衛が、彼等の資質に気づいて、そう促した。


 守衛さんが門を開け、みんなで入る。


 ミケよってきた。
 ……ミケさんマジで怖いっすね。
 こういう訓練されたケモノってのは。

 でも獣だから、『桃太郎印のきびだんご』効くのかな。与えようとしても多分食べないんだろうけど。



 そして使用人達の使う家に通され、彼等はその家で特訓する事となりました。
 うん。俺がいても別に変な展開にはならないね。

 でもこのままだと、俺もこの家に寝泊りして、特訓しなきゃならないわけ?
 20キロのスリッパとか湯飲みとかで。


 そいつはちょっと遠慮してぇなあ。


「つまり、あの門を開けられるまでここにいるってわけかな?」
 一応確認のため、聞く。

「ああ」
「そうだね」
「試されるのは不本意だが、他に方法がないからな」
 三人が答える。


「んー、なら、君等が扉を開けられるようになるまで、俺、この周辺観光してきてもいい?」

「あん? それじゃお前扉開けられねーじゃねえか」
 20キロの湯飲みを必死に持ち上げようとしていたレオリオが俺に言う。

 別に誰かが開けたところで入ればいいじゃないか。
 守衛いさんも三人で開ければOKとか言ってたけど、君等は一人で開けるのにこだわるんだろうなー。

 だから。


「はっはっは。残念だったなレオリオ。その逆だ」


「逆?」
「……つまり、開けられるという事か?」
 察しのよいクラピカがレオリオの変わりに答える。

「たぶん」

「マジかー!?」
「本当おニーさん!?」
 ゴンとレオリオびっくり。

「だとしたら、確かにわざわざ修行する必要はないな」
 疑わしそうに言うのはクラピカ。

「おいおい。俺に勝てないようなヤツがこの扉開けられるわけがねーだろ」
 ふふんとレオリオが勝ち誇ったように言う。

「まー、やるだけやってみようか」

 そんなわけで、一度門の方へ戻り、内側から俺が『試しの門』に挑戦する事となりました。
 出来るモンならこのまま開けて出て行ってみろってやつですね。


 当然、素のままじゃ無理なので、道具を使います。


『スーパー手袋』&『ウルトラリング』
 どちらも怪力を発揮できるようになる道具である。
 一方だけで子供でも車をらくらくと持ち上げられるが、片方2トンだと心もとないので、同時使用。

 これで1の扉くらいは開けられるだろ!


「それじゃ、いよっと!」

 軽く押してみる。すると扉はごごごっと音を立てて、動いた。

「軽い軽い」


「お、おい……」
「マジかよ……」
「わ、わたしゃはじめてみましたよ……」
 クラピーレオリオ守衛さんが驚きの声をあげる。

「ん? どうしたのみんな?」

「どうしたのじゃねえよ! お前、どこまで開けば気が済むんだ!!」


「え?」

 レオリオにそう言われ、俺は上を見た。

 すると、門は6のところまで反応し、開いていた。


「……わ~お」


 さすがっす。道具さんまじパネェっす。二個同時につけると足し算じゃなくて掛け算とかになったりすんの?
 それともこの世界の俺の基礎パワーがすげーって事なの?
 まあ、これ以上力入れるのもアレなので、いったん扉を閉める事にする。


 ごごごごっととんでもなく重い音を立て、6まで開いた扉が閉まるのだった。


「「「……」」」
「すごいねおニーさん!」
 守衛の人とレオリオとクラピカが呆然とし、ゴンがはしゃいでいる。


「え、えーっと、というわけさ!」
 戻ったところでずびしっと親指立ててみた。


「なんで開けたお前も驚いてんだよ!」
 レオリオが復活してつっこみいれてきた。

「い、いや、さすがにあんなに開くとは思ってなかったんよ」

「……そりゃ嫌味か? 嫌味か?」
「いふぁいいふぁい」
 ほっぺを引っ張らないでくださいレオリオさん。


「だが、よくわかった」
「ええ。こりゃ必要ありませんわ」
 クラピカと守衛が納得する。


「つーわけだから、開けられるようになったら連絡くださいな。俺そのあたりを観光してくるから。それとも、俺の開けた扉から入るかい?」

「んな情けない事誰がするか! 三日で呼び戻してやる!」

「いや、それは多分無理だよ。最低2週間はかかるっしょ」

「ぜってー三日だー!」

「つーか、ゴンの腕三日でなおらねーだろ」

「オレが開けるからいいんだよ!」


 当然無理だろうけど。


「つーわけだ。がんばれよー」
「うん。おニーさんもね!」
「けっ」

「無理につき合わせて悪かった。我々が開けられるようになったら、また来てくれると助かる」
 クラピーが俺に告げる。

「あいよー。連絡くれればすぐ行くからさー」



 こうして俺は、一度主人公パーティーから離れ、一人観光に出る事となったのでした。

 やったぜついにフリーダーム!


 平和にハンター世界観光しーましょ。




───クラピカ───




 ごごごごごご……


 ゆっくりと、開かれた扉が閉まってゆく。
 『6』まで開かれた扉が……


「ぐわー! なんなんだあいつはー! おいおっさん! すぐにアレ開けられるように特訓だ!」
「はいはい。それだけ元気があれば一ヶ月といわず三週間くらいでいけそうですね」

「三日だー! ぜってー三日で開けてやる! 7までな!」

「いや、さすがにそれは無理だろうレオリオ……」

「あいつにだけはぜってーまけねー!」

 レオリオが出来もしない事を言っている。
 まあ、彼に対抗心を燃やす気持ちはよくわかる。

 彼は一見すると、お前と同じくらい普通の人間に見えるからな。


「でも、本当にすごいねー」
 ゴンが素直に感心する。

「ああ。本当にな」


 ……すごいだけでは、すまされないが。

 彼には、驚かされてばかりだ。

 彼は、観察、分析力に優れたタイプだと思っていた。
 それによって、ギタラクルの行動を予測し、あの時なんらかの思惑があって、死を偽装していたのだと思っていた。
 それにより、キルアを失格にさせ、自分が確実に合格する。

 戦闘に自信がない彼ならば、この可能性はありえると思っていた。
 だが、それは今回の事で誤りだったと思い知らされた。

 彼は確かに、観察、分析力に優れている。しかし、決して戦闘力に自信がないわけではないのだ。
 その洞察力を使い、必要のない戦闘をしないだけだったのだ。

 パワーイコール強さとは必ずしもならないが、彼は、そのパワーを使いこなす頭脳もある。
 決して弱いはずもない。

 だからといって、腑に落ちないところが多々ある。

 戦闘も可能ならば、なぜ、あの場で死を偽装したのか。
 なぜそのような事をする必要があったのか。
 これは、ハンター協会側へなにかのメッセージがあったのだと私は思う。
 私には気づけない、なにかのメッセージが。


 そして、あの若さで、あの扉を6まで開けられるという事。


 彼は、私とほぼ同じ年齢。
 だが、彼の動きは、訓練をつんだそれではない。

 彼の体格や、筋肉量を考えても、1の扉を開く事がせいぜい……

 つまり彼には、我々の知らない『なにか』があるという事だ。
 自分には足りない、なにかが……


 ぼんやりとクラピカは、それに気づきはじめていた。

 そして、もうじき知る。この世界に、『念』という概念があるという事を。


 もっとも、その概念から彼がさらに外れているとは、『念』を知った後でも、わからないのだが……




 彼等の、門を開くための修行が、はじまる。




─あとがき─

 ゴン達が扉を開けられるようになるまで自由行動です。
 クラピカだけぼんやり念の存在に気づきましたけど、あんまり意味がありませんね。



[13869] 第08話 自由行動と新しい出会い
Name: YSK◆f56976e9 ID:672abedf
Date: 2011/04/29 21:23
初出2011/04/29 以後修正




 ゴン達がゾルディック家の使用人の家で必死に扉を開けるための修行を続けているその間。

 俺はハンター世界を観光する事となった。

 しっかし、一個2トンの扉とかよく開けられるよな~。
 やっぱこの世界、人間の基本性能が違うんじゃねーかな。


 まいっか。おらにはかんけーねーこったー。
 あとは彼等が扉を開けて、キルア君と顔をあわせてさよーならーさー。


 扉開けられるまで自由行動さー。


 そんなわけで、ハンター世界観光中です。
 ハンター権利の公共機関無料ってすげー。これだけでも取ったかいがあったというもの。

 おかげでどんどん移動する意欲がわいてきます。

 しっかししこの世界すごい。
 ヨーロッパのような古い町並みもあれば、アホみたいにハイテクなビルもある。
 かと思えば、あまりに広大な大自然とか。

 いや、現実の世界でもあるといえばあるけど。あまりにこの世界はそれがごった煮のごとく、混在している。
 面白いといえば面白いけど、基本は中身日本人なので、日本くらいの安全安心な場所がいいなぁ。

 ……この世界のジャポンてどんなとこなんだろ。唯一元の世界と同じ形の島国。
 ハンゾー見る限りじゃ中途半端に江戸風味が残ってそうなんだけど。『銀魂』っぽい国そう(勝手な想像)


 まー、念使いやマフィアと出会わない限りは基本的は平和だからいっかー。
 あとは住む所を探して、グリードアイランドをどうするか考えるべかー。

 ちなみに金は『フエール銀行』があるので金にはまったく不自由しない。
 なにせあれ、10円を一週間預けておくだけで9千万まで増えているという打ち出の小槌。9月1日のオークションまでには1兆どころの話ではない金が俺の手元に入ってくる。


 ……これで安全な生活が保障されたらこっちの世界に永住するのも悪くないよな~。悩むよな~。ホント悩むよ。



 そんな事を考えていたら、突然腕を捕まれた。
 そして腕を絡められる。いわゆるカップルつなぎ!?

「しっ、お願いこのままで。追われているの」
 と、小さい声で俺に言ってくる女。

 ……どっかで見たことあるような……
 い、いや、きっと気のせい。うん。気のせい。

「いや、俺期待に添えられる活躍は……」

「見つかったら私はともかく、あなたが大変な目にあうわ。もう無理」
「ちょっ!」

 問答無用で協力しなきゃ駄目って事じゃねーかー!
 おいぃぃぃぃ! 一方的にまきこまれかよー!

「さ、行きましょ」

 俺の返答なんて聞かず、その女の子は俺をずりずり引きずって、人ごみの中を歩いていった。
 しばらく歩いて、この状況を打破しようと、さっさと逃げる事に協力する事にする。

「んで、お嬢さん。あ、名前はいい。聞かない教えないで。厄介ごとはいりません。とりあえず、どうしたいのかを教えてくださいませ」

「そう? 話が早くて助かるわ。私ね、行きたい場所があるの」

「ほうほう。どこにですか? ちなみに俺観光客だからこのあたりの事まったく知らないよ」
「それは私も。だから一緒に観光していて不自然じゃない人をこうしたの☆」

 ……あー。そういう理由で俺が選ばれたんですか。

「おい! いたか!?」
「いえ!」

 黒服が人ごみを掻き分けてやってくる。

「あ、やば」
 女の子がそいつらから顔をそむける。

 おいおい。
 ヤバイ関係マックス完全に893さんじゃないですか。
 明らかにマフィーアじゃないですか。

 いいえ、ケフィアです。くらいにならないの?
 なりませんよね。


 見つかっても困るので、一度人ごみをはずれ、路地に入る。

「ちょっと、こんなとこ入ったら逆に……」

「みつからねーから安心しろよ」

 こっそりと『透明マント』を背中側に羽織り、追っ手の人達からは透明になって見えないようにしてますから。
 とりあえず、場所を移動。


「それで、もう一度聞くけど、どこに行きたいわけ?」

「うん。私ね。この近くでやってる臓物ランドを見に行きたいの!」

「……」

 臓物とは、また素敵な場所で。
 なんかオラ、嫌な予感でドキドキしてきたぞ!


「OKOK。それじゃ連れて行ってさしあげましょうお嬢様。行ったら素直に帰るんですよ」
「うん!」

 こうして俺は、そのお嬢さんと臓物ランドへやってきた。


 そこまで来る途中、移動の際支払いに彼女がキャッシュカードを使おうとしてので、それはやめさせた。

「まってー!」

「なんで?」

 カードなんて使ったら一発で居場所ばれるやーん。


「カード使ったら居場所ばれるでしょう」
 少なくとも、俺のいた世界ではカードは使用履歴が残る。
 こっちの世界でもそう変わらないはずだ。
 なら使用された事を報告されたらそれだけで居場所がバレる。

 というかさすがお嬢様。現金の存在なんて知らなかったぜ。
 欲しいと願った物はパパがくれるんだって。
 どんだけ箱入りやねん(服は逃げ出す時に目立つものじゃないのに着替えているようだが)

「そっか。だからいつもすぐ……」

 ……変な知恵はあるけど常識とかはないのね! さすがお嬢様。きっと自販機もカード使えるとか思ってんだぜ。


 仕方がないので支払いは全部俺がする事に。


 臓物ランドには無事到着。


「きゃー! この目かわいー!」
「……眼球だけっすよ」
「このくりくりっとしたのがいいんじゃない」
「そーなんすか」

「わぁ、この小腸すてき……」
「わぁ、俺にはさっぱり」
「なら説明してあげる。この部分がね……」
「Oh」
 延々どこがいいのか説明させられました。理解出来ません。

「臓物コースターのろ! 臓物!」
「小腸のレールとか、センスありすぎる……」
 そしてコースターは消化物。センスありすぎる。

「お土産! これかってこれ!」
「はいはい。もうなんでも買っちゃいますよ~」
「じゃあ、これとこれとこれ!」
「へいへい」

 つーか、意外に普通のかわいいものとかにも興味は持つのなこのお嬢さん。
 そこに変な趣味がくっついているだけで。


「ねえねえ。こっちの眼球とこっちの耳、どっちがいいとおもう?」
「どっちも買ったげますよ」
「わーい!」


 こうして夕方まで臓物ランドを満喫したのだった。


「意外と臓物コースターとかの乗り物が楽しかったのがくやしい……」
 遊園地は嫌いじゃないんだよ俺は!

 白血球カーレースとか意外に面白かったし。


「あー、楽しかった」
「そいつはなによりです。荷物は宅配便で全部送れるようだから安心してくださいね」

「うん!」


 ちなみに、宛名とかはノーチェック。見たら怖い事になりそうだから。そのあたりの記入はお嬢様におまかせしました。
 ここから出たらこんなお嬢様の事なんてすっきりさっぱり記憶から忘れるからだ!


「それじゃお嬢様。あとは御自分でお迎えをおよびください」

「そっか。ありがとね。わざわざ」

「いえいえ。かわいい女の子と遊園地デートなんて滅多にないのでいい思い出とさせてもらいますよ」

「またまたー」
「はっはっは」

「それじゃ、またね!」

「ああ。また」
 もう2度と会う事はないと思うけどなー。絶対。むしろ会いたくない!



 こうして、俺とその女の子は別れた。
 女の子の走る先には黒服のおっさん達。



 そして、俺は即効路地に入って『どこでもドア』を使用! こんな場所オサラバだ!!




───ライト───




「なんだと!? 見失った!!?」
 私は思わず、机を叩いた。

「なにがなんでも確保しろと言っただろう!」

「で、ですが……」

「言い訳などは聞かん。私がどれほど危険な橋を渡って娘を一日自由にさせた理由がわかっているのだろうな?」

「ひぃ!」
 電話の向こうの男が、悲鳴を上げる。

「くそっ!」
 私は乱暴に受話器を叩きつける。

「……いかがいたしましょう?」

「ダルツォルネか」
 娘の警護リーダー。銃弾10発にも平然と耐える念能力者が言う。

「もちろん、探し出す。でないと、この先終わりだ……」

 そう。予言どおりに、終わってしまう……


 娘が気まぐれに、私に占いをした。
 そしてその占いには、私の未来を左右する存在が予言されていた。



 あなたの手から姫が逃げ、一人の騎士と出会うだろう。
 あなたはその騎士を軽んじてはならない。彼は最後の騎士。姫を守れる唯一の騎士。
 夜長の月の話をしよう。
 彼なくして夜長の悲劇は避けられない。あなたの宝も守れない。



 それを見た瞬間、私は凍りついた。
 これはつまり、その者がいないと、私はなんらかの悲劇から逃れられないのだ。
 しかも、三行目。これは、珍しい予言。
 今週だけではなく、さらにそれ以後にも影響をあたえるという予言。
 夜長の月とは、どこかの国の暦で9月の事を指すという。

 つまり、9月の悲劇を避けるために、その騎士が必ず必要という事なのだ。
 この予言は、その出会いを予言したもの!

 悲劇を避けるために、私には、その騎士が必ず必要なのだ!


 そして、今日、その予言どおりの事が起きた。

 娘が臓物ランドへ行きたいと単身逃げ出し、そして、一人の若者と出会った。
 娘と分かれ次第、丁重に客分として迎え入れるつもりが、それがかなわなかった……

 路地に入ったところで、一瞬にしてその姿が消えたというのだ!
 そう。一度、臓物ランドへ行く際、暗殺者から娘の姿をくらました時と同じように(あの時黒服が探していたのは、娘ではなくその命を狙った暗殺者だったのだ)


「……彼は、念能力者かもしれません」

「そんな事はどうでもいい。必ず探し出せ。ただし、丁重にな。占いの予言は絶対だ。わかるな」

「はい。軽んじてはいけない。彼が自分の意思で来なくては意味がない。という事ですね」

「そうだ。客分として迎える。いいか。絶対だ。絶対に連れて来い」

「了解しました。ボス」

「ああ。我がノストラードファミリーの未来がかかっているのだ。絶対に見つけ、私の元へと連れてくるのだ」
 彼しか、その夜長の悲劇は避けられないのだ。私の宝。すなわち、ネオンの占いを、守れないのだ!



 運命の歯車は、ゆっくりとまわりはじめているのかもしれない。



─あとがき─

 はい。ばっちりなんかのフラグがたちました。どーぞー。



[13869] 第09話 キルア合流と彼等の戦いはこれからだ!
Name: YSK◆f56976e9 ID:672abedf
Date: 2011/04/29 21:24
初出2011/04/29 以後修正




「……ホントに、生きてんだな、あんた」


 唐突ですが、今キルア君と対面中です。
 すでにゾルディック家から出て、街中で。

 門を開けられるようになったからこっち来いと連絡があったから戻ってきたんだけど、到着したころには執事室の一件も終わり、みんなが出てくるところに到着という有様でした。

 いや、のんびり電車とかを使って帰ってきたからなんだけどね。
 道具使えば間に合ったけど、別に俺が行ってコインゲームに参加する必要性も感じなかったのでのんびり到着とういわけなのさ。


「生きてるよー。だからもう一回殺すとかはやめてなー」

「やらないよ」

「ならいいや」

 ほっと一息。
 殺されたら本当に死んじゃうからな。


「これで、全員そろったな」


 そして、これからどうする? という話になり、ゴンがヒソカにプレートを返すとか、9月にヨークシンでクラピカと会う事になっているとか。
 レオリオはこれから受験だとか。今後の事を。


「お前はどうするんだ?」
 レオリオが俺に聞いてくる。

「俺? 俺はこのまま適当に観光して、安住できそうな場所を探すかなー」

「お前、今までも観光してたじゃねーかよ」

「むしろ世界一周したいくらいなわけなんだが」
 あっはっはと笑ってみる。

「じゃあ、これといってする事はないんだ」

 そう言ってきたのは、キルア。

「まあ、そうなるかな?」
「ふーん」


 とりあえず、ここで一度解散し、9月1日にヨークシンシティで会うという事を約束した。

 ……あれ? なんか、これ、俺もふくまれてる雰囲気じゃね?
 いつの間にか俺も数に入ってね?


 まあ。ゴン側なら競売資金を増やすのがメインだから、危険はないからいいかなー。
 レオリオと一緒にいれば安全だし。うまくすればゴン達と一緒にグリードアイランドのお宝もらえるかもだし!


「9月1日ヨークシンシティで!」



 そう4人が言い、俺達は別れの時を迎え──



「んじゃ、俺はこのくらいで」

「まった」
「ぐえ」

 キルアに上着のすそをつかまれた。



 ──なかった。



 今度は君かい。


「なにかな少年?」

「あんたどうせ暇なんだろ? せっかくだからオレ達と一緒にいかないか?」
「あ、そうだね! おニーさんも一緒なら楽しいよ!」
 ゴンも同意しやがった。

「なに言ってんだよゴン。特訓すんだろ?」
「え? 遊ばないの?」
「お前なー」
 その後ゴンにこのままでヒソカ殴れると思ってんのか? とか、キルアがゴンとヒソカの実力がどれくらい離れているかを説明する。


「ここ、かなりおまけでな」
 ヒソカと書かれた位置からかなり離れた場所にゴンと書く。
「……」
 ちょっとむかつくというような顔をするゴン。


 その後キルアとの差を聞き……


「じゃあ、おニーさんは?」
 と、純粋な好奇心で聞いてきやがった。

「……」
 そして、キルアも俺を見る。


「んー。んじゃ、少年はどう思う?」

 なので、キルアに聞いてみた。


「……」
 無言で、ゴンのはるか後方に印をつけた。

「うん。俺もそう思う」

「えー。おニーさんオレより弱いの!?」
「おい、おにーさん傷ついたぞ」

「あ、ごめん。でも、おニーさん6の扉まで開けたじゃん」

「!?」
 今度は、キルアの表情が変わる。

「はっはっは。アレを喧嘩の実力だと思ったら、アームレスリングのチャンピオンがボクシングでもチャンピオンという事になるぞー」

「あ、そっか」
 ゴン君素直だから御しやすくていいなぁ。


「わかった。それじゃいこうぜ」
 キルアが俺を引っ張る。

「おいおい」
「キルアどこ行くの?」

「ゴン、金あるか?」
「実はそろそろヤバイ」

「ならそこで、一石二鳥の場所がある。天空闘技場」

「おーい。お兄さんの話も聞いてー」

「というわけでおニーさん。金、出して」
 金ズル見つけたというような感じで、キルアが俺に笑顔を向けてきた。

「そーいう事かお前ー!」

「だってハンター証使えば安くあがるんだろ。ゴンはつかわねーみたいだし」
「うん!」

「オレ等ガキだからさ。あんたみたいのがいると助かるんだよ」

「助かるとかそれ以前に、思いっきり引っ張って強制連行しているじゃねーかよ!」

「いいからいいから。どうせ暇なんだろ? 少しくらい付き合ってくれよ」

「オレもお願い! おニーさん!」


 ダブル子供が俺に情を訴える。
 だがしかし、天空闘技場は鬼門だ。
 なにせヒソカが出てくる。
 危険すぎ……


 ……あ、逆転の発想。


 ゴンと一緒にいれば、ヒソカの目はゴンに向いて、成長する気のない俺は相対的に外れるんじゃないか? という希望。
 しかも、そうしていれば、ゴンと仲良くなって、グリードアイランドクリア時の特典ゲットにつながる可能性も高まる。
 さらにさらに、ウイングという念の師匠までくっついてくる。
 これはなかなか悪い選択ではない。


 だが、当然そうならない可能性も……


 うぐぐ、どうしてこう、メリットとデメリットが微妙に拮抗してやがるんだ……


 いっそ、現実帰還は諦めて、どこかに引きこもろうかしら……



「天空闘技場行き三枚。支払いはこの人が」

「ってお前ー!!」

「……あと、逃がさないよ」

 ぼそっと、俺の耳元でキルアが呟いた。


 ……なんか一番俺と縁のなさそうだったお子様に目をつけられたー!!



『次はー、天空闘技場~。天空闘技場~』




───キルア───




 ……オレが殺し損ねたって男に会った。


 そいつは、どう見ても、どこにでもいる、普通の男だった。
 試験中、何度か顔はあわせている。でも、興味を引かれるほどのヤツじゃなかった。

 あの、リオ……レオリオと同じくらいの認識。
 一緒にいるから一緒にいる。そんなレベルだった。


 どう考えても、殺し損ねるなんて男じゃない。
 でも、殺し損ねた。


 あの状況で、死なないなんてありえない。
 むしろ、死から蘇ったのだと聞いた。


 クラピカが、あの場で彼は、合格するために、場をすべて利用したのだろうと言っていた。
 つまり、兄貴も、あいつに利用されたという事になる……


 兄貴を手玉に取る男。


 それが加わった時。オレははじめて、あの男に興味を持った。


 兄貴のあの『秘密』。
 それを、この男も知っているんじゃないかと思ったから。


 それに、こいつの強さ、本当はまったく読めない。
 見たままでいいのなら、レオリオより弱い。

 それこそ、一般人にしか見えない。

 つまり、そこからフェイク。
 この男には、なにか秘密がある。


 それを知るために、オレは、強引に引っ張ってきた。

 この男の、本当の強さを調べるために。
 兄貴の『秘密』に近づくために。その『秘密』を、知るために。


 ……だが、強いやつほど、強さを隠すのがうまい。とは言ったもんだね。


「……殺しはしないけど、あんたには興味があるよ」

 ぼそりと、天空闘技場へ向かう船の中、オレはつぶやいた。



─あとがき─

 ちなみに『秘密』とは念の事です。



[13869] 第10話 打ち切りなので一気にたたむ
Name: YSK◆f56976e9 ID:672abedf
Date: 2011/05/01 21:29
初出2011/04/30 以後修正




 やあみんな。最初に言わせて欲しい。

 この物語は、ここで打ち切りなんだ。

 色々期待してくれた人、本当にすまない。
 だが、1年以上いじくった結果、まったく完結出来そうにないのがわかったんだ。

 なので、以下は思いついたネタなどをつめたプロットに近い形をまとめたもので、考えたエンディングまで持っていこうと思う。

 無責任な話の結末となってしまい本当にすまない。


 ちゃんとした物語でなくてもいい。という人だけ、続きを読んでくれ。





『天空闘技場編』

 天空闘技場へとやってきたゴンキルア主人公ご一行。
 『彼』の秘密を知ろうとしていたキルアは、そこで出会ったズシを縁に、『念』の存在を知り、『彼』と兄の秘密もそこにあると考え、納得する。
 『念』の存在を知る事により、彼の秘密を探る事はいったん保留となった。

 キルア達がウイングに念を教わったさい、彼もウイングへ弟子入りしようとする。

 しかし……
「あ、そうそう。彼等がいたから先ほどは言えませんでしたが、裏試験、合格おめでとうございます」
 と、祝福されてしまうのだった。
「へ?」

 そう。ウイングは会長ネテロの弟子。それゆえネテロより彼の事を聞いており、彼は『念』が使えると思っているので、弟子入りは断られてしまうのだ。
「聞いていますよ。あの会長をうならせるほどだそうですね。そんなあなたが新たに師を探すとは、すばらしい向上心です。ですが、私ではあなたにとって完全に役不足。むしろ私が教えをこいたいものですよ」


 俺、裏試験、合格!
 ひゃっはー!
 気分は『orz』こんな感じだけど……


 ちなみに、ゴンとキルアが200階に到達したさいヒソカが登場し、二人を念の威圧で押し戻すが、彼はそれにまったく動じない。
 念を感じないあの一般人の受付の人と同じく、彼もまた念を感じ取れない一般人だからだ(ヒソカが彼に念を向けていないだけかもしれないが)
 だが、ゴンとキルアは、それを見て侮れない人だと思ってしまう。


─キルア─

 『念』
 それが、兄貴の『秘密』の名前。そして、あいつの『秘密』の一端。
 ヒソカに念を向けられた時、あいつは涼しい顔をしていた。それが、俺とあいつの力の差。
 見誤る。見通せないほどの、差……
 そして、兄貴との……

 しかし、差がわかったという事はそれもまた一つの前進。
 ここから、その差をつめてゆけばよいのだ。


 そして彼等は、ヒソカの洗礼を受け流し、200階へと到達する。



 その後、キルアも彼を拘束しなくなり、200階到達で金、宿の問題も解消され、目的もなくなったため、天空闘技場をあとにしようとする。
 しかし、そこにヒソカ登場。

 なんと次のヒソカの試合に、ヒソカに化けて出て相手を倒して欲しいと言われてしまう。

「せっかくだ。ボクの代わりに、ボクの試合に出ておくれよ◆」
「……ぱーどん?」
「だから、ボクに変装して、カストロと戦って欲しいということさ☆」
「なんで?」
「ボクが君の戦いを見てみたいから」
「自分で戦うんでなく?」
「たまにはこういうのも面白いと思って◇ それに、ボク、もう彼に興味ないし」
「なんでよ」
「だって、彼期待はずれだからね★ 同じ事が出来るとすれば、君の方が上じゃないか。『ダブル』」
「……おいおい。この段階でもう気づいてたんかい」
「実は確証なんてなかったけど、君の言葉で確信したよ☆」
「……」
 こいつぅ。

「当然タダでなんては言わないよ。彼に勝ったら、一つ貸しを君にあげる。なにか有事の際はボクが君の願いを一つかなえてあげるよ」

 ……それは、俺に近寄るなとか、か?

「当然、一度見逃すもアリさ◇」

「拒否すれば?」
「ここで、君とヤる。ボクはむしろ全然オッケー」
「このやろー」
「さ、どうする?☆」

「……ちなみに、試合に負けたり、不戦敗にしたら?」
「ここで遊べなくなるからね。今度は、君で遊ぶ事にするよ」
「……」

 色々計算した結果、この後その貸し借りでグリードアイランドや、自身の延命が図れると考え、彼はヒソカに化け、カストロと戦う事となる。

「ところで、お前どーやって俺をお前に仕立て上げる気だったの?」
「ん? 君が自分でやるんじゃないのかい?」
「お前の力で顔を変えるとかしてくれもしないの!?」

 カストロとの試合は、彼が道具を使用してボッコボコにする。
 しかし、これにより、カストロ生存。生存!!
 結果を知る皆から見れば、それはカストロにとって幸運であり、彼にとっては不幸であった……


 カストロに勝利した事により、ヒソカに貸しを一つ作り、連絡先も手に入れる。
 あとこのヒソカに化けている際、マチと顔を合わせても面白いと夢見てみるが、今はいい。


 そしてこの戦いを見たヒソカは、彼がもう熟れごろである事を確信する。


 この後ゴンVSヒソカ対戦のため、先のカストロ戦をビデオで研究しようとするゴン一行だが……

「あ、それ見ても参考にならんよ。そこにいるの、俺だから」

 という事で、まったく無駄になってキルアに金返せー! と怒られる。
 だが、それを見たウイングは、ヒソカのフリをしてあのカストロを圧倒する彼に、彼の恐ろしさを再認識するのだった。
「会長があれほど言うわけです……」


 そしてゴンVSヒソカ戦が終わり、彼等はヨークシンで再会する事を約束し、再び別れるのであった。


 天空闘技場編完!



『新しい頭痛の種編』

 天空闘技場編も終わり、ついに自由となった彼。
 しかし、ふらふら歩いていると、幻影旅団の団長とさらに他4人の団員とばったり出会ってしまう。
 原因は事件か事故かはたまた自然災害か。そんな中で、偶然一緒になった一団の中に、旅団がいると気づいてしまった彼は、団長以下4名に目をつけられてしまうのだった。


 5対1になりかけたところで、道具をフル動員してなんとかその場から逃げる事には成功するが、その『力』が旅団に知れたのは確かである。

 
 オーノーと頭を抱えていると、今度はクラピカから連絡が入る。
 こりゃちょうどいいと相談に向かうと、そこで待っているのはなんとライト・ノストラード。


 ……あー、やっぱりあの時のお嬢ちゃん。あの子だったのね。ネオン・ノストラードだったのね。


 やべえと思っていると、客人としてファミリーに来てくれないかと言われる。
 しかし、断れる雰囲気は最初からない。

 死亡フラグがさらに突き刺さった事を感じつつ、彼はイエスと承諾するのだった。


 ちなみに、彼はある意味クラピカに売られた形である。
 クラピカがノストラードファミリーに認められるため手渡された人体収集リスト。そこに、『彼』の情報という、人体収集以外のモノが加わっていたからだ。
 しかもそれは、彼の一部などではなく、無傷で丁重にとの事。
 傷一つつけてはならないという、明らかに、異例な指令。

 それゆえクラピカは、それは重要な情報であり、中枢へ取り入るには有効と考え、彼に連絡をとり、彼はやってくる。
 そしてクラピカは、『彼』の護衛として、ネオンの護衛を飛び越え、一気にノストラードファミリーの中枢へと近づく事となる。


 ちなみに彼の方は、食客兼ネオンの遊び相手。
 一応ネオンの行動(わがまま)をパパに報告する義務はあるが。


 彼の護衛となり、ノストラードファミリーに属す事となったクラピカは思う。
 彼はきっと、自分の考えに気づいていてここに飛びこんできたのだと。
 あれほどの観察力と分析力があるのだ。気づいていないはずがない。
 だが、それを見通して、それでも自分につきあってくれているのだろうと。
 現に、客として迎えられた彼は、自分を護衛として指名し、さらにファミリーの中枢へと招いてくれたのだから……


 実際は旅団の事とか、今後の事とか、自分の保身ばかりなのだが、残念ながらそうはとられなかった。


 その後ノストラードファミリー内で、ネオンに振り回され数日の家出に付き合ったり、犬使いの念使いがネオンおつきの侍女とお付き合いするきっかけを作ってあげて仲良くなったりとかするような気もする。
 エリナ(侍女)→恋→スクワラ(犬使い)という相談を受けたりして、恋バナが苦手そうなクラピカをおちょくりながらラブレター大作戦とかくだらない事をやってたら実は両思いだったとかいうオチだったりするんだよ。


 そんなこんなで、ヨークシンへ。



『ヨークシン編』

 9月1日。
 ヨークシンでのオークション開催当日。
 彼は当然、占いなどなくとも、この日から数日が非常に危険な事は知っている。
 それゆえ……


 ネオンの予言により、オークションへと出席する事が危険であると判明した。が、当のネオンはオークションへ行くと言って聞かない。
 彼女はオークションに参加し、自分で目的の品物を競り落としたいからだ。
 護衛団のリーダーダルツォルネは、ボスに娘をそのような場所へ行かせるなと言われたが、泣き喚かれ、手がつけられなくなっていた。


 電話口のボスと共に、どうしたものかと頭を悩ませていたその時、彼が声をかけてきた。


「なんだ?」
「まあまあ。そんなに睨まないで。お嬢様をどうにかしてヨークシンから引き離したいんでしょ?」
「……よく知っているな」

「そりゃあ、アレだけ泣き叫んで暴れていれば」
「あぁ……」
 彼はネオンの遊び相手でもある。あの騒ぎようを見るのも当然か……
「だから、いい案を持ってきました。ちょっとこっちへ来てもらえますか?」
「……いいだろう」

 彼につれられ、彼の入ってきたドアをくぐる。
 こんなところに、ドアがあっただろうか……


「っ!?」
 くぐったドアの先。
 そこには、都市が広がっていた。

 ヨークシンシティ。
 その、街並みが。

 だが、一つ大きな違和感がある。


「……人が、いない……?」
 そう。ここには、人が、まったくいなかった。
 あれほど巨大な都市から、人がすべて、突然消えてしまったかのように……

「はい。わかりやすいように、今は全員どかしてみました」
 彼がお笑顔で言う。
「どかした、だと……?」

「そ」
 ぱちんと彼が指を鳴らすと、ぞろぞろとビルの陰や地下鉄の通路などから、人が現れる。
 しばらくしてそこは、ヨークシンシティの街並みそのものとなった。


「簡単に言いましょう。ヨークシンシティのレプリカを作りました」
 彼は、こともなげにそんな言葉を言い放った。
 そう。道具を使って建物や人、ヨークシンすべてを違う場所にそっくりそのままうつしてきたのだ。

「!?」
 ダルツォルネも念能力者だ。
 それゆえ、その可能性に気づく。
 だが、そんな事が出来る人間がいるなど、信じられなかった……
 街一つを、『念』で完全に再現するなど……

「街並みも、人もそっくりそのまま一緒です。ただ、一つだけ例外がある」
「……ここならば、敵はこない」

「そゆことです」
 理解が早くて助かります。と、彼は微笑んだ。

「ここでお嬢様にはオークションを楽しんでいただいて、色々と競り落としてもらえばいい。ただ、あくまでここはレプリカなんで、本物をちゃんはそっちでちゃんと競り落としてくださいね」

「……」
「どしました? 黙っちゃって」

「……いや、なんでもない。早速ボスに相談してみよう」
「はいはーい。お願いしますね」


 ダルツォルネとボスは、この場にネオンを連れてくる事を了承する。
 これが、以前ネオンの予言にあった事。彼が絶対に必要であるのも納得である。

 この際、ダルツォルネは彼が非常に強力な念能力者であると考え、危険だと考える。
 これと同じ事を、ボスにやられれば、このファミリーがのっとられるからだ。
 しかし、彼には彼の護衛、クラピカがいるため、手が出せない。そうなる予防のためにクラピカを護衛としてつかせたのかと考え、さらに侮れないと思うのだった。


 彼のレプリカ大作戦により、ネオンの安全は確保された。
 だが、その夜。初日の夜、オークションへ行く人が非常に危険なのにはかわりはない。むしろその人達は、旅団の襲撃で、死ぬ。
 しかも品物もなくなる。

 自身の保身と、少しの偽善(仲良くなった人。特に付き人と犬使いの件)で、彼は、旅団に潰れてもらう事にするのだった。


「……なークラピー」
「その呼び方はやめろと何度も言っているだろう」
「今日来るのな、幻影旅団なんよ」
「なっ!?」
「だから、復讐、終わらせてみないか?」


 クラピカに力を貸し、さらに、一つ貸しの件を使い、ヒソカに連絡を取り、集合時間と場所を聞き出す。

「お前さ、団長と戦いたいんだろ?」
「よく知っているね★」
「ちょーっとは動揺してくれるとおにーさん嬉しいんだけどね」
「それで、なんのようだい?」
「今度は俺から、貸し借りゼロの取引しねーか? と、提案してみる。俺に一つの情報をくれたら、団長と一対一やらせてやるよ」
 ちなみにヒソカに協力を取り付けたのは、クラピカと敵対させないためである。
 ヒソカは旅団にいるが旅団員ではない。クラピカがヒソカを攻撃すると、自身の誓約で死んでしまうからだ。
 それゆえヒソカに協力をとりつけ、戦わないよう味方にしたのである(その際クラピカにもヒソカを攻撃しないよう説明した。さらになぜ旅団ががくる事を知っていたのか? というクラピカ問いにヒソカから聞いたと答えられるし)

 そして、クラピカに彼の道具をいくつか渡し、ヨークシンオークションを襲う前の幻影旅団を、クラピカに襲撃させる……


 『タンマウォッチ』、『入りこみミラー』この二つを使えば、団長と一対一を演出する事も、クラピカが旅団の団員を各個撃破する事も可能である。
 他にも道具をクラピカに渡すだろうが、ここでは省略。



「……終わったよ」
 自分の手で決着をつけたいと、一人で行き、戻ってきたクラピカは、一言だけそう言った。

「ヒソカは?」
「団長と戦ったあと、姿を消した。貸しはまだ一つそっちにあるそうだ」
「そっか」

 旅団に関して、俺はそれ以上聞く事をしなかった。
 旅団を全滅させたのか、それとも、全員生きているのかは知らない。でも、クラピカが終わったと言ったのだから、それでいいんだろう。

 貸していた道具を返してもらう。

「……なあ」
「なんだ?」

「もう、いいんだぜ?」
 俺は、それだけ言葉にした。

「……」
 クラピカは、ただ呆然と、俺を見た。

「一回くらい、泣いてもいいと思うぜ。胸くらいなら、貸してやるし」

「……」
 そのまま、クラピカは俺の胸に顔をうずめ、泣いた。
 今まで張り詰めていたものすべてを、吐き出すように。

 ただ、泣いた。

「よしよし」
 なんとなく頭を撫でてやった。


 こうして、お嬢様のわがままからはじまるはずだった、ノストラードファミリーの終焉と、ヨークシンマフィア達の悪夢は、はじまる事なく、終わった……


 ヨークシン二日目。
 クラピカは、旅団との戦いの疲れからか、熱を出し、1日ほど寝こむ事となる(原作で団長を解放したあとのように)
 彼の道具で熱などはすぐによくなるが、精神的な疲れ、眠気は道具を使って強引に排除してもしかたがないので、大事をとりその日一日はベッドの上にいる事となる。

 センリツに看病を頼み、彼は約束であったゴン達一行と合流する事になる。
 旅団による襲撃もなかったので、こちらは平和も平和。地下バトルの賭け事に興じたり、骨董市をあさったりなど、三日目に起こる事も前倒しで発生。ゴンがハンター証を質に入れる事などもない。
 しかし金はまったくたまらない。
 ただ実は彼はすでに1兆を超えるお金がフエール銀行にたまっていたりするが、それは黙っている。
 一緒に競売を楽しんだり、目利きを楽しんだり、彼等と一緒に素でこの祭りを楽しみたいからだ。

 別にゴン達がグリードアイランドを買えなくても問題ないとわかっているのもあるし。


 そしてその夜。

 目を覚ましたクラピカは、部屋で信じられないものを見る。


「……こ、これ、は……」


 そこにあったのは、36対の眼。
 クラピカが探していた、クルタ族の、緋の眼すべてが、そこにあったのだ……


「お、目が覚めたか。一応言っておくが、全部本物だ。お嬢さんが手に入れたのもこっちにある。あっちには悪いけど、レプリカつかませてもらった」
「全部本物。と、彼は嘘は言ってはいないわ」
 音で嘘ホントを聞き取るセンリツが嘘ではない事を保証する。
「むしろ、自分で見た事の方が信じられないけど……」
 道具を使って緋の眼を回収する様を見たセンリツの正直な気持ちであった。


「さて。ここからが本番です」


 彼が、一つの道具を取り出す。
 そう。ここからが真に信じられない事。


「俺は、君に、とても残酷な事をするよ……」
「……え?」


 彼は、道具を使い、この緋の眼となったクラピカの同胞達を、全員、復活させる!


「ここ、は? そこにいるのは、クラピカ、なのか?」
 復活し、目を覚ました同胞の一人が、クラピカを見て、驚く。

 もちろん、クラピカもだ……



 ……本当に恐ろしい道具だね。
 ドラえもん原作で、ワニ革のバッグから、ワニが復活した事があったのを覚えていたから、やってみたのだが、本当に成功するとは。


 ついでとなるが、看病のお礼と称してセンリツの探しモノと、彼女を元の姿に戻してしまったりもするだろう。


─クラピカ─

 私は、彼が時を止められる事を知っている。
 ならば、時を戻すという事が出来ても不思議はない。
 不思議はない……が。

 こんな事が、本当に……本当に……


「君は、どうして、そこまで……」
「ん? だってよ。これからの一生を、仲間のなきがらだけ求めて生きるなんて、むなしいだろ?」


 君は……本当にどうして……
 半場無理やりに、私の都合でここに巻き込んだというのに……


 確かにこれは、残酷な事だ……
 私のこれまでの事を、私の今まですべてを、無意味にするのだから……

 なのに、それなのに……!


 どうしてこんなに、嬉しいんだ……


 クラピカは、復活した同胞に囲まれ、もう一度、泣いた。


 この後新生クルタ族は、彼が偽ヨークシンを立てるために用意した土地に新しい村を作る。
 クルタ族は社会的にはすでに絶滅した事になっている。それゆえ、これ以後の事を心配する必要はない。
 その際、村の人達の総意で、クラピカが彼についてくる事となる。


「一族の恩を、私が代表で返す事になった。よろしく頼む」
「……は?」
「私が一生を賭け、君につくそう。これが、我々の感謝の気持ちだ。それに、私の目的を奪ったのは、君だろう? なら少なくとも、新しい目的が出来るまでは、君にも責任があるはずだ」


 そうしてクラピカと彼は、祝福されてヨークシンへと戻るのであった。


 ちなみに、ノストラードファミリーへの所属はオークションが終わるまでなので、もうしばらく続く。
 終わりの際、ライト・ノストラードに彼からコピーロボットのプレゼントがある。
 それを使い、もう少し娘と一緒にいてやれという事なのだ。

「ちなみにおでこをくっつければ記憶を共有出来るから、どっちがどっちの仕事をしていても問題ないぜ」
 影武者としても超優秀だし。
「……君には世話になってばかりだな」
 ヨークシンオークションの際、一度コピーロボットを使い、娘と一緒にレプリカのオークションを楽しんでいた可能性もある事を一応表記しておこう。
「娘の事を考えるなら仕事をやめろ。とは言わない。むしろ、どうせなら出世と愛情、どっちも両立させてみろって言ってあげます」
「ははは」
 和やかに話す彼とライト。その背後では、危険視するダルツォルネとクラピカのにらみ合いとかがあった。



 そして9月6日。
 グリードアイランドがオークションにかけられる。

 しかし彼は、そこに手は出さない。
 グリードアイランドの『宝』をプレイせずに手に入れられる方法を思いついたから。

 その日に出品されたグリードアイランドは、そのまま原作どおり大富豪バッテラに落札される。
 オークション後、ゴン達と一緒に、この後のグリードアイランドもすべて競り落とす、バッテラと会う。
 ゴン達はグリードアイランドをプレイさせてもらうため。
 彼は……


 ゴン達が錬を見せ、鼻で笑われたあと、今度は彼の番。

「あのさ、見せてもいいんだけど、俺の場合相手がいないとダメなんだわ」
「ほう。なら、俺が受けよう」
 そう言ったのは、バッテラの護衛もかね、ゴン達にダメだししたプロハンターツェズゲラ。

「ああ、そういう意味じゃない。アンタを攻撃するとかそういうのじゃないから」
「? ならば、どういう事だ?」

「逆だよ。逆。俺が出来る事は、なんでも癒す事。怪我だろうが、病気だろうが、目を覚まさない恋人だろうが。なんだって治してやるからよ」


 ざわっ……
 その瞬間。バッテラに電撃走る。
 『目を覚まさない恋人』という言葉に反応し、信じられないようなモノを見る目で、彼を見る。


「つーわけだ。そういうのがいないのなら、あとで証明してやるから、連絡をくださいな。あ、これ連絡先」
 そう、俺の連絡先を書いた紙を渡す。
「さ、ゴン達いったん帰るよー」
「しかし、いいのか?」
「いいのいいの」
 彼と一緒に来ていたクラピカが、彼が治療以外にも色々出来ると言おうとするが、それは彼に止められる。
 止められた際、彼になにか考えがあるのだろうと察し、それ以後はなにも言わなかった。
 ツェズゲラにコテンパンに言われ、不機嫌なゴンとキルアを引きずり、彼等はその場を去るのであった。


 本来ならば9月10日に手に入れたグリードアイランドのプレイヤーを募集するなどはバッテラがいう事だが、彼の発言に驚いているため、それはツェズゲラの役目となる。


 ゴン達が修行をしている間。
 彼は再び、バッテラと接触する。


 バッテラの目的は、事故で眠りについてしまった恋人の目を覚まさせる事。
 そのために、グリードアイランドにあると言われる奇跡の呪文を探していた……


 だがしかし、彼の登場で、すべてが覆る。


 病院にて目を覚ます、バッテラの恋人。
 喜びの涙を流す、大富豪……


「とゆーわけで、約束のグリードアイランドの権利、すべて譲ってもらいますよ」
「もちろんだ! むしろ、それだけでいいのか!?」

「かまいませんかまいません。賞金とかは俺が自分で出しますし、これ以後も自分でまかないますから。ただ、今までの施設とかはおまけでつけてもらえると助かりますね」

「かまわんよ。もう私には必要のないものだ。いっそ、私の財産すべてを君に譲渡してもいい!」

「だからいりませんて」
「しかしだな……」
「なら、もう一つサービスするんで、その辞退を受け入れてください」
「なにかね?」
「それは……」


 次の日の新聞に、バッテラ氏突然の引退という文字がデカデカと飾られる。
 会社や財産などは、他人に譲り、そのままどこかへ隠居するというのだ。
 事業は順調。グリードアイランドを買占めして破産をしたわけでもなく、グリードアイランドの賞金が支払われたわけでもない。なのにもかかわらず、突然の引退。
 さまざまな憶測がなされるが、バッテラ氏が今後どうするのかなど、それは誰も知る事はないのであった。


 ゴンとキルアもそれをレオリオから聞きびっくりするが、グリードアイランドの報酬などはそのまま別の人が受け継ぎ、続けられると聞いて、ほっとする。


 場面が変わり、浜辺を手をつなぎ、歩く若いカップルがいた。
 目を覚ましたバッテラの恋人と、すべてを捨て、やり直すバッテラその人が。
 事故にあったその時の姿へと戻った、二人が……


 彼等の未来は、きっと明るい。


 ヨークシン編終わり。



『グリードアイランド編』

 さて。こうして俺は、バッテラ氏のかわりにグリードアイランドの権利をすべて得たわけだ。
 これでゴン達がクリアした場合、その報酬であるあの3枚のカードは俺のモノ!

 これでグリードアイランドにおいて俺がなにもしなくても帰還アイテムが手に入る!
 やったね!


 グリードアイランド参加試験に合格したゴン達に顔を出し、びっくりさせる。


「おニーさん!?」
「よ。バッテラの人がやめるって言うから、俺がかわりにオーナーになって続けさせる事になった」
「つーか、むしろそれが目的じゃ?」
「……相変わらず鋭い子だねキルア君。俺としても、この中で欲しいものがあるんだよ。ま、契約書にあるとおり、ゲーム内で手に入ったものの権利は全部俺にあるから」
「ま、オレは別にプレイ出来ればそれでいいからいいんだけどさ」
「うん。そんな事しなくても、おニーさんが欲しいって言うのならとってくるのに」

「まあまあ。色々あるんだよ。色々ね。まあ、俺が必要なのは一つだけだから、それ以外はちゃんと君等に回すよ。だから好きにゲームを楽しめばいいさ」

「うん!」
 ゴンが元気良く返事をし、キルアははいはいと言うだけであった。


 そしてノストラードファミリーとの契約も終わり、レオリオとも別れ、グリードアイランドがはじまる。


「そーいやクラピーはグリードアイランドやらんの?」
「だからその呼び方はやめろと。まあいい。私は君を守るためにここにいる。だから、君がやらない限りはやらない」
「そっかー」

 ちなみに彼は念が使えないのでそもそもグリードアイランドがプレイ出来ない。


 グリードアイランドに彼が入らないため、大きな変化は起きない。
 G・Iに参加するものは危険を承知で参加しているので、彼はルールを変えてまで救おうとはしない(下手するとゴンがクリア出来なくなる可能性あるし)
 だが、旅団がすでに壊滅しているため、団長から除念師を探すという依頼を受けないヒソカが、グリードアイランドをプレイする理由がない。
 それゆえ彼が貸し一つを使い、ドッジボール勝利のためにヒソカを送りこむ。

 さらに、ここでハンゾーが出てきてもいいが、まあ、どうでもいいか。


 最終的には原作同様ゴン達がクリアし、本来ビスケが手に入れるはずだったブループラネット。その代わり、『再来(リターン)』の呪文が彼に、500億がビスケの手にわたる。


 報酬が生きたままなので、あのプレイヤーを集めた古城で盛大に賞金などを受け渡したりもするのかも。
 ちなみに、アリの女王は浜にうちあげられたところでどーにかしちゃう所存なので、アリ編はありません。あったら確実に会長のかわりで王と戦わされるけどないのでしょうがない。


 そして最後はやっぱりヒソカ。
 リターンのカードをすぱっとかすめとって一言。

「さて。やろうか」
「……やっぱそーなんのかよ」


 因縁に終止符をうって。いよいよ手にするのはリターンのカード。


 念使いにしか使えないカードだが、道具を使えばやはりそれもどうにかなる。
 だがしかし、それでは帰れちゃうので、やっぱり道具を使ってもこのカードは発動しない。理由は考えついてないが。


「みんな、またな」
 なんて涙の別れやったのに、ぷすんとかいって発動しなくて怒られてみたりとかするのさ。
 ※別エンドとして現実に帰ってきた彼をさらに追いかけてくるエンドも面白いかもしれないが。


 それゆえ次の彼の目標は、念を使えるようになる事。
 幸い師匠としてクラピカもゴンもいる。
 一度倒されたくらいでへこたれないヒソカもいる。
 他にも念使いの知り合いがいる。


 彼のハンター世界人生は、まだまだ続くようだ……



 どっとはらい。






 以上。
 まとまりのない内容ですが、わざわざ目を通してくれてありがとう!
 きちんとした形で読みたかったというのはある意味最上の褒め言葉なので聞きたくないぜ!


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