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[14325] 【ネタ】幾千の耳を以ってして。(H×H 転生・オリキャラ・オリ設定多数)【R-15】
Name: 藍燈◆04f20ceb ID:9070469b
Date: 2009/11/29 00:58
<まえがき>
この作品はHUNTER×HUNTERの二次創作です。
転生者(原作知識あり)とオリキャラが混在していて尚且つオリジナル設定がもりもりしてます。
もしかしたら厨2です。もしかしなくても厨2です、ごめんなさい。
とにかく

・転生者(原作知識あり)
・オリジナルキャラクター
・オリジナル設定
・戦闘描写(微グロ・R-15)
・厨二

上記に1つでも苦手項目があるならば、読まないことをお勧めします。
また、作者藍燈はとてもすごく文章にムラッ気があります。自覚していますが治せないあたりで限界点が見えてこようというものです、申し訳ない。
そんなわけで見苦しい部分もあるかと存じます。

以上の点を踏まえてお読みいただければ幸いです。




09/11/29
3話まで追加。
前書き独立させついでに注意書き付け加え+総タイトルにR15表記。



[14325] 1.その時、主人公は死んだ
Name: 藍燈◆04f20ceb ID:9070469b
Date: 2009/11/29 00:58
"千耳会"・・・――ハンター協会・マフィアンコミュニティ・その他多数の犯罪系組織と協定関係にある完全中立情報売買組織。
顧客に対するハンターの紹介、ハンターに対する仕事の斡旋はもちろん、武器類医薬品類その他物資の調達仲介、もろもろの情報収集売買を主な仕事としている。
各地に斡旋所・仲介所が点在しているが、正確な位置などは一部地域を除き一般公開されていない。
中立協定を破った人物・組織に関しては、それ相応の制裁が加わる。

「千耳会の情報について一般に公開されているものは以上です」

精悍というのには程遠いが、打ちつけのコンクリートの壁がモダンな様式をかもし出しているオフィスビル、その受付にて憤怒の形相の男と営業スマイルを顔面に貼り付けた受付係の女は対峙していた。
営業スマイルを貼り付けているといっても、貼り付けられたその下の女の顔に恐怖や畏怖が含まれているわけではないのは、女の和やかであり穏やかである雰囲気からも明らかだった。
男は巧みにそれを読み取りギリリと歯軋りしてから、ピュワホワイトの清潔感漂う受付ディスクにガンッと拳をたたき付ける。

「・・・んな事ぁ判ってんだよ」

地を這う、恐ろしくドスのきいた声を男はひねり出した。
清潔感漂う受付ディスクは哀れにも男の拳形にへこみ、木っ端になったかけらが拳の間から粉塵のように白い煙になって上っている。
彼のような歴戦の"戦闘員(ソルジャー)"からしてみれば聊か軽率な行為ではあったが、背に腹は変えられない。


男は、つまるところかなり焦っていた。








【その時、主人公は死んだ】















元をただせば、昨晩。いや、明朝と言っても差し支えのない時間ただったように思う。
とにかく、昼行性の人の子ならば十分にまどろみ大いに夢の世界を謳歌している時間帯に、それは起こった。
最初は小規模な爆発音だった。
その音を目覚まし代わりに(それにしたって心臓に悪い目覚ましだが)文字通り跳ね起きた男は肌身離さずいつも忍ばせている愛用のサバイバルナイフと、枕の下に敷いていた9ミリ経口の拳銃を手に部屋を出、そして目の当たりにした光景にあろうことか、呆然と立ちすくんでしまった。

彼が見たものソレは、黒い、真っ黒なつなぎ目の見当たらない服を纏った、おそらく体格からして女性。
そしてその傍らには真っ赤な、血のように赤い大きな四足歩行の生物を従えて、彼と同じ"戦闘員(ソルジャー)"である同僚達を今まさにたたききった瞬間であった。
バシュッという音を追うように飛び出た鮮血が、廊下に染みを作る。
その赤色でハッと我にかえった男は、自分が圧倒的不利な状況にいることに気がついた。
だがしかし、圧倒的有利な状況にいることにも、同時に気がついていた。
男は迷わず今しがた出てきたトア、その何の変哲もないドアノブを両手で握りこみギュッと両目をつぶった。そしてきわめて小さな声で「【世界を巡る扉―ドコデモドア―】」と呟き、真っ赤な四速歩行の生物を従えた女性が迫るより早く、その場から消えていたのである。
男はつまるところ、"瞬間移動系能力"を有する念能力者だった。





男は移動先の、先ほどの場所から数10キロ離れた先で知らずに詰めていた息をやっとの思いで吐き出した。
酸欠のためか、はたまた言い知れぬ恐怖に戦いたせいか。男の膝、否、全身が痙攣でも起こしたように震えていた。
食いしばった彼の歯がギリリ、と音を立てる。
敵前逃亡など、彼にとっては前代未聞であった。
前代未聞であったがしかし彼の、精神的にも肉体的にも死が隣接していた戦歴で養われた勘と、何よりも本能が告げていた。

アレは危険である、と。

だがしかし人間とは得てして不可思議な生物であり、男はその危険対象が目の前から消えてしまった途端に、羞恥に身を震わせた。戦わずして即座に尻尾を巻いて逃げてきた自分を恥じたのだ。
そしてソレをどうしてもぬぐいたい衝動に駆られ、男は生命の危機を乗り越えたにもかかわらず、移動先から取って返した。
もっと簡単に言ってしまえば、男は自分が負けたことを認めたくなかった。
そういうとても器の小さい、しかしてどうにも高く高く積み上げられたプライドを、男は捨てられなかった。





そこが男の、根本的な間違いだったのだろう。





男はアジトのある町に取って返しながらも、男が知りうる限りの情報を整理していた。
問題はなぜ襲撃を受けたのか、そもそもどこの組織が襲撃してきたのか。
男の所属する組織は、いわゆる大きなくくりとしては"秘密組織(マフィア)"にあたるが、そんな組織などあの街には吐いて捨てるほどあるのだ。今更潰す意味、それと目的が不明すぎる。
もしかしたら同業者、もしかしたら内部からの密告があり、摘発でもされていたなら話は別だがそれならそうと予兆があってもいいはずだった。だがそれも、男の知りうる限りではなかったように思える。
あるいはもっと上層部で何かが起こったのかもしれないが、そんな詮索は襲撃の後とあっては意味を成さない。
ならば今現在の最大の問題は、どこの組織あるいは個人が"戦争(ケンカ)"を売ってきたのか、ということである。
そのことに関して男は、ほんの少しだけ心当たりがあった。

―――・・・"千耳会"。

名前だけなら裏社会に片足しか突っ込んでいないストリートチルドレンでも知っている、大規模な"情報屋"。
情報収集のためなら殺人ですらいとわず、金を積めばたとえ味方の情報でも惜しげもなく差し出す、あまりにもゾッとしない組織。他の組織とは中立協定をむすんでいるが、一度彼らの協定にそむけば手痛い制裁・・・下手すれば損所そこらのマフィアなんて目ではない制裁を食らうことになるという。その彼らの動向が最近どうも活発であるという話を、以前彼の直接の上司から聞いた覚えがあった。
今のところ彼に思いつくような、彼の所属していた組織を襲うような輩は、彼ら以外ありえない。
彼はキュッと口元を引き締めて、目的地を変更した。
もし襲った相手が"千耳会"でなかったにせよ、情報はいるのだからそこへ向かうこと自体間違ったことではないと男は一人うなづき、一路千耳会本部へと向かったのである。














そしてその"本部"といわれているオフィスビルの受付係の女は、ニコリと営業スマイルをその顔に貼り付けたまま「左様でございましたか、大変失礼いたしました」と口を開いた。

「それ以上の情報をお求めとあれば、料金を頂くことになりますが」
「テメェ!!ふざけ」
「申し訳ございませんお客様。ですが一般公開、つまるところ無料でご提供できる当会の情報はここまでとなっております。この協定はたとえ公的な国際機関であっても有効ですのであしからずご了承ください。ですが、料金をお支払い頂けるのでしたら当会は情報の公開を惜しみません」
「っ・・・」

まさしく、取り付く島もない。
矢継ぎ早につむがれる彼女の丁寧な言葉に、男は気おされた。
力の末端を見せたというのにも関わらず、目の前の女は営業スマイルを崩さない。
あまたの修羅場を掻い潜ってきたと自負している能力者の彼は"得体の知れない何か"を、目の前のオーラ垂れ流しの、一般人であるはずの受付嬢に感じずにいられなかった。
さすがは"千耳会"といったところかもしれないが、今はそんなことに関心している場合ではない。
男はへこんだ受付ディスクに置きっぱなしだった拳をもう一度グッと握りこんでから「いくらだ」と口の中でつぶやいた。

「お客様の求める情報内容により、料金は異なります」
「・・・人物の情報がほしい」
「個人情報ですね。個人によって料金が異なります。性別、特徴など判っていることがあれば」
「赤い犬・・・たぶん念獣。そいつを連れてる。性別は女だ。・・・あのアマ、ぜってぇぶっ殺す・・・!!」

またしてもギリリと歯軋りを始めた男を尻目に受付嬢は「"赤い念獣を連れた女"ですね。少々お待ちくださいませ」と張り付いた笑顔のままスッと立ち上がり軸足をディスクに引っ掛け、次の瞬間にはへこんだ受付ディスクを歯軋りする男ごと飛び越えつつ、忍ばせていた重石付の極太ワイヤーを後ろから男の首に向かって投げた。
ワイヤーが巻きついた瞬間男との距離を限りなくゼロにし、そのままワイヤーをギリギリとしめあげ、彼女は彼女より頭2つ分でかい男の背中に左ひじを押し当て男の体を床からほんの少し浮かせる。
男が「グアッ」と短い悲鳴を上げた。

「わざわざ出向いてくれるなんて、アリガト。ご苦労さま。その惜しみない労力とどうしようもないほどかわいそうな無駄骨に"赤い念獣を連れてる女"の個人情報を教えてあげる。あー、でもお金は要らない。昨日の内にあんたんトコの組織壊滅しちゃって本部も焼いちゃったから、手持ちないだろうしね。あーあ私って優しーなー」
「グ・・・ガァッ・・・ぁ、めッ」

どこがやさしいものか、と男は叫びたかったが声帯を上から押しつぶされている状態ではあえぎ声をつむぐのが精々である。
男は視界を赤と青に点滅させながらそのワイヤーを引きちぎろうと、オーラを練りこんだ。
通常のワイヤーであるならば、首に念練りこみ"硬"をすれば千切れてしまう。
幾度となく同じような(それこそ暗殺等においてワイヤーや鋼糸などはポピュラーなものなのである)経験を重ねている男にとって、首にオーラを練りこみ"硬"をすることなど朝飯前ではあったが、ワイヤーは千切れるどころか、逆に彼の首をギリギリと余計に締め付けてくる。
どんなに練りこもうとも、そのワイヤーに切れ込み一つ入る気配はない。

「その女の名前はリオ=ブラッディフォード。出身はアイジエン大陸リンデイム国首都"セントラルフロートシティ"にある千耳会直営の孤児院。年は今年で26歳。誕生日は10月31日。13歳でプロハンター試験合格の後、千耳会に入会。現在は常移動型情報収集組にて活動中。通称"ブラッド"」
「ぉ、ぁ・・・グッは、グゥッ」

ありえない、そんなばかな、と男は黒く塗りつぶされていく視界の中で思った。
この世界に"転生"してから23年。けして短くはなかった。いや、その前の生が16年と短かったものだから、彼にしてみれば長かったといっていい。この世界に生を受けたとき、彼はそれこそ「そんなばかな」と思ったが、けしてこんな最後を迎えるために念の修行を、あの血反吐を吐くような修行をしてきたのではない。

このままいけば、後1年で"原作軸"だった。

そうして原作のキャラクターと出会って、できることなら原作を変えようと思っていた。
その力が自分にはあると彼は思っていたし、でなければ自ら進んで"秘密組織(マフィア)"などに入っていなかった。

「通称はお察しのとおりあの赤い念獣からついたっぽいかな。あ、いっとくけどあれ犬じゃないから。狼だからね?ここはハッキリさせとかないと・・・せっかくカッコいい動物にしようと思ってわざわざ狼にしたんだから。ああ、話脱線しちゃった。えーっと・・・あとは、得意武器とか情報にあがってたっけ?銃器はもちろんのこと、たいていのモノは使えるかな。得意なのはコレね、ワイヤー。刃物がついてるのなんか使い安くてすきかなー。あんまりかさ張んないし。それに・・・」

瞬間、受付嬢――リオ=ブラッディフォードの深く淀んだ緑の瞳に、暗い光が灯る。

「私の能力上、一番使い勝手がいいからさ」
「ひっ、ヒッ」

ジュッという音が耳元に届いたとき、彼は「なぜだ!!」と叫び声を心の中であげていた。
彼は、主人公になっていたはずだった。否、すでに彼の中では、彼は物語の主人公だった。
であるにもかかわらず、終わろうとしている。彼の命は、終わろうとしている。

「"濃硫酸"ってわかる?質量パーセント濃度が90以上の硫酸のことなんだけど。強力な酸化力に脱水作用なんかのある強酸性媒体。・・・今あんたが熱くて苦しくて痛いのは、念がその成分に変化してワイヤー伝ってあんたの皮膚を溶かしてるから」
「ギッ、――・・・」
「あー、そうそう。情報がひとつ欠如してたわ、ごめんねー。私の念系統、変化系なんだよ」

彼女の言葉が言い終わるよりもはやく、彼の首から上がゴトリと音を立て転がった。























「あんったねぇ・・・ちょっとリィ!!」

右手にパステルカラーのポーチ、左手にオフホワイトの携帯を手にした女性は紺色のハイヒールをカツカツと鳴らしながら首から上下に別れた死体を隠そうともせず、むしろ「え、死体?なぁにそれー」とでも言い出しかねない表情のリオ=ブラッディフォードに詰め寄った。

「あ、ウィズおっかえりー。下痢大丈夫?」
「下痢じゃないわよ失礼な!それよりなにこの殺人現場!あんた人の職場なんだとおもってんの!?」
「え?・・・えへへ?」

さらにいい連ねようかと思ったがしかし、女性――ウィズことウィゼル=モラルーシはグッと口をつぐむ。
ごまかす気なんてさらさらないのに"笑ってごまかす振りをする"のは、リオなりの弁解であることをこの数ヶ月で女性は理解していたというのもあるが何よりも、この首から上下がサヨナラしている死体、その恐怖にゆがんだ顔に見覚えがあった。
ウィゼルは千耳会の斡旋所に常時滞在する、いわゆる斡旋所滞在組構成員で情報データの整理を担当しているが、その情報データの一番新しい"ブラックリスト(制裁対象)"データに載っていたはずである。
そしてその情報は目の前で笑う緑を帯びた黒髪の彼女からもたらされた情報であった。

「ったくトイレに行ってる間になんて事・・・」
「いやーまあ、ぶっちゃけ助かっちゃったんだけどね。昨日あのーほら、なんだっけ・・・名前忘れたけど協定破ってた組織の情報収集と協定破った証拠見つけ次第制裁だったじゃん?めんどくさいから一掃しようとおもったら、一人逃げおおせちゃった運のいいんだか悪いんだかのが・・・あー、うん、まあぶっちゃけさっき渡したブラックリストのあたらしいやつ?ま、でもアホな事に乗り込んできてくれちゃったわけだけど。つーか、最初に手ぇだして器物破損さしたのはこいつだから、正当防衛だしー」

つまるところリオが言いたいのは「私悪くなーい」ということである。
ウィゼルはこれ見よがしにため息をついた。

「・・・まったくもう・・・いいわよ、わかった。器物破損報告しとくから、これ早く処理しちゃって。部屋中が鉄さびくさいったら」
「えー・・・処理はウィズのが得意でしょー?消失魔術の"ウィザード"」

その名は、いつの間にか呼ばれるようになった通り名だ。
発生源は定かではない。仲間内であるのか、それとも協定を結んでいるどこかの組織からなのか。
だがしかし、このいかにもな異名がウィゼルは大嫌いだった。

「・・・いっぺんあんたも消えてみる?"ブラッド"」

ジト目でにらまれたリオは、これまたわかりやすいように震え上がった動作をして見せて「ご遠慮もうしあげまーす」と笑った。
それに本日2回目のため息をついてから、ウィゼルは先ほどまでリオが座っていた本来自分のものである受付ディスクに腰を下ろす。瞬間目に入った拳形のへこみに彼女が思わず顔を覆ってしまったのは、致し方ない事だった。









<あとがき>
お読みいただきありがとうございました。

えー・・・うん、えっとですね。
コンセプトは"転生者orトリッパー(原作知識あり)のいるHH世界なんだけど、転生者が主人公じゃなくてオリジナルキャラクター(原作知識なし)が主人公"です。このような感じのssを読んだことがなかったので書いてみました。
転生者はぶっちゃけ当て馬です。かわいそうなことに。
HH板におくかどうしようか悩んだのですけど、とりあえずネタですしこちらに。

続きの掲載は読者様の食いつき具合と、私の執筆度合い次第ですねー(・3・)



[14325] 2.預言者は語らない
Name: 藍燈◆04f20ceb ID:9070469b
Date: 2009/11/29 01:00
「預言者」

彼女が口にした言葉をそのまま鸚鵡返しにした彼は、その形のよい唇をへの字に曲げた。

「眉唾もいいところだが、信憑性は」
「あるから態々出向いたんでしょ。私個人の意見としては"ばっかじゃないの"ってかんじ」

肩をすくめた彼女の言葉はにべにもない。
その言葉に嘲りを含めた笑いを投げかけた男は、足元に転がるその"預言者"とやらを、ちょいと足先で転がした。











【2.預言者は語らない】


















何の変哲もない女だった。
清楚な―今は砕けたアスファルトと自身の血で赤黒く変色してしまってはいるが―服を纏っていて、少しウェーブのかかった栗色の髪を後ろのほうで軽くまとめている20歳そこそこの、どこにでもいるような女。
彼女は常々、路地裏にたむろするストリートチルドレンに、どこで稼いできたのか幾ばくかの金をやりその見返りに裏世界の情勢を提供してもらっていたらしい。
といっても、裏世界に片足をつっこんだ程度のストリートチルドレンが集められる情報というのは、本当にわずかなものであるのだが。

「子供らの話だと、来年のせん・・・ええと、来年って何年だっけ?」
「・・・2000年。ライ、お前・・・散々テレビでミレニアム問題とかやってんだろうが」
「そうだったっけ?まあいいや」

いいや、よくない。
仮にも情報屋として、それはよくないだろう、と彼はその凍て付く様な青灰色の瞳で訴えたが、室内灯をキラキラと弾く薄紅色の瞳の女性―ライア=クレイヴはそ知らぬふりである。

「2000年の年明けから2001年の7月半ばまでの予言をしていた、らしいね彼女」
「・・・なんだその中途半端」
「知らない」

首を振ったライアに対して、彼は肩をちょっとだけ竦めた。
彼女が知らないのは当然のことで、彼もそれはわかっていたが、どうにも解せなかった。
何でそんな短期間の予言を、しかもこんな片田舎のストリートチルドレンなんぞに披露しているのだろうか。
真意を問いたかったがしかし、その"予言"をつむいでいた彼女は彼の足元ですでに冷たくなっている。

「で、その予言とやらのメモは」
「根こそぎ持ってかれた・・・っぽい」

でなければあんたに応援なんて頼みません、とライアは内心でつぶやいて苦虫を噛み潰したような顔になった。
彼女の今回の任務はこの足元で冷たくなっている"預言者"の確保、もしくは予言そのもの自体の確保であったが、一足遅かったのだ。ライアがこの預言者の寝泊りしているというボロ家にたどり着いたときには、彼女はむき出しのコンクリートに這い蹲り、冷たく、硬くなっていた。
男はしばしうなった後、その輝く金色の芝生のような頭をかき混ぜた。
それを見て彼女はあきれたように口を開く。

「カイ、あんたまだその癖直してないの?」
「・・・あー、努力はしてんだけどな。いいだろ、別に」

いいや、よくない。
仮にも裏社会の人間として、それはよくないだろう、と今度は彼女がその薄紅色の瞳をもってして訴えた。
男―カイことカイツ=エディニールは首をすくめることでその視線を往なす。
徐にため息を吐いてみせた彼女は「まあ、どうしようか」と小首をかしげた。

「ま、とりわけ急ぐ任務じゃないんだろ」
「まあね。予言自体は会長いわくそれ程重要じゃないんだって。ただ、ねぇ」
「・・・まあ、な。"予言"なんてのが市場に出回ればどの程度のものであれ、情報の混乱は避けられないし」

情報の混乱。
つまりは、どの情報が真実で虚偽なのか、どの情報が確実で不確実なのか。それがわからなくなってしまう。
情報屋としては、相当な痛手であった。なんといっても、彼らがどんなに確実で真実味のある情報を手に入れたとしても、買い手側が疑って信じなかったのでは意味がないのだから。
彼と彼女はお互いに短くため息を吐き、苦く笑った。

「まーどっちにしたって能力者の死体置いてくよーな奴等だし、片手間で事足りんだろ」

カイツは苦く笑った顔のまま、ベルトに縫い着けられている皮製のホルダーから種を二粒取り出してぐっと握りこんだ。





「【成長促進―グロウプランツ―】」





彼のオーラがその種に収縮されパキリ、と殻の砕ける音が無骨な部屋にこだました。瞬く間に彼の指先から薄黄緑色の蔦が零れ落ち始め、彼の手首に白い根が巻きつく。
薄黄緑色の蔦はスルスルと、まるで生き物のように女預言者の死体へとその糸のように細い体を伸ばし、足から順々に上へ上へと巻きついて女の腰ほどまででいったんとまり、ややあってから全体に白乳色の花を咲かせた。
しかし次の瞬間には花弁の下のほうから赤く染まっていき、染まりきった瞬間茶色くなり一斉に枯れる。
そして蔦は花が枯れた瞬間にはさらに上へとその薄黄緑色を伸ばし首の中腹でまたとまり、白乳色の花を咲かせた。

「また珍しいの見つけたねぇ・・・なんての?」
「偽クレマチス。シロクレ山脈に限定生息してる好血肉植物。花弁と葉っぱの形からクレマチスの亜種と断定。すげーんだぜコイツ。マジで肉と血しか食わねぇ。臓物と骨は丸々残しやがる」
「新種?」
「いんや。ずいぶん前に発見されてる」

ただしレアものなのは確かだ、と彼は誇らしげに唇の端を吊り上げた。
それに少し笑って見せた彼女は、薄黄緑色の蔦が女預言者の頭部を完全に覆った瞬間「あ」とつぶやいて彼を振り返る。

「どの部分もってけばいいんだっけ」
「前頭葉。大脳皮質のドーパミン感受性ニューロンの大半は前頭葉にあるからな。記憶読むだけならそこでいい・・・らしい」

最後に小首をかしげた彼に一抹の不安を覚えないわけではないが、ライアは軽くうなずいて愛用の小刀を取り出した。
取り出しながら「前頭葉とはまた、難しい」と苦笑した彼女にはしかし、その執刀(と、呼べるかどうかはさておき)において一切の迷いはなかったのである。



[14325] 3.その言葉は飴玉にも似て
Name: 藍燈◆04f20ceb ID:9070469b
Date: 2009/11/29 01:14
少年は窓ガラスに手のひらを置いた。
紺色がどんどんとオレンジを侵食している夕闇の空に、星は見えない。
視線を少し下に動かせば、人工の灯りが星のように瞬いているのが見えた。
きっと外に出れば闇夜の静寂にはまだ程遠い、夕闇の喧騒で街は溢れ返っているのだろう。

少年は窓の外の光景から、窓ガラスに映りこむ自分自身と背後の部屋に視点を変えた。

青み掛かった鋼色の髪は先ほどまでの行為によってかけられた、どこか生臭い液体が乾きつつあるせいで、ところどころムースでもつけた様にパリパリしている。少年はけだるげにその濃紺の瞳を全裸の自身から背けた。
少年の背後には大きな――といっても少年からすれば大きいだけであって、比較的標準サイズであるベッドが2つに、備え付けのテーブルと椅子。小さな冷蔵庫がひとつ。
普通の、ごくごく一般的なビジネスホテルが少年の背景にはあった。

ただし、その2つあるうちのベッドのひとつに・・・―――。

「だから最初にいったでしょう、おじさん・・・"僕は高いから気をつけてね"って」

ベッドのひとつに、驚愕の表情を貼り付けたまま仰向けに倒れている少々小太りな男性がいなければの話、だ。











【3.その言葉は飴玉にも似て】













カフェ・バー"グリーンローラン"は、ヨルビアン大陸でもっとも有名な都市ヨークシンシティの雑居ビルの中にある。
少年は夜明け前の、空が薄スミレ色になるころにその店へ足を向けていた。
こじんまりとした古めかしい木製のドアをあけると、カランカランというなんとも似つかわしいカウベルが鳴り響く。

「お帰りガブ」

本来ならそのベルに反応するものはいない。
なぜならばこの時間帯はまだ準備中と書かれた札が下がっていて、マスターもその奥方も店の奥のほうにある住居スペースで夢の中にいるはずだからだ。
だがしかし、今日は様子がちがった。
少年に声をかけたのは未だにバーテンダーの格好をしているマスターであり、その彼のカウンターを挟んだ前には女性が一人。
その女性はマスターの声に反応して少年のほうを振り返った。
彼女の顔を見た瞬間にすべてを理解した少年は「また、厄介なのがきた」と顔に書いたまま口を開く。

「ただいまマスター・・・きてたの"ブラッド"」
「ちょ、マスター!会った早々嫌味まんまんだよこの子!でもそこがかわいい!かわいい!!抱きしめたい!」

少年――ガブことガブリエル=フォクシィはデレデレと笑う彼女――リオ=ブラッディフォードに軽くため息を吐きながら彼女の右隣のカウンター席に座った。

「・・・なんでそんなにテンションたかいの」
「え?これ普通だけど」
「・・・」

その言葉を聴かなかったことにしてガブリエルは「マスター、これ」とフラッシュメモリーを手渡した。
中には昨晩彼を食べようとして逆に食べられた小太りの男、彼が所属していた密輸組織の全容が入っている。
この情報を集めるのに3ヶ月半。かなり詳細な部分まで情報は集まっているが、それでもガブリエルとしては満足のいくものではなかった。主に掛かった時間について。
彼は隣の、ピーナッツをつまんで「こう、ポンッってやって口に・・・はいらなーい」とアホな事をしている彼女を胡乱な目で見やった。

リオ=ブラッディフォード、通称"ブラッド"は千耳会においてのエリート"常移動型情報収集組"に属している。

彼ら"常移動型情報収集組"の情報収集能力はすさまじく、行動は迅速であり且つ戦闘能力に申し分ない。
とりわけ血色の異名を持つ彼女は文字通り"一騎当千"であり、若干26歳にして"常移動型情報収集組"のトップに立っていた。

そう、普段の彼女からは想像するだに難しいが、彼女が彼らの組織のエリートのトップであり、つまりそれだけの戦歴と実力と情報収集能力を保有していることになる。

そしてさらに彼女は13年前、彼女が13歳のときにプロハンター試験を合格していた。
プロハンター試験とは大の大人ですら合格するのは難しい、数年受けてやっと受かるのが常である、むしろ一発でしかも若干13歳で受かってしまうことのほうが異例の、難攻不落の資格試験である。
千耳会では"プロハンター試験"に合格、つまりは公式に"ハンター"になることが"常移動型情報収集組"になることの前提、もっといえば、ハンター試験合格="常移動型情報収集組"への移籍なのであった。
つまるところ彼女は13歳にして"常移動型情報収集組"にその身をささげて来たことになる。

なぜ、ハンター試験合格="常移動型情報収集組"などという公式があるのか。

千耳会という組織は、大まかに言えば3つの部署に分かれている。
1つは仲介所、斡旋所に待機する"斡旋所滞在組"。
これは文字通り各地にある仲介所・斡旋所にて待機し、情報をネットから入手、あるいは持ち込まれた情報の整理、またはハンターへの仕事の斡旋(いわゆるハローワーク)を行っている。
千耳会の主な収入源はやはりここといっていいかもしれない。
次に"滞在型情報収集組"。
仲介所・斡旋所を中心に担当地域を決め複数、もしくは単体にてその土地に住み着き情報を入手する、簡単に言えば地域密着型の情報収集である。隣の家の情報から裏社会の情報まで事細かにじっくりと裏取りをするのが彼らの仕事であるがそれ故に争いごとは好めない。
この2つは地域から離れられない。
だから故に"ハンターライセンス"も必要としない。
彼らに必要なのはいざと言う時の戦闘力と情報収集能力だけである。欲を言えば忍耐力も必要かもしれないが。
最後は"常移動型情報収集組"。
彼らは担当の地域を持たず、情報を集めながら各地を転々とし、情報を収集していく。
さらに場合によっては斡旋所にて本来ならハンターが請け負う仕事をこなす・・・今となってはむしろ、こちらの方が本業なのかもしれない。故の"ハンターライセンス"である。

プロハンターというものは、世界に約600人しかない。そしてその中で"仕事を斡旋してもらう"ハンターは全体の10%に満たない。過半数が現在でも自由気ままに"自分のしたいこと"をしているのだ。何もそれが悪いというわけではないのだが(基よりハンターというものは"自分のしたいこと、やりたいことを追い求める職業"であり"仕事を斡旋してもらう"というのはとても邪推でハンター精神を殺ぐ部類のものであるのだ。)それを放っておいてしまっては需要と供給のバランスが崩壊してしまう。
そこで"常移動型情報収集組"つまりハンターライセンスを所持した千耳会所属戦闘構成員の出番なのである。
そしてそれこそがハンター試験合格="常移動型情報収集組"などという公式が組みあがった所以であった。

そんな彼らをガブリエルは人生の目標とし、地道に"滞在型情報収集組"にて下積みをしているのだが、どうもこのリオという女性を見ていると、気が抜けるというか、やる気がなくなるというか。
彼女のエリート中のエリートらしからぬ姿に、ガブリエルはもう一度だけ軽くため息をついた。

「で、今日はどうしたのリィ」
「あ、うん。ガブ宛てに会長から指令もらってきたの」
「・・・」

どうして、さきに、それを、早く、いわない!?という叫びが出かかったが、ガブリエルは何とかそれを飲み込んでから一つうなづき、次の言葉を待つ。
少年とて組織の一員。位が明らかに上の人間に対しての口の聞き方などは、骨身をしみて熟知していた。

「会長の例の念で自動再生するから聞き逃さないでね。んじゃいくよ」

リオは瞼を下ろし、次にあけた瞬間にはその瞳に生気はどこにも見当たらず、ただただ深く淀んだ緑色の瞳が虚空を見つめていた。そして彼女はそのいつもならコロコロと変わる表情をすべて凍てつかせ口を開く。

「"やあガブ久しぶりだね。元気だろうか。君がこの孤児院からはなれてもう5年になるが、私にはまるで昨日まで君があの聖堂でお祈りをしていたような錯覚に陥ることがある。年はとりたくないものだね・・・。"」

その声は先ほどまでの彼女のものではなく、往年の男性、それもガブリエルがよく知る人物の声に酷似していた。
というよりも本人そのものの声なのだろう。そのやさしげな顔が脳裏によぎり、ガブリエルは膝の上で手を握り締めた。

「"さて、今回リィから君に届けてもらう指令は・・・そうだな、上に行きたいと思っている君ならば避けては通れない道であるから、逆に君は喜ぶかもしれないね。率直に言おう、来年1月7日から始まる"プロハンター試験"を受験しなさい。君も知っていると思うが、われわれ千耳会はいたるところの組織と中立協定を結んでいる。もちろんハンター協会とも。そしてハンター協会との協定に、年1度行われるプロハンター試験へ1人以上の強制参加が義務付けられている。・・・まあ、戦力保持に協会も必死なんだろうね。念能力者の犯罪件数は近年右肩上がり、そのくせ協会所属のプロハンターは一律平均。・・・最も、今の情勢が完全中立である千耳会にとっては一番都合がいいのだけど。ああ、すまんね少し長くなってしまったかな。まあ今回の指令はそんなところだ。ハンター試験の詳細についてはローとリィに直接聞いてほしい。・・・それと、ガブ。君には本当に申し訳ないが、平行してもうひとつ任務を行ってほしい。といっても、さほど重要でもないのだけれど・・・。いいかいガブ、試験受験者の中にもし"能力者"がいたのなら、できるだけ数を減らしなさい。いいかい、【抹殺】ではないよ。【できるだけ数を減らす】んだ。わかったね・・・では、健闘を祈る"」





<あとがき>
とりあえず3話まで。
どうしようか迷った挙句、原作軸も導入の方向にしました。
どっちかって言うと書きたいのはカイとライの方の話なんですけど、動かしたい人物がガブくんとリィだっていうね。リィはともかくとしてガブくんは・・・もうどうしたらいいの。馬鹿なの死ぬの。
とりあえず原作をベースにして同時間の別の場所(いわゆる「一方そのころ!」的な)にてカイとライを隠密行動させたいんですが・・・はてさてどうなることやら。


【コメント返し的なアレ】
グリィン◆0021b933さま>>
お褒めの言葉恐縮です、まことにありがとうございますっ!

カジキ◆4d40200dさま>>
転生者さんは全員当て馬扱いです。ほんとひどい、誰これ考えたの!←


また、お読みになってくれた延べ約2000人の方、まことにありがとうございます。



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