(前提状況設定)
色々あって平和条約締結後、地核作戦。シェリダンにはキムラスカ兵とアリエッタの魔物を護衛に配備。シェリダン港のほうにリグレット、ヴァンとラルゴが終結。オラクル兵団は精鋭から更にえり抜きの千名前後。
地核作戦前に、ルークが自分の眼帯をとんとんと指で叩いてアーチャーに指示。「ここでやっかいなの(六神将達)を無力化しておけ」
アーチャーは不機嫌そうにルークを見て舌打ち。「ここでかね? 雪山で行えばいいものを、わざわざ襲撃を起させると? やれやれ……何を企んでいるのやら」
ルーク達、一時的にアッシュ一行にパーティーイン。歴史通りに港にてヴァンたち出現。アーチャーしんがり。戦闘的に不安は無いが、点ではなく面での戦闘を考えた時の取り溢しを出さない様にするのが難儀。(面倒くささのイメージは、三国無双の工作兵を通すなミッションの苛っと感をイメージしてみてください)
* *
「……ふむ。ルークの言う通りにするのは気が進まんが……」
致し方なし、とアーチャーが一瞬だけ目を伏せた。
(―――――――――)
アーチャの唇が、微かに動く。それは決して音にならない何かを紡ぎ、世界は何も変わりないのにどうしてか――遥か遠い場所で、ガチンと歯車がかみ合った音が響いた、ように感じられた。
その気配を感じたか否か。オラクル兵団の数人が、見えない何かに弾かれたように一斉に飛び掛る。それを援護する譜術攻撃、さらに遠距離からリグレットの射撃、近接するラルゴの薙ぎ払い。それらを捌いて引いたところにヴァンが詰めていて、どうにか避けきる。避けるついでに剣を振るったのだが、そのような攻撃がヴァンに届くわけがない。逆にアーチャーを狙って刃を伸ばしあわやと言うところだった。さすがはオラクル騎士団総長、と言ったところか。その剣技を目の当たりにし、今まで数度、剣戟を捌きながら何かを呟いていたアーチャーがぼやく。
「羨ましいものだな。私は凡才でね、才能の一欠けらでもこの身に在ればと、かつてどれ程切望したことか」
「なるほど、実践のみで鍛え上げた刃か。道理で無骨で――頑強なわけだ」
「無骨、か。くく、誉め言葉として受け取って置こう」
「一応尋ねておこう。その実力、非常に惜しい。我らが同士になる気は無いか」
「結構だ。手のかかるマスターは一人で十分でね」
「そうか。では……覚悟はいいだろうな?」
「さて」
(―So as I pray,)
譜歌と譜術を操るヴァンとリグレットが、ふと眉をひそめる。音にならない声が紡ぐ旋律。世界は何も変わらないのに、何かが塗り替えられていく嫌な予感。
その予感をはっきりと形付ける、アーチャーの口の端に刻まれる笑み。
「……何に対する覚悟を言っているのやら」
(――“Unlimited Blade Works”)
炎が走る。
赤い弓兵の心象風景が、現実世界を侵食した。
「なん……っ!?」
戦闘中だというのに、歴戦の戦士たちのことごとくが咄嗟に目を瞑っていた。それは本能の動きで、人間である以上誰もが抗えない。すぐに我に帰った者から目を開けるのだが、順次言葉を失う。
見たことのない景色が広がっていた。町並みと海が消えている。建物は全てが形を無くしていた。
世界は赤。空は曇天、雪の代わりに舞う火の粉。歯車がぎちぎちと唸りを上げて回っている。爛れた鉄の臭いと、あたり一面に墓標のように突き立てられた、剣、剣、剣、剣、剣……!
そこは錬鉄の丘であり、廃棄場であり、焼け果てた剣の荒野だった。
「これは……!」
「驚くことは無い。コレは所詮君たちの言うレプリカだ。ことごとくが偽者で、オリジナルを模倣した二番煎じでしかない。……そうだろう? ルークをただの出来損ないだと蔑む貴様らが、コレを怖れる道理がどこにある」
この世界でただ一人、眠る刃達の王は軽い調子で嘯き、双剣を振るう。オラクル兵を斬り捨てた折に付着していた血の雫が赤い大地に弧を描いた。アーチャーが剣を握ったままの片腕で空を指せば、世界に埋まっていた刃の群れが目を覚ます。彼の指揮に従い空へ起き上がり、その切っ先のこと如くを神託の騎士団へと向けた。
この世界は、持って三分。それ以上はルークの体に負荷がかかり過ぎるし、世界の修正を考えればもっと少なくしたほうがいいかもしれない。それでも十分だ。命を賭して新世を願う改革者達へ、鋭い鷹の目が向けられる。
「……死合うとしようか。四肢のうち三つは殺(そ)ぐぞ――精々泣き喚かぬよう自制しろ」
「……リグレット、ラルゴ! 兵を散開させろ、来るぞ!」
刃の弾膜が、世界を――
* * *
「―――――っが、あ、あ、ぐ……が、ァ―――ッ!!」
同刻、タルタロス船内にて。一人の青年が部屋の片隅で絶叫を上げていた。部屋の鍵は閉めている。ブリッジから一番遠い部屋。客室ですらない物置に近い部屋だ。誰も、彼がこんな場所で一人のた打ち回っているなど想像もしていないだろう。ルークは両目をかきむしる。譜眼とそうでないのとの区別はもはやない。ただ人体で最大のフォンスロットを有する眼球という器官自体が悲鳴を上げている。眼球が膨張するように熱を訴え、そしてルークの爪が瞼を裂く。額と瞼の傷は浅くとも血がよく流れる。大量の赤た船床に飛び散った。
「―――――――――っ! ―――ッッッ! ――――――!!」
譜眼だけではない。体中に刻まれた布陣が光を帯びて浮き上がる。それは常の白い光ではなく、赤い光を帯びていた。限界容量異常の第七音素(セブンスフォニム)を取り込み、体の音素バランスを崩すほどの勢いで第七音素が見えないラインを通って流れていくのだ。オーバーロードと言い表すだけでは足りない。発光する譜陣は焼け付くような痛みを伴い、そして実際に皮膚の深皮層を傷めつける。
ルークは体の内側から焼き尽くされるような痛みに苛まれ、悲鳴を上げて暴れる。めちゃくちゃに振り回す腕が船壁に当たるが、壁がダメージを受ける前に限界のルークの体の方が傷ついていた。壁に腕がぶつかる程度の衝撃で、ルークの腕がぱっくりと割れて、赤が一層ルークの体を染め上げる。すでに痛覚すらないのか、彼の狂乱も悲鳴も止まない。
「っぎ、ガ、あ、あ、あ、あ、あああああァァァァァ!!」
こうなることを予想して、剣を身につけていなかったのは道理だろう。もしも傍らに刃などあろうものなら、ルークはこの苦しみから逃れようと己の喉に切っ先をつき立てていたかもしれない。いや、それとも、たとえ剣があったとしても自刃するという発想自体が浮かばなかっただろうか。獣よりも獣らしい咆哮を上げて、ルークはめちゃくちゃに暴れていた。彼が何かに体をぶつけるたび、部屋中に赤い雫が零れ落ちる。
ついに耐え切れずにふらついてしまったのが先か、それとも床じゅうに散った血に滑ってしまったのか。ルークはバランスを崩し床に這い蹲った。ぐるぐると魔獣の唸り声に似た音が彼の喉の奥から零れ、床をかきむしる爪から嫌な音がする。
『ご主人様、どうしたですの? 痛いですの? ご主人様!』
『ルーク!?』
侵入者の存在を知らせようとして異変に気づいたのだろう。扉の向こうで騒ぐ音も、今のルークには届かない。扉を叩く音にも、ついに押し破られても空間に乱入してきた存在にも意識が向かない。彼はただひたすらに自分の内側にのみ意識が向いている。第七音素。第七音素、第七音素、第七音素、第七音素。第七音素が、足りない。
一目でただ事ではないと分かる。ティアは彼の名を厳しい語調で呼び、ルークの肩を掴む。譜陣の熱と、強く握っただけで壊れた彼の体皮細胞の感触を感じて息を呑んだ。思わず手を引き、手のひらに付着したどろりとした感触に呆然とする。すぐに我に帰り顔色を青くしたティアが、ルークへ手を伸ばし治癒譜術をかけようとした。
その第七音素にだけ、ルークが反応する。
瞬き一つの間すらない。今まで蹲っていたルークが、かっと目を見開いたかと思えばティアの片腕を掴み――更には彼女の喉をも握り締めた。ミュウが悲鳴を上げて、驚いたティアもルークを止めようとその腕を掴む。しかし強く握るだけで裂ける彼の皮膚に、咄嗟に手を放してしまう。ますます喉をねじ上げる力は増していき、ティアは声も出せず顔を歪めてルークを見ていた。
その全てを認識することなく、ルークは第七音素を求めて、ティアと言う第七譜術士(セブンスフォニマー)を媒介に今以上の第七音素を集めようとして、
『俺、結構好きだよ』
行動全てが停止する。
脳裏に響く、ルーク自身の声によく似た誰か。誰か? 違う、この声は。
『お前の譜歌が、さ』
“彼”の視線で、“彼”の世界の記憶が再生される。
驚いた表情を浮かべる海色の瞳が、一瞬揺らいだ。伏せられた瞼が微かに震え、俯き加減になったせいで前髪が彼女の表情を遮る。彼女が次に何を言うのか、知っている。想像するなど簡単だ。彼女には散々言われてきて、その度にその言葉に込められた意味は様々だった。震えと一緒に感情を押し殺した声で、小さく、短く。その答えを聞いて、“彼”は。
『……■■■、』
名前を呼んだ。閉じ込めた想いの代わりに、その名を呼んだ。彼女の強がりが壊れてしまわぬようにと、“彼”が笑いかける。呼ばれた彼女の輪郭と目の前の何かの輪郭が被り、ルークの瞳が焦点を結んだ。目の前に居るこれは。今掴んでいる、握っているものは。
――俺は、今、何をしている?
ルークが正気に戻り己の手を引き剥がすのと、第七音その収束が止まるのは丁度同時だった。アーチャーの固有結界の展開が終わったのだろう。流動は止まり、譜陣は光を失い、ルークの身体中から力が抜ける。意識が遠くなり、ルークはティアの方へと倒れかけた。今まで首を絞められていた彼女も一緒に膝から崩れ落ちる。
ティアは咳き込みながら、ルークの顔を覗き込んだ。彼は気を失っている。体中は血まみれで、特に瞼はズタズタだ。ティアは表情を険しくするが、傍らで泣いているチーグルの頭を撫でてどうにか宥め、治癒術を彼にかけていく。
* * *
目を覚ましてまず、ルークはティアの首にある痣に気づいた。感情と言うものを無くしてしまっても、自分がやったことを覚えていれば無感動でいられるはずもない。自分が何をやったかを鮮明に思い返し、眉根が勝手に下がってしまう。勝手に顔の表情筋が動く、程度の感情まではどうにか回復していたようだ。
そんな引け目を抱えた状態のせいか、ティアの追求を逃れることができなかった。ルークは渋々ながら、アーチャーと己の間に第七音素を流動させるラインがあることを大雑把に話す。魔術と言うものをざっくり削った説明なので上手く話せなかったが、概要程度は何とか伝わったらしい。目に見えないまま存在するつながり、と言うものにティアは半信半疑と言ったところだ。
その後、一人でどうにかしようとしていたことに対してこんこんと説教を受けながら、肩を借りて甲板へと動く。途中で、剣戟に似た音が聞こえた。甲板辺りから響くその音に、ティアへ先に行くように促す。はじめは即座に却下された。
しかし、侵入者が六神将ならば回復役が一人でも多いほうがいいこと、一人で歩くのは確かに辛いが、どうしても歩けないというほどでもないこと。自分はゆっくり歩いていくから、さっさと侵入者を片付けてまた戻ってきてくれればいいと、そう主張すればティアも渋々ながら納得したようだった。甲板へと急ごうとする。ルークはその背に声をかけた。
振り返る彼女に、ルークは努めて普段の表情を装う。彼女の首にかけられた宝石とともに、なんとも無機質な小さな箱状のもの。それを指差し、言葉を続ける。
「障気対策用のそれ(封印術(アンチフォンスロット)、貸してくれ」
「? いいけど、どうして」
「シェリダンのじーさんたちから貰った追加装置があってな。それを組みながら歩く。歩くたびに頭痛がするのはたまらないが、ちょっとは気もまぎれるだろ」
「……ルーク、辛いなら」
「いーから。ほら、さっさと寄越せよ」
引く気がない、横柄な態度だ。このままここで言い合いをしていても、時間の浪費にしかならない。そう判断し、ティアは簡易に使えるように作り直された封印術を彼に渡す。そしてくれぐれも無茶をしないように注意し、甲板へと走っていった。その背を見送り、ルークは手の中のものを見る。
小さな、立方体の機器。それに懐から取り出した追加装置をはめ込む。しばらく封印術を眺めていたルークは口元を歪めた。
「……わざわざアーチャーと離れて、固有結界を使わせたんだ。今以外に条件クリアはありえないな」
それはどこか己に言い聞かせているような声だった。ルークは一度だけ目を閉じる。そしてもう一度目を開けたときには―――もう躊躇いも何もない。もとよりそれ以外に道が無いなら、考えるまでもない。
一歩を踏み出すごとに訴える頭痛を無視して、ルークも甲板へと駆けていく。
* * *
「ぐっ?! ……お、ま……レプ、」
ごぼり、とアッシュが血を吐いた。ルークが彼の腹を突いた剣を抜けば、甲板に倒れ付す。広がる緋色の水たまり。
「え……」
呆然とした声は、誰のものであったのか。
「――アッシュ!」
悲鳴のような声。金色の髪の幼馴染が、泣き出しそうな顔をして駆けてくる。治癒術をかけようとしている。それをとめるでもなく、ルークは見ていた。ただ、冷めた目でその景色を見ている。
「ルーク、お前っ……何やってんだよ!」
怒りなのか、苛立ちなのか、困惑なのか。感情の揺れ幅が大きすぎてよく解らない。肩を強く掴まれて、顔を上げれば空色の瞳が睨みつけてくる。その空色を見返しながら、ルークはぶっきらぼうに答えを返す。
「何を? やって? 決まってる。必要だったから、必要なことをしただけだ」
「ルーク!」
クリアすべき条件は二つだった。グレンとアッシュが大爆発を起す前に、本来おこるはずだったアッシュとルーク間で大爆発を起すために必要な手順。
一つ、アッシュからグレンへと流れ込んだ以上の人体構成音素を、ルークが取り込むこと。
二つ、それ以降グレンへと流れ込む余裕がないほど、アッシュとルーク間の同調フォンスロットを開ききること。
そして、二つの中で共通前提条件は一つ。不穏な気配を嗅ぎ取れば妨害するであろうアーチャーと離れること。
前提条件のために、シェリダンの襲撃を起させた。一つ目の条件をクリアするために、わざわざアーチャーに固有結界を使わせた。自分自身の構成音素さえ削る勢いで第七音素を失えば、足りない音素を補完しようと完全同位体同士の見えない絆が勝手に同調フォンスロットを繋ぎやすくしてくれる。しかしそれでも完全でない。
だからこそ使ったのは、回数限定をつけた一時的な封印術装置。障気対策と言うのは建前でしかない。封印術とは、体中のフォンスロットを閉じる対人兵器だ。ルークがシェリダンで依頼していたのは、その効果を瞬間的にでも逆転させるもの。ほんの一時だけ、身体中のフォンスロット全てを解放状態にする。身体中のフォンスロットだ。つまり、同調フォンスロットも自然と開いているということになる。
一時的に繋げた同調フォンスロットを維持するためには、実際に同調フォンスロットを通して莫大な量の音素流出を起したほうがいい。だから、ルークはアッシュを刺したのだ。グレンの記憶で知っている。大爆発の起こる条件が何か、最期の一押しがどのような出来事だったのかと言うことを。
すっと視線を巡らせれば、少し遠くでこちらをじっと見る赤い瞳と目が合った。ジェイドが酷く小さな声で呟く。身体構成音素の流出現象。隣でその言葉を聞いたティアが顔を青ざめさせていた。その様子に、ルークは眉をひそめる。ジェイドにばれるのは致し方ないとして……どうして、ティアがそこで顔色を青ざめさせている?
どうやら自分では気づかぬ内にミスをしていたようだ。ルークは舌打ちをして、問答無用でガイを蹴り飛ばす。即座に後ろへ飛んで距離を置き、つい先刻までシンクが落ちようとしていた甲板のへりにつく。蹴飛ばされて咳き込んでいたガイと、先刻のガイのように甲板の内側に問答無用で蹴飛ばされたシンクへ駆け寄っていたイオンが、同時に声を上げた。
「ルーク!」
「……シンク。お前に会いたがってるやつがケテルブルクにいる。死にたがるのはそいつに会ってからにしてやれ」
言いながら、ルークは封印術に付け加えていた追加装置を外す。これで、普通の封印術と同じ使用方法しかできない。それをティアの足もとへと投げ捨てる。まだロニール雪山とアブソーブゲートがあるのだ。ルークが必要としていた時期はもう終わったのだし、後は建前どおり、吸う障気を少なくする為に彼女が使えばいい。
ちらりとアッシュのほうを確認する。息をしているのを確認してほっとしていると、今までずっと黙っていた声がぽつんと聞こえた。
「あんた、何がしたかったのさ……」
イオンの声によく似ていて、けれど違う。シンクのl声に、ルークは口元を歪める。
「簡単なことだ。あいつに死なれちゃ困る。けど、ここで死にかけてもらわないともっと困る」
だから、刺した。考えてみればこれ以上無く単純明快なことでしかない。そんなルークの返答に、聞いていた仲間たちは絶句している。シンクはなるほど、と頷いたあと、くっと嗤いを浮かべた。
「僕よりイカレてるよ、あんた」
「なんだ? 今更知ったのか」
ルークはシンクの嘲笑に動じることなく、むしろシンクをからかう口調で答えを返す。そして一歩足を後ろに落し、その段になってやっと我に帰ったアニスやガイ、イオン、ティアがルークの名を呼んだ。
グレンを生かすために必要な条件は、もう一つある。それは、誰よりも先にローレライの鍵を手に入れること。鍵だ。剣でもない、宝珠でもない。ローレライの鍵、そのもの。そのためには。
ルークは名前を叫ぶ人たちにじゃあなと軽く手を振り、躊躇いもなく地核へと跳び込む。
「ルークッッッ!!」
絶叫を遠く聞きながら、地核へと沈んでいく。まあ今は驚いても、アーチャー辺りから死にはしないと聞くだろう。いや待てよ、アーチャーが知らぬ存ぜぬで通せば帰ったら怒られるのは必定か。それは嫌だなあとぼんやりと思いながら、落ちて、落ちて、ずっと墜ちて。光が漂い圧迫感が増す世界の中で、ルークはこの世界のどこかに居る誰かに声をかけた。
「ローレライ。ユリアの願いは、俺が叶えてやる」
無音の世界に音がする。
「だから、交換条件だ。ローレライの鍵を、今この場で俺に渡せ」
体が地核に溶けていく。早くローレライを引きずり出さねば自分が先に死んでしまう。分かっているのに、急がなければという気になれない。地核という、地獄に一番近い天国だからだろうか。体中にかかる圧力や負荷はとんでもないのに、周りが光で満ちて暖かいというのは何の皮肉だろう。
「……ローレライ」
赤い光が、星の中心から吹き上がってきた。
『我が半身よ。誠に、そなたがユリアの願いを……私の見た預言を、覆そうと言うのなら―――』
* * *
返信する、余裕が、ないです。でも感想はよんでます。皆さん…ほんとうにすみません。あとイロイロと…ありがとうございます。弓とヴァンのくだりはもっと描写を入れたかったです。で、アッシュを指したのはルークがコンタミで急に出してぐさっと! って描写も入れたかったです。そのほか色々ありますが、もう…むり。しかし今回は描写少ないわ会話分多いわで散々だな。次はアブソーブゲート…? 無理だったらレムの塔へいくかもしれません。整合性? なにそれおいしいの状態です。次は…半年以内には更新できたらいいですね……