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[16653] リリカルなのは 蝶の羽ばたき (話を追加しました)
Name: のなめ◆ae0415db ID:98911a80
Date: 2010/03/03 23:27
前書き
『ブラジルでの蝶の羽ばたきはテキサスでトルネードを引き起こすか』
そんなお話


改定中です

いろいろな部分を加筆及び修正しながら上げていきます。
話を増やしたりしていくので、上げていた分にたどり着くのは少し遅くなると思いますがご理解の程をお願いします。

それと書いておかないといけない事が二つできましたので、前書きに書いておきます。

一つは、今後、作者が欝展開だなと判断した場合、前もってお知らせします。

もう一つは、現在感想掲示板で、内容を変えて欲しい人と変えてくれと言う人がそれぞれてきています。
ですので、こう先にはっきり宣言しておきます。

今後、変えないでくれと言った展開が変わっていたり、変えてくれと言っていた展開が変わっていなかったりする事があったとしても、それは、そうする必要があったからだと思ってください。
それで、受け入れてもらえない場合は、作者である自分の力量不足だと判断します。
本当に面白い話なら、どんな展開でも人をひきつける事が出来ますから。





[16653] プロローグ
Name: のなめ◆ae0415db ID:98911a80
Date: 2010/02/20 19:58
どうやら俺は、転生していたようだ。
そのことに気がついたのは、4歳になったばかりのころだった。
あるとき、自分が行った事の無いはずの場所、聞いたことの無いはずの言葉。
そんなものが、自分の記憶の中にあることを、ふとしたことで自覚した。
その切欠が、初めて飲んだはずの紅茶の味を、前に飲んだものよりまずいと感じ取ったからだ。理由としては、少々情けない気もするが、まぁ気にしても仕方が無い。
転生というからには、自分が死んだというのは間違いないだろう。
理由はさっぱり思い出せない。
トラックにはねられたのではないのは、なんとなくは自覚している。
まぁ、自分の死因なんて深く考えるのは気が滅入るだけだから、辞めておこう。



リリカルなのは
蝶の羽ばたき



転生を自覚してから、俺が最初に行ったことは、自分の今いる世界が、どの様な政治や経済、文化などで形成されているかをとりあえず調べてみる事だった。
魔法や、管理局などなんか聞いたことがあるような無いような、そんなこと言葉がちらほら新聞に書かれていた。
何だったかな?と考えていると、母が変った機械をこちらを向けてくる。
何だこれと見ていると、なんと機械が英語でしゃべったのだ。
これはデバイスだと、その瞬間に理解した。
ということはこの世界は、『リリカルなのは』か。

なぜ『リリカルなのは』?とかどうやって転生したのか?とか、考え始めると限が無いのでさっさと考えることを放棄した。
なぜなら『リリカルなのは』には、それほど思い入れが無いからだ。
どうせ転生するなら、ロストグラウンドで拳で語り合う生活のほうが良かったなどと考える程度でしかない。
熱血バトルアクションが好きなため、一応一通りアニメは見ているが、正直な話、細かい設定など知らない事のほうが多いだろう。

4歳児が、フムフムと頷きながら新聞を読んでいる姿は、さぞかわいらしく親の目には映っているのだろう。
現にさっきから母がこっちを向いてと話しかけてくるのだから。
リクエストに答えつつ、新聞をふむふむと読み進める。
『新型の次元航行エネルギー駆動炉開発中止』とな。
中心人物が、家庭の事情でスポンサーと揉めて脱退したの原因だそうな。
リリカルマジカルな世界に来ても、人間の業の深さは変らんな。
とかっこつけた事を考えてみたところで、所詮は四歳児。決まるはずも無く、今度は父も混じってかわいいと連呼しつつデバイスを向けている。


まぁそれはさておき、この世界に来たのだから魔法の一つも使ってみたいと考えて、両親に相談してみるた。すると両親は、
「魔法学校に入学してみたら?それともパパと同じ、管理局員になる為の士官学校のほうが良い?」
と言われた。折角なので、魔法バトルをやって見たいと考え、管理局員にでもなるかと、仕官学校を目指すことにした。

入学試験は、学力及び、魔力資質の検査によって決まるらしい。
魔法はまだ早いと座学を中心に、父にいろいろと教わり試験に備えることに。
父は、この学校に通えるほどの資質は無かったらしいが、それでも努力の結果、陸戦Aの階級は一等陸尉だそうな。


俺は、両親の協力の下、半年後に行われた、試験を突破し無事士官学校に入学。
今年は、そこそこ難関だったらしいが、座学が良くできていたのと、飛行適正があった事。
そして潜在魔力が平均よりも高いことがわかったからだ。
入学式のときには、両親がおおはしゃぎしていた。
それがとても恥ずかしく、でもとてもうれしかった。
愛されている事を感じることが出来たからだ
「将来は海の仕官よー、パパより高給取りね!これで私たちの老後は安泰よ♪」
と母が話していたのは、とりあえず聞かなかったことにする。
後、父が母の言葉を聴いて、少し凹んでいたのも見なかった事にした。


さてさて、士官学校に入ったものの、そこからえらく苦労した。
潜在魔力こそ、平均よりも高いものの、攻撃や防御など、ほとんどの魔法において、ほぼ平均レベルの適正しかなかった。一番適正のあった射撃と砲撃、そしてその次の拘束系でも、平均よりもやや上程度。期待していた、近接戦闘系の適正は、平均よりも下だった。
どうせなら肉体強化に適正があり、ベルカ式を装備しながら、敵を殴る蹴るをしたかったのだが・・・。
まったくこれではただの劣化白い悪魔だ。
とりあえず、射撃と砲撃、そして拘束の三つを集中的に鍛えることにする。
他はそれがある程度物になったら覚えよう。

まずは射撃系からと考え、高町なのはが、魔法を使っている姿を思い浮かべた。
士官学校にいる間にあれくらい出来るようになれば、そこそこ高級取りになれるだろうと思ったからだ。別に、金至上主義という訳ではないが、金は持っていればもっているだけプラスになるという考え程度はある。
というわけで、士官学校の時間割を、必修科目以外を全て、射撃魔法を選択した。
さすがに、それを書いた書類を教官に提出したときには呆れられた。
何事も中途半端にやるよりはいっそ極端に割り振ったほうが良い。
それが、ステ振りの鉄則である。
そう力説すると、教官には、
「まぁ・・、がんばれ」
と、かわいそうな子を見るような目で言われた。





訓練を開始してしばらくして、わかった事が二つある。
一つはどうも俺は普通の人よりマルチタスクが苦手なようで、魔法の同時使用が、かなり下手らしい。
俺が一発の魔法光弾を、ある程度自由に制御できるまで、一年かかったからだ。
しかも制御できるといっても他の魔法を使用せずにである。
なぜそんなにかかったんだ?と聞かれると理由は簡単だと答える。
射撃魔法は攻撃魔法だ。ということは、当然ある程度の威力が必要なのだ。
ただ光る物体を操作するのであればここまで苦労はしない
ようするに俺は、非殺傷設定で人を昏倒させる程度の威力を持った一発の魔法光弾を制御するのに一年かかったのだ。
最初の頃は授業だけだったのだが、いつまでたっても、上手く操作でき無い自分にいらつき、朝や放課後など、可能な限り訓練し、父や教官などにもかなり質問を繰り返した。
そんな事を繰り返したのにもかかわらず、一年かかって一発である。
同級生達は俺以上の威力の魔力弾を、複数操作出来るのが当たり前になっているのにも関わらずである。
他人との差に落胆している俺に父は、
「まだ6歳なんだ。その年で、それだけできれば上等な部類だよ」
そう言って慰めてくれたが、一月であのレベルまで行ったなのはの凄さを知っている以上気休めにしかならなかった。

一年したら、砲撃や拘束を選択するつもりだったのだが、この程度しか出来ない自分にいらつき、次の年も、そのまた次の年もと、結局そのあとも、4年近く、全ての選択授業を射撃魔法に費やした。
両親や教官、級友に何度もいい加減、他の魔法も覚えるようと言われたが全て拒否した。
ここまで来ると、完全にただの意地である。
意地があるんですよ男の子には。



訓練に数年費やしたせいか、射撃に関しては学年でトップを取る事が出来た。
それに、一つしか自由に撃てなかった光弾を、地面にいる状態でならば、今では4つまで自由に動かせるようになったことを考えれば、最初に比べれば進歩したという実感はあった。それに威力も10才でB+クラス程度とまずまずの評価を得ることが出来た。
しかしその代わり、念話と最低ランクの飛行能力など、空戦魔道師の必須魔法以外の魔法がほとんど使えない為、その時点での俺の評価は空戦D-という、とても低いものだった。
同期の中ではぶっちぎって最下位だったのである。
ちなみに学年主席は、同じ年にも関わらず、すでにこの時点で空戦Aだった。
優れた潜在魔力に、いろいろな魔力資質も高い。
しかもイケメン。
さすがに、公表されている射撃の腕では俺が上回ったが、それ以外は、お察しください。



「ちょっといいか?」
あるとき、射撃訓練場でそのイケメンから話しかけられた。

「ん?何かようか学年主席のイケメン」
俺がそう答えると、イケメンは苦笑しながら
「イケメンと言ってもらえるのはありがたいが、俺の名前はコルト=ハーヴェイだ」
そう返事を返してくる。
「そうか、それじゃあハーヴェイ、俺に何か用があるのか?」
「いや、射撃訓練場の主の腕前が気になってね。何せこの間の試験では、ブッチギリだったからなお前の射撃は。
改めてその腕を見てみたくてね」
どうやら、俺の射撃の腕が気になったようで、会いに来たようだ。
「射撃だけならな。総合成績では、お前のブッチギリだった気がするけどな」
俺が、皮肉を込めてそう言うと、ハーヴェイは
「確かにそうだな。ちなみに、最下位もお前がブッチギリだったけどな」
言われてばかりではないぞと言わんばかりに切り返してくる。
俺はともかく、10歳でそういう返し方をするとは、なかなか将来が心配な男だなと考えつつ、気になった言葉があったので聞いてみる事に。
「ところで、さっき言っていた、『射撃訓練場の主』って呼び名はなんだ?」
俺がそう尋ねると、ハーヴェイは、呆れた顔をしながら、
「知らなかったのか?毎日毎日、射撃訓練場に住み着いているんじゃないかと言われるくらい、いつ行ってもいるって所から付いた名だ。
 学園じゃ知らないものは居ないっていうくらいには有名だぞ?」
そう言ってきた。確かに、ずっと居るなぁと漠然と思いつつ、俺はそうかと返事を返した。

「それで、訓練の結果を見てどう思った、学年主席殿」
「今の俺では、届かないレベルの技術だな。威力はともかく、操作技術は俺よりも遥かに上だね。まさに射撃訓練場の主の名は、伊達じゃないって所かな」
ストレートにほめられる事はなかなか無い為、俺は若干照れつつ
「お褒めに預かり至極光栄」
といって、茶化しながら返しておいた。



そんなこんなで、ハーヴェイと、そこそこ話すようになり、お互いが足りないと思っている技能を教えあう事になった。
俺が得意な射撃をハーヴェイに教え、俺は射撃以外の魔法、特に砲撃と拘束をハーヴェイから教わる事になり、そんな関係が一年ほど続いた。

訓練を開始してから一年後、ハーヴェイは普通よりも一年早く卒業し、海に入った。
本人曰く、もう少し早く出る事も可能だったらしいが、自分がある程度納得できるレベルになるまで鍛えていたそうな。
ちなみに卒業の段階で空戦AA+までたどり着いていた。


俺は、その後も訓練を続け、選択授業を砲術と拘束に割り振り、自主錬は射撃といった風で、一年費やし卒業という流れになった。
卒業を目の前に迫った時期に、たどり着けた俺の評価は空戦D+。
射撃と、ラスト一年での追い上げにより砲撃と拘束は標準よりも上回ったが、それ以外が同期生との錬度の差がかなり激しく、特に、空間戦術と、魔力運用の錬度の低さが足をひっぱたのが大きかったようだ。
卒業時の平均が空戦B-~C+という、この学校のレベルを考えれば、俺はかなりの落ちこぼれだろう。
さすがに両親はこの結果には落胆していたが、それも一瞬のことで、
「戦闘技能が無くったって、座学などの実務においてはかなり高い成績が出ているんだ。
 お前も落ち込むんじゃないぞ」
と、励ましてくれた。
我ながら変な子供だと思うが、そんな俺にも愛を注ぎ込んでくれる。
俺は本当に両親に恵まれたと、この事だけは心から神に感謝している。
もっとも、この世界は神ではなく聖王というものを信仰しているらしいが。

ちなみに、卒業式前に聞いた話では、ハーヴェイは管理局の最難関試験の一つである、執務官試験に一発合格したらしい。
その話を友人から聞いた時の俺は、あいつなら当然だろうなと漠然と考えつつ、最近連絡を取っていなかった友人の顔を思い浮かべながら、卒業試験に受かる為の訓練を続けていた。


個人的な話だが、難航すると思っていた俺の就職先が、思っていたよりもあっさり決まった。
ミッドチルダの陸士隊である。
なんでも相手先は、先日海に主力を引き抜かれた上に、何人か怪我人を抱えており、猫の手も足りないほどの人材不足なのだそうな。
就職先を決めるのに難航しそうな俺を、射撃能力が高く、低くはあるが空戦能力があるという理由で、教官が押してくれたことで決定したのだ。
射撃に関しては意地になったが、別に海に拘っていた訳ではないので、そこに決めることにした。
ただ、海に入ってほしかった両親(特に母)にはすまないと思い、ごめんなさいと謝ったのだが、その返事として返ってきたのは、
「何所に行っても、自分に恥じぬよう全力を尽くしなさい」
「安定性に優れ、どんな魔道師の手にもなじむと、陸士隊で評判の一品だ」
母から暖かい言葉と、父から手渡された、一つのストレージデバイスだった。
本当に二人には頭が上がらない。

来週には来てほしいとの事なので、書類確認や、引越し準備で忙しくなるので
デバイスの試運転は、着任後になるな。
さてさて、これから一体どんな未来が待ち受けているのやら。

後書き
加筆及び修正しました。






[16653] 新兵編第一話
Name: のなめ◆ae0415db ID:98911a80
Date: 2010/02/22 22:02
ささてさてやって来ました、ミッド北部にある『第50番隊隊舎』。
かなり年季が入っています。
なんでも、管理局が出来た当時からある建物を使用しているらしい。
隊舎を建て替えるほどの、予算が回ってこないそうな。
陸は予算が少ないらしいからなぁ。





リリカルなのは
蝶の羽ばたき




まずは挨拶をと、コンコンと隊長室の扉をノックし、
「入れ」
との声を確認したあと、失礼しますと入室する。
その姿を確認したとき俺は、一瞬固まってしまった。
なぜなら、目で書類を読みながら、こちらを向いた男が、レジアスだったからだ。
しかし、本編より大分若い。
大体三十路前といったところか。
隊長室で作業をしているところを見る限り、この隊の隊長はレジアスなのであろうが・・
しかし、なんで隊長やってんだこの人?それに何で若いんだろうか?
そんな事を考えつつも、とりあえずは挨拶をしないと、
「イスト=ヴィッツ准尉です。本日からの着任の為の挨拶に参りました」
「そうか、よく来てくれた」
そう言ってきた。

「私はレジアス=ゲイズ三等陸佐だ。この時空管理局陸士50部隊の隊長を勤めている」
本編より大分若いのに、やたら威圧感があるのはなぜだろう。
「我々、時空管理局における陸士隊の主な任務は、文字通り地上の平和を守ることである」
俺ははいと頷く。
「しかし、現在、海の介入等により、陸は深刻な人手不足に陥っており、上手く機能しているとは言いがたい状況だ」
確かにその通りだと、士官学校の授業で理解していた。
「特に我が隊は、士官学校から説明があったとは思うが、一番魔道師ランクの高かった隊士が海に引き抜かれた事と、任務中の怪我により、数名が動けない状況だ」
聞けば聞くほど、本当に悲惨な状況だというのが解る。
「よって、士官学校出立ての新人だからといって、訓練を満足にすること無く、任務に投入せねばならない」
猫の手も借りたいとはこの事だな
「よって、これだけは、確認して置かなければならん」
「はい。何でしょうか?」
「ここでやっていく覚悟はあるか?」
そう言って、真剣な目でこちらを見つめてきた。
これが、中将まで上り詰める男の目か・・。
ならば、こちらも嘘偽り無い言葉で答えないとな。
「私は、両親の『何所に行っても、自分に恥じぬよう全力を尽くしなさい』という言葉と心を持って、今ここに居ます」
と、答えた。するとレジアス隊長は
「そうか、試すような真似をして悪かった。
 明日の朝、朝礼の時に紹介する予定なので、今日は隊舎全体を回って、何所に何があるか位は把握をしておいてくれ。
それでは、イスト=ヴィッツ准尉、今この瞬間からお前は我が隊の一員だ。下級とはいえ自身が士官であるという事を忘れずに、これからの任務に励め」
了解しましたと、そう返事をした後、一礼して退室した。


次に向かったのは、他の部隊の隊員が待機している部屋に行き、誰だと聞かれたので、自己紹介。
無難にこなせたと思う。
ただ、包帯を巻いている人が数人居たことと、部隊全体の空気がピリピリしていたのが、少し気になったところだが。


これからどうした物かと、その場で突っ立ていると、
「イスト=ヴィッツ准尉、隊舎の中は、もう回られたのでしょうか?」
と自分より少し年上の局員に話しかけられた。
キリッとした目が印象の知的美人といった感じの外見だ。
しかし、服の上からでも、鍛えられた体をしているのが解る。
そんな俺の視線を気にしたのか、目の前の局員は
「えっと・・、なにか?」
そう言って、不審そうな目でこちらを見てくる。
「すいません、良く鍛えられた体だなと思って。
 隊舎の中はこれから回るところです」
と答えると、その局員は
「なら、私が、隊舎の中を案内しましょうか?」
と、言ってきた。
「そのお言葉はありがたいのですが、仕事はよろしいのですか?」
隊舎に詳しい人がいてくれた方が助かるが、業務に支障が出てはいけない。
そう思って聞いてみると
「大丈夫です、休憩もかねてですから」
と返事が返ってきた。
「それならお願いします」
「はい。そういえば、挨拶が遅れましたね。
 私はアイシス=アクシオと言います。
 階級は二等陸士です」
改めて、よろしくお願いしますと頭を下げる。
そんな様子を二等陸士は少し笑った顔でこちらを見ていた。


それからアイシス二等陸士に連れられて、隊舎全体を見てまわる事に。
しかし、改めてみてみると本当にボロボロだな。ところどころにひび割れが起きている。
「しかし、准尉も大変なときに来られましたね」
「そうなんですか?」
「この地区は今、かなり治安が悪化の一途をたどっています」
改めて念を押されるほど酷いのか・・。
「部隊長もそう言ってましたね。でも覚悟の上です」
こんな所で怖気づいていては、この先やっていけないからな。
そう返事をするとアイシス二等陸士は
「そうですか、これから共に戦う仲間として期待していますよ」
と言ってきた。これはがんばらないとなぁ。
「期待にこたえられるよう精進します。ところで、あとでこのあたりの地形のデータと犯罪の起き易い場所などの詳しい情報を送ってください」
そう言うと、少し驚いた顔をした後、
「仕事熱心ですね」
そう言って、またこっちを見て微笑んでいた。

隊舎の案内が終わった後に、アイシス二等陸士に、
「とりあえず今日は、自由に隊舎の中を見て、大体の場所を把握しておいてください。
 訓練は明日からになります」
「よろしいのですか?訓練を行わなくて」
と尋ねてみると、
「幾ら人手不足とはいえ、初出勤でいきなり初出動は有り得ませんから。
まずは隊に慣れる事を優先してください」
と言われたので
「解りました」
と、いって二等陸士に情報をもらったあと、部屋に戻って情報の整理を行う事に。

とりあえず、少しこのあたりの情報を把握しておかないと。
もらったデータを確認したのだが、ここは、思っていた以上に治安が悪い場所だった。
ある程度は仕官学校で聞いていたのだが想像以上だった。
未熟な俺では、任務でいつ死んでもおかしくないという状況である。
父にも連絡を取って、ここのことは知っているのかと聞いてみた所、実は父は、ある程度ここの状況は聞いて知っていたそうな。
その事で父に、情報収集不足だとお説教を食らった。自分で調べて自分で考える事を学んでほしかったというのもあって話してくれなかったらしい、
「情報を集める事は、生き残るために、もっとも必要なものの一つだ。正確な情報があれば在るほどお前だけでは無く、お前の隊全体の生存率が上がる。
以後、同じ事を繰り返さないよう、気を付けるようにイスト准尉」
「解りました、フィールダー一等陸尉」
「お前が死んだら、悲しむ人間が居ることを忘れるなよ」
そう言って父は連絡を切った。
確かに父の言うとおり、俺はここに所属するにあたって、ほとんど情報を集め無かった。
正直、隊の名前くらいしか把握してなかったしな。
その為、レジアスが部隊長であることも知らなかったし。
以後気をつけよう。


そういえば、レジアス隊長がなんで若いんだろうか。
ひょっとして、アニメの時期より前なのか今?
そもそも、俺は熱心なファンじゃなかったから、何年に起こったとかまったく覚えてない。
というか、俺の原作知識って大まかな事柄を把握している程度だからな。
あとで、PT事件や闇の書事件を調べておくかな。
とりあえず、資料の整理が思っていたよりも速く終わったので、今日は無しと言われましたが、訓練をしますか。



さてさて、やって来ました訓練室。
俺以外も結構人が居ます。
訓練室の使用方法を教わり、早速訓練を開始。

まずは最初にすることは、父からもらったデバイスの試運転である。
このストレージデバイス『ザクス』は、安定性に優れ、かなり頑丈な代物だ。
しかも、安定性のわりに、拡張性もそれなりにあり、その上メンテナンス性も高い
それに加えて、製作会社や、デバイスのパーツ専門のショップなどから
記憶容量や、並行処理能力など、かなりの種類のカスタマイズ用のパーツが、お手ごろ価格で発売されているなど、至れり尽くせりなものだ。
士官学校時代に支給された訓練用のデバイスに比べて少々重いが、それでもかなり近使い勝手のよさそうな代物だ。
実際に魔力を通してみると、まだ俺用には微調整はされてはいないが、それでもいい感じに魔力がデバイスに伝わっているのが解る。
それじゃあまずは射撃魔法を試して見ますかと、まずは軽くシュートバレットを一発的に向かって撃ってみる事に。

今までの感覚通りに魔法を発動させて見ると、凄い事が解った。
発動までの時間がぜんぜん違うのだ。
今までの約三分の二位の時間しかかってない。
しかも、今までと同じ魔力量でAー判定の威力である。
テンションの上がった俺は、一気に四発起動させてみる
ここでさらにビックリ。
魔法の並列使用における負担が、かなり違うのである。
これならもう二三発位は同時に起動させることが出来そうだ。コントロールが効くかは疑問だが。
まぁそれは、後の楽しみに取っておくとして、砲撃と拘束も試してみますかと起動させてみる。
試した結果、どちらの魔法も今までの魔力消費で威力と発動スピードが三割増という、凄い結果が出た。もう、このデバイスに夢中である。
これを選んでくれた両親に、後でお礼のメールを送っておこう。


さて、今から訓練を開始するのだが、問題はどう訓練するかだ。
これからの、自主錬の方向性で自分の局員としての生き方が決まる
簡単に言えば長所を伸ばすか、短所を無くすかだ。
長所を伸ばすのなら射撃をさらに上げ、短所を無くすのなら空戦技術を上げる事で凡庸性を高める。
普通に考えれば、後者なのであろうが、俺はあえて射撃を訓練することにした。
なぜなら、未だに高町なのはには程遠いからである。
しかし、我ながらマルチタスクが苦手な為、同時に魔力光弾を操る能力が低い。
今の俺では4つを超えると、コントロールがほとんど効かなくなる。
俺の射撃適正は攻撃力に繋がる魔力圧縮に偏っている。
殆どの人は大体、どちらか一つなのが普通ならしい。
威力と同時操作を同時にこなす才能を持つ高町なのはが異常なのだ。
ということで、この度、入局を機に、方向を転換することにしたのだ。
クロノである。
クロノの使っていた魔法に一発の魔法を操作しながら、複数の敵を貫通する魔法が合った事を、覚えていたのだ。
同じことが出来そうな魔法を調べてみたところ、どうやらスティンガースナイプというらしい。後もう一つ、クロノが使ってたっぽい魔法で、スティンガーレイという、威力こそ低いものの、貫通力と速さに優れた魔法も訓練するつもりだ。


とりあえずはと、さっそくスティンガースナイプを使ってみたのだ。
使ってみた感想はというと、クロノもたいがい化け物だというものだった。
この魔法、使用魔力量こそ、それほど多くは無いものの、操作が半端じゃないレベルで難しく、俺の今の技術では到底使いこなせる魔法では無かった。
加速は出来ても、急停止や右折左折などの方向転換でタイムラグがある。
それにスティンガーレイの方も、発動速度や発射速度、貫通力などが足りていない。
二つとも,このまま実戦で使用できるレベルには達していない。
今のところは封印しておこう。
というわけで、俺が今日から訓練するのは、
『魔法操作』『発動速度』『発射速度』『貫通力』の四つだ。
とりあえず、基本魔法のシュートバレットで、その四つを訓練して、基礎能力を上げることにする。戦闘でも主にこの魔法を使用する事になるだろうしね。
また長いスパンで修行することになるだろうなぁ。


とりあえず、先ずは発動速度から鍛えますか。
結局その日は訓練法を考えることに費やし、デバイスを整備スタッフに預け、局員第一日は終えることとなった。





次の日の朝、レジアス隊長による、部隊全体を集めての朝礼が行われた。
普段は毎週一回のペースで行われているらしいのだが、今日は俺が入ったということで臨時で行われる事になった。
レジアス隊長の横で改めて、隊全員に挨拶を行った。
50番隊の隊員は、戦闘員32名と非戦闘員15名の二つを合わせて47名だ。
俺は、その中のスフィア小隊に所属することになっている。
小隊長は、階級は曹長で、何年も勤続しているベテランだそうな、
アイシス二等陸士は、その小隊の所属だそうな。
昨日案内を申し出てくれたのは、俺が配属される事が判っていたというのもあるらしい。
この小隊には今、アイシス二等陸士ともう一人、小隊長の2人しか居ない。
何でも、この隊に所属していたA+の隊士が、この間海に引き抜かれたことと、それに加えて、その穴を埋めようと無理して、大怪我を負った隊士二人が入院中だかららしい。
とてもではないが、小隊として機能しているとはいえない。


朝礼の後は、小隊ごとにミーティング。
これからの予定などを聞くことに。
二等陸士に連れられて、小隊の待機所に行くとラテン系の血がはいってそうな男が一人待っていた。どうやらこの人が小隊長のようだ。
「俺は、ラクティス=カローラ曹長だ。これからよろしく頼むぜ」
と、挨拶してきた。どうやら見た目の通り、明るい感じの人のようだ。
「よろしくお願いしますカローラ小隊長」
と返事をする。すると、カローラ曹長は
「硬いね~。ラクティスでいいぜ!」
「解りました、ラクティス小隊長」
と言う風なやり取りをしている。うまくやっていけそうだなと考えていると、アイシス二等陸士が
「ラクティス小隊長、階級が上の相手いきなりなんて口の聴き方をしているんですか!」
と言ってラクティス小隊長を怒り出した。
「へーい」
と、まったく反省の様子が無い。
ゆるい小隊長と、真面目な隊員の、凸凹コンビって感じだなと考えていると、アイシス二等陸士が、此方に向きながら
「准尉もです!階級が下の相手の口調がおかしい事をアッサリ流さないでください!」
とこっちにも説教を始める。
「いや、僕が部下になるんですから、それが普通なんだとおもって・・・」
しどろもどろになりながらそう言葉を返すと、
「階級がなんの為に有るかを、考えてください!」
と言って、怒られた。
それからしばらく二人そろって怒られた後、改めてミーティングを開始する事に。

「改めて伝えておくが、うちの小隊は本当に余裕が無い。
 今この小隊の活動は、他小隊の援護以外、満足に行えない状況だ。
 その為、本来ならば、新人は二ヶ月は基礎トレを行った後に、任務に就くことになるのだが、お前の場合、その時間をとることは先ず無理だ。」
そう言って、小隊長は真面目な顔で此方を見てくる。
こういう状況では真面目な人なんだなと思いつつ、
「この状況では仕方が無い事と思います」
と、俺は返事を返す。
「だが、幸いなことに、お前は、遠距離からの攻撃を得意としており、クラスも送られてきた資料によればB+ランクの威力を持っている。遠距離戦に限って言えば、ここでは即戦力クラスだ。
というわけで、お前の魔法訓練は、余裕のできるまでの間、射撃の技術を磨く事に専念してもらう。」
即戦力って、文字通り本当に即戦力なんだなと、改めて理解した。
「今現在でB+なんだろう?これから努力しだいでは、もっと伸びるさ」
と、親指を立てながらこちらを見てくる。
そんな様子を見ながら、俺は
「努力します」
そう返事を返した。
思っていた以上に期待されてるみたいだな・・・。
ミーティングの後、早くなじむ為という理由で、小隊メンバーの前でだけは気軽に喋ると言う風に決まった。正直、局員に成り立てなのにいきなり敬語だと、こっちも非常にやりずらい。
アイシス二等陸士も、小隊メンバーの前でだけは先輩と呼ぶ事に決まった。
まぁ、決まったあとも向こうは敬語で話しかけてきてたけど。


俺の訓練メニューは、午前中は筋トレで、午後は射撃訓練に費やされることになった。
訓練初日であるにも関わらず、午前中の筋トレは、思っていた以上にスパルタだった。
何でも早ければ、俺は来週中にも、任務に投入される予定らしいからだ。
そのため、最低限死なないようにするため相当きついメニューを組んだと、小隊長は言っていた。

筋トレが終わったあとに射撃訓練を開始する。
先ずは二人に、俺の使える射撃魔法を見せることになった。
調整を終わったザクスを構え、シュートバレットを一発発動させ、的に向かって撃ってみる。
判定は昨日よりさらに上がってAランクだった。
「おい、なんか聞いていた話と違うぞ」
小隊長がこっちを見ている
昨日、新しいデバイスで試してみたら、今までよりもいろいろ能力が向上していたんです。今までの数値は士官学校の支給品で出た数値です」
「新しいデバイス?少し貸してみろ」
そういって、俺のから小隊長がデバイスを受け取って観察している。
「これはザクスか。なかなか良いものを持っているのだな。」
「はい、両親が管理局に入る時の祝いにと。陸士お勧めの品だと父は言ってました」
「そうか、そういえば、イスト准尉の父親は、一等陸尉だったな」

そういえば全力で撃ってなかったと伝えると、撃ってみろと言われたので一発撃ってみた。
判定はA+。
二人ともかなりビックリしていた
次に速度と操作性能、そして発動速度を計ってみることに。
四発を同時起動させ、四つの的に命中させる。
すると出た判定は威力A-速度A操作性能A-発動速度B-だった。
隊長曰く、これだけできればこの段階ですでに、射撃に関して言えばAランクだそうな。
ちなみに、ついでに砲撃と拘束も計ってみたのだが、こちらもあがってどちらもC+だった。威力はともかく、発動速度が、どちらも遅いのがランクが低い理由らしい。
俺の魔法は、発動してから狙い打つまで、やたらと時間がかかるからなぁ。
飛行魔法?現状ではまだお察しくださいレベルだ。多少速度が速くなったところで、技術が追いついていなければ、大して変らないからだ。


とりあえず、昨日考えていた通り、これからの訓練では、弱点である発動速度を鍛えたいのですがよろしいですか?と聞いてみると、OKとの事。
了解を得たので早速開始。


訓練としてはやることは簡単だ。
的に向かってショートバレットを放つ。
一分間に、何回唱えることが出来るかをチャレンジするだけ。
現在、俺が一発を放つのにかかる時間は、呪文発動まで4秒、敵を認識するのに3秒、放てとデバイスに伝えるまでの2秒の計9秒だ。
したがって1分間に放つことが出来る魔法は6回だ。
その回数を増えれば、発動速度が上がっているという事になる。
というわけで、俺はその日から、発動から発射までの動作を、魔法訓練の間中、ずっと繰り返すことにした。
小隊長とアイシス先輩は、向こうで近代ベルカ式のデバイスを装備しながら、肉弾戦の訓練を行っていた。今の俺では目で追うのがやっとのレベルだ。
正直、拳で語り合っている二人が羨ましかったりもするが、仕事に好き嫌いは無しだと自分を叱咤しながら、訓練に集中した。


訓練の後、用事があるので失礼しますといって、アイシス先輩と別れて、小隊長と二人で飯を食べる事になった。
「聞いてはいたが、恐ろしくバランスの取れてない魔道師だなお前は」
そう言って、小隊長は笑っている。
「射撃ばっかりやっていたもので」
 我ながら偏りすぎて入るなと自覚はしている。
「まぁ、そのお陰でお前が着てくれたんだから、そのヘンテコぶりには感謝しないとな」
そう言って、笑っている。
「買いかぶりすぎですよ」
「そうでもないさ。実際の話、陸の魔道師で、一部とはいえ、技能がAランク超えている人間はかなり少ない。俺だって陸戦B+だからな。アイシスだって陸戦C+だ」
「そうですか・・・」
実際のところ、凄いといわれても、なのはやクロノを知っている俺としては、自分のヘッポコ加減には泣けてくるんだがなぁ。
「なんにせよ、お前は、お前が思っている以上に期待されているって事だ。
 何せ、久々の士官学校出だからな。
 これからよろしく頼むぜ」
そう言って、こちらを見てくる。
「はい、よろしくお願いします」
俺は、上司に恵まれたようだ。




デバイスを整備スタッフに預け、自分の部屋に戻った後、俺の知っている事件についてネットで調べて、わかった事が一つある。
最後に起こった闇の書事件は、二十年近く前だった。
レジアスが部隊長をやっている事から考えて、今はクロノの親父さんの死んだ、前の闇の書事件より前なのだろう。
おそらく、これから何年かの間に、はやての前の主が起こす闇の書事件が起きる可能性が高い。
ということは、局員である俺は、人殺しをなんとも思わない、闇の書の守護騎士達と戦わないといけない可能性がある。
Sクラスの戦いに巻き込まれるなんて想像もしたくないし、俺程度の魔道師を、守護騎士達との戦闘に投入するとは考えにくいが、自衛の為強くなっておかないといけない。

しかし、何年に何が起こったとかちゃんと把握して置けばよかったな。


あれ?そういえば、なんかもう一個、昔に起こった事件があった気がするが・・・。
たいした事が無いから、きっと忘れているんだろう。


後書き
改定しました。
主にラクティスとアイシスの事と、イストの階級を准尉に変更しました。
しかし、階級が一気に上がると直さない箇所がかなり増えたORZ
立場が大きく変わったことにより、周りの対応が変わったのがやっぱり原因かなぁ






[16653] 新兵編第二話
Name: のなめ◆ae0415db ID:98911a80
Date: 2010/02/22 22:03
あれから一週間、訓練の成果が少しづつ見え始めてきた。
一分間に6回から7回になったのだ。
といっても、時間にして3秒ちょっと短縮できただけなのだが。
一発に換算しても0.4秒くらいだ。
だが、そのたった0.4秒が生死を分けたりするので、モチベーションを上げるのには十分だ。
さぁ今日もがんばろう。

リリカルなのは
蝶の羽ばたき

訓練を開始しようと、準備していたのだが、隊舎中にサイレンの音が響いてくる。
小隊長から、前に言っていた通り、今日から任務に連れて行く予定だと言われた。
初めての任務と、かなりガチガチに。
「私達は、今回は後方支援だから、実際に戦う事は無いと思うから。だからそう緊張しないでくださいスフィア5」
そういって、アイシス先輩は励ましてくれるが、はっきり言って、ここで緊張を緩める事が出来るほど、心が強い訳ではない。
俺は、前世で警察官や自衛官だった訳ではないので、当然といえば当然だ。



今回の出動は、とある麻薬密売グループが、複数の人質を盾に立てこもっているとの事だ。
俺たちに与えられた任務は、確保を目的としている他の小隊の支援だ。
一人増えて三人になったとはいえ、その一人の錬度が低く、小隊全体のチームワークも出来て間もない為、多少練習した程度だ。
そんな小隊を、いきなり前線に出すほど、部隊長の指揮能力は低い訳は無い。
しだから今回は後方支援及び、もしもと言うときの予備戦力なのだろう。
何回か、こういう体制で出動した後に、うちの小隊を前線に出すつもりなのだろう。
そんな事を、指揮車の側で考えながら待機していると、小隊長から、部隊長がお呼びだと言う指示が来た。
何か問題があったのかと考えつつ、部隊長の元に向かう事に。



小隊長と共に、指揮車の中に入ると、部隊長が難しい顔をしながらこちらを向いてきた。
「スフィア5。スフィア1から報告を受けたのだが、お前がA+の射撃が行えると言うのは本当か?」
訓練のときの話を、どうやら小隊長が報告していたようだ。
「はい、この間測定したとき、そう結果が出ました」
そう答えると、部隊長は真剣な顔をしながら、
「本当か?ならばやってもらいたい事がある」
と、言ってきた。
「一体、何をやればよろしいんですか?」
と尋ねてみる。すると部隊長は、
「C-5地点にあると思われる、犯人が逃走用に準備している装甲車の破壊だ。」
そう言ってきた。
「その装備は、攻撃性能こそあまり高くは無いものの、魔法障壁が張られており、最低でもAランクを超えないと破壊できない。」
装甲車のスペックの書かれたデータをこちらに送ってくる。
「なるほど、それを遠距離から破壊することで、敵の逃走を阻止するのですね。」
「その通りだ。ここで、奴らを逃がせば、また同じような事件が起き、そのたびに多くの力を持たぬ市民が、危険にさらされる事になる。
なんとしても阻止せねばならん。やってくれるな」
「了解しました。確実に撃破します。」
俺の返事に、部隊長はうむと頷いた。
「なお、スフィア小隊のほかのメンバーは、スフィア5が狙撃を完了するまで、スフィア5の防衛に専念するんだ」
「それでは、狙撃ポイントに向かいます」
「頼んだぞスフィア5」



指揮車から降りると、小隊長に
「初出動でいきなりの重要な任務だな」
そう話しかけられた。
しかし、俺はすぐに返事を返す事が出来なかった。
俺は、自分に与えられた任務がとても重く感じていたからだ。
自分が失敗すれば、犯人の逃亡を許す可能性がある。
その事がとても重かったのだ。
だから俺は、
「そんなプレッシャーを掛けないでください、小隊長」
そう言って、睨み返すことしか出来なかった。
しかし、
「まぁ、最悪失敗したら、俺達二人が犯人をぶちのめしに行くから大丈夫さ」
フォローはしっかりするさと、手をひらひらさせ、こちらを向いて笑っていた。
その様子を見た俺は、少しだけ、緊張をほぐす事が出来た。
「それじゃあスフィア小隊、出撃だ」
「はい」



5分後、狙撃ポイントに到達すると、大体200メートルくらい先に装甲車が止まっていた。
これが破壊対象なのだろう。
『現在、犯人グループはそちらに向けて逃走中。他の逃走ルートを考える間を与えないために、なるべく引き付けてから破壊してください。犯人の逮捕は他の小隊が行います』
という、指揮車からの指示に了解しましたと返事をする。
「奴らの度肝を抜いてやれ」
と、隊長が俺をあおってくる。
煽らないでくださいと、言い返しつつ、射撃の体制に入った。
訓練通りにすれば、問題無く命中させる事が可能な距離だ。
しかし、破壊するといったものの、まともに狙撃して破壊できなかったら困るな。
スペックを確認していると、気が付いた事があった。
あれ、これってひょっとして・・、よし、良い考えが思いついた。
「小隊長、ちょっとよろしいですか?」
「なんだ?」
方法を話すと、面白い事を考えるものだな、許可は取ってやると言われた。
部隊長からも、OKと、返事が返ってきた。



さぁ狙撃開始と、狙撃体制に入り、集中しようとすると突然小隊長が
「破壊できない方に、一枚」
と、言い出した。
俺も私もと、通信を聞いていたオペレータの何人かも、満場一致で出来ない方に賭けている。
すると最後は部隊長まで、
「私も外す方で賭けさせて貰おう。スフィア5外したら、任務後の一杯はお前持ちだ。」
とさらに追い討ちを掛けてくる。
「なんてひどい部隊だ。僕の味方はいないのか」
そう愚痴ると、アイシス先輩が
「スフィア5。破壊できれば、私と准尉の二人で相取りです。後できっちり、みんなから取り立てましょう」
そう言って、先輩だけが、俺に掛けてくれていた。
「わかりましたアイシス二等陸士。あとで、小隊長の目の前で、うまい物をたらふく食べてやりましょう」
その言葉を口にしたとき、俺の体からは、すでに力が抜けていた。




結果としてみれば、破壊任務は思っていた以上にアッサリ達成できた。
どうやったかといえば、方法は簡単。
まず、俺が全力で魔力を込めた誘導弾を装甲車の下に潜り込ませる。
スペックに書かれていた通り、質量兵器禁止の世界に、地雷はないので、底からの攻撃はあまり想定されてはおらず、底の障壁は側面部などに比べて、だいぶ薄かった。
戦闘機人のように、地面をもぐれるやつもいるが、そういう奴に対処できるほどの装甲なら、そもそもAランクでは破壊できないだろう。
犯人が近づいてきたと同時に装甲車の底からエンジン部分を破壊するよう上昇させ、装甲車を完全に動かないようした。
犯人は、車に乗り込んだものの、車が動かないことに動揺し、その間に他の小隊が周りを取り囲み投降を呼びかけ、逮捕となった。
俺は、狙撃ポイントからその様子を眺めていた。

『よくやってくれた、スフィア5』
部隊長から直々の通信が送られてきた。
小隊長と先輩も、よし上手く行ったといって喜んでいる。
しかし、俺には気になっていた事があった。
「質問があるのですがよろしいですか?」
『何だ?スフィア5』
人質の安否はどうなっていますか?と質問すると、周りの空気が一変した。
数秒間黙ったあと、部隊長は、すぐにわかる事かと画面越しにつぶやき
『複数の女性が犯され、男性が2人すでに死亡していた』
という、予想していた通りの最悪の答えを返してきた。
「その様子を、直に見てもかまいませんか?」
『・・・解った、現場に待機している小隊に伝えておく』
「有難うございます。」
そう言って通信を切った。

別に面白半分で見に行くつもりではない。
ここで仕事をする以上、必ず見なければいけないものだろう。
ならば早い方がいい。
そう思って質問したのだ。
その様子をみていた二人は、俺が何を考えているか察してくれたようで、何も話しかけてはこなかった。
「すいません、行ってきます」
「付き合うぞ?」
「いえ、大丈夫です」
小隊長の心遣いを断りつつ、一人で立てこもっていた建物に向かった



犯人が立てこもっていた建物に着くと、すでに現場検証が行われていた。
俺が近づくと、入り口に立っていた隊員に、
「イスト准尉か?」
と尋ねられたので、はいと答えると、
「話は聞いている。心をしっかり持てよ」
という返事が返ってきた。


現場を見てみると、覚悟を決めたつもりでここに来たのだが、それがまったく意味を成さないほど酷い状況だった。
部屋の中には、血とそれ以外の体液の匂いが充満し、隅に纏められていた男性の遺体は、あからさまに暴行を受けた後が見られた。その後には、四肢が欠けていたものまであった。どうやら立て篭もっていた間のストレス発散として、男は暴行を受け、女は犯されていたのだろう。
これを見た瞬間俺は、今生きているこの瞬間が、アニメの中ではなく現実の中だと理解した。
頭ではなく心が理解したのだ。
今までの俺は、何年も暮らしているにもかかわらず、どこかでまだアニメの中だと心の隅で思っていたのだろう。
『リリカルなのは』の話である以上、ご都合主義で、自分の目の前では、本当に悲惨な状況にはならないと。
しかし、違った。
ここにある遺体は、この中を充満している血と体液の匂いは、俺にとっては紛れも無く現実だ。

俺は、ここに居る事が出来ず建物の外まで走り出て、胃の中にあったものを全部ぶちまけた。
何度吐いたか解らない位吐いたのにもかかわらず、まったく吐き気がおさまらない
仕舞い目には、立っている事すらできず、四つんばいになって、それでも何度も何度も吐いた。
涙と鼻水と唾などで、顔がべとべとになっているにもかかわらず、それを拭う余裕すらなかった。

どれ位そうしていたかは、解らない。
時間間隔が麻痺していたのだ。
そんな俺を引き戻したのは、頭の上にかぶせられた濡れタオルと、
「これを飲め」
といって水を手渡してきた部隊長の声だった。

濡れタオルで顔を拭いていると、部隊長は、何も答えないでいいからそのままでいいから聞けと言って来た。
俺が頷くと、静かにしかし力の篭った声で話し出した。

「ここでは、あんな状況が日常茶飯事だ。力の弱いものは、虐げられ奪われる。
 ここ以外の場所でも同じような悲劇が、繰り返されている。
 それを阻止し、地上の平和を守る事が、我ら陸士隊に与えられた使命だ。
 イスト=ヴィッツ、今改めて聞こう。お前は『陸士』を続ける意思はあるか?」
そう言って俺を見つめてくる。

引き返す機会があるとするならば、ここだけだろう。
ここから先に進むのなら、俺は、この世界の住人イスト=ヴィッツとして生きる事になるだろう。
なぜなら、ここが現実だと認識してしまったからだ。
このまま、陸士を続けるのであれば、前世を持っているや、原作を知っているなんて何の意味も無くなるだろう。
しかし、ここで引いていいのか?あの状況を見て、あれを打破する力を持って、違う道を選ぶ事が出来るのか?
考えるまでもない、答えは決まっている。
俺は、顔を拭きながら、立ち上がりこう言った。
「当たり前です」

俺の答えに満足した後、部隊長は、すぐ後ろに控えさせていたスフィア小隊の二人に、ゆっくり帰ってこいと言って去っていった。


「改めて言っておこう。これからよろしく頼む」
と、そう言いながら、俺の背中を叩いてくる小隊長。
「期待していますよイスト准尉」
そういって微笑む先輩。
俺は、このメンバーでやっていける事を幸福に感じていた。




結局この後、腹が減っただろうと、三人で飯を食べに行った。
食欲がないと返事をすると、
「先ほど、たらふく食べるといっていただろう?金はたんまりある。心置きなく存分に食え」
手に持ったお札をこちらに見せながら、小隊長命令だ、食えと言って来た。
俺は、無理やり詰め込みつつ、詰め込まれつつ食べた。
その間中ずっと、小隊長は歓迎会だと言って馬鹿騒ぎをしていた。
あれを見た俺を、励ましてくれているのだろう。
やりすぎて先輩に、首から堕とされていたのは見なかった事にする。




後で知った事なのだが、この任務で、装甲車を破壊せずに手に入れる事が出来たため、その中に残された、犯人が逃走時に持っていた資料などが丸ごと手に入った。
そしてこの時の資料が、2ヶ月後に行われた、他の隊と合同で行われた麻薬ルート壊滅作戦において、かなり重要な意味を持ったらしい。
その功績により、その作戦が完了した後、部隊長及び、この作戦に関わった何人かの隊士が昇格する事になった。
俺は流石に入ったばかりだったため昇進は無かったが、代わりに一つ勲章がもらえた。
これからもがんばろう。






あとがき
改定しました。
取り合えず、今回はここまでです。
イストの階級は、今回は最初から高い為、昇進はしません000000000。




[16653] 新兵編第三話
Name: のなめ◆ae0415db ID:98911a80
Date: 2010/03/01 21:50
泣いたり吐いたりを繰り返し、無様な事この上ない初出動から三ヶ月が過ぎた。
出動回数がそろそろ三桁に届きそうだ。
二日に三回出動とか普通にあったからな。
さすが、治安の悪さに定評がある地域だ。
あった出動の六割が狙撃任務だった。
成功率は約八割。
さすがに百発百中という訳にはいかなかったが、部隊長にはそこそこ期待されているようだ。
俺としては、そんなつもりは無かったのだけれど、すっかり隊付きの狙撃手扱いに。
訓練の大半が、未だに射撃に大幅に偏っているのはそのせいだ。
俺としては、クロノのようなバランス型狙いなんだがなぁ。
最初に比べれば、近接や陸戦の訓練の時間は取れてはいるが、空戦ができる教官が、陸士には殆どいない為、未だに空戦のランクは低いままだ。
空戦の戦技教官は、その殆どが、本局の局員の指導を優先してしまうというのが今の管理局の実情。確かに、次元をまたぐ事件の対処とかを考えると、仕方が無いと理解は出来るが・・・。
よその部隊の訓練に混ぜてもらうという手もあるが、今の俺の技能だと他の部隊の訓練についていく事すら出来そうにないため、断られているらしい。
せめて、練習メニューを組んでくれる人がいれば、少しは変わるんだがなぁ。


リリカルなのは 蝶の羽ばたき



何か伝手はありませんかと部隊長に尋ねた所
「古くからの友人に凄腕の空戦型がいるにはいるが、あいつは近接のベルカ式だ。
お前とは対極に位置する男だからなぁ」
と言われた。
「ひょっとして騎士ゼストの事ですか?」
「ん?あいつの事を知っているのか?」
「部隊長とは、親友の関係だと小隊長が話していたのを聞いた事が有りまして」
小隊長がえらく熱く語っていたのをはっきり覚えている。
「なるほど。あいつはゼストの事を尊敬しているからな。
 うちの隊舎に来る度に、手合わせをしている程だ」
「そうらしいですね」
拳と拳で語り合い。
俺も近接型がよかったなぁっと考えていると。
「お前も、あいつが今度来た時にでも、揉んで貰うといい。
 いい経験になるだろうからな」
「はい」
確かに、高ランク魔道師との実戦形式の訓練は、多いに越した事は無い。
それも騎士ゼストが相手であるならば、何年か後に起こる可能性が高い、闇の書事件の守護騎士戦に対する、今できる最大の事前策になるだろう。
最終的にはシグナムに負けたとはいえ、ヴォルケンリッターに何度も勝っていたからな。
どっちが強いかは判らないけど、少なくとも互角に戦えるだけの実力はある事は確かだ。
「それにあいつも、一度お前に会ってみたい風な事を話していたな。近い内にあえるよう段取りはしておくぞ」
「お会いできる事を、楽しみにしていますとお伝えください」
「分かった。とりあえず、空戦の教官については、探しておいてやる。」
「お願いします」

闇の書対策については、ある程度前進したが空戦教官のほうはさっぱりだな。
さて、どうしたものか。



「なるほど、それで久々に連絡してきたという訳か」
「ああ。切実な話だからな」
久々に、コルトと連絡を取った俺は、事情を話してみることに。
なぜなら、俺が直接知っている中では最高ランクの空戦魔道師だからだ。
執務官になり、幾つもの実戦を越えてきたコルトの魔道師ランクはAAAにまで上がっている。
「やっぱり厳しいのか、そっちは?」
「ああ。最近の犯罪のデータを送ろうか?」
「頼む」

俺が送ったデータを見て、こるとはかなり渋い顔をしている。
執務官として、やっぱり思うところが多々あるのだろう。
「聞いていた以上の場所だな。確かにこれだと、今のお前の技能じゃかなり厳しいな」
「言ったろ?かなり切羽詰ってるって」
この間一件の後、少しはましになったが、あくまで少しだ。
まだまだ、状況を改善するにはいたっていない。
そのために、高い空戦技能の持ち主が部隊には必要なのだ。
「空戦魔道師で教官のできる人材か・・・」
俺の必死さが伝わったのか、通信越しにでもコルトが真剣に考えてくれているのがわかる
「心当たりはあるか?」
俺がそう尋ねると、コルトは少し間を置いてから、
「あるぞ」
そう答えた。

「本当か?」
「ああ、教導隊に非常勤で手伝いを行なっている凄腕だ」
「おお!」
非常勤とはいえ、教導隊という、教える事に特化した集団属している以上、かなりの凄腕に違いない。
「姉の婚約者つがなりでな。何度か有った事はあるし、手合わせもしてる」
「へー・・、どっちが勝った?」
「俺が負けた。完膚なきまでにボコボコにされた」
「お前がか?」
こいつを、ボコボコにできるほどの腕前とは、よっぽどのレベルなんだな。
何せコルトは、士官学校では敵無しだったからな。
俺も今まで一度も勝てたことが無い
「ああ・・。最も相手は二人掛りだったけどな」
「へー・・。その人にお願いできそうか?」
「お義兄さん経由で頼めば大丈夫だと思うぞ。お義兄さんは平和を守るための努力を怠らない人だからな。きっと協力してくれるはず」
「そうか、ぜひお願いする」
「まぁもっとも、直接指導じゃなくて、練習メニューの方だけだろうがな」
「それで十分だ。それだけでも、有ると無いとでは段違いだからな」
持つべき物はやっぱり友だな。
そんな事を考えていると、コルトは、少し照れくさそうにしながら
「気にするな。俺も局員だからな、地上の平和に手を貸すのは当然の事さ」
そう返してきた。


「ところで、そっちはそんな感じなんだ?」
「ん・・・、ちょっと厄介な事に巻き込まれた」
何か大きな事件でもあったのだろうか?そう思って聞いてみると、
「いや、ごく個人的なことだ。とんでもなく厄介な奴と、模擬戦を行なう事になってな」
「厄介な奴?どんな風に厄介なんだ?」
「ああ、同じ年の男で、ランクは既に空戦S。なんでも古代ベルカ式のデバイスの使い手で、聖王教会の名門の出らしい」
「なるほど」
「この度管理局に入る事になって、周りに対する牽制の為に、箔を付けたいらしくてな」
「それで?」
コルトは、一度そばにあった飲み物を口にして、話を続ける。
「自分で言うのもなんだが、俺は管理局で屈指の難易度である執務官試験を一発合格する位には優秀だ。
そんな俺を倒す事で、『優秀な人材を管理局に送りましたから、御贔屓にお願いしますね』と言うアピールを行ないたいらしい」
「かませ犬に選ばれたって事か」
「そういう事。」
心底いやそうな顔をしているのが、モニター越しにでもわかる。
「それに、どうも相手は俺のことを前もって知っていたらしくてな。何人か居た候補の仲から俺が良いと言い出したらしい」
たしかに、こいつの優秀さは、とてもじゃないが凡人の持ちうる物ではない。
聞いた話によると、同年代では『最良』の執務官と呼ばれているらしい。
それを倒せば、箔もつくだろうな。
俺は自分が凡人でよかったと、心のそこから思った。

「まぁなんにせよ、拒否権は無いからな」
「そうか。とりあえず、模擬戦の当日までには、訓練のメニューをもらえる段取りはしておいて悔いれよ。お前が入院して伸びましたとか勘弁してもらいたいからな」
俺がそう言うと、コルトは不機嫌な顔をしながら
「少しは、俺の心配もしろよ」
そう言ってきた。
「ん?必要ないだろ?」
「何でだよ」
「だってお前が、簡単に負けるとは思ってないからな」
嫌々な顔をしながらも、コルトの眼は、簡単にはやられるつもりは無いと語っている。
それが判るくらいには、関わっているからな。
俺がそう言うと、ニヤッと笑いながらコルトは
「まぁとにかく、やれるだけはやってみるさ」
とそう答えた。





数日後、コルトから送られてきたメールを確認してみると、そこには頼んでおいた練習メニューと、
『コルト=ハーヴェイVSフォルクス=ワーゲン』
そう書かれた、模擬線の様子を撮影した動画が添付されていた。
空戦の参考にしたいから、撮影して送ってくれと頼んでおいたからだ。
その動画に一言、コメントが付けられていた。
『相手は規格外につき、参考になりそうにも無い』とかかれてあった。
規格外?どういうことだ?
とりあえず、近い内に、小隊のメンバーで内容を見てみるかな・・・。





後書き

話そのものを追加しました。
フォルクスについては、次の回に書きます。







  



[16653] 新兵編第四話
Name: のなめ◆ae0415db ID:98911a80
Date: 2010/03/04 21:15
小隊の皆で見た模擬戦のビデオは、書かれていた通りまったく役に立ちそうに無かった。
理由は、簡単に言えば、フォルクスという男が文字通り規格外だったからだ。
フォルクスの戦い方は、いたってシンプル。
『敵に近づいて叩き切る』
ただそれだけだった。
だが、コルトの魔法やバインドをまったく気にせず、というよりも、まったくダメージを受けた様子すら見せず、ひたすらに突っ込んで行く。
それもすさまじいスピードでだ。
あまりの事に、コルトは絶句した顔のままで、逃げる一方だった。
それはそうだろう。
執務官で空戦ランクAAAであるコルトは、いうまでもなく強い
魔力量や戦闘技術は管理局の上位5%に、十分入るレベルだ。
それが、まったく相手にすらなっていない。
なんだかんだで、十五分がたった位で、コルトが魔力切れを起こし、フォルクスに撃墜された。

試合が終わって映し出されたフォルクスの様子は、魔力切れ一つ起こした様子すら見せない所か、元気が有り余っていますと、体で表現している様子だった。
そういえば、ビデオで見る限り、模擬戦の最初に比べて、最後のほうが、攻防速すべてにおいて明らかに上昇している。
スロースターターなのだろうか?

ビデオを見終わった後小隊長は、
「あの相手に良く15分持ったな。さすが本局の執務官といったところか」
逃げに徹していたコルトを、かなり褒めていた。
「フォルクスの事はどう見ます?」
と俺が尋ねると、
「規格外の猪をどう評価しろと?」
と、一言できって返されてしまった。

とりあえず俺は、このビデオを見ながら空戦においてのうまい逃げ方を学ぶべく、勤務時間の後、寮に帰って繰り返し見る事にした。



リリカルなのは
蝶の羽ばたき



最近徐々にではあるが、うちの管轄の地区の治安が良くなってきた。
平和に役立っているんだなという実感がわいて、モチベーションが上がる。
その為に貰えた、スフィア小隊久々の一日オフ。
俺は、訓練用プログラムを考えてくれた教導補佐官と、その二人に取り次いでくれたコルトのお義兄さんにお礼の品を送るべく、町に出るつもりだった。
それが終わったら、欲しいデバイスのパーツがあったので、俺は街のパーツショップに行くかな。
その事を伝えると、俺と同じく二人とも街に出るつもりだそうな。
俺たちは小隊長の車で、一緒に町に向かう事にした。

先輩は、服や小物を買うつもりらしく、服装も普段と違い、ロングスカートだ。
白いニットカーディガンと合わさって、いつもとまったく違う印象だ。
よく考えれば、先輩ってまだ十代なんだよなぁ。
よく似合ってますよと伝えると、少し照れた顔をしながら有難うと言ってきた。
小隊長はナンパに行くらしい。
小隊長に、
「美人ならすぐそばにいますよ」
と言うと、
「乱暴なのはお断りだ」
と言って、小隊長には両腕でバッテン印を作っている。
しかし、先輩の
「今日一日、ベットで寝て過ごしますか?」
の一言で、態度をベタ褒めに一瞬で変えていた。
変わり身のえらく早い、小隊長だ。
その様子を見ながら、俺は先輩の二人で、思いっきり笑っていた。



二人と別れた後、御礼の品を買うべく、デパートへ。
しかし、なかなかこれだというものが見つからない。
コルトのお義兄さんはともかく、猫の使い魔の欲しがる物って何だろうか・・。

俺の訓練プログラムを考えてくれたのは、二期に出てきたグレアム提督の使い魔である、リーゼ姉妹だった。
そのとき、ふと思ってコルトにお義兄さんの名前を聞いてみると、クライド=ハラオウンと言うらしい。
という事はと、まさかと思い確認してみたところ、お姉さんの名前は、リンディだった。
そう、コルトはクロノの叔父だったのだ。
まぁ、まだ生まれてないらしいが。


俺が尋ねたのを、少し不思議に思ったのか
「それがどうかしたのか?」
と聞いてきた。そんな俺は、表情を変えずに
「いや、なんでもない」
と返事をしておいた。

そういえば、『リリカルなのは』でリンディさんって、兄弟いたのかな?
詳しい設定なんて覚えていないからな、ひょっとしたら居た設定なのかもしれないな。
まぁ、俺の同類って可能性はあるが、それを判断するのはちょっと無理があるかな。


いったんお礼の品を保留にし、やって来ましたパーツショップ。
豊富な品揃えが売りの、有名店だ。
俺の今日のお目当ては、遠距離射撃用のスコープパーツだ。
そろそろ、裸眼で捕らえるのは厳しい距離を、狙撃させられる事になりそうなのだ。
サーチャーである程度は補強しているが、そろそろ、狙撃専門のパーツが欲しくなったのだ。
ここに来る前に調べて来た情報では、ザクスによる遠距離狙撃はどうやら見た目が銃のスコープの様な物を使うか、メガネ型のデバイスに連動させると言う、二つの方法があると、HPでは書かれていた。
というか、その時調べて解ったのだが、どうやらザクスは狙撃向きではないらしい。
多くの狙撃手は、銃器型を選ぶのが普通らしく、ザクスの狙撃用パーツはあくまで、あればいいかな的な物だった。
かといって、狙撃用に銃型デバイスを組み直すという選択肢はない。
何よりザクスには、思い入れがあるから。

とりあえず、遠距離が見えるのなら何でもいいかなと思い、適当に見比べていると、
「お客様、どういったものをお探しでしょうか?」
と、後ろから話しかけられた。
振り返ってみると、声を掛けてきたのは、お店のエプロンをつけた、同じ歳位のメガネを掛けた金髪の女の子だった。
あれ?この子、なんかどこかで見たような気がするなと思いつつ、
「はい。ザクス対応の、遠距離対応型視覚補強パーツを探しているんです」
と、なるべく解りやすく説明する。
すると店員さんは、
「ああ、それならこちらに良い商品がありますよ」
と言って、メガネ型デバイスを持ってきた。

「こちらの商品は『ジムカ』と言いまして、単純な遠距離を見るという機能こそ、スコープ型に劣りますが、その代わり、視覚可能な範囲の魔力濃度を把握する機能が備わっています」
なるほど、遠距離狙撃となると、魔力濃度を測れるのは大きいな。
「次に、暗闇での狙撃に必須な暗視能力」
たしかに、夜の狙撃も多かったからなぁ。
俺の失敗も夜が多かったし。
「あとはデバイスの自己診断プログラムと連動させる事により、デバイスの状態が常時 視覚化されるという機能も、便利ですね」
戦闘中もデバイスの状態がわかるのもありがたいな。
「あとは、お客様のデバイスがザクスですので、純粋な狙撃手というよりも、狙撃が得意な砲撃魔道師でしょうから、狙撃体制を取らずに視覚補助が得られると言うのは大きいと思われます」
「なるほど、確かに普通のスコープ型を取り付けるよりも、メリットが多いですね。
 それをお願いします」
俺がそう答えると、店員さんも自分のお勧めの品物が売れたのが嬉しかったらしく笑顔で
「お買い上げ有難うございます」
と言ってきた。
そういえば、肝心な事を聞き忘れていたな。
「そういえば値段は幾らですか?」
「こちらになります」
と店員さんが値札をこちらに見せる。
それを見た俺が、返す事の出来た言葉は、
「三回払いでお願いします」
ただそれだけだった。
先ほどの笑顔の意味が、違って思えたのは、ただの気のせいだと思いたい。


ザクスとジムカを店員さんに渡し、連動機能を調整してもらう事に。
すると店員さんが、
「お客様の設定や魔法の利用履歴だと、今のパーツよりも記憶容量が今より落ちますが、そのかわり、高速処理と並列処理機能が向上するよう、パーツをカスタマイズしなおした方がいいと思います。
それにフレーム部分をロングバレルに変形可能な可変パーツにし、任意で着脱可能なサブグリップをつけると、射撃体勢が、安定すると思います」
さすがザクス、カスタマイズパーツの豊富さで定評があるな。
「それも合わせてお願いします」
と俺が返事をすると
「お値段は先ほどと合わせて、こちらの金額になります」
と店員さんは、電卓をこちらに見せる。
俺は速攻で
「五回払いでお願いします」
そう返事をした。
すると店員さんも
「お買い上げ有難うございます」
そう対応した。
相変わらず、店員さんはイイ笑顔だ。



「しかし、さすがパーツショップで働いているだけありますね。
 いろいろ詳しいですね」
「管理局で技術士官を目指しているんですよ」
「なるほど、それで」
確かに、管理局で技術士官としてやっていこうとするならば、これくらいは必須か。
「それに、適切なパーツをお勧めすると、買って頂けるお客様が多く、お店の売り上げが上がって、それと一緒に私のお給料もアップするんです」
それでさっきの笑顔か。
「意外と強かなんですね」
というと、店員さんはプンプンと頬を膨らませながら、
「これでもか弱い少女ですよ」
と、こちらを睨んでいた。


調整に、一時間ほどかかると言われたので、昼飯食ってきますと言って店を出ようとしたら、店員さんに、
「いい喫茶店がありますよ~」
といって、お店を紹介してくれた。
折角なので、そのお店でお昼と取る事にした。

お店のドアを開けると、カランカランとドアベルが鳴り
「いらっしゃいませ」
と言う、カウンターの中にいる男の声で、出迎えられた。
見た目から30後半から、40前半って所か、この人がマスターのようだ。
お店の中は、茶色で纏められており、落ち着いた雰囲気だ
客の方もそこそこ混んでいる。
俺はカウンターに座り、紅茶と店員さんのオススメ、スペシャルサンドを注文した。
するとマスターが、
「ひょっとして、パーツショップの金髪店員に勧められませんでしたか?」
と聞いてきた。
はいと答えると、マスターは、
「まったくまたあの子は。
 その子は、うちの娘なんですよ。
 初めて来店したお客さんが、スペシャルサンドを注文するのは、大抵あの子絡みなんですよ」
と、苦笑しながら言ってきた。
自分の親のお店の売り上げにまで貢献するとは。
「親孝行で、商売上手なお嬢さんをお持ちで」
と、俺が笑いながら言うと
「有難うございます」
と、マスターもどこか、あの店員の女の子を思わせる笑顔で返してきた。

注文を奥の厨房にマスターが送ると、はーいただいまと、奥から女性の声が返ってくる。「お嬢さんは、本局の技術士官を目指しているらしいですね」
パーツショップでの話をマスターにしてみると、
「ええ、妻の影響で。
 魔力の無い僕に似たのか、あの子は妻から魔力資質を受け継がなかったのですが、頭の良さを引き継いでいるようなんです」
と、答えてきた。
「なるほど、奥さんは技術者なんですか」
「ええ、元ですが。
 今ではこの店の厨房を一手に取り仕切ってますよ」
「先ほどの声の方ですか?」
「はい」
そう言って、マスターは朗らかに笑っている。
そんなマスターの顔を見て
「娘さんの笑顔は、マスター似ですね」
と、思った事を口にすると、マスターはまた笑いながら
「そうですか?僕はアリシアは、プレシアの方が、似ていると思いますけどね」
そう答える。
「そうなんですか・・・・、ん?プレシアにアリシア?」
なんか、今さらっととんでもない名前が出た気が。
「ええ、 妻の名前がプレシアで、娘の名前がアリシアです」
その名前って確か・・・。
「すいません、マスターのフルネームを教えてもらえませんか?」
「えっと、僕の名前はラフェスタ=テスタロッサ=フーガです」
そんなマスターの言葉に俺が固まっていると、奥の厨房から、
「お待たせしました。
 当店自慢のスペシャルサンドです」
といいながら、プレシア=テスタロッサが姿を現した。


大魔道師『プレシア=テスタロッサ』
簡単に言えば『リリカルなのは』一期のラスボスだ。
そんな人が何で、喫茶店の厨房で働いているんだ。
「私の顔に何か付いてますか?」
と、プレシアが俺に尋ねてくる。
どうやら固まっている間、プレシアの顔を凝視してしまっていたようだ。
「いえ、すいません」
人の顔を凝視するのはマナー違反だなと素直に謝ると、プレシアは、
「ひょっとして、私の事をご存知なのですか?」
と聞いてきた。
いまさら知らないという訳にもいかず、
「はい」
と答えるしかなかった。
すると、
「そうですか、時々昔の私を知っている人が来店される事がありますので。
 これでも大魔道師と呼ばれていましたからね。
 それが厨房から出てくれば、ビックリするのも仕方がありません」
と、こちらを向いて笑っていた。

二人が話を聞いていると、何年か前に技術者の職を捨て、喫茶店を夫婦で始めたらしい。なぜ辞めたのかは、プライベートな事なので聞く訳にはいかず、そうなんですかとしか言えなかった。
おそらく、存在しなかったプレシアの夫のマスターが、何かしら行動を起した結果、研究者の生き方を変えたのだろう。

しかし、そんな事はどうでも良く思えてきた。
なぜなら二人は、とても楽しそうだからだ。
「最初はこの店を始めるにあたって、いろいろ苦労したんですよ」
 と言って、マスターが笑っている。
「たとえばどのような?」
と聞いてみると、プレシアが、
「知ってました?Sランクの魔法が使えても、おいしいケーキが焼ける訳では無いんですよ」
最初は失敗続きだったと、懐かしそうに昔を思い浮かべている。


二人に聞きたい事は多々ある。
だけど、
「今幸せですか?」
俺が聞いていいのは、きっとこれだけだ。
すると二人はこう答えた。
「「ええとっても」」


スペシャルサンドを食べている間、ふと店の中を見回したところ、お土産のコーナーがあることに気がついた俺は、いろいろ考えた結果、お礼の品をこのお店の紅茶とコーヒーにする事に決めた。
それほどに、出された紅茶が美味しかったからだ。
コーヒーを飲む習慣が無いので、味の良し悪しはわからないが、この様子なら、コーヒーもきっと美味しいだろうだろう。
それに、こういう時のお礼の品は、値段もお手ごろで、消耗品のほうがいい。
口に合わなければ、人にあげやすいからだ。

クロノのイメージからクライドさんにはコーヒーを送り、リーゼ姉妹には、グレアム提督宛に紅茶を送る事にした。
あの二人は猫舌だろうが、グレアム提督の好みそうなものを送っても大丈夫だろう。
それに、俺の記憶が確かなら、確かグレアム提督はイギリス人だったはず。
イギリス人=紅茶というイメージは、いくらなんでもとは思ったが、猫の気に入るものを探すよりは楽だからな。
そう言って、マスターに注文する事に。



それから楽しい昼飯を終え、会計を済ませた。
マスターは、俺の態度や言葉から、何かを感じ取ったようだが、何も触れてこなかった。その方がお互いのためにいいと思ったからだろう。
店を出る時、マスタ-にコーヒーと紅茶をそれぞれ一パックもらった。
娘共々これからも御贔屓にという事らしい。
お礼を言って店を出た。


喫茶店を出た後、フェイトが存在しなくなった事や、PT事件が起きなくなったなど、歴史がどれくらい変っているかと考えてみたが、とりあえず今は後回しにする事に。
基本的に、どれだけ考えたところで答えは出ないからな。
それに、あの家族を見ていると、両親の顔が無性に見たくなったので、実家に帰ってみる事に
パーツショップに寄って商品を受け取りに向かった。
デバイスを受け取ったときに、
「またのご来店をお待ちしています」
というアリシアの笑顔は、両親そっくりだったのが、強く印象に残っている。

俺は、部隊に少し遅くなると連絡した後、そのままの足で実家に向かった。
突然訪れた俺に、母はビックリしていたが、
「おかえり」
と言って迎えてくれた。
夕方になって帰宅した父と久々に三人一緒に、晩飯を食べながら他愛も無い話をした。
それが、とても幸せで俺にとって大事な物なんだなと改めて思った。

俺にとって今日一日は、心が温かくなった有意義な一日だった。
寒いのは懐だけだな。



後書き
改定しました。

歴史は大幅に改変を受けていたという、蝶の羽ばたきの起点ともいえる今回の話。
まぁイスト的には、お店に行って実家に帰った程度の認識ですが。

プレシアは、魔道師から完全に足を洗っているため、本編よりも弱体化されています。
まぁ、本人が戦う事は無いので、本編にはまったく影響ありませんが。
あと、狙撃の魔力濃度云々は独自設定です。


しかし、新兵編が思っていた以上に延びそうです。
理由は、もともと薄いと感じていたキャラクターと人間関係の描写を増やしているからですが。
たぶん次は、イストとフォルクスのお話。





[16653] 新兵編第五話
Name: のなめ◆ae0415db ID:98911a80
Date: 2010/03/03 23:27
次の日、朝一番に訓練室に直行した。
デバイスの試し撃ちは店で行ったが、それはあくまで近距離の話。
慣らしも無しで、いきなり出動があっても困るので朝から来たのだ。
起動させ、軽くインターセプトトレーニング。
アリシアの話していた通り、前と比べると、かなり発動と同時発動が楽になっている。
この様子だと、同時に魔法弾を6発まで同時に操作可能出来そうだ。
次は遠距離射撃を行う事に。
ジムカも同時起動させ、的を最大距離に設定してみる。
すると、肉眼で見るよりも何倍も鮮明に的がはっきり見える。
試しうちでアッサリ命中、これなら何も問題ない。
ついでなので、6発同時起動を行ってみる。
すると、この距離だと、固定標的なら百発百中が可能だと解った。
さて、次は砲撃の方も試してみないとな。
「ロングバレル展開!」
俺の言葉に反応し、デバイスが変形する。
「ハンドグリップセット!」
今度はグリップが出現し、ザムスに自動装着される。
「取って置きの遠距離砲撃!」
その言葉と共にターゲットリングが作成され、俺の魔力が、ザムスの先端に魔力が圧縮されていく。
「ファァァントム・ブレイザァァァァーーーーッ!!!!」

ターゲットの破壊を確認。
威力はAAランクの判定が出た。
どうやら、遠距離砲撃は、結構なレベルにまで到達したらしい。
しかし、メカギミックと必殺技を叫ぶのは男のロマンだな。
そんないい気分に浸っている俺を、ニヤニヤした顔でこちらを見ている男がいた。
小隊長である。
そんな小隊長に俺はこう言った。
「砲撃で撃ち抜いてもいいですよね、答えは聞いてない」




りりかるなのは 蝶の羽ばたき





アリシアに進めてもらったジムスは、俺が思っていた以上に俺との相性が良かった。
その理由は、魔力濃度の測定という機能が想像以上の効果を発揮したからだ。

たとえば敵が、サークルプロテクションを張ったとする。
すると、魔力というのはエネルギーである以上、どうしても使用するとムラが出てくる
当然、同じ魔法の範囲でも、シールドの効果に差が出てくるのだ。
俺はそこを狙撃し、貫通させる事でバレットの威力の減少を抑え、相手を撃破する事が出来るようになった。
まぁもっとも、それは、狙撃だから可能な話で、今の俺の技量では移動しながらそれを行うのは無理だ。
いつかは空中戦でそれを行えるようになりたい。
リーゼ姉妹に作ってもらった練習メニューをこなしていけば、いずれは問題なく行えるようになれるかもしれない。

あと、広域サーチを補助する機能も付いているらしく、現場の状況の把握が、今までよりはるかにしやすくなった事も大きい。
狙撃対象を確認する事以上に、現場の状況を把握する事によって、不確定要素を、可能な限り少なくする事ができるようになった。
これによって、今までより狙撃の成功率が大幅に上げることができた。

ジムカも、追加オプション設定が在るらしいので、それも金に余裕が出来れば追加したいところだ。
毎度ありという、アリシアのイイ笑顔が思い浮かんだのは、きっと気のせいに違いない。

次の休みに俺はまた喫茶店に向かった。
理由はグレアム提督が、喫茶店の紅茶をえらく気に入ったらしく、ぜひまた送ってほしいと言われたからだ。
俺も、アリシアに、直接デバイスの調子を話したりしたかったと言うのもある。
とりあえず、先に昼飯を食べようと、喫茶店に入ると、
「いらっしゃいませ」
とマスターとウェイトレス姿のアリシアが出迎えてくれた。
「ああ、この間の。お一人様ですか?」
「はい、カウンターで」
そう言って俺がカウンターに座るとアリシアがメニューを聞きにくる。
「スペシャルサンドと紅茶のセットで」
俺がそう答えるとアリシアは
「はい、お母さん、スペシャルお願い」
と、奥に声をかけ、自分は紅茶を入れ始めた。

「この間のデバイス、思っていた以上に調子はいい。狙撃が大分やりやすくなったよ」
俺がそういうと、アリシアは得意げに
「私の目きき、たいしたもんでしょ♪」
えへんと胸を張ってこちらを見ている。
そんな様子が、とてもかわいらしかった。

「それで次は、ジムカの追加オプションについて聞きたくてね。何かお勧めある?」
俺がそう尋ねると
「う~ん、それなら対閃光装備とかはどうかな?」
「対閃光、装備?」
「要するに、強い光から、自動的に目を守る装備よ。
 自分で閃光の魔法を使うときや、相手に使われたときに、とっさに目を守ってくれるのから、有ると無いとでは大分違うわよ」
「なるほど」
確かに、あまり使い手は居ないが、使われたとなると、完全に無防備になるからな。
「それじゃあ、それをお願いしていい?」
俺がそう尋ねると、アリシアは、
「あと、一時間半ほど、待ってくれるならいいよ。そうすればお昼のピークが終わるから」
そう言って、マスターにお店を抜けて良いかを確認している。
マスターは、OKを出してくれたので、俺はゆったりとしたお昼を過ごすことに。


「マスター、ちょっといいかな」
「なんです?」
「この間の紅茶を、多めに売ってほしいという人が居るんだけど、大丈夫かな?」
この店に来たもう一つの用件である、グレアム提督の件をマスターに話すと、マスターは
「少し、難しいですね。この店で使っている大半の紅茶の葉は、自家栽培だからあまり大量に売ると店で使う分が足りなくなる可能性が」
そう言って、少し難しい顔をしている。
「紅茶って自家栽培できるものなんですか?」
紅茶は良く飲むが、農業関係はさっぱりだからな俺は。
俺がそう尋ねると、
「妻の使い魔が、ミッドの南部で栽培を行っているんです。
プレシアがもともと学者だったせいか、どうせ作るのなら美味しいものをという事で、使い魔を作って研究しましてね。
だから、味は優れているんですが、そこまで大量にできるわけではないんですよ」
「なるほど・・・」
茶の為に、使い魔を作るなんて、さすが大魔導士と呼ばれていただけはあるな。
そういう発想すら出てこないからな普通は。
そういえば、プレシアって使い魔居たなたしか、名前なんだっけ・・。
「お父さん、一度リニスに相談してみたほうがいいんじゃない?」
俺達が、そういうやり取りをしていると、アリシアが話しかけてきた。
「まぁそれは確かにな」
マスターがそう答えると、アリシアが
「リニスは優秀な使い魔よ。炊事洗濯に戦闘に研究の補佐と何でもこなすスペックがあるんだから」
そう言って、リニスなら大丈夫よと言う。
「母さんはどう思う?」
そう尋ねられたプレシアは、少し考えた後、
「問題無いんじゃない?まぁ、でもリニスしだいね」
と言ってマスターのほうを見ている。
するとマスターは
「判った。後日改めて返事をするという形でお伝えください」
と言ってきたので、解りましたと俺は返事をした。
いい返事がもらえると良いなと考えていると、アリシアは聞こえるか聞こえないかの声で
「海の提督って事は、航海中にほしいって言うのもあるだろうから、大量購入してくれるかな?目指せ大口の顧客ゲット♪」
と、とてもいい笑顔をしていたのがちょっと怖かった。

そんなアリシアを見ながらマスターに、
「育て方、間違えてません?」
というと、マスターは
「まぁ、商売人の娘ですからねあの子も。家族思いということにしておいてください」
と苦笑しながらそう言った。



昼飯を食べ終わった後、アリシアとともにパーツショップに向かい、追加オプションの設定をしてもらい、ついでにサービスで、閃光魔法も入れてもらえた。
これで、少し戦闘にバリエーションをもたせられそうだ。
入れてもらった後、アリシアが、
「店に居ないときもあるから、次来るときは、前もって連絡頂戴ね」
と言って、連絡先を教えてくれたので、俺も連絡先をおしえた。
やり取りが終わった後、アリシアに、お礼に何かおごろうかと言うと要らないと言われた。
何でも、あまり人に奢ってもらう事が、好きではないらしい。
自分で買うからいいんだそうな。
そうなんだと考えていると、
「今後ともよろしくね」
そう言って、アリシアが右手を差し出して来た。
俺は、一瞬きょとんとした後、手を差し出し
「こちらこそよろしく」
と言って握手をした。





俺は、あれから何度かあった休みの度に、喫茶店に通っている。
あの店の雰囲気が気に入ったからだ。
マスターともどうも波長が合うらしく、世間話をよくしているし、アリシアともメールや何度かお店であって、いろいろと話をしたりしている。
俺はアリシアに、デバイスについて相談に乗ってもらい、アリシアは俺のという、戦っている者の生の声が聞ける事がいろいろ参考になるそうだ。
最近では、仕事の事以外の、たわいもない事もやり取りしていたりする。

それとグレアム提督との取引は、それなりの量ならという事でやり取りを行う事になったそうな。
そんな中、やり取りをしている間にリーゼ姉妹とリニスが仲良くなったらしい。
元が猫の使い魔同士、波長が合うらしい。

しかし、俺の中で完全にフェイトとアリシアが被らなくなったな。
アリシアがメガネを掛けて、セミロングいるというのもあるが、性格がまったく被ってないのも大きい。
守銭奴なフェイトなんて、誰にも想像が付かないだろうしな。
ちなみに、俺が守銭奴と軽口を言うと
「家族思いなだけよ♪」
と、笑いながら答えていた。
まぁ、目がまったく笑っていなかったが。


アリシアとのメールのやり取りをしている事を小隊長に知られ、またニヤニヤされた。
だからまた、撃ち抜いておいた。
しかし、次の日に昨日のお返しとばかりに、先輩にその事を話したらしく、いろいろ聞かれて、正直非常に困った。
俺が、
「まだ12歳です。女の子と付き合うとか、そういう年ではありません」
と言うと、やれ考え方が硬いやら何やら、ボコボコに言われた。
先輩も普段はまじめなんだが、どうも人の色恋沙汰に首を突っ込む事が何よりも好きならしい。
別に、アリシアとは、そういう関係というわけじゃないんだがなぁ。



後書き
フォルクスとの話もある程度かけているのですが、分けました。
アリシアの話と一緒にすると、かなり長くなりましたんで・・。



[16653] 新兵編第六話
Name: のなめ◆ae0415db ID:98911a80
Date: 2010/05/11 22:30
ある日、隊長質に呼ばれたので、隊長室に向かった。
失礼しますとノックをし、部屋に入ると
開口一番、レジアス部隊長に
「テレビに出ろ」
と言われた。
どうも、毎年、その年に入った新人を特集する特番あるらしく、その番組に出ろとのこと。しかも、生だそうな。
最近狙撃主として借り出される事が多かった事が、目に留まったらしい。
しかし、俺は自分で言うのもなんだが華が無い。
コルトのようなイケメンでは無いのだ。
そう思い、向いていそうに無いと言って断りたかったのだが、
「拒否権は無いんですよね?」
と部隊長に聞いてみると、
「無い」
とはっきりと断言された。
どうも、部隊長いわく、今回の番組出演をを陸のイメージアップに繋げたいらしい。
「『陸の新人の代表』の一人として、テレビに出演するという事を決して忘れるなよ。
お前の取る行動一つが、一般市民にとっての陸のイメージに直轄するといっても過言では無いからな」
と念を押され、俺ははぁと大きくため息をつきながら
「了解しました。恥を欠かないように努力します」
と部隊長に返事をしておいた。
それではと言って、部屋を出ようとすると、部隊長は
「それと、デバイス持参だそうだ。忘れるなよ」
と言ってきたので、
「了解しました」
と、返事をしておいた。
模擬戦でもするのかな?


蝶の羽ばたき


番組の出演の情報を知り合いに知られないように、誰にも教えなかったのだが、家族には父から話が回り、録画を行うとの事。
父いわく、結構多くの局員がこの番組を見ているらしく、注目度は俺が思っていた以上に高いらしい。
コルトからも俺が出演すると言う事を知ったらしく、連絡が来た。
その時コルトに、
「俺も出た事がある。まぁそこまで変な事を聞かれたりしないから大丈夫だ」
と言われ、少し緊張がほぐれたりもした。
俺は知らなかったのだが、どうも入った年に出たらしい。
まぁ、執務官試験に一発で通ったら目立つわな。
アリシアも知っていたらしく、何で知っているんだと聞いてみると、どうもグレアム提督経由で聞いたらしい。
お店の情報をやり取りしたときに、教えてもらったとの事。
「絶対見るね。楽しみにしているわよ」
とニヤニヤした顔で言われた。

どうも、包囲網が完全に形成されているようだった。
まったく、嫌な話だ。





さてさて、やってきました撮影日当日。
スタジオに着くと、そこには何人かの局員がすでに到着していた。
俺と同じ年くらいのも居れば、俺より少し上の人も居たりする。
テレビ局の人に
「少し待っていてくださいね」
と言われたので、用意された椅子に座ってすこし待つ事に。
どんな事を聞かれるのかなと考えていると周りが一斉にざわめき始めた。
どうも、周りの雰囲気から大物が到着したらしいと判断できる。
どんな奴が入ってきたのかなと思い、扉のほうを見ていると、そこに居たのはあの『規格外』フォルクス=ワーゲンだった。
フォルクスが入ってきたとたん、この番組のプロデューサーがに駆け寄り、頭を下げだした。
あいつだけ、明らかに俺やほかの局員とは扱いが違う。
当の本人は少しうっとうしがっているようだが。
どうやら、あいつが今日の本命で、俺はその他の一人といった所か。
特別扱いになるのは仕方が無いか・・・。
あいつ自身の持つ、ロストロギアの存在や、バックに聖王教会が、ある事も考えると
それに、ワーゲンはコルト以上の美形だからな、明らかに別格のオーラを出している。
そんな事を考えながら、撮影を待つ事に。


そんなこんなで予定されていた時間になり、番組撮影が始まった。
生放送という事で緊張していたが、問題なく進みそうだ。
今日出演する新人は俺を含めて五人。
あとは、客席にそこそこの人数が座っている。
なぜかワーゲンが座った位置は、司会者の女性から一番遠く一番端で、俺はその隣の端から二番目だった。
こいつが中央じゃないのか?と最初は思ったのだが、新人局員の紹介が、司会に近いほうから始まったため、すぐに理由が分かった。
ワーゲンを最後にする事によって、番組の注目を少しでも長引かせようという手法をとったからのようだ。
俺はその前の、引き立て役にされたようで、すこぶる不快に感じたが、自分が、陸の代表の一人としてこの場に呼ばれた以上、無様な姿をさらすわけにはいかないと、我慢する事に。






そんなこんなで三人目の説明が終わり、俺の紹介が始まった。
最初は俺の簡単なプロフィールから始まり、父が陸士であると表示されると、司会者から「お父様が陸士だったから、局員を目指したのですか?」
と質問されたので、俺は迷い無く
「はい。それに、父や母といった家族や友人達といった、大切な人達が住む、地上を守りたかったから局員になりました」
と質問に答えた。
無難で面白くない回答だが、切欠こそ違うが、嘘を言ったつもりは無い。
プロフィール紹介が終わり、次に、一緒に働いている人の映像が画面に映し出される事になり、そこに写っていたのは小隊長と先輩だった。
ほかの人同様前もって撮影されたものらしい。
小隊長達は普段の様子を隠しつつ、いろいろと聞かれた質問に答えている。
自分の評価を知り合いからされるというのも、なかなか恥ずかしいなと飲み物を口にしながら考えていると、質問が終わった後、
「最後に何か一言ありませんか」
といわれたことに対し小隊長はニヤッとした顔で、
「愛しのあの子が見ているかもしれないからって、緊張してヘマするなよ」
と、爆弾発言を行った。
俺は、その瞬間に、飲んでいた飲み物が器官に入り、大きく咳き込んでしまった。
吐き出さなかったのは、奇跡といっても過言ではない。
俺が苦しそうにゴホゴホしていると、司会者は、ニヤニヤした顔しながら
「なるほど、好きな女の子が居る地上を守りたかったんですね」
と、面白がって質問してくる。
俺がとっさに
「それについてはノーコメントで」
と答えても、司会者はさらにニヤニヤしながら、
「陸士期待の狙撃手が、今一番狙い撃ちしたいのは愛しのあの子のハートなんですね」
とさらに煽り、それにつられて、客席も多い盛り上がる。
客席には、女性のほうが多いのも理由の一つだろう。
女性の恋話好きは、自分とは関係ないところで発揮してほしい・
しかし、そんな事を気にしている余裕は俺には無く、ただひたすらに、ノーコメントですと答えるしかなかった。
それが墓穴だったことは言うまでもない。
隊舎に帰ったら、小隊長とは少々お話をしないといけないようだ。

小隊長の暴走で、会場が一通り盛り上がった後、ついにフォルクスの順番になった。
映し出された映像は、俺を含め、ほかのメンバーよりも、手が加えられているのが素人目にも良く分かる出来だった。
しかも、コルトとの模擬戦の映像を映し、フォルクスの強さを見せ付けている。
まさに特別扱いと言うべきか。
フォルクスの紹介に出てきた提督も、本局のかなりお偉いさんならしい。
そんな中、司会者がフォルクスに
「フォルクス准尉位美形だと、モテモテでしょうに。
 それとも、イスト准尉のように意中の相手がいらっしゃるんでしょうか?」
といった、司会者にいろいろと突っ込みたい質問を行った。
俺がにらみつけても、司会者はどこ吹く風で受け流している。
これが、芸能人というものか。
そんな事を考えていると、フォルクスはしっかりとした口調で
「はい、います。
 まぁ、僕も片思いですが」
と言い切った。それを聞いた司会者は
「おおっ、どこぞの准尉と違って男らしい発言ですな。
 思われているその女性がうらやましい」
と、こちらをニヤニヤしながらそう言った。
この司会者とは、後で少し、お話をしたほうがいいかもしれない。


フォルクスの紹介が終わった後、司会者が
「さてさて、今回は、今までの放送と違って、実際にバトルロイヤル形式の模擬戦を行ってもらいます」
そう言ってから、デバイスは持ってこられてますねと確認してきた。
なるほど、ここまで露骨だといっそすがすがしいな。
ほかの局員も、当然その理由に気がついているらしく、一斉にフォルクスの居る方向を見ている。
見られているフォルクスは、はははと苦笑いをしている。
それならばいっそのこと、とことん乗ってやるかな。
そう思い俺は司会者に話しかけた。

「すいません、ちょっと提案があるのですがよろしいですか?」
俺がそういうと、司会者がこちらを向きながら、何んでしょうかと聞いてくる。
「いや、実は先ほどフォルクス准尉の時に流されていた、模擬戦の映像の相手であるコルト執務官とは、士官学校の同期なんですよ」
「それがどうかしたのでしょうか?」
「実は前に、彼の凄さを本人から直接いわれてたんですよ。
『フォルクス=ワーゲンは規格外』だと。
正直、このままバトルロイヤル形式を行うと、僕たちは彼に各個撃破されて終わるでしょうね」
「なるほど、それで、准尉はどうされたいんです?」
「ですので、4対1での模擬戦で行えないでしょうか?」
俺の言葉に、その場に居た人すべてが、一斉にこちらを見てくる。
とくに、フォルクス准尉は勘弁してくれと言わんばかりの表情だ。
そんな中司会者は、俺の言葉に
「ずいぶん弱気ですね」
そう返してくる。
「勇気と蛮勇は違いますから。それに自分や相手の実力を把握し、少しでも高い勝率の手段を実行する事もまた、局員に必要な資質だと、僕は考えてますから」
俺は、そう言って、再度司会者を見つめる。
目で暗に、そちらの方が盛り上がりますよいう事を含ませるのも忘れない。
どうしようかと司会者がプロデューサーのほうを見ると、プロデューサーは手で大きく丸を作っている。
どうやら番組としてはOKのようだ。
そちらのほうがより、フォルクスの強さが証明されるという事だろう。
それを見た司会者は
「ほかの方々はこの提案をどう思われますか?」
と、ほかの三人に尋ねる。
俺と同じ陸士は、あまり納得がいってなさそうだが、本局から


「それでは、OKが出ましたので、模擬戦の場所に移動をお願いします。」
そう言って俺たちを転移装置に誘導し始めた。





後書き
次はイスト+αVSフォルクス



仕事が忙しいです。
次も少し開きそう
特に今月半ばから来月にかけて死ぬ事になりそうだ。



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