一年前にハープを奏でてみせるキュルケを見たときは、本気で女神みたいだと思った。『彼』の知識のノートにある、ギリシャの神話の中の光景。まるでその一幕が目の前に現出したかのような姿に見えた。
それはたしかに素晴らしかったのだが、このキュルケという少女はそれだけではなかった。それで彼女のことがわかったと思うのは甘すぎた。
「ラルフ!」
そして、今日もやってきた。小さな―――といっても俺よりは随分大きいが―――真っ赤なじゃじゃ馬が。
新しい日常
ゲルマニアという国はもとは諸侯連合であっただけに、うちとツェルプストーのような関係がない限り、貴族たちの縦・横の結びつきは総じて弱い。が、別にそれは社交界のようなものがないということではない。
で、最近ツェルプストー伯の娘としてちょこちょこそういう場に顔を出すようになったキュルケが、貴族子女たちの人気と羨望を集めるにはそう時間がかからなかった、らしい。
らしいというのは、キュルケの話と最近の現状を鑑みて俺が総合的にそう判断したということなのだが、これはそう間違っていないと思う―――目の前のキュルケと、なんだか機嫌の悪そうな14,5歳くらいの少年を見る限り。最近よくあることだ。
キュルケに惹かれた貴族子女がツェルプストー城にやってきて、遊びに行こうと言われて二人で竜に乗ったら、連れていかれた先には自分よりキュルケと仲の良さそうな貴族の少年がいる。これじゃ気分が悪いに決まっている。これでやってくるのがもっと年かさの若い貴族やなんかだったらいいのだが、今のところこうしてやってくるのは少し年上か同じ年頃の貴族子女ばかりだ。青年貴族のような人なら、遊びに行こうと言われてのこのこ着いて行くのではなく、自分でどこかへエスコートしようとするだろうしな……。
彼らの年ではまだ、笑ってごまかすのもうまくない。「なんなんだよ、こいつは」という視線でこちらを見ているのがまるわかりである。
「はじめまして、マテウス子爵家のものでラルフ・フォン・マテウスと申します。キュルケ、こちらの方は?」
で、せめて悪印象を抑えるべく、下手に出ることにしている。
「ベルゲングリューン伯爵家次期当主、ルドルフ・フランツ・フォン・ベルゲングリューンだ。よろしく」
キュルケの紹介を待たず、ぶっきらぼうに少年が答えた。自分から次期当主と言い出すあたりに、自己顕示欲の強さを感じる。数年後にはがっちりとした肉付きになるであろう大きめの体躯、金色の髪と広い額の下で、意志の強さと頑固さ、あるいは短気さを感じさせる太い眉がしかめられている。立派な名前に見合った堅実そうな印象なのだが、戸惑いと不満を隠しきれていない。
「はい、こちらこそどうぞよろしくお願いします。……で?」
キュルケに視線をやってみる。
「遊びに来たんじゃない」
しれっと答える。あまり期待はしていなかったが、この状況を俺にどうしろというのだ。
「それでどうするつもりかを訊いてるんだけど?」
こうして遣り取りをする間にも、割と親しげな俺とキュルケの口のききかたに、この場にいるもう一人の少年の機嫌がどんどん悪くなっていくのを感じる。
「一緒に遊びに行きましょ。今日は新しい地図もあるし」
「ちょっと待った」
ごそごそと地図を取り出すキュルケを制する。
「ヘル・ベルゲングリューンがいるんだよ。そんなのに付き合わせるつもり?」
キュルケの言う地図とは『宝の地図』のことである。一体どこで見つけてくるのか知らないが、大抵の場合うまい具合に森の洞窟やら無人の館やらが目的地になっていて探検することになる。運が良いと熊や狼と出くわして魔法で吹っ飛ばす事になる。そして、大抵の場合運がいい。当たり前だが宝物はまずない。「非常に運が悪い事に」一度だけちょっとした宝石箱が隠されているのを見つけたのだが、それだけだ。だが、キュルケを次なる探検に駆り立てるには十分だったらしい。最近は物騒な噂をネタに探検に出ることさえある。
こんな危険な冒険ごっこに付き合わされてはたまらないだろう。面倒だから二人で行ってこいと言うこともできるのだが、もし本当に連れて行かれたら哀れすぎる。身を守るのにドットの魔法じゃ頼りない。
「だめなの? えーとじゃあ……」
「お茶にしよう、ちょうど僕の魔法の練習も一段落付いたところだから。ヘル、いかがでしょうか?」
またぞろ平民の服に着替えて街に繰り出すなんて言い出されてはたまらないので、先回りして言う。うちに遊びに来たときに教えてしまったせいで、キュルケはそういう遊びの味をしめてしまった。あの頃は、キュルケがここまで手に余るとは思っていなかった。
「ああ、構わない」
「それでは用意するように伝えてきます。あちらのテーブルにでお待ちください」
中庭の小さなテーブルを示して、使用人を探しに行くことにする。なんで俺がこんなサービスマンのような真似をしなきゃならんのだ……。
「彼もメイジなのか。どの系統を使うのかな?」
「『風』よ。かなりの腕よ?」
だいぶ離れたが、むこうで話している二人の会話が気になってつい聞いてしまう。
「ほう、そうなのか。僕とどちらが上なのか競ってみたいものだな」
「よしなさいよ、『ライン』よ、ラルフは」
ああ、一番いやな流れになりつつあるな……。
なるべくさっさとその場を離れ、使用人が控えているところまで行くと、エリカというまだ幼いメイドが待機していた。この一年で新たに雇入れた子だ。
「エリカ、ティーセットと何かすぐに用意できるお菓子を出してくれないか、三人分」
「かしこまりました。お客様がいらっしゃっていたのですか? 今はビスケットくらいしかありませんが……」
「それでいいよ」
二つ返事で準備を始めるエリカを壁に背をあずけてぼんやり眺めていると、視線に気づいたエリカがこちらを振り向く。
「どこにお持ちすれば良いか言っていただければ、そこでお待ちにならなくても……」
「いや、戻りたくないんだ」
「? ……ああ、キュルケ様ですか」
察したらしく、苦笑するエリカ。正面から来訪せず、週に一度いきなり物々しい軍装の火竜で敷地に降り立つキュルケは、うちの使用人たちの間でも有名である。あまり俺に好意的でない連れが時々いることも。
「連れはベルゲングリューン伯爵家の次期当主だそうだ。ちょっとご機嫌斜めになってるから、頼むよ」
「かしこまりました」
そういってエリカは良い笑顔になる。彼女の母親は以前うちでメイド長まで務めたメイドだそうで、教育が行き届いているのか幼いながらよくできた聡い子だ。
そのまま暫く待っていると、かちゃかちゃと響いていたティーカップの音が止んだ。
「準備できました。参りましょう」
「ああ」
エリカの先に立って、中庭へ向かって歩く。ついてきているのをふと振り返ってみたときに、エリカの耳飾りが普段と違っているのに気づいた。今までよりかなり意匠が凝ったものになっている。左右で双月と太陽のモチーフか? 前はかなりシンプルなデザインのものを使っていたはずだ。
「その耳飾りはいつもと違う?」
「あ、変えたんです。先日私の誕生日を使用人の皆さんで祝っていただいたときに頂戴しまして。わざわざ注文されたそうで、一点物なんだそうです」
「へえ、良かったじゃないか、よく似合ってる」
「ふふ、ありがとうございます」
耳飾りね。アクセサリーの類はあまり良く知らないが、エリカのは随分と出来がいいものだ。エリカの母には皆世話になったという話だったから、皆で出しあって良いものを用意したのだろう。
キュルケなら……太陽か炎をモチーフにするところか? 炎のモチーフというのは女性のアクセサリーとしてはあまり趣味が良い気がしない、そもそもキュルケはアクセサリーの類を身につけない。想像してみるが、似合いそうなものは思いつかなかった。
中庭に近付くにつれ、ベルゲングリューンがヒートアップしているのが聞こえてきた。耳が良いというのは便利だが、聞きたくもないことを聞いてしまうという点では嫌なものだ。
「彼がどれだけ『風』を使えると言っても、ここのマテウス子爵はほとんど軍も持たないそうじゃないか。そんなところの育ちでは、実際の戦いではとても役に立つまい」
「うーん、兵は結構いるみたいよ? 実際、うちの領内の幻獣討伐なんかにはこちらで対応してもらうことも多いらしいし。あ、来たわ」
かったるそうにキュルケが返事をしている。駄目だな、彼の方は俺が気に入らないばかりに、熱くなって本来の目的やなんかも外れつつあるようだ。誰が聞いているともしれないのに、この屋敷で父のことまで悪く言うとは……。俺は怒ってもいいと思う。
何かテーブルゲームの類でも持ってくれば良かったかも。俺が適度に負けてやれば、彼も落ち着きを取り戻してくれるかもしれない。今からでもエリカに持ってこさせるか? と考えながら、挨拶をして席に着くと、眉をしかめたままのベルゲングリューンが話しかけてくる。
「君は風の『ライン』だそうだな?」
「はい、まだまだ未熟ではありますが。ヘル・ベルゲングリューンも風の使い手でいらっしゃいますか?」
「ふん、そうか。いや、僕が選ばれし系統は『土』だ」
悔しそうに言う彼。相変わらずご機嫌斜めで今にも決闘をふっかけられそうだ。恐らくこの男はドットだし、それほど馬鹿なタイプではなさそうだから我慢してくれると信じたい。
失礼します、と言いながらエリカが紅茶を注いで回る。
「あら、あなたのその耳飾り、きれいね」
キュルケがエリカに目をつけた。これまた非常にまずい。
「ありがとうございます」
「それ、ゆずってくれないかしら」
にこやかに答えたエリカの顔がこわばる。
「あの、申し訳ありません、これは大切なものでして……」
「譲って欲しいわ」
「本当に申し訳ありませんが……」
「欲しいわ」
一方通行な会話を続けながら、キュルケは次第に笑みを深くしていく。エリカは本当によくやっていると思う。全く失礼のないように断っているが、それだけでは駄目なのだ。一度こうなるとキュルケは止まらないし、次には手が出かねない。
欲しいと思ったものは、力づくでも何でも、とにかく手に入れる。そういう人間なのだと、この一年で十分に知った。
「ど・う・し・て・も?」
さらにサディスティックな笑みを浮かべてキュルケが問う。最悪だ。たぶん、もう欲しいとかどうとかよりも、奪い取ること、困らせること自体が目的になりつつあるのだろう。エリカはもう答えることもできなくなっている。
「キュルケ、やめてやってくれ。彼女はうちのメイドだよ」
あまり効果がないと知りつつも止めに入るが、さらに余計なことを言い出す奴がいた。
「構わないじゃないか、メイドのものだろう? 君が渡すように言ってやれば良いことだろう」
黙れ豚野郎、と言いたいのをどうにか堪えるが、さっきからのあれこれでこちらも苛立っていて、つい口が余計に出た。
「ヘル、当家のものは当家のものです。あなたにどうこう口を出される言われはない」
「なに……」
「エリカ、もういい、下がって」
「は、はい、いえ、しかし」
「あら? あたしの用はまだ済んでないわ」
「君、それはどういう意味だ」
なんだ、このぐちゃぐちゃな状況は。たった今始まったばかりの茶会だというのに、今までで一番空気が悪い。今までにもキュルケの連れに決闘をふっかけられたりすることはあったが、ここまでひどくはなかった。一度目を閉じて、深呼吸する。
「……エリカ、とにかく下がれ」
「は、はいっ! 失礼します!」
思い切り睨みつける視線でエリカを下がらせた。エリカはぴょこんと頭を下げて走るようなスピードで去っていく。
「ちょっと、待ちなさ……」
「しばらく黙っていろキュルケ」
「なっ……」
俺がここまでひどい言い方をすることはほとんど無いので、さすがのキュルケも俺の苛立ちがわかったらしく言葉を切った。すると今度は脇からベルゲングリューンが口を出す。
「君、さっきから随分と無礼な物言いだな?」
そう、こいつだ。こいつが余計なことを言い出さなければまだなんとか片はつけられたと思う。だいたい、俺が止めていなければ、こいつはキュルケの宝探しに付き合わされていたのだ。どうせ嫉妬で決闘をふっかける口実でも探していたに違いない。ドットの分際で何も知らない癖につけ上がりやがって……。おまけに父のことまで悪く言っていた。無礼というならこちらの話で、さっさと消えろと言いたくなる。
「あなたにはうちのものに口を出される言われはありません。それだけですが、何か? 気に入らなければ、どうかお引き取りください」
「それだけではないぞ。フラウ・ツェルプストーに対しても随分と無礼な物言いだっったじゃないか。どういうつもりだ?」
「どういうつもりも何も……。彼女はその程度のことで名誉を害されたなどと思うほど小さな人間じゃない」
キュルケの方に目を遣ると、「面白いことになってきた」という表情でにやにやしていた。それ見たことか、である。
「ま、別にあたしは気にはしないけど。せっかくだから、あなたたち、決闘でもしてはっきりさせちゃえば良いんじゃないかと思うわ」
ひらひらと手を振るキュルケ。誰のせいでこうなったと思っている?
「望むところだ」
そして即答するベルゲングリューン。はあ、結局こうなるわけだ。
「……わかったよ」
なんでこうなるかな、毎回。俺は深々とため息を吐きだした。
……結果として、現在ベルゲングリューンは俺の『ウィンド・ブレイク』で10メイルくらい吹っ飛び、地べたに頭をぶつけて目をぐるぐる回している。
「ちゃんと連れ帰ってくれよ」
一度も口をつけていなかったカップからぬるい紅茶をすすりながら、芝生に寝かせた彼をさして俺がそう言うと、置いていったらどうなるかしら? とキュルケは楽しそうに笑った。悪意のある笑いなのに、綺麗で腹立たしい。
「やめてくれ……」
キュルケの連れが決闘をふっかけてきたのは、これでもう4人目で、そのたびにキュルケは楽しそうに観戦するのだ。どうかすると脇から火球を飛ばしてくることすらある。
まあ、今までのは彼らがキュルケにいいところを見せようとした、いわば決闘もどきだった。ちゃんと『決闘だ!』という話になったのは、たぶん今回が初めてだっただろう。結果は今までと大した違いは無かったわけだが。所詮はガキの喧嘩である。
「うん、結構楽しめたわよ? 勝負にならないのはわかってたけど」
「わかってるなら煽らないでくれよ。結構疲れるんだ、ほんとうに」
主に精神的に。人と対立するということは、疲れる。
だいたい、キュルケのような才にあふれた例外を除けば、この年のメイジはほぼ全員がドットである。俺もまた例外であり、同年代に魔法で押し負けることはまずない。たいていの相手はあっという間に『ウィンド・ブレイク』で吹っ飛ぶことになる。
先程のベルゲングリューンは土のメイジだ。強固な守りと重量のある攻撃力は、風のメイジに対して相性はいい。このあたりに彼は勝機を見ていたのだろうが、所詮はドットであり、俺が本気で風を操ればゴーレムや土壁くらいはどうとでもなるわけで。その結果として彼は地べたに転がっている。
更にいえばクラス云々を別にしても、普段の俺の生活は、一人で魔法練習、衛士たちと武器の手合わせ、ときどき父の事務手伝い、息抜きに一人で町へ出て食事かお茶。基本的にこれだけで占められているのである。他の連中が同年代と遊んでいる間、ただ黙々と一人で魔法をぶっぱなしている、それが俺だ。魔法で負けるわけがない。
「エリカ、さっきのメイドだけどさ、あの耳飾りはあの子の誕生日に使用人たちが皆で金を出しあって贈ったものらしいんだ。ついさっき俺も聞いたばかりだったんだけど」
「……そっか。うーん、それは……うーん」
なにやら考え込んでいる様子だが、キュルケが何を考えているのかは知らない。キュルケがああいう性質なのはもうわかっているし、それを変えようとも思わない。誰かを変えるというのは、本当に難しいことだと知っている。だからこれは、俺の言い訳のようなものだ。
「そもそも、キュルケにはあの耳飾りは似合わないと思うし」
「なあに、それ。どういう意味よ」
「そのままの意味」
キュルケは不満そうにするが、実際そう思うんだから仕方ない。変に飾るよりも、そのままの方が彼女は美しい。
この一年で、キュルケは身長が伸び、出る所も出てきて、さながら美の神のような完璧な肢体を手に入れつつある。そして、彼女自身も、自分の魅力というものに気づき始めている。男を誘惑するといったことはあまりしているように見えないが、自分の行動で周りの男がどういう反応をするのかということは十分に理解しているだろう。
「ねえラルフ」
カップから目をあげると、キュルケは何か微妙な表情を浮かべていた。
「なに?」
「最近気づいたんだけど、ラルフってちょっとひとと変わってるわよね」
「そう?」
こういうことを女性に言われると、少しどきりとするものだ。
しかし、そんなに変わっているだろうか、と考える。ある意味、世界に一人しかいないレベルでものすごく変わってる、という自覚はあるが、それ以外の点では単なるネクラでしかない。あとは、精神的に同年代を見おろしている、とか。そんな程度のものだ。
「そうなのよ。あなたは変わってるわ」
そっか、と俺は適当に相槌を打った。なんとなく、彼女のいう「変わってる」というのが、世間が父をさしていう「変わり者」のような意味でないのはわかった。だが、自分がどこか特別である、となどいうことを信じるつもりはない。
自分が自分以外にとって価値あるものであるなどという考えは、捨てた方がいい。お前が思うほど、他者はお前を意識していない。お前がいてもいなくても、世界は変わらずに回っていく。お前は特別ではない。『彼』はいつも自分自身に対してそう考えていたし、俺だってそうだ。
要するに、過剰な自信と自意識を持つなということだ。
「……ま、いっか。ね、ラルフ、あのメイドの子に謝っといて」
「俺が? キュルケがじゃなくって?」
「まあいーじゃないの、細かいことは」
あっはっはー、と軽く笑って流される。俺がエリカに謝っても何の意味もない……のだが、この眩い笑顔に誤魔化されて、いつも大した文句は言えず仕舞いになってしまう。
「ああそれから、今度の虚無の曜日は教練がお休みだから、今日行けなかったところの探検に行くわよ」
「また? どうせ何も無いんだし、もっと他の……」
「今度のは違うのよ!」
どうせ同じに決まっている。とかなんだかんだ言っても、結局付き合ってしまうのだが。洞窟や廃墟探検というのは、俺だって嫌いじゃないのだ。野獣なんかがいなければ。
「……信じてないわね? ほんとにいつもとは違うの。お宝探索じゃなくって、謎の屋敷を探索するのよ」
キュルケは真面目な顔を作って言うが、こっちはあまりにもいつもと変わらない内容に思わず噴き出してしまった。
「ク、ハハッ。いつもと一緒じゃないか……。今までだって謎の屋敷は探検してるだろ。大型獣が住み着いてないだけ、洞窟なんかよりはいいけどさ」
「だーかぁら、こんどこそ違うんだってば!」
すごく扱いにくいじゃじゃ馬だが、彼女はいつも俺に明るい何かをもたらしてくれる、そんな気がしてしまう。こんな日々が続くなら、もう何も考えたり悩んだりする必要はないんじゃないかと、ときどき考えてしまうくらいに。
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以下作者の愚痴です。だらだら書いたら長くなった。読まなくていい内容です。
キュルケって、タバサと違って原作中で伏線を回収しきられていないので非常に扱いにくかったりします。
・作中ではわずかに仄めかされただけのヴィンドボナを退学になった「事件」って?
・使い魔がいない。つまり、ヴィンドボナを退学になるまでに使い魔召喚をしていない?
・公爵と結婚させられそうになった。つまり、跡継ぎではない。兄か弟がいる? 家族構成が謎。
・名前に入っている「アウグスタ」が激しく気になる。さすがに皇帝の一族ってことはないよね? 皇帝まだ戴冠してそんなにたってないらしいし。
などなど。地雷だらけ。踏まないように頑張ろう。
ゲルマニアという国も、ヴィンドボナも、原作中にほとんど出てこないからさっぱり想像がつかない。アルブレヒト三世の小物感を見るに、今後も原作の中心地になるとは思えないし。
とりあえずキュルケは昔から欲しいものは何でも力づくで手に入れるわがまま娘だったらしいので、今回はキュルケの性質とラルフとの関係を書く閑話的な物になりました。ロマンチックばっかりじゃ、こっちが持たないよ。前回のだって、原作一巻のオマージュだし。次からは、らるふときゅるけのだいぼうけん的なものにする予定です。
初期ラルフには作者の疑問と欠点を押し付けたキャラを考えていたのに、設定を作り肉付けをしたらなんかまるで別人に。ラルフという人間を外から見たときの描写が足りないのも感じるし、段々一人称で書くのが辛くなってきた……。