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[15186] 養殖品のイレギュラー (AC4 憑依? 関西弁 ネタ気味)第4話消失中。
Name: ふらっと◆28a2754a ID:237c37f4
Date: 2010/08/26 22:28
はじめまして、ふらっとです。AC4のSSを書きます。初めてですのでなにかと拙いモノになるかもしれませんが、頑張ります。

文法上のミス・入力ミス・公式設定との相違などあればドシドシ(?)もらえると助かります。

注意事項です。主に自分に対してですが。

・PS3、及びAC4、ACFAを購入しました。主に戦闘描写などを上手くしていきたいです

・基本的に3~FAまでのネタがほとんどです。しかしながら、「騙して悪いが・・・」などの有名所は出ます

・希に「アッーーー」なネタが出ます。サーダナとかジョシュアとか。そういうのが嫌いな方は読まないことを強くおすすめします

・ある意味当然ですが、アーマード・コアシリーズにある程度知識を持っていないとチンプンカンプンです

・ネタとは言ったもののあんまり面白くないかもしれません。(作者の感性がずれているかもしれません)

・作者は関西人ですが神戸系の関西弁になります。文章について本場大阪の人たちにつっこまれるかもしれません。なにより、文章にしたとたん変な事になるかもしれません。

・なので、遠慮無くつっこんで下さい

・更新が不定期になるかもしれませんなります

・むしろ更新牛歩です。桃鉄です。1ヶ月音沙汰なしが日常茶飯事です。2ヶ月かかる時もあります


※主人公の本名がしばらく出てきません。お察しください

※オリジナル要素(個人的フロム脳)が多々あります

※4のレギュレーションがよく分からないので、FAの1,40を基にして書きます。期待していた方はゴメンナサイ

 ↑AC4を購入したため、FAのレギュとごちゃ混ぜプリンになるかもしれませんが、そこはスルーでお願いします

 パラメータは基本的にFAで行きますが、登場するリンクス(極稀にレイヴン)の機体は、一部を除き皆重量過多スルーです。シュープリスとか、プリミティブ・ライトとか。



※※「更新が遅れて~」「申し訳ありません~」「次はもっと早く~」の件を消しました。これは、新しい方が読まれているときに気分を悪くされるかもしれない、という点で、考えていたことでした。

 もちろん、謝罪を忘れたわけではありません。しかし、全ての話で最後に「更新が遅れて申し訳ありません」という内容が書かれているのは、どうしたものか、と思いまして・・・元々、早く更新できない自分が悪いのですが。


いろいろ書きましたが、できれば楽しんで読んでいただけたら幸いです。


 履歴

 1月7日・タイトルのネタを削除。作者自身ネタなのか半端なシリアスなのかよく分からなくなってきたため

 2月8日・実は重量過多ではなかった事が判明。しかし重量過多した方が面白ゲフンゲフン都合が良いのでそのままに

 2月15日・ネタ気味という言葉がある事に気づき、タイトルに追加しました

 2月27日・タイトル決定。たぶん意味が分からない人が99%だと思いますが、お察しください

 4月4日・なんと更新に4週間。すこしだけネタに詰まってきた。先の話はポンポン浮かぶのに・・・

 5月6日・二度目の更新4週間。しかし、そろそろネタオンリーの日常編に突入できるはずなので更新速度を上げていきたい

 6月28日・ちょっとだけ文章を修正。本編更新が1ヶ月越えそうなのに大事な部分に取りかかれてない・・・急いで更新しないと・・・期末テストをほっぽり出してでも!

 7月27日・とうとう生存報告しないといけなくちゃならないんだろうかと思うほどに長期間放置。いろいろな意味で終わってる。



[15186] 第一話 ナニカサレタヨウダ
Name: ふらっと◆28a2754a ID:237c37f4
Date: 2010/05/26 20:18
 -毎日退屈だ。なにか刺激的なことが無いだろうか-


 学校にはとりあえず行った。周りの奴らも行っていたから。それに行かない理由もなかった。面倒ではあったが、楽しい面もあったから良しとする。

 でも退屈だった。なにもない日常が、代わり映えしない世界が。それは二次元を知るとより顕著になった。

 自分は内向的な性格だったから、家のパソコンでインターネットをしていることが大半だった。たどり着いたのはSS。休みの日はパソコンにかじりついて、ファンタジーな二次元に逃げていた。

 主人公は大変だな、俺ならこういう脇役のほうが・・・無駄なことを考えてもいた。最終的には主人公が好きだったわけだが。ひねくれていたのだろう。

 アニメも好きだったが、TVゲームも好きだった。いや大好きだった。とくにアーマードコアは面白かった。中の人物よりロボット-ガ○ダムやら○ーパーロボットやらがあるので簡単に説明している。知らない訳じゃない・・・何故言い訳してるんだろう?-が好きだった。学校でイロモノ扱いされていた気がする。

 数少ない友人からはリリカルなんたらの話をよくされた。まぁ、このお話には関係ないので割愛する。

 まぁとどのつまり、ハ○ヒ的に言えば「非日常にあこがれていた」と、簡単にまとめよう。自分で言っておいて収拾がつかない。風呂敷を広げすぎたか。



 -だが・・・こういうふうに「非日常」がやってくるとは思いもしなかった、と言っておく。すでに日常ではない気もするが、後で語ろう-

 ・・・少し格好良く決めてみる。自分で言ってちゃ世話無いことに気がついた。




 その日、俺は日課の野良猫観察をしていた。いつもたいてい2、3匹居るのである。ネコ同士でじゃれている姿とか何故かプランターに丸まってすっぽりとはまっている姿とかが可愛くて仕方がな(ry 
 
 閑話休題。

 ともかく、いつも通り野良猫を観察していた。あくまで観察である。触るわけじゃない。大体、触ろうとしたら逃げてしまうかもしれない。そんなことになったら二度と俺の前に姿を現さないかもしれない。もしそんなことになったら・・・とか葛藤しつつ見ているのが常である。

 しかし、今日は違った!

 なにやら猫たちがこっちをじいっと見ているのである。その愛らしい瞳に抱きしめたい衝動に駆られいやしかしそんなことをしたらでもでも(以下略

 そこでとりあえず撫でようと妥協してしまったのが俺の致命的な失敗だったんだろう。

 なんと猫たちは一斉に俺の顔を引っ掻いたのだ!悶え苦しむ俺。そのまま車道に飛び出してしまい、トラック-転生トラックというヤツだろう-に引かれてそのまま神様のところに行ってチートな能力をもらい何処かの世界に転生して能力使ってラスボスを楽々倒して原作ヒロインとのウハウハなハーレムを築いて、幸せに暮らした・・・




 そんな夢を見たんだ。

 もちろん夢である。そんなに事は上手くはいかないのが世の常さ!

 まずトラックのところから夢である。俺が引かれたのは転生は転生でも転生乗用車だっのだ!そんなもん聞いたことねぇよ、という人、俺もだ。

 だって普通のMK-Ⅱだったし。そういえばうちの車はMK-Ⅱだった気が・・・気のせいだろう。

 そして運転席にいた男?の頭が「興」に見えたのは気のせいだろう。後ろの席に「干」と「≧」が居たのも気のせいだと思いたい。俺は悶えていて何も見えなかったはずだ。たぶん。

 そして目を覚ますと・・・

 「こんにちは。神でs「病院に行くことを強くおすすめする」真っ白な空間で変態に膝枕されていた。

 何故膝枕なのか。そしてここはどこなのか。分からないことだらけだ。説明して欲しい、と目の前(文字通り)の男に言い放った、拳と一緒に。イライラしてやった。後悔は・・・

 グルンッ

 「ん?」気がついたら転がっていた。いや比喩でなく。投げられたんだろう。というか膝枕からどうやって「失礼な人間だな。地獄に落とすぞ」そんなことを言われては仕方がない。認めよう。神(自称)と。気に入らないから自称を付けてやる。

 「で?その神(自称)がなんのようなんだよ?」「私が神だと言ったんだ。(自称)などいらん。」なぜばれたんだろう?声には出していないはずなんだが。「神だからさ☆」気持ちが悪かったが、投げられたくないインドア派なのでスルーする。

 そして自分でも展開が意味分からなくなってきた。「面倒だから簡潔に話す。転生してこい」SSの読み過ぎで頭がおかしくなってきたんだろうか?そういえばあの話更新したかn「現実逃避するのは良いが、本当に現実に帰ってこれなくしてやろうか?」「ごめんなさい」

・・・

 まぁ、ぐだぐだになってきたから話をまとめ「アーマードコア4の世界で良いな?」無視された。泣きそうだ。人の話をきかない神様なんて信仰されない「言いたいことがあるならさっさと言えっ!」神様は信仰を大事するらしい。

 「なんでここに俺がいるのか、ってところから説明しt「私はネクストが大好きだからだ。簡単だろう」「さっきの話を聞いていたんだろうか?まあいい・・・訳ねぇだろう!説明になってねぇんだよ!」

 イライラして口調が荒くなっている。疲れた。面倒だ。これ以上コイツと話しているとリミッターが外れそうだ。というかネクスト好きな神様って・・・ハイエンドノーマルをなんだと思ってやがる!

 「そうか、なら話は早い」

 人の話を聞かんのかゴルァ、と言おうとした時神が取り出したのは・・・

 シャキーン( ´∀`)σ

 KIKUだった。いわゆる「とっつき」である。

 絶大な威力を持つソレは一撃ですべてを打ち貫くとさえ言われているが、きわめて運用の難しい武器であり「さぁ、逝くぞ」気がつくと神は俺の後ろに立っておりそのKIKUが俺の尻に向かっt「ちょっ、まっ・・・」

 アッーーーーーーーーー!



 「あぁ、転生させるのはSBR44だった。たしかKIKUは・・・憑依?」







 作者です。一話投稿に時間がかかってしまってすいません。騙して悪いが、一話はここからだ、なんて言えません。

 一話でまだアーマードコアに入れません。関西弁もほとんど使ってません。二話はなるだけ急いで書きます。



[15186] 第二話 これはさすがにひどいんじゃないかな・・・そう思うだろ?あんたも・・・思わ、ないのか?・・・思ってるんだろう?
Name: ふらっと◆28a2754a ID:237c37f4
Date: 2010/06/01 07:43
 前回のあらすじ

 自己紹介をしていたらなんか厨二臭くなっていた。自分で言っといて恥ずかしい。あと神様にナニカサレタ。轢かれた乗用車に「彼ら」が乗っていたのが原因だったのだろう。


 気がつくと、俺はベッドの上で横になっていた。なんだこの状況。

 野良猫に引っ掻かれMK-Ⅱに轢かれた後、神様に出会った時にナニカサレタ気がするんだが思い出せない。思い出さない方がいい気がする。

 そして俺は神様に「様」と付けるような殊勝な人間ではなかったと思うんだが・・・なんだか尻も痛いしいやそれはこの冷たいベッドの上で寝ていたからなんだそうなんだよ。というかこれよく見たら手術台だ。まわりにマッドっぽい科学者が一杯だぁ。アハハ。

 そうして記憶から目をそらしつつここはどこだ、と周りを観察して「なぜ被検体が起きているんだ!」へ?被検「ですが、確かに麻酔をして眠っていたはずです!」

 麻酔?そういえばなんだか体が重いような。なぜ寝ていた?なぜ麻酔?分からないことばかりだ。

 「大事なAMS手術なんだぞ!」「分からない、さっぱり分からないぞ!」あぁ、イライラする・・・ちっ、しょうがないな、あの唯一落ち着いてそうな若い兄ちゃんに聞いてみよう。

 「これどーいう状況なんか、説明してくれへんかな?」「僕にもサッパリだよ、全く。そういえば気分はどうだい?」なんか異様だ、この兄ちゃん、周囲の環境と対比して、焦らなさすぎ。

 「失敗なのか?この私の手がけたリンクス候補生が?ありえない!」誰かなんか言ってるけど聞こえんなぁ。あれ、近くに矛盾が潜んでる。

 「うるさくて頭ぐらぐらするわぁ。静かにならへんか?この状況」「簡単だよ。手術はすぐに終わるから今は眠るといい」

 そういってその兄ちゃんは俺に注射器を刺すと、なんだか眠たくなって・・・

・・・

 「どうすればいいんだぁ!」「落ち着け、眠ったよ」「・・・へ?」「ほら」そういって僕は喚き散らしていた今回のAMS手術の担当をなだめる。

 まったく、あのぐらいで慌てるなんて。彼は当初実績が良かったから一人担当させてみたけれど、ダメだね、こんなでは。

 後でクビにして・・・いや、被検体自体は良好に「機能」していたみたいだし・・・別のリンクスの担当にしよう。

 それにしても驚いたね。僕もさすがに慌てることはなかったけどビックリしたよ。まさか麻酔して5分で目を覚ますとは。それになんだか言葉使いも変だったな。記録しておこう。

 ・・・さて。彼にはすぐ終わると言っちゃったし、早速『AMSプラグ』作りますか。

 いや簡単じゃないんだけどさ。首筋に2,3穴を開けるわけだし。

 

・・・

 次に目を覚ましたら、ベッドは普通のシーツのに変わってた。

 ふう、これでグッスリ眠れる、と思った矢先に、首筋に異様なナニカを感じた。触ってみると・・・




 わお☆なんか堅いし☆人体にあり得ない機械的な感触やな☆


 「・・・ちょっと待てやぁ!これどういうこっちゃねん!なんで首の後ろに金属部品ついてんねん!」ん?金属なのか?これ。風呂入れるかな、錆びひんよな「ってそういう場合じゃない!」

 「目が覚めたみたいだね」・・・あれ、あの時の兄ちゃんだ。「なぁ、さっそくで悪いんやけd」「気分はどう?」

 あの時と同じ質問された、ってか俺の話聞いてるのかな。最近そんなやつとばっか会話してる気がする。

 「まだちょっと頭ぐらぐらするわ。むしろ酷なったんちゃう?」

 ・・・あれ?俺関西弁しゃべっとらん?嘘、マジ?よし、3分間待ってやる!・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふう、なおった。これで大丈夫だ。

 「分からないことだらけだから、とりあえずここはどこか教えてくれないか?」最近同じ事ばっかり言ってる気がする。

 「場所?記憶に障害が?しかも口調も普通になってるな、検査する必要がありそうだな・・・ブツブツ」人の話を聞かない人だね全く。

 「・・・ウィルだよ」

 「へ?」

 「君が場所を聞いたんだろう?レイレナード本社、エグザウィルの地下施設だよ」



 へぇ、エグザウィルといえばあの姉歯建築の・・・あれって地下施設あったんだね「ってえぇぇぇぇぇぇぇぇ「何を驚いてるんだい、No,44-4、通称オービエ君」ぇぇぇぇってオービエェェェェェェェェ!?」・・・って誰やっけ?

 それよりもNo,44-4とか不吉すぎるわ!どんなや!・・・また関西弁が、なおさないと・・・

 





 どうも、作者です。短いですが、なんとか二話が投稿できました。どうも一話がぐだぐだすぎるな、と思いつつ書いてみた二話もぐだぐだでしかも短い。

 憑依先(?)はリンクスNo11、オービエでした。両手にマシンガン持って張り付いてくる(らしい)彼です。いえ彼女だったかもしれませんがこのSSでは男という設定です。

 アーマードコアシリーズは声がないモブキャラだと性別の判断すらできませんからね。そのあたりも面白いんですが。某「神威 瑞穂」みたいに人々の期待をブッチギル人もいましたね。

 主人公が関西弁をなおす理由は次回くらいに。



[15186] 第三話 「手こずっているようだな、手を貸そ「いえいいです」&初陣だよ!全員集合!(敵MT・ノーマルAC的な意味で)
Name: ふらっと◆28a2754a ID:237c37f4
Date: 2010/07/06 12:06
 前回のあらすじ・・・硬いベッドからシーツのベッドになったよ!




 あの兄ちゃんに「ここはエグザウィルだ」と言われてからの事は一言で言えばいろいろあった、というとこだろう。

 まず、俺の名前はオービエで決定らしい。なんでオービエ?って聞いたら、

 「君の横に置いてある缶コーヒーを見てくれ。そいつをどう思う?」と言われたのでコーヒーを見てみると、

 『朝からスッキリオーバード・ブースト!株式会社OBIEから』

 朝からコーヒー飲んでスッキリオーバード・ブーストしたがる奴はいないだろう。間違いなくリバースするし。

 それよりも会社名だ。OBIE?まさか俺の名前は・・・いやそんなはず・・・


 そう思って兄ちゃんを見てみると「僕はそのコーヒーが大好きでね。さすがにオーバードブーストはしないけど。リンクスでもレイヴンでもないし」

 やっぱりかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 あぁ、後で聞いたところ、この兄ちゃんの名前はルースと言うらしい。なんか、限界までエネルギーチャージしてビーム撃った後、サブジェネレーターが暴走して爆散しそうだな。下の名前がカッセルで無いことを祈る。

・・・

 その後いろいろな事を聞かされた。国家が腐りきっている事とか、次世代のACが完成した事とか。何でこんな話を俺にするのか、というかまぁ、この後俺がどうなるかなんて大方想像できるけどね!

 「それじゃ、早速ネクストと接続してみよう。まずこれに着替えてね」ルースはそう言ってなにやらゴテゴテした服っぽいのを置き、「終わったら外に出てきてね」と言って出ていった。

 拒否権なさそうだからちゃっちゃと着替え「一人で着替えられる?手こずっているようなら手を」「いらん」ルースがドアから覗いてきたので蹴り出す。

 着替えてドアから出ると、ルースは俺をどこかに連れて行く。


 「さて、これが君のネクストAC、03-AALIYAHだよ」

 これが・・・ネクスト。『神話の代において、神とは力の象徴であり、力とは神そのものである』を体現したAC。

 ・・・意外と小さいなぁ。さすがネクスト。10mサイズ。

 しかし・・・スラリとした鋭角なボディ、並んだ複眼のカメラアイ・・・ハイエンドノーマルもいいけどネクストも中々・・・

 閑話休題。今の状況を考察しよう。機体はみんな大好きアリャーマン。えぇと・・・ヒットマンと龍殺しとプラズマだから標準装備っぽい。

 きっと内装もフルアリーヤだからENカッツカツだろうなぁ。チャージングはないから助かる。ゲームの中では、だけど。EN管理気を付けとこう。昔っからどうにも苦手なんだよな。

 そういや俺がまだ功績立ててないから初期装備なのかな?

 「さ、あそこから入って」観察終了。実地体験の時間だよ!言われた通り入ることにしよう。なんか後ろのとこが開いてる。あそこから入るんだ、へぇ。

 というわけで、とりあえず入ってみた。ハッチが閉じられて暗い・・・ん?首になんか付いた。これがAMSプラグなのか?確かにちょっと頭が重くなるな、体感的に。

 そして自分が大きくなったような視点。某人造人間も乗るとこんな感じなのかなぁ、と思った。感想終わり。

 しかし結構狭いな・・・うおっ、なんか液体入ってきた!ヌメヌメして気持ち悪い!「それは対Gジェルだよ。あぁ、横にあるヘルメットを付けとかないとヤバイよ☆」「そういうことは先に言いやがれルース!ああ暗くてどこにあるか分かんねぇ!うぉぉぉどこだぁぁ!!」コクピットの中を暴れ回る。

 「無ぇぞ、そんなもん!」「あるよ。ほら、右の赤いボタンを押せば出てく「ボタンの事言いやがれ!あぁもう腹まで浸かっちまった!・・・よし、ヘルメット付けたぞ!」ヘルメットはそのままだとバイザー付いてないよ☆」「んだとぉ!」「まずヘルメットの横のボタンを押して・・・」「早くしてくれ、もう顎が浸かりそうだぁ!」


 ギリギリ間に合ったが、死ぬかと思った。こんな事で死ねるか!

 そのくせしてルースのやつ、「あれ飲んじゃうとかなり気分悪くなるからねぇ。ああ、別に人体に影響はないよ」とか、

 「ヘルメットを付けるのに時間がかかる?そりゃそうさ。あれは予備のヘルメットだからね。外で付けてから入るのが普通だよ」なんて言いやがった。口が三日月みたいになりながら。

 後で絶対ブン殴ってやる。お前が!泣くまで!殴るのを!やめない!


 でもまさか「じゃ、このまま出撃しようか」なんて言われるとは思わなかったよ。

 たしかによく考えれば接続だけなら特設の装置があると思うし、無いとしてもアリーヤに武装付けるわけ無いし・・・でもキツくない?さすがに。

・・・

 「いきなり出撃なんて、大丈夫なんですか!?」彼の担当になったオペレーターが鬼気迫る勢いで問い詰めてくる。たしかに彼には戦闘に関して何の訓練もしていない。

 「これは本社の決定事項なんだ。目標も小規模な基地だし。それに心配なら君がしっかり教えてあげればいい」

 「・・・っ、了解しました」彼女も納得してくれたみたいだ。まぁ、他に選択肢はないけど。そういえばオービエは普通に受け止めていたね。

 僕の冗談にはイラついていたみたいだ。コーヒー会社の会社名から名前付けるのも新しいと思うけどなぁ・・・それはともかく。

 一切戦闘に関する訓練を受けていないリンクスと、調整されてない新品のネクスト。勝利の鍵は、圧倒的な機体性能と彼自身の高いAMS適性。

 ネクストだし大丈夫だと思うけどね。実は本社から命令なんて来てないし。

 この前別のリンクス担当が「うちの新しいリンクスが明日出撃するんだ、へへーん。そっちのリンクス候補はまだ戦闘訓練どころかAMS手術もしてないんだろう?早く調整終えないと、この戦争終わっちまうぜぇ?」なんて言ってきた・・・正直気に入らない。

 いや、奴に張り合って調整の終わってないオービエを戦場に放り出す訳じゃないよ?・・・本当だよ?

 それに面白いことになりそうだしね☆・・・ぁ、つい本音が。

・・・

 「作戦を説明します。

 目標は北アメリカ東端に位置する小規模な軍事基地です。

 この基地は周囲の主な基地が壊滅し、孤立状態にありますが、降伏を受け入れず、抵抗を続けています。

 これを殲滅するのがあなたの初陣となります。」

 「ホンマにやるんですか~」「はい、ホンマにやるんです。」

 「戦い方も知らんのに?」「出撃前に私が説明します。安心して下さい」「ハァ~」

 「では、出撃は一時間後ですので、説明を開始します」「早っ!今から!?」「もちろんです。本来なら数ヶ月かけてじっくりと説明するものですから、かなり詰め込みますよ?」「じょ、冗談じゃ・・・」

 こんなやりとりがあったけど、とりあえずこの一時間は地獄だったと言っておく。

 おかげで射撃できるようになったよ!半分くらい気絶しかかっててあんまり聞いてなかったけどな!

・・・

 「現地に到着しました。作戦、開始して下さい」

 「一応聞いておくけど味方は?」「小規模な基地をリンクスが襲撃すると言ったら、却下されました。大体あなたは現行最強の兵器に乗っているんですから当然です」「ですよね~」

 しょうがないよね。ネクストだし。コジマ汚染酷いだろうし・・・腹を括るしかないよ、全く。

 さて、はりきって逝くとしますか!GO TO HELL!

・・・

 「敵襲?あれは・・・例の企業の新型ACじゃないか!?なんでこんな辺鄙な基地に来るんだよぉ!」
 「つべこべ言ってないで、迎撃するぞ!意地を見せろ!」
 「ちくしょぉ、ついてねぇ、ついてねぇよぉ!」


 はい、ただいま襲撃中のオービエです。アリャーマンの高めのPAでMTやらなにやらの攻撃はほとんど効いてません。

 飛んでくるミサイルはクイックブーストで回避「ドヒャッ」衝撃はすごいですが、便利です。

 そういえばクーガー製ブースターは安定性悪そうだよね、なんか。それもGAのリンクスが酷い原因の一つだったのかな?

 いろんな意味でレイレナードでよかった、とおもいつつヒットマンを乱射!とは言ったものの、やっぱりアリャー腕ですね。

 腕自体が動くのは速いんですが、照準が甘い気がします。無駄弾たくさんです。遠距離だとロックオンすらしてくれません。

 というかプラズマの使い方分からないよ。背中の武器とかどう使えって言うんだ!

 へ?口調が変わってる?気のせいでしょう。

 ともかくネクストの性能のおかげで、無双状態です。これなら案外「敵ノーマル部隊を確認!」「へ?」と言われたとたん強い衝撃ががががが

 ・・・ってぇ・・・国家のノーマル部隊の攻撃のようです。バズーカ?

 「撃て!撃ちまくれ!銃身が焼け付くまで打ち続けるんだ!」なんだか100mmマシンガンのような気がします。第8小隊とかでしょうか。

 そもそもマシンガンじゃPA越えるわけ無いからそんなはずないんですけど。

 遊んでる場合ではないようです。PAごしにドカドカ当ててきま「ちょっ、まっ・・・痛い痛い痛いって・・・」「リンクス!?大丈夫ですか?リンク「うるさい!」・・・え?」

 「痛ぇっつってんだろうがこの野郎!」あぁ、イライラする!オペレーターがビックリしてる気がするけど後で考える!

 とりあえずクイックブーストで弾幕から抜け出し、基地を盾にする。

 作戦考えよう・・・特攻とか?よしそれ採用。OBで突っ込みながらブレードで全員八つ裂き。決定。

 「リンクス?」オペレーターがなんか言ってるけどスルーパス。

 龍殺しじゃ射程短い?一機斬った後、前QBして射線から逃れりゃいい。

 一機ずつ『デッデッデッデストローイ』すりゃぁいい。ノーマルの弾幕?QBで避ければいいじゃん。

 それじゃぁ、特攻作戦、始まるよ!「リンクス!」オペレーターに怒られた。

 「なんですか?」「やっと返事をしましたか。戦闘に入ってから一切返事をしないので」

 「心配した?ねぇ、ね「心配してません。それで、どうするんですか?敵ノーマル以外は全滅ですが機体は危険域のダメージを受けてますよ?」」

 軽くスルーされた。自業自得だからしょうがないとはいえちょっと悲しい。でも危険域のダメージ?たしかにボコスカ食らったけど、と機体をよーく見てみる。

 見るべき目がなかった。というより潰れていた。

 「あっちゃぁ」そういえばさっきバズーカボコスカ食らったとき頭がめっちゃ痛かったからなぁ。

 というか複眼で良かった~。全部は潰れてないみたいだ。頭が吹き飛んだらさすがにどうしようもないけど。

 他に損傷は?・・・一切使用されていないプラズマが無傷で、ボディがバチバチ鳴ってた。何でやねん!背中にあるからか!

 「私としては、撤退を推奨します」「ダイジョブ、ダイジョブ」

 「大丈夫ではありません!」「ダイジョブダッテ、中国人嘘ツカナイヨ」

 「中国出身だったんですか?」「いんや、純正日本人」

 「日本人が北欧のレイレナード社に?スカウトでもされたんですか?」「細かいことは気にしない、気にしない」「気にします!」戦場の会話ではないよな。コレ。

 「ともかく!」「それじゃぁさいなら!」「待ちなさい!」・・・あれ?普通ここで通信切っちゃうもんじゃない?カッコよく・・・俺切り方知らんがな。ま、オペレーターの「リンクス!聞いているんですか!」怒号をBGMにして、突っ込みますか!


 まずプラズマをパージ。使えない物背負ってる意味無いし。そういやなんでパージの仕方は覚えてたんだろうか?

 次に敵の位置を確認してOBを起動開始。初体験と行こうじゃないか!・・・自分で言うとこんなに空しいのか。

 OBを展開しながらQBで飛び出すと、案の定弾幕に晒された。しかしさっきより遠くなってる。警戒したのか?ともかくOBを起動する。

 「うおぉぉぉぉぉぉ」雄叫びじゃない!Gがかかってまともにしゃべれなくなっただけだから!

 バズーカの銃口がこっちを捉えた。右にQB「ドゴォォ・・・」地面に当たって爆発したみたい。後ろ過ぎて見えんけど。

 龍殺しの射程に入った。OBを停止し、慣性+ブレードホーミングをかけて一体目を切りつける。

 頭をかち割ってやろうと縦斬りにしたけど、射程が短い事を忘れてた。突けばよかったと後悔。あれ?そういう問題か?

 ギリギリコクピットは切れなかったみたいで、そのノーマルはまだ動く。ブレードをもう一回振るのは無理。OBとQBとブレードホーミングのせいでENほとんど空だから。

 ならどうする?マシンガンがあるじゃないか。ブレードでほとんど外部装甲が吹き飛んだノーマルにマシンガンを叩き込む。

 他のノーマルがこっちに銃口を向ける。前のノーマルに手こずったから遅れた。「どないしょう、そやジャンプしょう!」

 というわけで、逆間接じゃないけど軽めな中量二脚のアリーヤのジャンプなら結構飛べるだろうと思い「さぁ、レッツ・ジャンプ!」

 結果。あんまり飛ばなかった。ギリギリノーマルの骸が超えれたからよしとする。この時アリシアがほしいと思った。

 その後はクイックターンしてバッサバッサと一機一機落とした。もちろん今度は突きで。

 コジマパンチのマネさ!・・・まだ作られてないけど。とゆうか普通のブレ振りでノーマルが墜とせないとは思わなかった。

 踏み込みが浅かったんだろうか?威力的には一撃のはずだけど・・・ゲームそのままとはいかないか。

 そうしてノーマル全機撃破して、今回の作戦は終了した。

 回収のヘリで本社に戻ると機体ボロボロ+プラズマパージでルースに怒られた。あれ、すごく理不尽な気がする・・・Wトリガー欲しい。ブレード危ないよ。ENカッツカツだったよ。プラズマ外そうかな?全く、さんざんな一日だった。濃い一日だった、とも言う。

 ・・・気がついたら関西弁使ってた。学校では周りの奴らから白い目で見られてたから、自然と標準語になってたはずなんだけど、カッとなると知らず知らず関西弁になってまうのは治らんかったからな・・・

 あれ?別にもう治さんでもええんとちゃう?違う世界だし。よし、素で行こう、素で。ヒャッハー!もう我慢できねぇ!




 作者です。前回短かったのを気にして(ちょっとだけ)長くしてみました。しかし強引に戦闘シーンまで入れる必要は無かった。初接続から初陣に直行。自分で書いといて無茶だな、と思います。でも後悔しない!

 AMS接続よりもGジェルに驚いたオービエ君です。国家解体戦争時代なら、本来はネクストtueeeeee状態になるはずなんですが、ゆとり教育+インドア派の彼をなめてはいけません。

 前半PA頼りで戦っていたため、ノーマル部隊のバズーカ弾幕に固め殺されそうになりました。

 遅れましたが、感想ありがとうござます。一話がないことに関するつっこみだけでしたが・・・申し訳ありませんでしたぁ!


 寒苦鳥様・・・感想ありがとうございます。誤字修正、受けました。申し訳ございません。

 また、4話の件を知らせて下さってありがとうございます。



[15186] 第四話 ロケットカーニバルです!・・・とか言ってみたい。内容消滅中
Name: ふらっと◆28a2754a ID:237c37f4
Date: 2010/06/28 21:57
こちら側のミスにより、完全に内容が消失しています。復旧にはかなり時間を要する上、完全にビフォーアフターしないといけません。


・初陣の件でルースに謝られる
・回復したルースにブレオンアセン勧められてキレる
・帰って寝ようと思ったらエグザウィル内で迷子
・かと思えばなにやら目つきの鋭い男(ベルリオーズ)に捕まる
・コーヒーを頭に当てられてビックリする
・コーヒー(OBIE社製)に因果を感じる
・ベルリオーズと世間(ミッション)話
・ザンニ来訪
・ベルリお仕事、名前を聞かれる
・苦渋の選択で、『オービエ』と名乗る
・コーヒーとの関係を慌てて誤魔化す。ベルリ退場
・が、ザンニにコーヒー会社のことバレる
・3分で仲良くなる
・ザンニ>>>>越えられない先輩後輩の壁>>>>オービエ
・オービエのロケット好きが発覚
・ザンニが引きつった笑顔をし、そのまま別れる
・オービエアセンブル決定!
・結論:重量過多
・同時にルースへのロケット談義(お話しようか?)確定


雑多な内容は、こんな所です。本当に、申し訳ないです。



[15186] 第五話 メメント・モリ 意訳『ロケットを思え』『テクノクラートを忘れるな』・・・え?違う?
Name: ふらっと◆28a2754a ID:237c37f4
Date: 2010/07/26 23:27
前回のあらすじ・・・ルースに騙された。ベルリに目を付けられた。ザンニに引きつった顔をされた。ロケット万歳!





 ※最初オービエが真面目に見えるのは、ロケットを手に入れるために頭の回転が3倍になっているからです。

 初陣の次の日。朝から俺はルースを待ちかまえていた。

 俺は何としてもルースを説得し、ロケットを勝ち取らなければならない。幸い今はまだ国家解体戦争中だ。企業間で張り合っている場合ではないだろう。

 逆に言うと、国家解体戦争が終結すれば、敵対企業の対立は深まるばかりだ。迅速に行動しなくてはいけない。

 加えて、戦争は一ヶ月ほどで終結したはずだ。俺自身が目覚めていたときには戦争は始まっていた。

 ザンニとの会話から想像して、中盤から終結間近にまで迫っているだろう。時間はあまりないと考えていい。

 しかし俺は戦績が小さすぎる。未だに一度しか出撃していない。戦闘自体も辛い勝利だった。

 ・・・そういえば、ベルリオーズは最新型ノーマルと言っていた。どのあたりが最新型だったのだろうか。疑問に思ったのはバズーカと前面装甲だ。

 たしかに前半、俺はPA頼りの単純な戦術で通常戦力を排除していた。少しPAが減衰していたかもしれない。

 だが、そんな状態であろうが、ノーマル程度の火器がネクストに危険域のダメージを与えるだろうか?

 否だ。

 俺が棒立ちしていたのは10秒前後だった。8機の新型がいたことから考えれば・・・バズーカの連射速度は1発/4秒位だったと思う。

 すると15発前後弾丸をもらっていたことになる。・・・意外ともらっているな。

 もしこれが『対PA能力を重視した新型のバズーカ』だとしたら、危険域に陥るのもうなずける・・・いや、アーマードコア4というゲームの中ではノーマルのバズーカでそこまで削られることはなかったはずだ。

 ならば・・・KP出力の低かったレギュレーション1,00か?しかしこの間アセンブルした機械のデータは最新レギュレーションのものだったと思うんだが・・・後で考えよう。

 次に、DRAGONSLAYERの一振りで削りきれなかった前部装甲だ。

 おそらく、ジェネレーター・FCS・ラジエータなどの内蔵部品を後部に押し込めて、前面の装甲をひたすら強化した、というところだろうか?

 前面装甲を龍殺しで削り取っても爆発せずまだ動いていたからな・・・そんな作りで動くのだろうか?

 専門的な所はルースに聞いて対策を立てて・・・思考がそれてしまった。対策も大事だがロケットはもっと大事だ・・・

 -10分後-


 コンコン、と音がした。思考を纏め、整理する。おそらくルースだろう。ここで俺がルースを説得できるかどうかが俺の運命の分かれ道となる・・・!

・・・

 「おはよう、気分はどうだい?」そう僕はオービエに問いかける。「今日は山ほど聞きたいことがあるんだ」

 「奇遇だな、俺も聞きたいことがあるんだ」

 「なら、そっちからでいいよ。急ぐ用事でもないし」「そうか・・・ならまずはアセンブルに関してだ・・・ほら、返すよ。データも入ってる」そう言ってオービエはあの機械を投げる。

 僕はそのままボタンを押して「・・・これはふざけてるのかな?オービエ」「ふざけてなどいない。特にロケットに関してはな」

 「そこが一番問題なんだけど・・・仮にもテクノクラート製だよ?良い関係とは言えない企業だよ?分かってる?重量過多とか、ブレードが無いから弾が心配な事とかは置いといて」

 「それを理解した上で、使いたいんだ。頼む、この通りだ」そうしてオービエは地面に頭を擦りつけた。

 「な、何をしているんだ!?・・・そこまでしてロケットが使いたいのかい?」

 「その通りだ。爆風を使えば纏まった通常戦力の排除にも役立つし、なにより破壊力がある」

 「それならグレネードのほうが良いんじゃ・・・」「グレネード?連射できないし、展開が遅いし、なにより有沢重工はGA傘下の企業だ。入手が難しいことはロケットと大差ない。ベルリオーズの方もかなり無理してたみたいだしな」「それは・・・」「なによりロケットってのはなぁ・・・」

3時間後・・・

 「・・・だから、ロケットって言うのは至高の兵器なんだよ」「あぁ、そうだ。ロケットは素晴らしい!最高だ!」「な!そうだろう!」

 洗脳完りょ・・・ゲフンゲフン、新たな同志の誕生だな。説得にも骨が折れた。やはり企業専属の科学者というのは感覚が自社製品で固まっていたんだろう。

 「早速ロケットを手配して・・・と行きたいんだが、問題がある」「ロケット自体が入手できないとか?」

 「科学者の横の繋がりを嘗めてもらっては困る。入手自体は問題ないんだ。ただ、上が納得するかどうかさ」「やはり、本社をどう説得するか、か」

 「戦績を上げようにも、そう上手いこと大きい作戦が回ってくるわけじゃないしね」・・・戦績か。

 「・・・そうだ!シュミレータかなんかのデータで高い戦績を出せば本社も納得するかもしれない!」「なるほど!その手があったか。早速手配するよ。ええと」

 ぐぅぅぅ~~

 「・・・手術から起きて、何も、食べて、いなかった、という現実を、興奮して、忘れてた、つーか、限界・・・バタンッ」

 「おい!しっかりするんだ、オービエ!・・・食堂は遠くないぞ!」

・・・

 あ・・・ありのまま今起こったことを話すぜ!

 『腹が減りすぎて気絶したと思ったら、いつのまにか食堂で大食いにチャレンジしていた』

 な・・・何を言っているのかわからねーと思うが、俺もなんでこんな事になってるのかわからない・・・

 腹が・・・どうにかなりそうだ(食い過ぎで)

 練習無しの初陣とか、ベルリオーズの眼光とか、そんなちゃちなもんじゃぁ断じてねぇ

 もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ・・・


 どうも、オービエです。気が付いたら大食いに挑戦していました。なぜ?周囲も歓声でいっぱいです。

 「凄いじゃないか!さすがはオービエだ!」どこがさすがだ!と言いたいが腹がいっぱいいっぱいだ。状況説明求む・・・うっぷ。

 「何故・・・こうなった?」「何言ってるんだよ。倒れた後、突然目覚めて僕に食堂の場所を聞いて、駆けていったんじゃないか。

 何事かと思ったけど、君の動作があまりに速すぎてね。遅れて食堂に着いてみればこの有様だよ」

 なん、だと・・・どういう事だ、記憶に無いぞそんな事・・・「ずいぶんと楽しそうなことになっているな、オービエ」

 なぜベルリオーズがここに・・・「おや、やっぱりオービエか。元気そう・・・どころじゃないね。これは」

 なんでザンニまで・・・頭がパンクしそうだ!ん、腹一杯になって眠たくなってきた。とりあえず(現実逃避として)眠ることにしよう・・・zzz

・・・

 ル「・・・オービエは寝てしまいましたね。まるで子供だ」

 ベ「で?話とはなんだ?」

 ザ「(ロケットの事だろうなぁ・・・)・・・」

 ル「実は・・・オービエのアセンブルにテクノクラートのロケットがありまして」

 ザ「やっぱりか・・・」

 ベ「テクノクラート製のロケットか・・・これまた変わった一品を・・・」

 ザ「アセンブルについて相談された時、同意を求められた僕はどう対応すればよかったんでしょう?」

 ル「ロケットは素晴らしい武器ですから、出来る限り答えたいんですが・・・本社が納得するかどうか」

 ザ「(この人ロケット賛成してるのか!)・・・ベ、ベルリオーズはどう思うんだ?」

 ベ「確かに、ロケット自体悪くない兵装選択だと思うがな」

 ザ「「え?(ベルリオーズ、お前もか・・・)」」

 ル「「え?(ここにも同志が・・・)」」

 ベ「グレネードより一撃の火力こそ劣るが、連射が効くし、単価も安い。便利じゃないか」

 ザ「でもな、ベルリオーズ。あれはFCSのロック機能が効かないんだぞ?使うには・・・」

 ベ「相応の技術が必要だろうな」

 ザ「分かっているなら、何故?」

 ベルリオーズがおもむろに手を組み、残りの二人は固唾をのんで待つ。

 ザ&ル「・・・」


 ベ「面白そうじゃないか」

 ズルッっという効果音と共に、緊張感がゼロになる。

 ザ「ベ、ベルリオーズ?お前はたしか合理主義者だったと思うんだが?」

 ベ「おや、ザンニ。何を言っているんだ。私は確かに合理主義者だが、それ以前に快楽主義者でもあるんだよ?」

 「こんなのがうちのNo1でいいのか!レイレナード社!」と自分の会社に疑問を抱きつつあるザンニがいた。

 ベ「こんな、とは酷いな。アンジェだって出撃がないときは弟子と一緒に道場で剣を振ってるような奴だし、それに他企業のトップのリンクスは変わり種揃いだぞ?

  『イクバールの魔術師』とも呼ばれているサーダナはゲ・・・衆道者だと聞くし、

  インテリオルのトップ『サー・マウロスク』はリンクスネームに敬称を付けるほどプライドの高い男だ。

 さらに言えば『BFFの女王』と呼ばれるメアリーシェリーは天性のサディストと聞くし、さらにさらに・・」

 ザ&ル「「・・・」」

 企業のトップリンクスは変人ばかりのようです。

・・・

 ZZZ・・・よく寝たな。ここはどこだ?俺の部屋だ。何故ここにいる?おそらくルースが運んでくれたんだろう。

 意識のない間に居場所が変わっていることが多すぎて慣れてきた。いや、慣れたくはないんだけど。

 体を起こせば、ベッドの隣にルースが座っていた。なんだか憔悴しきった顔だ。何があったんだろう?俺の体が予想外に重かったとか「いや、待て、『運ばれた』?」

 俺は一体「どうやって」運ばれた?予想として何パターンか浮かぶ・・・最悪のパターンは『お姫様だっこ』だ・・・

 洒落にならない。恥ずかしいとかいう次元じゃない。終わっている。社会的に。この歳になって・・・?

 そういえばこの体は何歳なんだろう?他にもこの体本人の名前とか、身長とか、体重とか、身体能力とか・・・

 「俺自分のこと全然知らんやん・・・」「それは僕が聞きたいよ」おお、起きたのかルース。それよりも・・・

 「・・・どういう事や?」「僕も君の出生については分からない。データにも『身元不明』としかなかったんだ。ここまで不明瞭なのも珍しい」

 なんじゃそら。「分かるだけ教えてくれ」

 「ええっとねぇ・・・現在の情報だよ。


 身長は170cm、体重は65kg。年齢はおそらく15~6歳だろうから、数値上は平均的。

 AMS適性はA+・・・QBを連続で噴かしても気にならないくらい。一言で言えば、かなり高い。

 どうにも研究員の一人が拾ってきた捨て子だったらしい。拾った科学者本人が育てていたけど、最近の検査の結果AMS適性があることが分かり、それ以来リンクスとして育てられるようになった。拾った科学者はどうやら行方不明みたいだ・・・

 AMS手術前は感情に乏しく、人形と評するのがあまりに似合う素体だった。電気ショックでやっと反応するくらいの。これってただ感覚が鈍感なだけじゃないかな?

 しかし、AMS手術中に突然目覚める事故が発生。それ以来、妙に明るく感情の起伏の激しい人間となった。

 知識もあり、それなりに外交的ではある。なぜか自分が日本人であると主張している。

 ・・・正直、これぐらい。あと、君の名前はオービエで登録されたから」

 「・・・意外とブラックやなぁ・・・って、さりげなく流すな!なんでオービエで登録されてるんや!」

 「しょうがないじゃないか。君自身が認めたんだから」「は?」

 「ベルリオーズに、自分の名前はオービエだって説明しただろう?」それがどうしたというんだろう?「上に問い合わせたらしくて・・・」

 「・・・問いつめられてオービエとしか答えられなかったってか?」「よく分かったね」

 ・・・もう諦めよう。俺の名前はコーヒー会社の会社名だ。うん、泣きたい。

 「機体の名前も、機体色も決まってないね、そういえば」たしかにそうだったな・・・もうどうでもいいよ(泣

 「色は・・・青で。名前は『メメント・モリ』で頼むわ」「ずいぶん適当だね。別にいいけど。意味はたしか・・・『死を思え』とか、『死を忘れるな』とかだったかな?」

 『死を思え』か。なかなか壮大な事やな。でも、



 『そんなことはとっくの昔に忘れてしまったことや』



 『死』なんて何でもない。そこにあるのはただの『終わり』や。だから俺は『自分の手で殺した命』をなんとも思わない。『死』んだ物は物でしかない。

 ・・・こんな考えが、ただの空想の厨二な設定であったならどれほど良かったやろうか。『アレ』が俺のイタイ妄想であればどれほど良かったやろうか。

 ・・・あー、やだやだ。シリアスなのは苦手なんや。機体の名前をなんか他に考えよか。

 第一候補は『ストレイド』

 突然この世界に迷い込んだ山猫やから、意味的にはピッタリや。でもさすがにFAの主人公の名前パチるのは不味いと判断。はい、次の方。

 第二候補は『シンカー』または『リメンバー』または『フォール』

 言わずと知れた4・FAの名曲。でも『思想家』とか危なすぎるし、『墜ちる』とか縁起が悪すぎる。

 動詞を前に出した命令文なら『墜ちろ!』だけど、某白い悪魔なNTが浮かんできて自分がそこまで凄くないことを思いだし、自粛。

 『思い出せ』は・・・何を思い出せと言うんだろう。身に覚えがないな、アハハハハ。これもスルー。

 いろいろ案が浮かぶなぁ。却下される案が大半だけど。





 作者です。上手く話が纏まらず、最終的にちょっぴりシリアスに逃げたり、「」の前に名前を使ってみたりと編集・改悪を繰り返した結果がこれです。

 毎度のことですが、文法・語句の間違いや、読みづらい、分かりづらいなどの指摘をお願いします。



[15186] 第六話 ベルリと俺と、時々ルース 前編
Name: ふらっと◆28a2754a ID:237c37f4
Date: 2010/04/02 18:55
 前回のあらすじ・・・お、おれの黒歴史がぁぁ!




 「これで・・・終わりだ!」ベルリオーズのネクスト・シュープリスのグレネードが、その砲口を向ける。

 「リンクス!」オペレーターの声が聞こえる。そういえば『オービエ』という名前はもう伝えたはずなんだけど、なぜか彼女は『リンクス』としか呼ばない。

 もしかしなくても俺のこと嫌い?身に覚えがありすぎて困る。あっ、グレネードが飛んでき「ドゴォォォーーン」

 こうして、ベルリオーズとの模擬戦は5戦0勝5敗に終わった。なぜこんな事になったのだろう。


 --2時間前--

 「シュミレータの準備ができたって?」

 「30分後に第2シュミレータルームに来てくれ・・・あぁ、5分前に呼びに来るから」

 「いよいよか・・・」「ネクストも君の要望通りのチューンを施してある。シュミレータ上だけどロケットも付いてる。これ以上は望めないよ」

 「名前に関しては、『メメント・モリ』でよかったのかい?」「ああ」

 結局、機体名は『メメント・モリ』のままだった。俺が使うには意味のない言葉だけど、こんな所ででも使っておかないと、そろそろ『忘れた事自体忘れてしまいそう』だ。

 べ、別に俺のボキャブラリーが少ないとか、『メメント・モリ』って結構格好いいなとか、

 レイレナード系統の名前って二重の意味がかかってるから考えるのが難しいとか思ってるわけじゃないからな!・・・電波が。リンクスになって、その辺も敏感になったんだろうか?

 それはともかく、「やぁぁってやるぜぇ!!」ダ○クーガ風に。


 --第2シュミレータ室--

 「・・・あれ?ベルリオーズ?」ルースに連れられ到着した第二シュミレータルームには、なぜか耐Gスーツに着替えたベルリオーズがいた。ちなみに俺も耐Gスーツに着替えている。

 「オービエか。今からシュミレータをするらしいな、頑張りたまえ」

 「そりゃどうも・・・それはそうと、なんであんたも着替えてるん?」

 「クックック・・・終わってからのお楽しみだ」嫌な予感しかしない。怪しすぎるぞベルリオーズ。

 「さ、準備は良いかな?」ルースが問いかけてくる。すぐに、なんやら○ンダムのアーケードゲーム『戦場の絆』の球がでかくなったような機械に入る。

 後ろからAMSプラグが伸びてきて俺の首に「ぬっ!?」以前よりは頭が軽くなったけど、足にも違和感が。これは・・・新しい、惹かれるな。さすがに快感にはならないが。

 「AMSは最適化されたけど、機体が逆間接になったから、足に違和感があると思うけど、問題無い?

 君は適性があるから大丈夫なはずだよ。適性の酷いリンクスなら、接続だけで気絶してしまう場合もあるから・・・ああ、この適性っていうのはAMS適性とは別物だから」

 そういえば、AC4系列には逆間接・タンク・四脚のリンクスはそんなに多くなかった気がする。これのせいか。

 「あとはオペレーターに聞いてね」そう言ってルースとの会話は途切れ、あのオペレーターに代わる。


 「今回のシュミレータは、レイレナードのリンクス、ベルリオーズの攻略した基地を再現したものです。

 再現とはいえ、実際は同じ位置に、最適な行動をおこなうように設定された同数の敵機を配備したものです。気を抜かないでください」


 ベルリオーズの攻略した基地って、なんか敵多そう・・・だが!ロケットを装備した俺には問☆題☆外☆だ!

・・・

 「これは・・・」今、私の前には信じられない事が起きている。

 リンクスの機体『メメント・モリ』は彼の要望通り、逆間接・単発ロケット・両手にライフルとマシンガンを持つ重量過多した機体構成になっていたはずだ。

 なのにこの現状はどういう事だろう。彼は戦場をQBを使って縦横無尽に飛び回り、最低限の機銃を無視し、ミサイルを避け、

 その上で、なおかつFCS補正のかからないロケットの爆風と連射力を最大限に使い敵の集団を確実に焼き払う。

 後ろで「さすがロケットだ!グレネードなんかとは比べ物にならない!」とか聞こえてくるが、放っておこう。

 以前出撃した時とは比べものにならない。しかし、本当に比べものにならないのはそこじゃない。

 「リンクス、右前方に「ふはははは!ロケットカーニバルです!」

 「リンク「粉砕☆玉砕☆大喝采!」

 「リ「ハイ☆テン☆ション☆だぁ!」

 人の話を聞かなかったのは以前も同じだが、まだ本人は静かだった・・・うるさすぎる。耳に直接大音量の声を聞かされる私の身にもなって欲しい。

 大体前も私の話を聞かなかったのを反省していないんだろうか?オペレーターとリンクスは一体となるものだというのに・・・

 シュミレータが終わったらお話(説教)しないといけないようですね・・・「フフフ・・・」

 この笑い声を聞いたルースは、自分の事でもないのに背筋が凍る思いだったという。

・・・

 「お、重い・・・調子に乗って重量過多とか組むんじゃなかった・・・」

 はい、オービエです。現在四苦八苦しています。重量過多ホントに半端ないッス。

 機体の挙動だけでなく、リンクスである俺まで重くなったんじゃないか、と錯覚しそうです・・・あ、この間大食いしたから体重は増えてるかも。

 しかしこれもロケットを手に入れる為の壁!なら仕方ない。QBと、逆間接のジャンプ力で強引に動かす!

 そう決めた後は速かった。いや『たぶん』速かった、と言う方が適切だろう。

 敵陣のど真ん中に突撃!「その間に、オービエはロケットでMTの集団を撃ち、爆散する」してないしてない。嫌な独り言だ。そう言ってる間にロケットを連射!

 しかし「ドゴォォーーン」こうしてロケットを撃ってると「ドガァァーーン」なんかテンション上がって「ドカァァーーン」

 「フハハハハハ!ボーラボラボラボラボラボラボラボラァ、ボラーレ・ヴィーア!(吹っ飛んでいきな!)」

 「ヒャッハー!もう我慢出来ねぇ!殲滅だぁ!」トリガー・ハッピーって奴だ!

 --以下略--

 その後、ベルリオーズが10分かけて攻略した基地を、半分の5分で壊滅させたすさまじい記録が、シュミレータのデータに記録されている。

 さらに30分後、第二シュミレータ室に、正座させられながらオペレータに説教されているオービエの姿が確認されている。

 「いえ、自分でも何したんか覚えていないんです・・・」

 「あなたの話は分かりました」「じゃ、じゃぁ」

 「ではまず、私の話を聞かないことと、戦闘中の無意味な大声について・・・」「あんたも大概人の話聞かんなぁ!」「なにか文句でも?」「・・・ゴメンナサイ」

・・・

 「・・・」「終わったか?」真っ白に燃え尽きたオービエに、ベルリオーズが話しかける。

 「・・・ベルリ・・・オーズ・・・か、なんか・・・用?」「大丈夫ではなさそうだが、今からもう一度シュミレータに接続して欲しい」

 「・・・なぜに?」「今から私と戦ってもらう・・・これも、君のためだ」・・・意味が分からん。まぁ、大丈夫なんだけど。シュミレータも気がついたら敵全滅してたし、正直ピンピンしてる。

 「一番のダメージはオペレータの説ky「どうかしましたか?リンクス」「なんでもないです」

 ・・・ってか、ネクスト戦闘は初めてだ。「なぁベルリオーズ、手加減してくr「何、シュミレータ上だ。死ぬ訳じゃない」

 ・・・嫌な予感がプンプンするんだけど。

 --そして話は冒頭に戻る--

 「あぁ、さすがにキッツイわ・・・五回連続で落とされるってのは」「僕としては、5回も擬似的に死んで、『キツイ』で済む君のAMS適性に驚くばかりだよ」

 あれ、ルースだ。「さっきまで何してたん?見なかったけど」「さっきのシュミレータのデータを上に送る準備をしてたんだよ」

 「・・・音声は?」「もちろんカットしてある。さすがにヤバイよね、ふざけすぎだよ。僕の作業の80%は君の声の修正だよ」

 「・・・すまん、トリガー・ハッピーになってたみたいや」「君の場合はロケット・ハッピーの気がするけどね」否定はしない。

 「でも、ネクストには全然ロケット当たらんかったなぁ」「彼は仮にもうちのNo,1だからね。さすがに厳しいと思うよ」

 そう、ベルリオーズとの5回の模擬戦のうち、俺はシュープリスに爆風すら当てられてない。

 ロケットを撃とうとすれば構える直前に視界を横切られ、構えたまま戦闘を行って「チャンスだ!」と思えば既にグレネードの弾丸が視界に入ってる。

 ・・・俺のロケットは高ランクのリンクスに通じないらしい。これでも修練は積んできたんだが・・・ゲームと動きが違いすぎるぞ!ベルリオーズ!

 ・・・当たり前か。乗っているのはCPUじゃなくて人間なんだもんな。

 「しかし、よくアリーヤの複眼とアクアビット製近距離FCSで遠くの敵を攻撃できたね?」「ロケットに距離は関係ない。目をこらせばギリギリ見えたし」

 そう、FAをやっている人は分かると思うが、アリーヤはカメラ距離が短い。

 ゲーム中ならロック距離が下がるだけだったんだけど、視点自体は三人称視点だった。周りは明るい世界が広がってる。

 しかし、直接機体の中から一人称で見るとずいぶん違う。視界は広くなるんだけど遠くがぼやけて見えづらいし、暗い。

 「・・・そういえばルース、俺普段どんな風に複眼とリンクしてるんや?」複眼ってのも不思議な感覚だからなぁ。いわゆる昆虫スタイル。

 「おそらく普段は複眼全体に弱く、君の言う『目をこらした』というのは、少数の複眼をその方向に集中させて解像度を上げたんじゃないかな?」


 「なるほど。じゃあ、『複眼一つ一つ』を『各方向に集中して』リンクしたらどうなる?」


 「やめておいた方がいい」「なんで?全周囲に高い解像度で見えるようになったら、便利やん」

 「たしかに、それが出来れば『全周囲』とまではいかなくても、前方に300°くらいはクリアな視界をカバーできるだろう」

 「なら・・・」「負荷がかかりすぎるんだよ。本来人の目は単眼2つだ。アリーヤの無数の単眼一つ一つと本格的にリンクしたら、頭が過情報でパンクしてしまう。

 アリーヤに搭乗して、そんなことが出来た例は無い。やろうとしたリンクスは居たらしいけど・・・うちのNO,1、ベルリオーズだってそんな無謀な事はしない」

 「俺はAMS適性高いんだろ?案外行けるんじゃね?」「それでも、相当な負荷がかかる。リンクすれば・・・持って3分。これ以上は君の担当として・・・」

 「分かったよ。3分間じゃ戦いようがない。諦める」3分間かぁ、厳しいけど、ハリだって3分間しか接続出来なかったしなぁ。

 「大体、複眼って想像つかねぇよなぁ。逆間接だけでも結構な違和感あったし」開幕と同時にロケットをパージして・・・

 「分かってくれたのなら、それで良いよ。僕は今から上にデータを渡しに行く。ベルリオーズとまだ模擬戦がしたいなら、本人に許可を取った後、オペレーターに聞いてね?」

 「おう、じゃあ、また後で」「うん、また後で」

・・・

 「ふう、オービエもとんでもないことを言い出すなぁ」オービエと別れた後、僕はデータを持って上の所に向かっていた。

 「アリーヤの複眼自体は少しだけどBFFの協力もあって、一つ一つ普通のネクスト用カメラくらいの性能は持ってるからなぁ。

 本気でリンクすれば、リンクスであろうとも頭がオーバーヒートするからね」

 ・・・まさかリンクしないだろうな、オービエ。いや、諦めるって言ってたし。大丈夫・・・かなぁ?

 そうこう言っているうちに、上の会議室に着いた。「さぁ、ここからの上の説得は僕の仕事だ。ロケットのすばらしさを伝えればきっと分かってくれるはずだ!楽しみに待っていてくれよ!オービエ!」そうしてルースは会議室のドアを開けた。

 30分後、疲れ切った表情の重役達を背に、意気揚々と第2シュミレータ室に戻ったルースを待っていたのは、

 担架に乗せられ、運ばれていく意識のないオービエの姿だった。






 作者です。内容が長くなってしまったため、そして、少しでも更新を早めるために、前後編に分けました。次はもう少し早くなると思います。

 内容に関して。国家解体戦争はまだ続きます。AC4本編に入ると、どう主人公と絡ませるかが難しいからです。完全に敵側なので、本編のミッションが流用できない、という事もありますし。

 後編では、気絶する前の、オービエとベルリとの6度目の模擬戦を書きます。普通に書いてたので、何をしたのかは大体分かると思いますが。

 oruten様、刀剣様、感想ありがとうございます。返答が遅くなってしまって、申し訳ありません。

 oruten様・・・楽しい、という感想がこんなに励みになるとは思いませんでした。ありがとうございます。いえ、更新は遅いままだったんですが・・・すいません。

 刀剣様・・・はい、ロケットです。いちおうFAのレギュ1,30ほど凄まじくはないですが、1,40くらいの性能はあるつもりです。

 足手まといフラグを折ってしまい、申し訳ありませんでした。いろんな意味で。

 さすがにネクストにもガンガン当てられたら真剣にテクノクラートに行かないといけないので、ベルリには完全回避を発動してもらいました。一応オービエのロケットは、

 オリジナル以下は軽量級除きフルボッコ。ローディー先生?勘弁してください。(堅さ的な意味で)

 重量級でもオリジナルなら、そこそこ当ててそこそこ避けられるくらい。海上のクリティーク?それこそ勘弁してください。

 そしてオリジナル上位の中・軽量級には、よほどのことがないと当てられない(倉庫のアンジェに当てられるくらい)、

 こんな感じです。ゲームとは違い、上に行くほどガチで強くなります。(王小龍除く)

 毎度のことですが、誤字、脱字の指摘をドシドシお願いします。 



[15186] 第六話 ベルリと俺と、時々ルース 後編
Name: ふらっと◆28a2754a ID:b6e3e644
Date: 2010/04/03 00:06
 「もう一度模擬戦を?別に構わないが、少しだけ休ませて欲しい。連続で接続するのも、なかなかくるモノがあるのでな」「分かりました。じゃ、10分後にお願いします」「分かった」

 ルースが去った後、俺はベルリオーズに承諾を得た。次はオペレーターだ。

 「もう一度模擬戦を?分かりました・・・10分後ですか、セッティングしておきます」

 これで下準備は完了だ。複眼全部とリンクするから、少し俺も休憩しとこ。あとはイメージトレーニング・・・

 「出来るかぁ!どないしたら複眼のイメージなんて出来るねん!」「何を叫んでいるんだ?オービエ」いえ、なんでもないです。

 --10分後--

 「では、6度目の模擬戦を行います。準備は良いですか?」「っと、その前に二人に話しておきたいことがあるんや。

 まずオペレーターさん」「なんでしょうか?」「申し訳ないけど、もしかしたら俺は戦闘中会話出来ん状態になるかもしれん」相当な負荷がかかるらしいし。

 「それは私の『お話』が無意味だった、という事ですか?」オペレーターが『あの』笑顔で話す。

 モニターに顔は写らないから分からないはずなんだけど、なぜか分かってしまう。「そ、それは違います。負荷のかかりすぎで話せない、って事」

 「・・・大丈夫なんですか?」「何とかなる、ハズ」「そうですか・・・それ以上は聞きません。オペレーターは『あくまでも』リンクスの補佐ですから」『あくまでも』って、強調するなぁ。

 「次に、ベルリオーズ」「なんだ?」「今から『5分間』だけでいいから全力になってくれんか?」

 「私は手を抜いた覚えはないんだが」「『本気』と『全力』は別物やで?」「・・・分かった。『全力』で潰すぞ」・・・すげぇ、No,1が本気になるとさすがに風格が出るな。

 「よろしいですか?」オペレーターさんが話しかけてくる。「大丈夫です」「こちらも問題ない」

 「では、データインストール、開始します」

・・・

 全力で来て欲しい、などと言われたのはいつぶりだろうか。たしか、戦争が始まる前にアンジェと模擬戦をしたときだったか。そういえば最近、彼女とは会っていない。

 しかし、まさか音声モニターの先にいるこの青年から、そんな事を言われるとは思わなかった。


 最初は、ボロボロのアリーヤを見て、落胆した。ネクストの性能を生かせない粗製リンクスだと思った。

 データを見た時、納得した。これほどまでに何の準備もしていないリンクスでは、仕方がないと思った。

 直に出会った時、面白いと感じた。戦いに向くタイプの人間ではないはずなのに、人を殺すことに何の感傷も無い。

 本人が悔やんでいたのは人を殺した事ではなく、新型のノーマルの情報を教えられていなくて、自分が苦労した事だった。

 自分を誤魔化しているのかと思ったが、そういうリンクスに現れる不安定さは見えなかった。それはつまり、殺すことに躊躇いがないか、殺しているという実感がないか、どちらかだ。

 本人の性格を考えれば、前者ではないだろう。しかし、後者でも無いように思う。

 新型ノーマルと戦闘した時、彼は『コクピットを』狙って攻撃していた。撃破した一機目など、コクピット前面をブレードで削り取り、マシンガンを1カートリッジ叩き込んだほどだ。

 これほどの攻撃性を持ちながら、人を殺すことを意識しないはずがない。しかしそういった傾向を普段の会話からは感じられなかった。

 AMS接続している間だけ性格が180°変わるリンクスは知っている。

 が、そういうアクアビットの『P.ダム』のようなリンクスは、決まって本来の性格も不安定になってしまうものだ。彼はあくまでも『普通な』青年だった。

 もちろん、出撃回数が少ないから影響が現れていないだけなのかもしれない。だがしかし・・・


 私の知り得る人間の型に、彼は当てはまらない。なら、『知りたいと思う』のは必然だ。人間の欲望の一つ、知識欲というヤツだ。

 「オービエ」「・・・なんっすか?もう始めますよ?」どうやら集中していたらしい。悪いことをしてしまったな。

 「すまんな。始める前に聞きたいことがあったんだ」「・・・?」


 「君は人を『殺す事』をどう思っているんだ?」

 さぁ、私に君の答えを教えてくれ・・・!

・・・

 『殺す事』をどう思うか、か。また答えづらいことを聞いてくるなぁ、ベルリオーズ・・・しっかしこの『ベルリオーズ』ってのも長くて呼びづらいな。

 「そういえば、『ベルリオーズ』って呼びづらいから、『ベルリ』でいい?」

 「・・・」「・・・さすがに駄目やったかな」「それは構わないんだ。ただ君が突然話題を変えてきて驚いただけだ」やっぱり急すぎたかな?自分でもおかしかったと思うし。

 「それはともかく、だ。答えてくれないか?」・・・っち、乗っては来なかったか。さすがはNo,1、やるじゃないか。(そこじゃない

 「・・・俺に勝てたら、お教えしますよ」「ほう、大した自信だな。君は既に5回負けているんだぞ?」「そ、そこを突かれると痛いなぁ、ハハハ」

 「ふむ、分かった」「へ?」「さっきまでは君の訓練ということで抑えてはいたが、自分の前に商品をぶら下げられ、その上挑発までされては、全力で食いつかないわけにはいかんな。ククククク・・・」

 どうやら、変なスイッチを押してしまった模様・・・さっきよりもさらに濃厚な『殺気』を感じる。

 ベルリオーズという冷静な人間が見せる生の、剥き出しの感情に、尻込みしてしまいそう。

 だけど、俺にも目的がある。『自分の限界が見てみたい』っていう、目的が。この世界で、俺はロケット無しでどれほどのものなのか。

意識を集中し、眼を『眼』に繋げる。さっきは声をかけられて中断してしまったけど、一つ繋げるごとに、文字通り眼が増えたような感覚だった。

 気持ち悪い、の一言に尽きる感覚だ。でも、続ける。最悪全部は無理でも、半分くらいは。そうでもしないと、本気になってくれたベルリオーズに申し訳ない。


 繋げる。繋げる。繋げる。繋げる繋げる繋げる繋げる繋げる繋げる繋げる繋げる・・・


 どんどんと意識が眼の作業に没頭していく中、頭の中に聞き覚えのある音楽が流れ始める。そう、これは・・・

 『remember』だ。・・・そういや、あの曲はイントロを含めると5分弱くらいだったかな、と混濁した意識の中で、耳を傾ける。

 -Amen amen gospel amen. Amen amen gospel amen.-

 意識がクリアになる。手こずっていた眼とのリンクが一瞬で終了する。『世界』と繋がる。


 青いネクスト「メメント・モリ」は、この時、真の「AALIYH(最高の存在)」となる。

 ALICIAだろ、ってつっこみは無しで。

・・・

 「動かない、か・・・いや、集中しているのか」目の前の青い機体を見ながら、私は攻めあぐねていた。

 動かない理由は、大体想像がつく。さっき会話したとき、彼はかなり集中している様子だった。今も集中し続けているんだろう。

 集中するのは良いのだ。だがそれが、データインストールが終わってからも続くというのが理解できない。これではただの的だ。なぜ、動かない?

 「誘っているのか?」もしそうならば、相当自信があるのだろう。彼自身も、最初の5分は、本気で来て欲しい、と言っていた。

 「ならば、問題ないだろう。仕掛ける」いまだに動かないメメント・モリを尻目に、およそ回避不可能な距離まで接近し、グレネードを展開。膝を着き、構える。

 その時になって、ようやくメメント・モリの眼光が輝く。「どうやら終わったようだな。だがこの距離から逃れきれると思うな!」

 肩のグレネードが火を噴く。

 「ドォォォォン!」当たった、間違いない。爆発する前にQBの光が見えたが、あれほどの大爆発だ。逃げられるはずが「大・・・爆発?」

 おかしい。グレネードは確かに大量の炸薬が入っているが、あそこまで爆発規模は大きくない。ならば「何かが誘爆したのか?・・・っ!」

 鋭い殺気を感じ、グレネードを構えたままの機体をQBで強引に動かす。瞬間、弾幕が降り注ぐ。「ちっ!」避けきれず、PA越しに機体へ突き刺さる。

 すぐさまその弾道を頼りに上を見る。そこには、ロケットをパージしたメメント・モリ・・・いや。

 獲物を前にし、大口を開けるかのように全ての複眼を赤く輝かせた一匹の獣がいた。

 魔獣が、『断頭台』に襲いかかる。

・・・

 -メメント・モリは、まさしく獣のようにシュープリスに喰らいつく。

 「む、速い・・・いや、反応が早すぎるのか?何だ、あれは?」

 -ベルリオーズが隙を見つけたと銃口を向ければ、照準の先には影だけが残り、

 「あの眼・・・まさか複眼全てと常時リンクしている、とでも言うのか!?どれだけ負荷がかかると思っている!」

 -視覚外から弾丸が突き刺さる。

「捕捉が追いつかん・・・くぅ、その機動で当ててくるか!」

 -視覚に捉えようとQTをすれば、PA同士が干渉する距離で真っ赤な口が開いている。

「これほどの戦士とは・・・侮ったのは私のほうだったか・・・だが、まだだ!」

-♪~♪~-

 唐突に、終わりは訪れる。

 メメント・モリの、右腕のマーヴの弾薬が尽きる。当然と言えば当然だ。的確に使いどころを見極めていたベルリオーズとは違い、オービエは常にトリガーを引き続けていたのだから。

 そして、その隙を見逃すようなNo,1はいなかった。シュープリスの複眼が煌めき、両手のライフルをしかと構える。

 ベルリオーズの、反撃。一瞬動きを止めたメメント・モリは容赦ない弾丸を浴び、たまらず離れる。追撃するシュープリス。

 先程までとは真逆の、一方的な戦い。PAも剥げ、完全に背を向けて逃げるメメント・モリの前に、乱立したビルが立ちはだかる。

「終わりだ!」シュープリスが、両手のライフルの照準を定める。『敵』に、もはや退路はない。ベルリオーズは、そう『確信』した。

 左右と前方をビルに塞がれ、後ろからはシュープリスが迫る。そんな状況で、メメント・モリの選んだ行動は、


 『前方へのQB』


 「なっ!」あっけにとられるベルリオーズ。自分が全身全霊を賭けて戦っている相手が、ビルに突っ込むなどという失敗を犯すとは夢にも思わなかったが故に。

 そしてメメント・モリは機体をかがめて壁に『着地』する。瓦礫が飛び散り、脚部がギギギと軋みをあげる。

 そのままほぼ真後ろにジャンプし、メメント・モリは一回転しながらシュープリスを飛び越える。

 「バカな!ネクストにこんな動きが可能なのか!?」重力を無視したかのような動きのメメント・モリを見失い、混乱するベルリオーズ。

 メメント・モリは、空中で弾の切れたマーヴを構え、『斜めに』QB。空中から直接、シュープリスに襲いかかる。

 「っ!ぐぉぉぉぉ!」QTで旋回するシュープリス。だがしかし、ブレードホーミング並の速度の弾丸と化したメメント・モリに対応しきれず、

 メメント・モリのマーヴの鋭利な銃身がシュープリスに、

-♪~♪~・・・-

 突き刺さった。








 6度目の模擬戦記録 勝者 ベルリオーズ

 シュープリスは頭部を破損するも、勝利。

 搭乗リンクスは興奮状態に陥るが、数分後回復。

 メメント・モリは多数の銃弾を受け、完全に機能停止。

 搭乗リンクスは過度の負荷により意識不明。

 -シュミレータ記録より一部抜粋-

 ピピ・・・管理者権限により、データは完全に削除されます。

 削除処理中・・・削除、完了








 どうも、作者です。早めに更新できるとかほらを吹いてごめんなさい。また遅くなりました。

 本編紹介です。

 今回若干シリアスになってしまったのが残念(?)です。作者が実はシリアスな話が書きたかった、ということは・・・(汗

 そして下手糞な戦闘描写で申し訳ないです。

 ・・・ともかく。

 今回、6度目の模擬戦を書きました。最後の方が説明不足ですが、次回以降に書く予定です。

 今回、多分にフロムマジックが混じっています。マーヴでの刺突?OPで騙されたリンクスの夢です。壁ジャンプ?違うゲームです。斜めにQB?危険です。地面に激突するんじゃね?と作者は思います。安定性能がぁ!

 でもなんて言うか、逆間接って安定性能高そうに思えるんですよね。普通の脚より上体が耐えられそうじゃありません?

 そういえば、旧作シリーズでは逆関節は安定性高めだったそうですね。詳しくは知らないんですけど。


 oruten様、感想ありがとうございます。たぶん皆様分かっているとは思いますが、眼の話も作者のフロム脳です。オリジナルです。


 個人的に、そろそろアンジェ(+真改)の話が書いてみたい作者です。ネタに戻りたいとです。シリアス成分の過度の摂取にご注意を。

 でもアーマードコアって、基本がシリアスな話ですからね・・・


 最後に、いつも通りですが誤字・脱字があれば訂正をお願いします。



 雪林檎様・・・歌詞に関しての注意、ありがとうございます。あと、オービエ君のAMS適性は普通で、高めなので、ハリのように3分リミットって事はないです。

 ん?高めのAMS適性+No,1に匹敵する5分弱のチートモード・・・ハッ!これじゃ普通にチート主人公だ・・・

 そこまで強いと面白くなくなりそうなので、チートモードは基本的に禁止+リスク大(意識不明)で行こうと思います。(あくまでも無くそうとは思わない作者)

 彼の方針は基本的にロケットカーニバルなのです。今回の開幕ロケットパージは御法度なのです。



[15186] 第七話 アンジェ道場!(現在門下生2名)
Name: ふらっと◆28a2754a ID:b6e3e644
Date: 2010/04/08 15:43
前回のあらすじ・・・ベルリに惨敗。意識不明になってしまいましたとさ。




 「腰に力が入ってないぞ!」「すんません!」「声が小さい!」「すんません!!」

 「・・・」「真改!お前も声を出せ!」「・・・zzz」「立ったまま寝るな!・・・ふぅ、こらオービエ!へたりこむなぁ!」「ギャァァァァァ!」

 なんだろう、この地獄絵図。アンジェが怒鳴り、真改が爆睡し、その結果、俺がしごかれる。「なんという不条理。是非とも抗議しt」「さぁ、次は打ち合いだ!」「・・・」

 どうしてこんなことに?・・・あぁ、自業自得か(泣

・・・

 メメント・モリのマーヴの先端が、私に襲いかかる。その姿はまるで死神のようだ。

 逃げ出したい。だが動けない。そしてシュープリスはそのままマーヴに頭を貫かれ胴体まで貫通し中にいる私を「はっ!?・・・夢か」


 そう、今日は彼、『オービエ』との模擬戦から3日経った日だ。そしてそれは私、『ベルリオーズ』が、3日たった今もあの模擬戦を思い出し、悪夢に苛まれている、ということでもある。

 恐い。そう、私は恐かったのだ。だからあのときもあんな事を・・・

・・・

 「っ!ぐぉぉぉぉ!」メメント・モリのマーヴの先端が、私に襲いかかる。この速さは、避けられない。

 瞬間、頭に鋭い痛みが走る。だがしかし、AMSが告げる警告に『戦闘不能』が無い事に彼は『気付いてしまった』

 自分は、満身創痍。そして相手は『まだ動く』。そんな判断を痛みに狂った脳が下し、同時に本能は『恐れ』を感じた。


 こいつは私を『殺す』。なら『殺される前に殺せば』『自分は死なない』。

 後ろにQB。目の前で『何故か』うずくまっているメメント・モリに両手のライフルの照準を合わせ、トリガーを引き続ける。

 「まだか、まだ『壊れないのか』!速く!速く!」メメント・モリの腕が吹き飛び、頭が消し飛び、脚が根本からもがれ倒れ伏しても、彼はトリガーを引き続ける。「・・・ズ!」

 「ああああああああ!!「ベルリオーズ!メメント・モリはすでに大破しています!」ああぁ・・・?」

 なぜ、そんなことを言うのだろう。まだコイツは『形』を保っているじゃないか。ちゃんと『壊さないと』。あれは、壊さないといけないものだ。

・・・

 「ベルリオーズ!・・・く、完全に錯乱しているわね、誰か!シュミレータを停止!AMS接続を強制的に切断(カット)!あと、リンクス用鎮静剤と救護班!早く!」

 オービエのバイタルが危険域に達し、ベルリオーズは完全な錯乱状態。模擬戦は、すでに模擬戦ではなかった。私はシュミレータを終了させ、装置のリンクスの元に向かった。

 そこにいたのは、科学者たちをなぎ倒し、屈強な整備班の男達に取り押さえられてようやく鎮静剤を打たれ、まだ少し興奮さめやらぬ様子のベルリオーズと、

 ぐったりと動かない状態で担架に運ばれていくオービエだった。

 オービエと会話するのは不可能と判断し、ベルリオーズの元に行く。「ベルリオーズ、聞きたいことがあります」「ああ、アレは、駄目だ、いてはならないものだ」まだ、意識が・・・

 「しっかりしてください!ベルリオーズ、あなたはレイレナードのNo,1リンクスでしょう!」

 「・・・オービエのオペレーター、か?」ようやく意識を取り戻したみたい。今の内に話を聞いておかないと。

 「ベルリオーズ、もう一度聞きます。何故あなたは機能が停止したメメント・モリに攻撃を加えたのですか?」「何を言っているんだ?アレはまだ」

 「メメント・モリの行動は、あなたが動き始める1分までを含めて、5分13秒時に停止しています」

 絶句するベルリオーズに、その時の状態を伝える。


 メメント・モリは地上のシュープリスに向け、空中から一直線にQBする。そして、メメント・モリのマーヴがシュープリスに突き刺さる、という一瞬前に。

 メメント・モリの、あの爛々と輝いていた複眼が「フッ」と消えた。全ての生命を、燃やし尽くしたかのように。

 そのままメメント・モリはQB中にバランスを崩し、無茶な体勢で地面に崩れ落ちるように『激突』する。

 この状態ですでに脚部が限界を突破し、メメント・モリは完全に動けなくなっていた。

 そして空中で指の握りが甘くなった右手のマーヴは、慣性に従いシュープリスに『浅く』突き刺さる。この一撃で頭部は粉砕されたが、コアまでは達していない。

 その後は、シュープリスが頭部に刺さったマーヴを無視しながら後ろにQB。機能停止したメメント・モリに両手のライフルを乱射した。


 「そんな・・・」オペレーターから話を聞いた私は、自分の愚かさを嘆いた。こんな私に、リンクスとしての資格は・・・無い。

 「今回の件は、ここにいる整備班・科学者達を含めて箝口令を引きます」「なぜだ!?私は罰せられてしかるべき「やはりあなたは、自分の立場を理解していない」

 「・・・No,1だから、か?しかしそんなものアンジェにでも」「確かに彼女は現状で最も多くの有力レイヴンを葬ったリンクスですが、協調性がありませんし、本人も望まないでしょう」

 「だが・・・」「それ以前に、上が揉み消すでしょうしね、こんな『小さな』事件は」

 「彼もまた、大事なレイレナードのリンクスなんだぞ!」「では、たった一度しか出撃しておらず、その上大した戦果も上げられていないリンクスと、初期から多大に貢献した最重要リンクス。どちらが大事だと思います?」

 加えて、内輪もめだからこそ完全に揉み消せるでしょうし、ともオペレーターは言った。

 ・・・たしかにそうだ。彼は『実戦では』大きな戦果を上げられなかった。

 「しかし、あの対通常兵器戦のシュミレータの記録は報告されて」「それこそ、上はあなたとの模擬戦のデータも求めてくるでしょう。

 そしてそこにあるのは『最後は少しがんばったけれど、やはり新人とエースだ』という判断だけです。バイタルなど、細かいところまではさすがに眼を通さないでしょうし」

 「・・・」「・・・整備班と科学者達に謝っておくくらいなら、良いと思いますよ」

 そう言って、オペレーターは去っていった。オービエの状態を聞きに行ったのだろう。

 ・・・その場にいた者達に対して、私は謝罪の言葉とともに、頭を下げた。皆驚いていたが、これくらいはしておかないと、申し訳が立たない。

 そうして私はオービエはどうなったか気が気でない状態でこの3日間を過ごしていた。

・・・

 昨日、オペレーターからメールが来た。なんでも今日には、オービエの面会謝絶が終わるそうだ。

 ・・・どんな顔をして会いに行けば良いのだろう。彼は、きっと私を弾劾するだろう。糾弾するだろう。私はそれを全て受け止めた上で、謝らなくてはいけない。

 ・・・あれこれ考えている内に、彼の部屋に着いてしまった。彼の部屋は実際は『部屋兼ベッド』らしい。治療と自宅療養が両立できるとは、ふらやましいものだな。(皮肉はない)

 ふと耳を傾ければ中からなにやら声らしき物が聞こえてくる。「・・メン・・メン・・・ル・・メン」これは・・・

 気になった私が部屋に入ってみれば、中から響いていた声の主はオービエだと分かった。



 「ラーメンラーメン、乙樽ラーメン~♪」



 内容に関してはサッパリだったが・・・オツタル?

 なぜだかレイレナードのリンクス候補生、オッツダルヴァの顔が浮かんだが、自分でも理解できないので心の底に仕舞っておこう。

 「・・・もう、起きてもいいのか?オービエ」出鼻を挫かれた気分だが、持ち直して声をかける。

 「あれ、ベルリ。元気やった?俺自身は意識無かったから、感覚的には模擬戦から半日ぶりくらいやねんけど」

 ・・・元気だな。予想外だ。私に対してなにかしら苦手意識を持っているようでもない。

 「・・・さっきの歌は何だったんだい?歌詞はサッパリだが、響きは良かった」「<検閲削除>されそうな気がして、改悪してみたんや」

 「・・・精神の方になにか障害が」「ちょっ、まっ」「それともコジマ汚染の影響が遅まきながらやってきたのか?」「俺はいつもこんなんでしょうが!」

 「・・・それもそうか」「なんでやろう。納得してもらえて嬉しいはずやのに、涙が止まらへん。ああ、そうか。これは嬉し涙なんや」・・・なにか気に障ることでも言ってしまったんだろうか?

 「気にしないで欲しい。私は気にしない」「お願い、気にして。ホンマ、そこ大事やから」謝るつもりが、逆に謝られてしまった。

 「私のほうこそ、謝らねばならないことがあるんだ」「・・・?何か、ベルリが謝るようなことあったっけ?」全く気にしていないようだ。でも、だからこそ謝らなければならない。

 「あの模擬s「ここか!オービエというリンクスの病室は!」

 ・・・なぜ彼女がここにいる?

・・・

 なにやら申し訳なさそうな顔をして部屋に入ってきたベルリオーズ。普段通り(俺涙目)の会話の後、彼が何かを言おうとしたその時、謎の女性が現れる。

 ベルリオーズと謎の女性との関係は!そして俺の運命は!一週間後に乞うご期待!





 ・・・なんとなく次回予告っぽいのを出したくなったんだ。


 さて、俺の前には『絶☆対☆安☆静』と書かれたドアを蹴破り、大声で堂々と場所を聞いてきた女性がいる。まさか、このあたりのドア全部蹴破って来たわけじゃなかろうか。

 認めたくはないけどここは病院で、この部屋は俺の部屋でもあるんだから・・・ちゃんとした部屋が欲しいなぁ。

 「ここはオービエというリンクスのいる病室か、と聞いているんだが?」なんか雲行きが怪しくなってきた。

 「はい。そうですが「そうか!お前がオービエか!よし、真改!」へ?真改?・・・真改と言えばfaで輝美と一緒に出てきた剣豪さんがそんな名前やった気がする。

 「・・・」わぁお、謎の女性とペアルック。恥ずかしくないんかな、アレ「この服装は私の道場の正装だ!」心の声を読まないで。そして・・・なぜ道場?

 「今から暇か?暇なんだろう!暇なんだな!よし!」人の話聞いてねぇよこの人。「決まりだな!行くぞ!」そして真改と二人がかりで俺をベッドから引きずり落とし「ちょっと待ちぃ!」

 「?」「本気で不思議がっとる!なおのことタチ悪い!」「何が不満だ!」「何もかもが!」「そうか!」「・・・」「?じゃ、行くぞ」

 前言撤回。人の話を聞かないんじゃなくて、人との話を自分の中で創りあげているんだ。なるほど、会話が成立しないわけだ。ハハハ・・・

 「そうか!私の名前が分からないから不満なのか!」・・・この人の耳のフィルター具合見てみたい。「私はアンジェ!リンクスだ!そしてこっちが真改!私の一番弟子だ!」

 想像はついてたけど、やっぱ『アンジェ』か。鴉殺しの、倉庫マニア。ってかこの人『!』マーク多いな「そしてお前が二番弟子だ!ほら、この服を着るがいい!」「勝手すぎるだろぉ!」

 そのままズルズルと引きずっていくアンジェ。「は☆な☆せ!」「だが断る!」なんでそのネタ知ってんだよアンジェ・・・くっそ、諦めるもんかぁ!

 そして俺とアンジェは「は☆な☆せ」「だが断る!」を繰り返し、気がついたら真改に引きずられてた。

 「面倒・・・」やっぱり二文字やな、真改。



 「私の話は・・・」ごめん、ベルリ。忘れてた。


・・・そして話は冒頭に戻る


 「ほらほらどうしたぁ!」「ちょ、まっ」「そこだ!胴!」「それ違っ・・・」剣道のように聞こえるかもしれんが、実際は違う。いわゆるルール無用。

 それとアンジェ。もうちょい日本の剣道を詳しく知ってくれ。常識に疎かった俺も、兜割りのような一撃は胴でないことぐらい分かる。

 そして木刀代わりに鞘入りの西洋(?)剣振り回さないで。リンクスになって体が頑丈になってるか知らんけど、一度振られるたびに体の節々が悲鳴を上げてるから。

 「む、無理だ!耐えられねぇ!」「・・・」「た、頼む真改!助けて!」「zzz・・・」「寝るな真改!そして逃げるなオービエ!」「ギャァァァァァァ!」


 こうしてAMSから7回ほど光が逆流した頃、ようやくアンジェが「そろそろ休憩にするか。聞きたいこともあるしな」と言いだした。

 「「「・・・」」」アンジェがこっちを無言でガン見して、俺の意識が水没しかけてて、真改が一人寝てる。さっきまでとは別の意味での地獄だ。視線が鋭すぎる。意識が再起動してしまった。

 「オービエ」「なんですか?」ようやくアンジェが口を開いた。やっぱり真改は寝てる。

 「複眼とリンクしたというのは本当か?」「はい、誰から聞いたんですか?」たしか「箝口令が敷かれてる」、ってオペレーターが言ってたけど。

 「ベルリオーズから聞いた。そういえばお前、アイツに勝ったんだな?」・・・ん?

 「いえ、6回も戦って、6回とも負けましたけど」「ベルリオーズ本人が、「6度目の模擬戦は私の負けだ」って言ってたぞ」おかしいな、確かに負けたんだけど。

 「本人曰く、「試合に勝って、勝負に負けた」らしい」「???」理解できない。勝負とは一体なんだろう?

 「・・・アレかな?」「アレ、とはなんだ?」「いえ、俺の方からお願いしたんですよ。『最初の5分は本気で』って」「つまり、5分を超過しても本気を出してしまった、って事か?」「たぶん」

 「そんなところ気にしなくてもよかろうに。小さい男だなぁ!」あっ、また『!』マークつき始めた。そしてベルリがカワイソウ。

 「しかし、ベルリオーズをそこまで追い込んだのもお前というわけだ。複眼とリンクして、一体何をした?」「いえ、単純に、


 QBとQTとDTとジャンプと武器を振り回した遠心力でブースト使わず旋回するのを組み合わせて、ひたすら相手の視界を外れるよう動き続けただけッスよ」


 「・・・」あれ、なんか呆れられてる。「・・・そんなことできるわけ無いだろう!」「信じてもらえなかった!?」

 「大体複眼とリンクして戦えたっていうのが怪しいんだ!」「そこから!?」「私でも1分持たなかったのに!」「・・・え?」

 「おかしいか!」「こんなキチガイな事俺以外やるとは思わんかった」「それはつまり私がキチガイだと言いたいのか?」「他の意味があると思います?」「キサマァ!」やっべ、地雷踏んだ。

 どこからともなく、他とは明らかに違う雰囲気を漂わす―おそらく本人と変わらない大きさの―大剣を、アンジェは取り出した!

 「我が月光剣の錆となれぇ!」アンジェが月光剣を振るった。とっさに後ろに転がる。

 ―――ドガァァァァン!―――

 道場の床が真っ二つに割れ、さらに下の階っぽいのまでが見える・・・よかった、どうやら下に人はいなかったみたいだ。

 「って、よくねぇ!なにその剣!おかしいよね?当たってたら間違いなく俺の存在がこの世界から消し飛んでるよねぇ!?」

 「我が月光剣に、断てぬもの無し!」ゼ○ガーさんかよ!あれは参○斬艦刀なのか!?形状記憶で巨大化するのか?

 「撤退・・・」「し、真改?寝てたんじゃなかったっけ!?」しかし、声に気づいたときには既に真改はいなかった。

 「あがくな、運命を受け入れろ!」ちょ、それ違う人・・・

 ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ

 こうして、オービエ君の平和な(?)日常は過ぎていく。

 国家解体戦争終結まで、後3日ということを知らぬまま。

 




 どうも、最近になってAC4とFAのサントラを買った作者です。

 これでもネタにしたつもりなのですが、いかがお思いでしょうか。

 被害妄想に陥った部分はGWのように分離して、気を取り直します。

 はい、アンジェを出すとは言いましたが、主役は半分ベルリオーズでした。姉さん好きの皆さん、ごめんなさい。今後もっと出ると思います。たぶん、恐らく。

 そして、真改の書き方が分からないとです。ネタにするか悩んだ結果、普通になりました。漢字二字縛りです。


 次が国家解体戦争終結の戦いです。別名ネクスト無双とも言う。味気なくないように書きたいです。

 すでにここまででオリジナル成分たっぷりですね。もう少し戦闘描写がうまくなりたいなぁ、と思っております。

 オリジナル設定とは言っても、作者のフロム脳は・・・LV3くらいですね。(最大はLV100)まだまだ汚染が足りないようです。

 突然頭の中にNo,23(欠番の一人)の設定が飛んできたので、その関連のお話も書きたいです。


 最後になりますが、誤字・文法上のミス・読みづらい文章などにつっこみお願いします。


 設定追加です。

 月光剣・・・使う人間を選ぶと言われる、巨大な剣。使用者の力量に最も適した形状・サイズに変化すると言われ、この世に3振りしか存在しない。

 現在はアンジェ・真改が所持しており、残りの一本は蔵に仕舞われている。(アンジェ談)

 オービエに抜けるかって?いやたぶん抜けますけど・・・その後が問題です。



[15186] 第八話 国家解体戦争 前編
Name: ふらっと◆28a2754a ID:72a11088
Date: 2010/04/08 15:51
前回のあらすじ・・・我に・・・断てぬもの無し!




 ・・・さて、今回、君たちリンクス諸君に集まってもらったのは他でもない。この戦争を終わらせる2日後の作戦についてだ。

 --・・・あれ?なんで俺はこんな所にいるんやろう?--

 目標はシドニー基地に逃げ込んだ国家軍総司令の確保だ。確保、という点に留意してくれ。民衆に、国家の完全な敗北と、我々の正義を見せつける必要がある。

 なお、この作戦には我々レイレナード陣営だけではなく、GA、ローゼンタール両陣営も参加する。我が社の威信に賭けて、君たちには素晴らしい戦果を期待している。

 --これは・・・なんかの作戦説明なのかな?--

 我が社からは、ベルリオーズ、アンジェ、そして異例ではあるが、ザンニではなくオービエに行ってもらいたい。ザンニは別の方面に当たってもらう。

 --なんでザンニじゃなくて俺なんやろう?--「オービエ、もうそろそろ起きておいた方が身のためだよ?」

 --なんじゃそりゃ。身のため?「チェェェェェストォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」

 目を開けた先には、高速で振り下ろされる手刀があった。な、何を言ってるのかサッパリだと思うが、俺自身何を

 「ドガシャーーーン!」「メメタァ!」

・・・

 ここは・・・俺の部屋(病室)か?「・・・ルース」「あ、生きてたんだ?オービエ」

 勝手に殺すな!お花畑が垣間見えたけどな!「ネタ補正が無ければ即死だった」「?・・・まぁ、即死ってのもあながち洒落にならないね。君の座ってたベンチごと粉砕されてたから」

 「おいおい、ただの手刀でベンチが破壊できる人間がいるわけないだろ?HAHAHA!」

 「アンジェがやったんだよ?」「・・・」やりかねない。あの大きさの斬○刀を振り回すアンジェなら。

 「・・・あれ?なんで俺はアンジェに手刀かまされたんだ?」「「自分の道場の者がこんな間抜け面では、ただの恥さらしだ!」とかなんとか」

 ひ、ひでぇ、横暴だ!と言いたいけど、言えない。なぜなら、

 「じ~~~~~」ドアの隙間からアンジェがこちらを睨みつけているからだ。

 「じ~~~~~」もちろん、これはただの効果音・・・のはずだ。擬音語のハズだ。なのに聞こえる。不思議!

 「どうしたんだい?オービエ」まったく気がついていないルース。ここはとりあえず、

 「ア、アンジェ?入ってきたら?」「やっと気付いたか」いや、気付く気付かない以前の問題だから。

 「お前が起きるまで、大体1時間くらい外で待っていたんだ」「長っ!というか、何のご用で?」

 「・・・」「・・・」なにこの沈黙。もしかして俺が悪いの?いや、そんなはずはない!強気に行こう!

 「やりすぎたから、ちょっと心配になって」「誰のせいだとお思いで?」「わ、私の右腕が勝手に!」「嘘って、バレるものですよね?」「うっ・・・」

 これ・・・ヤバイ、楽しい。普段いじられてばかりの俺に反撃のチャンスが!

 「とにかく!元気そうだな!」「なんかアンジェを見てると頭が痛く・・・」「そ、そうなのか・・・すまない」「冗談ですよ」「そうか。冗談か。アハハ・・・」

 ・・・やっぱ、なんか気持ち悪いな、この会話。「ああ、やめやめ!「?」「普段通り行きましょ!ね?」「・・・それもそうだな!」よし!元気になった。やっぱりアンジェはこうでなきゃ。

 「よし!今日も5時に道場に来い!みっちりしごいてやる!」「え!?ちょっ、待っ」「一秒でも遅れたら月光剣の錆にしてやるから、その覚悟で!」「やっぱり横暴だぁ!」

・・・

 来る前とはうって変わって颯爽と去っていったアンジェと対照に、俺のテンションは下落していた。世界恐慌時の株価くらい一気に。

 だってアンジェの鍛え方がおかしいんだよ!「よし!まずはエグザウィルの主柱を駆け上がってこい」とか平気で言う人なんだぜ?

 どうやって駆け上がるんだよ!と横の真改を見たら、脚にチャ○ラでも張ってるのか、ほとんど垂直に壁走りしてたよ。ありゃあ既に人間じゃねぇよ!

 かく言う俺もリンクスとしてのハイスペックのお陰か、2時間かけてよじ登れたけどな!まず登れたことを褒めて欲しい。

 ちなみに真改は30分で、アンジェは10分。あれ?ここって○ラゴンボールかハン○ー×ハ○ターの世界だったっけ?ああ、生身で空飛ばないだけマシか。

 「終わった?」「終わったよ、俺の人生が」「あはは、人気者は大変だね?オービエ」人気・・・者?

 「どこをどう見たら人気者になるんだよ!」「だって、この数週間でうちのほとんどのリンクスと交友を持っているじゃないか」情報をそこだけ見ればな、ちくしょう!

 「そうそう、作戦は聞いてた?」「・・・あれ?」頭の中に、作戦に関する情報がすっぽりと抜けてる。アンジェに叩かれたのが原因かもしれない。あと、アレとか。

 「じゃ、掻い摘んで説明するよ。

 目標はオーストラリアのシドニー基地にいる国家軍総司令の確保。複数のネクストで基地を囲むようにOBで強襲する。

 ああ、基地の周囲にはネクストであっても油断できないくらいの大戦力が展開されてるから、GA・ローゼンタール・レオーネ・BFF・イクバール・レイレナード全てのグループで『制圧』する。

 参加する戦力は、

 レイレナードがシュープリス、オルレア、メメント・モリ。

 レオーネがラムダ、シリエジオ、クリティーク。

 BFFがプロメシュース、レッドキャップ。

 イクバールがアートマン、リバードライブ、バガモール。

 ローゼンタールがノブリス・オブリージュ、パルメット。

 そしてGAが・・・プリミティブ・ライト、車懸、グレート・ウォールだね。

 あと、イクバールのバーラット部隊や、新設されたBFFのサイレント・アバランチも投入するみたいだよ」

 ・・・なんというオーバーキル。ネクスト14機+αによる一つの基地に対する強襲作戦って・・・ゲームでやったら間違いなく処理オチするだろ、これ。




 ・・・あれ、なんかおかしいぞ?なぁんか違和感が・・・ん?

 「なぁ、ルース」「なんだい、オービエ」「GAの最後のリンクス、なんて言った?」「ええっと、『グレート・ウォール』だね」


 ・・・なんでAFが混じってるんだよっ!


 「グレート・ウォールが気になるのかい?」「・・・はっきり言って、滅茶苦茶ある」「ふむ。君も変わり種を好むねぇ?」「変わり種?」

 「GAのネクスト、グレート・ウォールは、タンク型ネクスト並の防御力とそれ以上の積載量を備えた超重量二脚型ネクスト、いや、既にネクストですらない大型機動兵器だよ」

 「タンク並の防御力と、タンク以上の積載量って・・・機動力は?」「OBを使って、時速600kmくらいって情報だよ」「遅すぎだろ!ハイエンドノーマル以下か!」

 「加えて内装関連もGA製だから、一言で言うなら『機動兵器と呼ぶのもおこがましい』くらいの機動力(笑)になってるよ」

 「どんだけがんばってんだよGA・・・」「でも、背中に装備された試作兵器は、現行兵器の中でも圧倒的差を付けてダントツの殲滅力を誇ってる。

 いやむしろ、グレート・ウォール自体があの兵器を運用するために組まれた機体なのかもしれないね」「・・・どんな兵器なんだ?」


 「ガトリング・グレネードさ」


 なるほど。それならしょうがない、って待てコラ。ガトリング・グレネードってアレか!AFのグレート・ウォール外壁に付いてたアレか!

 「そんなもんがネクストサイズに収まったのか!?」「いいや。専用に開発された脚部の積載量をフルチューンして、ようやく重量過多に収まったみたい」

 「・・・それって、専用装備って言うんじゃねえの?」「否定できないよね。連射力は・・・およそ1発/s」「早っ!総弾数は!?」「100発以上だって」納得した。これネクストに積むもんじゃないわ。

 小ロケとあんまり変わらない速度で連射してくるグレって何?つまり、弾数神&威力有澤グレのSAPLAってこと・・・無理ゲー過ぎる。

 「ともかく。明日には出発するんだから、準備しておいてね?」「なぁ、ルース」「どうかしたのかい?」「俺の荷物って何よ?」

 「「・・・」」

・・・

 「・・・ふぅ。やはり、無理を押し通しすぎたかな?」頭を抱えていた上役達を思い出しながら、自分のしたことに呆れる私がいた。

 今回の作戦で、私はオービエを強く推進した。もちろん上は渋ったが、

 彼自身AMS適性がとても高い事、長期の作戦になる可能性もあるから、ザンニの機体では総弾数が心許ないこと、

 そして、彼用に調整されたネクストのシュミレーターで、彼は凄まじい戦果を上げた事。この三つを盾に、私は粘りきり、上は折れた。

 なぜ、私はこんなにも彼に執着しているのだろう。彼に一度負けかけたから?いや、あれは完全に私の負けだ。

 私は、レイレナードの最高峰である事に、誇りとともに、少しの傲慢を持っていた。

 表向きに人格者を気取っていても、心の底では人を見下していた。自分は選ばれたリンクスなのだ、と。

 そんな私が混乱し、取り乱し、恐怖した存在。そんな存在がいることなど、以前までの私は想像もしなかった。

 私は、そこで止まっていたのだ。自らの進化を、自らの手で止めていたのだ。

 それを気付かせてくれたオービエ。君は・・・「ベルリー、おる?」「!?・・・ああ、いるぞ」「入っていい?」「構わないが・・・何か用か?明日には旅立つから、生憎茶の一杯も出せない」

 「かまへんかまへん。ちょこっと愚痴聞いて欲しいだけやから」・・・愚痴?と思いつつ、オービエを部屋に招き入れる。

 「うわー、やっぱり『部屋』って感じするなぁ」「・・・?君の部屋の方が便利だと思うが」「言わんとって!あれは部屋やない!ただの病室や!」オービエが頭を抱えて悶える。相変わらずだな、君は。

 「そんなにあの『部屋』が気に入らないのか?」「だって!プライベート感ゼロやん!

 俺今回何の準備も無しやで!?この気持ち分かる!?」「楽そうだな」「そこやないっちゅうねん!」やはり、私と彼はすこし感性がずれている。私物なんて邪魔なだけではないか。

 「ふう・・・っと、一方的に喋ってもたな?」「構わないよ。君を見ていると、自分の悩みが小さな物に思えてくるんだ」「褒めてるん?それ」何を言っているんだろう。当然じゃないか。

 「ああ、そうや。大事な用事を忘れとった」

 「ベルリ。俺、模擬戦は6回とも負けたよな!?」「・・・記録的にはそうだが、私的な意見を言えば、最後の模擬戦は私の負けだったように思う」「いや、だからなんで?」オービエが、心底不思議そうな顔で私を見る。

 「私は君の戦いに恐怖を覚え、錯乱した。これはレイレナードの最高戦力として恥ずべき事だ。故に「なぁ、今から爆弾発言してもいい?」・・・突然だな。どんな爆弾なんだ?」「実は俺さ、


 自分が6回目どう戦ったのかイマイチ覚えてないんだ☆」


 瞬間、空気が凍った。

 だれが信じるだろう。最高峰のリンクスをギリギリまで追い詰めたリンクスが、自分が何をしたのか覚えていないなど。

 これはある意味、最大限の挑発である。本気を出して戦った相手が、「え?俺何かした?」と言っているのである。誰でもイラッ☆とくるだろう。

 だが、ベルリオーズは違った。真剣に、オービエが何故自分との模擬戦を覚えていないのかを考えた。

 「(コジマ汚染の影響か?それとも最後の私の銃撃によるAMS負荷で本能的に防御が働いたのか?はたまたそれとも・・・)」

 「あのぉ・・・ベルリサーン?」「すまん、オービエ。すこし考えるから、時間をくれ」「いや、そうじゃなくて。たぶん原因は俺にあるから」

 「何か心当たりがあるのか?」「チョットネー」そう言って、オービエは目をそらす・・・顔が汗ばんでいる。隠すようなことなのか?

 「教えてくれないか?」「こればっかりは、ちょっと。体質、いや精神的なトコ、なのかな?つまりはそうなんで、勘弁」ここまで嫌がるとは、相当深い理由があるのだな・・・。

 「いや、すまない。聞かなかったことにしてくれ」「ああ、ゴメン・・・簡単に言うなら、俺人より忘れっぽいタチだからさ。そのへんもポーン、と、忘れちまったんだと思うんだ」

 「・・・むう、謎が深まるばかりだ。アルツハイマーの一種か?」「いや、そういう病気でも無いんやけど・・・うーん」「それはいつか、教えてもらえることなのか?」「・・・わかんない。これに関して、全てを話した人はいないからさ」

 「「・・・」」暗く、なってしまったな。彼もリンクス。並の人生を送ってはいないという訳か。

 「・・・じゃ、また明日」「・・・ああ」

 こうして、私はオービエと別れた。心を疑問符で埋めながら。

・・・

 ~次の日~

 俺は、輸送機にネクストが積み込まれていくのを見ながら「朝からスッキリオーバード・ブースト!株式会社OBIEから」を飲んでいる。

 なぜ、俺はこのコーヒーを飲んでいるのだろうか?こんな因縁は断ち切って、横に売っていたカフェオレ「これであなたもチャッカリ水没!株式会社28から」を飲めばよかったのではないか。

 うん。俺も最初はそっちを飲もうと思ってたんだ。でもいざ買おうとすると途端に「うぁぁ!ご、ごめんなさい!」とか言って誰かがぶつかってきたり、他の商品が全部売り切れだったり、

 いざ他のが売ってると思えば「健康にいいハズ!アクアビット牛乳」とかいう怪しさ満点の飲み物だったりしたから、結局これを買うハメになった。ちくせう。

 「28といえば・・・オッツダルヴァか」あの毒舌家もレイレナードのリンクスだった、ってどっかに書いてあった、気がする。

 「・・・オッツダルヴァの事を知っているのか?オービエ」ああ、そうだった。俺の後ろではベルリオーズが同じコーヒーを飲んでいる。

 昨日の気まずい雰囲気は払拭しきれてないけど、ベルリは完全に割り切ってるみたい。さすがはNo,1。

 「あれ?ベルリ、オッツダルヴァと知り合い?」「ああ、彼はまだまだ子供なんだが、とても高いAMS適性を示している将来有望なリンクスだ。あと、彼は水没コーヒーが好きらしい」やはり水没王子か。間違いない。

 「いつか会ってみたいな、そのオッツダルヴァに」「・・・?知り合いじゃないのか?」「ちょっと特殊な知り合いなんだ」

 「リンクス!準備が終わりましたから、集合して下さい!」オペレーターが呼んでる。「じゃ、行こうか」「明日は激戦になるかな?」「14機のネクストによる、同時多角攻撃。ノーマルがどれだけいようとも、障害にはならん」

 それもそうなんだけどね。なぁんか嫌な予感がするんだよ。

・・・

 「最後に確認します。我々のネクスト部隊は、東側から基地に向かいます。

 おそらく最も多くの部隊と交戦することになるでしょうが、レオーネのネクスト部隊と同時出撃する為、一切問題はないでしょう。

 敵を殲滅次第、基地本陣に突撃。国家軍総司令を確保し、企業による統治を世界に知らしめます。

 作戦の説明は以上です。御武運を」

 レオーネと共同戦線を張るのか。ってことは、サー(笑)と霞バb(ry ゲフンゲフン。霞スミカとシェリングが一緒か。

 「おびえたか?オービエ」アンジェが話しかけてくる。「『恐怖』は無い。あるとしたら『焦燥』や」「?ずいぶん自信満々に言うな。戦場での過信は死を招くぞ?」事実だしなぁ。

 「無駄話はそこまでだ。出撃体勢に移る。全機、巡航型OB展開。準備しろ」ベルリオーズが注意を促す。

 アンジェが無言でOBを展開し始めたので、俺も次いでOBを展開する。なんでも、巡航型OBってのは長距離移動用に速度を抑えて航行距離を伸ばした物らしい。

 KPとENの減りが遅いらしいんだけど、時速900kmくらいしか出ないらしい。いや、十分速いよねそれ。


 「準備整ったな・・・全機、OB展開!一気に敵部隊を叩く!」

 ベルリオーズが格好良く決め、出撃するレイレナード部隊。向かう先は、弾丸の飛び交う戦地。そしてオービエは・・・




 遅れていた。

 当たり前と言えば当たり前だ。メメント・モリは重量過多機体である。QBなどで細かく動き、戦闘時に誤魔化すことはできるが、純粋なOBで速度が出せるはずもない。

 故に、メメント・モリは時速700kmほどしか出ていなかった。

 「やっぱりかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 レイレナード部隊は、戦闘が始まる前から分断されていた。

・・・

 「・・・やはり、か」「やはり、だな」

 ベルリオーズとアンジェは、想像通りの結果に頭を悩ませていた。二人とも、メメント・モリの重量過多は知っていた。

 「だがしかし、オービエなら問題ないだろう、たぶん」

 「最悪、レオーネの部隊にでも合流すれば良いのだからな」

 そしてその上で、あえて言わなかった。

 「オービエの事を信頼してない訳じゃないんだが」

 「不確定要素を含むチームよりは、単独で戦っていくほうがリンクスらしいし、やりやすい時もある」

 二機がOBを停止し、通常飛行に移る。

 「オービエが着くまで・・・10分ほどか」

 「アイツには悪いが、残してやるつもりは・・・無い」アンジェが、メットの向こうで獰猛に嗤う。

 「アンジェ。分かっているとは思うが」「レイヴンは私が殺る。他は全て持っていって構わないぞ?ベルリオーズ」通常のOBを展開し、突貫しようとするオルレア。

 「まったく・・・君のそういう選り好みに、私が今までどれだけ苦労させられてきたと思っているんだ?」苦笑しながら、ベルリオーズもOBを展開する。

 目の前には、迎撃準備の整いきった国家軍の精鋭レイヴン主体の大規模部隊。

 「さて」ベルリオーズが、グレネードを展開し、

 「それじゃあ」オルレアがムーンライトを構える。


 他企業の製品を使用するシュープリスと、企業専用パーツを使用するオルレア。

 合理主義者のベルリオーズと、戦闘狂の面があるアンジェ。

 この正反対な二人は、しかしレイレナードで最初期から戦い続けてきた信頼の置ける仲間でもある。


 「「行くぞ!」」

・・・

 「ハハッ!いつも以上にやる気じゃないか!ベルリオーズ!」ムーンライトでACを両断しながら、アンジェはベルリオーズらしくない、苛烈な攻撃に内心驚いていた。

 「たしかに、私らしくないな、こんな戦い方は」空中で反動を無視し、強引にグレネードを発射したベルリオーズは、いつもとは違う戦い方に自分自身奇妙に感じていた。

 自分は、アンジェと撃墜数を競い合うような熱い性格だったか。そんなはずはない、と思った瞬間、ベルリオーズは理解した。自分もまた、本質的には彼女と同じ獰猛な『山猫』であるという事に。

 そして思った。オービエは、あのリンクスはどうなのだろう?と。

 ベルリオーズは、実際にオービエの実戦を見たことがあるわけではない。見たのはシュミレータと、模擬戦のみ。その間彼は「おい、マジかよ、夢ならさめ・・・」だとか「じょ、冗談じゃ・・・」だとかなんとか、半分遊びが混じっていた感がある。

 そんな彼は、『本物の』戦場ではどんな風に変容するのだろうか?彼の本質は、あの6度目の模擬戦のような・・・

 そこまで考えて、ベルリオーズは思考を戦闘に戻した。両手のライフルで、二機のノーマルを蜂の巣にする。「あ!ベルリオーズ!レイヴンは私が殺ると言っただろ!」アンジェがなにやら文句を言っているが、この際無視だ。

 「私は・・・自分自身を知らなさすぎたのかもしれないな」「・・・?」


 そして、二機のネクストは戦場を蹂躙し、支配した。その決着には、5分とかからない。

 飛び去っていくネクストとは対照的なノーマルの残骸が、山猫(ネクスト)と鴉(ノーマル)の世代交代、そして企業と国家の交代(パックス・エコノミカ)を、何よりも誇示していた・・・








 どうも、作者です。

 国家解体戦争は長くなりそうなので、二話に分けます。といっても半分以上日常の気もしますが。

 出遅れてしまったオービエ君。彼は今後どうなるんでしょう。少なくとも、No,11になるほどの戦果は挙げさせてあげる予定です。リンクスナンバーが変わると面倒ですし。

 最後になりましたが、誤字・脱字・文法上のミスの指摘、お願いします。


 mono様・・・感想ありがとうございます。ちょっとwikiを見てきました。

 AALIYAH/G

 4レギュ1,60:904

 FAレギュ1,40:2800

 差:-1796

 なん・・・だと・・・

 もっと詳しく見るべきでした。たしかに4なら重量過多解消ですね。

 ネタバレします。一応FAのシナリオも書く予定なので、レギュはFAの1,40を基準に書いてます。たぶん4でも重量過多だろう、って完っ全に思っていたので、迂闊でした。物語も重量過多前提で作ってまして・・・

 なので、その辺はFAのレギュ1,40で書きます。指摘ありがとうございます。そしてごめんなさい。


 oruten様・・・感想ありがとうございます。

 個人的に、オービエ君は企業専属リンクスなのでFAのブラスメイデン(GAの厄災)みたいに敵対勢力に恨まれても、政治的に報復とかはできないかな・・・って思ってます。

 なんせお得意のBFF&インテリオルが味方の勢力ですし。OMERも4時代はあんまり出っ張って来ませんし。

 もっとも、リンクス戦争が始まれば別ですが。



[15186] 幕間 シェリングの場合
Name: ふらっと◆28a2754a ID:5633e6dd
Date: 2010/04/08 16:04
 俺は元々レイヴンだった。『あの』レイヴンほどではないが、それなり以上の評価を受ける優秀なレイヴンだった、と自負できるほどには。

 一度だけ見た事のある、レイヴンの機動。あれは、自分に真似できるものではない、という次元の違いは半ば受け止めていたが。

 とある部隊に所属し、(とはいっても、半分ギルドのようなものだった)仲間達とともに戦場を駆け抜けていた。

 そんなある日、一つの依頼が来た。『とある最新型ACの実験に協力して欲しい』という内容の。

 最初は怪しすぎて目も向けなかったが、その報酬の多さ、そして俺自身あのレイヴンの所にはたどり着けない、何かが足りないと感じていて、

 もしかしたら、その新型ACに乗ればあの男の所までたどり着けるんじゃないのか、というわずかばかりの希望を抱いて、俺は依頼を受諾した。


 そしてそこに待っていたのは、企業の『犬』になるという首輪付きの、ネクストACという圧倒的な力だった。


 レイヴン時代から愛用していたレーザー兵装、それを扱うインテリオルグループに誘われたのは、幸運か、それとも向こうが狙ってやったのか。特には気にしていない。

 レイヴンだった頃の名前は、変えなかった。どのみち偽名だが、長年呼ばれ続けてきた名前を捨てるには、少なからず抵抗がある。

 そして俺は、かつての仲間達をインテリオルに誘った。あいつらもネクストに乗るこそできなかったが、新型のノーマルACに乗ることを許された。特にネスタは嬉しそうに、

 「シェリング、見ろよこのAC!兵装こそ変えれないけど、その他の性能が段違いだ!インテリオルってすげぇ!」

 ネスタ、喜んでる所悪いが、それはBFF製ノーマルなんだ・・・


 そうして始まった国家解体戦争。

 かつての仲間達の中には、「企業の犬になったのか!」と俺を蔑む奴もいた。

 あいつらは、レイヴンであることに、一種の誇りを持っていたのかもしれない。自由奔放で、報酬さえあればどんな依頼でも受ける鴉であることに。

 そしてそんな誇りを持ったかつての仲間達を、俺は自ら葬った。あいつらは最後まで怨嗟を垂れながら、死んでいった。

 この手で何人殺ったかなんて、覚えていない。実はほとんど殺していないのかもしれない。それこそ、本当は夢なのかもしれない。

 俺はいまだにレイヴンで、最後まであいつらと肩を並べて、一緒に逝けたのかもしれない。

 ・・・時々、そんな夢を見る。この手はいつも見えない血で濡れていて、目を閉じれば死んでいったやつらの顔が浮かび、耳を澄ませば断末魔が聞こえる。

 でも、俺はそれにどう答えればいいのか分からない。振り切ればいいのか?全て受け入れればいいのか?

 俺は、本当にリンクスになってよかったのか?そんな思いで出撃していたある作戦で、


 『あの』レイヴンに出会った。

・・・

 『伝説』と呼ばれたレイヴンは、圧倒的だった。

 ジャマーでレーダーを誤魔化した上で、襲撃で二機を沈黙させ、ネスタ率いる企業ノーマル部隊に囲まれてもなお最小限の損害で最大限の被害を出す戦いをした。

 12機いた部隊が7機まで減らされた時、俺は知らず知らずOBを起動していた。

 たどり着いた時には、傷ついたネスタのノーマルと、あのレイヴンの機体がライフルをネスタに向けているだけだった。

 奴の突き刺すような眼光が、こちらを見据える。あのレイヴンは、俺が到着する2分足らずで、11機のノーマルを墜としたのだ。

 『イレギュラー』

 そんな言葉が頭をよぎった。そう、奴は伝説であると同時に、『外れた者』であると聞いたことがある。

 そんな奴相手に勝てるのか?いやこちらはネクスト、相手はノーマルだ、問題ない大丈夫だ。でも相手は伝説だ、もしかしたら・・・そんなことを考えるな今はネスタを・・・

 思考が混濁しすぎて考えが纏まらない。そんな時、奴がOBを起動した。

 思考は纏まった。『護る』それ以上はいらない。そうしてカノープスを構えたクリティークを、あのレイヴンはあざけ笑うかのように無視し、去っていった。

 俺は、奴が『逃げるための』OBを起動していたのを見抜けなかった。敵と接敵した状態でOBを噴かす必要など、距離をとるためしかない。

 そして、奴の機体は戦闘で傷ついたハイエンドノーマル。俺の機体は無傷のネクスト。この状況で行う最善の策は、『逃げる事』であるのは、当たり前の事だ。

 そんな当たり前のことさえ判断できないほど、俺は仲間を『護る』事に執着した。コジマ汚染すら気にせずに。

 ハッとした俺はレーダーを見て、奴がいなくなったのを確認してからジェネレータのKP供給をカット、ネスタの元に向かった。機体のフロートが破損して動けないようだ。

 「大丈夫か!?ネスタ!」「・・・ぐっ、なんとか・・・」「そうか・・・良かった・・・」心の底から、俺はネスタの生存を喜んでいた。

 「すまない、シェリング・・・俺が、俺がもっと上手くやっていれば・・・」そういってネスタが指さした先には、大破しているノーマル部隊の残骸。

 「みんな・・・死んでしまったのか?」「あぁ、そうだ・・・クッソォ!」ネスタが、拳を振り上げ慟哭する。

・・・

 作戦自体は、クリティーク一機でこなした。損害は、BFF製ノーマル11機の損失と、一機の中破。そして、レイヴン11人の死亡。

 帰還した俺は、ネスタとともに記録を見た。あいつらが、どうやって死んでいったのかを、見届ける義務がある。そう、考えた。


 最初の二人は、何の前触れもなく通信が途絶えた。

 次の奴は、「なんだ?コイ・・・」と、自分が死んだ意味も分からず、消えた。

 「全機、二機編成で散開!距離をとって遠距離戦に持ち込め、絶対に近づくな!」ネスタの指示が飛び、全機が瞬時に対応して散開する。

 そして一人が「了か・・・」と言ったその瞬時の間に、その一機が刈られた。

 パニックに陥ったパートナーが、スナイパーを乱射する。その尽くを避けた上で、あのレイヴンはライフルで正確に頭部カメラと腕の間接を撃ち、機能停止させる。

 残りの連中が混乱する中、ネスタのノーマルがスナイパーを直撃させ、レイヴンの機体がよろめく。

 「全機、集中攻撃!本隊に撤退しながらでいい、奴を蜂の巣にしてやれ!」と、ネスタが活を入れ、ようやく体勢が整う。

 あのレイヴンは機能停止させた一機にトドメをさし、撃たれるスナイパーを2発,3発と受け止めつつ、ミサイルを垂直に発射した。ミサイルはネスタ達の真上辺りまで飛び、

 爆雷が降り注ぐ。

 逃げきれなかった機体は破損し、体勢を立てなおしかけていたネスタの部隊は再び分断されて「畜生!・・・」「そんな・・・」「隊長ぉ、指示を・・・」各個撃破される。

 そして、爆雷でフロートをやられ、衝撃で頭を打ったネスタのノーマルだけが残った。

・・・

 「くっそぉ・・・!?シェリング、お前、泣いてるのか?」ネスタに言われ、俺は初めて自分が泣いている事に気付いた。

 レイヴンとして非情な依頼をこなしたときも、かつての仲間を敵として殺したときも涙など流さなかった俺が、仲間が死んで泣いている?

 そして俺は、理解した。

 自分は、仲間が死んで悲しかった、という至極簡単な事に。あのとき、仲間を護りたいと思ったのは純粋な本心だという事に。

 そしてそれを教えたのは、皮肉にも仲間を全滅させたあのレイヴンである事にも。


 その日から俺は、手は見えない血を感じなくなり、目は閉じてもあいつらの顔を浮かべなくなり、耳はどれだけ澄ませても断末魔を聞き取れなくなった。

 かわりに、現実感が増した。俺は以前よりもノーマル部隊の近くで出撃し、細心の注意を払って仲間を護るようになった。もちろん、コジマ汚染にそれ以上の注意を払って。

 作戦区域の地形を把握し、ネクストに乗るようになってから気にしなくなった伏兵の予想地点を割り出して、部隊に伝えた。

 そうして俺の部隊は、被害をほとんど出さず、優秀な戦果を残すインテリオルの精鋭部隊と評されるようにまでなった。

・・・

 「よう、シェリング」「ネスタか。もうすぐ出撃だぞ?」

 今、クリティークとネスタのノーマル部隊がいるのは、インテリオルの海上艦隊のうちの一隻の上だ。

 今日の作戦で、この戦争は終わる。国家は企業に敗北し、パックス・エコノミカが始まる。

 そのブリーフィングには、同じくインテリオル所属のサー・マウロスクと霞スミカがいた。

・・・

 「ほう、貴様があの、ノーマルと仲良しごっこをして、それなりの戦果を挙げているというシェリングか。どんな臆病者かと思えば、きちんと作戦には参加するんだな」

 ブリーフィングが終わったあと、サー・マウロスクがいかにも人を見下したような口調で話しかけてくる。が、

 「そういう貴方は最新技術の詰まった空中要塞『フェルミ』と仲良しごっこをして、インテリオルNo,1の戦果を挙げているのではなかったか、マウロスク卿?」

 その横にいた霞スミカが、完全にマウロスクを皮肉った発言をした。サーはもう、必要ない気がする。

 「ふん!あれも、私の指揮あっての最新兵器だ!」「つまり貴方自身は大して強くはない、という事か。

 道理でこの間の模擬戦で「か、霞スミカ!ろくに戦場にも出ていない貴様に口出しされる筋合いはない!」

 マウロスクが慌てている。会話の内容から察するに、マウロスク自身そこまで高い実力はなく、空中要塞フェルミのおかげで今の地位に着いているのであり、

 出撃回数のあまり多くない霞スミカを侮って模擬戦を挑み、危うくなるかあるいは敗れた、というところか。

 だとすれば、霞スミカがインテリオルの新型兵装のテストをしているという噂もうなずける。

 「とにかく!貴様にはこの戦いで私の実力をしっかりと見ているがいい!」「はぁぁ・・・分かりました。しっかりと見ていることにします。インテリオルのNo,1リンクス様」頭を抱えている上に、棒読みだな。

 「そこの貴様も、私の戦果を見ているがいい!ハハハハハハハ」高笑いをしながら、マウロスクが去っていく。追従する呆れ顔の霞スミカ。どうやらマウロスクは、霞スミカの皮肉にまったく気付いていないようだ。

 ・・・あれで、インテリオルのNO,1なのか?

・・・

 「なんだったんだろうか、あれは」「・・・?どうしかしたのか?シェリング」ネスタが、私の顔を見て言った。どうやら白昼夢を見ていたらしい。

 「なんでもないさ、ネスタ」「それなら良いんだけどさ・・・シェリング」ネスタが真剣な顔になる。

 「どうかしたのか?ネスタ」「あのレイヴン、来ると思うか?」「・・・来る。必ず、な」

 あのレイヴンとは、あれ以来交戦していない。だが、俺は何度か視線を感じた事があった。あのときの、突き刺すような『鴉』の視線を、戦場で。

 あのレイヴンは、半ば遊撃隊のような形で戦場を転々としていたらしい。そしてその先々で、企業の通常戦力へ甚大な被害を与えてきたらしい。

 国家軍の唯一の希望と言われているあのレイヴンの撃墜報告は、いまだ出されていない。

 当初は国家軍の通常戦力、たとえACであっても、ネクストに手傷を負わせる事は難しかった。だが、今は異なる。ネクストを破壊する方法が。

 一つは、周りの地形への考慮を無視した、核爆弾による攻撃。それなりのサイズの核なら、ネクストに致命傷を与える事ができるだろう。味方にも被害が及ぶが。

 他にも、レイレナードのリンクスが『PAを貫通してダメージを与える』新兵器を確認したという情報もある。

 PAは、国家軍に対しての絶対的な防御力ではなくなってきているのだ。そしてそのような好機を、あのレイヴンが見逃すとは思えない。

 必ず仕掛けてくるであろう奴に対し、俺は一つの作戦をとる事にした。

 『ネクストを前面に押し出した、奴との一対一』

 正直、作戦とも言えないような幼稚な戦術であるが、俺の部隊では初めての戦い方だ。

 味方を汚染しないよう、あのレイヴンが出てきたとき、ネスタのノーマル部隊には別行動を取ってもらう。

 一対一であるなら、コジマ粒子を全開にした、圧倒的な戦術がとれる。これなら、たとえあのレイヴンが相手であっても撃ち勝つ自信がある。


 そして、俺とネスタは出撃した。この作戦の、ある弱点を知らずに。

・・・

 出撃した先は、山に隣接した廃都市。障害物が多いため、伏兵がいる事に注意を払っていたが、なぜか敵影は少なかった。

 「気になるな・・・だが、このあたりの敵は片付いた。ネスタ、次のポイントに「ドガァァァン」ぐっ!?」

 ネスタ達と共にPAをカットして周囲の敵を殲滅したクリティークに、グレネードが直撃する。見上げた山の中腹には、

 あのレイヴンの機体がいた。

 両背用グレネードを装備し、手にライフルとブレードを装備していることから、完全にこちらとやる気のようだ。

 肩になにかを装備しているようだが、エクステンションではネクストにダメージは与えられないだろう。

 「もう出てきたか。ネスタ!」「分かってる、後は任せたぜ!」ネスタのノーマル部隊に作戦を伝え、戦場が俺と奴だけになる。

 「あのときの借り、返させてもらうぞ!レイヴン!」


 PAがない状態で貰った2発のグレネードは響くが、重量級であるクリティークはまだ耐えられる。なにより、KPも既に回復している。問題はない!

 PAが回復したのと同時にレイヴンがもう一度グレネードを発射し、パージ。軽量になり、山を登り始める。

 「嘗められたものだ。重量級のネクストを、ライフルとブレードだけで倒すつもりなのか?」グレネードをQBで回避した俺もレイヴンを追い、山を登り始める

 クリティークは確かに重量級ではあるが、ネクストである事に変わりない。レイヴンの機体をジリジリと追い詰め、「ミサイルの射程に・・・入った!」

 ASミサイルがクリティークから発射され、レイヴンの機体に襲いかかるが、レイヴンはライフルでミサイルを撃ち落とす。

 「お前なら打ち落とせると思っていたよ!」レイヴンの機体が射撃体勢を取っている間にクリティークは接近し、カノープスとアルタイルの射程に捉える。

 それに気付いたのか、レイヴンが山を登るのをやめて右向きの水平軌道になり、サイトを外れようとするが、もう遅い。

 「これで、終わりだ!レイヴン!」そしてクリティークは両手のレーザーを発射し、レイヴンのノーマルは、


 左に『QB』した。


 シェリングは、己の眼を疑った。

 レイヴンの機体はレーザーを避け、こちらに接近してくる。「くっ!」反応が遅れたクリティークに、一気に接近するレイヴンの機体。

 そして、左手のブレードを振る。『避けきれない』そう思ったシェリングだが、意外にもブレードは外れた・・・正確に言えば、その短い刀身故にPAに阻まれた。

 「まだだ!」ブレードを振った隙を見逃さず、クリティークが連射の間に合ったアルタイルを発射する。

 それすらもレイヴンは機体をひねって避け、その勢いのまま、もう一度ブレードを振るう。

 またも、PAに阻まれる。だが、二度のブレード攻撃によってクリティークのPAは完全に剥がされた。

 クリティークはとっさに後ろにQBし、レイヴンとの間合いを取る。PAも、同盟関係にあるレイレナード製ジェネレータのおかげですぐに回復するだろう。

 そしてこの時、レイヴンは『ネクストを倒す奇策』というチャンスを失った。あのブレードは確かに高出力だろうが、PA越しではその射程故に効果が薄い。

 二度目のブレードの後、三度目が入っていたら、いかにクリティークが重量級であったとしても、腕の一本は持っていかれていただろう。

 最悪、コアに入っていたかもしれない・・・いや、あのレイヴンならやりかねない。そこまで狙っていたとしたら・・・だが、それも失敗に終わった。ネクストのQBを前に。

 「伝説・・・この程度か?」シェリングが一息つき、冷静になろうとしたその時。


 「ザザ・・・シェリング!ザザ・・・敵に囲まれ・・ザザ・・多すぎて・・ザザ・・対処しきれない!」


 「なっ!ネスタ!」振り返ったクリティークの視線の先にいたのは、倍以上のノーマルに囲まれて身動きが取れなくなっているネスタのノーマル部隊だった。

 そう、この作戦には一つの穴があった。味方を護ろうとするシェリングのネクストが、ノーマル部隊から遠く引き離されると救援に向かえないのだ。

 そのためにレイヴンは山を登って自らを囮にし、クリティークとノーマル部隊の距離を離した。


 目前のレイヴンを無視してOBを起動すれば、KPを消費したチャージ時間にブレードで斬られる。

 ブレードをQBで避ければ、先程まで連射していたEN兵器の消費もかさんで十分な量のENが確保できなくなる。

 BB(バック・ブースター)で合流しようとしても、間違いなく間に合わないし、間に合ったとしても、本来の「シェリングとレイヴンの一対一」という作戦が意味を成さなくなる。

 フェイントをかけて相手のENを減らし、隙あらばブレードによる攻撃も用意しているレイヴンの機体と、迎撃しなければPAが削られ、どのみち助けに向かう事ができなくなるクリティーク。

 仲間を助けに行くことができず焦るシェリングと、自らの目的を果たし、OBで撤退する事を準備する、きわめて冷静なレイヴン。


 そんな危険な膠着状態を崩したのは、両者の間に起こった爆発だった。

・・・

 「なんだ!?」シェリングは目の前で突如として起こった爆発に驚き、次の瞬間にそれは自分に向けられたものではない、と判断した。

 爆発の元が撃ち込まれたのは、自分よりもレイヴン側の地面である事に気付いたシェリングは、弾丸が撃ち込んできたであろう山の頂上を見た。

 そこにいたのは、一機のネクスト。技術提携関係にある、レイレナードフレームの青いアリーヤだった。

 なぜ、レイレナードの機体がここに?そんなことを考えようとした瞬間、「クリティーク!はようノーマル部隊助けに行かんかい!」という通信が入る。

 「!?・・・協力してくれるのか?」「さっき見た時、もう動けんなってる奴がおった。さっさと行かんとヤバイで!」アリーヤが背のロケットを乱射し、レイヴンを引きつける。

 どうするべきか。そんなことは決まっている。「助かる!レイレナードのリンクス!」「礼はノーマル部隊助けてからにしぃ!」

 そうしてクリティークは、ENが十分に回復したのを見計らってからOBを起動。一路、ネスタのノーマル部隊が囲まれている戦場に向かった。

 「間に合ってくれよ・・・」シェリングはネスタの無事を願いつつ、なぜレイレナードの機体がテクノクラート製ロケットを装備していたのだろうか?という点については考えなかった。

・・・

 「・・・よし!間に合った!」OBで戦場に到着した俺は、コジマ汚染を避けるためにジェネレータのKPをカットし、ネスタのノーマルの元に向かう。

 「ネスタ!」「シェリング、どうして来たんだ!作戦が「馬鹿な事を言うな!」ネスタの機体も、フレームが火花をあげた危険な状態だ。

 「お前までこっちに来たら、奴も一緒に・・・」「今はレイレナードのリンクスが足止めしてくれている。こっちをさっさと片付けることに専念しろ!」

 アルタイルでノーマルを打ち抜き、フロートが破損して動けなくなったネスタの壁になるように立つ。PAの無い状態で、しかも脚を止めるとなればネクストの優位は一気に無くなる。

 「危険だシェリング!やめろ!」ネスタが、声を張り上げる。「だが・・・ここを退くわけにはいかない!」

 「くっ・・・全機!クリティークを援護しろ!」無傷ではないノーマル部隊が、俺の周囲に展開する。

 「ぬぁぁぁぁ!」空中に向けてASミサイルを発射、自動的に敵を追い始める。そうしていぶりだした敵に、アルタイルを発射。

 誘いに乗らなかった敵はレーダーとミサイルの軌道を頼りに、壁になっている廃墟ごとカノープスで撃ち抜く。

 「ちっ・・・腕の調子が悪い、グレネードが原因か!?」レイヴンに貰ったグレネードが、少しずつ効いてきたらしい・・・思うように腕部が動かない。

 「まだだ!」上手く当てられないのなら、乱射するしかない。両手のレーザーを大味に連射する。敵の部隊の攻撃も苛烈さを増してきた。

 「それ以上は不味いぞ、シェリング!」「まだだ・・・まだいける!」機体の損耗が60%を越えた。だが、敵はまだ残っている。

 「カチッ」アルタイルの弾が尽きた。ASミサイルも残り少ない。「頼れるのはカノープスだけ・・・ん?」敵の部隊が引き始めた。

 国家軍の戦況が怪しくなってきた、というところか。レイヴンの策略に協力したという事は、国家に直接雇われていた訳ではなさそうだしな。

 「シェリング!大丈夫なのか!?」ネスタがクリティークを見ながら、心配している。

 「問題ない・・・とは言い難いな。撤退しよう」クリティークの損耗率は既に75%を越えており、これ以上の戦闘は厳しいものがある。なによりノーマル部隊も限界だ。

 クリティークとノーマル部隊がインテリオルの旗艦隊に撤退すると、しばらくして国家軍は白旗を挙げた。


 こうして、俺とネスタの国家解体戦争は終わりを告げた。あのレイヴンとの決着こそ付けられなかったが・・・撃墜報告も出たという話だ。もう、会う事もないだろう・・・

 


















 どうも、作者です。春休みが近づいて、休みが増えて投稿が早くできそうな錯覚を覚えました。


 ハイ、今回もオリジナルな話でした。今回の主役はシェリングさん。次席でネスタさん。

 え?オービエ君?今回出てましたっけ・・・ああ、名無しでした。

 「アナトリアの傭兵・・・あのレイヴンか」というセリフを採算した結果、こんな事になってしまいました。

 それと、レイヴンのQBもどきは、AC3でバックブースタを使えば分かると思います。ACの規格を改造したチート技ではありません。

 さて今回、レイヴンには本当の意味でイレギュラーになって貰いました。たとえるならば、ジムリーダーサトシ君並の・・・いや、彼の場合単独でネクストを墜としそうですが。

 それと、やっぱりマウロスクがネタになってしまう件に関して。というかマウロスクより霞スミカの方が強い気が(ry

 『実質的な、同社の最高戦力と目されている』

 という霞スミカの説明から、地力では経験の少ない霞スミカの上を行くけど、シュミレータでは某英雄王のごとく慢心してボロ負けしたんじゃないかな、とか思ったり。

 wikiで、サー・マウロスクの力の7割はフェルミ力で、3割はキノコでできていると聞いたんですが、どうなんでしょう・・・AIの問題?


 毎度の事ですが、誤字・脱字・文法上のミス・読みづらい文章があればお願いします。


 

 首輪付きけもの様・・・レイブン× →レイヴン○ たしかにそうです。興ざめさせてしまい、申し訳ありません。今後、肝に銘じておきます。それと、読んでいただきありがとうございます。



[15186] 第九話 国家解体戦争 後編
Name: ふらっと◆28a2754a ID:99d3ed45
Date: 2010/05/03 23:46
 「作戦領域に到達しました」「・・・いや、全部終わってるし」

 やっとの思いで戦場にたどり着いたオービエの目に映ったのは、残骸、残骸、残骸。

 「どないしたら10分やそこらでこんな事になるんや!・・・まぁ、あの二人ならやりかねんけどなぁ、このくらい」後のオリジナルNo,1とNo,3が、容赦無しに大暴れした戦場である。

 「・・・さて、このまま何もせんと帰るんも寂しいし、このままじゃぁNo,11なんて成れそうにないしなぁ・・・」「No,11、とはどう意味ですか?リンクス」「ああ、独り言ッス・・・ん?」

 右手にある山の先で煙が上がっている。「・・・どこでもドンパチやってるみたいやけど、アレが一番近いな」「たしかにそうですが・・・」言ってる間にOBを起動して、山の頂上近くまで昇る。


 「うーん、あれは・・・クリティーク?」「・・・データ照合、アルドラ社のクリティークに間違いありません」

 山の先でドンパチやっていたのは、カノープスを装備したヒルベルトフレームのクリティークと、一機のノーマル・・・いや、ハイエンドノーマル。

 どうやら両背にグレを背負ったジノアセンだったみたいだけど、今は両方パージしてブレードとライフルだけになってる・・・あと肩になんか付いてる。

 そんな装備じゃ、重量級のクリティークを倒すのは無理だろ・・・まぁ、死過重の武器背負ってても意味ないだろうけどさ。案外、剣豪さんなのかもしれない。

 「ネクストの戦闘に手を出すのもなんやし、他んとこに当たって・・・」そう思って見回した先の市街地に、複数のフロートノーマルを発見。

 「あれはおそらく、クリティークの部隊でしょう。インテリオルの精鋭と謳われています」もしかしてあれがネスタの部隊なのかな~、とか考えていたr「敵機反応確認!」

 突然ビルが紙のように破れて、中からノーマルが現れた。

 とっさの出来事に対応できずに一機のBFFノーマルが弾丸を受け、ビルに激突する。

 BFFのノーマル部隊は一拍遅れて対応し現れた一機をライフルで撃ち抜いて爆散させるが、周囲の建物から次々とノーマルが現れて包囲されてしまった。

 そしてそのまま、混戦状態に突入。奇襲されたのと数が多いのとで、性能で上回るネスタ(仮)の部隊が押されている。

 最初にやられた一機はレーダー上から未だに動かない。フロートが破損したようだ。まだ光点は消えていないけど、時間の問題だろう。

 「おいおい、あれって結構やばいんとちゃうん!?助けに・・・って、こっちもかい!」助けに行こうとした矢先、クリティーク側にも変化が現れる。

 ハイエンドノーマルが、ブレードでクリティークのPAを破った。「ダガーか!?あの威力と射程」「その呼称が正しいかどうかは分かりませんが、DRAGONSLAYERのように範囲を絞ったタイプのブレードのようです」

 PAを失ったネクストは、脆い。通常戦力の砲火にも手こずるくらいだ。加えて、相手のハイエンドノーマルは無傷。こっちもこっちで結構危ない。

 くぅぅ・・・ノーマルの近くで戦えば、コジマ汚染は深刻だ。加えてアリーヤはコジマ技術に優れているが、別にコジマ粒子を出さない、というわけじゃない。

 「全力稼働時にはコジマレベルの低いGAよりもひどい汚染を引き起こすんだ。簡単に言えば、最大出力が高いってこと」って、ルースが言ってた。

 その上、アリーヤの防御はPA頼りで、クリティークは重量級。だから、PAを切って戦うとすればクリティークの方が堅いのは当たり前だ。

 「・・・うん。選手交代したほうが良いわ」「それには同意しますが、どう割り込むつもりですか?」

 丁度いいことに気付かれてないみたいだから、高空からロケットで砲撃しようかな。いや、砲撃するべきだと思う。いや、砲撃しよう。

 高空かどうかなんてどうでもよくなった。「俺は面倒が嫌いなんや」「何を言っているんです?」頃合いを見計らって、ハイエンドノーマルとクリティークとの間にロケット弾を撃ち込み、突撃。

 ロケット弾にレイヴンがいち早く反応し後ろに「瞬間移動ぉ!?・・・ああ、肩のバックブースタか、ってそれよりも「クリティークへの通信・・・繋がりました」

 さすがオペレーターさん、俺の考えてること筒抜けだぜ!・・・言ってて悲しくなってきたよ。

 「クリティーク!はようノーマル部隊助けに行かんかい!」

・・・

 「やっと行ったか。さて、問題は・・・コイツ」「ただのレイヴンでないことだけは、確かでしょう」OBで去っていくクリティークを尻目に、前方のノーマルを見据える。

 ノーマルが、ネクストにブレードを当てられた理由が分かった。バックブースタの切り返し機動で隙を作り、そこを狙ったんだろう。あれは、使う奴が使えば単発武器にかなり効果的だ。

 「ロケット弾も爆風しか当てられんかったし・・・あれは機体性能の問題か」レイヴンの反応に、機体が追従できていないみたいな・・・それなんてアムr「ん?」

 ノーマルの肩をよく見てみると、そこには一羽の鴉が描かれていた。真っ黒で、眼の赤い鴉が。

 「なにを当たり前の事描いてるんや。ノーマル動かせるんやから、レイヴンなのは当たり前・・・まさか」俺の頭を、最悪の想像が過ぎる。


 「こいつが『レイヴン』なんか!?」


 レイヴン。それは全てのアーマード・コアの世界において、最も自由な存在。「プレイヤー」という一部の『イレギュラー』を除き、本来個人の呼称にはならない言葉。

 そして今、俺の目の前にいるのはその『イレギュラー』で間違いないだろう。

 さっきのクリティークもPAの無い状態だったから、最悪の場合コアを薙がれて撃破されていたかもしれない。そんな状況を作れるレイヴンが、並であるはずがない。

 そしてコイツが『レイヴン』で、『アナトリアの傭兵』であったとしたら・・・それはつまり、コイツはいずれレイレナードを壊滅させるって事だ。「リンクス?」

 ・・・レイレナードが壊滅したら、みんなはどうなる?ルースは?オペレーターは?ベルリオーズは?ザンニは?アンジェは?真改は?「リンクス、返事をして下さい」

 「ああ、そうか。今のうちに殺っとかんとダメなんか、コイツは」モーターコブラとマーヴを構え、メメント・モリの眼光が赤く輝く。


 「レイヴン。イレギュラー要素は、この世界には不要なんやで?」「リンクス!?リンクス!」

 オービエの目にはもう、レイヴンしか映っていない。

・・・

 それは、蹂躙だった。一方的で、圧倒的で、絶対的な。

 メメント・モリのマシンガンが凶弾を吐き出せば、レイヴンの機体のどこかが吹き飛ぶ。バックブースタの瞬間的な高速機動は、連射武器には意味を為さない。

 レイヴンの機体がライフルを正確に連射しても、それは全てPAに遮られて届かない。ブレードを振るおうにも、迂闊に接近すれば弾幕に晒されて周囲のジャンクの仲間入り。

 たとえ建物の裏に隠れても、すぐに建物ごとロケットで吹き飛ばされる。かといって、ノーマルの機動力でネクストを振り切れる筈もない。OBには、OBで対応されるだけ。

 手札を全て対クリティーク用に揃え、その尽くを切っていたレイヴンにメメント・モリを相手にする余力は一切残されておらず。


 そんな状態で、正面からネクストと激突したレイヴンの機体が膝を着くのは必然で。

 「なぁんか、あんまり手応えなかったなぁ、アレ実はただのレイヴンやったんかな・・・なら、本物のアナトリアの傭兵ってどこにおるんやろう?まぁ、全部殺ってまえばええか」

 正気を失った山猫(オービエ)が、貪欲に戦場の鴉(レイヴン)を追い続けるのも必然だった。

・・・

 「これは、まさか、こんなことが・・・」

 アンジェと共に、時には別れて敵の殲滅に当たっていたベルリオーズは、レーダーにメメント・モリのシグナルを発見して様子を見に来ていた。

 見に来ていた・・・そう、ベルリオーズはメメント・モリの反応を追っていた。なのに、彼の目に映るのは、


 やりすぎなほどに胴体を蜂の巣にされた、無惨なノーマル『だった物』

 完全に破壊され、原型が残されていないMTの残骸。


 ベルリオーズとアンジェの作り出した残骸の山とは違う、ただ『食い散らかされた』ような光景が獣道のごとく、まだ距離のあるメメント・モリのシグナルまで続いていた。

 「・・・オービエ、なのか?『これ』を作ったのは・・・」

 ベルリオーズは、周囲の残骸を尻目にメメント・モリのいる方向へと向かう。最悪の現実を、己の目で確かめるために。

 そして、ベルリオーズは見た。


 メメント・モリが、その手のマーヴでノーマルのコクピットを貫いている様を。

 それも、一機だけではない。メメント・モリの周囲には既に、数十機のノーマルが『全て残らず』胴体を貫かれて沈黙している。

 どう考えても正常ではない。メメント・モリの武装はマーヴ以外全てパージされており、おそらくマーヴも既に弾切れだろう。

 だがオービエは、弾丸を補給しに帰らない。完全に先端のひしゃげたマーヴを捨ててもまだ、『なにか』を探している。

 「・・・オービエ?」「アナトリアの傭兵・・・どこやろか?もう弾もないし、マーヴも使い物にならんしなぁ」アナトリアの傭兵?・・・こちらの声も届いていない、か。なら・・・

 「オペレーター、オービエはどういう状態だ?」「ベルリオーズ、オービエのバイタルが危険域に入りかけているんです!」「なに!?」

 「おそらく、極度の興奮状態が長時間続いていることで心臓に負荷がかかっているものかと思われます。先ほどから呼びかけてはいるのですが・・・」

 「今すぐAMSを切断(カット)するか鎮静剤を打て!」「・・・戦闘中に鎮静剤を投与するのは危険すぎます。あなたも分かっているでしょう?」

 周囲をうかがっていたメメント・モリの複眼が、別の敵機を捉えた。

 「オービエが新たな敵を見つけたらしい。OBを展開している。武器もない状態で、だ」「そんな・・・っ、了解しました。鎮静剤を投与します」


 「がっ、・・・」メメント・モリの動きが一瞬止まる。そして、

 「・・・まだ動いているぞ」「そんな!?鎮静剤は投与され、確かに機能したはずです!」鎮静剤の効果を上回るほどの執念で、『アナトリアの傭兵』という奴を捜しているのか・・・

 「アナトリアの、傭兵、レイヴン、ィレギュラー、要素は」「オービエ・・・」

 薬が少しずつ効いてきたのか、メメント・モリの動きがだんだん鈍くなる。

 「レイヴン・・・イレ、ギュ、らぁ・・・」「お前は一体何に、そんなに『怯えて』いるんだ?」

 メメント・モリの行動は停止し、ほぼ同時に国家軍の白旗が挙がった。

 国家はその戦力の大半を企業に打ち砕かれ、世界から姿を消す・・・





 -国家解体戦争、終結-






 戦果報告

 メメント・モリ・・・国家軍標準ノーマル 47機

           ハイエンドノーマル 21機 内一機は『伝説』と呼ばれたレイヴンの機体である模様

           有澤重工製ノーマル『ZENIGAME』 3機

           MT 53機

           

・・・

 「よう、久しぶりだな、『----』」

 声が、聞こえる。聞き覚えのある声が。これは・・・

 「・・・今はオービエ、って名前なんだ。前の名前で呼ばないでくれよ、蟹さん」

 そう、俺の前にいるのは一匹の『蟹』。前の世界でMK-Ⅱに轢かれる前からの知り合いだ。こっちに来てからは一度も会ってなかったけどね。

 でも本人曰く、「別に蟹である必要はねぇよ。ただ、お前のイメージが俺を蟹のような存在に固定化させ・・・」とかなんとか。後半は聞いてない。 

 そしてこの周りの真っ白な空間も昔のままだ。そういえば、神様に出会ったのもこんなトコだった。なんにもない、地面すらない世界・・・そういえば俺、どうやって膝枕されてたんだ?・・・ぐぁ、なんだか尻がムズムズしてきた。これ以上考えないようにしよう。

 「ふん、コーヒー会社の会社名引っ張ってきて何が名前だ。そんなもん俺は認めねぇよ・・・ま、どうでも良いがな」なにやら気に入らない様子の蟹さん。もうどうしようもないし・・・

 「それはそうと・・・オービエ。随分と貯まってるんだが、どうやって精算するつもりだ?」話題を一気に変え、蟹さんが本題に入る。

 「耳が痛いなぁ。できれば、もうちょい待ってくれへん?」「分かってんだろう?俺が出てきたって事は、『今度こそ貰っていくぞ』っていう意思表示だってのは」「・・・」

 そうは言いつつ、結構見逃してくれたりするんだよね、蟹さんはイイ蟹(?)だから。

 「今回はさすがに洒落にならんぞ?なんせ、こっちに来てからの合計で・・・もう191人だからな。以前みたいに一つや二つじゃ済む問題じゃねぇぞ!」「なら三つで」「・・・毎度毎度値切りやがって、俺がそんなにイイ奴だとでも「思ってます」

 「・・・ったく、しょうがねぇ奴だ」「さすが蟹さん!そこに痺r「それを聞いたのはもう3回目だ」むぅ、呆れられてしまった。

 「さて、言ったからにはしっかりと貰っていくぜ?」「んじゃ、『焦燥』と『嫉妬』と『軽蔑』で」「・・・これまた優先度の低いのを出してきやがって。なんでそんな汚い奴になっちまったんだ?」「蟹さんのおかげさ☆」

 「「・・・」」

 「ハァ・・・んじゃ、また会おうぜ」「できれば二度と会いたくないよね☆」「バーカ、自業自得だろうが」そして蟹さんは消えていき、俺の意識も薄くなっていった。



 「・・・またベッドの上か」いや、別に固い地面の上で寝起きしたいってわけじゃないよ?むしろ大歓迎だよベッド。

 それにしても・・・『自業自得』か。「図星を突かれるのって厳しいな」・・・そういえば、あのレイヴンと会った後の記憶がない。

 ここで寝てるって事は、戦争は終わったんだろうな。俺は何をしてたんだろう・・・?

 「ふぁぁぁあぁあ」なんかまだ眠「オービエ、起きたのかい!?」途端、ルースに首を思いっきり揺さぶられ「あばばばば」芥川?と自分で思ってしまったが、そんな場合じゃない。

 「ル、ルース、ストップ・・・」「リンクスの容態はどうなって・・・」「オ、オペレーターさん!助け「リンクス・・・起きていたのですか。それは丁度よかった」

 ・・・顔は笑ってるんだけど目が笑ってない。いつものアレとは違うけど、身体が本能的に逃げ出そうとしてる。

 どうやら『恐怖』が無くなったのは頭のほうだけで、身体のほうの本能はまだ生きてるみたいだ。知りたくなかった、そんな情報。

 ルースも同じように感じているらしく、固まっていて動く気配がない・・・いや、足が震えてる。

 「・・・どういうご用件で?」「用件も何も、私はリンクスのお見舞いに来ただけですが?」怒ってる、よな?・・・俺の行動に、そろそろ堪忍袋の緒が切れたんだろうか?

 「よく分かりましたね、リンクス。私もそろそろ限界です」心を読まないで下さい、お願いしますから。「では、行きますよ」タッタッタ、とドアから俺のベッドに近づいてくる。

 「・・・?」そのままオペレーターはふらりと俺の背後に回り、


 「メリッ」


 嫌な音がした、気がする。「オ、オービエ!?大丈夫かい!?」我が輩はオービエである、意識はもう無い。そしてルースが何か言ってるけど聞こえない。あれ?近くに矛盾(ry

 そして俺はすっかり慣れてしまった意識剥奪を、また味わうことになった。

 なんか、持って行かれてばっかだねぇ、俺。

・・・

 「国家解体戦争は、企業の勝利で終わった」「これより、パックス・エコノミカが始まる」「そのためにも、リンクスには完全な首輪を付けた上で、各々の戦力の誇示をするべきだろう」

 「ならば、戦績順位別にナンバーを付けるというのはどうだ」「・・・企業同士の争いの火種にならないか?」「ふん、それもまた良いではないか。

 争いとは技術を発展させるものだ。企業という存在には一番必要なものだ。たとえその争いが、企業間のものだったとしても」

 「では、リンクスに付けるナンバーは・・・」「それはさすがに、ここだけで決めるわけにはいかんだろう。次の企業間重役会議で選定しよう」「GAも、ネクストは保有しているしな。

 火種は必要だが、それは時と場合による。戦争直後の開戦はさすがに不味い」

 「では、そのように」「そういえば、『アサルト・セル』と『エーレンベルク』はどうなっている?」「オーメル・サイエンスの動きも気になるな」

 「『アサルト・セル』は何の変化もなく、今も天上に存在し続けています。『エーレンベルク』は、未だに全体の4%しか完成していません」「戦争が終結したのだ。建造に回す余裕も出てくるだろう。計画に変更はない」

 「オーメル・サイエンスも、現在は表立った動きは見せていません」「奴らもさすがに気付いているだろう。どういうつもりか・・・あの狸どもが、ローゼンタールの傘下で終わるはずもないだろうに」

 「・・・今回の議題は以上だ。ナンバーについては次の企業間重役会議で、エーレンベルクには戦争終了後の余った予算を優先的に回す、ということで構わんな?・・・では最後に、諸君」


 --人類に、黄金の時代を--

・・・

 -GA社本社[BIGBOX]のとある格納庫-

 「待って下さい!国際問題に発展しかねないんですよ!?」「うるさい!我が社の社員が!『巻き添えで』!死んだのだぞ!それなのに!・・・黙っていられるか!」

 190を超えかねない、大柄な有澤重工のリンクス『ハタ』は憤っていた。もちろん理由はある。

 先のシドニー基地攻略戦で、3機1小隊でネクストと離れて行動していた有澤重工のノーマルが撃破されたのである。

 終戦後の調査で、大破した有澤ノーマルの胴体部分からレイレナードネクスト用の弾丸が見つかった事から、この問題は発覚した。

 部下一人一人と厚い信頼関係を築いていたハタは、この案件を本社に報告。それによってレイレナードのリンクス個人を非難し、『遺族に頭を下げさせる』というのがハタの望みであった。

 もし本心からの攻撃でない、いわゆる誤射やレーダーの誤作動などの原因だったとすれば・・・それでももちろん、謝って済む問題ではない。だが筋は通すべきだ、とハタは考えていた。

 だが、GA本社からの返答は「黙認せよ」の一言だけだった。

 ハタは理解できなかった。何故『遺族に謝らせる』程度の事すら許されないのか、と。

 GA本社重役は理解できなかった。なぜ、『そんな戦争の火種になりかねない』事をしようとするのか、と。

 両者の間には、一つの食い違いがあった。

 ハタは、『レイレナードのリンクスに、せめて遺族に対して直接謝らせたい』という内容を送ったつもりだった。

 GA本社はそれを『レイレナードのリンクスに、一市民に対して頭を下げさせろ』と解釈してしまった。

 そんな要請が、認められるはずもない。

 そして、何度要請しても反応がない事に本格的に怒ったハタは今、『レイレナード本社に直接行って、連れてきて、謝らせる』という至極簡潔で危険な回答にたどり着いてしまった。


 「抑えろよ、ハタ。私も我慢しているのだから」

 そしてその格納庫の壁に背中を預けているのは30代手前、という風貌の、同じく有澤重工のリンクス『ワカ』。彼のこめかみにも青筋が浮き上がっている。

 本社の対応には、彼も苛立っていた。だが彼には、ハタには無い『理性』という名の強力なブロックが入っていた。

 「腑抜けたか?ワカ、それとも・・・人としての倫理すら忘れたか?」「分かっている、分かっているが・・・」ワカが目をつぶる。悔しさに打ち震えながら。

 「ですからハタ様!」「邪魔をするな!」とうとう周囲の整備員を全員なぎ払い、ハタは自らのネクスト『グレート・ウォール』に搭乗する。

 「わ、ワカ様!」「馬鹿野郎が・・・総員退避!コジマ汚染を受けたくなかったらさっさと離れろ!」

 グレート・ウォールは格納庫から空へと飛び上がり、巡航型OBでまっすぐ『エグザウィル』へと向かう。

 「・・・待っていろ、『オービエ』。あいつらの墓の前で、必ずお前に贖罪をさせてやる・・・!」


 当のオービエが何も覚えていない事を、彼が知る由もない。


















 お久しぶりです、作者です。

 タイトルが『ネタ気味』なのに半分くらい暗い話が入るのはどうなんでしょう・・・アーマードコアだから仕方ない・・・ってことはないと思うので、どんどん明るい話を突っ込んでいきたいんですが、次回はグレート・ウォール撃破になります。

 さて今回、国家解体戦争編+αが終結しました。編ってほど長くありませんでしたが。後半いろいろと胡散臭いトコがあったりしましたが、次以降のお話で。

 オービエ君は半分以上暴走状態でしたが、ちゃっかり(というか、かなり)戦果は挙げてます。国家軍のノーマル・MTであるなら、ゲームの雑魚よりさらに耐久力が低いんじゃね?と想像しました。つまり一機一機を撃破した価値も若干下。つまりそこまで凄くない、ということ。

 ついでにアナトリアの傭兵も撃破。ちょっとあっさりしすぎでしょうか?でもvsネクストで、マシンガン+炸薬兵器(ロケット)のゴリ押しで、一切手札を用意していない状態ですからさすがにノーマルでは相性が悪すぎる気が・・・

 オリジナルなキャラクター、No,23、ハタさんの設定は『情の厚い、でも若干思慮の浅い人』です。出番はあんまりなさそうですが。

 そういえば今回、少しだけ人の特徴を書きましたね。次回の投稿で、人物像を簡単に書けたらいいな、と思います。

 最後に、誤字・脱字・文法上のミスがあればお願いします。


 oruten様・・・いつも感想ありがとうございます。更新に関しては。自分で「一週間で~」「もっと早く~」などと言っていたにもかかわらず、2週間かけてしまった事が申し訳ない・・という意味です。

 あとレイヴンは『イレギュラーな主人公』なので主人公補正がかかって生きてます、たぶん。

 オービエ君?いえいえ、彼はただの『イレギュラー』です。


 聖天様・・・精神が不安定になる理由としては、

 ベルリオーズとの模擬戦の時は複眼に集中しすぎて会話も出来ない状態になっていたからで、

 国家機体戦争の時は親しい人間が死ぬ事に『怯え』て、『レイヴンを排除すればいい』という結論を頭があまり回っていない状態で下してしまったからです。

 そういえば『怯え』と『オービエ』ってなんか似てますね。

 あと、彼の精神が同年代の平均に比べて低めだという設定も関係しています・・・え?そんなの聞いたことない?もちろん、今初めて言いましたから☆(コラ

 あと、オービエ君本人は『怯え』を抜きにすると「4の主人公ってコキ扱わされすぎやろ・・・」という感じで、若干哀れんでいます。



[15186] 第十話 グレート・ウォールがエグザウィルに突っ込んで来た!・・・さぁ想像してみよう
Name: ふらっと◆28a2754a ID:3987b033
Date: 2010/03/28 18:27
あらすじ・・・国家解体戦争が終結したらしいよ・・・俺は覚えてないけどね!




 「・・・ふぁぁあ」夜、エグザウィルの管制塔で社員の一人が大きなあくびをしていた。

 ついさっきまで国家軍と壮絶な戦いを繰り広げていたとは思えないほど、レイレナード本社の雰囲気は戦争終結と共に一気に弛緩したものになっていた。

 別に、彼らが直接、前線に立って命を賭けていたわけではない。(悪く言えば)彼らはただ安全に、エグザウィルの中に引きこもっていたに過ぎない。

 だがしかし、『国家に戦争を吹っ掛ける』という行為自体が、企業で働く社員一人一人にプレッシャーを与えていたのは事実だった。

 「おいおい、ちゃんとレーダー見てろよ?」「こんな時期に襲撃かけてくるようなバカはいねぇよ」「それもそうか」そう言って、管制塔のレーダーを担当する二人は笑いあう。

 「なんか飲み物買いに行かないか?」「レーダー見てろって言ったのはそっちだろう」「まぁまぁ、コーヒーの一杯も飲まないと、こんな暇な仕事やってられないだろ?

 「なら買ってきてくれよ」「いいのか?俺に任せて。アクアビット製牛乳とか買うかもしれんぞ?」「・・・お前はそういうトコ冗談効かないからな。やっぱ自分で買いに行くわ」

 「どういう意味だよ」「どうもこうもねぇよ」二人は談笑しつつ、レーダーを一度視界から外す。

 「そういえば、コーヒーといえば『オーバード・ブースト』シリーズだよなぁ」「たしかにあのコーヒーはいい。別段苦くも甘くもないのにこう、気分がスカッとするよな!」

 「今の時間帯なら・・・『夜遅くでも張り切ってオーバード・ブースト!』かな?」「時間帯に合わせて商品を変えるっていうのもスゲェよな・・・売り切れてないといいんだけど」

 「なら23区画の自販機に行こうぜ。あそこは人通りが少ないから、たぶん残ってるだろう」

 「23区画か、ちょっと遠くないか?さすがにバレるとヤバイし・・・」「そんなに心配なら残ってるか?アクアビット製牛乳買ってきてやるから」

 「・・・っ、分かったよ。最後にちょっと確認してから行けば何とかなるか」

 レーダーに視線を戻し、異常が無いことを確認してから二人は監視塔を出て行った。

 「そういえばさぁ、うちのリンクスのオービエって・・・」「担当の科学者が決めたらしいぜ?ほら、あのコーヒー好きで有名な」

 「コーヒー好きすぎてリンクスにコーヒー会社の名前か・・・プクククク」「おい、笑ったりしたら・・・ククク」「いやだってしょうがないって・・・」

 オービエの名の由来が社員達にとっくに知れ渡っているのは、この際どうでも良いことである。

・・・

 「・・・ピコン」

 二人が出ていったすぐ後、レーダーに赤い点が映る。それは、ゆっくりと進む一人の復讐者を映していた。

 この時間の管制塔のシフトは先ほどの二人だけ。別段、レイレナード社の人材が不足しているわけではない。

 だが新興企業であるレイレナード社は他企業、ましてや大企業であるGA社と比べ、その社員数は足元にも及ばない。

 そんな新興企業であるレイレナードが、なぜGAやローゼンタールといった大企業と肩を並べ、逆にネクスト戦力では一歩先を行っているのか。

 それは、ひとえに社員である彼らの意識の高さ故だ。

 新興企業であるレイレナードを引っ張っているのは自分たちの実力だ』という個々の確固たる志気を持つこと。

 それがコジマ技術のレベルを高め、レイレナードを一躍『最先端を行く新興企業』へと押し出したのである。

 だがしかし、そんな緊張感で煮詰まった社員達に『戦争が終わった』という甘い現実が囁く。

 もちろん、国家を解体した後にも重大な仕事は多々ある。だがそれをなぜ、想像できるだろうか?

 それは例えるなら、学生全員に「2週間後に期末テストが残っているから、全国実力テストが終わっても気を抜くな」と言うようなものである。

 一部の熱心な生徒(上層部の重役)は勉強(策略)を続けるだろう。だが、その他大勢の一般生徒(下々の社員)は「そんな先を見据えるよりも、今休憩したい」と考える。

 不幸だったのは、訪れるグレート・ウォールに事前に対処することができないレイレナード社員と、

 迎撃がなかったが故に、不思議に思いながらも不用意に本社に接近してしまったハタなのだろう。

・・・

 一方オービエは、

 「もう食べられない・・・ムニャムニャ・・・」「気絶させられたのに寝言、っていうのはどうなんだろう?」「オービエならしょうがないでしょう」「まぁ、ね」

 まだ目を覚ましていなかった。

・・・

 「・・・よし、これで」グレート・ウォールのコクピット内で、ハタはレイレナード社にメールを転送した。

 内容は『オービエに、誤射した有澤ノーマルに搭乗していたレイヴンの遺族に謝罪をさせて欲しい』という、欲求直球ストレートなものである。

 彼がいるのは本社から少しだけ離れた山中。本来ならばとっくの昔に見つかっている。

 少なくとも、防衛をネクスト戦力に頼っているレイレナード社が見過ごすとも思えなかったが、彼には何の警告、攻撃も無かった。

 が、彼は不思議に思うよりも先にメールを送ることを優先した。それよりも・・・

 本社の意向を無視した彼は、罰則を逃れ得ないだろう。だがその前に、本社の追っ手が来る前にオービエを連れて日本の遺族の元に連れて行く。

 そんなこと、できるはずない。万一上手くオービエを連れ出せたとしても、レイレナード本社から日本までどれほど距離があるだろう?

 ハタの頭でも、それはとっくに理解していた。

 「だがせめて、本人に伝えることができれば・・・」オービエという人間を、ハタは知らない。ただ、会った事もないリンクスが人格者であることを願うばかりだった。



・・・10分後

 「・・・どういう事だ、これは」グレート・ウォールのコクピットには、返信が届かず苛々するハタの姿があった

 メールを送って、まだ10分しか経っていない。だが、追っ手から隠れ、急がなければと焦っているハタにはもう何時間も経っているかのように感じられていた。

 「くそっ、レイレナード社もダメなのか・・・よし、こんどこそ」ハタは二通目のメールを打ち込み、転送する。

 今度の内容は少々苛烈だ。掻い摘んで要約すれば『オービエを出せ、もしくは返信しろ。さもないと俺のグレが火を噴くぜ?』という脅迫文である。

 「さすがに、ここまでやれば何らかのアクションを起こすだろう」

 ハタは、そう思っていた。



・・・さらに10分後 

 「・・・」

 そこには、堪忍袋の緒を切らし、無言でグレート・ウォールを起動するハタの姿があった。

 「照準・・・これは威嚇行為だ。周辺施設を狙う」

 グレート・ウォールの背に装備されたガトリング・グレネードが、ゆっくりと狙いを定める。

・・・

 「ふぅ、やっと、着いた、がっはぁ」「エレベーターが、改装中なんて、聞いてねぇぞ、おい、ハァ」

 本社の対岸にあるヘリポート近くの管制塔から、本社の23区画(23階)に置いてある自動販売機を目指して歩いていた。

 二人は『エレベーターがあるからすぐ着く』と思って雑談しつつ向かっていたが、エレベーター前には一つの看板が置いてあった。

 [本日、本社エレベーター全面改装中!]

 今更チンタラ行くわけにもいかず、非常階段を全力ダッシュで(時々休憩しつつ)駆け上がってきたのだ。

 「なぁ、俺らさ、何のために、走ってんだっけ?」「そこに、階段が、あるからさ」飲み物を買いに全力疾走すれば、本末転倒である。

 グダグダになりつつあった二人だが、なんとか自動販売機のある休憩所までやってきた。

 「これで、やっと・・・」「報われる・・・」救われたような表情の二人が見た赤い文字は。


 [騙して悪いが、売り切れなんでな]


 「「ぬぅぅぅぅあああぁぁぁぁぁぁ!!!「ドゴォォォォォン」

 「「うぉっ!?」」

 二人の絶叫とグレネードの爆音が鳴り響くのは、ほとんど同時だった。

・・・

 「ドゴォォォォォン」「うぉわっ!?」「きゃん!?」「なんだこれは!?」

 オービエの病室にいた3人も、グレネードの爆音を聞いていた。

 「痛ってててて、飛び起きた瞬間に、なんかオペレーターから可愛i「リンクス?」「ハイ、何でもございません」起きて早々これか。

 「それにしても、何の揺れや?これ。嫌な予感しかせぇへんねんけど・・・」「・・・炸薬兵器が爆発した、ってところだろう。

 地下からじゃ状況が分からないから、とりあえず僕は地上に上がってみるよ」ルースが部屋を出ようとする。

 「あ、俺も」「オービエは万一に備えて、ネクストのハンガーに向かっていてくれ。後で通信するから」適材適所ってわけか、当たり前やけど。

 「とにかく、急いだ方が良さそうだ。オペレーターも「分かっています、管制塔に向かいます」「さすがだね、オービエをよろしく頼むよ」

 そう言って、ルースの姿は見えなくなった。

 「さぁ、私たちも行きましょう」「ちょ、ちょっと待って、寝過ぎてて足が痺れて・・・」「・・・はぁ」

・・・

 「な、なんだなんだ!?」「襲撃だ!管制塔が吹き飛ばされたぞ!」「ネクストだ!GAの攻撃だ!」「なんでGAがうちに、しかもこんな時に!?」

 「これは・・・わかりやすい」

 非常階段で上がってきたルースが見たのは、てんやわんやの人の波。そこら中からあーだ、こーだと怒号が響いてくる。

 「状況は?」「ああ?GAのネクストが攻撃してきたらしい。今はベルリオーズもアンジェも哨戒任務に出ていて、すぐには戻れないらしい」

 「ザンニは?」「戻ってきてはいるらしいけど・・・こっちも1時間はかかるって」これは不味いな・・・オービエに通信しないと。

 「オービエ、聞こえるかい?」「聞こえてるよ。どうだった?」「GAのネクストが攻撃してきたらしい。ベルリオーズ、アンジェ、ザンニの三人も、今はいないって」

 「俺一人かいな・・・おっ、ハンガーに着いたで。できれば、GAの何のネクストか教えてくれ」「分かった。ちょっと待っててくれ・・・」

 グレネードの爆風でガラスが割れた窓から、ルースは目をこらして遠方のネクストを観察する。

 「・・・分かったよ、オービエ。あれは「レイレナード社に告ぐ。こちらはGAのネクスト『グレート・ウォール』だ。

 先ほどの射撃は威嚇行為だ。次は直撃させる。こちらの要求を飲めば、以降は攻撃しない。こちらの要求はただ一つ・・・オービエを出せ。それだけだ。繰り返す・・・」

 グレート・ウォールの外部スピーカを通して、エグザウィルに声が響き渡る。

 「聞こえた?ご指名みたいだけど」「バッチリ。グレート・ウォールって、この間話してた超鈍足機体やろ?」「その通り。

 でも今は足の遅さは関係ない。このエグザウィルを吹き飛ばすのに、5秒とかからないよ」「ロケットなら構える時間すらいらんわ!」

 「それは当たり前なんだけど、今大事なのは「5分以内に出てこなければ、エグザウィルの崩壊は覚悟してもらう。繰り返す・・・」

 「後5分だって。出られる?」「そっちは問題無いけど・・・」「ん?」

 「あちらさん、なんで俺呼び出してどないするつもりなんかな?」「直接聞くのが早いと思うけど」「それもそっか。んじゃ、聞いてくるわ」

 そう言って通信が途絶え、少し間をおいて「ザバァ」という音と共に海中からメメント・モリが現れる。

 「あっ、一定距離までPAは展開しないでね。エグザウィルの対コジマ汚染用ガラスも全部割れちゃってるから」

 「りょーかい・・・ってか、エグザウィルハイテクすぎやろ。水中から出撃とか、マ○ンガーZ並やないか」「ん?」ホント、時々オービエは意味の分からないこと言うね。

・・・

 「やっと出てきたか・・・」

 外でグレネードを構えて待っていたハタは、海中から現れるネクストを見た。

 既にこちらは発砲している。確実に敵対戦力と思われているだろう。そうなれば「こちらメメント・モリ、オービエや。グレート・ウォール、聞こえてるか?」

 まさか本当に出てくるとは・・・「こちらグレート・ウォール。聞こえているぞ」

 「そちらさんは何の用で俺を呼び出したんや?」まだ若いと思われるオービエの声が、理由を問うてくる。

 「贖罪してもらうためだ」「贖罪?一体何のことや?」ほう、白ばっくれるか。

 「シドニーでの作戦で、貴様が撃破したノーマルの件だ」「ノーマル?ノーマルって言ったら・・・国家軍のか?」・・・っ。

 「我が社のノーマル『ZENIGAME』の件だ!覚えていないとは言わせん!」「だから、一体何の事やって聞いてんねん!」これは・・・

 「罪の意識の有無以前に、殺した感覚すら無いか・・・」「さっきから何を言ってるんや?あんた」オービエが、不思議そうに聞いてくる。

 ハタには、オービエの声が『ふざけて人の命を弄ぶ悪魔の声』に聞こえていた。

・・・

 グレート・ウォールが背のグレネードを構える。その照準を、メメント・モリに向けて。

 メメント・モリも、呼応するように背のロケットとモーターコブラを構える。

 国家解体戦争終結から半日と経っていない今。

 史上初の『ネクスト対ネクスト』の戦いが始まろうとしていた。

・・・

 「ホンマ何言ってるんや、この人・・・ルース、意味分かる?」「ちょっと待ってて。オペレーターか誰かに聞いてくるから」そう言って、ルースは通信を切った。

 「さて・・・得物を構えるってことは、やる気ってことやんな?あんた」「貴様のような奴を、生かしてはおけん!」

 グレート・ウォールの第一射が・・・放たれた。

 「そんなもん・・・うおっ!」それは、正確には第一射ではなかった。

 2、3、4、5・・・それは、絶え間ない濁流のような弾幕。

 「グレネードの弾幕って一体なんやねん!QB一回ごとに一発撃ってくんな、ド阿呆!」オービエも、モーターコブラとロケットで応戦する。が・・・

 「そんな豆鉄砲が効くものか!あの世で詫びろ!」実弾に対して圧倒的な装甲を誇るグレート・ウォールは、あろうことかロケット弾でさえビクともしない。

 「凄く、堅いです・・・ぐっ」爆風でPAが薄くなってた時にグレネードが直撃して、メメント・モリが大きく揺れる・・・ネタしてる場合じゃない。

 「オペレーターさんからは一切連絡無いし、ルースからも返答全然無いし、どうするべきかな?」グレネードを避けながら、オービエは思考する。

 「余所見をしている暇があるのか!」グレート・ウォールが照準を変え、エグザウィルに発砲する。

 「何をしてくれとんじゃぁ!」モーターコブラで撃ち落とすメメント・モリ。

 「用があるのは俺やろう!ほら、しっかり狙わんかい!」「そう言うならば、さっさと燃え尽きろ!」「はっ、冗談キツイわ!」とはいえ、そろそろ冗談じゃ無くなってきてる。

 直撃弾はまださっきの一発しかもらってない。けど爆風が洒落にならん。満足にPAも張れんし・・・「ん?」何か変や・・・

 グレート・ウォールは、近距離で自分のグレネードが爆発しても気にしてる素振りが無かった。「って事は・・・」

 「随分と装甲がご自慢みたいやな!」「グレート・ウォールの装甲は鉄壁だ!他の骨っ子ネクストと一緒にしてもらっては困る!」やっぱり・・・これならいける。

 メメント・モリが、今まで以上に間断なくモーターコブラとロケットを連射する。

 「そんなもので!・・・ふん、爆風で視界を潰すつもりか?」ロケットは足を止めているグレート・ウォールの頭部周辺を狙い、カメラを曇らす。

 「レーダーがある。奴を吹き飛ばすのに、問題はない」

・・・

 そして、メメント・モリのロケットが尽きた時、その戦場には、

 砲身が折れ、力無く膝を着くグレート・ウォールと、

 右腕が無いものの、未だ立っているメメント・モリの姿があった。

 グレート・ウォールのコクピット内でハタは、頭から血を流しながらも疑問を口に出す。

 「なぜ、グレート・ウォールが、膝を着く?」「たしかに。その機体の堅さは本物や」たぶん、メメント・モリの武装を全弾たたき込んでもグレート・ウォールは墜とせなかったと思う。

 「俺はただ、あんたのグレネードを撃ち落とし続けただけや」ロケットはダメージよりも、爆風でカメラを覆うのが目的だった。

 「つまり、『装甲を過信しすぎた』って事やな」「ぐ・・・」

 「さて、今度こそしっかりした理由を聞かせてもらうで」「何の、事だ?」「惚けんなや。俺を呼び出した理由、イマイチ分からんかった」

 「ふん、惚けているのは貴様の方だろうに」「はい?」「ならばもう一度簡潔に説明してやろう。

 お前はシドニーで、我が社の部隊のノーマル『ZENIGAME』三機を撃破した、と言っているんだ!」ハタが、声を振り絞る。

 「・・・」シドニーでの戦いを覚えていないオービエは、答えられない。

 「ここまで言って、覚えていないと言うか!」

 ハタの声が、静かに響き渡る。答えうる者は・・・

 「リンクス、聞こえますか?」「あれ、オペレーターさん?」ルースの通信機と繋がっているはずの回線から、オペレーターの声が響く。

 「よく聞いて下さい、リンクス・・・彼の言っていることは事実です。貴方は戦闘中、企業側のノーマルを3機、撃破しました」

 絶句するエグザウィルの社員達とオペレーター。そしてオービエはふと、呟いた。


 「なんや。全部、俺が悪いやん」


 「なぁ、グレート・ウォールのリンクスさんよ」「・・・ハタだ」

 「自己紹介どうもありがとう。で、俺から言えることは一つだけや」「今更何を・・・」


 「すまなかった」

 「もう遅い・・・何もかも」「そうやな。俺は、遅すぎた」自嘲気味なオービエ。

 「だから、今出来ることをする。リンクスとしてじゃなく、人間として」

 「人間として・・・」「その3人の墓はもう作ってあるんか?」「え?」ハタが、意外そうな顔をする。

 「さすがに墓はまだか。ならせめて、遺族に謝罪して、墓が出来たら墓参りに」「何を言って・・・」


 「だから、遅すぎた俺が人間として出来る事を模索してるんや」

 「・・・」「おかしいか?俺、間違ったことは言ってないつもりやけど」

 この瞬間、ハタの目的は果たされた。

 「・・・ガハッ」「・・・あっ、あんたは大丈夫なんか?すぐに救助を「ありがとう」え?」

 ドゴォォーーーーーーーーーーン!!

 臨界点を越えたグレート・ウォールのジェネレータが暴走し、コジマ爆発を起こす。

 「・・・また、一人」「リンクス!?大丈夫ですか!リンクス!」オペレーターの声が聞こえる。

 「死んでしまったんか」

 蟹さんとはすぐに再会しそうだな、と思うオービエであった。
















 祝!アーマード・コアLRP発売!

 ・・・10日以上経ってから言うことじゃありませんでした。

 今回遅かった理由の大半は・・・ずっとラストレイヴンやってたからです。弁解できません。

 そのおかげで青パルSランクまで行ったんですけど・・・

 それはともかく、今回の説明です。

 グレート・ウォールは半分以上噛ませ犬でした。期待していた方々、ごめんなさい。時間軸的な意味で全然時間が余らなくて・・・割り込ませました。

 終わってからですが、グレート・ウォールの設定です。


 頭部=霧積

 腕部・内装関連=GAの重量級

 以下、新設パーツ

 胴体=有澤製。パラはGAコアをベースにAP・実防・安定を特化させ、その他の性能を軒並み落とした感じ。

 重量と、特にEN防御はGA製よりさらにお亡くなりに。EN防御は例えるなら、サラーフ並の。

 外観の第一印象は『壁』

 脚部=有澤製。パラは霧積をベースに、APと実防をさらに高め、積載量を25000:26000くらいに。もちろん重量は大変なことに。

 外観は3・N系統のCLH-04-SOD(CR-LH81AP)。最大積載重量2脚。

 両背武装=ガトリング・グレネード。弾数150で、発射間隔はSAPLA並。威力・弾速はYAMAGA。重量は6000台。

 撃つ度に砲身が回る素敵性能付き。

 外観のイメージは、社長砲の砲身展開がそのままAFのガトリング・グレネードのデフォルメ版に収まった感じ。


 ・・・とまぁ、簡単に説明したんですが、詳しい設定は作っていません。

 誤字・脱字・文法上のミスがあれば、感想でお願いします。


 oruten様・・・とても早い感想、ありがとうございます。

 [騙して悪いが、売り切れなんでな]・・・どちらかというとランバージャックですね。(ザルトホックではありませんでした。すいません)ズベンにするなら・・・

 [売り切れとも知らずに、おめでたい奴だ。だが安心しな。すぐに仕入れてきてやるよ!]って感じですね・・・ズベンをネタにすると確実に良い人になってしまう。どうしよう。

 ハタは本気で噛ませ犬な役割でした。今後少しだけ、彼の周囲の話も書きたいと思います。

 ラストレイヴン・・・知っていながらもライウン先生に報酬ホイホイされてしまうという現状。最近は正面から挑めるようになりましたが。

 そしてWトリガーは左の指が死ねます。キーアサインなんて今更変更できず・・・気合いでシングルトリガーだ!

 ラスジナは弾切れさせて(させられて)格納ブレードで行きましたけどね!外しまくったおかげで評価はBさ!・・・二度と行く気がしないッス。

 PSPの件、早く直るといいですね。エヴァンジェが倒せない?エリアギリギリでレイヴン機動だ!もしくはニコニコ動画を参考にするといいと思います。

 ガチタンでLRがクリアできないんだぜメェルツェェェェル!


 雪林檎様・・・感想ありがとうございます。

 アクアビット牛乳・・・途中で加工されまくってるんでしょうね。きっと純度は0,3%くらい。

 レーダー担当の二人組・・・約二十分で二十三階まで上りきりました。

 これはまさに『マッハ!』

 という言葉が似合いそう。でも今後出る予定は無いゲスト要員という真実。



[15186] 第十一話 目を覚ました世界は、淡い緑色に包まれていた・・・ん?  大きすぎたので修正されました
Name: ふらっと◆28a2754a ID:f839ec34
Date: 2010/05/09 12:59
前回のあらすじ・・・グレート・ウォール撃破。そしてスーパー蟹さんタイムの予感。




 いつからだろう。涙が出ない薄情者になったのは。

 「・・・それは※※の葬式からだ」

 いつからだろう。他人を憎まなくなったのは。

 「・・・それは--が首を吊った時からだ」

 いつからだろう。恐いもの知らずになったのは。

 「・・・それは##が車に撥ねられた時からだ」

 誰の葬式で、誰の首吊りで、誰の交通事故だったか。この頭は覚えていない。全く、微塵も。

 「やれやれ、元来使い勝手のええ物やないとは思てたけど、ホンマにダメダメな脳みそやなぁ」「自分で言ってちゃ世話無いぞ?」

 突然、知らない声に話しかけられた・・・でもどこかで聞いたことのある声だ。

 「どちら様で?」「言うには及ばず、だ。よく考えれば分かるだろう?」呆れられた。初対面の相手に呆れられるのが日常茶飯事になってる気がする。

 「・・・」「おいおい、本当に分からないのか?ここはお前の夢の中だ。そしてお前の身体は借り物だ」借り物・・・!

 「まさか、あんたが」「ようやく分かったか。その通り、俺は」声が、どこか自慢げに語ろうとする。

 「オー「『真・オービエ』か!?」合ってるけど違ぁぁぁぁぁう!」

 身体の持ち主との初めての会合は、こんな感じに始まった。

 「なんで『真』なんて付けるんだよ!」「カッコイイから☆」「コイツ・・・」

・・・

 「さて、状況を整理しよう。俺は夢の中で『真・オービエ』に出会い「そこからおかしい!」さて、どこか間違えただろうか?

 「何が?」「不思議そうな顔すんなテメェ!ぶっ殺すぞ!」「オオ恐イ恐イ、マァマァソウ怒ラズニ」「ナメてんのかゴルァ!」真・オービエは随分と短気みたいです。

 「そんなに怒ってばかりだと血管切れちゃうぜ☆」「お生憎様、今の俺に切れるような血管はねぇよ」「?」

 「俺の身体はテメェが使ってるじゃねぇか、そんなことも忘れたか?」「ついうっかり」「なら返せ」「だが断る」「・・・ちっ」悔しそうに舌打ちする真・オービエ。

 「だぁーーーーーっ!ったく、話が進まん!」「元気だねぇ、真「いい加減にしろっ!」「しょうがないなぁ、なら名前を考えよう。う~ん・・・」「俺は元々オービエだ!」

 「ここは一つ元祖・オービエとNEWオービエで」「なるほどどっちもオービエで万々歳・・・になるかぁ!」細かいことを気にする奴だ。同じ根源だとはとても思えない。

 「ほれ、さっさと本題に入ったらどないや?」「絶対!100%確実に!オマエ殺す!」「もちつけよ、夢の中なんだから。慌てるような時間も殺すための肉体も無いだろう?」

 「「・・・」」

 どうやら認めなくてはいけないようだ。どちらも話を進ませないタイプの人間であることに。

 「悟った風な顔してんな!」「こんなだから話がズレていくんだよね」他人事のように言いましょう。

・・・20分後(体感で)

 「そろそろ本題に入ろうや」「誰のせいだと思ってやがる!」「オービエのせい」「全く同意する」自覚あったんだね、どちらにせよ。

 「で?用件は顔見せだけ?」「身体返せ」「他には?」「おまえぶっ殺す」なんともストレートな奴だ。

 「というか、さっきから物騒なことばかり言いよるなぁ、自分」「何が悪い?」チンピラみたいや、とは言わない。というか、これ以上話を脱線させたくない。

 「むしろチンチラ?」「いつから俺はネズミの仲間になった!?」「相変わらず楽しそうなことしてるなぁ、オービエ」蟹さん さんが入室しました。

 「あ、蟹さん。ちょっとぶりやね」「なんだコイツ!?」「・・・ふむふむなるほど、オマエもオービエ、いや・・・真・オービエか!」「だから合ってるけど違ぁぁぁぁぁう!」さすが蟹さん。俺の考えお見通しだぜ☆

 「よし、ちょっと来い」「んな!俺はコイツに用が「面白い素材だ。いろいろ試させてもらうぜ?」「離せえええええぇぇぇぇぇぇ・・・」真・オービエを連れて(姿は見えないけど)去っていく蟹さん。

 「あぁ、忘れるとこだった。グレート・ウォールのリンクスの件は、また今度な」珍しい。蟹さんが仕事(?)を疎かにするなんて。

 「・・・つうか、何しに来たんだ?あの一人と一匹」

 真実が謎に包まれたまま、俺の視界は暗転していった・・・

・・・

 目を覚ました世界は、緑に満ちていた。

 本来無機質である白一色の壁や床から、確かなコジマ粒子が感じられる。白衣を着た、職員らしき人達の表情も恍惚に満ちている。

 部屋の隅にある換気口らしきところからはA☆MI☆DAがその触手をヒラヒラと「ごめん。これ以上はカバーしきれない」「ん、起きたのか、オービエ」ベッドの横にはザンニがいた。

 声をかけられ、完全に意識が覚醒する。「率直に聞いとくわ。ここはどこ?」「アクアビット本社だけど」

 「「・・・」」さらっと言わないでほしい。

 「白い壁に浮かぶ淡い緑色は?」「滲み出したコジマ粒子」「床の辺りでふわふわしてるのは?」「低濃度コジマ粒子」「換気口っぽいところでヒラヒラしてるA☆MI☆DAは?」「・・・ノーコメント」

 そう言いつつ、ザンニはなにやら電話をかけている。

 「・・・ちらザンニ・・・を確認しま・・・保護・・・」小声でなにか言ってるけど、聞こえない。あれ、近くにAMIDAが潜んでる。矛盾は無いぜ☆

 「オービエ。“アレ”のことは」「俺は生体兵器なんて見てない」「!?・・・どうして、生体兵器だと?」ザンニが表情を一変させ、深刻な表情で聞いてくる。

 「いや、よぅ見てみぃよ」「?」「換気口の柵、ちょっとずつ溶けてきてるで?ヤバげな液体で」「っ、もうそこまで成長していたか!」ザンニ、隠す気ある?

 「とにかく、あと2分もすれば専門の職員が来る。今のうちに逃げるんだ!」「なんで本社の中で逃げ回らないかんような物創るかなぁ」「早く!」


 ザンニが必死そうに俺をドアへと押しやる一方、俺はきわめて冷静だった。

 A☆MI☆DAから恐怖を取り除けば、一体何が残るか。

 「AMIDAか・・・懐かしい、惹かれるな」

 変態度 が 25 上がった! オービエ は 絶望 した!

・・・

 本社から外に出て(ザンニに押しやられつつ)ヘリポートへ向かった俺たちは、そのままヘリでエグザウィルへと向かった。

 なんでも、グレート・ウォールとの戦闘が終わったのはいいものの、俺は返答の無い状態だったらしい。それが分かったルースとオペレーターさんが大慌て。それが移ってエグザウィル全体がてんやわんや。

 コジマ汚染で近寄ることも出来ず、八方塞がりだったらしい。

 そこへ丁度帰ってきたザンニが、破壊されたエグザウィルよりアクアビット本社の方が設備が整ってるぞい、確かにそうだわさ、オービエ頼んまっせ、任しんしゃい!となったらしい。

 「そんなことになっとったんか」「説明したばかりで申し訳ないんだが、オービエ。さっそく面倒ごとだ」「グレート・ウォールの件?」「その通り」

 「戦争直後のネクスト同士の交戦・・・正当防衛でなんとかならんかな?」「無理だ。GAは面子丸潰れ、ネクストを失うだけならまだしも機体まで奪われてしまったから」むこうさん大激怒やろうな。

 「それでこのままGAがレイレナード社エグザウィルに押し寄せてくるって?」「そういうこと」う~ん、丸く収める方法は・・・

 「おっ」「何か思いついたのかい?」「ザンニ、グレート・ウォールの『コア』、原型残ってる?」「ジェネレータがコアにあるから一番損壊が酷いけど、おそらく『GA製のコア』っていう事ぐらいまでしか分からないと思うよ」・・・それなら行けるか?

 「ザンニ。メメント・モリは動く?」「戦闘稼働は不可能だ。大体「物を持ち運ぶのも無理な程に?」「それくらいなら問題ないと思うけど・・・!」ザンニが俺の思惑に気付いたようだ。

 「危険すぎるし、それだけで手打ちにはならない!」「両社の即開戦は防げるやろ」「それでも折り合いが悪くなるのは変わらないし「俺が墜とされれば、1:1の痛み分けで済むしな」オービエ!」

 ザンニは本気で怒っているみたいだ。まぁ、死ぬ気なんてサラサラ無いけどね。それに・・・

 「それに、さ」「・・・?」「俺、行かないかんとこがあるんや」静かに、ザンニと睨み合う。

・・・

 結局、折れたのはザンニの方だった。

 「・・・はぁ。全く、君はバカなのか凄いのかハッキリして欲しいよ」「バカなのは認めるけどな!」「・・・やれやれ、ルースはどれだけ君に苦労させられているんだろう?」想像も出来ません。

 「ベルリとアンジェはもう帰ってきてる?」「いや、まだかかるはずだ。状況連絡が行っているかどうかも怪しい」なるほど、二人はいない、か。

 やりづらい・・・いや、迷惑をかけない方がいいか。むしろ好都合だな、この場合。

 「そろそろエグザウィルだ」「グレート・ウォールの残骸は?」「コジマ汚染の影響もあるから、まだ放置してある筈だけど」そこが一番心配だった。

 「そいつは十全」「?・・・悪いけど、僕は手を貸せないから」一企業に属するリンクスだから、か。分かっていたけど仕方ない、一人でやろう。

 「全く、僕はまだ規律に厳しい方だと思ってたんだけど」「そんな子に育てた覚えはありません!」「君は何を言ってるんだい?」

 そう言いつつ、ヘリから飛び降りた俺はメメント・モリへと走る。

・・・

 「よし、もうそろそろ「静止・・・」”#$%&’!!??」

 ハンガーの前で、影からニュッと突然現れたのは真改。というか、心臓に悪すぎる。「真改、その現れ方やめてくれ」「謝罪・・・」

 「閑話休題・・・」「二文字じゃなくなったな」「何事・・・」あっ、話題スルーした。

 「何事って・・・ちょっと野暮用があってだな」「嘘をつくな・・・」見抜いてるし。真改・・・恐ろしい子!

 「ともかく、ここは通してもら「不動・・・!」真改がどこからか刀を取り出し、俺の首に突きつける。

 「っ・・・これが、真改の、月光か」こんな状態で言うのもなんだが、一言で言えばその刀身は『細すぎた』

 細すぎて今にも折れてしまいそうな刀だ。「でも、綺麗な刀身や」「未熟・・・」それは俺が未熟なんか?それとも・・・

 まぁ、こんな細い刀であっても俺の首と胴体をお別れさせることくらい簡単やろうけど。

 いやむしろ細い方が切れるのか?真剣なんて持ったことも切ったこともないからなぁ(切られたことはある)、前世含め。

 さぁ、こんな致命的なタイミングこそコマンド『説得』発動!

 「真改。俺は今から、史上最大の大博打に打って出る」「・・・」「最悪、死ぬかもしれん」「何故・・・!」真改が理由を聞いてくる。一応心配してくれてるんだろうか?

 「人として・・・」「?・・・」「人間として、やるべき事をやってくるんや」

 チャキン、と、真改が刀を納めた。

 「真改・・・すまんな」「俺は寝ていた・・・」「俺は何も見てない、ってか?」「zzz・・・」そう言って高速で有言実行出来るところが凄いわ。

 「何をしているんですか、リンクス。アクアビット社で療養しているはずですが」げ、オペレーターさんだ。これは・・・面倒なことになった。

 「『げ』とか『面倒』とはどういう意味でしょうか?リンクス」俺の心を読んだオペレーターさんが、またあの笑顔で迫ってくる。足の震えが止まらない(笑

 本当に、この人こそが俺の天敵なんじゃなかろうかと思う。人類種の天敵とタメが張れそうだぜ☆

 「い、いやぁ別に」「大体あなたはっ!?」近寄ろうとしたオペレーターに、月光剣が向けられる。一体誰が!?

 「静止・・・」当たり前だが真改である。

 「・・・どういうつもりですか?」「・・・」何も言わず、俺を見る真改。

 「真改・・・あとで一緒にメシ食おうな!」「承知・・・!」真改に礼を言いつつダッシュ。ちょっと先にあったメメント・モリを見上げる。

 右腕はあった。まだ塗装されてないけど、片腕で持って行ける自信が無かったから万々歳だ。

 「お、おい、あんた、危ないって!」「Oh!Japanese Katana!」「いい加減にして下さい!っ、リンクス!」

 後ろからオペレーターさんと、整備員らしき人達の声が聞こえる。なんか変なのが混じってた気がするけど気にしない!ここが英語圏であるはずなことも気にしない!

 「メメント・モリ、起動する!コジマ汚染に巻き込まれんなよ!」「撤退・・・」「・・・作業員は退避!作業を中断してすぐにメメント・モリから離れろぉ!」「リンクス・・・戻ってきたら覚悟しておいて下さいね?」

 いろいろ言われてるけど気にしない。「さて、と・・・」PAを切り、格納庫の中を漁「ゲフンゲフン!」捜索する。

 さっきはコジマ汚染に巻き込まれんなよ!なんて言ったけど、これは一応の保険だ。

 PAの無いネクストからも、起動してるならコジマ粒子の残りカス(?)くらいなら出てるかもしれない、と思っての判断。やっぱ危ないし。

 「ん~、無いなぁ」というか、レイレナード社のオリジナルが誰一人として“アレ”を装備してないっていうのはどういうことだろう。一応初期アリャーの標準装備のはずなんだけど。

 そんなこんなでガラクタだかジャンクだかの山を漁、捜索していると・・・目的のブツを発見。

 『龍殺し』の名を冠するレイレナード製短距離型ブレード、DRAGONSLAYER。

 最初の出撃はコイツのおかげで助かった・・・が、言っておいてなんだけど使いづらい。レンジ短いし、威力月光より低いし、何より俺接近戦恐いし。

 愚痴は後にして、右手に装備する。

 「装備・・・」ガチャガチャ「装備っ・・・」ガチャガチャ「装、備・・・イラッ☆」ギギギギギギギギ「それ以上押しつけるとブレードが壊れるよオービエ」イライラしていたところに通信が入る。

 「ルースじゃないか!元気「まずマーヴをパージしないとFCSも機体も反応しないから」感動の再会をスルーパスするとは、それでこそルースだ。

 「パージパージ、っと」ゴトン、という音と共にマーヴを手放し、今度こそブレードを装備する。

 ガチャガチャ・・・「押しつけなくてもサブ・アームがやってくれるよ」「え゛」唖然としている間にブレードが腕に取りつけられ、AMSを介して情報が来る。

 「これで行ける!」「話は後で聞かせてもらうからね・・・オペレーターと一緒に」「じょ、冗談じゃ・・・それじゃあ、行ってきます」「遅くならないうちに帰ってくるんだよ」母親かよ!

 外に出てまで遊ぶような友達まだいないし・・・いやむしろシェリング?いやいや、年齢合わないって。顔合わせた事も無いって。

・・・

 メメント・モリはそのままハッチの開閉をして、湖上に出る。正面に擱座するのは・・・グレート・ウォール“だったモノ”。

 メメント・モリは左手を振り上げる。その腕に付けられたブレードは、PAの切れたGAフレームなど易々と切り捨てるだろう。

 意味を為さない、死者への蹂躙。傍目から見れば、その姿はどのように映るだろう・・・鬼か悪魔か、畜生か。

 凶刃が、振り下ろされる。

・・・

 「ふぅ、こんなトコロか」胴体を残し、頭・両腕・脚部を斬り離したグレート・ウォールを前にして、オービエは溜め息をついた。

 別にオービエは、イライラして死体嬲りをしようとしたわけではない。ただ、そのままだとレイレナードの骨っ子ネクストでは運べない、と判断したからだ。

 「あらよ、っと」そのまま両手でグレート・ウォールの胴体を持ち上げる。こういう時逆関節は二脚より便利だ。膝を折らなくて済むから・・・いや、これは折ってるのか?鳥の関節の名前なんて知らないからさっぱりだ。

 「さてと、丸く収めに行きますか」向かう先は、GA本社。

 こっち(メメント・モリ)が丸くなる(鉄塊になる)かもしれんがな!なんせ『武装無し・PA無し・チューン一部欠如(右腕のPA整波)』だし。

・・・

 「総員、戦闘準備できているな?」ワカが通信を介し、ノーマル部隊に伝える。

 「・・・ハタ様」「悔やむなら、自分を責めるな。恨むなら、俺を恨め」ワカは、ハタを止められなかった事に責任を感じていた。

 そもそも、リンクスとしての身体能力を持つハタを止めることが出来たのは、同じリンクスであるワカだけだったのだ。

 「責任は、俺にある」「ワカ様。ハタ様の件は、貴方様だけの出来事では無いのです。あの場におりました皆が、ハタ様の事を思っていました。

 それに・・・「GA本社より通達です。直ちに出撃せよ、との事です・・・お気を付けて」

 今回のグレート・ウォールの無断出撃によって有澤重工に科せられた罰は、GAによるエグザウィル侵攻の先陣を切ること。

 エグザウィルにはネクストがいる事を考慮すれば、有澤はただの捨て駒となるしかない。

 「・・・全機、ネクストが出てきたら後退しろ。時間は俺が稼ぐ」「ワカ様!」「命を無駄にすることは無い・・・それに、俺とてリンクスだ。切り裂く爪もあれば、噛みつく牙もある」

 ワカは、既に腹を括っていた。

 「・・・」「終わりか?ならば出撃「レーダーに反応!ネクストです!」「何っ!?」有澤重工全体に、緊張が走る。

 「識別は!?」「・・・!レイレナード社ネクスト、メメント・モリです!」この状況でGA本社を訪れるネクスト・・・考えられる理由はただ一つ。

 「全機、迎撃体勢!絶対に単機で行動するな!2・・・いや、3機で固まって行動しろ!」了解、という返答が車懸に返ってくる。

 「1100・・・11000・・・目標、視認可能距離に到達します」オペレーターの声が、部隊に響き渡る。

 「・・・!?メメント・モリ、火器を装備していない模様!」「な!?全機、撃ち方止め・・・合図があるまで手を出すな」驚愕するワカが、次いでノーマル部隊に攻撃中止命令を飛ばす。

 車懸のEYEカメラが、青い機体の輪郭を映す。「・・・なんだ、あれは?」何か大きな、塊のような物体を抱えるメメント・モリを見てワカは疑問を呟く。

 「・・・ぁー、聞こえるか?こちらはレイレナード社の『メメント・モリ』だ。敵対の意志は無いんで、話し合いの席が欲しい」突如響き渡る声に有澤重工の社員達は戸惑う。

 「・・・オペレーター、通信をメメント・モリに繋げるか?」「・・・通信、繋がります」

 「こちらは有澤重工のリンクス、ワカだ」「お、素早い対応どうも。そっちに行ってもOK?」「その前に、そちらの積荷を確認したい。炸薬兵器の可能性もある」意外と若い声にも全く気を抜かないワカ。

 「むしろ確認してほしいのはこの積荷や、確認してくれ」そう言ってメメント・モリは、持っていた塊を地面に丁寧に下ろす。


 「!これは・・・どういうことだ貴様!」「どうもこうも、グレート・ウォールのコアやけど?」

 無惨に斬り離されたグレート・ウォールのコアを見て、ワカは思わず声を荒げる。

 「今大事なのは、グレート・ウォールがエグザウィルで俺に撃破された事やない」「・・・お前が」グレネードとバズーカをゆっくりと構える車懸。

 「・・・別に、撃ちたかったら撃ってもええよ?そのままレイレナードとGAの戦争が始まるだけやから」「ぐぅぅ・・・ならば、何をしに現れた!」

 怒り狂うワカは、コクピット内に拳を叩きつける。Gジェルに絡められた腕は、ただ鈍い音を出すだけに終わった。


 「せやから、説明しよる・・・時間もあんまり無いか。簡潔に言うで。大事なのは『ここ』に『なんら弄られてない』グレート・ウォールの情報中枢があるって事や」

 「・・・それは事実か?」「調べれば分かる事やろう。コイツについては、あんたらの方が詳しいねんから」

 オービエの開示した情報は、有澤の試作フレームの詳しい情報がレイレナード社に漏洩していない事を意味していた。

 「しかし、それだけでは戦争は止められん」「俺の手はまだ残ってる。このデータをGA本社に送ってくれへんか」そう言ったすぐ後にデータが送られてくる。どうやら音声ファイルのようだ。

 「これは・・・」「説明と、脅しと、提案が入ってる。渡せば向こうが理解してくれると思うわ。GAにしてもレイレナードにしても、『今』争うのは辛いやろう?」オービエが、ワカに問いかける。

 「・・・いいだろう」

 「どーも。ま、断られたら断られたで直接GA本社に突っ込んでたけどな」恐ろしいことを言うオービエに、ワカはげんなりしつつオペレーターに繋ぐ。

 「オペレーター、このデータを本社に送ってくれ」「いいのですか!?メメント・モリはハタ様の、っ!・・・失礼、しました」「今、それとこれとは話が別だ。頼んだぞ」「・・・了解しました」

 どうにも割り切れない様子のオペレーターと通信を終え、車懸はもう一度メメント・モリを見据える。

 「さて・・・お前が企業間の戦争を止めたがっているという事くらいは俺にも分かった・・・だが、解せん事がある」

 この場にいる者達全ての疑問を集約したワカの質問が飛ぶ。


 「なぜ、リンクスであるお前が『わざわざ自分で』来る必要があったのだ?」

・・・

 有澤のリンクスに問いに、俺は口ごもった。

 そもそも、俺の目的は二つあった。一つは、レイレナードとGAの戦争を止めること。もう一つは『グレート・ウォールの件で遺族に謝罪すること』

 一つ目はどうにかなったけど、二つ目は・・・うん、やるしかない。

 「・・・悪いけど、通信じゃなく面と向かって話がしたい。そっちで場所を指定してくれ」「なっ、本気か!?」

 企業の最高機密といえば一体なんだろうか。

 最新兵器にしてフラッグシップである『ネクスト』の情報か?本社の防衛機構の詳細か?後ろめたい裏事情か?

 たしかにどれも企業にとってダメージとなりうる情報だ。だがしかし、企業の息を止めるほどの意味を持つか、と言われれば別だ。

 機械を動かすのは所詮人間だ。それは、たとえネクストであっても例外ではない。

 ゆえに、リンクスの顔が明かされることは一部の例外を除いて無い。万に一つ、もしリンクスが暗殺されでもすれば、他企業と対等に渡り合うのは難しくなるのは目に見えている。

 ネクストとは一人のリンクスに合わせて調整され、一人のリンクスが動かすACだ。リンクスの乗らないネクストなど、ただの鉄屑でしかない。

 さらに言えば、新たなリンクスなど簡単には見つからない。その上、適性のあるリンクスが戦いに向いているとは限らない。ダン・モロのようなリンクスがその最たる例だ。

 「貴様はバカか?それとも自殺志願者の類か?」「死ぬ気なんてサラサラ無いわ。でも、殺されてもしゃあない事したとは思ってる。そっちは恨みタラタラやろ?」

 「・・・」「直接顔を合わせんでもいい。むしろ、俺の話は有澤重工・・・・に聞いてもらいたい話でもあるからな。

 ・・・あと、この件は完全に俺の独断や。レイレナード社は関係ない」「!ならば、なぜお前は「約束を果たしに来ただけや」約束?」ワカが疑問を口に出す。

 有澤重工の社員が、ノーマルのコクピットや管制塔の中で固唾を呑んで見守る中で、オービエは語る。


 「俺がシドニーで撃破した有澤ノーマルのレイヴンの遺族に謝罪する。グレート・ウォール・・・いや、『ハタ』との約束を果たしに、な」


 その場にいた全ての人間を唖然とさせながら、オービエは自分の知る事の顛末を語り始めた・・・



















 気が付けば、前回の投稿から早一ヶ月。そのくせして中途半端な終わり方で申し訳ありません。

 時間がかかって焦って投稿したので、後々かなり修正すると思います。


 あと・・・情けないことですが、ちょっとだけ言い訳します。


 言い訳その1・・・先の話ばっかり浮かんできて目の前の話のネタが思いつかない。

 件のレイヴンとの絡みとかリンクス戦争での話とかジョシュアなネタとかばっかり浮かんでくるんです。なんてこったい。

 言い訳その2・・・LRPやりすぎてVRアリーナの敵機の色調全て制作しちゃいました。てへ☆ ってちょ、やめ"#$%&')(=~!!・・・ごめんなさい。調子乗りました。

 個人的にクォモクォモさんが一番難しかったです。挿絵の色と戦闘時の色が違いすぎる・・・修正が必要だ・・・微修正→戦闘する→修正点を頭にメモする→戦闘終了後に忘れる→戦闘する→・・・以下繰り返し。

 次点で(EXアリーナですが)AZ03。頭・胴と両腕と脚でそれぞれ色違うんです。死ぬかと思いました。(そこに力を費やすな

 言い訳その3・・・宿題が終わらない☆

 自業自得でした。


 とにかく、遅くなりすぎてしまったことに謝罪させていただきます。読んで下さる方々に申し訳ないです。


 クロ様・・・ありがとうございます。返信遅くなって申し訳ありません・・・いつもなら前回の話を修正して返信するところだったんですが、「なんかもうすぐ更新できそう」という至極甘い考えを持ってしまいました、ごめんなさい。

 その他板には次の話で移ろうと思っています。

 次の投稿の後くらいに、人物紹介ぐらいをしたいと思います。


 いろいろ叩かれても仕方がないと思いますが、誤字・脱字・文法上のミスなどあればお願いします。



[15186] 第十二話 その後の話。後始末とも言う 感想追加版
Name: ふらっと◆28a2754a ID:db4af1e4
Date: 2010/05/18 07:45
 前回のあらすじ・・・アクアビットと愉快なAMIDA達☆




 有澤社員の前でグレート・ウォールの件を話し、謝罪したいことを伝えた俺は、若干後悔していた。

 むこうからの視線が、最初に比べて鋭さを増している。真偽を判断しようとしているのだろう。今更ながら考えてみる。レイレナードに俺みたいな立場の奴が出てきたら・・・きっと俺は、躊躇いなく「付いてこい」「?」今なんと?

 「お前が望んだのだろう?遺族への謝罪は」「・・・信用するんか、俺を?この上なく怪しいと思うけど」「ああ、怪しいな」「それを理解した上で、か?」


 「その通りだ」


 「・・・ありがと」「早くジェネレータのコジマ粒子を止めろ。近づけんだろう」ワカに忠告され、KPをカット。脚を屈めたメメント・モリの腹の辺りから飛び降りて、


 途端、視線にさらされた。


 -おい、あれがリンクスか?まだ子供じゃないか-

 -あんなガキが、あいつらを殺ったって言うのか?-

 -じょ、冗談じゃ-

 いろいろと言われてるけど、車懸から降りてきて目の前にいる男--たぶんワカだろう--が一番ショックを受けているように思う。

 「おまえがメメント・モリのリンクスか・・・声からして若いとは思っていたが・・・全く、本社のメノ・ルーと言い、コイツと言い・・・ブツブツ」俺みたいな子供がリンクスだってことが信じられない、って感じだな。当然っちゃ当然だけど。

 「年齢や見た目なんて今はどうでもええねん、連れて行ってくれるんやろう?『有澤のリンクス』」「・・・申し訳ない、話が逸れたな『レイレナードのリンクス』」

 車に乗り込み、ワカに運転を任せる・・・というか、免許無いし。「そういえば、有澤って日本にある企業やんなぁ?」「国家が解体された今『日本』という国は存在しない。旧日本領という意味であれば、そのとおりだ」それもそうだった。

 まぁ、問題はそこじゃない。「その有澤のレイヴンの親族が、今この北アメリカにおるんか?」「・・・3人のうち二人は既婚者で、残りの一人は婚約者がいる。3組とも社員寮に同居していたからな」既婚者と婚約者、か。

 「「・・・」」

・・・5分後

 「・・・着いたぞ、ここが社員寮だ」「・・・でかっ!」目の前にそびえ立つビルを指差して、ワカは言った。

 「これが『社員寮』?」あまり高くはない建物だが、延々と先が見えないほど横に続いている。上から見ると五角形なんだ、と言われても納得できそうだ。ここ北アメリカだし。

 「有澤のモットーは『社員第一』だ。このくらいの処置は当然だと言わせてもらおう」「・・・でも、こんなでかい建物、戦闘になったら的になるんちゃうん?社員第一の有澤さん」

 「もちろん防衛設備は完璧だ。回転式のグレネード砲台から対空迎撃用の拡散グレネード、対地用の炸裂式地雷も展開されているし「ストップ。あんまり情報漏洩すんのはどうかと思う」俺部外者だって。

 「問題ない。社員寮のトラップは108式まである。今のはほんの一部だ」「むしろ生活してる人間の精神構造を疑うわ・・・っと」漫才してる場合じゃない。

 「こっちだ」そう言ってワカは建物に回り込むようにして進んでいく。「?正面玄関って書いてあるここは?」「社員以外に反応するように対人地雷をセットしてある」「恐っ!」

・・・20分後

 「ぜぇ、はぁ・・・まだ、着かんのか?」「正面にドアが見えるだろう?そこが一人目の部屋だ」20から数えるのをやめたトラップを越えて、やっと一人目の部屋に着いた。この先もトラップがあったら・・・心が折れるから考えないでおこう。

 「もう一回言わせてもらうけど、こんなとこに住んでる人間の気が知れんわぁ!」「静かにしろ、仮にも人が住んでいるんだぞ」近所迷惑でした。

 「それに、本来はパスを通してトラップを解除するものだからな」「・・・ナゼソウシナカッタノー?」事と次第によっては・・・

 「彼らがお前に会えばどういう反応をするか、など目に見えていた。なら会わせる前にいっそのこと死んでくれれば、と思ったからな・・・

 だが、お前はまだ子どもだ。リンクスであったとしても、やはり子どもであることに変わりない」「・・・でも結局変わってへんやないか」


 「いいや、容赦したよ。罠の難度を[超易]にしておいた」何・・・だと?ありえるのか、こんな社員寮が!?

 「死んで欲しいと思ったのは事実なんだが・・・リンクスには甘すぎたか」「・・・」

 「行くぞ?・・・マサダ、居るか?ワカだ」「・・・はい、居ります。サトウとイシダも」「それは都合がいい。3人に客だ」「・・・(男の声?既婚者だって聞いてたから、戦場に出たのは男かと思ってた)」

 ワカがドアを開けて入り、続けて俺も入る。マサダと思わしき人と目が合ったけど、何となく気まずくなって目を逸らした。

 「あの、そちらの少年は?」「・・・客だ。腰を据えて話したい」「・・・席をご用意します」


 食卓に並んで対面するのはワカ+俺と、マサダ+サトウ+イシダ・・・というか、全員男だった。カカァ天下か!

 「さてと、落ち着いたところで話をしようか」「あの、ワカ様、そちらの少年は?」「リンクスだ」ワカの言葉に、向かいの男3人がキョトンとした顔になる。

 「リンクス?」「それも、レイレナード社『メメント・モリ』のリンクスだ」一転して険しい顔をした3人は、一斉に俺を睨む・・・ハッ!この程度の圧力なんざ、オペレーターさんの3分の1にも満たないぜ☆とまぁ、そろそろふざけるのは無しにしよう。

 「・・・説明された通り、俺がメメント・モリのリンクス、オービエです。事情は知っているでしょうか?

」「「・・・」」「・・・話は聞いています」やはり応答をするのはマサダだけで、サトウとイシダは黙ったままだ。

 「ちなみに、グレート・ウォールを撃破したのも俺です」「「「!?」」」驚きの後に、より一層鋭い敵意・・・というより殺意を向けてくる3人。とうとうマサダまで黙りこくってしまった。

 「俺を睨んだまま、憎んだままで構いません。話を聞いて下さい」「「「・・・」」」

 「俺はグレート・ウォールのリンクス、ハタと約束をしました。3人のレイヴンの遺族に謝罪し、墓参りに行く、という約束を」「・・・どういう腹積もりだ」イシダ(サトウ?)が、吐き捨てるように言った言葉は、至極当然の疑問だった。

 「今回の1件・・・いや2件は、本来俺の責任です。個人の範囲で取れる当然の責任を、自分自身の手で果たそうとしているにすぎません」「・・・なら聞こう。許されると思っているのか?」続けてイシダ(サ(ryが問うてくる。


 「んなこと思てるわけないやろ。自分でも許せへんねんから」

 「なっ・・・」イシ(ry(もうイシダでいいや)が驚いたのは俺の口調か、内容か、あるいはそのどちらもか。まぁ今はどうでもいい。

 「殺した人数はずぅっと覚えとる。殺した状況もある程度までは正確に覚えてる」蟹さんに聞けば分かると思うよ、たぶん。

 ちなみに、俺がリンクスになって殺した人数は“192人”や、と付け加えておくことも忘れない。ハタも加味した上でこの人数だ。

 「・・・貴様は、異常だ」「しょうがないやろう?忘れられへんねんから・・・あ」肝心な事を忘れてた。さ、口調も直して・・・

 「ん、んん、ゲフン・・・それでは、改めて」椅子から立って膝を抱え、頭を地面に付け、その横に両手を添える。「「「!?」」」


 「申し訳、ありませんでした」


 いわゆる土下座である。Xボタンのバックが速い種類の暴三節じゃないよ?

 「許して下さい、とはいいません。ただ、謝っているのを理解していただければ構いません」

 場に、沈黙が流れた。

・・・

 「・・・一発だ」「一発?」いままで黙っていたサトウ(?)が、ここでようやく口を開いた・・・一発?

 「俺とイシダとマサダ、一発ずつ殴らせろ。それで一応は“許して”やる」「・・・!」今、“許す”って、言った?

 「それで構わないな?二人とも」「サトウ!・・・ちょっと、3人で相談させてください」3人が部屋を出て、コソコソと話し始める。

 「・・・が・・・でやったら・・・しまう」「なら・・・おまえらは・・・」「ならここは・・・」「・・・ふむ、それなら・・・」「誰が・・・んだ?」「・・・俺が殺る」最後が特に物騒です。

 「話し合いは終わったか?」「・・・はい」ぞろぞろと出てきて、俺の前に立つ3人。ちなみに俺は絶賛土下座中。だから足音と、ちょろっとだけ見えた6本の足で判断してます。

 「サトウが、我々2人の分も込めて一発、殴ります。メメント・モリのリンクス、立って下さい」促されて顔を上げれば、そこには。

 ○斗の拳のごとく、上半身ムキムキになったサトウの姿が「っておいおいコレやb「んじゃ、“一発”いくぞ?」一発で死ねる!オーバーキル×2.0で済まないよ絶対!

 「どぉぉぉりゃあぁぁぁぁ!」「うおぉぉぉぉぉぉ!?」ドーザー?衝撃ががががが

 ドンッ、という音と共に壁に叩きつけられた・・・あれ?まだ生きてる。ネタ補正のおかg「っ、ガハッ、ゲホッ」・・・なんか、息苦しい。

 「ふむ、肋が2,3本折れてるな」「なるほどぉ、折れた肋骨が肺を圧迫してこんなに苦sって大丈夫なのか俺グフォッ」「それだけ叫べるなら一応は大丈夫なんだろう」一応かよ・・・

・・・

 「・・・これで打ち切りだ。イシダ?マサダ?」「・・・約束ですからね」「・・・ここまでした人間を、認めないわけにはいかんだろう」「・・・3人とも、ありがとうございました!・・・ぐぁ、墓参りは、また今度に」

 一礼してから、ワカとともに部屋を出る。ちょっと洒落にならないダメージだ。

 「用は済んだな?」「せや、な。できれば、メメント・モリまで、送って欲しいねんけど」「ACまででいいのか?」正直、こんな状態でネクストに乗ったらどうなるか、想像つかん。

 「・・・ハァ、ぐっ」「・・・GAの病院に行っておくか?おそらく入院することになるだろうが」

 「それはヤバイ。ルースに早く帰るように言われてるから・・・ぐっ」「どんな理由だ・・・まぁ、そこまで望むのならばACまで送ってやろう」

・・・10分後

 じゃ、入れるぞ?

 いや、入れるってどこに・・・ちょ、待っ

 イタイイタイイタイイタイイタイ!無理無理無理だ!俺肋骨折れてるから!押し込まずに、もう少し優しk

 アッーーーーーーーーーーーーーー!!


 「・・・ゼェ、ハァ、やっと、コクピットに、入れた」「全く、無理をするからそうなる」

 ん?ゲイヴン?HA☆HA☆HA、何を言っているんだ。コクピットに入るのに手こずっただけさ。最後は肋骨がモロに入って思わず声を上げてしまったけど。

 「んじゃ、これで有澤ともオサラバってわけだ」「言い方に棘があるな。お前の頼みだったはずだが?」ゴメンナサイ。ろくな思い出作らなかったんで。

 「・・・そうだ、この機体には誰一人として触っていないからな」「へ?」「・・・人に情報漏洩だなんだと言っていた割には、随分と迂闊だな」そういえばそうでした(笑 またルースに怒られる。

 「ほんまにワカにはお世話になったわ」「・・・一つ、覚えておけよ?オービエ」何かと思って、初めて俺を名前で呼んだワカに振り返れば、


 「俺はお前を信用はしたが、許してはいない」


 ワカは、そう捨て台詞を残してメメント・モリから降りた。顔は、ギリギリ見えなかった。

 別に追おうとは思わない。また会うことになるだろうし。

・・・

--ゴォオオオオ--

 「・・・ぐっ・・・ガフッ・・・グォッ・・・」地形が痛い。地味に痛い。地上でブーストしながらエグザウィルを目指すメメント・モリのコクピットの感想は、それだけ。

 滑らかな地形なら良かったんだけど、生憎と大自然は俺を受け入れてくれなかったらしい。デコボコした地形が・・・

 え?空を飛べばいいって?さっき試しました。滞空してる間はいいけど、着地した瞬間に意識が飛びそうになりましたよ。

 QB・OBなんてもってのほか。地道に進むしかないんですよ。

・・・1時間後

 「・・・」なんか、ヘルメットの中が赤くなってきた気がするんですけど。あれ?出血してね?もしかして吐血してる?口の周りがヌルヌルになってきたぁ。

・・・さらに1時間後

 「」

※思考する気力すら失いました。

・・・10分後

 「・・・い・・・丈夫・・・」声が聞こえる。耳に響いてそれが骨を伝って順繰りに問題の肋骨のあたりにも伝わって骨に響いて内臓に響いてとどのつまり痛い。

 「・・・っかりしろ!・・・救護班が・・・るな!・・・」怒鳴らないでくださいな。痛いから。

 「・・・今出して・・・」川の向こうにお花畑が見えるぅ。川の底から蟹さんがおいでおいでしてるぅ。あれ、普通対岸から手招きするもんじゃ・・・ま、いっか。今行くよ、蟹さん。

・・・

 「さて、グレート・ウォールの件だ」まずそこからいっちゃうのかよ。久しぶりの再会を祝うとかさ・・・そういえば蟹さん、俺死んだ?三途の川に飛び込みして会いに来たのは初めてなんだけど

 「飛び込みセーフは、アウトです」電車じゃないんだから・・・あ、つまりアウト?「いや、乗れた事を鑑みればギリギリセーフ」へぇ、生きてるんだ。嬉しいような悲しいような

 「今まさに、半日に及ぶ大手術が!」うぉ、マジで!燃えてきた!「始まるはずだ」まだ半日かかるか分かんないじゃん

 「真面目な話を。始めよう」蟹さんがビシッと決める。そこに痺r「実を言うともう決定しているんだが、聞いとくか?」つっこみすら入らなかったぜ

 「今回はおまけして、レイヴン3人とグレート・ウォール、合わせて一つだ」さすが蟹さん太っ腹!「食用にはならんぞ」どうせなら頭でっかちがいいな、蟹ミソ的な意味で。

 ん?蟹に頭と腹の区別なんてあるのか?「今回は、“後悔”だ」これまた嬉しいような勿体ないようなのを

 「報告はした。それじゃあな」蟹さんが去っていこうとする・・・あ、そうだそうだ「どうかしたか?」新☆オービエはどうなった?

 「・・・すまん、オービエ」そう言って去っていく蟹さん。おいおい、それどっちに謝ってt

 現実に強制送還されました

・・・

 「・・・で、君は有澤重工社員一同の目の前で堂々と自分の知る事を大体話した後、有澤のリンクスの誘いにレイレナードの技術の塊を放置してホイホイ付いていき、有澤の厚意で遺族の方々に会わせて頂いたものの遺族からキツイ一撃をもらい、青息吐息でネクストに搭乗しエグザウィルに帰ってきてから半日に及ぶ大手術の末1ヶ月寝込み、面会謝絶の解けた今僕とオペレーターと心配してきてくれたザンニとベルリオーズとアンジェと真改を前にして何か言うことは?」「ごめんなさい」これしか言えないじゃん。

 気が付けば、国家解体戦争が終結してから1ヶ月ちょい。GAとレイレナードの関係は悪くはなった『けど』今すぐ戦争を起こす気は、お互い無くなったらしい。

 「身体張った甲斐があるってもんや」「それにしても、もう少し考えられなかったものかな?オービエ」ザンニがすかさずつっこみを入れてくる。「結果オーライなのさ☆」

 「・・・ハァ、やっぱり君はバカなんだね」「ザンニにも、迷惑かけてしもうたな。ごめん」ため息をつくザンニの発言をスルーしつつ、謝っておく。

 俺が旅立ってから、結局ザンニは俺を連れ出した事を問い詰められたらしい。その時の言い訳は、

 「アクアビット社内で『ちょっとした』事故が起こり、リンクスを寝かせたまま放置すれば危険が『ほぼ無いのですが』、一応の処置としてある程度は復興したエグザウィルに戻しておきました。ああ、実験はすでに鎮圧済みです」というものらしい。

 ・・・レイレナードにも知られたくないのか、AMIDAの事。アライアンスとキサラギ派みたいな事にならないと良いけど。むしろアクアビット社にキサラギ派がいたりして。


 丁度このころ、特注ケースに入れて保管されたAMIDAを前に恍惚とした顔でくしゃみをする2人の研究員がいたとかいなかったとか。


 次に、なにやら俺を睨んでいるベルリと目が合った。

 「・・・」「・・・えぇと」スッ、という音と共に、俺はベルリに殴られていた。ちょっと痛「ズキズキ」訂正、とても痛い。この痛みが骨を伝って(中略)とどのつまり痛い。

 「自分が何をしたのか分かっているのか?」「・・・」「『俺が死ねば、それで1:1の痛み分けで済む』?本当にそうなるとでも思っていたのか?」ベルリは、本気で怒ってる。

 そう、痛いほど分かる。分かるけれども、『後悔できない』

 「・・・反省はしてる。今後自重もする。でも後悔はしとらん」「・・・まったく」ムスッとした顔に戻るベルリ。ごめんな、今度コーヒー奢るから。

 「さて、私の番だな」そういって自分から前に出るアンジェ。「アンジェが運んでくれたんやって?ありがとうな」何を隠そう、エグザウィル周辺で力尽きた俺を運んだのはアンジェなのだ。

 任務が終わって帰ってくる道中に、動かないメメント・モリを見つけたらしい。感謝感激雨あられ。

 「それはそうと、あの程度で力尽きる奴は修行が足りない。リハビリメニューのあとは・・・分かるな?」

「勘弁してくれ!」感謝 は 消え去った。臨死体験はもうカンストしてるんだ!

 「無事・・・?」「おお、真改。もう大丈夫なんだけど、あんまり死角から話しかけられると寿命が縮むから」ベッドの脇から声をかけられ振り返れば、いつも通り真改がいた。慣れる日は来るのだろうか。

 「そういや、飯食べに行く約束してたな。今度行こか」「全員・・・」ここにいるみんなで食べようって?それもいいな。楽しそうだ。

 なんだかんだ言って、真改との話が一番穏やかだった気がするのは気のせいじゃないだろう。

 「さて、僕とオペレーターの番だね」「・・・失礼ですが、ベルリオーズ、アンジェ、ザンニ、真改。部屋を出てもらえますか?」人払いするオペレーター・・・俺の人生もここまでかっ。

 不満げながらも、若干面白そう、という目をしているベルリ。高笑いしそうな笑顔のアンジェ。心配した顔のザンニ。三者三様で部屋を出て行った。真改は気が付いたらいなくなってた。ドアは一つのはずなのに・・・

 「まず、僕から報告だ。企業は互いに停戦協定を結び、その結果管理するネクスト及びリンクスをナンバー付けして登録することになった」さて、俺のランクは11になってるかな?・・・無理だろうな、さすがに。

 「ランクについては、この通りだ。

ランク1 ベルリオーズ/シュープリス
ランク2 サーダナ/アートマン
ランク3 アンジェ/オルレア
ランク4 レオハルト/ノブリス・オブリージュ
ランク5 メアリー・シェリー/プロメシュース
ランク6 セロ/テスタメント
ランク7 テペス=V/シルバーバレット
ランク8 王小龍/ストリクス・クアドロ
ランク9 サー・マウロスク/ラムダ
ランク10 メノ・ルー/プリミティブライト
ランク11 ザンニ/ラフカット
ランク12 パルメット/アンズー
ランク13 オービエ/メメント・モリ
ランク14 シェリング/クリティーク
ランク15 アンシール/レッドキャップ
ランク16 霞スミカ/シリエジオ
ランク17 K.K/リバードライブ
ランク18 スティレット/レ・ザネ・フォル
ランク19 フランシスカ/へリックスⅠ
ランク20 ユージン/へリックスⅡ
ランク21 P.ダム/ヒラリエス
ランク22 ミセス・テレジア/カリオン
ランク23 ハタ/グレート・ウォール リンクス死亡につき欠番
ランク24 ワカ/車懸
ランク25 ボリスビッチ/バガモール
ランク26 ナジェージダ・ドロワ/ファイバーブロウ
ランク27 ミヒャエル・F/カノンフォーゲル


 ナンバー26までが、いわゆる『国家解体戦争』に参加したリンクスだ。“オリジナル”と呼称するそうだよ。

 ランク27は、君が寝込んでいる間に登録された、いわゆる“第2世代”と呼ばれるリンクスだ。何か質問ある?」

 「ハイハーイ」「はい、オービエ君、どうぞ」「リンクス戦争後期から参戦した俺のランクが存外高いことについて説明してください」ランクが2つ低い“だけ”じゃん。俺そこまでがんばってないよ?

 「それについては、オペレーターから説明するよ」「では、リンクスの評価を挙げてみましょう。


 -点 何度かの命令違反。GAのBIGBOXへ向かったことも含めて

    初陣での酷い戦果。

 +点 レイレナード社内でもかなり高いAMS適性

    シドニーでの戦果

    グレート・ウォールの撃破


 こんなところでしょうか。+評価、特に、ネクストの撃破などでいうなら10位以内に入ってもおかしくないのですが、一つ目の-点が全てを潰しています。2つ目の-点は大して問題無いのですが」「・・・」やっぱ自重するべきかな、俺(泣

 「オリジナルのランクが変動することはないですが、企業間での評価は変わります。あなたは、新興企業であるレイレナードを支える重要な一角なのですから・・・」やる気、起きないなぁ。自己顕示欲がカケラも出てこないのは仕方ないと思うんだ。

 「『やる気が起きない』?『自己顕示欲がカケラも出てこない』?」やべ、バレた、と思いつつベッドを脇から抜け、逃げ出そうとする。

 ベルリのところだ!あの天然のベルリなら、事情を気にせず匿ってくれるはずだ!「ランク1を天然呼ばわりするのはどうかと思いますが、逃げられるとお思いで?私も大概頭に来ているのですよ?














 ナニをされたかはご想像にお任せするわ。ただ、今までが手加減されてた、という事だけ記しておく。


 「この牛乳めっちゃ美味しいなぁ!二本目買ってこよ!」

 「おい、アクアビット製牛乳買ってる奴がいるぞ」

 「察してやれよ。あれ、現実逃避に最適な一品だからな。相当嫌な事でもあったんだろうよ」

 階段部員の2人に目撃されたのは、たぶんオービエ。


















 どうも、GWをグレート・ウォールと読みそうになったり、更新にまた一ヶ月かかった作者です。

 PS3とAC4とACFAを衝動買いしてガチャガチャしていたからなのか、GW中に投稿したかったんですが間に合いませんでした。ち、違うよ!情報収集だよ!と言い訳してみる・・・と言いつつ、変なことばかり判明しました。

・あれ、なんかプラズマの弾多いな、レギュレーションのおかげか?凄いなぁ→初期アリャーの背プラズマがトレーサーじゃなくてスルタン→全体的にジェネ軽っ!

・メメントモリってどんな色なんだろう。レイレナードだから黒っぽいのかな?→赤を基調とした予想外なド派手カラー+あの似合わない角スタビ→エエェェェェェェ

・『ファースト・プレゼンテーション』?アクアビットマンで無双ゲーできるらしいよ!→HARDモード

・水上のシェリング強っ。カノープス+アルタイルのWトリガーはマッハでハチの巣どころか溶ける

・なぜかサーに勝てない。9割を占めるフェルミ力は落としたはずなのに・・・レーザー恐い

・閉所の核MTダメ、絶対!→ガチタンこそ正義!

・ロケットがぁぁ・・・ここまで弱いとむしろ正しい気がしてくる。不思議!
 刀剣さんのコメントの真の意味が今ようやく分かった気がします。ここまで弱いとは・・・

・本家メメントモリに『メメント・モリ』で負けそうになったorz(誤字じゃないよ!)

・BFFがEASYモードすぎる件に関して


 メメントモリの色に関してはかなり焦りましたが、一回りして一つのネタに変わりました。あと、No.29のネタも飛んできたり。


 土日あたりに、この時点での人物紹介を載せたいです。


 誤字・脱字・文法上のミスがあれば、感想にてお願いします。


 雪林檎様・・・晩のうちながら、感想ありがとうございます。

 オペレーターさんはきっと、一人だけレベルが日本一ソフトウェア並なんでしょう。

 笑顔付きさんの動画は、何度か見させてもらいました。あの人にこそ、変態という敬称がふさわしいのだと思います。ロケットだろうがとっつきだろうが。

 ジムリーダー?あの人は既に人間の限界を突破していたんだと思いますよ?あの動画の「所詮とっつきだ!そ、空に逃げれば・・・」(←内容うろ覚え)というコメントに噴きそうになったりしました。

 oruten様・・・毎度の事ながら、感想ありがとうございます。

 有澤の社員寮は108までの炸薬系統トラップと、無数の対人用トラップで構成されています。並のネクストであるなら、間断なく襲いかかってくるグレネードのシャワーでPAごと粉砕されるでしょう。一番のカモは間違いなくENタンク。

 ランクは13。機体構成が変わり、ランクが変わり(たぶん紹介文も)、ゲームとは少しずつ違う世界になってきました。で、でもあんまり期待しないで!オリジナルな話以外はたぶん大差ないから!

 あと、オービエ君のラスボスはダンボールです。

 なるほど、ライフルと散布ミサですか。テルスはKP出力高くてもPA薄いですからね。反対側には・・・なるほど!とっつきとロケットか!ありがとうございます!



[15186] 人物紹介・・・? 大事な人(?)を忘れていたので追加
Name: ふらっと◆28a2754a ID:ca43a696
Date: 2010/05/26 20:34
 国家解体戦争終結後の、GAとのいざこざを終わらせた時点での人物紹介です。今後の新たな人物紹介(または新情報)は、ここではなく別口で作ります。




 オービエ/メメント・モリ 本名不詳

 たぶんこのSSの主人公。いろいろ忘れてる。本人は生粋の関西人で、ボケ・つっこみ両方こなせる。エグザウィルに来てからは専らつっこみ担当。まぁ、職場が職場だから仕方ない。

 ネタ補正をある程度まで操る事ができる。とはいっても、真面目な場面では機能しない。シリアスな空気をぶち壊すことはできる。空気を読まない、とも言う。

 ダン・モロ以上に活躍して、ダン・モロ以上に(日常で)迷惑をかけるであろうリンクス。

 現在の名前の由来はコーヒー会社OBIEより。レイレナードと同じく最近になって頭角を現してきた新興コーヒー会社で、老若男女関わらず大人気。

 ランクは13。でもたぶんパルメットよりは強い。

 本人はよくオペレーターに心を読まれる、と嘆いているが、感の鋭い人間がオービエのダダ漏れの思考を読み取っているだけである。つまりオービエ自身の問題。アンジェにも読める。

 乗機メメント・モリは重量過多の逆関節。マシンガンを主軸とした撹乱・3次元機動を得意とする。天敵はGAマン。特に武器腕バズが鬼門。


 ルース/AMS科学者

 オービエの担当。苦労人(主にオービエ関連の)ではあるが、本人がなかなか楽しんでいるので問題なし。

 下の名前はカッセルではないらしい。OBIEのコーヒー好きすぎてリンクスにオービエって名前付けるようなコーヒー狂い。

 オービエに説得(洗脳)されてロケット信者になる。

 あと、意外と偉いらしい。


 オペレーターさん/オペレーター 本名不詳

 タキザワという名前ではないらしい。名前は一応出る予定。一人だけレベル上限がフロムではなく日本一ソフトウェア。

 ついでに言うと、エグザウィルに入社する社員で『あの○○がレイレナードに務めている』という噂を聞いて入社した社員は約2割。ナニをしていたか、という記録は闇に葬られている。

 ある意味オービエと同じくらい秘密(伝説)が多い。

 オービエ(の中の人)の天敵。ルース以上に(オービエ関連で)苦労人ではあるが、本人を説教できるので問題なし。それでも鬱憤は溜まっているらしい。最近ちょっと放出した。

 オービエのネタ補正が効かない人その1。

 よくオチに使われるが、本人はオービエを嫌っているわけではない(ハズ)。

 オービエのことを『リンクス』としか呼ばないのは、あくまでも仕事上の関係を崩さないため。『レイヴン』としか呼ばない歴代オペレーターとほぼ同義である。


 ベルリオーズ/シュープリス ナンバー1

 『天災』という事で噂高いランク1。誤字ではない。効率を第一に考える合理主義者である以前に、快楽主義者であるらしい。本人談。

 実際、本人の技量は戦場で培われたモノであり、『天才』という程の才能はないし、野生的な本能があるわけでもない。しかしその結果は、彼のナンバーが示している。

 本人は厳しい面もあるが、基本的には温厚な性格。

 乗機シュープリスは、他企業製品を使用する異色のネクスト。また、本人の技量も相まって、背中の有澤製グレネード・キャノンは必殺必中の一撃となりうる。


 アンジェ/オルレア ナンバー3

 世界に3振りしかないと呼ばれる、月光剣の担い手。サイズの変わるその剣は、きっと参式斬○刀と同じ素材で出来ている。

 基本的には真改と一緒にいて、オービエを修行に巻き込んでくる。が、修行と称したそれは既にドラ○ンボールの領域に達している。

 性格は、明るく元気な戦闘狂。

 真改とは、現状弟子以上の関係はないらしい。

 乗機オルレアは、接近戦特化のブレード機体。右手に専用の高出力レーザーブレード『MOONLIGHT』を装備する。


 ザンニ/ラフカット ナンバー11

 苦労人。一言でザンニを言い表せば、それ以外に選択肢は無い。

 ベルリオーズの天然に苦労し、アンジェの無茶ぶりに苦労し、真改との気まずい空気に苦労し、ルースのロケット談義に苦労し、オペレーターの愚痴聞きに苦労し、オービエの後始末に苦労する。常人では耐えられない現実。『召使』という意味の名前は、実は自身を皮肉って付けた名前なのかもしれない。

 しかし、そんな常識人っぽいザンニも、やっぱりどこかズレている。それがレイレナードクオリティ。

 乗機ラフカットは、インテリオル製レーザーライフルを主軸とした苛烈なWトリガーを仕掛ける攻撃型。逆関節であるのは、機動に必要なENを確保しつつEN兵器を主軸に捉えるからである。総弾数が少なく、対多数戦闘には向いていない。


 真改/テストパイロット アンジェの弟子

 現時点ではまだテストパイロットであることに留意。

 アンジェと一緒にいるところ以外を目撃される場面は極希(アンジェの出撃中は所在不明がデフォルト)だが、優秀なテストパイロットとして重宝されている。

 月光剣を所持。刀身がきわめて細く、今にも折れてしまいそうな鋭さを持っている。本人曰く「未熟・・・」とのこと。

 普通に会話する事も可能ではあるが、普段は二字熟語を使う。なかなかに面倒嫌いらしい。

 アンジェのことが好きらしいが、奥手なためか現状弟子から進展は見られない。

 ※このSSがラブコメになることはないはず


 ハタ/グレート・ウォール 故人

 完全オリジナルのNo.23なのに出番が少なく影が薄い、いろいろと不遇な人。

 本人は、情に厚いが浅慮。仲間内には優しく慕われてもいるが、敵には一切容赦をしない元戦車乗り。

 乗機のグレート・ウォールは、両背扱いのガトリング・グレネードを使用を前提に作られた特機。圧倒的な防御力を誇るが腕には何も装備しておらず、砲身を支えるぐらいしか役割がない。


 ワカ/車懸

 別れ際に捨て台詞を残していった人。オービエのことを許していないらしい。

 出番はしばらく無いけれど、きっとみんなの印象に残ったよね!・・・たぶん。

 乗機車懸は、( ´神`)の愛が惜しげもなく詰め込められた恐るべきガチタン。バズの中にバズを仕込み、グレの中にグレを仕込むというガチタンならではの荒技を仕掛けてくる。ガチタンに重量過多など不要なのだ・・・


 蟹さん/オービエのイメージが蟹さんを蟹のような存在に固定させ・・・(以下省略

 ある意味このSSで一番のキーとなる蟹。オービエの夢(正確には無意識下)の中の真っ白な、神のいた空間とほぼ同じ空間でのみ出現する。

 出会うたびにオービエの「」を持って行く。どうにも殺した人間の数ないし質によって持って行く数が変動したり、強制的に決められたりするらしい。謎。

 しかし謎を作っているのは作者自身という罠。一応細かい設定は決まっているらしい。暴露はいつになる事やら・・・

 本人(蟹?)は面倒見の良い性格。


 真☆オービエ/オービエの本来の魂(?)

 本人は至って残虐な思考の持ち主。魂が変わるまでの間の消極的な行動は、上手く生きていくための処世術だったらしい。故に鬱憤溜まりまくり。

 リンクス手術を迎えた後は大暴れする目論見だったらしいが、予想外のイレギュラー(現在のオービエ)によって肉体の主導権を失う。

 残虐とは言っても、所詮は15歳の領域『だった』が、蟹さんの「・・・すまん、オービエ」という言動の意味は・・・


 今後登場予定の人たち

 アクアビット・インテリオル+α・BFF(つまりレイレナード関連の人たち)

 二代目アモーも出る・・・かもしれない。サーダナ先生には会いたくない。ジョシュア先生にも会いたくない。でもきっと出会う。







 刀様・・・感想ありがとうございます。

 脚が折れる・・・逆関節ならあり得ますね。ほら、付け根辺りのボールジョイントが(違ぇ

 オービエ君の戦闘スタイルは飛んで跳ねてですから・・・ベルリオーズとのシュミレーターでも、最後の無理な着地で脚が逝きましたからね。ちょっと意識が外れていたかもしれません。その辺にも留意したお話を考えてみます。


 誤字・脱字があれば、感想でお願いします。


 雪林檎様・・・オペレーターさんだけレベル上限が違いますが、それは意味が少し異なります。

 彼女の強さは『真面目な状態で』日本一ソフトウェア並{プリニーバールを投げて爆発させられる強さ(まずこの時点でイレギュラー)}なのです。そこに『ネタ補正』が加われば・・・おそらく、ネットゲームである『FFA』のレベルに達することでしょう。一度の戦闘でレベル上昇30万余裕(笑 クラスに。

 Flayer様・・・返答、遅れました。感想ありがとうございます。

 この作品はネタ気味作品なので、ネタ補正は結構強めで行きます。極度にシリアスな場面では通じないので、その辺はご安心ください。



[15186] 第十三話 オストラ・・・オッツダルヴァの憂鬱 二次感想お返し
Name: ふらっと◆28a2754a ID:c9eefb3a
Date: 2010/06/05 08:01
あらすじ・・・登場人物紹介でした(コラ




 恐かった。

 母さんが、ぼくの帰る場所が、気が付いたら無くなっているかもしれない。

 そんな想像をするだけで、ただ恐くなった。恐くて恐くて、でもどうすることも出来なかった。

 所詮は想像だ、と自分を誤魔化した。でも、恐かった。どうしようもなかった。自分のこころを、抑えられなかった。

 でもそんな時には、にっこりと笑う母さんの顔が浮かんだ。

 その次は、母さんが真面目な顔でぼくと遊んでくれている姿が浮かんだ。その次は・・・

 そう、いつもこうやって安心できる。昔見た母さんの姿は、ぼくの宝物であり、こころの支えだ。

 ぼくは、弱いのだろうか?たしか、ぼくのような人間のことを「マザコン」なんて呼ぶらしい。

 でも、仕方ないことなんだと思う。ぼくには母さんしか無くて、『母さん以外何も無かったんだから』


 さぁ、いつもの通り・・・「切り替えようじゃないか」

 今日も訓練が始まる。私はいつも「天才」「未来のレイレナードを担う希望」と呼ばれているレイレナードの秘蔵っ子、プライドの高い毒舌家。

 被検体No.28『Otsdarva(オッツダルヴァ)』だ。

・・・

 「「・・・」」

 コツン、コツンと、ベルリと並んでエグザウィル地下を歩く俺は、とても気まずい状態に陥っていた。

 この間の一件以来、俺はベルリと会話することがほとんど無かった。

 別段睨み合うような刺々しい状態ではないのだが、『会話が切り出せない』状態が続いていた。

 俺たちの間を取り持つザンニの気苦労も、相当に絶えなかったらしい・・・ホンマごめんな、ザンニ。

 そんな時だ。突然ベルリが俺の病室(×部屋 ○病室 間違えないでね!)にやってきて、「会わせたい人間がいる。付いてきてくれ」なんて言いだしたのは。

 「最初は戸惑ったけど、どこからか漂うベルリの不退転の意志を感じ取り、俺は着いていったのだった!」「誰に実況しているんだ?そもそも、不退転の意志という程のものは持っていなかったが」

 口に出ていたらしい。いやぁ、最近多いねぇ。年かなぁ・・・「んなわけないやろ!」

 「君は一人でいても愉快そうだな」「見ないで!かわいそうな子を見る目で俺を見ないで!」「誰もそんな目で見てはいないが・・・着いたぞ」

 普段通り遊んでいたら、なにやら怪しげなドアの前に到着。最初の気まずい雰囲気は何処へ行ったのやら。


 なんというか、友達みたいだな、ベルリと俺。些細なことで仲が悪くなり、気が付けば元に戻ってる。とは言っても、確認したことはないけどね。

 「どうかしたのか?」「・・・いいや、何でもないナリよ」


 大きな字で[関係者以外立ち入り厳禁!]と書いてある。「俺、何も知らされてないのに関係者なん?」「リンクスには、レイレナードの全情報の開示権限が与えられているからな。

 ある意味、全てにおいて関係者だ」「俺特に何も知らされてないけど・・・」エーレンベルクとか、アサルト・セルとかさぁ。

 「聞けば答えてくれるだろう。さぁ、入るぞ」ベルリがゆっくりとドアを開ける。その先にあった光景は・・・

・・・

 いつも通りの特別訓練メニューを終えて独り休憩室で休んでいる間、『オッツダルヴァ』はこれからの予定を思い出していた。

 「たしか、訓練の後にはベルリオーズさんが来るはずだったか」

 検査を担当する研究員にも、以前訪れてきたことのあるアンジェやザンニにも基本的に辛口タメ口で話す『オッツダルヴァ』だが、ベルリオーズにだけは敬意を払っていた。

 何故ベルリオーズだけなのか。その理由はきわめて単純で、「負けない」からである。

 自分には、ベルリオーズよりも遥かに高いAMS適性がある。しかし、『オッツダルヴァ』は一度も彼にシュミレータで勝ったことがない。そう、ただの一度も。

 そのまま『オッツダルヴァ』は、初めてベルリオーズと会った、そう遠くない日のことを思い出していた。

・・・

 初めて会ったときは、なめていた。他の候補生では全く相手にならず、正規のリンクスと聞いて「楽しませてくれるだろう?」と、一丁前に挑発したものだ。

 そして、惨敗した。

 五分と経っていなかった。何かの間違いだと思い、その後すぐに再戦を申し込んだ。

 ベルリオーズは快く応じてくれた。『向こうも、二度目なら慢心がある』『さっきは油断していたから負けた』そう、確信した。

 そして、二度目も敗北した。自らの自尊心が『もう少しだったんだ!』と訴えていたが、もうそんなことはどうでも良かった。

 確かに、『オッツダルヴァ』は油断していた。慢心もあった。故に、二度目は自分でも信じられないくらい熱くなって全力を振り絞った。

 その上で、負けた。自分の存在が否定されたような気がした。

 6歳になるかならないか、という『オッツダルヴァ』が研究者達や他の年上の候補生達に対して取っていた「群を抜いて優秀なリンクス候補生」という唯一のアイデンティティーが、音を立てて崩れ去ったような気がした。

 恐くなって、逃げ出した。後ろは絶対に振り向かない。見下していた被験者達が、研究者達が、自分を冷めた目で見ていたような気がしていたから。

 自分用に特別に用意されていた部屋に閉じこもり、鍵をかける。

 どうすればいい?自分は最も優秀なリンクスだ。なのに負けた。負けた、負けた、負けた、まけた、まけた・・・もうぼくは必要ない?そうなの?

 「コンコン」ビクッ、としたのが自分でもわかった。ダメだ、今の『ぼく』は『オッツダルヴァ』じゃない。こんな状態で、人と話なんてできるわけがない。

 「聞こえるか?オッツダルヴァ」戦闘中にも聞いたベルリオーズの声が、ゆっくりと、頭にひびく。返事をしないといけない。でも、ふるえて声がでない。早く、速く、『オッツダルヴァ』にもどれよ!もどってよ!

 プライドが高くて、どんな相手ともぞんざいな態度を取れる『オッツダルヴァ』に!

 「・・・いないのか?候補生が隠れられる場所など、トイレか特期生用の個室くらいしか無いと聞いていたんだが、あてが外れたか」・・・このままいけば、見つからないかもしれない。

 今はダメでも、『オッツダルヴァ』にもどってからなら・・・いや、それこそダメだ。後になって出ていっても、きっとぼくはみんなの視線にたえられない。でもこのままじゃ・・・

 「ふむ、鍵もかかっているが・・・いないのであれば仕方ない。他を「い、います!ここに!」気が付けば、ぼくはベルリオーズに声をかけていた。

 「なんだいたのか。いるならいると、最初から言ってくれれば良かったのに。早速、他の研究員達も「待って!・・・他のみんなは、呼ばないで・・・」みんなが来れば、ぼくがどうなるかなんて目に見えてる・・・なら、ベルリオーズに相談したほうがいい。

 「・・・分かった。周りには誰もいないし、これから呼ぶようなこともしない」ホッ、とため息をつき、こころを落ち着かせる。

 「君はたしか、6歳だったか?」「・・・数え年で、6歳です」「そうか、まだそんな年なのか」「あの・・・それがどうかしましたか?」

 ・・・恐い。ここにいる候補生の人たちは、みんな『オッツダルヴァ』が嫌いだ。ナマイキで、年上を尊敬しなくて、なのにAMS適性が高い『オッツダルヴァ』が。

 その『オッツダルヴァ』は、ベルリオーズにも他の人たちと同じようにふるまった。この人も、ぼくのことを嫌っているかもしれない。

 「あの・・・「君に会ったとき、私は正直驚いたよ。優秀な候補生がいると聞いて来てみたら、なんとも目つきの悪い子どもがこちらを睨んできたのだからな」ううぅ・・・」

 「たしかに最初こそ『なんて子どもだ』と思ったが、なかなかどうして人を第一印象で判断してはいけないな。その年であれほどの挙動ができるとは。将来が楽しみだ」「・・・え?」

 「それにしても、プラズマキャノンを囮にした戦法には驚いた。正規のリンクスでもああいった類のフェイントはできるが、候補生である君が、あのように機転を利かせられるのは素晴らしい」

 「で、でも・・・ぼくは負けてしまいました。『レイレナードの希望の星』なのに・・・」「君は、何か勘違いをしていないか?」・・・え?

 「君はまだリンクス候補生だ。それに対し、これでも私はレイレナードの基幹に関わってきたリンクスであり、実戦経験もある生粋の軍人だ」「な、何が・・・」言いたいんですか?


 「君は、私に負けても仕方なかった。負けた君を悪く言うような人間はいない」


 「あ、うぁ・・・」「私は、君のことを知らない。だから、こんな風に説教しても、意味は無いかもしれない」そんなことはない、と言いたい。でも、声が出ない。嗚咽がでるだけだ。

 「だから、まず自己紹介をしよう。私の名前はベルリオーズ。偽名ではあるが、今の私はベルリオーズという名のリンクスだ」

 「・・・ぼくは28番目の候補生だから、オッツダルヴァ『otsdarva』と呼ばれてます。本名は・・・覚えていません」

 「そうか、今後ともよろしく。『オッツダルヴァ』」

 「こちらこそ、よろしくお願いします。『ベルリオーズ』さん」

・・・

 屈折歪曲あったけど、これがオッツダルヴァ、いや、『ぼく』とベルリオーズさんとの出会いだ。

 この後みんなの元に戻ったぼくは、予想通り怒られた。

 でもその内容は、「心配をかけさせるな!」とか、「大丈夫か?」などという声だった。

 ぼくが目を白黒させていると、ベルリオーズさんが肩を叩いてきた。振り向けば、何故か頭を押さえつけられた。

 「私の言った通りだろう?」

 きっかり5秒経って、ぼくは自分が撫でられている事に気が付き、顔を真っ赤にした。

 みんなが笑ってる。いつも険しい表情の研究者達も笑ってる。候補生の人たちも笑ってる。つられたのか、ベルリオーズさんも笑ってる。

 ぼくも、一緒になって笑った。レイレナードに来て、こんなに楽しい時は、今までなかった。

・・・

 その日から、たびたびベルリオーズさんが尋ねてくるようになった。

 そのたびに再戦を試みてるけど、まだ一度も勝てたことがない。でも、少しずつではあるけど、差が縮まってきている実感はある。

 最近、ベルリオーズさんの動きにもある一定の--それは本当に広い範囲ではあるけれど--規則性があることに気が付いた。この調子なら、ベルリオーズさんの戦績に黒星を付ける日もそう遠くないはずだ。

 ブーッ!ブーッ!ブッー!

 ブザーが鳴り出す。これは、正規リンクスが来たときに流れる警告音だ。

 警告といっても、『くれぐれも粗相のないように!』という注意を促す目的で作られた物だ。

 さて、この時間であるなら、ベルリオーズさんが来るころだろう。迎えに行かないと・・・

 そして『オッツダルヴァ』は、ロビーへと足を向ける。


 「そこに待つもう一人のリンクスと、彼の交わる道や如何に!次回、『オービエ大ピンチ!?恐怖!迫る最高峰リンクス候補生!』乞うご期待!・・・ピッピー・・・来週の放送は、○月×日金曜日の午後2時からでお送りします」

 「・・・オービエ」「ん?何、ベルリ?『引き続き 養殖品のイレギュラー を お送りします』の方が良かった?」「そう言う問題ではなくてだな・・・いよいよもって君のコジマ汚染が心配になってきた」「な、なんだってー!」

 ・・・ロビーは、現在進行形で(オービエから)コジマ汚染が広がっていた。

・・・

 ドアを越えた先にあったのは、ガラス張りの壁が続く広い道。ガラスの向こうでは、老若男女問わない人集りが、こちらを向いて礼をしていた。

 「ベルリ、ここ、『何』?」「リンクス養成施設、と呼ぶのが正しいだろう。さて、進もう。いつもこの先のロビーで待ち合わせている」ガラスの向こうに手を振って答え、ベルリは歩き出す。なんでだろう、赤い絨毯がベルリの足元に見えるぜ。

 かくいう俺も少々控えめに手を振り、ベルリに続いてそそくさとガラス窓の通路を後にした。

 「でさぁ、ベルリ。そろそろ『会わせたい人』っていうのが誰か、教えてくれてもええんとちゃうん?」「まだ、秘密だ・・・そうだな、しいて言うなら・・・この施設のNo.1だ」はぁ?と思わず言いたくなる。

 俺はここに来たこともないのに、ここのNO.1だ、なんて言われても、誰一人として思いつかないぞ?

 ぬぬぬぬぬ、と唸っていると、背後から足音が聞こえてきた。誰か来たようだ。

 「ベルリオーズさん!いらっしゃ・・・貴様、誰だ?」少し幼さの残る声と共にやってきた少年は、俺を見つけた途端口調を180°変えて話しかけてきた。睨みすぎて目が線になってるぞ。

 しかし・・・この子どもは?コイツがベルリの言う「会わせたい人」なんか?

 「ああ、俺は「リンクスNo.13のオービエだ。敬語は・・・無理か」「当然です。私が認めるリンクスはベルリオーズさん以外にあり得ません。

 というわけだ、貴様に用はない」これは・・・なんというデレ期全開少年・・・いや、ベルリにだけど。

 「なかなかえげつない事言いよるなぁ、自分」「なんだその口調は?ふざけているのか?だとすればとんだピエロだな。貴様には人間大のボールの上がお似合いだ」コイツはスゲェ。ここまでスラスラと嫌味を垂れ流せるとは。

 「その辺にしておけ、オービエ、オッツダルヴァ」Wババチョップはなかったぜ。

 「申し訳ありません、ベルリオーズ」「俺もかいな・・・って、オッツダルヴァ!?」ここにいるのは、ランク1、オッツダルヴァか!?

 驚愕と共に二度見をしたら、ジト目で見られた。ますます6歳とは思えない性格の悪さだ。

 「ん?たしか君は、彼と知り合いだと聞いたのだが」えーと・・・あぁ、シドニーの作戦の前か。そんなことを言った気もする。

 「何を言っているんです?ベルリオーズ。ぼくがこんな、マヌケな顔をした男と知り合いなわけないじゃないですか」丁寧語に戻りつつも、毒舌に抜かりないオッツダルヴァ。

 「・・・」「・・・?」首をかしげるオッツダルヴァに、ベルリが困った表情を浮かべている。ある意味珍しい光景だ。天然のベルリが頭を抱えるなんて。

 「あっ、そうですよベルリオーズ。今日こそは貴方の戦績に初黒星を付けてあげますからね」「黒星・・・ああ、その件か。すまんが私は、


 このオービエに、一度負けてしまったんだ」


 「へっ・・・?」オッツダルヴァが、年相応の呆け顔になる。

 「ベルリ、まだあの件引きずっとんか?というか、シュミレータ上では俺負けだし」「いいや、私はリンクスとしてだな・・・」

 「・・・」俺とベルリが言い争う中、オッツダルヴァが肩を震わせ始めた。

 「いやだから・・・ん?どうした?」ベルリオーズが声をかけたとき、事件は起こった。そう、起こってしまった。


 「貴様・・・私と勝負しろ!







 6歳の子どもに涙目で睨まれる俺って、端から見たら完全悪役だよね?

 

 








 オッツダルヴァとオストラヴァって、名前似てますよね。

 はい、どこかに出るかもしれないENタンクでカーパルス占拠に行ったら一発でクリアして自分で驚いた作者です。

 今回搭乗のオッツダルヴァ少年、6歳でございます。FAの時点で天才坊やって・・・年齢合わせづらい!

 ・・・あれ?今の時期にまだ出てなかったなら良かったんじゃ{変な前振りするからこうなる(泣

 そう言えば、青色+逆関節+右手マーヴってザンニとお揃い・・・4買わずに見切り発車したことを、少々後悔しております。

 そう言えば『マーヴ』って正確には『マーヴェ』らしいですね。直すべきでしょうか?


 どんどん作者コメントがgdgdになっていってる気が・・・それもこれも全て一重に作者の責任です。

 今回、ちょっと半端な終わり方ですが、次回に続きます。べ、別に、早めに更新したくて半端なトコロで終わらせたわけじゃ・・・ごめんなさい。

 そうは言っても、また4週間間際の更新です。作者パチこくなやゴルァ!という人もいると思います。それもこれも(ry

 そういえば言い忘れていましたが、V.Iアンサング買いました。アリシアたんハァh・・・おっと、若干変態の道に逸れかけていたようです。

 というか、人物紹介のすぐ後に新キャラって・・・もっと言うと、アナトリアの傭兵が舞台に上がるまでに結構な人数を出す予定です。オリジナルキャラクターも一人予定中。


 最後に、誤字・脱字・文法上の異変・ツッコミがありましたら感想の方でお願いします。

 最初の頃の皆様のような、批判を交えたコメントでもありがたいです。むしろ気を引き締める要因になります。


 雪林檎様・・・いつも感想、ありがとうございます。

 オペレーターさんは今回出番無しですが・・・プリニーバール爆破事件の犯人の件というのなら、彼女はゲームという電子媒体の限界を超えているんでしょう。間違いなく。

 乙樽は候補生、という設定ですが、もちろんリンクス戦争には出しません。どの辺りでレイレナードを抜けさせるか(ORCAを作らせるか)・・・作者の腕の見せ所ですね。

 恥ずかしくない文字の羅列で表現したいと思います。


 菜梨様・・・少々返答が遅れました。こちらこそはじめまして、感想、ありがとうございます。

 乙樽少年、6歳です。年が年なので『ひらがな口調』という案もあったんですが、読みづらい、乙樽天才だから別によくね?などの理由からけっこう普通にしました。

 あと、乙樽少年が自分のことを『オッツダルヴァ』と呼ぶのは、仕様です。区別を付けるためでもあります。



[15186] 第十四話 ふ た り で (模擬戦)やらないか?  さらにさらに修正
Name: ふらっと◆28a2754a ID:ce1d9f2e
Date: 2010/07/27 22:32
あらすじ・・・6歳に涙目で指を指された。どう見ても俺が悪役です。本当にありがとうございました。






・・・

 「貴様・・・私と勝負しろ!

 そう言って、オッツダルヴァは俺を指差した。

 「コラコラ、人を指差しちゃいけないってお母さんに習わなかったか?」「真面目に答えろ!怖じ気づいたか!」悪いが、怖じ気づくようなモンはうち(内)には居りませんぜ。

 「ふん、やはりオリジナルなど名前だけか・・・いえ、ベルリオーズさんは違いますよ」「・・・相手をしてやってくれ、オービエ」

 ベルリが呆れ顔で俺を指名する。顔に影が差してる気がするのは、きっと気のせいじゃない。

 相手をしてやるって、子守じゃなかろうか

 「特に渋る理由も無いねんけど」乙樽の機体がまったく想像できないからなぁ。対策の立てようがない、ていうか。

 「決まりだな。付いてこい・・・あ、ベルリオーズさんも見ます?僕の勇姿」「興味はあるな」珍しく、ベルリが乙樽に淀みなく返答した。相当見たいらしい。


 「二人とも、戦い方が似通っているからな・・・さて、どこまで食いつけるか」

 ベルリがボソッ、と呟いた一言は、満面の笑みで先頭を歩く乙樽には聞こえなかったようだ。鼻歌まで歌ってる。

 とは言っても、横で歩いてた俺にはしっかり聞こえてたけど・・・さて。


 『食いつく』のはどっちだ?


 オリジナル(笑)の俺か?リンクス候補生のオッツダルヴァか?

・・・

 乙樽に連れられてきた場所にあったのは、前に使ったのよりもかなり大きくて、そこら中からコードやら何やらがウンザリするほど繋がれてる球体モドキのシュミレータ。

 それが二基も置いてあって、さらに他の機械もあるから部屋のスペースに余裕がないでござる。

 「匂う・・・匂うぜ・・・コイツからは『旧式』って匂いがプンプンしやがるぜ・・・」前の奴のほうがコンパクトだしね。

 「たしかに、この二基は一世代前の物を再利用し、データ収集用にリサイクルした『旧式』だ。よく分かったな」ネタで言ったら当たりました。

 「ふん、さっさと始めるぞ」そんなこと誰でも分かる、と言わんばかりにカタカタとキーボードを打つ乙樽。「イライラしてますな」「う、うるさい!」

 ていうか、シュミレータ自前で操作できるのかよ。乙樽スゲェ。そこに痺れる憧れるぅ!

 「?」キョロキョロと辺りを見回す乙樽。向こうに電波が届いたみたい。

 ちなみに、現在の乙樽は台座(専用?)に乗って身長をカバーしてる。台座に乗った子どもが、目にも止まらぬ速さでキーボードを叩いてる姿はかなりシュールだ。

 「あとの操作は私がやっておく。2人とも着替えてきて構わないぞ」「分かりました。よろしくお願いしますね☆」

 ウィンクしながら立ち去っていく乙樽に、ベルリのライフは(ザンニ的な意味で)もう0っぽい。

 「あいよ~、って、ベルリもできるんかい」まさか、できないのが俺だけーなんて事は・・・ 

 「?この程度の操作なら、ザンニもアンジェもできる。最近になって、ようやく機械音痴の真改が覚えたところだな」ホントに俺だけかよ。

 「そういうオービエは覚えていないのか?」「返す言葉もございません」「そうか・・・機会があれば教えてもかまわないが?」「マジで!」「先に目の前の用事を片付けて、な」お預け!

 「ささっと着替えてくるぜ!」「オッツダルヴァは少し前に着替え始めてるから、早めにな」マッハで(服を)パージしてやんよ!

・・・2分後

 「着替え終わったぜ!」「5分は先に出て行ったオッツダルヴァよりも早く戻ってきた君の早業には、舌を巻かざるおえない」「行き帰りに1分半、着替えに30秒かかったな」

 「耐Gスーツはゴテゴテとしていてかなり着替えづらい筈なんだが。そもそも30秒で着替えとは・・・」「ル○ンダイブすれば問題ないって!」

 具体的に言うなら、ネタ補正。常識?抜きさっちまえよ!



 「「・・・?」」




 「着替え終わりました!」ドタドタという効果音とともに、乙樽が駆け込んできた。

 「・・・よし、始めようか。2人とも、中に入ってくれ」

 乙樽が、いい意味で空気を壊してくれました。

 そしてベルリとのジェネレーション(正確にはワールド)ギャップを感じたぜ(泣

・・・

 「2人とも、準備はいいか?」「問題ない」「大丈夫なのかな?ねぇ、n「そうか、では始めるぞ」このネタはスルーされる運命にあるようです。

 「ちなみに、私はハンデとしてオッツダルヴァのオペレートをする」「本当ですか!よし・・・勝った」

 (見えないけどたぶん)してやったり、という表情をする乙樽。なかなかキツイな、この状況。

 「戦場はシンプルなVR空間だ。

 目立った障害物はフィールドの大半を占める巨大な十字型の浮遊物だけとなる。この浮遊物の下は天井が低く、3次元戦闘はできないものと思ったほうがいい。

 戦場についてはそのくらいだ。何か質問は?」「はい、ベルリオーズ。制限時間は?」「制限は無し、だがなオッツダルヴァ。

 この後私とも模擬戦をしたいなら、早めにケリを付けないといけないが」「今回は遠慮しておきます・・・目の前のコイツに集中したいので」

 どうやら随分と気に入られてしまったようだ。無論そういう意味で。


 「手こずっているようだな!しr・・・手を貸そう!


 そういう意味、って、ソッチ系じゃないんだけど。てか、今どこから湧いて出た。そしてナニを言おうとした。

 「まぁ手こずっているのは事実だし、力を借りるよ、ルース」「任せてくれ。オッツダルヴァに関する情報収集は済ませてある」ホント、どこかで見てたんじゃあるまいか。


 「そろそろ模擬戦を始めるぞ」

 ベルリオーズの声が、不思議と響いた。

・・・

 視界が暗転、瞬きをした次の瞬間にはVR空間が広がっていた。

 メメント・モリが立っているのは、十字の浮遊物の一角。本来なら遠く離れた正面に乙樽の機体が見える筈だけど、見える範囲にはいない。

 しっかし・・・本当に何もない。どこまでも飛んでいけそうだ。見えない壁にぶつかる気がするけどな。

 「オービエ、オッツダルヴァの調査の結果、聞くかい?」おほう、なんか『調査』って聞くと俺が依頼したみたいだな・・・それは、まぁほっといて。「お言葉に甘えよか」

 「そいじゃまず、乙樽の機体構成を教えてくれ」「OK。まず、オッツダルヴァの機体は『グローリア』って名で登録されてる。キリスト教の『栄光の賛美歌』が元かな。

 フレームは君と同じアリシア。左手にヒットマン、右手にマーヴを持っている。左背には、

 ピコン

 レーダーに点が灯る。嫌な予感が走り、バックブースタを噴射。

 さっきまでいた場所に、『光』が激突した。レーダーにノイズが混じり、使い物にならなくなる。

 「なるほど、背中にゃプラズマキャノンってわけか」「それも出力を高めたトレゾアのほうさ。PAがあればある程度安心だけど・・・分かってるね?」言わずもがな、だな。溶けるぅぅぅぅ!

 OBを点火し、ある程度距離を離す。

 「マーヴとヒットマン、そんでトレゾアか」うーん、±しても装備の重量は俺とそう変わらないな。ってことは・・・

 「ルース。乙樽の機体って重量過多?」「OBをランスタンに、SBをオルテガに変えた上で、積載量をフルチューンして回避してる。装備に重量を裂きたかったみたいだ。

 あと、オッツダルヴァの戦闘スタイルは、君と同じ3次元張り付き型。接近戦になれば、機動力の面で重量過多してるメメント・モリが不利だろうね」ベルリの言ってたのはこれか。

 「どうした、逃げ回ってばかりだな」「じゃかわしい。今作戦会議中や」「今更か?機体と同じで、なんともノロマな事だな・・・ですよね!ベルリオーズさん!」「・・・」

 乙樽からの嫌味。オービエの精神に43のダメージ!ついでにベルリの精神に80のダメージ!度重なる口撃に、オービエはカチンときた。

 「つかホンマ、その口調も大概にしとけや!コロコロ変わってめんどくさいねん!作者の事も考えたれ!子どもなら子どもらしく、大人しゅうしとらんかい!」「なっ!」

・・・

 同じフレーム、同じ系統の腕武器、同じような戦法。

 ここまで自分と似通っていて、その上オリジナルの実力を持つ敵と戦った事など、今までなかった。

 オービエのネクスト『メメント・モリ』は、強化型マシンガンと突撃ライフルを装備した近距離戦向けだ。しかし何故か、背中に『あの』テクノクラート製ロケットを装備している。

 ベルリオーズさんの話だと、そのせいで重量過多を起こしているらしい。

 ふざけているのか、と思ったが、この認識はすぐに覆されることになる。


 「ぐっ、なんだ、これは!」

 メメント・モリは多少近距離寄りではあるものの、ある程度の距離を保っていた。

 そして、そこから飛んでくるのは正確無比な『狙撃』。

 一射毎に弾道が変化し、その尽くがこちらの機動の先を読んできている。

 だが、ただでやられるほど『オッツダルヴァ』は甘くはない。

 最初の2、3発こそ直撃したが、それからは小刻みな空中機動でギリギリ避けている。

 「ふぅ、「集中を切らすな。オービエの『狙撃』は下手なネクストにも当ててくるぞ」・・・ベルリオーズさん、そんなリンクスが「現状を見て信じられないか?」

 今や『オッツダルヴァ』は回避に専念している。通常ブーストでの切り返し、連続でのQB、自由落下からの慣性の振り切り。並大抵のAMS適性しか持たない者であれば、見ているだけで目が回ってしまうような機動だ。

 無論、『オッツダルヴァ』は並のリンクスではない。

 オーメル・サイエンスのリンクスにも引けを取らないAMS適性と持ち合わせたセンス。そこに経験が加われば『栄光』を掴み取るのもたやすいであろう才覚だ。

 それらのおかげでロケット弾をほとんど避けられているわけだが、余裕を持って反撃できているとは言えない。

 本来、機動戦においては狙いを付けることさえ難しいロケットで、相手を撹乱し、追い込む・・・認めるほかないだろう。間違いなく、このリンクス、オービエは異常だ。


 「だが、策がないわけじゃない。弾幕を展開してオービエに集中させなければいい。ロケット弾が撃ち落とせれば一石二鳥だ」

 ベルリオーズさんの的確な指示に従い、ライフルとマシンガンを連射する。

 数発自爆させられた後、メメント・モリもライフルとマシンガンに切り替える。

 「ちっ、ベルリと乙樽が組むとコッチの手がすぐ潰されんなぁ!セコイわ!」「僕への当てつけじゃないだろうね?オービエ」

 「だってルース、乙樽の情報伝えた後は「それいけ!」とか「そこだ!撃て撃て!」とか、観戦者と変わりないことしか言ってないし」「そんなに酷いかなぁ・・・って、オービエ!前前!」


 「ハッ!正面からの純粋火力でメメント・モリに張り合うつもりかい!」そう言いながら、マーヴと『モーターコブラ』を連射してくるメメント・モリ。

 確かに、持っているマシンガンの性能では向こうが勝っている。ヒットマンとモーターコブラはほぼ完全な重量互換武器だ。重量以外に勝っている部分など、数えてもあるかないか。


 そう、だからこそ、その重量差を『活かす』!

 二機の間合いはだんだんと近くなり、交差を繰り返す3次元戦闘へと変化していく。マシンガンの連射音は断続的なものとなり、マーヴの弾丸が相手のPAを貫かんと轟く。

 それは、重量過多したメメント・モリが迎撃する形になるのを意味していた。


 「・・・なるほど、そう来るか。粘りきれるんか、オッツダルヴァ!」「このままだと不味いよ!オービエ!」

 「さすがに気付くか、そうでなくてはな!」「集中を切らすなよ、オッツダルヴァ」「分かってます!」





 「・・・で、つまりどういうことなんだい?」「分かってなかったんかい!」ここでまさかのボケ炸裂。シリアスパートに甚大なダメージ!

 「いや、その場の雰囲気に合わせることは大事だと思うんだ」「いや、大事だけどさ・・・ったくもう、ベルリ、解説よろしく。集中するから」

 「いいだろう、私が相手になる」その言い方ヤメテー!なんか来るから!バケツ頭の(アブ)ノーマルとか!

 「つまり、オッツダルヴァはヒットマンとモーターコブラの重量差に目を付けたわけだ」「・・・?」首をかしげるルース。

 「ふむ、もっと簡単に言うならば、その2者の、ほんの僅かな動きの速度差を使っているわけだ。さっきから、一瞬の会合しかしていないだろう?」「・・・あ、いやでもそんなことが・・・」

 「なにか思い当たる節でもあったのか?」「いえ、『ありえない』とは思うんですが、ひとつ予想が」「言ってみればいい。きっと、それが答えだ」ベルリオーズが答えを促す。


 「オッツダルヴァは、『モーターコブラの銃口が向く前に射線を外れている』とでも言うのですか?」


 「85点だな。正確には『銃口が向いた時に』動き始めるわけだが」「・・・本当、オッツダルヴァは化け物ですね。うちのオービエも大概ですけど」

 「さて、化け物の度合いで言えばオッツダルヴァのほうが上かもしれんぞ?銃口が向くまで『待って』少しでもダメージを増やそうとしているのだからな」

 「・・・そこまでやれるものですか?リンクスは」

 ルースの問いかけに、ベルリオーズはにやりと笑いながら言い放った。


 「そもそも、『我々』に関しては君のほうが詳しいだろう?・・・まぁ、少なくとも、私を含めて真似のできるリンクスはこの世に居ないだろうがな」「・・・そうですか」


 2人は再び、それぞれのリンクスのもとに戻っていった。

・・・

 2人の談笑が終わった後少しして、たった一つの、それも致命的な変化が訪れた。

 「ちぃっ、PAが!」

 度重なる銃撃に、メメント・モリの守りが崩れる。攻める側のグローリアも、かなりPAが薄らいでいる。

 「ふん、これで終わりだ!」

 プラズマキャノンを構えるグローリア。動き回ったENを確保するために、数瞬動きが止まる。

 「まだまだぁ!」その隙にマシンガンをばらまき、ロケットを構えるメメント・モリ。


 「「喰らえ!」」


 プラズマの光とロケット弾が、真正面から激突する。


 --余談ではあるが、『ACFA』というゲーム内では、何故かロケットにはレーザー兵器を『掻き消す』効果がある。

 例えば、空中要塞フェルミから放たれるハイレーザーに軸をあわせてロケットを放つ。

 すると、ハイレーザーは元より何もなかったかのように消え去り、ロケットは我が物顔でフェルミに直撃するのだ。

 かなり珍妙な光景ではあるが、オービエはこれをとてもおもしろがっていた。この時も、同じような感覚だったのだろう--


 「よっしゃあ!行けぇ!」勝利を確信するオービエ。敵の必殺をロケットが掻き消し、そのまま直撃する様を信じて疑わない。

 そうして、オービエの意志に従い飛ぶロケットとプラズマはぶつかり合い、跡形もなく『ロケットが』消え去った。


 「・・・へ?」

 プラズマはそのまま直進。ロケットの射線、つまり、CP―48本体への直撃コースをたどる。

 まぁ当然と言えば当然である。ただでさえ炸裂しやすいよう、ライフルのような貫通弾とは比べものにならないほど脆くできているロケットの弾頭が。

 装甲を溶かしつくすような、プラズマというエネルギーの奔流に勝る道理はどこにもない。

 「冗談だろ?なぁ・・・って、ヤバッ!?」呆然としていたオービエはあわてて回避しようとするが、時すでに遅し。上体を少しずらす程度しかできない。

 そして・・・直撃。


 「っ、ぁあアアあああアアAAAAAAGH!!!」


 人の出すものとは思えない、獣のような絶叫。

 装甲を焼くプラズマは、前のめりになっていたメメント・モリのコアと右肩を軽く抉りながらCP―48を飲み込み、地面に着弾。ECMがレーダーを散らす。

 バランスを失ったメメント・モリが、片膝をつく。

・・・

 「オービエ?オービエ!大丈夫なら返事をしてくれ!」ルースの嘆きに、答える声はない。

 「この程度だったか・・・オリジナルを名乗るなよ、貴様」オッツダルヴァの侮蔑にも、返答はない。

 擱座した青い機体は、微動だにしない。

 「・・・」「ベルリオーズさん、ここまでです。シュミレータを停止してください」「・・・」

 画面を見据えるベルリオーズは、メメント・モリを注視したままだ。

 「ベルリオーズさん!早くシュミレータを停止して医療班を「まだ、だ」え・・・?」

 「で、でも明らかに戦闘は終了して!「メメント・モリにはセーフティがまだ掛かっていない」リンクスが気絶していたら?この箇体は緊急停止装置がつけられる前の箇体ですよ?」

 ベルリオーズとオッツダルヴァの言い合いが続く間も、青い機体に変化はない。精々、ボロボロと機体の一部がはがれ落ちたりしている程度だ。

 さきほどからルースが声をかけ続けているが、そちらにも返答はないようだ。

 「・・・オッツダルヴァ、どうして『オービエが気絶している』と思うんだ?」「そ、それは・・・応答がありませんし、他にも「オッツダルヴァ」・・・なんですか?」

 声色を若干不満げにして話すオッツダルヴァ。いい加減不毛な言い争いに嫌気がさしてきたのだろう。

 「もう一撃、プラズマキャノンを撃ちこめ。それですべて片がつく」「ですから、それはやりすぎだと「オービエのAMS適正は、君に次いでレイレナードで2番目だ」・・・」

 「加えて、6回連続で私と模擬戦を行ったこともある。そんなオービエが、衝撃すらないプラズマキャノンの一撃程度で気絶すると思うか?」「しかしその、万一ということも・・・」

 しぶるオッツダルヴァに、ベルリオーズが『キレた』

 「甘さを捨てろ、オッツダルヴァ!」「!?べ、別に甘さなど・・・」「油断をするな!目の前の敵は全力で潰せ!これからも『オッツダルヴァ』の仮面をかぶっていくつもりなら!」

 「!・・・わかりました、ベルリオーズ。トドメを、刺します」「行動は迅速に、だ。おそらくオービエは・・・




 「ようやっと終わった?いやぁ、長かったね、ホンマ。準備終えてもうたやんか」「「「!!」」」



 青い機体は、いつの間にか立ち上がっていた。その場にいた全員が、驚愕する。

 「・・・やはり、狸寝入りだったか」「なんや、気づいてたんかいな。人が悪いで?ベルリぃ」ベルリオーズの問いかけに、カラカラと調子よく答えるオービエ。

 「・・・無事なら無事だと、ちゃんと応答しないか!」「っくぅぅぅ!耳元で叫ばんとってぇな、ルース。俺にも考えが「そんなことはどうでもいい!どれだけ心配したと思ってるんだ!

 大体ね、オービエはいつもいつも「ちょ、タンマ!今説明するから!」


 プラズマを受けた直後は、少しばかり意識が朦朧としていたこと。

 ルーズの必死の問いかけも二人の言い争いも、遠く聞こえていたこと。

 しばらくして意識が回復すると、今度はメメント・モリの調子が良くないことに気づいたこと。


 「『調子が良くなかった』?回路に異常でも出たのかい?」「なんか、バランサーの異常みたいでさ。うまく動けなかったわけ」

 「バランサー・・・スタビライザーの影響か?」「ん~、俺よく考えたらスタビの注文してなかったんよ。だから、もうちょい『重いモノ』」


 「「・・・ロケットか」」


 「根元から吹き飛んだせいか、パージ云々以前に無くなった『認識』自体が無かったみたいでな。

 傾きどころか、機体の重心自体が思いっきり反対側に寄ったままやったんや。肩もちょっと削れてたし」

 「それで、残りの時間は本体の重心調整をしていたわけか。どうりで時間がかかったわけだな」「なるほどねぇ。どうりで」



 「・・・?へぇ、重心って調整出来てんなぁ。知らんかったわ」



 「「は?」」今度こそ、二人は絶句した。


 どう見ても、今のメメント・モリに異常は見られない。調整は完了している。しかし、それではオービエの証言と噛み合わない。

 「じゃ、じゃあ、どうやって重心を整えたんだい?」「それもいろいろと模索してん。そこで妙案が浮かんだんや」「妙案?」「そう!

 片方が軽くなっちゃったなら、もう片方も軽くすればいいじゃない!」


 「・・・ハァ」「・・・ふむ、なるほ「納得しないでくださいベルリオーズ。どう考えてもおかしいですから」そうか?道理としては合っていると思うが」「効率の問題です!

 ・・・それでオービエ。一体どこを軽くしたんだい?」「えっと、主に外したんは・・・


 PA整波装置かな」


 よくみれば、メメント・モリの左側が寂しくなっている。一番わかりやすいのは腕だろう。人で言う肘の部分なんて、すでに左右で別物扱いできそうなほど細身になっている。

 「・・・もう、もうツッコまないからねオービエ。

 わかってる?アリーヤの高いPA整波性能は、それぞれの整波装置が互いに共鳴しあい、相乗効果を生んでいるからこその『芸術品』なんだよ?それを・・・ブツブツ」

 うつむきながら、なにやらブツブツと言い始めるルース。しばらく回復は望めそうにもない。


 「さて、一人の世界に閉じこもっちゃったルースはほっといて。続きと洒落込もか、『オッツダルヴァ』」

・・・

 「・・・こっちこそ待ちくたびれましたよ、オービエ」「?敬語になってんな。いいんか?」「いいんです。僕が敬語で話すのは、僕の認めた一部の人だけですから」

 敬語で話し始めるオッツダルヴァ!オービエは身震いした!

 「いやぁ、照れるなぁ。」「もちろん、ベクトルは『尊敬』ではなく『アホさ加減』にですけど」「それはまぁ、当然だろうな」

 「いや、分かってはいたんだけどさ・・・泣いてもいいかな?俺「「ダメだな(です)」」ゴフッ

 「泣いている暇があったら模擬戦を早く再開してくれ。予想外に時間がかかって、他の候補生に迷惑がかかっている」それはさすがにマズイなぁ。

 「プラズマのECM効果もとっくに無くなってるし、俺が若干有利だな」「どう見たらそうなる・・・

 今のメメント・モリは、PAが本来の半分も出せていないんだぞ?どれほど脆くなっているか、分かっているのか?」

 そういえばそうだった。「忘れてたぜ。てへ☆」

 「気持ちが悪いのでやめてください。さ、始めますよ」「たしかに自分でも気持ち悪いとは思ったけどって危な!」ライフルとマシンガンで再び弾幕を形成してくるグローリア。


 あっ、弾が掠ってPA剥がれた。

 「さすがに脆いなぁ。サラーフと変わらんのとちゃう?」「著しく乱れてるから、きっとサラーフのほうがまだマシさ・・・」ルース回復。まだ少しいじけてるみたい。

 「まぁまぁ、機嫌直せよルース」「君のせいなんだけど」「HAHAHA!」「あはは・・・で?どうするの?」

 「ん、策はあるよ。かなりセコいけど」「弾切れ狙いとか。まさかそこまで狡いマネはしないよね」「・・・」「返事をしてくれないとかなり怪しくなるんだけど」

 「ベルリにしても乙樽にしても、マーヴを主兵装に捉えてるよね」「つまり弾切れ狙いなんだね」

 ちょっと期待してます。ワクワクテカテカ・・・間違えた。ワクワクドキドキ

 カチッ

 「っ!」「ほらやっぱり。あんだけ至近距離で乱射されて、まだ弾に余裕があったら泣くわ!」「そういう君はどうなんだい?」「マーヴはある程度抑えてた。

 モタコブの総火力は世界一ぃ!」「ロケットは?」総合的火力です。

 「くそっ!」マーヴを放り捨てるオッツダルヴァ。「ねぇどんな気持ちぃ?主兵装のマーヴを撃ち切っちゃってどんな気持ち?」


 「「6歳相手にそれはないぞ(よ)、オービエ」」反省します。


 グローリアが弾丸をばらまく。「ハハッ!ヒットマン一丁なんざ!」

 ビー!ビー!ビー!

 「あれぇ?アラート?」「メメント・モリも限界間近だ。早くケリをつけないと!」「わぁお、人のこと言ってられないぜぇ」ちょっと意識がまろやかになってきた。マカロニサラダくらい。

 トロトロのクリームシチューになる前にケリをつけようか!

 「全速前進や!」「えっ!」OBを点火し、ただでさえ調子の悪いPAがさらに薄くなる。

 なに?頭のネジがぶっ飛んでんじゃないかって?HAHAHA!人の頭にネジなんて付いてるわけないじゃないか!

 「てつざんこー!」「ぐっ!」焦ったオッツダルヴァのQB先を読んでタックルを繰り出す。蒙古○極道でもよかったけど、できれば重二でやりたい。アリャ―マンはもうボロボロだよ!

 「正気かいオービエ!?」「脳内アドレなんとか出血大サービス中だぜヒャッハー!」「正気ではなさそうだな」「鎮静剤を打つべきでしょうか?」「準備はしておこう」二人とも、何の話?

 バリバリバリバリ・・・

 OBでグローリアに抱きついたから、PAが干渉しあって大変なんだぜ!

 ビビビッ!ビビビッ!ビビビッ!

 あと、アラート音も大変なんだぜ!

 「放せ!」「は☆な☆せ!」会話が成立してない気がするけど、別にいっか。

 何秒かして、PAが弾ける。

 「さて、グローリアのPAが吹き飛んだところで俺のターン!」「そちらもでしょうが!」「お、良いツッコミだな。丁度ツッコミ要員が欲しかったとこだ」

 みんなボケてばっかだし。まったく、誰が一番苦労してると思ってんだ!


―――エグザウィル、10階食堂にて

 へっくし!

 「風邪・・・?」「おいおいザンニ。そんな軟弱ではいかんぞ!そうだな、そんな体を鍛えるために私の道場に「何度も言ってるでしょう。お断りします」「ふむ、残念だ」「無念・・・」

 「このやり取りも、もう17回目ですよ・・・そういえばベルリオーズが、オービエを連れてリンクス養成施設に行ってたな。迷惑、かけてないだろうか・・・」

 「不可能・・・」「不吉なことを言わないでくれ、真改。実現しかねないだろう?」

―――

 ヒットマンを向けてくるオッツダルヴァ。これ以上やられたらヤバいかな、と思い、とりあえずモタコブをぶつけて銃口そらす。

 ガンッ!

 「「あっ」」強くぶつけすぎて、どっちも銃身がひしゃげちまった・・・ん、待てよ?

 「ならば!」今度はヒットマンも放り捨て、プラズマキャノンを構えようとするグローリア。おそらく、残弾は1発あるかないかだろう。でも、この騒々しいアラート音を止めるには1発で十分。

 そして、その1発が避けられる状況でもない・・・また、それは『俺が黙っている状況でもない』


 ひしゃげたモーターコブラを、天高く放り投げる。

 「っ、今更そんなことで!」オービエの奇想天外な行動に慣れたオッツダルヴァは、一瞬の後視線をメメント・モリに戻そうとする。

 一瞬で構わない。隙ができるなら。

 メインブースタを全力で爆発させる。左手のマーヴを突き出し、握りしめる。

 狙うは、空を見上げた顎の、さらに下。


 「!?」グローリアが、視線を戻すことはない。異物の挟まった頭部を、下ろすことはできない。

 そのまま、顎下に突っ込んだマーヴを(グローリアのコアを使い)梃子の原理で押し上げる・・・・・


 顎下のへこんだ頭部が、空を舞った。

 「っっっっっ!!」今頃、オッツダルヴァをけっこうな痛みが襲っているころだろう。

 このシュミレータ、一世代前だからなのか、ダメージのフィードバックが弱い。

 俺の絶叫も、3割ほどが痛みで、7割がロケットを破壊された悲しみだ。(ヨヨヨ・・・)

 何はともあれ、オッツダルヴァの動きが止まった。ここでトドメを刺すのもいいが、そこまでする必要はないと思う。

 子供を痛めつけるのも、あんまりいい気分じゃないしね・・・う、嘘じゃないよ!

 マーヴでトレゾアを撃ち抜き、グローリアから残った戦闘能力を奪う。

 「ベルリ、判定は?」「・・・まぁ、オービエの勝ち、ということになるのだろう。それで、君自身は落ち着いたのか?」

 そういえば、変なテンションもいつの間にか終わってる・・・後で音声記録を消しとかないと。

 「シュミレータを終了。オービエ、ルース。オッツダルヴァを引き出すから手伝ってくれ」「あいよ」「わかりました」



 あと、研究者らしき人たちが「げっ、オーバーヒートしてやがる!これは・・・本格的に直さないとダメだな・・・うぅ」とか言ってた。よく聞こえなかったってことにしておこう。

・・・

 こうして、俺とオッツダルヴァの模擬戦は終わりを迎えた。

 今は、ベルリと二人でエグザウィルの中を歩いてる。

 「・・・なぁ、ベルリ」「なんだ?オービエ」「なんで、模擬戦始まったんやっけ?」

 「・・・さぁ、な。子供心というのは、どうにも理解しがたいモノだ、ということだろう」「答えになってないし、意味がさっぱりわからんわ」

 「私からみれば、君も十二分に子供の範疇だ」「勘弁してや・・・あ、乙樽の調子は?」

 「特に異常もなく、元気にやっている。さすがに当日の訓練は休んだようだが・・・問題が一つ」「問題?」


 ベルリオーズが後ろに振り向く。俺もつられて振りかえ「オービエ」「おへぇ」った先に乙樽のドアップフェイスを確認。変な声出た。

 乙樽は俺の首に腕をまわし、宙ぶらりん状態。「危ねぇなオイ」「気にしないでください。

 それよりオービエ、ここでひとつ模擬戦でもや ら な い か」アッーーー!ていうか、だんだん、首が、締まっ「とうっ!」首に捕まった両手を掴み、前方に放り投げる。

 「危ないじゃないですか、オービエ」「そーゆうことは、少しでも危うげなふいんきを出してから言いなさい」乙樽め、空中で2回転捻りをしてから両足で着地しやがった。

 体操選手か!

 「リンクスです」「お前も人の心読むんかい!」「顔に書いてありますよ」えっ、マジ?と顔をペタペタしてみるが、分かるはずもない。

 「ほら、あの部屋に鏡があります」「お、助かるってここ第2シュミレータルームやないかい!」

 どこまでタイミングえぇねん!と言おうと思ったが、そもそもボ-ッと当てもなく歩いてる俺を見つけてここまで連れてきたのはベルリ。とりあえず見つめてみる。

 ジーッ

 プイッ

 目をそらされたので、回り込む。

 ジーッ

 「・・・」「人間、正直が一番やで?ベルリ」「・・・どうしても、と頼まれてな」「子供って甘やかすとすぐ図に乗るから、気ぃつけや」

 「一応give and takeではあった」「何貰ったん?カモ○ギ?ニ○ラン♂♀?」「私の面倒事」「横流ししやがった!DEAD!(畜生!)」

 よく見れば、目から疲れ(?)が取れて、心もち肌のつやも良くなったような・・・「ハッ!つまりそれは、その分俺の目に疲れが溜まりお肌からつやが失われるってことか!?」

 ・・・お肌は別にいいや。


―――エグザウィル、情報管制指令塔

 「・・・むぐっ!」ハンバーガーを一人で黙々と食べていたとあるオペレーターが、喉に饅頭でも詰まらせたような声を出していた。

 「ほほひはははひひゅーはいれふ!」どことも知れず、天井を突き刺すオペレーターさん、26歳独身。お肌のつやが気になり始めたお年頃。














 ※なにぶん久しぶりの投稿なので、途中から文章が異常なことになってると思います。


 ・・・気がつけば、前回の更新から3ヶ月弱。最低限1ヶ月で更新しよう、という目標が完っ全に真っ二つ・・・難産ってレベルじゃないです。

 そして、時間をかけたわりには出来に自信がないとです。gdgdです。ホント、何やってんだろう・・・もう夏休み入りましたし。

 さらに4話のフルヴァージョンを作り直さないといけない現実・・・網膜に、やすにし先生が浮かんできそうです。


 気がつけば、乙樽と模擬戦。気を抜くと自分で作った6歳設定が飛んでいきそうです。口調が・・・

 今回、乙樽には少し辛い決断をしてもらいました。実行にこそ移せていませんが、本人は完全に覚悟を終えており、人として、リンクスとして『甘さ』という殻を突き破りました。

 それを促すベルリの気分は、きっと子を谷に突き落とす獅子のような気分だったと思います。

 ・・・ベルリ父親って、意外と行けそうな気がしてきました。子のために厳しく接することができる親というのは、なかなかいいお父さんだと思います。たぶん。

 後半、オービエのテンションが天元突破。前半との差がすさまじいな・・・あ、作者の好きなラノベは入間人間さんと西尾維新さんです。


 オッツダルヴァ/グローリア


 フレーム:アリシア

 ジェネ:アリーヤ

 FCS:インブルー

 MB:アリーヤ

 BB:アリーヤ

 SB:オルテガ

 OB:ランスタン

 右腕:マーヴ

 左腕:ヒットマン

 右背:無し

 左背:トレゾア

 特徴として積載量をフルチューンしており、SBをケチっていることもあって同機種に比べ挙動が重め。

 マーヴを右腕に置いているのは、憧れであるベルリオーズの真似をしたかったから。出会う前までは左右逆だった、という設定。


 機体名にかなり悩みました。完全オリジナルなうえ、作者の発想力がかなりアレなため、

 『ベルリオーズと同じフランス語で』『アンサング(うたわれない者)と正反対の意味で』『ちょっとカッコいいかな』という浅い思考の末、こうなりました。

 個人的には『グロリアス』のほうがカッコいいんですが。響きが。


 2501様・・・ほんとぉぉに返信が遅くなってしまいました、すいません・・・

         いつもながら、励ましのメールというのは力になります。いえ、実現できていないんですが・・・ともかく、こんなモノでも読んでいただきありがとうございました。


 毎度のこと(懐かしく聞こえてしまう・・・)ですが、誤字・脱字・文法上のミスがあれば、感想のほうでお願いします。


 mono様・・・感想ありがとうございます。

 「トレゾア」ですか・・・トレーサーって、ローマ字読みしてました。アホですね。指摘、ありがとうございます。

 筋肉大旋風様・・・感想ありがとうございます。

 ・・・否定はしないです。頭の中の印象とぴったり合致してしまったみたいで、ご覧のありさまです。パクリじゃないよ!6歳だよ!(殴


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