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[15296] 車椅子な二人 [ジョジョの奇妙な冒険×リリカルなのは]
Name: Ganta◆963a4144 ID:608809c7
Date: 2010/03/08 18:19
前書き


・この作品は「ジョジョの奇妙な冒険」と、「魔法少女リリカルなのはシリーズ」のクロスオーバー小説です

・オリ設定あります

・ご都合主義あります

・筆者は筆力が皆無です

・あと若干厨二っぽいです

どうか皆さんのご意見・ご感想・激励等をいただけると助かります。

ではでは、どうぞ。

更新履歴

2010/01/12 第一話、第二話修正
2010/01/22 第六話更新
2010/01/24 第三話微修正
2010/01/28 第七話更新
2010/01/30 RHのユーノに対する扱いが「外部使用者」というので第七話微修正。その他、劇場版の設定を(ネタバレにならない限り)使いたいと思います。
2010/02/02 第八話更新
2010/02/03 第九話更新
2010/02/03 第十話更新、とらハ板に移動
2010/02/05 第十一話更新
2010/02/06 第十二話更新
2010/02/20 第十三話更新
2010/02/21 友人に「タイトル何度も書くのはおかしくね?」と言われ微々修正
2010/02/23 第一話、第二話修正
2010/03/08 第十四話更新



[15296] 第一話
Name: Ganta◆963a4144 ID:608809c7
Date: 2010/02/23 00:48
あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
『おれはイタリアで再起不能になって隠れつつとある矢じりを守っていたら
 何故か日本の都市に来ていた』
な… 何を言ってるのか わからねーと思うが、おれも何があったのかわからなかった…




ジョジョの奇妙な冒険×魔法少女リリカルなのはクロスSS
「車椅子な二人」




…状況を整理しよう。
今、私は日本国の「海鳴市」という名の都市に来ているようだ。
日本には何回か来た事があるが、此処にくるのは初めてである。
見たところ相当賑わっている。相当な規模であるようだ。

これはスタンド攻撃か?それとは別の、もっと恐ろしいものかもしれない…。

…とにかく!とにかくだ!俺が今『存在している』のは「日本」!これは僥倖だ!

ここではSPW財団と連絡を取ることもできるし、なにより承太郎の実家、空条家がある!
承太郎自身は海洋学者になって世界中を飛び回っているみたいだが、俺からの連絡があったらすっ飛んで帰ってくれることだろう。長年の友情は、まだ枯れていないはずだ。

それでもって、俺を再起不能まで追い詰めた奴らに「逆襲」してやる。承太郎の無敵のスタンド「スタープラチナ」と俺が長年集めてきた奴らの「情報」、そして「レクイエム」。
この三つがあれば奴ら…パッショーネなんぞ楽勝だ!


うーん…「希望」が!ここ数年全く沸いてこなかった「希望」の念が!今、俺の心を満たしている!再起不能から復活できるかもしれないぐらいに!
よし、まずは早速電話だ。まずSPW財団、次に空条家…なにぃ!?









『電話帳に、SPW財団の名前が無かった』

『というかSPW財団自体が無い』

『急いで空条家に電話したら「承太郎?なにそれおいしいの?」と馬鹿げた答えで返された』

『絶望しつつふと本屋を見たら、「ジョジョの奇妙な冒険」というタイトルの漫画が出ていた』


なんてこった…

最後の一つは別に関係ないが、ほかの三つはヤバイ。
総合して見ると今の俺には「財政的基盤」と「頼れる友人」がいない…最悪の状況だ

これじゃイタリアの辺鄙な村で隠れ住んでいるのと、実質的には同じじゃないか!
さっき感じた希望が残らず吹き飛び、代わりに深く暗い「絶望」が俺の心を満たしていく。

「何とか」しなければ…「何とか」…



と悩んでいる俺の目に、これからの「運命」を変える、とある光景が映った。

「おい、そこの車椅子の嬢ちゃん!今ワシに泥引っ掛けたろ!」

「す、すみません…」

「このズボン、昨日二万で仕入れたんだぞ!弁償してもらおうか、ああ!?」

「そーだ、そーだ!」

「兄貴に逆らうと痛い目にあうぞ、ゴラァ!」

何のことは無い。自分と同じく車椅子の少女が、チンピラたちに絡まれている場面であった。

チンピラのほうは三人組みで、どいつも典型的な小悪党である。
もちろん、放っておくわけには行かない。しかし、俺も車椅子。
「スタンド」を使えばまだしも、このままでは殴られに行くようなものだ。
我ながら非力なもので、今の俺では「スタンド」を一瞬しか出せない。機会を図らねばならない。
…しかし、この後チンピラが放った一言が、俺をさも承太郎みたいに「プッツン」させてしまった。

「なあ、兄貴!この嬢ちゃん結構いい面してますぜ!」

「その筋に行けば結構高く売れるかも…」

「ヒヒヒ、そうだな…」

「そ、それだけは堪忍してぇな…堪忍…」

「そうだな、売るのは勿体ねえ。俺たちでやるか、おい、服脱がすぞ」

「い、いややぁ、堪忍してぇ」

「流石は兄貴、おれたちにできない事を平然と!そこにシビれる!あこがれ 「シルバー・チャリオッツ!!」 ぶべらぁ!」

…いけない。勢いに任せて突進してしまった。悪い癖だ。
突っ込ませた「シルバー・チャリオッツ」から、肉を斬る確かな手応えを感じる。久しぶりの感覚だ。
少女に手を掛ける腕の肩口を斬った。真っ二つ。もう二度とその腕は元に戻らないであろう。

「お、おい、てめえ、どうやって俺の子分を…」

「でもこいつ、嬢ちゃんと一緒の車椅子だぜ!兄貴、こっちにはハジキがある!楽勝だぜ!」

「へへ、そうだな・・・おいてめえ、覚悟しろよ!」

チンピラたちが、俺に向かって不敵に微笑んでくる。

まずい。今「スタンド」は、出せないぞ!このままではやられる!少々恥ずかしいが、このまま逃げつつチャンスを待つか?わが分身「シルバー・チャリオッツ」よ――

フッ、全く「自分の分身」に話しかけるとは、俺も耄碌したか…いる?「シルバー・チャリオッツ」が?今も?
――チンピラどもめ、覚悟していろよ?

「おいどうした!もしかして逃げるんじゃあねーだろうな、あぁん?」

まさか。思い知るがいい、見えない「スタンド」の恐怖!

「そのつもりはない!逆に貴様らへ『宣言』してやろう!これから貴様らを『一歩も動かずに』切り刻んでやると!」

「なんだとぉ?トチ狂ったのと違うか、こいつぅ」

「かまわねえ、撃ってやれ!」

「あいさー!」

迫り来る弾丸。しかし、俺は冷静に「シルバー・チャリオッツ」を射線上に移動させ、

「ホラホラホラァー!!」

弾丸を切り刻む!

「う、撃ったはずなのに当たってない!」

「どうした、もう終わりか?」

「うう、畜生ー!」

もう一発撃つ気か、しかも、銃口は少女のほうを向いている。そうはさせない!

まずは、銃を持っている奴をブッタ切る!

「ぎゃあああああ!!」
「う、腕が!どうしたんだ、おい!」


残った一人の顔が恐怖と絶望で彩られる。しかし悪党に情けはいらない!

思い知るのだな。今此処にいる女の子が、貴様らに対し感じていた「圧倒的強者」に襲われる気持ちを!

「どうだ?「被害者になる」感想は」
「糞っ!こんなことしてただで済むと」

これならどうだ!

「ぎゃああああああああああああああああ!!!!」

もだえ苦しむチンピラ。まあ、こんなか弱い女の子に手を出したのがお前らの罪だ。
せめてその痛みをもって償うがいい。
…む、女の子が私を…いや、「スタンド」を見ている…もしかして!


「お、おじさん、その「人影」…一体なんなん 「貴様新手のスタンド使いかー!」 はうぅ!?」








…これが「ジャン・ピエール=ポルナレフ」と「八神はやて」の出会い、その一幕である。

これから彼らは、迫り来る事件にどう、立ち向かってくるのだろうか!


… To Be Continued !!







後書き

またも激情に任せ書いてしまいました。
もし続けるのであったら、今回は「ジョジョっぽい」表現を目指して行きたいです。

ではでは。








[15296] 第二話
Name: Ganta◆963a4144 ID:608809c7
Date: 2010/02/23 22:13
「…『スタンド』ですか」

「そうだ。一種の超能力でな。像が能力者の傍に立つのを意味して、こう呼ばれる。 尚、スタンドを見ることができるのはスタンド使いだけだ」

「ってことは私…」

「そのとうり、君も『スタンド』使いだ。私の『シルバー・チャリオッツ』が見えるようだからな」


「八神はやて」。幼い頃から足が不自由で、私と同じ車椅子生活を送っている少女。…彼女には「スタンド」が見えている。
前述の「スタンドを見ることができるのはスタンド使いだけ」というルールにのっとって考えると、彼女も「スタンド使い」だということになる。

まさかこんなに早く、「同類」と出会えるとは…
やはり、スタンド使い同士はどこかで引かれあうものがあるのだろうか。


「でも私、超能力なんて持ってませんし、『スタンド』なんて影も形も」

「まだスタンドが目覚めていないのかもしれない。早急にSPW財団へ報告したいところだが…その…」

「何か、都合悪いことでもあるんですか」

「それがな…」

はやてに今の自分の現状を話す。

宿無しで一文無し、頼れる組織や友人もいない。いきなり此処に来たからとはいえ、情けないものだ。

若い頃ならば腕一本で何とかできたかもしれないが、今は違う。両足と片目を失っている俺を雇う所など無い。

なんということだ。と改めて実感した。

「なるほどなぁ…ほな、私のところに来まへん?ポルナレフさん」

…っ!今言ったように、私は戸籍も無い穀潰しだぞ?君の役に、立てるとも思えない。

「ええんです。お金は問題ありまへんし、家事手伝ってくれれば助かります」

「だが、しかし…だめだ。私は…」

「そんなら、せめて一泊だけでも泊まってくださいな。命の恩人になんかお礼せんと、気が済みませんから」

「待て!何か厄介な事に巻き込まれるかも…」

「関係あらへん!ささ、早く家に来てくださいな」

やれやれ。強引な娘だ。



そういう訳で、はやての家に連れ込まれることになった。
決して贅沢ではないが、いい家だ。

いい家だが、しかし…いやそんなことは…だが、万が一ということもある。確認しておくとしよう。

「あー、はやて。すまないがトイレは…」

「入ってからすぐ左の部屋です。バリアフリーなってますから、車椅子でも一人で大丈夫です」

「そうか、では早速」

入ってすぐトイレの型番確認。

…T○T○か、良かった。日本製は信用できるからな。

イタリアにいた頃も、トイレ運は最悪だった。まともに排泄できないところが大多数であり、なおかつ車椅子だから余計に手間が掛かる。
此処に来てようやく運が回ってきたということか。

ジョースター・エジプトツアー一行に加わってからの苦節12年、長かったな。思わず涙が出てしまっている。


それもそうだ。このジャン=ピエール・ポルナレフが、ようやっとトイレのトラブルから「脱却」出来たのだから。






と感動してから数十分。俺ははやてと共に食卓についていた。

ただいま午後6時。はやてにしては早めの夕食だったらしいが、俺のすきっ腹に配慮してもらいこの時間になった。

久々に食べる日本料理はまさしく「最高」と言って良い出来だった。
…これはマグロの刺身、か。
承太郎の大学合格記念を祝った時を思い出す。
あの絵に描いたような「不良」が大学に入るだなんて、と驚いてばかりだったな。

「えと…おいしいですか?ポルナレフさん外国人ですから、口に合うかどうか」

「ぴったりさ。もし合わなくても、君のような美人が作ってくれたんだ。こっちで口に『合わせる』よ」

「び、美人だなんて、そんな…もう、冗談が上手いなぁ、ポルナレフさんは」

にんまりはにかむはやて。いい顔だ。初めて会った時の暗い雰囲気が無くなっている。

あの時の顔は「9才の女の子」にしては大人びていた。今みたいな明るい顔のほうがはやてには似合っている。

「でも、ほんまに一泊だけで十分ですか?せめてもう一日」

「だめだ。俺の境遇については話したろ」

「イタリアのギャングに追われてる、でしたっけ」

「その他にも、色々な連中に目を付けられている。『これ』を守るために色々無茶をしたからな」

「矢」を取り出して説明する。この矢は「スタンド」能力を引き出すものであり、またスタンドのその「先」にある能力の鍵であることを。

「だから狙われる、と」

「ああ。君みたいな子に、迷惑はかけたくない」

「迷惑なんかじゃありまへん!ポルナレフさんが離れるよりはずっと…」

「はやて、頼むからこれ以上首を突っ込むな。下手したら、死ぬぞ」

本気の警告。彼女を戦いに巻き込むわけにはいかない。
しかし、その後はやてが言った言葉は、私の想像を超えていた。

「それでも…それでも!一人で暮らすよりは、そっちの方が幸せなんや!」

「一人」!?今、「一人」と言ったのか!?

「ずっと前に、お父さんも、お母さんも死んでしもた。それからずっと、一人っきりや」

そんなことがあったのか…

「それでな、やっと、やっと一緒に暮らせる人を見つけたと思ったのに。なのに、なんでまた一人っきりになんなきゃいかんの!?」
「はやて!」

「もう一人っきりは嫌なんや。ポルナレフさん、私は、私は!」

「落ち着け、はやて。ほおら、泣き止むんだ、一緒にいるから」

「ポルナレフさん…」

…事情は、だいたい解った。私は、はやての力になろう。泣いている女の子の力になれない男には、なりたくないからな。

「『一緒にいる』って、ホントですか…」

「ああ、本当だ。私の力が及ぶ限りの事は、手伝おう」

「良かった…。私、これからは一人っきりやない。誰かと一緒。…あかん、また涙が…」

「そうだ、いっぱい泣くと良い。そして、笑うんだ。私も、辛い事があったらそうしたよ」

――たとえば、「かけがいの無い友を失った時」にな。

――そうだろう?我が友花京院、イギー、そしてアヴドゥルよ。


私の前に精一杯手を伸ばしたはやてを、抱き抱えてやる。
間近で見たはやての顔は泣きじゃくっていて、それでいてどこか笑っているように見えた。




… To Be Continued !!


後書き

続いてしまいました。後悔は今からします。



[15296] 第三話
Name: Ganta◆963a4144 ID:608809c7
Date: 2010/02/21 22:36
はやてと暮らすようになってから三週間。私もやっとこの町に慣れてきた。
平和な日常と綺麗な町並み、そしてまともなトイレ。今まで自分がいかに劣悪な環境で暮らしてきたかが解る。

はやてとの生活はいたって平和なものである。少し退屈なくらいだ。
まあ、私の生涯を振り返ると、こんな「日常」がほとんど無いからな。
10年間修行したり妹の仇や吸血鬼を倒しに行ったり、それが終わったらすぐに「弓と矢」を探したり…正に「非日常」の連続である。

だから、こういう「日常」は私にとってはかなり貴重なのではないか、と思う。
そう、今は「スタンド」も「パッショーネ」も「矢」も忘れて、「日常」を謳歌するべきなのだろう。


「ポルナレフさん、買出しよろしゅー頼みます」
「任せてくれ」

はやてに買う物が書かれたメモ用紙を渡される。…ふむ、これはまた量が多いな。どうしたんだ?

「今日セールやってる言いますから、色々買っておこうかと」

そうか、では、行ってくる。









…さて、スーパーはこれで終わり、と。
いつも、頼まれる物は大体近所のスーパーで揃うのだが、今日はそれ以外の物が入っていた。此処に書き出してみよう。

:翠屋のケーキ×2(私のはモンブラン、ポルナレフさんのはお好きにどうぞ)

翠屋?……地図が書いてあるな。この辺りに在るのか。



此処だな。喫茶店か、意外と洒落ているじゃないか。
中に入る。女子高生やらカップルやらで一杯だ。……何か自分が場違いのような気がしてきた。モンブラン注文して早く帰ろう。

「お先にご注文の方お伺いしまーす」

元気のいい声が私の元に届く。……おや、この店員はやてと同じぐらいの年頃だぞ。
カウンターの女性とどこか顔つきが似ているな。母親のお手伝い、といった所か。

「それではモンブランを…二つ、持ち帰りだ」
「モンブラン二つ、お持ち帰りですね!カウンターで清算いたしますので、しばらくお待ちください」

やけに手馴れているな。はやてもそうだが、この町の子供はまるで子供っぽくない。
街中で泣いている子なんて見たこともないし、スーパーでよく聞く「これ買って」なども聞かない。……少し気味が悪いくらいだ。
私が子供の時なんて、生まれもっていた「スタンド」で悪戯三昧だった。えらい違い…!?

なんだ、今の「感じ」は!

まるで「スタンド使い」に会った時みたいな…まさか!

私の背後に「シルバー・チャリオッツ」を出す。気づいたら、彼女は「スタンド使い」だ。

「…!?」

気付いた!やはり彼女も「スタンド使い」か!
しかしスタンドが出てこない。隠しているのか、はやてと同じようなタイプなのか?
…おっと、もうすぐカウンターだな。「スタンド」絡みで他の一般人に迷惑をかけたくない。揺さぶりはここまで、かな。









「ただいま。帰ったぞ」
「おかえりなさーい。夕飯できてますよ」

このやり取りにも慣れてきた。最初は少し違和感があったが、自分以外の人が帰りを待ってくれるというのはやはり良い。
一度はやてに「何か夫婦みたいやさかい、ちと面白いな」とか言われたこともある。もしそうだとしたら、これほど釣り合わない夫婦もあるまい。

「ケーキ、買って来たぞ。モンブランでよかったな」
「ありがとー、ポルナレフさん。翠屋のケーキ、大好きなんよ」
「喜んでくれて嬉しい。そうだ、ケーキを買ったときにな…」

はやてに翠屋で出会った「スタンド使い」のことを話す。

「ほへー。スタンド使いって、珍しいもんじゃあないんですね」
「そんなことは無いさ。ただの偶然だ」
「でも、なんか親近感感じます、私と同い年ぐらいやなんて」

そうだ、今度翠屋にいくときは、はやても連れて行くか。年が同じくらいで「スタンド使い」同士、きっと仲良くなれることだろう。

「今日はカレーです。自信作やさかい、どうぞ」

ああ、では、いただこうかな。
















…その日の深夜。と或る二人の少女が、同時刻に発した言葉。

「何か、へんな夢見た…」
「何か、へんな夢やな…」

彼らの運命は、此処からどう動いていくのだろうか!
… to be continued !!


後書き

まさか投稿バグ引っかかってるとは。修正しておきます。









[15296] 第四話
Name: Ganta◆963a4144 ID:608809c7
Date: 2010/02/21 22:39
…奇妙な夢を見ました。
男の子が、なんだかよくわからない怪物と戦う夢。夢のはずなのに妙な『リアリティ』があって、とても怖かった。
最後には男の子が負けて、フェレットみたいな姿になっていたっけ。
ほんと、不思議な夢やったなぁ。




「はやて、朝だぞ。起きてるか?」

ん…あ、ポルナレフさん。おはようございます。

「もう8時だぞ。どうした、夜更かしでもしたのか」

ええと、そんなことじゃないというかなんというか。とりあえず、ご飯作らないと。

「飯なら私が作った。たまには腕を振るわせてくれ」
「ええっ!ポルナレフさんが?」
「心配するな。自炊も出来ないようでは、隠遁生活など送れないよ」

ポルナレフさんの料理か、楽しみやなー。どんな味なんやろか。






私、八神はやては、本来なら小学三年生として学校に行っているはずなんやけど…足が不自由なんで、家にこもりっきりな、そういう女の子。
でもでも、今の生活もそんなに苦じゃあないんやよ。料理は自分で作れるし、好きなだけゲームできるし、…それに、ポルナレフさんにも出会えた。

ポルナレフさんは、格好よくて強くて私と同じ車椅子で、厳しそうやけどほんとはとっても優しくて、それでいて少し抜けているところもあって。…とっても、凄い人。
もし、ポルナレフさんにあの時出会えなかったら、今の私はどうなっていたんやろか。想像つかへんなぁ…。

とまあそんな人と今、同居しているわけで。この夢のことも、相談してみることにしました。

「なるほど。…もしかしたらそれが君の『スタンド能力』かもしれない」
「『夢を見る能力』ですか。役に立つか立たないか、微妙な能力やなー」
「『夢』の前に『予知』の二文字が付いたら、果たしてどうかな」

『予知』と『夢』、合わせて『予知夢』…ってそれ、凄くないですか!?

「まあな。俺が知っているスタンド使いの中にも、それと似た能力を持つ人間がいた。最も直接会ったわけではないが」
「うわー、私もついに『スタンド使い』の仲間入りですかぁ」
「そうなる。まだ『像』は出ていないようだが、使っているうちに出てくるだろう」

…スタンド。ポルナレフさんの「シルバー・チャリオッツ」を見てから、ずっと憧れてた物。
「素質がある」言われてもう何日も経っているさかい、余計に楽しみやな。





「あー、はやて、喜びの『絶頂』に浸っている所すまないが、私の料理の感想を…」
「おいしいですおいしいです。でポルナレフさん、スタンドの名前どうしましょう」
「…やれやれ」







それからも「スタンド」の話で盛り上がっていたら、いつの間にかお昼に。
今日は外食しようということで、一路「翠屋」まで行って来ました。

昨日ポルナレフさんが話したことによると、此処にも「スタンド」が見える人がいるらしいです。しかも私と同じくらいの年頃の。
あってお話がしたいなぁ。その人の「スタンド能力」は一体どんなになるんやろか。

「はやて、期待に水を差すようだが今日は平日だ。つまり彼女は今学校に…」
「もー、つまらんこと言わんといて!」

あーあ、なんだかしょんぼりや。まあええか、また来ればいいし。


「いらっしゃいませ、お二人様ですね」
「ああ」
「お席にご案内いたします、どうぞ」

茶髪サイドポニーのお姉さんと、がっしりしたお兄さんが案内してくれました。
私たちが車椅子なのに配慮して、椅子を取ってくれたりもしました。サービスええなぁ、翠屋。

「メニューを選ぶんだが、お勧めとかあるのか?」
「えーと、此処に来るの初めてさかい、分かりません」
「おい、はやて、この店に来た事が無いのか」
「ありません。ケーキは石田先生から貰ってました。此処、一人で来るには遠いですし」
「なるほどな、じゃあ、何にするのか?」
「この『翠屋ランチセット』で。ポルナレフさんは」
「同じものでいい」





メニューが届いて、お待ちかねの昼食タイム。
…うん、流石翠屋。凄くおいしい。ポルナレフさん、どうです 「ブラボー! おお…ブラボー!!」 か…えーと、うん、聞いてないことにしよか。
でもほんとおいしいなー。このハンバーグなんて最高や。一喫茶店が出すランチセットのレベルじゃあない。 …すごい喫茶店だ。

「ご馳走様」
「ごちそうさま」
「さて、そろそろ帰ろうか」
「ポルナレフさん、帰るときにケーキ買わないと」
「そうだな…何にするか?」









大量のケーキが詰まった紙袋を抱えながら帰る途中。

『誰か…お願い、助けて…』

この「声」は…あの時の!

「おい、どうしたんだはやて!?」

ポルナレフさんが止めるのも無視して、車椅子を走らせる。何か得体の知れない感情が、私を突き動かしているような気がした。
たどり着いたのは、森の中。もう少しで、もう少しで「声」の主に会える。そう直感した。

「なのは!?」
「なのはちゃん!?」

微かに、私以外の誰かを呼ぶ声がする。「なのは」?もしかして、その人は…








「声」の元であろう場所にたどり着く。そこには…あの「翠屋のお姉さん」と同じ顔つきの、女の子がいた。









… to be continued !!









後書き

執筆時間が取れた!という訳で第四話UPします。
ここから無印編に突入です。

ではでは。




[15296] 第五話
Name: Ganta◆963a4144 ID:608809c7
Date: 2010/02/21 22:39
突然走り出したはやてを追って、たどり着いたのは鬱蒼とした森の中。

はやてに何が起こったかは知らないが、一瞬見えた表情には何か鬼気迫るような物があった。
もしかしてこの行動は、はやての「スタンド能力」に関係しているのか?
関係しているとしたら、一体はやては何を「体験」したのだろうか?
わからない事ばかりだ。

はやての車椅子がつけた車輪の跡だけを頼りにして追跡する。森に深く入り込んだようで、太陽の光が見えなくなっていく。
そういえば、もうそろそろ日が傾いてくる頃だな。道に迷ったら大変だ、早めに見つけなければ…。

「なのは!何処に居るの!?」
「ねえ、アリサちゃん。どうしたんだろう、なのはちゃんは?」
「そんな事知らないわよ!」

別の獣道から、突然制服を着た二人の女の子が乱入してきた。一人は金髪、もう一人は紫髪。どちらも年ははやてと同じぐらいか?
彼女たちもなにやら急いでいるようだ。しかも、はやてが行った道を辿っている。
…まさか彼女たちも「スタンド使い」?昨日会ったあの「翠屋の女の子」と何か関係はあるのか?


そう考えながら進んでいるうちに、ついにはやての所まで辿りついた。
はやては呆然としながら止まっていて、その前には傷ついている小動物がいる。そして向かい合うように立っているのが…「翠屋の女の子」!?何故此処に!

「なのは!」
「なのはちゃん!」

私の前に居た女の子達が「翠屋の女の子」の元に駆け寄る。
当然私もはやての傍に着く。


「う、嘘……なんでここに…」

「翠屋の女の子」が私に気付いて…おい、何故「悪魔が来た」様な顔をしているんだ?彼女にはただ「スタンド」を見せただけだぞ?
…とりあえず、警戒を解かねば。

「…あー、勘違いしているようだが私は敵ではなく」
「Shut up!あんた、なのはに何をしたの!」

金髪の女の子が、「翠屋の女の子」――なのはというらしい――をかばいながら罵声を浴びせてきた。
あまりにきつい口調だったので少し頭に血が上ったが、落ち着いて説得に掛かる。

「君も少し勘違いをしているようだ、私は彼女に対して危険な行為は何も…」
「嘘をつくんじゃないの!なのはの表情でバレバレよ!」
「なのはちゃんは、何の理由もなしにあんなに怖がったりはしません!」
「ええ!すずかの言うとおりよ!きっと、今日なのはが元気なかったのもあいつのせい!さあ、何をやったのかとっとと吐きなさい!」

どんどん変なレッテルを貼られている。このままでは不味い。

「違う!ポルナレフさんはそういうことする人やあらへん!」

ああ、ありがとうはやて、お前が天使に見えるよ。

「じゃあ何でなのはが怖がってるの!」
「そ、それは…きっとそっちが勘違いしてるんよ!何かの誤解やて!」
「そんな事なーい!そいつから悪人のにおいがプンプンするわよ!」
「な、なに失礼なこと言うてんの、私の命の恩人に!」
「命の恩人ですってぇぇ~、眉唾ねぇ。どうせ後であんなことやこんなことするために助けたんでしょ、見え見えよ!」
「あ、あんなことやこんなことするため!?…言うに事欠いて、な、何を言うだァー!許さん!」
「よかろう、やってみろ…このアリサ・バニングスに対して!」
「ハッタリぬかすなやーッ!金持ちのアマちゃん!」


なんか混沌としてきたな…ていうか二人ともどこか違うような気がする。
…おや、なのはが私の隣に。何か訴えようとしている。

「えと、ポルナレフさん、ですよね…どうしましょうか。アリサちゃんとあの子」
「なのは、というんだったな…何とかして止めないといけない。このままじゃ殴り合いだ」
「殴り合いって、あの子車椅子ですよ!?」
「売られた喧嘩は買う。はやてはそういう子だからな」

相談している間にも、二人はどんどんヒートアップしていく。

「いい…こういう場合!かたきを討つ場合というのはいまからいうようなセリフをはいてたたかうの……『我が名はアリサ・バニングス!我が友なのはの心のやすらぎのために………この私が貴様を絶望の淵へブチ込んでやる』八神はやて………こう言って決めるのよ」
「『アリサ・バニングスをぶちのめす』『ポルナレフさんの名誉も守る』「両方」やんなくっちゃあならないってのがつらいところやな。覚悟はいいか?あたしはできてる」

…今にもお互いから殴りかかりそうな勢いだ。

「のんびり相談している暇は無いな。急ごう」
「は、はい!」







「…てことは、私たちがやってたのは唯の誤解だった、て訳!?」
「う、うん、そうなるみたい・・・だからアリサちゃん、落ち着いて」


「なんだ。あの子が昨日話してた女の子だったんですか。なら納得や」
「なんでそうなる」
「だって、いきなり騎士の像が現れるんですよ。誰だって驚くと思わないんですか?」

…確かに。考えてみるとそうだった。

「ポルナレフさん…」

解った、解ったからそんなに呆れないでくれ。凄い傷つく。








「…えーと、終わりましたか?」
「ああ、終わったよ」

紫髪の女の子…すずかちゃんが話しかけてくる。その手には…

「じゃあこの子、どうします?息絶え絶えですけど」

死に掛けのフェレットがいた。









… to be continued !!








後書き

なんか真ん中らへんでハジケた。正直後悔している。





[15296] 第六話
Name: Ganta◆963a4144 ID:608809c7
Date: 2010/02/21 22:39
あの、恐ろしく奇妙な遭遇劇の後。

まず、なのはちゃん達三人組は揃って塾に急ぎ、私たちはこの出来事のきっかけになった(と思われる)フェレットを動物病院に連れて行くことになった。
そしてその後、塾が終わった後に待ち合わせをして、フェレットの飼い主を決めるのだ。
勿論、はやての携帯の中には、なのはちゃんの電話番号が入れてある。世の中も便利になったものだ。

はやては、「自分がフェレット君の飼い主になる」と躍起である。
私も特に反対はしていない。はやてほどしっかりしているならば世話などは安心して任せられるし、何よりはやてのスタンド能力を引き出したかもしれないフェレットだから、もしかしたら「スタンド使い」かもしれない。興味がある。

そして、フェレットが身に着けていた赤い宝玉…これは、今私の手の中にある。唯のビー玉のようにも見えるが、フェレットが持ち運ぶには分不相応の大きさだ。
何か意味のあるものだ。そう私は確信していた。

「いや~、楽しみですね、ペットが我が家に来るのは」
「はやて、言っておくが、まだ私たちの所に来るわけじゃあないんだぞ」
「だーいじょうぶですって!アリサちゃんとすずかちゃんは別のペット飼ってる言いますし、なのはちゃんは親御さん飲食業やっててペットはご法度。となると消去法で私の家しか候補ありませんよ!」
「…詳しいな。なのはちゃんのはともかく、他は何処で調べたんだ」
「塾の休み時間。携帯で連絡取り合ってたんです。みんなそれでいいって言ってましたよ」

…ライバルにはすでに根回し済みか。手が早い。だいたい、これじゃあ私たちの家で飼うこと確定だ。相談も何もありはしないな。

「ちゃんと自分で世話するんだぞ、いいか」
「はーい」











「…あ、ポルナレフさん。なのはちゃん達塾終わったみたいですよ」
「そうか。集合場所は?」
「塾の近くの公園、ですって」
「ようし。行くぞ」


やってきたのは小さな公園。
そこにいた三人は、私を見て三者三様の顔つきをしていた。

まず高町なのは。一応笑顔なのだが…ほほが引きつっている。まだ喫茶店の一件を引きずっているようだ。
いきなり出したとはいえ、「シルバー・チャリオッツ」はそこまで怖い人相じゃあないのだが…
次に月村すずか。…なんというか、ごく普通の表情である。まあ、そこまで深いかかわりもないしな。
最後にアリサ・バニングス。とてつもなく警戒されている。「近くに来たら警察呼ぶぞこのド変態」的なオーラを身にまとっている。私が何をした。

一応みんな誤解は解けている…らしいが、この態度を見るとまだ「信頼」を勝ち取るには至ってないのだろう。
…と思ったら。

「あ、みんなこんにちは」
「こんにちは、はやてちゃん。ほら、アリサちゃんも」
すずかがアリサを押し立てている。アリサは少し縮こまりながらはやてに言う。
「はやて…その、あの時はごめん、疑っちゃって」
「いいんやよアリサちゃん。ホント偶然やったし、お互い誤解は解けたんだし」
「…そうね。改めて、よろしく」
「私たちからも、改めて。よろしくね、はやてちゃん」
「なのはちゃん、すずかちゃん…みんな、よろしゅうな」

私だけ蚊帳の外、である。
みんな同年代というのもあるのだろうが、仲良くなるのが早すぎだろう、この四人。

…ああそうか、メールでやり取りしてたからか。それにしても早すぎる気がしないでもないが。

「とまあ、そんなわけで。ポルナレフさん、『スタンド』以下諸々の説明、お願いしますわ」

私を見るとたんに、元の表情に戻る三人。…正直、かなり落ち込む。
まあいい。いまだ解かれていないであろう誤解を解くためにも、話さなければな。

















「スタンド」に関する事、私とはやての事情等を話していると、なのはの顔は次第に緩んでいったのだが、アリサのそれは尚更きつくなってきた。
仕方のないことだ。なのはちゃんとは違い、アリサちゃんにはスタンドが見えない。見えないものを「在る」と説明されても訳が解らないというものだ。

「なのは!ほんとに『スタンド』ってのが見えるの?嘘じゃあないのね?」
「ほんとだよアリサちゃん、だから肩つかんで揺するの止めてくれないかな」
「む~…まあいいわ。ポルナレフとか言ったわね。あんたの言葉、信じてあげる」

…良かった。最後の砦、アリサちゃんにも何とか信じてもらえた。

「えーと、ポルナレフさん。フェレットはそちらで飼ってもらうことで本当にいいですか?」

すずかちゃんが話しかけてくる。勿論答えはYES!YES!YES!だ。

「やったー!これで家族が三人目や」

これにはやては大喜びだ。…だがなはやて、「三人目」という表現は少しおかしいと思うぞ。



あらかた相談がまとまり、そろそろお開きと相成った頃に、なのはちゃんが問いかけてきた。
「えーと、ポルナレフさん。とりあえず『スタンド』に関しては良く解りましたけど、私のスタンドって一体どういう物なんですか」
「もしかして、私と同じタイプなんやろか。ほら、なのはちゃんも私と同じように「声」が聞こえたんやろ?」

なのはちゃんの質問にはやてはこう返したが、一概にそうとは言い切れない。
スタンド能力のバリエーションはまさしく無限大だ。能力の一部が被っているだけで、実質的には全く違うものかもしれない。
ともかく、なのはちゃんには自分が「スタンド使い」だと自覚してもらいたい。無意識での「スタンド」発現ほど怖いものは無いからな。何が起こるかわかったもんじゃない。















「いやあ、動物病院から引き取るのが楽しみですよ。名前、なんにしよか」

家に帰って夕飯を作っている時も、はやての話題はフェレットの事ばかりだ。そんなに良いものなんだろうか、ペットを飼うのは。
出来た料理も若干作りこみが足りなかったし、今のはやてはどこか浮ついている。
まあ、いい傾向なのだろう。はやて自身から聞いたことなのだが、私に会うまでのはやてはあまり笑わなかったという。
それがどうだ、このいかにも「幸せ」といった顔は。これだけでも、私が此処に来た意味があるのかもしれない。

…む?妙だなこれは。何か凶暴な物の気配がする。こんな静かな夜に?何故だ?

「…!」

はやてがお玉を取り落とす。…どうやらかなりヤバイらしいな、これは。

「ポルナレフさん!フェレット君が、フェレット君が…」

何を「見た」のだろうか、青ざめた顔のはやて。安心させるために、優しく話しかける。

「大丈夫だはやて、フェレットもお前も私が守る。だから、何を見たか話してくれ」
「ええと、まあるい毛むくじゃらの怪物にフェレット君が追われてて、フェレット君は誰かを呼んでて」


早く助けてあげて、というはやての言葉を背に、私は飛び出した。





… To Be Continued !!




あとがき

超遅筆でごめんなさい。これからも超不定期更新になるかもしれません(一応週一が目標ですが)。



[15296] 第七話
Name: Ganta◆963a4144 ID:58f11684
Date: 2010/02/21 22:39
そんなに平凡ではない「スタンド使い」である私、ジャン・ピエール・ポルナレフに訪れた小さな事件。

出会ったのは優しい少女。手に入れたのは、守るべき『日常』。
平和な時間は、戦いに疲れていた私を癒す。
……しかし、世の中は、そう簡単にはいかないようで。

目覚めるはやての「力」
小動物をめぐっての奇妙な遭遇劇
そして、「まあるい毛むくじゃらの怪物」


……今、私は再び戦いの「非日常」に戻る。









さて。勢いきって家を飛び出したはいいが、「まあるい毛むくじゃらの怪物」とやらは一体何処にいるのだろうか。
此処までやっておいて何もありませんでした、では締りがつかない。
……む?腰のポケットの辺りに何か違和感が。中にあるものは確か、あの赤い宝玉。関係があるのだろうか?

『……どうか、私の声が聞こえるのならば、答えてください。どうか……』

この声は!?耳で直接聞くのではなく、心に直接響いてくる。宝玉からの物か?
応答できるのか?やってみよう。

『赤い宝玉だな?私はジャン・ピエール・ポルナレフ。君は?』
『貴方……念話が出来るのですね。見たところリンカーコアは持っていないようですが……』

リンカーコア?何だそれは?君は一体何なんだ?

『私はレイジングハート。インテリジェンスデバイスです』
『……インテリジェンスデバイス?』

突如出てきた単語に頭を捻る。直訳では「知能機器」だが、一体?

『説明は後でします。それより急がないと、ユーノが危ない』
『ユーノとは……あのフェレットか』
『はい。本名はユーノ・スクライア。私の外部所有者、ゲストであり、魔導師です』

今度は魔導師。これは「魔法使い」と同義なんだろうが、さっきから未知の単語ばかりだ。
「何かある」と感じた私の勘は、間違っていなかったようだな。

まあいい。すぐユーノ・スクライアのいるところに行こう。彼に聞けば、詳しいことも解る。






たどり着いた動物病院は、ずいぶん派手にブッ壊れていた。
無残なもので、鉄筋コンクリートの壁に半径二メートルくらいの穴がボコボコ開いていた。パワー:B以上の「スタンド」でもないと、此処まで壊せはしないだろう。
結構手強いかもしれないな。まあ、破壊の跡が無秩序だったし、ただの馬鹿力である可能性が高いが。

『……Mr,ポルナレフ!ゲスト・ユーノです!』

つい半日前に保護したフェレットが、こちらに駆け寄ってくる。かなり汚れているのを見ると、ずいぶん長い間逃げ回っていたらしい。

「はあ、はあ……来てくれたんですね!僕の声を聞いて!」

……あたかも私自身が彼の「声」を聞いたみたいな口ぶりだ。後で誤解されてはなんなので、訂正する。

「いや、声を聞いたのは私ではない。同居人の少女だ」
「ええっ!?貴方じゃあないんですか!?」
「ああ、彼女がえらく怖がっていたので、少し怪物とやらをたたっ斬ってやろうかと」
「そん、な……それじゃあ『ジュエルシード』は……」

ジュエルシード?またまた意味不明の単語登場だ。

「ともかく、その人を此処に連れてきてください。こちらはまだ何とかなるので」
『私からもお願いします』
「……残念なことに、彼女は足が不自由でな。君の役に立つとは思えない」
「それでもいいです!その人がいないとあの化け物は封印できないんです!」

……ほう?それでもいい?か弱い車椅子の少女なんだぞ?

はやてをこんな物騒な場所に放り込ませる訳には行かない。彼らは一旦無視して、今迫りつつある「まあるい毛むくじゃらの怪物」に取り掛かろう。








ヤツの目の前に「シルバー・チャリオッツ」を出す。ヤツは一瞬怯んだが、勢いを更に増して飛び込んでくる。

……突進を受け流しつつ、チャリオッツでヤツの身体を切り刻む。手ごたえは十分。肉を斬る感触がスタンドを通じてこちらに伝わる程だ。

「なっ……」

後ろでフェレットが驚いている。見ろ。わざわざはやてを危険にさらす必要は無いではないか。私だってわざわざ此処まで来たんだ。勝算くらいは持っているんだよ。

「駄目です、それじゃ!」

おい、何を言っている?もう敵はとっくに微塵になって……なにっ!

「ジュエルシードを封印しないと、ヤツは幾らでも立ち上がるんです!」

彼の言う通りだった。さっき千切ってやったヤツの身体が、もう治っている。

いいさ、ならば、もう一回斬る!今度は縦横に斬って、サイコロステーキにしてやる!













『無駄です、Mr,ポルナレフ!』

忌々しいことだ、宝玉の言葉どうりヤツはまた復活しつつある。
今まで何回も切り刻んでいるというのに、その力に弱体化の気配はない。
流石に「スタンド」の維持にも疲れてきた。後一回千本串刺しにしたらおしまい、というところだ。
今はヤツを何とか押さえ込んであるが、このままだとジリ貧でこちらが競い負けてしまう。

どうしたものか……

「ですから、そのはやてとかいう子を……」

黙れフェレット。はやては巻き込まないと、何度も言っただろう!大体、そのはやてに「守って」と頼まれたのに、彼女を危険にさらすのは本末転倒だ。

「……解っています。でも、彼女にしか魔力はありません。僕は消耗していますし、貴方にはリンカーコアが無い。彼女を呼ぶしか、方法は無いんです」

っ、むう……どうにもならないのか。だが、はやてにはこの「非日常」に入ってもらいたくない。彼女には「日常」のほうが合っている。
考えてみると、つまらない理屈である。こちらは緊急事態だし、そんな理屈を守るために死ぬのは馬鹿げている。……しかし、しかしはやてだけは!

「グ、グルルルル……」

ヤツが起き始めた。まったく、タフガイである。今まで、斬ること7000余回。突いたのは12000回以上だ。ここまでして立っていられる相手はいないと思ったが……世の中は広い。
此処で逃げるわけには行かない、かといって噛み殺されるのも情けない。

……どうするか?


と、その時。

「ポルナレフさん!?あなたもここに……」

私たちの元に駆け寄ってきたのは、高町なのはであった。

「君は、もしかして! RH、確認してくれ」
『はい、ユーノの思う通り、魔力を持っています』

魔力を持つ?……なるほど、前に「はやてと似ている」と感じたのはそのせいか。

「良かった!ポルナレフさん、早くRHを!」

フェレットの言うように、宝玉を彼女に投げて渡す。

「え、えーと?わたし、状況が良く解らないのですが、一体これってなんなのでしょうか?」
「詳しい説明はフェレットに聞け!私はこいつを抑える」

そう言って注意をなのはちゃんから化け物に向ける。何回も切り刻んだせいなのか、最初に見たときとは全く違う、どこかグロテスクな姿に変貌している。

「シルバー・チャリオッツ!」

起き上がろうとしたヤツを斬って押さえ込む。しばらくそのままにしておくと、背後でものすごい量の光が走った。

「成功だ……!」

フェレットがそう言った直後、光が消えて、やたら派手な服を着たなのはちゃんが飛び出てきた。

「さあ、封印を!やり方は、頭の中に浮かんでくるはずです!」
「わ、わかった、やってみる!」





そして、なのはちゃんがなにやら呪文を唱えると、今まで私を散々苦労させていた化け物は、すっかり消え去り、代わりに一つの宝石が現れていた。


… To Be Continued !!



あとがき

だんだん指が進まなくなって来る。
この調子で、春までに一期終わるのだろうか……



[15296] 第八話
Name: Ganta◆963a4144 ID:608809c7
Date: 2010/02/21 22:40
「ジュエルシード?」
「はい。僕らスクライア一族が発掘した、次元干渉型のエネルギー結晶体です」

今、私となのは、それからあのフェレット――ユーノ・スクライアというらしい――は、凄惨な光景になった動物病院を離れ、近くの公園で話し合っている。
ユーノの話によると、彼は「魔法」を使える「魔導師」であり、異世界から異世界へ古代の発掘物を移送しているところだった。そしてその途中で原因不明の事故が起きて乗っている船が沈み、発掘物の「ジュエルシード」が海鳴市近辺に散らばってしまった。
そこで彼は責任を感じて単身ジュエルシード回収に向かった、というのだが……只者ではないにしろ、フェレットにそんなことが出来るのか?少々疑問である。

「『次元かんしょうがたのエネルギーけっしょう体』……って、いまいち意味がわからないんですけど」
「簡単に言えば、とんでもなく巨大なエネルギーが詰まっている宝石みたいな感じかな」
「なあ、そのとんでもなく巨大、とは、一体どのくらいなんだ」
「全威力の何万分の1の発動で、小規模次元震が起こるくらい……あ、小規模といっても、ここら一帯が消し炭になります」

何だと。ずいぶん厄介な代物だなそれは。何万分の一でここら一帯ということは、エネルギーが全解放されると……考えないことにしよう。

「にゃぁ!?そ、そんな物だったの!?な、なんだか色々とまずーくない?それ」
「あ、でも条件が満たされなかったり、儀式魔法で無理矢理発動させなければ、まず自然に発動はしないよ」
「そ、そうだったんだ、よかったぁー」

大げさに肩を下ろすなのは。
内心、私もそうしていた。ジュエルシードは計21個だという。今なのはが封印したのを引いても20個ある計算だ。
何時爆発するかわからない不発弾みたいなものが20個もある町で、暮らしたくはない。

「待て。さっき『条件』と言ったな。それは一体?」
「ジュエルシードは『願いが叶う』宝石と言われています。恐らく、持っている人が何かを強く願ったりしたら、それがトリガーになって発動すると思われます」
「『願いが叶う』宝石ってのはロマンチックだけど、本当はすっごく危険なんだね。どうすればいいの、ユーノくん」
「さっきみたいにレイジングハートの中へ封印して入れておけば大丈夫。レイジングハートも、中に入っているジュエルシードの数だけ強くなるし」
『はい、ユーノの言う通りです。ですから、私をお使い下さい』
「うん、わかったよ。よろしくね、レイジングハート」
『All right, my master』

「頑張ります」と言わんばかりに胸を張るなのは。……どうやら、彼女はもうすでにユーノを手伝うことになっているらしい。ならば私は……

「では、私も手伝おうか」
「え、いいんですか!?」
「まあな。さっきやり合った暴走体みたいなヤツがまた出たら、我が家が狙われるかもしれない」

そう。折角手に入れた帰るべき家を、あの病院みたいにはさせない。そのためだ。

「……そうですか。本当に、ありがとうございます」
「まあ、あんな毛むくじゃら一つ倒せなかった私だ。あまり期待はしないでくれ」
「いえ、あいつを魔力ダメージ以外であそこまで痛めつけるのは凄いですよ」
『魔力の塊みたいなものですからね』

どうやらあいつは、実体ではなかったらしい。じゃああの時感じた「手応え」は何だったんだろう。
まあ、「スタンド」を切るときも手応えはあったし、それと同じようなものなのだろう。

「じゃあ、ユーノくん、ポルナレフさんも、また明日。次もこの公園で、色々お話しよ」
「ああ、解った」
「うん、さようなら、なのは」










なのはが公園を去った後、私とユーノは、はやての家に帰ってきた。ユーノの話を聞いたはやては、自分に魔法の才能があることを知り、驚くと共に大喜びである。訳を聞くと、

「スタンドも凄いですけども、やっぱり女の子は魔法ですやん。ほら、こういう風に「シャランラ~」って」
「その気持ちもわかるがな。魔法というのは、そう簡単なものでもないらしい」
「はい。自分の魔力を使いこなすだけの努力も必要だし、大魔法を習得するには、難しい魔法式に取り掛かる根気もいる。特にはやては魔力量が少ないから、なのはより上達するのが難しいかもしれない」
「それくらいならお茶の子さいさいや。努力も根気もたくさんある。それに、ユーノ君のジュエルシード集め、手伝いたいんや」
「……危険だぞ」
「自分から首突っ込んどいて、いまさら危険とか関係あらへん。ポルナレフさんだけに迷惑かける訳にもいかへんし」
「命が危険に晒されるんだ。私と出会ったときのチンピラとは訳が違う」
「わかってます。それでも手伝う」

……仕方ない。こうなった時のはやては梃子でも動かんからな。

「危ないと思ったら逃げろ。命は大事にしろよ」

認めるしかない。はやて自身の意思は、尊重するべきである。こうなったら、出来るだけはやてを守って戦おうか。……私だけで、倒せることさえ出来れば。はやてにも、なのはにも、こんな荒事には加わって欲しくない。



「やったあ!ユーノ君、早速魔法の練習や!」
「……ええと、はやて、もう夜10時なんだけど」


私も、はやて達に付き合って、スタンドの訓練でもしようかな。どれだけやれば、元の力を取り戻せるかは解らない。たとえ元に戻ったとしても、それでジュエルシードに敵うかどうか。
……それでも、守りたいもののために。


… To Be Continued !!





あとがき

劇場版を見た。泣いた。一期のストーリーを見直して、詳細なプロットを立てられた。それだけ。






[15296] 第九話
Name: Ganta◆963a4144 ID:608809c7
Date: 2010/02/21 22:40
私、高町なのは。私立聖祥大学付属小学校に通う、ごくごく普通の小学3年生。……だったはず、なんですけど。
車椅子のおじさんから突然現れた、銀色の騎士さん。何処からか聞こえてくる男の子の声。傷ついたフェレット。
そして、「ジュエルシード」っていう宝石が暴走して出来た怪物が、私を「魔法少女」にさせました。……どうもこれからは、日常と魔法を両立させつつ、暮らさなきゃいけないみたいです。
大変だとは思うけど、ご近所の安全のためにも、私らしく、全力全開で頑張ります!

「さて、なのは。……家族の目を盗んで、こっそり外出した理由、兄に話してもらおうか」

その前に、こわーいお兄ちゃんの追求を逃れなければいけないようで……正直、あの怪物より怖いかも。

『Dont mind, My mastar』




なんとか、誤魔化せたけれど、これから夜遅くの監視が厳しくなりそうかも。今日みたいに夜ジュエルシードが発動したらどうしよう。
……ま、寝てから考えればいいや。おやすみなさーい……













『マスター、ユーノからの念話通信です』
「ふにゃぁぁ……え、ユーノくんから?」

朝早く。今だ眠気が覚めやらぬ中で、レイジングハートに起こされました。

「おはよう、なのは……もしかして、無理に起こした?」
「ううん、ユーノくん、ぜんぜんそんなこと「ある」よ(本当は「無い」んだけどね)……あれ?」
『本音と建前が逆ですよ』

あうう。寝ぼけちゃった。

「……やっぱり眠たいんだね。ごめん、昨日は夜遅くに無理矢理」
「いいよ。あの時放っておくと、ご近所が大変だったんだから」
「そやそや。言いっこなしやで、ユーノ君」

あれ、この声は、はやてちゃん?あ、そうか。はやてちゃんも魔法、使えるんだっけ。どんな魔法なんだろ、見るの楽しみだなー。

「おはよ、なのはちゃん。今私、魔法の秘密特訓中や!すごいやろ!」
「……はやて、胸張って人に話してる時点で秘密も何も無いと思うがな」
「もう、余計なツッコミせんといてポルナレフさんは!秘密特訓ちゅうのはロマンやろ!」

あ、ポルナレフさんも念話、出来るんだ。

「ああ。スタンドを出す必要があるから、結構疲れるがね」
「でも、「持続力」の特訓には丁度ええんちゃう?」
「そうだな。いざと言う時パワー不足でスタンドが出なければ話にならない」
「……スタンドって、気軽に出せるものじゃあないんですね」
「そうだ。そして他にも『パワー』『射程距離』など、シルバー・チャリオッツにも鍛えなきゃいけない所は沢山ある。だから、この年になって特訓しているのさ」

……凄い人だ。私なんて、只「頑張ろう」と思っているだけなのに。ポルナレフさんはもう「どうやってジュエルシードと相対するか」考えている。これが、私みたいな「子供」とポルナレフさんの様な「大人」の違いなんだろうか。

「えと、私も、頑張ります。レイジングハート、手伝ってくれる?」
『All right, my master』
「よーし、気張りや、なのはちゃん!」
「頑張って、なのは」
「ジュエルシードを封印するのはなのは、お前だ。こっちでどうにかして、なるべく戦闘はさせないが……いざと言う時、自分で身を守る訓練はしたほうがいいだろうな」

だから、私も。多分色々な敵が現れて、この先どうなるかは全然わからないけど。自分の「魔法」を鍛えよう。








と、言う訳で。レイジングハートに、魔法の正しい扱い方について教えてもらいます。ちなみに、学校は休み時間。いつもならアリサちゃん達とお昼なんですが、今日は途中で抜けちゃいました。

『まず、胸の中に「二つ目の心臓がある」と考えて下さい』
『ええと……こう?なんか、熱い物を感じたんだけど』
『そう、それです。それが魔導師の力の源、リンカーコアです』

確かに感じる。自分の中に「熱」を感じる。すっごく熱くて、なんだかクラクラしそう。よく集中すると、そこから熱が全身に流れてて……あっ!

『そうだ。さっき、レイジングハートは「心臓」って言ってたよね。もしかして、リンカーコアから全身に「血管」が伸びてて、それに乗って魔力が流れ出る、って解釈でオッケー?』
『……その通りです、マスター。どうしてお気づきになられたのですか』
『んー、ふと、そう思ったの』
『そうですか。では、魔力の仕組みがわかった所で、魔力を増強するための方法を教えます』

魔力の増強?魔法を使うテクニックとか、そういうのじゃあなくて?

『この方法は、魔導師が日常的に使っている物。いわば、魔法の初歩の初歩です。教えずに実践をさせるわけにはいきません」

なるほど。わたし、初心者さんだしね。まかせるよ、レイジングハート。

『では。リンカーコアを意識して、大きく息を吸って……』
「すぅぅぅぅ~」
『吐いて」
「はぁぁぁ~。これでいいの?」
『もう一回。今のでは、普通の深呼吸と大差ありません』
『解ったよ。もう一回やってみる』

レイジングハートからは、なかなかOKが出ません。うう、初歩の初歩なのに……。
でも、「呼吸」することを考えて、そこから偶然、忘れかけていた「あの人」の思い出に気付いた時。

[そう、一歩踏み出すんだ。「勇気」を出して。君の心を乱す「恐怖」を我が物として、支配する。そうすれば、呼吸は正しく乱れない。君の生き方も、思いも、まっすぐに、砕けない。その意思こそが、「人間賛歌」だ!]

「コォォォォォォォォ」
『!!、すばらしい呼吸です、マスター!』
「え、そう?無我夢中だったんだけど」
『理想的な魔力値です。呼吸する前には乱れていた魔力が、清流のようにきれいな流れで、安定しています。なにをしたんですか?』
「にゃはは。どうも『あの人』を思い出したら、うまくいったみたいだね」
『「あの人」……何者ですか?もしかして魔導師では』

ううん、違う。「あの人」は、強く、優しく、頼もしい、少し変な技を使う「普通の人間」だった。「魔導師」なんかじゃあなく、もっと凄い「何か」。ポルナレフさんの様な凄みを持っている人だった。
……思い出す。「あの人」との触れ合いを。魔法の訓練とか、アリサちゃんに抜けだしをどう言い訳するかなんて、みんな頭の中から吹っ飛んだ。

『マスター、「あの人」とは?』
「私もよく、覚えてないんだけど……話してあげるよ、レイジングハート」




… To Be Continued !!







あとがき

ホントは「あの人」との思い出も書きたかったけど、キリがいいので次回に持ち越し。
……さて、「あの人」とは一体誰なんでしょう!?(ジョジョフリークなら一瞬で解るかも)
わかった方、感想にお書き下さると少し嬉しいです。



[15296] 第十話
Name: Ganta◆963a4144 ID:608809c7
Date: 2010/02/21 22:40
それは、わたしがまだ小さかった頃のお話。
お父さんが仕事で大怪我をしてから、お母さんとお兄ちゃんはお店の切り盛り、お姉ちゃんは病院でお父さんの看病。
なので、余っていたわたしは、何時も一人でお留守番とか、していました。
一人きりでいるのは、すっごく寂しくて、辛いこと。でも、みんな自分に精一杯で、なのはが入る隙間なんて、無いんじゃないかと感じていた。
仕事が終わったら、みんなでわたしに構ってはくれるんだけど、逆にそれが「腫れ物扱い」されているようで。ただの妄想なんだけれど、その時、みんなから離れてしまう「恐怖」に囚われてしまったわたしには、本当にそうだとしか感じられなくって。


……だから、みんなに黙って出かけた海浜公園で、海を見つめていたら、ふと「そうだ、あの柵を越えて海に入ったら、楽になれるかな」なんて思って。……本当に、越えてしまった。
その辺りの柵は風景が見えるように、特別小さくて、当時五歳だったわたしでも、超えることが出来た。
海に身を投げ入れた時の感触は、まるで重力にわたしが連れ攫われてしまうみたいなもの。急に怖くなって、思わず「助けて」って叫んだ。そうしたら。

「大丈夫か!?」

……腕が奇妙に伸びているお兄さんが、私の手をつかんでいた。














「良かった、無事で……間接を外してなかったら、間に合ったかどうか」
「か、かんせつを、はずすって!?」
「ああ、ぼくには少し奇妙な特技があるんだ。『波紋』っていう」

お兄さんはそう言ってから、自己紹介をしてくれた。
名前はジョナサン・ジョースター。イギリス出身の「貴族」で、何故か解らないけど、気が付いたら此処に来ていたみたい。
服はボロボロで、所々血が滲んでいたけど、とても優しい目をしていた。

「えと、わたしは、高町なのはっていいます。あ、名前がなのはで、みょうじが高町です」
「なのは、か。いい名前だね。……ご両親は?」

ごりょうしん?……そっか。おとーさんとおかーさんのことだ。

あれ?

おとーさんの顔、おかーさんの顔を考えたら、ぼんやりとしか思い出せない。
なんで?どうして?わたしの親なんだよ?……おにいちゃんも、おねえちゃんも思い出せない。やさしかったみんなの顔がどんどんとおざかって、まるでとうめいになったみたいに、ぜんぶ自分をすり抜けていく。
なんだかとっても悲しくなってきた。知らない人の前なのに、涙がでてきちゃう。
いけない。こんなだから、みんなからとおくにはなれちゃうんだ。もっとつよくならないと。

「あ、どうしたんだい!?もしかして、何か嫌なことでも言ったかな」

お兄さんが心配してくれる。わたしをなきやませようとしてくれる。でも、いいんだよ。わたしがつよくないだけだから。

「いいって……そんな。泣いてる女の子を、英国紳士として放っては置けないな。君の悩みを、聞いてあげよう」









「聞いてあげよう」……その言葉で、私の何かがプッツンと切れたみたいだった。堰を切ったように言葉が飛び出す。その時まで感情を抑えていた分を、すべて吐き出した。
支離滅裂なわたしの告白を、ジョースターさんはしっかりと聞いてくれていた。……わたしが話し疲れると、ジョースターさんは、ふとこう言い出した。









「もう、落ち着いたかい?じゃあ、深呼吸をするんだ」
「しんこきゅう?」
「思いっきり息を吸って吐く。そうしたら、君の中に『勇気』が生まれる」

おにいさんのいうとおりに、おもいっきり呼吸する。……なんだか、暖かい。
ジョースターさんも、わたしにあわせて呼吸してくれる。からだじゅうが青く光っているように見えたけど、これが「波紋」なのかな?

「そうだ!その感じを忘れるな!それが『波紋呼吸』!もう一回だ」
「はいっ!」
「いいか、君は今、家族や世界から弾き出されないか『恐怖』していて、それに囚われすぎている。『恐怖』も『生きること』には必要だが、ありすぎると逆に思考を固めてしまって、悪い方向にしか考えられなくなる!」
「すぅぅぅぅ~」
「だから、『恐怖』を支配する!勇気を出すんだっ!」

すこしずつ、わかってきた。わたしは、踏み出せなかったんだ。かえったらたぶん、おかあさんがお皿をあらってる。だから、勇気を出してこう言うんだ。
「おかーさん、それ、なのはにも手伝えますか?」って。


「そう、一歩踏み出すんだ。「勇気」を出して。君の心を乱す「恐怖」を我が物として、支配する。そうすれば、呼吸は正しく乱れない。君の生き方も、思いも、まっすぐに、砕けない。その意思こそが、「人間賛歌」だ!」


たぶんおかーさんは「気を遣わなくていいわよ、私と恭也でどうにかなるし」って言う。でも、それでも、私は手伝う。おかーさんもきっとわかってくれる。だって、わたしの「おかーさん」なんだもん。

「覚えておいてくれ、なのは。『人間賛歌』は『勇気』の賛歌!人間のすばらしさは勇気のすばらしさ!!君が幾ら強くなったって、『勇気』を知らなければ、ノミと同類だァーーーーー!」
「はいっ!ジョースターさん!」

それから、おとーさんのとこにもいこう。わたしにできることをするんだ。うでが自由に動かないみたいだから、代わりにご飯を食べさせてあげよう。いっぱいお話しよう。
……おとーさんの病院って、ここから近いんだよね。よしっ!今すぐ行こう!!








駆け出すわたし。ジョースターさんは、わたしの背中を押して、笑顔で見送ってくれた。








『……って感じなんだけどね。それから、ずっと会ってないんだ』
『なるほど。…すごい漢、ですね』
『漢?』
『いいえ、気にしないでください、方言の様な物です。それより、彼が使った「波紋」が気になりますね。腕の関節を外しても動かせる様にしたり、そして「波紋呼吸」ですか』

さっき習った呼吸法は、それと同じっぽかったもんね。確かに気になる。

『私のデータベースに、「波紋」の記述はありません。もしかしたら、この世界で独自に発達した「魔法」かも』
「んー、わたしもあの時一度見ただけだから詳しく解らないんだけど、少し違うものだと思うんだ。どっちかっていうと、ポルナレフさんの『スタンド』みたいな、そんな感じが」


こうして、魔法の訓練から「波紋」についての話に目的が変わっていって、気が付いたら予鈴が鳴っていた。急いで教室に戻ったんだけど、そこには、怒り心頭のアリサちゃんが……

「さて、な~の~は~。……わたし達の目を盗んで、こっそり途中で抜けた理由、わたしに話してもらいましょうか」

うう……昨夜の恐怖、いま再びなの。

『Dont mind, My mastar』
「あ、いや、そこまで再現しなくていいような気がするけど……」
「なのはちゃん、何か言った?」
「あううう……」










結局、午後の授業中全部、アリサちゃんに睨まれっ放しでした。すずかちゃんにも無言で見つめられるし、肩身が狭かったです。
……そして、学校が終わって、アリサちゃん達と乗ってきたバスから降りた時。

『なのはちゃん、エマージェンシーやっ!「ジュエルシードシリアル16」わたしの魔法ではっけーん!』
『はやて、あんまりハイになるな。……この通りだ。すまないが、「八束神社」まで来てくれないか』
『よろしく、なのは。そうだ、レイジングハート、なのはにどんなことを教えたんだい?』
『基礎の呼吸法から教えていく予定でしたが……少し脱線しました。まあ、封印には問題ありません』
『よし。僕らで暴走体は抑えておく。早く来て!』

オッケー!ようし、わたしの「勇気」精一杯出してみようか、レイジングハート!






… To Be Continued !!




あとがき

どうも、今日からとらハ!なGantaです。こんな俺設定全開の作品ですが、見て頂けるととても嬉しいです。
テーマは勿論「生きること」!
ではでは。








[15296] 第十一話
Name: Ganta◆963a4144 ID:608809c7
Date: 2010/02/21 22:40
「おはようございまーす、ポルナレフさん、ユーノ君!さあ、早速特訓や!!」
「はやて、確かに早起きして特訓、とは言ったけど……まだ朝五時だよ」

……すまんな、ユーノ。うちのはやてはどうも気持ちが先走りすぎるようで。
まあ、この時間から訓練するのも悪くは無い。行くとしようか。

「ええっ!ポルナレフさんまで!?」
「さあさあ、『魔法少女リリカルはやて』への第一歩や!早くして!」
「また『魔法少女』とか……言っておくけど、『魔導師』だよ」












さて。昨日偶然出会ったフェレット、ユーノ・スクライアによって告げられた危機。「ジュエルシード」という名の宝石が起こす奇妙な事件に対抗するため、私達はそれぞれの力を磨く「特訓」をすることになった。
私は「スタンド」の強化。はやてはユーノと一緒に「魔法」の習得を目指すことになる。私は一度再起不能になっていて、はやては魔法に関する知識が皆無だ。だから、それぞれの道は遠く険しいものになる。
……だが。この町の平和を、我が家の平穏を守るために、これは必要不可欠の物である。
私もはやても、頑張らなくては……


「ユーノ君、めーっけっ!洗濯機の右隣。随分遠くに隠れてたようやな」
「……すごいね、もう見つけるだなんて。やっぱり、探索魔法の素質がある」
「ユーノ君の、『リンカーコア』だっけ?それの特徴さえわかれば、一発で見つけられるんや。『魔法式』っていうのも、使うの難しい思うてたけど、なんや、コンパスと同じように使えばええんやな」
「大体あってる、かな。もっとも、更に広範囲で探すんだったら、別の役割を果たす魔法式を覚えなくちゃいけないけど」

……なんなんだアンタら。

「あ、ポルナレフさーん、こっちは順調!そっちの方はどうですかーってあれ?」


……っ!べ、別に「初めてなのに成長早すぎだろ」とか「私は十年かけてスタンドを完成させたのに、あっちは30分で実践レベルか。えらいねぇ~」とか、「これが主役と脇役の違いか……」とか思ってるわけでは、微塵もないぞ、はやて!!

「……ふーん、そない思うてたんですか、ポルナレフさん……」

はやて!?何故だ、何故解ったんだ!?まさか、口に出ていたか?36歳にもなって、典型的ギャグキャラのようなミスをする私ではないが……

「多分、あんまり感情が篭っていた呟きだったから、念話に出てしまったんだと思います」
「念話?……ああ、昨日俺がレイジングハートとやってたあれか」
「はい。念話は、心の中の意思を魔法に乗せて飛ばす技術です。だから、初心者が使うとさっきの様な事も偶に起こるんです。でも流石にこれは……」
「うん、俗に言う『カリスマブレイク』やな、ポルナレフさんの株大暴落や」

カリスマブレイク!?何だそれは!

「ささ、ユーノ君、あんなコメディ担当の三枚目は放っといてええから、練習の続きせな」

いや、そのキャラはもうとっくに卒業して……あ、待って、待ってくれ!














……やれやれ。駄目だなこれじゃあ。私も努力しなくては。
そうだ。今日は私が朝食を作ろう、スタンドの「精密動作性」を取り戻す、いい訓練になりそうだ。

キッチンに足を運ぶ。「シルバー・チャリオッツ」を出して、棚の戸を開けさせ、フライパンを取り出させたら、サラダ油を注がせる。ちなみにレイピアは壁に立てかけてある。
その間に私は冷蔵庫から卵を取り出し、二つに割ってかき混ぜる。そう、私は今己のスタンドを利用して「スクランブルエッグ」を作っているのだ。
スタンドによって時間を短縮させつつ、いつもと変わらない料理を作る。これぞ私が修行時代に編み出した技、「スタンド調理法」だっ!
本当はもっと難しい料理、例えばテリーヌとかポワレとかも作れるのだが……一応最初なので、簡単な卵料理にした。
よし。卵をフライパンに載せて、火を付ける所までは成功だ。さて、此処から卵をかき混ぜて、皿に乗せる……

『ポルナレフさん、レイジングハートと協力して、なのはと通信します。二階に来て下さい』
『む、解ったぞ……すまない、少し待っててくれないか』
『いいですけど、何してるんですか?』

いや、修行の一環でな。そうだ。通信はリビングでした方がいい。「スタンド」による料理なら、はやてを「ゾッ」とするとまではいかない物の、十分驚かせてやれるはずだ。見てろよ。

『驚かせる?……了解です。はやてにも伝えます』













「うわー、本当にスタンドで料理しとる」
「此処まで精密に操れるものなんですか、スタンドって」

ふふ……まあな。我が友承太郎の「スタープラチナ」なんかは、飛んで来た銃弾を掴む事が出来たりする。この位楽勝だよ。

「……調子に乗ってるとこ悪いんやけど、ちぃーと焦げとるでこれ」
「あ、言われれば確かに……」

何ッ!?しまった。二人に自慢するのに夢中で、火消すのを忘れてた!

「ぬふふふふふ」

おい、そんなに擦り寄って来て!ニヤニヤ笑って!一体何が言いたいんだ!

「いや、なんにも…………やっぱりギャグキャラやな、と思うて」

それを言うなぁぁぁぁぁぁぁ!!

「まあまあ、二人とも……もうすぐ通信の時間ですし、そろそろ止めにして」
「なに言うとるのユーノ君!こない面白いイジリ相手、そう簡単に手放せへんで!」

「弄り相手」!?今の私の評価はそれか、そんな物なのか!?










「ジュエルシードを封印するのはなのは、お前だ。こっちでどうにかして、なるべく戦闘はさせないが……いざと言う時、自分で身を守る訓練はしたほうがいいだろうな」
「はい!それじゃあ、またあの公園で」

……ふう。なんとかプライドを守ることが出来た。一度キャラを壊したら、もうずっとそのままになるのは、「ジョースター・エジプトツアー御一行様」の時に経験済みだ。

「見て、あの人見え張っとるで、ユーノ君。あ~んな大人になったらあかんよ」
「……はやて。少しやり過ぎのような」

何か隣でひそひそ話をしている二人がいるが、別に気にしないことにしよう。いや、気にしたら負け、だ。












それから、結構な時間が経って。
「スタンド料理法」は、昼食の時に成功。通信で思いついた「常にスタンドを出しっぱなしにする」訓練も、一時間連続で出せるまでにはなった。
それでも、はやてからの「ギャグキャラ」扱いはいまだ変わらず……不味い。このままでは、本当にギャグキャラになってしまうぞ。
ああ、こんな時暴走体がいれば、戦闘シーンで何とか持ち直せるかもしれないが……

「あ、この感じは、暴走体やね。何処から来たんやろ――探索魔法、発動っと――むむ、神社の方角!」

おいおい、確かにジュエルシードは「願いを叶える宝石」だが、こんな願いまで叶えてしまうとは。
ふふ、暴走体め、覚悟しろよ。今日散々弄くられてたまった鬱憤を、晴らしてくれる。

「よーし、行くぞユーノ、はやて!」
「すっごいハイテンションやな、ポルナレフさん。ホント、必死になっててカワええなぁ。そないしてたら、もっと弄くりたくなるのに」
「はやて……もう、何も言えないよ。さて、レイジングハートに連絡、っと」







果たして、こんなんで大丈夫かポルナレフ一行!
… To Be Continued !!









あとがき

ポルポル君はやっぱり三枚目でした。「怖かろう、悔しかろう。いくらカリスマを纏おうとも、キャラの本質は変わらないのだ」みたいな、そんなお話。
……これ、外伝にしたほうが良かったかな?





[15296] 第十二話
Name: Ganta◆963a4144 ID:608809c7
Date: 2010/02/21 22:40
只今、私達はジュエルシードの暴走体を発見し、一路神社に向かっている。なのはとレイジングハートも途中で合流するが、私達の方が目標に近いため、しばらくは私一人で暴走体の相手をしなければいけない。
前に戦った暴走体はなかなかのタフガイだった。体力だけなら並のスタンド使いよりもずっと上だ。しかし、少なくともスピードは私の「シルバー・チャリオッツ」に遠く及ばないし、パワーも動きの切れもこちらが勝っていた。
第一ヤツは思考が単純である。突っ込むことしか考えていない。……そこ、昔の私みたいだとか言うな。
今回はどんなヤツが待ち受けているか知らないが、体力さえ除けば、私とシルバー・チャリオッツの敵ではないだろう。

『次は、八束神社前、八束神社前でございます。お降りになる際は、お近くのボタンを押して下さい』

よし、行くぞ。はやて、ユーノ!








「……石段やな」
「石段だね」

意気揚々と飛び出した私達に立ちはだかったのは、凶暴な暴走体ではなく――ただの、石段であった。
私とはやては車椅子。石段は高く段差も大きいため、とても登れた物ではない。
ユーノは登れるが、あいつ一人で何とかなるのなら、元々車椅子二人と小学三年生に助けを求めたりはしないだろう。

「あかんなぁ。確かにこの上におるんやけど」

この際遠回りでもいい。近くにスロープとかは無いのか?

「ありません。どうします?」
「『シルバー・チャリオッツ』使って、ポルナレフさんだけでも登れへんかな」



パワーの関係で難しいが、出来ないことも無い。しかし、私を担いでノロノロ登っていく途中に襲われたら、反撃の仕様が無くなる……だが、それしかないだろう。

「シルバー・チャリオッツ!私を担いで登れ!」
「頑張ってなー」
「僕も行きます。一応この形態でも防御魔法は使えますし」

ユーノが私の肩に乗る。私はシルバー・チャリオッツに抱えられて、車椅子から離れた。













「もう少し早くなりませんか?もし誰かが暴走体に襲われていたら……」

ユーノが心配そうに声をかける。確かに今のシルバー・チャリオッツのスピードは、はやての車椅子より遅い。
だが、元々そこまで強くないし、更に若い頃より弱まっているパワーでは、これで精一杯だ。長い隠遁生活のせいで私が痩せていなければ、持ち上げられることさえ出来なかったであろう。

登り始めてから1分で、鳥居を潜り、神社の境内に到達した。そこで待ち構えていたのは……四つの目を持つ、黒い獣であった。
こちらを睨み付けて、唸りを上げている。私達が此処に着く前から、来るのを察知していたようだ。
前に戦った暴走体は、何やらもやもやした霧の様な感じであったが、こちらはよりはっきりとした形で現れている。
シルバー・チャリオッツに抱えられた自分の身体を、石畳の上に置く。私には足が無いから、必然的に尻餅をつく形になる。ふむ、少しごつごつしているな。

「実体化している?……原生生物を取り込んでいるんだ。ポルナレフさん!前より手ごわくなってます、気をつけて!」

なるほどな。ん、待てよ。「実体化している」?ということは、「実体ではない」ヤツより突き易いし、斬り易くなる。
ふふっ、ならば「余裕」というものだっ!

「任せろ。なのはが来るまでに、ヤツを「再起不能」にしてやろう」

前回と変わらず、ただ闇雲に突っ込んでくる暴走体。だが、その勢いだけは脅威に値する。

ならば!

「『シルバー・チャリオッツ』!ヤツを『受け流せ』っ!」

突進してくる暴走体を、まさに闘牛士のように避けるシルバー・チャリオッツ。そして、無防備になったヤツのどてっ腹に、容赦なく突きを叩きこむ。
予想以上に相手が固く、完全には貫けなかったが、それでも一撃で深手を負わせることに成功した。
倒れこむ暴走体。そこに追い討ちをかける。放っておくとすぐに復活するから、出来るだけ連続して攻撃しなければいけない。

「すいませーん、遅れました!高町なのは、行きます!」
『sealing mode.set up』

後ろから聞こえてくる元気な声は、私達の勝利を意味した。
よし、もうスタンドを消してもいいだろう。

「リリカルマジカル。ジュエルシード、シリアル16。封印!」
















封印が終わった後、私がどうやって降りるか等で一悶着あったが、無事に我が家に帰り着く事が出来た。二回目の戦いにしては上々といった結果だ。

「とゆー訳で、これより、反省会および祝勝会を始めまーす」
「始めまーす」

……はやて、なのは、一体何を?

「せやから、『反省会および祝勝会』ですよ。ま、それは名前だけで、本当はなのはちゃんと遊ぶんやけど」

なるほどな。
そういえば、はやてが同年代の友達を作ったのは、なのはとアリサ、すずかが始めてだったか。
友達を家に誘うのも今日が始めて、という訳だ。ハイになるのも頷ける。

「二人とも。一応魔法の練習もやってもらうからね」
「オッケー!じゃそれを先にして、後でゆっくり遊ぼうか」
「うん、そうしようはやてちゃん」

そういった後、なのははふと思い出したかのように話し始めた。

「あ、そうだ!その前に少し、聞いてもらいたいお話があるんだけど……ポルナレフさんも聞いて下さい」










なのはの口から語られた話は、私を驚愕させるに値するものだった。

「波紋」を使う人間が、この世界にいる。
なのはにその「ジョナサン・ジョースター」と名乗っていた男の年を聞くと、「30歳くらい」と言った事から、まず「祖父の名を偽名として使うジョセフ・ジョースター」では有り得ない。ジョースターさんはもう80を超えている、立派な老いぼれだ。
ということは、本物の「ジョナサン・ジョースター」か?私のように、何らかの要因でこの日本に来たのだろうか?しかし、彼はDIOに身体を奪われ、死んでいたはず。どういうことだ?

「ええっ!あの人がもう死んでいるって、どういうことですか!?」
「死んでいるも何も、彼は一世紀前の人間だ」
「そんな……でも、あの人は間違いなく生きていましたよ、ポルナレフさん!」
「恐らく『ジョナサン』は偽名だろうな。ひょっとすると、私のまだ知らない『波紋使い』なのかもしれない」
「そう、ですか」

「ま、まあそんな、生きた死んだとか辛気臭い話は抜きにして、とりあえずご飯食べよか、なのはちゃん、ポルナレフさん」

私となのはの語気がだんだん強くなったのを見かねて、はやてが止めに入ってくれた。はやての言うことは正しい。折角遊びに来たのに、これ以上重い話をすると私達の絆にひびが入る。
なので、私となのはは口論を終わらせ、はやての作ったオムライスを食べることにした。













「すみません、うちの妹がお夕飯までご馳走になって」
「お礼ならはやてに言ってくれ。ご飯を作ったのは彼女だ」

夜八時になり、それまで楽しく遊んでいた二人も、そろそろお開きということになった。
迎えに来た男は、なのはの兄らしい。やや細身だが、鋼鉄のように硬い体つきである。相当の修羅場を潜り抜けてきたようだ。

「ほな、絶対また遊ぼな、なのはちゃん」
「はやてちゃんも、またね」
「さあ、なのは。行くぞ」

別れを惜しむはやて。もっと遊びたかったのであろう。ゲームの相手なら私でも出来るが、いかんぜん腕が違いすぎる。相当に手加減してくれないとまともに戦えないのは、はやてが強いからか、私が弱いからなのか。

「はぁ、いってもうたなぁ。さ、ユーノ君、魔法の訓練しよか」
「うん、はやて……でも、さ。もう少し遊ぼうよ」
「え、もう少しって、ユーノ君……」
「見ててね、はやて」

ユーノがそう言うと、彼の身体が光に包まれ、フェレットからだんだん人型になっていく。
……ふっ、ユーノめ、粋なことを。

「よし。この姿なら、一緒にゲームできるでしょ?はやて」
「ユーノ君……そない芸当できるんやったら、はよ言ってくれれば良かったのに」
「僕の体質が、此処の大気中魔力素と適合不和を起こしていたんだ。ようやく慣れてきたから、この姿になれた」
「そうなんか。じゃあ、今日はもう練習終わりやな!ユーノ君、手加減はせえへんぞ」
「望むところだよ」
「ほら、ポルナレフさんも早く」

おいはやて、私もか!?……やれやれ、しょうがないな。





「またまたポルナレフさんの負けや。そない負け越してたらホンマに三枚目やで」
「う、五月蝿いはやて、此処から逆転するのが主役の戦い方だ!」
「……僕、これやるの初めてなのに、なんでトップなんだろう?」





… To Be Continued !!



あとがき

そろそろフェイトが登場します。あ、フェイトの所にもジョジョキャラを出す予定です。
さあ、果たして誰なんでしょうか!?(あ、これ二回目だ



[15296] 第十三話
Name: Ganta◆963a4144 ID:608809c7
Date: 2010/02/21 22:42
(ん~、やっぱもうちょい東方向だったかなぁ?探索魔法使ったら、ここら辺って出たんやけど)

私は今、ユーノ君と一緒に発動前の「ジュエルシード」を探している。
何分発動前なので、発動した後の暴走体が出す「気配」よりずっと探しにくく、随分と手間が掛かっている。

「はやて、もっと細かく調べられる魔法を出して。ほら、昨日教えたやつ」

ユーノ君からのアドバイス。それに気付いた私は、その場で魔法式を展開。

魔法式というのも不思議なもので、まるでスポンジが水を吸い取るように私の頭の中へ入っていくものもあれば、何回教えてもらってもちんぷんかんぷんなものだってある。
魔法の師匠であるユーノ君に言わせると、私は向き不向きが極端らしい。向いているのが探索魔法、防御魔法で、向いていないのが攻撃魔法全般、ということだ。
なのはちゃんも同じように極端で、彼女は攻撃魔法には非凡の才能があるが、補助魔法はからっきし、らしい。
ユーノ君は基本的になんでも使えて、若干攻撃魔法が苦手。――ちゃんとした教育機関で教えてもらった結果だと言ってた。

――ふと、頭の中に光が走る。お目当てのものを見つけた時に、いつも感じるものや。

「あった!市民プール場の中、この近くや!」

私は思わず叫ぶ。

「本当なの、はやて?」

「間違いあらへんよ。私、車椅子で中はいれへんから、ユーノ君頼むで」

「任せて!」

私の肩から駆け下りて、一路プールを目指すユーノ君。
それを見送ってから、私はなのはちゃんと念話で通信することにした。

『なのはちゃん、こっちは見つかったで、そっちの首尾はどないや』

『わわっ、はやてちゃん!?今戦闘中!忙しいから後にして!』

聞こえてきたなのはちゃんの声は、いかにも焦った様子だ。
なのはちゃんとポルナレフさんは別行動で、別に見つけた暴走体を封印している途中。
そういえば。最後に念話で通信した時には、もう少しで接触する、と言ってたなぁ……念話、せんかった方が良かったかも。

それから、しばらく経って。

『ジュエルシード、シリアル20、封印!……ふう、終わったよ、はやてちゃん』

『そうかー。ごめんなぁ、あの時急に念話しちゃって』

『いいよ、謝らなくたって』

『そういえば、今回の暴走体はどやった?』

『ん~、ポルナレフさんが押さえてくれてたから、封印するのは楽だったよ。怪我も無かったし』

『へぇ。それは良かったなぁ。やっぱし、怪我ないのが一番やて』

少し、安心する。

後ろのほうで支援する私とユーノ君とは違って、なのはちゃんやポルナレフさんは直接ジュエルシードの暴走体と戦う。

せやから、いつ怪我するかわからへん。

たとえばポルナレフさんが怪我したとして、私は治療の魔法習ってないし、ユーノ君も魔力残量の関係で直すのは難しい。

そしたら暴走体と戦う時、なのはちゃん一人に無茶をさせてまう。
なのはちゃん自身は「大丈夫」言って戦い続ける思うんやけど、そのままやときっといつかどこかで無理が出る。

もしなのはちゃんまで怪我させちゃったら、今度は暴走体に手も足も出なくなる。それに、なのはちゃんの家族にもきっと迷惑を掛けてしまう。
そんなのは御免、や。

今の所は大丈夫みたいやけど、これから一体どうなるか。
もう一人か二人。欲言えば五人くらい、仲間が欲しい所やな。

近接担当が一人と、支援が一人。封印できる人が二人くらい。なんでも出来る人があと一人。いたら最高や。

それくらい人がいたら、何人かでローテーション組んでジュエルシードを捜索できるし、予想外のアクシデントにも迅速に対応できる。


――ま、無いものねだりしてもしゃあない。
今いるみんなで何とかするとして、そしたら……むぅぅ……

「はやて、ジュエルシード、見つかったよ。まだ封印が解かれてなくて、よかった……はやて?どうしたの?」

「あ、ああユーノ君。なんでもないんよ、少し考え事してて」

「そう。それじゃ、家に行こう」

「そやな。ポルナレフさんとなのはちゃんもジュエルシード封印したらしいし、これから家で会議や」


















同時刻、遠見市のとあるマンション、その屋上にて――

「ふーっ、着いた着いた。しっかし、こんな辺鄙なとこで探し物なんて、いったんなんなんだろうねえ、フェイト」

「母さんから通信があったよ。『ジュエルシード』っていう魔力反応がある宝石なんだって」

「へえ、そうかい。ま、パパっと見つけて、早く家に帰ろうよ。ね」

「そうだね、アルフ。早く帰って、また母さんに笑ってもらうんだ。がんばろう――あれ、もう一通通信が来てる」

「どれどれ……ん?差出人「H・H」?誰だ一体」

「あ、そういえば母さんが『協力者』を用意してるから、使いなさいって……」


その時、二人の後ろに現れたのは。


「フェイト・テスタロッサ御一行、ここの十階にご宿泊、ってえとこかな」

「っ!あんたは誰だ!」

「おいおい、そんなに牙剥くなって。俺はおたくらの『協力者』だよ」

「『協力者』?貴方が、母さんの選んだ」

「そうよ。プレシア・テスタロッサはクライアントさ。俺は、『ジュエルシード』を集めるおたくらを援護する」

「援護?はんっ、あたしとフェイトだけで十分だよ。あんたはさっさと退きな」

チッ、チッ、と指を振って挑発するアルフ。
『協力者』とやらにはリンカーコア反応が無い。ということは、魔導師ではない。
そんな馬の骨が、私達に協力する?くだらない。
そう思っての行為であったが、相手は落ち着き払って言う。

「まあまあ落ち着いて。そうだ、一つ忠告してやろう。恐らくおたくらじゃあ『ポルナレフ』には勝てない」

「なんだって!?」

「そいつと昔、相手をしててね。今は手負いらしいが、それでもおたくらより、一枚も二枚も上手さ」

「こいつっ……」

「俺は、世界一女に優しい男だ。だから、おたくらのことを思って忠告してやるのさ。馬鹿にしてるわけじゃあないんだぜ、ベイビー」

「くっ、フェイト、こんな奴無視して、さっさと部屋に行こうよ」

「――アルフ、待って。『協力者』さん。それは本当ですか?」

「女に、それに飛びっきり美人のやつに嘘はつかないさ」

「そうですか。では、その人について、詳しく教えて下さい」

「ちょ、フェイト!」

「OKOK。ま、先ずは部屋に行こうぜ。夕食用意してやる」

二ヒヒと微笑む『協力者』。どうやらフェイト達が彼を信用したと思っているらしい。
しかし、フェイトは彼をまだ信用してはいない。
『母さんの選んだ人間だから、一応信じよう』ということである。

「あ、まだ、名前言ってなかったな」

「ふん、誰があんたの名前なんて気にするか」

その言葉を無視して、いきなり虚空から現れた銃――銃型のスタンド「皇帝」を握って、彼は宣言する。

「俺はホル・ホース。言ったと思うが、『世界一女にはやさしい男』さ」




… To Be Continued !!



あとがき

二週間くらい放置しててすみませんでした。
……いやあ、civ4ってすごいね!(マテ







[15296] 第十四話
Name: Ganta◆963a4144 ID:608809c7
Date: 2010/03/08 18:20
こんにちわ、高町なのはです。
つい最近覚えた「魔法」を使って、封印したジュエルシードは5つ。発動する前にはやてちゃんが見つけたのを含めるともう6つ目になります。
ジュエルシードは全部で21個だから、残りは15個。
わたくし、高町なのはも、魔法少女として、大分様になってきた気がしないでもないのですが……

『Master,身体の疲労が激しいですね。今日は休んだほうがよろしいかと』

レイジングハートにこう釘を刺されるほど、すっごく疲れてます。
封印魔法を使った後とかは、『波紋呼吸』をして魔力の流れを整えたり、色々対策はしているのですが、それでも相当疲労がたまるそうで。
あーあ、肉体に疲労が来ない探索魔法担当のはやてちゃんがうらやましいな。でもあんまり広範囲を探索したら、頭が痛くなるって言ってたけど。

で、今日はジュエルシード探しはお休み。
はやてちゃんやアリサちゃん、すずかちゃんたちと、お父さんがコーチ兼オーナーをしているサッカーチーム、翠屋JFCの試合を応援しに行ってます。
元々はアリサちゃんとすずかちゃんと私、三人だけの予定でしたが、「みんなとお話がしたい」という理由で、はやてちゃんも加わりました。
「応援してくれる人は「多い」ほうがディ・モールトいいっ!」と、お父さんは大喜びです。
あ、ちなみに、ユーノ君も一緒ですよ。

『はやて、なのは、これってこっちの世界のスポーツ?』

『うん。サッカーっていうの。ボールを足だけ使って、相手のゴールの中に入れるスポーツなんだよ』

『へぇー、面白そうだ』

『私もテレビとかで見たことあるけど、実物見るのは初めてやなぁ』

ユーノくんもはやてちゃんも興味しんしん。
私は二人に念話でルールの解説をしていたのですが、思わず熱が入ってしまい――

「なのは!何ボケーッとしてるのよ!あのキーパーいま凄かったわよ!」

「ホントだよ。どうしたの、なのはちゃんもはやてちゃんも。『心ここにあらず』って感じだったよ」

試合をちっとも見ていなかったので、アリサちゃん達に怒られちゃいました。
というわけで、その後は試合に集中。我らが翠屋JFCの得点シーンは、なんとか見逃さずにすみました。

その得点が決め手となって、試合は翠屋JFCの勝利。
お父さんは大喜びで、その後翠屋で祝勝会を開きました。
私達応援団もちゃっかり同席しちゃったりして、色々盛り上がりました。

さて、それから私は、晩御飯まで「おやすみなさい」するはずだったのですが。

「……っ!?」

背中にぞくっとした感触を感じ、思わず跳ね起きました。

『Master,どうしたのですか?』

レイジングハートが問いかけるのを無視して、私は一路家の外へ。
みんな翠屋のお仕事でいなくなって、静かな家を駆け抜けて。
胸の鼓動は早くなり、額から汗が吹き出ます。
――だって、これは。
いつも感じていたジュエルシードの「気配」より、何倍も大きい、これはもはや「威圧感」。
早くしないと、きっととんでもないことになる。その確信がありました。

人目も気にせずレイジングハートとバリアジャケットを展開した時、はやてちゃんから念話が来ました。

『なのはちゃん!』

『解ってるよ、はやてちゃん!』

お互い焦っていて、まともに会話できません。

『ポルナレフさんと向かっとるから、早く!』

『うん!』

『急いで、なのは。これはかなりまずい。まずい状況だ』

ユーノくんも焦りきってます。やっぱりとんでもない状況みたいです。

「お願い、レイジングハート!」

『All right, my master』

つい昨日覚えた飛行魔法「フライアーフィン」を使って、ビルの屋上に上ると。

「なのはちゃん!」

「なのは!」

これも昨日習得したという飛行魔法「フローター」に乗ったはやてちゃんがいました。
はやてちゃん一人だと術式を維持できないから、ユーノくんが肩に乗ってサポート中です。

「なのは、これを見てくれ」

言われるままに、ポルナレフさんが指した方角を見ると――

木、木、とにかく木。
大樹とその根っこが、市街地を破壊していました。
あまりの光景に、思わず目を疑います。
まさか、これが全部、ジュエルシードの!?


「そうさ、ジュエルシードに込められた思いが強いと、こんなことも起こるんだぜ」


その時私に声を掛けたのは、ユーノくんでもはやてちゃんでも、ポルナレフさんでもないカウボーイ風の男の人。

「二ヒヒ、久しぶりだなポルナレフ。老けたんじゃないのか?」

その人はそう言ったとたん、拳銃を「出現」させます。
そう、まるで「シルバー・チャリオッツ」の様にっ!
そしてその後、拳銃を私に突きつけて――ってこれはもしかして、最悪の状況なのでは?

「っ!貴様は……まさか!」

「そうよ、そうそう。覚えてたんだなぁ、ポルポルくぅ~ん」



「ホル・ホースゥゥゥゥゥゥッ!!きさま、よくもこんなマネをっ!」






… To Be Continued !!


あとがき

またまた二週間開けてのこの文章量。最近手が進みません。
……ああ、どうしよう。


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