「おー、いらっしゃい姉ちゃん。はちみつ酒でいいかい?」
薄暗い店内、カウンター席へと腰を降ろすと、店主は指で虚空を叩きつつ、俺へと尋ねた。
コクリと頷くと店主は立ち上がり、ガラスの瓶から木のコップへと注ぎ、俺の前に置く。
手に取り、*ごくっ*と少量喉に含む。
甘い酸味とアルコール特有の熱が身体へと広がり、俺は至福の吐息を漏らした。
「カナブキとバインハムのセットで」
「あいよ」
という声と共に、店主が奥へと引っ込む。
「コマンドタウンガイド」と呟き、タウンマップを選択。
何故なら一人で何もせず料理を待っているのは暇過ぎるからであって。
にしても美味いなぁ、はちみつ酒。
酒の美味さにぼーっと浸り、地図を動かしつつ、日々の生活こんなんでいいのかなぁとふと思いを巡らした。
最初の迷宮探索を終え、役に立ちそうにもない魔術師の遺産を売り払い、当座の資金を手にした俺がまず最初にしたことは、
美味しい料理屋やら酒場を探すことだった。
日々のやる気やら何やらは美味しい料理と酒によって出されるからである。等と理論武装で身を纏いつつ。
単純な話、以外と金になったため、少しだけ贅沢をしたかったからであって。
そんなことを考えていると、*コトリ*という音と共に、大きなパンとハムとチーズとレタスが置かれる。
これがまた腹も膨れるし、最初に頼んだはちみつ酒ととても合うのだ。
早速平らげつつ、はちみつ酒をお代わりし、いい気分になって店主だったりいつの間にか隣に座ってた客としゃべりつつ、
ウィスキーやら何やら飲みまくってたら、くらくらと周りが歪んできた。
少し飲みすぎたかな、と若干の眠気が漂う頭で考えること暫し。
水を飲んで多少アルコールを落ち着かせ、勘定をすませ、立ち上がり、出口へと向かう。
微妙に足がおぼつかず、一瞬視界が回り、ふらっと倒れそうになった。
おっと、とふんばったところで、不意に右腕を掴まれる。
「嬢ちゃんふらふらじゃねぇか。送ってってやろうか」
首を巡らし見れば、先程隣で何やら色々話した冒険者の男。
「大丈夫だ。後、嬢ちゃんって言うな」
と、俺は抗議した。女扱いされるのは仕方ないにしても、子ども扱いまでされたくはないからであって。
「ああ、すまんな。えーじちゃん」
「ちゃん付けもヤメロ」
俺は少々苛立ちつつ、掴んでいる腕を払う。
「あーでも気持ちだけ貰っとく。ありがと」
そう言うと男は照れたように笑い、
「気をつけて帰れよ」
と、一言。
なんか変なフラグが立ったような気がしたが、酒の迷いだと思いつつ、そのまま外へ。
「毎度。またよろしく」
という店主の声が背中へとかかった。
どうやって帰ったかは覚えていないが、気がつくと俺は宿のベッドの前へと辿り着いていた。
そのままベッドへと倒れこみ、目を瞑る。
ふわふわ浮かんでいるかのような気分だ。なんとなく今夜はいい夢が見れそうである。
迷宮世界
「起きなさい、起きなさい、えーじ」
どこかで聞いたような、優しく甘い響きを持った女の子の声。
そんな声に促され、俺は目を覚ます。
見覚えのある可愛らしい顔。その後ろは淡く白い空間が広がっている。
「……ルーエル?」
と、俺は呟いた。この世界にくる原因となった天使の顔。それが目の前にあったからである。
俺がそう言うと、天使はにこりと見惚れるような微笑を浮かべ、
「ねこパンチ!」
*バン*と招き猫のような手で俺の顔をぶん殴ってきた。
「てっ、いきなりなにすんだ!」
俺は顔を抑えつつ、起き上がった。酷い不意打ちだ。
天使は起き上がった俺から離れるように空中で身を引き、
「それは私の台詞なのですよ、えーじ」
と、不機嫌そうに言った。
「何がだよ」
俺は殴られた頬を右手でこすりつつ尋ねる。
「何を?何をと言いましたですか?えーじ。 ここ最近のあなたの生活を思い出して欲しいものですね」
と、腕を組みながら見下ろしつつ天使。
「あー……」
と、俺は呟く。
「いやまぁ、少し自堕落のような気がしなくもなかったけどさ」
折角暫く何もしなくても良さそうなだけのお金が入ったのだし、ちょっとぐらい休んでもバチは当たるまい。
それにまだたった二週間ほどであって。
ふぅっと天使が溜息を吐き、真っ白な地面へと降り立ち、座り込んでいる俺を冷めた目つきで見つつ、
「私は豚にBETした覚えはありません」
と、冷たい声で言った。
奇妙なことだが、その言葉に何故か俺は怒りよりぞくぞくとしたものが身体へ走り、
「いや待てって。今はちょっと英気を養ってるだけなんだって。もうちょっとしたらさ、」
「ニートは皆そう言うんですよ、このかたつむり野郎。明日やるではなく今やりなさいなのです」
現状が現状なだけにちょっとばかり胸が痛い。
俺はふぅっと溜息を吐き、
「うん、わかった」
「わかってくださいましたか!」
「後ほんのちょっとだけ異世界の生活を楽しんだら、」
「だめだめです! えーじ」
と、天使は頭を抱え、
「それともなんですか。夜中に一人アンアン喘いでるせいで本来の目的すら失ってしまいましたか?」
「ちょ、てめ」
その言葉は今までのどの言葉よりも響き、俺は恥ずかしさに顔が熱くなる。
「豚ではなくメス豚だったのですね。ルーエルちゃん間違っちゃったですよ。あははー」
「おいルーエル」
「なんですか?」
その天使の顔は今まで見た中でも一番楽しそうで、
「お前あれだろ。楽しんでるだろ」
「えへへー……って何を言わせるんですか、えーじ! こんな変態な言葉をルーエルちゃんに言わせるだなんて」
と、何故かにらみつける天使。
「全部勝手にお前が言ったんじゃねぇか!」
「まぁ、それはいいでしょう……仕方ありません、本来なら言いたくはなかったのですが」
と、不意に神妙な顔つきになる天使。
「なんだよ」
と、俺は空気を感じ取り尋ねる。
「もしこのまま迷宮に行かず、のんべんだらりとした生活を続けているとですね、」
「うん」
「死にます」
え?
「え、ちょ、マジで!?」
「マジです。後三日で死にます」
「ちょ」
いくらなんでも短すぎるだろ……。俺は少し焦り、
「それはどういった理由で死ぬんだ?」
「え? えっと……あ、そうそう! プレイヤーにはある一定の準備期間みたいなものがありまして。
それを過ぎると死んでしまうのですよ」
ん?と微妙に違和感を感じつつ、
「で、なんで今までそれを言わなかったんだ?」
「それはですね……」
と、黙り込む天使。
「それは……?」
と、俺は促す。
「……えっと…そうです! ほら、やっぱりルーエルちゃんとしてはえーじの自主性に任せたかったのですよ。
ほら、強制的に行かなくてはいけないという鎖に縛られてる気分ってあまり良くないじゃないですか」
と、もっともらしいことを言う天使。ていうか、
「それ嘘だろ」
「な、な、なんて事を言うんですかっ。このウスラトンカチは! この清廉潔白なルーエルちゃんに向かってなんたる暴言!」
「おめーもさっきから暴言吐きまくりじゃねぇか!」
俺はおもわず突っ込んだ。誰が清廉潔白だ。誰が。
「……まぁ、いいでしょう。とにかく私としては私の駒が簡単に壊れてしまうと困ります。
とにかく三日以内になんとしてでも迷宮に、」
駒言い切りやがった。てか、
「いやルーエル。死ぬっても嘘だろ」
俺がそう言うと、
天使は俺から顔を逸らしつつ
「ソンナコトナイデスヨ」
と、言った。
「なんで片言になるんだよ」
*コホン*と天使は咳払いをしつつ、
「そんなに信用できないなら私の目を見てください。ルーエルちゃんはBETした契約者に嘘は吐かないのですよ」
そう言ってこちらをみつめる美少女。
瞳はきらきらしていて一片の邪気も感じられない。のだけど、
「いやいやいや」
と、俺は首を振った。
「何ですか……まぁ、いいでしょう。
とにかく、私は伝えました。少しは危機を持ってえーじが迷宮に挑んでくれることを望んでいます」
「あー、はい」
と、俺は頷いた。
「わかっててくれて嬉しいのです。えーじが死ななさそうで、ルーエルちゃんとしてもハッピーです。
でももし万が一、私のことも信用せず、このまま自堕落な生活を続けるようでしたら、仕方ありません。
諦めの境地でえーじにこう言わさせて頂きますです」
「はい?」
「豚は死ね」
その言葉と共に、何故か笑みを浮かべながら震える天使。
何この天使怖い。
そんなことを考えていると、風景が霞み、次第に意識が浮き上がっていき、
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好感度 の 変動 がありました。
流々の冠亭の店主 ラウス の 好感度 が上がった。
現在 の 好感度 は 【好意的】 です。
冒険者 モルディア の 好感度 が上がった。
現在 の 好感度 は 【好意的】 です。
あなた は 夢の中で神に会い その信仰 を深めた。
あなた は 身体を休め1% の 潜在能力 をアップさせた。
あなた は 8時間眠り 十分な睡眠 を取った。
あなた は 目を覚ました。
おはようございます! プレイヤー えいじ
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目を覚まし、身体を起こす。
ぼーっと天使の言葉を考えること暫し。
「ま、あんなの嘘に決まってるさ」 と俺は再びベッドに倒れこんだ。
* * *
数時間後、俺は高く聳え立つ塔の前に居た。
いや万が一ということもあるのだし。
あの時はミュレンさんが居たけど今回は自力で探すのか、見つかるかなぁという感じで地図を見たところ、
地図には幾つか赤い矢印のようなものが記されていた。
その赤い矢印はどうやら迷宮を示しているらしく、その中の赤い矢印の一つを指で触ったところ、『初心者の塔』というテキストが飛び出した。
成程、こうやって探すのかーと思いつつ、それを頼りにおそらく30分程歩き、やっぱ馬とか覚えた方が良さそうだなぁとか考えながらも、無事辿り着いたのだった。
何はともわれ、そのまま入り口の扉へと向かい、
*ポン*とポップアップ。
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ここ は 初心者の塔です。
この迷宮 は 既に踏破済みです。それでも構いませんか?
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「ありゃ」
と、俺は呟いた。
町から出てすぐ表示されるような初心者用の迷宮に向かうのは得策ではなかっただろうかとか思いつつ、
いやいや、今回は隣にミュレンさんは居ないのだし、まずは自力で探索してみよう、本番はそれから! とポジティブに考えつつ、俺は塔へと入った。
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あなた は 迷宮の中へと足を踏み入れた。
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ん?と一瞬変なポップアップを見たような気がした。そういや前もそうだったような、と思いを巡らせつつ、
おっと、忘れるところだった。「コマンドマップ」 と、地図を表示させる。
ランタンのことも頭に浮かんだが、洞窟と違い光源が存在するようだった。
壁には一定の間隔で設置された燭台に蝋燭の炎が灯っており、頼りなさげに揺らめいている。
使用すれば更に明るくはなるだろうが、視界には全く問題なさげだったので、そのまま探索を開始。
「しかしあれだなぁ」
*キキキィ*とガラスを引っかくような耳障りな音と共にこちらへと体当たりを仕掛けてきた蝙蝠を刀で斬り払う。
どうにもなんていうか現れるモンスターが前よりも弱くなっているような気がするのだ。
もしかすると俺が強くなってるのかな。等と考えつつ、咆哮と共に向かってきたスモール・コボルトの喉を突き刺し、
そのまま足で蹴り飛ばしつつ刀を抜く。
いや、やっぱり多分俺が強くなってるんだろうな。何せ転職してから二週間以上経っているのだし。
迷宮に潜ったのはミュレンさんと一緒の時のみだけど。
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無色の薬が落ちている。
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ふと部屋の片隅に、試験管を発見。とりあえず「鑑定」を実行。
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それ は 睡眠薬 であることが完全に判明した。
使用した対象を眠らせる。
もし店で売れば 1Gと75S ぐらいになるだろう
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あー睡眠薬かーと納得しつつ、俺はローブの右ポケットへと入れる。
そのままマップを埋めつつ、遭遇するモンスターを難なく仕留め、螺旋階段を見つけ、
なんだ楽勝じゃないかと階段を登り始めた。
***
舐めていた。
あの時ミュレンさんにも言われてたじゃないか。
階段を昇り、通路にいた大ネズミをなんなく斬り払い、順風満帆と進んでいたのだが、一つ目の部屋に入った瞬間、俺はかつてない窮地に陥った。
そこに居たのは足が大きく、靴を履いていない、小柄の小人――ホビットだった。
初めてのホビットの出会いに少し感動したものの、それはモンスターだったようで、こちらを見つけるなり咆哮をあげ、走ってくる。
俺は刀を構え、迎えうつ。
種族が変わろうがやることはかわらない。ただ持っている剣を振り上げ、愚直に突進してくるだけである。
が、
不意に*どん*と脇腹を殴られ、俺は痛みに顔を顰めた。そして原因を探るため、首を動かした。
そこにいたのは一匹の大ネズミである。
このっ、と俺は刀を動かし、ふと近くに気配。
あ、と慌てて首を動かした時に見えたものは、こちらへとむかって振り下ろされる剣だった。
咄嗟に身を引いたものの、そのホビットの剣は*ザシュッ*と俺の左肩の付け根部分を斬り開いた。
「え?」
と、呟く。
血が流れ出し、ズキリという痛みが左肩を侵し始める。
「ぐ、この」
痛みに耐えつつ、再び刀を構えようとして、
じくりと今度は左足首に痛み。
見れば先程の大ネズミが噛み付いていた。
このっと空気を蹴るように左足を動かす。
*ぶちっ*と肉を千切られるかのような感覚の後、ネズミは俺の足から離れる。
ズキリ、と左肩が痛む。じくじくと左足が痛む。
痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。
痛いよぅ。
ホビットが剣を振り上げる。
「ひっ」
と俺は怯えつつ後ろに下がる。
*ガチャン*と振り下ろされた剣が地面に当たって音を立てる。
死にたくない。死にたくない。死ぬものか。
俺は泣いてその場に倒れこみそうになりながらもそれを堪え、痛みを我慢し、後ろへと飛びのき、刀を構えながら牽制し、先程きた通路へと後ずさる。
ホビットによって斬られた傷は深いのか、血がどくどくと流れている。服の中から血が伝い、ぬるりとした液体が左手に垂れてくる。
やばい。左の感覚がなくなって来た。
もっともまだちゃんと左手で剣は握れているから、痛みで麻痺しているだけのような気もするが。
じくじくと左足が痛む。ズキズキと左肩が痛む。
「ゴアアアアアアアァ」
ホビットが再び剣を振り上げ、こちらへと突進。
「調子にのんなああああこの野郎っ!」
俺は手に力を込め、相手のがらあきの胴を斬り開いてやらんと左足を踏み込み、
ズキィッという強い痛みによってバランスを崩す。
しまっ―――
刀は僅かに相手の左脇腹を掠め、斬り開いたが、それは致命傷というには程遠い。
俺は咄嗟に右へと転がるように倒れこみ、そのまま立ち上がろうとして、
がん☆
と、頭に衝撃を受け、倒れた。
*カラン*と刀が転がる。
畜生。今ならドラえもんの気持ちが良くわかると泣きそうな頭で思いつつ、慌てて転がり、
*ガチャン*と先程までの場所に剣が振り下ろされていた。
ぞぞっという悪寒を感じつつも転がりながら立ち上がり、咄嗟に右ポケットへと手を突っ込む。
再び咆哮をあげ、突進してくるホビット。
右ポケットに入っていた試験管を投擲。
*ガシャン*と、ホビットへ見事に命中し、そのまま一歩、そして二歩目にうつ伏せに倒れこんだ。
「は、はは」
と、俺は笑った。なんだよ、このあっけなさ。
「チュー」と鳴き声。
その鳴き声に反応し、左へと首を巡らす。
「このネズミがぁっ」
と、俺は突進してきたネズミへ向かって左足を後ろに振り上げ、そのまま蹴り飛ばす。
左足が捩れるような感覚と同時に強烈な痛みが走り、
「ぐにあうっ」
という意味不明の奇声をあげる。
しまった。怪我してる方の足だった。
「畜生」
俺はあまりの痛さに足を抑え、倒れこむ。
蹴り飛ばされた大ネズミが壁へとぶち当たり、弱弱しく立ち上がるのを確認。
俺は涙を流しながら痛みに耐え、胸ポケットから毒薬を取り出し、座り込みながら大ネズミへと投擲する。
*ガシャン*と命中し、緑色の液体がネズミへと降りかかる。
それにも構わずネズミはこちらへと足を数歩進めた後、そのままもだえ苦しむように倒れ、シューと青い蒸気を噴出し始める。
痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。ローブが血で汚れている。
「痛い。痛い。ひっく、痛い」
俺は泣きながら肩を抑える。全身がしびれ、激痛が絶えず流れている。
そこでふと、あることに気がついた。左肩の付け根部分を剣で斬り裂かれた筈なのだが、それが塞がっていたのだ。
魔法の衣服の効果だろうか。そんなことを考え、はっと気がつき、内ポケットへと手を突っ込み、青透明の液体が入った試験管を取り出し、肩へとかける。
しゅうっという蒸気と共に、焼かれているかのような痛みが走る。
「ぐうっ」
と、我慢。次第に痛みが治まってくる。
中身の液体が無くなったので再び別の試験管を取り出し、今度は左足へ。
こちらはすぐにえぐられていた傷も痛みもひく。
まだ左肩がずきずきするので三本目を左肩に少しかけ、それから浴びるようにあたまから振りかけた。
「がーっ、ごーっ」
という唸り声。
はっと俺は我に返り、毒薬を胸ポケットから取り出しつつ、その音源を確かめる。
それは倒れ伏しているホビットからだった。俺は安堵の息を吐き、転がっていた刀を回収し、そのまま眠っているホビットの顔に向かって振り下ろす。
*じゃきっ*という手応えと共に、刀はホビットの顔を両断。同時に蒸気を吹き上げ始め、その姿が砂となって崩れていく。
俺は壁へと寄りかかり、安堵の息を吐いた。先程まであった激痛は欠片もない。ファンタジーな薬だなと苦笑する。
ローブを見ると、こびりついた筈の血がなくなっている。
果たしてこれは魔法の衣服のせいなのか、迷宮のせいなのか、それとも先程の回復ポーションのせいなのか。
ふと一番最初の迷宮――ミュレンさんと入った迷宮で、コボルト二匹と数匹の大ネズミが同時に襲ってきた場面を思い出し、
「そうだ、パーティー探そう」
俺は呟いた。
ステータス
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所持金 336G 72S
カルマ -2
筋力 7 Great
耐久 8 Great
器用 7 Great
感覚 5 Good
習得 12 Great
意思 5 Good
魔力 0 Nothing
魅力 12 Good
クラス アイテム師
信仰神 ドルーグ
獲得スキル 交渉Lv.2 剣技Lv.1 言語Lv.Max アイテム鑑定Lv.2 アイテム効果上昇
状態異常 なし
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装備
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鉛の刀(4d3)
それは鉛で出来ている
それは錆びにくい
それは(4d3)のダメージを与える(貫通率20%)
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☆艶やかなる法衣『さようなら現世』 [7,0]
それは布で出来ている
それはDVを7あげ、PVを0減少させる
それは習得を維持する
それは体力回復を強化する*
それは剣術の理解を深める**
それは重装備での行動を阻害する****
それは盲目を無効にする
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布のズボン [3,0]
それは布で出来ている
それはDVを3あげ、PVを0減少させる
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皮の靴 [2,4]
それは皮で出来ている
それはDVを2あげ、PVを4上昇させる
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銅の腕輪 [0,1]
それは銅で出来ている
それは酸では錆びない
それはDVを0あげ、PVを1上昇させる
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翡翠の指輪 [6,0]
それは翡翠で出来ている
それは炎では燃えない
それは酸では錆びない
それはDVを6あげ、PVを0減少させる
それは生命を5上げる
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後書き
二章スタートですが、ちと出張のため続きはほんの少し遅くなりそうです。
てことで今回は長めに一つ。
どうでもいいけど投擲ちゃんと成功してよかった。