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[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/02/26 18:24
この作品はネタです。

マブラヴやっていて、BETAが不愉快になった為ヤッてしまった作品です。

オリ主がGジェネ設定とスパロボ設定を使いまくり、BETAを殲滅します。

原作のイメージがカナリ崩壊します。

と言うより……崩壊させます。

原作で人類が苦労するんだから二次では楽勝させたい。

と、言う設定で書きました。

読んで、気にくわないと感じたら、読むのを止めましょう。

ハッキリ言って、俺の妄想と思いつきのネタですから……

それが気にくわない、気分が悪いと感じるのならスルーしてください。

ソレが了承できるお心が太平洋の様な広い方が読んで頂ければ幸いです。


最後になりましたが未熟者ですがよろしくお願いします。




[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう プロローグ 【修正】
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/02/28 13:44
プロローグ・・・俺と神様との会話

俺は死んだらしい……

病院のベッドで眠るように死んだらしい。

俺はあの世に赴く筈だった……

しかし、太って眼鏡で金髪の小さな男が俺を引きとめた。

『BETAを殲滅してみないかね?』と……

その男は俺にこう言った。
『私の管理する世界であの醜く汚らしい地球外生命体がいること自体腹が立つ!! 挙句に我が世界を蹂躙だと!? 考えただけでおぞましい!!』
とのこと……

俺を巻き込むな……そんな事に……

『君はどうせ何も成さずに死んでいく身の上だ……もし死ぬなら何かを成してから死にたまえ』
と、俺に言った。

俺は病院のベッドで死を受け入れたはずだった。
俺は納得したはずだった。
俺は諦めたはずだった。
俺は生きることから逃げ出した敗残兵だ。
俺は泣くことが嫌になった臆病者だ。

ナノニ……

ナノニ………

俺はこの小太りの眼鏡で金髪のオッサンに言われた言葉に惹かれている……

何かを成して死にたい!
証を残して死にたい!
誇り高く死にたい!
諦めたくない!
逃げたくない!
敗残兵でもいい! 誇り高い敗残兵でありたい!
泣いてもいい! でも臆病者でもいい! だけど逃げ出すのは御免だ!

と……

魂が叫んでいた。

上等だ!! なってやるよ!! 誇り高い敗残兵に!!

こうして俺とオッサンとの契約は完了した。
俺の証を残すために。

『まずはじめに君が操る機体をくれてやろう。奴らを素手で殲滅するわけにもいかんだろう? 君が思う最強の機体を想像したまえ』 

俺はそう言われ想像した。
ある機体を。

『ほう……Hi-νガンダムか……ソイツは私も大好きだ』
オッサンはニヤリと笑いながらそう言う。

俺は病院のベッドで機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレンを読んでこのガンダムに一番心惹かれた。プラモでも一番よくコイツを作った。
確かに、ガンダムDXやウィングガンダムゼロカスタム、ターンタイプのMSやストフリの方が殲滅戦には御誂え向きだろうが、俺が心からガンダムと信じるのはHi-νガンダムおいて他に無い。

『しかし、それは火力が低いフィン・ファンネルを駆使しても殲滅戦には向かない……火力と手数と地上での機動性を上げるか……』

オッサンの言葉から改良が進められた。

改良点は、

① フィン・ファンネルの重力下での使用と高速機動。
② フィン・ファンネルの火力UPと連射力の向上と発射回数7発から50発に向上
③ フィン・ファンネルの稼働時間の延長
④ フィン・ファンネルの再充電の高速化
⑤ フィン・ファンネルの耐久性向上
⑥ Hi-νガンダムへのミノフスキードライブ搭載
⑦ Hi-νガンダムの武装強化
⑧ 対レーザー防御の徹底
⑨ 機体出力の向上
⑩ビーム武器でラザフォード場を抜ける様に改良
などが改良された。

各種オプションパーツとスパロボの改造と精神コマンドで何とかなりました。

Gジェネのプレミアム・リング・サイコミュで毎分精神力自動回復も有難い。

凄いな、フィン・ファンネルが重力下で使用可能とは……

そう言うとオッサンが……

『Gジェネとスパロボ設定だから宇宙、地上問わず使える。更にハイパーメガビームランチャーを通常攻撃に入れておいた。ケーブルも無しで撃てる。エネルギー消費を抑え、威力そのままの優れものだ。チャージ無しで連続使用ができる。通常攻撃と狙撃(マップ攻撃)が出来るからな。便利だぞ~これでハイヴを落とせ』

何でもありだな……

次にオッサンは俺の体を用意してくれた。
何か……テ○スの王○様の手塚に似てないか?
腐女子にウケそうな顔立ちだ。

身長180cm位か、眼鏡の無い手塚だよこれじゃあ……

『この体はスーパーコーディネーターとニュータイプ能力を高い基準で織り交ぜた肉体だ。顔は不細工よりは綺麗な方がいいだろうと思ってな……』

まあ、体があればそれでいいや。

『名前は何にするんだ?』

名前か……昔の名前じゃひねりが無いし、面白みも無い。
そうだ! いい名前があるじゃないか!

「俺の名前は、手塚 在都(アルト)と名乗ろう」

『最近の若い母親がつけるみたいな名前だな』

オッサンが呆れている。
いいじゃないか、人のつけた名前にケチをつけるな。
コレでパーソナルマークもアムロのが使える。

『次はお前の補給基地を作る。何処がいい』

俺は考える。補給基地はできるだけオルタネイティヴ4発動に合わせて太平洋の無人島に建てたい。
さらに純正の食料生成プラントとMSの製造ラインやパーツ、武器弾薬の製造、MSやMA、の輸送機の生成や戦艦の生産も出来る方がいい。
金や資源の心配もある。
俺一人じゃ殲滅戦を戦えない。
俺の部隊の編制も行いたい。
ガンダムの製造ラインも設けたい。

その事をオッサンに相談したら二つ返事で快く作ってくれました。

しかし、作れない物もある。00ガンダムシリーズとターンタイプMSだ。

00ガンダムシリーズ純正のGNドライブが作るのに時間が掛かる事。

ターンタイプは全ての資源を積み込んでターンタイプがようやく1機生産が可能なのだ。

仮にターンタイプを作っても月光蝶で人類がリセットされはシャレにならない。

それでは、オッサン曰く、『人類の今まで築き上げた歴史を消してしまって、原始時代からやり直す事は見ていて忍びない』との事なので、契約違反に当たる。

最初は量産機をセコセコ大量に作った方がいいな。

Gジェネの各種パーツの製造もできる様にした。

お金はオッサンが向こう側で使えるブラックゴールドカード(上限なし無限に使える)をくれた。

鉄などの資源は島に大量に積み込んだが、もって10年が限界、∀のナノテク技術で海水から核物質を取り出し、ナノテクでヘリウム3の生成も可能。

各国から買い取る事を考えたが、俺の存在を最初から知られるのは不味い。

いくら、チートでもMS作るのに鉄鋼物は必要でそれを大量にとなると、どんなに細工してもばれてしまう。

1、2機作るの為に鉄鉱石を輸入するなら何とかごまかしはきくが、それ以上だと怪しまれる。

後、レーザーに対抗できる改良型ミノフスキー粒子の製造が可能になった。


殲滅戦の勝敗は10年間で俺がどれだけ揃えられるかだ。

資源はベータによって取りつくされている可能性がある。
各国だって資源を売ってくれと懇願するくらいだ。
現地調達は望めない。
何せ、今日の飯すら事欠く有様なのだ。あの世界は。

資源のことを相談したが、地球の構造を変えることは出来ないらしい。
あくまで干渉は出来ても間接的な干渉くらいらしい。

次に情報だがアッサリとくれた。
全ハイブの詳細なマップや世界情勢、表から裏まで網羅したロムをくれた。
付録で全ガンダムシリーズの機体データとその設計図がついていた。
付録が一番重要だ。

次に俺は戦闘訓練を受けた。
最初は上空でレーザー級の餌食で何度コンテニューしたか解らないが、ニュータイプ能力を自在に使いこなせるようになりSEEDも自在に扱えるようになった。
仕舞いには奇声交じりでハイヴを単独攻略できるレベルに達した。

「このHi-νガンダムすごいよ~~~~~~~~お!! さすがνガンダムのお兄さん!!」

とか

「いけ!! フィン・ファンネル!!」

とか

「突っ込む事しか脳が無いとは……だからお前は阿呆なのだ!!」

とか

「なんと~~~~~~~お!!」

とか

「グウ~~~レイト!!」

とか

「狙い撃つぜ!!」

とか

「ここは地球だぞ!! 貴様ら場所を弁えろ!!」

とか

「Hi-νガンダムは伊達じゃない!!」

等々、色々叫びながら攻略した。

次に俺があの世界に武力介入する時期だが1993年のBETA、全欧州大陸を完全制圧の時期に武力介入することに決めた。
中国で行われる九・六作戦に介入してもよかったが、余り香月 夕呼と接点を持ちたくない。というのが理由だ。
余り悟られたくない。
手札は見せずにいた方がいいに決まってる。

欧州に武力介入する前に自分の立ち位置も確保しておきたい。

オルタネイティヴ計画の権限に左右されない組織。

方法は国連の事務総長を脅して独自部隊を、それも機密性の高い、大隊規模の兵数を確保し、俺の意のままに動かせる部隊が必要だ。

今の年齢で15歳、2001年には23歳の計算だ。いけないことは無い。
8年で、どの白銀 武が介入するにしても、香月 夕呼や各国に依存しない軍隊、国連軍をアメリカから切り離し、国というシステムから切り離された国連独自の部隊を作る必要がある。

ベータ攻略の為の戦術、戦略をMSでの戦いでの戦術、戦略の構築も必要だ。

やれやれ、やることやクリアする障害が多すぎる。
思っていたほど楽でもない。

でも、それでも俺はやってやる。
俺のしてきた事が例えガキの我侭だろうが、見苦しい行為だろうが関係ない。
俺は俺のやりたい様にやって、ベータ殲滅して蹂躙してやるよ。
誰が相手だろうが、アメリカがチンケな事コソコソしようがそんなの関係ない。
お前らの道理を俺の無理と我侭がぶち壊す。

さあ、蹴散らすぞ!! 殲滅戦の始まりだ!!

ベータよ!! 豚の様に悲鳴を上げろ!!

ベータよ、俺に使命を果たさせてくれ。俺にお前達を殲滅させてくれ。

ああ……楽しみだ!! 実に楽しみだ!!

『よし、ではorder はベータのSearch and destroyだ。それ以外は何もいらない。必要ない。正面から堂々と打って出ろ。叩いて潰せ。お前と我が世界に邪魔なものは蹂躙し蹴散らせ』

オッサンは顔に狂気の表情を浮かべながらニヤケながら高らかに宣言した。
ああ、何と素敵な命令か……
思わず股座が熱くいきり立ちそうだ。

「素晴らしいorderだ!! 実にシンプルで解り易い!! いいだろう!! 殲滅だ!!」

色々考えたがソレは素晴らしくシンプルで馬鹿ばかしいほど解り易い。

「ハイヴはどうする?」

俺はそう質問するとオッサンはこう言い放つ。

『燃やせ、壊せ、爆破しろ、見ているだけで不愉快だ』

「解ったそうしよう」

俺はそう答えHi-νガンダムに乗り込み起動させ光に飛び立つ。






[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 1
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/02/28 13:45
Hi-νガンダムで光を突き抜けるとそこには青が広がっていた。
眼下に広がる海、眼前に展開する空。
蒼一色。

「綺麗だ……」

俺は知らず知らずそう呟きを漏らした。

生まれて初めてだ。空をこんなに青く感じたのは。
生まれて初めてだ。海を見下ろしたのは。

俺の世界は病室と病室のベッドと病室の窓から見える外の景色が全てだった。

俺は自然と涙を流した。
その世界の蒼さに、その世界の美しさに、その世界の広さに。
この空の為にも奴等ベータを駆逐する必要がある。

俺はコンソールを操作し、俺の基地の座標を出す。

「さあ、俺の基地へ誘え、ガンダム」

俺はHi-νを自動制御に切り替え足と腕を組み目を閉じる。

暫く飛んでいると少し大きめの無人島らしき物が見える。
どうやらここらしい、俺の基地は。

Hi-νガンダムは緩やか高度を下げながら島に近づく。

突然、島の木々や土は、鉄の分厚い板にその姿を変えた。


「光学映像迷彩によるカモフラージュ……しかも、赤外線及びレーダーのジャミング機能のオマケ付か……なるほど、この世界のレーダー技術や衛星では認識できないな」

Hi-νが近づくと、鉄のハッチが空気の抜ける音を立てながら上にスライドした。
その狭き穴に迷い無く入り込んでいく。

暫くMSサイズが通れる穴を進むと行き止まりだった。
Hi-νが方向転換し、穴の出入口を見る形で着地すると、足が固定される。
金網のシャッターが閉められ、下に下りていく。
降りた先、そこにはだだっ広い、ソレこそMSが100機格納可能な空間が広がっていた。

「さて、ハンガーにコイツを格納した後、探索だな。何がどうなっているのか解らん」

俺は機体を格納した後、ラダーで降り立ち探索を開始する。

巨大ハンガーを歩き、ようやく出入口に到着するその近くにコンソールがありソレを操作する。

なるほど、こいつの構造は時計と同じ構造なのか。


第1区画はMS製造ライン。

第2区画は資材置き場。

第3区画は武器弾薬の製造ライン。

第4区画は精密機械の製造ライン。

第5区画は食料生成プラント。

第6区画は戦艦、MA製造ライン。

第7区画は日常生活品の製造ライン。

第8区画は戦艦修理格納庫。

第9区画はMS修理、格納区画。俺がいる場所はここだ。

第10区画は戦闘機、ヘリ、輸送機の修理格納庫。

第11区画はナノテクノロジー開発区画。

第12区画はシミュレーター訓練施設。

中央には作戦司令室。


と、いった感じだ。カナリ広い。海底に建造してその上に人工の島を作った形だ。
しかもここは地下施設だ。上がある思いコンソールをいじくる。
地上施設は、居住区、第1から第12カタパルト、各種レーダー、基地防御兵器、陽電子リフレクター発生装置など要塞並みの状態だ。
コレならベータに攻め込まれても防衛は可能だ。

さらにこの地下には巨大な核融合炉と核物質製造ライン、ミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉製造ラインがある。

至れり尽くせりだ。

俺は端末の案内に従い中央司令室に向かう。
床が動く。空港にあるやつみたいだ。

通路を歩くこと数分、中央司令室到着した。
端末を弄くり、ロムを放り込む。
その中から国連事務総長のファイルを開く。

「ふむ……この事務総長、比較的アメリカから離れてはいるがアメリカとの裏取引もあるみたいだ……事務総長になるために多額の賄賂も行ったみたいだ。後は、政敵のスキャンダルをテレビ局に流したりと色々だな」

まあ、政治家なんてそんなもんだ。
叩けば埃は出てくる。
まあ、後ろ盾は欲しい。
自分の行動に正当性を持たせなければならない。
例えベータを殲滅しても無所属ならその正当性が消えてなくなる。

俺は先ずはじめにかく乱のダミー衛星を多数、製作した。

後はアメリカのニューヨークにどう潜入するかだ。

俺は小型のステルス潜水艦で潜入する事にした。

衛星を作って飛ばすのに3日、潜水艦を作るのに3日かかった。

残り、一週間は潜水艦の操縦訓練とスキューバダイビングの訓練に費やした。

1週間後、俺は潜水艦に必要物品を積み込み、出発した。

数日間自動制御で移動し、ようやくアメリカ、ニューヨークに到着、潜水艦は闇夜に紛れ近くの埠頭に沈めた。

俺は、1週間前に偽名と偽造した身分証を使い、手配した車に乗り込む。

さて、仕込みは基地でやってある。後は、事務総長が食いつくのを待つだけだ。
俺は車を運転しながらこれからのことを考えながらホテルに向かう。

ホテルに到着し、チェックインを済ませ、部屋のベッドでゴロゴロしていると俺の携帯電話が着信を告げるコールが室内に鳴り響く。これも偽造した偽のIDで手に入れた物だ。

食いついた。

俺はほくそえみながら携帯を通話状態にして出る。

「はい、手塚です。事務総長ですか?」

『ああ、そうだ……君かね……私に“アレ”を私のパソコンのeメールで送りつけてきたのは……?』

電話のスピーカーから聞こえたのは4、50代の男の声だった。
その声は威厳に満ちてはいるが余裕が無い。
心なしか声が上ずっている。
相当の焦りが見えるがさすが政治家、そのことをうまく隠している。
一般人ではまずバレないほどだ。
諜報機関の人間でもその判別が難しいだろう。
さすがニュータイプ能力、相手の焦りや、戸惑い、恐怖を敏感に感じ取れる。

「ええ、中々面白い内容だったと自負していますが……どうやらお気に召さなかったようですな」

男は唸りながら押し黙る。
ふん、今度は怒りか。
解り易い男だ。実にからかい甲斐のある男だ。
この男で遊ぶのはこの辺にしておこう。交渉が進まない上に関係が拗れそうだ。

「直接会ってお話がしたい。時間はそちらの都合に合わせますが?」

俺の言葉に事務総長は考えながら呟く。

『明日の午後1時でどうかね……?』

「ええ、構いません。私が其方に赴きます」

詳細を話し合い俺は携帯の通話をオフにする。
盗聴の恐れがあるのでダミー衛星を幾つも打ち上げ撹乱した。
アメリカも各国の諜報機関も俺にたどり着くことは不可能、国連も居場所を特定することは無理だ。
ボイスもボイスチェンジャーで誤魔化してある。
さて、明日の交渉で何処までやれるかだな。


翌日、12時30分、俺は国連本部ビルの前にスーツ姿で立っていた。
フム、中々大きいじゃないか。
ここで各国が国の利権を巡って争う場か。
さぞや魑魅魍魎が住んでいるのだろう。
楽しみだ! 実に実に楽しみだ!
さあ、ロンバルト・ゼンライ国連事務総長、俺を楽しませてくれ。

俺は受付を済ませ、事務総長室に案内される。
俺は扉を潜るとそこには、中年の紳士が立っていた。
身長は170センチ後半、髪型は金髪に白髪が所々混じっている。
顔は痩せ型、鼻の下に立派な髭を蓄えている。
なるほど見た目は中々のジェントルマンだ。

「初めまして、ロンバルト・ゼンライ国連事務総長閣下殿、私の名前は手塚 在都と申します。以後お見知りおきを」

は皮肉とジョークを込めて礼をする。

「……君かね、私にこんな下らんことをしてきたのは?」

ゼンライ事務総長は無表情で呟く。
その表情からは感情は読み取ること出来ないが、ニュータイプ能力で感じ取れたのは、怒りと、焦りと、若干の興味だった。

「ええ、楽しんで頂けましたかな?」

「ふん、皮肉かね? まあ、いい、君は何を話したいのかね?」

俺は出来る限り最大限の微笑を浮かべこう言った。

「ベータを殲滅です。ベータを蹂躙です。ベータを虐殺です。解り易く言えばこんな所でしょうか」

ゼンライ事務総長は眉根をピクリと微妙に動かした。

「ほう……その様な方法がこの世界にあるのかね? 残念ながらこの世界にはその様な御伽話は今の所、存在せんよ」

俺はその言葉からヨーロッパの状況は余り宜しくない事を感じ取る。

「どうやらヨーロッパの戦局は宜しくないみたいですな?」

事務総長は溜息を吐きながら呟く。

「ああ……2ヶ月で欧州は陥落する。最後まで抵抗を続けていた北欧戦線は瓦解し、欧州連合軍司令部が全軍の撤退と欧州の放棄を宣言するだろう……」

事務総長は忌々しそうに呟く。

「方法ならありますよ。御伽話みたいな現実が」

俺はHi-νガンダムの素人でも解る資料を事務総長に見せる。
しばらく事務総長は資料を見ていたが余り信じていないみたいだ。

当然だ、詳細なデータは省いている。

「……君はこんな物が用意できるのかね? 私をからかうのはいい加減にしたまえ」

ソレはそうか、確かにたった1機でハイヴの攻略が可能など信じられないだろう。

「事実です。まあ、私に国連軍の大佐の階級と特務極秘任務部隊の創設をお約束していただければ欧州の戦況を“少し”は楽観的にしてみせるつもりですが?」

「いいだろう……その代わり成果を見せろ。私に見せてみろ。御伽話を」

「了解した。この上なく殲滅して蹂躙して見せよう」

俺と事務総長の会合は終了した。
あの様子だと余り当てにしていないだろう。
それならこちらもそれ相応の実力を示し納得させるだけだ。

「では、行きたまえ」

事務総長が退室を促す。

「それでは失礼します」

俺はそう言い退室する。

「ああ、待ちたまえ。最後に確認だ。君と君の機体は本当にハイヴを陥落できるのかね」

事務総長の質問に俺は振り向き様にこう答えた。

「ご安心を事務総長、私の愛馬は凶暴です」

ホテルを引き払い、すぐ基地に戻ろう。


俺は基地に戻り、即座に武力介入を考える。
武力介入するのは北欧戦線。
潜入先はノルウェー王国フィンマルク県。
最終目標、フィンランド共和国にあるロギニエミハイヴ。(正確な地図的表記はロヴァニエミ)
何も考えずに一直線に突き進み、進行を阻むベータは殲滅し、ハイヴを蹂躙。
俺一人だから実にシンプルで解りやすく馬鹿馬鹿しいほど簡単だ。

さあ、Hi-νガンダムよ! オウナス川を下り突き進め!
ラップランドの大地をベータの死骸で埋め尽くせ!
さあ! 殲滅戦の始まりだ!
前にも後にも右にも左にもベータの死体で舗装してやる!

俺はHi-νガンダムに乗り込み、OSを立ち上げる。

コックピット正面にあるディスプレー画面にこう表示された。

General purpose
Utility
Non-
Discontinuity
Augmentation
Maneuvering weapon system


と画面に表示された後、ラインが引かれその上に、

【GUNDAM system】

と表示された。

この語源は、確か、ガンダムがこう表記される様になったのはガンダムMkⅡ辺りからだったと思う。
日本語での意味は確か、全領域汎用連続増強機動兵器の意味だったか。
なるほど俺に御誂え向きだ。全領域で連続して殲滅することが出来る兵器だ。

カタバルト制御をHi-νガンダムで制御出来る様に切り替える。
さて、いくぞ!

「Hi-νガンダム、行きます!」

カタバルトはHi-νガンダムを勢いよく前方に飛び上がらせる。
俺はペダルを全開に踏み込む。
Hi-νガンダムは滑る様に蒼い空に飛び立つ。



南アメリカから迂回して飛ぶこと数時間、ノルウェー王国フィンマルク県の上空に到着した。
速い、速い、長距離をあっと言う間に到着してしまった。

眼下には戦術機とベータが交戦していた。
数はベータが数えるのがめんどくさい数だ。
戦術機は500機位。

ビームライフルを乱射しベータ数十体を焼き払うと俺は地上に降り立つ。

訳が解らず呆然と見ていた北欧戦線に参加していた欧州連合軍衛士は静寂の後、混乱した。

『何だ!? あの戦術機は!? データにないぞ!!』

『何処の機体だ!?』

『左肩にUNのマーク!? 国連軍か!?』

『光を放っていたぞ! レーザーか!?』

等々、いい感じに混乱気味だ。

俺はビームライフルを仕舞い、背中からハイパーメガビームランチャーを取り出す。

「さあ、蹂躙の時間だ!!」

俺はトリガーを引き、左から右へと薙ぎ払う。
野太い光が戦車級から要塞級まで等しく滅びという名の死を与える。
残ったのは更地だけだった。
アレだけいた有象無象のベータの群れが消滅した。
欧州連合軍衛士の混乱は最高潮に達した。

『何だと!? アレだけいたベータが……消滅した!?』

『マーカーからベータの反応が消えている……』

『嘘だろ!? 数えるのも馬鹿馬鹿しいほどいたベータが一撃で……』

『俺は夢でも見てるのか……』

俺はそのまま飛び立ち、上空からベータを殲滅しにかかった。
しばらくハイメガビームライフルで上空から蹂躙していると、何かを感じた。

「この感じ……来る!」

そう感じ俺はレバーを動かし回避する。
機体を掠める様に数十もの光の線が過ぎ去る。

「レーザー級か、当たりはしない!!」

俺は回避しながら優先的にレーザー級を叩く。

ソレを見た欧州連合軍衛士達は唖然とした。

『レーザーを避けてる……』

『そ、そんな馬鹿な……』

『あ、ありえない……』

『奴は……一体なんなんだ……?』

最早驚くことしか出来ない状態だ。
仕方ない、あわや撤退か全滅かと言う選択肢しか残されていなかった彼らにとってソレは余りにも現実離れしすぎていた。
レーザーでベータを焼き払い、上空を高速で飛び回り、レーザーを避けるのだ。
自分たちは御伽話の英雄を見ているのかと疑いたくもなる。

「しかし、数が多い、ならば!!」

狙うのはレーザー級だ。
そう俺は思い、Hi-νガンダム最強にしてこの機体の象徴たる兵器の名を叫ぶ。

「いけ!! フィン・ファンネル!!」

背中のフィン・ファンネルは高速で解き放たれ“コ”の字になって飛び立つ。

3機は上空からもう3機は地上スレスレを飛ぶ。

「そこだ!!」

自分の頭のイメージと同じ通り動くフィン・ファンネル。
方向や速度を変えながら突き進み、コの字の間から野太いビームを吐き出す。
桃色の光りの柱が撃ち出される。
無数のビームの柱は次々とベータを貫き、破壊していく。
レーザー級も優先順位をHi-νとフィン・ファンネルに絞ったが俺も落とさせはしない。
俺はフィン・ファンネルを頭で操作し、レーザーを回避し攻撃する。
さあ、突き進むぞ!! ハイヴへ一目散だ!!
俺はハイヴを目指し突き進んだ。

戦闘をしながら唖然と欧州連合の衛士の一人は唖然としながら呟いた。

『あ、悪魔……国連軍の……白い……悪魔……』と。


ベータを蹴散らし、突き進むとデカイ岩みたいな物が見える。

「アレがハイヴ……デカイ……だがやる事は一つだ」

俺は鬱陶しいレーザーを回避しながらハイヴのマップを開く。

ハイヴの構造は複雑だ。脆い所はいくつもある。そこに、撃ちこんでやればいい。
俺はハイパーメガビームランチャー最大出力に設定。

「落ちろ!!」

撃ち込んだ。

野太いビームの柱は大地に刺さり、近くにいたベータの群れを巻き上げ吹き飛ばしながら地下深くへと突き進んでいく。
その間、フィン・ファンネルを操作しレーザー級を狩る事も忘れない。

「まだ開かないか……なら、もう1発お見舞いだ!!」

そう叫びながら打ち込む。
そうして今度は長時間撃ち続け、5秒でMSが通れる穴が開いた。

「さあ、行くぞ!!」

そう叫びながら全開に踏み込み急降下しながら開いた穴に飛び込む。

暫く穴を下に下にと突き進んでいると、そこには広い空間と淡く光る物体があった。

「コレが反応炉……さあ、チックメイトだ。沈め!!」

フィン・ファンネルを全機放出し最大出力で撃つ。
反応炉は停止、俺の作戦は終了した。
基地へ凱旋だ。

基地へ帰る途中、一機の戦術機がベータに追い回されていた。
ほっといてもよかったが俺はその戦術機を助けた。



???サイド

私は必死で逃げていた。後方にはベータが迫っている。
兵装は全て使い果たした。
燃料も残り少ない。
戦闘中に部隊とはぐれてしまい、ベータの群れに巻き込まれてしまう。

「はぁ、はぁ、はぁ……このままじゃ……きゃああああ!!」

機体に強い衝撃が掛かる。
しまった! 追いつかれた!?
要撃級に足をやられた!?

駄目!! このままやられる!!

そう思った時だった……

桃色の壁が私を守るように展開されていた。

「い、いったい何が……」

そう呟いた瞬間、桃色の光の柱がベータを貫いていく。

「これは……いったい何が?」

余りに現実離れした状況に頭が着いていかなかった。
私は上空を見上げるとそこには、戦術機らしき物がいた。
ソレは周囲を飛んでいた物を背中にくっつけた。
その姿を見たとき私はこう思った。

“御伽話の天使みたい”

と……

『大丈夫か?』

突然、通信が入り、私と同じ年の頃の男の方が語りかけてきた。

コレが私、エターナ・フレイルと手塚 在都との出会いだった。






[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 2
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/02/28 14:03
体がカナリヤバイ。
当然と言えば当然だ、種割れとニュータイプ能力をフルで10時間ブッ通しで使い続けたんだ。
この種割れ、種や種運命では解釈が殆ど無かったが、訓練でしていて解った事がある。


ソレは、SEED能力を発動すると圧倒的な脳の処理速度と反応速度、急な状況への高速対
処能力、動体視力の強化、肉体の強化がある。
確かに便利だが本来出来ない事を限界超えた所でやっている。
その反動としてもの凄い体力の消耗が体に来る。
キラが戦闘の所々で種割れを解いているのは、体に負担を減らす為だったみたいだ。
さらにこの上にニュータイプ能力を駆使している。
疲労感が体を襲ったのは6時間を越えた辺りだった。
最初は軽い頭痛、めまいが襲い、7時間で身体の倦怠感が襲う。
8時間後にはソレ等が徐々に強くなる。
今は使っていないから抑えられているが、また使うと同じことが襲う。
キラの場合、長年使い続け、体がその負荷に耐えれる状態になっているのと、種割れの発
動と解除を状況に合わせて使っている事が体の負荷を軽減している。

俺の場合、実戦が今回初めてで、種割れの長時間使用の経験が無いのとその負荷に耐えれる体になっていない事がこの疲労の原因だ。
今は殆ど痩せ我慢に痩せ我慢を重ねた状態だ。

俺は訓練で試したが、今回の実戦で何処までやれるかの試験みたいな事をした。
結論から言えば、ベータ駆逐とハイヴ攻略は今が限界だ。
もう一度同じことヤレと言われても無理かもしれない。
凱旋なんて心で虚勢はっても状況は最悪だ。
余裕なのは外面だけだ。
やはり部隊が必要だ。
チェスでもクイーンだけではゲームにならない。
戦闘なら尚更だ。突発的な事態や偶発的な戦闘、アクシデントに今の状態では対応できない。
今回は運が良いとしかいい様が無い。


ソレよりもだ……


自分でさえ満足に出来ないこの状況で人様を助けるだと?
俺は馬鹿か?
心の中で頭を抱えて唸っている。正直、情けない。

『あの……貴方は……?』

助けた女の子から通信が入る。
何か話せ、俺。
無言は不味い。

よく考えたら、俺は他人と話したことが余りない。
生前は両親と兄弟、看護婦さんと病院内学級の奴位だ、会話したことあるの。
ハッキリ言って他人とのコミュニケーションは苦手だ。

「無事の様だな。俺は国連軍の手塚 在都大佐だ、君は?」

『し、失礼しました。国連軍欧州方面、第61機甲師団所属、エターナ・フレイル少尉であります!』

エターナ……フレイルだと……
何でGジェネのキャラがこの世界に!?
しかも戦術機に乗って!?
顔を見たらマジでエターナだ。
銀髪に青い瞳、顔立ち、間違いない。
Gジェネで貴女の狙撃能力には助けられました。マジで。

このまま放置する訳にも行かないので俺は彼女をHi-νに乗せることにした。

「……とりあえず、機体を廃棄しろ。その状態では満足に動くことも出来まい」

俺がそう言うと、彼女は慌てて大丈夫だと言う。

『いえ、大丈夫です。一人で行けますから! 私に構わず!』

強化装備があるから大丈夫か……

「解った! 死ぬなよ!!」

『了解!!』

そう言い彼女はコックピットのハッチを開き彼女はコックピットの外に出る。

俺は去り際に彼女に命じた。

「いいか、ここで見た全ては忘れろ。命令だ。いいな?」

俺は出来るだけ強い口調で彼女に言う。

『り、了解……』

彼女はそう答え、去っていった。


俺は振り返る事無くそのまま飛び立つ。
さあ、帰ろう……今日は疲れた……

「また、会おう、エターナ・フレイル……」

俺は基地へと飛び立つ最中そう呟きを漏らした。



俺が基地へ戻ってから3週間が過ぎた世界の反応は様々だった。

主戦場となった欧州連合は微妙な反応だった。
突如、国連の戦術機が戦場に降り立ち、ベータを蹴散らしながらハイヴを陥落した。
言葉だけを聞くと、荒唐無稽で馬鹿馬鹿しく、夢物語だと切り捨てる所だが、戦闘に参加
した戦術機がソレを記録していた為、馬鹿馬鹿しいとも嘘とも切り捨てられず国連に機体
の詳細を問い合わせても、返る返事は“我々が知りたいくらいだ”といった具合の回答し
か得られず。北欧を如何すべきかで一杯一杯でそれ所ではなかった。

逆にこの話題に解りやすく食いついた国がある。アメリカである。
彼らは国連にあの機体は何なのかを問いただした。
半ば脅迫紛いの外交で聞き出せたのがあの戦術機の名は“ガンダム”としか明かされずじ
まいだった。

他の国々は関心はあるが表面上はそれ所では無いと言った態度を見せてはいるが、諜報
機関で探りを入れることは忘れていない。
ただ、やっぱり解ったのは“ガンダム”と言う名前しか解らなかった。

軍人たちの反応は様々で、北欧戦線に参加していた衛士はソレを恐怖しながら語る。
他の衛士達は“そんな御伽噺が……”と言ったものの記録が残っているのでそうも言い切れずにいた。

ガンダムの名は“国連軍の白い悪魔”と共に戦場伝説として語りつがれた。


国連本部ビル事務総長室、ここにガンダムを知る3人の人物が集まった。
一人は俺、手塚 在都。
2人目は国連事務総長、ロンバルト・ゼンライ。

そして最後の人物は国連軍の軍服に身を包みながら、何で自分はココにいるのだろう? 
と言った表情を浮かべるエターナ・フレイル少尉である。

まず、口を開いたのは事務総長だった。

「君の言った通りになったな、御伽話は之にて閉幕……では無いのだろう?」

中々芝居がかった言い回しに俺は微笑を浮かべ答える。

「ええ、これはほんの序章に過ぎません。ようやくプロローグが終わった所でしょうか……」

「ガンダムがこれほどの物とは、関心を通り越して呆れ返るな……所で……」

事務総長は話の途中でエターナを見ながら口を開く。

「彼女を君の部隊に入れるのは本当かね?」

事務総長の質問に俺は簡潔に答える。

「ええ、彼女はガンダムと私を見てしまった。これは見過ごす事は出来ません。
今のところ彼女がガンダムや私の事を漏らした形跡は無いが
これからもそうとは言い切れない。欧州にいる以上、欧州連合やソ連、アメリカが彼女に
辿り着き、拉致監禁して尋問、拷問、薬物投与などで口を割らせる可能性がある。
ならいっその事、彼女を私の“保護下”に置いた方が楽でいいです。
ガンダムの存在をまだ明るみにしたくないので。無論、衛士として戦ってもらいます」

それに、副官を欲していたところだ。渡りに船とはこの事だ。
それに俺の直援機は欲しい。
正直、一人では今後の戦いが厳しい。
彼女の事は事務総長に頼んで、調査をしてもらった。

エターナ・フレイル

年齢、16歳

出身国、イギリス ロンドン

国だけでなく多くの人々の人命を救いたいと思い、イギリス陸軍ではなく、国連軍欧州方面訓練校に入隊。

成績は、射撃A、格闘戦総合B-、体力B+、通信技術B+、部隊戦術B-、通信技術C+、狙撃A+、戦術機適応A、戦術機操縦技術B+

コノ評定見てるとマジでGジェネのエターナ・フレイルの初期みたいだ。

「ガンダムの存在を隠すためとは言え、欧州に国連軍の増派をしたのは流石に怪しまれる
だろう。人事異動で彼女の他に数千人単位で動かしたとは言え……綱渡りが過ぎないか
ね? アメリカ以外の国からは批判的な声が上がっているよ。“国連は何時からアメリカの組織になったのか”とね」

事務総長の言葉に俺は鼻を鳴らして答える。

「言わせたい奴には言わせておけばいいです。それに欧州も少しは安心できましょう? 
ハイヴは落としたがその土地を維持できないでは話にならんでしょう? せっかくの無償
で手に入れた物だ。欧州も手放したくは無いと思います」

俺の言葉に事務総長がため息を漏らしながら言う。

「しかし、南にはヴェリスクハイヴとミンスクハイヴにブダペストハイヴが控えている。再度進行されたら今度こそ欧州は陥落するぞ」

「そうさせない為に、欧州もNATOとワルシャワとの共同でフィンランド湾からオネガ湾を繋ぐ防衛線を敷いているのでしょ? ソ連もコラ半島を取り戻したんです。失わない為に嫌でもやるでしょう。アメリカとしても欧州が落ちれば大西洋挟んで次は自分達だと解っているはずです」

「所詮は烏合の衆だよ。まともな事は期待できん」

俺はため息を吐きながら呟く。

「ふん、国家間の腹の探り合いか……全く……国に魂を縛られた連中はこれだから困る……」

「全くだ……」

事務総長はそう言いつつも、俺の事は信用はしていないだろう。

国籍、所属ともに不明な上、現行の戦術機をはるかに上回る機体を単独で運用できる技術力とありとあらゆる情報を握っている人物を信用はしないだろう。


事務総長は真剣な顔になり問いただす。

「如何するのだね? 次の御伽話は?」

俺は地図を見ながらこう呟く。

「一つ一つハイヴを潰すのは正直手間です。何時ベータが対策を立てるか解らない上に私
も同じ事をもう一度と言われれば無理としか言えません。リスクを考えたら……早期に部
隊編制を行い、ヴェリスクハイヴとミンスクハイヴを同時に叩く二正面作戦をするべきか
と……」

一気にカシュガルを叩きたいが、今の俺では無理だ。

それに部隊の運用試験もかねて、ハイヴ攻略をしたい。

「部隊編制と作戦は君に一任しよう。話がそれたな、彼女の意見は聞いたのかね?」

事務総長の言葉に俺の思考が引き戻される。
どうやら、当分は俺を泳がせておくらしい。
それに、こんな機密事項聞いてホイホイ帰す訳無かろうに……

「一応聞こう。君は私と共に来るかね?」

俺の言葉に彼女は考えながら呟く。

「貴方の部隊に入隊すればベータから人々を救えるのですか?」

彼女の質問に俺は真面目な顔で答える。

「ああ、救える」

「……なら……私は貴方の部隊に入隊します。それに……」

「それに?」

「私の選択肢はあって無い様なものですから……」

「よろしい、結構だ。入隊を許可する」

私は右手を差し出す。

「感謝します……」

彼女は静かにそう答え、右手を差し出した。

「エターナ・フレイル少尉、ようこそ、我が部隊へ」

「手塚大佐、部隊名は何と?」

俺は彼女の言葉にこう答えた。私の部隊の名を。

「Fairy Tale だ」








[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 3
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/03/01 03:10
何だかんだであの会合から1年が経過した。

俺はこの1年間で行った事はエターナの徹底した訓練と部隊の編制とその訓練に費やした。

我が部隊の一般衛士が乗るMSが決まった。
そのMSはウィンダムだ。
このウィンダム原作ではボロカスのズタズタのギタギタに蹴散らされていたが、機体設定を見ると製作価格は中間だが性能面はストライクと互角でストライカーパックの使用がでる。

地上でも高機動、高性能、様々な戦局に応じて戦闘が可能、多種多彩な装備の使用可能と言う事でウィンダムになった。

まあ、この世界の衛士にMSに慣らす為のつなぎだが、性能で見たら戦術機よりは格段に上だ。

戦術の幅が利くのは有難い。
最大のメリット普通の衛士でもストライク並みの活躍ができる事だ。
更にエースならザフトレッドのグフとでも渡り合える機体だ。

「乗る人が乗れば一騎当千の活躍ができる機体」なのだが、連合にそれほどの実力者が言うほどいなかった事と、MAに執着し続けていた一部上層部の存在に、ロドニアのラボでの生体CPU候補の反乱による生体CPUの増産不能などにより、そのスペックをまったく生かせなかった哀れな機体だ。

何故かGジェネでは能力値はファーストより上である。
全くの余談だが大河原 邦男氏がメカニックデザインしただけあってカッコいいから俺は好きだ。

機体はジェットストライカーを装備、
バッテリーからミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉に交換した。
戦闘中にバッテリー切れで動けませんでは話にならない。
ベータとの戦いは長丁場が多いからな。

兵装は、M2M5 トーデスシュレッケン12.5mm自動近接防御火器×4、ビームライフル、ビームサーベル×2、アーマーシュナイダー×2、A52 攻盾タイプE

実験でレーザー級のレーザーをこのシールドで防御したが防ぐことが出来た。
コックピットにも同じレーザーコーティングが施されているが、流石に全体となるとコストがかさむ。

しかも、コイツは熱まで逃がしてくれるわけでは無いので廃熱が追いつかないと熔けてしまう。A52 攻盾タイプEの排熱処理はしてあるが、連続して受け続けたり、長時間受け続けると穴があいた。

そこまで、万能では無いらしい。

これは、オッサンからくれたロムの中に熱処理のデータもあった。

俺のHi-νのシールドにも使われている。
シールドの排熱処理能力を強化した

ストライカーパックは、

ジェットストライカー

ドッペルホルンストライカー
ドッペルホルンの砲身を切り詰め、軽量化したタイプ。
15.19tあった重量は9.19tにまで抑えたタイプ。
Mk39 低反動砲を装備した支援砲撃型ストライカーパックとなった。

まあ、こんな所か。

俺は資料整理を行いながら我が部隊Fairy Taleの戦術、戦略の構築を行っていた。

やはり、二正面作戦を展開するならソラ(宇宙)からの空挺作戦がいるな……
ザフトの降下用ポッドが使える。アレに大気圏突入耐熱処理区画を対ビームコーティン
グ処理にして降下の犠牲を抑えたい。
この世界のレーザーコーティング技術は未熟だがオッサンからくれた技術なら防ぎきれる。

あのオッサン……何でもありだな……

何故防げたか、理由はわからない。


空中戦艦もできた。
ラーカイラム級にオッサンがくれた対ビームコーティング処理をした戦艦を用意した。
ストライカーの運用性を確実にするのに戦艦の存在は不可欠だ。
考えただけで色々やる事が増えた。


俺が思考の中から引き戻された。
インターフォンによって。

「誰か?」

『失礼します。大佐、戦術機戦術プランの修正案を持ってまいりました』

ああ、頼んでおいたやつか。

「解った、少し待て」

俺は端末を操作し、扉のロックを解除する。

「失礼します」

銀髪に青い瞳の俺と同い年の俺のパートナーが入ってきた。

「メールでも構わんのに態々持ってきてくれたのか?」

俺の言葉にエターナは微笑みながら答える。

「ええ、やはり“重要書類は手渡しで”が私の心情ですから」

そう答え、エターナは書類を俺に手渡す。

「見よう……」

俺は渡された資料を読みながら今回の俺の作戦と照らし合わせ、差異が無いか確認する。

「……もう少し空挺部隊を増やせないか? 少ないとは言わないが戦力的に低いぞ」

「空挺作戦は犠牲が多くなります。部隊の犠牲を最小限に考えたらこれがベターかと……」

俺の考えに彼女はそう答える。

「対レーザーは完璧にしてある。空挺作戦のメリットは即時展開、即時制圧だぞ。兵が足りないでは話になるまい?」

「しかし、今の現状では空挺作戦を行えるのはこれが限界です。私たちは兵数が足りていないのですから……」

「やはりそこがネックか……一個大隊での二正面作戦は厳しいか……」

「はい……最低、後一個大隊は必要です。兵数が揃っていれば……」

俺達は暗い顔をする。

事務総長から与えられた特務極秘部隊の権限をフル活用しても1年で集められたのは一個
大隊が限界だった。

早めに欧州の防衛線を広げたい俺達としては時間が欲しい。
今のところ防衛線は崩されていないが、間引き作戦で限界の欧州には余り時間稼ぎは期待
できない。欧州もNATOやワルシャワも限界に近い。大量派兵も焼け石に水みたいだ。

「解った……君の案で微調整を進める。“中佐”頼むぞ」

「はい」



そう彼女は俺の右腕として中佐のポストを与えた。
それに彼女は1年前と比べて、かなりのものだ。
シミュレーターで徹底的に鍛え、実戦訓練として世界各地の間引き作戦に参加させた。
その結果、彼女は俺には及ばないが、名実共にFairy Taleのナンバー2だ。

俺は彼女に自分の持てる全てを彼女に教えた。
彼女には狙撃と空間認識能力がずば抜けていた。
俺はそれらを伸ばしつつ、他の技術も高度な次元に持っていった。

そして、彼女にガンダムを与えた。

彼女は狙撃が得意な為、バスターガンダムに乗らせた。


兵装は、バスターと殆ど変わらないが改良点はある。
両腰部にビームアーマーシュナイダー×2を装備させた事と、220mm径6連装ミサイルポ
ッド×2を220mmファンネルミサイルに交換した事である。

コックピットにサイコミュを取り付けた。

ファンネルミサイルは彼女の能力に適合していたらしく、彼女はニュータイプ能力を持っている様だ。

ビームアーマーシュナイダーは不意の接近戦を許したときに装備させた。
感じで言えば、種ザクのビームトマホークみたいに刃にビーム発生デバイスを搭載した感
じだ。

装甲はPS装甲で、バッテリーからミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉に変更した。
Gジェネのテレストリアル・エンジンを積みこみ飛行能力を持たせ、Iフィールド発生装
置強を積み込んだ。
これも、試してみたが、レーザーは防御可能。

どうやら、改良型ミノフスキー粒子でのIフィールドは通じるみたいだ。


まあ、こんな所か。



「エターナ、今回、お前は部隊の半分を率いての作戦だ。油断せずに行け」

彼女はやはり微笑みながら答える。
その顔に緊張も悲壮感も無い、美しい微笑みだった。
俺の好きな微笑だ。

「大丈夫です。だって私は、貴方の初めての弟子で、貴方のパートナーなんですよ? な
ら、私を信じてください、アルト」

彼女の言葉に俺も微笑みながら答える。

「そうか……そうだったな……なら、油断せずに行こう。お互いにな」

「ええ!」

彼女はそう答え、敬礼して退室した。

変わったな……俺……
余り人と話すのは好きじゃなかった。でも今は部下やエターナと話すのが楽しい。そう感
じている。

多分、初めてだったと思う。

誰かと一緒に何かを行い、ソレを達成し、ソレの喜びや悲しみを分かち合うのは……

以前、エターナに言われたことがある。

『貴方は本当の貴方じゃ無いみたい。まるで借り物の誰かと会話してるみたいです。本物の貴方は何処にいるのですか?』



そうかも知れない……

俺は全て借り物の貰い物だ。
この体も、この力も、この知識も、技術も、機体も……
ようやく自分がこの世界に馴染んできた感じを受ける。

俺はこの世界の住人達が嫌いだった。
地球は化け物に蹂躙されてる癖に国家にしがみつき、力を合わせて戦おうとしない、自分
の欲望と思惑と権利に固執する連中が嫌いだった。

だが、今は、今は、愛せるかもしれない、この世界が、ここに住む人たちが、俺は愛せる
気がした。
エターナと出会い、部下を抱えるようになり、色んな人と触れ合い、この世界が汚い世界
の汚い住人でなく、夫々が、夫々の思いで世界を思って一生懸命生きている。
俺はそれが理解できた。
その心に触れることが出来た。
その暖かく、気高い心を守りたい。
そんな青臭い、どうしようもなく青臭い考えが思い浮かんだ。

今なら解る。白銀 武の思いが。

俺はこの世界の住人を戦う為の駒としか考えていなかった。

我ながら傲慢だと、今更ながら思う。

でも、今はこの世界の人達と共にベータを蹂躙し殲滅したくなった。

勝利を共に分かち合い、人類は国家の垣根や思惑を何時か越えられる事を証明したい。


アムロ・レイが信じた人類の可能性を俺は信じてみたくなった。


最初は無理だろ。十人いたら十人違う考えで動いている。

皆仲良く解り合える事など不可能だと思った。

しかし、俺はこの世界に来て、エターナ達と会い、考える様になった。

本当は人々は解り合えるのではないか?

本当は人の心の中には『人の心の光』があるのではないか?

それらを俺は信じてみたくなった。

確かに、世界はそんな優しい考えで動いていない事は百も承知だ。
だが、信じたい、人は、人類は、人の心は、ベータや人のエゴさえも乗り越えていける。

俺はそれを証明したい。
俺の目標の中に人類の溝を乗り越えるが加わった。

その為にもこの作戦、成功させる必要がある。

人はどんな困難でも乗り越えられる事を証明するために……

俺は机に向かい、作戦立案を再開した。


エターナサイド
私は廊下を歩きながら今までのやり取りを思い返していた。
昔のアルトなら、部下に気を使う事は無かった。
昔なら、『戦場で人が死ぬのは必定、犠牲は最低限なんだ』
と、私の意見など耳をかさなかっただろう。

……変わった……

アルトは変わった……

さっきだけじゃない。
最近、よく笑う様になった。
それも、含みのある笑いでもなく、皮肉の篭った笑いではない。
心の底からの笑顔……

そう感じるようになった。

いや……アレが本当のアルトなんだろう。

昔、アルトにこう言った事がある。

『貴方は本当の貴方じゃ無いみたい。まるで借り物の誰かと会話してるみたいです。本物の貴方は何処にいるのですか?』

と……

昔のアルトは何処か人を寄せ付けない冷たさと、人を見下した目と、仮面を貼り付けた様
な表情、まるで他人の会話を真似た会話、まるで生きた人形みたいだった。

でも今は、人間らしさが徐々に戻った感じがする。

それが嬉しくて、それが楽しくて、私は彼の心が知りたくなった。

「ねえ、アルト、私にだけは見せて良いんだよ……貴方の心を……」

私はそう呟きながら、廊下を歩いた。






[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 4
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/03/01 03:12
俺とエターナは居並ぶ兵士達を一瞥した。


明日、始まる二正面作戦、『オペレーション・サジタリウス』の為の作戦説明と、訓示を述べる為だ。


俺は彼らの前に立つ。


「全員!! 注目!!」


エターナの号令に、兵士達は一斉に直立不動の姿勢になる。


「敬礼!!」


その言葉に全員が俺に対し敬礼をする。


俺も彼らに敬礼で返礼する。
俺は敬礼の姿勢を解き、休めの姿勢を取る。


「休め」


俺の言葉と共に兵達は休めの姿勢になる。


「諸君、我々はこれよりヴェリスクハイヴ及びミンスクハイヴに総攻撃を掛ける二正面作

戦を敢行する。本来、二正面作戦は愚策と言える。だが!! 我々は敢えてそれを行わな

ければならない!! 何故なら、諸君の知っての通り、欧州の防衛線は脆弱であるからに

他ならないからである!! だが、あえて言おう、ここでヴェリスクハイヴ及びミンスク

ハイヴを叩かなければ欧州は再びベータに蹂躙されるであろう!! 欧州連合に防衛能力

は無く、アメリカ主力のNATOはG弾運用部隊でしかなく、その力は期待できない!! ソ

連主力のワルシャワはその領土にハイヴを抱え疲弊している!!

然るに!! 我々、国連事務総長直轄特務部隊、Fairy Taleは欧州奪還の橋頭堡とする為

に自らの犠牲を厭わずハイヴという名の地獄に舞い降りる!!

さあ!! 我が偉大なる将兵達よ!! 我等、Fairy Taleこそがベータから地球を奪還し、

人類を開放する魁である事を世界に示す時が来た!!

Fairy Tale!! 全軍!! 出撃!!」

その言葉と共にこの場にいた全員が敬礼をしながら叫ぶ。

『Sir yes sir!!』

言葉と共に兵達はエターナの命令と共に戦艦に乗り込んでいく。

作戦は単純明快、邪魔するベータだけをなぎ払い、ひたすら反応炉に突き進み破壊する。
ファーストダウンはいらない、狙うのはタッチダウンだけだ。
反応炉が破壊できたら逃げるベータに追撃戦を掛ける。
それを二つ同時に行うだけだ。

俺とエターナも各自、戦艦に乗り込み、戦艦は発進した。



3日後、俺は作戦ポイントに到着した。

「作戦開始時刻10分前、各自、最終確認を行え! 戦闘ブリッジ、開け!! 対ハイヴ、ベータ戦闘用意!!」

『了解!!』

ブリッジ要員が椅子ごと戦闘ブリッジへと下りていく。

旗艦ラーカイラム艦長、トレマー・グレン少佐がアナウンスを流す。

「トレマー、俺も出撃する。艦隊指揮を頼む」

「は!! お気をつけて!!」

「ああ、其方もな」

俺はガンダムパイロット専用強化装備に着替え、Hi-νに乗り込む。

その頃戦闘ブリッジでは、トレマーが指揮を飛ばしていた。

「……3、2、1! 作戦時間です!!」

オペレーターの作戦開始を告げる声が戦闘ブリッジに響き渡る。
トレマーはハイヴから200キロの地点で即座に命じる。

「100キロ地点で、アンチレーザー爆雷発射と同時に正射10秒!! レーザー級を最優先で狙え!! 戦術機発進後、ダミー放出!! 回避運動をしつつ砲撃!!」

「了解!!」

100キロ地点に差し掛かった時レーザー級がレーザーを放つ。
慌てるブリッジ要員。
しかし、トレマーは冷静だった。

「この程度では沈まん!! 各部被害報告!!」

「損傷箇所、ありません!!」

「よし!! 各艦!! 撃て!!」

トレマーの命令により、各艦から一斉にメガ粒子砲とミサイルの嵐がミンスクハイヴに突き刺さる。

ミサイルはレーザー級に落とされたものの、クラスターの無数の爆撃によりベータ群に一定のダメージを与えた。
優先的にメガ粒子砲でレーザー級を叩いたのだ。効果はあるみたいだ。

無数のレーザーが襲うが、ビームコーティングされた戦艦では早々沈まない。



『各機!! 発進!! 繰り返す!! 各機!! 発進!!』

「さて、そろそろか……」

次々と機体が飛び立つ中、俺は自分の発進まで待つ。

『カタパルトオンライン!! 手塚機、発進どうぞ!!』

「手塚 在都、Hi-νガンダム!! 行きます!!」

機体はカタパルトにより押し出され、Hi-νガンダムは戦場へと飛んでいく。

「各機、編隊を組み突入! 味方にやられるな!」

『了解!!』

部隊の声が響きわたる。

エターナはうまくやっているだろうか?
俺はそんな事を考えながら戦っていた。
飛んできた、レーザーに当たりそうにヒヤッとした。

「おおっと!? 他事考えている場合ではなかった。まあ、彼女ならやるさ……」

俺は自分に言い聞かせ、戦闘に集中した。



エターナサイド

砲撃がやみ、各機が出撃していく中、私も出撃を待った。

『カタパルトオンライン!! フレイル機、発進どうぞ!!』

「エターナ・フレイル!! バスターガンダム!! 行きます!!」

私は戦場へと飛び立つ。
さあ、与えられた仕事をします。
落として見せます、アルト。
貴方の為に!!

「各部隊!! 編隊を組んで散開!! 各部隊ごとに交戦!!」

『了解!!』

部隊からの頼もしい返事が返ってくる。

アルトは大丈夫かしら?

そんな事を考えていると、頭に殺気の様なものを感じた。

「来る!? そこね!!」

私は即座にレバーを動かし回避する。
レーザーは私の機体を掠めるように通り過ぎた。

だが、最後の一撃は避け切れなかった。
だが、Iフィールドに阻まれ、バスターを傷つける事はなかった。

「その程度の攻撃でIフィールドは抜けないわ!!」

私は、武器を94ミリ超高インパルス長射程狙撃ライフルに選択し、飛びながら構え、撃つ。
金色の光は轟音と共に解き放たれ、重レーザー級を射抜き、その周りにいたベータも巻き
添えにして吹き飛ばした。

「次です!!」

私達の戦いは始まったばかりだ。
後は、空挺部隊が降下を待つだけですね。


その頃、宇宙では……

『各降下部隊、降下シーケンス完了、降下十秒前』

降下部隊はそれぞれ、緊張の面持ちで降下を待っていた。

『降下5秒前、4、3、2、1、降下!!』

降下ポッドは戦艦から切り離され、大気圏へ突入を開始する。

『……第1外装剥離、減速4マッハ、侵入角度良好、レーザー照射による熱被害2.5%、降下に支障無し、強制冷却停止まで22秒、空力制御開始……』

オペレーターの声がノイズ混じりに戦術機管制ユニット内に聞こえてくる。

『α-1より各機、最終武装セーフティー解除確認』

『α-2解除確認完了』

『α-3解除確認完了』

『α-4解除確認完了』

次々と機体から武装セーフティーの解除確認が行われた。

『第二外装剥離。野郎共、地球に住み着く害虫の駆除だ! 対流層突破! 減速、0.9マッハ! レーザー照射による熱被害9.15%、降下に支障無し! 姿勢良好、レーザー設置面以外の冷却停止、降下点、座標追尾固定! さあ……行くぞ!! 野郎共!!』

降下ポッドの継ぎ目を固定していたボルトが音をたてて弾け飛ぶ。
ポッドはバラバラになり、4機のウィンダムが一斉に左手を胸に突き出し、シール
ドを展開した。
機体は縦から下に倒れこむ形で大空を舞い降りる。

レーザー級のレーザーが飛び交うが、シールドに阻まれ、ウィンダムを貫くことは出来なかった。
ウィンダムのビームライフルはフルオートで優先的にレーザー級を射抜いていく。
レーザー級の周りにいたベータを巻き込みながら……

ここに、記録には残らないが、我がFairy Taleの降下部隊は戦場に降り立った。


どうやら降下部隊は降り立ったみたいだ。

とりあえずは成功と見ていいだろう。だが、被害は出たな……数機、前に倒れこむ時にレーザーに射抜かれたか……

長時間の照射や連続での照射を食らってシールドの排熱が追いつかず、シールドと機体に穴を開けられてしまった。

敵は取ってやる!! ハイヴを落として、お前達の手向けにする!!

「突入部隊は空挺部隊がかく乱している間に俺と共にハイヴに突入!! 残りは空挺部隊共に突入部隊の援護を!!」

『了解!!』

我が部隊から頼もしい回答が帰ってきた。

俺はビームライフルを後腰にマウントし、ハイパーメガビームランチャーでハイヴに穴を開ける。

俺達はハイヴに進入し、中にいたベータを無視し、反応炉へと突き進む。

数分飛び続け、ようやく反応炉が見える。

「全機!! 反応炉に一斉攻撃!!」

『了解!!』

反応炉は多数のビームとミサイルとバーズカの弾で蜂の巣になる。

反応炉は停止した。

地上へ上がるとベータは撤退していた。


その時、ヴェリスクハイヴの攻略を行っていたエターナから長距離通信が入り、此方も反応炉を破壊したそうだ。


追撃戦を終え、俺達の被害は全軍合わせて3割だが、この世界では、これは奇跡に近い。

もう少し戦力があればと、エターナは愚痴っていた。

だが、これは、この世界的に見て大勝利といえた。

大隊規模でしかも、二正面作戦という愚策でハイヴが二つ陥落したのだ。

なら、油断せずにいこう。
こんな幸運は二度と無いのだから。

ああ……オリジナル叩く時にどれだけ俺の幸運が残っているか……

それが心配だが、今回はエターナと仲間たちとでこの幸運を分かち合おう。


ココに、Fairy Taleによる戦術機と空中戦艦のハイヴ陥落はなった。


世界は、その事実に震撼させられ、Fairy Taleの名は世界に広まった。






[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 5
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/02/25 02:46
世界は蜂の巣を突付いた大騒ぎになっていた。


ハイヴが落ちたからである。
それも2つ同時に。


一体何がどうなってるのか解らない。
自分達の理解を斜め上を行く事態に、各国首脳人は理解できなかった。
彼らが理解できたのは、これで地球上のハイヴが3つ落ちたという現実だけだった。


この現状に慌てた世界各国は情報収集に躍起になった。


しかし、解った事は、国連事務総長直轄特務部隊、Fairy Taleが2つのハイヴを一個大隊
で二正面作戦を行い、陥落させたと言う冗談の様な事実しか出てこなかった。


世界各国が皮肉と畏怖を込めてこう言った。
『まるでFairy Taleだ』と




アメリカ合衆国では……


「長官、中々ロマンチックな部隊名だな、国連の特務部隊は……」

この国の最高責任者は資料を読みながらそう皮肉った。
CIA長官もそれが解っているのか何も言わなかった。

「で、だ……解ったのは部隊名とそれを率いるアルト・テヅカと言う謎の人物と我々の知
らない戦術機に空中戦艦位しか解っていない。と、言う事かね?」

今まで黙っていたCIA長官はようやく口を開く事を許された。

「大統領……我々が国連に入れているスパイの情報ではそれしか探れませんでした。アル
ト・テヅカに至っては日本国籍及び、世界中の国籍を虱潰しにしましたが、国連のデータ
ベースには存在していましたが、日本並びに世界の戸籍から、この世界に存在しない事が
判明いたしました。国家や組織が意図的に改ざんした形跡がありませんでした。まるで、
ある日、突然、何処からとも無く現れたみたいに……」

CIA長官の言葉に大統領は鼻を鳴らし、呟く。

「君は、この、アルト・テヅカと彼が率いる部隊がある日突然、御伽話の本から飛び出し
たと言うのかね? それこそ正にFairy Taleだな」

そう言い、椅子から立ち上がり、窓の外を見やる。

「兎に角、このアルト・テヅカとFairy Taleを徹底的に調べ上げろ! このままでは、我々、
合衆国の計画が根本から瓦解しかねない。
戦術機の一個大隊が2つのハイヴを陥落? 冗談ではない、G弾とアメリカこそが世界の
解放者であり、支配者なのだ。奴ら御伽話の住人などでは断じてない」

「……全力を尽くします」

そう言い、CIA長官が退室した。

暫くして入れ替わる様にアメリカ統合参謀本部議長が入ってきた。

「失礼します。大統領閣下」

「如何かね? ああ、あの機体、確か、ウィンダムだったか? あの機体の戦力評価か?」

「はい……」

大統領の言葉に統合参謀本部議長が渋い顔をして、資料を手渡した。

「正直、申し上げて……我々が生産、配備を開始しているF-22 ラプターとの戦力比は
……これはあくまで予想ですが、ウィンダムが1としますと、10のキルレシオがあると軍
作戦部からの報告です」

「それは本気で言っているのかね? 最新鋭機、でだぞ? だとすればその差は10倍か?
冗談も程々にしたまえ」

大統領の言葉にうろたえながら、統合参謀本部議長は言葉を紡ぐ。
正直、見ていて可哀想になるくらいうろたえている。

「あ、あくまで予想です。大統領、詳細なデータが無い以上、国連から入手した映像しか
その比較対照が無い為、正確には解りません」

大統領は統合参謀本部議長に命じる。

「早く、F-22の早期生産を急がせろ」

ここで統合参謀本部議長が大統領に意見する。

「大統領、私といたしましては、F-22よりもYF-23の方がより戦闘能力が高められる
と考えますが……」

大統領はここで難色を示した。

「YF-23は、我が国の戦略ドクトリンと合致しない。我々の戦術機の扱いはあくまで、G
弾運用の為の梅雨払いに過ぎない」

「しかし、今後の世界戦略を視野に入れますと、やはりラプターでは荷が重いかと……」

「……解った、考えておこう。しかし、戦略は変わらない」

「承知しております。では……」

そう言い、統合参謀本部議長は退室した。


実は統合参謀本部議長は隠していた。その差は1対20になるのではという事を……
正直、現段階では何とも言えなかった為、そう報告したが、アレはズバ抜けている。
元衛士上がりの彼はそう肌で感じ取っていた。
ウィンダムの戦闘能力の高さを……
“アレは、乗るものが乗れば、一騎当千の強さだ”
“Fairy Taleの衛士は、間違いなく世界で五指に入る実力者達の巣窟だ”

それだけじゃない……
一番怖いのは、やはり、ガンダムと呼ばれる2機の戦術機の存在……
アレは群を抜いて異常だ。
レベルの違いとか、腕が如何とか、そんな話では無い。

……アレはバケモノだ!! 別次元の強さだ!! 人間じゃない!!
もし、人間なら如何してそこまで強くなれるのか是非ともご教授願いたいものだ!!
私はガンダムの戦いを見て鳥肌が立った。
不意打ちに近いレーザーを平然と避け、音速を超える速度で飛び回り、戦場とベータを蹂
躙する。
映像なのに衛士の“闘気”が感じられる程だ。
ウィンダムの衛士からは感じても微々たる物なのに……
映像であそこまで感じるのだ、戦場ではどれ程のものか……
考えただけで空恐ろしい……
統合参謀本部議長は思考を一旦止め、早足で歩き出した。
自分の考えを否定するかの様に。




一方、ヨーロッパでは……


欧州連合首脳陣が一同に会すこの場所に、全員が複雑極まりない顔を例外なく並べていた。

まず口を開いたのはイギリス代表だった。

「ロギニエミハイヴに続いて、今度はヴェリスクハイヴとミンスクハイヴか……全く、こ
こまで奇跡が立て続けに起こるとは……正にFairy Taleだ……」

今度はフランス代表が口を開いた。

「国連からの正式な回答は国連事務総長直轄特務部隊との事だが……この部隊、アメリカ
の戦略と合致しない……むしろ、正反対だ」

ドイツ代表は重々しく口を開く。

「そんな事よりも、これは、明らかに越権行為だ。国連がしたり顔でシャシャリ出て、我々、
欧州連合の無許可で欧州に武力介入するなど許される事ではない。国連には厳しく自重を
求めるべきだ」

今度は、イタリア代表が口を開く。

「しかし、国連も思い切った事をしますな……自分達の上の組織たるアメリカに楯突いて
まで戦術機によるハイヴ攻略を敢行するとは……アメリカも黙ってはいないだろうな」

スペイン代表は考えながら呟く。

「これは、国連がアメリカから離れつつある……そう考えても良いのではないかね?」

その言葉に、ポルトガル代表は釘を刺す。

「それは早計ではないか? 所詮、国連などアメリカの飼い犬に過ぎない。ここは、Fairy
Taleの動きを見てからでも結論を出すのは遅くない。それよりもだ、我々にはブダペスト
ハイヴとリヨンハイヴが残っている。これを叩かなければ欧州奪還とはいかんだろう?」

ベルギー代表は提案を述べる。

「国連に打診してFairy Taleを動かしてもらうべきだ。この2つが落ちない限りは、欧州はベータに挟まれてしまう。我々はまた彼奴等に侵攻されたら欧州は今度こそ壊滅だぞ」

デンマーク代表は嫌な顔をする。

「彼らに頼り過ぎるのは良くない。もし打診するにしても、せめて共同戦線を張るべきだ」

今度はイギリス代表は口を開いた。

「しかし、彼らFairy Taleの戦術機、たしか、ウィンダムだったか? アレの撃墜された
機体は回収できなかった。レーザーを撃つことの出来るライフルやレーザーを刃として扱
う技術は結局、解らずじまいだったが、破片は回収する事ができた」

「その結果は?」

フランス代表が興味津々と聞いてきた。

「我々が正式採用しているタイフーンと変わらない金属だったが、その軽さと圧縮率が圧
倒的に違い過ぎだ。F-4以上の装甲強度を持つのに薄さはタイフーンとそう変わらない。
しかも、軽さは圧縮しているのにもかかわらず、タイフーンと同じくらいの金属の軽さだ
った」

ドイツ代表は驚きながら呟く。

「驚異的ですな……」

「兎に角、今は、Fairy Taleが奪還した領土を如何守るかが我々の最優先課題だ」

そう言い、イギリス代表が締めくくり、次の議題に入った。




ソ連では……


アラスカのソ連首脳達は事の事態に大変困惑していた。
自分達の領土が取り戻せたのは嬉しいが、それが他人の手で行われた事が大きい。

「同志諸君、ミンスクが我らの手に戻った事は大変喜ばしい。だが、この結果を齎したの
は資本主義の飼い犬風情だという。実に嘆かわしい事だ」

書記長は開墾一発目にしてそう言い放った。

「しかし、同志スミロフ、これは見方によっては、国連がアメリカから離れつつある事を
示しているのではないでしょうか?」

「どういう事かね? 説明したまえ。同志セミノビッチ」

「は、今回の国連の作戦はG弾運用を基本とする作戦から大きく外れています。いえ、む
しろ真逆といってもいいでしょう。国連軍のFairy Taleは現にハイヴを二正面作戦で陥落
させています。彼等は事務総長直轄の特務部隊との事ですから、それを考えるにアメリカ
は国連を制御しきれていません。またKGBの情報ではアメリカはFairy Taleの情報を掴
んでいません。無論、我々もですが……」

書記長はこう口にした。

「どちらにしろ、国連とFairy Taleとアルト・テヅカから目が放せないな」



一方、香月 夕呼は……

全く……国連からオルタネイティヴ4の計画承認を受けて、00ユニットの開発に着手して
から数ヶ月たつけど、世界情勢が、特に欧州が異常な事になってるわね……

“二正面作戦なんて愚策でハイヴが落ちた”なんて聞いた時には『ふざけてんのコイツ』
と、報告してきた男の顔を睨んだくらいだ。
挙句の果てに、一個大隊で、と、聞いたらもう馬鹿馬鹿しくなった。

オルタネイティヴの権限を使って色々調べても解った事は国連事務総長直轄特務部隊、
Fairy Taleと、手塚 在都大佐、戦術機ウィンダムの名前しか出てこなかった。
オルタネイティヴ計画権限でさえここまでなのだ、どれだけ機密性が高いのよ!?

暫く考えていると、ノックも無しに扉が開け放たれる。
こんな失礼極まりないことする人間を私は、一人しか知らない。

「ノックも無しにレディの部屋に入ってくるなんて帝国情報省も礼儀がなってないわね」

私がそう皮肉ると、この男は含み笑いをしながらこう言う。

「切ないですな……私は香月博士の為に身を粉にして働いているのに……」

「“国の為”とは言わないのね?」

「無論、それも含まれています」

私はサッサと本題に入る事にした。

「ここに来た、と言う事は頼んでいた事が解ったのね?」

私がこう言うと、コイツは……

「ネパールの……」

「そんな事、どーでもいいの、早く本題を言いなさい!」

私がそうせかすとこの男は突然、真面目な顔になった。

「国連事務総長直轄特務部隊、Fairy Tale、現在、大隊規模から師団規模に拡張予定との事、
いやはや、国連も気前がいいですな~。
その指揮官の手塚 在都なる人物は国連でのデータベースでは巧妙に隠されていましたが
日本帝國の国籍と判明、しかし、帝國の国籍を隈なく探しても何処にも存在しない。実に
可笑しな現象がおきている。いや~全く不思議ですな~。
世界中の戸籍からもそれらしい人物の該当無しときている。
いよいよ手塚 在都がFairy Taleの住人である事の方が信憑性を帯びてきました」

「何よ……結局わからずじまい? 役に立たないわね」

「いやはや、お恥ずかしい……」

私は鎧衣のどうでもいい話を聞き流しながら考える。

全く、これからどちらにせよ退屈はしないですみそうだ。と……







[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 6
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/02/25 02:54
ニューヨーク、国際連合本部の事務総長室には2人の男がいた。

1人は部屋の主たる国連事務総長、ロンバルト・ゼンライ国連事務総長。
もう1人は国連事務総長直轄特務部隊、Fairy Tale隊長、手塚 在都である。

事務総長は嬉しそうに口を開いた。

「君のお陰でこの世界からハイヴが3つも消えた。感謝に耐えんよ」

俺はさも普通に振舞った。

「いえ、当然のことです。我々の最重要目的は、ベータとハイヴの殲滅です。私よりも部
下たちを褒めてください。彼等の活躍無くばハイヴは落ちなかったのですから」

「そうだったな、すまない。しかし、君達はトコトンこの世界に変革を齎したな」

俺は事務総長の言葉にまだまだと、付け足す。
こんな物じゃない。
これでは済ませない。
ここからだ。
我々、Fairy Taleの真価が問われるのは。

「まだまだですよ。こんな物じゃ終わらせません」

「そうでなくては困る。君に、一個師団をくれてやる意味が無いからな。それに、君は今日付けで准将だ。働いてもらうぞ?」

俺はその破格の条件に驚いた。

「准将ですか? また、思い切った事をなさいますな」

「当然だ、君は各国の軍隊に依存しない国連軍の最高指揮官なのだからな。それぐらい無ければ此方が困る。これでようやく、アメリカから切り離されるよ」

俺は疑問が出てきた。

「よろしいのですか? 国連が独自に軍を持つ事など? 各国が余りいい顔をしないと思いますが?」

当然だ、今まで国連は各国の軍隊が兵隊を出し合って出来ているし、基地も各国から土地
と施設を借りて管理、運営されている。一応、治外法権は認められてはいるにしても、国
連が独自の物を持つ事は無い。国連軍の戦術機一つとっても、欧州はタイフーンやラファ
ールなど、日本であれば、不知火と言った感じだ。時々、アメリカの影響が強くあるので、
イーグルが混じっているが、他国から基地や戦術機を失敬している様な物だ。統一性もヘ
ッタクレも無い。
そこに独自戦力を置くのだ。余りいい顔はしないだろう。

補給とかの問題だけでない、外交上の問題も出てくる。

「構わんよ、彼らは所詮口だけだ。実際、EUの連中は抗議をして来た。『我々の許可無く
武力介入をするとは何事か!?』とね。だが、言葉の裏を返せば、『共同戦線を張ってくれ』
と、言っている様な物だ。それなら、『我々、欧州連合は国連軍と共同でハイヴを叩きまし
た』と言えるだろ? ハイヴを叩くことより、国家の面子が大事なのさ。彼らは、ベータ
に蹂躙されて今更、面子が大事とホザく。まあ、面子はこの世界で生きていくためなら大
切な事だが……」

仕方が無いと言えば仕方が無い、彼等とて国の威信や国民の期待やらをその背中に背負い
込んで政治の世界にいるのだ。

だが、此方とてハイヴやベータに勝つ事が最優先事項であるわけで、お国の面子とやらを
気にかけてやれるほどの余裕も無い。

「仕方がないでしょう。自国の領土を何処の誰とも知らない人間が、ズカズカ入り込んで、
やりたい放題やらかしたのですから。例え自分の利益になる事でもいい顔はしないでしょ
う」

俺の言葉に事務総長は溜息を漏らしながら呟く。

「結局は、アメリカからの脱却は出来ても、世界の思惑から逃れられない、か……
だからこそ君達には、独立作戦行動の権限を与えているのだがね」

「無論、人類の救済と、ベータ殲滅は今の所、イコールです。多少、強引な無許可での武
力介入も今の所、文句がある位ですが、行き過ぎると国連が非難されます。
議長、例の件は……?」

俺の言葉に議長が頷く。

「ああ、解っている。極秘裏に国連加盟国に対する独立作戦行動を行える様、裏工作は行
っている。何れは、正式な独立作戦行動を正式なルートで行いたいが、今は、ハイヴが多
い以上、悠長に構えてもいられない」

「そうですか……」

事務総長の言葉を聞き、俺は自分を落ち着かせる様にコーヒーを飲んだ。
その時、事務総長が思い出した様に呟く。

「そう言えば君の副官、フレイル大佐は、今回一人で大丈夫かね?」

事務総長がそう聞いてきた。

「ええ、彼女は今回全体指揮は初めてですが、旨くやるでしょう。それに……」

「それに?」

「“優秀な人材”を何人かつけています」




エターナサイド

私が全体指揮を任されて、凄く緊張しています。

現在、私はリオンハイヴへ向けて進撃中です。

作戦の確認を私の乗艦しているラーカイラム級戦艦、レスターの隊長室、私の部屋の机で
資料を読んでいた。

暫く、そうしていると、通信がはいる。
誰だろう?
そう思い、私は回線を開く。

「はい」

『やっほ~エターナ~! 元気~!』

通信からは、黒髪をショートに纏めた、私と同い年で私と同じ衛士訓練校出での私の底抜
けに明るい、冗談が大好きな親友から通信が来た。

「ヒースロー中佐、何か作戦に疑問がありましたか?」

私は、あくまで、上官と部下との話し方で話す。

『任務中でも今作戦中じゃ無いじゃんか~、硬いぞ~エターナ、リラックス! リラックス!』

相変わらずですね……クレアは……
私は諦めて、普通に会話する事にした。

「如何したのかしら? クレア? 貴女、自分の作戦とか大丈夫なの? ブダペストハイ
ヴ攻略の指揮をまかされている事を忘れていませんか?」

『モチ!! 楽勝! 楽勝!』

相変わらず仕事は速いですね。

『いや~、暇になっちゃったからさ、連絡してみただけ。ソッチは?』

「私は最終確認が終わったとこです。貴女の副官に迷惑はかけてない?」

クレアは苦笑いしながら答える。

『レイチェルは真面目さんだからね~……』

私は呆れてしまいそうです。自分の後輩であり、副官のレイチェル・ランサム少佐に雑務を押し付けた事を理解した。

「貴女ね……後輩をこき使うのはおやめなさい」

『あはは……細かい事は気にしない、気にしない』

レイチェルが可哀想になってきました。レイチェル……不憫な子……
私は後輩を思い、心の中で哀れみました。

「貴女のガンダムの調整は大丈夫なの? コレばかりは何時もの冗談じゃすまないわよ? もし、落とされでもしたら、Fairy Taleの、うんん、国連軍その物に影響するわ」

『お~まかせってね! 自分の乗る機体くらい自分で面倒見るって』

だといいけど……

私は暫く、クレアと他愛の無い話をした。




作戦開始ポイントに到着した。

さあ、始めるわよ。

『カタパルトオンライン!! フレイル機、発進どうぞ!!』

オペレーターの発進許可が出た。
私は目を見開き、声を張り上げる。

「エターナ・フレイル!! バスターガンダム!! 行きます!!」

戦場へ飛び立ち、私はすぐさま指揮を取る。

「各機、散開!! まずはレーザー級の数を減らします!!」

『了解!!』

私の部隊の兵が、そう答え、レーザー級に飛び掛る。

「やらせはしないわ!! アナタたちの好きにはさせませんよ!!」

私は、350ミリ対装甲散弾砲を構え撃つ。
無数の散弾がレーザー級を含む周囲のベータを巻き込みながらズタズタにしていく。
私は地上に降り立ち、94ミリ超高インパルス長射程狙撃ライフルを構える。

「お仕置きしてあげます!!」

私は、スコープごしに敵を次々と打ち抜いていく。
何か、嫌な感じがします……来る!?
私はそう感じた瞬間、レバーを操作し回避行動にはいりました。

「墜とされはしないわ! 私にだって守るべきものがあるから!」

私はレーザーをかわしながら超高インパルス長射程狙撃ライフルでレーザー級を打ち抜いていく。

「各機、雑魚には構わないで!! 優先的にレーザー級を叩きなさい!!」

『了解!!』

空挺部隊が降りてきた。これで、少しは楽になりますね。
あの二人は大丈夫かしら?
そんな事を考えながら私は、戦闘と全体指揮を取った。




クレアサイド

やってきました!! ブダペストハイヴ!!
いや~テンション上がってきたね~
さて、ちゃっちゃっと片付けますか。

『カタパルトオンライン!! ヒースロー機!! 発進どうそ!!』

オペさんの支持で私は思考から引き戻される。

「それじゃ、クレア・ヒースロー!! カラミティガンダム!! いっきま~す!!」

そう言い私は戦場へと飛び立っちゃいました。

「各機、準備はいい? 各機、散開して交戦しちゃって!!」

『了解!!』

「レイチェル!! 前は頼んだよ!!」

『了解! 先輩も遊ばないでくださいね。実戦なのですから』

「だいじょ~ぶ!! そんなヘマしないって」

『解りました。信じます……一応……』

「今、一応、っていった!?」

なんて後輩だ!! 先輩を敬わないとは!!
私は戦場へ飛んでいく、ダークブルーのガンダムF91を見ながら文句を垂れた。

「私も張り切りますか~!! つっかまえたっと!! 照準おっけぇ~! 発射ぁッ! 
グゥ~レィトオ~~~~~!! なあ~んちゃって!」

私は、胸の真ん中にあるスキュラと、背中のシュラークをぶっ放した。

いや~吹っ飛ぶね~

「アッハハ、ゴメンネ~!! 強くてさ~!! って、感じ悪い?」

なんか、嫌な感じがする……

「キュピ~ン!! そこぉッ!」

私はそう叫びながら、レーザーをかわす。

「甘い! 甘い!! そうは餅屋がおろさな……あれ?」

まあ、細かい事は気にしない!!

「さぁ!行くよッ!!」

近づいてきたベータにシールドに備え付けていたケーファー・ツヴァイを乱射し対応した。

私は一旦、後ろへ下がり、砲撃戦を再開する。

「私の砲撃は凶暴です!! 死ぬほどいたいぞ~~!!」

私は、スキュラを最大出力にし、シュラークをぶっ放した。


降下部隊がようやく降りてきた。
やったー!! 楽できる~!!

余裕も出てきたし、私の機体のことについて考えた。
私の得意な支援砲撃に合わせて作られた機体で、
カラミティガンダムっていうらしい。

兵装は、
頭部バルカン砲、イーゲルシュテルン×2、125mm 2連装高エネルギー長射程ビーム砲シュ
ラーク、337mmプラズマサボット・バズーカ砲トーデスブロック、580mm複列位
相エネルギー砲スキュラ、シールドに 115mm 2連装衝角砲ケーファー・ツヴァイと
がついている。

兵装はこんなところね。

動力はミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉を使用しているわ。
装甲はTP装甲、と頑丈。
ミノフスキードライブを積みこみ飛行能力を持ってるから飛行もスイスイ。
Iフィールド発生装置もあるからレーザーはきかない。

まあ、こんなところね。

レイチェル、大丈夫かしら? まあ、あの子なら大丈夫でしょう。




レイチェルサイド

相変わらすですね……先輩……
戦場で所構わず叫ぶの止めてください。
妙にテンションの高い先輩を見ながら私はガンダムF91を動かす。

「捕まえた!! やらせはしないわ!!」

私はビームライフルを連射しながら、ヴェスバーを構え、ベータに撃ち込んでいく。

「逃がすもんか!! ここで仕留めてみせるわ!!」

私がベータを倒していくと、何か得体の知れない感覚に襲われる。

「来る!? 当たるもんですか!!」

私は、レバーを操作し、回避行動に移る。

レーザーをかわす事が出来た。
昔の自分からは想像できない。
レーザーをかわすなんて……

私はそんな事を考えながら、戦闘を続けた。
人類の勝利を信じて。




戦闘が終結し、彼女たちが帰ってきた。
どうやら彼女たちは無事みたいだ。

「ご苦労、どうやら3人とも無事の様だな」

俺の言葉に3人は苦笑いしながら答える。

「はい、如何にか無事任務を果たす事が出来ました」

エターナは若干の疲れはあるもののそう返した。

「何度かヒヤッとした所はありましたけど……」

クレアはニシシと笑いながら答える。

「……何とか、生きてます」

レイチェルも答えてくれた。

さしたる損害はある。兵も何人かは帰らぬ人だ。
彼女達も自分の部下が死んだ事はつらいと感じる事が出来る。

兵を預かる者の重みを理解したのなら俺は何も言わない。
次から彼女達はうまくやる。

「今日は休め、報告書は明日でいい」

「「「了解!!」」」

彼女達は敬礼しながらそう言い、俺も、敬礼をもって彼女たちに返す。

俺達は国や世界の思惑を余所に戦いに勝利した。







[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 7 修正
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/02/25 03:14
Fairy Tale基地、俺は、師団規模にまで膨れ上がった我が軍の編制に追われていた。
印度亜大陸奪還作戦を実行に移すためその訓練と調整に追われていた。

暫く、部隊編制を行っていると、インターフォンが室内に響く。

「誰か?」

『エターナです。作戦立案の最終調整資料を持って参りました』

「少し待て」

俺は手元の端末を操作し、ドアのロックを解除する。
自動ドアが開き、エターナが入室してきた。
その手には、DVDロムが握られていた。

「印度亜大陸奪還作戦の資料です」

彼女が俺にDVDロムを手渡す。

「ありがとう。見よう」

俺は、自分の机のパソコンにDVDロムを入れ、詳細資料のファイルを開く。
そこには作戦の詳細とボパールハイヴ周辺の衛星写真とその周辺の地形、兵員投入数、作
戦に掛かる経費、部隊編制、空挺作戦の詳細などが事細かに記されていた。

俺は、その資料を見ながら、自分の考えを呟く。

「部隊が師団規模に膨れ上がったとは言え……やる事はそう変わらんな……」

「一番それが犠牲が少ないですから……」

俺の呟きにエターナが苦笑しながらそう言う。

俺は顎に手をやりながら呟く。

「俺は最低だな……この部隊には俺より若い奴等がいる。そんな彼等に俺は『お前、今か
ら戦場へ行って戦ってこい』と言っているのだ。これがどんな愚かな事か解るか? 俺は
良い、自分が覚悟して、この世界に飛び込んだ。ベータを殲滅するために、ベータを打ち
倒す為に、滅ぼす為に、しかし、彼等は俺等大人が弱い為に、大人達のツケを支払う為に
この戦場に立たされている。選択肢がそれしか無かった為に、大人たちがその選択肢しか
用意できなかった為に、大人が情けなった為に……」

俺の言葉にエターナは俺の側まで来て、俺の手を自分の手で優しく包み込んだ。

「確かに、彼等にはその選択肢しか無かったのです。私もその選択肢しか与えられなかっ
た。でも、私や彼等は選びました。自分の意思で、あの戦場へ立つ事を、その事に迷いは
あるかも知れません、後悔もあるかも知れません、でも、自分が選んだ道です。それを貴
方や大人達のせいにするほど私達は情けなくも、弱くも無い積もりです。だから……貴方
が責任を感じる必要も、貴方が自分を責める必要もありません。もし、私達を巻き込んだ
と、私達に戦えと命じる事を心苦しいと感じるのなら、私達の為に犠牲の少ない作戦を立
ててください。私達は貴方の命令に命を懸けて答えますから」

エターナは微笑みながらそう答えてくれた。
俺は、救われた気がした。
自分がやってきた事が間違いではなかったと信じられた。
自信が持てた気がする。

「すまない……」

「違います、そういう時は『ありがとう』です。アルト」

「ありがとう……エターナ」

「どういたしまして、アルト」



俺達がボパールハイヴを攻略して事後処理をしていた時だった。

ラーカイラムからHi-νに通信が入った。

『隊長、事務総長からホットラインです』

事務総長が? 一体なんだろう? 緊急回線など穏やかでない。

「繋いでくれ」

『了解』


「如何しました? 事務総長? 緊急回線など……穏やかではありませんな……」

『非常に不味い事になった。ウランバートルハイヴとブラゴエスチェンスクハイヴのベー
タ群が集結し朝鮮半島を襲撃、韓国軍は光州付近まで撤退したが、それも陥落、現在、日
本海を越えて、対島へ上陸、日本帝国軍と交戦に入った』

馬鹿な!? ベータの進撃速度が速過ぎる!! しかも、光州作戦をすっ飛ばして、一気
に日本上陸だと!? 冗談でもキツ過ぎる!!

「なぜそんなに早く韓国が落ちたのです!? いくらなんでも早過ぎる!!」

俺の言葉に、事務総長がこう言った。

『その数は、小型種も入れたら測定不能だとの事だ。らしい』

「何でそんなに情報が曖昧なのです!? しかも測定不能!?」

『ああ……大東亜連合軍が君たちの介入を恐れ、正確な情報を漏らさなかった……』

クソ!! こんな所で無断での武力介入がアダになるとは……予想外もいい所だ!!
自分達のスパイ衛星を持っていれば!! 国連に頼りすぎた!!

「日本政府からは何と!?」

『まだ何も言ってこん。日本はどうやら、現地の国連軍とアメリカ軍との合同で叩くみたいだ……』

事務総長の言葉に俺は愕然とした。

歴史と何もかも違いすぎる!!
何だ、これは!?
そうか、歴史を変えた影響がこんな所で出てしまったのか。

「現在の戦況は?」

『少し、待ってくれ! 最新の情報がたった今、在日国連軍から入った! ……なんてこ
とだ!? たった今入った情報では、ベータは中国、四国エリアまでの制圧を完了、関西
エリアまで帝國軍は押し込まれている。アメリカは日米安保理を一方的に破棄、即時撤退
を開始した!!』

最悪だ、実史よりも状況が悪くなっている。
僅か1週間で中国、四国エリアが陥落!?
ベータの進撃速度と進化速度が異常だ!!
アメリカが日本を見限るのが早いということは前から準備していたな!?
俺の頭の中は色々な情報が駆け巡り、それを一つ一つ高速に処理していく。

「我々も日本に武力介入します! 彼等だけでは日本の防衛は難しいでしょう。精々西日本までベータに侵略されてしまいます」

『大丈夫か!? 君達はハイヴを攻略したばかりだろう。インドから日本まで大部隊が移
動するのに最低5時間は掛かるぞ。今からでは戦局はかなり悪い。かけつけた時には関西
エリアは陥落している』

「大部隊ならそうでしょうが、行くのはラーカイラムと俺、エターナ、クレア、レイチェルの部隊で向かいます。残存兵力は結集して基地帰等を命じます」

俺の言葉に事務総長が驚き、声を荒げる。

『僅か4小隊、戦艦4隻で抑えられるのか? 無茶だ!? 死ぬぞ!?』

「今、部隊は消耗しています。初陣の連中も多かった。これ以上部隊の消耗は好ましくない」

事務総長は暫く考え、決断を下した。

『解った。日本政府及び、在日国連軍は私が何とかしよう。頼む』

「了解」

俺は、事務総長のホットラインを切ると、すぐさまエターナに命令する。

「エターナ! クレア! レイチェル! 聞いての通りだ!! いけるか!?」

俺の通信にはじめに答えたのはエターナだった。

『私の小隊は作戦行動に支障はありません。損害も軽微です。いけます!』

『私の小隊もエターナと同じ! いけるよ!!』

『私も大丈夫です!!』

「日本は近い、ここからラーカイラム級の全速力なら1時間あれば行ける。30分で戦闘準備を急がせろ!!」

『『『了解!』』』

クソ! もってくれよ……日本……




俺達は、関西エリアに到着したが、これは……

日本海から望遠画像で見る世界は地獄だった

「これは……」

トレマーの呟きに俺は答えた。

「まるで地獄の業火だな……」

俺は即座に状況を確かめた。

「帝國軍とベータの現在の戦場は!?」

俺の言葉にオペレーターはマップを展開し、叫ぶ。

「現在、神戸にその戦線を移しています!!」

俺はすぐさま命令する。

「トレマー!! 進路を神戸に移せ!! 急げ!!」

「了解!!」



神戸の戦場へ到着したが、帝國軍と在日国連軍は多数のレーザーの前に打ち倒される。

Hi-νガンダムのコックピットのモニター越しに見る地獄は最悪だった。

「悪いが俺は最悪に機嫌が悪い……貴様ら、タダで帰れると思うな!!」

俺はアームレイカーを操作し、戦場へ飛び立つ。

「エターナは俺と空からゲテモノを殲滅だ!! クレアとレイチェルの部隊は下のゴミ共を掃除しろ!! 全機、いいか!! あのクソ共を焼き払うぞ!!」

『了解!!』

俺達は上空と地上に別れ、戦闘を開始する。

「何だ!? コイツ!? 速度が速い!? だが!!」

俺はビームライフルで撃ち抜いていく

「有象無象が真新しい事をしようと!!」

俺は次々撃ち抜いていく。

「クソ! まだ来る!? だが、当たりはしない!! フィンファンネル!!」

俺はレーザーをかわしながらフィンファンネルを放出する。

「そこだ!! 堕ちろ!!」

俺は頭でイメージした機動にフィンファンネルを高速で移動させる。
要撃級モドキがバタバタと堕ちる。

「コイツ等、怖いのは速度と数だけで、後はたいした事無い」

俺は、レーザーを後方宙返りでかわしながら、背中にあるニュー・ハイパー・バズーカで
撃ち落とす要撃級モドキを落とす。
要撃級モドキは爆発し粉々のミンチになる。

「エターナ、コイツ等はたいしたことが無い! 数を減らすぞ!!」

『でも、コイツ等、各国の戦術機にとっては脅威ですね……』

「ああ、だが今は戦闘の事を考えろ! 研究は後だ!」

『了解!』

とは言ったものの……ゴチャゴチャ数が多い!!

俺は地上を見た、どうやらクレアとレイチェルは戦っているみたいだ。

何とかいけそうだ。




クレアサイド

あ~もう!! 鬱陶しい!!
ゴチャゴチャと!!

「フッ…バカは来る…ってね!」

私は要撃級の速い奴らにスキュラとシュラークをぶっ放す。

何か感じる……

「なんとぉ~~~~~~~~!!」

ふい~~……危なかった……!!
でも、Iフィールド発生装置ついてたから安心安心。

「む、邪気が来たか!・・・ってね!」

そこ!!
私はケーファー・ツヴァイを乱射しながら避ける。

「だからお前はアホなのだ!!」

私は次々打ち込んでいく。

「しかし、厄介ね……要撃級以上の速度後、数が……でも!! ガンダ
ムの敵じゃないのさ!!」

レイチェルは私が撃ち込んだ穴に飛び込む。

『やらせはしないわ!! そこ!!』

ビームライフルとヴェスバーを乱射しながら叩き落していく。
いや~やるね~レイチェルちゃん。

『まだよ……!! まだアタシは全部の力を出し切った訳じゃないわ!』

んん!? 機体が金色に光ってる!?
しかも、動くと残像が出てる!?

コッチのレーダでは機体が沢山いるみたい。

でも、F91は確実に狙っているけど普通にかわしてる。

「あのガンダムF91……質量を持った残像だしてる!?」

ベータ相手なら兎も角、人間には通用しそうだ。

イヤハヤ……ガンダムって……何でもアリね……




帝國軍、アメリカ軍、在日国連軍は混乱の極みだった。
戦いながらでもついついガンダムの戦いを見てしまう。
アレは何だ!?
地上を凄い速度で動くベータを空からレーザーを避けながらベータを殲滅している!?
地上では、レーザーを弾く見えない壁みたいなのでレーザーが無力化された!?
しかも、残像を展開してレーザーをかわしてる!?

何だ!? あの4機は!?

この戦いを見た帝國軍、アメリカ軍、在日国連軍は夫々に異名をつけた。

エターナには『大空の大鷲』

クレアには『戦場のエンターテイナー』

レイチェルには『金粉の黒蝶』と

その3機を見てもやはり『国連の白い悪魔』は群を抜いて異様だったが。

そして口々にこう言った。

『まるでFairy Taleだ……』と……




結果だけを見れば、神戸まで押し込まれ壊滅、アメリカ軍は撤退、帝國軍、国連軍は大損
害、俺達Fairy Taleも部隊の5割以上が落とされ、艦もボロボロときている。Fairy Tale
結成史上最悪の負け戦だった。

ウィンダムではこれが限界だ。
俺達の指揮も不味かったが、機体性能に眼界がある。
そろそろ、兵達も慣れてきた頃だ。
帰って、新たなる量産期を考えるか……
ガンブラスター辺りにしないとこれ等の新種のベータに対応できんな。


俺は被害の大きさと犠牲になった部下を悔やみながら戦場を後にした。







[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 8
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/02/25 17:00
俺はエターナ、クレア、レイチェルの4人で会議をしていた。
会議の議題は、如何にして効率よくハイヴを落とすかという会議だった。

最初に口を開いたのはエターナだった。

「まず、降下部隊の損耗を如何にして抑えるかが肝心でしょう」

その言葉にクレアがこう言った。

「それじゃ~レーザー級をどれだけ地上と空で落とせるかによるよね~」

レイチェルも口を開く。

「突撃前衛もう少し増やせませんか? そうすればレーザー級の排除率が上がると思うのですが……」

あーでもない、こーでもないと長々と会議は続いた。

俺は無言のまま押し黙り、考えていた。

このままでいいのか? チンタラやっていた所で焼け石に水だ。
カシュガルを落としたいが、統一中華が文句を言ってきそうだ。
アメリカの動向も気になる。
如何すべきか……

その時だった……クレアの一言が俺を吹っ切れさせた。

「こ~さあ、楽に簡単にスパ~ンとベータやつけられたらいいのに……」

……俺は何を小難しく考えていたんだ……

国の思惑?

世界情勢?

部隊の損耗?

世界の目?

嗚呼……ここに来て以来、人間としての感情が芽生えたが、そんな事ゴチャゴチャ考える
のは疲れた……

国の思惑?

そんなの事務総長に任せておけばいい!!

世界情勢?

そこら辺中、ベータとハイヴの山だ!!

部下の損耗率?

俺達が前に出れば減らせれる!!

世界の目?

そんなの今さらだろ!!

ああ、もういい……

考えるのは……止めだ……

当初のオッサンとの盟約を果たす。

カシュガル殲滅して、動けなくなったベータを嬲り殺す!!

地球の掃除が終わったら、月だ!!

もういい、考えるのはベータが殲滅した後だ……


「ククククク……アッハハハハハハハハハハハ!!」

「た、隊長!?」

「ど、如何したのさ!? 突然!? 何か私、可笑しな事いった!?」

「隊長が……壊れた……」

口々に反応する部下たちを俺は見やりながら言い放つ。

「ゴチャゴチャ考えるのは……止めだ……」

「あ、アルト……?」

ああ、エターナ、そんなに見つめるなよ……照れるじゃないか……

「た、隊長がキレた……」

クレア、私はキレてない、原点に立ち返っただけだ……

「……」

ああ、レイチェル、そんなに怯えなくても大丈夫だよ、私は優しいお兄さんだから……

俺は夫々見回し、今晩の晩飯のおかずを言うように、こう言い放った。

「カシュガル、落とすぞ……俺達4人で……」

「「「……ハ……」」」

ククク……その表情イイ!! 実にイイ!!
麗しき乙女が3人揃って口を半開きにして、目を点にする……

実に愉快な光景だ!!

「アルト? 冗談ですよね? 会議が紛糾したから言った冗談ですよね?」

「エターナ……俺が仕事中に冗談ホザクタイプの人間か?」

「いいえ……ですが!?」

「作戦はこうだ、宇宙からカシュガル目掛けて急降下!! 進路にいるベータ意外は無
視!! 反応炉を最大火力で蒸発!! 実に実にシンプルだ!! 馬鹿馬鹿しいほど解り
易い!! 作戦はこうでなければ面白くない!!」

「隊長……それ……本当に出来るのですか……?」

レイチェルの疑問に俺はこう答える。

「出来る!! ガンダムの性能を余す事無く、フルに使えば簡単だ!!」

「スッパリ言い切った!?」

クレア、事実はハッキリ言わないといけないよ……

「ですが、統一中華がなんと言ってくるか……」

「そんなのは事務総長が対応してくれる!!」

エターナの言葉に俺はそう言いはなった。

「押し付ける気マンマン!?」

「その通り!!」

クレアの言葉に俺は真実を包み隠さず言い放つ。
ここまで来ると清々しい。
悩む事がこんなに頭に悪影響か良く解った。
殲滅だ、蹂躙だ、正面から堂々と打って出る!!

「ちなみに拒否権は無い、命令だ! 来い!」

「「「り、了解……」」」

そんなに怯えなくてもいいのに……

高が虫ケラの親玉の巣に行って害虫駆除するだけだろうが……



俺はすぐさま工場区に連絡し向かう。

「班長、例の件だが、1ヶ月以内に出来るな?」

「無茶言わんで下さい!! 此方も一杯一杯なんですよ!? 唯でさえガンダムの強化は
時間が掛かるのに……」

「無茶でも無理でもやってもらう。ヴェルデバスターの生成とオプションパーツの追加、
カラミティの強化、F91のツインヴェスバータイプへの改良、何が何でもやってもらうぞ」

「そんな、無茶苦茶な!?」

「ガンブラスターの生産を一時中断してでもいい……やれ!!」

「……了解……」

よし、後は、宇宙軍の方だけだ。

俺はすぐさま自分の執務室へ戻り、端末からFairy Taleの宇宙艦隊に連絡する。

『准将閣下、どの様なご用件でしょうか?』

「少佐、後、2ヵ月後に俺とエターナとクレアとレイチェルをカシュガルに下ろす用意をしろ」

『じゅ、准将、冗談が過ぎますぞ!! たった四機でオリジナルを叩くと!?』

「つべこべ言うな! やれ!!」

『り、了解』



よし、後はあの三人を徹底的に鍛える!!

泣き叫ぼうが、喚こうが、操縦桿に手を縛り付けて、椅子に体を無理やり固定させてでもやる。
一日、20時間だ!!

休憩、睡眠、食事、排泄入れて4時間だ!!

カシュガル落とした後に死ぬほど寝させてやる!!

クククククククククククク……


それを聞いた3人は悲鳴を上げたとか上げなかったとか……

兎に角、基地は一時大混乱に陥った。

そして、事が終わった時には在都以外体育座りしながらこう呟いた。

『キレた隊長コワイ、キレた隊長コワイ、キレた隊長コワイ、キレた隊長コワイ……』

と……


何だかんだで、2ヶ月、作戦決行の日がきた。

俺たちの新たに改良した機体を紹介しよう。


ヴェルデバスターの場合は、
兵装は殆ど変わらないが、全てのステータスを限界を超えて改良、動力はバッテリーから
ミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉の変更、複合バヨネット装着型ビームライフルの
バヨネットにビームデバイスを取り付け、多目的連装ミサイルポッドをファンネルミサイ
ルに変更し、Gジェネのオプションパーツである。テレストリアル・エンジンとIフィール
ド強、プレミアム・ジェネレーターを装備させた。
勿論、Iフィールドに使われているのは改良型ミノフスキー粒子だ。

カラミティの場合、
全てのステータスを限界を超えて改良、火力、防御力、機動性は上がった。此方も、バッ
テリーからミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉の変更、テレストリアル・エンジンに
プレミアム・ジェネレーター、Iフィールド強を装備させた。

F91の場合、
全てのステータスを限界を超えて改良、ヴェスバーを2基追加し合計4基のヴェスバーを
所持している。この改良型ヴェスバーは補助スラスターが装備されており、推力向上にも
役に立っている。
テレストリアル・エンジンとIフィールド強にプレミアム・ジェネレーターを装備させた。


こんな所か、自分でも過剰火力だと思うし、整備班長から『コイツは改良じゃない再設計だ』とボヤかれたがこれであ号標的は沈められる。

俺たちは、降下ポッドに乗り込み、発進を今か今かと待つ。

『降下準備完了!! 准将、ご武運を!!』

「ありがとう! 下ろしてく!!」

『了解!!』

降下ポッドは戦艦から切り離され、大気圏へ突入を開始する。

俺たちは大気圏に落とされた。

『……第1外装剥離、減速4マッハ、侵入角度良好、レーザー照射による被害0.15%、降
下に支障無し、強制冷却停止まで22秒、空力制御開始……』

俺の声がノイズ混じりに各機に伝わる。

『α-1より各機、最終武装セーフティー解除確認』

俺の支持で各機が武装セーフティー解除確認が行われる。

『α-2解除確認完了』

『α-3解除確認完~了』

『α-4解除確認完了』

次々とエターナ達から武装セーフティーの解除確認が行われた。

『第二外装剥離。野郎共、地球に住み着く害虫の駆除だ! 対流層突破! 減速、0.9マッ
ハ! レーザー照射による被害、0.43%、降下に支障無し! 姿勢良好、レーザー設置面以
外の冷却停止、降下点、座標追尾固定! さあ……行くぞ!!』

降下ポッドの継ぎ目を固定していたボルトが音をたてて弾け飛ぶ。
ポッドはバラバラになり、4機のガンダムが一斉に大空を舞った。

「ここまで来たらレーザーは無視だ!! クレア!! シャフトにスキュラでデカイ穴あけろ!!」

『了解!! 天に竹林光って燃える!! 幸せ掴めと轟き唸る!! 私の砲撃は今日は一段と凶暴です!! 死ぬほど痛いぞ!!」

そう叫びながら、クレアはぶっ放す。
シャフトに大きな穴が開き、MSが余裕で通れる大きさの穴が出来る。

『グゥ~~~レイ~~~~~トォ!!』

「よし、穴へ飛び込め!! 天井から降ってくるベータは無視!! 全力全開で突き抜けろ!!」

『『『了解!!』』』

俺達は穴へと飛び込む。
ミノフスキードライブのリミッターを外してるので速度調整が難しいが出来ない事はない。
死ぬほど練習したのだから。

暫く曲がりくねった道を飛んでいると、ケツの穴みたいな物が見える。
アレが門級か、デカイし、硬そうだが、そんなの関係ない!!

「全機!! 最大出力でぶち抜け!!」

『『『了解!!』』』

俺は、ハイパーメガビームランチャーを最大出力でゲートにぶち込む。

エターナは複合バヨネット装着型ビームライフル連結させ、バスターモードに切り替えて放つ。

クレアはスキュラとシュラークを最大出力で打ち込む。

レイチェルはツインヴェスバーを撃ち込む。

ゲートは簡単に穴が開き、通れるようになった。

「行くぞ!!」

『『『了解!!』』』

暫く、飛んでいると、大広間みたいな所に出る。

『アレが……オリジナルハイヴ本体……』

エターナが搾り出す様な声で呟く。

『キショイね……』

クレアは気持ち悪そうに呟く。

『アレが……人類の敵の親玉……』

レイチェルはビビリながら呟く。

すると、重頭脳級から無数の触手が伸びる。

させるかよ!!

俺は左マニュピレーターでビームサーベルを引き抜き、触手を切り払いながらビームライフルをフルオートで打ち抜き、フィンファンネルを使い撃ち落としていく。

「貴様に攻撃の機会を与えた覚えは無い!! 最初から最後まで全て俺のターンだ!!」

そう言い、俺はあ号標的に打ち込んでいく。

『これで御終いよ!! 私達人類の前から消えなさい!!』

全ての兵装を撃ちながら、ファンネルミサイルを飛ばし、エターナが叫ぶ。

『悪いけど、今回はマジで叩かせてもらう!! 私だっておちゃらけてばっかりじゃないのよッ!!』

クレアの叫びながら全ての兵装を駆使して叩く。

『これで決めて見せる!! 行けぇぇーッ!!』

レイチェルはツインヴェスバーを叩き込む。

あ号標的はズタズタになり沈黙した。

「これで止めだ、あ号標的……お前を殺す!!」

ハイパーメガビームランチャーであ号標的を完全蒸発させる。

俺達は即時脱出を開始、カシュガルは陥落した。





世界はこの報を聞き、歓喜の咆哮を上げたが、Fairy Taleがたった4機でそれをなした事
を聞くと世界は押し黙った。

ガンダムは世界から最強と恐怖と勝利と出鱈目の象徴として扱われた。



この世界に『ガンダム伝説』が爆誕した瞬間だった。






[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 9
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/02/25 19:02

国連安保理、実質的に国連の中で最も大きな権限を持っており、事実上の最高意思
決定機関である。

その中で常任理事国が一同に会していた。

円卓テーブルを囲み、顰め面をしている常任理事国代表。

アメリカ、イギリス、統一中華、フランス、ソ連、日本、オーストラリアの代表が苦虫を
噛み潰した顔をして座っていた。

最初に口を開いたのはアメリカ代表だった。

「諸君、国連は何時からならず者国家になったのかね? 正義の味方気取りで、勝手に他
国の領土に不法侵入、軍事作戦を取るなど考えられん事だ」

各国の代表は思う所はあるが、それを口に出さない。
この世界で、自分の感想を述べるの自身の仕事では無いからだ。
ここにいる者達は国の代表できている。
つまりは、この場の意見は国の意見として捉えられるからだ。

「しかし、ハイヴを片付けてくれた事には感謝に耐えん。ヨーロッパは予断を許さないが、
人類はヨーロッパを取り戻したことになる」

イギリス代表は本音を含ませながらも顔には出さず、事実だけを言う。

「不法侵入と勝手な軍事行動は困るがな」

フランス代表はハイヴが落ちたことで自国が解放されたことは喜ばしい事だが、国としての意見を、イギリスに付け足す様に言う。

「まあ、彼等も国との共同作戦を申し込んではきています。我々も被害を最小限に抑える事が出来たのは不幸中の幸いです」

日本はあわや帝都陥落一歩手前までベータに押し込まれたのだ。事務総長からの事後承諾
とは言え、向こうから『お願い』されたのは渡りに船だ。アメリカから見限られたのと重
なったのが余計に有難さを倍増していた。
帝國軍ではガンダムとFairy Taleはアメリカ軍より親しみが沸くらしい。

「しかし……彼等は我々を信用していない。これは由々しき事態だ」

統一中華は感情では怒り心頭だが、鉄面皮でそう漏らした。
何故なら、彼等はFairy Taleがカシュガルを落とす時にその外周を警戒しただけなのだ。
統一中華は自国民には『Fairy Taleと共にカシュガルを落とした』と喧伝してはいるが、
世界から見たら『邪魔だから外で待っていろと締め出された』と認識されている。
気分が良い訳がない。

「Fairy Taleには厳重なる抗議をすべきだ。このまま彼等の独走を許せば国の秩序が崩れる」

オーストラリア代表は中立的な正論を述べるに留まった。

「だからこそ我々はFairy Taleを通常の国連軍として扱うべきではないのかね? 国連安
保理の厳重なる監視下に置き、彼等を縛る必要がある。我々は法治国家の住人だ、Fairy Tale
の住人ではない。彼等に好き勝手暴れられたら法治国家の威信や沽券に関わる」

各国の代表は『アメリカの威信や沽券だろうに……』と思ったがやはり発言は避けた。
しかも、アメリカの言葉の中には国連を引き戻し、Fairy Taleを自軍の軍隊として扱いた
い狙いがある。それを理解している各国は此方も思う所はあったが、アメリカの言動は正
論なので意見は出なかった。

その時、ソ連代表が挙手をして、発現の機会をえる。

「彼等を縛るのはいいが縛りすぎるのは良くない。彼等の行動の迅速さこそが独立任務部
隊たる所以だろう。彼等を安保理の枠に入れては対応が遅れる。我々、人類は曲がりなり
にもベータを駆逐する兵器がある。ガンダムという最強の兵器がな。それを生産可能でか
つ、彼等が作り出した第四世代型戦術機の性能は目を見張るものがある。ビーム兵器と呼
ばれる熱量兵器、レールガンの小型化、空中戦艦、彼等が作り出した兵器は各国の軍隊で
は太刀打ちが出来ない。もし、縛りすぎてそれらの兵器が我々に向けば、我々は彼等を抑
えられない。例えG弾を投入しても結果は同じだ。だからこそここは敢えて、彼等の鎖を
緩め、彼等の独自行動権限を与える。無論、武力介入する時はその国の同意が必要だがな」

多くの国はその言葉にそうだ、そうだと頷く。
各国の思惑としてはこれ以上、アメリカに力を持たせたく無い狙いがある。

アメリカ代表は、その言葉と場の空気に思う所はあるが声には出さない。

「それがベターでしょうな……今の所は……」

イギリス代表はアメリカの意見が崩れた事を見計らいそう呟く。

「現状維持ですな……後はFairy Taleがどれだけ我等の声に耳を傾けるかによるがな」

フランス代表もイギリスに続いて、アメリカの意見を潰しにかかるように呟く。

「まあ、これ以上の無茶はせん様に監視はすべきだが……」

統一中華代表はカシュガルの件があるが、各国に歩調を合わせる様にそう漏らす。

「まあ、彼等が国際社会の利益につながる事をしてくれるのを願うばかりです」

日本代表も自国の本音を隠して建前を述べた。

「やはり、静観、ですか……」

オーストラリア代表はやはり、今の状況ではそれがベターと解っていたので、そう呟く。

「それがベターだよ」

ソ連代表は自分の意見が通った事とアメリカの牽制が成功したので良しとした。

決議を取ったが、アメリカは条件付で賛成した。

その条件とは、Fairy Taleが保有する第四世代型戦術機と空中戦艦の技術解放、及びライ
センス生産を行える様にする事が上げられた。


条件を出したアメリカの狙いは、Fairy Taleの技術力を盗み自軍に加える事を目論む。
自国の最新鋭機、F-22とのキルレシオを埋める狙いがあった。
戦後世界が明確なものになりつつある現状を如何優位にするかが見え隠れする。
各国もそれに同意したのはアメリカの牽制と、今だ自国にハイヴやベータの脅威が存在す
る以上、力は欲しい。と言うのが本音だ。

紆余曲折はあるにしろ、こうして、Fairy Taleの独立作戦行動は承認された。




夕呼サイド

「アッハハハハハハハハハハハハハッハハハハハハ~~~~~~~~~~~~~~!!」

最初、『Fairy Taleがカシュガル落とした』と聞いた時は別段何も感じなかった。
逆に『ああ、やっぱり……』と納得してしまったくらいだ。

しかし……『たった4機の戦術機で陥落した』と聞いた瞬間、お腹が捩れそうになった。

馬鹿馬鹿しい、非常識だとは思っていたけど……

ここまで馬鹿馬鹿しく非常識なことされたらもう笑うしかない。

なにそれ!? たった4機でカシュガルが堕ちた!?
人類が玉砕覚悟でG弾投入しないと落とせないカシュガルが!?

素晴らしく非常識な連中だ!! 清々しい程の馬鹿さ加減だ!!

「あ~~~笑った……こんなに笑ったの初めてかも……」

しかし、とんでもない連中ね……それに、ガンダム……
たった4機でカシュガルが陥落できるほどのイカレた戦闘能力……
何を如何間違えたら、アレが作れるのかしら……

「それは兎も角……アイツ等がイカレたことしてくれたお陰で、こっちの研究費が削られ
たじゃない!! それが一番腹立つわ!!」

確かにFairy Taleの戦闘能力は度肝を抜かされる。
それこそ、戦術や戦略が意味を成さない位の出鱈目さだ。

今の人類がどんなに頑張っても第四世代型戦術機は生産不可能だ。
アメリカや各国は欲しがったみたいだけど、解析できるのかしら?
帝國が私に頼む事は簡単に想像はつくけど……

しかし、Fairy Taleも太っ腹よね……技術を公表するなんて……私は見てないけど容易
想像がつく……『解析出来るものならしてみろ! 作れるものなら作ってみろ!』と言う
Fairy Taleからの挑戦状だ。
陰湿でたちが悪い……
作れないと解っていて技術だけを開放したのだからなお更だ。
しかも、ライセンス生産は丁重にお断りされたらしいし……
販売も行う予定らしいが勿論、ビームライフルの技術はブラックボックス化するに決まっ
てる。


全くもってタチが悪い。

でも、違う技術を見学するのも面白いかもしれない。

00ユニット……行き詰ってるのよね~~~

私はそんなこと考えながらコーヒーを飲み干し作業を開始した。




国連事務総長室の中に3人が話し合っていた。

一人はこの部屋の主、ロンバルト・ゼンライ国連事務総長。

2人目は国連軍事務総長直轄“独立”特務部隊、Fairy Tale指揮官、手塚 在都准将。

3人目は同部隊副司令官、エターナ・フレイル大佐である。


「しかし、君達も無茶をしたな……統一中華の代表の顔が茹蛸みたいに赤かった」

事務総長は困ったものだと言いたげに口を開く。

「しかも、その理由が『邪魔以外の何者でも無いから』という理由でだ」

「私はそこまで言ったつもりありませんが?」

俺の言葉に鼻を鳴らしながら呟く。

「アレではそう言った様なものだ。証人喚問を受けてる人間の言葉とは思えない」

まあ、仕方ない、自国の軍隊を『被害が大きくするだけ』と言われてしまったのだから。

「私は事実を言ったまでです。それを不愉快に感じていようと、愉快に感じていようと私
の関知するところではありませんよ」

「それもそうだが……アメリカの要求……君は呑むのかね?」

事務総長は話を変えて、今度はアメリカ話題を振ってきた。

「ああ、その件ですか……大丈夫でしょう。アメリカや各国がどんなに頑張ってもウィン
ダムクラスの戦術機は生成できないでしょうから……アメリカの場合、金に飽かせてウィ
ンダムを大量購入するかも知れませんが……第一、ミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応
炉の生成が出来ないでしょう。アレはミノフスキー粒子とヘリウム3が無いと生成は不可
能です。それに、ビーム兵器は解析できても生産は出来ないでしょう。解析、生産できた
とすれば、精々、OSと鉄の圧縮技術、ムーバブルフレームくらいでしょうから、頑張って
レールガンの小型化ぐらいですか、早々我々には追いつけませんよ。それに……」

俺は、含みを持たせて言う。

「それに?」

事務総長はそれに食いついた。

「ウィンダムを第四世代型戦術機と位置付けるなら、我々は既に第五世代型戦術機の配備
を完了しています」

俺の言葉に事務総長が驚く。

「流石に早いな」

「ええ、ベータの脅威がある以上は手を緩めてもいられませんから」

俺は、エターナに資料を事務総長に見せるよう支持する。

「ほう、ガンブラスターと言うのかね……な!? このガンブラスター、小さくないかね? 」

ガンブラスターの改良点はミノフスキードライブを搭載した事と肩には3連発ランチャー
を左右両肩に装備する事が出来るようにしたのと、ドッペルホルンストライカーを小型化
したものを装備できるようにした。

後、装甲にはオッサンがくれた技術のアンチレーザーコーティングを施した。
まあ、MSの装甲に施す物だから耐久時間は夫々1分が限界だが。

エターナは事務総長に機体説明を行っていく。
事務総長の反応は凄いものを作ったなと言いたそうだった。

「これは凄いな、ウィンダムも凄いが、これは小型な上に出力はそれ以上か。更にウィン
ダムとのキルレシオが1対5だと? 世界各国が聞いたら嫌になる戦力差だな」

当然だ、我々をハイヴ一つ満足に落とせない連中と一緒にされては困る。



暫く、事務総長と談笑しているとノックが室内に響き渡る。

「どうぞ」

事務総長がそう言うと、事務総長の側近の一人が慌てて部屋に入ってきた。

「じ、事務総長!! 緊急事態です!!」

その慌てように俺達はただ事ではない事を嫌でも理解した。

「落ち着きたまえ。一体何があったのかね?」

事務総長は側近を落ち着かせる。

「それ所ではありません!! 月からハイヴユニットが多数飛来!! 宇宙軍の迎撃の網をすり抜けたのが3つ、一つはアフリカのタンザニアのトドマ! もう一つがソ連、オリョクミンスク、最後は日本、佐渡島です!!」

な!? ハイヴユニットが落ちただと!?

「宇宙軍は何をしていた!?」

「10以上の迎撃に出ていましたが、ミサイル切れの為、最後の3つは逃したとの事です」

「地上からの迎撃は?」

俺の質問に側近は答える。

「それが……核の運用を躊躇い、通常兵器で対応しましたが対応しきれず落下を許しました」

事務総長は即座に対策会議を開く様、側近に命じた。

事務総長に俺はこう言い放つ。

「この3つ何が何でも落とします」

俺の言葉に事務総長が反応する。

「アフリカは兎も角、ソ連と日本に作戦行動の承認を貰わねばならなくなったな」

「すぐには降りんでしょうな……先に、タンザニアのトドマに落ちた害虫を駆除します」

「少し待て!」

議長がそう言いながら電話に手を伸ばす。

電話が終わるとこう言った。

「タンザニアでの君達の独立作戦行動の許可が下りた。頼む! 私は独自作戦行動が取れ
るよう2ヶ国に働きかける。頼むぞ!!」

「「了解!!」」

俺とエターナは敬礼した後、即座に基地に連絡、アフリカに進撃する事にした。







[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 10
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/02/25 21:05
タンザニア

この国は、少量ながらも、石油とガスの探査・生産、金、ダイヤモンド、タンザナイトを
含む宝石用原石、卑金属、その他多数の鉱物。タンザナイトはタンザニアでしか採れない
貴重な宝石が取れる事から、中東を押さえられた人類にとって貴重な資源が眠る場所の一
つである。


そう考えると、ベータがここを狙ったのも頷ける話だ。


農業も盛んで、綿花、コーヒー、紅茶、サイザル麻、ダバコ、除虫菊、ココナツ、小麦、
カシューナッツ、丁字、パームオイル、砂糖、ビーバー香オイル、アラビアゴム、植物性
精油、果物・野菜、カルダモン等のスパイス、新鮮な花など大規模生産の輸出指向品。米、
トウモロコシ、大麦等の穀類、豆、エンドウ豆、プランタン、キャッサバ、ジャガイモな
ど、今日の飯すら事欠く人類にとっても重要な国の一つになっている。


それを考えるとベータが戦略的に物を見出したのかと深読みしてしまいそうになる。


全くの余談だが、アメリカのティファニーが国連にタンザニアをぜひ奪還してくれと頼み
込んだ冗談のような本当の話があった。


国連の経済社会理事会や国連食糧農業機関、工業開発機関も事態を重く見たのも頷ける。


とにもかくにも、資源的、農業的に見てこの国を失う事は、人類が貴重な資源と農業的な
物の一つを失う事を意味する。
唯でさえベータによって資源や人員、食い物が失われているのにこれ以上失えば人類はカ
ナリ厳しい。


兎に角、早々にハイヴユニットを叩くとするか。
Fairy Taleの真価は即時展開、即時行動が大原則だからな。

俺は新型戦艦、ミネルバ改良型、Fairy Tale総旗艦『フェアリーテイル』に乗艦していた。

何を如何改良したかと言うと、オプションパーツを使い装甲をラミネート装甲にし、コア
スプレンダー発進区画を潰し、3連装式回転砲塔式メガ粒子砲を3つ取り付け、イゾルデを
三連式レール砲に変更、トリスタンを2連装から3連装に変更した。タンホイザーも環境
に配慮し、全く汚染しないタイプになった。
ブリッジもフリッジをそのまま下ろすタイプから椅子だけ下ろすタイプにした。

「さて、俺達がいなくて何処まで彼等がやれるか……」

そう、今回は俺達、隊長陣は出ていない。
今回は、ガンブラスターのテストも兼ねている。

何処までやれるか見ものだな。

「戦闘ブリッジ、開け!! 対ハイヴ、ベータ戦闘用意!!」

「了解!!」

トレマーの命令で艦橋要員がキビキビ動く。

「アンチレーザ爆雷発射後、特装砲タンホイザー発射、続いて、トリスタン、レール砲、メガ粒子砲、パルジファル正射!」

「了解!!」

オペレーターは次々とトレマーが出す指示を性格に素早く行っていく。

タンホイザーと各艦からの砲撃は周囲にいたベータをなぎ払いながらモニュメントに突き
刺さる。
その目も眩む無数の閃光はモニュメントを串刺しにしズタズタにし、モニュメントを崩壊
させた。
無数のミサイルはレーザー級に落とされたものの、残り5割はベータを焼き払う事に成功
した。

「戦術機を発進させろ!!」

「了解!!」

トレマーが戦術機発進を命じる。

さて、何処までやれるか見ものだな。




「α-1より各機!! 編隊を組んで俺に続け!!」

『了解!!』

α隊、隊長が支持をだす。

ガンブラスター隊がそれに続く。

その時だった、レーザー級がレーザーを放ち、戦術機部隊を打ち落とそうとする。

「レーザー級!? 落ちるかよ!! その程度レーザーで!!」

レーザー照射を受けたはずの機体は無傷だった。
発進したとき即座にビームシールドを展開していたためだ。
ガンブラスターは即座に戦場に展開した。

ガンブラスターが地上に降り立つ機体と空から砲撃する機体に別れた。

「堕ちろ!!」

衛士の一人がビームライフルをフルオートで打ち込んでいく。
数十発のビームはベータを撃ち抜き、巻き込みながらベータを撃破していく。

「コイツを喰らえ!!」

また、ある衛士はビームバズーカを撃ち込む。
ビームバズーカは周囲のベータを巻き込みながら吹き飛ばし、地上に大きなクレーターを
作り上げた。


それを見ていた隊長の一人はこう漏らした。


「新人達もやるもんだ。だが、天狗にならなければいいが……」

ガンブラスターの操縦桿を動かし、空からビームライフルでベータをなぎ払う。

「流石、第五世代型戦術機と言ったところか……コイツは第四世代型戦術機とは訳が違う」

全くもってこの部隊は世界の遥か先を爆走している。
そう感じてしまう。

俺がこの部隊に入る前は新人で、17歳だった。あの頃は、一度でいいから第三世代型戦術機のタイフーンに乗ってみたいと憧れたものだ。
だが、今では第三世代型をすっ飛ばして、第四、第五と乗っている。
しかも、中隊の隊長をしているから人生解らんものだ。

そんな事を考えていると、警告アラームが鳴り響く。

「おおっと!? 危ない所だった! レーザー感知システムに感謝だな……」

第五世代型戦術機にはレーザー級のレーザーを撃つタイミングを警告してオートで避けて
くれるレーザー感知システムがついていた。

コイツの原理はレーザー級がレーザーを撃つ時にレーザー級の体内に熱量が生まれる。そ
れを感知し、警告、オート回避、ビームシールドを自動で選択をしてくれるシステムらし
いが詳しい事は解らない。

だが、欠点が無いわけでは無い、このシステムは単調な回避運動と、防御の2種類しか選択できず、熟練の衛士の射撃や格闘戦には通じなかった。

まあ、単調に正確な射撃しかしてこないレーザー級が相手なら問題は無いが。

後、第五世代型には遠隔操作、遠隔制御を妨害する、アンチトライアルシステムがあるら
しいが、何でそんなの物を積んでるのか解らない。
准将に聞いた所、『遠隔操作でクラッキングされた挙句に私兵にされてはたまらん』との事……

また、小声でこうも言っていた。『00ユニット如きに私の部隊が駒の様に扱われてたまるか。リボーンズ・アルマークには感謝しないとな……』とも。
私が聞き返すと『忘れろ』と言われたので忘れる事にした。

兎に角、目先の敵を片付けることに専念した。




フム……部隊の損耗は今の所、ゼロ、か……

ベータの重頭脳級を片付けたからベータの動きが緩慢なのも今回の快挙に繋がっていると
見るべきだな。

「フム、やるものだな……我等の兵も……だが、甘い所もあるみたいだが……」

だが、これなら、世界の戦術機相手でも十分やっていける。

アメリカや各国が何らかの小細工を弄しそうだから、何らかの対策は取っておくべきだ。
特に、香月 夕呼は要注意だな。

ギレンさんみたいに余裕ぶっこいて見方に撃たれてはたまったものではない。

XG-70b 凄乃皇のラザフォード場はビーム兵器で抜くことが出来た。

何でそうなったかは興味が無い。オッサンがそうしてくれたのだろうと解釈する事にした。

一般機では50%威力が落ちるが貫ける。

ガンダムクラスのビームなら、70から80%に威力が落ちるが、凄乃皇の装甲ぐらいなら簡
単に抜ける。


ベータ依存の技術でもオッサンの技術なら簡単に対応策が講じれる。

オッサンの技術を舐めんな、ベータ!!

しかし、00ユニットの超高速の解析と演算機能を如何するかが問題になってくるが……
逆に考えたら、00ユニットも機械だ、テスタメントの量子コンピュータウイルス送信シス
テムが使えそうだ。これで00ユニットを誤魔化すことが出来ればいいが……今の所は何と
も言えないな。
00ユニット完成してないし。

兎に角、目の前の害虫駆除が最優先事項だ。

俺はモニターを見ながらそう考えた。


戦闘は我が軍の損耗ゼロと言う歴史的快挙で幕を閉じた。




所変わって、日本帝国、技術廠、第壱開発局。

ここに、ウィンダムが運びこまれて、解析が行われていた。

Fairy Taleから買い取った戦術機と公表された技術をどれだけ自分達の物にしていけるか
が、技術廠、第壱開発局最大の課題だった。

技術廠、第壱開発局、副部長、巌谷 榮二中佐は、ウィンダムを見上げて考える。

全く……Fairy Taleという集団は異常だ。
これだけの技術を早々に我等に公開、販売してしまうのだから。

ビーム兵器はブラックボックス化されて解析は出来なかったが得るものは大きかった。

戦術機のOSは性能面では不知火より遥かに扱いやすい。まるで思い道理に動いてくれるみ
たいだ。
コックピットは特に度肝を抜かされた。アメリカ統一規格以外の管制ユニットなんて始め
て見たし、球体式の管制ユニットなど見た事が無い。それにこの画面、無茶苦茶薄いのに綺麗な画質だ。しかも、電力消費が少ない。
操縦桿は、縦ではなく横についている。
乗ってみたがGを殆ど感じなかった。これなら強化装備なしでも乗れるほどだ。シートベ
ルトがついているのも珍しい。
ストライカーパックで戦局や戦場、作戦に応じた装備を換装するとは、しかも装備は多彩。

私が更に驚いたのは、この機体、核で動いているのだ。

信じられん……核の高出力エンジンでここまで小型化できるものなのか!?

それに、このムーバブルフレームと鉄の軽量圧縮技術……凄すぎる……これなら何とか本
当に何とか実現は可能だ。

戦術機はどの機体でも、装甲そのものが骨格として機体を支える構造をとっているものだ。
骨格となる装甲そのものの強度で機体を支えることが出来、安価に戦術機を生産できる反
面、骨格を外部側にとることで各関節稼動部の可動範囲や強度に制約が生まれるというデ
メリットも同時に内包していた。しかし、この問題を解消すべく機体を支える骨格を内包
し、装甲の支持無しに機体を支えるフレーム構造をとったのがムーバブルフレームだそう
だ。

しかし、ムーバブルフレームの構造上重くなる筈だが、鉄の軽量圧縮技術により、それを
解消、逆に軽くなっている。

更に私を驚かせたのは、レールガンの小型化だ。
しかも、信頼性、連射力、水中での使用が可能と高性能すぎる。

全く……何て技術力の差だ……
反則もいい所だ……
ここまで技術的差を見せつけられると悔しいを突き抜けて逆に清々しい。
彼等、Fairy Tale、いや……手塚 在都は我々の遥か彼方を超高速で爆走している。


そんな事を考えている時だった……

Fairy Taleがハイヴユニット攻略で損耗ゼロでハイヴユニットを陥落させたと言う事を聞
いたのは……


……泣きたくなった……色んな意味で……




アメリカ合衆国、ホワイトハウス

大統領と統合参謀本部議長が向かい合って話していた。
ハッキリ言って、顔色は最悪に近いほど悪い。

大統領はウンザリしながら口を開いた。

「統合参謀本部議長……私は余りこの手の冗談は嫌いなのだがね……」

統合参謀本部議長は大統領の言葉にウンザリしながら答えた。

「何度も申し上げてる通りです。大統領、このウィンダムとF-22の性能差は1対10以上
です。ハッキリ言ってしまえば。1対1では勝てる見込みは万に一つもございません。衛士
の腕でもカバーが利かない戦力差です」

統合参謀本部議長の言葉に吐き捨てる様に言う大統領。

「全く……何て非常識な連中だ!! 行動だけでなく戦術機も非常識とは……奴等はふざ
けているな!! 全く……」

忌々しそうに叫ぶ大統領。

「大統領閣下、このウィンダムを元に新たな戦術機を開発する必要があります。ラプター
ではウィンダムには勝てません。ラプターのステルス性もウィンダムのレーダーの前では
丸裸同然です。Fairy Taleにより、ベータ大戦の戦後が明確になりつつある今、我々はFairy
Taleを抑える必要があります。このままでは、Fairy Taleの独走を唯見ているだけになり
ます。それに、我が国の戦術機輸出業が冷え込みを見せ始めています。各国はアメリカ産
戦術機からFairy Tale産戦術機にシフトしてきています。もし、これで何処かの国がライ
センス生産をされますと我が国の戦術機産業が潰えてしまいます。その事に軍産複合体は
強い危機感を露にしています」

統合参謀本部議長の言葉に大統領も強い危機感を覚えた。


戦術機開発において、アメリカは世界の1歩先をひた走ってきた。それは彼等軍産複合体
に莫大な利益を齎し、議会やホワイトハウスにも大きな発言権を持っていた。
この大統領も彼等のバックアップがあったからこそ大統領の椅子に座れていると言っても
過言ではない。


それが、ある日、突然、何処からとも無く現れたFairy Taleに横から掠め取られるのだ。
しかも、彼等の開発した戦術機は自分達の開発した戦術機よりも安価で高性能な物が販売
されている。

今まで、散々設けたドル箱が消えて無くなろうとしていた。
アメリカ軍内部でもFairy Tale産戦術機にシフトすべきだ、と言う声が聞こえてくるほどだ。

(何とかせねが……このままでは、私は大統領の椅子から転げ落ちてしまう……)


大統領は統合参謀本部議長に命じ、第四世代型戦術機の開発を急がせた。
それと同時に、ある作戦の検討も進めさせた。

世界は驚愕と混乱の度合いの歯車の回転を加速させながら突き進んでいた。






[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 11
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/02/26 00:54
俺達が、タンザニアのベータの残党処理を終えて帰る時だった。

事務総長から通信が入ったのは。

『諸君の活躍でタンザニアが開放された。復興までには時間が掛かるが、これで3つの内
一つの心配事が消えた。感謝に絶えんよ。連続で悪いが次の仕事だ』

「と言う事は、日本とソ連どちらかの任務、と言う事ですね?」



俺は解り切った事を事務総長に問うた。
事務総長は首肯しながら答える。

『君達の次の任務は日本だ、日本帝國政府との共同で佐渡島を落としてもらう』

「なぜ日本に?」

『それは、ワルシャワとNATOがどれだけの兵を出すかで揉めている。NATOが介入する
理由はアメリカとの距離が比較的近いからと言う理由で、ソ連に申し込んできた。ソ連も
君達を余り信用はしていない。兵力は確保しておきたいのだろう』


くだらん国家のイザコザか、解ってはいるがやりきれない。
しかし、アメリカが突如、兵を派兵する事を決めたのは何か狙いがあると見て間違いないだろう。


「アメリカとソ連の建前は理解できましたが、その裏に潜むモノが気になります。まして、
極端な実益主義を取るアメリカが唯、距離が近いだけで兵を送りつけたりはしないでしょ
う?」

事務総長も解り切っているみたいで、頭に手をやりながら答える。

『ああ、アメリカとしては目の上のたんこぶたる君達の現地での戦力評価、ソ連は落とさ
れた君達の第五世代型戦術機の回収が目的だろう。しかし、アメリカは何か隠している可
能性がある。十分用心しておくに越した事は無いがな』

「これは、あくまで予想ですが、アメリカはG弾の作戦使用を検討しているのでは無いでしょうか?」

俺の言葉を聞いた瞬間、事務総長の眉根がピクリと動いた。


『ほう……その根拠は? 君の事だ、根拠無くそう予想立てる事は無いだろう?』

「あくまで予想ですが、オルタネイティヴ5が予備計画として採用されて以来、アメリカ
はさしたる成果を挙げていません。更に我々の活躍でG弾の戦略的運用実験をする機会が
失われつつある現状でアメリカは焦り感じているでしょう。幾らコンピューター技術で結
果が解っていても実際に使用しないとその効果は発揮できませんから。今、アメリカが欲
しているのは目に見える結果です。それも、痛烈で解り易い……そう考えると、『アメリカ
がG弾を使いハイヴを陥落させた。Fairy Taleよりも確実で早く』となれば、落とされた
国やG弾運用反対派からは批判されるでしょうが、肯定派からは一定の評価はされるでし
ょうから。後はアメリカの発言力に物を言わせて押し切れば、オルタネイティヴ5の発動
が早まるでしょう。幾ら、アメリカの発言力が衰えたとは言え、今だ、アメリカを超える
国力の国は存在しないでしょうから。ただ、アメリカがソ連と事を構える可能性は低いと思います。私の突拍子もない予想ですが……」


事務総長は俺の考えを聞きながら顎に手をやる。
少し考えた後、こう言った。


『解った、私の方でも探りは入れておく。君達も用心して事に当たってくれ。君達がG弾
で消えるなど考えたくも無い。君達は人類にとって最大の功労者で最高の財産だ。それに、
本音を言えば君みたいな男がいなくなると私が詰まらなくなってしまう。ここまで面白く
も楽しい男を私は知らんからな』

「精々、重力異常に巻き込まれないように致します」

『ああ、日本帝國には、話を通してある。君はそのまま横須賀の帝國海軍基地に向かって
くれたまえ』

「了解」

俺は議長に敬礼をし、隊長室のモニターを切った。


「次は……日本……か……」


今更、国に愛着がある訳では無い。だが、世界が違えど、祖国は祖国な訳で考え深いもの
はある。


さて、帝國軍の情報を収集しますか……
俺は各艦に次の作戦が日本で行われる事を告げると即座に情報収集に乗り出した。





インド洋を抜け、太平洋に至り、横須賀に向かう。

横須賀なら俺達の受け入れが可能な軍港が幾つもある。

横須賀海軍港がレーダーで捉えることが出来る時、日本帝國海軍の鑑定が現れた。

帝國海軍から通信が入る。

『Fairy Tale空中艦隊に告げる。此方、日本帝國連合艦隊である。貴官らの横須賀への入港を許可する。ようこそ、横須賀へ』

「帝國海軍のエスコートを感謝する」

トレマーが完結的に答え、通信を閉じる。

我が艦隊は帝國海軍の水先案内により横須賀に向かった。


モニター越しに俺は外の景色を見やる。

帝國兵達が厳重警戒をしていた。
そのフェンスの向こう側には野次馬と報道陣が大勢、詰め掛けていた。

フェンスの此方側は戦術機部隊に、歩兵が厳重警戒を敷いていた。
照準は此方に向いているのだろう。即時対応で此方を向いている。
武装ヘリが飛び交い、喧しい音を立てながら上空を飛び交っている。

完全な空と陸の方位網が敷かれている。

そんな事を考えていると、帝國軍から通信が入る。

『上陸の許可が下りました。Fairy Taleの指揮官の方と旗艦『フェアリーテイル』艦長2
名は上陸許可が下りました。作戦司令部までお送りいたしますので、離艦されてください』

お呼び出しか、しかも代表者2名よこせときたか……

「了解した。此方の準備が出来次第、離艦する」

俺はそう答えると、帝國軍兵士は『了解した』と手短に答え、通信を切る。

「と、言うわけだ、艦長、正装に着替えて、5分後に集合だ。遅れるなよ」

「は!!」

俺の言葉にトレマーが敬礼で返す。

俺は、隊長室に到着すると国連のサービスドレスに着替える。

俺は軍帽を被り、部屋をでた。


俺はトレマーを伴い、艦を下りる。

帝國兵が私達を公用車に乗せ、作戦本部に向かう。



帝國軍と我々との話は付いた。

基本的な戦略は各艦からの一斉砲撃で始まり、それに康応して戦術機部隊を送り込む。

お決まりの作戦だ。

まあ、ベータ相手にはこれがセオリーだが……

兎に角、作戦が決まった所で暫く雑談していると突如、警報が鳴り響く。

「何事か!?」

「一体、何の警報だ!?」

等々、辺りは騒然とした。次の瞬間、強い地震が起こり辺りを揺らす。

「くっ!?」

俺は呻きながら何とかその場に踏ん張る。
その時だった……


俺の頭の中に多くの人の感情が流れ込んできた。


これは!? 人が大勢死んだ!? 何処で!?


地震が収まった時、兵士の一人が飛び込んできた。

「き、緊急事態です!! 横浜に!! 横浜にハイヴユニットが落下しました!!」

俺は、兵士の言葉を聞き、我が耳を疑った。
ハイヴユニットが落ちた……だと?

その時、俺は今年の年と日にちを思い出した。

……1998年……10月……22日……か……

こんな所でこんな偶然が!?

訳が解らん!?

偶然にしては出来すげている!!

歴史の改ざんで世界の進む方向がゴチャゴチャに混ざっているみたいだ。


兎に角、横浜のベータを叩いて、白銀 武と鑑 純夏を助けなければ……

俺はそう考え、即座にトレマーに軍を動かす事を命じた。

「状況が状況です。我々、Fairy Taleは横浜に落ちたハイヴユニットの撃滅と民間人救助に向かいます。よろしいですね?」

そう質問すると作戦本部長は即座に答える。

「私の方からもお願いします。即時対応可能なのは我が基地だけですから」

「了解した。即座に動く」



Fairy Taleは横浜に降り立った。


俺は、モニター越しに廃墟と化した横浜の町を見渡した。

今の所、民間人の救出とベータの掃討、救助した民間人を輸送する大型輸送ヘリの護衛に当たっていた。

ハッキリ言って、横浜の町は瓦礫の山だ。
Fairy Taleの救出の為に出した、陸戦部隊にも死傷者が多数出ている。

幸いと言えば幸いなのが戦術機部隊には被害が出ていないのと、民間人の非難が60%完了
していた事が幸いだった。

「エターナ!! 俺は住宅地の非難状況を見てくる!! そちらは任せられるか!?」

『大丈夫です!! 第二大隊がここは受け持ちます。准将は住宅地のほうへ!!』

「解った!! 第一大隊!! 住宅地の非難を確認する!! 付いて来い!!」

俺は、エターナにこの場を任せると、第一大隊を引き連れ、住宅地へと向かう。



酷い物だ……住宅密集地がグシャグシャだ……

そんな事を考えていると、大勢の人の気配を感じた。

この感じ……民間人はあそこか……

「民間人の救助を最優先とする!! 各自散開!! モニター、熱紋、レーダーなんでも
いい!! 少しでも異変を感じたら私に報告しろ!! いいな!!」

『了解!!』

白銀と鑑は死なせる訳にはいかん。

最悪、1人でも助けられれば!!

俺はそんな事を考えながらアームレイカーを操作し、目を皿にして探す。



『……死んでたまるか……』

『……ちゃん……私は大丈夫だから……無理しないで……』



人の声……

集音マイクが拾ったモノでもない……
頭に直接響く様な……


俺はその声に導かれアームレイカーを操作した。





???サイド

死んでたまるか!! 死なせてたまるか!!
俺は、俺達は生きたいんだ!!

父さんも、母さんも死んだ。

ベータに殺された!!
純夏の両親も……

俺は……無力だ……

今まで世界は変えられる。そう信じてきた。

何も疑う事無く。

今まであるべき日常は瓦礫と化した。

俺は泣き叫ぶ純夏の手を引き、廃墟の住宅地を走り続けた。

帝國軍は何してんだよ!!
何で、助けてくれないんだよ!!

誰でもいい、純夏だけは!! 純夏だけは助けてください!!

俺は如何なってもいい!!

だから……だから……

純夏だけは助けてください!!!!





???サイド

私の両親が死んだ。

目の前で死んだ。戦術機に押しつぶされて……

私は泣く事しか出来なかった。
泣き叫ぶ事しか……

そんな私の手を武ちゃんは私の手を引っ張りながら走った。

涙で目の前が見えない。

絶望で何も見えない。

でも、武ちゃんの手の暖かさが感じる。

それだけが私を支える全てだった。

それだけが、私の世界になってしまった。


その時だった、頭のデカイ、人間の手を持ったバケモノが一杯が私達の目の前に現れた。

『殺される!!』

そう思った時だった。


空から轟音が響き、バケモノ達がズタズタになった。


「あ、あれは……」

武ちゃんの言葉に私は上を向く。

そこには、六枚の翼を広げた白い戦術機が空にいた。

「あれは……ガン……ダム……」

武ちゃんの言葉に私は驚く。

アレが……“ガンダム”……

ニュースや新聞で見た事しかないFairy Taleのガンダム……

まるで、御伽話みたいに私達を助けてくれたガンダムを見上げながら私は思った。

“私と武ちゃんは生きている”と……

そう考えた瞬間、意識を手放した。



俺は考える……
この出会いが、一体どんな方向に向かっていくのか解らない。

しかし、歴史は変わった。

そう実感した。




世界は変革の歯車をゆっくり回しながら、しかし確実に動き始めた。

3人の思いを余所に……







[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 12
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/03/02 00:32

手塚 在都、白銀 武と鑑 純夏……


この1人の青年と少年、少女に接点は全く無い。

年齢も違えば、生きている世界が全く違う。
まして、生まれた世界すら違うのだ。


しかし、この1人の青年と少年、少女は出会った。


瓦礫と化した横浜の住宅地で。

青年はガンダムの中で、少年、少女は地上で。



俺は外部スピーカーで呼びかける。

「大丈夫か!? 生きているな!?」

俺の呼びかけに白銀は鑑を抱きながらビクリとした。
生きてはいるみたいだ。
良かった……

俺は、震えながら鑑を抱きしめる白銀を安心させる様、
出来るだけ、優しさを込めて声を掛ける。

「国連軍だ。君達を助けに来た。2人とも怪我は無いか?」

俺の言葉を聞いた白銀は何とか搾り出す様な、震えた声で答えた。

『俺は大丈夫です。でも純夏が……』

俺は、モニターに映し出された二人を拡大した。
どうやら気を失ったらしい。
俺は白銀を安心させる様、声を掛けた。

「安心しろ、緊張が緩んで気を失ったのだろう。このままここにいても危険だ」

俺は、2人の前にHi-νを数メートルの地点に着地さ、左膝を地につけた。
コックピットのアームレイカーを操作し、マニピュレーターを2人の前にさしだした。

「ここに乗れ。避難民は我々が保護した。後は君達だけだ。早く!!」

丁度、彼等を見つけた時、部隊から民間人を保護、輸送ヘリにて回収、護衛の任についた連絡を受けた。

ヘリを呼んでいる暇は無さそうだ。
レーダーには小型種を含むベータの反応が此方に近づきつつあった。
俺の第一大隊も輸送ヘリの護衛についている。
残る手段は、俺が安全圏へ彼等を逃がす事しか選択肢が残されていない。

『わ、解りました!!』

白銀は、叫ぶように俺の言葉に答え、鑑を抱きかかえながらマニピュレーターに載った。
俺は2人を落とさない様、ユックリとHi-νを立たせると、
マニピュレーターをコックピットハッチに近づける。
そして、コックピットの手元のコンソールを操作し、ハッチを開く。

空気の抜ける音が、コックピット内外にその音を響き渡らせる。
あまり、コックピットの中に入れたくは無いがレーザー級と遭遇した時、
2人を抱えて落とさない様にレーザーをかわせる自信は俺に無い。

「入れ!!」

俺はそう叫んでいた。
仮にもここは戦場だ。
長い時間止まっていて、迎撃されないかと内心ヒヤヒヤしているしイライラしていた。

後から考えると、自分の胆の小ささに失笑を漏らしそうになるし、
あの時よく落とされなかったものだと考えてしまう。

「え、あ、はい!!」

白銀は答えながら鑑を抱きかかえ、コックピットに乗り込んできた。
2人が乗り込んできた事を確認すると、ハッチを閉める。
コックピットを閉めた音がコックピット内に響き、
ハッチ部分のディスプレーが外の様子を映し出した。

白銀はHi-νのコックピットを珍しそうに見渡す。
その様子に俺は若干、大人気なくもイライラしながら叫んでしまった。

「速く後ろに行け! ベータが迫ってきているんだ!」

「す、すみません!!」

白銀は慌てて鑑を抱きかかえると、シートの後ろに移動した。

俺は、2人がシートの後ろに移動した事を確認すると、
俺は白銀を落ち着かせる様にこう言った。

「これから戦場を離脱する。彼女をしっかり抱きしめていろ。離さないように……命がけで守った愛しい女なら、貴様はその娘を離すな」

白銀は俺の言葉に一瞬、口を半開きにして、マヌケ面になったが次の瞬間、
顔は紅葉した紅葉していく紅葉の様に徐々に赤くなった。

「な!? 俺と純夏はそんな……」

「話は後だ! 行くぞ!!」

俺は白銀の照れ隠しを遮ると、アームレイカーとペダルを操作し空へと舞い上がる。




戦場を離脱した俺達は、第一大隊と合流、横浜を脱出した。
俺達が仮設の難民収容キャンプに到着すると、仮設の戦術機発着場にHi-νを着地させた。
どうやら、俺達が最後らしい。

「着いたぞ。ここまで来れば君たちは安全だ」

「あ、ありがとうございました」

白銀はどこか緊張した声でお礼をいった。

その時、リフト搭載型エレカが到着した。

『准将閣下! ご無事で何よりであります! リフトを上げます!』

通信で若い整備兵が声を掛けてきた。

「頼む」

『了解!!』

リフトはゆっくりとコックピットハッチ付近まで近づく。
俺と2人はそれに乗り込み、地上に降り立った。



白銀と鑑を医療班に預けた後、俺は仮設の本部に入る。
そこには、エターナ、クレア、レイチェルの3人が揃っていた。

俺が入ってきたことが解ると、3人は敬礼した。
俺も敬礼を返す。

「隊長、ご苦労様です」

エターナの労いの言葉に疲れたと言わんばかりに答えた。

「ああ、君達もな。被害状況は?」

俺の質問にエターナが資料を見ながら答えていく。

「現在の被害状況は死者、約50万人、行方不明者、約60万人、怪我人、約180万人です。
これから更に増えるでしょう。横浜市内は壊滅、ハイヴユニットは我々が民間人を助けた
為、殲滅できませんでした」

「ハイヴユニットは落とせなかったが、多くの民間人は救出できた。そう考えいいだろう」

俺はそう言うものの考えてしまう。

一体、この後何がどうなってしまうのか? と。

これまで歴史を無造作に無秩序に変えてきたが、ハイヴがこうも立て続けに落ちてくるのは異常だ。

月のオリジナルハイヴが地球にハイヴユニットを落とす。
この行動に何ら疑問は抱かない。
むしろ、俺達人類を敵だと考えている。

しかし、量が問題だ。今まで迎撃できる数しか落としてこなかったのが、
今になってこちらの迎撃能力を上回る数を落とし始めた。

これは、月のオリジナルハイヴが何処にあるのか調査し、叩く必要がある。
俺の考えではサクロボスコクレーターにあるのではないかと思うが、
さて、如何したものか……

問題は月だけじゃない。
多分、これが、1番の問題だろう。

この世界の主人公とヒロインであり御伽話の書き手を、俺は助けた。
この二人の数奇な運命を俺は捻じ曲げた。

歴史にIFは無い。歴史は過去からの選択肢が重なる事で出来る過ぎ去った出来事だ。
しかし、俺は生半可な知識でこの歴史を弄くった。

多分、アメリカが武力介入してG弾を落とすだろう。
多分、これは定則事項だろう。

しかし、白銀は死なず、鑑は脳味噌だけになっていない。

行方不明者の中に、ベータに捕らえられた人がいるかも知れないが、鑑が味わった地獄を
生き残れる強い意志の持ち主がいるとも思えない。

あの地獄で、生き残ったのは鑑だけだ。

では、香月博士は00ユニットをどう作る気だろうか?
アレはベータの技術と鑑と因果に囚われた白銀の数式という偶然が折り重なり、誕生した代物だ。

誕生の鍵の内、2つを俺が握っている。
そもそも、鑑とG弾の重力異常によって因果に囚われた白銀がいない時点で成立しない。

なら、一体、00ユニットはどうなるのだろうか?

さらに、この世界の白銀と鑑は生きている。
俺が運命を捻じ曲げて、生きている彼等に何が起こるのか理解の範疇を既にこえている。

だが、考え様によってはこれは、ある意味で彼等を救ったのだろうか?

専門外な事をいちいち考えても結論が出るわけが無いが、考えてしまう。

気分転換に2人に会ってみるか。

そう考えた俺はエターナに救助した民間人の様子を見てくると言って仮設司令部を出る。

その時、エターナが複雑な表情で、こう漏らした。


「……新しい人材が2人、入ってきそうです……」


と……



白銀と鑑は大型大収容医療エレカの中で治療を受けていた。

と言っても、たいした怪我は無く、打ち身、擦り傷がある程度だが、鑑は眠ったままだった。

白銀は眠ったままの鑑の左手を握りしめていた。
俺は白銀に声を掛ける。

「約束どおり放さなかったな」

その声に白銀は慌てて振り返る。

「よう、少年。眠り姫はまだ目を覚まさないみたいだな」

「あ、アンタは、ガンダムの衛士の……」

白銀が搾り出すように言葉をつむぐ。

「自己紹介がまだだったな? 俺の名は、手塚 在都、ごらんの通りの軍人だ。君とそちらの眠り姫は?」

俺はあえて知っているが名を聞いてみた。

「……白銀……武です……コイツが、鑑 純夏……」

白銀は此方を警戒するように名乗った。

「そんなに怯えないでいい。と言っても無理な相談か……」

俺は溜息を吐きながらそう呟き、近くにあった椅子に腰掛け、白銀に質問した。

「さて、白銀君、君とそちらの鑑君の今後の人生について話さなくてはならない」

俺の言葉に白銀は目を見開きながら驚く。
俺はそれに構わず、話を続けた。

「君達の人生の選択肢は2つ、1つは日本帝國の難民として登録、難民収容所に放り込まれるのが1つ、2つ目は俺達、Fairy Taleの兵として戦う。この2つかな……
1つ目の選択肢のいい所は、日本政府の保護の下、最低限の衣食住が保障される。
2つ目の選択肢のいい所は、国連事務総長の名の下に最高の衣食住の保障と高い給料がもらえる。
1つ目の選択肢の悪い所は、かなり劣悪な環境での生活を余儀なくされる。
2つ目の選択肢の悪い所は、最も死に近い戦場の最前線に立ち、戦う。
さて、君はどちらを選ぶ?」

俺は、白銀にこう質問した。
我ながらアコギが過ぎるが白銀達を手放す気はサラサラない。

「……」

白銀が唸りながら考えている時だった。
鑑が目を覚ました。

「……ここは……」

「純夏!!」

白銀は叫びながら、鑑の方へと振り向く。

「タケルちゃん……私達……生きてる……よね……」

「ああ、ああ、生きてる!! 俺と純夏は生きてる!!」

泣きながら白銀は鑑にそういった。

「私達……生きてる……生きてるよお……」

鑑も泣きながらそう言った。

お互いに泣きながら白銀は鑑に抱きつき、鑑はされるがままに、お互いが泣きながら、今を感じていた。

暫く、俺はその場を外すことにした。

2人の時間を邪魔するほど無粋にもなれない。


タバコ(マルボロ10ミリ赤)を2、3本吸って戻る。

まだ、抱き合っている。
いい加減、本題に入りたい俺は割って入る事にした。

「あ~君達……そろそろいいかな?」

その言葉を聞いた瞬間、弾かれる様に離れる二人。
若いね~
など爺ムサイことを考えつつ近づく。

「さて、質問の答えは如何するのかね? 君達しだいだ」

俺の言葉に白銀が呟いた。

「明日まで、待ってもらえませんか? 今すぐ即答は出来ませんから……それに、純夏にも話してませんし……」

「解った。明日までには、時間はタップリある。2人の人生だ。よく話し合って考えたまえ」

俺はそう言い残し、医療エレカを後にした。




武サイド

俺は今までの事を純夏に話した。

純夏は真面目な顔で俺の話を聞いている。
俺が喋り終わった時、純夏は質問した。

「タケルちゃんは……如何したいの?」

と……

俺の考えは決まっている。

Fairy Taleに入隊したい。日本には余りいたくない。
俺達を守る事の出来ない国になんか、いたくない。
父さんも母さんも死んだ。
純夏の両親も……
でも、純夏は違う。
俺は純夏の側にいたい。
守りたい。守りたいんだ。
純夏をこの手で、今回は奇跡的に2人とも助かった。
でも、これから同じ事がおこる訳がない。

俺がそんな事を考えていると、純夏がこう言った。

「……いいよ……入隊……しよ……2人で、私は、タケルちゃんが望むなら何処までもついていくから……一緒に……入ろう、Fairy Taleに……」

俺は純夏の心を感じ取れた。
純夏の心を……

『怖い、戦う事は怖い、でも……タケルちゃんとなら何だって耐えられる』

頭の中に響き渡る声、俺はそれが気のせいでも思い違いでも無い事を感じた。

純夏の心を感じた。
不思議な感覚だ。今まで感じた事なかった声。
まるで、頭に響き渡る感覚……
まるで共鳴するような感覚。
純夏の事が解る感覚。

何だろうか? この感覚は……

でも、俺はこの感覚のお陰で決心がついた。


俺はこの時、覚悟した。戦場の最前線に立つ事を……

純夏を守る覚悟を……




純夏サイド

タケルちゃんが全てを話し終えた時、タケルちゃんに迷いがあるのを感じた。

私は感じ取った。何時もの様に、何故か昔から感じる周りの人の感情を感じる様に、タケルちゃんの心に触れた。

『純夏を守りたい!』

ああ、何て真っ直ぐな感情だろう。
今まで感じた事の無い、タケルちゃんのむき出しの感情が私の頭に響き渡る。

嬉しかった。
それと同時に悲しかった。
タケルちゃんが私の為に自分を犠牲にしようとしている事が……

だから、私は押した……タケルちゃんの背中を……
私が出来る精一杯で……




俺は歩きながら強い意志を感じた。

「む」

俺は2人の強い思いを感じ取り、目を細めた。
ここまで意識しないで、人の意思を明確に感じ取れたのは初めてではないか?
しかも、人が密集しているこの場で2人だけの意思を強く感じた。
俺は気がつけばこう漏らしていた。

「あの二人……ニュータイプか……? ……まさかな……」

俺は否定する様に首を振りながら歩き出した。




翌日、俺は2人の結論を聞くために、再び医療エレカを訪れた。

「結論は出たかな?」

俺の言葉に2人は頷いた。

「俺達を、Fairy Taleに入れてください!!」

「お願いします!!」

「理由を聞いてもいいか?」

俺の言葉に白銀が答える。

「確かに、日本政府の難民としてなら純夏の安全は保障できます。でも、今の事で日本政府は俺達を守ってくれなかった。だから!!」

「私達は、私達で身を守りたい、それには力がいります。だから!!」

「「Fairy Taleに入隊させてください!! お願いします!!」」

俺は考える素振りをしながらこう言った。

「君達が立つのは前線だ。それでもいいのかい?」

俺の質問に彼等は答えた。

「死にません!! 死なせません!! 俺も!! 純夏も!! 多くの命も!!」

「私が守ります!! タケルちゃんを!! 多くの人達を!!」

俺は頷き答える。

「いいだろう。その覚悟、受け取った!! ようこそ!! Fairy Taleへ!! Fairy Tale最高総司令官、手塚 在都が貴官らの入隊を歓迎する!!」

俺は敬礼しながらそう言った。


2人はFairy Taleの一員として入隊した。

これがどの様な未来になるのか解らないが、俺はこう思いたい。

コイツらなら、どんな運命でも乗り越えていける。と……







[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 13
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/03/04 16:04
横浜にハイヴユニットが落ちて1週間、日本国内は何とか態勢を立て直した。


俺達は月を叩く必要性から横浜攻略はFairy Taleの第4世代型戦術機を無償提供で対応する事で合意した。


佐渡島の攻略は横浜攻略と日本帝國の戦力回復を待って行われるそうだ。


俺達は、基地へ戻り、白銀と鑑の訓練をする事にした。


試しに白銀達を戦術機シミュレーターに乗せてみた。
白銀は戦術機のシミュレーターを簡単にクリアーしていく。
その様子に、エターナ達は大いに驚いた。
それはそうだ、戦術機に乗ったことの無い15の少年がレクチャーを少し受けただけで乗りこなしているのだ。驚きもする。
しかし、俺やエターナ達と比べると如何しても見劣りしてしまうのは仕方ない。

鑑は最初こそ操作に間誤付いていたが、次第にうまく扱えるようになった。
僅か数時間で扱いこなせるのは俺も正直びっくりした。


白銀は何処の世界でもこういうのが得意なのは理解できるが、鑑がここまで出来るとは予想外だった。


訓練次第で滅茶苦茶伸びるぞこの二人。


才能とはここまで凄いモノなのか?


僅か3日で一般衛士クラスだ。
その成長速度に俺は少し恐怖を抱いたくらいだ。

まあ、普通じゃあFairy Taleではやっていけないが……

俺はとりあえず白銀達に、通常訓練から入る事にした。

通常訓練はやっぱりと言うか、並みの15、6の少年、少女くらいだった。

俺は彼等にあった訓練メニューを行うことにした。

ランニング、射撃訓練、座学、小銃解体、組み立て、狙撃、応急処置、ロープラッペリング、格闘戦、ナイフコンバット、CQC、剣術などなどを訓練させた。

そう言えば、俺もオッサンの世界で同じ事やったな……

俺達はそれと並行して月のオリジナルハイヴ探索に乗り出した。
月に偵察衛星を数十機飛ばし、探索に乗り出す。

月を叩く為、軍備を着々と進める。


そして、ようやく月のオリジナルハイヴが判明した。

俺の睨んだ通り、サクロボスコクレーターにあった。
ハイヴの大きさはフェイズ8、信じられん大きさだ。
フェイズ6が地球のオリジナルの大きさだからカナリデカイ。

火星は最早フェイズ6以下は存在しないから当然か……

地球もほったらかしにするとこうなるのか……

手っ取り早い方法は、艦隊の砲撃を撃ち込んで、核ミサイルを数十発叩き込む。

これが一番楽できる方法だが、こんな無粋極まりない事はしたくない。

俺は暫く考えるとある事に思い至る。

「あるじゃないか……核を使わず殲滅できるモノが……」

核を使わず殲滅する方法は思いついた。


俺はデストロイガンダムの事を思い出す。

以前、一般兵ハイヴ攻略用に試作してみたが、少しの緩和は出来たものの、機体制御や火器管制システムの複雑化を完全には解消できず、また、コストも馬鹿にならない、複雑化を解消する為に副座にしても正直、人員が限られている衛士を裂く訳にもいかず試作型を一機作ってそのまま倉庫に放置してしまった。

これを使わない手は無い。

余り、ああいうデカブツは趣味ではでは無いが、核を使うより遥かにマシだ。


デストロイのパイロットを如何するかだが、そんなの俺が乗ればいいのだから今更上がる問題でもない。

俺は、この事をデストロイのデータと共にエターナ達に話した。

その反応は、

「何ですか? この馬鹿馬鹿しい程の大きさと重量と火力は? 一体、何の為に作られた
んですか? 最早、戦術機じゃないですよ、コレ……それにどうやって扱うおつもりです
か?」

と、エターナが呆れながら言った。
呆れる事か? ガンダムシリーズじゃあ普通に出てくるぞコレくらいの大きさのヤツ。
更に、コレよりデカイヤツもある位だからな。


「隊長のイカレ具合もとうとうここまで……」

クレア、俺はノーマルだ!!

「隊長……こんな物、本当に戦いに出せるのですか?」

安心しろレイチェル、Gigantic Unilateral Numerous Dominating AMmunitionの名は伊達じゃない!!
素敵で楽しい殲滅戦が期待できるぞ。

兎に角、これで大本の骨組みが決まり、詳細を詰めることにした。



1週間後、軍備を整えた俺達は宇宙(ソラ)に上がり、サクロボスコクレーターにある月オリジナルハイヴ、サクロボスコハイヴの攻略作戦に乗り出した。
一旦、デストロイはバラして宇宙で組み立て出撃した。

それと並行した、白銀達の宇宙での訓練も行った。実戦に出す気は無いが、いい経験には
なるだろう。





俺達は、月のサクロボスコハイヴの宙域、約200キロの地点まで近づいた。

『各艦に連絡!! 戦闘ブリッジ開け!! 対ベータ、対ハイヴ戦闘用意!!』

『了解!!』

トレマーが大声で戦闘準備を開始させる。
迅速にソレに答えていくブリッジ要員。
それが、ヘルメットのスピーカー越しに聞こえてきた。

彼等はあくまで後方支援、デストロイを持ち出した限り、彼等に仕事はさせるつもりは無い。

「扱って見せるさ……このガンダムを……」

俺はデストロイのコックピットでホクソ笑みながら呟く。

俺はデストロイのOSを立ち上げた。
画面には
Gigantic
Unilateral
Numerous
Dominating
AMmunition

の文字が書き込まれた。

巨大制圧火器集約要塞の名を持つガンダム。
ベータよ何処まで防げる?
さて、見せてもらおうか、フェイズ8ハイブの兵力を……

「手塚 在都、デストロイガンダム、いきます!!」

俺は、そう言い放ち、出撃した。

宙域を少し進んだ時、月からレーザーが数え切れないほどデストロイに撃ち込まれた。

「ムダだ、その程度の火力ではデストロイの改良した陽電子リフレクターは抜けん」

オッサンから貰ったデータは大いに役に立つ。

「挨拶されたからには此方も挨拶する必要があるな。遠慮はいらない……受け取れ」

俺は高エネルギー砲、アウフプラール・ドライツェーンを撃ち込んだ。

月に赤い光りの柱が4本一斉に突き刺さり、突き刺さった地点のベータは蒸発、その周囲
にいたベータも焼き払っただけでなく、ハイヴのドリフト、シャフトも貫通し、大きな穴
が出来た。

アッハッハッハッハッハァ~~~~~~~~~~!! 最高だ!! 実に気分が良い!! 
ここまで一方的だと最早、笑うしかない!! 素敵な火力と防御力だ!!

なるほど、なるほど、コイツはベルリンも焼き払える訳だ。

この情け容赦の欠片も無い、馬鹿の上に冗談のようながつく火力!!
この馬鹿馬鹿しいほど飛び道具を一切通さない防御力!!
そして、この重量を飛行させ移動させる、そのイカレた発想!!

素敵だ!! 実に実に素敵だ!!
ジブリールがワイン片手に馬鹿笑いしたくなるのも頷ける話だ。
だが、あまりに大味な機体過ぎて面白みの無い機体だ。

「おおっと、遊んでいる暇は無かった。殲滅するか」

俺は、月の空にデストロイをホバーリングさせ、熱プラズマ複合砲、ネフェルテム503の
全砲門で群がってきたベータを焼き払う。

「消え失せろ」

俺の雄叫びと共に、全20門のビームが周囲にいたベータだけでなく射程内のベータすらも
焼き払う。

土煙と爆音が辺りに響く。

「堕ちろ!! 下種共」

Mk.62 6連装多目的ミサイルランチャーを6発、打ち込む。

6発のミサイルは分解し、クラスターがターゲットに当たり、その周囲を焼き払った。

サクロボスコクレーターの表面はベータの死骸とビームやミサイルで出来た穴しか存在し
なかった。




その戦闘の様子を見ていたFairy Taleの隊員達は唖然としていた。
その馬鹿げた状況に。

僅か、30分で数えるのも嫌になるベータの群れが、文字通り焼き払われたのだ。
この余りの現実離れした状況に最早、押し黙るしかない。

そして、こうも思った。

(馬鹿げてる!! 何だアレは!?)

エターナは詳細なデータを見たとは言え、余り信用していなかった。

“こんなデカブツ、何の役にたつのかしら?”と呆れてもいたし、内心、鼻で笑っていた。

だが、実際、蓋を開けてみればどうだ。
あの馬鹿げた火力と防御力は……

クレアがイカれてると言ったが正にアレはそんな言葉を体現した様な兵器だ。
立ちはだかる者はその火力の前に焼き払われ、反撃は厚い防御に阻まれる。
攻略方法はあるにはあるが、それを行う為には、あのふざけた火力を掻い潜り、あの厚い防御を潜り抜け、ゼロ距離からビームを撃ち込むか、ビームサーベルで切り裂くくらいしか思いつかない。

(アルト……貴方はやはりイカれています……)

でも、そんな男の事を思い人として見ている自分は狂っているのではないだろうか……?

そう、私は、アルトと初めて会った時から狂ってしまった。

しかも、そんな自分が悪くないなんて思っていること事態、始末が悪い。

(ああ、貴方は楽しそうですね……アルト……子供の様にハシャいで……表情は無表情で
すけど私には解ります……貴方が楽しそうなのが……早く終わらせて帰ってきてください
……アルト……私が貴方の狂気と狂喜を静めてあげますから……普段の貴方にして差し
上げますから……帰ってきてください……アルト……)

エターナは胸元で手を組みながら目を瞑り、祈る様に在都を思った。




さて、地上のゴミは焼き払った、後は、地中の埋め立てゴミを処分するだけだ。

俺は、以上にあるモニュメントを見ながら呟く。

「……さて、残るは重頭脳級位か……」

俺はデストロイのコックピットの中にあるスイッチを押す。

その途端、デストロイは下半身を180度回転させ、円盤型の上半身は背部へ移動した。

この姿こそ、デストロイの真の姿であり、正面の敵だけを焼き払う為だけの形態。

デストロイのMS形態、動くと言う機動性をそぎ落とした変わりに、他の追随を許さない圧倒的な火力と防御力があるだけのMS

「さあ、お前の火力を示せ、デストロイ……」

俺はデストロイを浮上させ、月の上空に静止した。

そして、1580mm複列位相エネルギー砲、スーパースキュラと200mmエネルギー砲、ツ
ォーンMk2を最大出力でハイヴのモニュメントの根元に撃ち込んだ。

4本の赤いビームの射線がモニュメントに突き刺さり、削り始める。

そして、僅か、2、30秒でモニュメントは根元から折れた。
根元から折れたモニュメントは月の大地に倒れ、土煙を巻き上げる。

俺は更に、最大出力でもう一度、撃ち込んだ。

撃ち込まれた地点は大きな穴が開いた。
俺はそれでも砲撃の手を緩めない。
最大出力をもう一度、撃ち込んでいく。
今度は地下から爆発と煙が巻き起こる。

コレくらい撃ち込んでおけばいいだろう。

俺はそう判断し、MA形態に戻してセンサーを最大にして穴に入る。

センサーでは重頭脳級の反応は無いが、感じる……

ヤツはまだ生きている。
そんな確信があった。

ヤツの存在を感じる。

俺は陽電子リフレクターを展開し、穴に入る。

ん、この感じ……

「そこ!!」

俺はネフェルテムを撃ち込んでいく。

地中を掘り進んでいたベータがその途中でビームに焼かれ吹き飛ばされる。

「甘いのだよ!!」

尚も地中を掘り進み、近づいてくるベータ。

「だから、甘いと言っている!!」

俺はネフェルテムを撃ち続けながら、MSに可変する。

そして、俺は両腕部飛行型ビーム砲、シュトゥルムファウスを飛ばし、遠くにいるベータに撃ち込んでいく。

MS形態でもフェルテムは撃てる。
それを利用して後方から近づくベータの群れにも対応できる。
俺は飛び進みながら、前にスーパースキュラとツォーンMk2で敵を排除し、後と上下には
シュトゥルムファウスで対応、左右はフェルテムで対応する。

暫く、進んでいると、門級がその姿を現した。

感じる……この先に重頭脳級がいる。

俺は地上に着地し、スーパースキュラとツォーンMk2を最大出力にし、門級に撃ち込む。

門級は僅か2秒で貫通し、その先の重頭脳級を焼き滅ぼす。


月のオリジナルハイヴは陥落した。


そう言えば……武と純夏の乗る機体……まだ決めてなかったな……

あと、ハイヴ戦の為に俺のガンダム、もう少し強くしないと……

月を叩いたとは言え、今度は火星もある。

事を一つ終わらすと新たな雑務が次々増える。

忙しい、地球奪還もままならないのに……

そんな事考えながら俺はハイヴを後にした。








[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 14
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/03/10 00:10
月のオリジナルハイヴを陥落してから即座に地球に戻り、武と純夏の機体の製作に取り掛
かった。

武は基本的に万能型で、どのレンジでも戦うことが出来た。
その事を踏まえて、武の乗る機体をデスティニーガンダムにした。
ビームシールドもレーザーが防げるよう改良がなされたのとVPS装甲の色合いを明るめにした。

純夏も万能型で、機動力を活かした砲撃で武の援護で砲撃を多用していたことから、レジ
ェンドガンダムにした。VPS装甲の色もグレーから赤を基調にしたカラーリングに変更した。
此方も、ビームシールドもレーザーが防げるよう改良がなされた。
更に、オッサンの技術でドラグーンを地上でも使えるよう改良した。

2機ともいえる事だが、武達はコーディネータじゃ無いので、UC仕様のOSに切り替えたのと、オプションパーツにテレストリアルエンジンを積み込んだ。

我ながら皮肉が過ぎると思うが、武はどちらかと言えば砲撃型でなく戦局に応じた戦い方をする為、デスティニーにした。

武達の機体はこんな所か……

今の所、武達は夫々の機体で訓練を行っている。

今の武達の実力は俺やエターナ達には及ばないが、Fairy Taleの一般隊員では敵わなくなった。

2人の訓練をしながら思った。1ヶ月そこらでもう普通の衛士を超えている。
俺は二人をあしらいながらそう感じた。

「だけど、甘いんだよな……」

俺はビームサーベルを引き抜き高速でデスティニーに近づく。
ちなみに、俺が今乗っているのはガンブラスターだ。
Hi-νは改修の為工場区にある。

『くそ!!』

武はアロンダイトを引き抜こうとする。

「遅い!! 武装の選択は的確に行え!! この時は、フラッシュエッジをビームサーベル形態にして対応しろ!!」

俺はそう叫びながら、更に機体を加速させ、デスティニーの懐へ飛び込んだ。

『タケルちゃん!!』

純夏が叫びながらドラグーンを飛ばし、援護しようとするが遅い。
俺は飛んできたドラグーンの横からのビームを倒立反転でかわしながらデスティニーの後ろに移動しビームサーベルを横薙ぎにする。

『ぐ!?』

『白銀機、胴体部切断、致命的損傷、大破』

武の呻きと、エターナのアナウンスが重なる。

「次だ!!」

俺はアームレイカーとペダルを操作し、ドラグーンを避けながら、レジェンドに高速で迫る。

『は、速い!? でも!!』

純夏はドラグーンを全機飛ばし、俺を攻撃する。

「見える!! そこ!!」

俺は振り向き様に、ドラグーンを3機、撃ち落とした。

『く!? でもまだ!!』

純夏はそれでも諦めず、ドラグーンを操作する。

「ドラグーンの動きが単調すぎる!! それでは撃ち落されるだけだ!!」

俺は左右に回避しながら突き進む。
純夏は残ったドラグーンを集結させ、正面に弾幕を張る。

「弾幕の張り方が雑だ!! 精密にかつ相手の動きを読んで弾幕を張れ!!」

俺はビームライフルを連射し、次々とドラグーンを撃ち落していく。

『ウソ!? ドラグーンが全機!?』

「戦場で止まるなど!!」

俺はビームライフルをコックピットに撃ちこむ。
ビームは吸い寄せられる様に、レジェンドのコックピットに当たる。

『鑑機、コックピット部分に被弾、パイロット死亡、及び致命的損傷、大破。白銀、鑑ペ
アーの全滅に伴い演習終了』

エターナが演習終了を淡々と告げた。



次に武達が受けた訓練は俺達、Fairy Taleが作り上げたFairy Tale版ヴォールクデータと言うべきか。

兎に角、それをやってもらっている。

「馬鹿が!! いちいち相手にするな!! 時間の無駄だ!! 進む事を大前提に考え
ろ!! 武!! 武器の切り替えが遅い!! もっと速く!! 純夏!! 武の援護を的
確にしろ!! それじゃあ、武に当たるぞ!! 武!! パルマフィオキーナは直線的な
動きになりやすいから乱用するな!! 純夏!! そこはドラグーンを飛ばさず、固定し
て砲撃だろうが!! ドラグーンを失うぞ!!」

と、こんな感じで訓練を行っている。

今の所、難易度は俺達と同じ、EXの難易度でやっている。
撃墜の回数は無くなったけど、時間が掛かりすぎるのだ。二人とも……

「あの2人、本当に伸びますね」

エターナが画面を見ながら呟く。
どこか、その顔には楽しそうな雰囲気がにじみ出ていた。

「ああ、伸びる。あの2人は伸びるぞ。いいセンスだ」

俺はマイクの音声をOFFにして、そう呟きながら画面を見る。

「貴方には戦うより、此方の方があっています」

俺はその言葉を聞き、考えながら呟く。

「最高総司令官、しかも准将が戦場の最前線に出てほしくないのは解るが、やはり俺は戦
場に出て指揮を取るほうが性に合っている。階級が上がっても変わらないだろうな……それとも、准将が最前線に出るのは皆、嫌か?」

「貴方に死んで欲しく無いだけです。貴方に死なれたら私が困ります」

エターナは何処か切羽詰まったように言う。

「安心しろ。俺は簡単には死なんよ。それに、お前達がいる。早々、死にはしない」

俺の言葉に不満ながらも納得したのかこう答える。

「だと……いいのですが……」

まだ、不満か……やれやれ……

「安心しろ。お前を残して死ぬ様なマネはしないよ」

エターナの顔はほんの少し明るくなった。

「信じますよ? その言葉」

「ああ、信じて構わない」

我ながら情けない対応だ。
もう少し、気の利いた喋り方もあろうに……

彼女が俺に好意を寄せているのは知っているけど、今の俺に答える事は出来ない。
なぜなら、今の俺はベータを殲滅する事で頭が一杯だからだ。
器用に思考を俺は切りかえれない。
今の俺では多分、彼女を不幸にする。

武達は俺達が話している間にEXランクのデータを攻略した。
これなら実戦に出せるな。



俺は工場区に来ていた。
俺のガンダムのオプションパーツの具合を確かめる為だ。

「どうだ、班長? オプションパーツの具合は?」

班長室にいた班長に俺は会い、進捗状況を質問した。
俺の言葉に班長がボールペンの後ろで頭を掻きながら答える。

「今の所は、隊長の言われた通り、オプションパーツでTPS装甲の取り付け作業が完了。
出力リミッター解除ユニットⅢの方はジェネレータや駆動系との兼ね合いから遅れていましたが、今完成したところです」

「そうか……無理を言ってすまん……」

俺がそう言うと班長は笑いながら答える。

「何時ものことですよ、気にしないで下さい。それよりも、この機体ははっきり言って、
もう隊長しか乗れませんよ。操縦は繊細、その癖、加速力はGで人間が潰される位キツイ、
フィンファンネルは更に繊細で敏感、文字道理、とんだジャジャ馬ですよ」

班長の言葉に俺はニヤリとして答えた。

「戦術機の好みで言えば、俺は大人しいヤツよりこれ位のジャジャ馬が好みだ」

「乗ってみますか?」

「いけるか?」

俺の言葉に班長がニヤリとしながら答える。

「何時でもいけますよ」

俺は班長の言葉に頷いて答えた。

「よし、慣らしてみる」



俺は慣らしが終わり、自分の執務室に入ると、丁度、テスクの通信端末がコール音を室内に響かせた。

「事務総長、貴方から通信とは何か非常事態だとお見受けいたしますが?」

俺は通信の主である事務総長にそう言いながら、椅子に座り、通信を聞く。

『ああ、日本帝國が横浜に対し、反抗作戦を開始する』

「ほう、思ったより早かったですね……しかし、幾ら第四世代型戦術機を配備したといっ
ても横浜を落とすのは少々骨が折れるのでは?」

俺の質問に事務総長が苦い顔をした。

『その事なんだが、日本政府から我々に君達の作戦参加要請が来た。日本としては君達の参加を要請したのだろうが、アメリカが割り込んで作戦参加するみたいだ』

俺は事務総長の言葉に反応する。

「アメリカが……ですか……」

『ウム、多分、G弾を落とす気だろう。それしか考えられん。アメリカとしては君達がいる状況でG弾の威力を示したいのだろう』

まあ、気にはしないさ、今更、アメリカがG弾撃ち込んで国際社会から非難されようが関係ない。

「関係ありませんよ。今更、アメリカが如何しようが。そんな事より作戦は? 横浜のハイヴユニットの殲滅ですか」

『そうだ、帝國軍との共同でだ。頼むぞ』

事務総長の言葉に俺は敬礼で返した。

「ハッ! お任せを」

通信を終えた俺は即座に会議を開いた。




相模湾、ここに、日本帝國連合艦隊、国連軍の艦隊が集結していた。
その中に俺達の総旗艦『フェアリーテイル』の姿もあった。

「さーて、帝國もアメリカ主力の艦隊も揃ったな」

俺の言葉にトレマーが答える。

「よろしかったのですか? 総旗艦とは言え一隻だけで。いささか、戦力が少ないのでは?」

トレマーの疑問に俺は答える。

「ガンダムが“6機”いるのだぞ? 俺から言わせれば戦力過剰だよ。まだフェイズ2く
らいだろ? 楽な任務さ」

俺の言葉にトレマーが反論する。

「戦力の事を言っているのではありません。日本政府に我々が余り本腰でないと思われて
いるのではないかと……」

その言葉に俺はニヤリと笑いながら言う。

「帝國軍もガンダムの力を承知している。フェイズ6陥落できる面子が揃っているのだぞ? 人類が玉砕覚悟で落とさなければならんモノを陥落した面子がな」

「アメリカはいかがいたしますか?」

トレマーの言葉に俺は考えて呟く。

「上陸作戦で海兵隊は役に立つが陸戦は難しいだろう。それに、帝國軍ほど期待はしていない。機体の性能に頼りきった連中などには俺は興味ない。問題はアメリカがどのタイミングでG弾を落としてくるかが問題だ」


俺はそう言いながら、横浜を見つめる。

さて、戦争を始めるか……






[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 15
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/03/13 19:30
横浜奪還作戦、正式名称、明星作戦は各艦の一斉射というお決まりの戦法で開始された。

帝國海軍の艦隊ならびに国連軍からの轟音を響かせる艦砲射撃はレーザー級の光りの矢に
貫かれるが、何発かは横浜の地に突き刺さる。

我がFairy Taleも砲撃戦を開始した。

「さて、そろそろか……トレマー、戦術機の発進の準備をさせろ」

俺はトレマーに戦術機の発進を命じた。

「よろしいのですか? 白銀と鑑だけで?」

トレマーはやや不安げに聞き返す。その顔から不安がにじみ出ていた。
俺は頷きながら言う。

「ああ、丁度良い。武と純夏がどこまでやれるか見物だ。それに、アメリカが仕掛けるとすれば、レーザー級が減った段階で仕掛けるだろう。俺等を盛大に巻き込んでハイヴを落とすならそれ位が妥当だよ。武達には言ってある。『地上の殲滅だけで十分、反応炉は無視しろ』とな」

「ならば、よろしいのですが……」

俺はトレマーの不安を感じながらも横浜を見やる。

丁度、日本帝國の上陸部隊と陸からの攻撃部隊、戦術機母艦からの艦載機が次々と上陸を
開始していた。

「そろそろか……武と純夏を出せ!」

「了解!!」

高みの見物と洒落込むのも悪くない。
武達の戦果に期待だな……




武サイド

デスティニーのコックピットの中で俺は発進を今か今かと待ち続けていた。

しかし、隊長も無茶を言うものだ。『2機で地上のベータを殲滅しろ』と言われた時には、
俺達を殺す気かと、隊長に噛み付いたほどだ。
しかし、隊長はさも平然と『ガンダムなら余裕だ。いや、できて当たり前だ』と言い放たれた。

正直、冗談キツイぞ!!
俺達をアンタ等みたいなバケモノと一緒にされても困る。
と、言うより、あの人達、人間やめている連中だ。ガンダムの衛士は全員……

兎に角、システムを起動させるか……

『デスティニー、レジェンドの機動を確認、カタパルトオンライン、デスティニー、発進どうぞ!!』

時間だ、兎に角、行きますか。

「白銀 武、デスティニーガンダム、いきます!!」

デスティニーはカタパルトから押し出され、横浜の空に舞う。
俺は、VPS装甲を展開させる。
装甲はメタリックグレーから、色鮮やかなトリコロールへと変化し、デスティニーの翼を広げ横浜の空を駆け抜ける。
続いて純夏のレジェンドが続き、俺が前衛、純夏が後衛の陣形を組みながら進む。

俺は純夏に通信をして指示を出す。

「純夏、援護を頼む。俺は戦場へ切り込む!」

『解ったよ! 武ちゃん! 死なないでね!』

純夏の言葉に俺は頷きながら答える。

「ああ、お前もな!」

レジェンドはドラグーンを固定したまま折り曲げ、ビームを発射した。
緑色の無数の閃光は優先的にレーザー級を射抜いていく。

俺は純夏の援護射撃を利用して、一気に戦場へと近づけた。

「落ちろよ!!」

俺はコックピットの中で叫びながらビームライフルを乱射した。
緑色のビームは銃口から一気に吐き出され、ベータに命中しただけでなく、周りのベータ
も巻き込んで焼き払った。

「はぁああああ!!」

俺は肩のフラッシュエッジを二本、抜き放ちビームサーベル形態にして切りかかった。
アロンダイトビームソードで切りかかる事も考えたが、相手が小型種が多い戦場ではフラッシュエッジの方が扱いやすい。
それに、この程度に本気を見せたくない。
自分でも幼稚くさいプライドだと思うが仕方ない、これが俺のやり方なのだから。




戦況は二機のガンダムの介入により他の衛士達は観戦の余裕が出てくるほど楽なものになった。

あるアメリカの衛士はガンダムの戦闘を見ながら戦術機管制ユニットの中で笑い出した。

「ふふふふ、アッハハハハハハ!! アレが、ガンダム!! なるほど!! なるほど!!素晴らしい……!! これは誰もが騒ぎ立てるわけだ!! レベルが違う!!」

アメリカ軍、G弾作戦部隊、小隊長、ジャック・ウィルソン大尉は感嘆とも驚きともとれない声で騒ぎ立てた。

(あの2機は異様だ。機体もそうだが、衛士の実力もずば抜けている。今年で17歳になる
が、あんなヤツ等がこの世の中いるとは……どうやら私の世界は思いのほか狭かったらし
い……最初は父上からG弾の威力調査を命じられて来た。実に詰まらん任務で内心辟易し
ていたが……面白くなりそうだ)

『隊長、旗艦『モンタナ』から通信です。G弾発射を予定より5分早めて発射するそうです』

部下の声に思考から引き戻されたジャックはその通信に答える。

「解った。ビブロウ。予定のポイントに下がるぞ」

『了解! しかし、作戦が早められたのはやはり、Fairy Taleの介入が大きいのでしょうか?』

ビブロウの解りきった言葉にジャックは鼻を鳴らして皮肉を交えながら答える。

「フン、あの腰抜けの艦長の事だ。Fairy Taleにこれ以上仕事をさせたくないのだろうよ。
それに、彼等にここを攻略されては彼はピエロだよ。なにせ、出撃前に『Fairy Taleがい
なくとも我々のG弾でハイヴを焼き払って見せる』と大口を叩いたのだからな」

『兎に角、下がりましょう』

「そうだな……全機!! 予定のポイントまで後退する!!」

そういい、機体を反転させながらこう呟いた。

「ぜひとも手合わせしてみたいものだ……ガンダムと……」



日本帝國軍もまた観戦しながら戦える程の余裕が出来つつあった。
ベータがガンダムを最重要危険対象と認識したのも大きな要因だっただろう。

近衛部隊指揮官、紅蓮 醍三郎大将もまたガンダムの戦いを観戦しながら戦っていた。

「フム……あのガンダムとかいう機体……真に優れた機体よな……いや、機体だけではな
い、衛士の実力もまた優れておるわ」

そんな事を呟くながら、要撃級を切り倒していく。

『大将! 周辺の掃討が完了しました』

部下の通信に答える紅蓮。

「ウム、しかし、ベータの数が少ないな……これだけか?」

紅蓮の疑問に部下が全ての計器系統を調べながら答える。

『はい、現段階ではそれらしい反応はありません。どうやら、大半のベータはガンダムが引き付けているみたいです』

「そうか、索敵を厳せよ!! 気を抜くでないぞ!!」

『了解!!』

紅蓮は部下に激を飛ばし、緩みかけた指揮を締めなおす。



フム……色々な感情が戦場に満ちている。

俺はニュータイプ能力の感じるままに戦場に満ちる感情を楽しんでいた。

ん、この感じ……アメリカの旗艦、モンタナから感じる……

「隊長! アメリカ艦隊旗艦、モンタナより通信! アメリカがG弾の発射を宣言、退避
まで5分の通告をしてきました!」

オペレーターの悲鳴交じりの報告を聞きながら俺とトレマーに報告した。

「きたか……武達に撤退命令を出せ! 全軍にも解るように信号弾でも報告せよ!!」

「了解!!」

俺の命令にオペレーターが答えながら作業を行っていく。

「やはり、撃ちましたな……G弾を……」

俺はトレマーの言葉に頷きながら答える。

「ああ、意外に遅かった。どうやら、アメリカはレーザー級が減った段階で撃つ気だった
のだろう。解り易い連中だ」

俺はそう言いながらオペレーターに問いかける。

「レイフェル、録画はしているだろうな?」

金髪のショートヘアーのオペレーターレイフェルは意地の悪い笑みを浮かべながら答える。

「バッチリです! 隊長! ハイヴ戦の様子からアメリカのミサイル艦のG弾を発射する映像も取りました」

よし、これでいい。後は武達が帰るのを待つばかりだな。




武サイド

俺がビームを乱射していると、暗号通信が突然入る。

「な!? 撤退命令!? アメリカがG弾を使うて!? 何で!?」

俺が叫ぶと同時に信号弾が上がる。
どうやら本当に撤退しろと言う事らしい。

「純夏!!」

俺の通信に純夏も叫びながら答えた。

『解ってるよ!! 解ってる!! でも!!』

愚痴る純夏に俺は怒鳴りつけた。

「退くぞ!! このままここにいても死ぬだけだ!! いいから退けって!!」

『……解ったよ……』

俺達は機体を反転させて、飛び立った。

暫く飛んでいると、数機の国連カラーの不知火がハイヴに向かって突撃砲を乱射しながら
突っ込んでいた。

「何処のバカだ!? 脱退命令は出たはずだぞ!?」

俺は通信を試みる。

「おい! 撤退命令は出たはずだぞ!? 死にたいのか!?」

『うおおおおおおおおおおおおおお!! これ以上、俺達の町で死なせたくないんだ!!』

駄目だ!! 錯乱している!?

「止まれ!! バカ!! 死ぬぞ!!」

駄目だ!! 止まらねえ……

「純夏!! バカ共を止める!! マニュピレーターだけを撃ちぬけ!!」

『解ったよ!! 武ちゃん!!』

兎に角、俺達は数機の不知火のマニュピレーターを撃ち抜き、数機、抱え込み全速力でその場を離脱した。

俺達の後ろではG弾が炸裂、黒い光りを放ちながら世界を歪ませていた。

「これが……G弾か……」

凄まじい威力ではあるけど、何か良い気分にはなれない。
俺は生まれた町を再び失った。
このバカ共の気持ちも解る。でも、死んじゃあ何もならない。
こいつ等だって、家族や恋人、守りたいものがあるだろうに……
死に急ぐ事も無いはずだ。

俺はとりあえず、バカ数機を下ろして、隊長に通信を入れる。

『どうやら、生きているみたいだな』

隊長の言葉に俺はこう答えるしかなかった。

「何とか……生きてはいます……俺も純夏も」

『そうか……帰って来い』

「了解……」

俺は通信をOFFにし、純夏に通信をしようとした時だった。

コックピットの警告音がけたたましく鳴り響く。
これは!?ロックオン!? 8時の方角から!?

俺は即座に飛びのく。
飛び退いたその時、ビームの粒子が尾を引きながら過ぎ去っていた。

俺はビームライフルを構えながらその方角を見る。

そこには見慣れない機体がライフルの銃口を此方に向けながら立っていた。

「何処の機体だ!?」

俺はそう怒鳴りながら、ライブラリーから相手の戦術機を割り出す。
すぐにライブラリーから見つかった。

「識別データ……YF23、ブラックシャドウⅡ!? でもあれって、計画が破棄されたんじ
ゃ!? それにナンカ所々形状が違う!? 何だよ!?」

俺は顔を出さない音声のみの通信で呼びかける。

「貴様!? 何のマネだ!? 友軍に発砲などと!? アメリカンジョークにしては笑えんぞ!!」

俺の問いかけにYF23の衛士が答えた。

『ほう……中々流暢な英語を喋る。その発音からするとイギリス英語か……気にくわん、
アメリカ英語で喋れ』

言葉が噛み合わない……何だコイツは!?

『まあいい……私の名前はジャック・ウィルソン!! 君達、ガンダムに心奪われた男だ!!』

今の発言で解った。

コイツは変態だ!!

俺がそう思った瞬間、XCIWS-B2試作近接戦闘長刀を振りかざしてきた。

クソ!! 訳が解らん変体に殺されてたまるか!!

俺は上空に飛び上がり、アロンダイトビームソードを抜き放つ。
刃の部分から桃色のビームが展開する。

「はあああ!!」

俺は気合の掛け声と共にアロンダイトを振りかざす。

『面白い! 受けてたつ!!』

ヤツも受けてたつ気でいる。

実態剣とビームの刃がぶつかる。
激しいスパーク音が響いた次の瞬間、XCIWS-B2試作近接戦闘長刀が折れた。

折れた刃は宙を舞いながら大地に突き刺さる。
俺は勢いそのままに、相手の肩を切り落とす。

『ええい!! ヤル!!』

ヤツがそう言った瞬間、他方向からビームが降り注ぐ。

『武ちゃん!! 退いて!!』

「純夏か!?」

ヤツはビームを回避しながら叫ぶ。

『邪魔が入った!! また会おう!!』

そう言い、ヤツは飛び去った。

「クソ!! お前は一体何なんだ!?」


俺はコックピットの中で叫びながら、ヤツを見送った。







[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 16
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/03/15 14:40


事後処理も終わり、基地で訓練に勤しむ俺達。


訓練が終わって自分の執務室に入った時だった。
部屋の通信端末から通信が入ったのは。

俺は通信端末をオンにすると、事務総長が通信をして来た。

「これは、事務総長、どのようなご用件でしょうか?」

『ウム、君達、Fairy Taleに新たな任務だ』

俺は事務総長の言葉に反応する。

『君達の次のターゲットはソ連、オリョクミンスクハイヴの掃討作戦を行ってもらう』

俺は事務総長の言葉に反応する。

「ほう……アメリカとソ連の了解を取り付けたみたいですね?」

俺の言葉に事務総長が肯定する。

『ああ、君達のくれた映像でアメリカを黙らせた。ソ連は第4世代型戦術機の無償提供を
ちらつかせたらいい返事が返ってきた。作戦の行動権は君達が掌握していると言ってもい
い。アメリカもソ連も手は出せなくした。自由にやりたまえ』

なるほど、これで足手纏いがいなくなった訳だ。
こちらの方が俺達にしたら任務がしやすい。
俺はアメリカやソ連には余り期待はしていない。
そうだ! 俺のHi-νの実戦テストがまだだった。
丁度良い。
今の所フェイズ2位のハイヴだ。
俺一人だけで叩き潰せる。

「任務、了解しました。全力で蹂躙し、撃滅し、殲滅します」

『素晴らしい殲滅戦を期待している。では』

「お任せを」

俺は通信を切り、隊長陣達を招集した。




俺は今回の任務は俺一人で殲滅することをエターナ達に言ったが流石に止められた。

「隊長!! 正気ですか!? Hi-νだけでハイヴを殲滅など!? 冗談にも程がありま
す!! 准将がホイホイ戦場の最前線に出ないで下さい!!」

エターナが叫びながら俺を止めようとする。

「隊長のイカレ具合は知ってるけど……流石に冗談キツクないですか?」

クレアは顔を引きつらせながら唸る様にいう。

「正直、無茶苦茶です。隊長……自重してください」

レイチェルも俺に自重を求めてきた。

「エターナ俺は正気だし、冗談も言っていない。後、俺がこの部隊の頭だからこそ下の者
に示さなければならない。クレア、俺は何時もまともだし、この場の冗談は俺は好かん、
レイチェル、俺はこの程度、無茶苦茶でも自重を求められるほどの事でもない」

全員が押し黙ると俺は畳み掛けるように言う。

「これは命令だ。お前達は総旗艦で待機。以上だ」

俺は会議とも言えない命令を早々に切り上げ、Hi-νガンダムの調整に入った。
調整している時、俺は、一人こう呟いた。

「初陣の時とは違う。俺はやれる筈だ。あんなのが俺の限界じゃないだろう? 在都? な
らやって見せろよ、俺の乗機はHi-νガンダムなんだ、それ以上もそれ以下も無い」

俺はコイツのHi-νガンダムの性能を出し切っていない。
コイツの全力を見てみたい。
フルの力を全力全開で……
今の俺に、忘れかけていたモノが蘇ろうとしていた。
部隊編制やら指揮やら何やらで忘れかけていたモノ。

自分がHi-νガンダムのパイロットでコイツの全力全開でベータを叩き潰す事。
この単純で明快で自分の存在意義を俺は忘却の彼方へと追いやろうとしていた。

由々しき事態だ。
自分のアイデンティティーを自分で忘れ去ろうとしていた。

俺は調整が終わり、コックピットから降り立つと、人知れず呟いた。

「俺はあの時から……戦士になってしまった。オッサンとの盟約から……忘れかけていた……」

いいだろう、感が鈍ったのなら取り戻すまでだ。



1週間後、俺達は旗艦『フェアリーテール』に乗り込み、ソ連領、オリョクミンスクハイヴに到着した。

『本当によろしいのですか? 私達の護衛は?』

俺が発進の準備をしている時、エターナから通信が入る。
その顔は少しの不安と不満が綯い交ぜになった表情だった。

「ああ、心配するな。君の悪い癖だ。これくらいでは俺は落ちんよ」

『解っています。解っていますが……私くらいですよ? 世界で1番、貴方の事を心配しているのは……』

彼女の言葉に俺は微笑みながら返す。

「解っている。解ってるよ。君が俺を心底心配している事くらい。そして、俺の事は君が
良く知っている事も解っている。それとも、俺を信じられなくなったのかい?」

『いいえ、私は貴方を信じています。私の全てを懸けて貴方を信じています。私は貴方と
共にここまできましたから』

「ありがとう。俺は君のその言葉だけで何でも出来そうな気がする。自惚れかもしれない
が俺は今、全てのハイヴを陥落できる気分だよ」

『どうかご無事で、行ってらっしゃいませ』

「ああ、行ってくる」

俺は通信を切ると、即座に発進シーケンスを再開した。

『カタパルトオンライン! Hi-νガンダム発進どうぞ!!』

オペレーターの発進準備完了を告げる通信がヘルメットのスピーカー越しに聞こえる。

「了解! 手塚 在都! Hi-νガンダム、行きます!!」

Hi-νガンダムはカタパルトの加速によりオリョクミンスクの空を舞った。

俺はアームレーカーとペダルを操作し、Hi-νを加速させた。
常人ではGで押しつぶされる加速も俺には心地よかった。
いける、そう確信させるに十分な感覚が俺の全身を支配した。

レーザーが飛んでくる空を俺は巧みにかわしながら、ビームライフルを1発だけ正射した。

その瞬間、目も眩む桃色の閃光が高速で粒子の尾をなびかせながら飛んで行き、要撃級を
蒸発させたばかりか射線上のベータだけじゃなくハイヴのモニュメントに当たって穴を開
けた。

「何て威力だ……班長、気に入った!」

俺はビームライフルを乱射しながらベータをなぎ払う。

ん、この感じ……来る!!

「そこだ!! フィンファンネル!!」

俺はレーザーを回避しながらビームを乱射しながらフィンファンネルを飛ばす。
フィンファンネルは加速しながら宙を舞い、敵陣上空に滑り込む。
俺はフィンファンネルを脳で操作しながら、ビームライフルを乱射する。

「もっと!! もっとだ!! もっと早く、速く、動け!! フィンファンネル!!」

俺の叫びに反応する様にフィンファンネルは加速の速度と射撃の連射を行っていく。
1撃のビームが強力なフィンファンネルが周囲にいたベータをありとあらゆる角度からビ
ームを撃ち込んでいく。

「在都よ!! お前は! お前の力はこんなもんじゃない筈だ!! 見せ付けろよ!! 
見せ付けてやれよ!! 世界に!! 自分に!! 俺の部隊に!! 俺が一番ガンダムを
うまく扱えるんだよ!!」

俺の叫びにHi-νガンダムが唸りを上げながらレーザー飛び交う空を滑る様に飛ぶ。

「甘い!!」

俺はレーザーを仰向けにして回避しながら背中のニューハイパーバズーカを3発発射した。

「もっとだ!! まだ足りない!! これじゃあ、俺を計れない!! これじゃあ、俺の
本気は見せられない!! もっと来い!!」

俺は叫びながらビームライフルを乱射し、地上に降り立ち、突っ込んできた突撃級を蹴り倒した。

「でやあ――――――!!」

蹴り倒された、突撃級は前面装甲を粉々に砕かれ、内部をブチ撒けながら重たい音をたて
て倒れた。
俺は蹴った勢いそのままに、回転しながらビームサーベルを抜き放ち、刃を展開する。

「うお――――――!!」

俺は雄叫びと共にビームサーベルのビームを出力最大にして、横薙ぎに切り払った。

そのビームの刃は周りにいた突撃級と要撃級、その他の小型種を巻き込み切り裂いき、近づいてくる戦車級の群れに右腕部マシンガンと60mmバルカン砲を同時に乱射した。

戦車級と小型種は蜂の巣になり絶命した。

俺はそれを見る事無く空へと再び舞い上がった。




この戦闘を観戦していた、NATOとワルシャワの軍や、ガンダムの戦闘能力調査を行って
いたアルゴス試験小隊は正直、この状況は理解できなかった。

たった一機の戦術機がベータの群れを蹴散らしている。

状況を見ればこの一言で終わるが、現実に見ると想像の斜め上をいく状況だ。

「何だよ!? アイツは!? アレは人間か!?」

ユウヤ・ブリッジスは不知火弐型の戦術機管制ユニットの中で叫び散らした。

『落ち着けって、ユウヤ。と、言っても確かにコイツはイカれてるわ……たった30分で地
上のベータ群の80%を殲滅したんだから……無敵じゃん……それに、突撃級を蹴り倒すな
んて聞いたことも見たことも無い。どんな装甲とフレームだよ……? それにビームサー
ベルだったか? 一振りでベータの大群が切り裂かれたよ……ホントに何者だ? アレは
……』

ヴァレリオ・ジアコーザは叫ぶユウヤを宥めながらも呆れていた。

『アレが、噂の国連軍の特務部隊のガンダム……噂以上の化け物ですね……』

ステラ・ブレーメルもまた、この状況に着いて行けなかった。

『それもそうだろう。左肩のマーク、そして、シールドのユニコーンを模った紋章、Fairy
Taleの最高総司令官、手塚 在都准将だろうな』

篁 唯依は表面上は冷静でも内心は驚きと焦りが綯い交ぜになっていた。

『な!? 准将自らお出ましかよ!? しかも護衛をつけずに単機で!? バカだろ!? 
そのアルト・テヅカは!?』

タリサ・マナンダルは驚きながら叫ぶ。

『だが、この状況を見たら護衛なんて不要だろう。かえって足手纏いだ。アレが世界最強
の衛士の実力か……納得できるな……コレを見たら……』

クリスカ・ビャーチェノワもまた、内心を隠しながら冷静に分析する。

『速いね……速度……不知火弐型のトップスピードでも対応できない。と、言うか……目で追えない……速すぎる……それに何か、ベータの周りを飛んでる……あれは何だろう?』

イーニァ・シェスチナは頑張って目で追おうとしたが殆ど追えなかった。

「……アレが国連の白い悪魔……でも、戦力評価といっても、これじゃあ、どう評価して
いいのかわかんねえよ!!」

ユウヤの叫びは全員の思いでもあった。
とは言え、任務を放棄する訳にもいかず、Hi-νの戦闘の録画は続けた。




俺はフィンファンネルを操作しながら敵を焼き払う。気が付けば、辺りはベータの死骸と
ビームとバズーカで出来た穴と、ほんの少しの薬莢が転がっていた。

俺はそれを空から見ながら呟いた。

「まだだ……お前達はこんなもんじゃないだろ? 俺に本気を出させてくれ。俺に戦っていると実感させてくれ」

俺の呟きに反応するかの様に突如、地鳴りがおこる。

「そうだ……それでいい。そうこなくてはな……」

俺はそう呟きながら、地上に降り立ち、ハイパーメガバズーカランチャーを取り出し、構えた。

Zのハイパーメガランチャーを少し小さくした感じのそれを構えながら俺は土柱を上げな
がら飛び出るベータの群れに向けて横薙ぎに撃ち込んだ。

「俺はお前達を滅ぼしに来た。打倒する為に、殲滅する為に、お前達もそうだろう? 俺
という名の災害を打倒する為に……いいだろう!! 滅ぼしてみせろ!! 俺も貴様等を
滅ぼす!!」

野太いビームの柱を銃口から吐き出しながら現れたベータの群れを姿、形、残さず蒸発させた。

そして、残ったのは更地だけだった。




Fairy Taleの部隊の反応は、『ああ、やっぱり……』とか、『うちの隊長ならこれ位は……』
と言うような雰囲気だった。

その中に一人、不安を抱いている隊員が一人いた。
エターナ・フレイルである。

戦場でその異名に恥じない働きをする在都を見ながら呟いた。

「アルト……私は貴方が窮屈に見えます。何故でしょうね?」

そう言いながらモニターを見つめるその姿は、哀愁が漂っていた。




粗方、片付けた。後は反応炉だけか……

俺は上空高く舞い上がり、ハイパーメガバズーカランチャーを構える。

狙うは反応炉ただ一つ!!

「ハイパーメガバズーカランチャー、最大出力……」

俺はそう呟きながらトリガーを引く。
ハイパーメガバズーカランチャーの銃口から目も眩む閃光の柱が大地に突き刺さり、爆発と土煙を巻き上げながら地下を貫通していく。

10秒もしないうちに、反応炉へ到達、反応炉を消滅させた。



こうして、オリョクミンスクハイヴは陥落した。

フェイズ2とは言え、たった一機がハイヴを陥落させただけでも恐ろしいのに、僅か、1時
間30分でハイヴが落ちた。

これを聞いた世界の軍隊は手塚 在都を益々危険視するようになった。



「また……本気を出せなかったか……まあいい、ハイヴはまだまだ腐るほどある」



俺はそう言いながら空へと舞い上がった。







[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 17
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/03/18 22:19

俺は自分の執務室で事務総長と通信で会談していた。

『と、いうことは君達の次の標的はH19、ブラゴエスチェンスクハイヴかね?』

俺は事務総長の言葉に頷きながら答える。

「ええ、ブラゴエスチェンスクハイヴを陥落して、中国開放の為の橋頭堡とします。佐渡
島、ならびに鉄原ハイヴ、この3つを陥落させ、アジア開放の為の足がかりにします」

俺の言葉に事務総長が考え込む。

『ヨーロッパの開放はなった。後は中東、アジア、ソ連領内か……ウラリスクとアンバー
ルの陥落を行えば、ヨーロッパは安定するのだがな』

「ええ、同時にそれも行います。正直、ヨーロッパは復興が行われつつありますが、現在、
間引き作戦で疲弊しているヨーロッパは参戦が苦しいでしょう。戦線維持だけでも苦しい
ヨーロッパをこれ以上は放置できますまい」

俺は手元の端末を操作し、地図を出しながら事務総長に説明する。

「今作戦は、二正面作戦を行い、アジア、ヨーロッパの開放は説明した通りですが、今作
戦の真の目的はアメリカのG弾運用派の牽制です」

『解った。任せよう』

「お任せを」

俺がそう言うと、事務総長が思い出した様に言う。

『おお、忘れる所だった。君にある人物からパーティーの招待状が来ている……』

ほう、パーティー……
しかも、私を指名するとは……

「どこの誰です? 世界で最も嫌われてる私を招待したいという奇特な人物は?」

事務総長は溜息を吐きながら答える。

『場所は横浜ハイヴがあった所、現在、我々国連軍が接収し基地を作った所だ。君を招待
した人物は、香月 夕呼博士だ』

ほう、意外と言えば意外で、納得と言えば納得な人物からだな……
だが、疑問がある。何故、俺を呼びつけるのかと、何故この時期なのかという事だ。

「何故今なのです? 今更、私を呼びつける意味があるのですか?」

『ウム、その事なんだが……彼女曰く、『この横浜を陥落する事が出来たのはFairy Taleな
んだし、是非とも来て欲しい』との事だ』

多分、事務総長の言葉は多分、嫌味をそぎ落とした言葉なのだろう……
だって……事務総長、顔がヒクついてるよ……
しかも、コメカミに青筋が……
そーとー嫌味言われたみたいだな……
ここで俺にそぎ落として話したと言う事は、俺への配慮だろうな……

よかった……聞きたく無いし、知りたくも無い、そんな話。

『兎も角、横浜基地完成の記念式典とパーティーに参加してくれ』

俺は嫌そうな顔をしながら溜息を吐き言葉をつむぐ。

「嫌でも行かなければならんのでしょう……行きますよ……その代わり、エターナも連れ
て行きますからそのつもりで」

『いいのか? 君達を排斥しようとする動きがあるのだぞ?』

俺はニヤつきながらこう言う。

「香月博士が表立ってバカな事はやらんでしょう。もし、この場で俺達を死なせたら、香
月博士の信用問題に関わってくる。更に、アメリカ以外の国は、俺達を嫌っているとは言
え、ハイヴを落とすのに俺達の力が必要だ。後、アメリカにしてもこの段階で俺達と戦争
はしたくないでしょう。まあ、嫌な思いはするでしょうが、命の危険は低いでしょう」

『だといいが……まあ、兎に角、日時とメールで送ろう。招待状は取りに来たまえ』

「了解」




夕呼サイド

事務総長に、Fairy Taleに横浜基地の完成式にぜひ参加して欲しいと言ってやった。

しかし、事務総長も沸点が低いわね~事実を言っただけでなのに……
招待を拒もうとした事務総長に言った言葉が、

『Fairy Taleは何時から手塚 在都の私兵になったのですか? 私の記憶が確かならFairy Taleも国連の部隊のはずですが? それとも、事務総長の私兵でしたか?』

と言っただけなのに……
まったく……

『ああ、事務総長は彼等の基地の場所すら知らない名前が飾りの部隊でしたわね。国連事
務総長直轄特務部隊から手塚 在都の私兵部隊と名前を変えたらどうです?』

とも言ったわね、確か……

まあ、でも今の所、オルタネイティヴ計画が各国から支持されてるのよね。
理由は、国連がベータ大戦のドサクサに武力で各国を統一しかねないと言う危惧があるわ。
私からすればどーでもいい話なんだけど、まあいいわ、研究資金が稼げるし。

今の所、事務総長に直接的な反発が無いのも事実だから。
彼がいるからFairy Taleとの連絡が取れるし、彼がやめたらやめたで誰がなっても状況は変わらないわね。
いいえ、下手をするとFairy Taleが反乱を起こしかねないわね。
各国が恐れているのはそこら辺ね。

正直、アメリカの純軍事力でさえFairy Taleの1個師団には勝てないわね。
どんなにG弾つぎ込もうが無理じゃないかしら。

戦術や戦略が意味を為さないほどの武力なんて……本当に無敵ね……

ま、私に被害が出なければそんな些細な事、ど~でもいいわ。

しかし、手塚 在都がパーティーに来ると言っただけで、政府関係者や軍関係者のパーテ
ィー参加の申し込みと問い合わせが殺到したわね……

ま、手塚 在都と“お近づきになりたい”連中は腐るほどいるわね。

無理も無いわ、ハイヴを殲滅できる軍事力、無限とも言える莫大な資金、他の追随を全く
許さない兵器の開発能力、国連の一部隊でありながら、各国に依存しない部隊、それに、
ガンダム……
上げれば、上げるほど、出鱈目、無敵を地で行く存在だ。
私が驚いたのはオルタネイティヴ計画から完全に切り離された部隊という所かしら。

私ですら、日本帝國政府や国連の枠の中にいるのに、手塚 在都は国や組織の枠を超越し
た組織の長にまでなった。
それこそ、手塚 在都抜きではベータ大戦は成り立たないくらいに……

まりもに聞いたら現在、世界最強の衛士だと話すし、伊隅に聞いたら聞いたで同じ答えが
返ってきた。

手塚 在都がこの基地のパーティーに参加する事を言ったら興奮しながら聞き返してくる
から困る。

でも、ガンダムは気になるわね。

是非とも調べてみたいわ。




俺とエターナはそれぞれの機体に乗り込み、日本へ向かった。

ガンダムに乗る必要性があるのかと、疑問に思ったが、まあ、アメリカと香月博士への牽
制だな。下手なことをすれば俺達も報復すると言う。

後、“記念品”も持参した。
俺達の後ろに4機のミデアが飛んでいた。

今の服装は、国連軍の正装を着てコックピットにいる訳だけど……
シートベルトつけといてよかった……
急な戦闘だと体が固定できないからな……
UC後半の機体は殆ど無かった……
Vはあったと思うけど……

やっぱりシートベルトは大事だよ。ホント……

つける前にコイツのトップスピード出したときコックピットでエアバッグとキスしたのを
思い出した。
あの時、痛かったな……

ちなみに、エターナも正装だ。


しばらく飛んでいると、日本の防空圏内に入った。
すると、日本の艦隊が俺達に通信をして来た。

『手塚 在都准将ですね? 私は巡洋艦、丹波艦長、遠野 陣八です。今から准将方をエスコートいたします』

俺は通信を開く。

「エスコート感謝する」

中年の海軍軍人に俺はそう答えた。

俺達は、艦隊のエスコートを受けながら横浜に誘われた。




ヴィルフリートサイド

私ことヴィルフリート・アイヒベルガーはこの横浜基地の完成式のパーティーに参加していた。

何故、欧州の軍人である私が極東の基地の完成式に参加しているかと言えば、答えは簡単だ。

上からの命令以外に他ならない。

人員は私とジークリンデ、そして、イルフリーデ・フォイルナー少尉の3名だ。

私達のパーティーに参加する目的は、アルト・テヅカを見極めよと言う命令だった。

アルト・テヅカ……
性別、男、年齢不詳、出身地不明、国連事務総長直轄特務部隊、Fairy Taleの創始者の一人にして、隊長。
階級は准将。
数々のハイヴの殲滅作戦を指揮し、そのことごとくを殲滅。
第四、第五世代型戦術機の開発者でもあり、空中戦艦と全く新しい再突入システムでの空
挺作戦との連携した新しい戦術を考案。
現存する衛士の頂点に君臨する男で、オリョクミンスクハイヴをその乗機で陥落させたの
は記憶に新しい。

と、プロフィールを読むだけなら、文字通り輝かしい戦歴の持ち主だ。

だが、彼と戦場で会った者は異口同音にこう言う。

『国連軍の白い悪魔』と……

何故、白い悪魔なのかと問えば、彼の駆るHi-νガンダムが白を基調としたカラーリング
だった事と、悪魔の様な戦闘能力でベータを駆逐する姿からそう呼ばれたらしい。

アルト・テヅカか……いかな人物か、この目で見極めさせてもらう。




???サイド

私は今、極東の島国、日本に来ていた。
私の眼前には世界各国のお偉いさんや、軍でも佐官クラス、各国のエースや特殊部隊と思
われる軍関係者が会場に犇いていた。
私は父である。オーエンス・フレイルの付き添いで、イギリス陸軍特殊空挺部隊、SASの
隊員として父と参加していた。

SASに入隊したのは、姉であるエターナ・フレイルが失踪してから10日目の時だった。
私には過ぎた姉であり誰にも優しく、狙撃が得意な姉だった。

父は姉の失踪を不審に思い、手を尽くし探したが、結局、姉の手がかりは出てこなかった。
それ以来、私は姉の様になろうと努力し続けてきた。

姉さん……貴女は今何処にいるのですか?

私こと、ティーア・フレイルは手に持ったグラスの中身をあおりながら、失踪した姉を思った。




篁 唯依サイド

おじ様から呼び出しを受けて帰ってきてみれば、行き成り横浜基地の記念式典に参加しろ
と言い渡された。

話の聞き始めは、何故、私が国連の基地の記念式典に参加しないといけないのか? と疑
問に思ったが、話を聞いている内に参加したくなった。

何故ならあの手塚 在都が式典に参加すると聞いたからだ。

手塚 在都……ガンダムの製作者にして世界最強の衛士……

今の私達では、第四世代型戦術機を解析し、それをフィードバック、更にそこから装甲の圧縮技術の方法、ムーバブルフレームの解析とその組み方、臨界半透膜処理の方法やアンチレーザーコーティング技術などようやく解析が終了し、不知火弐型に反映しようやく試験運用しているのに、向こうは第五世代型戦術機を開発、生産、配備している。

如何にかしてこの技術差を埋めないとならない。

Fairy Taleが技術提供や友軍の時ならまだいい。しかし、何時その供給が途絶え、自分達
に向けられるか解らない。

世界各国政府が危惧しているのも頷ける話だ。
私はその技術に触れているだけになおさら感じてしまう。

各国も如何にして、手塚 在都から技術提供や資金、食料などを引き出そうとしているのは明白だろう。
引き出す事は無理でも足がかりにはしたいと考えているはずだ。

各国の企業は如何にしてライセンスを貰えるかを考えている。

手塚 在都がどの様な回答を返すか見ものだ。




パーティー会場はありとあらゆる思惑が交錯しながら、始まろうとしていた。






[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 18
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/03/20 00:59
俺達は、帝國海軍のエスコートを離れ、横浜基地を目指し飛んでいた。

その時、エターナから通信が入った。
少し、その美しい顔は少しの不満と不安が綯い交ぜになっていた。
全く、美人が台無しだぞ。

『今回の記念式典、如何お考えですか? 失礼ながら正直、私は今回の招待は、香月博士
の客寄せの為に呼ばれた気がしてなりません』

俺はエターナの言葉に苦笑しながら肩を竦め答える。

「当然、それも込みであるだろうな。何せ、俺達の動きを恐れる各国がオルタネイティヴ
計画に投資している。ここで企業も取り込んでおきたいのだろう。今やオルタネイティヴ
計画は対ベータから対Fairy Taleに移り変わりそうだ」

ムスッとしながらエターナは非難しながら言う。

『笑い事ではありません。ベータを駆逐する計画が人類の一勢力を駆逐する計画に変わる
など、趣旨が変わり過ぎです』

俺は更に苦笑しながら言う。

「仕方が無いだろう。国家の総力を結集しても陥落できないハイヴを陥落してきたんだ。
国家としては、俺達はベータよりも恐ろしく感じるらしい。それもそうだ、俺達は基本的
には何処の国にも属さない、国連軍でありながら、国連という組織の枠すら縛られない。
武力は文字通り世界最強ときている。正直、野放しにしておくには余りに怖い組織でもあ
るのさ、俺達は……各国が今の所、俺達を野放しにしているのはベータと言う明確な脅威
があるからで、それが排除されれば俺達は世界最強の武力を持った軍隊になるわけだが、
正直、各国はベータ大戦終結後の俺達がどうなるか解らないからこそ、オルタネイティヴ
計画を対Fairy Taleに傾けるのは、何の不思議も無いわけだ」

エターナは納得できない顔をしながら呟く。

『結局は、ベータ大戦終結後はFairy Taleは解体、ガンダムを含む戦術機は封印するか自爆処理ですか……』

「ああ、この世界には過ぎた力だからな……ガンダムは……平和ならガンダムは不要だろ
う。あえて波風たてる必要も無いだろう?」

エターナは疑問に思っていた事を口にする素振りで話す。

『アルトはこの大戦が終わったら如何するのですか?』

「そうだな……世界中を回って見たい。俺達が戦った結果がどうなったのか見てみたい」

それを聞いたエターナが遠慮気味に質問してきた。

『その時は、私も一緒についてきてよろしいですか?』

俺は微笑みながら答えた。

「もちろんだ。一人より二人の方がいい」

『約束ですよ? 楽しみにしていますからね?』

エターナは嬉しそうに声を弾ませながらそう言い、俺も笑いながら答える。

「ああ」

俺達は通信で他愛の無い話をしながら横浜基地を目指した。




横浜基地の管制から通信が入る。

俺はモニターを見ながら通信を繋げる。

『横浜UNコントロールより、Fairy Tale、着陸許可がおりた。指定の座標まで移動されたし』

「Fairy Tale1、了解」

俺は座標を見ながら思う。
この指定された座標、明らかにハンガーに近い場所だ。
少し悪戯をしてやろう。
既に嫌われている。
今更、嫌われた所で何とも思わん。

「Fairy Tale1からビーグル1へ、諸君等は先に下りていろ」

『ビーグル1、了解! 隊長、程々に』

俺の命令の意図が解ったらしい機長がニヤつきながら答えた。

「任せろ、パーティーを盛り上げてやる」

俺はビーグル1との通信を切ると続けてエターナに通信を入れる。

「Fairy Tale1からFairy Tale2へ俺達は“直接”パーティー会場へ向かう」

エターナは苦笑しながら答える。

『Fairy Tale2、了解。意趣返しですね?』

「ああ、客寄せにしたのならトコトン客を喜ばせてやる。幸いというか、会場は外だ」

俺はニヤつきながらそう言い、アームレイカーを操作する。
さて、ここはサービスをしてやらないとな。




夕呼サイド

警備がなにやら騒がしくなった。
会場の者には悟られない様に動いてはいるが正直、何事かとは思う。

しかし私は、何故、警備兵が騒がしくしていたのかを理解する。
飛翔する2機の戦術機によって。

「アレは何だ!?」

「何処の国の戦術機だ!?」

「警備は何をやっている!! 戦術機の潜入を許すなど!!」

と政治家の連中は五月蝿く叫ぶ。

しかし、カメラマンが壇上のディスプレーに繋がったカメラを戦術機に振り向けた瞬間、
誰もが息を呑んだ。

「あれは……ガンダム……」

一人の呟きは、会場のどよめきを一気に喧騒へと変えた。

「アレが……ガンダム!?」

「Fairy Taleの武力の象徴……」

「しかもあの機体! Hi-νガンダムじゃないか!?」

「何!? アルト・テヅカだと!?」

「アレが!?」

「間違いない!! 左肩のAをあしらったマーク、シールドのユニコーンの紋章……
間違い無い!! アルト・テヅカだ!!」

「もう1機は何だ!?」

「あれもガンダムなのか!?」

「フェイスカバーに隠れていて解らん……」

「口のところとかガンダムの様だ……」

有象無象がゴチャゴチャ好き勝手に騒ぐ。
私は誰にも聞こえないように忌々しく呟く。

「やってくれたわね……」

ホントにやってくれる……ここまで会場の目と関心をかっさらうなんて……

ガンダムの内、大きなガンダム、Hi-νガンダムという機体は緩やかに回転して、背中の6枚の翼らしき放熱板を広げ、上空で静止した。

その姿はまるで空から舞い降りた天使みたいで、その姿が余計に私の心を逆撫でした。




イルフリーデサイド

私ことイルフリーデ・フォイルナーは空に静止するガンダムを見上げながら思ってしまった。

(カッコいい……)

不覚にも子供みたいな感想しか抱けなかったが、それ以外、形容する言葉を私は知らなかった。
それだけ、あのHi-νガンダムはカッコいいのだ。

「アレが……欧州のベータを駆逐したガンダム……」

そう思った瞬間、悔しさが湧き上がってきた。
私はガンダムを見上げながら下唇を噛みながら思った。

(私達にガンダムがあれば……!! 我々が祖国を……!!)

私は羨望と悔しさが混ざった心を如何すべきか悩んだ。




ベルナデットサイド

私ことベルナデット・ル・ティグレ・ド・ラ・リヴィエールは上空で静止しているHi-ν
ガンダムなる機体を見上げながら呟いた。

「ガンダムか、機体は素晴らしいが、パーティー会場に直接、乗り付けてくるなど礼儀を
知らないわね」

私は空にいるガンダムを見上げながら、そう言う。
参加者へのサービスにしては度が過ぎるというものだ。
かといって、力を誇示する為にここまでガンダムを飛ばしたのではないのだろう。

「……まさか……このパーティーの主催者への意趣返し……」

言って私は頭を横に振りながら、溜息を吐く。

「だとしたら、このパーティーの主催者はFairy Taleとアルト・テヅカをそうとう怒らせ
てるわね……招待する時の態度も重要なのに……」

兎に角、このパーティー、荒れる可能性があるわね。

私は手に持っているポテトサラダを口に運びながら空を見上げた。
はしたないけどこればかりは許されるだろう。
ガンダムを近くで、しかも肉眼で見られる機会など軍にいても殆ど無いのだから。




ティーアサイド

ガンダムが2機、上空に静止している。

そんなことはどうでもいい。
私が気になるのは、後ろにいる上半身がやたらと緑のカラーリングをしているガンダムが
気になった。
正確には肩の赤い部分に描かれた紋章が気になった。

(アレは……姉さんの紋章……!?)

盾にサポーターには左右に大鷲とオリーブの葉と実、下の帯に書かれたモットーが、
『汝、己の天命を全うせよ』と言う我が家の家訓が書かれていた。
イギリスでは王家や貴族、我が家のようななり上がりのナイト爵しか許されないサポーターをつけている……

父も、驚きを露にした。

「何故……娘の紋章が?」

父の呻く様な呟きが遠く聞こえた気がした。

私は空を見上げながら緑色のガンダムを見ながら呟く。

「姉さん……なら何故そこにいるのです?」




俺は疑問に思った事があった。
いや、正確に言うなら出てきたと言うのが正しいだろう。

今まで紋章など出さなかったエターナが紋章をしかも自分の家の紋章が左肩にあったのだ。

「エターナ、お前、何時の間に紋章を?」

俺の疑問に当然の様に答えるエターナ。
その顔には美しい微笑をたたえていた。
綺麗だ、俺は純粋にそう思った。

『貴方が姿をさらすなら、私もさらします。だって、私は貴方のパートナーなのですよ?
私が貴方を守ります。全てのことから、私は貴方の物です。この命も、体も、心も、全て
……だからこれは、意思表示です。
私、エターナ・フレイルは手塚 在都のパートナーであることの』

ここまでされたら俺もエターナの気持ちに答えなければならないな……
我ながらどうしようもなく揺らぎやすい……

秘匿回線じゃなければこんな事、言えないよ全く……

「エターナ……このパーティーが終わったら大事な話がある。聞いてくれるかな?」

エターナは少し、驚いたてからすぐに微笑みながら答えた。

『貴方の望むままに、アルト……』

俺達は空いているスペースにそれぞれの機体を着地させる。

俺はシートベルトを外すと、ディスプレーを操作し、どけると同時にコックピットハッチ
を開いた。

俺は右手をハッチの天井に手をやりながら下を見る。
そこにはパーティー主席者がガヤガヤと騒ぎ立てていた。

俺は、天井のパネルを操作し、ワイヤーラダーをだす。

右手でワイヤーを掴み、フックに右足を引っ掛けると、ラダーは自動的に俺を下界に下ろ
した。

Hi-νには無い機能だが俺が取り付けたものである。

兎に角、俺は地上に降り立ち、同じく地上に降りたエターナと歩いた。
俺が前で、エターナが一歩下がった形で歩く。

俺達は喧騒に似た会場を歩きながら香月博士の姿を探す。

いた、しかも、途轍もないプレッシャーを放っている。
ニュータイプ能力が無くても解るくらい……

大成功だ、パーティーの段取りとかぶち壊してやったぜ!!

ざまあみろ!!

俺は慇懃無礼に挨拶をした。

「香月博士、本日は突然のお招き、真に有難うございます」


会場にいる全員が感じているはずだ。

このパーティーは荒れると。








[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 19
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/03/21 22:31
「香月博士、本日は突然のお招き、真に有難うございます」

俺の第一声は静寂の中に響き渡った。
会場が緊張と静寂が支配している。
その中で俺達と香月博士が世界と言わんばかりだった。

香月博士は顔を引きつらせながら口を開いた。

「ようこそ、手塚准将、まさか戦術機で直接会場に乗り付けてくるとは思いませんでした
わ。まさかとは思いますが……パーティーの礼儀も知らないのでは無いかと疑いますわ」

香月博士が軽いジャブを打ち込んでくる。
俺もその言葉に返礼する。

「此方こそ、いきなりあのような招待状をいただきましたから、パーティーの招待状の出
し方も知らないのかと思いました。それに、来賓の方々にはサービスをして差し上げませ
んと……ああ、それと、パーティーなのにウェルカムドリンクが出ませんな……忘れてら
っしゃるのですか? かの香月博士が? イヤハヤ……ご冗談がお上手でいらっしゃる」

俺が失笑と共に言ってやると、額に青筋浮かべながら笑顔を作っていた。
器用な女性だ……

「あら、パーティーの礼儀を知らない人にウェルカムドリンクを差し上げるなど……
私にはとてもとても……先ず礼儀を弁えてから来るべきでは?」

今度は、アッパー気味に攻めてきた。

「それは、それは、世の中には礼儀を知らない人間がいるものですな……しかし、非礼な
態度でパーティーに呼びつけておいて、礼儀を知らないだけで、ウェルカムドリンクも出
さないとは……主催者の器が知れますな。まるで、お猪口の様な器の狭さだ。ハハハ……」

俺が微笑みながらそう言ってやると、香月博士も微笑みながら返す。

「フフフ……本当ですわね、何処の何方かしら? その様な礼儀知らずは? 顔を見てみたいですわ」

エターナ以外の会場にいる人間はこう思った。

『く、空気が重い……既に荒れている……このパーティー……』

いい加減、話が進まないので俺が先に折れる事にした。

「ご挨拶も終わった事ですし、我々もパーティーに参加してもよろしいですかな?」

俺の質問に、明らかに作り笑いの香月博士がこう言う。

「ええ、ごゆっくりお楽しみください」

こうして、荒れ模様のパーティーは始まった。




俺は暫く、寄り付いてくる政治家や企業関係者、軍人を適当にいなしながら適当にソフトドリンクを呷り、軽く皿に盛った食事をエターナと楽しんだ。

その時だった、エターナに似た声が横から聞こえてきたのは。

「エターナ・フレイル大佐か?」

俺達は声の方に顔を振り向けると、そこには、中年の銀髪で長身の男とエターナに似た銀
髪をショートヘアーにしたブルーの瞳の少女とが立っていた。

この女の子……エターナに似ている……

俺がそんな事を思いながらエターナの方に顔を振り向けた。
エターナはその美しい顔を困惑と驚きに染めながら目の前の少女を見ていた。

「……お父様……ティーア……」

お父様……ねえ……
と、いうことはこの女の子は妹か?

「やはり、お前か……エターナ……」

エターナの父親は困惑と驚きに顔が染まっていた。

「エターナ、教えてくれ、お前は今まで何処にいた?」

父と子の会話は周りの関心を引いたのか、誰もが聞き耳を立てていた。

「すみません、少将、軍機につき申し上げられません。もし、お知りになりたいのであれ
ば、然るべき方法でご質問ください」

父親とはいえ少将である。エターナはそこら辺は弁えていた。
つまり、父親に軍人として会話しろとその言葉の中に込めたのだ。
軍人としてなら話すという意思表示だ。

「な!? 姉さん!? 父さんの質問に答えないなど!? 正気ですか!?」

妹がエターナに噛み付いた。

「フレイル少尉、質問があるなら然るべき方法で質問なさい」

あくまで、公私混同はしないエターナ。

「姉さん!? いえ……フレイル大佐……ご質問よろしいでしょうか?」

妹もまたそういう事を弁えた子である事が解るが若干、甘い所もあるな。

「私が答えられる範囲であれば……」

なるほど……エターナなりの譲歩だろう。
軍機で押し切る事も出来るが、妹の望みを最大限に叶えてやりたいという事だろう。

「大佐は、ガンダムの衛士なのですか?」

妹はそう質問してきた。

「ええ、GAT-X103AT、ヴェルデバスターガンダムの衛士です」

エターナはハッキリと言い放った。
妹はやはり、ショックを隠しきれない様子だった。
父親は困惑の中に、『ああ、ヤッパリ』という感情が見え隠れしていた。

「何故ですか!? 何故、貴女がFairy Taleになど!? 如何に国連軍とはいえ貴女はイギリス人でしょう!? 国に育てられた恩を忘れ、Fairy Taleなど!!」

妹は憤りを姉であるエターナにぶつけた。
エターナはさも当然のように言い放つ。

「私は、Fairy Taleの創始者の一人でもあります。手塚准将と共に作り上げました。それ
こそ、私がFairy Taleのナンバー2ですから」

妹は更に驚いて搾り出すように言う。

「ナンバー……2……?」

「ええ、国連事務総長直轄特務部隊、Fairy Tale、副隊長にして、コールナンバー、Fairy Tale
2、エターナ・フレイル大佐。それが今の私です」

そう言いながらエターナは立ち去ろうとした。
俺も、エターナに続き立ち去ろうとする。

「姉さん!! 貴女は何がしたいのですか!? 家族を捨て、国を捨てて!! 一体なにが!?」

エターナは振り返りながらこう言った。

「ベータの殲滅と手塚准将を守る事、それが私の見出した天命です……」

そういい、歩き出した。


「私は……親不孝な子供ですね……更に酷い姉です……家族を家族と見れないなんて……」

エターナは歩きながら目を伏せ、呟いた。
その声音は悲しみとせつなさが入り混じっていた。

「そうでもないさ……妹は兎も角、父親のあの顔は解っていた顔だった」

俺はエターナの父親、オーエンス・フレイルの顔を思い出していた。
あの顔は娘を送り出す時の父親の顔だったし、彼の感情を感じ取る事が出来た。

しかし、問題は妹の方か……若さ故かどうかは知らないが、やはり気に入らないらしい。

「兎に角、パーティーを楽しむとしよう。幸い、料理は美味い。政治家や企業家が鬱陶し
いのを除けばいいパーティーだ」

「はい」

俺が微笑みながらそう言うと、エターナも微笑みながら答える。




暫くして、香月博士が壇上に上がり、マイクで語りだす。

「お集まりの皆様、談笑中、申し訳ありませんが、Fairy Taleから我が基地、ならびに、
日本帝國政府に記念品があるそうです」

ああ、アレか……忘れる所だった。

そう考えながら、俺はゆっくりステージに向かう。
ステージに上がると、俺に視線が集中する。

マイクスタンドの前に立ち、俺は言葉をつむぐ。

「先ずはじめに、横浜基地完成おめでとうございます。さて、記念品ですが……」

俺がそう言うとエターナがステージのディスプレーに繋げたパソコンを操作した。

画面に映し出されたのは、RGM-89、ジェガンだった。

「RGM-89、ジェガンと日本帝國には、ジェガンのライセンス生産の権利をここに贈与いたします」

俺の言葉に各国の政治家や軍人、企業家がどよめいた。
ここまで言葉が聞こえるくらいの音量だ。

「な!? Fairy Taleが戦術機のライセンスを許可しただと!?」

「バカな!? 今まで販売は行っていたがライセンスは許していなかったはずだ!! こ
こに来て日本にライセンスを許すだと!?」

などなど、会場は一時、騒然となった。

俺は更に追い討ちをかける様にいう。

「更に、ヨーロッパには……」

俺の言葉と共にディスプレーにはZGMF-1001ザクファントムが映し出されていた。

「ZGMF-1001ザクファントムのライセンス生産の権利を贈与いたします」

更に、場は混乱した。

「何だと!? ヨーロッパにまでライセンスの許可を!?」

「一体、何処がライセンス生産を行うんだ!?」

などなど、もう、パーティーは混乱の坩堝と化した。

「なお、この二機のライセンスの権利はジェガンは日本政府が行っていただき、ザクファ
ントムはヨーロッパ各国が話し合いで決めていただきたい」

俺は考える。
片やUC世界のベストセラー機、片やCE世界の最新鋭機と共通点が無いといえる。
性能で言えば、両機共、4.5世代型戦術機といった所か……

俺はさっさと、機体説明に入る事にした。




唯依サイド

私は手塚 在都の解説を聞きながら唖然とした。

その理由は、戦術機のライセンスの権利をしかも第四世代型より上の4.5世代型のライセン
ス権利をポンといとも簡単に差し出した事が私を愕然とさせた。

更に、言えば、異なる設計思想、異なる生産方法、異なる技術を同時に開発できる余力が
Fairy Taleにはある事が私に追い討ちをかけた。
しかも、ライセンス料は国にしたら、タダ同然の破格のライセンス料だ。

つまりは、Fairy Taleにしてみれば枯れた技術の在庫一斉処分みたいな感じなのだろう。

私はこう思わずにはいれれなかった。


“負けている……国が……一組織に……”と……




暫く、機体説明を行っていると、警報がけたたましく鳴り響いた。

「警報!?」

「一体、何事だ!!」

あちらこちらから、何事かと来賓が騒ぎ立てた。

何かあったな?

「皆さん!! ベータが横浜基地に向かって接近中です!! 警備兵の支持にしたがって避難してください!!」

俺がそんな事を考えていると、警備員が避難誘導を開始した。
どうやら、ベータが攻めて来たらしい。

「エターナ!!」

「了解!!」

俺の呼びかけに全てを察したエターナはガンダムに向かって走り出した。
俺もすぐさまHi-νガンダムに向かう。

俺達はワイヤーラダーでコックピットまで上がり、コックピットに滑り込む。

俺はすぐさまコックピットシートに座り、ベルトを締めると、ハッチを閉め、OSを起動させる。

「エターナ!! 準備はいいか?」

俺の質問にエターナは即座に答えた。

『大丈夫です!! 行けます!!』

俺は横浜基地の管制に通信を繋ぐ。

「横浜UNコントロール! 此方、Fairy Tale1! 先に先行し敵の侵攻を押し止める!」

俺の言葉に、香月博士がオペレーターのインカムを奪い取り、怒鳴り散らした。

『ちょっと!! 勝手な事されても此方が困るのよ!! アンタ達はすっこんでなさい!!』

俺は語気を荒げて言い放つ。

「ガタガタ抜かすな!! 素人が!! 黙って見ていろ!! オペレーター!! ベータの位置と進路、数を俺達の機体に転送しろ!!」

『!?』

『り、了解!!』

香月博士は押し黙り、オペレーターは慌てて、情報を転送してきた。

数は約10万か……軽く殲滅できるな……

『アンタ達!! それだけデカイ口叩いたのなら殲滅できるんでしょうね!?』

なおも五月蝿く叫ぶ香月博士。
俺はイライラしながらこう言い放った。

「たかがベータの10万や20万、ガンダムで蹴散らしてやる!!」

『たった2機の戦術機で何が出来るというの!?』

「やって見なければ解らん!!」

『本当に戦えるのね?』

「Hi-νガンダムは、伊達じゃない!!」

俺の叫びで香月博士は押し黙り、発進を許可した。

『いいわ、ただし、ベータをこの基地に近づけてみなさい。培養して実験に使ってやるわ』

香月博士はそう言いながら俺達に許可を出した。

「フ、任せろ、小型種一匹たりとも近づけさせない」

俺はそう言い、香月博士との通信を切る。

「エターナ、聞いての通りだ。俺が前衛、エターナが後衛でいく! いくぞ!!」

『了解! 何時も通りですね』

そう言い、エターナは通信を切る。

「手塚 在都、Hi-νガンダム! 行きます!!」

俺は何時もの掛け声と共にHi-νガンダムを空へと舞い上がらせた。

『エターナ・フレイル、ヴェルデバスターガンダム! 行きます!!』

続いて、エターナも空へと舞い上がった。




1分位、飛んでいると黒いベータの群れがいた。
俺はアームレイカーを操作し、敵陣に躍り出る。

レーザーがHiνガンダムとヴェルデバスターガンダム目掛けて飛んできた。

「当たりはしない!!」

俺はアームレイカーを操作し、巧みにレーザーを回避していく。
エターナも回避しながら複合バヨネット装備型ビームライフルでレーザー級を落としていく。

「エターナ!! 援護しろ! 突っ込む!」

『了解しました!』

俺はエターナに指示を出しながら、ビームライフルを乱射し、レーザー級を片付けながら突撃する。

その後ろではエターナがヴェルデバスターの肩についている、ガンランチャーと高エネル
ギービーム砲、複合バヨネット装備型ビームライフルを駆使しながら優先的にレーザー級
を焼き払っていく。

俺はビームライフルを乱射しながら、地上に降り立ち、右マニュピレーターのビームライ
フルをリアスカートにマウントしながら、左マニュピレーターのシールドを回転させ、逆
さにし、シールド後ろにスライドさせ、左マニュピレーター間接を自由にしながら左肩後
方にやり、ビームサーベルを掴み、振り抜きながらビームの刃を展開する。それと同時に、
ビームライフルをマウントし終わった、右マニュピレーターを右肩後方にやり、ビームサ
ーベルを掴むと抜き放ちながらビームの刃を出す。
その作業を1.5秒で済ませ、ベータに切りかかる。

グリップ部分がHi-νガンダムのビームサーベルにしてはやや大きくしてある。
これは俺独自の改良で両手で握った方が戦いやすい事から延長した。
しかし、サーベル自体は、νやHi-νと同じ様にグリップエンドにビームサーベルを展開
できる様にしてある。

「ハアア――――――!!」

俺は気合と共に、左マニュピレーターを右に振りかぶりながら、グリップエンドのビームを展開し、それを一気に振り払う。
近くにいた、要撃級や戦車級、その他の小型種を切り裂く。

「ウオ――――――――――――――!!」

そして、右のビームサーベルを右から左に振り抜く。
その時、ベータにビームの刃が当たる前にビームの出力を最大にしてビームの刃を延長した。
その、ビームの刃は10メートルも伸び、突っ込んできた突撃級の群れを一刀の元に両断した。

「次だ!!」

俺は、そう叫びながら、飛び上がり、近づいてきた要塞級の触手を回避し、右マニュピレ
ーターのサーベルを上段から下段に振り下ろす。
ここでも振り下ろす瞬間、ビームの出力を最大にする
要塞級は自重を支える右足の5本の内、3本を切断され、バランスを崩す。
俺はその隙に、右のビームサーベルを仕舞い、ビームライフルを取り出し、撃ち込む。
要塞級はビームで蜂の巣になる。

エターナも複合バヨネット装備型ビームライフルを並行に連結させ、長距離からの狙撃に
よる俺の援護狙撃を行っていた。

ん、ヴェルデバスターのフェイスカバーの保護バイザーが上にせり上がっている。
エターナが精密射撃をする時は何時も保護バイザーを上げている。

エターナの狙撃に俺は絶対の信頼と安心を寄せている。

彼女が俺の背を守っているからこそ、俺は白兵戦に専念できる。

俺達は順調にベータの数を減らした。




ジークリンデ・ファーレンホルストサイド

強い……

その言葉しか形容しようが無い強さだ。
圧倒的に強いとはこの事を言うのだろう。

「これが……ガンダムとその衛士の実力……」

香月博士の厚意により、私達も戦いを観戦出来る様、ティスプレーに映し出された映像を
見ながら、私こと、ジークリンデ・ファーレンホルストは呟く。

私の驚きは、レーザーをかわす所から驚きが始まった。
彼等は空を飛びながらレーザーをかわすのだ。
それを見た時、私はその技量に恐怖を感じた。

そして、彼等の連携は完璧だった。
私でも、ヴィルフリートと同じ事をしろと言われても無理だ。
機体の性能だけでは同じ事は出来ない。
アレは、パートナーをお互いが信頼してないと出来ない芸当だ。
神業と言ってもいい。

私は彼等がハイヴの数々を殲滅した事を今更ながら実感した。




夕呼サイド

圧倒的だった。
映像に映し出された、2機の戦術機は可笑しな速度で戦場を蹂躙し、10万を超えるベータ
を殲滅していた。
最早、私の理解の範疇を超えている。
それに、Hi-νガンダムの速度……マッハ5をマークしている。
普通であれば、中の衛士は加速のGで押しつぶされて死んでいる。
しかし、手塚 在都のバイタルデータは正常そのもの……
ヴェルデバスターガンダムの方もマッハ2をマークしている。
エターナ・フレイルもバイタルデータは正常そのもの……
しかも、この二人、強化装備ではない、普通の布で出来た軍服なのだ。
私はこのイカレた2人を見ながら思った。

“化け物”

と……

その時だった、Hi-νガンダムの背中の放熱板が分離したのは……

放熱板はIの字からコの字になってHi-νガンダムの周りを飛翔した。

アレ……放熱板じゃなかったんだ……

私はそんなどうでもいいことを考えながらモニターを見ていた。




俺はフィンファンネルを放出した。

「これで終わらせる!! 行け!! フィンファンネル!!」

俺の命令にフィンファンネルは敏感にかつ、正確にベータの群れの中に飛んでいく。
俺は目を伏せながら気配を探る。

「そこだ!! 落ちろ!!」

フィンファンネルはビームを吐き出しながら高速で動き回り、ベータを駆逐する。

戦闘はこうして終了した。
僅か、30分の短い時間だった。
この様子は、横浜基地完成式典に来ていた各国のテレビ局が世界中に映像を配信した。


ガンダムの映像は世界に広がりを見せた。

世界各国の国民はガンダムを英雄に似た対象として見るようになった。
また、世界中でこう言うフレーズが言われるようになった。

『ガンダム、それは戦う為の力』

各国政府が恐れた、ガンダム伝説が各国の国民に広がろうとしていた……






[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 20 習性
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/03/29 00:22
世界に広がりを見せ始めたガンダム伝説……

各国政府がひた隠しにして来た“ガンダム”という名が世界に広がっていた。
最早、情報操作では誤魔化しの利かない状況が世界に広がりつつあった。
この1ヶ月は何処の国も、その話題だった。


アメリカでは……

ホワイトハウスの一室、この白き家の主がその政務を行う場所に、統合参謀本部議長とこ
の部屋の主である大統領がデスクを挟んで向かい合っていた。

大統領は重々しく口を開いた。

「統合参謀本部議長、Fairy Taleが日本と欧州に戦術機のライセンス生産を許したのは本当かね?」

統合参謀本部議長は鎮痛な顔つきでその口を開いた。

「事実です……大統領閣下……Fairy Taleはとうとう我々が恐れていた事を行い始めまし
た。これで、我が国の戦術機輸出産業が大きく後退する事になります」

大統領は重々しく溜息を吐きながら呟く。

「高が一組織にここまで翻弄されるとは……まさか、この様な形でプロミネンス計画が役
に立とうとはな……彼等のお陰であの計画は二転三転している」

大統領の言葉に統合参謀本部議長は言葉を繋げた。

「始めの計画では、ユーコン基地を拠点に、国連主導で世界各国が情報交換や技術協力を
行い、より強力な戦術機を開発する計画でした……しかし、Fairy Taleと彼等の第四から
第五世代型戦術機、それらを遥かに超越したガンダムの出現により、最初の趣旨は大きく
変わり、今では、第五世代型戦術機の各国での開発計画がその趣旨になりました」

大統領は深く椅子に座りながら、首を横に振りながら溜息を吐く。

「で? 欧州では何処がライセンス生産を行うか決まったのかね?」

統合参謀本部議長は手元の資料を読み上げていく。

「現在、ザクの本体はEuro Fightas社をリーダーカンパニーとし、ビームライフル系の
射撃兵装はラインメイタル社が行っています。また、欧州各企業にも技術公開はしている
みたいです」

大統領は鼻を鳴らしながら呟く。

「やはりか……各国の反応は?」

統合参謀本部議長は資料を読みながら呟く。

「タイフーンの性能を圧倒的に超えていますから評価は高いです。ただ、最新鋭機の為、
ドーバー基地群や西ドイツ軍の特殊任務部隊ツェルベルス、フランス陸軍第13戦術竜
騎兵連隊、ドイツ・フランス連合旅団、英国陸軍特殊空挺部隊SASなどの一部エリート
部隊やエースや隊長等、また最前線に優先的に配備されている模様です」

大統領は体を窓に向けながら言う。

「今の欧州ではそれが限界だろうな、復興すらままならぬ現状で身の丈にあわない最新鋭
戦術機の生産なんど」

大統領は次に日本のジェガンにもふれた。

「日本はどうなっている?」

統合参謀本部議長は資料を読みながら日本の現状にも触れる。

「日本のジェガンは光菱重工をリーダーカンパニーとし、河崎重工、遠田技研工業、富嶽
重工業がジェガンのライセンス生産を行っています。名前もジェガンから荒鷲と名前が変
更されました。此方も前線の部隊に優先的に配備が行われています。横浜基地にも配備が完了しています」

統合参謀本部議長の言葉を聞きながら大統領は思う。

もし、Fairy Taleが敵になった場合、アメリカだけでは到底、太刀打ち出来ないことをこ
の時点でようやく悟った。

G弾だけでは最早、Fairy Taleのガンダムには太刀打ちできない事も……

アルト・テヅカを何とかしなければ……

我々、合衆国は世界から大きく離される。





ヨーロッパでは……

イルフリーデサイド

私は試験運用が済み、配備されたザクファントムを見上げていた。

その一つ目、口に見えるダクト、何とも特徴的である。
その強い印象を与える顔立ちは何だか知らないが力強く感じた。

「Fairy Taleの戦術機か……」

私は何とは無しに呟く。

「イルフリーデ~~~!」

私を呼ぶ声に振り向くとそこには、同僚で同期のヘルガローゼ・ファルケンマイヤーと
ルナテレジア・ヴィッツレーベンがいた。

「何をしているの? イルフリーデ?」

ルナの簡単な質問に私も簡単に答えた。

「ザクを見てた……」

ルナもザクを見ながら呟く。

「Fairy Taleの贈り物か、でも凄いよね~、Fairy Taleって……このザク、カタログスペ
ック上ではタイフーンの20倍以上のスペック差があるもの。ビーム兵器を携帯させるのも
凄いよね~しかも、タイフーンと変わらない操縦方法で訓練の時間を短縮しているし」

ルナはザクをウットリしながら見上げる。さすが、戦術機を婿にすると噂されるだけはある。

「携帯武装はMMI-M633 ビーム突撃銃、MA-M8 ビームトマホークが二本、ビームトマホ
ーク収納も兼ねた対レーザーシールドが2つ、このシールド、マニュピレーターを使わな
くても使えるからいいよね~、ハンドグレネードが4つと、各種ウィザードシステム兵装
が付いて充実した兵装、エンジンも核エンジンだから長く戦えるし、ミノフスキーフライ
トも機体事態に搭載してるから機動力もあるし、ここまで、至れり尽くせりの内容だと、後、足りないのは衛士くらいかな~
ヤッパリ、テヅカ様、凄いよ……これだけの物を短時間で作り上げるんだから」

ヘルガが疑問に思った事を口にした。

「何故、そこでアルト・テヅカの名前が出てくる?」

ルナが驚きながら言う。

「ヘルガ、知らないの!? 第四世代から第五世代型、更にガンダムの設計は全てテヅカ
様が行っているんだよ!! しかもその全てを試験運用を行ったのもテヅカ様なんだか
ら!! 衛士としても超一流でしかも戦術機の開発も行えるなんて……尊敬いたしますわ
……」

ルナが胸元で手を組みながら目を輝かせ、アルト・テヅカの説明をする。
何だか、アチラの世界に旅立っている……

そんなに凄いのか? 
確かに、戦術機での戦闘は凄かった……
聞いていたら何だか、完璧超人に思えてきた。

私はザクを見上げながら思う。

我々がアルト・テヅカを越える事は出来るのだろうか?

と……





日本では……

巌谷 榮二サイド

私は今、ジェガン改め、荒鷲の試作量産型の試験運用を行っていた。
ジェガンから荒鷲に名前を変更したのは、外国産戦術機を導入する事に心理的抵抗を考え
ての判断だった。
名前を変えただけでは如何しよう無いと思うが、政治屋の小さなプライドを満足させるに
は十分だろう。
正直、Fairy Taleがライセンスを許したのは驚きだった。

第四世代型戦術機であるウィンダムのライセンスを許さなかっただけに、この異例とも言
えるライセンスの許可は正直、裏がありそうで怖い。

しかも、製作に必要なマザーマシンから核エンジンの為の技術まで簡単に渡したのである。
気前が良過ぎて正直、唯依ちゃんが報告書に上げた様に、在庫処分の為のライセンスと考
えてしまう。

だが、この際、利用できるものは利用しよう。
そうでなければ、我が帝國の戦術機開発は正直、苦しい。
いや、既に窒息しかかっている。

不知火や吹雪をみれば解るが、非常に突き詰めた設計ゆえ、発展性に問題を抱えている。
更にそれが如実に出ているのが武御雷だ。

何せ、不知火の開発で培われた技術を応用して作られている。
これほど、技術応用が利かない戦術機も無いくらいだ。

かといって、基本設計改修に費やす時間はなく、また外国製戦術機を導入することに対する心理的な抵抗も根強くあった。それらを解消すべく私がXFJ計画を立ち上げたが、
正直、我々が開発した戦術機より遥かに応用が利き、戦闘能力も高く、高機動な戦術機が
Fairy Taleから大量にしかも安価に出回った。

正直、根強い反発や抵抗など霞んでしまうくらい、Fairy Taleの戦術機は現場から指示された。

それもそうだ、基本性能の高さ、操作のしやすさ、安価な価格、整備の手間が掛からない、
兵装のビーム兵器化による弾薬にかかる費用の軽減、ありとあらゆる戦場に対応した柔軟
な運用、正直、汎用性が高すぎる。

このジェガン、ハードポイントによりありとあらゆるオプションが装備可能だ。
応用が利く。それは、兵器にとって強みだ。

私は荒鷲を見上げながら思う。

手塚 在都の引き出しは無限にあるのではないか……?

と……




俺はデスクでパソコンを弄りながら次の作戦の準備をしていた。

世間様は俺の事を天才だ何だともてはやすが、正直に言えば、俺がやっている事は、
オッサンから貰ったテータを再現しているだけに過ぎない。
知識や技術、ノウハウはあるがそれだけだ。

人様から貰った技術をただ、ベータ殲滅の為に費やしているだけだから別段、自分が凄い
とは思えない。

俺が基地に帰り、エターナに告白してから既に2ヶ月が過ぎた。
恋人同士になったからといって別段変わったことは殆ど無い。

変わった事と言えば、睡眠時間が多少減った事と、エターナと一緒に寝ているくらいだ。
それ以外は、恋人になる前と同じだった。
早くベータを殲滅して恋人らしい事をしたいものだ。

ハイヴの制圧を中東とアジア両方面から行い、確実に前線を押し上げる必要がある。
ロシア方面の制圧も行いたいが、兵数が足りない。

俺は苦肉の策としてまず、東と西から確実に制圧し、ヨーロッパの安定を確実にすると共
に、アジア圏のハイヴの削減を目指す方向で事務総長と共に周辺各国に働きかけている。

その働きかけは功を奏しそうだ。
戦術機のライセンスが大きく働いている。
統一中華やソ連の働きかけにも使えそうだ。

アメリカの牽制、弱体化が真の目的だが、各国が戦後を睨んでいる現状で使える為、
こういった事にも使っている。

あの二機に言える事だが、核エンジンはW系の核エンジンを搭載した。
正直、ミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉にはヘリウム3がいるからそれの精錬は正
直、秘密にしたい。
後、ミノフスキーフライトはオプションパーツで搭載した。
アンチトライアルシステムは装備しなかった。
香月博士に対策を取らせないためだ。

兎に角、俺は作戦立案の最終調整を行った。



世界は緩やかにではあるが、ベータの支配から抜け出そうとしていた。


人間同士のイザコザを抱えながら……







[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 21
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/03/27 14:02
俺の階級も准将から少将へと昇進した。

エターナも准将へと昇進、クレアは大佐、レイチェルは中佐、武は少佐、純夏は大尉となった。

昇進させた、事務総長曰く、『一個師団の最高司令官が准将じゃあ不味いだろ?』との事。
確かに一個師団の指揮は少将くらいの階級が指揮を執るが……
異例の出世速度だ、快速急行どころかジェット戦闘機並の速度で出世しているな俺……
現実問題、いくら手柄を立ててもここまで出世は無いだろう……
しかも俺、20歳の若造よ? 人生80年として、人生の折り返し地点の半分くらいの年齢だぞ?

エターナと2人で16歳の時に創めたFairy Taleは何時の間にやら一個師団か……
随分、増えたな……色々なモノが……
今更ながらそんな事を思い出していた。





俺は日本帝國とイギリスに頼まれた。仕事をしていた。

その依頼とは、日本は、近衛部隊専用機を設計して欲しいという依頼。
そして、イギリスの依頼も、王室騎兵隊専用機を設計して欲しいという依頼だった。

日本は解るが、何故、イギリスの王室騎兵隊が専用機を欲するかと言えば、王室騎兵隊は
馬上での警護だけでなく、機動機甲旅団に派遣され実戦を行う事から専用機が赤いカラー
リングが施された、タイフーンを使っていたが、イギリスもタイフーンからザクファント
ムに正式採用を変える為、この際、日本帝國の武御雷みたいな王室騎兵隊専用機を採用し、
他の部隊との差異を図る目的で英国王室と英国陸軍の英国陸軍王室騎兵隊が依頼してきた。


日本の場合は、イギリスと殆ど同じ理由からで、近衛部隊が一般兵と変わらないモノを使
うわけにもいかないとの事。


イギリスは正式なオファーで、日本は秘密裏に依頼してきた。
そんなに外国製品が嫌か? 日本?


兎に角、このクソ忙しい時に嫌がらせの如く注文してきたバカな組織に『とりあえず現行
のカスタマイズ機で十分では?』と言ってやると、『駄目だ!! 違う機体で!!』と両者
共同じ事をホザきやがる……


俺が、『コスト的な兼ね合いとかありますから……厳しいでしょう? 御財布事情?』と言うと……


これまた、両者とも『そんなの関係無い!! 将軍殿下(女王陛下)を守る為に金の事な
ど気にしない!!』と言い放った。
ここまで清々しく言い放たれると、呆れを通り越して感心してしまう。
俺はオッサンのプ○アク○ョンリ○レイと言う名のチート使ってるからいいが、向こうさ
んは、資源も財政も有限だ。


俺は2カ国の熱意に根負けし、作る事になった。


兎に角、俺は2カ国の要望に如何、対応すべきか考える。

日本の要求は、総合的にジェガンより高く、機動性に優れ、接近戦能力の向上、ジェガンとのパーツの流用が可能、整備のしやすさなどなど……

英国の要求は、総合的にザクファントムよりも高く、機動性に優れ、接近戦能力が高く、ザクとのバーツの流用が可能、整備のしやすさなどなど……

俺はこれを聞いた瞬間、同じ事言ってる!! コイツ等!! と叫んだ。

まあ、ハイヴ陥落の為の戦力補強にはなるからいいが……

兎に角、俺はこの無茶苦茶な要求に応えるべく、丸一日を潰した。




1週間後、俺は、2機の機体を完成した。
イギリスにはグフイグナイテッドを、日本にはジェスタを送りつけた。

グフの場合は、接近戦能力を重視しつつも、ザクの兵器の運用も可能な様にしている。
ジェスタの場合は、接近戦能力を向上させた事と、接近戦に対応したフレームの改良を行
った。ビームサーベルも、円筒状の物から四角柱型のサキガケの様なピームサーベルが使
っているタイプのビームサーベルにし、サキガケのビームサーベルの様に、ビーム刃の形
状も曲刀状にし、より高出力な物にした。
日本刀を思わせる形状は日本の近衛にウケると思ったからだ。


2機ともOKを貰う事が出来た。

俺はここでふと疑問に思った。
日本はジェスタを何と改名するのだろう?
と……



1ヵ月後、俺達はラウリスクハイヴとブラゴエスチェンスクハイヴを叩くべく俺達は、2手
に別れた。

ラウリスクハイヴにはエターナ、クレア、レイチェルが、ブラゴエスチェンスクハイヴに
は俺と武、純夏が担当した。

俺達はソ連、統一中華、先進戦術機技術開発計画部隊と共に作戦を行い、エターナ達はEU
の軍隊と共に作戦を行う。

ハッキリ言えば、二正面作戦のやき回しだが、命令系統の違う軍隊を動かす事からこちら
の方が難易度は高い。

俺達の指示通り動いてくれればいいが、そうもいかない。下手をすると指示や命令を無視
した挙句、全滅、その責任を此方に全部押し付けられそうで怖い。
こちら以外の責任を押し付けられない様にしないといけない。




ブラゴエスチェンスク、地図的表記はブラゴヴェシチェンスク。
1856年、ロシア帝国の要塞都市として建設、アムール川の北部は清帝国領だったが、1858
年、璦琿条約が締結された。俗に言う不平等条約の一つだ。
20世紀初頭に金が発見され、急速に成長した都市だった。

かつての要塞都市は、今ではベータのハイヴか……

俺はその荒廃したブラゴヴェシチェンスクを眺めながら呟いた。

「ソ連が嘗てロシア帝国と呼ばれていた頃、清からぶん取った領土は、今ではベータにぶん取られている……皮肉だな……」

俺の呟きはトレマーに聞こえていたらしく、トレマーはこう言う。

「歴史とは何時も皮肉的です。しかも、度し難い事に人類は同じ過ちを何度も繰り返しま
すからな……しかし、その皮肉をベータにされては些かやり切れませんな……」

トレマーの言葉に俺は頷きながら言う。

「帝国主義全盛の時代のツケをベータに催促されるのは気分がいいものではない。サッサ
と片付けたいものだ」

俺とトレマーは作戦の為、ソ連と統一中華の将校に会う事にした。

俺の右側にはソ連の将校、フィカーツィア・ラトロワ中佐、先進戦術機技術開発計画部隊
からはイブラヒム・ドーゥル中尉が、統一中華は解らん。
どうやら、前線部隊の指揮官が集まっている。

兎に角、俺達は海軍や宇宙軍で行う敬礼をした。
全員が一斉に立ち上がり、敬礼を返す。こちらは陸軍の敬礼だった。

先ず始めに口を開いたのは統一中華の中佐だった。

「まさか、Fairy Taleの長自ら御出陣とは……正直、予想外ですな」

俺は英語で話してきたこの男に北京語で返した。

「ええ、我等の戦場は常に最前線、そこに二等兵も少将も関係は無いのですよ。生き残る
時には生き残る。死ぬ時には死ぬ。それだけです。それ故に私は常に最前線に立ち続けて
います。兵達の誇りを守る為に」

俺は、今度は英語に戻し、会話した。

「それでは、会議を始めましょうか?」

会議は簡単に進んでいた。
3つの勢力は基本的に損害をどれだけ抑えられるかが焦点だった事から、Fairy Taleが先陣
で種戦力となった。

会議が決まりかけていたその時、イブラヒム・ドーゥル中尉が質問をして来た。

「少将殿は最前線に出るおつもりですか?」

と流暢な英語で言われたので、俺はトルコ語で返した。

「当然です。私がいる所こそがベータ大戦の最前線にして、激戦区ですから」

俺はそう言う。
これは事実だし、我等Fairy Taleのいる所こそが最前線だ。

こうして、会議は終了した。




エターナサイド

私とクレア、レイチェルはアルトの命令によりカザフスタン、ウラリスクハイヴに侵攻し
ています。

国の正式名称、カザフ・ソビエト社会主義共和国。
石油や鉱物資源が豊富な所で今はベータの支配下。

やはり、アルトの言った通り、ベータは資源が多い所にハイヴをおく習性があるみたいですね……

兎に角、中東とロシア圏のハイヴを落とさない事にはヨーロッパは安定しない訳です。

私とクレアは作戦会議に出席すべく、プレハブの仮設司令室に赴く。

私達が扉を潜るとそこには、欧州連合の佐官クラスの将校が居並んで座っていた。

私達が海軍や宇宙軍で使われる敬礼をすると全員が一斉に立ち上がり、敬礼を返した。
ここ、ここに至り、私は准将になった事を実感した。


会議は私達が最前線で主戦力だった。
欧州連合は後方支援、余剰戦力、遊撃隊としての役割を担う事になった。


私達は会議が終わり、仮設の基地を歩いていると、赤色にカラーリングされた、グフイグ
ナイテッドを見つける。

「英国陸軍王室騎兵隊も参戦するんだ……」

クレアが赤いグフを見上げながら呟く。

「ええ、英国陸軍王室騎兵隊も一般兵と共に作戦参加するでしょうから」

私はクレアの呟きに応える。
クレアは溜息を吐きながら私に言う。

「でもさ、我が祖国ながら無茶するよね~僅か1ヶ月で違う機体を用意してそれを配備してしまうなんてさ……」

私は頷きながら呟く。

「高貴なる者の義務がなせる業なんでしょう。イギリスは自分達が欧州の盟主であると主
張している国だから、力の誇示はしておかないといけないわ」


私達は作戦開始まで艦に戻り、作戦会議を行う事にした。




いよいよ、多国間二正面作戦は行われようとしていた。






[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 22
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/03/29 01:04

ハイヴ同時攻略戦は時刻1300時より開始された。

レーザー級の射程外からの各艦の一斉砲撃、ならびに地上部隊の支援車両からの砲撃がハ
イヴ目掛けて飛んで聞く。

『ベータ損耗率20%! 各機発進!! 繰り返す!! 各機発進!!』

俺はHi-νガンダムのコックピットの中でその音声を聞きながら、オールビューモニターには、旗艦フェアリーテイルのカタパルトと、進路の先にある戦場が視界に飛び込んでくる。

『カタパルトオンライン!! 隊長! 発進どうぞ!!』

オペレーターの声が耳をうつ。

「了解した。手塚 在都!! Hi-νガンダム、行きます!!」

俺はカタパルトから押し出され、空を舞う。

案の定、各国の部隊は俺達に前線をやらせる気だ。
いや、全部やらせる気だろう。
左右、両翼の部隊が動いた形跡は無い。

「チィ……アイツ等……」

戦後世界を睨む暇があるなら戦えよ。
貴様等の戦術機は飾りか?

俺は盛大に舌打ちしながら、戦場に飛び立ち、少しもしないうちにレーザー級の射程圏内
に入る。

「全部隊に通達!! Fairy Taleは前進! ベータを叩け! その他の部隊は取りこぼし
を叩け!!」

俺は即座に命令を下す。
確かに彼等抜きでも殲滅できるが、正直こちらも犠牲は減らしたいのでな。
作戦は合同でと言ってきたのはそちらだろうに!!
やる気が無いなら帰れ!! 邪魔だ!!

俺はイライラしながらも何かを感じた。

ん、この感じ……来る!! 

「そこ!!」

俺は飛び交うレーザーをアームレイカーを操作し、かわしながらビームライフルとシール
ド内部に備え付けてあるビームガンをレーザー級に叩き込む。

俺が撃ち込んだビームはレーザー級とその周りのベータを吹き飛ばした。

それでも減らないレーザーの数に俺は辟易しながらもアームレイカーを操作しながらレー
ザーをかわす。

「行け!! フィンファンネル!!」

俺はそう叫びながら、フィンファンネルを6機全て飛ばし、レーザー級を優先に叩いていく。

俺は回避運動を行いつつ、ビームライフルを連射し、ベータ群を沈めていく。

その時、かわし損ねたレーザーが俺を襲う。

「クッ!!」

俺はアームレイカーを操作し、シールドをHi-νの正面に突き出す。

レーザーは完全に弾き返される。

甘い、このシールドには∀ガンダム世代のIフィールドが展開できる。
俺がオッサンのデータを元に改良を加え、レーザーにも対応させた。
その程度のレーザーでは貫けない。
最大出力に切り替えて防御に回ればツインサテライトでも防ぎきれる。

凄いぜ、オッサン!! アンタ何でもアリだ!!

俺は空を飛びながらレーザー級を優先的に片付けていく。

俺は戦いながらも別方向を見ていると我が部隊のガンブラスターを見ていた。

ガンブラスターはビームライフルとビームバズーカ、ハイパーバズーカをベータに撃ち込
んでいた。
また、ある小隊ではビームキャノンを装備したガンブラスターと通常装備のガンブラスタ
ーがエレメントを組んで戦っていた。
通常装備のガンブラスターはビームサーベルを抜き放ち、ベータを切り裂いていた。
キャノンを背負ったガンブラスターはキャノンを撃ちながら前のガンブラスターを援護していた。その手にはビームスナイパーライフルが握られていた。

武と純夏達もやっているみたいだ。
この分だと問題なく指揮は取れるみたいだ。
俺は地上に降り立ち、ビームサーベルで要撃級を切り裂いた。




フィカーツィア・ラトロワサイド

強い……
いや……強すぎる……

私は彼等、Fairy Taleを舐めていた。
高が国連の一部隊と思って、副官であるナスターシャ・イヴァノワに何時でも出れる様に
命じてあったが、正直、その必要は皆無だった。

彼等は明らかに戦い慣れている。
ハイヴ戦闘だけじゃない、ベータに対する全ての戦闘に対応できるよう訓練されている。
全てにおいてスペシャリストなのだ、彼等は……

私は党の命令で“彼等が戦うから、出来るだけ兵の被害を抑えろ”と命じられた。

正直、此方の心配も向こうの心配もいらない位だ。

「アレが……世界最強の部隊……」

私はチェルミナートルの戦術機管制ユニットで唸った。

その時、アルト・テヅカから全軍に指示が入る。

『全部隊に通達!! Fairy Taleは前進! ベータを叩け! その他の部隊は取りこぼし
を叩け!!』

どうやら、アルト・テヅカが動かない我々に痺れを切らせたらしい。
そう命じてきた。

『中佐、いかが致しましょう?』

副官であるターシャが無線越しに聞いてくる。

「動かない訳にもいかんだろう。相手は国連とはいえ少将だぞ? それに我が国の領土奪
還の為の戦場で我が軍が動かん訳にもいかん。出るぞ!!」

『正直、我々は必要ないのでは?』

ターシャの言葉も最もだが、我々にも面子があるし、Fairy Taleが勝手に動かれて困るの
は我が国だ。
彼等に見限られたらそれこそ、ソ連はFairy Taleの暴走を許してしまう。欧州みたいに。
国として、それは避けたいだろう。

情けない話だが正直、我々だけではハイヴを叩けないのもまた事実だからだ。

御偉いさんもそこら辺は解っているのだろう。
だからこそ、“出来るだけ兵の被害を抑えろ”と言ったのだろう。

私は戦場に参戦する事にした。




ユウヤ・ブリッジスサイド

Fairy Taleと言う部隊名は腐るほど聞いたことはあるが、実際、部隊が戦場で戦う所は見
た事が無かった。
ガンダムの戦いを見て、イカれている事は理解できたし、凄すぎるのも理解していた。
だが、Fairy Taleの隊員はそんな事は無いだろうと思っていたがその認識はハッキリ言っ
て大間違いだった。

「何だ……コイツ等……衛士全員がエースクラスの実力かよ……」

そんなのが当たり前の様にゴロゴロ転がっている部隊……
それがFairy Taleなのだと理解してしまった。
その中でもガンダムの衛士は途方も無く、異常で異様で出鱈目だった。

テストパイロットとして自信は有り余っていた。
しかし、こんなの見せられたら正直、そんな自信は木っ端微塵になった。
アイツ等、ガンダムの衛士みたいに恐ろしいほど全てがズバ抜けている訳でもないが、戦
術機の性能だけじゃ得られない戦闘能力だ。

「……コレがアルト・テヅカの創り上げた部隊の実力……」

俺はそんな事、口にしながら歯を食い縛った。

日本人の猿真似が!!

そう叫びたくとも叫べない。アルト・テヅカは今まで革新的な技術を造り続けてきている。
俺達、アメリカの想像を遥かに越えた戦術機理論、数々の新兵器、新たな戦術……
上げれば上げるほどキリが無い。

突如、戦術機管制ユニットの警告アラームが鳴り響く。
そのアラームは上の警戒を指していた。

Fairy Taleの再突入部隊が降下してきた。
アイツ等風に言うなら空挺降下だろう。

俺はそんな事を思いながら戦場の後方でアイツ等を見ていた。





一方、ヨーロッパ戦線では……

エターナサイド

ラーカイラム級戦艦、レスターのカタパルトに私はヴェルデバスターを待機していた。

『エターナ機、発進どうぞ!!』

オペレーターの発進許可がスピーカから聞こえてきた。

「エターナ・フレイル! ヴェルデバスターガンダム行きます!!」

ヴェルデバスターはカタパルトにより空へと押し出される。
私は、操縦桿を操作しながら戦場へと向かう。

戦場では先に先行していたレイチェルがビームライフルとヴェスバーを乱射しながらベー
タ群の一角を切り崩しに掛かっていた。

『いや~レイチェルやってるね~』

クレアがおどけながら、私に通信してきた。

「貴女も援護射撃してあげたら?」

『は~い』

私の言葉にクレアはお気楽に応える。
クレアはカラミティのシュラークとケーファー・ツヴァイで援護射撃を行っていく。
私もヴェルデバスターの複合バヨネット装備型ビームライフル2挺でベータ群を撃ち抜い
て行く。

私はレイチェルに通信を送る。

「レイチェル、出すぎですよ。少し前線を下げなさい。貴女だけ孤立するわ」

レイチェルが通信に応える。

『了解、ですが、ここで数を減らさないと……』

私はレイチェルに言い聞かせる様に言う。

「安心しなさい。今回は私達だけではないわ。貴女の部下だっている。それに欧州連合もいる。だから私達だけで無理をすることは無いわ。少し肩の力を抜きなさい。貴女は少し真面目すぎるわ、クレアみたいに抜き過ぎるのはいけないけれどね」

私がそう言うとクレアが割って入る。

『エターナ~私を引き合いに出さないでくれる? こう見えても私繊細なんだから』

「貴女も拗ねないの、いい年して子供じゃあるまいし」

プリプリ怒りながら愚痴るクレアを宥める。

この会話の間にも私達はベータを殲滅する事を忘れなかった。

私はガンブラスター部隊と欧州連合に命令を出す。

「各部隊に通達! Fairy Tale部隊は敵前面に侵攻! 優先的にレーザー級を叩け! 他の部隊は左翼と右翼に分かれて突出する敵の掃討を行え!!」

そう言い私は一拍おいてこう言う。

「最後に、諸君等の戦果と武運が尽きぬ事を切に願う」





ティーアサイド

『最後に、諸君等の戦果と武運が尽きぬ事を切に願う』

私の姉ことエターナ・フレイルの命令を聞きながら、私はザクファントムのコックピット
で聞いていた。

このザク、イギリス式の改良が施されている。
どこら辺が改良されているかと言えば、ビームトマホークの代わりに、グフイグナイテッ
ドのテンペストビームソードが使われているのと、それに合わせて間接部や駆動系を改良
してある。
まあ、見た目は殆ど、ドイツ式と変わらない。
フランス式はビーム突撃銃のマガジンの改良で円盤上部取り付け型から箱型エネルギーマ
ガジンが後方にある事と、ビームトマホークの代わりに、フォルケイトソードをテンペス
トビームソードのように上下にスライド出来るようにし、刃の部分をビームトマホークに
使われているビーム発生デバイスを取り付けたタイプだ。

兎に角、見た目は変わらないが、装備、分けても接近戦兵装はお国柄が出てしまう。
便宜上では大まかに分けてイギリス式、ドイツ式、フランス式の三つになるわけだけど。

勿論、私が乗っているのはイギリス式な訳で、ブレイズウィザードを装備している。

他を見れば、イギリス式のスラッシュウィザードの装備はファルクスG7ビームアックスから、BWS-4 ビームグレートソードに変えられた事だ。
こちらは、BWS-3にビーム発生デバイスを組み込んだだけだが……を装備していた。

他を見れば、ハイドラガトリングビーム砲とM68キャットゥス500mm無反動砲を装備していた。

また違う所を見れば、ブレイズウィザードにスラッシュに使うBWS-4 ビームグレート
ソードを装備していた。

また違う所では、ガナーウィザードを装備していた。

パッと見回しただけでもザクだけで多彩な兵器を携帯しているわね。

グフは兵装的に融通が利かないし、Fairy Taleに依頼してから、設計図を貰い即生産、
その後、実戦運用の為に配備されているわ。

『SAS大隊は戦線に向かわれたし!! 繰り返す戦線に向かわれたし!!』

HQからの通信で思考が戻される。

「さて、行きますか……」

私は大隊長の命令に従い出撃した。


Fairy Taleが片付けてくれているとは言え、ハイヴ戦だけにベータの数は多い。

「そこ!!」

私は突撃銃を撃ち込みながら突き進む。
ファイヤビー誘導ミサイルを6発撃ち込み、ベータの群れを焼き払う。

「次!!」

私は左マニュピレーターでビームソードを抜き放ちながら突撃級を切り払った。

その隣では、爆発が起こる。

味方がやられた!?

いくら小型とは言え核エンジンそんなのが爆発したら!?
私はゾッとした。

しかし、爆発は小規模で通常の戦術機の爆発と変わらなかった。
原理は解らないが兎に角、助かったことは理解できた。

私は気を取り直して目の前の敵を叩く事にした。





ベータが減った、これなら!!

そう判断した俺は、ハイパーメガ・バズーカランチャーを取り出し、ハイヴに向けて撃ち込んだ。

大きな穴が開き、ハイヴへの突破口が出来上がる。

「Fairy Tale1よりFairy Tale5及び6これよりハイヴに突入する!! 着いて来い!! 他の部隊は地上にいるベータ群を掃討しろ!!」

『了解!!』

各部隊から応答が帰ってくる。

行くぞ!!

俺達は暫くハイヴ内のベータを掃討しつつ突き進む。
突き進んだ先には反応炉があった。

「各機!! 全力射撃!!」

『『了解』』

俺は武と純夏に命令を下す。
武達もそれに応える。

ラゴエスチェンスクハイヴは陥落した。





エターナサイド

このベータの減り具合ならいける!!

「Fairy Tale2から3、4へ!! 各機集結し、全力砲撃!!」

『『了解!!』』

私の命令でクレアとレイチェルが動く。

私は、複合バヨネット装備型ビームライフルを、左右ライフルを平行に連結し、長射程用
の連装キャノンモードにし、最大出力でトリガーを引く。

クレアもスキュラを最大出力にして解き放つ!!

『グゥレイトォ~~~~!! な~~~んちゃって!!』

レイチェルもヴェスバーを最大出力で撃ち込む。

『これで終わりにするわ!!』

それぞれ3機の最大火力によりハイヴのシャフトとドリフトに穴が開く。

「行くわよ!! 2人とも!!」

『りょ~かい』

『了解!!』

私達はハイヴ内部を突き進み、反応炉を破壊した。



こうして、多国籍軍での二正面作戦は成功した。


しかし、Fairy Taleはガンダムだけでなく、Fairy Taleの隊員さえ危険視されるようになってしまった……






[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 23
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/03/30 02:24

俺達、Fairy Taleは戦闘の処理を終えて、基地に帰った。

まあ、こんなもんだろう。
俺達が戦えば……

当然と言えば当然だな、一般兵の乗るガンブラスターでさえ、フル改造、オプションパー
ツを装備している。
更に、俺とエターナが育て上げた部隊だ。
通常の衛士でさえ各国のエースクラスの実力なのだ。
更にその中でFairy Taleのエースは各国のトップガンクラス、更にガンダムに乗る衛士は、
それを軽く超越した衛士で構成されている。

これでハイヴを落とせない訳が無い。

ガンブラスターの通常のコストは倍以上に跳ね上がっているし、ガンダムに至ってはノー
マルのジェスタやグフが軽く3、40機は生産できる位の改造とオプションパーツがついて
いる。

負ける道理を探す方が難しい。

俺のHi-νに至ってはジェスタやグフが軽く100は生産できる程の改造をしているし、
オプションパーツもつけている。

この一個師団で、アメリカの純軍事力と正面から戦っても余裕で勝てるほどだ。
流石に世界全てと言われれば勝率は減るが負ける気がしない。

確かにMS技術は世界に流してはいるが俺達に追いつくには俺が技術提供して後、最低10年は掛かる。

この計算は現状維持の状態を続ければの話である。
それでも10年のミゾしか無いのは、下地に戦術機と言う土台があればこそだろう。
俺の生まれた世界じゃあ、少なく見積もっても50年から100年は掛かると思う。
俺の生まれた世界では戦術機クラスの大きさの2足歩行は出来てもあそこまで高速機動で
飛びまわるのは不可能とは言わないが技術的に難易度が高すぎる。

戦術機という下地があればこそ10年程度の差である。

しかも、この世界は俺の生まれた世界と違い、レーザー級により、航空機兵器技術やミサ
イル兵器が廃れた代わりに、戦術歩行戦闘機、通称、戦術機や大砲が大いに活躍している。

レーザー級がいたからこそ人類は空を追い出され、地べたと海上、海中にその戦場を移し
ている。

そこに俺達、Fairy Taleはベータに奪われた空を飛ぶ事を取り返した。
各国が穏やか成らざる気持ちでいるのは、仕方ない事かもしれない。

俺達は人類が奪われた“空”からの圧倒的優位性を発揮した。

レーザー級の高出力レーザーを物ともしない防御力、一撃で大多数のベータを葬る火力、
この世界よりも安全性が格段に上がった空挺作戦、空中戦艦によるMSの運用と戦艦の火力を併用した戦術、戦術機はおろかこの世界での基地すらおよびもしない通信などなど……

兎に角、俺のせいかお陰か、10世紀単位の技術革新を僅か10年に縮めてしまった。


ベータを倒す前に人類が仲間割れしなければいいが……

それが今の俺の不安材料その一だ。その二が香月博士の動き。
現在、恐ろしいくらい静かだが、あの女が黙っている訳が無い、何かしら仕掛けてくる。

あのパーティーで確信した。
あの女はやられた事は兆倍にして返すタイプだ。

今の所、各国の諜報機関からは報告は無い。
俺の諜報機関の調査では香月博士曰く半導体150億個分の処理装置以上のスペックと同等
のヤツを手のひらサイズにするのがうまくいっていないらしい。

兎に角、俺は今後の事を考えるべく、基地へ戻る事にした。

さて、各国が如何出るか……





アメリカでは……

ホワイトハウスである男が大統領と秘密裏に会談していた。

その男の特徴は細身でアメリカ人の平均身長より小さめの男で、金髪碧眼、顔に小皺を刻
んだ中年の紳士だった。

中年の紳士は部屋に入るなり、スーツとお揃いの帽子を取り、挨拶をした。

「大統領、お久しぶりです」

大統領が

「やあ、ようこそ、君がこのホワイトハウスに来たのは夕食会以来だな……レドリア」

レドリアと呼ばれた中年の男は愛想良く微笑みながら応える。
だが、その目には全く人を信じない輝きを放っていた。

「ええ、しかし、冬は応えますな、メリーランド州からここまでコートの襟は立てて来て
しまった。年のせいか、なお応える」

大統領はそれを聞き、愛想良く応える。

「早く退陣してマウイに移り住みたいよ」

大統領の言葉にレドリアと呼ばれた男は鼻で笑いながら応えた。

「御冗談を……貴方には次の大統領戦でも勝って貰わなければ困るのですから」

レドリアの言葉に大統領はムスッとしながらこう言った。

「軍産複合体の一人にして筆頭である君が、態々お喋りをする為に来たのではあるまい? 
ロックウィード・マーディン社、代表取締役、会長の君が……」

レドリアは愛想笑いを浮かべながら口を開く。

「ええ、勿論そのつもりです。大統領……我々はお互いに忙しい身の上ですから……」

レドリアは、そうかぶりを振って言葉を繋いだ。

「正直、我々の業界は大きく冷え込んでいます。その理由は御存知ですね?」

そう言いながらレドリアは懐を弄り、葉巻を取り出し、先端をシュガーカッターで切り、
それに火をつけた。

大統領は煙そうにしながらも答える。

「……Fairy Tale……かね?」

その言葉に煙を楽しみながらレドリアは答えた。

「ええ、Fairy Tale……いや、アルト・テヅカと彼の作った、第四から第五世代型戦術機、
そして……ガンダム……これは我々にとって大きな脅威です」

大統領は鼻を鳴らしながら答えた。

「ふん、『君達』のだろう……この合衆国有史以来、影からこの新大陸に居座り、繁栄と死
をバラ撒いてきた『君達』の……」

レドリアはニヤニヤしながら答える。
その顔には皮肉的なものが浮かんでいた。

「私とて貴方と同じで組織の歯車の一つに過ぎません……貴方とて、大統領の椅子に座る
事が出来たのも『我々』のお陰では?」

大統領は嫌そうな顔をして言う。

「『君達』が恐れているのはアメリカの転落ではない。もし、アメリカが倒れても他の所に
住み着けばいいだけだからな。問題は、Fairy Taleという正体不明の存在と彼等の力だ。
Dr.コウヅキの研究は『君達』の存在を白日の下にさらしかねない。だからこそ、我々はG
弾によるハイヴ攻略を掲げた。しかし、アルト・テヅカとFairy Taleは違う。彼は存在そ
のものが謎の人物で、強大な力を有している。『君達』は焦っているのではないか? アル
ト・テヅカの存在に」

レドリアは頷きながら答える。

「ええ、『我々』は自分達の支配体系が脅かされるのを大変恐れるきらいがあります。
しかも、彼は存在そのものが謎です。『我々』でさえ掴めないなど、異常な存在と言っ
てもいいでしょう。更に、ガンダムと言う脅威の技術の塊……
アレは私の目から見ても異常ですな……そんな連中が『我々』の存在に気付いて見過ごす
はずが無い。例え見過ごしたとしても、利害が一致していないといけない。これは大変、
御し難い相手だ。更に、アルト・テヅカ……アレで国連という各国の利害渦巻く所を巧み
に泳いでいる。危険ですな……かといって彼を殺す訳にもいかない、彼が死ねば彼が作り
上げた技術は『我々』の物にならない。更に、Fairy Taleの独立した命令系統。全くもっ
て厄介な相手ですな……」

大統領は溜息をつきながら話を進める。

「で? 『君達』は何をして欲しいのかね? この私に?」

レドリアはニヤリと笑いながら言う。

「なに……簡単な事ですよ……」


この秘密の会談は予定より少し長めに続いた。





欧州では……

EU、欧州連合、欧州代表が集うこの場所に各国が集っていた。

先ず、口を開いたのは欧州の盟主を主張するイギリス代表だった。

「諸君、また、一つのハイヴが陥落した。これにより欧州復興は加速するだろう。だが問題は多い」

そう、イギリス代表が言った様に問題は多い。

復興の為には莫大な資金がいる。それを何処から調達するかが最大の問題だった。
しかし、それだけが問題でも無かった。

イギリス代表は更に言う。

「その問題の一つにFairy Taleの問題もある。Fairy Taleにより、戦後世界が明確になり
つつある今、彼等を押される力が必要だ」

西ドイツ代表は重々しく口を開く。

「彼等を押されるのは難しいだろう。正直、アメリカ、ソ連を含む全世界で戦いを挑んで
も勝てるかどうか……」

フランス代表も西ドイツ代表に付け足す形で答える。

「それにガンダムの存在、アレを大量生産されたら正に脅威だ。アルト・テヅカはそれを
やってのけるだろう」

各国の代表もネガティブな意見しか出てこなかった。

会議は予定の時間を大幅に過ぎて終わった。





日本では……

首相官邸では閣議が行われていた。

「オルタネイティヴ4は今の所、成果が出ていない!! これ以上予算は出せんよ!!」

大蔵大臣は吼える様に言う。
正直、西日本の復興や年々膨れ上がる軍事費で財政が圧迫されているだけに、これ以上の
予算は割けないとの意見が出る。

「軍にすら人が足りず女手を引っ張り出してるのに、これ以上、人的資源は出せんよ!!」

労働大臣も悲鳴混じりに答える。
正直、成果が出ない物に数少ない人的資源を国連に割くなど出来ないのも事実だった。

「国の防衛が最優先事項だ!! それを高が国連の一基地の為に兵器はやれんよ!!」

国防大臣もそう怒鳴る

閣議はオルタネイティヴ計画に否定的だったが、Fairy Taleの独断を許すわけにもいかず、
調整は困難を極めた。



各国はそれぞれの戦後を思い描きながらも、Fairy Taleと言う名の存在を如何するべきか、
それぞれの国が対策を立て始めた。


各国は御伽話の見えざる影に怯えていた……


地球にいるベータの脅威は取り除かれないまま……








[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 24
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/03/31 16:00

俺とエターナはニューヨークの国連本部の事務総長室にいた。

「どう言う事です!? 補充要員が出ないとは!? 申請も正規の手続きを踏んで行って
いるのですよ!?」

エターナは事務総長に珍しく大声で噛み付いた。
事務総長も苦い顔をして言う。

「国連が各国の軍隊に依存しているのは君も知っていよう!! 各国が君達を恐れて、国
連に兵を出し渋っているのだよ!! 私とて唯々諾々としていた訳じゃない!! しかし、
これが各国の返答である以上、私とて如何する事も出来んよ!!」

エターナはなおも噛み付く。

「我々、人類は地球のハイヴだけでなく、月や火星のハイヴもあるのですよ!? 私達の
一個師団では月は兎も角、火星の攻略は難しいです!! それに、デストロイ級の機体を
用意するのにも時間が掛かります!! 大型兵器はコストだけではなく資源もいるのです
よ!? 私達にハイヴ攻略戦をやらせておいて、各国は戦後を睨んでいるなど!! 地球
のハイヴさえ満足に叩けないのに!!」

事務総長も頭を抑えながら叫ぶ。

「私とて君達の言いたい事も解るし、各国が地球のハイヴ攻略すらまだなのに戦後を考え
るなど、愚かだとも思う!! しかし、各国は君達を万能とも考えているのも事実なん
だ!! 私とて警鐘を鳴らしているが、各国は自国が可愛いのだよ!! 情けない話だが
な!! 戦後が見えている以上、戦後世界に自分達の立ち位置を少しでもいい方向に置き
たいのは、何処の国でも同じだ!!」

事務総長は苦しい自分の立ち位置と戦後世界の構築に勤しむ世界との足並みが揃わない事を愚痴る。

エターナは憤りを事務総長にぶつけた。

「それを調整するのが貴方たち国連の仕事でしょう!! 国連や安保理は張子の虎ですか!?」

エターナの憤りも解るが、事務総長の気持ちも解る。

Fairy Tale設立当初から俺達に影ながら政治的、人員的援助を行ってくれたのは事務総長だ。
彼が俺達Fairy Taleを一個師団にまで押し上げてくれたと言ってもいいだろう。
各国が俺達を危険視する中、それでも人員を補充し、各国で迅速に作戦行動が取れる様に
したのも彼だ。

彼は今、俺達を如何にか自由にする為に動いている。
彼も苦しい立場だろうに……


俺達は一応、“国連軍”と言う枠の中にいる。
国連軍は基本的に世界各国に依存した軍隊でもある。
命令系統は“国連軍”だが人員は各国で募った兵である。


それが解るだけに事務総長が人員獲得の為にかなり無理をしている事も解る。


多分、各国は俺達を警戒して国連軍全体の兵員補充を下げたのだろう。
国の兵が足りないとか理由をつけて。
実際、足りないし、国としても苦しいのは変わらない。
国連もそこら辺は解っているから強くは出れないのだろう。
ヨーロッパからは俺達が補充した兵を帰せと矢の催促だろう。


ヨーロッパとて復興の人員やハイヴと言った問題がまだある以上、人的資源は欲しいのだろう。
男性が戦場に駆り出され、女性どころか16歳以下の子供すら兵に出した程、切迫していた。
エターナ達がいい例だろう。


そこに、俺達がヨーロッパの国土を追われ、国連軍に入った者達を採用している。
今の所、ヨーロッパは解放しているし、復興はしているが、圧倒的に足りないのだ、マン
パワーと資源と資金が……


更に、アジア圏の兵達も多くいることから、アジアが解放されたら、大東亜連合から人員
を返せと言ってきそうだ。

実際、国連軍にいた涼宮も桜花作戦以降は日本帝國の兵として描かれていた。


逆に、余っているとは言わないが、事足りている国がある。
その国は、建国有史以来、ありとあらゆる敵から侵略を受けたことが無い国……


アメリカ合衆国だ。


その大きな国土に大企業と大市場を抱え、名実共に世界最強の超大国だろう。

俺の生まれた世界ではテロにより、ありとあらゆる敵から侵略を受けたことが無い国と言
う名の神話は瓦解したが、この世界ではそれが無い。

アメリカ国籍の兵を入れる事も考えたが、スパイなどがあった為、人選的に難しくなった。

アメリカの最大の素晴らしい所は個人主義だが、自分達や国家が危機的状況に陥った時、
一致団結して素早く問題に対応できる所が挙げられる。

これが、日本の場合、愚図愚図して中々、一致しない。

最大の欠点にして弱点は、自分達が正しいと言う狭い価値観だ。
アメリカンジャスティスこそが世界だと言わんばかりに押し付ける癖がある。
あと、極端なまでに実益主義だ。


まいったな……真ともな国家が無い……
ベータ大戦で疲弊しているから余計に政治家の心的状況が荒んでいる……
俺の生まれた世界以上に過度な国益主義が蔓延している。
国の存続や繁栄の為なら手段を選ばないとは言わないまでも、余りにも目につく。


エターナもそこら辺は解ってはいるが、彼女はどちらかと言えば潔癖な性格で、兎に角、
今の各国の有り方が鼻につくらしい。


俺がゴチャゴチャ考えていると、エターナが此方に話をフッてきた。

「アルトは如何思うのですか? 今回の兵員補充が出来ない事に対して」

俺は、顎に手をやりながら考える。

「ん~……各国が苦しい以上、俺達が声高に兵員補充を叫んでも出ないのだから仕方が無
い、と割り切るしかない。各国だって無い袖は触れないのだからな。だが、今回の出し渋
りは明らかにおかしい……各国が厳しい状況でも今まで兵を出していたが、今ここに来て、
国連に兵を出さないのは多分、アメリカが意見して、その意見が各国の利害と一致したか
らこそ兵の補充の人数を下げたと見るべきだろう」

事務総長はやはりと頭を抱えながら呟く。

「やはりな……何らかの圧力があるとは思っていたがこういう形で圧力をかけてきたか……」

俺は、今まで考えていた意見をここで2人に言う。

「この際、我々だけで月と火星を叩くべきかと……」

その言葉に2人は驚く。

「本気かね!? 月は兎も角、火星のハイヴを攻略する気かね!? 一個師団で!? 出
来るのかね!? そんなことが!?」

事務総長は半分立ち上がり気味で問いかける!?

「アルト!? 貴方何を考えているのです!? 月の攻略の目処は立ちますが火星のオリ
ジナルの大きさはフェイズ9!! 前人未到の領域なのですよ!? 各国の協力が無いと攻略は難しいです!!」

俺はここで、ある設計図の入ったDVDロムを懐から取り出しながらいう。

「コイツを使う……本当は使いたく無かったがこの際仕方ない……俺達への圧力が緩いう
ちに実行に移そう」

エターナにそのロムを渡し、再生するように命じた。

スクリーンには巨大な建造物のデータが映し出されていた。
移されたデータを見た2人の反応は唖然としている。

「Gamma Emission by Nuclear Explosion Stimulate Inducing System……ジェネシス…
…、核エネルギーを使用した大型ガンマ線レーザー砲……コイツを使う」

「ガンマ線……レーザー砲……?」

俺の言葉に事務総長が聞き返す。

「ええ、ガンマ線は非常に透過性の高い放射能で非常に高エネルギーの電磁波の為、ジェ
ネシスほど高出力のレーザーの場合は核シェルターなどでも事実上防御不能です。ハイヴ
外は勿論、ハイヴ内のベータ及び、重頭脳級も焼き払う事が可能です」

エターナや事務総長は冷や汗をかいていた。

「君は……何故、地球にコレを使わなかったのかね……?」

事務総長は質問する。
その疑問も最もだろうが、理由はある。

俺は更に補足説明をする。

「コストと地球環境に与える影響です。その影響は単に射線上や周辺のみならず、気象変
動等の影響で全生命体の80%以上が死滅するという隕石衝突クラスの殺戮が可能ですから」

事務総長はそれを聞き、尚も冷や汗を額に滲ませた。

「……そうか……だが、君の頭はどういう神経しているのかね……? こんな事を思いつ
くなど……こんなイカれた兵器、誰も思いつかん……」

俺は事務総長の言葉にこう言った。

「ベータに勝利する為に、ですよ……それ以外に興味はありません……それに、私はこん
な物趣味じゃない。だが、使うしかない以上、使います」

俺は更に言葉を付け足す。

「火星攻略が完了したら、ジェネシスは解体します。これは俺の命に誓って」

俺達は会合を終わらせ、帰る途中、俺は呟いた。

「……足らない通常戦力を大量破壊兵器で補う……か……我ながら、トコトン、イカれて
いる……各国が恐怖するのも無理は無いかもな……」

俺の独り言にエターナが反応する。

「……しかし、それを使うのは事務総長との取り決めで、火星攻略だけです。別に貴方は
地球に向けてそれを使うわけでも、人類に使うわけでもありません。それに兵士達の安全
を考慮したからこそ、貴方は確実にマーズゼロを沈める方法を提示しました。兵員補充を
断った各国にどうこう言われる筋合いはありません。それに極秘裏に行う作戦です。今の
所、月のオリジナル攻略は各国に知られた形跡は無いのですから……」

俺はエターナの慰めに頷きながらも考える。

各国が、これを知ったら間違いなく俺達を解体に乗り出すだろう地球上にハイヴがあろう
が無かろうが……


俺達は各国政府の不信感を感じながらも人類の脅威と立ち向かっていた……


(戦力は与えるだけ与えた……後は地球にいる人類がどれだけ団結して地球のハイヴを陥落できるかだ……)


俺はそんな事を思いながら、人類が一致団結してハイヴ攻略を行う事を切に願った。


俺達は後ろを気にしながら前に進む選択肢を取った。



戦略的には愚策だが仕方ないと割り切って……







[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 25
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/04/03 22:24

日本帝國、首都、京都……


日本帝國の政治の中心地の外務省庁の建物の廊下を一人の男が歩いていた。
男は内心辟易しながらも、それを顔には出さず歩いていた。


男の名は榊 是親、現政権の外務大臣である。


榊外務大臣は自分の執務室まで帰ると、秘書には緊急以外は誰も取り次ぐなと命じ、部屋
の戸の鍵をかけ、自分の椅子に重い腰を下ろした。


わずか48歳で外務大臣の椅子に座る事の出来るこの男の有能さを物語る。
しかし、その若さとは裏腹に、雰囲気は60歳以上の老人に見えた。


この男をここまで疲れさせた原因は、彼の属する政権だった。


(……不味い……今の帝國は非常に不味い……総理が、大臣を纏められていない……そればかりか、各大臣は自分達の保身しか考えていない……
彼らが国連、いや、Fairy Taleを恐れたばかりに人員補充を出し渋った……


彼等、Fairy Taleがいなければハイヴの陥落すらままならないのに……
しかも、国防省は自分達が西日本を防衛したと勘違いしている……実際はFairy Taleの援軍があればこそ西日本防衛が成功したのに、それを我が手柄の如く各国に自慢している……


更に最悪なのは軍部がFairy Taleからの技術協力で補強した軍事力をまるで自分達が増強したが如く、振る舞っている。その癖、ハイヴ攻略案が出れば及び腰になる。

譲りうけたジェガンをまるで自分達が開発したが如く荒鷲などと名を変えたのがいい例だ。

政治家は自分達の権利をアクセサリーか何かと勘違いし、軍部は手柄を吹聴し、その癖、
ハイヴ攻略案が出れば逃げに出る……

国民が哀れでならん……我等を信じ、厳しい状況の中、国に税を納め、我が子や夫を戦地
に送り出している国民が哀れで仕方ない……


……如何にかしなければ……このままでは、将軍殿下からお預かりしたこの国が駄目になる……


そして何より許せんのは……この状況を変えられぬ我が身の不徳だ……)



そう思いながら榊外務大臣は現政権に対する憤りと国民に対する申し訳なさ、将軍に対す
る非礼、そして、自身の無力さに涙した。








日本帝國の軍部にもこの状況を嘆いている男がいた。


帝国本土防衛軍帝都守備、最高総司令官、彩峰 萩閣少将である……


彩峰少将は自身の司令室の椅子に腰掛けながら憂鬱たる思いを胸に秘めていた。


(今の軍部はどうなっているのだ……我々、本土防衛軍が佐渡島攻略戦を具申しても聞き
入れてもらえない。そればかりか、Fairy Taleが何とかしてくれると言い出す者までいる
始末……


彼等とて万能でも、神仏でも無い。まして、自国の防衛を他人に任せるなど……
私は……この様な者共を守る為に戦っている訳では断じて無い!!
私が守っているものは、将軍殿下とその臣民たる日本帝國国民の生命と財産だ!!
影に隠れて何もしない軍部でもなければ、自分達の権利を装飾品と勘違いしている連中で
は断じて無い!!


榊殿もさぞご苦労なされているだろうに……あの方とお会いしていると政治家も捨てたも
のではないと考えさせられる……

彼が首相の地位についてくれれば……我が帝國は下らぬ連中の下らぬ事を許しはしないの
に……将軍殿下が幼いのをいいことに権力に群がるブタ共は自身の保身しか考えていない。


……悔しい……この身にもっと才があれば……)




彩峰少将は悔しさを押し殺し、歯を食い縛った。





アメリカでもこの事態に頭を悩ませている人物がいた。

国務長官、ジョニー・エイブラヒムである。

彼は政務を行う傍ら、窓を見ながら思った。

(如何にかしなければ……我が合衆国が欲望に飢えたブタ共に食い潰されてしまう……

今やこの国の大統領は彼等、軍産複合体の傀儡だ……一々、彼等にお伺いをたてて政治を
している……

戦術機も彼等の決めた言値で買い取っている。しかも、その金は国民の税金だ。
我が合衆国は資本主義だ。これでは競争原理が働かないばかりか、経済が衰退する……


今の所、殆どが軍事に傾いている。それに、Fairy Taleがいるからこそ、何とか競争原理
は働いているが、彼らを排斥したら合衆国の経済は何れ窒息する……

我が国は何時までこの様なブタ共を養わなければならないのだろうか……

早くこの国からブタ共を追い出し、合衆国をより良い物にしなければ……


国自体が崩壊する……


これでは……我々に期待し、我々に表を入れてくれた国民に申し訳が無い……)



エイブラヒム国務長官は天を仰ぎ見ながら心で神と国民に懺悔した。




イギリスでは……

ある老紳士がパイプを握り締めながら雨のロンドンの町並みを眺めていた。

この紳士は、大英帝国、外務英連邦大臣、ダグラス・グラントである。

グラントは、パイプを口に銜えながら煙を楽しむが心は外の雨の様に晴れなかった。


(我が偉大なる女王陛下の大英帝国は何時から嘗ての植民地たるアメリカの犬に成り下が
ったのか……嘆かわしい……
嘗ての日の沈まぬ帝国は消えうせたのか……?


あれほどヨーロッパが戦火に喘ぐ中、Fairy Taleは何の見返りも無く戦ってくれた……

そればかりか、我々、ヨーロッパに援助の手も差し伸べた……

それを、我が身可愛さに、恩人に礼を述べる代わりに仇を返すとは……
これでは彼等、Fairy Taleばかりか、ヨーロッパに住む人々にも見捨てられる……

我々、政治家はもっと人として高潔であるべきだ……
彼等、Fairy Taleの様に……

私は何度も議会や閣僚にこの事を言ってきた。

しかし、彼等は自分達が恩を受ける事を当たり前と勘違いして、ヨーロッパを自分達が開
放したと嘯いている……


軍人達も自分達が戦って解放したと吹聴する始末……)



グラントは天を仰ぎ思わずにはいられなかった。


……神よ……何時から我が祖国やヨーロッパは崇高なる魂を失ってしまったのでしょうか……?



外に掲げられたユニオンジャックは雨に打たれ、雫を落とし続けた。

今の祖国の現状を嘆くが如く……





横浜基地では……

横浜国連軍基地の地下に事実上、この基地の最高責任者、香月 夕呼はパソコンのキーボ
ードを叩きながら文章を作成していた。

香月博士は考える。

(各国が国連軍の兵員の出し渋りでFairy Taleを弱体化できると考えているけど、
あの手塚 在都がそんな甘い相手でも、情けないヤツでもない。
国連という各国の利害と言う名の化け物が混み合うプールの中を平然と泳いでいる。


下手をすれば化け物を食らう化け物なのよね~手塚は……
各国の代表はそれを理解しているのかしら……あれだけ餌をばら撒かれ自分達が肥え太る
餌であることに彼等は御目出度い事に気付いていないわね……


更に言えば手塚は彼等に興味が無いのかもしれない……下手をすると私すら眼中に無いわね……


多分、手塚 在都の頭の中にあるのはベータをいかに殲滅するか、と言う事しかないと思う……


私は手塚みたいに無欲ではない。私の研究でベータを駆逐したいと言う俗な考えがある。
ま、ベータが殲滅できれば誰がやってもいいけどね……


ただ、私の研究は各国の思惑で対ベータから対Fairy Taleへと移った。
国連の事務総長以外は恐れているのだろう……ベータを殲滅し駆逐し蹂躙する力が何時、
世界に向けられるかと恐れている。自分達の損得抜きでだ……


怖いのだろう……彼等の力が世界に向けられるのが……
手塚 在都が暴走するのが……


訳の解らない恐怖に国連は突き動かされている……


でも……手塚はどうする気なのかしら?
あの男が大人しく黙っている事は無いと思うけど……


私の研究は訳の解らない恐怖の為にあるんじゃない。私の研究は多くの人達を救う。

そう信じて、色々な勢力と戦ってきた……
私は信じたい……手塚が、国連の安保理の壇上で言った、『人の心の光り』とやらを……)


「でも、今の人類は幼過ぎるのよね……」





俺達は月ならびに火星攻略に向けて準備に追われていた。

俺はエターナが乗る新たな機体を作成していた。
エターナが珍しく我侭を言ったのだ。

『ヴェルデバスターでは汎用性にかけます。それに、今後の作戦はよりハードなものとな
ります。ですから、狙撃を行えて、かつ汎用性がある機体をお願いします』と言った。

俺はエターナのヴェルデバスターに変わる機体を作り上げた。

それが、ネオガンダムだ。
この機体は機動戦士ガンダム シルエットフォーミュラ91に出てくる機体だ。

このネオガンダムにエターナの特性に合う様にカスタマイズした。
改造は、機動性、兵装、防御力をフル改造でGバードを狙撃用に改造した。
コアブロックシステムはオミットした。
更に、ネオサイコミュシステムを狙撃時のみに使用切り替えを行える様、改良した。

これにより、狙撃はエターナの感覚で狙撃する事が出来る。
従来のMSの狙撃より格段に狙撃の命中精度が良くなった。

カラーリングは白を基調とした青とのツートンカラーである。

オプションパーツは、スナイパーセンサーⅢ、ライフル型コントローラー、ユニバーサル
エンジン、テレストリアル・エンジン、Iフィールド強、アストナージエンジン等を取り付
けた。

兎に角、完成したネオガンダムをエターナに渡し、試験運用をさせた。

エターナはそれを問題なく乗りこなした。それこそ、ヴェルデバスター以上の成果を出した。

これなら実戦に耐えられる。



こうして、俺達は着々と月、火星を叩くべく着々と準備を完了していった。







[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 26
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/04/05 22:56


国連本部、安全保障理事会の会場に俺は来ていた。


何故こんな所にいるかとかと言えば、月、ならびに火星攻略を国連の正式な作戦としてこ
こで発表する為だ。


極秘にしてバレた後を収拾するより、世界を混乱させ、その内にサッサと片付け、後で混
乱を収める事にした。


俺は各国代表が注目する中、壇上に上がり口を開いた。


その時、全世界のTV局のカメラが一斉に俺の方を向く。


「各国のお集まりの代表方、ならびに全世界の方々に申し上げる。

我等、Fairy Taleは来月の12月に月ならびに火星のハイヴ攻略の為、宇宙での作戦を敢行
する。この作戦の目的は、地球圏にいるベータを一掃することにより、地球の安定を図る
事が目的である。

何故、地球のハイヴ攻略を先に行わず、月と火星攻略を優先した理由は他にもある。
その理由とは、各国が国連に対し、兵員の補充を出し渋りを行った事も上げられる。
それほどまでに各国が切迫している事を鑑みて、我々は早期に月ならびに火星攻略を行い、
人類の安定を図る事もこの任務の趣旨である事をご理解いただきたい。

さて、我々が火星攻略に使う切り札はこれです」


俺の言葉と共にエターナが手元の端末を操作する。
大きなスクリーンにはジェネシスが映し出された。


「な!? 何だ!! コレは!?」


「兵器? なのか!?」


「何だ!? この馬鹿デカさは!?」


世界各国代表は騒然とした。

あちらこちらで悲鳴に似た叫びが会場に響き渡る。

俺は畳み掛ける様に言う。


「コレは、Gamma Emission by Nuclear Explosion Stimulate Inducing System……ジェ
ネシス……、核エネルギーを使用した大型ガンマ線レーザー砲です。
これをもって火星オリジナルハイヴ、マーズゼロを砲撃、大型ガンマ線レーザーで地上な
らびに地下のベータ及び、重頭脳級を焼き殺します。火星攻略が完了した後、ジェネシスは解体することをここでお約束いたします」

俺は最後にこう言う。

「世界各国の方々に申し上げる。我等、Fairy Taleはこれより宇宙へと旅立つ。しかし、
今だハイヴとベータの脅威がある今、世界各国が手を携え、この危難に立ち向かわなけれ
ばベータの脅威から地球全体を解放する事は難しいだろう。

我々、人類は今こそ、国や民族、宗教、ありとあらゆる利害を超越し、ベータと言う危難
と立ち向かわなければならない。

最後に……
何れ、ベータ大戦は終わる。その後、世界はどの方向に向かうのか全く予想できない。
しかし、他人の書いた筋書きに惑わされてはいけない! 自らの内なる神の目で、これか
ら始まる未来を見据えていただきたい!

そして、私達の行いや言葉が少しでも、人々の希望に繋がる事を善意の祈りを込めて切に
願う」

俺はそう、英語で言い終わると一礼して壇上を下りてエターナを伴い、会場を出る。





この放送は全世界に流れた。

世界の反応は、世界各国政府はFairy Taleがジェネシスなる大量破壊兵器を保有した事に
強い反発を示した。

しかし、自分達が軍を出し渋った事が原因だった為、強くは抗議できなかった。

俺は公式の記者会見でこう言った。

『もし、ジェネシスに反対なら各国はすぐさま兵員補充をしていただきたい』と……

各国は押し黙らざるおえなかった。






この在都のジェネシス投入に大きく慌てた国があった。

アメリカ合衆国である。

アメリカ合衆国国民は在都の演説を聞き、考える様になった。

自分達、アメリカは安全な国に篭り、世界を傍観していいのか?
私達はこのままでいいのかと言う疑問が生まれ始めた。

議会は荒れに荒れた。

野党はここぞとばかりに与党を攻め立てる。

「Fairy Taleがあのような物を保有するきっかけを与えたのは大統領と与党だ!! もし、アレが我が国に向けられる事態になれば合衆国全土は焼かれてしまうではないか!!
与党や大統領はどう責任を取るおつもりか!!」

「彼等を追い詰めたばかりにアルト・テヅカはいよいよ本気になってしまった!!
眠れる獅子を起こす必要も無いものを無理に起こすからこうなる!! 獅子をネズミと勘
違いした与党は如何するおつもりか!?」

与党は与党で反論する。

「貴方達とて賛成しただろう!! 自身の言葉を掌返したが如く言わないでいただきたい!!」

「そもそも、アルト・テヅカの封じ込めには成功している!! 現に、アルト・テヅカは足りない通常戦力を大量破壊兵器で埋めようとしている!! それだけ厳しいのだよ!! アルト・テヅカも!!」


議会は水掛け論の様相を呈し始めた。

ホワイトハウスでは2人の男が話し合っていた。

一人は、このホワイトハウスの主である大統領。
もう一人は、ロックウィード・マーディン社、代表取締役、会長、レドリアである。

「君の策も見事にかわされたな……アルト・テヅカがあの様な物を用意していたとは……」

大統領の呟きにレドリアは顔色一つ変えず平然と話す。

「ええ、アルト・テヅカを少々侮っていました。まさか、あの様な兵器を設計、開発でき
るとは……彼が開発できるのは戦術機だけかと考えておりましたが……いやはや……中々
非常識な男ですな……彼も」

大統領は渋い顔をする。

「他人事では無いのだぞ? 彼等を追い詰めた結果がこれだ……もし、あの男が本気にな
れば世界にすら勝利する事ができると確信してしまったよ……如何する気だね?」

大統領の質問にレドリアはさも当然に答える。

「まあ、アレだけのスケールの兵器ですしね……」

二人は長い事話し合った。






日本では……

日本帝國国民はこの放送と在都の演説を見て、賛否両論だった。

確かに火星のマーズゼロを叩くには必要かもしれないが、果たして本当に手塚 在都はジ
ェネシスを解体してくれるのだろうか? と言う疑問が沸き起こる。

更に、その威力にも恐怖した。

たった1撃で隕石衝突クラスの虐殺が出来るのだ。
恐怖しない方が可笑しい。

しかし、国民は最後に言った言葉に関心を寄せた。

『他人の書いた筋書きに惑わされてはいけない。自らの内なる神の目で、これから始まる未来を見据えていただきたい』

日本帝國国民の目は覚めつつあった。

それは、Fairy Taleの不信よりも現在の日本帝國の政権に対して向けられた。

国民はようやく国のあり方を国民自らが考える様になった。

そして、気付いた。自分達の血を流さず他人に頼る現政権が果たして妥当でないことに、
そして、軍部の慢心を不満に思い始めた。






ヨーロッパでは……

ヨーロッパ各国の国民はこの内容を聞いて、欧州連合に激怒した。

Fairy Taleがヨーロッパを開放し、それどころか、食料、援助金などの復興支援を行って
くれたその彼等に礼の一述べず、そればかりか、人類の為に月と火星を叩く彼等に兵員の補充を出し渋った欧州連合に失望に似た憤りを抱いた。

それこそ、現政権を揺るがしかねないほどに……

これに慌てた欧州連合は閣議を開いた。

「アルト・テヅカにしてやられたな……まさかこの様な方法で私達に意趣返しをするとは!!」

「全く……アメリカの提案を安易に決めるからこうなる!!」

「問題は国民だけではない!! アルト・テヅカがあの様な兵器を隠し持っていた事が大
問題だ!! これでは援助金を搾り取るだけ搾り取って、兵員補充を制限して、Fairy Tale
を弱体化させる計画が根底から崩れたんだぞ!!」

「そんな事は後で考えればいい!! 今は国民を静める事が重要だぞ!! 此の侭では、EU各国の政権が崩壊しかねない!! それを如何するかが問題だろうが!!」


会議は喧々囂々の中、何も対策案を出せずお開きとなった。





俺達は事務総長と会談していた。

事務総長は始めに口を開いた。

「まさか、作戦をオープンにして世界各国に公表するとは……思い切った事をするものだ」

俺は出されたコーヒーを飲みながら答えた。
ん~~、いい香りだ。

「世界各国政府に対して政治的圧力をかけると共に世界各国の国民には危機感を持っても
らいたい。そう考えての結論ですよ……ジェネシスは出す必要はありませんでしたけど、
此方の手札をオープンにする事で、相手に心理的圧迫をかけると共に、俺達が本気である
事を匂わせる……世界各国は警戒するでしょうが、国民が現政権に疑問を持つように演説
をしましたからその収拾に今頃、各国は躍起になっているでしょう。その隙に月と火星を
叩きます」

事務総長は顎に手をやりながら口を開く。

「私の後をついで事務総長になって欲しいね。君ほどの功績とカリスマ性を兼ね備えた人
物は今の所いないからな……」

俺はその冗談に笑いながら答える。

「お誘いは嬉しいですが、軍人が政治家に鞍替えしていい政治は出来ません。
それに、軍人が政治に口出ししていい結果が出たためしがありませんから……」

俺の元いた世界の大日本帝国がいい例だ。
軍人が政治に口出しするなどおこがましいにも程がある。

俺はそう思いながらコーヒーを飲みながら考える。

世界は変わるだろうか……?

俺がニューヨークで感じた事はニューヨークに住んでいる人々の意識がほんの少しだが変
化したのを感じた。

それは、微々たる変化だが、しかし、はっきりと感じられる変化……

変われるかもしれない……

世界はまだまだ幼い……

俺もエターナも、事務総長も……

だが、世界は変わるだろう……

ベータ大戦終結後、良い方向か悪い方向かは別として……




俺は変革の実感しつつ、世界をベータから救う方法を考え始めた。











[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 27
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/04/09 00:53


地球と月の中間宙域に俺達、Fairy Taleは侵攻していた。
その目的は月の全ハイヴの制圧作戦だ。

『まもなく作戦宙域です』

オペレーターが報告してくる。

作戦はハッキリ言ってしまえば力押し、一個師団を五個大隊に分ける。で、各大隊が高速
展開、高速侵攻、進路上のベータ以外はフル無視、反応炉だけを消滅させる。

兎に角、力押しな作戦だ。

『作戦宙域に到着! 全機発進せよ!! 繰り返す! 全機発進せよ!!』

よし、月の大掃除と行きますか。

各艦から戦術機がカタパルトから順調に吐き出されていく。
いよいよ、俺の番か、久しぶりの実戦だ!!
気合い入れていくぜ!!

『手塚機、発進どうぞ!!』

「了解! 手塚 在都、Hi-νガンダム! 行きます!!」

俺は月の戦場へと飛び立つ。


月の地表は生命の息吹を感じさせない冷たい地表が広がっていた。
そこには、俺が戦場に辿り着くと、ガンブラスターがベータを殲滅していた。
所々、戦艦による砲撃の後が見られる

ガンブラスターの装備はその殆どがビームガトリングガン、ビームバズーカ、メガビーム
バズーカ、ニューハイパーバズーカ、物干し竿、オーバーハングキャノンなど兎に角、重
武装の兵装が装備されていた。

俺は第一大隊に命令を下す。

「各機!! いいか!! 進路上のベータ以外は無視しろ!! 反応炉以外は目もくれるな!!」

『了解!!』

兵達は俺の命令に従い、突撃前衛部隊が爆発物で開けた穴に飛び込む。

暫く飛んでいると、ベータ群がハイヴの壁面を掘り進み、上下左右、ありとあらゆる場所
から現れた。

「来たか……全機!! 進路上のベータを掃討!!」

『了解!!』

俺はビームライフルを乱射し、左マニュピレーターにニューハイパーバズーカを持ち、撃
ち込んでいく。

ガンブラスター部隊も高速で前進しながらビームガトリングやビームバズーカ等を撃ち込
みながら突き進む。

暫く、突き進み、反応炉に辿り着き、反応炉を破壊する。

俺は即座に命令を下す。

「全機!! 反転!! 次のハイヴの掃討戦に移る!!」

『了解!!』

俺は即座に反転を命じ、次のハイヴの攻略戦を開始した。

「トレマー!! 次のハイヴへ艦砲射撃を開始しろ!!」

『了解!! 次のハイヴの掃討戦を開始します!!』

俺はトレマーに命じ、即座に次のハイヴに向かう。
俺達は即座に次のハイヴに目標を変える。

俺達、第一大隊が次の標的に向かう時、総旗艦、フェアリーテールからなる第一艦隊は次
のハイヴに総攻撃を開始していた。

トレマーの声は戦闘ブリッジに響き渡る。

「各艦!! 次の目標に全力砲撃!! いいか!? 補給の事は気にするな!! 基地か
らジャンジャン送られてくる!! ビームもミサイルも砲弾も気にせず撃ちまくれ!!」

「了解!! 撃ちまくります!!」

フリッジ要員もそれに答える。
トレマーの言葉にレイフェルは冗談を飛ばす。

「コイツはいい!! 地上はベータの大群で一杯だ!! 狙いをつける必要すらないや!!」

各艦からビームとミサイル、レールガンの砲撃、砲弾が雨霰と降り注いだ。
ハイヴの地表にいる、数えるのも馬鹿馬鹿しい程のベータ群が轟音と砂煙と共に巻き上げ
られ、焼かれて死んでいく。

「戦術機部隊、戦場に到着まで後20秒!!」

オペレーターがトレマーに報告する。

「よし!! 砲撃止め!! 次のハイヴに移る!!」

「了解!!」


それを5回くらい繰り返す。

今の所、順調だ。
俺達が次のハイヴに侵攻するとベータの死骸と穴が無数に存在していた。
殲滅は完了しているみたいだな……

俺がそう考えていると、警告音がコックピット内に響き渡る。
レーザー感知システムがレーザー級のレーザー照射を感知した。

その1秒後、数本のレーザーが飛んでくる。

「レーザー級の生き残りか!? だが!! その程度ではやられはせんよ!!」

俺はアームレイカーを操作し、レーザーをかわす。

「行け!! フィンファンネル!!」

俺はフィンファンネルを飛ばし、レーザー級を撃破していく。

俺は戦いながら、各ハイヴの戦闘状況を見ていく。
今の所、第二大隊から第五大隊まで問題無く、任務を行えているみたいだ。

俺は再び戦闘に集中した。




エターナサイド

戦闘開始から既に5時間、流石に兵達にも疲れが見え始める。

が……疲れたなどと泣き言を言う兵は我が部隊に一人も存在しない。
アルトと私の日頃の訓練の訓練の成果がここでも現れている。

徹底的に私達は彼らを鍛え上げた。
それこそ、何処の兵にも負けない部隊にする為に、アルトのする事が地球解放に繋がると
信じて……

私は、アルトの為にこの身を捧げた。
それが私の天命と信じて。

私がそう考えていると何かを感じた。

「この感じ……そこ!!」

私は操縦桿を操作し、回避しながら避け切れなかったレーザーはビームシールドで防ぐ。
そして、即座にGバードを構え、狙いを定める。

狙撃モードに切り替わり、ネオサイコミューシステムが展開した。
凄い……!! 訓練以上だ……私の思うがままに機体が着いて来てくれる。
まるで、自分が狙撃をしている感覚を頭にイメージするだけで動いてくれる。
タイムラグすら感じない……

超一流の衛士だけができると言う、機体と衛士が一つになる感覚……
これが……アルトの技術……

「これなら……いける!! そこね!!」

私はスコープ越しに移る敵を撃ち落していく。

ネオサイコミューだからガンコントローラを展開したままでも機体を動かす事が出来る。
つまり、狙撃をしながらレーザーや敵を回避することが出来る。
これは私にとって大きなメリットだ。

私は狙撃を止め、近づいてきたベータ群にビームガン兼用のビームサーベルを引き抜き、
ベータの群れを切り裂いた。
桃色の刃は、敵を切り裂き、死骸だけを月の地にさらした。

「これで!!」

私はビームサーベルをしまい、ビームガンを撃ち込む。

「各機!! 私がハイヴに穴を開ける! その穴から飛び込め!!」

私はGバードを最大出力に切り替え、ハイヴの地表に撃ち込む。
さあ……次を落とすわ!!





武サイド

俺は隊長から第五大隊を預かり、俺が隊長、純夏を副隊長とした、部隊で戦っていた。

出撃から既に10時間が経過した。
いい加減、俺達も疲れてきたが、月を陥落すれば火星攻略の足がかりにすることも出来る。
隊長曰く、ベータは資源を発掘する為に月や火星、地球に侵攻して来ているらしい。

兎に角、今の所、月や火星の資源はまだ余りがあるらしく、ベータは採掘作業を終えてい
ないのが何よりの証拠だ。まだ、余っているのならそれは人類の物だ。断じてベータの物
じゃない。

俺達はいい加減、月の景色に見飽きながらも、ハイヴ攻略を行う。

正直、ゴチャゴチャと狭い月にいるベータを叩きながら突き進む。

「各部隊は全速力で反応炉を目指せ!! 純夏!! 突っ込む!! 援護しろ!!」

『了解!!』

俺はアロンダイトを引き抜き、左から右へ横薙ぎに切り払い、次に上から下へ袈裟懸けに
して切り裂き、近づく敵にパルマフィオキーナを撃ち込む。

純夏はドラグーンを飛ばし、俺の援護を行う。

まだ、先は長そうだ。





クレアサイド

あ~もう!! いい加減飽きてきた!!
同じ面!! 同じ景色!! 同じハイヴ!!
いい加減ウンザリだ!!

私は心で叫びながらスキュラをぶっ放しなした。
勢いよく吹き飛ぶベータを見ながら、ケファーツヴァイとシュラーク、トーデスブロック
を撃ち込む。

「各機!! 適当に進路にいるベータを殲滅しながら最大速度を維持!! 反応炉へまっ
しぐらだよ!!」

『了解!!』

ん~良い返事だ!!

早く終わって、ベッドで眠りたいわ。





レイチェルサイド

私は高速で動きながらツインヴェスバーを展開し乱射し、ビームランチャーとビームライ
フルを構え撃つ。

既に作戦開始から15時間が経過していた。

ようやく、ハイヴやベータも底が見え始めた。

いい加減、辟易していた所だ。
正直、補給、整備を繰り返し、兎に角、反応炉の撃破を最優先で進めたが正直、ベータの
数が多すぎてなかなか反応炉まで辿り着けない。
しかも、単純な作業だけに正直、辟易する。

兵達の疲れも見え始め、少ないながらも小さなミスをするようになった。
私や中隊長、小隊長がそのミスをカバーする為に余計に負担がくる。

しかし、終わりが見えた事で余計に気が緩む危険があるだけに気が抜けない。

「正直、気が抜けないわね……」

私はコックピットでボヤキつつベータを殲滅した。





最後の反応炉を叩き、ようやく、月攻略が完了した。

正直、いい加減全員が疲れていた。
俺も正直疲れた……

それもそうだ、足掛け20時間は戦い続けたのだから……

俺達は交代で休憩を取ったが、ほぼ全員が糸の切れた人形みたいにグッタリしていた。

俺達、隊長は部下に疲れを見せない為、内心はベッドにダイブしたい衝動を押させて、
任務の報告書を作成していた。

こうして、長い月攻略戦はようやく終結した。

後は、ジェネシスの完成を待つばかりだ。



俺は報告書を完成させるとそのままベッドに転がりこんだ。








[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 28
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/04/11 21:23


アメリカ、ニューヨーク、国連本部ビルの事務総長室に2人の男がいた。


一人はこの部屋の主、ロンバルト・ゼンライ国連事務総長、
もう一人は、国連事務次官、珠瀬 玄丞斎だった。


事務総長室は重苦しい静寂に包まれていた。
最初に重苦しい静寂を打ち破ったのは事務総長だった。


「……本気かね? 珠瀬事務次官……本気で言っているのかね? 火星のハイヴが攻略が
完了次第、Fairy Taleの即時解体を行うと言うのは……?」


事務総長の言葉に事務次官は重々しく口を開いた。


「はい……彼等、Fairy Taleの火星攻略をもって、国連軍特務部隊、Fairy Taleの解体を
行います……」


その言葉に事務総長は椅子から立ち上がり机を両掌で叩きながら叫んだ。
室内に机を叩く音が響き渡る。


「君は!! 君達は!! この今の状況が解っているのかね!? 地球にはまだハイヴが
山ほど残っているのだぞ!! 

各国はその具体的な対策を立てれないまま、現在に至っている!! 
それだけじゃない!! オルタネイティヴ計画は何の成果も挙げれないまま、予算を無秩
序に食い潰し、第四計画まで来ている!! 第五計画まで話が持ち上がっている始末だ!! 

彼等、Fairy Taleがいなければ人類は何時滅んでも可笑しくない状況だったんだ!! 
それを彼等が人類の寿命を延ばしたのだ!! それを我々は恩知らずにも彼等を解体しよ
うとしている!! それが世界の、国連の総意であるのなら致し方あるまい!!

だが、彼等を解体した後、地球に残ったハイヴはどうなる!? 

各国や国連が叩くのか!?死者を大量生産するだけだ!! 

各国の利害や君達の恐怖で地球を食い潰すなどあってはならない!! 断じてだ!! 

我々にその様な権利はびた一文、ありはしないのだ!!」


それとは対照的に珠瀬事務次官は静かに言う。


「事務総長……まだ、地球上にハイヴがある内はいいでしょう……しかし、彼等により地球上のハイヴが全て取り除かれた時、彼等、Fairy Taleは果たして今まで通り我々、国連の管理下にいるでしょうか? 答えは限りなく否、でしょう……

人とは一度手に入れた利権を易々と手放す訳がない……我々は彼等をベータ以上の脅威と考えるべきです……たとえ、血が流れようと各国のハイヴはその国が基本的に行うべきなのです。彼等がいるから、各国は自分達から動きはしないでしょう。

誰かがやってくれるではいけないのです。自分達の手で傷つきながらも戦い、勝ち得た物
に意味があるのです。誰かから与えられた物は何れ誰かに取られる。今、Fairy Taleから
与えられた力を各国はまるで自分達が開発した物の様に振る舞い、その癖、自分達からは
動こうとはしない。これでは、何れ、世界は窒息してしまう。

だからこそ、我々はFairy Taleを解体するのです。

世界はもう気付いても良い頃でしょう……自分達は与えられた勝利の上に今を生きている
事を……そして、自分達、自ら動くべきだと……」


事務総長は叫んだ。
いや、叫ばずにはいられなかった。


「今はベータを叩く事が最優先事項だろうに!! 
それを飛ばして、人類のあり方を論ずるなど!! 我々は自分達がどうにもならないからこそFairy Taleの力を今まで散々借りてきて、不要になれば即解体では我々はとんだ恥知らずだぞ!! 

その様な破廉恥極まりない行為を国連は行おうとしている!! 解っているのか!?」


珠瀬事務次官は涙を流しながら叫んだ。


「解っております!! その様なこと!! 
自分が一番!! ですが!! 我々、人類は変わらなければならない!! 
今の世界は各国が利権に群がり!! それを食い散らかし!! 受けた恩を忘れ!! 
政治家は自分達の権利を装飾品の様に見せびらかし!! 
軍部は手柄を吹聴し、国民を守る事を忘れ!! 
国民は無関心を決め込み、現実を見ようとせず!! 
我々人類は貴方の言う様に、地球を食い潰している!! 
それを変える為!! その悪しき流れを断ち切るには、これしか無いのです……もう、こ
れしか……」



「珠瀬……お前……」



暫く、珠瀬事務次官の嗚咽が室内に響いた。




横浜基地では……


香月夕呼はコーヒーを飲みながら現在の世界の流れについて考えていた。


(Fairy Taleが解体されようとしている……鎧衣の情報だからこれは確かだ……
国連は自分達自らの生み出した物を恐れて、それを消し去ろうとしている……


珠瀬事務次官は最後まで反対したがその甲斐も無く、解体は決定したみたいね……
そして、珠瀬事務次官は各国の意識改革の為と納得させられた……
いや……納得せざるおえなかった……


彼らが素直に解体に応じれば良し、それを拒めば世界の敵となる……
ハッキリ言って、保身しか考えていない様なヤツ等が頭の世界じゃあ、億に一つも勝率は
ありはしないだろう……


いい様に蹴散らされるのがオチだ。
アメリカもFairy Taleの抑圧から解放され、今まで以上に好き勝手やらかすだろう。
それを止める力は国連には無い。


国連唯一の武力で世界最強のFairy Taleが無くなれば、それはアメリカ独走とアメリカの
国連の傀儡化を意味する。


それを解らないほど馬鹿でも無いがFairy Taleが余程怖いらしい……)



香月博士は温くなったコーヒーを不味そうに呷りながら溜息と共に呟く。



「手塚 在都がそこまで穏やかな性格でもないでしょうね……あの聡い男が座して解体さ
れる訳ないと思うけど……どうなるか見ものだわ……」






日本では……


とある料亭で2人の男が卓を囲み、深刻そうに話していた。


「外務大臣……それは、本当ですか? 本当にFairy Taleは解体されるのでしょうか……」


深刻そうに彩峰 萩閣少将が向かいの男に質問した。
榊 是親外務大臣もまた深刻に頷きながら答えた。


「ああ……これは極秘事項だが確かだ……国連はFairy Taleを火星攻略完了と同時に
Fairy Tale解体を宣言するそうだ……」


彩峰少将は愕然としながら呟いた。


「まさか……国連が斯様な破廉恥極まりない事をするとは……政府の反応は?」


榊外相は鎮痛な顔で言葉を絞る。


「幸いだと内心小躍りしているよ……あの連中は……自分達の保身しか考えていない……

此の侭では何れハイヴ攻略も我が国独自で行わなければならんというのに……

何処までも目出度い連中だよ……」


彩峰少将は意を決して口を開いた。


「榊さん……貴方をここに呼んだのは他でもない……次の総裁戦に出馬して欲しい……」


それを聞いた、榊外相はやはりと思いながらこう言う。


「やはり……ですか……若手や一部議員からも出馬を内々に打診されました……
政党の中にもあの内閣に危機感を抱いている者も大勢いる……貴方に言われて決心がつき
ました……」


「では……」


「私で良ければ立ちましょう……この国の為に……」


二人は暫く話し合った。





世界は御伽話の力を封じ込めようとしていた……

自身のカルマに気付く事無く……


また、それに気付き行動を起こす者、見てみぬふりをする者、様々な様相を見せながら
世界は動き出す。


御伽話を読まないままに……







[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 29
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/04/15 22:00



俺とエターナは総旗艦フェアリーテールの隊長室で事務総長と通信回線で話をしていた。

「……それは本当なのですか? 事務総長……!?」


エターナは無表情で事務総長に質問した。
正直、エターナがマジで怖い。
今すぐに逃げ出したいくらいだ。


事務総長は肩を落とし、すまなそうに言う。

『ああ、国連安保理が秘密裏に君達、Fairy Taleを解体することが決まった……
正直、ここまで事態が深刻になっている事を気付けなかった私の落ち度だ……
……すまない……』


エターナは感情を爆発させながらキレた……

机を思いっきり叩き、怒鳴りつけた。


「何ですか!? それは!? ふざけているのですか!? 何故です!? 何故、私達を
解体するなどと!? 各国は正気ですか!? 現在、ハイヴが地球上に山ほど残っている
のですよ!? それを各国は私達抜きで戦う積もりですか!? 死者を大量生産するおつ
もりですか!?」


事務総長も叫ぶ様に言う。


『私とてそれが解らない訳でもなければ、私が君達の解体を望むわけが無かろう!!
しかし、国連安保理は極秘裏に君達を解体し、君達の保有する兵器群や技術を欲してい
る!! 私とて抵抗はした!! だが、各国はこれ以上君達が力を持つ事を恐れているの
だよ!! それに各国の政府は自分達さえ良ければそれで良いと思っているのだよ!!」


俺はエターナと事務総長の会話に割り込んで質問する。


「解体の理由は? まさか、自分達の保身と精神的安定の為に解体したとは言えんでしょ
う。なら、解体するだけの確たる理由がいる。それも明確で私達を解体するに足る理由が
……地球の現状はハイヴが山ほどあり、各国、特にソ連や統一中華、中東は納得しますま
い。私達を使い潰してから解体したいはずだ。それなのに、この時期で解体を行うと言う
事は、アメリカとそれに群がるハエ共と欧州連合、それと……自国にハイヴを抱えながら
もそこそこ防衛や攻略が可能な日本帝國この辺りの政府首脳が私達の解体をしたいと考え
ている……私達を解体する表向きの解体理由は? その解体理由の正当性が無いと私達、
Fairy Taleは兎も角、各国の国民、特にソ連や統一中華、中東の国民は納得しないでしょ
う」


俺の言葉にエターナが叫びながら質問する。


「そうです!! 解体理由は何ですか!? どの様な理由で私達を解体する気です
か!?」


事務総長は頭を抱えながら言う。


『君の言う様に裏の理由は話した通りだ。表の理由は、『手塚 在都は国でも無いのに軍事
力を個人で保有する事は認められない。軍隊とは、国際法上交戦権を有する存在で、責任
ある指揮者の指揮のもとに、遠方から識別しうる標識を有し、公然と武器を携行し、戦争
法規を遵守するもので、軍隊は国家や国連によって管理されるべきである。
しかし、手塚 在都はそれを個人で行っている。国連軍に属しているとは言え、国連の指
揮命令系統を逸脱する事甚だしい。そこで解体を行い、部隊を再編成し、常任理事国の管
理下におく』らしい……』


俺は半分呆れた……

今まで散々独立行動を許しておいて、今更かよ……

つまり、何か? 

解体を行い、常任理事国の飼い犬として再編成するのか? 

飼い犬ならば俺達の保有する兵器や技術を奪い取る事も出来るってか?

俺達が武装蜂起する事は考えていないのかね?

ま、そんな事する気は無いが……

人間と戦う事ほどめんどくさい事は無い。

まあ、向かって来るなら徹底的に殲滅するがな……

だが、俺の敵はあくまでベータだ。

それ以外に興味は無い。

ここまでプロセスをすっ飛ばすのも考え物だ……


俺は呆れながら言う。

「もう少し、オブラートに包めないのかね? 表向きの理由の中に本音が混じっている……」


エターナも呆れながら言う。


「正気ですか? 何考えているのです? この理由を考えた人は……」


事務総長は更に深刻そうに言う。


『表向きの理由でソ連と統一中華、オーストラリアを釣る狙いがある……らしい……
馬鹿馬鹿しすぎて笑えてくる……多分、軍産複合体が君達の技術を欲しているのと、国民
をそれで騙し、君達を管理し、使い潰したい狙いがある。いくら君達が恐ろしくとも君達
抜きでは地球上のハイヴは掃討出来ないからな……』


あのハエ共……まともな事をしろよ……

兵器など作って売るから馬鹿になる……

俺みたいに食料品や衣類などの販売をしろよ……

馬鹿みたいに売れたぞ……

それは兎も角、俺達に首輪と縄を余程つけたいらしい……

俺は呆れながら言う。

「私達は猛獣ですか? やれやれ、どうやら世界は俺達を国連動物園の猛獣の檻に余程入
れたいらしい……

まあ、下らん愚痴はこれ位にして、各国が俺達を自分達の監視下に置き、いい様に使い潰
す事は解りました。しかし、私が独立特務部隊に拘る理由は存じているでしょう? 各国
の利害や命令系統、下らないイザコザに時間を割く事無く軍を派兵し、ベータと奴等の巣
たるハイヴを速やかに蹂躙し殲滅する事が目的です。安保理が管理したら下らない事に時
間と動力を割き、貴重な人材と資源と時間を無駄にする。だからこその独立特務部隊です。
それに私は彼等の下らないことの為に戦う気はありませんよ。
こうなれば……此方から解散しましょう。いっその事」


俺の言葉にエターナと事務総長が驚く。


エターナは俺を問いただす。


「正気ですか!? 今の各国ではハイヴ攻略すら間々成らないのに!?」


事務総長も質問する。


『本気かね!? 君達が解体されたら地球上のハイヴ攻略困難になるぞ!?』


俺は彼らを落ち着かせるように言う。


「落ち着いてください。事務総長。君もだエターナ、話は最後まで聞いてくれ。
解体と言っても偽装です。各国や国連が解体を宣言する前に自分達から解体を宣言します。
それを世界に大々的に喧伝、その経緯などを交えながら説明、世界が混乱している隙に、
私達は雲隠れします。隠れる先はとりあえず、月の裏側などですかね。ジェネシスの資材
搬入の中に基地機能を積み込み、搬入します。ジェネシスは完成していますが、偽の情報
を流し、各国を騙します。基地機能が移転完了しだいジェネシスを発射、即、地球に反転、
解体宣言を行います。混乱の収拾は事務総長、お願いできますか?」


事務総長は苦笑交じりに答える。


『良かろう。引き受けた。混乱の収拾は此方が面倒を見る。
その代わり、盛大に世界を混乱させてくれ……常任理事国が泣き叫ぶ位に……』


俺はニヤリとしながら言う。


「勿論、そのつもりです。派手に混乱させてやりますよ」


俺達は暫く通信で詳細を詰めた。




通信での会談が終わり、エターナが隊長室に備え付けてある簡易キッチンから出てきた。
その手にはコーヒーカップとティーカップが持たれていた。


「有難う」

「いえ」


俺はそれを受け取り、ソファーに座る。
オッサンの技術で部屋には重力制御装置がついていた。
フワフワ浮くのは通路とブリッジ位だ。

俺はコーヒーを飲みながら呟く。

「やれやれ……まさか、逃亡計画を立案する羽目になるとは……」


勝っているのにな……
今なら逃亡するジオンの兵達の気持ちが何となく理解できる。

いや……負けている訳では無いから向こうよりは気は楽だが……

エターナは俺の隣に座り、ティーカップの中にある紅茶を見つめながら呟く。


「私達……とうとう逃亡者になってしまいましたね……
私達は唯、ベータと戦い、それを倒す事だけしか考えていないのに……
世界は私達を唯、力しか見ず、私達を恐れている。
国民は、私達を御伽話のヒーローの様に見てくれていますけど……
でも……国は私達を恐れている……
排除する為なら形振りすら構わないと言わんばかりに……」


俺はコーヒーカップをテーブルに置きながらソファーの背もたれにその身を預け、天を仰
ぎながら呟く。


「すまない……エターナ……今更だけど、こんな事に巻き込んでしまって……
俺はいい……ベータさえ殲滅できればどんな事でも耐えれる……でも君達は……俺に巻き
込まれた……特に君は……俺が自分の目的の為に巻き込み、好き勝手連れまわした……
……本当に今更だけど、すまない……」


エターナは俺の言葉に微笑みで返しながら俺の手を握った。
その手は暖かく、優しかった。


「何言ってるんですか? 貴方らしくない……確かに私には選択肢は限られていたかもし
れません……でも私は限られた選択肢の中から最善を選び、今こうして貴方の側にいる……
私は自分の選択肢が間違いでは無かった。いいえ、最高の選択をしたと思っているのです
よ? それもこんな状況でも胸を張って、誇りを持って言えるのです。貴方がそれを否定
しないでください。もし、挫けそうなら私に甘えて下さい……私は貴方が立ち直るまで守
りますから……立ち直ったら、何時もみたいに不適に笑いながら皆にその背を見せてくだ
さい。私達はその背についていきますから……何処までも……」

俺はその手を握りなおし呟く。


「有難う……」





御伽話は道を選ぶときが来た……


その選択肢に、世界はどの様な回答をするのか解らない……


唯、いえる事は御伽話の本は世界から離れ様としている事だけだった……


世界は悪夢の残る中、御伽話を手放し眠る事が出来るのだろうか……


その答えはまだ、誰も知らない……







[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 30
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/04/22 02:08

とりあえずジェネシスの配備が完了、いよいよ発射するだけになった。


基地機能は移転しない事にした。
その明確な理由は各国が俺達の基地を今だ特定できていない為、態々、兵器から資材まで
宙へ上げてまでする必要が無い。それならいっそ基地に引きこもる方がバレる心配が無い。


兎に角、偽装解体の準備は完了した。

後は解体宣言を出すだけになった。


俺は暫くジェネシスをフェアリーテールの環境から眺めながら思う。


火星攻略が完了すれば後は地球だけだ。
はたして世界は俺等Fairy Taleが雲隠れした後、一体何処までやれるのだろうか?
と……


正直、今の世界にハイヴ攻略を行う戦力はあってもそれを行う事を許可する人間がいない。
これは大きな問題だ……


「ジェネシス発射、カウントダウン開始!!」


オペレーターの声により現実に引き戻された。
いよいよか……


「3、2、1、0!! 発射!!」


ジェネシスはそのミラーに無数の光りを集約し、大きな光りとなって突き進む。
その目も眩む様な光りは火星オリジナルハイヴ、マーズゼロへと突き刺さる。


俺はその様子を飛ばした衛星のライブカメラを見ていた。
そこにはベータが水風船の様に膨れ上がり、破裂していく。
それは正に地獄絵図と呼ぶに相応しい光景だった。


「マーズゼロの重頭脳級の反応消滅!! 成功です!!」


オペレーターの声にブリッジは暫く静寂に包まれた後、歓声が沸き起こる。


「やった~~~~!! 俺達、ついにやったんだ!!」


「見たか!! ベータ!! これが人類の底力だ!!」


「ベータのケツにファックしてやったぜ!!」


「人類は俺達は……ここまで来たんだ!! 故郷の死んだ母ちゃんようやく報告できる!!」


「バカ!! 泣くヤツがあるか!!」


「お前だって泣いてるじゃないか!!」


俺はその様子を眺めながら微笑んだ。

地球はホンの少しだが、安全になった。


「隊長!! やりましたね!!」


艦長は嬉しそうにそう言いながら握手を求めた。


「ああ、人類はまた大きな一歩を踏み出した。だが、これからだ……人類が本当に大変な
のは……お前達には辛い思いを暫くさせる。すまない……」


俺がそう言うと、艦長は笑いながらこう言う。


「ソイツは言わんでください。自分達が好きで選んだ道です。俺達は貴方に着いていきますよ」


俺は艦長の言葉に救われる思いがした。


「有難う……また俺と共に戦ってくれ……」


「勿論、そのつもりです」


お互い握手を交わしながら健闘とこれからの未来を考えながら祝った。

俺は即座に緩んだ空気を締め直した。


「諸君! まだハイヴは山ほど残っている! 油断せずにいこう」


『了解!!』


ブリッジ要員は真剣な顔になりながら敬礼した。


俺は各艦隊に通信を行う。


「諸君! これでまた、地球の脅威が一つ無くなった! だが!! 地球にはハイヴとベ
ータが山ほどいる事を忘れてはならない!! 我々の本当の意味での解体は地球のベータ
が一掃された時である!! 諸君!! どうか!! どうかそれまで私に力を貸して欲し
い!! 私と諸君等の力で地球圏のベータを一掃しようではないか!!」


俺がそう言った後、通信越しから歓声が響き渡る。


「各部隊!! ジェネシス第2射後、火星に降下!! 残っているベータを駆逐しろ!!」


『了解!!』


火星掃討作戦は第二段階を迎えた。


カタパルトにHi-νガンダムが乗せられる。

Hi-νの足の部分が固定される。

『カタパルトオンライン!! 手塚機! 発進、どうぞ!!』

オペレーターから発進許可が下りた。
いくか……

「手塚 在都! Hi-νガンダム! 行きます!!」

俺は火星の宙域に舞い上がる。
俺は部隊と編隊を組み、火星に殺到した。


火星の赤茶けた土が見える。
そこに生命の息吹は無く、デコボコした岩肌と破裂したベータの死骸が転がっていた。

俺は即座にハイヴ殲滅を命じた。

「各部隊に通達!! ハイヴの反応炉を破壊しろ!! それ以外は無視だ!!」

『了解!!』

兵士達は俺の命令に答えながら進路上にいるベータをなぎ払いながら突き進む。

俺はハイパー・メガ・バズーカ・ランチャーを撃ち込み、シャフトとドリフトに穴を開ける。

その穴に入り込み反応炉を破壊する。

火星地表のベータどころか地中のベータすら死滅していた。
反応炉は奇跡的に残っているがベータのいないハイヴは攻略が楽だ。


こうして、火星のハイヴは全て攻略が完了した。
殆どのベータが死滅していたのだ。空き城を強襲する様なものだ。
楽勝過ぎる。


俺は即座に地球に反転を命じた。

後は解体宣言だけだ……





俺は即座に地球にトンボ帰りして、部隊の兵員の履歴やデータの改ざん作業に移った。

それを1日で行い、次に俺とエターナはアメリカ、ニューヨークにある国連本部にやって来た。

俺達は事務総長に会う。

お互い、挨拶もソコソコに本題に入る。

事務総長は最終確認の為に質問してきた。

「本当にいいのだな? 今日の国連総会で君達の偽装とは言え解体を宣言するぞ」

俺はニヤリとしながら言う。

「ええ、これで世界は変わります。いい方向か悪い方向かは別として」

事務総長は溜息を吐きながら言う。

「解った。後は任せろ。好きにやりたまえ」

「了解」

俺は敬礼をしながら言う。

さあ……始まりの終わりを、終わりの始まりを宣言しよう。

御伽話の第1章は終わりだ。

第2章の始まりだ。




俺は暫く総会が行われる会場の椅子に座りながら出番を待つ。

事務総長がこう言った。

「さて、最後に、Fairy Taleから重大な発表がある」

その言葉を合図に俺とエターナが立ち上がり、壇上に立つ。

その瞬間、世界中の報道機関のカメラが俺達に向けられる。

俺達は壇上まで歩み寄り、マイクのある中央まで俺が上がる。
俺は1拍置いてから口を開いた。

「お集まりの各国代表諸氏に申し上げる。本日をもって国連事務総長直轄特務部隊、Fairy Taleの解体を宣言する」

俺がそう言った瞬間、総会の会場は静寂に包まれる。

その数秒後、怒号の様な悲鳴の様な判別できない叫びが会場中を包んだ。

俺は両手を水平に挙げ、落ち着く様さとした。
そして、俺はその理由を説明する為に口を開いた。

「何故、この時期に解体を宣言するその理由は、常任理事国が秘密裏に解体を行おうとし
ていた。しかも、我々Fairy Taleや各国に何の説明も無しにである。
しかも、常任理事国は我々Fairy Taleを解体後、再び秘密裏に再編成を行うつもりでいた!
これは明らかに常任理事国が我々Fairy Taleを抱え込み、自分達の意のままに武力を保有
し、各国を力で押さえ込み、自分達の国の繁栄の為に我々の武力を外交的恫喝に使う事は
明らかである!!
この状況に我々Fairy Taleは自分達がベータ殲滅の為の力でなく、常任理事国の一部の国
家の為に使われる状況を憂い、ここにガンダムを含む我々が保有する兵器群の全てを無期
限で封印し、Fairy Taleの独立指揮権を事務総長にお返しし、完全なる解体をここに宣言
申し上げる!!」

俺は言うだけ言ってエターナを伴い、会場を後にした。

扉を開き、出て行く時に怒号がアチラコチラから響いていた。





俺は即座に総旗艦、フェアリーテールに乗り込み、太平洋上に出た。

暫く、海の上を進んでいると米太平洋艦隊が俺達の進路上を塞いでいた。

「何だ? コイツ等? どういうんだ?」

俺はそんな疑問を口にした時、米太平洋艦隊から通信が入る。

『Fairy Taleに通達する。直ちに停船されたし。繰り返す、直ちに停船されたし。貴官等
は既に国連軍にあらず。個人で武力を保有する事は認められない。直ちに停船し、武装解
除後、我々の指示に従ってもらう。逆らうというなら此方は貴官等を攻撃する権限が与え
られている』

ほう~……アメリカが実力行使に乗り出したか……

「隊長、いかが致しましょう?」

艦長が俺に質問してきた。

「俺が出て叩く。どうせ、このままダンマリを決め込んでも攻撃はしてくるからな」

俺がそう言った時、エターナが問いかける。

「私も行きましょうか?」

俺は即座に命令を下した。

「ああ、エターナは艦の護衛を頼む。太平洋艦隊の相手は俺がする」

エターナはその命令に異議を挟む。

「危険では?」

俺はそれを首を振りながら柔らかく否定する。

「安心しろ、俺があの程度で落とされはしない」

エターナは不満そうに不承不承に答えた。

「……解りました」


俺達は即座に戦術機デッキに向かった。






一方、米太平洋艦隊では……

旗艦アイオワのCIC室に司令長官と艦長がいた。

「しかし、とんでもない任務ですな……我々米太平洋艦隊全軍でFairy Taleの総旗艦の拿
捕と武装解除、それが困難な場合は撃沈しろなどと……」

艦長の言葉に司令長官が鼻で笑いながら言う。

「フン、いかにFairy Taleとアルト・テヅカが精強とは言え高が1艦と2機の戦術機、高が知れる」

その司令長官の言葉に艦長は反論する。

「しかし、相手はハイヴをたった1機で陥落させた、あのアルト・テヅカ……正直、我々
で抑えられるかどうか……」

艦長の言葉に司令長官は更に鼻で笑う。

「高々、フェイズ2のハイヴだろうに、我々太平洋艦隊が本気を出せば軽く殲滅できるよ。
それよりも艦長、弱気になるのは良くない。兵の指揮にかかわる。それにガンダムなど国
連が作り上げたプロパガンダに過ぎんよ」

気の無い返事で返した艦長だったが、正直、横浜での戦いを見たことのある彼からしたら、
この新しく着任した司令長官は彼等の強さを解っていないと思った。

(これだから、アナポリス出の坊ちゃんは……自分の出世の事しか考えていない……正直、
負ける……後はどれだけ被害を抑えられるかが私の任務になりそうだ……)

この命令とて上の下らない命令だろう事は艦長も理解していた。
職業軍人である以上、上からの命令は聞かねば成らない……
それがどんなに馬鹿馬鹿しい命令でもだ……

その時だった……Hi-νガンダムが旗艦から押し出されたのは……

「ガンダムが発進しました!!」

オペレーターがそう叫ぶと司令長官はニヤリといやらしい笑みを浮かべた。

「フン、たった1機で挑んでくるか。無謀と勇猛を履き違えた馬鹿な猿を調教してやる」

司令長官は命令を下す。

この時、彼等は知る由もなかった……
これが自分達の崩壊の序曲であり、『国連の白い悪魔』の由来をその身と命で理解する羽目になるのは……







俺は距離を詰めると戦術機母艦から戦術機が一斉に飛び出してきた。
部隊編制はラプターにビームライフルを持たせたのが多数か……

面白い……

「見せて貰おうか……世界最強の艦隊の実力とやらを……」

俺は某大佐の言葉を呟きながらアームレイカーを操作する。

Hi-νガンダムは速度を上げながらラプターとの距離を詰める。
いくら飛行ユニットを装備していても所詮はラプター、Hi-νの速度に反応できないだろう。

俺はHi-νのビームライフルで戦闘のラプターのコックピットを撃ち抜く。

ビームは先頭のラプターを貫くだけにとどまらず、後ろにいたラプターも貫通し、横にいたラプターはビームが霞めただけで装甲が溶解した。

たった1発で3機が撃破、これに慌てた戦術機部隊は慌てて散開するが遅い。

俺はビームライフルを連射し、ラプターを沈めていく。

「遅い!! そんな動きで!!」

俺はアームレイカーを操作し、ラプターを沈めていく。
その時、近づいてきたラプターがナイフを引き抜き切りかかってくる。

俺はそれを左にかわし、シールドをスライドさせ逆さにし、左マニュピレーターでビームサーベルを引き抜き、刃を展開し、左からすれ違い様にラプターの胴を切り裂いた。

ラプターは真っ二つになり爆散した。

「まだまだ!!」

俺はそう叫びながらビームライフルを乱射する。

戦場は正にワンサイドゲームの様相を呈し始めた。






これに慌てたのはアメリカ軍だった。

通信から悲鳴しか聞こえてこない。

『此方、アルファ大隊!! HQ!! 直ちに救援を要請する!! このまま……ぎゃああ
あああああああああああ!!』

『来るな!! 来るな!! 来るな!!くるなあああああああああああ!!』

『速い!? 目でおいきれ……ぐがああああああ!!』

『ママ!! ママ!! ママ!! ぎゃあああああああああああああ!!』

『死にたくない!! 死にたくない!! 死にたくないよ!!』

『チキュショ!!!! 支援はまだか!? 部隊の半数が撃破!! 部隊は壊滅状態!!』

『あは、アハハハハハハハはハハ……』

最早、戦術機部隊からの通信は地獄の責め苦を受けた様な返答しか来なかった。

「な、なんだ!? この有様は!! 戦術機部隊は何をやっている!! 相手は高々1機なんだぞ!!」

司令長官は悲鳴にも似た怒鳴り声で戦術機部隊をなじる。

正直、戦術機部隊に落ち度は無い。
相手が化け物なだけだ……

艦長はそう思いながら口を開いた。

「司令長官、ここは撤退すべきです!! 此の侭では戦術機部隊は全滅します!!」

司令長官は怒鳴り返す。

「撤退だと!? ふざけるな!! 我が合衆国太平洋艦隊が、高が日本人の猿真似に負け
たと世界中の笑いものにしたいのか!?」

艦長は尚も進言しようと口を開こうとした時、オペレーターが叫んだ。

「戦術機部隊全機、シグナルロスト!!」

それを聞いた、司令長官は後ずさりながら叫ぶ。

「たった1機に!! たった1機に太平洋艦隊の戦術機部隊が壊滅だと!? しかも3分
で!? ふざけるな!! よく確認しろ!!」

その時だった、別のオペレータが叫ぶ。

「ガンダム!! 今度は各艦艇に攻撃を開始!!」

「何だと!?」

CICのカメラにはHi-νガンダムのビームライフルを喰らって戦艦が真っ二つに折れて轟
沈する映像が映し出されていた。

そのオペレーターの報告に艦長が叫ぶ。

「いかん!! 此の侭では全滅する!! 司令長官!! 直ちに降伏信号を!!」

その艦長の具申に司令長官は叫ぶ。

「ふざけるな!! 降伏などできるか!!」

「しかし!?」

艦長が司令官に噛み付こうとした時だった。

「敵機直上!!」

悲鳴にも似た、いや実際悲鳴だろう声でオペレーターが報告した。

その瞬間、CICは一瞬全ての電源が落ちた後、強烈な振動に見舞われた。

電力は回復したが、艦が傾くのを感じた。
艦長は即座に命令を下す。

「ダメージコントロール!!」

その指示にオペレーターが叫ぶ。

「1番から2番砲等消滅!! 艦底部から浸水!! 浸水収まりません!! もって後、2分です!!」

艦長は歯を食い縛り命令を下す。

「総員退艦!! 急げ!!」






エターナサイド

その様子を見ていた私はある意味彼等に同情した。

(アルトと戦うには正直、力不足も甚だしいですね……)

それもそうだろう……
方や世界最強の機体と世界最強の衛士で百戦錬磨の部隊を預かり、ハイヴすら攻略が出来る男、
方や、自国に引きこもり、自分達より強い者と戦った事が無い、経験値の少ない艦隊……

その差は歴然だ。

そう考えた時、艦長から通信が入る。

『副隊長、正直、アメリカ軍が哀れでなりません……あの隊長を正面から戦うなど……
自殺行為です……国の命とは言え、いらぬ犠牲をするなど……』

私はそれに答える。

「仕方がありません……私達とてここで捕まる訳にも、まして、死んであげる訳にもいかないでしょう?」

『そうですな……』

私の言葉に艦長は押し黙り、会話はそこで途切れた。






アメリカ太平洋艦隊消滅の報は世界中を駆け巡った。
その壊滅した理由も一緒に……

アメリカ政府は世界から非難されるが、その事実は無いと突っぱね否定し、ひた隠した。

しかし、アメリカだけ攻められるほど世界各国、特に常任理事国は余裕が無かった。

特にヨーロッパでは在都の演説により政治集会が暴動と化し、現政権は崩壊寸前、いや崩
壊半歩手前で踏みとどまっていた。

統一中華は暴動を鎮圧する為に軍を派遣し、死傷者を出す騒ぎになった。

ソ連さへ暴動がおき軍や治安警察と市民が衝突、死傷者を出す騒ぎとなった。

日本は抗議デモ隊が警察機動隊と衝突し、怪我人をだした。
政府は事態の収拾を図る為に将軍の声明を出した為、死者はでず何とか沈静化したが、内
閣への支持率は絶望的となった。

アメリカでも抗議デモが議事堂やホワイトハウスにまで押し寄せた。
現政権は警官隊を派遣、制圧したが支持率はアメリカ史上最悪の物となった。

常任理事国、現政権は崩壊へとその歯車が動き出した。





世界は生みの苦しみを味わいながらも変革へと動き始める。


御伽話は第二章へと頁は開かれる……








[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 31
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/04/22 02:08

世界に激震が走った。

Fairy Taleの解体が世界を大きく揺らしたのだ。

この状況で世界はどう動くのか解らなくなった。





アメリカでは……

アメリカ国防総省……

アメリカの軍事、国防を司り、アメリカ5軍の内、アメリカ陸、海、宇宙、海兵の4軍を傘下に収める。

その本庁舎たる通称ペンタゴンと呼ばれる五角形の建物で、同国の官庁中、最大の規模を
誇っている。
この事からでもアメリカがいかに国防と言う事柄に力を注いでいるかが見て取れる。

その超大国の国防の本拠地の五角形の建物に、アメリカの5軍の内、陸、海、宇宙、海兵
の長達と彼等のボスたる国防省長官、各危機管理部の部長が机を囲み、話し合っていた。
正直、彼等の顔は晴れていない。むしろ最悪に近い。

最初に口を開いたのは国防省長官だった。

「さて、今回、集まってもらったのは他でもない……我が合衆国海軍の太平洋艦隊がFairy
Taleと交戦、アルト・テヅカの駆る、Hi-νガンダムにより撃破、壊滅した事についてだ
……正直、太平洋艦隊再建までどんなに急いでも半年は掛かる。我が合衆国の生産能力を
フルで使ってもだ。更に問題は物では無く、人、人的資源だ。これを如何するか、現在、
戦況は大きく分けて、中東、ソ連、アジアの三局面になっている今、我々アメリカが太平
洋艦隊を失った事は半分以下の活動能力にまで削られた事を意味する。
更に、Fairy Taleが解体されたことにより、ベータ大戦の戦後は益々遠のいた。今ある12
のハイヴをいかに攻略するかも考えなければならない」

海軍最高総司令官は口を開いた。

「此の侭では、太平洋、アジア地域での作戦は出来ない! 大西洋からの侵攻も考えたが
戦場はアジアとソ連だ。我々は此の侭では太平洋は丸裸だ!! ベータがシベリア経由でアラスカまで侵攻してきた時、現在の戦力では海軍はこれを防ぐ事は出来ない!!
速やかなる太平洋艦隊の再建を打診する!!」

陸軍最高司令官も口を開いた。

「海軍だけではない!! 陸軍もだ!! NATOのヨーロッパでの作戦で失われた戦力が
まだ癒えていない!! その様な状況でヨーロッパの兵をアラスカ防衛の為には割けな
い!! ヨーロッパの兵を引き上げたら中東のハイヴからのベータ群からの防衛が手薄に
なってしまう!! ヨーロッパは復興や減った兵員数を回復しきれていない!! 幾ら
Fairy Taleから最新鋭技術を貰ったとしても、それを扱う人間が少ない現状でヨーロッパ
を放置できんよ!!」

宇宙軍最高総司令官も吼えた。

「我々、宇宙軍とて降下部隊の被害が甚大なんだ!! 80%は回復したとは言え、これ以
上の戦線拡大は各部隊との連携が無いと無理だ!!」

海兵隊最高司令官は憮然と口を開いた。

「陸、海、宇宙軍だけでない。我々、海兵隊も危機的状況だ。ヨーロッパの上陸作戦で兵
員が損耗している。これは明らかに戦略の大きな見直しをすべきではないだろうか?」


会議は紛糾した。

結局、長時間の会議で決まった事は、太平洋艦隊の早期再建と戦線縮小、NATO軍の縮小、
兵員の早期補充が決まった。






統一中華では……

中華民国と中華人民共和国の代表が集まり、会議を開いていた。

「不味いぞ!! Fairy Taleが解体されては我々統一中華はハイヴ攻略を行えない!! 
此の侭ではハイヴを減らすばかりか増やす可能性も出てきた!!」

そう口を一人が開くと、軍部からは避難が飛ぶ。

「政府は何をやっている!! アメリカのいい様に踊らされた挙句、Fairy Taleを解体に追い込むなど!!」

軍部が避難すると政府も反論した。

「軍部こそ何をやっている!! 自国の防衛すら出来ない状況で政治に口出しなど!!」

正直、ドッチモドッチである。

政治家は自分達の既得権益を得る為に企業や地方豪族から賄賂を貰い、政治をしていた。
軍部は軍部で軍事産業や豪商から賄賂を貰い兵器を横流ししたり、販売したり、労働者や
組合に圧力をかけたりしていた。
ここにいる殆どの人間が賄賂漬けである。
綺麗な人間を探す方が難しい。

そんな人間が支配しているのが統一中華である。
国の貧富の差はそれこそ地中と成層圏ほどの開きがある。
貧乏な者は田畑を売り、男は軍隊に取られ、女は軍人になるか労働者として死ぬまで重労
働させられるか、人買いに売られ女郎に落ちるかしかなかった。

一方、この会議に参加している連中は、美味い天然食材を飽きるまで口にし、美味い酒を飲み、博打に国民から搾り取った税金をばら撒き、その金で女を買い抱いた。

この絶望的な貧富の差に銜え、ベータ大戦で領土を失った統一中華の国民はFairy Taleに
大きな期待を抱いていた。

『何時か、ベータとハイヴを駆逐し、我々を解放してくれる』

と言う期待を……
しかも、Fairy Taleから援助金や食料、医薬品、日用品の援助を受けていた事もあり、Fairy
Taleは彼等にとって救世主だった。
しかし、政府はそれを秘密裏に、自分達の物にしていた事も明るみに出た。

それを、現政権が自分達の利権欲しさにFairy Taleを解体したと知った国民は烈火の如く
怒り狂い、先の暴動に繋がったのだ。

今、この国を支えていたのは労働者と中級と下級の官僚と政治家、知識人が死ぬ気で支えていた。

それを理解していない彼等は如何にして自分達の既得権益を守るかをこの会議で話し合った。






ヨーロッパでは……

フランス、パリ、復興しようやく美しいパリの景観が戻りつつあるこの都市で市民が集ま
っていた。

「諸君!! 我々の美しいパリは蘇りつつある。しかし!! このパリを奪還したのは我が国ではない!! Fairy Taleだ!! その恩人を政府は自分達の都合で扱おうとしている!! こんな恩知らずな政権を許していいのか!?」

壇上の男が大きな声で叫ぶ。

「独善的な政治家を許すな!!」

「破廉恥な政府など我等フランスの政府じゃない!!」

「現政権は直ちに辞めるべきだ!!」

など集まった人々は声高に現政権を避難していた。

この集会はヨーロッパ各国で巻き起こり、現政権を悩ませた。
暴動は警察が抑えたが、政府省庁は軒並み投石や物の投げ込みにより被害が続出。
死傷者すらだした。


この状況を見たダグラス・グラントは最悪の状態に来ていると考えた。

(不味い!! 此の侭では国が崩壊する……!! カナダやオーストラリアが英連邦から脱退を匂わせている……如何にかしないと……最早、現政権に今の危難を収める力が無い……この老体に鞭打つ時が来たのかもしれん……)

グラントはパイプを加えながら自分の決意を固めた。







日本では……

「本当ですか!? 榊さん!?」

彩峰少将は驚きと喜びをもって叫んだ。
正直、彼らしくは無いがそれぐらいの驚きだった。

「ああ、近く、内閣は総辞職する事になった」

榊外相も興奮気味にそう言う。

「彼等Fairy Taleの解体でどうなる事かと思いましたが、ようやく動き出しましたな」

彩峰少将は我が事のように喜んだ。

「喜んでばかりもいれれないぞ。彩峰少将……たとえ私が当選してもこの事態は当分続く
……私がもし当選し、Fairy Taleの復活を訴えたら、軍のタカ派や一部政治家から睨まれ
る事になる。それを如何抑えるべきかが今後の焦点となっていくだろう……」

榊外相の言葉に彩峰少将は考えながら口を開く。

「ここは紅蓮大将閣下にも御相談申し上げるべきかと……」

榊外相は考えながら言う。

「城内庁と近衛、更に殿下の影響は大きい……なるほど……しかし、殿下を我々、政治家
の薄汚い闘争に巻き込むのは避けたいが……致したか無し……か……」

彩峰少将は下を向きながら言う。

「我等の才の無さが悔やまれる……我等に才があれば……しかし、殿下に御立ちいただき、
国民や政治家共に鉄槌を下していただき、この空気を絞めていただきく。殿下の政治復権を行いたいものです……」







ユーコン基地では……

プロミネンス計画の為に集まった各国の衛士達がある映像を見ていた。

その映像は、Hi-νガンダムと米太平洋艦隊との戦闘記録である。
その事実は無いと否定していてもFairy Taleから画像と経緯が全世界に公表されたのだ。
隠し様が無い。

映像の最初は太平洋艦隊が無線で停船命令を出している所から始まった。

「おいおいおいおいおい……アメリカも無茶するよな~」

ヴァレリオ・ジアコーザが呆れながらおどけて言う。

映像はHi-νガンダムが飛び立つ所に切り替わる。

「アルト・テヅカのヤツまた一人で出て行ったのかよ!? 相手は米軍最強の艦隊だよ?」

タリサ・マナンダルが呆れながら呟く。

そして、ワンサイドゲームは始まった。

「な!? 消えた!? いや……高速で移動しただけか……通常の映像では追いきれない
……ラプターが止まって見える……」

クリスカ・ビャーチェノワは何とか分析しようとしていた。

「それだけではない……フィンファンネルだったか? それを使ってない……本気で戦っていないのか? 手塚 在都は?」

篁 唯依も分析する。

「く!!」

歯を食い縛りながらユウヤ・ブリッジスは立ち上がり、部屋を出て行った。

「あ、おい! ユウヤ!?」

ヴィンセント・ローウェルも後を追い、部屋を出て行く。

上映が終わり、検討会が行われた。

「正直……ここまでされると勝てる気がしませんね……」

ステラ・ブレーメルは愕然としながら呟く。

「ガンダムも化け物なら衛士も化け物ね……全く……角がついてて目が二つ目で口がつい
てればあんなに強くなるのかしら?」

崔 亦菲が鼻を鳴らしながら呟く。

「兎に角、解っている事は、手塚 在都は、本気を出さずに世界最強の艦隊を殲滅できる
事と手塚が本気を出せは一人で世界の軍隊を相手に戦える事が解った訳だが……正直、ガ
ンダムを超える戦術機の開発は急務となった。手塚は今の所ベータ殲滅以外に興味は無い
らしいが、それがいつ何時変わるか解らない」

篁 唯依はそう言いながらこの場を締めくくった。

だが、彼等は知らない……
ガンダムが別の世界の高度なその時代で最先端あるいは最高レベルの性能を持つ兵器で、
試作機、先行量産機、エースパイロット専用機など、一品物であることを……








横浜基地では……

香月 夕呼博士はモニターを見ながら爆笑していた。

「ふふふふふふ、アッハハはハハハハはハハハハはははははははははは~~~~~~~~」

一頻り笑い終わると笑いながら言う。

「3分!? 3分で世界最強の艦隊と戦術機がこの世から消滅~~~!? アメリカの威信
も地に落ちる所か消えて無くなったわね~~~~!!
しかも……プッククク……本気を出してない相手に蹴散らされるなんて!!」

しかし……アイツ等、Fairy Tale解体で完全に国連、いや、常任理事国の信用は地に落ちた。

オルタネイティヴ計画の行方も解らなくなる有様だ。

多分現状では対ベータにシフトするだろう……

全く……つくづく世界と私を振り回してくれる……

これほど、ムカついて、楽しい連中もいないだろう。

「いいわ、もっと私を楽しませなさい。その代わり、吠え面かかせてやるわ」







世界は混乱の坩堝にいながらも動き出そうとしていた……


ベータ大戦の終結と人類の安定は果たしてくるのだろうか……


御伽話は混乱というカオスから始まった……







[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 31.5
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/04/22 18:16

時は流れ、西暦2001年……

世界は緩やかに変革していく……

その変革の火は炎となって世界を焼く。

特に変革が酷かったのは統一中華だった。

中流、若手、知識人、労働者達、軍人達が共謀、政治的クーデター起こし、現政権は崩壊、
国名も中華連邦と改めた。
その中華連邦の党首となった蓮 楼覇が初代大統領となり政治を行った。


イギリスでも現政権崩壊後、ダグラス・グラントが首相となり、政治を行う。
彼が掲げた改革案は英連邦だけに止まらず、欧州連合の軍の統制と政治的統制が計られた。



ソ連は書記長が交代し、政変が起こった。



アメリカも共和党から民主党へと政権が交代された。



日本でも榊内閣に移行する。



世界は緩やかに変わりつつあった。



俺は緩やかに変わる世界を見ながら思った。

オッサンとの盟約、一つは成せたな……

一つはベータの殲滅、二つは人類の政変……
……人類に少しずつ、技術を解放していく事……
色々あるが現段階ではこの辺を俺が侵攻している。

多分、武や純夏がニュータイプ能力を持っていたのはオッサンが細工した可能性がある。

オッサンの細工は何処まで及んでいるか俺にも解らない……

オッサンの考えではこの世界の兵器技術ではベータの駆逐は不可能に近い……
だからこそ、この世界の人類がベータを殲滅する方向に向かわせ、ガンダム世界の兵器を
使い、ベータを駆逐する。

世界は変わる……それを感じる……

後は……何処まで世界が変わっていけるかだ……

やれやれ……舞台の俳優が脚本まで行うとは……

俺の考えでは唯、ベータを殲滅する事だけを考えていた。
オッサンは世界と地球権のベータの殲滅及び、人類の革新が目的だった。

その中でオッサンが台本の大筋を書き、俺が着色した形となった。

俺はオッサンの真の目的が掴めないでいた。

正直、ガンダムでハイヴを破壊し、ベータを殲滅すれば終わる話だ。
それなのに、俺にこれだけの事をさせる目的……

まさか……オッサンは思ったんじゃないか?

唯、ベータとハイヴを攻略しても根本的な解決には成らない事が……

10の32乗のベータとの戦いにおいて俺達は数が少なすぎる……

どんなに強くても少数では防衛は困難だ……

俺とて、不老不死の仙人じゃ無い……

技術力でカバーするのにも限界はある……


そうか……来るべきベータ再侵攻に備えて人類の思考を外敵からの脅威に対しての思考統
一を目的としたのか……

あのオッサン……俺を使ってベータと言う害虫と利権しか考えない雑草と言う政治家の掃
除を俺等にさせて統一した世界という名の庭園を作るのか……
その庭園の柵をこの世界の兵にやらせるのか……
庭師はさしずめ政治家か……


だからなのか……ここまで遠まわしに俺達にベータを叩かせたのは……


だが、俺の様な凡人でも考え付く様な事をあのオッサンがするはずが無い……


もっと裏がありそうだけど……


だが、良いだろう、書いてやるよ……御伽話を……
俺の御伽話が、行き着く先にベータを駆逐できるのなら……



俺がそんな事を考えているとエターナが部屋に入ってきた。

「失礼します。隊長、例の件の資料です」

「有難う。読もう」

俺はそれを受け取ると読み始める。

エターナは不満そうに俺に質問した。

「本当によろしいのですか? 我々が保有する兵器群のデータを世界中に拡散させるなど
……正直、それが我々に向けられる恐れがありますが……」

エターナの意見に俺は頷きながら言う。

「その可能性はあるだろう……だが、世界の情勢を考えてみたら正直、戦力は望めない…
…それなら補強なり何なりを行うべきだろう? 我々とて要らぬ混乱を世界に振りまいた
のだ。なら、その帳尻は合わせないわけにはいかんだろ?」

俺の言葉にエターナが噛み付いた。

「ですが、少し与えすぎでは!? 特に香月博士に“アレ”を与えるなど!! 何をして
くるか解らないのですよ!!」

俺はその言葉にこう言う。

「クシャトリヤか……いくら香月博士がずば抜けた天才とてアレを生産することは出来ん
よ……つまり、ワンアンドオンリーの機体だ……それにあの機体にはネオサイコミュを搭
載している。それを解析するのは不可能とは言わないが困難だろうよ」

「しかし!! 常任理事国にも兵器を拡散させるのは考え直してください!!」

彼女の言いたいことは解るがな。

「確かに危険だ。何時彼らが我等を撃つか解らん。だが、政変の混乱や復興の遅れ、ヨー
ロッパ連合の指揮権の統一の遅れ、アメリカ太平洋艦隊の再建などを考えたら戦力はいく
らあっても足りない状況だ。ここはあえて危険を冒す。ベータ殲滅の為にな……いい加減、足元をサッパリしないと次の仕事にも移れない」

俺の言葉にエターナは渋々賛成する。

「……解りました……この件に関しては何もいいません。私は、貴方を信じて、最善を尽くします」

「すまない……君には無理ばかりをさせる」

「いえ、それは構いません。私が好きでやっている事ですから」

俺とエターナは会話を少し交わした後、ある事を思い出す。

「所で、武と純夏を横浜に出してよかったのですか?」

俺はエターナの言葉を聞きながら言う。

「ああ、彼等にメッセンジャーと偵察任務をやってもらう。君はイギリスに例の物を頼む。
私はアメリカとソ連に情報を流す為ユーコン基地に情報を流す」






世界は新たなる力を手に入れようとしていた……


御伽話はいよいよ世界に拡散していく……


静かに、ゆっくりと、しかし確実に……







[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 32
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/05/06 00:18



俺こと白銀 武と横にいる鑑 純夏は桜並木の坂道を歩いていた。

下を見渡せば、廃墟と化した横浜の町並みが一望できた。

俺はこう思った。

(結局、この町は人が住めない廃墟か……)

故郷に対する哀愁が今更ながら俺の胸を支配する。
結局、俺はこんな形でしか故郷の土を踏めなかった。
凱旋とは程遠い、スパイの様な任務の為にこの土地に来た。

俺達が探るのは横浜基地の副指令、香月 夕呼博士の研究状況を探る事と、クシャトリヤ
の譲渡及び、サイコミュ技術の開発協力と何時か来るであろう佐渡島攻略の為の下準備が
俺達の任務だ。

俺が頭の中で任務内容を整理していると、純夏が語りかけてきた。

「タケルちゃん、私達、故郷に帰ってきたんだね……」

純夏が切なさを込めて呟く。
俺はその言葉に答えるべく口を開いた。

「ああ、ようやく……ようやく、故郷の土を踏めた……随分、遠回りしたけど、俺達は帰
ってきたんだ。横浜に、俺達の生まれ故郷に……」

俺達は横浜基地を目指し、歩いていった。

例え何が出ようが、純夏と2人なら怖いものなんて何も無い。
俺達は何時もそうして乗り越えてきたのだから。





俺達が坂を上りきると、横浜基地のゲートが見えた。

ゲートにはIMIのタボールを肩にかけたMPが警備をしていた。
白人と黒人の男が2人か……

他はいないらしい……

ザルな警備だ……本当にここは国連軍の重要施設か?

監視カメラや対人赤外線センサーはあるがいくらでもごまかし様はある。
外部は兎も角ザルだ。

よく見たら、基地外の周辺警備はツーマンセル、基本だがなっちゃいない。
肩に銃を吊り下げている時点でふ抜けている。
それじゃあ何時襲撃されるか解らないのにどうやって対応する気だ? コイツ等?

コイツ等、ここが国連の重要施設にして、極東国連軍の最前線と認識しているのか?

兎も角、俺達はゲートまで近づく。

それにMP達が気付いて、俺達に注意を呼びかけた。

「おい、ここは関係者以外立ち入り禁止だ。ガキが来る所じゃない」

白人の男がそう言う。
それもそうだろう、俺達は私服姿だ。
100%止められるに決まっている。

俺は自分の鞄から紙片を取り出し、見せた。

「これを見ていただければ、一応は関係者と認識してくれるはずですが?」

黒人の男が俺から紙を取り、読み始めると顔色が見る見るうちに変わる。

「な!? 国連事務総長の正規の命令書!? 何でこんなガキ共が!?」

白人の男も驚きを隠せないで叫ぶ。

「何!? 本当か!?」

黒人の男は白人の男の問いかけに答えた。

「ああ、ちょっと待て! 今、確認を取る!!」

黒人は慌ててゲートの詰め所の中に入り、内線電話で確認を取る。

出てきた黒人の男は慌てて、居住まいを正し言う。

「失礼しました!! 中佐と少佐とは露知らず失礼な物言いをしてしまい申し訳ありません!!」

白人の男も慌てて敬礼をしながら言う。

「し、失礼しました!!」

俺は苦笑しながら言う。

「気にしないでいい。それより、香月博士との面談は何時ぐらいか?」

黒人の男が勢いよく言う。

「は!! その事につきましては、香月副指令のお時間が空き次第、会談を執り行うそうです」

俺はその答えを聞き、了解をした。

「了解した。案内を頼む」

俺はそう言うと基地内に案内された。

俺達はゲートを潜り、基地内に入る。

さて……鬼が出るか蛇がでるか……





俺達は暫く、応接室で待たされる。

しかし、遅いな……1時間は待たされた。

その時だった。
室内にノックの音が響き渡る。

扉が開き、そこには金髪のショートヘアーの女性が立っていた。

「お待たせしました。副指令がお待ちです。私が御案内いたしますのでついてきてください」

俺達は案内されるままにエレベーターに乗り、地下深くに下りる。

外とは違い、中のセキュリティーは完璧に近い……
ID認証にバイオメトリックス式の扉……死角を押さえた監視カメラの配備……
俺達でもこれを突破するのは至難の業だ……

金髪のショートの女性がインターホンのボタンを押す。

「香月副指令、お連れ致しました」

そう言うと、モニターから香月博士の顔が移った。

『解ったわ、ピアティフ、通してちょうだい』

「了解」

そう言うとロックが解除され、扉が開いた。

「どうぞ、此方です」

俺達が案内された場所はかなり散らかっていた。

香月博士が口を開いた。

「もういいわピアティフ、下がりなさい」

そう言われ、ピアティフさんは下がる。

香月博士は俺達を再度見ながら口を開いた。

「あんた達? 事務総長がよこした使いは?」

香月博士にそう問われたので俺は敬礼しながら答えた。

「は! 国連軍再編計画により派遣されました白銀 武中佐であります!」

純夏もそれに続いて敬礼しながら答える。

「同じく、同計画により派遣されました鑑 純夏少佐であります!」

香月博士は鬱陶しそうに答える。

「敬礼なんて無駄なことしなくていいわよ。私、無駄な事嫌いだから」

なるほど……合理的ではあるけど軍隊でそれはどうよ……
俺は気を取り直して、用件をサッサと述べることにした。

「此方の書類に記載している通りです」

俺が鞄から書類の束を取り出す。

「ありがと……」

香月博士がそれを読み進めていく内に顔色が変わっていく。

「アンタ達……ガンダムの衛士だったの?」

明らかに不信と疑心の目で俺達を見た。

「ええ、そうですが……」

俺は事も無げに答えた。

「それにこの機体……クシャトリヤだったっけ? これを譲渡すると言う事は手塚 在都
の差し金ね? 全く……Fairy Taleは解体されても、よく動くことね……手塚も……」

俺達は一通り話した後、香月博士が口を開いた。

「事情は解ったわ。でもそれをホイホイ信じる程お人よしでもないの。アンタ達が本当に
ガンダムの衛士かどうかテストさせてもらうわ」

テストか……

「で? 私達はどんなテストをすればいいのです?」

純夏が質問すると、香月博士がニヤリと意地の悪い笑みを浮かべる。

「簡単よ、ある部隊と模擬戦をしてもらうわ」

なるほど……俺達を試すか……
良いだろう。
受けて立つ。

俺達は了解すると部屋から退室し、ピアティフさんに案内された。





香月サイド

全く……喰えない連中ね……
手塚 在都にしろ、事務総長にしろ、アイツ等2人にしろ……
まるで此方に手の内を見せてくれない……
このクシャトリヤの譲渡だって彼等のカードでも捨てるようなゴミ手だろう……

考えていると隣の部屋から霞が出てきた。

「何か解った?」

霞は首を横に振りながら答える。

「無意識的に思考をフロックされています……ですが、言っている事は本当のことのようです……」

なるほどね……手塚が何か対策を講じたと見て間違いない。

「解ったわ。下がってちょうだい」

私がそう言うと霞は下がった。

私は電話の内線で伊隅に連絡した。





伊隅サイド

副指令からA-01を緊急招集するよう言われ全員がブリーフィングルームに集められた。
全員、強化装備に着替えていた。

「大尉~緊急招集とは一体なんですか?」

速瀬が私に疑問を投げかける。

「私も解らん……だが、副指令の事だ。無駄な事で私達を招集はしないはずだ」

私がそう言うと副指令が入ってきた。

「敬礼!」

私がそう言い、全員が敬礼をする。

「やめて頂戴、無駄な事」

副指令が投げやりに答えると、私達を集めた理由を説明した。

「今回、あんた達に集まってもらったのは、ある衛士2人の力量を確かめる為よ」

私は副指令の言葉を聞き返した。

「ある2人衛士のですか?」

副指令は素っ気無く答える。

「そ、アンタ達で2人の衛士を相手にしてもらうわ」

私が答える前に、速瀬が答える。

「たった二人で私達に挑んでくるんですか? 馬鹿でしょ? ソイツ等?」

私もそう思う。
自慢じゃないがこれでも私達は極東国連軍最強の特殊部隊という自負がある。

高が2人の衛士を相手にヴァルキリーズが総がかりとは解せない。

「ちなみに……この2人、世界で10本の指に入る実力者だから引き締めてかかりなさい」

それはまた、とんでもない事だ。

「へ~~~~面白そうじゃないですか」

速瀬はそう言いながら笑った。
あの顔、相手を叩きのめしたくてウズウズしている顔だ。

世界で10本の指に入る実力者達か……

面白い。

私はそう思いながら作戦を考えた。




俺は今、ジェガンのコックピットの中にいた。

スティクタイプの操縦桿を握りながら目を瞑る。
純夏から通信が入る。

『タケルちゃん作戦は?』

俺はこう答える。

「そんなもん無い。相手の人数や錬度が解らない以上、此方は作戦を立てられない。なら……どうしても出た所勝負になるどろう?」

俺がそう言うと純夏が溜息を吐きながら答える。

『ヤッパリそうなるんだね……ま、今回は仕方ないか……』

俺達が話していると香月博士が通信をしてくる。

『それじゃ、始めるわよ。あんた達の相手はA-01、私の部隊よ』

なるほど……本気で俺達の実力を見るらしい。


上等!!

どうやら模擬戦はジャイブスを使うらしい。

『模擬戦開始まで1分』

スピーカーからオペレーターの声が響き渡る。

俺達は模擬戦の時を待つ。

『模擬戦、開始』

俺達はその言葉を聞き、出撃した。

「白銀 武! 出る!!」

『鑑 純夏! 行きます!!』

俺達は廃墟の横浜に舞い上がった。




俺達が暫く飛んでいると、12機が俺達を半包囲していた。

なるほど……油断は無いみたいだ。
上等、上等、これ位してくれないと此方が戦いがいが無い。

「純夏! 俺の後方について援護、俺が半包囲の中央に穴を開ける!」

『了解!』

純夏のジェガンが速度を落とし、俺の後ろについた。

その瞬間、半包囲した部隊が発砲。

甘い!!
俺は操縦桿を操作しながらかわす。

純夏はかわしながら発砲した。
ビームは吸い込まれる様に相手のジェガンのコックピットに当たる。

相手の陣形が崩れた。

俺はそう判断し、スラスターを全開に踏み込む。

ジェガンは唸りを上げて加速する。

俺はビームサーベルを引き抜き、横薙ぎに振る。
相手は何とか逃げたが甘い。

避けた瞬間、純夏の射撃でコックピットが撃ち抜かれた。

これで二機!!

俺はビームサーベルを左手に持ち替え、ビームライフルで牽制射撃を行う。

部隊は散開した。
俺は散開した1機に的を絞り、ビームライフルを発射、相手は撃ち抜かれる。

純夏がシールド内蔵式2連ミサイルランチャーを撃ち込み敵を牽制、それに気を取られている内に俺が敵を撃破いた。

敵ジェガンがビームサーベルで切り掛ってきた。

俺はビームサーベルでそれを受け止め、相手を蹴り飛ばす。

敵ジェガンが蹴りの衝撃が怯んだのを見計らい、蹴りの反動を利用して回転し、ビームサーベルを横薙ぎに切り払う。

敵ジェガンは胴体を切り裂かれる。

俺は着地するとミサイルの接近警報がコックピット内に響き渡る。

アレ、やってみるか……隊長から教わった技……

俺はビームサーベルの刃を展開した状態でミサイル目掛けてブン投げた。

そして技の名前を叫びながらビームライフルを構え、放った。

「ビームコンフューズ!!」

ビームライフルのビームはビームサーベルの刃に当たり、高熱の粒子を撒き散らした。

ミサイルはその高熱の粒子の嵐に巻き込まれ爆散した。

俺は上空に飛んでいるビームサーベルを左手で掴み、相手との間合いを詰めた。

「おおおおおおおおおおおお!!」

俺は叫びながら相手の縦に切り込んできたビームサーベルを右にかわし、相手の胴体を切る。





戦いは俺達の勝利で終わった。

やれやれ……これからどうなる事やら……

俺達は不安を抱きながら横浜基地に戻った。








[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 33
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/05/10 16:29

俺は今、アラスカのユーコン平原に来ていた。

俺はある機体のコックピットの中で眺めていた。

俺の眼下にはアラスカの寒々とした世界が広がっていた。
4月なのに寒さを感じさせる世界は正に極寒の地と呼ぶに相応しい。

リアード温泉が俺の世界では有名だった。
温泉か……入りたいな……


遅ればせながら俺の乗っている機体を紹介しよう。

ヤクトドーガだ。
改良点はファンネルを地上で使えるようにしたのと、シールドにアンチレーザーコーティ
ングを施した。

後、オプションパーツとしてミノフスキーフライトを装備した。

それ以外はノーマルの無改造機に近い。


何故、俺が愛機たるHi-νに乗らず、ヤクトドーガに乗っているかと言えば、コレをユー
コン基地への土産とするためだ。

俺はアームレイカーを操作しながら、アラスカの寒々とした空を舞った。





ユーコン基地……

警報は高らかに鳴り響き、辺りで怒号を響かせながら多くの衛士達は大急ぎで自分の乗機
に乗り込んでいく。

「所属不明機が接近しているだと!? 何処の国だ!?」

「アンノンウン!? 識別不明だと!?」

「ここを国連管理下の施設と知っての狼藉か!?」

「早く発進させろ!! なんとしても基地に近づけさせるな!!」

コード911のアラームを聞きつけてジョージ・プレストン准将が作戦司令室に駆け込
んでくる。

「何事か!? 状況を説明しろ!!」

その声にオペレーターが現状報告を行う。

「現在、所属不明戦術機が当基地に接近中!! その数1機!! 機種特定不明!!」

オペレーターの回答に命令を下す。

「所属不明機に警告しろ!!」

「今、行っています!! ……待って下さい!! 所属不明機より通信来ました!! オ
ープンチャンネルで回線を開いています!!」

オペレーターの返答にプレストン准将が命令する。

「つなげろ」

「了解!!」

オペレーターは慌てて回線を繋いだ。

画面には20代前半の東洋系の顔で、髪と目は黒、整った顔立ちの男が映し出された。
男は静かに口を開いた。

『突然の訪問、失礼する。私は国連軍の手塚 在都少将である』

男のその出鱈目に有名な名は作戦司令室を震撼させるに十分だった。

「な!? アルト・テヅカだと!?」

「姿を消していたテヅカが何故!?」

「アレが!? 世界最強の衛士!?」

プレストンは場の喧騒を落ち着かせると、落ち着いて質問を投げかけた。

「そのテヅカ少将がどの様な御用向きで当基地へ?」

在都は落ち着きながら答える。

『国連事務総長の命により、国連軍再編計画及び、戦術機開発の技術協力のため参上した。
ユーコン基地への着陸許可願う』

プレストンは少し考え、口を開いた。

「了解した。此方の指示に従って、着陸していただきたい」

『了解した』





ヴァジリー・アターエフサイド

突如、ユーコン基地に信じられない有名な珍客が現れた。
その名は、アルト・テヅカ……我がソ連でも知らぬ者がいない程の有名人だ。

資本主義の犬たるアメリカの太平洋艦隊を僅か3分で殲滅し、大いに私を喜ばせたのは記
憶に新しい。

その、アルト・テヅカが突如国連軍再編計画と戦術機開発の為にこの基地に訪れた。

私はこれをチャンスと捉えた。

これを機会にテヅカから技術を盗み、我が祖国の戦術機開発を先んじることが出来る。

それに……アルト・テヅカならП3計画の発展の為に盗める技術があるかもしれない……





俺は基地に着陸して、誘導の指示に従いながらハンガーに辿り着いた。

そこには、国連軍の軍服を着ているが手にはコルトM4A1カービンを持ったMPが続々と
集まっていた。

国連の正式採用小銃はIMIのタボールだが、どうやらここではアメリカ軍の影響が強いら
しい。

俺はコックピットハッチを開き、ワイヤーラダーで下りる。

MPは一斉に此方にM4の銃口を向けた。

俺は地上に降り立ち、敬礼をする。

「国連軍の手塚 在都だ。この基地の責任者の所まで案内していただきたい」

俺はMPに伴われ、司令室まで案内された。





ユウヤサイド

俺は不貞腐れながら昼食をフォークで突付いていた。

PXは本来、騒がしい所だが今日は輪をかけて騒がしい。

「ユウヤ、聞いたか?」

ヴィンセントが少し興奮しながら聞いてきた。

「何が……?」

ヴィンセントは呆れながらも少し興奮しながら言う。

「“何が?”じゃねえよ! Fairy Taleのアルト・テヅカがこの基地に来てるんだぜ! あ
の“国連軍の白い悪魔”が!」

一々、言わなくても解ってる事を言うなよ……
俺はフォークでソーセージを突き刺し、それを口に運ぶ。

ヴァレリオはパンを掴み口に運びながら言う。

「“国連の白い流星”なんてのもいわれているな確か……」

クリスカはスプーンでスープをすくいながらこう言う。

「確か、“白き戦場の支配者”とも言われているな……」

唯依はマグカップを口元までもって行きながら言う。

「私が聞いたところでは、最高の戦術機開発者だとか……」

タリサは背もたれに身を預けながらボヤク。

「何だソリャ? 異名だらけじゃない?」

ステラは口を拭きながら言う。

「それだけ活躍していると言う事なんでしょう」

亦菲は鼻を鳴らしながら言う。

「ハン! 伝説だか、英雄だか知らないけど、政治的に敗北、雲隠れした負け犬でしょ所詮」

その時だった……PXの空気が一斉に静まり返ったのは……

何事かと思い、皆が見ている方向に目を向けるとアルト・テヅカがいた……

何だ……この身が締め付けられる、息苦しい感覚は……!!

アイツがいる……唯其れだけでここまで……!!

あの亦菲すら固まって、冷や汗をかいている……

何てプレッシャーだ!? クソ!!

これがアルト……テヅカ……





俺はこれから世話になる基地内を見学していた。PXに入った時、騒がしかった場の空気が何時の間にか引き締まった。

おかしい……普段道理にしていたはずなのだが……

俺はふと自分がカナリ、プレッシャーを放っていた事を認識した。

どうやら、敵陣と言う事もあり、気付かぬ内に臨戦態勢を取っていたらしい……


俺は案内が終わると訓練場を見学する事にした。

訓練場には戦術機が訓練をしていた。
どうやら使われているのはジャイブスか……

俺は訓練を見ながらある事を思いつく。

チョット、驚かすか……

俺はヤクトドーガに乗り込んだ。





ユウヤサイド

俺達が訓練をしている時、突如、テヅカが乗ってきた機体が見えた。

何だ?

俺がそう思った瞬間、イブラヒム・ドーゥル中尉から通信が入る。

『少将殿が訓練に参加したいそうだ。相手は……』

ドールル中尉が割り振りを言おうとした時、テヅカが割ってはいる。

『ここにいる全員で来い。時間が短縮できる。それと作戦会議の為に10分後に開始しよう』

俺はこの言葉にカチンと来た……

舐めやがって……
馬鹿にされてる……

上等だ!!
ここまで馬鹿にされて黙っているほどお人よしでもない。

通信越しに全員の顔を見ると全員怒っていた。




之だけハッパをかければ十分か……
さて……どれだけ戦えるか見ものだな……
テストパイロットの実力、見せてもらうぞ。


10分後、彼等は来た。
なるほど……身にまとうプレッシャーが違う。
ハッパをかけたのは正解だったな……

『演習開始まで1分』

俺は目を瞑りながらその時を待つ。

『演習開始!!』

俺はその合図と共に目を見開き、アームレイカーを操作する。

まず近くにいた、ジェガンモドキにビームライフルを構え、撃ちぬく。

『タリサ機、コックピット貫通、致命的損傷、大破』

次!!

俺はアームレイカーを操作し、相手の撃ってきたビームライフルをかわしながら、シール
ドについている4連装メガ粒子砲を撃ち込む。

メガ粒子はザクモドキとウィンダムモドキに当たる。

『ステラ機、胸部破損致命的損傷、ヴァレリオ機コックピット貫通致命的損傷、両機大破』

まだまだ!!

しかし、Hi-νと違って遅すぎる……
眠ってしまいそうな反応速度だ……
はあ……Hi-νに乗りたい……

俺はアームレイカーを操作しながら次の敵を狩りに行った。





唯依サイド

強い……いや……強すぎる……
次元が違いすぎる……

射撃が正確すぎる、接近戦の技量もずば抜けている、まるで後ろに目があるみたいな反応の仕方……そして、何よりもあの速度……
人間が操縦できる速度ではない。

「アレが……国連の白い悪魔……」

ここまで自分達と次元が違うと如何戦っていいのか解らなくなる。

その時、突如、警報が鳴り響いた。

「何事だ!?」

『演習は中止だ!! テロリストが戦術機を使い当基地を襲撃! 直ちに之を排除せ
よ!! 繰り返す!! テロリストが戦術機を使い当基地を襲撃! 直ちに之を排除せよ!!』




俺はジャイブスをカットし、即座に戦闘モードに切り替える。

俺は即座にテリストの戦術機の場所を見た。

「なるほど……アメリカ側から来ているな……」

俺は言うが早いかヤクトドーガのセンサーを拡張させる。

「アメリカ軍が展開している……インフィニティーズか……」

ちぃ!! アメリカめ……

しかし……何が狙いだ……アメリカ……

まさか……アメリカはここでテロをおこしそれを制圧、テロの防衛の為として、軍を派遣する気か……

戦後世界を睨んでソ連との国境に合法的に軍を増強できかつ俺の技術を独占する気だろう。

気に入らんな……

破綻させてやる。

俺はアームレイカーを操作し、テロリスト達の殲滅を開始した。

暫く飛んでいると見つけた。

F4に乗ったテロリスト共が……
しかし、ファントムの手にはビームライフルが握られていた。

「ハン、テロ屋の癖に随分贅沢な武装を持っているな! オイ!」

俺はビームライフルを撃ち込む。

1機のファントムに当たり爆散した。

テロリスト共は味方がやられるや否や即座に散開した。

これで確定した。少なくとも訓練を受けた軍人の動きだ。
素人なら、ここで俺目掛けて乱射するはずだからだ。

「落とさせて貰う!! ファンネル!!」

俺は6機のファンネルを飛ばし、相手を撃ち落していく。

しかし、2機はビームライフルを乱射しながらファンネルを落とそうとした。
しかし、甘い。

「甘いんだよ!!」

俺はファンネルを操作しながら相手の弾幕をかわし、相手を落とした。

なるほど……対ファンネル戦の訓練は積んでいる様だ……

その証拠に最後の1機が俺に接近戦を挑んできた。

「甘いと言っている!!」

俺はビームサーベルを抜き放ち、相手を横薙ぎにした。

テロの制圧は完了した。

全く……アメリカがチョッカイをしてきたか……

しかし……アメリカ現政権がこんな事するヤツはいなかったはず……

一体誰が……




俺は基地に戻る傍らそんな事を考えていた。

アラスカは夕日に照らされていた。

この世界とは関係が無いと言いたそうに……







[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 34
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/05/10 16:29

俺達が横浜基地に1ヶ月が過ぎた。

今の俺の横浜基地での仕事はヴァルキリーズの訓練と隊長の作ったクシャトリヤの衛士を
見つける作業を開始した。


俺はモニターに向かって叫ぶ。

「ヴァルキリー2!! 突っ込みすぎだ!! 他の隊員との連携を密にしろ!! ヴァル
キリー3!! 焦りすぎだ!! それじゃあ、他の隊員との連携ができないだろうが!!」

俺は隊長が作ったハイヴ攻略ソフトを使い訓練していた。

難易度はオーバーSランクで残っているのは、伊隅大尉、鳴海中尉、速瀬中尉の3人だけ
だ。後は全員、撃破された。

後は、3人で何処まで進めるかになってしまった。

「ヴァルキリー1!! 2人の手綱をしっかり握れ!! 振り回されてるぞ!!」

俺がそう言った時だった。
速瀬機が撃破された。

これで残るは2機のみか……
かれこれ2時間、全滅までの最長記録を更新した。






純夏サイド

今、私はトラックを軽く走っていた。

あ~走るのってきもっちいい~!!
こんなに楽しいのは久しぶりかも……

副隊長の訓練は……厳しかったからね~……

あれ~なんでだろ? 涙が急に出てきちゃった……

うん!! 忘れよう!! 今は! 今だけは!!
副隊長の地獄を忘れて、訓練に勤しもう!!

あ、A、B分隊の子達を抜いちゃった。

これで、5週連続集会遅れにしちゃった……
いけないな……これでも全力全開で手を抜いてるんだけど……

これも隊長や副隊長、クレアさんやレイチェルさんのお陰かな……

あるえ~また涙が……

「教官!! 終わりました!!」

私がそう言うと教官は顔をヒクつかせながら言う。

「……そうか……終わったのなら休んでいろ……」

教官の言葉に私はこう言う。

「いえ、ようやく体が温まってきたので冷まさない様に軽く流してきます」

私の言葉に教官は言う。

「……解った……無理はするな……」

私は元気よく答えた。

「了解!」

さ~あ、走るぞ!!

私はこうして、人質ライフをエンジョイしていた。






夕呼サイド

私は送りつけられたクシャトリヤのデータを見ていた。

「……サイコフレーム……か……金属粒子サイズのコンピューターチップが封じ込められ
た戦術機用の構造部材、か……戦術機のコックピットに貼り付ける事で機体の追従性、並
びに運動性の向上にも大きな貢献を果たしているのね……しかも、兵器の思念制御や兵器
の遠隔操作にも使われている……か……全く……半導体を手の平サイズにしようとしてい
た自分の研究をまるで時代遅れの研究と言っているみたいじゃない……」

正直、手塚 在都の作り出したものはハッキリ言えば私でも生成は不可能、このクシャト
リヤはワンアンドオンリー機と言う訳だ。

しかも、ネオサイコミュー……操縦桿、動かさずに考えただけで動くなんて……
インチキだわ!! インチキ!!

更に、スラスター部分は全てミノフスキーフライトが着いてるし、ファンネルだったけ? 
如何してこれだけ重い物が高速で空を飛びまわるのよ……理解に苦しむわ……

しかも、兵装も大火力と来ている……
胸部メガ粒子砲が4つ、バインダー部メガ粒子砲がバインダーに2つずつの8つ、ファン
ネルがバインダーに6つずつの24機、マシンキャノンが2門……
しかも4つのバインダーにはビームサーベル収納式の隠し腕が1本ずつの4本、全てのバ
インダーにはアンチビームコーティングが施されている……

これ一機でハイヴが堕ちるわよ……

まったく……何処まで反則なのよ!! アンタは!!

反則するのもいい加減にしなさいよ!!

私の常識や物理学が木っ端微塵よ!! 木っ端微塵!!



香月 夕呼は知らない……
これよりも出鱈目が出来る機体がワンサカある事を……

ひょっとすると、知らない方が彼女には精神安定的な意味ではいいのかもしれない……






冥夜サイド

4月も終わり、ようやく訓練に慣れたが、正直、自信を無くしそうになっている……
その原因は隣でにこやかに食事を取る、鑑だった……

鑑が私達と同じB分隊になったのは、4月も後半に入った頃だった。

最初は、底抜けに明るく、優しい人物が入ってきたものだ。訓練に耐えられるのか? と
疑問に思った程だ。
鬼軍曹で知られる神宮司軍曹の訓練は正に地獄とこの身でしかと味わっている。

だが、その心配は無用だった……いや……正直、人間かどうか疑いすら抱いたほどだ。

鑑がトラックを走れば、私達は余裕で周回遅れにされ、銃の組み立ては鼻歌交じりで3分
を切り、格闘戦は全員が余裕で負け、挙句の果てに私の得意な剣術で完膚なきまでに叩き
のめされた……

唯、気になった事は、鑑の剣術はフェンシングや西洋剣の様な戦い方をする事だ。
誰かに師範されたのだろうか?

そう言えば、月詠が気になる事を言っていたな……

『あの者に関するデータが城内省のデータに存在していません。どうぞ、鑑にはお気をつけ下さい』と……

いや……よそう……他人をアレコレ詮索する暇があるなら1日でも早く鑑に追いつく事が
先決だ……

私は茶を啜りながら立ち上がった。
自主訓練をする為に……






月詠 真那サイド

冥夜様が横浜基地に人質として来られてから早1ヶ月が過ぎた……

件のFairy Tale解体により、世界情勢が混乱、我が帝國も軍の上が辞表や懲戒免職で自国
の屋台骨が揺らぎ、自国での軍事防衛が困難となり、国連との取引により国連軍の大量の
受け入れを約束する証として冥夜様はこの基地に来た。

正直、今の日本帝國はリベラル主義を貫く榊政権と、極右の国粋主義派が半分に別れてい
る状態である。

ハッキリ言ってしまえば、国粋主義派がこの国を蝕んでいた連中の集まりなのだが……
名前は国粋だが中身は官僚主義と自己利権を守る為ならどんな事でもする連中なのだが……

殿下が榊政権を押している為、国粋主義派も表立って手は出せないでいるのが現状か……


どちらにせよ私達、近衛の責務は将軍家を御守りする事にある。

どの様な障害が有ろうとも……冥夜様の御命は御守りしてみせる!!

唯、気になる事がある。

鑑 純夏という女が訓練に突如、参加したことだ……

あの者の経歴は国連のコンピューターはおろか、城内省のコンピューターにすら存在して
いなかった。

それだけじゃない……鎧衣長官に頼んで調査してもらったがその様な人物は全世界に存在しないと言う面妖な回答が帰ってきた……

アメリカの手先かと思ったがここまで綺麗に経歴がアメリカでも消せる訳が無い。

彼女は一体……

私は解らない事を考えながら横浜基地の廊下を歩いた。





俺がアラスカ、ユーコン基地に来てから早1ヶ月が過ぎた。

ユーコン基地にいる各国の試験小隊の訓練を行いながら俺は各国に新たな戦術機を開発す
べく技術屋とも連携を図っていた。

正直、彼等、各国の技術屋の考え方は古い……

今だ、戦術機を唯の二足歩行型機動兵器と考えているのだから……

確かに、戦術機の概念は上空での戦闘がレーザー級により出来なくなってしまった為に開
発されたと言う経緯がある事は解るが、誰も彼も空と言う所に目を向けていない。

正直に言えば空間戦闘こそMSの醍醐味なのだが……

ハッキリ言って宇宙では地上と言うものが存在しない。
360度ありとあらゆる方向から攻撃が来る。

だからこそ、宇宙空間をいかに早く掌握し、何処からの攻撃も対応しなければならない。

空が封鎖されているからと言ってそれを律儀に守ってやる必要は無いのだ。

だからこそ俺は一般兵にも空で戦える様な配慮や装備を開発した訳だ。
オッサンの技術をスピンオフして。

話が横に反れたな……

兎に角、衛士と技術屋の古い考え方を打ち砕く必要がある訳だ。

今日も各国の技術屋達と研究会を開いていた。

「……と言う訳で、戦術機にも空間戦闘能力を持たせる事が重要だ」

俺の言葉にアメリカの技術屋が意見した。

「その意見は解りますが、レーザー級の脅威を如何にして取り払うかが先決では?」

その意見に俺は答える。

「その為にレーザー感知システムを戦術機に積み込むことで空を人類の手に取り戻す事が
出来た。しかし、レーザー級を優先的に叩くにしろ。現在の戦術機では火力と手数、装甲、
何より機動力が余りにも低すぎる。そこで、ビームライフルやビームバズーカにより火力
を補い、かつ弾薬に掛かるコストを抑え、アンチレーザーコーティングで防御し、ミノフ
スキーフライトにより機動性を底上げする。それこそが私の考えた戦術だ」

次に日本の技術屋、ムサイ男たちの中では紅一点、篁 唯依嬢が質問をして来た。

「質問なのですが、それは即座に戦術機に搭載が可能なのですか? 言いにくい事なので
すが、我が国を含む各国はベータとハイヴの脅威に晒されています。その状態でこれほど
の技術を安価に即座に導入する事は可能なのですか?」

俺は篁嬢の質問に答えた。

「結論から言えば、可能です。レーザー感知システムの取り付けは即座に行える様、全戦
術機に対応していますし、ビームライフルやビームバズーカも機体ジェネレーターを使わ
ないエネルギーCPUと言うカートリッジ式つまりバッテリーですな、これを使う事でジェ
ネレータに依存しないビーム兵器の運用が可能となります」


とりあえずの会議は終了した。


次に俺はテストパイロット達の訓練に入る。

俺は画面越しに怒鳴る。

「タリサ!! 展開はチームと呼吸を合わせろ!! それじゃあ孤立して袋叩きにあうぞ!!
ユウヤ!! 射撃にばかり頼るな!! 距離を詰められた時、対応が出来なくなるだろうが!! 兵装は臨機応変に使え!! 兵装は飾りじゃないんだよ!! クリスカ!! イーニァ!! もっと相手を良く見ろ!! そんなに突っ込んじゃあ挟まれて挟撃されるだろうが!! ヴァレリオ!! もっと相手を良く見ろ!! 観察が足りんぞ!! ステラ!! 狙いが甘い!! 発射の感覚が遅い!! 戦場ではそんなに待ってはくれないぞ!! 唯依!! 接近戦に頼りすぎだ!! 射撃を併用しつつ緩急をつけて戦闘をしろ!! ドッグファイト一本調子じゃあ隙だらけだ!! 亦菲!! 貴様連携を考えて動け!! 貴様、一人が戦場にいるんじゃ無いんだよ!!」

現在訓練しているのは俺が作ったハイヴ戦闘シュミイレーションだ。

正直、全員、甘すぎだな……

兎に角、基礎がなってない。
叩き直すかにも骨だな……





ユウヤサイド

アイツ……テヅカの訓練は正直地獄だ。

何が地獄かと言えば、訓練内容が恐ろしいほどに地味で単純で辛く厳しい基礎訓練のオン
パレードだからだ。

まず早朝完全武装でアイツがいいと言うまで走りこみ、そこからは更に射撃訓練、接近戦
訓練、狙撃訓練、etc、etc……
それが終わると戦術機の動作訓練を素早く、かつ的確に行う事から始まる。
全員が息も絶え絶えなので如何しても操作法に荒さが出てしまう。
アイツは俺達と同じ事をしているのに鼻歌交じりでそれを簡単に行っていた。
一体アイツの体の何処にそんな力が湧いて来るんだ? 果てしなく疑問だ。

それが終わると戦術機の戦闘技能訓練が行われる。正直、訓練生時代にやったモノをやらされた。
疲れがまだ抜けていない為、ここでも荒さが出てくる。

アイツはさも当たり前のように行っていた。

そして、アイツ以外が全員バテバテの状態の中でのハイヴ攻略ソフトをやらされている。

最初の頃は僅か5分で全滅していたが、今では1時間に記録を伸ばす事が出来た。

ここで俺達は自分達がいかに雑で非効率的な戦術機操縦を行っていたか思い知らされた。

様は基礎が全然なっちゃいないと言いたかったんだろう……
そうか……アイツ等Fairy Taleの強さが何となくだが解った気がする……

恐ろしく基礎を徹底的に行っているからなのか……
土台がしっかりしているからこそアレだけの戦闘を行える……
積み重ねられた訓練こそが戦場で物を言う。
アイツ等Fairy Taleはそれを体現したような軍隊なんだ……

そう言えばテヅカは言っていたけか……

『俺達、Fairy Taleに天才は誰一人としていない。しかし、我等、Fairy Taleこそ最強の軍隊だ』

と……

最初、聞いたときは皮肉かと揶揄したが、アイツ等の人知を超えた強さは地味で苦しい基
礎を徹底的に行っているからこそ得られる強さなのだと理解した。

これは……純粋な実力の差かよ!! クソ!!

如何すりゃいいんだよ!! どうすりゃ……




世界は少しずつだが変わり始めた……

御伽話はまだ残っていたほんの小さな片隅で……

少しずつ……

話は進んでいる……







[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 35
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/05/15 23:42


俺はアラスカ、ユーコン基地に試作戦術機の作成の為、ここにいる訳だが……

何の因果か、試験部隊の訓練をしていた。

俺が持ってきたヤクトドーガは赤の姉妹こと、クリスカ・ビャーチェノワとイーニァ・シ
ェスチナが乗っていた。ソ連側の要望により副座型にした。

今は、全試験小隊との模擬戦をしていた。

『当たれ!!』

『喰らいやがれ!!』

ジェガンもどきに乗ったユウヤとタリサがビームライフルを乱射しながら俺に接近してきた。

『そこだ!! 行け!! ファンネル!!』

クリスカ、イーニャの乗ったヤクトドーガがファンネルを飛ばしてきた。

『当ててみせる! そこ!!』

ステラがザクモドキで長距離から狙撃を行う。

俺はユウヤ機とタリサ機のビームライフルをかわしながらビームライフルを撃ち込んでいく。

『グワ!?!?』

『ウソ!?』

『ユウヤ機、左マニュピレーター破損、タリサ機、ビームライフル破損、クリスカ、イー
ニャ機、ファンネル3機破損、ステラ機、ビームスナイパーライフル破損』





ユウヤサイド

ウソ……だろ……アイツ……ホントに化け物かよ……

10数年前の機体で如何してここまで優位に立てるんだ!?

アイツが乗っている機体……RX-78-2、ガンダム……
アイツの言葉を借りるならファーストガンダム……

始まりのガンダムであり、全てのガンダムシリーズの原点にして最初のガンダム……

アルト・テヅカが10数年前に初めに作ったガンダム……
そして、テヅカ・アルトの最初の乗機……

倉庫で埃を被っていた物をテヅカが引っ張り出したらしい機体……

従来、兵器に限らず、物はどんどんロールアウトや機種の変更により、発展していく……

10年以上たてばその機体は時代遅れも甚だしいはずなんだ。

それをアイツはさも最新鋭機の如く俺達の機体を軽々と凌駕している……

クソ!! ガンダムは10年たとうが何年たとうが最強かよ!!

それとも、アイツ……アルト・テヅカが化け物なのか?

その時だった、イキナリ、テヅカが叫んだ。

『ガンダムハンマー!!』

はぁ!? ガンダムハンマー!? 何だそれは!?
俺がそう思って見たら、鎖で繋がれた棘付きの鉄球がヴァレリオ機にぶつかった……

何だ!? アレ……
あんな兵器、見たこと無い……
と、言うより何処から出したんだ? あんな物……

タリサが唖然としながら言う。

『何だ? アレは……?』

ガンダム……それは化け物なのかもしれない……
今更ながら俺はそんな事思った。






ファーストガンダム、いいね~~~~!!
凄くイイ!!
特にガンダムハンマーがいい!!
凄いぞ!! ガンダムハンマー!!
強いぞ!! ガンダムハンマー!!

「俺が一番ガンダムを上手く使えるんだ!!」

俺は某ニュータイプ少年の名台詞を叫びながらガンダムハンマーを振り回した。

あ、タリサ機に当たった……

『チクショ!! 訳の解んねえ兵器で撃墜されてたまるか!!』

ユウヤが叫びながらビームライフルを乱射した。

『高が10数年前の機体で圧勝させるか!!』

ヤクトドーガもビームライフルとメガ粒子砲を撃ちながら突っ込んできた。

「見える!!」

俺はそう言いながら全部のビームを回避し、ビームライフルを撃ち込んでいく。

『ユウヤ機、右足破損、クリスカ、イーニャ機、ファンネル全機破損』

「頂く!!」

俺はそう叫びながらビームサーベルを引き抜く。

ユウヤ機とクリスカ、イーニャ機もビームサーベルを引き抜く。

ユウヤ機が袈裟懸けに切り込んでくるのを下から上へと逸らして受け流し、クリスカ、イ
ーニャ機が上から下に切り込んでくるのをサーベルを斜めにして受け流し、その態勢から
俺はビームサーベルを横薙ぎにする。

『クリスカ、イーニャ機、胴体部切断致命的損傷、大破』

アナウンスを聞いて呆然とするクリスカとイーニャ。

『そんな……』
『強い……』

ユウヤは怒鳴りながらビームサーベルを我武者羅に振るう。

『チクショ!! 何でだ!! 何でアンタは!! そんなに!!』

俺はがら空きになったコックピットにビームサーベルを突き入れる。

『ユウヤ機、コックピット部貫通、致命的損傷大破、演習終了』

当然の結果だ。
俺がガンダムに乗る以上、無様な戦いはできんよ。





唯依サイド

私は訓練の管制をしていたが正直、今の状況が理解できない……
いや、したくない。と言うのが正直な感想だ。

何故なら、10数年前の戦術機が1機だけで、最新鋭4.5世代戦術機を凌駕して見せたのだ。

しかも、このファーストガンダム、カタログスペックを見るならジェガンよりも性能は格
段に落ちる。

当然だ。10数年前の機体が最新鋭を超えられてはたまらない。

ビームライフルの火力にしてもサーベルのパワーにしてもスラスターの出力にしても全ての面でジェガンに負けているはずなのだが……

それを手塚はいとも容易く圧倒して見せた。

だとすれば……之は本人の純粋な技量か……

私はそこに思い至った瞬間、寒気がした。

何故なら、純粋な技量だけで軽く、10数年の技術的壁を軽く飛び越えてきたのだ。

本当に手塚は人間か?

私は自然とその疑問に行き着いた。






俺は基地の廊下を歩きながら考える。
正直、幾ら俺がガンダムに乗っているとは言えオプションパーツは精々、マグネットコー
ティング位だ。さしたる改良もオプションパーツもつけていない。

それなのに、あいつ等は敗北した。

手を抜いて戦った訳では無いにしてもこれは酷い。

衛士の鍛え直しが必要だろうな……






アメリカ合衆国、某所……

ジャック・ウィルソンはある工場の通路を歩いていた。

ジャックが廊下を抜けるとそこには戦術機が1体、立った状態で置かれていた。

「大尉、お待ちしておりました。ようやく完成しましたよ。貴方の機体が」

作業服の男がそう言いながらジャックに話しかけてきた。

「整備班長、これかね? 私の愛機は?」

ジャックが整備班長に問いかけながら機体を見上げる。

「ええ、貴方の要望通り、ミノフスキーフライトの装備とリミッターの解除、全兵装のビーム化、間接部の改良、各種センサーの強化です。
兵装はビームライフルにビームサーベルが2本、アンチレーザーコーテングシールド、メガ粒子砲が2門搭載されています」

班長の言葉にジャックが感想を述べる。

「なるほど、ユーコン基地からのデータを元にブラックシャドウをここまで弄くるとはな
……ラプターもリニューアルしているのだろう?」

ジャックの言葉に班長が答える。

「ええ、しかし、Fairy Tale解体後、その技術が流出してくれたお陰で我々の戦術機にも
Fairy Taleの技術が積み込めると言うものです。我が合衆国の工業技術があれば生産、配
備は可能です」

その言葉にジャックが鼻で笑う。

「フン、それでもガンダムと彼等、Fairy Taleの量産機には遠く及ばんよ。アルト・テヅ
カが自分の技術と共に雲隠れしてくれたお陰でな……しかし、現大統領……腑抜けかと思
いきや中々如何して……ユーコン基地にテヅカが現れたのを放置してその技術を盗むとは
……」

班長がその言葉に疑問を投げかける。

「しかし、ユーコン基地でテロが起こったとか……」

その言葉にジャックは鼻を鳴らす。

「フン、大方、政権を追い出された俗物共か、軍の強硬派が勝手に起こしたのだろうよ。
我が合衆国とて、一枚岩ではないのだよ。多分、また事を起こす可能性すらあるな……そ
の時だろう、私がガンダムと合間見えるのは……」

ジャックは機体を見上げながら呟く。

「ガンダム……今度は私と戦ってくれるのだろうな……」






一方、ヨーロッパではエターナ・フレイルがEU軍総合作戦本部ビルにいた。

「と言う訳で……我々が新たにヨーロッパに提供させて頂く戦術機は此方、ギラドーガです」

会議室のディスプレーを見ながらEU軍指揮官たちは驚きの声を上げる。

「これは……!!」

「な!? ザクを超えている……しかもこの多彩なバリエーションは……」

会場のどよめきが収まるのを見計らいエターナは語りかけた。

「如何でしょうか? ザクに変わる新型として採用してみては?」

それを聞き、EU指揮官達が考えながら言う。

「私達の独断ではなんとも言えんが、これは前向きに考える必要がありそうですな……」

「左様、我等、欧州とて安全地帯とは言いがたい、ソ連と中東に陸続きで接している以上、
気は抜けんからな……」



エターナはEU軍総司令部ビルを後にしながら考える。

クレアとレイチェルの裏工作が身を結んだと考えたいけど……
欧州は今、経済的に苦しい状況にある……
それに、ソ連や中東ともその国土を接しているから心理的圧力もある……

だからこそ、強力な戦術機を大量に安価に配備したいのでしょうね……

それらの思惑が重なったからこそ、今回の回答でしょう……

アルトも中々、抜け目が無いですね……

欧州に恩を売って国連でのFairy Taleの復活の為の足がかりとするなど……

しかし、人類全体での大反攻作戦の為にも各国の強化は重要でしょうね……






御伽話の復活の為、着々と準備が進められる……


はたして、御伽話の復活は成るのだろうか……


世界はベータの脅威に立ち向かうべく動き出そうとしていた……

御伽話の力を取り込みながら……








[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 36
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/05/17 22:49


俺はユーコン基地のハンガーの中にある1機のMSを見上げていた。

「ようやく、完成したか……アジア、アメリカ向けのジェガンの再設計型、グスタフカー
ル……そして、ヨーロッパ、ソ連向けに開発した、ギラドーガの発展型、メッサー……」

俺の呟きに唯依嬢が微笑みながら答える。

「おめでとう御座います! 少将!」

アメリカの開発チーム主任も笑いながら言う。

「ようやく完成しました! これで人類はまた新たに奴等ベータと戦う力を得る事が出来ました!!」

欧州の開発チームやソ連、中華連邦の開発チームも喜びの声が上がる。

俺は彼等に頭を下げこう言った。

「君達、開発チームが国や思想を超え、一丸となったからこそ今の結果がある。私は設計
図を書いただけに過ぎない。有難う……君達のお陰で形にすることが出来た。心より感謝
を……」

唯依嬢が慌てながら言う。

「そんな!? 頭を上げてください!! 私達は唯、衛士の記録を取っただけです!! これ等の機体は貴方の設計です」

俺は唯依嬢達の言葉を聞き、こう言う。

「……そうか……すまない……早速だが完熟機動を行うとしよう。幸い機体はテストパイロット全員分ある。諸君、これから忙しくなるぞ!!」

唯依嬢の言葉に全員が頷く。

俺の言葉を聞き、全員が敬礼しながら言う。

『了解!!』


武、純夏……俺は成果を出しているぞ……

お前達も踏ん張れ……






武サイド

俺は隊長から送られてきた2つのコンテナを見上げていた。

「Ξガンダムとオデュッセウスガンダムとアルゴスユニットか……まさか、ガンダムを送
りつけてくるとは……予想外だ……しかもデカイ……30mあるんじゃないか? コイツ等
……」

Ξは俺に合わせて、高機動型になった事とシールドに隊長のHi-νで使われた技術が流用
されている。

オデュッセウスのアルゴスユニットは純夏に合わせてビットがカスタマイズされていた事
とメガ粒子砲、ビームサーベル兼用のシールドにHi-νで使われた技術が使われている。
後、ミノフスキークラフトが搭載されているな。
純粋なアルゴスユニットと言うより、ペーネロペーユニットとアルゴスユニットを足した
感じだ。

俺が以前、隊長にファンネルとビットの違いは何か? と質問をした。
まあ、ファンネルとビットの違いは隊長曰く殆ど無いらしい……
ビットにはジェネレータが内蔵されていたため、稼動する際のエネルギーを単体で生み出
す事はできたが小型化が難しいらしい……

しかし、隊長のフィンファンネルはジェネレータが搭載され、稼働時間を延ばすことで攻
撃の持続時間を増やす事に成功している。ジェネレータを搭載している為、厳密にはファ
ンネルではなくビットに属する物らしい……

アルゴスユニットのビットは隊長のHi-νの様に再充電が可能だそうな……


「アンタの隊長もとんでもない物、寄越したわね。隠すのに苦労するわよホント……」

香月博士がボヤキながら言う。

俺は何と無しに言う。

「でも、隠す事が出来たじゃないですか」

俺の言葉に香月博士が嫌味たらしく言う。

「お陰で99番格納庫を使う羽目になったじゃない」

俺はそれを聞きながらこう言う。

「空き家にして埃を被るよりは格段にいいでしょう?」

俺の言葉を聞き、香月博士は詰まらなさそうに言う。

「カラカイ甲の無いヤツ……まあいいわ、で、ソレ使うの?」

俺は見上げながら言う。

「使いますよ。ココで埃を被っては本末転倒でしょう?」

俺の言葉に香月博士は益々詰まらなそうに言う。

「ま、成果を出してくれるなら私はいいけど~」

そう言いながら香月博士は歩いていった。

さて……どのタイミングで使うか……

俺がそんな事、考えていると香月博士が振り返りながら言う。

「ああ、そうそう……アンタの相棒、1ヶ月後、総合戦闘技術評価演習だったわね……」

俺はソレを聞き鼻で笑う。

「大丈夫ですよ。純夏なら……」

その言葉を聞き、香月博士が皮肉る。

「ガンダムの衛士だから?」

俺は静かに首を横に振る。

「いいえ、俺達の信頼はそんなちっぽけな信頼じゃありませんよ」

そうだろ? 純夏……






純夏サイド

1ヶ月後に総合戦闘技術評価演習を控え、A、B分隊共にピリピリしている。
懐かしいな……私もこんな感じだったな~

昔を思い出しながら内心で苦笑した。

(今の彼女達は余裕が無さ過ぎる。これでは合格できるものも出来ないよね~)

兎に角、私はPXでピリピリしている全員に言う。

「いよいよ1ヶ月後だね~総合戦闘技術評価演習、皆は準備はいい?」

その言葉に全員がビクリとした。

ココでチンタラ悩んでても仕方ない。あえてココは地雷を踏んだ。

その言葉に冥夜ちゃんが反応した。

「純夏、そなたは抜かり無いのか?」

冥夜ちゃんの言葉に私はシレッと言う。

「うん、大丈夫! みんなも大丈夫だから! がんばろ!!」

私はそう言いながら皆にカツを入れた。






千鶴サイド

相変わらず底抜けに明るく、よく気付き、そして、全てにおいて優秀だ。
鑑が私達B分隊に入隊してから私達は変わった。
いや……自分達が世間知らずのお嬢様だと言う事を嫌と言うほど思い知らされた。

初めて彼女と話した時もソレを実感させられた。

アレは初めてこのPXで鑑と話した時だった……

鑑は一瞬で私達の下らない不干渉を見抜いた。
正直、あの頃の私は正しくあろうと、唯、正しくあろうとしていた。

父が私の徴兵を取り下げるなどした事が私をそう考えさせたのかも知れない。

鑑は言う。

『確かに正しくある事は重要だよ。でも、ソレばかりでは人は着いて来ない。本当に必要
なのは臨機応変に対応する柔軟さと自分の信念に命を懸けて貫く心の強さが重要なんだよ』

私はこの言葉を聞き、自分の信念が無い事に気付いた。
いや、あるにはあるが、命を懸けて貫き通せる程の信念は持ち合わせていない。

鑑は指揮官として私より遥かに上だった。

『自分の下した命令に信念が篭ってなければ部下は着いて来ないよ。確かに指揮官も人間
だから間違いはあるけど、でも、部下を不安にさせる命令の出し方はしちゃいけない。ソ
レは部下に対して失礼だし、何より自分以外の命が懸かってるから』

『確かに言う事を聞かない兵はいるよ。でも、ソレを言い訳にして放置するのは指揮官としては二流以下、どんな兵でも長所や短所はある。だからソレを把握して上手く使うのが指揮官のあり方なんだよ』

私はよく彩峰と衝突する事がある。
これらの言葉は訓練中に言われた事だ。

鑑はスペシャルなのかもしれない。

私がそう言うと鑑は笑いながら否定した。

『私はそんなんじゃないよ……それに、私より遥かに強くて凄い人達が沢山いるから』

私はその言葉を聞き、謙虚も過ぎれば嫌味に聞こえる。と、心で思った。





慧サイド

相変わらず鑑は凄い……

ピリピリした空気がこうも簡単に緩むものだろうか?

鑑は誰よりも凄かった。
そう、誰よりも……

私が得意な格闘戦でも私に余裕で勝てるし、指揮能力も榊より凄い。
剣でも御剣より強いし、サバイバル技術は鎧衣より凄いし、狙撃は珠瀬より遥かに上……

どれもオールマイティーに凄い。
ハッキリ言えば変体だ。

鑑曰く、『私なんて全然だよ~世界最高の狙撃手を見たことあるし、世界最高の格闘戦能力
と高速機動戦闘が出来る人もいるし、砲撃戦能力が世界一な人もいるし、挙句の果てに全
てが世界一なんて人もいるよ』

多分、ガンダムの衛士だろうけど比べる相手を間違えている。

あの人達はキチガイだ。
父さんが言ってた……衛士最強の称号は彼等ガンダムの衛士、6人が全て独占していると……

そんなのと比較する事、事態が可笑しい……





まりもサイド

私は夕呼の執務室に向かって歩いていた。
その理由は鑑 純夏の事を問いただす為だ。

正直、鑑の技量は全てにおいて異常なまでに高い。
それこそ“優秀な訓練兵”では片付けられない程、突出している。
私の訓練など不要だろう。
ソレが何故、私の元に預けられたのかと言う疑問が出る。

夕呼の執務室に入り、私は問いただした。

「香月副指令、御質問があります。鑑についてです。鑑は何者なのですか?」

私の疑問に夕呼は極秘の一辺倒だった。

しかし、最後に資料を机に置き、こう言った。

「私の口からは言えないわ。でも、私は資料をここに置いた。見るのはアンタの勝手」

そう言い、それ以上は何も言わなかった。

私は赤字で極秘と書かれた資料の表紙を捲った。

そこには正規軍の軍服に身を包んだ鑑の写真と共に資料が添付されていた。

その資料を私は読み進める。

名前、鑑 純夏
年齢、18歳
出身国、日本帝國、横浜
階級、少佐
前歴、国連軍事務総長直轄特務部隊、Fairy Tale、第五突撃大隊所属 副隊長を歴任
コールナンバー、Fairy Tale6
備考、ガンダムの衛士で、レジェンドガンダムをその搭乗機する

私は目が点になった。

それもそうだ、世界最強の特殊部隊の世界最強の衛士が私の元で訓練をしているのだから……

「夕呼……これは……一体……」

私の言葉に夕呼が答える。

「そ、アイツはガンダムの衛士なのしかも、事務総長からこんな書類まで送りつけていたわ」

そう言いながら書類を渡す。

私はその書類を受け取り読み始める。

国連事務総長の名の下に、極秘裏に、白銀中佐と鑑少佐の独立作戦行動権を承認する。

と、書かれていた。

「これは……?」

私の質問に夕呼は苦々しそうに答えた。

「最初は鑑を人質にし、白銀を押さえ込んでいたけど、国連事務総長が極秘とは言え命令
を下した以上、私達もそれに従わなければならなくなったわ……アイツ等、Fairy Taleの
権限はオルタネイティブ計画権限から切り離されているから私でもアイツ等を縛れないわ。
兎に角、鑑は総合戦闘技術評価演習が終了次第、その合否に関わらず、現階級に復帰するわ」

どうやら私は知らない内にとんでもない人物を預かっていたらしい……





アメリカのとある訓練場……

ジャック・ウィルソンは苦虫を噛み潰していた。

「こうも相性が悪いとは……」

機体を着陸させると整備兵に怒鳴りつける。

「もう少しバランスを良くしろ!! これでは出撃前に落とされるだろうが!!」

これではガンダムには勝てない……私の技量に機体が着いて来ない。

あの時、光りの翼を持つガンダム……

私の心を釘付けにしたあのガンダム……

私がガンダムの強さを実感した始めてのガンダム……


その時だった……私に朗報が届けられたのは……

私は班長に呼ばれて私は格納庫に来た。

私が見た物は、1機の戦術機だった。

「班長!! これは!?」

班長は1機の戦術機を見上げながら口を開いた。

「トールギス……テヅカが作り上げた機体ですよ」

私は疑問が浮かんだ。

「これをどうやって手に入れた? 幾ら我が合衆国がユーコン計画の代表とは言えソレを
おいそれ出せるとも思えんが?」

私の質問に班長が答える。

「コイツを使いこなせる人間がテヅカ以外いなかったんですよ。ソレで戦術機開発の為に
我が国が貰い受けたと言うわけです……」

私はソレを聞き更に疑問に思った。

「どう言うことだ? ユーコン基地には各国の選りすぐりの衛士が大勢いたと記憶しているが?」

その言葉に班長は渋い顔をしながら言う。

「コイツは近代兵器論を無視したトンでもない機体です……正直、コイツは衛士を殺しか
ねない……何せ、最大加速で15Gかかるんですよ……普通の人間じゃあ、Gに押し潰され
て死んでしまう……」

私はソレを聞きこの機体が益々気に入った。

「素晴らしい……これならガンダムに対抗できる……」

乗りこなしてみせるさ……ガンダムと戦う為なら……









[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 37
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:f4dd966b
Date: 2010/05/21 01:58



アメリカのとある基地でジャック・ウィルソンはトールギスのコックピットに乗っていた。

『大尉!! トールギスの試験を行います!! 決して無理はしないで下さい!! いいですね!!』

外部回線からビブロウ・マクロン中尉が念を押す様に言う。

「解っている。しつこく言うな、ビブロウ」

私はそう答えながら再度、操縦桿を握る。

「さあ、見せてもらうぞ……アルト・テヅカが作りし戦術機の性能を……」

私はコックピットの中で呟きながら操縦桿とフットペダルを踏み込んだ。

機体は滑らかに空を舞い上がり始める。

さあ……お前の力を私に見せてくれ!!

私は操縦桿を一気に前に押しやる。

その時だった、私の体はシートに叩き付けられた。
普通の加速なら徐々にシートに押し付けられるがこれは!?

「何て加速力だ!! 普通なら徐々に加速していくはずだぞ!! とんでもない加速力
だ!! 素晴らしい!! 初めてだよ!! シートに叩き付けられたのは!!」

強化装備を着けていても体の骨がミシミシと軋む音が聞こえてくる。
頭がクラクラする。

私はそんな状態でも自然と笑みがこぼれてきた。

「フフフフフ……こうでなくてはな……これこそ、私の愛馬になるに相応しいじゃじゃ馬だ!!」

私は旋回した時、私は吐血した。

「グファア!?」

死ぬな……

『大尉!? 危険です!! すぐに中止してください!!』

ビブロウの言葉に私は断念した。

私はトールギスを着地した後、コックピットの中で気絶した。



私が目を開けたのは病室のベッドの上だった。

「こ、ここは……」

私がそう呟くとビブロウが呼びかけた。

「大尉!? 気が付きましたか!?」

彼の呼びかけに私は唸りながら呟く。

「そう叫ぶな……大丈夫だ……私はどれ位、寝ていた?」

私の質問にビブロウは答える。

「3時間程です。大尉、あれほど無茶をしないで下さいと申し上げたのに、如何してこの様な無茶を」

彼の質問に私は答えた。

「知りたかったからなのだよ……ガンダムの衛士達がどの領域にいるのかを……そして、理解した……」

私の言葉にビブロウが問う。

「理解した……とは?」

私は自分なりの考えを述べる。

「あの機体……トールギスの設計思想だ……チタニュム合金の厚い装甲、高性能スラスタ
ーの優れた運動性能、柔軟な汎用性をこれ1機で達成している……つまりだ……あのトー
ルギスはたった1機で全ての戦場と戦局に対応した高性能汎用型戦術機なのだ……正直、
欲張りすぎている……そう……ガンダムに似ているのだ……たった1機で全ての戦場と戦
局に対応した設計思想など正にソレだ……それの行き着く先はたった1機で絶望的な戦局
を変え、勝利する。と言う荒唐無稽な思想なのだ……」

私の言葉にビブロウが驚く。

「そんな無茶な!? たった1機に多くを求め過ぎです!! そもそもそんな物は最早、
近代兵器とは言えません!!」

その言葉に私は頷きながら答える。

「ああ、その有り方は最早、近代兵器とは呼べない……何故ならこの思想は衛士の出鱈目
にずば抜けた技量とソレを再現できる兵器があって始めて実現する思想だ……私もガンダ
ムをこの目で見るまでは鼻で笑いそうになる思想だ……だが、ガンダムの衛士達はソレを
事も無げに成す……ガンダムの衛士とは“兵士”では無く、“戦士”や“騎士”や“武士”
なのだ……自分の身や命を捨ててでも忠義を誓う“モノ”の為に勝利する……潔さや高潔
さ……信念の為に命を懸けるその精神は“騎士道”や“武士道”に似ている……ソレこそ
がガンダムの衛士の強さなのだと私は見た……」

俺の考えにビブロウは否定する。

「そんな馬鹿な!? そんな前時代的な思想で作られた兵器など!?」

私は自分の考えを再度、言う。

「そうでなければこのトールギスにしろ、ガンダムにしろ説明がつかないのだ……ガンダ
ムとは戦士の存在や魂を表現するマシンなのだ……ガンダムとは戦う者の有り方なのだ……」

私はガンダムの衛士の領域を理解した。そして、自分自身に誓った。


私はその領域に辿り着いてみせる!! そして、ガンダムを打倒して見せる!! と……







俺はユーコン基地で俺はグスタフカールとメッサーの試験運用を終え、俺はこの基地から去る事になった。

俺はこの世界に来てから色々考える様になった。

最初は唯、ベータを殲滅、ハイヴを蹂躙位しか考えていなかった。

しかし、今ではこの世界の10億人で殲滅したくなった。

そう、一人で10億歩、歩くより10億人で一斉に1歩、歩く方が断然にいい。

そう思えるようになった。

その為なら命くらい懸けてやる。

さあ、ベータ共、この地球にはオッサンの技術とエターナ達と10億人の勇者達と俺がいるぞ。
打倒できるもんならして見ろ。

人類の意思と力を舐めるな!! 地球外生命体の端末風情が!!

さあ、帰って反攻作戦の準備をしますか!!







国連大西洋方面第1軍ドーバー基地群……
通称、地獄門と呼ばれるこの場所に私ことクレア・ヒースローとレイチェル・ランサムはここにいた。

何でこんな所にいるかって?

ソレは簡単、ウチの隊長の命令でギラドーガとメッサーの優先的な配備を行う為、その講
師として来ているのだけど……

正直、単調すぎて詰まんない~よ~

ああ、早く隊長から今日、送られてきた私専用のガンダム……フルアーマーZZガンダムに乗りたい!!

隊長の解説書を読む限りでは『エヘヘ~~! なんて火力なんてしょ~』とつい小躍り
してしまったほどだ。

機動力もオプションパーツにテレストリアル・エンジンを積んで強化されている。
攻撃面ではビーム・ジェネレーターγとプレミアム・ジェネレーターを装備している。
防護面ではIフィールド強を装備している。

レイチェルのガンダムはそのままだ。

私はそう思いながら基地内を歩いていると兵達がなんか道を勝手に開けてくれる。
ガンダムの衛士のブランドの力だろう……

隊長が必死で作り上げたブランドの力か……
私は軍服の二の腕についているFairy Taleのワッペンを撫でながら隊長とエターナの事を思った……
あの人達は自分の全てをFairy Taleに懸けている。

ソレを思うと、隊長とエターナが政治的な嫌な事を引き受けているから私達はベータと戦
う事だけ考えられると言うものだ。

私はこの世界からベータを駆逐して、故郷の家族……弟達を戦場に出したくない……
うんん……弟達の世代だけじゃない……私達は次の世代や後の世代にベータ大戦が教科書
でしか知らない様になって欲しい……
私はそう思いながら戦っている……
だからこそ、隊長のベータを地球圏から叩き出す。その考えに賛同し、戦っている。

これが私の戦う理由……

隊長に比べたら小さいかもしれないけど……
私だけが持つ戦う理由……

私が私の命を懸けて戦う理由……



私が基地を歩いていると見知った3人組みにでくわす。

確か……イルフリーデ・フォイルナーとヘルガローゼ・ファルケンマイヤーとルナテレジア・ヴィッツレーベンだったけか……

「ヤッホ~お三方! 元気~」

私がドイツ語でそう呼びかけると3人は居住まいを正し、敬礼した。
あ~あ、硬くなってる……
仕方ないか……大佐に行き成り呼びかけられればね~

「ハ!! 大佐殿! 何か御用でしょうか?」

ヘルガローゼちゃんが私の呼びかけに質問した。
私は敬礼しながら質問した。

「訓練の方は順調?」

私の質問にイルフリーデちゃんが真面目に答える。

「ハイ、ランサム中佐殿の御指導の下、各自順調に進んでいます」

ウン、結構、結構~

「所で、大佐殿は突然、訓練を抜けられたのです?」

ルナテレジアちゃんが質問してきた。

「私は隊長から送られてきた物の受領とチェックをしてたの」

イルフリーデちゃんが疑問に思った事を質問する。

「送られてきた物とは?」

その質問に私は答える。

「私達のガンダム」

ソレを聞いた瞬間、ルナテレジアちゃんが興奮しながら質問してきた。

「ホントですか!? 大佐と中佐のガンダムですか!?」

「うん、そうだよ」







イルフリーデサイド

私は最初、ヒースロー大佐をガンダムの衛士とは思えなかった。
何故ならこんなにフランクな衛士を今まで見たことが無かったからだ。

特に、佐官クラスの衛士となるとアイヒベルガー少佐の様に寡黙で冷静な人しか見たことがないからだ。

正直、底抜けに明るすぎる。

しかし、戦術機の操縦は超一流などと言う言葉で片付けられないほどの実力だった……

私の属する大隊、ツェルベルス大隊が同じギラドーガに乗って物の見事に返り討ちにあったのだ。

正直、出鱈目だ……アイヒベルガー少佐とファーレンホルスト中尉のエレメントが簡単に
蹴散らされた時は我が目を疑ったほどだ……

ランサム中佐も同じ事をやってのけた……

技術が半端なくずば抜けている……

人間かどうか疑いたくなったほどだ……

『ガンダムの衛士は伊達じゃ無い』

演習中にヒースロー大佐が言った事を思い出した。

その時、私は思った。

ガンダムに乗ったらどれ程の強さなのだろうと……








[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 38
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:e01fc487
Date: 2010/10/31 06:17



私、鑑 純夏がこの横浜基地に来てから半年がたった。

総合戦闘技術評価演習はAB分隊全員が晴れて合格する事が出来た。

私は国連事務総長の命令に従い、前階級の少佐に復帰した。

久しぶりに袖を通す正規兵の軍服はいいものだ。
右二の腕に飾り立ててるFairy Taleの紋章が懐かしく感じる。

私はそれを、目を瞑りながらそっと一撫でする。

「久しぶり……会いたかったよ……妖精さん」

私は左手で右の二の腕にあるエンブレムを撫でながら呟く。

「さて……行きますか!!」

私は気合を入れてドアノブを掴み扉を開いた。

「AB分隊の子達、どんな反応するかな……楽しみ」

私は悪戯を行う前の子供の様に心ではしゃぎながら基地の廊下を歩く。


彼女達と“本当の私”との再会は近い。







武サイド

早朝5時、規則正しくラッパが基地内に響き渡る頃、俺は軍服に身を包んでいた。

横浜基地で支給された軍服ではない。

国連軍事務総長直轄特務部隊、Fairy Taleにより支給された軍服に身を包んでいるのだ。
右の二の腕にあるエンブレムには妖精の紋章とハードカバーの本が描かれていた。
その本の表紙に数字で“5”と刺繍されている。
部隊長に与えられるナンバーだ。

俺の実力で勝ち取った称号、俺の証……

Fairy Taleのナンバー5である証……

「ッと……感傷に浸っている場合ではなかった……」

俺はそう、独り言を言いながら外に出る事にした。




俺が副指令室のある地下フロアに到着し、執務室に入る。

電気がついていない所を見ると副指令は来ていないらしい。

(ん……気配を感じる……)

人がいない筈の室内に人の気配がする……

可笑しい……室内が荒らされた形跡が無い。
元から汚い部屋だ……

だけど、拭い去れない違和感……

(何だ? この違和感? 人の気配はしない……だけど“何か”の気配がある……)

その時だった……

暗闇の世界から中年の男の声が響き渡ったのは……

「ほう……若いのに私の気配を察知するとは……噂は本当の様だな、白銀 武」

俺は弾かれた様に声の方に体を向ける。

其処にいたのは帽子とコートを着た中年男性だった……

男の左懐には小型の拳銃がぶら下げられている……

衣擦れの音から察するにワルサーPPKくらいの小型オートマチックだろう……

「彼方は……」

俺は油断無く男と対峙しながら男に問いかけた。

「聞けば答えが返ってくると思っているのかね? それではより良い人間関係は築けないぞ? 白銀 武」

何だ? この男?

話が全然噛み合わない……

でも、まあ、見た目的に諜報員そうだし、名前を明かす愚行はしないだろう……

諜報員としての対応だな……

「あえて言うなら……帝國情報省外務二課の鎧布 左近だ……お見知りおきを、白銀 武」

言ってるし!!

いや……顔が割れている以上、調べれば解る事だ……

ここであえて素性を明かし、混乱させ情報を聞き出すつもりか?

待て、このオッサン、今何て言った?

帝國情報相の外務二課?

情報省といえば情報大臣お抱えの調査機関で、さらに城内省とも繋がりがある。
たしか、外務二課といえば対外諜報を専門とする課だ……

内閣官房お抱えの内閣情報調査室、Cabinet Intelligence and Research Office……通称、内調、または、CIROとは犬猿の仲だと聞く……

更に帝國国防省直轄の情報本部とも折り合いが悪いらしい……

しかも、二課といえば対外諜報が専門の課だ。国連に対外諜報員を送り込むのは納得でき
るが、仮にも国連の重要基地たるこの横浜基地に入り込める諜報員はそうはいない。

しかも香月博士の執務室は厳重なセキュリティーで守られているエリアだ。

この男が凄腕なのか、或いは大物なのか、その両方か……

「そんなに見つめられると照れてしまうぞ、白銀 武」

俺が油断無く鎧布さんを観察していると見当違いの言葉が返ってきた。

「フム、“君達”の事は調べさせてもらったが……中々掴めなかったがようやく理解した。なるほどな……そのワッペン……かの手塚 在都の部隊の者か……道理で掴めぬ筈だ……
更に、99番格納庫にある2機の“ガンダム”……フム……」

な!? 何だ!? コイツは……何処まで俺達の事を調べ上げた?

「彼方はココに何をしに? まさか、香月博士とお茶をしに来たと言うのは無しですよ?」

俺がこういうと鎧衣のオッサンは顎に手をやりながら呟いた。

「フム……ソレは中々そそられる提案ではあるが、止めておこう……」

鎧衣のオッサンがそう言った瞬間、室内の電気がついた。

「アンタ、暗い所で何してんの?」

博士がそう言いながら近づき、鎧衣のオッサンを見た瞬間、明らかに嫌そうな顔をした。

「……アンタ、いたの?」

「いやはや……つれないですな……折角ココまで来たのに……」

鎧衣は明らかに演技とわかるような口調で語りかけた。

「全く、帝國情報省は礼儀も守れない訳? ちゃんと正面玄関から入ってきなさいよ」

明らかに苛立ちを募らせる様に言う香月博士に、鎧衣は暖簾に腕押しとばかりに語りかける。

しかし、あの香月博士をココまで疲れさせる人間もそうはいないだろう……

「で、私に話があるんじゃないの?」

その言葉にようやく鎧衣のオッサンが真面目な顔をした。

「マダガスカル島に……」

「パス! 私、暇じゃないの、用事が無いなら帰りなさい」

そう言うと今度は脈絡も無く違う話が来た。

「帝國国内で不穏な動きがありまして……」

その言葉に俺も香月博士も内心、この男の本題が来たことを悟る。

「帝國本土防衛軍戦略研究会なる研究会が毎夜集まっているとか……」

俺は鎧衣のオッサンの言葉に違和感を覚えた。

何で対外諜報専門のこの男が国内での事をこの場で取り上げるのかと言う疑問だ。

そんなのは憲兵や情報本部と言った軍関係や内務省警保局や警察の公安部の仕事の筈だ……

話が見えない……

「何? 情報省の外務二課が刑事の真似事? 関係ないわね。私の邪魔さえしてくれなければ何だっていいわ」

「ソレがそうもいかなくなったのですよ……貴女が手塚から全く新しい量子コンピューターとデストロイなる機体を裏取引で得ようとしている事が“彼の国”が嗅ぎ付けましてな……彼の国の工作員と思われる影がチラホラ……まあ、脚本を書いたのは彼の国の諜報機関とある企業団体でしょうな……」

CIA、中央情報局と軍産複合体とDIA、国防情報局が絡んでいるのか?

だとしたら、隊長が俺に渡した書類はデストロイと量子コンピューター技術の裏取引の書類……

隊長の真意が解らない……

今更、オルタネイティヴ計画に加担する意味が……

まさか……隊長の目的はオルタネイティヴ計画事態の頓挫、或いは無期限の凍結が狙いではないだろうか……

ココで、4、5とも失脚すればオルタネイティヴ計画事態がその有効性が疑われる。

ソレも致命的にだ。

しかし、隊長がソレを狙うとして、隊長の目的は何だ?

クソ、あのタヌキ! 全然、尻尾をつかませてくれない。

解らん……


俺は内心、隊長が何を考えているのかで頭を抱えながらも鎧衣のオッサンの話を聞いた。




御伽噺の復活はまだ遠い……







[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 39
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:e01fc487
Date: 2010/11/01 17:32

純夏サイド

教室の前に立つ私、しかし、う~ん……

如何、教室に入ったらいいものか……

同じ訓練をしていた同期の仲間が行き成り、

『私、実はFairy Taleでガンダムの衛士でした~』

と言われても反応に困るだろう。

暫く、う~んと唸っていると神宮司教官が声を掛けてきた。

「鑑少佐、この様な所で如何したのですか?」

私は弾かれた様に神宮司教官に向き直り、敬礼をした。

神宮司教官も私に返礼した。

「実はですね……」

「実は……?」

私がそう言うと鸚鵡返しに聞いてきた神宮司軍曹。

「どう教室に入っていいものか解らないのです……」

それを聞いた瞬間、神宮司軍曹は顔を背けピクピク痙攣しだした。

そんなに笑う所ですか? この話題?







まりもサイド

私は鑑少佐の言葉を聞いた瞬間、その……失礼ながら笑いがこみ上げてきた。

だって……世界最強の特殊部隊にしてハイヴとベータを滅ぼす人類の剣にして、国家すら
恐れるガンダムの衛士が“教室に如何入ったらいいのか解らない”と言い出すのだ。

ある意味、少佐でココまで謙虚な人も珍しい。

それでも彼女は国連軍事務総長直轄特務部隊、Fairy Taleの手塚 在都が世界に体現する
人類最強の衛士達、“ガンダムドライバー”の一角なのだ。

その実力の片鱗を私やあの子達も嫌と言うほど見せ付けられたことだ。

多分、新しい訓練機の配備説明の為だけではないだろう。何かの任務の為にココに来たこ
とは解るのだが、無用な詮索は身を滅ぼすのが常だ。

今は何も言うまい……

だが、親友の夕呼や私の大切な教え子達に危害を加えるのなら……

勝てない、倒せないと解っていてもこの身を賭して守る!!

ソレが私の存在意義なのだから……

取り合えず、私は鑑、もとい、鑑少佐に向き直り言うのだった。

「私が呼ぶまで待っていて下さい」

と……若干、口元が引く付いていたが気にしたら負けの様な気がしたので気にしない方向で……

明らかに不満気味な鑑少佐を廊下に残し、私は教室に入っていった。






冥夜サイド

鑑が来ていない……

この晴れの舞台に鑑がいないのだ……

可笑しい……

遅刻などした事のない鑑が遅刻?

更に可笑しいのは、あの規律に五月蝿い神宮司軍曹が時間になっても現れないのだ。

一体、二人に何が?

私がそう思った瞬間、教室の扉が開き神宮司軍曹が入ってきた。

何故か、口元を引きつらせている。
笑いを堪える様な仕草に私だけでなく、A、B分隊全員が疑問の顔をした。

一体、神宮司軍曹の身に何が?

私の考え事は、神宮司軍曹の言葉で遮られた。

「では、戦術機訓練過程の講義を始める」

その言葉に、榊が挙手をして、神宮司軍曹に質問した。

「宜しいでしょうか? 教官……」

「何だ? 榊?」

神宮司軍曹から質問の許可が下り、榊は戸惑いながらも質問をした。

「……教官、鑑がまだ来ていないのですが……」

全員の思いを言う榊だが、軍曹は何事も無かったかの様に言う。

「鑑は本日付けでこの訓練校を去る事になった」

その言葉に、私を含めた皆が唖然とした。

何せ、あの鑑がいなくなるのだ。

誰だって唖然とする。

しかし、私達の心情を知ってか知らずが、軍曹は更に衝撃的な言葉を投げかける。

「話を続けるぞ、今回、貴様達には最新鋭、訓練機に乗ってもらう」

最新鋭訓練機!? その様なモノが!?

「そのオブザーバーとして、国連軍の正規の衛士の方が講師に来てくださった。入ってきてください」

その瞬間、扉は開かれ、赤い髪をリボンで後ろに止めた、国連軍の軍服に身を包んだ人物が現れた。

私達がソレを鑑と認識するのに時間が掛かった。

何せ、何時も纏っている柔らかく暖かな雰囲気が今は無い。

あの雰囲気は紅蓮大将や斑鳩殿以上の戦士の気質が放たれているからだ。

「本日より、貴女方の機体運用のオブザーバーとして国連軍事務総長直轄特務部隊、Fairy Taleから来た、鑑 純夏少佐です」

鑑の自己紹介に私達は唖然とした。

国連軍事務総長直轄特務部隊、Fairy Tale……

国連が保有する唯一にして最強の部隊……

世界最強の衛士、手塚 在都が作り上げた人類の剣にして盾……

世界最強の機体、“ガンダム”を保有する事を許された唯一無二の軍隊……

世界最高最強の開発戦闘集団……

挙げれば挙げる程、Fairy Taleの異名、逸話には事欠かない。


まさか……鑑が……Fairy Taleの衛士だったとは……


私達は唖然としながら鑑を見ることしか出来なかった。








武サイド

正直、鎧衣さんと博士の会合は不穏な話題だっただけに外の空気を吸いたくなった俺は、格納庫付近を通り、外に出ようとした。

「白銀中佐~~!」

その声に振り向くと、速瀬中尉と涼宮中尉と鳴海中尉がいた。

「お早う御座います。白銀中佐」

涼宮中尉が挨拶をして敬礼した。

「お早う3人とも」

俺はそう言いながら敬礼をする。

すると残り二人も敬礼する。

敬礼し終わると、鳴海中尉が俺に問いかける。

「中佐はどちらに? 早朝訓練ではおられなかったので、気になっておりました」

「そうですよ~朝方一体何処に?」

速瀬も俺の所在を聞くべく質問する。

「ああ、香月博士と今後のうちあわせを行っていた所だ」

俺がそう言うと速瀬が質問する。

「どの様なうちあわせですか?」

「ああ、今回新たに開発されたグスタフカールのA-01への配備への検討だ。喜べ、全員分が配備される。明日には来るだろう」

そう言うと速瀬は目をキラキラさせながら嬉しそうな顔をした。
鳴海も顔が嬉しそうになる。

「ホントですか!? やった!!」

「やったな!! 水月!! 最新機だぜ!! 最新機!!」

「良かったね! 2人共!」

三人は嬉しそうに喜びを分かち合う。

「それじゃあ、俺は行くぞ」

そう言い俺は彼等3人と別れた。

その瞬間、3人が息を飲む気配を感じたが今は外の空気を吸うことが重要と考え外に出た。








孝之サイド

白銀中佐の右のワッペン……まさか……

「Fairy Tale……」

国連軍最強の証が何で白銀中佐の右の二の腕に……?

「中佐って……Fairy Taleだったんだ……」

遙の唖然とした呟きが聞こえるが俺にはソレすら遠く聞こえた。

「ハードカバーの本の所に“5”って刺繍されてた……まさか中佐ってガンダムの衛士?」

水月はそう言いながらも唖然とする。

ガンダムの衛士……

俺が死に急ぐのを助けてくれた存在……

まさか、中佐なのか……羽のついたガンダムに乗っていたのは……

もしそうなら、あの時のお礼が言いたい。

水月や遙を悲しませないですんだお礼を……

そして、超えたい、あのガンダムの衛士を……







それぞれがそれぞれの思いが横浜基地を包み込む……

御伽噺は横浜でもその存在を体現した……







[16324] 【ネタ】BETAを殲滅してみよう 40
Name: テンペスト◆fb11b208 ID:e01fc487
Date: 2010/11/02 00:28



武サイド

俺は集まったヴァルキリーズにグスタフカールの機体説明を行っていた。

「……この様に、グスタフカールは元々ジェガンの再設計機の1つで装備は凡庸であるが
その基本性能は高く、ガンダムタイプに通じるものがある。つまり、機体性能はジェガン
よりは高性能だ。兵装はジェガンと余り変わりは無いのでジェガンと同じような感覚で乗
れるはずだ」

俺の説明に彼女たちは真剣にメモを取っていた。

「それじゃあ、大体の説明は終了した。午後からは実機訓練を行おう」

その言葉を言い終わった瞬間、鳴海が手を挙げた。

「何だ? 鳴海?」

俺の質問に若干戸惑いながらも鳴海は答える。

「中佐はガンダムの衛士なのですか?」

と……






孝之サイド

言ってしまった……

言っちゃったよ……
何、言ってんだ? 俺?

ホラ見ろ……周りの連中、唖然としてるぜ……

「ソレを聞いて如何するきだ? 興味本位での質問か?」

険しい顔の白銀中佐がそう聞いてきた。

確かにそうだよな……今は機体説明の時間であってお喋りの時間じゃない。

更に、Fairy Taleにとってガンダムは正にシンボルだ。

その意味は、帝國斯衛軍の“龍鳳”より重い。

世界最強を体現する戦術機の衛士となると最早、俺達では解らない世界の領域だ。

其処に途轍もない誇りや威信がある。

それでも俺は知りたい、あの時、助けてくれたガンダムの衛士が誰なのか……

「いいえ、違います。横浜で戦った時、俺をG弾から救ってくれた羽の付いたガンダムの
衛士にお礼が言いたいんです……あの時、助けてくれたお礼を言いたいんです!!」

俺がそう言い終わると白銀中佐は俺達に背を向けながらこう言った。

「もし、お前がそのガンダムの衛士に感謝を述べたいのなら、生きろ……臆病者でもいい、
英雄でなくてもいい、生き抜いて幸せな世界で、ベータがいなくなった世界で床の上でお
前の子供や孫や曾孫に見送られながら眠る様に死ね……ソレが生き残ったお前の責務だ…
…俺達、ガンダムの衛士には度台無理な話だ……死ぬまで世界から監視され、狙われる俺
達が望んでも願っても出来ない生き方だから……」

そう言いながら、白銀中佐は部屋から出て行った。

その背に色々な物があった……

俺より年下でその癖、誰よりも戦士で……

それでいて、誰よりも暖かな世界を願っていた……

本当の戦士の背中を俺はこの時、見た気がした……







純夏サイド

私は、訓練に使われる機体の説明をしていた。

「今回の訓練から試験的に横浜基地で使われる機体はこのジムⅢです。この戦術機は3.5世
代型となっていますがこれは第4、第5世代型戦術機の設計思想や操縦感覚に慣れてもらう
意味合いがあります。十分に実戦にも耐えうる性能を有していますのでご安心を」

私はスライドを操作しながら説明していく。

まあ、未だに第2、第3世代型戦術機が使われているから普通に高性能なわけで、高価な練習機と言った所だね……

私はそんな事、考えながら武装の説明を行う。



粗方の説明が終わり、次はいよいよ実機訓練と言った段階に移った時だった。

冥夜ちゃんが挙手をしたのだ。

「何ですか? 御剣訓練兵?」

やはりココは公私を使い分けないといけないと思い私は苗字で冥夜ちゃんを呼んだ。

「鑑少佐は以前、どの様な機体は何に乗られていたのですか?」

その質問に私は答える事にした。

多分、彼女達は私がFairy Taleの少佐と解った時点で感ずいているのだろう……

私がガンダムの衛士だと言うことが……

「ガンダムに乗っていたわ」

と……






冥夜サイド

「ガンダムに乗っていたわ」

この言葉を聞いた瞬間、私は、いや、私達は驚きで息を呑んだと同時に納得もした。

ある意味、私達の予想が当たったからだ。

何せ、訓練の時の鑑は尋常ではない。

異常で異様だった……

ある意味、納得できた部分でもある。

世界で6人しか存在しない衛士。

世界最強の機体、ガンダムを乗る事を許された存在。

それ程の存在ならあの異様な身体能力やあの現場を知っている様な考え方は理解できる。

「何故、訓練兵に混じって訓練を?」

そう質問した私に寂しそうな眼をしてこう言った。

「need to knowの原則だよ……それ以上、貴女達は知る必要が無い事……」

そう言い、鑑少佐はこれでこの話は御仕舞いと言わんばかりに手を叩いた。

「それじゃあ、実機訓練に移ろうか」

そう言い部屋を出て行く鑑少佐……

今の寂しそうな眼は一体……?

私は理解できずに鑑少佐が出て行った戸を見つめる事しか出来なかった。







アメリカ合衆国では……

ジャック・ウィルソンはトールギスに乗りながら考える。

(ようやく、このトールギスに慣れる事が出来た。正直、とんでもないジャジャ馬だが乗
りこなすと中々良い機体だ。このドーバーガンの威力も中々だが、ビームサーベルの出力
が若干、弱いか? フム……改良の余地有りだな……)

ジャックはトールギスを着地させ、ワイヤーラダーで下りてから整備兵に注文をつける。

「もっとビームサーベルの出力を上げられないか?」

ソレを聞いた整備兵はまた無茶をという顔をした。

「無茶言わないで下さい!! ソレが限界なんです!! これ以上は上げれませんよ!!」

整備兵の悲鳴に似た訴えを無視して、ジャックは着替える為に歩きながら言う。

「頼んだぞ!」

「ちょ!? 大尉!?」



ジャックが軍服に着替え終わり、彼の父親であるドライフ・ウィルソンのいる執務室に向かう。

ジャックがノックをすると50代の男の声が聞こえてきた。

「誰か?」

「司令、私です」

その言葉に中のドライフが入室を許可する。

「失礼いたします!」

敬礼をしながらジャックはココに呼ばれた理由を聞く。

「司令、私に何の用でしょうか?」

その言葉に、ドライフは頷きながら答える。

「ウム、貴様に面倒を見てもらいたい兵がいる」

「増員でありますか?」

ジャックの言葉に頷きながらドライフは自分の隣に控えていた女性を紹介した。

「彼女だ……」

女性はジャックに敬礼しながら答える。

「合衆国、陸軍第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊、2戦術機機構小隊から派遣されました。カーラ・ブレイマン少尉であります!」

ジャックより小さいマロンブラウンの髪と青い瞳の女性が敬礼した。

「合衆国、オルタネイティヴ第5計画実行部隊、第1戦術機機構中隊隊長のジャック・ウィルソンだ。君はデルタフォースあがりか?」

「ハッ! そうであります! 大尉のお噂はかねがね伺っております」

その言葉にジャックは目を伏せながら言う。

「敗北の経験さ……我が合衆国にあってはならん汚点だよ……」

その言葉をドライフが中断した。

「兎に角、我が軍の戦略は変わらん! G弾こそ我が軍の切り札、断じて、世界の解放者はオルタネイティヴ4でもまして、Fairy Taleでも無い! 我々、アメリカなのだ! その事を忘れず、任務に励め!!」

「「了解!!」」

ジャックとカーラは敬礼し、退出した。


廊下を歩く傍ら、ジャックとカーラは格納庫に到着した。

ジャックは彼女に与えられた機体を見ながら呟く。

「ホウ……これが君の機体か……我が軍が正式に採用した……」

「サーペントです」

カーラは見上げながら呟く。

ジャックもまた、サーペント見上げながら呟く。

「手塚が作り上げた量産機か……グスタフカールとのコンペテーションで競り勝ち、採用されたと聞く」

その言葉にカーラは言う。

「ええ、我が合衆国の戦略ドクトリンに照らし合わせれば、グスタフカールは高性能ですが合致しません。その点、サーペントは我が軍の戦略であり柱でもあるG弾運用にあっていると言う上層部の判断は間違いないかと……」




合衆国もまた、折れた牙を修復し、鋭さを増そうとしていた。



世界は愈々、再生を迎えようとしていた……

さて、御伽噺は一体何処に向かうのか……

誰もまだ知らない……








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